JP2004335001A - 磁気記録媒体 - Google Patents

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Akiko Iida
亜紀子 飯田
Kazuhisa Shida
和久 志田
Noriyuki Asakura
紀之 朝倉
Akira Kikuchi
暁 菊池
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Abstract

【課題】過度に磁気異方性を高めることなくできる限り長期間にわたって磁化の劣化を抑制することができる磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【解決手段】磁気記録媒体は少なくともCo、CrおよびPtを含む記録磁性層を備える。記録磁性層は、少なくともCo、CrおよびPtを含む第1合金層の表面に受け止められる。第1合金層には29[at%]以上のCrおよび15[at%]以上のPtが含まれる。第1合金層は、29[at%]以上のCrを含む第2合金層の表面に受け止められる。第2合金層は、7〜28[at%]のCrを含む第3合金層の表面に受け止められる。こうした磁気記録媒体では、記録磁性層と同種類の材料で第1合金層は構成される。したがって、記録磁性層の膜厚は実質的に増大する。こういった膜厚の増大はいわゆる熱揺らぎの抑制に大いに貢献することができる。記録磁性層では長期間にわたって磁化の劣化は抑制されることができる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばハードディスク駆動装置(HDD)に組みまれる磁気ディスクといった磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードディスク(HD)といった磁気記録媒体は広く知られる。こういった磁気記録媒体では、例えば特許文献1に記載されるように、記録磁性層はCoCrPt合金で構成される。記録磁性層は、Ptその他の添加物を含むCoCr合金で構成される中間層の表面に受け止められる。記録磁性層では中間層の働きで磁気異方性は高められる。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−251237号公報
【非特許文献1】
Lu et al.,「Thermal Instability at 10Gbit/in Magnetic Recording」,IEEE Trans.Magn.Vol 30,1994年,p.4230
【非特許文献2】
J.H.Richter,「Dynamic Coercivity Effects In Thin Film Media」,IEEE Trans.Magn.Vol 34,1997年,p.1540
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
記録磁性層で磁気異方性が高められると、長期間にわたって磁化の劣化は抑制されることができる。いわゆる熱揺らぎ耐性は高められる。しかしながら、こうして磁気異方性が高められると、情報の書き込みにあたって強い書き込み磁界が要求されてしまう。書き込みヘッドの負荷は増大する。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、過度に磁気異方性を高めることなくできる限り長期間にわたって磁化の劣化を抑制することができる磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、第1発明によれば、少なくともCo、CrおよびPtを含む記録磁性層と、表面で記録磁性層を受け止め、少なくともCo、CrおよびPtを含む第1合金層と、表面で第1合金層を受け止め、少なくともCoおよびCrを含む第2合金層と、表面で第2合金層を受け止め、少なくともCoおよびCrを含む第3合金層とを備え、第1合金層には29[at%]以上のCrおよび15[at%]以上のPtが含まれ、第2合金層には29[at%]以上のCrが含まれ、第3合金層には7〜28[at%]のCrが含まれることを特徴とする磁気記録媒体が提供される。
【0007】
こういった磁気記録媒体では、記録磁性層と同種類の材料で第1合金層は構成される。したがって、記録磁性層の膜厚は実質的に増大する。こういった膜厚の増大はいわゆる熱揺らぎの抑制に大いに貢献することができる。記録磁性層では長期間にわたって磁化の劣化は抑制されることができる。
【0008】
第1合金層には記録磁性層よりも大きな含有量で非磁性材料が含まれればよい。同様に、第1合金層には記録磁性層よりも大きな含有量でPtが含まれればよい。第1合金層の飽和磁束密度は0〜0.1[T]の範囲で設定されればよい。
【0009】
こういった磁気記録媒体では、第3合金層には記録磁性層よりも小さい含有量で非磁性材料が含まれればよい。すなわち、第3合金層では記録磁性層に比べて非磁性材料の添加は抑制される。その結果、第3合金層では磁化容易軸は基板の表面に平行に良好に揃えられることができる。こういった第3合金層はいわゆる熱揺らぎの抑制に貢献することができる。第3合金層の飽和磁束密度は0.4〜0.9[T]の範囲で設定されればよい。
【0010】
第2合金層には第3合金層よりも大きな含有量で非磁性材料が含まれればよい。すなわち、第2合金層には第3合金層に比べて十分な非磁性材料が添加される。第2合金層の飽和磁束密度Bsは小さく抑え込まれる。こういった第2合金層の働きによれば、第3合金層と記録磁性層との間で強磁性相互作用すなわち交換結合は断ち切られることができる。記録磁性層では磁気異方性の低下は回避されることができる。
【0011】
こういった磁気記録媒体では、記録磁性層はBをさらに含んでもよい。同様に、第1合金層はBをさらに含んでもよい。同様に、第3合金層はTaをさらに含んでもよい。
【0012】
以上のような磁気記録媒体は、表面で第3合金層を受け止め、Crに基づき構成される下地層をさらに備え、下地層には、Mo、Ta、Ti、WおよびVからなる群から選択される1種以上の原子が添加されてもよい。こういった原子の添加によれば、下地層および記録磁性層の間で結晶格子の整合性は高められることができる。
【0013】
その一方で、磁気記録媒体は、表面で第3合金層を受け止め、Crに基づき構成される第1下地層と、表面で第1下地層を受け止め、Crで構成される第2下地層とをさらに備え、第1下地層には、Mo、Ta、Ti、WおよびVからなる群から選択される1種以上の原子が添加されてもよい。こういった原子の添加によれば、下地層および記録磁性層の間で結晶格子の整合性は高められることができる。
【0014】
第2発明によれば少なくともCo、CrおよびPtを含む記録磁性層と、表面で記録磁性層を受け止め、少なくともCo、CrおよびPtを含む熱安定化裏打ち層とを備え、熱安定化裏打ち層には記録磁性層よりも大きな含有量でPtが含まれることを特徴とする磁気記録媒体が提供される。
【0015】
こういった磁気記録媒体では、記録磁性層と同種類の材料で熱安定化裏打ち層は構成される。したがって、記録磁性層の膜厚は実質的に増大する。こういった膜厚の増大はいわゆる熱揺らぎの抑制に大いに貢献することができる。記録磁性層では長期間にわたって磁化の劣化は抑制されることができる。
【0016】
しかも、熱安定化裏打ち層には記録磁性層よりも大きな含有量でPtが含まれればよい。熱安定化裏打ち層には15[at%]以上のPtが含まれればよい。熱安定化裏打ち層の飽和磁束密度は0〜0.1[T]の範囲で設定されればよい。熱安定化裏打ち層には記録磁性層よりも大きな含有量で非磁性材料が含まれればよい。同様に、熱安定化裏打ち層には記録磁性層よりも大きな含有量でCrが含まれればよい。
【0017】
こういった磁気記録媒体では、記録磁性層にはBおよびTaの少なくともいずれか一方がさらに含まれればよい。同様に、熱安定化裏打ち層にはBおよびTaの少なくともいずれか一方がさらに含まれればよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0019】
図1は磁気記録媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は、例えば平たい直方体の収容空間を区画する箱形の筐体本体12を備える。収容空間には、磁気記録媒体としての1枚以上の磁気ディスク13が収容される。磁気ディスク13はスピンドルモータ14の回転軸に装着される。スピンドルモータ14は例えば7200rpmや10000rpmといった高速度で磁気ディスク13を回転させることができる。筐体本体12には、筐体本体12との間で収容空間を密閉する蓋体すなわちカバー(図示されず)が結合される。
【0020】
収容空間では、垂直方向に延びる支軸15にヘッドアクチュエータ16が装着される。ヘッドアクチュエータ16は、支軸15から水平方向に延びる剛体のアクチュエータアーム17と、このアクチュエータアーム17の先端に取り付けられてアクチュエータアーム17から前方に延びる弾性サスペンション18とを備える。周知の通り、弾性サスペンション18の先端では、いわゆるジンバルばね(図示されず)の働きで浮上ヘッドスライダ19は片持ち支持される。浮上ヘッドスライダ19には、磁気ディスク13の表面に向かって弾性サスペンション18から押し付け力が作用する。磁気ディスク13が回転すると、磁気ディスク13の表面で生成される気流の働きで浮上ヘッドスライダ19には浮力が作用する。弾性サスペンション18の押し付け力と浮力とのバランスで磁気ディスク13の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ19は浮上し続けることができる。
【0021】
浮上ヘッドスライダ19には、周知の通りに、磁気ヘッドすなわち電磁変換素子(図示されず)が搭載される。この電磁変換素子は、例えば、スピンバルブ膜やトンネル接合膜の抵抗変化を利用して磁気ディスク13から情報を読み出す巨大磁気抵抗効果(GMR)素子やトンネル接合磁気抵抗効果(TMR)素子といった読み出し素子と、薄膜コイルパターンで生成される磁界を利用して磁気ディスク13に情報を書き込む誘導書き込みヘッドといった書き込み素子とで構成されればよい。
【0022】
浮上ヘッドスライダ19の浮上中に、ヘッドアクチュエータ16が支軸15回りで回転すると、浮上ヘッドスライダ19は半径方向に磁気ディスク13の表面を横切ることができる。こうした移動に基づき浮上ヘッドスライダ19上の電磁変換素子は磁気ディスク13上の所望の記録トラックに位置決めされる。ヘッドアクチュエータ16の回転は例えばボイスコイルモータ(VCM)といった駆動源21の働きを通じて実現されればよい。周知の通り、複数枚の磁気ディスク13が筐体本体12内に組み込まれる場合には、隣接する磁気ディスク13同士の間で2本のアクチュエータアーム17すなわち2つの浮上ヘッドスライダ19が配置される。
【0023】
図2は磁気ディスク13の断面構造を詳細に示す。この磁気ディスク13は面内磁気記録媒体として構成される。磁気ディスク13は、支持体としての基板31と、基板31の表裏面に広がる多結晶構造膜32とを備える。基板31は、例えばディスク形のAl本体33と、Al本体33の表裏面に広がるNiP膜34とで構成されればよい。Al本体33の表面にはテクスチャ構造が確立されてもよい。ただし、基板31にはガラス基板やシリコン基板、セラミック基板が用いられてもよい。多結晶構造膜32に磁気情報は記録される。多結晶構造膜32は、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜といった保護膜35や、例えばパーフルオロポリエーテル(PFPE)膜といった潤滑膜36で被覆される。
【0024】
多結晶構造膜32は記録磁性層37を備える。記録磁性層37は相互に隣接する磁性結晶粒の集合体から構成される。記録磁性層37は少なくともCo、CrおよびPtを含む合金から構成されればよい。こういった合金にはBおよびTaの少なくともいずれか一方がさらに含まれてもよい。ここでは、記録磁性層37にはCoCrPtB膜が用いられる。記録磁性層37に含まれるPtの含有量は6〜20[at%]程度に設定されればよい。記録磁性層37の飽和磁束密度Bsは例えば0.1〜0.8[T]の範囲で設定されればよい。
【0025】
多結晶構造膜32は、表面で記録磁性層37を受け止める第1合金層すなわち第1中間層38を備える。第1中間層38は相互に隣接する結晶粒の集合体から構成される。第1中間層38は少なくともCo、CrおよびPtを含む合金から構成されればよい。こういった合金にはBおよびTaの少なくともいずれか一方がさらに含まれてもよい。第1中間層38は記録磁性層37と同種類の材料から構成されればよい。ここでは、第1中間層38にはCoCrPtB膜が用いられる。第1中間層38には記録磁性層37よりも大きな含有量で非磁性材料が含まれる。第1中間層38には記録磁性層37よりも大きな含有量でPtが含まれる。第1中間層38には例えば29〜30[at%]のCrおよび15〜17[at%]のPtが含まれればよい。第1中間層38の飽和磁束密度Bsは例えば0〜0.1[T]の範囲で設定される。ただし、第1中間層38の飽和磁束密度Bsは記録磁性層37のそれよりも小さく設定されればよい。第1中間層38の膜厚は例えば0.5nm〜5.0nmの範囲で設定されればよい。
【0026】
第1中間層38は第2合金層すなわち第2中間層39の表面に受け止められる。第2中間層39は相互に隣接する結晶粒の集合体から構成される。第2中間層39は少なくともCoおよびCrを含む合金から構成されればよい。ここでは、第2中間層39には例えばCoCr膜が用いられる。第2中間層39には29[at%]以上のCrが含まれる。第2中間層39では飽和磁束密度Bsは例えば0〜0.4[T]の範囲で設定される。第2中間層39の膜厚は例えば0.5nm〜5.0nmの範囲で設定されればよい。
【0027】
第2中間層39は第3合金層すなわち第3中間層41の表面に受け止められる。第3中間層41は相互に隣接する結晶粒の集合体から構成される。第3中間層41は少なくともCoおよびCrを含む合金から構成されればよい。第3中間層41にはPt、BおよびTaの少なくともいずれかがさらに含まれてもよい。ここでは、第3中間層41には例えばCoCrTa膜が用いられる。第3中間層41には記録磁性層37よりも小さな含有量で非磁性材料が含まれる。同様に、第3中間層41には第2中間層39よりも小さな含有量で非磁性材料が含まれればよい。すなわち、第3中間層41には7〜28[at%]の含有量でCrが含まれる。第3中間層41では飽和磁束密度Bsは例えば0.4〜0.9[T]の範囲で設定される。第3中間層41の膜厚は例えば0.5nm〜5.0nmの範囲で設定されればよい。
【0028】
第3中間層41は下地層42の表面に受け止められる。この下地層42は、Crに基づき構成される第1下地層すなわち第1非磁性下地層42aと、表面で第1非磁性下地層42aを受け止め、Crで構成される第2下地層すなわち第2非磁性下地層42bとの積層体から構成される。第1非磁性下地層42aには、Mo、Ta、Ti、WおよびVからなる群から選択される1種以上の原子が例えば1[at%]以上の含有量で添加されてもよい。こういった原子の添加によれば、下地層42および記録磁性層37の間で結晶格子の整合性は高められることができる。ここでは、第1非磁性下地層42aにはCrMo膜が用いられる。第1非磁性下地層42aの膜厚は例えば2.0nm程度に設定されればよい。第2非磁性下地層42bにはCr膜が用いられる。第2非磁性下地層42bの膜厚は例えば4.0nm程度に設定されればよい。
【0029】
ただし、下地層42にはCrに基づき構成される合金層が単層で用いられてもよい。このとき、下地層42にはMo、Ta、Ti、WおよびVからなる群から選択される1種以上の原子が例えば1[at%]以上の含有量で添加されてもよい。その他、下地層42は、Crを含む合金層の積層体から構成されてもよい。合金層にはMo、Ta、Ti、WおよびVからなる群から選択される1種以上の原子が例えば1[at%]以上の含有量で添加されてもよい。このとき、表面で第3中間層41を受け止める合金層には、基板31の表面に形成される合金層に比べて大きな含有量でCrが含まれればよい。
【0030】
磁気ディスク13では、記録磁性層37と同種類の材料で第1中間層38は構成される。したがって、記録磁性層37の膜厚は実質的に増大する。こういった膜厚の増大はいわゆる熱揺らぎの抑制に大いに貢献することができる。記録磁性層37では長期間にわたって磁化の劣化は抑制されることができる。
【0031】
しかも、第3中間層41では記録磁性層37に比べて非磁性材料の添加は抑制される。その結果、第3中間層41では磁化容易軸は基板31の表面に平行に良好に揃えられることができる。こういった第3中間層41はいわゆる熱揺らぎの抑制に貢献することができる。
【0032】
その一方で、第2中間層39には第3中間層41に比べて十分な非磁性材料が添加される。第2中間層39の飽和磁束密度Bsは小さく抑え込まれる。こういった第2中間層39の働きによれば、第3中間層41と記録磁性層37との間で強磁性相互作用すなわち交換結合は断ち切られることができる。記録磁性層37では磁気異方性の低下は回避されることができる。
【0033】
次に磁気ディスク13の製造方法について簡単に説明する。まず、ディスク型の基板31は用意される。基板31の表面には予めテクスチャ構造が確立される。基板31の表面にはNiP膜34が積層形成される。NiP膜34の形成にあたって例えば無電解めっき法は用いられる。基板31は例えばスパッタリング装置に装着される。NiP膜34の表面には多結晶構造膜32が形成される。形成方法の詳細は後述される。その後、多結晶構造膜32の表面には膜厚5nm程度の保護膜35が積層形成される。積層形成にあたって例えばCVD法(化学的気相蒸着法)が用いられる。保護膜35の表面には膜厚1.0nm程度の潤滑膜36が塗布される。塗布にあたって基板31は例えばパーフルオロポリエーテルを含む溶液に溶液に浸されればよい
スパッタリング装置では例えばDCマグネトロンスパッタリング法に基づき多結晶構造膜32は成膜される。成膜にあたってスパッタリング装置のチャンバ内にはArガスが導入される。チャンバ内は例えば0.67[Pa]の圧力下に保持される。Arガスの導入に先立ってチャンバ内には1.0x10−5[Pa]程度の真空環境が確立される。成膜に先立って基板31は160℃〜300℃に加熱されればよい。ここでは、基板31は例えば240℃程度に加熱される。
【0034】
図3に示されるように、基板31の表面には第2非磁性下地層42bが成膜される。成膜にあたってCrターゲットは用いられる。Cr原子は基板31の表面に堆積する。Cr原子は基板31の表面で結晶粒を形成する。基板31は高温に維持されることから、こうして膜厚4.0nmの第2非磁性下地層42bは形成される。
【0035】
続いて、図4に示されるように、第2非磁性下地層42bの表面に第1非磁性下地層42aが成膜される。成膜にあたってCrMoターゲットが用いられる。CrMoターゲットには所定の含有量でMoが添加される。CrMoターゲットには例えば1[at%]以上のMoが含まれればよい。Cr原子およびMo原子はCr膜の表面に堆積する。こうして第2非磁性下地層42bの表面には膜厚2.0nmの第1非磁性下地層42aが形成される。第1非磁性下地層42aでは第2非磁性下地層42bの結晶粒に基づきエピタキシャル成長が確立される。
【0036】
続いて、図5に示されるように、第1非磁性下地層42aの表面には第3中間層41が成膜される。第3中間層41の成膜にあたってCoCrTaターゲットが用いられる。このとき、CoCrTaターゲットには7〜28[at%]のCrが含まれればよい。こうして、第1非磁性下地層42aの表面には膜厚2.0nmの第3中間層41が形成される。第3中間層41では第1非磁性下地層42aの結晶粒に基づきエピタキシャル成長が確立される。第3中間層41では0.4〜0.9[T]の範囲で飽和磁束密度Bsが確保されればよい。
【0037】
続いて、図6に示されるように、第3中間層41の表面には第2中間層39が成膜される。第2中間層39の成膜にあたってCoCrターゲットが用いられる。このとき、CoCrターゲットには29[at%]以上のCrが含まれればよい。こうして、第3中間層41の表面には膜厚1.5nmの第2中間層39が形成される。第2中間層39では第3中間層39の結晶粒に基づきエピタキシャル成長が確立される。第2中間層39では0〜0.4[T]の範囲で飽和磁束密度Bsが確保されればよい。
【0038】
続いて、図7に示されるように、第2中間層39の表面には第1中間層38が成膜される。第1中間層38の成膜にあたってCoCrPtBターゲットが用いられる。このとき、CoCrPtBターゲットには29[at%]以上のCrおよび15[at%]以上のPtが含まれればよい。こうして、第2中間層39の表面には膜厚2.0nmの第1中間層38が形成される。第1中間層38では第2中間層39の結晶粒に基づきエピタキシャル成長が確立される。第1中間層38では0〜0.1[T]の範囲で飽和磁束密度Bsが確保されればよい。
【0039】
続いて、図8に示されるように、第1中間層38の表面には記録磁性層37が成膜される。記録磁性層37の成膜にあたって用いられるCoCrPtBターゲットでは、第1中間層38の成膜にあたって用いられるCoCrPtBターゲットに比べてCrおよびPtの含有量[at%]は抑制される。このとき、CoCrPtBターゲットには6〜20[at%]の範囲でPtが含まれればよい。こうして、第1中間層38の表面には膜厚2.0nmの記録磁性層37が形成される。記録磁性層37では第1中間層38の結晶粒に基づきエピタキシャル成長が確立される。記録磁性層37では、第2および第1中間層39、38に基づきCrが拡散する。記録磁性層37では0.1〜0.8[T]の範囲で飽和磁束密度Bsが確保されればよい。
【0040】
次に、本発明者は磁気ディスク13の再生信号出力減衰率を検証した。検証にあたって前述の製造方法に基づき第1〜第3具体例は製造された。第1具体例では第1中間層38の膜厚は0.5nmに設定された。第2具体例では第1中間層38の膜厚は1.0nmに設定された。第3具体例では第1中間層38の膜厚は2.0nmに設定された。第1中間層38には、29[at%]のCr、17[at%]のPtおよび2[at%]のBが添加された。同様に本発明者は比較例を用意した。比較例では第1中間層は省略された。個々の具体例および比較例で第2中間層39の膜厚は1.5nmに設定された。第2中間層39には42[at%]のCrが添加された。400[kFCI]の線記録密度で磁気情報は書き込まれた。その後、特定の時間間隔で再生出力は測定された。こうしてS/Nt減衰率[%]は算出された。その結果、図9に示されるように、第1〜第3具体例では、比較例に比べて良好なS/Nt減衰率が得られることが確認された。第1中間層38によれば、記録磁性層37では磁化の劣化は十分に阻止されることが確認された。
【0041】
次に、本発明者は磁気ディスク13の孤立波S/N比(Siso/Nm)を検証した。検証にあたって前述の製造方法に基づき複数の第4具体例は製造された。個々の具体例では第1中間層38の膜厚は4.0nm以下の範囲で個別に設定された。第1中間層38には、29[at%]のCr、17[at%]のPtおよび2[at%]のBが添加された。同様に本発明者は比較例を用意した。比較例では第1中間層は省略された。個々の具体例および比較例で第2中間層39の膜厚は1.5nmに設定された。第2中間層39には42[at%]のCrが添加された。孤立波に基づき磁気情報は書き込まれた。こうして書き込まれた磁気情報に基づきS/N比は算出された。その結果、図10に示されるように、第1中間層38の膜厚が3.5nm以下に設定されると、比較例に比べて良好な孤立波S/N比が得られることが確認された。特に、第1中間層38の膜厚が0.5〜2.0nmの範囲に設定されると、特に良好な孤立波S/N比が得られることが確認された。
【0042】
次に、本発明者は磁気ディスク13の再生出力分解能を検証した。検証にあたって前述の製造方法に基づき複数の第5具体例は用意された。個々の具体例では第1中間層38の膜厚は4.0nm以下の範囲で個別に設定された。第1中間層38には、29[at%]のCr、17[at%]のPtおよび2[at%]のBが添加された。同様に本発明者は比較例を用意した。比較例では第1中間層は省略された。個々の具体例および比較例で第2中間層39の膜厚は1.5nmに設定された。第2中間層39には42[at%]のCrが添加された。385[kFCI]の線記録密度で磁気情報は書き込まれた。こうして書き込まれた磁気情報に基づき再生出力分解能は算出された。その結果、図11に示されるように、第1中間層38の膜厚が4.0nm以下の範囲に設定されると、比較例に比べて良好な再生出力分解能が得られることが確認された。特に、第1中間層38の膜厚が2.0〜3.5nmの範囲に設定されると、特に良好な再生出力分解能が得られることが確認された。
【0043】
次に、本発明者は、再生出力分解能と第1中間層38の飽和磁束密度Bsとの関係を検証した。検証にあたって前述の製造方法に基づき第6および第7具体例は製造された。第6具体例では第1中間層38に29[at%]の含有量でCrが添加された。第7具体例では第1中間層38に30[at%]の含有量でCrが添加された。第6および第7具体例では第1中間層38で異なる飽和磁束密度Bsは設定された。385[kFCI]の線記録密度で磁気情報は書き込まれた。こうして書き込まれた磁気情報に基づき再生出力分解能は算出された。その結果、図12に示されるように、第1中間層38の飽和磁束密度Bsが小さく設定されるほど良好な再生出力分解能が得られることが確認された。
【0044】
次に、本発明者は第1中間層38の飽和磁束密度BsとPtの含有量[at%]との関係を検証した。検証にあたって第1〜第3試料は用意された。第1〜第3試料では、下地層42の表面に膜厚50nmのCoCrPtB膜が単層で形成された。第1試料ではCoCrPtB膜に28[at%]の含有量でCrが添加された。第2試料ではCoCrPtB膜に29[at%]の含有量でCrが添加された。第3試料ではCoCrPtB膜に30[at%]の含有量でCrが添加された。ただし、個々の試料でBの含有量は2[at%]に設定された。個々の試料ではPtの含有量[at%]は15〜17[at%]の範囲で個別に設定された。飽和磁束密度Bsの測定にあたって室温でVSM(振動試料型磁力計)は用いられた。飽和磁束密度Bsは測定された。その結果、図13に示されるように、CoCrPtB膜でCrの含有量が増やされると小さな飽和磁束密度Bsが得られることが確認された。その一方で、Ptの含有量が増やされると小さな飽和磁束密度Bsが得られることが確認された。しかも、29[at%]以上のCrおよび15[at%]以上のPtが含まれると、CoCrPtB膜では0.1以下の飽和磁束密度Bsが得られることが確認された。
【0045】
(付記1) 少なくともCo、CrおよびPtを含む記録磁性層と、表面で記録磁性層を受け止め、少なくともCo、CrおよびPtを含む第1合金層と、表面で第1合金層を受け止め、少なくともCoおよびCrを含む第2合金層と、表面で第2合金層を受け止め、少なくともCoおよびCrを含む第3合金層とを備え、第1合金層には29[at%]以上のCrおよび15[at%]以上のPtが含まれ、第2合金層には29[at%]以上のCrが含まれ、第3合金層には7〜28[at%]のCrが含まれることを特徴とする磁気記録媒体。
【0046】
(付記2) 付記1に記載の磁気記録媒体において、前記第1合金層には前記記録磁性層よりも大きな含有量で非磁性材料が含まれることを特徴とする磁気記録媒体。
【0047】
(付記3) 付記2に記載の磁気記録媒体において、前記第1合金層には前記記録磁性層よりも大きな含有量でPtが含まれることを特徴とする磁気記録媒体。
【0048】
(付記4) 付記3に記載の磁気記録媒体において、前記第1合金層の飽和磁束密度は0〜0.1[T]の範囲で設定されることを特徴とする磁気記録媒体。
【0049】
(付記5) 付記4に記載の磁気記録媒体において、前記第3合金層には前記記録磁性層よりも小さい含有量で非磁性材料が含まれることを特徴とする磁気記録媒体。
【0050】
(付記6) 付記5に記載の磁気記録媒体において、前記第3合金層の飽和磁束密度は0.4〜0.9[T]の範囲で設定されることを特徴とする磁気記録媒体。
【0051】
(付記7) 付記6に記載の磁気記録媒体において、前記第2合金層には前記第3合金層よりも大きな含有量で非磁性材料が含まれることを特徴とする磁気記録媒体。
【0052】
(付記8) 付記1に記載の磁気記録媒体において、前記記録磁性層にはBがさらに含まれることを特徴とする磁気記録媒体。
【0053】
(付記9) 付記8に記載の磁気記録媒体において、前記第1合金層にはBがさらに含まれることを特徴とする磁気記録媒体。
【0054】
(付記10) 付記9に記載の磁気記録媒体において、前記第3合金層にはTaが含まれることを特徴とする磁気記録媒体。
【0055】
(付記11) 付記1〜10のいずれかに記載の磁気記録媒体において、表面で第3合金層を受け止め、Crに基づき構成される下地層をさらに備え、下地層には、Mo、Ta、Ti、WおよびVからなる群から選択される1種以上の原子が添加されることを特徴とする磁気記録媒体。
【0056】
(付記12) 付記1〜10のいずれかに記載の磁気記録媒体において、表面で第3合金層を受け止め、Crに基づき構成される第1下地層と、表面で第1下地層を受け止め、Crで構成される第2下地層とをさらに備え、第1下地層には、Mo、Ta、Ti、WおよびVからなる群から選択される1種以上の原子が添加されることを特徴とする磁気記録媒体。
【0057】
(付記13) 少なくともCo、CrおよびPtを含む記録磁性層と、表面で記録磁性層を受け止め、少なくともCo、CrおよびPtを含む熱安定化裏打ち層とを備え、熱安定化裏打ち層には記録磁性層よりも大きな含有量でPtが含まれることを特徴とする磁気記録媒体。
【0058】
(付記14) 付記13に記載の磁気記録媒体において、前記熱安定化裏打ち層には15[at%]以上のPtが含まれることを特徴とする磁気記録媒体。
【0059】
(付記15) 付記14に記載の磁気記録媒体において、前記熱安定化裏打ち層には前記記録磁性層よりも大きな含有量で非磁性材料が含まれることを特徴とする磁気記録媒体。
【0060】
(付記16) 付記15に記載の磁気記録媒体において、前記熱安定化裏打ち層の飽和磁束密度は0〜0.1[T]の範囲で設定されることを特徴とする磁気記録媒体。
【0061】
(付記17) 付記16に記載の磁気記録媒体において、前記熱安定化裏打ち層には前記記録磁性層よりも大きな含有量でCrが含まれることを特徴とする磁気記録媒体。
【0062】
(付記18) 付記17に記載の磁気記録媒体において、前記記録磁性層にはBおよびTaの少なくともいずれか一方がさらに含まれることを特徴とする磁気記録媒体。
【0063】
(付記19) 付記18に記載の磁気記録媒体において、前記熱安定化裏打ち層にはBおよびTaの少なくともいずれか一方がさらに含まれることを特徴とする磁気記録媒体。
【0064】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、過度に磁気異方性を高めることなくできる限り長期間にわたって磁化の劣化を抑制することができる磁気記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気記録媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】本発明に係る磁気ディスクの構造を詳細に示す拡大垂直断面図である。
【図3】第2下地層の成膜工程を概略的に示す基板の垂直部分断面図である。
【図4】第1下地層の成膜工程を概略的に示す基板の垂直部分断面図である。
【図5】第3中間層の成膜工程を概略的に示す基板の垂直部分断面図である。
【図6】第2中間層の成膜工程を概略的に示す基板の垂直部分断面図である。
【図7】第1中間層の成膜工程を概略的に示す基板の垂直部分断面図である。
【図8】記録磁性層の成膜工程を概略的に示す基板の垂直部分断面図である。
【図9】第1中間層の膜厚とS/Nmとの関係を示すグラフである。
【図10】第1中間層の膜厚と再生出力分解能との関係を示すグラフである。
【図11】記録磁性層のS/Nt減衰率を示すグラフである。
【図12】第1中間層の飽和磁束密度と再生出力分解能との関係を示すグラフである。
【図13】CoCrPtB膜に含まれるPtの含有量と飽和磁束密度Bsとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
13 磁気記録媒体(磁気ディスク)、31 基板、37 記録磁性層、38第1合金層および熱安定化裏打ち層(第1中間層)、39 第2合金層(第2中間層)、41 第3合金層(第3中間層)、42 下地層。

Claims (5)

  1. 少なくともCo、CrおよびPtを含む記録磁性層と、表面で記録磁性層を受け止め、少なくともCo、CrおよびPtを含む第1合金層と、表面で第1合金層を受け止め、少なくともCoおよびCrを含む第2合金層と、表面で第2合金層を受け止め、少なくともCoおよびCrを含む第3合金層とを備え、第1合金層には29[at%]以上のCrおよび15[at%]以上のPtが含まれ、第2合金層には29[at%]以上のCrが含まれ、第3合金層には7〜28[at%]のCrが含まれることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 請求項1に記載の磁気記録媒体において、前記第1合金層には前記記録磁性層よりも大きな含有量で非磁性材料が含まれることを特徴とする磁気記録媒体。
  3. 請求項2に記載の磁気記録媒体において、前記第1合金層の飽和磁束密度は0〜0.1[T]の範囲で設定されることを特徴とする磁気記録媒体。
  4. 少なくともCo、CrおよびPtを含む記録磁性層と、表面で記録磁性層を受け止め、少なくともCo、CrおよびPtを含む熱安定化裏打ち層とを備え、熱安定化裏打ち層には記録磁性層よりも大きな含有量でPtが含まれることを特徴とする磁気記録媒体。
  5. 請求項4に記載の磁気記録媒体において、前記熱安定化裏打ち層には15[at%]以上のPtが含まれることを特徴とする磁気記録媒体。
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