JP2004332147A - 人工毛髪繊維 - Google Patents

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【目的】頭髪の不足を補う散布式の疑似増毛材として好適に用いられる人工毛髪繊維を提供する。
【構成】回転刃4を備える粉砕室1内に非抗菌性糸から成る繊維素材Fを入れ、その繊維素材Fを回転刃4の回転を以て粉砕することにより短繊維fを得る。又、抗菌性糸から成る繊維素材Fを長さ方向に一定の送り量で移動させながら、これをカッターブレード14で0.1mm〜0.5mmの長さに順次切断することにより短繊維fを得る。そして、その短繊維f,fを混合して人工毛髪繊維とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は人工毛髪繊維に係わり、特に頭髪の不足を補う疑似増毛材として用いられる人工毛髪繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、脱毛による頭髪不足を補う手段として、レーヨンやナイロンなどを基材とする人工毛を頭皮に直接植毛するという方法が知られる。又、人毛や人工毛を支持体に植毛して成る鬘も従来から一般に広く賞用されている。
【0003】
然し、頭皮に直接植毛するものでは、植毛手術を受けるために指定の場所へ何度も通わなければならない上、手術を受けること自体に難色を示す人も多い。一方、鬘は高額である上、使用中に頭皮が蒸れたり不用意に脱落する虞れがあるなどの欠点をもつ。
【0004】
そこで、近年ではレーヨンなどの長繊維を短繊維化した疑似増毛材が普及している。例えば、その種の疑似増毛材として、レーヨンやナイロンなどの微細フィラメントを2mm以下の長さに分断して短繊維とし、これを頭部に散布した後で高分子系接着剤により固定化させ得るようにしたものがある(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】
特開2003−119608号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
然し乍ら、頭部に散布する従来の疑似増毛材は、これを構成する短繊維の繊度が一様で且つストレート状であり、このためバルキー性が乏しく使用量の割りにボリューム感が得られないという欠点があった。
【0007】
又、係る短繊維はプラスチック容器などに収納されるが、保管中に容器内の短繊維が雑菌に冒されて人体に悪影響を及ぼす危険性があった。
【0008】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は頭髪の不足を補う散布式の疑似増毛材として好適に用いられる人工毛髪繊維を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る人工毛髪繊維は回転刃を備える粉砕室内に繊維素材を入れ、その繊維素材を前記回転刃の回転を以て粉砕することにより得られるものであることを特徴とする。
【0010】
又、回転刃を備える粉砕室内に繊度が異なる二種以上の繊維素材を入れ、その各繊維素材を前記回転刃の回転を以て粉砕することにより得られる人工毛髪繊維であることを特徴とする。
【0011】
尚、上記の人工毛髪繊維において、繊維素材が抗菌剤を含有した抗菌性糸で成ることが好ましい。
【0012】
更に、本発明は回転刃を備える粉砕室内に繊維素材を入れ、その繊維素材を前記回転刃の回転を以て粉砕することにより得られる第1短繊維と、長さ方向に一定の送り量で移動される繊維素材をカッターブレードで0.1mm〜0.5mmの長さに順次切断することにより得られる第2短繊維とを混合して成る人工毛髪繊維であり、しかも回転刃で粉砕される繊維素材が非抗菌性糸、カッターブレードで切断される繊維素材が抗菌剤を含有した抗菌性糸から成り、その抗菌性糸から成る繊維素材を前記カッターブレードにより切断することにより得られる第2短繊維が全重量当たり少なくとも30%含まれていることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の適用例を詳しく説明すれば、係る人工毛髪繊維は概して繊維素材を短繊維化することにより得られるものであり、その短繊維化は回転刃を備える粉砕室内に繊維素材を入れて回転刃を回転させることにより行われ、好ましくはそれによって粉砕された繊維素材を第1短繊維とし、これに別工程で造られる第2短繊維を混合する。第2短繊維は、繊維素材をその長さ方向に一定の送り量で移動させながらこれをカッターブレードにより0.1mm〜0.5mm、好ましくは0.3mm〜0.5mmの長さに切断することにより得る。
【0014】
図1は、繊維素材を粉砕するのに用いる装置の一例を示した概略図である。図1において、1は円筒形の粉砕室であり、この粉砕室1は分級用の微小孔をもつ多孔板状のスクリーン2で形成され、その内部にはロータ軸3を中心として複数枚の回転刃4が設けられる。尚、5はロータ軸に固定されるロータハブであり、このロータハブ5に回転刃4が所定の間隔で固定される構成となっている。
【0015】
又、粉砕室1の上部には、各回転刃4の刃先が摺接若しくは近接する固定刃6が設けられると共に、粉砕室1の外側にはスクリーン2を通過した粉砕物、つまり繊維素材Fの短繊維f(第1短繊維)を回収するための回収路7が形成され、その下端は取出口8として外部に開通されている。
【0016】
ここに、粉砕室1内に繊維素材Fを入れると、これが回転刃4の回転により固定刃6やスクリーン2との間で剪断力と衝撃力を繰り返し受けて粉砕され、スクリーン2の微小孔を通過し得る粒度に達したものから順に短繊維fとして機外に取り出される。これによれば、繊維素材Fに剪断力と衝撃力が繰り返し作用することにより、その多くは直線形でなく不規則に曲がった短繊維fとして機外に取り出され、その長さも一定でない。このため、係る短繊維fは高いバルキー性(かさ高性)をもつ。
【0017】
特に、バルキー性を上げる手段としては、回転刃4を備える粉砕室1内で繊維素材Fを粉砕することのみならず、その繊維素材Fとして繊度が異なる二種以上を用いるとよい。例えば、繊維素材Fとして、50デニールの糸と20デニールの糸を用い、これを粉砕室1内で同時に粉砕する。尚、機外に取り出す短繊維fの粒度はスクリーン2に形成される微小孔の大きさ(メッシュ)により調整することができ、その口径は本例において0.5mm程度に設定される。
【0018】
一方、図2は繊維素材を0.1mm〜0.5mmの長さに切断する装置の一例を示した概略図である。図2において、11,12は繊維素材Fをその長さ方向に定量送りする一対の送りローラ、13は繊維素材Fが押し出される押出口、14は押出口13に沿って繊維素材Fの直角方向に移動するカッターブレードであり、送りローラ11,12は複数本の繊維素材Fを挟んで定速回転し、これにより押出口13から突出した繊維素材Fの先端部がカッターブレード14により順次切断され、これが長さ0.1mm〜0.5mmの短繊維f(第2短繊維)として受箱15内に回収される構成となっている。
【0019】
これによれば、繊維素材Fが一定の長さに切り落とされ、これに剪断力や衝撃力が繰り返し作用しないために、係る短繊維fは概ね直線形の形態である。尚、その長さは送りローラ11,12の回転速度やカッターブレード14の移動速度により調整することができる。
【0020】
ここで、本発明に係る人工毛髪繊維は、上記のようにして得た性状の異なる短繊維f,fを所定の比率で混合し、その混合物を洗浄、精錬した後、これに染色を施すことにより疑似増毛材として用いられる。つまり、黒色などに染色した短繊維f,fの混合物を頭髪の薄くなった部分に散布するのであり、これによってそれら短繊維f,fが静電気などの作用により残存する頭髪や頭皮に付着し、以て頭髪の薄くなった部分が隠される。特に、本例の人工毛髪繊維によれば、不規則に曲がった短繊維fを有することから、少量の使用でボリューム感を出すことができる。
【0021】
但し、短繊維fを多量に使用することが良いとは限らない。その一つには使用者の髪質との関係が挙げられる。つまり、不規則に曲がった短繊維fは光の反射率に関係して短繊維fより光沢がなく、使用者によってはボリューム感を得られても残存する頭髪と調和しない場合がある。よって、本例では不規則に曲がった短繊維fと直線形の短繊維fを混合している。尤も、髪質は使用者によって様々であるから、係る人工毛髪繊維を第1短繊維、つまり繊維素材Fを回転刃4を備えた粉砕室1内で粉砕することにより得られる短繊維fのみで構成しても良い。
【0022】
又、繊維素材F,Fとしては、レーヨンに代表される再生繊維、アセテートなどのセルロース系やタンパク質系の半合成繊維、又はナイロン、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ベンゾエート、ポリクラールなどの合成繊維を用いるが、以上のような有機系化学繊維のほか、ガラス繊維や炭素繊維などの無機繊維、或いは動植物系の天然繊維を用いることもできる。特に、繊維素材F,Fとして、抗菌剤を含有した抗菌性糸が好適に用いられる。その抗菌性糸は銀や銅の粉末などから成る抗菌剤(抗感染薬や殺菌剤など抗菌作用を有する物質)を混合した紡糸液を紡糸することにより得られるものであり、本例ではこれに抗菌剤として0.8〜1.0%の第4級アンモニウム塩を含有したレーヨンが用いられる。
【0023】
尚、短繊維f,fを混合する構成では、短繊維fと成す繊維素材Fに抗菌性を有しない非抗菌性糸を用い、短繊維fと成す繊維素材Fに抗菌性糸を用いるが、繊維素材Fとしての抗菌性糸をカッターブレード14で切断して成る短繊維fが全重量当たり30%より少ないと十分な抗菌性を得られず、製品として抗菌性を有する旨表示する認可も得られない。
【0024】
このため、人工毛髪繊維として、非抗菌性糸を上記のように粉砕室1内で粉砕することにより得る癖毛状の短繊維fと、抗菌性糸を上記のようにカッターブレード14で所定の長さに切断することにより得る直毛状の短繊維fとを混合する場合には、その短繊維fの混合率が人工毛髪繊維全重量当たり少なくとも30%になるよう設定する。但し、直線形の短繊維fが多くなると、全体のバルキー性が損なわれるので、その下限を30%にして上限を50〜80%、好ましくは50〜60%にすることが望ましい。
【0025】
以下、係る人工毛髪繊維の具体例を説明する。
(実施例1)
繊維素材として、非抗菌性糸から成るレーヨン(35デニール)を用い、これを図1に示されるような粉砕室1内に入れ、回転刃4を回転(6000rpm)させた。これにより、人工毛髪繊維として、長さ0.5mm以下(大部分が0.3mm〜0.5mm)に粉砕されたレーヨンの短繊維fを得た。尚、その短繊維fを顕微鏡で観察したところ、大部分が不規則に曲がった状態が認められた。そして、その短繊維fを洗浄、精錬した後、これに染色を施して黒色粉末状の疑似増毛材とした。
(実施例2)
繊維素材として、抗菌性糸から成るナイロン(50デニール)を用い、これを図1に示されるような粉砕室1内に入れ、回転刃4を回転(6000rpm)させた。これにより、人工毛髪繊維として、長さ0.5mm以下(大部分が0.3mm〜0.5mm)に粉砕されたナイロンの短繊維fを得た。尚、その短繊維fを顕微鏡で観察したところ、大部分が不規則に曲がった状態が認められた。そして、その短繊維fを洗浄、精錬した後、これに染色を施して黒色粉末状の疑似増毛材とした。
(実施例3)
繊維素材として、非抗菌性糸から成るレーヨン(50デニール)と、これよりも繊度の小さい非抗菌性糸から成るレーヨン(35デニール)とを用い、それらを図1に示されるような粉砕室1内に入れ、回転刃4を回転(6000rpm)させた。これにより、人工毛髪繊維として、長さ0.5mm以下(大部分が0.3mm〜0.5mm)に粉砕されたレーヨンの短繊維fを得た。尚、その短繊維fを顕微鏡で観察したところ、大部分が不規則に曲がった状態が認められた。そして、その短繊維fを洗浄、精錬した後、これに染色を施して黒色粉末状の疑似増毛材とした。
(実施例4)
繊維素材として、抗菌性糸から成るレーヨン(50デニール)と、これよりも繊度の小さい抗菌性糸から成るレーヨン(35デニール)とを用い、それらを図1に示されるような粉砕室1内に入れ、回転刃4を回転(6000rpm)させた。これにより、係る人工毛髪繊維として、長さ0.5mm以下(大部分が0.3mm〜0.5mm)に粉砕されたレーヨンの短繊維fを得た。尚、その短繊維fを顕微鏡で観察したところ、大部分が不規則に曲がった状態が認められた。そして、その短繊維fを洗浄、精錬した後、これに染色を施して黒色粉末状の疑似増毛材とした。
(実施例5)
繊維素材として、抗菌性糸から成るレーヨン(50、40、35デニール)の三種を用い、それらを図1に示されるような粉砕室1内に入れ、回転刃4を回転(6000rpm)させた。これにより、人工毛髪繊維として長さ0.5mm以下(大部分が0.3mm〜0.5mm)に粉砕されたレーヨンの短繊維fを得た。尚、その短繊維fを顕微鏡で観察したところ、大部分が不規則に曲がった状態が認められた。そして、その短繊維fを洗浄、精錬した後、これに染色を施して黒色粉末状の疑似増毛材とした。
(実施例6)
繊維素材として、抗菌性糸から成るレーヨン(40デニール)を用い、その複数本を図2に示されるような送りローラ11,12により一定の送り量で長さ方向に移動させながら、その先方に配されるカッターブレード14により順次切断して長さ0.3mmの短繊維fを得た。そして、その短繊維f(30g)と実施例1で得た短繊維f(70g)を混合して人工毛髪繊維とし、これを洗浄、精錬した後、これに染色を施して黒色粉末状の疑似増毛材とした。
(実施例7)
繊維素材として、抗菌性糸から成るレーヨン(35デニール)を用い、その複数本を図2に示されるような送りローラ11,12により一定の送り量で長さ方向に移動させながら、その先方に配されるカッターブレード14により順次切断して長さ0.25mmの短繊維f2を得た。そして、その短繊維f(50g)と実施例3で得た短繊維f(50g)を混合して人工毛髪繊維とし、これを洗浄、精錬した後、これに染色を施して黒色粉末状の疑似増毛材とした。尚、図3は本実施例の疑似増毛材を拡大した顕微鏡写真(100倍)である。
【0026】
ここで、実施例1〜7により得られる人工毛髪繊維は、何れもバルキー性が高く、疑似増毛材として頭部に散布することによりボリューム感を得られ、特に実施例3、4、5、7の人工毛髪繊維では短繊維fの繊度が異なるためにボリューム感が更に上がり、実施例2、4、5、6、7の人工毛髪繊維では抗菌性が高く保管中に雑菌が繁殖するのを防止できる。
【0027】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の人工毛髪繊維は、回転刃を備える粉砕室内に繊維素材を入れ、その繊維素材を回転刃の回転を以て粉砕して成ることから、得られる短繊維が直線形でなく不規則に曲がった状態となる。このため、バルキーが高く、従来品に比べて少量の使用でボリューム感を得られる。
【0028】
特に、繊度が異なる二種以上の繊維素材を粉砕するから、バルキー性が更に上がり、しかもその繊維素材として抗菌性糸を使用することにより雑菌の繁殖を防止する効果も上がる。
【0029】
又、繊維素材を粉砕室内の回転刃で粉砕して成る第1短繊維と、長さ方向に一定の送り量で移動させる繊維素材をカッターブレードにより0.1mm〜0.5mmの長さに順次切断して成る第2短繊維とを混合していることから、使用者の髪質などに対応してバルキー性や光沢を調整することができ、しかも第2短繊維を構成する繊維素材として抗菌性糸を用い、これが人工毛髪繊維全重量当たり少なくとも30%含まれるようにしていることから、高い抗菌性を有して保管中などにおける雑菌の繁殖を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】回転刃による繊維素材の粉砕工程を示した概略図
【図2】カッターブレードによる繊維素材の切断工程を示した概略図
【図3】本発明に係る人工毛髪繊維を示す拡大図(顕微鏡写真)
【符号の説明】
,F 繊維素材
短繊維(第1短繊維)
短繊維(第2短繊維)
1 粉砕室
4 回転刃
11,12 送りローラ
14 カッターブレード

Claims (5)

  1. 回転刃を備える粉砕室内に繊維素材を入れ、その繊維素材を前記回転刃の回転を以て粉砕することにより得られる人工毛髪繊維。
  2. 回転刃を備える粉砕室内に繊度が異なる二種以上の繊維素材を入れ、その各繊維素材を前記回転刃の回転を以て粉砕することにより得られる人工毛髪繊維。
  3. 繊維素材が抗菌剤を含有した抗菌性糸で成る請求項1、又は2記載の人工毛髪繊維。
  4. 回転刃を備える粉砕室内に繊維素材を入れ、その繊維素材を前記回転刃の回転を以て粉砕することにより得られる第1短繊維と、長さ方向に一定の送り量で移動される繊維素材をカッターブレードで0.1mm〜0.5mmの長さに順次切断することにより得られる第2短繊維とを混合して成る人工毛髪繊維。
  5. 回転刃で粉砕される繊維素材が非抗菌性糸、カッターブレードで切断される繊維素材が抗菌剤を含有した抗菌性糸から成り、その抗菌性糸から成る繊維素材を前記カッターブレードにより切断することにより得られる第2短繊維が全重量当たり少なくとも30%含まれている請求項4記載の人工毛髪繊維。
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