JP2004333290A - 情報処理システム - Google Patents
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Abstract
【課題】オリゴヌクレオチドを用いたDNAマイクロアレイによる実験を容易に実現できるようにするためのシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】クライアントとサーバとが接続された情報処理システムであって、前記クライアントは、DNAマイクロアレイを用いて行われる実験の実験目的に関する情報を入力する入力手段と、前記入力された実験目的に関する情報を送信する実験目的送信手段と、前記実験目的に関する情報に基づいて決定されたDNAマイクロアレイを用いて行われた実験の実験結果を送信する実験結果送信手段と、前記実験結果に基づいて解析された解析結果を受信し、出力する解析結果出力手段と、を備え、前記サーバは、前記実験目的に関する情報に基づいて、DNAマイクロアレイを決定する決定手段と、前記実験結果を解析する解析手段と、前記解析結果を送信する解析結果送信手段とを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】クライアントとサーバとが接続された情報処理システムであって、前記クライアントは、DNAマイクロアレイを用いて行われる実験の実験目的に関する情報を入力する入力手段と、前記入力された実験目的に関する情報を送信する実験目的送信手段と、前記実験目的に関する情報に基づいて決定されたDNAマイクロアレイを用いて行われた実験の実験結果を送信する実験結果送信手段と、前記実験結果に基づいて解析された解析結果を受信し、出力する解析結果出力手段と、を備え、前記サーバは、前記実験目的に関する情報に基づいて、DNAマイクロアレイを決定する決定手段と、前記実験結果を解析する解析手段と、前記解析結果を送信する解析結果送信手段とを備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はいわゆるDNAマイクロアレイを用いた生化学実験を行うための情報処理システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、DNAマイクロアレイを用いて遺伝子の発現量を測定したり、シーケンスを決定したりする技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
DNAマイクロアレイを用いるメリットは、一度の実験で10のオーダーから、多いときには10000以上に及ぶ多数のDNAの検体中の濃度を同時に測定できる点にある。
【0004】
このため、DNAマイクロアレイを用いて、検体のゲノムタイピングを行ったり、mRNAの発現量の測定を行った場合、これまでのDNA、またはRNAを一種類ずつ調べていった実験とは比べものにならないほどの有益な情報が得られることとなる。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−272000号公報
【特許文献2】
特開平11−187900号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、DNAマイクロアレイを用いた上記実験は、いくつかの問題点を有している。
【0007】
第1に従来技術(特許文献1、2)において挙げたような生体由来のcDNAを基板に付着させたDNAマイクロアレイを用いた実験の場合には、生体由来のmRNAを用いるので、DNAマイクロアレイを構成するプローブ自体の設計の必要はないが、オリゴヌクレオチドを用いたDNAマイクロアレイの場合には、どのようなオリゴヌクレオチドを用いるかといった自由度が非常に高く、有益な実験結果を得るためには、それ相応に工夫したプローブセットの設計が必要となってくる。そして、かかるプローブの設計は容易ではない。
【0008】
第二に実験結果の解析においても、ゲノムタイピングのためのDNAマイクロアレイ実験と、mRNAの発現量を測定するためのDNAマイクロアレイ実験とでは、全く解析の仕方が異なり、解析が非常に難しい。
【0009】
このようにオリゴヌクレオチドを用いたDNAマイクロアレイ実験の場合、いくつかの問題があったにも関わらず、これまで実験がうまく機能していたのは、DNAマイクロアレイの作成者とそれを使用する実験者とが同じ人物、または、同じ実験グループである場合がほとんどであったからである。もしくは、生化学者が完全な既製品としてのDNAマイクロアレイを用いて、生化学者が実験を行っていた場合が多かったからである。換言すると、これまではプローブ設計及び実験結果の解析について専門的な技術を有している者が実験を行ってきたからである。このため、オリゴヌクレオチドを用いたDNAマイクロアレイ実験は、これまで限られた範囲においてしか実施されてこなかった。
【0010】
これに対して、プローブ設計および実験解析について専門的な技術を持たない者であっても容易に使用できるようにすることで、オリゴヌクレオチドを用いたDNAマイクロアレイ実験を広く普及させることが求められている。このためには、実験者の実験目的に適したDNAマイクロアレイを容易にオーダーメードでき、かつオーダーメードされたDNAマイクロアレイによる実験に対する解析結果を容易に入手できるようなビジネスモデルが望まれている。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、オリゴヌクレオチドを用いたDNAマイクロアレイによる実験を容易に行うことができるようにするための情報処理システムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明に係る情報処理システムは以下のような構成を備える。即ち、
クライアントとサーバとが接続された情報処理システムであって、
前記クライアントは、
DNAマイクロアレイを用いて行われる実験の実験目的に関する情報を入力する入力手段と、
前記入力された実験目的に関する情報を送信する実験目的送信手段と、
前記実験目的に関する情報に基づいて決定されたDNAマイクロアレイを用いて行われた実験の実験結果を送信する実験結果送信手段と、
前記実験結果に基づいて解析された解析結果を受信し、出力する解析結果出力手段と、を備え、
前記サーバは、
前記実験目的に関する情報に基づいて、DNAマイクロアレイを決定する決定選定手段と、
前記実験結果を解析する解析手段と、
前記解析結果を送信する解析結果送信手段とを備える。
【0013】
【発明の実施の形態】
はじめに本発明の概略について説明する。本発明は、オリゴヌクレオチドを用いたDNAマイクロアレイ実験において、プローブ設計ならびに実験結果解析について専門的な技術を持たない者であっても当該実験が容易に行えるようにすべく、実験者の実験目的に適したDNAマイクロアレイのオーダーメードと、当該DNAマイクロアレイによる実験結果に対する解析結果の入手とが可能なビジネスモデルを実現する情報処理システムを提供することにある。
【0014】
具体的に、本発明にかかる情報処理システムを用いることで実現されるビジネスモデルとは下記のとおりである。つまり、実験者が実験目的に関する情報および調査したい遺伝子リストをクライアントに入力すると、当該情報がサーバに送信され、サーバ側において当該情報に適したDNAマイクロアレイを決定される。決定されたDNAマイクロアレイが専門家により生成されると当該DNAマイクロアレイは実験者に送られ、実験者は当該DNAマイクロアレイを用いて実験を行う。実験者が行った実験結果は、上記専門家に送られ解析される。解析結果はサーバを介して上述のクライアントに送信され、実験者はクライアントを介して解析結果をみることができる。以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態を説明する。
【0015】
[全体構成]
図2は本発明の一実施形態にかかる情報処理システムの全体構成を示すブロック図である。
【0016】
DNAマイクロアレイの作成及び実験結果の解析は、図2に示す情報処理システムにおいて、ネットワークを介してクライアント201とサーバ206との間で情報のやり取りを行うことで実現される。クライアント201は通常、ルーター202下のLANにつながっており、ルーター202を介してインターネット203につながっている。サーバ206は、通常ファイアウォール205とルーター204とを介してインターネット203につながっている。ファイアウォール205は第3者からサーバ206へのアタックを防止する役目がある。
【0017】
クライアント201とサーバ206との間のソフト的なインターフェースは、通常、HTTPプロトコルを用いた、いわゆるホームページ形式で実現される場合が多いが、独自のプロトコルを用いても構わない。また、図2ではインターネット203(TCP/IP)を介して、クライアント201とサーバ206とがつながっているが、専用回線を用いたり、通常の電話回線上で実VPN(Virtual Private Network)を用いることによって、第3者からのアクセスが困難な通信回線を実現することも可能である。
【0018】
DNAマイクロアレイ作成時においては、クライアント201からDNAマイクロアレイの要求仕様、数量などがサーバ206へ送られ、それと同時に代金決裁に必要な情報もサーバ206へ送られる。また、サーバ206からは、DNAマイクロアレイの作成状況、代金決裁の確認情報などがクライアント201へ送られる。
【0019】
DNAマイクロアレイ実験結果解析時においては、クライアント201から実験結果がサーバ206へ送られ、サーバ206から実験結果の解析結果がクライアント201へ送られる。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態にかかる情報処理システムの機能ブロックを示す図である。
【0021】
101は実験目的を特定する実験目的特定部を含むDNAマイクロアレイ仕様決定部であり、DNAマイクロアレイ仕様決定部101によりクライアント201からサーバ206へDNAマイクロアレイの仕様情報の一部として、実験目的102等が送信される。
【0022】
実験目的102はサーバ206上に蓄積されており、当該実験目的及び実験目的以外のDNAマイクロアレイ仕様に関する情報に基づいて、作成すべきDNAマイクロアレイがDNAマイクロアレイ決定部103において決定される。実際のDNAマイクロアレイは、DNAマイクロアレイ決定部103において決定されたDNAマイクロアレイに基づいて作成される。
【0023】
作成されたDNAマイクロアレイ(104)が納品され、実験に使用されて導き出された実験結果105はサーバ側に送られ、サーバ206の目的別実験結果解析部106において解析される。この時、サーバ206に蓄積された実験目的102を元に最適な実験結果の解析を行う。最終的には解析結果107がサーバ206からクライアント201へ送られる。
【0024】
[生化学実験の概要]
上記各部における処理の詳細を説明する前に、図3及び図4を用いてDNAマイクロアレイを用いた生化学実験の様子を説明する。
【0025】
図3はDNAマイクロアレイ上のハイブリダイゼーションの様子を示した図である。生体内でほとんどの場合、DNA塩基配列は2重らせん構造をしており、その2本鎖の間の結合は塩基間の水素結合で実現されている。一方、RNA塩基配列は1本で存在する場合が多い。塩基の種類はDNAの場合はACGTの4種類、RNAの場合はACGUの4種類であり、それぞれ水素結合ができる塩基対はA−T(U)、G−Cのペアとなっている。ハイブリダイゼーションとは、1本鎖状態の塩基配列分子同士がある部分の相補的な塩基配列を介して部分的に結合して2本鎖状態を形成することをいい、本発明では、図3の上側の基板にくっついた塩基配列(プローブ配列)301の方が下側の塩基配列分子302より短い場合の反応を想定している。よって、図3中に存在する塩基配列分子がプローブ配列を含む場合は、このハイブリダイゼーション反応はうまくいき、試料中のターゲット塩基配列分子はトラップされることとなる。
【0026】
但し、プローブ配列の全ての領域が相補的な場合のみ、ハイブリダイゼーションが可能なわけではなく、一部にペアを形成しない部分があっても、ターゲット塩基配列分子はトラップされる。特にプローブの末端だけの塩基が結合できないような場合は、十分ハイブリダイゼーションが起こる可能性が高く、末端だけが異なるプローブ配列セットは、ハイブリダイゼーションを使った実験には不適格といえる。また、ハイブリダイゼーション反応の強度はプローブの塩基配列の長さが長いほど高くなる。よって、理想的にはDNAマイクロアレイ上に配置されるプローブ配列はハイブリダイゼーション強度が似ているものを選ぶほうが良い。
【0027】
実際にハイブリダイゼーションが起こったかどうかは、蛍光色素や放射性同位元素を用いて測定する。つまり、検体資料のターゲット塩基配列分子に蛍光色素や放射性同位元素を何らかの方法で取り込ませておいて、ハイブリダイゼーション反応が終了した時点で、基板上の蛍光量や放射能の量を測定することによって、定量する。この数値を解析することによって、転写因子発現量の同定や、遺伝子タイプの特定が行われる。
【0028】
図4は、DNAマイクロアレイの外観を示す図である。同図に示すとおり、ガラス、金属または樹脂等を素材とした平坦な基板401の上に、格子上にプローブ402が張り付けられている。かかる構成により、個々のプローブの数が10個から10000個ぐらいまでの幅広いバリエーションのDNAマイクロアレイの中から、実験目的に応じた最適なDNAマイクロアレイを選択することが可能となる。具体的には、大規模な細胞内転写産物の発現についての実験の場合は、プローブの数は非常に多くなり、比較的単純なゲノム判別の実験の場合は、プローブの数は少なくても良い場合が多い。
【0029】
次に図5から図9を用いて、本発明の一実施形態にかかる情報処理システムにおける各部の処理について詳しく説明する。
【0030】
[DNAマイクロアレイ仕様決定部および実験目的特定部における処理]
図5から図8は、DNAマイクロアレイ仕様決定部101及び実験目的特定部における処理内容を説明するための図であり、各図に示すタブ形式のGUIを介してユーザが処理を指示することにより各部における動作が行われる。なお、GUIとして各処理の推移をボタンで行う、いわゆるウィザード形式を採用しても問題ない。
【0031】
全体的な流れとして、DNAマイクロアレイを用いた実験に慣れているユーザであれば、図8にあるプローブリストを直接編集して、ユーザがDNAチップ401上に貼り付けられる塩基配列リストを決定することもできる。これに対して、ユーザがDNAマイクロアレイの使用について初心者であれば、図5にある実験目的と図7にある遺伝子リストとを指定することにより、サーバ側にてプローブリストを自動作成させることも可能である。
【0032】
なお、ユーザが指定した実験目的が異なれば、実験結果の解析の方法と結果が異なってくるので、DNAマイクロアレイの実験に慣れているユーザが直接プローブ塩基配列を決定する場合であっても、図5の実験目的を確認するユーザインターフェースは必要である。この部分が本発明の一番重要な点である。
【0033】
図5は実験目的特定部における処理内容を説明するための図である。図5のGUIを介して実験目的が指定される。DNA存在判定501とは遺伝子タイプ特定目的であり、例えば、人体に細菌が感染した時、血液からその細菌のDNAを取り出して、DNAマイクロアレイと反応させることによって感染細菌の種類を特定する実験にDNAマイクロアレイを使う場合に選択される。この場合、DNAマイクロアレイは検体中に注目している塩基配列が存在するかどうかを判定するために用いられる。なお、この注目している塩基配列は、たんぱく質をコードしているDNAの領域(詳細は後述)である必要はない。
【0034】
SNP判別502は、特別なSNP(Single Nucleotide Polymorphism)といわれる多体を判定することを実験目的とする場合に選択され、この場合、DNAマイクロアレイの実験結果はアレルの種類を導き出すこととなる。このSNP判別という目的は、一種のターゲット塩基配列存在判定目的、または遺伝子タイプ特定目的であり、DNA存在判定501と似ているが、検体中に必ずSNP部位の周辺の塩基配列が存在していることを前提としているところが異なる。
【0035】
DNA発現解析503とは、転写因子発現量同定目的であり、例えばユーザが注目しているたんぱく質をコードしているDNAがどれだけ活性化されているかを見る場合に選択される。具体的には、mRNAの量を定量することによって、注目しているDNAがどれだけ発現しているかを推定する。
【0036】
図6乃至図8はDNAマイクロアレイ仕様決定部101における処理内容を説明するための図である。図6のGUIを介して、DNAマイクロアレイの物理的な仕様が決定される。本発明においては、特にこの物理的なプローブ配置を決定する処理は必要ではないが、例えば、DNAマイクロアレイに非常に習熟したユーザが、直接プローブの物理的な配置を指定したい場合に、この処理を実行する。
【0037】
図6において、601はドット配置指定領域であり、602は(プローブ)存在範囲指定領域である。ドット配置指定領域601において、例えば、縦10横20の合計200スポットのDNAマイクロアレイを作成することを指定することができる。プローブ存在範囲指定領域602において、例えば、縦1000μm、縦2000μmの存在範囲にプローブがあることを指定することができる。
【0038】
この例以外に、プローブのドット径や、ドット間の距離、各プローブの順番(番号)自体を指定することも可能である(不図示)。
【0039】
図7は遺伝子リストを指定するGUIを示す図である。なお、図7は、1つの典型的な処理をGUIとしてまとめたもので、本発明はこの実施形態に限られるものではない。
【0040】
図7に示すGUIを介して、ターゲットとしている塩基配列を決定することが可能であり、通常、ターゲットとしている塩基配列はGenBankのエントリ名で指定することができる。ユーザがターゲットとしている遺伝子のエントリ名を知っている場合は、直接リスト706へ入力してもよい。ユーザが知らない場合は、データベースを選択し(701)、キーワード、または、部分塩基配列を入力し(702)、検索ボタン(703)を押すことによって、エントリ名の候補をリスト704として表示させることができる。
【0041】
なお、このリスト704に表示されたエントリ名が妥当かどうかを見るために、例えば、リスト704の任意のエントリ名をダブルクリックすると、そのエントリ名に相当するGenBankのWebページが開くという機能があってもよい。
【0042】
ターゲットとなるエントリ名が見つかれば、追加ボタン705を押すことで、それを遺伝子リスト706へ追加することができる。
【0043】
707はプローブ自動作成指示ボタンであり、当該ボタンを押すことで、クライアントからサーバに対してプローブ自動作成指示が送信される。なお、このとき、あわせて実験目的、遺伝子リスト、プローブ配置(図6により指定した場合のみ)がサーバに送信される。サーバでは、当該送信された情報に基づいて、実際にDNAマイクロアレイに載せるプローブを自動作成する(詳細な処理は後述)。
【0044】
図8が実際のプローブ塩基配列のリストである。塩基配列の番号付けは何でもよいが、必ず個々の塩基配列が区別できること、かつ、どの遺伝子に対するプローブかを識別できることという2つの条件を満たすことが必要となる。図8の例においては、「1.2」というような2つの数字の並びでそれを表し、1番目の遺伝子の2番目のプローブという意味を持たしている。
【0045】
以上述べてきたDNAマイクロアレイ仕様決定部101及び実験目的特定部における処理は、ある一つの典型的な例であったが、更に実験条件を設定しながら効率的にDNAマイクロアレイ仕様を決定することもできる。DNAマイクロアレイ仕様決定部101及び実験目的特定部における他の処理内容を図9と図10とを用いて説明する。
【0046】
図9は感染症の特定を行うためのDNAマイクロアレイの決定方法を、図10は疾患関連遺伝子の様子を見るためのDNAマイクロアレイの仕様決定方法を説明するための図である。
【0047】
ウィルスや細菌などが原因で感染症を発症した場合、特効薬が存在するものは比較的簡単に治癒する。しかしながら、患者がどの病原体に感染しているかを知るためには、従来は多くの時間を必要とし、効果的な治療を早期に行うことが出来なかった。
【0048】
これに対して、患者の血液からDNAを抽出し、DNAマイクロアレイと反応させることによって、病原体の特定をする技術がある。図9はかかる技術に基づいてDNAマイクロアレイの仕様を決定する方法を示したものである。特定したい病原体の種類を指定することによって、ターゲット遺伝子を導き出す。このとき、例えば、選ばれた病原体に出来るだけ特異的な遺伝子セットをリストアップする。
【0049】
この例では、患者の血液の中の病原体の特定を目的としているが、検体の中のある遺伝子の存在確率をDNAマイクロアレイを用いて導くという用途であるならば、同じスキームが適用できる。
【0050】
図10は、疾患に関連する遺伝子を解析するための遺伝子セットの導くためのGUIを示す図である。例えば、糖尿病になりやすい体質の遺伝子や、がんの悪性度を測るための遺伝子発現変化など、多くの疾患と遺伝子との関係が最近明らかになってきた。図10は、DNAマイクロアレイを用いて調べたい疾患をユーザが選び、その疾患に対して、DNAマイクロアレイの使用目的をユーザが指定することによって、遺伝子リストを作成することを示している。
【0051】
なお、どの疾患にどの遺伝子が関係しているかは、公共のデータベースや、独自のデータベースを用いて予め知っておく必要がある。
【0052】
なお、図9や図10のようなより詳細な実験目的、またはサンプル調製方法やハイブリ方法などの実験条件と、遺伝子リストを組み合わせてDNAマイクロアレイに載せる塩基配列を導くと、さらに信頼性の高いものを導き出すことができる。そのフローチャートを、図16に示すが、内容は後述する。
【0053】
以上の説明から明らかなように、DNAマイクロアレイ仕様決定部及び、実験目的特定部における処理は、ユーザがDNAマイクロアレイの仕様を実際に決定する処理であり、従来からの、例えば、人間やマウスの全遺伝子発現を行うDNAマイクロアレイや、ある特定の疾患の状態を診断するためのDNAマイクロアレイのような、仕様が予め決定されている既製品DNAマイクロアレイを注文する処理とは全く異なることに注意する必要がある。
【0054】
[目的実験結果解析部における処理]
次に図1の目的別実験結果解析部106における処理内容を図11乃至図15を用いて説明する。
【0055】
図11は実験結果で、図1に示したようにクライアント201からサーバ206へアップロードされた情報である。図11では、DNAマイクロアレイ上のプローブ毎の測定結果をサンプルごとに切り替えて示すこととしているが、もちろん表形式で表示することも可能であり、グラフで表示することも可能である。
【0056】
図12は、プローブ毎の測定結果をまとめて、遺伝子毎の測定結果として表示した図である。このとき、例えば、1つの遺伝子に関わるプローブの測定結果の平均や中央値をその遺伝子の測定結果として表示する。また、例えば1つの遺伝子に関わるプローブが10個あるとすると、最も測定量の大きいものと最も測定量の小さいプローブとを除いた、残りの8個のプローブの測定量の平均で、その遺伝子の測定結果とすることも可能である。かかる処理により、イリーガルな可能性の高いデータを排除することができる。なお、図12に示した遺伝子ごとの測定結果を数字で求める解析方法及び解析結果は、基本的に遺伝子存在確率や転写産物発現量解析で利用されている方法である。
【0057】
図13は遺伝子毎の目的別の解析結果の一例を示す図である。具体的には転写産物の定量を通して遺伝子発現量の傾向を見るという実験目的の場合の解析結果を示している。サンプル(検体)として、1から6の6回の実験を行った場合を示している。図13に示した例では、調べたい遺伝子が1番から6番まであり、1番目の遺伝子、2番目の遺伝子が左上のグラフ(1301)に示したような発現量変化を示し、3番目の遺伝子から6番目の遺伝子が左下のグラフ(1302)に示したような発現量変化をした場合を示している。このような遺伝子の発現量変化を用いたグルーピングは、通常のクラスタリング技術などを用いて実現されうる。その際、予めクラスタの数を設定したり、自動的にクラスタの数を求めるグルーピング方法など様々な技術が使用されることとなるが、これらは公知であるため、説明を省略する。
【0058】
図14は遺伝子の存在確率を求めた場合の結果の一例を示す図である。図14では、一例として、感染症の特定を実験目的した場合を示している。同図に示すように、DNAマイクロアレイの実験目的設定(図9参照)においてチェックした病原体毎にタブを有している。また、同図の1401からは、結核に感染している可能性がサンプル2とサンプル5とが高く、それぞれ95%と90%という確率で感染しているという結果を読み取ることができる。この感染確率1401は、図12に示した遺伝子ごとの測定結果に統計的な検定を施すことで得られる。なお、感染確率を求めるための統計的な検定はこれに限られるものではない。
【0059】
図15は、図13、図14とは異なり、それぞれの遺伝子に関わるSNPの判定結果を解析したものを示す図である。この場合、1つの遺伝子に対して、複数のアレルのためのプローブセットを用意するので、図12にあるような遺伝子毎の検査結果の平均操作は意味がなくなる。そして、どのサンプルがどのアレルに対応するかという図15のような解析が行われることとなる。
【0060】
なお、上記図11乃至図15は、目的別実験結果解析部106における解析結果としてクライアント201に送信され、クライアント201上においても同様の表示がなされる。
【0061】
[DNAマイクロアレイ決定部における処理]
最後に、DNAマイクロアレイ決定部103におけるプローブ自動作成処理を図16を用いて詳しく述べる。
【0062】
まず実験目的を取得すると(ステップS1601)、条件分岐する(ステップS1602)。本フローチャートにおいては、3通りの目的設定を想定した。DNAの存在判定を目的としている場合にはステップS1603へ進み、遺伝子転写産物の発現量を調べることを目的としている場合にはステップS1608に進み、SNP解析を目的としている場合にはステップS1609にそれぞれ進む。
【0063】
ステップS1603では検体中に存在しうる全DNA配列を取得する。ここで注意するべきことは、DNAマイクロアレイの実験に混入する可能性のあるターゲット生物種は、遺伝子リストのみの情報では得られないことである。例えば、人間の感染症の種類を血液から抽出したDNAを用いて行う場合は、ターゲットとなるウィルスや細菌のDNAももちろん混入するが、同時に血液中にある赤血球や白血球のDNAも混入する。これらのバックグランドがDNAマイクロアレイの判別性能を邪魔しないように、ターゲット生物種の全DNA配列、または出来る限り多くのDNA配列を取得する必要がある。感染症の特定のためのDNAマイクロアレイは、標的病原体のDNA配列を増幅することによって、バックグラウンドを限りなく少なくすることも可能であるが、実験環境によっては、ターゲットとなる遺伝子とバックグラウンドとなる遺伝子に量的な差がない場合もある。このような場合に、ターゲット塩基配列に特異的なプローブ部位を慎重に選ぶ必要が出てくる。なお、この実験条件に関する付加情報は、必要ならば、例えば図9のようなGUIを用いてユーザから入力してもらう。
【0064】
次に、ステップS1604においてターゲットDNAの配列を取得し、該取得したターゲットDNA配列について(図7における遺伝子リスト706にある個々の遺伝子塩基配列について)、競合する可能性のある塩基配列に対して特異的な部位を検索する(ステップS1605)。
【0065】
次に、求められたプローブ候補部位の中で、ハイブリダイゼーションの物理的安定性(Tm値や2次構造安定性)を吟味し(ステップS1606)、最終的なプローブセット(ステップS1607)を導き出す。
【0066】
ステップS1602において、遺伝子転写産物の発現量を調べることが目的として選ばれた場合には、ステップS1608に移り、ターゲット生物種のmRNA配列の取得が行われる。この場合は、通常、遺伝子リストにある遺伝子の生物種、例えば人間の全mRNA、あるいは可能な限り多くのmRNA配列が競合対象となり、同じようにステップS1604のターゲットDNA配列から特異性の高い部位を抽出し(ステップS1605)、求められたプローブ候補部位の中で、ハイブリダイゼーションの物理的安定性(Tm値や2次構造安定性)を吟味し(ステップS1606)、最終的なプローブセット(ステップS1607)を導き出す。
【0067】
最後に、ステップS1602において、遺伝子転写産物の発現量を調べることが目的として選ばれた場合には、ステップS1609に移り、ターゲット遺伝子のSNP塩基配列が取得される。SNP判別のためのプローブは、基本的にはSNP部位を中央にもつある程度の長さ以上の塩基配列を選べばよいが、あまり長いプローブを選ぶとSNPが判定しづらくなり、あまり短い長さのプローブを選ぶと、ノイズが多くなり、また判断しづらくなる。通常は、20個から40個ぐらいの長さの配列をプローブとして選ぶことが多い。
【0068】
最終的なプローブセット(ステップS1607)は、同様に、求められたプローブ候補部位の中で、ハイブリダイゼーションの物理的安定性(Tm値や2次構造安定性)を吟味することによって決定される(ステップS1606)。
【0069】
このようにして求められたプローブセットは、図1の実験目的102に最適なプローブセットであり、DNAマイクロアレイを用いた実験全体にわたって、一貫した意味を持つ。つまり、図11から図15に示した目的別実験結果解析部106における処理において、それぞれのプローブセットがどのような目的でデザインされたかという情報が必要不可欠になってくるのである。
【0070】
本発明は、このプローブデザインをユーザが行って、直接図8に示すGUIを用いて入力してもよいが、そのデザインがどのような目的で行われたかという情報が目的別実験結果解析部106における処理において必要不可欠となる。
【0071】
以上の説明から明らかなように、本実施形態によればオリゴヌクレオチドを用いたDNAプローブアレイによる種々の実験を行うにあたり、実験者は実験目的等をクライアントに入力するだけで当該実験目的に則したDNAプローブアレイを入手することができ、実験結果を送るだけで解析結果を入手することが可能となり、プローブ設計及び解析において専門的な技術を持たなくても容易に実験を行うことが可能となる。
【0072】
【他の実施形態】
なお、本発明は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インタフェイス機器、リーダなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0073】
また、本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0074】
この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0075】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピ(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【0076】
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0077】
さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように本発明にかかる情報処理システムを利用することにより、オリゴヌクレオチドを用いたDNAマイクロアレイによる実験が容易に実現できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる情報処理システムの機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる情報処理システムの構成を示す図である。
【図3】ハイブリダイゼーション反応を説明するための図である。
【図4】DNAマイクロアレイの物理的な状態を示した図である。
【図5】実験目的決定方法を示した図である。
【図6】プローブ配置決定方法を示した図である。
【図7】遺伝子リスト決定方法を示した図である。
【図8】プローブリスト決定方法を示した図である。
【図9】遺伝子リスト決定方法を示した図である。
【図10】遺伝子リスト決定方法を示した図である。
【図11】プローブ別実験結果表示方法を示した図である。
【図12】遺伝子別実験結果表示方法を示した図である。
【図13】目的別解析結果表示方法を示した図である。
【図14】目的別判定結果表示方法を示した図である。
【図15】目的別判定結果表示方法を示した図である。
【図16】プローブ自動作成方法を示したフローチャートである。
【符号の説明】
101 DNAマイクロアレイ仕様決定部(実験目的判定部)
102 DNAマイクロアレイ仕様(実験目的含む)
103 DNAマイクロアレイ決定部
104 DNAマイクロアレイ
105 実験結果
106 目的別実験結果判定部
107 解析結果
【発明の属する技術分野】
本発明はいわゆるDNAマイクロアレイを用いた生化学実験を行うための情報処理システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、DNAマイクロアレイを用いて遺伝子の発現量を測定したり、シーケンスを決定したりする技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
DNAマイクロアレイを用いるメリットは、一度の実験で10のオーダーから、多いときには10000以上に及ぶ多数のDNAの検体中の濃度を同時に測定できる点にある。
【0004】
このため、DNAマイクロアレイを用いて、検体のゲノムタイピングを行ったり、mRNAの発現量の測定を行った場合、これまでのDNA、またはRNAを一種類ずつ調べていった実験とは比べものにならないほどの有益な情報が得られることとなる。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−272000号公報
【特許文献2】
特開平11−187900号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、DNAマイクロアレイを用いた上記実験は、いくつかの問題点を有している。
【0007】
第1に従来技術(特許文献1、2)において挙げたような生体由来のcDNAを基板に付着させたDNAマイクロアレイを用いた実験の場合には、生体由来のmRNAを用いるので、DNAマイクロアレイを構成するプローブ自体の設計の必要はないが、オリゴヌクレオチドを用いたDNAマイクロアレイの場合には、どのようなオリゴヌクレオチドを用いるかといった自由度が非常に高く、有益な実験結果を得るためには、それ相応に工夫したプローブセットの設計が必要となってくる。そして、かかるプローブの設計は容易ではない。
【0008】
第二に実験結果の解析においても、ゲノムタイピングのためのDNAマイクロアレイ実験と、mRNAの発現量を測定するためのDNAマイクロアレイ実験とでは、全く解析の仕方が異なり、解析が非常に難しい。
【0009】
このようにオリゴヌクレオチドを用いたDNAマイクロアレイ実験の場合、いくつかの問題があったにも関わらず、これまで実験がうまく機能していたのは、DNAマイクロアレイの作成者とそれを使用する実験者とが同じ人物、または、同じ実験グループである場合がほとんどであったからである。もしくは、生化学者が完全な既製品としてのDNAマイクロアレイを用いて、生化学者が実験を行っていた場合が多かったからである。換言すると、これまではプローブ設計及び実験結果の解析について専門的な技術を有している者が実験を行ってきたからである。このため、オリゴヌクレオチドを用いたDNAマイクロアレイ実験は、これまで限られた範囲においてしか実施されてこなかった。
【0010】
これに対して、プローブ設計および実験解析について専門的な技術を持たない者であっても容易に使用できるようにすることで、オリゴヌクレオチドを用いたDNAマイクロアレイ実験を広く普及させることが求められている。このためには、実験者の実験目的に適したDNAマイクロアレイを容易にオーダーメードでき、かつオーダーメードされたDNAマイクロアレイによる実験に対する解析結果を容易に入手できるようなビジネスモデルが望まれている。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、オリゴヌクレオチドを用いたDNAマイクロアレイによる実験を容易に行うことができるようにするための情報処理システムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明に係る情報処理システムは以下のような構成を備える。即ち、
クライアントとサーバとが接続された情報処理システムであって、
前記クライアントは、
DNAマイクロアレイを用いて行われる実験の実験目的に関する情報を入力する入力手段と、
前記入力された実験目的に関する情報を送信する実験目的送信手段と、
前記実験目的に関する情報に基づいて決定されたDNAマイクロアレイを用いて行われた実験の実験結果を送信する実験結果送信手段と、
前記実験結果に基づいて解析された解析結果を受信し、出力する解析結果出力手段と、を備え、
前記サーバは、
前記実験目的に関する情報に基づいて、DNAマイクロアレイを決定する決定選定手段と、
前記実験結果を解析する解析手段と、
前記解析結果を送信する解析結果送信手段とを備える。
【0013】
【発明の実施の形態】
はじめに本発明の概略について説明する。本発明は、オリゴヌクレオチドを用いたDNAマイクロアレイ実験において、プローブ設計ならびに実験結果解析について専門的な技術を持たない者であっても当該実験が容易に行えるようにすべく、実験者の実験目的に適したDNAマイクロアレイのオーダーメードと、当該DNAマイクロアレイによる実験結果に対する解析結果の入手とが可能なビジネスモデルを実現する情報処理システムを提供することにある。
【0014】
具体的に、本発明にかかる情報処理システムを用いることで実現されるビジネスモデルとは下記のとおりである。つまり、実験者が実験目的に関する情報および調査したい遺伝子リストをクライアントに入力すると、当該情報がサーバに送信され、サーバ側において当該情報に適したDNAマイクロアレイを決定される。決定されたDNAマイクロアレイが専門家により生成されると当該DNAマイクロアレイは実験者に送られ、実験者は当該DNAマイクロアレイを用いて実験を行う。実験者が行った実験結果は、上記専門家に送られ解析される。解析結果はサーバを介して上述のクライアントに送信され、実験者はクライアントを介して解析結果をみることができる。以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態を説明する。
【0015】
[全体構成]
図2は本発明の一実施形態にかかる情報処理システムの全体構成を示すブロック図である。
【0016】
DNAマイクロアレイの作成及び実験結果の解析は、図2に示す情報処理システムにおいて、ネットワークを介してクライアント201とサーバ206との間で情報のやり取りを行うことで実現される。クライアント201は通常、ルーター202下のLANにつながっており、ルーター202を介してインターネット203につながっている。サーバ206は、通常ファイアウォール205とルーター204とを介してインターネット203につながっている。ファイアウォール205は第3者からサーバ206へのアタックを防止する役目がある。
【0017】
クライアント201とサーバ206との間のソフト的なインターフェースは、通常、HTTPプロトコルを用いた、いわゆるホームページ形式で実現される場合が多いが、独自のプロトコルを用いても構わない。また、図2ではインターネット203(TCP/IP)を介して、クライアント201とサーバ206とがつながっているが、専用回線を用いたり、通常の電話回線上で実VPN(Virtual Private Network)を用いることによって、第3者からのアクセスが困難な通信回線を実現することも可能である。
【0018】
DNAマイクロアレイ作成時においては、クライアント201からDNAマイクロアレイの要求仕様、数量などがサーバ206へ送られ、それと同時に代金決裁に必要な情報もサーバ206へ送られる。また、サーバ206からは、DNAマイクロアレイの作成状況、代金決裁の確認情報などがクライアント201へ送られる。
【0019】
DNAマイクロアレイ実験結果解析時においては、クライアント201から実験結果がサーバ206へ送られ、サーバ206から実験結果の解析結果がクライアント201へ送られる。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態にかかる情報処理システムの機能ブロックを示す図である。
【0021】
101は実験目的を特定する実験目的特定部を含むDNAマイクロアレイ仕様決定部であり、DNAマイクロアレイ仕様決定部101によりクライアント201からサーバ206へDNAマイクロアレイの仕様情報の一部として、実験目的102等が送信される。
【0022】
実験目的102はサーバ206上に蓄積されており、当該実験目的及び実験目的以外のDNAマイクロアレイ仕様に関する情報に基づいて、作成すべきDNAマイクロアレイがDNAマイクロアレイ決定部103において決定される。実際のDNAマイクロアレイは、DNAマイクロアレイ決定部103において決定されたDNAマイクロアレイに基づいて作成される。
【0023】
作成されたDNAマイクロアレイ(104)が納品され、実験に使用されて導き出された実験結果105はサーバ側に送られ、サーバ206の目的別実験結果解析部106において解析される。この時、サーバ206に蓄積された実験目的102を元に最適な実験結果の解析を行う。最終的には解析結果107がサーバ206からクライアント201へ送られる。
【0024】
[生化学実験の概要]
上記各部における処理の詳細を説明する前に、図3及び図4を用いてDNAマイクロアレイを用いた生化学実験の様子を説明する。
【0025】
図3はDNAマイクロアレイ上のハイブリダイゼーションの様子を示した図である。生体内でほとんどの場合、DNA塩基配列は2重らせん構造をしており、その2本鎖の間の結合は塩基間の水素結合で実現されている。一方、RNA塩基配列は1本で存在する場合が多い。塩基の種類はDNAの場合はACGTの4種類、RNAの場合はACGUの4種類であり、それぞれ水素結合ができる塩基対はA−T(U)、G−Cのペアとなっている。ハイブリダイゼーションとは、1本鎖状態の塩基配列分子同士がある部分の相補的な塩基配列を介して部分的に結合して2本鎖状態を形成することをいい、本発明では、図3の上側の基板にくっついた塩基配列(プローブ配列)301の方が下側の塩基配列分子302より短い場合の反応を想定している。よって、図3中に存在する塩基配列分子がプローブ配列を含む場合は、このハイブリダイゼーション反応はうまくいき、試料中のターゲット塩基配列分子はトラップされることとなる。
【0026】
但し、プローブ配列の全ての領域が相補的な場合のみ、ハイブリダイゼーションが可能なわけではなく、一部にペアを形成しない部分があっても、ターゲット塩基配列分子はトラップされる。特にプローブの末端だけの塩基が結合できないような場合は、十分ハイブリダイゼーションが起こる可能性が高く、末端だけが異なるプローブ配列セットは、ハイブリダイゼーションを使った実験には不適格といえる。また、ハイブリダイゼーション反応の強度はプローブの塩基配列の長さが長いほど高くなる。よって、理想的にはDNAマイクロアレイ上に配置されるプローブ配列はハイブリダイゼーション強度が似ているものを選ぶほうが良い。
【0027】
実際にハイブリダイゼーションが起こったかどうかは、蛍光色素や放射性同位元素を用いて測定する。つまり、検体資料のターゲット塩基配列分子に蛍光色素や放射性同位元素を何らかの方法で取り込ませておいて、ハイブリダイゼーション反応が終了した時点で、基板上の蛍光量や放射能の量を測定することによって、定量する。この数値を解析することによって、転写因子発現量の同定や、遺伝子タイプの特定が行われる。
【0028】
図4は、DNAマイクロアレイの外観を示す図である。同図に示すとおり、ガラス、金属または樹脂等を素材とした平坦な基板401の上に、格子上にプローブ402が張り付けられている。かかる構成により、個々のプローブの数が10個から10000個ぐらいまでの幅広いバリエーションのDNAマイクロアレイの中から、実験目的に応じた最適なDNAマイクロアレイを選択することが可能となる。具体的には、大規模な細胞内転写産物の発現についての実験の場合は、プローブの数は非常に多くなり、比較的単純なゲノム判別の実験の場合は、プローブの数は少なくても良い場合が多い。
【0029】
次に図5から図9を用いて、本発明の一実施形態にかかる情報処理システムにおける各部の処理について詳しく説明する。
【0030】
[DNAマイクロアレイ仕様決定部および実験目的特定部における処理]
図5から図8は、DNAマイクロアレイ仕様決定部101及び実験目的特定部における処理内容を説明するための図であり、各図に示すタブ形式のGUIを介してユーザが処理を指示することにより各部における動作が行われる。なお、GUIとして各処理の推移をボタンで行う、いわゆるウィザード形式を採用しても問題ない。
【0031】
全体的な流れとして、DNAマイクロアレイを用いた実験に慣れているユーザであれば、図8にあるプローブリストを直接編集して、ユーザがDNAチップ401上に貼り付けられる塩基配列リストを決定することもできる。これに対して、ユーザがDNAマイクロアレイの使用について初心者であれば、図5にある実験目的と図7にある遺伝子リストとを指定することにより、サーバ側にてプローブリストを自動作成させることも可能である。
【0032】
なお、ユーザが指定した実験目的が異なれば、実験結果の解析の方法と結果が異なってくるので、DNAマイクロアレイの実験に慣れているユーザが直接プローブ塩基配列を決定する場合であっても、図5の実験目的を確認するユーザインターフェースは必要である。この部分が本発明の一番重要な点である。
【0033】
図5は実験目的特定部における処理内容を説明するための図である。図5のGUIを介して実験目的が指定される。DNA存在判定501とは遺伝子タイプ特定目的であり、例えば、人体に細菌が感染した時、血液からその細菌のDNAを取り出して、DNAマイクロアレイと反応させることによって感染細菌の種類を特定する実験にDNAマイクロアレイを使う場合に選択される。この場合、DNAマイクロアレイは検体中に注目している塩基配列が存在するかどうかを判定するために用いられる。なお、この注目している塩基配列は、たんぱく質をコードしているDNAの領域(詳細は後述)である必要はない。
【0034】
SNP判別502は、特別なSNP(Single Nucleotide Polymorphism)といわれる多体を判定することを実験目的とする場合に選択され、この場合、DNAマイクロアレイの実験結果はアレルの種類を導き出すこととなる。このSNP判別という目的は、一種のターゲット塩基配列存在判定目的、または遺伝子タイプ特定目的であり、DNA存在判定501と似ているが、検体中に必ずSNP部位の周辺の塩基配列が存在していることを前提としているところが異なる。
【0035】
DNA発現解析503とは、転写因子発現量同定目的であり、例えばユーザが注目しているたんぱく質をコードしているDNAがどれだけ活性化されているかを見る場合に選択される。具体的には、mRNAの量を定量することによって、注目しているDNAがどれだけ発現しているかを推定する。
【0036】
図6乃至図8はDNAマイクロアレイ仕様決定部101における処理内容を説明するための図である。図6のGUIを介して、DNAマイクロアレイの物理的な仕様が決定される。本発明においては、特にこの物理的なプローブ配置を決定する処理は必要ではないが、例えば、DNAマイクロアレイに非常に習熟したユーザが、直接プローブの物理的な配置を指定したい場合に、この処理を実行する。
【0037】
図6において、601はドット配置指定領域であり、602は(プローブ)存在範囲指定領域である。ドット配置指定領域601において、例えば、縦10横20の合計200スポットのDNAマイクロアレイを作成することを指定することができる。プローブ存在範囲指定領域602において、例えば、縦1000μm、縦2000μmの存在範囲にプローブがあることを指定することができる。
【0038】
この例以外に、プローブのドット径や、ドット間の距離、各プローブの順番(番号)自体を指定することも可能である(不図示)。
【0039】
図7は遺伝子リストを指定するGUIを示す図である。なお、図7は、1つの典型的な処理をGUIとしてまとめたもので、本発明はこの実施形態に限られるものではない。
【0040】
図7に示すGUIを介して、ターゲットとしている塩基配列を決定することが可能であり、通常、ターゲットとしている塩基配列はGenBankのエントリ名で指定することができる。ユーザがターゲットとしている遺伝子のエントリ名を知っている場合は、直接リスト706へ入力してもよい。ユーザが知らない場合は、データベースを選択し(701)、キーワード、または、部分塩基配列を入力し(702)、検索ボタン(703)を押すことによって、エントリ名の候補をリスト704として表示させることができる。
【0041】
なお、このリスト704に表示されたエントリ名が妥当かどうかを見るために、例えば、リスト704の任意のエントリ名をダブルクリックすると、そのエントリ名に相当するGenBankのWebページが開くという機能があってもよい。
【0042】
ターゲットとなるエントリ名が見つかれば、追加ボタン705を押すことで、それを遺伝子リスト706へ追加することができる。
【0043】
707はプローブ自動作成指示ボタンであり、当該ボタンを押すことで、クライアントからサーバに対してプローブ自動作成指示が送信される。なお、このとき、あわせて実験目的、遺伝子リスト、プローブ配置(図6により指定した場合のみ)がサーバに送信される。サーバでは、当該送信された情報に基づいて、実際にDNAマイクロアレイに載せるプローブを自動作成する(詳細な処理は後述)。
【0044】
図8が実際のプローブ塩基配列のリストである。塩基配列の番号付けは何でもよいが、必ず個々の塩基配列が区別できること、かつ、どの遺伝子に対するプローブかを識別できることという2つの条件を満たすことが必要となる。図8の例においては、「1.2」というような2つの数字の並びでそれを表し、1番目の遺伝子の2番目のプローブという意味を持たしている。
【0045】
以上述べてきたDNAマイクロアレイ仕様決定部101及び実験目的特定部における処理は、ある一つの典型的な例であったが、更に実験条件を設定しながら効率的にDNAマイクロアレイ仕様を決定することもできる。DNAマイクロアレイ仕様決定部101及び実験目的特定部における他の処理内容を図9と図10とを用いて説明する。
【0046】
図9は感染症の特定を行うためのDNAマイクロアレイの決定方法を、図10は疾患関連遺伝子の様子を見るためのDNAマイクロアレイの仕様決定方法を説明するための図である。
【0047】
ウィルスや細菌などが原因で感染症を発症した場合、特効薬が存在するものは比較的簡単に治癒する。しかしながら、患者がどの病原体に感染しているかを知るためには、従来は多くの時間を必要とし、効果的な治療を早期に行うことが出来なかった。
【0048】
これに対して、患者の血液からDNAを抽出し、DNAマイクロアレイと反応させることによって、病原体の特定をする技術がある。図9はかかる技術に基づいてDNAマイクロアレイの仕様を決定する方法を示したものである。特定したい病原体の種類を指定することによって、ターゲット遺伝子を導き出す。このとき、例えば、選ばれた病原体に出来るだけ特異的な遺伝子セットをリストアップする。
【0049】
この例では、患者の血液の中の病原体の特定を目的としているが、検体の中のある遺伝子の存在確率をDNAマイクロアレイを用いて導くという用途であるならば、同じスキームが適用できる。
【0050】
図10は、疾患に関連する遺伝子を解析するための遺伝子セットの導くためのGUIを示す図である。例えば、糖尿病になりやすい体質の遺伝子や、がんの悪性度を測るための遺伝子発現変化など、多くの疾患と遺伝子との関係が最近明らかになってきた。図10は、DNAマイクロアレイを用いて調べたい疾患をユーザが選び、その疾患に対して、DNAマイクロアレイの使用目的をユーザが指定することによって、遺伝子リストを作成することを示している。
【0051】
なお、どの疾患にどの遺伝子が関係しているかは、公共のデータベースや、独自のデータベースを用いて予め知っておく必要がある。
【0052】
なお、図9や図10のようなより詳細な実験目的、またはサンプル調製方法やハイブリ方法などの実験条件と、遺伝子リストを組み合わせてDNAマイクロアレイに載せる塩基配列を導くと、さらに信頼性の高いものを導き出すことができる。そのフローチャートを、図16に示すが、内容は後述する。
【0053】
以上の説明から明らかなように、DNAマイクロアレイ仕様決定部及び、実験目的特定部における処理は、ユーザがDNAマイクロアレイの仕様を実際に決定する処理であり、従来からの、例えば、人間やマウスの全遺伝子発現を行うDNAマイクロアレイや、ある特定の疾患の状態を診断するためのDNAマイクロアレイのような、仕様が予め決定されている既製品DNAマイクロアレイを注文する処理とは全く異なることに注意する必要がある。
【0054】
[目的実験結果解析部における処理]
次に図1の目的別実験結果解析部106における処理内容を図11乃至図15を用いて説明する。
【0055】
図11は実験結果で、図1に示したようにクライアント201からサーバ206へアップロードされた情報である。図11では、DNAマイクロアレイ上のプローブ毎の測定結果をサンプルごとに切り替えて示すこととしているが、もちろん表形式で表示することも可能であり、グラフで表示することも可能である。
【0056】
図12は、プローブ毎の測定結果をまとめて、遺伝子毎の測定結果として表示した図である。このとき、例えば、1つの遺伝子に関わるプローブの測定結果の平均や中央値をその遺伝子の測定結果として表示する。また、例えば1つの遺伝子に関わるプローブが10個あるとすると、最も測定量の大きいものと最も測定量の小さいプローブとを除いた、残りの8個のプローブの測定量の平均で、その遺伝子の測定結果とすることも可能である。かかる処理により、イリーガルな可能性の高いデータを排除することができる。なお、図12に示した遺伝子ごとの測定結果を数字で求める解析方法及び解析結果は、基本的に遺伝子存在確率や転写産物発現量解析で利用されている方法である。
【0057】
図13は遺伝子毎の目的別の解析結果の一例を示す図である。具体的には転写産物の定量を通して遺伝子発現量の傾向を見るという実験目的の場合の解析結果を示している。サンプル(検体)として、1から6の6回の実験を行った場合を示している。図13に示した例では、調べたい遺伝子が1番から6番まであり、1番目の遺伝子、2番目の遺伝子が左上のグラフ(1301)に示したような発現量変化を示し、3番目の遺伝子から6番目の遺伝子が左下のグラフ(1302)に示したような発現量変化をした場合を示している。このような遺伝子の発現量変化を用いたグルーピングは、通常のクラスタリング技術などを用いて実現されうる。その際、予めクラスタの数を設定したり、自動的にクラスタの数を求めるグルーピング方法など様々な技術が使用されることとなるが、これらは公知であるため、説明を省略する。
【0058】
図14は遺伝子の存在確率を求めた場合の結果の一例を示す図である。図14では、一例として、感染症の特定を実験目的した場合を示している。同図に示すように、DNAマイクロアレイの実験目的設定(図9参照)においてチェックした病原体毎にタブを有している。また、同図の1401からは、結核に感染している可能性がサンプル2とサンプル5とが高く、それぞれ95%と90%という確率で感染しているという結果を読み取ることができる。この感染確率1401は、図12に示した遺伝子ごとの測定結果に統計的な検定を施すことで得られる。なお、感染確率を求めるための統計的な検定はこれに限られるものではない。
【0059】
図15は、図13、図14とは異なり、それぞれの遺伝子に関わるSNPの判定結果を解析したものを示す図である。この場合、1つの遺伝子に対して、複数のアレルのためのプローブセットを用意するので、図12にあるような遺伝子毎の検査結果の平均操作は意味がなくなる。そして、どのサンプルがどのアレルに対応するかという図15のような解析が行われることとなる。
【0060】
なお、上記図11乃至図15は、目的別実験結果解析部106における解析結果としてクライアント201に送信され、クライアント201上においても同様の表示がなされる。
【0061】
[DNAマイクロアレイ決定部における処理]
最後に、DNAマイクロアレイ決定部103におけるプローブ自動作成処理を図16を用いて詳しく述べる。
【0062】
まず実験目的を取得すると(ステップS1601)、条件分岐する(ステップS1602)。本フローチャートにおいては、3通りの目的設定を想定した。DNAの存在判定を目的としている場合にはステップS1603へ進み、遺伝子転写産物の発現量を調べることを目的としている場合にはステップS1608に進み、SNP解析を目的としている場合にはステップS1609にそれぞれ進む。
【0063】
ステップS1603では検体中に存在しうる全DNA配列を取得する。ここで注意するべきことは、DNAマイクロアレイの実験に混入する可能性のあるターゲット生物種は、遺伝子リストのみの情報では得られないことである。例えば、人間の感染症の種類を血液から抽出したDNAを用いて行う場合は、ターゲットとなるウィルスや細菌のDNAももちろん混入するが、同時に血液中にある赤血球や白血球のDNAも混入する。これらのバックグランドがDNAマイクロアレイの判別性能を邪魔しないように、ターゲット生物種の全DNA配列、または出来る限り多くのDNA配列を取得する必要がある。感染症の特定のためのDNAマイクロアレイは、標的病原体のDNA配列を増幅することによって、バックグラウンドを限りなく少なくすることも可能であるが、実験環境によっては、ターゲットとなる遺伝子とバックグラウンドとなる遺伝子に量的な差がない場合もある。このような場合に、ターゲット塩基配列に特異的なプローブ部位を慎重に選ぶ必要が出てくる。なお、この実験条件に関する付加情報は、必要ならば、例えば図9のようなGUIを用いてユーザから入力してもらう。
【0064】
次に、ステップS1604においてターゲットDNAの配列を取得し、該取得したターゲットDNA配列について(図7における遺伝子リスト706にある個々の遺伝子塩基配列について)、競合する可能性のある塩基配列に対して特異的な部位を検索する(ステップS1605)。
【0065】
次に、求められたプローブ候補部位の中で、ハイブリダイゼーションの物理的安定性(Tm値や2次構造安定性)を吟味し(ステップS1606)、最終的なプローブセット(ステップS1607)を導き出す。
【0066】
ステップS1602において、遺伝子転写産物の発現量を調べることが目的として選ばれた場合には、ステップS1608に移り、ターゲット生物種のmRNA配列の取得が行われる。この場合は、通常、遺伝子リストにある遺伝子の生物種、例えば人間の全mRNA、あるいは可能な限り多くのmRNA配列が競合対象となり、同じようにステップS1604のターゲットDNA配列から特異性の高い部位を抽出し(ステップS1605)、求められたプローブ候補部位の中で、ハイブリダイゼーションの物理的安定性(Tm値や2次構造安定性)を吟味し(ステップS1606)、最終的なプローブセット(ステップS1607)を導き出す。
【0067】
最後に、ステップS1602において、遺伝子転写産物の発現量を調べることが目的として選ばれた場合には、ステップS1609に移り、ターゲット遺伝子のSNP塩基配列が取得される。SNP判別のためのプローブは、基本的にはSNP部位を中央にもつある程度の長さ以上の塩基配列を選べばよいが、あまり長いプローブを選ぶとSNPが判定しづらくなり、あまり短い長さのプローブを選ぶと、ノイズが多くなり、また判断しづらくなる。通常は、20個から40個ぐらいの長さの配列をプローブとして選ぶことが多い。
【0068】
最終的なプローブセット(ステップS1607)は、同様に、求められたプローブ候補部位の中で、ハイブリダイゼーションの物理的安定性(Tm値や2次構造安定性)を吟味することによって決定される(ステップS1606)。
【0069】
このようにして求められたプローブセットは、図1の実験目的102に最適なプローブセットであり、DNAマイクロアレイを用いた実験全体にわたって、一貫した意味を持つ。つまり、図11から図15に示した目的別実験結果解析部106における処理において、それぞれのプローブセットがどのような目的でデザインされたかという情報が必要不可欠になってくるのである。
【0070】
本発明は、このプローブデザインをユーザが行って、直接図8に示すGUIを用いて入力してもよいが、そのデザインがどのような目的で行われたかという情報が目的別実験結果解析部106における処理において必要不可欠となる。
【0071】
以上の説明から明らかなように、本実施形態によればオリゴヌクレオチドを用いたDNAプローブアレイによる種々の実験を行うにあたり、実験者は実験目的等をクライアントに入力するだけで当該実験目的に則したDNAプローブアレイを入手することができ、実験結果を送るだけで解析結果を入手することが可能となり、プローブ設計及び解析において専門的な技術を持たなくても容易に実験を行うことが可能となる。
【0072】
【他の実施形態】
なお、本発明は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インタフェイス機器、リーダなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0073】
また、本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0074】
この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0075】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピ(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【0076】
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0077】
さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように本発明にかかる情報処理システムを利用することにより、オリゴヌクレオチドを用いたDNAマイクロアレイによる実験が容易に実現できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる情報処理システムの機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる情報処理システムの構成を示す図である。
【図3】ハイブリダイゼーション反応を説明するための図である。
【図4】DNAマイクロアレイの物理的な状態を示した図である。
【図5】実験目的決定方法を示した図である。
【図6】プローブ配置決定方法を示した図である。
【図7】遺伝子リスト決定方法を示した図である。
【図8】プローブリスト決定方法を示した図である。
【図9】遺伝子リスト決定方法を示した図である。
【図10】遺伝子リスト決定方法を示した図である。
【図11】プローブ別実験結果表示方法を示した図である。
【図12】遺伝子別実験結果表示方法を示した図である。
【図13】目的別解析結果表示方法を示した図である。
【図14】目的別判定結果表示方法を示した図である。
【図15】目的別判定結果表示方法を示した図である。
【図16】プローブ自動作成方法を示したフローチャートである。
【符号の説明】
101 DNAマイクロアレイ仕様決定部(実験目的判定部)
102 DNAマイクロアレイ仕様(実験目的含む)
103 DNAマイクロアレイ決定部
104 DNAマイクロアレイ
105 実験結果
106 目的別実験結果判定部
107 解析結果
Claims (8)
- クライアントとサーバとが接続された情報処理システムであって、
前記クライアントは、
DNAマイクロアレイを用いて行われる実験の実験目的に関する情報を入力する入力手段と、
前記入力された実験目的に関する情報を送信する実験目的送信手段と、
前記実験目的に関する情報に基づいて決定されたDNAマイクロアレイを用いて行われた実験の実験結果を送信する実験結果送信手段と、
前記実験結果に基づいて解析された解析結果を受信し、出力する解析結果出力手段と、を備え、
前記サーバは、
前記実験目的に関する情報に基づいて、DNAマイクロアレイを決定する決定手段と、
前記実験結果を解析する解析手段と、
前記解析結果を送信する解析結果送信手段と
を備えることを特徴とする情報処理システム。 - 前記実験目的に関する情報は、
前記DNAマイクロアレイを用いた、DNA存在の判別、SNPの判別、またはDNA発現解析のいずれかの情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。 - 前記実験目的に関する情報がDNA発現解析であった場合、前記解析手段は、遺伝子転写物の定量値を算出することを特徴とする請求項2に記載の情報処理システム。
- 前記実験目的に関する情報がDNA存在の判別またはSNPの判別であった場合、前記解析手段は、検体中に存在する遺伝子のタイプまたは検体中に存在する遺伝子の由来生物を特定することを特徴とする請求項2に記載の情報処理システム。
- クライアントとサーバとが接続された情報処理システムであって、
前記クライアントは、
DNAマイクロアレイの仕様に関する情報を入力する仕様入力手段と、
前記入力された仕様に関する情報を送信する送信手段と、
前記仕様に関する情報に基づいて設計されたDNAマイクロアレイを用いて行われた実験の実験結果を送信する実験結果送信手段と、
前記実験結果に基づいて解析された解析結果を受信し、出力する解析結果出力手段と、を備え、
前記サーバは、
前記仕様に関する情報に基づいて、DNAマイクロアレイを決定する決定手段と、
前記実験結果を解析する解析手段と、
前記解析結果を送信する解析結果送信手段と
を備えることを特徴とする情報処理システム。 - 前記仕様に関する情報は、
ターゲット塩基配列定量目的またはターゲット塩基配列存在有無のいずれかの情報を含むことを特徴とする請求項5に記載の情報処理システム。 - 前記仕様に関する情報が、ターゲット塩基配列定量目的であった場合、前記解析手段は、ターゲット塩基配列の定量値を算出することを特徴とする請求項6に記載の情報処理システム。
- 前記仕様に関する情報が、ターゲット塩基配列存在有無であった場合、前記解析手段は、ターゲット塩基配列の存在有無を判定することを特徴とする請求項6に記載の情報処理システム。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2012198228A (ja) * | 2006-06-16 | 2012-10-18 | Promega Corp | 装置の特性のタイプを選択する生物試料処理装置 |
JP2018523227A (ja) * | 2015-06-30 | 2018-08-16 | エメラルド クラウド ラボ、インコーポレイテッド | 実験室の実験の管理、実行および分析のためのシステムおよび方法 |
-
2003
- 2003-05-07 JP JP2003129449A patent/JP2004333290A/ja not_active Withdrawn
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