JP2004334421A - シーケンサ、自動診断装置、シーケンスプログラム及び記録媒体 - Google Patents

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倫道 内田
Takao Kokubu
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Abstract

【課題】シーケンス制御対象機械の動作履歴情報を全て記録し、その機能低下や故障の箇所及び原因を迅速かつ容易に解明する。
【解決手段】シーケンサ100において、制御対象となる個々の機械の動作履歴情報を0.1秒刻みで全て所定のフォーマットでリングメモリ150に記録保存する。記録用PC160を用いて前記保存した動作履歴情報を読み出し保存し、かつ解析用PC162を用いて機械の履歴データを復元解析し、機能低下や故障箇所及びその原因を解明する。また、例えば、当該機械の普段の動作サイクル毎の動作時間情報を基準値書き込みエリア158に格納しておき、これと当該機械の現在の動作サイクルにおける動作時間とから当該機械の「いつもと違う」状態を判別する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、制御対象の動作又は動作の状態を表す情報のうち記録すべき情報(データ)を全て動作履歴情報として保存するシーケンサ、シーケンサと共に用いられる情報処理装置、前記履歴情報に基づき故障の診断を行う自動診断装置、シーケンサのコンピュータに所定の処理の手順を実行させるさせるためのシーケンスプログラム、及び前記シーケンスプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、機械のシーケンス制御への要求は、ますます高度かつ複雑なものとなり、入出力点数から見た規模も数十点から数千点まで自由な構成が可能になってきている。このように、シーケンス制御を行なうシーケンサ自体は、驚くほど進歩し、多様となり、信頼性も向上している。
しかし、その一方で、高度で複雑なシーケンス制御になればなるほど、それを維持管理する保全員の負担は大きくなり、また一旦故障が発生した場合の対応方法も簡単ではなく、その結果高価な機械が数時間以上停止してしまうことが珍しくなくなってきている。
【0003】
ところで、一般に機械の故障は、「機能低下型」と「機能停止型」の2種類に分けられるが、前者は「機械はまだ動作していながらもその能力が正常状態に比べて損なわれてきている状況」、後者は「ある部分の機能が停止或いは故障してしまって機械が動かなくなってしまった状況」で、機械の一時停止等もそれに含まれる。
機械の稼働率が著しく低下するのは後者であり、本来機械の運転効率アップのために導入したシーケンス制御が複雑になりすぎたことで、逆に機械の稼働率を下げることは本末転倒であり、何とか「機能低下」状態の間に故障に対応できるようにする必要がある。
しかしながら、簡単な機械であれば熟練した保全員が機械の状態を五感で察知して対応できるが、現在のシーケンス制御される自動機械では、そういう対応は殆ど不可能である。
【0004】
そこで、単なる機械制御機能を超えた機能を備えたシーケンサの情報処理機能を活用することが考えられるが、従来のシーケンス制御におけるシーケンスソフトウェアは主として制御中心であり、データなどの情報も制御に使用するだけがほとんどであった。また、機械の動作や温度、圧力、湿度、電圧等のその動作やその動作の状態を表す情報を示すデータは厖大であるため、それを全て記録しかつ保存することはコストがかかり、それをシーケンサにおいて実施することは実際上は不可能である。そのため、機械の動作や動作の状態を表す情報を示す動作環境等の様々なデータは、大部分が記録することなく失われており、後から過去の状態を知ることはできなかった。
また、情報を記録する試みも行われることはあったが、この手法は標準化されていないだけでなく、情報記録も制御シーケンスに依存していたため、担当者の交代や制御シーケンスの変更などで、記録機能が失われる状況であった。
【0005】
例えば、特許文献1に示した本出願人の出願に係る診断装置では、アクチュエータの動作状態を診断モニタからの診断信号に基づいてその適否を判断するため、診断信号を2値信号とし、アクチュエータの各動作状態をパルス幅又は動作時間に対応させ、カウンタを用いて診断信号の反転時期、具体的にはアクチュエータの位置センサの反転時期のカウント値からパルス幅又は動作時間を得、記憶されている動作状態の最適パルス幅又はプログラム上の動作時間と実際のパルス幅又は動作時間との比較により故障の有無を検知している。
この診断装置では、確かにアクチュエータの動作状態からその故障の有無が自動的に判断できるが、アクチュエータの動作履歴については保存していないため、例えば、機能低下状態でアクチュエータが動作をし続けた場合に、後になってその故障の状態を知ろうとしても動作履歴は残されておらずその原因解明は不可能である。
【0006】
また、別の従来技術(特許文献2参照)では、シーケンサの制御対象の設備機器のトラブル復旧を容易に行えかつ復旧時間の短縮が図れるように、設備診断装置を検知手段と、原因追跡手段と、モニタとからなる表示手段によって構成し、この設備制御用シーケンサがロボット等の設備機器との間で制御用の出力信号と入力信号との授受を行い、設備機器において異常が発生した時に、該設備制御シーケンサが異常発生を示す信号を設備診断装置に与えるようにしたものが知られている。
この設備診断装置の検知手段は、異常発生を示す検知手段からの検知信号をトリガとして、記憶手段に格納されたラダープログラムとその動作状態を示す接点情報から原因追跡プログラム(アルゴリズム)に基づいて、つまり、ラダープログラムを前のステップに戻って行くように追跡して、更に内部リレー接点がある場合にはその内部リレーコイルを追跡する処理を繰り返して原因追跡と不具合接点の診断を行っている。
【0007】
この設備診断装置では、実際に異常が発生して設備の機能が停止した状態における異常発生部位の自動診断を行うことはできるが、設備の状態がいつもと違う状態つまり機能低下状態であることを人間に知らせ、その間に故障に対応することは出来ないから、結局設備(機械)停止の頻度を下げることはできない。
【0008】
また、従来、シーケンサに情報(動作履歴やデータの値)を記録する作業をシーケンスソフトウェアを用いて標準化して行うものは存在していない。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−287823号公報
【特許文献2】
特開2001−67122号公報(段落番号「0051」〜「0072」)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、シーケンサの制御対象である機械の動作又は動作の状態を表す情報を検知するタイミング情報を含む動作又は動作の状態を表す情報(単に動作履歴情報という)のうち必要なものを全て記録し保存することである。
ここで、制御対象の動作を表す情報とは、その動作の開始、終了、変更等の動作の変化を表す情報をいい、かつ、同動作の状態を表す情報とは、接点入出力の状態、内部コイル・レジスタの状態、動作温度、湿度、圧力、電流、電圧等の動作状態を表す情報(データ)をいう。
第2の目的は、シーケンサの情報処理能力を活用し、機械の異常状態を自分で感知し、「いつもと違う」といった機能低下情報を知らせることで機械停止を伴う重大な故障の予知を可能にし、それによって機械が故障で止まってしまう前に何らかのアクションを採れるようにすることである。
第3の目的は、重大な故障の予知の兆候を見逃し仮に機械が故障停止しても、動作履歴情報を復元することで、故障部位、原因を早期に特定して復旧時間を短縮することである。
第4の目的は、シーケンサの制御対象機械の細部にわたる動作の管理を前記履歴情報に基づき厳密に行なうことである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、シーケンサの制御対象の動作又は動作の状態を表す情報を検知する手段、前記動作又は動作の状態を表す情報の検知のタイミングを計測する手段、前記検知した動作又は動作の状態を表す情報を前記計測した前記タイミング情報に関連付けて記憶する手段を備えたことを特徴とするシーケンサである。
請求項2の発明は、請求項1に記載されたシーケンサにおいて、前記タイミング計測手段は所定の時間単位までの計測を行う第1のタイミング計測手段と、それよりも小さな時間単位でのみ計測を行う第2のタイミング計測手段とからなり、かつ前記記憶する手段は前記各計測手段毎にタイミング情報を記憶するとともに、前記制御対象の動作又は動作の状態を表す情報に前記第2の計測手段で計測したタイミング情報を関連付けて記憶することを特徴とするシーケンサである。
請求項3の発明は、請求項2において、前記第2の計測手段の計測時間単位は0.1秒以下であることを特徴とするシーケンサである。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載されたシーケンサにおいて、前記制御対象の動作時間又は所定のタイミングにおける動作の状態を表す情報と、予め設定された当該制御対象の標準動作時間又は前記所定のタイミングにおける標準となる動作の状態を表す情報とを比較する手段、前記両動作時間又は動作の状態を表す情報の差が所定範囲を越えたことを判別する手段を備えたことを特徴とするシーケンサである。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載されたシーケンサにおいて、前記記憶する手段はリングメモリであることを特徴とするシーケンサである。
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載された前記シーケンサの制御対象の動作又は動作の状態を表す情報をタイミング情報と共にシーケンサから読み出して記憶する手段、該記憶した情報に基づき当該制御対象の動作制御に関する情報を復元しかつ解析する手段を備えた情報処理装置である。
請求項7の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載されたシーケンサと請求項5に記載された情報処理装置とからなる自動診断装置である。
請求項8の発明は、シーケンサに内蔵されたコンピュータに、シーケンサの制御対象の動作又は動作の状態を表す情報を検知する手順、前記動作又は動作の状態を表す情報の検知のタイミングを計測する手順、前記検知した動作又は動作の状態を表す情報を前記計測した前記タイミング情報に関連付けて記憶する手順、を実行させるためのシーケンスプログラムである。
請求項9の発明は、シーケンサに内蔵されたコンピュータに、シーケンサの制御対象の動作のタイミング情報から該制御対象の動作時間を演算する手順又は計測された該動作時間を読み込む手順、該制御対象の動作時間又は所定のタイミングにおける動作の状態を表す情報と、予め設定された該制御対象の標準動作時間又は前記タイミングにおける標準となる動作の状態を表す情報とを比較する手順、前記両動作時間又は動作を表す情報の差が所定範囲を越えたことを判別する手順を実行させるためのシーケンスプログラムである。
請求項10の発明は、請求項7又は8に記載されたシーケンスプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0012】
本発明は以上のように、制御対象の動作履歴情報のうち記録を必要とする全てのデータを生データのまま記録して保存することができるため、例えば、シーケンサでリアルタイムで得られる生データを演算して得た、或いは直接カウントした当該機械の所定のサイクルにおける動作時間情報とシーケンサ中に予め保存された正常時における機械の同一サイクルでの動作時間データとから、或いは所定のタイミングにおける動作の状態を表す情報と同一のタイミングにおける正常時での動作の状態を表す情報から機械の停止に至らない機能低下状態つまり「いつもと違う」といった情報を判別して人間に知らせることができる。そのため、機械が故障で停止する前の状態において何らかの措置を講じることができる。
【0013】
また、履歴情報に0.1秒以下、例えば0.1秒刻みの極めて短時間における動作の変化のタイミング或いは例えば任意に行う動作の状態を表す情報の検知のタイミングを記録することができるから、シーケンス制御の対象機械の細部にわたる動作の管理を前記履歴情報に基づき厳密に行なうことができる。つまり、成型機や加硫機など同じ型式の機械をトップ合わせで管理できる他、故障等で機械部品を交換した際にも、交換前の動作タイミングや動作の状態と交換後の動作タイミングや動作の状態を前記履歴情報に基づき同一に調整でき、その結果、1サイクルタイムのトップ合わせを行うことで、品質上重要な加工動作の状態を停止前の状態に容易に維持することができる。
【0014】
更に、故障部位、原因の早期特定が可能である。つまり、機械の1サイクルの詳細なタイミング情報を例えば0.1秒刻み等のごく短い時間間隔で記録するため、故障や災害などの異常に至る直前の機械の動きを忠実に復元して解析でき、そのため、故障の予知の兆候を見逃し仮に機械が故障停止しても、停止直前の動作履歴情報に残った故障状態を復元することで、故障部位、故障原因を早期に特定することができる。
本発明に係るシーケンスプログラムは周知の記録媒体に記録して容易に提供することができ、またこのシーケンスプログラムをシーケンサに組み込まれたコンピュータにダウンロードすることで、シーケンサにおいて動作履歴情報の記録保存や故障の自動診断等を容易に実施することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のシーケンサ等について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明のシーケンサを用いた履歴情報利用の1実施形態として、診断装置を概略的に示すブロック図である。
この診断装置は、図示のようにシーケンサ100と記録用PC160及び解析用PC162とからなっており、以下に示す3つの基本機能を備えている。
(1)一つ一つのアクチュエータが動作したタイミングを記録する機能、
(2)そのアクチュエータの動作時間を算出する機能、
(3)その時間が「いつもと違う」かどうかを判断する機能。
これらの基本機能のうちシーケンサ100は「タイミングの記録」の全て、及び「動作時聞の算出」又は動作時間の計測、と、アクチュエータの最新動作1回分についてその動作状態がいつもと違うかどうかの「判別(判断)」を行い、アクチュエータの履歴データの解析、復元或いは故障箇所の検知等は解析用PC162が行う。
【0016】
シーケンサ100は、シーケンス情報作成部100Aとシーケンサ100のメモリの一部を割り当てたリングメモリ150を含み、シーケンス情報作成部100Aは、共通情報作成部110と制御対象情報作成部140とからなっている。
共通情報作成部110には時計111が設けられており、時計111はシーケンサに装備されている「年」から「分」までの日時及び時刻を計測可能なシーケンサ時計111aと、別途定義された0.1秒時計111bとからなっている。
ここで、シーケンサ時計111aによって計測された時計情報はレジスタ130に2ワードで1組の情報として所定のフォーマットで記憶される。
即ち、図示の例では1ワード目の最初に時間情報であることを表す1が書き込まれ、続いて2002年を表す2が、さらに月を表す9が書き込まれる。また、他の1ワードには最初に日を表す14が、続いて時間を表す8が、更に分を表す54がそれぞれ所定のビット数で書き込まれており、これによってアクチュエータのイベント発生時点(例えば動作開始又は終了時点)、2002年9月14日8時54分が記録されリングメモリ150に記憶される。
【0017】
0.1秒時計111bは、自動診断標準回路142により、例えばアクチュエータの動作を定義するラダー図141に従って、制御されるコイルM6050の動作の開始と停止の瞬間を0.1秒刻みの各時刻で記録するのに用いられる。コイル情報144はこれも所定のフォーマットでレジスタに2ワードで1組の情報として記憶される。即ち、図示の例では、内部コイルが立ち上がりでONとなることを表す識別情報、次に31.1秒を表す311がそれぞれ所定のビット数で記載され、他の1ワードには16ビットでコイル番号を表す6050が書き込まれる。このように、レジスタにはコイルM6050が31.1秒にONされたことが書き込まれる。
【0018】
レジスタに書き込まれた情報はポインタZ10の動きに従ってリングメモリ150に書き込まれる。ここでリングメモリ150には定期的にシーケンサ時計の時間情報、ここでは2002年9月14日8時54分を表す時間情報が書き込まれているので、この情報とコイルM6050が31.1秒にONされた情報とから、コイルM6050が2002年9月14日8時54分31.1秒にONされたことが分かる。このように時間データを分割することによりシーケンサ時計の使用を制限してシーケンサへの処理負担を軽減し、同時にリングメモリ150の記憶領域の節約を図っている。
【0019】
リングメモリ150に格納された情報(データ)は、シーケンサ100に接続された記録用PC(Personal Computer)160の記憶手段(図示せず)に書き込まれる。即ち、記録用PC160では、リングメモリ150からポインタZ10の動きに従って、時系列で格納された動作履歴情報を読み出し、そのデータ(生データ)を例えば自身のRAM(図示せず)に記録する。
記録用PC160に書き込まれたアクチュエータの動作履歴情報は、同PC160に例えばネットワークを介して接続された解析用PC162が必要に応じて読み出し、読み出した履歴情報に基づき前記シーケンサーの制御対象の動作履歴情報を復元及び解析する。また、これに基づき後述する故障の予知、故障部位の特定、及び設備管理を行うことができる。
【0020】
図2は、以上で説明したデータの流れを概略的に説明するブロック図である。個々のアクチュエータの動作履歴情報155は、制御対象情報作成部140でプログラミングして記録される。それぞれ2ワードで表された動作タイミング情報155a、ダミー情報155b、コイル情報155c、イベント情報155dと、4ワードで表されたレジスタ情報155eからなっている。これらの各情報は前述のようにポインタZ10の動きに従って、前記リングメモリ150に格納される。
【0021】
リングメモリ150は、図2に示すように所定ワード数で動作履歴155を記録する。
図中、シーケンサ100の基準値書き込みエリア158には、自動診断の対象となるアクチュエータなどの制御対象要素1個につき、例えば所定ワード数の記録領域が配置されており、そこに、アクチュエータの動作タイミング情報から得るか、又はリングメモリに格納したタイミング情報とは別にシーケンサが備えた、アクチュエータの動作時間を直接カウントするレジスタで得たアクチュエータの動作時間や所定のタイミングにおける動作の状態を表す情報(データ)の基準値、上限値、下限値、現在値及び空領域を割り当てている。基準値等には当該アクチュエータの所定時間(例えば1日或いは数日等)毎の各サイクル毎の動作時間平均値、或いは動作の状態を表す情報(データ)の平均値等が書き込まれており、動作時間の基準値と例えば現在の動作タイミング情報を演算するなどして得た動作時間とを対比する、或いは現在の動作の状態を表す情報(データ)と前記基準値等とを対比することで、現在の動作が「いつもと違う」か、つまり故障か否かの判断が行えるようになっている。
【0022】
図3は、時間情報を記述するためのデータフォーマットの一例を示す図である。ここで、時間情報は、既に述べたように、シーケンサ100に内蔵された時計に従ってリングメモリ150に2ワード1組で1つの情報として2ワードまとめて記録される。即ち、その構造は図示のとおり1ワード目に時間を表す識別情報(1又はF)が、続いて0〜99年、1〜12月が記録され、2ワード目には1から31日、続いて0〜23時、更に、0〜59分が記録される。
【0023】
ところで、メモリにデータを記録する際に、何らかの理由で単に意味のないデータ(ダミー情報)を書き込みたい場合がある。そこで、図4は、このダミー情報を記述するためのデータフォーマットの一例を示す図である。ダミー情報は、リングメモリ150に2ワード1組で1つの情報として2ワードまとめて記録される。その構造は図示のとおり1ワード目は、ダミー情報であることを表す識別情報(E)と本シーケンサで提示された0.1秒時計情報が記録され、かつ2ワード目は固定値が記録される。
【0024】
図5は、コイル情報を記述するためのデータフォーマットの一例を示す図である。コイル情報は、リングメモリ150に2ワード1組で1つの情報として2ワードまとめて記録され、その構造は図示のとおり1ワード目に情報を表す識別情報(2〜7)が、続いて0.1秒時計が記録され、かつ2ワード目にはコイル番号が記録されている。
【0025】
図6は、イベント情報を記述するためのシングルワードレジスタのデータフォーマットの一例を示す図である。イベント情報は、リングメモリ150に2ワード1組で1つの情報として2ワードまとめて記録され、その構造は図示のとおり、1ワード目にはイベント情報であることを表す識別情報(8又は9)が、続いて0.1秒時計値が記録され、かつ2ワード目にはコイル番号が記録される。
【0026】
図7は、レジスタ情報を記述するためのシングルワードレジスタのデータフォーマットの一例を示す図である。レジスタ情報は、リングメモリに4ワード1組で1つの情報として4ワードまとめて記録され、その構造は図示のとおり、1ワード目にはシングルワードレジスタ情報であることを表す識別情報(A)が、続いて0.1秒時計が記録され、かつ2ワード目にはレジスタ番号が、3ワード目には0が、更に、4ワード目にレジスタの数値(シングルワードレジスタの内容)が記録される。
【0027】
図8は、ダブルワードレジスタにおけるレジスタ情報を記述するための他のデータフォーマットの一例を示す図である。ダブルワードレジスタの内容を記録するときのその構造は、図に示すように、1ワード目にダブルワードのレジスタ情報であることを表す識別情報(B)を記録し、かつ、シングルワードにおける3ワード目にもレジスタ内の数値を書き込む。つまり、ダブルワードレジスタの数値を3及び4ワード目に書き込む。
【0028】
次に、以上で述べた識別コードについて説明する。
図9は10進数で表した識別コードを一覧にして示した図である。
即ち、識別コードの0は使用禁止を表し、1は時間情報、2〜7はコイル情報、8,9はイベント情報、A,Bはレジスタ情報、Eはダミー情報、Fは時間情報を表している。
但し、時間情報1は傾向チェック運用がOKであることを、またFは傾向運用チェックがNGであることを表し、コイル情報のうち、2,3は出力コイルで2は立ち上がり(OFF−ON)を、3はたち下がり(ON−OFF)を、同4,5は入力コイルで、4は立ち上がり(OFF−ON)を、5はたち下がり(ON−OFF)を、6,7は内部コイルで、6は立ち上がり(OFF−ON)を、7はたち下がり(ON−OFF)をそれぞれ表している。
【0029】
内部コイルで受けるイベント情報を表す識別情報8,9のうち、8は立ち上がり(OFF−ON)を、9はたち下がり(ON−OFF)をそれぞれ表している。
【0030】
レジスタ情報を表す識別情報A,Bのうち、Aはシングルワード(16ビットをまたBはダブルワード(32ビット)を表している。
【0031】
実際に自動診断を行うためには、シーケンサ100のメンテナンスポート、シリアルポート、ネットワークポートなどを用いて記録用PC160を接続する。記録用PC160の操作により、ポインタZ10の動きに合わせてリングメモリ150から個々のアクチュエータ等の制御対象要素の動作履歴情報を順に読み出して記録し、また、基準値書込エリア158に記録された各情報を例えば1日に1回呼び出して記録(保存)する。なお、逆に記録用PC160に記録された前記各情報を基準値書込エリア158に書き込むこともできる。
【0032】
記録用PC160に記録された前記制御対象要素の前記各情報は、記録用PC160と例えばネットワークを介するなどして適宜接続された解析用PC162で読み出し可能である。解析用PC162は、例えば故障が発生したときに必要な情報(データ)を読み出し、搭載した解析プログラムを用いて解析することで前記動作履歴情報から故障部位や原因を特定することができる。
【0033】
図10は本発明のシーケンサによる自動診断処理手順を説明するためのフロー図である。
シーケンサによる制御対象要素を自動診断する処理は、まず、シーケンサの持つアクチュエータの動作履歴情報を所定フォーマットにより作成し(S101)、該作成した動作履歴情報をポインターに従ってリングメモリの所定位置に格納する(S102)。更に、必要に応じて当該アクチュエータの動作時間をカウントするレジスタで直接カウントし(S103)、前記格納されたアクチュエータの動作履歴情報のうち動作のタイミング情報から得た当該アクチュエータの動作時間或いは動作時間カウント用レジスタに格納されるタイミング情報、又は前記履歴情報の任意のタイミングにおける動作の状態を表す情報が、別途基準値書き込みエリアに格納された当該アクチュエータの動作時間又は動作の状態を表す情報の基準値と対比され、当該アクチュエータが機能低下状態、つまり「いつもと違う」状態にあるかどうか判別される(S104)。ここでその動作時間又は動作の状態を表す情報が「いつもと違う」と判別されたときは(S104,YES)、その旨の信号を出力し(S105)、例えば、記録用PC又は解析用PCの表示手段に表示するなどして、保全員に「いつもと違う」状態にあることを知らせる。勿論その状態をシーケンサ100で表示することもできる。
【0034】
記録用PC160は図11に示すように、当該アクチュエータの基準値データを基準値書き込みエリアから例えば1日に1回読み出して、それ自身の記憶手段に格納(記憶)し、或いは逆に格納されている基準値データを基準値書き込みエリアに書き込み(S201)、シーケンサのリングメモリ150に格納されたアクチュエータの動作履歴情報をポインタの動きに従って読み出して自身のメモリに格納する(S202)処理を行う。
【0035】
解析用PC162は図12に示すように、シーケンサの自動診断装置の例えば「いつもと違う」ことを表す信号を受けるか、或いは記録用PC160から読み出した前記基準データに基き「いつもと違う」ことを自身で判断して(S301)、記録用PC160に格納された当該アクチュエータの動作履歴情報を前記記録用PC160の記憶手段から読み出し(S302)、その動作履歴情報から原データを復元しかつ解析プログラムに従って解析し(S303)、機能低下の位置と原因を判別する(S304)。
【0036】
本発明の上述の診断機能は、シーケンサ100と前記PC160,162を組み合わせることで実現する。つまり、シーケンサ100はアクチュエータの動作タイミング記録手段と、アクチュエータの動作時間を演算する手段又は動作時間カウント用レジスタの動作時間を読み出す手段と、いつもと違うか否かの判断をアクチュエータの最新動作1回分について行う判別手段とを備え、更に、該判別手段が「いつもと違う」ことを判別したときには、解析用PC162に対しその旨を伝えるか、或いは解析用PC162自身が記録用PC160から読み出した前記基準データに基き「いつもと違う」ことを自身で判断し、記録PC160に記録されている当該アクチュエータの履歴情報を読み出して解析及びデータの復元を行い、その機能低下の原因がどこにあるか診断しその結果を表示することができる。
なお、アクチュエータの機能低下を任意の手段で保全員に知らせる等して、保全員が解析用PC162を操作することもできる。
【0037】
本発明の制御対象であるアクチュエータの動作履歴情報の記録・保存、同アクチュエータの動作の例えば「いつもと違う」ことの判別処理は、シーケンサに組み込まれたコンピュータに前記シーケンスプログラムをダウンロードすることで実行することができる。即ち、前記シーケンスプログラムにより、アクチュエータの動作を表す情報や任意に行う動作の状態を表す情報を検知し、かつその検知のタイミングを各アクチュエータ毎に前記動作又は動作の状態を表す情報と共に所定のフォーマットで記録して動作履歴情報を作成し、該動作履歴情報を所定のフォーマットでリングメモリに記録し、さらに、前記タイミングからアクチュエータの動作時間を演算するか又は動作時間カウント用レジスタの動作時間を読み出し、或いは所定のタイミングにおける動作の状態を表す情報を読み出し、当該アクチュエータの動作時間或いは前記所定のタイミングにおける動作の状態を表す情報と、記憶された当該アクチュエータについての基準データ(つまりいつもの動作時間データ又は動作の状態を表す情報)とを比較して、その時間又は動作の状態を表す情報が「いつもと違う」かどうかを判定し、さらに、「いつもと違う」と判定されたときにその旨の情報を出力する手順を実行することができる。
【0038】
シーケンサ100のコンピュータにおいて、制御対象(前記アクチュエータ)の動作履歴情報の記録・保存及びその動作や動作の状態を表す情報の「いつもと違う」状態の判別処理を実行するためのシーケンスプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、MO等の周知のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録することで、ユーザに容易に提供することができる。
【0039】
以上説明したように、本発明の実施形態では、
(1)シーケンサが持つ動作履歴情報をダミーを含む5つに分類し、それぞれの情報について所定のフォーマットを定め、かつシーケンサのメーカー・型式を問わず本発明を実施できるよう、基本的なラダー回路で記述したシーケンスプログラムに基づき個々のアクチュエータの動作に関する情報を収集して前記フォーマットに基づき定めた記憶データを各アクチュエータ毎に作成し、
(2)前記情報を表すヘッダ(識別コード)を定義し、
(3)シーケンサの時計に加えて、0.1秒時計を定義し、記録分解能を0.1秒まで細分化し、
(4)記録領域としてシーケンサのメモリを割り当ててリングメモリとし、そこへのアクチュエータの履歴情報の記録方法を一律に規定し、
(5)コンパクトな標準回路でタイマー使用を最小限に設計することでシーケンサに与える処理負荷を小さくしている。
【0040】
なお、以上の説明ではPCを記録用PCと解析用PCとに分けて説明したが、これらのPCは同一のものであってもよく、また、PCはシーケンサからの「いつもと違う」ことを告知する信号を受けるか、又は「いつもと違う」ことを自分で判断することで自動的に履歴データの解析を行い、解析結果を表示するようにしてもよい。更に、シーケンサ内に設けた記憶手段は必ずしもリングメモリに限ることはなく、容量の大きなメモリが配置可能であれば記録用PCは必ずしも必要ではない。その場合はシーケンサと解析用PCを直結してシステムを構成することもできる。更に、シーケンサ内蔵のコンピュータの性能に余裕があれば、解析用PCを前記コンピュータで代替することも可能である。
【0041】
【発明の効果】
請求項1、8に対応する効果: シーケンサの制御対象の動作履歴情報を全て記憶することができるため、その情報を利用して、故障の予知や故障原因の解明、部品交換後の調整等を正確に行うことができるとともに、機械を常に同一の状態に維持できるなどの効果が得られる。
請求項2に対応する効果: 動作履歴情報作成時における前記タイミング計測手段を、所定の時間単位、例えば分までの時間を計測するタイミング計測手段と、秒以下の時間を計測するタイミング計測手段とで構成することにより、分までの計測と秒以下の計測とを独立して行いかつそれぞれ別個に記録することにより、全体としてタイミング計測手段の使用によるシーケンサへの処理負担を軽減し、かつ、記憶手段において必要な記憶容量を低減することができる。
請求項3に対応する効果: シーケンサへの処理負担を軽減しつつ、0.1秒の時間間隔で制御対象の動作履歴情報が記録保存できるから、シーケンス制御対象の細部にわたる動作の管理を前記履歴情報に基づき厳密に行なうことができる。
請求項4、9に対応する効果: 本発明の自動診断装置では、故障の予知が可能である。つまり、「いつもと違う」といった情報を人間に知らせることで、機械が故障で停止する前に何らかの措置を講じることができるため、生産性、品質維持管理、安全の面で従来のシーケンス制御に比べその質を格段に向上させることができる。
請求項5に対応する効果: シーケンサに大容量の記憶装置を設けなくとも、外部記憶手段に内容を適宜移すことで制御対象の記録しようと意図する動作履歴情報を全て完全に記憶することができる。
請求項6、7に対応する効果: 故障部位・原因の早期特定が可能である。つまり、機械1サイクルの詳細なタイミング情報を0.1秒刻みで記録しているため故障や災害などの異常に至る直前の機械の動きや状態を忠実に解析できるため、故障の予知の兆候を見逃し仮に機械が故障停止しても、停止直前の「いつもと違う」情報が履歴情報として残っているため、その情報を復元することで、故障部位・故障原因の早期特定ができ、結果として復旧時間を短縮することができる。
請求項10に対応する効果: シーケンスプログラムを容易に提供し得るとともに、シーケンサに組み込まれたコンピュータにおいて自動診断を容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動診断システムの1実施形態を示すブロック図である。
【図2】自動診断システムにおけるデータの流れを説明するためのブロック図である。
【図3】時間情報を記述するためのデータフォーマットの一例を示す図である。
【図4】ダミー情報を記述するためのデータフォーマットの一例を示す図である。
【図5】コイル情報を記述するためのデータフォーマットの一例を示す図である。
【図6】イベント情報を記述するためのデータフォーマットの一例を示す図である。
【図7】シングルワードレジスタ情報を記述するためのデータフォーマットの一例を示す図である。
【図8】ダブルワードレジスタ情報を記述するためのデータフォーマットの一例を示す図である。
【図9】履歴情報における各識別コードを説明するための図である。
【図10】シーケンサにおける自動診断処理手順を説明するためのフロー図である。
【図11】記録用PCの処理手順を説明するためのフロー図である。
【図12】解析用PCの処理手順を説明するためのフロー図である。
【符号の説明】
100・・・シーケンサ、140・・・制御対象情報作成部、144・・・コイル情報(表示例)、150・・・リングメモリ、160・・・記録用PC、162・・・解析用PC。

Claims (10)

  1. シーケンサの制御対象の動作又は動作の状態を表す情報を検知する手段、
    前記動作又は動作の状態を表す情報の検知のタイミングを計測する手段、
    前記検知した動作又は動作の状態を表す情報を前記計測した前記タイミング情報に関連付けて記憶する手段、
    を備えたことを特徴とするシーケンサ。
  2. 請求項1に記載されたシーケンサにおいて、
    前記タイミング計測手段は所定の時間単位までの計測を行う第1のタイミング計測手段と、それよりも小さな時間単位でのみ計測を行う第2のタイミング計測手段とからなり、かつ前記記憶する手段は前記各計測手段毎にタイミング情報を記憶するとともに、前記制御対象の動作又は動作の状態を表す情報に前記第2の計測手段で計測したタイミング情報を関連付けて記憶することを特徴とするシーケンサ。
  3. 請求項2において、前記第2の計測手段の計測時間単位は0.1秒以下であることを特徴とするシーケンサ。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載されたシーケンサにおいて、
    前記制御対象の動作時間又は所定のタイミングにおける動作の状態を表す情報と、予め設定された当該制御対象の標準動作時間又は前記所定のタイミングにおける標準となる動作の状態を表す情報とを比較する手段、前記両動作時間又は動作の状態を表す情報の差が所定範囲を越えたことを判別する手段を備えたことを特徴とするシーケンサ。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載されたシーケンサにおいて、
    前記記憶する手段はリングメモリであることを特徴とするシーケンサ。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載された前記シーケンサの制御対象の動作又は動作の状態を表す情報をタイミング情報と共にシーケンサから読み出して記憶する手段、該記憶した情報に基づき当該制御対象の動作制御に関する情報を復元しかつ解析する手段を備えた情報処理装置。
  7. 請求項1ないし5のいずれかに記載されたシーケンサと請求項5に記載された情報処理装置とからなる自動診断装置。
  8. シーケンサに内蔵されたコンピュータに、シーケンサの制御対象の動作又は動作の状態を表す情報を検知する手順、シーケンサの制御対象の動作又は動作の状態を表す情報の検知のタイミングを計測する手順、前記検知した動作又は動作の状態を表す情報を前記計測した前記タイミング情報に関連付けて記憶する手順を実行させるためのシーケンスプログラム。
  9. シーケンサに内蔵されたコンピュータに、シーケンサの制御対象の動作のタイミング情報から該制御対象の動作時間を演算する手順又は計測された該動作時間を読み込む手順、該制御対象の動作時間又は所定のタイミングにおける動作の状態を表す情報と、予め設定された該制御対象の標準動作時間又は前記タイミングにおける標準となる動作の状態を表す情報とを比較する手順、前記両動作時間又は動作を表す情報の差が所定範囲を越えたことを判別する手順を実行させるためのシーケンスプログラム。
  10. 請求項7又は8に記載されたシーケンスプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008225987A (ja) * 2007-03-14 2008-09-25 Koyo Electronics Ind Co Ltd 工程異常条件自動抽出方式

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