JP2004333137A - 無接触磁気式ポテンショメータおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】温度特性に優れ、薄型、小型でかつ高速回転時にも振動や騒音の少ない無接触のポテンショメータを提供する。
【解決手段】回転基板上に永久磁石を配置し、該永久磁石に対向して空隙もしくは媒体を介して磁界検出素子を配置して、回転基板の回転に伴い出力信号が得られる無接触磁気式ポテンショメータにおいて、回転基板が非磁性基板であり、該回転基板上の−θ°〜+θ°(0<θ≦180°)の角度範囲に、回転基板の中心とは異なる中心を有する2本の円弧と回転基板の中心から引かれた半径の一部2本で囲まれる形状の2個の永久磁石を有し、各永久磁石が互いに異なる磁極が表面に着磁されており、磁界検出素子で得られる出力信号が−θd°〜+θd°(0<θd≦θ≦180°)の範囲で一次関数となるように2個の永久磁石と磁界検出素子が配置されている。
【選択図】 図2
【解決手段】回転基板上に永久磁石を配置し、該永久磁石に対向して空隙もしくは媒体を介して磁界検出素子を配置して、回転基板の回転に伴い出力信号が得られる無接触磁気式ポテンショメータにおいて、回転基板が非磁性基板であり、該回転基板上の−θ°〜+θ°(0<θ≦180°)の角度範囲に、回転基板の中心とは異なる中心を有する2本の円弧と回転基板の中心から引かれた半径の一部2本で囲まれる形状の2個の永久磁石を有し、各永久磁石が互いに異なる磁極が表面に着磁されており、磁界検出素子で得られる出力信号が−θd°〜+θd°(0<θd≦θ≦180°)の範囲で一次関数となるように2個の永久磁石と磁界検出素子が配置されている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、工作機、FA機器、自動車等の制御部品の回転移動時や直線移動時の位置の変化を電圧出力として取り出す無接触磁気式ポテンショメータおよびその製造方法に関し、詳しくは温度安定性に優れた磁気式の無接触ポテンショメータおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、角度センサーの一つとして、無接触型ポテンショメータが知られている。その中で、磁気式の無接触ポテンショメータとしては、例えば、図9に示すように、回転軸1を中心とする円周上に配置された磁気抵抗効果素子MR1およびMR2と、回転軸1に取り付けられた半円盤状の永久磁石2で構成され、永久磁石2の1回転で1サイクルの出力電圧が得られるように構成された構造のものが良く知られている(特許文献1参照)。図9に示す無接触ポテンショメータでは構造が複雑になることに加えて永久磁石2の回転角度と出力電圧との関係は図13に示すようになり、有効直線部としては、たかだか90°程度しか得られず、更に、高速回転時などでは偏芯が振動や騒音の問題となることが指摘されていた。
【0003】
また、図10は、ホール素子3を使用した例であり、ホール素子3と円筒状回転ヨーク4と、この回転ヨーク4に取り付けた永久磁石5とから構成され、回転ヨーク4の端壁とホール素子3との間隙Gを変化させることによりホール素子3から1回転で1サイクルの出力電圧が得られるように構成されている。しかし、図10に示すものは回転ヨーク4の形状加工が難しく、加えて間隙Gの精微な調整が必要であり、得られる出力電圧が小さいなどの問題があった(特許文献1参照)。
【0004】
さらに、図11および図12に示すホール素子3を使用した例であり、外径の大きさが次第に変化する外周を有する回転ヨークと空隙を介して互いに対向配置した永久磁石8およびホール素子3から成り、永久磁石8と対向する反対側の面に磁性体9を配置して、永久磁石8と磁性体9の間の空隙に形成される磁界を回転ヨーク6で一部を遮断することでホール素子3から出力が得られる(特許文献1参照)構造を持っている。この構造から、回転ヨーク6の回転位置によってホール素子3の出力電圧は、1回転で1サイクルとなり、回転ヨークの形状から有効直線部をほぼ360°とすることができるようにしている。このことによって、ホール素子の位置調整が不要な無接触ポテンショメータが得られている。しかし、この構造の無接触ポテンショメータでは、永久磁石8と対向する反対側の面にある磁性体9の間に円筒状回転ヨーク6を配置する必要があるため、最近のポテンショメータの小型化、薄型化の要請の中では、全体の厚さが厚くなることは大きな課題となっている。
【0005】
その他、特開2001−41768号公報(特許文献2)には、磁気検出素子と、基板と、基板に設けられた磁性部材とを備え、磁性部材が磁気検出素子との対向方向に単極着磁された永久磁石であり、磁性部材の磁気検出素子との対向面積が相対的移動方向に沿い規則的に変化し、磁気検出素子の出力電圧が、回転角度又は移動距離に対してリニアに変化するものも提案されている。
【0006】
図10、図11および図12に示す構造の無接触磁気式ポテンショメータは、角度や位置の変化に対して永久磁石のパーミアンス、もしくは磁気回路のパーミアンス、あるいはその両方が変化する構造である。永久磁石の温度に対する特性の変化は、パーミアンスにより変わるため、図10、図11および図12のいずれの構造の無接触磁気式ポテンショメータでも温度変化がある場合は、角度や位置により出力の変化の度合いが異なり、角度誤差の原因となる問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−300414号公報
【特許文献2】
特開2001−41768号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、無接触磁気式ポテンショメータにおける上記課題を解決するもので、温度特性に優れ、薄型、小型でかつ高速回転時にも振動や騒音の少ない無接触のポテンショメータを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、永久磁石形状と、永久磁石に対する磁界検出素子の配置を適切にすることで、角度や位置の変化が永久磁石のパーミアンスに無関係で、かつ構造が簡単な無接触磁気式ポテンショメータの構造を見いだし、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明の請求項1は、回転基板上に永久磁石を配置し、該永久磁石に対向して空隙もしくは媒体を介して磁界検出素子を配置して、回転基板の回転に伴い出力信号が得られる無接触磁気式ポテンショメータにおいて、回転基板が非磁性基板であり、該回転基板上の−θ°〜+θ°(0<θ≦180°)の角度範囲に、回転基板の中心とは異なる中心を有する2本の円弧と回転基板の中心から引かれた半径の一部2本で囲まれる形状の2個の永久磁石を有し、各永久磁石が互いに異なる磁極が表面に現れるように、回転基板に垂直な方向に着磁されており、磁界検出素子で得られる出力信号が−θd°〜+θd°(0<θd≦θ≦180°)の範囲で一次関数となるように2個の永久磁石と磁界検出素子が配置されていることを特徴とする無接触磁気式ポテンショメータである。
【0011】
本発明の請求項2は、非磁性基板上の各永久磁石の半径方向における単位角度の表面積Sと該永久磁石の厚さLの比L/Sの変化が20%以下であることを特徴とする請求項1記載の無接触磁気式ポテンショメータである。
【0012】
本発明の請求項3は、前記回転基板上に2個の薄膜永久磁石を付着させたことを特徴とする請求項1記載の無接触磁気式ポテンショメータである。
【0013】
本発明の請求項4は、前記回転基板に凹部を形成し、該凹部に流動性を有する磁石材料を充填し固化および着磁して、2個の薄膜永久磁石を設けたことを特徴とする請求項1記載の無接触磁気式ポテンショメータである。
【0014】
本発明の請求項5は、無接触磁気式ポテンショメータに用いられる非磁性の回転基板で、該回転基板上の−θ°〜+θ°(0<θ≦180°)の角度範囲に、回転基板の中心とは異なる中心を有する2本の円弧と回転基板の中心から引かれた半径の一部2本で囲まれる形状の凹部を形成し、該凹部に流動性を有する磁石材料を充填し、固化および着磁して、または前記形状の範囲に薄膜永久磁石を付着させて、2個の薄膜永久磁石を形成することを特徴とする無接触磁気式ポテンショメータの製造方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の無接触磁気式ポテンショメータは、いずれの角度や位置においても非磁性基板上の各永久磁石の半径方向における単位角度の表面積Sと該永久磁石の厚さLの比L/Sの変化が20%以下になるようにし、かつ、永久磁石に対向してパーミアンスを変えるヨーク材を近くに持たないため、永久磁石のパーミアンスは常に一定となる。したがって、永久磁石の温度に対する特性の変化はパーミアンスにより変わるので、永久磁石のパーミアンスが一定であることは、パーミアンス起因の永久磁石の温度特性変化が無いことを示し、温度変化時の永久磁石自体の特性変化のみ補償すれば温度安定性の優れた無接触ポテンショメータを構成できるものである。
【0016】
また、前記永久磁石は、薄膜状に形成された永久磁石を回転基板上に接着したり、回転基板に所望の凹部を形成し、該凹部に流動性を有する磁石材料を充填して形成されるため、作製が容易で、かつ形成後の直線性の構成などもレーザー等を用いたトリミング処理で実現できる。
【0017】
本発明の無接触磁気式ポテンショメータに用いられる回転基板には、アルミニウム板、シリコンウエハ非磁性体のみならず、強磁性体以外の常磁性体などを用いることができる。
【0018】
本発明の無接触磁気式ポテンショメータに用いられる永久磁石は、一方向に単極着磁した永久磁石を使用する。即ち、永久磁石は磁気検出素子(磁界検出素子)との対向方向に単極着磁すれば良く、例えば一方の永久磁石は、磁気検出素子と対向する基板表面側がN極及びその反対側(基板裏面側)がS極となるように配向させ、他方を、基板表面側がS極及びその反対側(基板裏面側)がN極となるように配向させて着磁する。つまり、各永久磁石が、互いに異なる磁極が表面に現れるように、回転基板面に概ね垂直な方向にそれぞれ着磁されている。
【0019】
基板上に設ける永久磁石は、上記のように単極着磁でよく、基板に所定の形状の永久磁石を埋め込むことでも形成できるが、ペースト状の磁石組成物を用いて所定形状に形成したボンド磁石が好ましい。例えば、予め基板に形成した所定形状の凹部に磁石組成物を充填するか、又は基板に磁石組成物を所定のパターンで印刷した後、加熱固化させ、その後着磁するだけでよい。
【0020】
なお、ボンド磁石は磁性粉をバインダー樹脂で結合したものであり、磁性粉としてはSmCo系、NdFeB系、SmFeN系、フェライト系などの通常の磁性粉を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。特に、SmCo系、NdFeB系、SmFeN系等の希土類元素を含有するボンド磁石を用いれば磁束密度が高いことから、一層精度の良いポテンショメータを提供することができる。
【0021】
また、永久磁石として、回転基板上に薄膜作成方法により永久磁石薄膜を形成し、その後薄膜を着磁することで永久磁石を形成することもできる。例えば、フェライト磁石、希土類元素と鉄,コバルト等遷移金属から選ばれた少なくとも1種の金属元素を主に用いるいわゆる希土類磁石材料を薄膜状に形成したものであり、特に、SmCo5系磁石材料、NdFeB系磁石材料、SmFeN系磁石材料等を用いることが好ましい。重量等を勘案すると、厚さ0.5mm以下の薄膜状であることが好ましい。
【0022】
この薄膜状の永久磁石を形成する方法には、スクリーン印刷、ディッピング法あるいはスパッタリング法等などがあり、これらの方法で円形基板上に薄膜状の永久磁石を形成すれば、基板と永久磁石とを接着する必要もなくなり、簡便に薄膜状の永久磁石を形成することができる。回転基板に所望の凹部を形成し、該凹部に流動性を有する磁石材料を充填して形成することもできる。
【0023】
特に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂からなる樹脂バインダーとSmCo5系磁性粉、Sm2Co17系磁性粉、SmFeN系磁性粉、NdFeB系磁性粉から選ばれた少なくとも1種を含有する組成物を、スクリーン印刷又はディッピングして硬化もしくは固化させ、基板上に厚さ0.5mm以下の薄膜を形成する方法は、大型の成膜装置等を必要とせず、安価に硬磁性体層を形成できるので特に好ましい。
【0024】
また、SmCo5系磁性体、Sm2Co17系磁性体、SmFeN系磁性体、NdFeB系磁性体から選ばれた少なくとも1種を含有したターゲットを用い、スパッタリングあるいは蒸着によって、厚さ0.5mm以下の薄膜をシリコン基板上に形成することで、基板と永久磁石を接着する必要もなく、簡易に薄膜状の永久磁石を形成することができる。
【0025】
また、本発明の、回転基板の回転で出力信号が得られる無接触磁気式ポテンショメータにおいては、非磁性の基板上の、−θ°〜+θ°(0<θ≦180°)の角度範囲内で、回転基板の中心とは異なる中心を有する2本の円弧と回転基板の中心から引かれた半径の一部2本で囲まれる形状の2個の永久磁石を有し、該永久磁石が互いに異なる磁極が表面に現れており、磁界検出素子で得られる出力信号が、−θd°〜+θd°(0<θd≦θ≦180°)の範囲で一次関数となるように2個の永久磁石と磁気検出素子が配置されている点に大きな特徴がある。
【0026】
具体的な永久磁石の形状として、例えば図1に示すような無接触磁気式ポテンショメータにおいて、非磁性の基板上の、−60°〜+60°の角度範囲内で、回転基板の中心とは異なる、基板の中心よりy軸方向に、磁気検出素子による検出位置の径に対して1/6ずれた中心を有する、2本の円弧と回転基板の中心から引かれた半径の一部2本で囲まれる永久磁石104と、同様に、回転基板の中心とは異なる、基板の中心よりx軸方向に、検出位置の径に対して1/30およびy軸方向に検出位置の径に対して6/25ずれた中心を有する2本の円弧と回転基板の中心から引かれた半径の一部2本で囲まれる永久磁石105の、2個の永久磁石を有し、磁気検出素子101による検出位置の半径に対して永久磁石幅が1/15となるように形成している。
【0027】
この例では、永久磁石104の角度は−60〜+10°、永久磁石2の角度は−10〜+60°である。そして、基板の中心と同心となるように磁気検出素子101を設置することにより、−30〜+30°、すなわち60°の範囲で得られる出力信号が一次関数となるロータリーポテンショメータを構成することができる。
【0028】
磁気検出素子101としては、公知のホール素子や磁気抵抗素子等が利用できる。しかも、2個の永久磁石104、105の形状を上記のごとく形成してあり、永久磁石104、105の移動に伴って磁気検出素子が検知する磁束密度の変化もリニアになるので、複雑な形状の磁気検出素子を用いる必要がなく、通常市販されているInSb系やGaAs系などの安価なホール素子を用いて正確な検出が可能である。
【0029】
本発明の無接触磁気式ポテンショメータは、通常、基板100とホール素子101がセットされた形態で提供される。
ポテンショメータの有効角度範囲に対する出力電圧は個々のポテンショメータにより異なるが、例えば、図1〜図3で示す場合、−30°〜+30°の60°の角度範囲に対して0.8V〜4.2Vの3.4Vの出力電圧が得られる。この例では出力電圧が約2.5Vの時にホール素子に加わる磁界がゼロとなる、いわゆる中点となる。実際の使用では、実使用時の検出角度範囲がポテンショメータの有効角度範囲内であり、実使用時の検出角度範囲の中点とポテンショメータの有効角度範囲の中点を一致させて使用するほうが望ましい。
【0030】
本発明のポテンショメータは、角度に対する出力電圧が一意に決まるため、出力電圧の値で基準位置からの絶対角度、例えば中点位置からの絶対角度を知ることができる。
【0031】
また、本発明の無接触磁気式ポテンショメータは、いずれの角度や位置においても非磁性基板上の各永久磁石の半径方向における単位角度の表面積Sと該永久磁石の厚さLの比L/Sの変化が20%以下になるようにし、かつ、永久磁石に対向してパーミアンスを変えるヨーク材を近くに持たないため、永久磁石のパーミアンスは常に一定となる。したがって、上記のように、永久磁石の温度に対する特性の変化は、パーミアンスにより変わるため、永久磁石のパーミアンスが一定であることは、パーミアンス起因の永久磁石の温度特性変化が無いことを示し、温度変化時の永久磁石自体の特性変化のみ補償すれば温度安定性の優れた無接触ポテンショメータを構成できるのである。
【0032】
なお、図14に示すように、ホール素子に加わる磁界がゼロとなる中心位置にホール素子があるとき、ホール素子位置を通る中心位置P2からの半径方向と、各永久磁石104,105とそれぞれ、一方の端部との角度をθk(実施例では、10°)とし、ホール素子位置を通る中心位置P2からの半径方向における、永久磁石の円弧間の距離をdaとし、中心位置P2からホール素子位置間での長さを半径とする円の−θk〜+θkで区切られる円弧の長さをdbとすると、下記の式が成立するようにθkを決めるのが好ましい。
0<θk<θd≦θ<180°でかつdb≧0.5da
その理由はdb<0.5daでは、中心付近でポテンショメータ角度に対するセンサ出力電圧の線形性を保つのが難しくなるためである。
【0033】
以下図面によって本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
最初に、図1を参照して、本発明の無接触磁気式ポテンショメータの全体の構成を説明する。図1は本発明の無接触磁気式ポテンショメータを示す側面図である。図1において、無接触磁気式ポテンショメータ120は固定したプリント基板100に水平方向の磁界成分を検出するホール素子(磁界検出素子)101を固定している。プリント基板100には回転軸103を介して好ましくは非磁性の基板102が回転可能に取り付けられている。基板102のホール素子101に対抗する表面には2個の永久磁石104、105が設けられている。永久磁石104、105は、基板102の表面に対してほぼ垂直方向に、それぞれ逆方向に着磁されている。
なお、2個の永久磁石の形状、永久磁石とホール素子の配置関係は図2以下を参照して詳述する。
【0034】
本発明の無接触磁気式ポテンショメータ120は、例えば、幾何学的配置を示す図2に示すように回転基板102の中心軸座標P2に対して中心軸を異にする中心軸座標P1に基づく円弧と中心軸座標を通る半径で区切られて構成された永久磁石104および105と、回転時に所定の位置で前記永久磁石104および105と交差するように該永久磁石と適当な空隙を介して配置したホール素子101(このホール素子の回転基板に対する相対的な軌跡を点線で示す)から成る。この構成での磁石部の表面積と厚さの比の変化は約1.3%である。
【0035】
具体的には、φ30で厚さ5mmの樹脂基板102に、中心軸座標P2とは異なる中心軸座標P1に基づいて2つの円弧状空間を形成し、この円弧状空間内にサマリウムコバルト系磁石を充填している。磁石部の角度は、−40°から+40°の範囲である。これら磁石はそれぞれ異なる磁極が磁石表面で現れるように、基板面にほぼ垂直に着磁されている。なお、円弧状空間の両端は中心軸座標P2の半径方向に向くように形成されている。
【0036】
この回転基板102とギャップ2mm隔てて、回転軸に対してφ18.75mmの位置にサマリウムコバルト系磁石に対して温度補償されたアレグロ社製ホール素子101を配置した。このように構成した磁気式ポテンショメータは、25°Cの測定温度で図3の特性を示した。
【0037】
更に該磁気式ポテンショメータは145°Cの測定温度でも図3と同じ特性を示した。
【0038】
(実施例2)
φ30のSUS301基板に、2つの円弧状磁石104、105をサマリウムコバルト系磁石を含むペースト状の磁石組成物をスクリーン印刷法により形成した。磁石部の角度は、−40°から+40°の範囲とした。これら磁石をそれぞれ異なる磁極が磁石表面に現れるように、基板面にほぼ垂直に着磁して回転基板102を形成した。この回転基板102とギャップ2mm隔てて、回転軸に対してφ18.75mmの位置にサマリウムコバルト系磁石に対して温度補償されたアレグロ社製ホール素子101を配置した。このように構成した磁気式ポテンショメータ120は、25°Cの測定温度で図4の特性を示した。
【0039】
更に該磁気式ポテンショメータは145°Cの測定温度でも図4と同じ特性を示した。
【0040】
(比較例1)
図5に比較例1の構成を示す。回転基板の中心に対して中心軸P4を同じにする弧106aと中心軸P4を異にする中心軸P5に基づく弧106bとそれらを結ぶ半径方向の直線部で囲まれるパターンで構成された永久磁石106を円周側に磁極が現れるように着磁し、該磁石の円周側に対向するように適当な空隙を介してホール素子(図示せず、ただしホール素子の回転基板に対する相対的な軌跡を点線で示す)を配置した。この構成でのパーミアンスは磁石部の単位角度あたりの断面積と半径方向の長さの比であり、その変化は約90%である。
【0041】
具体的には、φ30の樹脂基板に中心座標を回転軸と同じにする弧と異にする弧で円弧状空間を形成し、この円弧状空間にサマリウムコバルト系磁石を充填した。この磁石を回転軸の外周部がN極になるように反発ラジアル着磁コイルを用いて着磁して回転基板102を形成した。この回転基板102とギャップ0.5mm隔てて回転基板の外周に対向するようにサマリウムコバルト系磁石に対して温度補償されたアレグロ社製ホール素子を配置した。このように構成した磁気ポテンショメータは、図6のように90°C付近と20°C付近で傾きの異なる温度特性を示した。
【0042】
(比較例2)
図7に本発明の第2の比較例の構成を示す。回転円形基板の中心に対して中心軸P6を同じにする弧(外周側の弧)と中心軸P6と異なる中心軸P5にする弧(内周側の弧)とそれらを結ぶ直線部で囲まれるパターンで構成された2つの永久磁石107、108を円周側に磁極が現れるように着磁し、該磁石の円周側に対向するように適当な空隙を介してホール素子を配置した。この構成でのパ−ミアンスは磁石部の単位角度あたりの断面積と半径方向の長さの比であり、その変化は約21%である。
【0043】
具体的には、φ30の樹脂基板に中心座標を回転軸と同じにする弧と異にする弧で円弧状空間を形成し、この円弧状空間にサマリウムコバルト系磁石を充填した。磁石部の角度は、−60°から+60°の範囲とした。
【0044】
この磁石を回転軸の外周部がN極になるように反発ラジアル着磁コイルを用いて着磁して回転円形基板を形成した。この回転円形基板とギャップ0.5mm隔てて回転円形基板の外周に対向するようにサマリウムコバルト系磁石に対して温度補償されたアレグロ社製ホール素子を配置した。このように構成した磁気ポテンショメータでは、図8のように、温度変化によって出力電圧の角度依存性が変化し、80℃と20℃では出力の角度依存性が異なっていることがわかった。
【0045】
【発明の効果】
本発明の無接触磁気式ポテンショメータは、いずれの角度や位置においても永久磁石を半径方向に切断した時の表面積Sと厚さLの比L/Sの変化が20%以下になるようにし、かつ、永久磁石に対向してパーミアンスを変えるヨーク材を近くに持たないため、永久磁石のパーミアンスは常に一定となり、パーミアンス起因の永久磁石の温度特性変化が無く、温度変化時の永久磁石自体の特性変化のみ補償するだけで温度安定性の優れており、薄型、小型でかつ高速回転時にも振動や騒音の少ない無接触磁気式ポテンショメータを容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施例1の無接触磁気式ポテンショメータの側面図である。
【図2】図2は本発明の実施例1の無接触磁気式ポテンショメータを幾何学的に見た平面図である。
【図3】図3は図1に示す基板を用いて得られる回転角度に対するホール素子出力を示すグラフである。
【図4】図4は実施例2のポテンショメータで得られる回転角度に対するホール素子出力を示すグラフである。
【図5】図5は比較例1のポテンショメータの幾何学的平面図である。
【図6】図6は比較例1のポテンショメータで得られる回転角度に対するホール素子出力を示すグラフである。
【図7】図7は比較例2のポテンショメータの幾何学的平面図である。
【図8】図8は比較例2のポテンショメータで得られる回転角度に対するホール素子出力を示すグラフである。
【図9】図9は従来の無接触ポテンショメータを示す断面図である。
【図10】図10は従来の他の無接触ポテンショメータを示す説明図である。
【図11】図11は従来の他の無接触ポテンショメータを示す断面図である。
【図12】図12は図11に示す無接触ポテンショメータの縦断面図である。
【図13】図13は図9の無接触ポテンショメータの出力電圧を示す線図である。
【図14】図14は本発明の無接触ポテンショメータにおける各永久磁石に対する磁気検出素子の位置決めを説明するための幾何学的平面図である。
【符号の説明】
1 回転軸
2 永久磁石
3 ホール素子
4 円筒状回転ヨーク
6 回転ヨーク
8 永久磁石
9 磁性体
100 基板
101 磁気検出素子
102 回転基板
104 永久磁石
105 永久磁石
106 永久磁石
107 永久磁石
108 永久磁石
120 無接触磁気式ポテンショメータ
【発明の属する技術分野】
本発明は、工作機、FA機器、自動車等の制御部品の回転移動時や直線移動時の位置の変化を電圧出力として取り出す無接触磁気式ポテンショメータおよびその製造方法に関し、詳しくは温度安定性に優れた磁気式の無接触ポテンショメータおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、角度センサーの一つとして、無接触型ポテンショメータが知られている。その中で、磁気式の無接触ポテンショメータとしては、例えば、図9に示すように、回転軸1を中心とする円周上に配置された磁気抵抗効果素子MR1およびMR2と、回転軸1に取り付けられた半円盤状の永久磁石2で構成され、永久磁石2の1回転で1サイクルの出力電圧が得られるように構成された構造のものが良く知られている(特許文献1参照)。図9に示す無接触ポテンショメータでは構造が複雑になることに加えて永久磁石2の回転角度と出力電圧との関係は図13に示すようになり、有効直線部としては、たかだか90°程度しか得られず、更に、高速回転時などでは偏芯が振動や騒音の問題となることが指摘されていた。
【0003】
また、図10は、ホール素子3を使用した例であり、ホール素子3と円筒状回転ヨーク4と、この回転ヨーク4に取り付けた永久磁石5とから構成され、回転ヨーク4の端壁とホール素子3との間隙Gを変化させることによりホール素子3から1回転で1サイクルの出力電圧が得られるように構成されている。しかし、図10に示すものは回転ヨーク4の形状加工が難しく、加えて間隙Gの精微な調整が必要であり、得られる出力電圧が小さいなどの問題があった(特許文献1参照)。
【0004】
さらに、図11および図12に示すホール素子3を使用した例であり、外径の大きさが次第に変化する外周を有する回転ヨークと空隙を介して互いに対向配置した永久磁石8およびホール素子3から成り、永久磁石8と対向する反対側の面に磁性体9を配置して、永久磁石8と磁性体9の間の空隙に形成される磁界を回転ヨーク6で一部を遮断することでホール素子3から出力が得られる(特許文献1参照)構造を持っている。この構造から、回転ヨーク6の回転位置によってホール素子3の出力電圧は、1回転で1サイクルとなり、回転ヨークの形状から有効直線部をほぼ360°とすることができるようにしている。このことによって、ホール素子の位置調整が不要な無接触ポテンショメータが得られている。しかし、この構造の無接触ポテンショメータでは、永久磁石8と対向する反対側の面にある磁性体9の間に円筒状回転ヨーク6を配置する必要があるため、最近のポテンショメータの小型化、薄型化の要請の中では、全体の厚さが厚くなることは大きな課題となっている。
【0005】
その他、特開2001−41768号公報(特許文献2)には、磁気検出素子と、基板と、基板に設けられた磁性部材とを備え、磁性部材が磁気検出素子との対向方向に単極着磁された永久磁石であり、磁性部材の磁気検出素子との対向面積が相対的移動方向に沿い規則的に変化し、磁気検出素子の出力電圧が、回転角度又は移動距離に対してリニアに変化するものも提案されている。
【0006】
図10、図11および図12に示す構造の無接触磁気式ポテンショメータは、角度や位置の変化に対して永久磁石のパーミアンス、もしくは磁気回路のパーミアンス、あるいはその両方が変化する構造である。永久磁石の温度に対する特性の変化は、パーミアンスにより変わるため、図10、図11および図12のいずれの構造の無接触磁気式ポテンショメータでも温度変化がある場合は、角度や位置により出力の変化の度合いが異なり、角度誤差の原因となる問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−300414号公報
【特許文献2】
特開2001−41768号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、無接触磁気式ポテンショメータにおける上記課題を解決するもので、温度特性に優れ、薄型、小型でかつ高速回転時にも振動や騒音の少ない無接触のポテンショメータを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、永久磁石形状と、永久磁石に対する磁界検出素子の配置を適切にすることで、角度や位置の変化が永久磁石のパーミアンスに無関係で、かつ構造が簡単な無接触磁気式ポテンショメータの構造を見いだし、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明の請求項1は、回転基板上に永久磁石を配置し、該永久磁石に対向して空隙もしくは媒体を介して磁界検出素子を配置して、回転基板の回転に伴い出力信号が得られる無接触磁気式ポテンショメータにおいて、回転基板が非磁性基板であり、該回転基板上の−θ°〜+θ°(0<θ≦180°)の角度範囲に、回転基板の中心とは異なる中心を有する2本の円弧と回転基板の中心から引かれた半径の一部2本で囲まれる形状の2個の永久磁石を有し、各永久磁石が互いに異なる磁極が表面に現れるように、回転基板に垂直な方向に着磁されており、磁界検出素子で得られる出力信号が−θd°〜+θd°(0<θd≦θ≦180°)の範囲で一次関数となるように2個の永久磁石と磁界検出素子が配置されていることを特徴とする無接触磁気式ポテンショメータである。
【0011】
本発明の請求項2は、非磁性基板上の各永久磁石の半径方向における単位角度の表面積Sと該永久磁石の厚さLの比L/Sの変化が20%以下であることを特徴とする請求項1記載の無接触磁気式ポテンショメータである。
【0012】
本発明の請求項3は、前記回転基板上に2個の薄膜永久磁石を付着させたことを特徴とする請求項1記載の無接触磁気式ポテンショメータである。
【0013】
本発明の請求項4は、前記回転基板に凹部を形成し、該凹部に流動性を有する磁石材料を充填し固化および着磁して、2個の薄膜永久磁石を設けたことを特徴とする請求項1記載の無接触磁気式ポテンショメータである。
【0014】
本発明の請求項5は、無接触磁気式ポテンショメータに用いられる非磁性の回転基板で、該回転基板上の−θ°〜+θ°(0<θ≦180°)の角度範囲に、回転基板の中心とは異なる中心を有する2本の円弧と回転基板の中心から引かれた半径の一部2本で囲まれる形状の凹部を形成し、該凹部に流動性を有する磁石材料を充填し、固化および着磁して、または前記形状の範囲に薄膜永久磁石を付着させて、2個の薄膜永久磁石を形成することを特徴とする無接触磁気式ポテンショメータの製造方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の無接触磁気式ポテンショメータは、いずれの角度や位置においても非磁性基板上の各永久磁石の半径方向における単位角度の表面積Sと該永久磁石の厚さLの比L/Sの変化が20%以下になるようにし、かつ、永久磁石に対向してパーミアンスを変えるヨーク材を近くに持たないため、永久磁石のパーミアンスは常に一定となる。したがって、永久磁石の温度に対する特性の変化はパーミアンスにより変わるので、永久磁石のパーミアンスが一定であることは、パーミアンス起因の永久磁石の温度特性変化が無いことを示し、温度変化時の永久磁石自体の特性変化のみ補償すれば温度安定性の優れた無接触ポテンショメータを構成できるものである。
【0016】
また、前記永久磁石は、薄膜状に形成された永久磁石を回転基板上に接着したり、回転基板に所望の凹部を形成し、該凹部に流動性を有する磁石材料を充填して形成されるため、作製が容易で、かつ形成後の直線性の構成などもレーザー等を用いたトリミング処理で実現できる。
【0017】
本発明の無接触磁気式ポテンショメータに用いられる回転基板には、アルミニウム板、シリコンウエハ非磁性体のみならず、強磁性体以外の常磁性体などを用いることができる。
【0018】
本発明の無接触磁気式ポテンショメータに用いられる永久磁石は、一方向に単極着磁した永久磁石を使用する。即ち、永久磁石は磁気検出素子(磁界検出素子)との対向方向に単極着磁すれば良く、例えば一方の永久磁石は、磁気検出素子と対向する基板表面側がN極及びその反対側(基板裏面側)がS極となるように配向させ、他方を、基板表面側がS極及びその反対側(基板裏面側)がN極となるように配向させて着磁する。つまり、各永久磁石が、互いに異なる磁極が表面に現れるように、回転基板面に概ね垂直な方向にそれぞれ着磁されている。
【0019】
基板上に設ける永久磁石は、上記のように単極着磁でよく、基板に所定の形状の永久磁石を埋め込むことでも形成できるが、ペースト状の磁石組成物を用いて所定形状に形成したボンド磁石が好ましい。例えば、予め基板に形成した所定形状の凹部に磁石組成物を充填するか、又は基板に磁石組成物を所定のパターンで印刷した後、加熱固化させ、その後着磁するだけでよい。
【0020】
なお、ボンド磁石は磁性粉をバインダー樹脂で結合したものであり、磁性粉としてはSmCo系、NdFeB系、SmFeN系、フェライト系などの通常の磁性粉を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。特に、SmCo系、NdFeB系、SmFeN系等の希土類元素を含有するボンド磁石を用いれば磁束密度が高いことから、一層精度の良いポテンショメータを提供することができる。
【0021】
また、永久磁石として、回転基板上に薄膜作成方法により永久磁石薄膜を形成し、その後薄膜を着磁することで永久磁石を形成することもできる。例えば、フェライト磁石、希土類元素と鉄,コバルト等遷移金属から選ばれた少なくとも1種の金属元素を主に用いるいわゆる希土類磁石材料を薄膜状に形成したものであり、特に、SmCo5系磁石材料、NdFeB系磁石材料、SmFeN系磁石材料等を用いることが好ましい。重量等を勘案すると、厚さ0.5mm以下の薄膜状であることが好ましい。
【0022】
この薄膜状の永久磁石を形成する方法には、スクリーン印刷、ディッピング法あるいはスパッタリング法等などがあり、これらの方法で円形基板上に薄膜状の永久磁石を形成すれば、基板と永久磁石とを接着する必要もなくなり、簡便に薄膜状の永久磁石を形成することができる。回転基板に所望の凹部を形成し、該凹部に流動性を有する磁石材料を充填して形成することもできる。
【0023】
特に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂からなる樹脂バインダーとSmCo5系磁性粉、Sm2Co17系磁性粉、SmFeN系磁性粉、NdFeB系磁性粉から選ばれた少なくとも1種を含有する組成物を、スクリーン印刷又はディッピングして硬化もしくは固化させ、基板上に厚さ0.5mm以下の薄膜を形成する方法は、大型の成膜装置等を必要とせず、安価に硬磁性体層を形成できるので特に好ましい。
【0024】
また、SmCo5系磁性体、Sm2Co17系磁性体、SmFeN系磁性体、NdFeB系磁性体から選ばれた少なくとも1種を含有したターゲットを用い、スパッタリングあるいは蒸着によって、厚さ0.5mm以下の薄膜をシリコン基板上に形成することで、基板と永久磁石を接着する必要もなく、簡易に薄膜状の永久磁石を形成することができる。
【0025】
また、本発明の、回転基板の回転で出力信号が得られる無接触磁気式ポテンショメータにおいては、非磁性の基板上の、−θ°〜+θ°(0<θ≦180°)の角度範囲内で、回転基板の中心とは異なる中心を有する2本の円弧と回転基板の中心から引かれた半径の一部2本で囲まれる形状の2個の永久磁石を有し、該永久磁石が互いに異なる磁極が表面に現れており、磁界検出素子で得られる出力信号が、−θd°〜+θd°(0<θd≦θ≦180°)の範囲で一次関数となるように2個の永久磁石と磁気検出素子が配置されている点に大きな特徴がある。
【0026】
具体的な永久磁石の形状として、例えば図1に示すような無接触磁気式ポテンショメータにおいて、非磁性の基板上の、−60°〜+60°の角度範囲内で、回転基板の中心とは異なる、基板の中心よりy軸方向に、磁気検出素子による検出位置の径に対して1/6ずれた中心を有する、2本の円弧と回転基板の中心から引かれた半径の一部2本で囲まれる永久磁石104と、同様に、回転基板の中心とは異なる、基板の中心よりx軸方向に、検出位置の径に対して1/30およびy軸方向に検出位置の径に対して6/25ずれた中心を有する2本の円弧と回転基板の中心から引かれた半径の一部2本で囲まれる永久磁石105の、2個の永久磁石を有し、磁気検出素子101による検出位置の半径に対して永久磁石幅が1/15となるように形成している。
【0027】
この例では、永久磁石104の角度は−60〜+10°、永久磁石2の角度は−10〜+60°である。そして、基板の中心と同心となるように磁気検出素子101を設置することにより、−30〜+30°、すなわち60°の範囲で得られる出力信号が一次関数となるロータリーポテンショメータを構成することができる。
【0028】
磁気検出素子101としては、公知のホール素子や磁気抵抗素子等が利用できる。しかも、2個の永久磁石104、105の形状を上記のごとく形成してあり、永久磁石104、105の移動に伴って磁気検出素子が検知する磁束密度の変化もリニアになるので、複雑な形状の磁気検出素子を用いる必要がなく、通常市販されているInSb系やGaAs系などの安価なホール素子を用いて正確な検出が可能である。
【0029】
本発明の無接触磁気式ポテンショメータは、通常、基板100とホール素子101がセットされた形態で提供される。
ポテンショメータの有効角度範囲に対する出力電圧は個々のポテンショメータにより異なるが、例えば、図1〜図3で示す場合、−30°〜+30°の60°の角度範囲に対して0.8V〜4.2Vの3.4Vの出力電圧が得られる。この例では出力電圧が約2.5Vの時にホール素子に加わる磁界がゼロとなる、いわゆる中点となる。実際の使用では、実使用時の検出角度範囲がポテンショメータの有効角度範囲内であり、実使用時の検出角度範囲の中点とポテンショメータの有効角度範囲の中点を一致させて使用するほうが望ましい。
【0030】
本発明のポテンショメータは、角度に対する出力電圧が一意に決まるため、出力電圧の値で基準位置からの絶対角度、例えば中点位置からの絶対角度を知ることができる。
【0031】
また、本発明の無接触磁気式ポテンショメータは、いずれの角度や位置においても非磁性基板上の各永久磁石の半径方向における単位角度の表面積Sと該永久磁石の厚さLの比L/Sの変化が20%以下になるようにし、かつ、永久磁石に対向してパーミアンスを変えるヨーク材を近くに持たないため、永久磁石のパーミアンスは常に一定となる。したがって、上記のように、永久磁石の温度に対する特性の変化は、パーミアンスにより変わるため、永久磁石のパーミアンスが一定であることは、パーミアンス起因の永久磁石の温度特性変化が無いことを示し、温度変化時の永久磁石自体の特性変化のみ補償すれば温度安定性の優れた無接触ポテンショメータを構成できるのである。
【0032】
なお、図14に示すように、ホール素子に加わる磁界がゼロとなる中心位置にホール素子があるとき、ホール素子位置を通る中心位置P2からの半径方向と、各永久磁石104,105とそれぞれ、一方の端部との角度をθk(実施例では、10°)とし、ホール素子位置を通る中心位置P2からの半径方向における、永久磁石の円弧間の距離をdaとし、中心位置P2からホール素子位置間での長さを半径とする円の−θk〜+θkで区切られる円弧の長さをdbとすると、下記の式が成立するようにθkを決めるのが好ましい。
0<θk<θd≦θ<180°でかつdb≧0.5da
その理由はdb<0.5daでは、中心付近でポテンショメータ角度に対するセンサ出力電圧の線形性を保つのが難しくなるためである。
【0033】
以下図面によって本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
最初に、図1を参照して、本発明の無接触磁気式ポテンショメータの全体の構成を説明する。図1は本発明の無接触磁気式ポテンショメータを示す側面図である。図1において、無接触磁気式ポテンショメータ120は固定したプリント基板100に水平方向の磁界成分を検出するホール素子(磁界検出素子)101を固定している。プリント基板100には回転軸103を介して好ましくは非磁性の基板102が回転可能に取り付けられている。基板102のホール素子101に対抗する表面には2個の永久磁石104、105が設けられている。永久磁石104、105は、基板102の表面に対してほぼ垂直方向に、それぞれ逆方向に着磁されている。
なお、2個の永久磁石の形状、永久磁石とホール素子の配置関係は図2以下を参照して詳述する。
【0034】
本発明の無接触磁気式ポテンショメータ120は、例えば、幾何学的配置を示す図2に示すように回転基板102の中心軸座標P2に対して中心軸を異にする中心軸座標P1に基づく円弧と中心軸座標を通る半径で区切られて構成された永久磁石104および105と、回転時に所定の位置で前記永久磁石104および105と交差するように該永久磁石と適当な空隙を介して配置したホール素子101(このホール素子の回転基板に対する相対的な軌跡を点線で示す)から成る。この構成での磁石部の表面積と厚さの比の変化は約1.3%である。
【0035】
具体的には、φ30で厚さ5mmの樹脂基板102に、中心軸座標P2とは異なる中心軸座標P1に基づいて2つの円弧状空間を形成し、この円弧状空間内にサマリウムコバルト系磁石を充填している。磁石部の角度は、−40°から+40°の範囲である。これら磁石はそれぞれ異なる磁極が磁石表面で現れるように、基板面にほぼ垂直に着磁されている。なお、円弧状空間の両端は中心軸座標P2の半径方向に向くように形成されている。
【0036】
この回転基板102とギャップ2mm隔てて、回転軸に対してφ18.75mmの位置にサマリウムコバルト系磁石に対して温度補償されたアレグロ社製ホール素子101を配置した。このように構成した磁気式ポテンショメータは、25°Cの測定温度で図3の特性を示した。
【0037】
更に該磁気式ポテンショメータは145°Cの測定温度でも図3と同じ特性を示した。
【0038】
(実施例2)
φ30のSUS301基板に、2つの円弧状磁石104、105をサマリウムコバルト系磁石を含むペースト状の磁石組成物をスクリーン印刷法により形成した。磁石部の角度は、−40°から+40°の範囲とした。これら磁石をそれぞれ異なる磁極が磁石表面に現れるように、基板面にほぼ垂直に着磁して回転基板102を形成した。この回転基板102とギャップ2mm隔てて、回転軸に対してφ18.75mmの位置にサマリウムコバルト系磁石に対して温度補償されたアレグロ社製ホール素子101を配置した。このように構成した磁気式ポテンショメータ120は、25°Cの測定温度で図4の特性を示した。
【0039】
更に該磁気式ポテンショメータは145°Cの測定温度でも図4と同じ特性を示した。
【0040】
(比較例1)
図5に比較例1の構成を示す。回転基板の中心に対して中心軸P4を同じにする弧106aと中心軸P4を異にする中心軸P5に基づく弧106bとそれらを結ぶ半径方向の直線部で囲まれるパターンで構成された永久磁石106を円周側に磁極が現れるように着磁し、該磁石の円周側に対向するように適当な空隙を介してホール素子(図示せず、ただしホール素子の回転基板に対する相対的な軌跡を点線で示す)を配置した。この構成でのパーミアンスは磁石部の単位角度あたりの断面積と半径方向の長さの比であり、その変化は約90%である。
【0041】
具体的には、φ30の樹脂基板に中心座標を回転軸と同じにする弧と異にする弧で円弧状空間を形成し、この円弧状空間にサマリウムコバルト系磁石を充填した。この磁石を回転軸の外周部がN極になるように反発ラジアル着磁コイルを用いて着磁して回転基板102を形成した。この回転基板102とギャップ0.5mm隔てて回転基板の外周に対向するようにサマリウムコバルト系磁石に対して温度補償されたアレグロ社製ホール素子を配置した。このように構成した磁気ポテンショメータは、図6のように90°C付近と20°C付近で傾きの異なる温度特性を示した。
【0042】
(比較例2)
図7に本発明の第2の比較例の構成を示す。回転円形基板の中心に対して中心軸P6を同じにする弧(外周側の弧)と中心軸P6と異なる中心軸P5にする弧(内周側の弧)とそれらを結ぶ直線部で囲まれるパターンで構成された2つの永久磁石107、108を円周側に磁極が現れるように着磁し、該磁石の円周側に対向するように適当な空隙を介してホール素子を配置した。この構成でのパ−ミアンスは磁石部の単位角度あたりの断面積と半径方向の長さの比であり、その変化は約21%である。
【0043】
具体的には、φ30の樹脂基板に中心座標を回転軸と同じにする弧と異にする弧で円弧状空間を形成し、この円弧状空間にサマリウムコバルト系磁石を充填した。磁石部の角度は、−60°から+60°の範囲とした。
【0044】
この磁石を回転軸の外周部がN極になるように反発ラジアル着磁コイルを用いて着磁して回転円形基板を形成した。この回転円形基板とギャップ0.5mm隔てて回転円形基板の外周に対向するようにサマリウムコバルト系磁石に対して温度補償されたアレグロ社製ホール素子を配置した。このように構成した磁気ポテンショメータでは、図8のように、温度変化によって出力電圧の角度依存性が変化し、80℃と20℃では出力の角度依存性が異なっていることがわかった。
【0045】
【発明の効果】
本発明の無接触磁気式ポテンショメータは、いずれの角度や位置においても永久磁石を半径方向に切断した時の表面積Sと厚さLの比L/Sの変化が20%以下になるようにし、かつ、永久磁石に対向してパーミアンスを変えるヨーク材を近くに持たないため、永久磁石のパーミアンスは常に一定となり、パーミアンス起因の永久磁石の温度特性変化が無く、温度変化時の永久磁石自体の特性変化のみ補償するだけで温度安定性の優れており、薄型、小型でかつ高速回転時にも振動や騒音の少ない無接触磁気式ポテンショメータを容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施例1の無接触磁気式ポテンショメータの側面図である。
【図2】図2は本発明の実施例1の無接触磁気式ポテンショメータを幾何学的に見た平面図である。
【図3】図3は図1に示す基板を用いて得られる回転角度に対するホール素子出力を示すグラフである。
【図4】図4は実施例2のポテンショメータで得られる回転角度に対するホール素子出力を示すグラフである。
【図5】図5は比較例1のポテンショメータの幾何学的平面図である。
【図6】図6は比較例1のポテンショメータで得られる回転角度に対するホール素子出力を示すグラフである。
【図7】図7は比較例2のポテンショメータの幾何学的平面図である。
【図8】図8は比較例2のポテンショメータで得られる回転角度に対するホール素子出力を示すグラフである。
【図9】図9は従来の無接触ポテンショメータを示す断面図である。
【図10】図10は従来の他の無接触ポテンショメータを示す説明図である。
【図11】図11は従来の他の無接触ポテンショメータを示す断面図である。
【図12】図12は図11に示す無接触ポテンショメータの縦断面図である。
【図13】図13は図9の無接触ポテンショメータの出力電圧を示す線図である。
【図14】図14は本発明の無接触ポテンショメータにおける各永久磁石に対する磁気検出素子の位置決めを説明するための幾何学的平面図である。
【符号の説明】
1 回転軸
2 永久磁石
3 ホール素子
4 円筒状回転ヨーク
6 回転ヨーク
8 永久磁石
9 磁性体
100 基板
101 磁気検出素子
102 回転基板
104 永久磁石
105 永久磁石
106 永久磁石
107 永久磁石
108 永久磁石
120 無接触磁気式ポテンショメータ
Claims (5)
- 回転基板上に永久磁石を配置し、該永久磁石に対向して空隙もしくは媒体を介して磁界検出素子を配置して、回転基板の回転に伴い出力信号が得られる無接触磁気式ポテンショメータにおいて、回転基板が非磁性基板であり、該回転基板上の−θ°〜+θ°(0<θ≦180°)の角度範囲に、回転基板の中心とは異なる中心を有する2本の円弧と回転基板の中心から引かれた半径の一部2本で囲まれる形状の2個の永久磁石を有し、各永久磁石が互いに異なる磁極が表面に現れるように、回転基板に垂直な方向に着磁されており、磁界検出素子で得られる出力信号が−θd°〜+θd°(0<θd≦θ≦180°)の範囲で一次関数となるように2個の永久磁石と磁界検出素子が配置されていることを特徴とする無接触磁気式ポテンショメータ。
- 非磁性基板上の各永久磁石の半径方向における単位角度の表面積Sと該永久磁石の厚さLの比L/Sの変化が20%以下であることを特徴とする請求項1記載の無接触磁気式ポテンショメータ。
- 前記回転基板上に2個の薄膜永久磁石を付着させたことを特徴とする請求項1記載の無接触磁気式ポテンショメータ。
- 前記回転基板に凹部を形成し、該凹部に流動性を有する磁石材料を充填し固化および着磁して、2個の薄膜永久磁石を設けたことを特徴とする請求項1記載の無接触磁気式ポテンショメータ。
- 無接触磁気式ポテンショメータに用いられる非磁性の回転基板で、該回転基板上の−θ°〜+θ°(0<θ≦180°)の角度範囲に、回転基板の中心とは異なる中心を有する2本の円弧と回転基板の中心から引かれた半径の一部2本で囲まれる形状の凹部を形成し、該凹部に流動性を有する磁石材料を充填し、固化および着磁して、または前記形状の範囲に薄膜永久磁石を付着させて、2個の薄膜永久磁石を形成することを特徴とする無接触磁気式ポテンショメータの製造方法。
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2003
- 2003-04-30 JP JP2003124939A patent/JP2004333137A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2019152640A (ja) * | 2018-02-28 | 2019-09-12 | 株式会社デンソー | リニアポジションセンサ |
CN110401433A (zh) * | 2019-07-04 | 2019-11-01 | 贵州航天林泉电机有限公司 | 一种涡扇发动机供油系统的线性霍尔元件安装结构 |
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