JP2004330448A - 記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】光沢紙やインクジェット専用紙等の記録媒体に適用した時、記録媒体の表裏面の判別、前後挿入方向の判別、用紙種の判別、用紙サイズ設定をユーザー自らが行う必要なく、また、外観を良好に保持し、さらには、印刷部に印刷乱れのない印刷が可能で、余白無くもしくは印刷部と余白部が均整の取れたレイアウトの記録物を手に入れることができるインクジェット用記録媒体及びその製造方法を提供する
【解決手段】支持体上にインク受容層を有するシートからなるインクジェット用記録媒体にその厚さ方向に貫通する少なくとも一対の検知穴が設け、かつこれら一対の検知穴の開口形状を、該シートのインクジェット記録装置内での記録時の搬送方向に沿った第1の中心軸または該第1の中心軸に直交する第2の中心軸に線対称をなす部分を含むものとする。
【選択図】 図1
【解決手段】支持体上にインク受容層を有するシートからなるインクジェット用記録媒体にその厚さ方向に貫通する少なくとも一対の検知穴が設け、かつこれら一対の検知穴の開口形状を、該シートのインクジェット記録装置内での記録時の搬送方向に沿った第1の中心軸または該第1の中心軸に直交する第2の中心軸に線対称をなす部分を含むものとする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録に好適に用いられる記録媒体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在広く普及している多くのインクジェットプリンタは、インクジェット用記録媒体(以下、省略する場合は、単に「記録媒体」と記載する)の供給先端部および左右端部、さらには後端部に非印刷領域が必然的に生じる。これらの非印刷領域は、記録媒体をプリンタ内部において安定的に搬送する、あるいはプリンタ内部をインクによって汚さないために必要な領域であり、現在では不可避的に発生する領域である。
【0003】
さらに、プリンタの種類によっては、記録媒体の先端部と後端部との非印刷領域の大きさを同一とすることができない。または両者の大きさを同一とすると極めて広い非印刷領域が残ってしまう。例えば、記録媒体の供給後端部において一定領域の非印刷領域が不可避的に発生してしまう場合、記録媒体の一部に広い非印刷領域が残る。一般的な構造のプリンタにおいて、この不可避的に発生する非印刷領域の幅は10〜20mm程度である。この非印刷領域のために、印刷物の印刷領域が記録媒体の中心部分からずれ、印刷物の美観、意匠性および付加価値を低下させてしまう。また、先端部に生ずる非印刷領域を後端部に生ずる非印刷領域に合せると、印刷領域を記録媒体の中心部に存在させることはできるものの、先端部および後端部に不自然に広い非印刷領域を作ってしまい、印刷物の美観、意匠性および付加価値を低下させてしまう。
【0004】
インクジェット方式による画像記録は、近年、画像記録装置の改良ならびに記録媒体の改良が進んだ結果、インクジェット方式による画像記録においても非常に高品質な画像が得られ、写真印刷(銀塩写真)と同等の画像品質といわれるまでになってきた。
【0005】
インクジェット方式は、インクを用いる直接記録であるため可視化に複雑な処理を必要としないこと、インクを飛翔させて記録するので基本的に非接触、ノンインパクト記録方式となること、インクが必要部分にだけ付着されるのでインクの使用効率が高く、用紙は普通紙でも自然感がある画像が得られること、インク、紙のランニングコストはきわめて低く、経済的であること、カラーインクを用いてインク滴の重ね合わせが可能で比較的容易に高品位なカラー印写が可能であることなどの特徴がある。
【0006】
インクジェット方式で写真画像を印刷できる記録媒体としては、印刷面に光沢を有する光沢紙や、インクジェット専用紙などのインクジェット用記録媒体が提供されている。このような光沢紙やインクジェット専用紙は、精細な写真画像などをより正確に記録できるようにするため、表面にインク受容層又は光沢度調整層などのコーティング層を設けるコーティング処理が必要になる。しかし、このようなコーティング処理は、コストがかかることから片面にのみ施すことが多い。そのため、光沢紙やインクジェット専用紙は、その記録面を特定して記録装置に挿入する必要があるため、表裏面を判別できるように、一方の面にロゴマーク入れたり、コーナーカットを入れたりしていた。
【0007】
インクジェット方式は、手軽に、かつ、容易に、そして誰しもが簡単に素早く印刷画像を入手可能であることから、業務用から家庭用まで、老若男女非常に幅広い層で様々な形態で使用されるようになってきており、今後更なる技術革新が望まれるところである。
【0008】
このように、多種多様な要望が求められている中で、記録画像における不必要な余白を排除する方法としては、記録媒体にミシン目を入れておき、画像を形成した後に、ミシン目を利用して不必要な余白部を分離する方法が提案されている。
【0009】
例えば、特開平10−166748号公報(特許文献1)、特開平11−277879号公報(特許文献2)、特開2001−47737号公報(特許文献3)、特開2001−96899号公報(特許文献4)、特開2002−29148号公報(特許文献5)、特開2002−96554号公報(特許文献6)には、ミシン目により容易に分離可能な記録媒体が提案されている。
【0010】
また、記録媒体のプリンタ等への誤装填防止にための技術としては、例えば、特開平3−51177号公報(特許文献7)には、表裏などの使用条件を限定するために用紙の一定部所にマーキングや切り込み部を設けた記録媒体が、特開平11−180569号公報(特許文献8)、特開2002−137538号公報(特許文献9)、特開2002−321438号公報(特許文献10)には、ミシン目と誤装填防止のためのコーナーカットを有する記録媒体が提案されている。さらに、特開平11−208157号公報(特許文献11)には、用紙種を自動判別するためにコーナーカットの位置、数の異なる記録媒体が、特開2000−118796号公報(特許文献12)には、重送を判別するための検知孔を設けた記録媒体が提案されている。
【0011】
【特許文献1】
特開平10−166748号公報
【特許文献2】
特開平11−277879号公報
【特許文献3】
特開2001−47737号公報
【特許文献4】
特開2001−96899号公報
【特許文献5】
特開2002−29148号公報
【特許文献6】
特開2002−96554号公報
【特許文献7】
特開平3−51177号公報
【特許文献8】
特開平11−180569号公報
【特許文献9】
特開2002−137538号公報
【特許文献10】
特開2002−321438号公報
【特許文献11】
特開平11−208157号公報
【特許文献12】
特開2000−118796号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ミシン目を用いた記録媒体に関しては、先に挙げた特開平10−166748号公報などに、記録媒体を容易に分離可能としたり、ミシン目の分離跡を抑制するためのミシン目の提案がされているものの、表裏判別手段や用紙種の判別はユーザー自らが行わなくてはならないという課題がある。特開平3−51177号公報には、用紙の表裏判別手段が提案されているものの、印刷部に印刷乱れのない印刷が可能で、余白無くもしくは印刷部と余白部が均整の取れたレイアウトという点や用紙種の判別はユーザー自らが行わなくてはならないという点で決して満足できるものではないという課題がある。特開平11−180569号公報、特開2002−137538号公報、特開2002−321438号公報には、ミシン目と誤装填防止のためのコーナーカットを有する記録媒体が提案されているものの用紙種の判別はユーザー自らが行わなくてはならないという点で決して満足できるものではない。さらに、特開平11−208157号公報には、用紙種を自動判別するためにコーナーカットの位置、数の異なる記録媒体が、特開2000−118796号公報には、重送を判別するための検知孔を設けた記録媒体が提案されているが、コーナーカットや検知孔を有する記録媒体は、いずれも、印刷物としての品位がコーナーカットにより低下するといった課題がある。また、コーナーカットや検知孔を揃えたとしても、必ず、表裏や前後挿入方向を正しく挿入出来るとは限らず、間違えやすいという問題があった。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑み成されたものであり、光沢紙やインクジェット専用紙等の記録媒体に適用した時、記録媒体の表裏面の判別、前後挿入方向の判別、用紙種の判別、用紙サイズ設定をユーザー自らが行う必要なく、また、外観を良好に保持し、さらには、印刷部に印刷乱れのない印刷が可能で、余白無くもしくは印刷部と余白部が均整の取れたレイアウトの記録物を手に入れることができるインクジェット用記録媒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
特に微細多孔質体への加工(例えば、複数穴同時加工やミシン目加工)に対する新たな課題認識として、加工された後の記録媒体の微小なわずかな歪み発生、河口部付近の微細なクラックなどの発生を見出し、これを解決することも目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明の記録媒体は、支持体上にインク受容層を有するシートからなるインクジェット用記録媒体であって、
前記シートの厚さ方向に貫通する少なくとも一対の検知穴が設けられており、かつ該一対の検知穴の開口形状が、該シートのインクジェット記録装置内での記録時の搬送方向に沿った第1の中心軸または該第1の中心軸に直交する第2の中心軸に線対称をなす部分を含む
ことを特徴とするインクジェット用記録媒体である。
【0016】
この記録媒体は、画像となる部分を構成する主領域と、この主領域から分離可能な副領域とを有し、記録後におけるこれらの領域の分離をミシン目により容易とする構成とすることが好ましい。このようなミシン目を有する記録媒体としては、画像として利用される部分を構成ための主領域と、該主領域と分離し得る副領域と、これらの領域を区分し、かつ該副領域の該主領域からの分離を容易とするミシン目と、該副領域に設けられた一対の検知穴と、を有するシートからなるインクジェット用記録媒体であって、前記ミシン目が、インクジェット記録装置内での記録時の搬送方向に直交する直線に沿って設けられており、かつ前記一対の検知穴の開口形状が、該シートのインクジェット記録装置内での記録時の搬送方向に沿った第1の中心軸または該第1の中心軸に直交する第2の中心軸に線対称をなす部分を含むことを特徴とするインクジェット用記録媒体を挙げることができる。
【0017】
また、本発明の記録媒体は、微細多孔質体をインク受容層として有するシートに、同時穴加工される第1、第2穴部が記録媒体内で穴形状をなす形状の一部のいずれかが線対称となることを特徴とする記録媒体である。
【0018】
本発明で言う所の「穴形状をなす形状の一部」とは、穴を形成する「辺」、「角」、「開口部」または「開口部の中心」のことを言う。
【0019】
本発明にかかるインクジェット用記録媒体におけるミシン目よって区分された副領域内に設けられた検知穴は、シート状の記録媒体が有する面に対して直交する方向に打ち抜きを行って得られるその厚さ方向に貫通する穴であり、その開口形状がシートの搬送方向に沿った中心軸またはシートの搬送方向に直交する中心軸に対して線対称である部分を有するものである。なお、この検知穴は1対でもよいし、必要に応じて2対以上設けることができる。
【0020】
このような配置で検知穴を設けることで、シートサイズの設定や記録媒体の種類の区別・各種特性の設定等の正確な判別をプリンタで自動的に行うことが容易となる。
【0021】
なお、上記の配置の検知穴を有する記録媒体の製造に好適な方法は、
(1)記録媒体となるシート形状を打ち抜き可能な原料シート或いはロール状のシートを用意し、該シート形状のインクジェット記録装置内の記録時の搬送方向となる方向に沿った第1の中心軸または該第1の中心軸に直交する第2の中心軸に対して線対称をなす部分を含む開口形状を有する少なくとも一対の検知穴を形成する工程と、
(2)前記シート形状を前記原料シートから打ち抜いて記録媒体を得る工程と
を有することを特徴とするものである。
【0022】
また、ミシン目を有する記録媒体の好ましい製造方法としては、
(1)記録媒体となるシート形状を打ち抜き可能な原料シート或いはロール状のシートを用意し、該シート形状のインクジェット記録装置内の記録時の搬送方向となる方向に沿った第1の中心軸または該第1の中心軸に直交する第2の中心軸に対して線対称をなす部分を含む開口形状を有する少なくとも一対の検知穴を形成する工程と、
(2)前記少なくとも一対の検知穴の設けられた部分を前記シート形状内の記録画像として利用される主領域から分離可能な副領域とするためのミシン目を、該シート形状のインクジェット記録装置内の記録時の搬送方向となる方向に直交する直線上に沿って形成する工程と、
(3)前記シート形状を前記原料シートから打ち抜いて記録媒体を得る工程と
を有することを特徴とする製造方法を挙げることができる。
【0023】
この方法によれば、ミシン目と検知穴の配置を正確に規定することが可能であり、シートサイズの設定や記録媒体の種類の区別・各種特性の設定等の正確な判別をプリンタで自動的に行うことが容易となる記録媒体を提供することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図1は、本発明に係るインクジェット用記録媒体の第一の実施形態を示す図である。図2は、本発明に係るインクジェット用記録媒体の第二の実施形態を示す図である。図3は、本発明に係るインクジェット用記録媒体、第一の実施形態の中でも好ましい記録媒体を示す図である。
【0025】
図4は、本発明に係るインクジェット用記録媒体、第二の実施形態の中でも好ましい記録媒体を示す図である。図5は、図4の記録媒体にプリンタへの挿入方向を矢印で明示した実施形態を示す図である。図6は、図5の記録媒体に印刷する領域を示す図である。図7は、図6の印刷物をミシン目から切り離したことを示す図である。図8は、本発明に係るインクジェット用記録媒体の用紙サイズ或いは紙種違いを判別する穴の開き方の一例を示す。この一例においては、8種類の判別が可能である。図9及び図10は本発明に係るインクジェット用記録媒体における好ましい例を示す。図11は図5内のA−A’の断面図の模式図を示す。
【0026】
図1から図10は記録媒体の上側がプリンタへの挿入方向である。図中の両矢印は記録媒体に対し左右の穴が線対称に存在することを示す。図9においては穴の上端が、図10においては、穴の下端が揃っていることを示す。図12、13及び14は、本発明に関わる加工方法の一例を示す図である。図15は、本発明に関わる穴加工とミシン目加工の概略を示す斜視図である。
【0027】
(第一の実施形態)
図1に示すように、本発明を適用した実施形態に係るインクジェット用記録媒体1は、シート状に形成されており、一方の面には、インク受容層が設けられている。
【0028】
インクジェット用記録媒体1に設けられた穴2及び3の開口は長方形の形状で形成されており、これらの長方形の上辺は、記録媒体の上端辺から等距離にあり、搬送方向に沿った中心軸15−1に対して線対称となっている。図1に示す例では、搬送方向と長手方向が一致する形状で記録媒体が形成されているが、搬送方向と短手方向が一致する形状で記録媒体を形成してもよい。すなわち、記録媒体の短手或いは長手に、線対称に穴が設けられている。
【0029】
更に、これらの記録媒体は、穴を設けてある部分(副領域)を記録後に画像として用いられる主領域と分離可能な分離部とすることが好ましい。穴2及び3を含む副領域をさみやナイフ、或いはカッターなどの道具を用いて切り離す構成としてもよいが、図3に示すようなミシン目6を設けることで、手で容易に穴が存在する部分を切り離すことができる。
【0030】
この例では、穴は、用紙種或いは/また用紙サイズの自動判別手段として設けられている。また、穴2の形状と穴3の形状を異なるものとすることで、表裏判別なども可能となる。
【0031】
また、図9には、用紙種或いは/また用紙サイズを見分ける穴に該当する部分にあける穴の組合せ例を示す。もちろん、この穴のパターンに限定されることはない。
【0032】
穴2及び3を記録媒体の中心線に対し、線対称に設けることで、記録媒体にかかる応力を緩和することが可能である。穴を記録媒体の中心線に対し線対称に設けることで、記録媒体をロール状のものから打ち抜き加工する際には、加工途中での用紙切れを起こしにくく、さらには、加工装置内での用紙の直進性が優れるため斜行しにくく、記録媒体及び記録媒体内に設ける穴などの各種寸法を安定した形で加工することが可能となる。また、加工された記録媒体のカールは、応力が緩和されているため、左右均等にカールし、左右で異なる反りとなる「ねじれたカール」になりにくい。そのため、製造した記録媒体をプリンタで使用する際には、記録媒体を搬送しなかったり、斜行するなどの搬送不良や記録媒体のカールにより記録媒体と記録ヘッドが衝突したりする問題も発生しにくい。また、記録装置内での記録媒体の直進性も優れるため斜行しにくく、良質な印事物を得ることができる。
(第二の実施形態)
上述の第一の実施形態では、用紙種或いは/また用紙サイズ、さらには、表裏判別を行えるように穴を設けた。本発明の第二の実施形態は、図2に示すように、穴2及び3以外に穴4及び5を設け、さらには、記録媒体の短手と長手の各々に対して、線対称に穴が設けられていることを特徴としている。また、図3には、第一の実施形態の中でも好ましい記録媒体が示されている。すなわち、この例では、上端部に設けられた一対の穴2及び3は図1に示した線対称の関係を有し、記録媒体の右端部の上端部と下端部とに設けられた一対の穴3及び5は、搬送方向に直交する中心軸15−2に対して線対称の形状を有している。更に、下端部に、左右に振分けて設けられた一対の穴4及び5は、長方形の開口形状を有し、その下辺は、記録媒体の下端辺から等距離にあり、かつ中心軸15−1に対して線対称である直線部分を共に含んでいる。一方、記録媒体の左端部の上端部と下端部とに設けられた一対の穴2及び4では、上端部に設けられた長方形の開口形状の上辺と記録媒体の上端との距離と、下端部に設けられた長方形の開口形状の下辺と記録媒体の下端との距離が等しく、かつ上端部に設けられた長方形の開口形状の上辺と下端部に設けられた長方形の開口形状の下辺とが中心軸15−2に対して線対称である直線部分を含んでいる。つまり、穴2と穴3さらには穴4と穴5が記録媒体の中心線に対して線対称であり、かつ、穴2と穴4さらには穴3と穴5が記録媒体の中心線に対して線対称であることを特徴としている。
【0033】
また、図4には、第二の実施形態の中でも好ましい記録媒体を示している。すなわち、記録媒体の短手と長手の各々に対して、線対称に穴が設けられ、かつ、穴を設けてある部分を分離可能な分離部を有する。穴2及び3を有する部分、更には穴4及び5を有する部分をはさみやナイフ、或いはカッターなどの道具を用いて切り離すようにしてもよいが、ミシン目6及び7を設けることで、手で容易に穴が存在する部分を切り離すことができる。
【0034】
この例では、穴は、用紙種或いは/また用紙サイズの自動判別手段として設けられている。また、穴2の形状と穴3の形状を異なるものとすることで、表裏判別をも可能となる。さらには、穴4及び5を上記したようにそれぞれに対して線対称に設けることで、挿入方向の間違い判別や、穴の有無により通常使用される定型サイズの記録用紙との判別も可能となる。
【0035】
また、図9には、用紙種或いは/また用紙サイズを見分ける穴に該当する部分にあける穴の組合せ例を示す。もちろん、この穴のパターンに限定されることはない。
【0036】
穴2、3、4及び5を記録媒体の短手と長手の各々に対して、線対称に穴を設けることで、記録媒体にかかる応力を第一の実施形態以上に緩和することが可能である。穴を記録媒体の短手と長手の各々に対して、線対称に穴を設けることで、記録媒体をロール状のものから打ち抜き加工する際には、加工途中での用紙切れを起こしにくく、さらには、用紙の直進性が優れるため斜行しにくく、記録媒体及び記録媒体内に設ける穴などの各種寸法を安定した形で加工することが可能となる。
【0037】
また、加工された記録媒体のカールは、応力が緩和されているため、上下左右均等にカールし、上下或いは左右で異なる反りとなる「ねじれたカール」になりにくい。そのため、製造した記録媒体をプリンタで使用する際には、記録媒体を搬送しなかったり、斜行するなどの搬送不良や記録媒体のカールにより記録媒体と記録ヘッドが衝突したりする問題も発生しにくい。また、記録媒体の直進性が優れるため斜行しにくく、良質な印事物を得ることができる。また、図5には、記録媒体の挿入方向をはっきりと印刷された矢印によって明示した記録媒体を示す。さらに、図5には、矢印の他に企業ブランドの広告などを目的とし、商標などのロゴを明示した記録媒体を示す。
【0038】
このインクジェット用記録媒体1は、所望の大きさにすることが出来る。シートの平面形状としては、長方形や正方形などの矩形形状を基本とし、定型サイズとしては、A4、B5、B4、A3、A3ノビ、六切、四切、L、2L、4×6等の各種サイズがあるが特に限定されない。記録媒体の大きさを前記した各種サイズとしても良いし、図7に示すように穴を含む部分を切り離し、残った部分の大きさが前記した各種サイズであっても良い。記録媒体のサイズは各々の用途によって決定することが可能である。
【0039】
切り離された穴を含む部分をここでは副領域と呼び、穴を含まない部分を主領域と呼ぶ。
【0040】
副領域の大きさは、主領域と幅が同じであれば、長さは同じであっても異なっていても良い。プリンタ搬送系の構成や印刷するためのインク量などにもよるが、挿入方向側である副領域の方が後端方向の副領域より長いことが好ましい。これは、記録媒体が、印刷されると印刷部が反る傾向にあり前方方向の副領域は、あまり短いと記録中の記録ヘッドに擦り、印刷物の品位を低下させる可能性がある。最悪の場合には記録ヘッドを壊してしまう可能性もある。したがって、前方方向の副領域の長さは、少なくともLFローラーから排紙ローラーの両方に噛み込まれる長さを持っていることが好ましく、操作性や記録媒体のコストを考慮し、その長さに加え5mm以下にとどめることが好ましい。後端方向の副領域は、印刷部が次々と排紙ローラーに噛みこまれるため挿入方向側である副領域に比べ反りにくい。しかし、印刷部と非印刷部がアンバランスな状態であるため反りがまったく無いわけではなく、前方方向の副領域同様、少なくともLFローラーから排紙ローラーの両方に噛み込まれる長さを持っていることが好ましく、操作性や記録媒体のコストを考慮し、その長さに加え5mm以下にとどめることが好ましい。しかし、前記した理由により、前方方向の副領域の長さに比べ後端方向の副領域は短くすることが可能であるし、コストを考慮すれば、極力短くすることが好ましい。
【0041】
なお、LFローラーは、Line Feedローラーの略称であり、別名「PFローラー(Paper Feed ローラー)」や「プラテンローラー」と呼ばれ、紙等の記録媒体を搬送する駆動ローラーのことである。
【0042】
以上の点をまとめると、副領域の大きさは、主領域と用紙幅を同一とし、搬送方向における長さ(幅)が5mm以上であり、{(LFローラーから排紙ローラーの距離)+5mm}の値以下であることが好ましい。更に、副領域の大きさとしては、ミシン目6及び7での切離性を考慮し、搬送方向における長さ(幅)が少なくとも5mmであることが好ましく、少なくとも10mmであることがより好ましい。この長さが5mmより短い場合には、切り離し部分が小さすぎて、切り離しにくくハンドリングが悪くなる傾向にある。長い分においてはハンドリングなどに影響はないが、記録媒体のコストが上がるので、上記の下限より長い範囲で、極力短くすることが更に好ましい。
【0043】
図6及び7に示すように、印刷(記録)が行われた記録媒体1において、ミシン目6及び7に沿って切り離し、図7のように主領域と副領域に分離する。例えば、ミシン目6及び7に沿って複数回屈曲させることで、極めて容易に分離することができる。好ましくは、印刷面とは反対の面に1回屈曲させ、極めて容易に、奇麗に分離することができる。
【0044】
本発明において「容易に分離可能」とは、人の手によって容易に切り離すことが可能であることを意味する。本発明の好ましい態様によれば、このミシン目6及び7は、連続する線状または点線状の切り込みとして形成される。また、この切り込みは記録媒体を貫通する切り込みであってもよく、また記録媒体を貫通しない切り込みであってもよい。
【0045】
ミシン目6及び7の切り込みを形成した部分と切り込みを形成しない部分のそれぞれの長さは、基材の厚さや強度に応じて、適宜、決定されてよく、具体的には、プリンタ内においてミシン目6及び7から主領域と副領域とに切り離されたり、プリンタ内でミシン目6及び7が坐屈切断ぜず、人の手で容易に分離できるものであれば限定されない。好ましくは、ミシン目6及び7は、切り込みを形成した部分と切り込みを形成しない部分のそれぞれの長さが1mm以下、より好ましくは0.5mm以下であり、いわゆるマイクロミシン目と呼ばれるミシン目によって形成されていてもよい。マイクロミシン目により形成された分離手段は、分離後、分離部分にいわゆるバリが生じにくく、印刷物の付加価値を向上させることが出来るので好ましい。マイクロミシン目の具体的な形成方法およびそれに用いられる装置は公知であり、例えばハイデルベルグ社製トムソン型抜き機SBDS、同MFS−820M(菅野製作所扱い)として知られる装置によって形成することができる。
ミシン目6及び7の切り込みは記録媒体のインク受容層面からでもインク受容層とは反対の裏面側からでもどちらでも良い。好ましくは、インク受容層面から入れることが好ましい。これは、ミシン目からインク受容層面側に折り返した際には、インク受容層が盛り上がったり、割れたり、剥がれたりし、ミシン目からインク受容層とは反対の面に折り返し、切り離す方が切離部跡がより綺麗になるからである。
【0046】
また、図6に示すように印刷する際にミシン目上を印刷するため、ミシン目と重なる部分のインク受容層はインクを含み脆くなっていると考えられ、インク受容層とは反対の面に折り返し、切り離す方が切離部跡がより綺麗になる。
【0047】
一方、検知用の穴の大きさは、直径が1.5mmから5mmであることが好ましい。例えば、穴2、3、4及び5の大きさは、プリンタ本体に取り付けられるセンサーの大きさや感度にもよるが、見栄えの点や副領域の長さを極力短くする点から極力小さいことが好ましく、直径として1.5mmから5mmであることが好ましく、より好ましくは、2mmから4mmである。穴2、3、4及び5が大きい場合には、前記した副領域は好ましい長さ以上に長くしなければならず、コストが上がってしまい好ましくない。形状としては、特に制限はないが、加工方法や加工性或いは見栄えの点から、円形や楕円形、四角或いは四角の角に丸みを持たせたものなどが好ましい。なお、矩形や楕円の場合においては、その開口部の最大長さを上記の直径の範囲に設定することが好ましい。円形や楕円形の場合における線対称の基準は少なくとも中心が線対称の位置にあればよい。
【0048】
一対の穴の位置については、先に述べた線対称をなす部分を有するように配置する点の他に、特に制限はないが、図3の構成についていえば、プリンタ本体への挿入方向側である穴2及び3においては、プリンタ本体の記録媒体給紙機構のひとつであるピックアップローラーが記録媒体を給紙する際に接触する部分と異なる場所に設けることが良い。ピックアップローラーが記録媒体を給紙する際に接触する部分に穴が設けられている場合には、接触した際に穴から記録媒体が切れたり、破けたりし、そのクズがプリンタ本体内部に入り込み、本体の故障要因となるだけでなく、穴が切れたり、破けたりした場合にはプリンタ本体側で記録媒体の種類やサイズ、表裏などを自動判別することができなくなる可能性がある。また、記録媒体の幅方向の略中央部付近に設けることも避けたほうが良い。
【0049】
記録媒体の幅方向の略中央部に穴が設けられた場合には、記録媒体の表裏判別が困難となる。記録媒体の略中央部付近以外に設けた場合には、記録媒体の表裏判別が可能となる。また、本体のコストを押さえるためにセンサーは一箇所が望ましく、穴2、3、4及び5は左右に線対称となるように設け、プリンタ本体に設けられた一ヶ所のセンサーで効果的に記録媒体の表裏面の判別、前後挿入方向の判別、用紙種の判別、用紙サイズの判別ができるようにした方が良い。
【0050】
例えば、図2に示すように計4対の穴を設ける場合(1つの穴が2つの対で重複している)においては、図2に示すように穴2と3の関係と穴4と5の関係がともにプリンタ挿入方向、すなわち中心軸15−1に対して線対称の位置にあることが好ましい。いずれかの対が、中心軸15−1に対して線対称の位置にない場合には、記録媒体の表裏判別、前後挿入方向を判別するためにプリンタ本体にセンサーを二箇所設けなくてはならず、プリンタ本体のコストの点で好ましくない。穴をプリンタ挿入方向に対して線対称の位置とすることでプリンタ本体に設けるセンサーは一ヶ所とすることが可能であり、プリンタ本体のコストの点で好ましい。
【0051】
プリンタ挿入方向に対して、記録媒体の流れ方向にある穴が線対称にあることは、記録媒体の斜行を検知するのに有効な手段である。また、記録媒体の表裏と前後挿入方向を間違えてユーザーがプリンタに挿入した場合に、プリンタ本体に設けたセンサーにより効果的に判別可能であり、記録媒体の誤挿入を防止することができる。
【0052】
更に、穴2及び3の上端(上辺)は、図1、図2及び図9に示すように、記録媒体上端から同じ距離にあることが好ましい。これは、記録媒体の表裏を間違えてユーザーがプリンタに挿入した場合に、プリンタ本体に設けたセンサーにより効果的に判別可能であり、記録媒体の誤挿入を防止することができるだけでなく、穴2及び3の穴上端から記録媒体上端までの長さが同じであることから、記録媒体を給紙してからある所定の一つの読み取りで誤挿入判別をしはじめることが可能であるばかりか、記録開始位置の判別、用紙種判別、用紙サイズ判別をも極めて簡素な制御により可能とすることができる。
【0053】
更に、排紙方向側の左右線対称に設けられた穴は、図2及び4に示される穴4及び5のように、その下端(下辺)が、記録媒体下端から同じ距離にあることが好ましい。これは、記録媒体の表裏判別を間違えてユーザーがプリンタに挿入した場合に、記録媒体を給紙してからある所定の一つの読み取りで誤挿入判別を可能とする。
【0054】
更に、上記の2つの好ましい態様を満たす構成を満たし、すなわち挿入方向側の左右線対称に記録媒体の上部に設けられた一対の穴の上端が、記録媒体上端から同じ距離にあり、かつ、排紙方向側の左右線対称に記録媒体の下部に設けられた一対の穴の下端が、記録媒体下端から同じ距離にあり、かつ、上部の穴の上端と記録媒体上端との距離と、下部の穴の下端と記録媒体下端との距離が同じであることがより好ましい。
【0055】
これは、記録媒体の表裏、前後挿入方向を間違えてユーザーがプリンタに挿入した場合に、プリンタ本体に設けたセンサーにより効果的に判別可能であり、記録媒体の誤挿入を防止することができるだけでなく、穴2及び3の穴上端から記録媒体上端までの長さと穴4及び5下端から記録媒体下端までの長さが同じであることから、記録媒体を給紙してからある所定の一つの読み取りで誤挿入判別をしはじめることが可能であるばかりか、記録開始位置の判別、用紙種判別、用紙サイズ判別をも極めて簡素な制御により可能とすることができる。
【0056】
穴の加工方法としては、ハイデルベルグ社製トムソン型抜き機SBDS、同MFS−820M(菅野製作所扱い)として知られる装置によって形成することもできる。さらに、オス(凸)型或いはメス(凹)型のどちらか一方、または、両者を組み合わせて貫通した穴を加工する事が可能である。加工する穴周辺の綺麗さ、つまり、バリや鋭利性の点や記録媒体全体の品位などの点からオス(凸)型、メス(凹)型の両者を組み合わせて穴加工をすることが好ましい。また、穴が設けられ最終的に切り離される副領域内には、切り欠きを設けても良い。設けられる切り欠きの大きさとしては、特に制限はないが、見栄えの点や副領域の長さを極力短くする点、さらには目視にて切り欠きを判別する点から3mmから7mm程度が好ましい。
【0057】
切り欠きの加工方法は従来公知の方法で加工することができる。例えば、四角状のシートにギロチンカッターにより副領域部の角を加工することが出来る。角を加工した場合の一例を図16に示す。
【0058】
また、大判状のシート或いはロール状の物から、予め所望の形状をした抜き型を使用して打ち抜き加工を行うことも出来る。打ち抜き加工方法としては、ハイデルベルグ社製トムソン型抜き機SBDS、同MFS−820M(菅野製作所扱い)として知られる装置によって形成することもできる。また、ロール状のシリンダに所望の形状の抜き刃のついたマグネット式の刃型を取り付け、連続加工を行うこともできる。さらにまた、所望の形状の抜き刃がついたダイカットロールなどにより連続した打ち抜き加工を行うこともできる。これら加工方法の中でも、寸法精度や端部の綺麗さなどを考慮すると、ダイカットロール方式により加工することが好ましい。シートに対する加工方法は、抜き刃をインク受容層側から入れて加工することが好ましい。これは、インク受容層とは逆の面から抜き刃を入れると受容層のはがれや、受容層のひび割れを起こす可能性があるため好ましくない。
【0059】
本発明の記録媒体を得るための製造方法としては、図12に示すように、少なくとも穴加工をする工程、ミシン目を加工する工程、抜き加工をする工程の3つの加工工程を含んでいる製造方法を挙げることができる。また、この3つの加工工程の順序は特に限定されず、加工目的、加工コスト等の点から好ましい順に加工を行えばよい。より精度の高い検知穴及びミシン目の配置を達成する上では、図12に示すように、原料シートの巻き出し工程、穴加工工程、ミシン目形成工程、シート形状での記録媒体の抜き加工工程をこの順に行うことが特に好ましい。
【0060】
一方、無機顔料を主成分としたインク受容層、とりわけ、アルミナ水和物を主成分としたインク受容層の場合には、インク受容層にキズがつきやすく、また、穴加工時のインク受容層から発生する受容層粉が発生しやすいため、穴加工工程時或いは/また穴加工工程後に、清掃工程を行うことが好ましい。
【0061】
すなわち、穴加工工程時或いはまた穴加工工程後においては、穴加工した際に発生する小片を除去する工程を穴加工工程と同時もしくは穴加工工程後に設けることが好ましい。これは、穴加工時に発生する小片が後の工程に紛れ込むことによりキズやヘコミ或いは後の工程での加工トラブルを引き起こす可能性があるからである。穴加工した際に発生する小片を除去する方法の内、穴加工と同時に行う方法としては、オス型(凸型)の上辺を設けず、内部に小片を吸い込む方法がある。吸い込む方法としては、掃除機などの吸引装置により実施することが可能である。また、穴加工工程後に穴加工した際に発生する小片を除去する方法としては、エアーを穴加工部に吹き付け小片を吹き飛ばす方法がある。逆に、穴加工部から小片を吸い込むようにする方法もある。小片を吸い込む方式は加工部と用紙が接触し、キズなどの欠陥となる場合があるので、エアーを穴加工部に吹き付け小片を吹き飛ばす方法が好ましい。この方法は、主にオス型(凸型)で用紙を押し切る場合やオス(凸)型、メス(凹)型の両者を組み合わせて貫通した穴を加工する際に有効である。
【0062】
図15は検知穴加工及びミシン目加工を連続して行う工程を表した概略図である。記録媒体27上にオス型(凸型)部23を有する検知穴加工ユニットによって検知穴加工、ミシン目加工部25を有するミシン目加工ユニットによってミシン目加工が行なわれる。この例では型抜きされるシート状の記録媒体は、それぞれのプリンタでの搬送方向が原料シートの長手方向と揃えられた状態で、その複数が並列配置が原料シートの幅方向(長手方向と直交する方向)に並列されて配置されている。なお、図15に示す加工方法では、原料シートの幅方向に並列して2枚の記録媒体を抜き取るようにした2列取りになっているが、3列や4列などの多数列取りとしてもよい。その際に、多数並列配置される各検知穴の加工を上述した線対称位置で行う。
【0063】
図17は、オス型とメス型を組み合わせた穴加工装置の一例を示す図である。この加工装置では、オス(凸)型31とメス型(凹)32の間を、記録媒体30を通過させ、これらの型の通過時にオス(凸)型31を矢印でしめされる下方向に押し圧して、原料シートの所定部を押し切ることによって、開孔(検知穴)を開けることができる。この穴加工を行う場合には、原料シートの支持体側の面から刃を入れると支持体上に設けられた受容層のはがれや、受容層のひび割れを起こす可能性があるため好ましくない。更に、図17に示した例のように、オス(凸)型とメス(凹)型を用いる場合には、受容層側にオス(凸)型、基材側にメス(凹)型を用いることが好ましい。また、加工に用いるための刃の切断方向に対してなす刃先の角度が、45°を超え、90°未満であることが好ましい。刃先の角度がこの範囲であれば、記録媒体を押し切る形となるため、加工時にインク受容層のはがれや、ひび割れが生じにくいからである。特に、微細多孔質のインク受容層、なかでもアルミナ水和物を用いて形成したインク受容層を有する記録媒体の形成においては、インク受容層側からの加工方法が特に好ましく、上記の角度の刃先を有する型を用いることが特に好ましい。ミシン目加工についても、同様に、刃の切断方向に対してなす刃先の角度が、45°を超え、90°未満であることが好ましい。ミシン目加工に用いる切断刃の断面の一例を図18に示す。図18に示す切断刃33の有する切断方向に対してなす刃先の角度34が45°を超え、90°未満である。なお、図17で示すオス型31の切断刃部分の刃先の角度もこの範囲であることが好ましい。
【0064】
また、図11に、穴加工及びミシン目加工による得られる貫通穴及びミシン目の切れ込みの好ましい状態を断面図として示す。この場合のミシン目は、インク受容層16を貫通しているが、支持体17の厚み方向の途中でとまっている。このようにミシン目加工することが好ましい理由は、先の述べたように、ミシン目からインク受容層面側に折り返した際にインク受容層が盛り上がったり、割れたり、剥がれたりするという問題を防止し、ミシン目からインク受容層とは反対の面に折り返し、切り離す方が切離部跡がより綺麗になるからである。更に、支持体側のミシン目の切れ込みを形成しない構成することで、原料シートの加工装置内での搬送性や、プリンタ内での記録媒体の搬送性をより良好なものとすることができる。
【0065】
例えば、プリンタ等の各種装置における記録媒体の搬送手段は、一般的に、回転駆動するローラを記録媒体の支持体側の面に当接させて、その回転により記録媒体を搬送する構成を有する。また、必要に応じて、記録媒体のインク受容層側の面を、記録媒体の移動に伴って回転し得る補助ローラや拍車で押しつける構成がとられる。このような搬送手段に対して支持体側にミシン目のための切れ込みが入った記録媒体を適用した場合、ミシン目の搬送手段に対する位置関係によっては支持体側の切れ込みが搬送性に影響して、安定した搬送が行えない場合が生じる。インクジェットプリンタにおける本発明者らの検討では、モバイル型などの、小型化されたプリンタのように、記録ヘッド部による印字部(記録部)と、印字中の記録媒体を保持し、搬送する搬送手段との距離が近接している場合、搬送手段での搬送性が記録ヘッドからの印字に与える影響が無視できず、搬送手段による安定した搬送性が必須となることが判明した。
【0066】
これに対して、支持体側にミシン目の切れ込みを形成しない構成とすることで、特に、A6などの小さなサイズの記録媒体に画像をインクジェットプリンタで記録する場合に良好な搬送性を得ることが可能となる。すなわち、A6などの小さなサイズの記録媒体に画像をインクジェットプリンタで記録する場合に、プリンタ内の記録ヘッドによる記録が行われる領域と、記録が行われている記録媒体を搬送するローラなどによって構成される搬送手段との距離が近接しており、ミシン目や検知穴の位置が搬送手段による搬送性に影響を及ぼす場合が多くなるが、本発明にかかるミシン目及び検知穴にかかる構成、特に支持体側の面にミシン目の切れ込みがない構成によれば、このような小型の記録媒体への記録においても良好、かつ均一な搬送性を確保することができる。
【0067】
本発明において用いることができるインクジェット用記録媒体は、光沢紙やインクジェット専用紙など表面及び裏面を区別するべきものに好適であるが、他の記録媒体でも良く、例えば、普通紙、レジンコート紙、OHPシートなどでも良い。
【0068】
本発明のインクジェット用記録媒体に用いる支持体としては、上質紙、中質紙、アート紙、ボンド紙、再生紙、バライタ紙、キャストコート紙、レジンコート紙等の各種の紙や、ポリエチレンテレフタレート、アセチルアセテート(ジアセテート)、トリアセチルアセテート、セロハン、セルロイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックからなるフィルム等を使用できるが、本発明は、勿論これらに限定されない。本発明において使用する上記したような材料からなる基材は、その表面が滑らかなものであっても、凹凸のついたものであってもよいし、又、透明、半透明、不透明のいずれであってもよい。又、上記した基材材料の中から2種類以上を選択して、これらを貼り合わせたものでもよい。更に、インク受容層を設ける印字面の反対側に、マット層や剥離粘着層等を設けたものであってもよい。本発明においては、記録媒体の記録目的、記録画像の用途、或いは、その上部に被覆して形成するインク受容層用の組成物との密着性等の諸条件に応じて、上記した基材等の中から適宜に選択した基材を用いる。
【0069】
その中でも好ましいものは、写真画質を得る事が比較的容易なアート紙、バライタ紙、キャストコート紙、レジンコート紙の紙類や白色フィルムを使用することが好ましい。その中でもとりわけ銀塩写真に風合いや印刷物を得る事が可能なバライタ紙、キャストコート紙、レジンコート紙を用いることが好ましい。
【0070】
支持体の厚みは、100〜300μmが好ましく、150〜250μmがより好ましい。支持体の厚みがこの範囲内にあることによって、記録媒体の安定的な搬送性を有することができる。支持体の厚みがこの範囲内にあることによって、記録媒体の安定的な搬送性を有することができる。このような厚さの支持体を用い、ミシン目の深さをインク受容層を貫通し、支持体の途中までとする構成の場合は、ミシン目の切り込みは、また、ミシン目の切り込み部の深さは、インク受容層の厚さと同等か、インク受容層よりも大きい必要があり、インク受容層よりも大きい場合には、支持体の厚みの95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましい。
【0071】
本発明のインクジェット用記録媒体に用いるインク受容層としては、インク受容性のあるものであればよい。例えば、水性樹脂から、あるいは水性樹脂を主体としてインク受容層を形成することができる。この水性樹脂は、いわゆる水性インクを受容できる層を形成可能であり、かつ水性インクに対して溶解性或いは親和性を示す水溶性樹脂又は水分散性樹脂を意味する。
【0072】
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、及びアニオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アセタール変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコールの変性物;水系ポリウレタン;ポリビニルピロリドン、及びビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体、ビニルピロリドンとジメチルアミノエチル・メタクリル酸の共重合体、四級化したビニルピロリドンとジメチルアミノエチル・メタクリル酸の共重合体、ビニルピロリドンとメタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウムの共重合体等のポリビニルピロリドンの変性物;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系水溶性樹脂、及びカチオン化ヒドロキシエチルセルロース等のセルロースの変性物;ポリエステル、ポリアクリル酸(エステル)、メラミン樹脂、或いはこれらの変性物、少なくともポリエステルとポリウレタンとを含むグラフト共重合体等の合成樹脂、又、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、カチオン化でんぷん、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等の天然樹脂を挙げることができ、これらの少なくとも1種を用いることができるが、本発明はこれらに限定されない。本発明においては、これらの水溶性樹脂の中でも、発色性、インク吸収性の観点から、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アセタール変性ポリビニルアルコール、ポリエステル、水系ポリウレタン、少なくともポリエステルとポリウレタンとを含むグラフト共重合体がとりわけ好ましく、本発明においては、これらの水溶性樹脂から少なくとも1種を選択してインク受容層中に含有させることが好ましい。
【0073】
又、水分散性樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド系共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリビニルエーテル、シリコーン−アクリル系共重合体等、多数列挙することができ、これらの少なくとも1種を用いることができるが、勿論これらに限定されるものではない。又、N−メチロールアクリルアミド等の単位を含む共重合体で、自己架橋性を持つものであってもよい。尚、本発明においては、インク受容層の構成成分として上記した水性樹脂複数を同時に使用してもよい。
【0074】
これら水性樹脂を使用した場合、インク受容層を形成する場合の塗工液の塗工量としては、総量として、0.2〜50g/m2、より好ましくは1〜30g/m2の範囲内とするとよい。塗工量が0.2g/m2に満たない場合には、インク受容層を設けなかった場合に比べて染料の発色性、インクの吸収容量、インク定着性の点で効果が不十分であり、一方、塗工量が50g/m2を超えた場合には、特に、低温低湿環境下におけるカールの発生が著しい。又、塗工量を厚さで表した場合には、インク受容層の厚みが0.5〜50μmになる範囲が好適である。
【0075】
また、近年プリンタの印刷スピード向上により極めて素早くインクを吸収する無機顔料を使用したインク受容層を用いても良い。そのインク受容層は、一般的には、下記に挙げるような顔料と、必要に応じてバインダを含む塗工液を塗布することで形成できる。無機顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化マグネシウム等の無機顔料が挙げられ、有機顔料としては、例えば、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン粒子、マイクロカプセル粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等が挙げられる。本発明にかかる被記録媒体では、インク受容層の主成分として、上記した中でも、染料定着性、透明性、印字濃度、発色性、光沢性の点で特に好ましいアルミナ水和物を用いる。
【0076】
インク受容層を形成するための塗工液中におけるアルミナ水和物の含有率は、塗工液中に含有させる無機顔料の100〜60質量%とすることが好ましい。アルミナ水和物の含有量がこの範囲に満たない場合は、上記アルミナ水和物に起因して得られる性能が低下する恐れがある。
【0077】
アルミナ水和物としては、例えば、下記一般式(1)により表されるものが好適に利用できる。
【0078】
Al2O3−n(OH)2n・mH2O
(上記式中、nは0、1、2又は3の何れかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の範囲にある値を表す。但し、mとnは同時に0にはならない。mH2Oは、多くの場合、結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであるため、mは整数又は整数でない値をとることができる。又、この種の材料を加熱するとmは0の値に達することがあり得る。)
アルミナ水和物は一般的には、米国特許第4,242,271号明細書、同4,202,870号明細書に記載されているような、アルミニウムアルコキシドの加水分解やアルミン酸ナトリウムの加水分解を行う方法、又、特公昭57−447605号公報等に記載されている、アルミン酸ナトリウム等の水溶液に硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等の水溶液を加えて中和を行う方法、等の公知の方法で製造することができる。
【0079】
本発明において好適なアルミナ水和物としては、X線回折法による分析でベーマイト構造若しくは非晶質を示すアルミナ水和物であって、特に、特開平7−232473号公報、特開平8−132731号公報、特開平9−66664号公報、特開平9−76628号公報等に記載されているアルミナ水和物が挙げられる。
【0080】
尚、Rocekら(Collect Czech Chem Commun.,56巻、p1253〜1262、1991年)は、アルミニウム水和物の細孔構造は、析出温度、溶液pH、熟成時間、表面活性剤等に影響されることを報告しており、上記アルミナ水和物は、その製造過程において細孔物性の調整がなされる。その際に、インク受容層が、後述する好適なBET比表面積、細孔容積を満たすものとなるようにするためには、細孔容積が0.1〜1.0cm3/g、BET比表面積が40〜500m2/gに調整されたアルミナ水和物を用いることが好ましい。アルミナ水和物の細孔容積、BET比表面積が上記範囲外であると、形成されるインク受容層の細孔容積、BET比表面積を、後述する好ましい範囲内に調整することが困難になる場合がある。尚、アルミナ水和物の細孔容積、BET比表面積の値は、窒素吸着脱離法により求められる。
【0081】
又、本発明において好適なアルミナ水和物の形状としては、平板状で、平均アスペクト比が1〜10、平板面の縦横比0.6〜1.0であるものが好ましい。アスペクト比の定義は、特公平5−16015号公報に記載されている方法で求めることができる。上記アスペクト比は、粒子の「厚さ」に対する「直径」の比で示す。ここで「直径」とは、アルミナ水和物を顕微鏡又は電子顕微鏡で観察したときの粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径を示すものとする。上記平板面の縦横比は、アスペクト比と同様に、粒子を顕微鏡で観察して平板面の最小値を示す直径と最大値を示す直径の比である。平均アスペクト比が上記範囲を満たさないアルミナ水和物を使用した場合は、形成したインク受容層の細孔分布範囲が狭くなる恐れがある。又、上記範囲を超えるものを使用する場合は、アルミナ水和物の粒子径を揃えて製造するのが困難になる恐れがある。縦横比が上記範囲を満たさないものを使用する場合も、同様にインク受容層の細孔径分布が狭くなる。
【0082】
文献(Rocek J.,et al.、Applied Catalysis、74巻、p29〜36、1991年)にも記載されているように、アルミナ水和物の中には、繊毛状とそうでない形状のものがあることが一般に知られている。本発明者らの知見によれば、同じアルミナ水和物であっても、平板状のアルミナ水和物の方が、繊毛状のものよりも分散性がよい。又、繊毛状のアルミナ水和物の場合は、塗工時に下塗り層表面に対して平行に配向する傾向がみられ、形成される細孔が小さくなる場合があり、このためにインク受容層のインク吸収性が小さくなることがある。これに対して、平板状のアルミナ水和物を用いた場合は、塗工により配向する傾向は小さく、このため形成されるインク受容層の細孔の大きさや、インク吸収性への影響は少ない。更に、リウェット法でインク受容層を湿潤状態にさせてキャストを行う場合には、配向する傾向の小さい平板状アルミナ水和物の方が水分の吸収性がよいので、再湿液が浸透し易いため、インク受容層が膨潤し、アルミナ水和物粒子の再配列が起こり易い。従って、高い光沢性を得ることができる。又、効率よく再湿液が浸透するので、キャスト時の生産効率も高くなる。
【0083】
インク受容層を形成する顔料の一つとして、シリカ等の板状ではないものを用いることもできるが、得られる画像の光沢性を高くするということにおいては、上記のことから、板状のアルミナ水和物を用いることが特に好ましい。
【0084】
インク受容層を形成するための塗工液に使用するバインダとしては、例えば先に挙げた水性樹脂などを用いることができるが、ポリビニルアルコールを用いることが特に好ましい。ポリビニルアルコールとしては、アルミナ水和物等の顔料の結着性の点から、ケン化度70%以上、より好ましくは、80%以上のものが好ましく、又、重合度としては、500以上のものを使用することが好ましい。ポリビニルアルコールの含有量としては、アルミナ水和物に対して、5〜20質量%になるようにするのが好ましい。ポリビニルアルコールの含有量が上記範囲に満たない場合は、インク受容層にクラックが発生し易くなり、又、インク受容層の機械的強度が不十分となり、粉落ちが生じ易くなる。一方、上記範囲を超える場合は、インク吸収性の低下(例えば、インクが溢れ、画像に滲みの発生)や、インク染料の吸着性の低下が生じる恐れがあるので好ましくない。更に、高温高湿下においても十分なインク吸収性を得るためには、ポリビニルアルコールの含有量を5〜15質量%の範囲とすることが好ましい。
【0085】
本発明において使用するインク受容層を形成するためのバインダとしては、上記したポリビニルアルコールの他、上記に挙げた顔料を結着し、被膜を形成する能力のある材料であって、且つ、本発明の効果を損なわない範囲のものであれば、特に制限はなく利用することができる。例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルアルコール又はその誘導体;ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役重合体ラテックス;アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体等のアクリル系重合体ラテックス;エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス;或いは、これら各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス;或いは、これら各種重合体にカチオン基を用いてカチオン化したもの、カチオン性界面活性剤にて重合体表面をカチオン化したもの、カチオン性ポリビニルアルコール下で重合し、重合体表面に該ポリビニルアルコールを分布させたもの、カチオン性コロイド粒子の懸濁分散液中で重合を行い、重合体表面に該粒子が分布しているもの;メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂等の水性バインダ;ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体樹脂;ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系バインダ等を挙げることができる。上記は、単独或いは複数を混合して用いることができる。
【0086】
この場合も、バインダの含有量が、アルミナ水和物に対して、5〜20質量%になるようにするのが好ましい。先に述べたと同様に、上記範囲に満たない場合は、インク受容層にクラックが発生し易くなり、且つインク受容層の機械的強度が不十分となる。一方、上記範囲を超える場合は、インク吸収性の低下やインク染料の吸着性の低下が生じる恐れがあるので好ましくない。更に、本発明においては、バインダ中におけるポリビニルアルコールの含有率を70質量%以上とすることが好ましい。上記範囲に満たない場合は、インク受容層にクラックが発生し易くなるので好ましくない。
【0087】
上記のようにして形成するインク受容層の形成材料中に、ホウ酸及びホウ酸塩からなる群より選ばれた1種以上を含有させることは、インク受容層のクラック発生の抑制という点から極めて有効である。この際に用いることのできるホウ酸としては、オルトホウ酸(H3BO3)だけでなく、メタホウ酸や次ホウ酸等が挙げられる。ホウ酸塩としては、上記ホウ酸の水溶性の塩であることが好ましく、具体的には、例えば、ホウ酸のナトリウム塩(Na2B4O7・10H2O、NaBO2・4H2O等)や、カリウム塩(K2B4O7・5H2O、KBO2等)等のアルカリ金属塩、ホウ酸のアンモニウム塩(NH4B4O9・3H2O、NH4BO2等)、ホウ酸のマグネシウム塩やカルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等を挙げることができる。
【0088】
塗工液の経時安定性と、クラック発生の抑制効果の点からホウ酸を用いることが好ましい。又、その使用量としては、インク受容層中のポリビニルアルコールに対して、ホウ酸固形分1.0〜15.0質量%の範囲で用いることが好ましい。上記範囲に満たない場合は、クラックが発生する場合があり、又、上記範囲を超える場合は、塗工液の経時安定性が低下するため好ましくない。即ち、生産する場合においては、塗工液を長時間に渡って使用するので、ホウ酸の含有量が多いと、その間に塗工液の粘度の上昇や、又、ゲル化物の発生が起こし、塗工液の交換やコーターヘッドの清掃等が頻繁に必要となり、生産性が著しく低下してしまう。
【0089】
以上のようにして形成されるインク受容層は、高インク吸収性、高定着性等の本発明の所期の目的及び効果を達成する上から、その細孔物性が、下記の条件を満足するものであることが好ましい。インク受容層の細孔容積が、0.1〜1.0cm3/gの範囲内にああることが好ましい。即ち、細孔容積が、上記範囲に満たない場合は、十分なインク吸収性能が得られず、インク吸収性の劣ったインク受容層となり、場合によってはインクが溢れ、画像に滲みが発生する恐れがある。一方、上記範囲を超える場合は、インク受容層に、クラックや粉落ちが生じ易くなるという傾向がある。又、インク受容層のBET比表面積は、20〜450m2/gであることが好ましい。上記範囲に満たない場合、十分な光沢性が得られない場合があり、又、ヘイズが増加するため(透明性が低下するため)、画像が、「白もや」がかかったようになる恐れがある。更に、この場合には、インク中の染料の吸着性の低下を生じる恐れもあるので好ましくない。一方、上記範囲を超えると、インク受容層にクラックが生じ易くなるので好ましくない。尚、細孔容積、BET比表面積の値は、窒素吸着脱離法により求められる。
【0090】
又、インク受容層を形成する場合には、インク吸収性を考慮して、その乾燥塗工量が30g/m2より多く50g/m2以下となるようにすることが好ましい。上記範囲に満たない場合は、特に、シアン、マゼンタ、イエローの3色のインクに、ブラックインクの他、複数の淡色インクが加えられているようなプリンタに用いた場合に、十分なインク吸収性が得られず、即ち、インク溢れが生じ、ブリーディングとなる場合が発生したり、下塗り層にまでインク染料が拡散し、印字濃度が低下する場合があるので好ましくない。一方、上記範囲を超える場合には、クラックの発生を抑え切れないことが生じる恐れがある。更には、その乾燥塗工量が30g/m2より多く45g/m2以下となるようにすることが好ましい。即ち、30g/m2より多くすると、高温高湿環境下においても十分なインク吸収性を示すインク受容層が得られるので好ましく、乾燥塗工量を45g/m2以下とすると、インク受容層の塗工ムラが生じにくくなる。
【0091】
また、本発明の記録媒体を得るにあたり、必要に応じて基材とインク受容層の間に下塗り層を設けることも可能である。下塗り層の形成材料は、顔料とバインダとを含む塗工液によって形成できるが、インク受容性を有するものとすることが好ましい。顔料としては、無機顔料を決着する材料に使用できるものとして先に説明したと同様のバインダを用いることができる。以下に挙げるものの中から選択される1種以上を用いることができる。例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、及び加水ハロサイト等の無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン粒子、マイクロカプセル粒子、尿素樹脂粒子、及びメラミン樹脂粒子等の有機顔料等が挙げられる。
【0092】
バインダとしては、上記に挙げた顔料を結着し、被膜を形成する能力のある材料であって、且つ、本発明の効果を損なわない範囲のものであれば、特に制限はなく利用することができる。例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルアルコール又はその誘導体;ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役重合体ラテックス;アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体等のアクリル系重合体ラテックス;エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス;或いは、これら各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス;或いは、これら各種重合体にカチオン基を用いてカチオン化したもの、カチオン性界面活性剤にて重合体表面をカチオン化したもの、カチオン性ポリビニルアルコール下で重合し、重合体表面に該ポリビニルアルコールを分布させたもの、カチオン性コロイド粒子の懸濁分散液中で重合を行い、重合体表面に該粒子が分布しているもの;メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂等の水性バインダ;ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体樹脂;ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系バインダ等を挙げることができる。上記は、単独或いは複数を混合して用いることができる。
【0093】
下塗り層を形成する方法としては、上記に挙げたような顔料及びバインダを含有する塗工液を、基材表面に塗工し、乾燥等することによって容易に得られる。この際、基材の、少なくともインク受容層側の表面に下塗り層を形成すればよいが、勿論、裏面側にも下塗り層を形成し、基材両面に下塗り層を形成してもよい。被記録媒体の環境カールの安定性を考慮すると、下塗り層は、基材の表裏面に設けることが好ましい。下塗り層の塗工量としては、基材であるセルロースパルプ等の表面繊維を十分に覆うために、乾燥塗工量が10g/m2以上、更には15g/m2以上とすることが好ましい。乾燥塗工量が10g/m2未満では、基材のセルロースパルプ等の表面繊維を完全に覆うことが困難であり、光沢性に影響する場合が生じる。
【0094】
又、下塗り層用の塗工液中のバインダ量は、顔料に対して、5〜50質量%になるようにすることが好ましい。バインダ量が上記範囲に満たない場合は、下塗り層にクラックが発生し易くなり、且つ下塗り層の機械的強度が不十分となり、粉落ちが生じ易くなる。上記範囲を超える場合は、インク溶媒の吸収性の低下やキャスト時の水分等の蒸発(基材裏面への蒸気の移動)が悪化する傾向がみられる。本発明においては、更に、必要に応じて下塗り層形成後、カレンダ処理を施してもよく、これによって基材/下塗り層の厚み調整を行うことができる。
【0095】
インク受容層、下塗り層などにおける各塗工液の塗工は、前記したような適正塗工量が得られるように、例えば、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、エクストルージョン方式を用いたコーター、スライドホッパー方式を用いたコーター、サイズプレス等の各種塗工装置を適宜選択して用い、オンマシン、オフマシンで塗工される。
【0096】
塗工後の乾燥には、例えば、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等を、適宜選択して用いることができる。
【0097】
本発明にかかる被記録媒体は、上記のようにしてインク受容層を形成した後、下記のような方法を用いることで、インク受容層の表面に光沢面を形成することが好ましい。このようにすれば、光沢のある写真調画像の形成が可能な被記録媒体が得られる。光沢面を形成する方法としてはキャスト法を用いることができ、特に、リウェットキャスト法を適用することが好ましい。
【0098】
キャスト法とは、湿潤状態、又は可塑性を有している状態にあるインク受容層を、加熱された鏡面状のドラム(キャストドラム)面に圧着し、圧着した状態で乾燥し、その鏡面をインク受容層表面に写し取る方法であり、以下の3つの代表的方法がある。即ち、塗工液を過剰に基材に塗工し、プレスロールとキャストドラムの間で絞るようにして適正塗工量にした後、そのまま加熱されているキャストドラムに圧着して乾燥する直接法、基材に塗工された塗工液を一度乾燥、又は半乾燥状態にした後、水を主成分とする再湿液によりインク受容層を可塑性を有した状態(湿らせた状態)に戻し、その後に加熱されているキャストドラムに圧着して乾燥するリウェット法(間接法)、基材に塗工された塗工液をある程度乾燥し、続いて酸等の凝固剤で処理した後、流動性のないゲル状態で、加熱されているキャストドラムに圧着して乾燥する凝固法である。
【0099】
これらのキャスト法は、何れも、写真調画像の形成が可能な被記録媒体を製造する場合に利用できるが、製造速度という点において、リウェット法が、他2種の方法に比べはるかに速くなるので好ましい。又、本発明にかかる被記録媒体は、そのインク受容層にアルミナ水和物が用いられているが、この場合には、特にリウェットキャスト法を行うことによって、高光沢性が得られるので、より好ましい。
【0100】
リウェットキャスト法で用いる再湿液には、水を主成分とし、これに、例えば、アンモニウム塩、ポリアミド樹脂、ヘキサメタリン酸等のリン化合物、アミド化合物、フッ化物、硫酸亜鉛、蟻酸カルシウム等を添加したものを用いることが好ましい。
【0101】
キャスト法で使用するキャストドラムは、一般のキャストコート紙の製造条件と同様に、本発明においても、その表面粗度、表面温度、直径、線圧、速度を適宜選択することが可能であるが、ドラムの表面温度を、80〜120℃としておくことが好ましい。この範囲に満たない場合には、光沢面の光沢性が低下する可能性があり、この範囲を超える場合は、キャストドラムに圧着されたインク受容層が急激に加熱されて、沸騰され易くなる傾向がある。沸騰が起こると、インク受容層は、キャストドラムと完全に密着することができなくなり、キャストドラムの鏡面の写し取りが不十分となり、光沢面が著しく損なわれる場合がある。
【0102】
本発明にかかる被記録媒体を製造する場合には、更に、基材裏面(下塗り層の形成された面の反対側の面)に裏面層の形成工程を加え、裏面層を有する被記録媒体を製造してもよい。裏面層を形成することは、印字前や印字後において生じるカール低減のためには有効である。
【0103】
この場合に形成する裏面層は、顔料とバインダを含む層であり、先に説明した下塗り層やインク受容層の形成に用いる塗工液と同様の、顔料やバインダを用いることができる。被記録媒体の印字前、印字後のカール発生の抑制効果を考慮すると、吸湿時に、基材表面側の下塗り層及び/又はインク受容層と同様の収縮を生じるものが好ましく、下塗り層やインク受容層と同系統の顔料やバインダを用いることが好ましい。特に、厚めの層であるインク受容層の形成材料と同系統の、顔料やバインダを用いることがより好ましい。裏面層の乾燥塗工量も、印字前、印字後のカール発生の抑制効果を考慮すると、10g/m2以上とすることが好ましい。裏面層の塗工は、先に説明した、下塗り層、インク受容層、下塗り層の表面処理における、塗工及び乾燥と同様の方法で行うことができる。
【0104】
更に、本発明にかかる被記録媒体を製造する場合には、必要に応じて、上記した裏面層と基材の間に、前記した下塗り層のような別層を設けてもよい。この場合には、裏面側にも光沢面を形成することが可能となり、両面光沢媒体を得ることができる。又、裏面層、又は裏面層及び/又は別層に印字性能を付与すれば両面印字も可能となる。
【0105】
また、基材がレジンコート紙以外のアート紙、バライタ紙、キャストコート紙等の場合には、銀塩写真に類似した手触り、質感で高付加価値の印刷物を得るという点で、裏面層に樹脂被覆層を設けても良い。
【0106】
樹脂被覆層に用いられる樹脂材料としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましく、中でも溶融押出コーティング性の点からポリオレフィン系樹脂がさらに好ましい。また、電子線硬化樹脂で被覆してもよい。好ましく用いられるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等のホモポリマー、エチレン−ブチレン共重合体などのα−オレフィンの2つ以上から成る共重合体およびこれらの混合物であるが、特に溶融押出コーティング性および基紙との接着性の点からポリエチレン系樹脂が特に好ましい。それらのポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンとプロピレン、ブチレン等のα−オレフィンとの共重合体、カルボキシ変性ポリエチレン等およびこれらの混合物を単独にあるいは混合して有利に使用できる。
【0107】
さらに、本発明において、樹脂被覆層は、走行する原料シート上に、加熱溶融したポリオレフィン樹脂を流延する、いわゆる溶融押出コーティング法、またはポリオレフィン樹脂エマルジョンを塗工するエマルジョン塗工法等により製造される。押出コーティング法による時は、樹脂と原紙との接着性を向上させるために、樹脂を原紙に被覆する前に、原紙にコロナ放電処理、火炎処理等の活性化処理を施すことが好ましい。エマルジョン塗工法による時は、塗工後にカレンダー処理等を施して表面を平滑化することが好ましい。本発明における樹脂被覆層の厚みとしては、特に制限はないが、一般に5〜50μmの厚みが適当である。
【0108】
本発明の記録媒体は、副領域には予め文字、模様、各種の表示、ロゴマークなどを印刷した印刷部を設けた構成することもできる。例えば、図5や図6に示すように副領域に、記録媒体のプリンタへの挿入方向を示す矢印などを印刷することで、記録媒体のプリンタへの挿入方向を視覚的に指示することが可能であり、かつ、表裏判別の視覚的効果も得ることが可能となる。副領域に切り欠きを設けることで、記録媒体の表裏及び向き整えることが出来るが、矢印など挿入方向を図4に示すように視覚的に訴えかけることにより、誤挿入、誤装填をより効果的に防止可能である。印刷は矢印の他、文字、数字、文章、模様、図形、彩紋、イラスト、写真や各種マーキング、ロゴなど挿入方向を意味するもの、意味できるものであれば特に限定されるものではない。万国共通の記号、とりわけ矢印を使用することが好ましい。さらに、企業ロゴなどを矢印と一緒或いは別に印刷し、企業コマーシャルなどを行うことも出来る。企業ロゴなどを入れることで、記録媒体の素性が明らかにされることはもちろん、ユーザーに企業コマーシャルを有効的に行うことが出来る。
【0109】
印刷色数としては、特に1色に限られることは無く、2色、3色と多色印刷、可能であり、印刷する目的や狙う効果によって印刷色数が決定される。印刷方法としては、従来公知のオフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷など様々な方法を用いることが可能である。使用できるインク種としては、一般に使用されているオフセット印刷用インキ、グラビア印刷用インキ又はUVインキ等から選ぶことができる。
【0110】
これらのインキに使用される代表的な合成樹脂は、塩化ビニルを主体とする共重合体樹脂、ビニル・アミノ樹脂、アルキド・ビニル樹脂、オイルフリーアルキド樹脂、塩酢ビ系、硝化綿、ポリエステル、ポリアミドウレタン、ポリアクリル、ロジン変性マレイン酸、エチレン酢ビ、ビニールエーテル、ウレタン酢ビ、塩酢ビウレタン樹脂、変性アルキッド樹脂、変性フェノール樹脂、高分子ポリエステル・アミノ樹脂、低分子ポリエステル・アミノ樹脂、アルカリ可溶型樹脂(ロジン変性マレイン酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、スチレンアクリル酸樹脂、アクリル酸エステルアクリル酸樹脂、メタクリル酸エステルアクリル酸樹脂)、ハイドロゾル型樹脂(スチレンマレイン酸樹脂、スチレンアクリル酸樹脂、α−メチルスチレンアクリル酸樹、アクリル酸エステルアクリル酸樹脂、メタクリル酸エステルアクリル酸樹脂)、エマルジョン型樹脂(スチレン樹脂、スチレンアクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、メタクリル酸エステル共重合樹脂)、UVインキ用の樹脂としては、アクリル系不飽和基を持つポリマーが一般的に使用されており、代表的な例としてはポリエステル/アクリル酸エステル、ポリエステル/ウレタン樹脂/アクリル酸エステル、エポキシ樹脂/アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシエチレンメタクレートが挙げられる。
【0111】
また、これらのインキには一般に知られている着色剤が併用される。使用される着色剤としては、特開昭63−44653号公報等に記載されている各種顔料及びアゾ顔料(アゾレーキ;カーミン6B、レッド2B、不溶性アゾ;モノアゾイエロ(PY−1、3)、ジスアゾイエロ(PY−12、13、14、17、83)、ピラゾロオレンジ(PO−B−34)、バルカンオレンジ(PO−16)、縮合アゾ系;クロモフタルイエロ(PY−93、95)、クロモフタルレッド(PR−144、166)、多環式顔料(フタロシアニン系;銅フタロシアニンブルー(PB−15、15−1、15−3)、銅フタロシアニングリーン(PG−7)、シオキサジン系;ジオキサジンバイオレット(PV−23)、イソインドリノン系;イソインドリノンイエロ(PY−109、110)、スレン系;ペリレン、ペリノン、フラバントロン、チオインジゴ、レーキ顔料(マラカイトグリーン、ローダミンB、ローダミンG、ビクトリアブルーB)又無機顔料(酸化物;二酸化チタン、ベンガラ、硫酸塩;沈降性硫酸バリウム、炭酸塩;沈降性炭酸カルシムウ、珪酸塩;含水珪酸塩、無水珪酸塩、金属粉;アルミニウム粉、ブロンズ粉、亜鉛末、その他カーボンブラック、黄鉛、群青、紺青)等が挙げられる。またこれ等の顔料は遮光性物質として前述の樹脂層等に添加しても構わない。この他に油溶性染料、分散性染料等も使用される。代表的な染料を大別するとアゾ染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、フタロシアニン染料、カルボニル染料等がある。その他インキを構成する原材料として必要に応じて各種溶剤、分散剤、湿潤剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、安定剤、架橋剤、ワックス等の添加剤が使用される。
【0112】
副領域に印刷を施した被記録媒体の製造効率という点、例えば加工性、インクの受容層面からのインク転写の防止などの点からからは、副領域に予め設ける印刷部の形成にUVインクを用いることが好ましい。UVインクを用いた場合には、UV光を照射する工程において、100〜2000mJ程度の条件でUVを照射することによって、効率良くUVインクを硬化させることができると共に、他の印刷方式に比べ簡便な操作で印刷を行うことができ、しかも印刷のための設備の小型化も達成可能である。
【0113】
印刷を行う工程は、穴加工の前でも良いし、ミシン目加工或いは抜き加工の後でも良い。加工方法、加工性、加工コストなどの点から適宜効率の良い方法で行えばよい。印刷をUVインクで行う場合には、図13で示す一例のように印刷後にUV硬化を行う工程を設けることが一般的であり好ましい。二色以上で印刷を行う際には、印刷とUV硬化の工程を色の数だけ繰り返し行うことが好ましい。
【0114】
とりわけ、前記したインク受容層の中でも、アルミナやシリカなど顔料を主成分としたインク受容層とUVインクの組合せが特に好ましい。コストの点から、効率よく記録媒体を加工・製造する際、とりわけ、図13及び14に示すような連続した加工工程の場合、副領域に印刷する場合には印刷インクの極めて優れた乾燥性が必要となる。乾燥性が不十分の場合には、他の記録媒体に印刷インクが付着(転写)したり、加工機の内部に印刷インクが付着し、記録媒体の他の部分に印刷インクが転写したりしてしまう。さらに、印刷された記録媒体は、加工後様々な仕上げ工程を経て、ユーザーの手元に届きプリンタに装填される。この間、記録媒体同士の摩擦などにより印刷がかけてしまうことは許されず、印刷部は、優れた擦過性をも有していることが必要である。インク受容層として、顔料を主成分とするインク受容層は、インクジェット用のインクのみならず、印刷用インクについても良いインク吸収特性を有している。さらに、UVインクにより印刷した際、印刷直後は印刷部分の乾燥性は良くないが、UV光を照射する工程を印刷工程の直後に設けることで極めて素早くインクを固めることができる。また、UVインクにより印刷された印刷部は、顔料を主成分とするインク受容層内に染み込み、染み込んだ上でUV光を照射され硬化されるので極めて優れた擦過性をも併せ持つことができる。
【0115】
本発明の好ましい実施形態として、記録媒体1をシールの形状としてもよい。具体的には、印刷面とは反対側の面に、粘着層とその上に剥離紙とを積層して形成される。ハーフカットで囲まれた記録部位へ印刷後、ハーフカットで囲まれた記録部を剥がし、記録物を任意の面に接着することができる。なお、粘着層および剥離紙の存在が、副領域の穴や切り欠き、挿入方向明示印刷の機能の発揮に障害とならないことはいうまでもない。
【0116】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、「%」及び「部」は特に指定していない限り質量基準である。
【0117】
〔記録媒体の作成〕
〔光沢紙の作成〕
[支持体の作成]
支持体は、特開平11−091235号公報に記載されている方法をモデルに作成した。LBKPからなる坪量100g/m2の原紙の表面に、低密度ポリエチレン85重量部と二酸化チタン15重量部からなる樹脂組成物を25g/m2塗布し、裏面に、高密度ポリエチレン50重量部と低密度ポリエチレン50重量部からなる樹脂組成物を20g/m2塗布して、樹脂被覆紙を作製した。
【0118】
[アルミナ分散液の作成]
米国特許第4,242,271号、米国特許第4,202,870号に記載された方法でアルミニウムオクタキシドを合成し、その後加水分解してアルミニウムスラリーを製造した。このアルミナスラリーに純水を加え固形分が5重量%になるようにした。次にこれを80℃に昇温して10時間熟成反応を行った後、アルミナ分散液をスプレイ乾燥してアルミナ水和物を得た。次にこのアルミナ水和物を純水に混合、分散し、塩酸によりpHを4に調整した。更に、この分散液を90℃に昇温したのちpHを苛性ソーダにより10に調整して、6時間撹拌を行った。その後、室温まで冷却しpHを8に調整してアルミナ分散液Aを得た。このアルミナ分散液を脱塩処理、解膠処理を行った後、スプレイ乾燥によりアルミナ水和物を得た。これをX線回折により測定したところ、擬ベーマイト構造を有するものであった。このアルミナ水和物を再び純水と固形分が22重量%となるように混合し、更に固形分に対して2%分の酢酸/硝酸=1/1の混合液を加えてアルミナ分散液Bを得た。
【0119】
[インク受容層の塗工]
インク受容層は、支持体の表面に塗設した。インク受容層の塗被組成物は、上記アルミナ分散液Bを100部、ポリビニルアルコール(PVA117:クラレ株式会社製)を2.2部、ホウ酸を0.1部用い固形分濃度15%として、これらを調液した。この塗液をバーコータにより、乾燥塗工量30g/m2となるように支持体に塗工・乾燥した。
【0120】
〔コート紙の作成〕
[支持体の作製]
支持体は、特開平07−101142号公報に記載されている方法をモデルに作成した。LBKP(濾水度400mlcsf)80部とNBKP(濾水度450mlcsf)20部からなる木材パルプ100部に対して、軽質炭酸カルシウム/重質炭酸カルシウム/タルクの比率が10/10/10の顔料25部、市販アルキルケテンダイマー0.10部、市販カチオン系(メタ)アクリルアミド0.03部、市販カチオン化澱粉0.80部、硫酸バンド0.40部を調製後、坪量約90g/m2となるように抄造した。
【0121】
[インク受容層の塗工]
インク受容層は、支持体の表面に塗設した。インク受容層の塗被組成物は、合成非晶質シリカ(ファインシールX37B:徳山曹達株式会社製)100部、ポリビニルアルコール(PVA117:クラレ株式会社製)30部を用い、固形分濃度15%として、これらを調液した。この塗液をバーコータにより、乾燥塗工量30g/m2となるように支持体に塗工・乾燥した。
【0122】
〔ミシン目の作成〕
カット/アンカット率が0.3mm/0.2mmのマイクロミシン刃を使用し、上記のように得た記録媒体に対し、インク受容層面からマイクロミシン刃を入れミシン目を作成し、主領域と2つの副領域を有する記録媒体を作成した。このときの切れ込みの深さは、インク受容層を貫通し、支持体の厚さの90〜95%まで到達する程度に設定した。
【0123】
〔穴及び記録媒体の作成〕
トムソン型抜き機により、所定の外形寸法、副領域に穴及び副領域に切り欠きを設けるようにインク受容層面から刃を入れ記録媒体M1〜M6を得た。
M8及びM9にはミシン目加工を行わなかった。M10はM5に対して穴3の加工を行わなかった。穴2と穴3の上端は、記録媒体上端から6mmの位置で揃え、穴4と穴5の下端は、記録媒体下端から6mmの位置で揃えた。穴2と穴4の中心は記録媒体左端から10mm、穴3と穴5の中心は記録媒体右端から10mmとなるように穴を設けた。切り欠きの大きさは一辺5mmの直角二等辺三角形となるようにした。
【0124】
〔矢印の印刷〕
UVインクを使用し、赤色の矢印を副領域に作成した。記録媒体M2に対し、UVインクを印刷後、1000mJの条件でUV光を照射しUVインクを硬化させ、記録媒体M7を得た。記録媒体M1〜M10の詳細を表1に記載する。
【0125】
【表1】
【0126】
<評価>
光学センサーによる判別冶具を使用し、用意した記録媒体の自動判別を行った。
1.記録媒体のサイズ及び紙種判別
表裏、挿入方向共に正しく挿入し評価を行った。用紙サイズ、紙種違いを自動的に判別したものは○、自動判別できなかったものは×とした。
2.表裏判別
挿入方向は正しく、表裏を間違えて挿入し評価を行った。表裏間違っている旨のエラーランプが点灯し、自動的に記録媒体が排紙されたものは○、エラーランプなど無く自動的に排紙されたものは×とした。記録媒体にコーナーカットや矢印印刷などの付加手段によって判別が可能なもの或いはセンサー追加によりエラーランプ点灯が可能なものについては△とした。
3.挿入方向判別
表裏は正しく、挿入方向を間違えて挿入し評価を行った。挿入方向が間違っている旨のエラーランプが点灯し、自動的に記録媒体が排紙されたものは○、エラーランプなど無く自動的に排紙されたものは×とした。記録媒体にコーナーカットや矢印印刷などの付加手段によって判別が可能なもの或いはセンサー追加によりエラーランプ点灯が可能なものについては△とした。
4.表裏、挿入方向同時判別
表裏、挿入方向共に間違えて挿入し評価を行った。表裏、挿入方向共に間違っている旨のエラーランプが点灯し、自動的に記録媒体が排紙されたものは○、エラーランプなど無く自動的に排紙されたものは×とした。記録媒体にコーナーカットや矢印印刷などの付加手段によって判別が可能なもの或いはセンサー追加によりエラーランプ点灯が可能なものについては△とした。
5.誤装填率
M2、M6、M7の記録媒体を使用した。20人の被験者に対し、上記3種類の記録媒体を渡し、記録媒体の表裏、挿入方向を間違えずに何人が正しくプリンタにセットできるかを試験した。評価結果は「正しく挿入できた人/20」で記載する。
6.カール
温度:10℃、湿度10%の環境に、PP袋に入れた記録媒体を12時間放置し、該環境内で机上にインク受容層面を上にして5枚放置し、記録媒体の4隅について、30分後のカール量を測定する。その時、4隅のカール量が±2mmの範囲にあるものを○、±4mmの範囲にあるものを△、それ以上のものを×とした。
上記1〜6の評価結果を表2に記載する。
【0127】
【表2】
【0128】
【発明の効果】
以上の如き本発明によれば、従来ユーザー自らが行っていた用紙サイズの設定や用紙種の区別・設定等せずに、プリンタに記録媒体を装填、挿入すればプリンタが用紙サイズや用紙種を自動的に判別することが可能な記録媒体を提供すると共に、記録媒体が斜行した際には斜行を検知し、ユーザーに記録媒体を装填・挿入し直すよう促すことが可能な記録媒体を提供し、さらには、記録媒体の挿入方向を簡単に指示することが可能な記録媒体を提供し、線対称に穴を設けることで記録媒体にかかる応力が緩和し、安定した加工を可能とする記録媒体であると共に、プリンタ本体での搬送不具合も無く、良質な印刷物を得ることのできる記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るインクジェット用記録媒体の第一の実施形態を示す図である。
【図2】本発明に係るインクジェット用記録媒体の第二の実施形態を示す図である。
【図3】本発明に係るインクジェット用記録媒体、第一の実施形態の中でも好ましい記録媒体を示す図である。
【図4】本発明に係るインクジェット用記録媒体、第二の実施形態の中でも好ましい記録媒体を示す図である。
【図5】図4の記録媒体にプリンタへの挿入方向を矢印で明示した実施形態を示す図である。
【図6】図5の記録媒体に印刷する領域を示す図である。
【図7】図7は、図6の印刷物をミシン目から切り離したことを示す図である。
【図8】本発明に係るインクジェット用記録媒体の用紙サイズ或いは紙種違いを判別する穴の開き方の一例を示す。この一例においては、8種類の判別が可能である。
【図9】本発明に係るインクジェット用記録媒体における好ましい例を示す図である。
【図10】本発明に係るインクジェット用記録媒体における好ましい例を示す図である。
【図11】図5内のA−A’の断面図の模式図である。
【図12】本発明にかかる記録媒体の製造工程を説明するための図である。
【図13】本発明にかかる記録媒体の製造工程を説明するための図である。
【図14】本発明にかかる記録媒体の製造工程を説明するための図である。
【図15】本発明にかかる記録媒体の製造工程を説明するための図である。
【図16】本発明にかかる記録媒体における角を加工した状態の一例を示す図である。
【図17】オス型とメス型の組合せを用いて検知穴を形成する工程を説明するための図である。
【図18】ミシン目を開けるための切断刃の刃先の角度を説明するための図である。
【符号の説明】
1…記録媒体
2、3、4、5…穴
6、7…ミシン目
8…印刷
9…印刷領域
10…主領域
11、12…副領域
13−1…記録媒体左端から穴2または4中心までの距離:L1
13−2…記録媒体右端から穴3または5中心までの距離:L2
14−1…穴2、3の上端から記録媒体上端までの距離:L3
14−2…穴4、5の下端から記録媒体下端までの距離:L4
15−1…記録媒体の短手の中心線
15−2…CWと記録媒体の長手の中心線:CL
16…インク受容層
17…基材
18…巻き出し
19…穴加工ユニット(オス型付)
20…エアーブローユニット
21…印刷ユニット
22…UV硬化ユニット
23…ミシン目加工ユニット
24…抜き加工ユニット
25…集積部
26…オス型(凸型)部
27…26の拡大図
28…ミシン目
29…穴加工ユニット(メス型付)
30…加工前の記録媒体
31…オス型
32…メス型
33…切断刃
34…刃先の角度
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録に好適に用いられる記録媒体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在広く普及している多くのインクジェットプリンタは、インクジェット用記録媒体(以下、省略する場合は、単に「記録媒体」と記載する)の供給先端部および左右端部、さらには後端部に非印刷領域が必然的に生じる。これらの非印刷領域は、記録媒体をプリンタ内部において安定的に搬送する、あるいはプリンタ内部をインクによって汚さないために必要な領域であり、現在では不可避的に発生する領域である。
【0003】
さらに、プリンタの種類によっては、記録媒体の先端部と後端部との非印刷領域の大きさを同一とすることができない。または両者の大きさを同一とすると極めて広い非印刷領域が残ってしまう。例えば、記録媒体の供給後端部において一定領域の非印刷領域が不可避的に発生してしまう場合、記録媒体の一部に広い非印刷領域が残る。一般的な構造のプリンタにおいて、この不可避的に発生する非印刷領域の幅は10〜20mm程度である。この非印刷領域のために、印刷物の印刷領域が記録媒体の中心部分からずれ、印刷物の美観、意匠性および付加価値を低下させてしまう。また、先端部に生ずる非印刷領域を後端部に生ずる非印刷領域に合せると、印刷領域を記録媒体の中心部に存在させることはできるものの、先端部および後端部に不自然に広い非印刷領域を作ってしまい、印刷物の美観、意匠性および付加価値を低下させてしまう。
【0004】
インクジェット方式による画像記録は、近年、画像記録装置の改良ならびに記録媒体の改良が進んだ結果、インクジェット方式による画像記録においても非常に高品質な画像が得られ、写真印刷(銀塩写真)と同等の画像品質といわれるまでになってきた。
【0005】
インクジェット方式は、インクを用いる直接記録であるため可視化に複雑な処理を必要としないこと、インクを飛翔させて記録するので基本的に非接触、ノンインパクト記録方式となること、インクが必要部分にだけ付着されるのでインクの使用効率が高く、用紙は普通紙でも自然感がある画像が得られること、インク、紙のランニングコストはきわめて低く、経済的であること、カラーインクを用いてインク滴の重ね合わせが可能で比較的容易に高品位なカラー印写が可能であることなどの特徴がある。
【0006】
インクジェット方式で写真画像を印刷できる記録媒体としては、印刷面に光沢を有する光沢紙や、インクジェット専用紙などのインクジェット用記録媒体が提供されている。このような光沢紙やインクジェット専用紙は、精細な写真画像などをより正確に記録できるようにするため、表面にインク受容層又は光沢度調整層などのコーティング層を設けるコーティング処理が必要になる。しかし、このようなコーティング処理は、コストがかかることから片面にのみ施すことが多い。そのため、光沢紙やインクジェット専用紙は、その記録面を特定して記録装置に挿入する必要があるため、表裏面を判別できるように、一方の面にロゴマーク入れたり、コーナーカットを入れたりしていた。
【0007】
インクジェット方式は、手軽に、かつ、容易に、そして誰しもが簡単に素早く印刷画像を入手可能であることから、業務用から家庭用まで、老若男女非常に幅広い層で様々な形態で使用されるようになってきており、今後更なる技術革新が望まれるところである。
【0008】
このように、多種多様な要望が求められている中で、記録画像における不必要な余白を排除する方法としては、記録媒体にミシン目を入れておき、画像を形成した後に、ミシン目を利用して不必要な余白部を分離する方法が提案されている。
【0009】
例えば、特開平10−166748号公報(特許文献1)、特開平11−277879号公報(特許文献2)、特開2001−47737号公報(特許文献3)、特開2001−96899号公報(特許文献4)、特開2002−29148号公報(特許文献5)、特開2002−96554号公報(特許文献6)には、ミシン目により容易に分離可能な記録媒体が提案されている。
【0010】
また、記録媒体のプリンタ等への誤装填防止にための技術としては、例えば、特開平3−51177号公報(特許文献7)には、表裏などの使用条件を限定するために用紙の一定部所にマーキングや切り込み部を設けた記録媒体が、特開平11−180569号公報(特許文献8)、特開2002−137538号公報(特許文献9)、特開2002−321438号公報(特許文献10)には、ミシン目と誤装填防止のためのコーナーカットを有する記録媒体が提案されている。さらに、特開平11−208157号公報(特許文献11)には、用紙種を自動判別するためにコーナーカットの位置、数の異なる記録媒体が、特開2000−118796号公報(特許文献12)には、重送を判別するための検知孔を設けた記録媒体が提案されている。
【0011】
【特許文献1】
特開平10−166748号公報
【特許文献2】
特開平11−277879号公報
【特許文献3】
特開2001−47737号公報
【特許文献4】
特開2001−96899号公報
【特許文献5】
特開2002−29148号公報
【特許文献6】
特開2002−96554号公報
【特許文献7】
特開平3−51177号公報
【特許文献8】
特開平11−180569号公報
【特許文献9】
特開2002−137538号公報
【特許文献10】
特開2002−321438号公報
【特許文献11】
特開平11−208157号公報
【特許文献12】
特開2000−118796号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ミシン目を用いた記録媒体に関しては、先に挙げた特開平10−166748号公報などに、記録媒体を容易に分離可能としたり、ミシン目の分離跡を抑制するためのミシン目の提案がされているものの、表裏判別手段や用紙種の判別はユーザー自らが行わなくてはならないという課題がある。特開平3−51177号公報には、用紙の表裏判別手段が提案されているものの、印刷部に印刷乱れのない印刷が可能で、余白無くもしくは印刷部と余白部が均整の取れたレイアウトという点や用紙種の判別はユーザー自らが行わなくてはならないという点で決して満足できるものではないという課題がある。特開平11−180569号公報、特開2002−137538号公報、特開2002−321438号公報には、ミシン目と誤装填防止のためのコーナーカットを有する記録媒体が提案されているものの用紙種の判別はユーザー自らが行わなくてはならないという点で決して満足できるものではない。さらに、特開平11−208157号公報には、用紙種を自動判別するためにコーナーカットの位置、数の異なる記録媒体が、特開2000−118796号公報には、重送を判別するための検知孔を設けた記録媒体が提案されているが、コーナーカットや検知孔を有する記録媒体は、いずれも、印刷物としての品位がコーナーカットにより低下するといった課題がある。また、コーナーカットや検知孔を揃えたとしても、必ず、表裏や前後挿入方向を正しく挿入出来るとは限らず、間違えやすいという問題があった。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑み成されたものであり、光沢紙やインクジェット専用紙等の記録媒体に適用した時、記録媒体の表裏面の判別、前後挿入方向の判別、用紙種の判別、用紙サイズ設定をユーザー自らが行う必要なく、また、外観を良好に保持し、さらには、印刷部に印刷乱れのない印刷が可能で、余白無くもしくは印刷部と余白部が均整の取れたレイアウトの記録物を手に入れることができるインクジェット用記録媒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
特に微細多孔質体への加工(例えば、複数穴同時加工やミシン目加工)に対する新たな課題認識として、加工された後の記録媒体の微小なわずかな歪み発生、河口部付近の微細なクラックなどの発生を見出し、これを解決することも目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明の記録媒体は、支持体上にインク受容層を有するシートからなるインクジェット用記録媒体であって、
前記シートの厚さ方向に貫通する少なくとも一対の検知穴が設けられており、かつ該一対の検知穴の開口形状が、該シートのインクジェット記録装置内での記録時の搬送方向に沿った第1の中心軸または該第1の中心軸に直交する第2の中心軸に線対称をなす部分を含む
ことを特徴とするインクジェット用記録媒体である。
【0016】
この記録媒体は、画像となる部分を構成する主領域と、この主領域から分離可能な副領域とを有し、記録後におけるこれらの領域の分離をミシン目により容易とする構成とすることが好ましい。このようなミシン目を有する記録媒体としては、画像として利用される部分を構成ための主領域と、該主領域と分離し得る副領域と、これらの領域を区分し、かつ該副領域の該主領域からの分離を容易とするミシン目と、該副領域に設けられた一対の検知穴と、を有するシートからなるインクジェット用記録媒体であって、前記ミシン目が、インクジェット記録装置内での記録時の搬送方向に直交する直線に沿って設けられており、かつ前記一対の検知穴の開口形状が、該シートのインクジェット記録装置内での記録時の搬送方向に沿った第1の中心軸または該第1の中心軸に直交する第2の中心軸に線対称をなす部分を含むことを特徴とするインクジェット用記録媒体を挙げることができる。
【0017】
また、本発明の記録媒体は、微細多孔質体をインク受容層として有するシートに、同時穴加工される第1、第2穴部が記録媒体内で穴形状をなす形状の一部のいずれかが線対称となることを特徴とする記録媒体である。
【0018】
本発明で言う所の「穴形状をなす形状の一部」とは、穴を形成する「辺」、「角」、「開口部」または「開口部の中心」のことを言う。
【0019】
本発明にかかるインクジェット用記録媒体におけるミシン目よって区分された副領域内に設けられた検知穴は、シート状の記録媒体が有する面に対して直交する方向に打ち抜きを行って得られるその厚さ方向に貫通する穴であり、その開口形状がシートの搬送方向に沿った中心軸またはシートの搬送方向に直交する中心軸に対して線対称である部分を有するものである。なお、この検知穴は1対でもよいし、必要に応じて2対以上設けることができる。
【0020】
このような配置で検知穴を設けることで、シートサイズの設定や記録媒体の種類の区別・各種特性の設定等の正確な判別をプリンタで自動的に行うことが容易となる。
【0021】
なお、上記の配置の検知穴を有する記録媒体の製造に好適な方法は、
(1)記録媒体となるシート形状を打ち抜き可能な原料シート或いはロール状のシートを用意し、該シート形状のインクジェット記録装置内の記録時の搬送方向となる方向に沿った第1の中心軸または該第1の中心軸に直交する第2の中心軸に対して線対称をなす部分を含む開口形状を有する少なくとも一対の検知穴を形成する工程と、
(2)前記シート形状を前記原料シートから打ち抜いて記録媒体を得る工程と
を有することを特徴とするものである。
【0022】
また、ミシン目を有する記録媒体の好ましい製造方法としては、
(1)記録媒体となるシート形状を打ち抜き可能な原料シート或いはロール状のシートを用意し、該シート形状のインクジェット記録装置内の記録時の搬送方向となる方向に沿った第1の中心軸または該第1の中心軸に直交する第2の中心軸に対して線対称をなす部分を含む開口形状を有する少なくとも一対の検知穴を形成する工程と、
(2)前記少なくとも一対の検知穴の設けられた部分を前記シート形状内の記録画像として利用される主領域から分離可能な副領域とするためのミシン目を、該シート形状のインクジェット記録装置内の記録時の搬送方向となる方向に直交する直線上に沿って形成する工程と、
(3)前記シート形状を前記原料シートから打ち抜いて記録媒体を得る工程と
を有することを特徴とする製造方法を挙げることができる。
【0023】
この方法によれば、ミシン目と検知穴の配置を正確に規定することが可能であり、シートサイズの設定や記録媒体の種類の区別・各種特性の設定等の正確な判別をプリンタで自動的に行うことが容易となる記録媒体を提供することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図1は、本発明に係るインクジェット用記録媒体の第一の実施形態を示す図である。図2は、本発明に係るインクジェット用記録媒体の第二の実施形態を示す図である。図3は、本発明に係るインクジェット用記録媒体、第一の実施形態の中でも好ましい記録媒体を示す図である。
【0025】
図4は、本発明に係るインクジェット用記録媒体、第二の実施形態の中でも好ましい記録媒体を示す図である。図5は、図4の記録媒体にプリンタへの挿入方向を矢印で明示した実施形態を示す図である。図6は、図5の記録媒体に印刷する領域を示す図である。図7は、図6の印刷物をミシン目から切り離したことを示す図である。図8は、本発明に係るインクジェット用記録媒体の用紙サイズ或いは紙種違いを判別する穴の開き方の一例を示す。この一例においては、8種類の判別が可能である。図9及び図10は本発明に係るインクジェット用記録媒体における好ましい例を示す。図11は図5内のA−A’の断面図の模式図を示す。
【0026】
図1から図10は記録媒体の上側がプリンタへの挿入方向である。図中の両矢印は記録媒体に対し左右の穴が線対称に存在することを示す。図9においては穴の上端が、図10においては、穴の下端が揃っていることを示す。図12、13及び14は、本発明に関わる加工方法の一例を示す図である。図15は、本発明に関わる穴加工とミシン目加工の概略を示す斜視図である。
【0027】
(第一の実施形態)
図1に示すように、本発明を適用した実施形態に係るインクジェット用記録媒体1は、シート状に形成されており、一方の面には、インク受容層が設けられている。
【0028】
インクジェット用記録媒体1に設けられた穴2及び3の開口は長方形の形状で形成されており、これらの長方形の上辺は、記録媒体の上端辺から等距離にあり、搬送方向に沿った中心軸15−1に対して線対称となっている。図1に示す例では、搬送方向と長手方向が一致する形状で記録媒体が形成されているが、搬送方向と短手方向が一致する形状で記録媒体を形成してもよい。すなわち、記録媒体の短手或いは長手に、線対称に穴が設けられている。
【0029】
更に、これらの記録媒体は、穴を設けてある部分(副領域)を記録後に画像として用いられる主領域と分離可能な分離部とすることが好ましい。穴2及び3を含む副領域をさみやナイフ、或いはカッターなどの道具を用いて切り離す構成としてもよいが、図3に示すようなミシン目6を設けることで、手で容易に穴が存在する部分を切り離すことができる。
【0030】
この例では、穴は、用紙種或いは/また用紙サイズの自動判別手段として設けられている。また、穴2の形状と穴3の形状を異なるものとすることで、表裏判別なども可能となる。
【0031】
また、図9には、用紙種或いは/また用紙サイズを見分ける穴に該当する部分にあける穴の組合せ例を示す。もちろん、この穴のパターンに限定されることはない。
【0032】
穴2及び3を記録媒体の中心線に対し、線対称に設けることで、記録媒体にかかる応力を緩和することが可能である。穴を記録媒体の中心線に対し線対称に設けることで、記録媒体をロール状のものから打ち抜き加工する際には、加工途中での用紙切れを起こしにくく、さらには、加工装置内での用紙の直進性が優れるため斜行しにくく、記録媒体及び記録媒体内に設ける穴などの各種寸法を安定した形で加工することが可能となる。また、加工された記録媒体のカールは、応力が緩和されているため、左右均等にカールし、左右で異なる反りとなる「ねじれたカール」になりにくい。そのため、製造した記録媒体をプリンタで使用する際には、記録媒体を搬送しなかったり、斜行するなどの搬送不良や記録媒体のカールにより記録媒体と記録ヘッドが衝突したりする問題も発生しにくい。また、記録装置内での記録媒体の直進性も優れるため斜行しにくく、良質な印事物を得ることができる。
(第二の実施形態)
上述の第一の実施形態では、用紙種或いは/また用紙サイズ、さらには、表裏判別を行えるように穴を設けた。本発明の第二の実施形態は、図2に示すように、穴2及び3以外に穴4及び5を設け、さらには、記録媒体の短手と長手の各々に対して、線対称に穴が設けられていることを特徴としている。また、図3には、第一の実施形態の中でも好ましい記録媒体が示されている。すなわち、この例では、上端部に設けられた一対の穴2及び3は図1に示した線対称の関係を有し、記録媒体の右端部の上端部と下端部とに設けられた一対の穴3及び5は、搬送方向に直交する中心軸15−2に対して線対称の形状を有している。更に、下端部に、左右に振分けて設けられた一対の穴4及び5は、長方形の開口形状を有し、その下辺は、記録媒体の下端辺から等距離にあり、かつ中心軸15−1に対して線対称である直線部分を共に含んでいる。一方、記録媒体の左端部の上端部と下端部とに設けられた一対の穴2及び4では、上端部に設けられた長方形の開口形状の上辺と記録媒体の上端との距離と、下端部に設けられた長方形の開口形状の下辺と記録媒体の下端との距離が等しく、かつ上端部に設けられた長方形の開口形状の上辺と下端部に設けられた長方形の開口形状の下辺とが中心軸15−2に対して線対称である直線部分を含んでいる。つまり、穴2と穴3さらには穴4と穴5が記録媒体の中心線に対して線対称であり、かつ、穴2と穴4さらには穴3と穴5が記録媒体の中心線に対して線対称であることを特徴としている。
【0033】
また、図4には、第二の実施形態の中でも好ましい記録媒体を示している。すなわち、記録媒体の短手と長手の各々に対して、線対称に穴が設けられ、かつ、穴を設けてある部分を分離可能な分離部を有する。穴2及び3を有する部分、更には穴4及び5を有する部分をはさみやナイフ、或いはカッターなどの道具を用いて切り離すようにしてもよいが、ミシン目6及び7を設けることで、手で容易に穴が存在する部分を切り離すことができる。
【0034】
この例では、穴は、用紙種或いは/また用紙サイズの自動判別手段として設けられている。また、穴2の形状と穴3の形状を異なるものとすることで、表裏判別をも可能となる。さらには、穴4及び5を上記したようにそれぞれに対して線対称に設けることで、挿入方向の間違い判別や、穴の有無により通常使用される定型サイズの記録用紙との判別も可能となる。
【0035】
また、図9には、用紙種或いは/また用紙サイズを見分ける穴に該当する部分にあける穴の組合せ例を示す。もちろん、この穴のパターンに限定されることはない。
【0036】
穴2、3、4及び5を記録媒体の短手と長手の各々に対して、線対称に穴を設けることで、記録媒体にかかる応力を第一の実施形態以上に緩和することが可能である。穴を記録媒体の短手と長手の各々に対して、線対称に穴を設けることで、記録媒体をロール状のものから打ち抜き加工する際には、加工途中での用紙切れを起こしにくく、さらには、用紙の直進性が優れるため斜行しにくく、記録媒体及び記録媒体内に設ける穴などの各種寸法を安定した形で加工することが可能となる。
【0037】
また、加工された記録媒体のカールは、応力が緩和されているため、上下左右均等にカールし、上下或いは左右で異なる反りとなる「ねじれたカール」になりにくい。そのため、製造した記録媒体をプリンタで使用する際には、記録媒体を搬送しなかったり、斜行するなどの搬送不良や記録媒体のカールにより記録媒体と記録ヘッドが衝突したりする問題も発生しにくい。また、記録媒体の直進性が優れるため斜行しにくく、良質な印事物を得ることができる。また、図5には、記録媒体の挿入方向をはっきりと印刷された矢印によって明示した記録媒体を示す。さらに、図5には、矢印の他に企業ブランドの広告などを目的とし、商標などのロゴを明示した記録媒体を示す。
【0038】
このインクジェット用記録媒体1は、所望の大きさにすることが出来る。シートの平面形状としては、長方形や正方形などの矩形形状を基本とし、定型サイズとしては、A4、B5、B4、A3、A3ノビ、六切、四切、L、2L、4×6等の各種サイズがあるが特に限定されない。記録媒体の大きさを前記した各種サイズとしても良いし、図7に示すように穴を含む部分を切り離し、残った部分の大きさが前記した各種サイズであっても良い。記録媒体のサイズは各々の用途によって決定することが可能である。
【0039】
切り離された穴を含む部分をここでは副領域と呼び、穴を含まない部分を主領域と呼ぶ。
【0040】
副領域の大きさは、主領域と幅が同じであれば、長さは同じであっても異なっていても良い。プリンタ搬送系の構成や印刷するためのインク量などにもよるが、挿入方向側である副領域の方が後端方向の副領域より長いことが好ましい。これは、記録媒体が、印刷されると印刷部が反る傾向にあり前方方向の副領域は、あまり短いと記録中の記録ヘッドに擦り、印刷物の品位を低下させる可能性がある。最悪の場合には記録ヘッドを壊してしまう可能性もある。したがって、前方方向の副領域の長さは、少なくともLFローラーから排紙ローラーの両方に噛み込まれる長さを持っていることが好ましく、操作性や記録媒体のコストを考慮し、その長さに加え5mm以下にとどめることが好ましい。後端方向の副領域は、印刷部が次々と排紙ローラーに噛みこまれるため挿入方向側である副領域に比べ反りにくい。しかし、印刷部と非印刷部がアンバランスな状態であるため反りがまったく無いわけではなく、前方方向の副領域同様、少なくともLFローラーから排紙ローラーの両方に噛み込まれる長さを持っていることが好ましく、操作性や記録媒体のコストを考慮し、その長さに加え5mm以下にとどめることが好ましい。しかし、前記した理由により、前方方向の副領域の長さに比べ後端方向の副領域は短くすることが可能であるし、コストを考慮すれば、極力短くすることが好ましい。
【0041】
なお、LFローラーは、Line Feedローラーの略称であり、別名「PFローラー(Paper Feed ローラー)」や「プラテンローラー」と呼ばれ、紙等の記録媒体を搬送する駆動ローラーのことである。
【0042】
以上の点をまとめると、副領域の大きさは、主領域と用紙幅を同一とし、搬送方向における長さ(幅)が5mm以上であり、{(LFローラーから排紙ローラーの距離)+5mm}の値以下であることが好ましい。更に、副領域の大きさとしては、ミシン目6及び7での切離性を考慮し、搬送方向における長さ(幅)が少なくとも5mmであることが好ましく、少なくとも10mmであることがより好ましい。この長さが5mmより短い場合には、切り離し部分が小さすぎて、切り離しにくくハンドリングが悪くなる傾向にある。長い分においてはハンドリングなどに影響はないが、記録媒体のコストが上がるので、上記の下限より長い範囲で、極力短くすることが更に好ましい。
【0043】
図6及び7に示すように、印刷(記録)が行われた記録媒体1において、ミシン目6及び7に沿って切り離し、図7のように主領域と副領域に分離する。例えば、ミシン目6及び7に沿って複数回屈曲させることで、極めて容易に分離することができる。好ましくは、印刷面とは反対の面に1回屈曲させ、極めて容易に、奇麗に分離することができる。
【0044】
本発明において「容易に分離可能」とは、人の手によって容易に切り離すことが可能であることを意味する。本発明の好ましい態様によれば、このミシン目6及び7は、連続する線状または点線状の切り込みとして形成される。また、この切り込みは記録媒体を貫通する切り込みであってもよく、また記録媒体を貫通しない切り込みであってもよい。
【0045】
ミシン目6及び7の切り込みを形成した部分と切り込みを形成しない部分のそれぞれの長さは、基材の厚さや強度に応じて、適宜、決定されてよく、具体的には、プリンタ内においてミシン目6及び7から主領域と副領域とに切り離されたり、プリンタ内でミシン目6及び7が坐屈切断ぜず、人の手で容易に分離できるものであれば限定されない。好ましくは、ミシン目6及び7は、切り込みを形成した部分と切り込みを形成しない部分のそれぞれの長さが1mm以下、より好ましくは0.5mm以下であり、いわゆるマイクロミシン目と呼ばれるミシン目によって形成されていてもよい。マイクロミシン目により形成された分離手段は、分離後、分離部分にいわゆるバリが生じにくく、印刷物の付加価値を向上させることが出来るので好ましい。マイクロミシン目の具体的な形成方法およびそれに用いられる装置は公知であり、例えばハイデルベルグ社製トムソン型抜き機SBDS、同MFS−820M(菅野製作所扱い)として知られる装置によって形成することができる。
ミシン目6及び7の切り込みは記録媒体のインク受容層面からでもインク受容層とは反対の裏面側からでもどちらでも良い。好ましくは、インク受容層面から入れることが好ましい。これは、ミシン目からインク受容層面側に折り返した際には、インク受容層が盛り上がったり、割れたり、剥がれたりし、ミシン目からインク受容層とは反対の面に折り返し、切り離す方が切離部跡がより綺麗になるからである。
【0046】
また、図6に示すように印刷する際にミシン目上を印刷するため、ミシン目と重なる部分のインク受容層はインクを含み脆くなっていると考えられ、インク受容層とは反対の面に折り返し、切り離す方が切離部跡がより綺麗になる。
【0047】
一方、検知用の穴の大きさは、直径が1.5mmから5mmであることが好ましい。例えば、穴2、3、4及び5の大きさは、プリンタ本体に取り付けられるセンサーの大きさや感度にもよるが、見栄えの点や副領域の長さを極力短くする点から極力小さいことが好ましく、直径として1.5mmから5mmであることが好ましく、より好ましくは、2mmから4mmである。穴2、3、4及び5が大きい場合には、前記した副領域は好ましい長さ以上に長くしなければならず、コストが上がってしまい好ましくない。形状としては、特に制限はないが、加工方法や加工性或いは見栄えの点から、円形や楕円形、四角或いは四角の角に丸みを持たせたものなどが好ましい。なお、矩形や楕円の場合においては、その開口部の最大長さを上記の直径の範囲に設定することが好ましい。円形や楕円形の場合における線対称の基準は少なくとも中心が線対称の位置にあればよい。
【0048】
一対の穴の位置については、先に述べた線対称をなす部分を有するように配置する点の他に、特に制限はないが、図3の構成についていえば、プリンタ本体への挿入方向側である穴2及び3においては、プリンタ本体の記録媒体給紙機構のひとつであるピックアップローラーが記録媒体を給紙する際に接触する部分と異なる場所に設けることが良い。ピックアップローラーが記録媒体を給紙する際に接触する部分に穴が設けられている場合には、接触した際に穴から記録媒体が切れたり、破けたりし、そのクズがプリンタ本体内部に入り込み、本体の故障要因となるだけでなく、穴が切れたり、破けたりした場合にはプリンタ本体側で記録媒体の種類やサイズ、表裏などを自動判別することができなくなる可能性がある。また、記録媒体の幅方向の略中央部付近に設けることも避けたほうが良い。
【0049】
記録媒体の幅方向の略中央部に穴が設けられた場合には、記録媒体の表裏判別が困難となる。記録媒体の略中央部付近以外に設けた場合には、記録媒体の表裏判別が可能となる。また、本体のコストを押さえるためにセンサーは一箇所が望ましく、穴2、3、4及び5は左右に線対称となるように設け、プリンタ本体に設けられた一ヶ所のセンサーで効果的に記録媒体の表裏面の判別、前後挿入方向の判別、用紙種の判別、用紙サイズの判別ができるようにした方が良い。
【0050】
例えば、図2に示すように計4対の穴を設ける場合(1つの穴が2つの対で重複している)においては、図2に示すように穴2と3の関係と穴4と5の関係がともにプリンタ挿入方向、すなわち中心軸15−1に対して線対称の位置にあることが好ましい。いずれかの対が、中心軸15−1に対して線対称の位置にない場合には、記録媒体の表裏判別、前後挿入方向を判別するためにプリンタ本体にセンサーを二箇所設けなくてはならず、プリンタ本体のコストの点で好ましくない。穴をプリンタ挿入方向に対して線対称の位置とすることでプリンタ本体に設けるセンサーは一ヶ所とすることが可能であり、プリンタ本体のコストの点で好ましい。
【0051】
プリンタ挿入方向に対して、記録媒体の流れ方向にある穴が線対称にあることは、記録媒体の斜行を検知するのに有効な手段である。また、記録媒体の表裏と前後挿入方向を間違えてユーザーがプリンタに挿入した場合に、プリンタ本体に設けたセンサーにより効果的に判別可能であり、記録媒体の誤挿入を防止することができる。
【0052】
更に、穴2及び3の上端(上辺)は、図1、図2及び図9に示すように、記録媒体上端から同じ距離にあることが好ましい。これは、記録媒体の表裏を間違えてユーザーがプリンタに挿入した場合に、プリンタ本体に設けたセンサーにより効果的に判別可能であり、記録媒体の誤挿入を防止することができるだけでなく、穴2及び3の穴上端から記録媒体上端までの長さが同じであることから、記録媒体を給紙してからある所定の一つの読み取りで誤挿入判別をしはじめることが可能であるばかりか、記録開始位置の判別、用紙種判別、用紙サイズ判別をも極めて簡素な制御により可能とすることができる。
【0053】
更に、排紙方向側の左右線対称に設けられた穴は、図2及び4に示される穴4及び5のように、その下端(下辺)が、記録媒体下端から同じ距離にあることが好ましい。これは、記録媒体の表裏判別を間違えてユーザーがプリンタに挿入した場合に、記録媒体を給紙してからある所定の一つの読み取りで誤挿入判別を可能とする。
【0054】
更に、上記の2つの好ましい態様を満たす構成を満たし、すなわち挿入方向側の左右線対称に記録媒体の上部に設けられた一対の穴の上端が、記録媒体上端から同じ距離にあり、かつ、排紙方向側の左右線対称に記録媒体の下部に設けられた一対の穴の下端が、記録媒体下端から同じ距離にあり、かつ、上部の穴の上端と記録媒体上端との距離と、下部の穴の下端と記録媒体下端との距離が同じであることがより好ましい。
【0055】
これは、記録媒体の表裏、前後挿入方向を間違えてユーザーがプリンタに挿入した場合に、プリンタ本体に設けたセンサーにより効果的に判別可能であり、記録媒体の誤挿入を防止することができるだけでなく、穴2及び3の穴上端から記録媒体上端までの長さと穴4及び5下端から記録媒体下端までの長さが同じであることから、記録媒体を給紙してからある所定の一つの読み取りで誤挿入判別をしはじめることが可能であるばかりか、記録開始位置の判別、用紙種判別、用紙サイズ判別をも極めて簡素な制御により可能とすることができる。
【0056】
穴の加工方法としては、ハイデルベルグ社製トムソン型抜き機SBDS、同MFS−820M(菅野製作所扱い)として知られる装置によって形成することもできる。さらに、オス(凸)型或いはメス(凹)型のどちらか一方、または、両者を組み合わせて貫通した穴を加工する事が可能である。加工する穴周辺の綺麗さ、つまり、バリや鋭利性の点や記録媒体全体の品位などの点からオス(凸)型、メス(凹)型の両者を組み合わせて穴加工をすることが好ましい。また、穴が設けられ最終的に切り離される副領域内には、切り欠きを設けても良い。設けられる切り欠きの大きさとしては、特に制限はないが、見栄えの点や副領域の長さを極力短くする点、さらには目視にて切り欠きを判別する点から3mmから7mm程度が好ましい。
【0057】
切り欠きの加工方法は従来公知の方法で加工することができる。例えば、四角状のシートにギロチンカッターにより副領域部の角を加工することが出来る。角を加工した場合の一例を図16に示す。
【0058】
また、大判状のシート或いはロール状の物から、予め所望の形状をした抜き型を使用して打ち抜き加工を行うことも出来る。打ち抜き加工方法としては、ハイデルベルグ社製トムソン型抜き機SBDS、同MFS−820M(菅野製作所扱い)として知られる装置によって形成することもできる。また、ロール状のシリンダに所望の形状の抜き刃のついたマグネット式の刃型を取り付け、連続加工を行うこともできる。さらにまた、所望の形状の抜き刃がついたダイカットロールなどにより連続した打ち抜き加工を行うこともできる。これら加工方法の中でも、寸法精度や端部の綺麗さなどを考慮すると、ダイカットロール方式により加工することが好ましい。シートに対する加工方法は、抜き刃をインク受容層側から入れて加工することが好ましい。これは、インク受容層とは逆の面から抜き刃を入れると受容層のはがれや、受容層のひび割れを起こす可能性があるため好ましくない。
【0059】
本発明の記録媒体を得るための製造方法としては、図12に示すように、少なくとも穴加工をする工程、ミシン目を加工する工程、抜き加工をする工程の3つの加工工程を含んでいる製造方法を挙げることができる。また、この3つの加工工程の順序は特に限定されず、加工目的、加工コスト等の点から好ましい順に加工を行えばよい。より精度の高い検知穴及びミシン目の配置を達成する上では、図12に示すように、原料シートの巻き出し工程、穴加工工程、ミシン目形成工程、シート形状での記録媒体の抜き加工工程をこの順に行うことが特に好ましい。
【0060】
一方、無機顔料を主成分としたインク受容層、とりわけ、アルミナ水和物を主成分としたインク受容層の場合には、インク受容層にキズがつきやすく、また、穴加工時のインク受容層から発生する受容層粉が発生しやすいため、穴加工工程時或いは/また穴加工工程後に、清掃工程を行うことが好ましい。
【0061】
すなわち、穴加工工程時或いはまた穴加工工程後においては、穴加工した際に発生する小片を除去する工程を穴加工工程と同時もしくは穴加工工程後に設けることが好ましい。これは、穴加工時に発生する小片が後の工程に紛れ込むことによりキズやヘコミ或いは後の工程での加工トラブルを引き起こす可能性があるからである。穴加工した際に発生する小片を除去する方法の内、穴加工と同時に行う方法としては、オス型(凸型)の上辺を設けず、内部に小片を吸い込む方法がある。吸い込む方法としては、掃除機などの吸引装置により実施することが可能である。また、穴加工工程後に穴加工した際に発生する小片を除去する方法としては、エアーを穴加工部に吹き付け小片を吹き飛ばす方法がある。逆に、穴加工部から小片を吸い込むようにする方法もある。小片を吸い込む方式は加工部と用紙が接触し、キズなどの欠陥となる場合があるので、エアーを穴加工部に吹き付け小片を吹き飛ばす方法が好ましい。この方法は、主にオス型(凸型)で用紙を押し切る場合やオス(凸)型、メス(凹)型の両者を組み合わせて貫通した穴を加工する際に有効である。
【0062】
図15は検知穴加工及びミシン目加工を連続して行う工程を表した概略図である。記録媒体27上にオス型(凸型)部23を有する検知穴加工ユニットによって検知穴加工、ミシン目加工部25を有するミシン目加工ユニットによってミシン目加工が行なわれる。この例では型抜きされるシート状の記録媒体は、それぞれのプリンタでの搬送方向が原料シートの長手方向と揃えられた状態で、その複数が並列配置が原料シートの幅方向(長手方向と直交する方向)に並列されて配置されている。なお、図15に示す加工方法では、原料シートの幅方向に並列して2枚の記録媒体を抜き取るようにした2列取りになっているが、3列や4列などの多数列取りとしてもよい。その際に、多数並列配置される各検知穴の加工を上述した線対称位置で行う。
【0063】
図17は、オス型とメス型を組み合わせた穴加工装置の一例を示す図である。この加工装置では、オス(凸)型31とメス型(凹)32の間を、記録媒体30を通過させ、これらの型の通過時にオス(凸)型31を矢印でしめされる下方向に押し圧して、原料シートの所定部を押し切ることによって、開孔(検知穴)を開けることができる。この穴加工を行う場合には、原料シートの支持体側の面から刃を入れると支持体上に設けられた受容層のはがれや、受容層のひび割れを起こす可能性があるため好ましくない。更に、図17に示した例のように、オス(凸)型とメス(凹)型を用いる場合には、受容層側にオス(凸)型、基材側にメス(凹)型を用いることが好ましい。また、加工に用いるための刃の切断方向に対してなす刃先の角度が、45°を超え、90°未満であることが好ましい。刃先の角度がこの範囲であれば、記録媒体を押し切る形となるため、加工時にインク受容層のはがれや、ひび割れが生じにくいからである。特に、微細多孔質のインク受容層、なかでもアルミナ水和物を用いて形成したインク受容層を有する記録媒体の形成においては、インク受容層側からの加工方法が特に好ましく、上記の角度の刃先を有する型を用いることが特に好ましい。ミシン目加工についても、同様に、刃の切断方向に対してなす刃先の角度が、45°を超え、90°未満であることが好ましい。ミシン目加工に用いる切断刃の断面の一例を図18に示す。図18に示す切断刃33の有する切断方向に対してなす刃先の角度34が45°を超え、90°未満である。なお、図17で示すオス型31の切断刃部分の刃先の角度もこの範囲であることが好ましい。
【0064】
また、図11に、穴加工及びミシン目加工による得られる貫通穴及びミシン目の切れ込みの好ましい状態を断面図として示す。この場合のミシン目は、インク受容層16を貫通しているが、支持体17の厚み方向の途中でとまっている。このようにミシン目加工することが好ましい理由は、先の述べたように、ミシン目からインク受容層面側に折り返した際にインク受容層が盛り上がったり、割れたり、剥がれたりするという問題を防止し、ミシン目からインク受容層とは反対の面に折り返し、切り離す方が切離部跡がより綺麗になるからである。更に、支持体側のミシン目の切れ込みを形成しない構成することで、原料シートの加工装置内での搬送性や、プリンタ内での記録媒体の搬送性をより良好なものとすることができる。
【0065】
例えば、プリンタ等の各種装置における記録媒体の搬送手段は、一般的に、回転駆動するローラを記録媒体の支持体側の面に当接させて、その回転により記録媒体を搬送する構成を有する。また、必要に応じて、記録媒体のインク受容層側の面を、記録媒体の移動に伴って回転し得る補助ローラや拍車で押しつける構成がとられる。このような搬送手段に対して支持体側にミシン目のための切れ込みが入った記録媒体を適用した場合、ミシン目の搬送手段に対する位置関係によっては支持体側の切れ込みが搬送性に影響して、安定した搬送が行えない場合が生じる。インクジェットプリンタにおける本発明者らの検討では、モバイル型などの、小型化されたプリンタのように、記録ヘッド部による印字部(記録部)と、印字中の記録媒体を保持し、搬送する搬送手段との距離が近接している場合、搬送手段での搬送性が記録ヘッドからの印字に与える影響が無視できず、搬送手段による安定した搬送性が必須となることが判明した。
【0066】
これに対して、支持体側にミシン目の切れ込みを形成しない構成とすることで、特に、A6などの小さなサイズの記録媒体に画像をインクジェットプリンタで記録する場合に良好な搬送性を得ることが可能となる。すなわち、A6などの小さなサイズの記録媒体に画像をインクジェットプリンタで記録する場合に、プリンタ内の記録ヘッドによる記録が行われる領域と、記録が行われている記録媒体を搬送するローラなどによって構成される搬送手段との距離が近接しており、ミシン目や検知穴の位置が搬送手段による搬送性に影響を及ぼす場合が多くなるが、本発明にかかるミシン目及び検知穴にかかる構成、特に支持体側の面にミシン目の切れ込みがない構成によれば、このような小型の記録媒体への記録においても良好、かつ均一な搬送性を確保することができる。
【0067】
本発明において用いることができるインクジェット用記録媒体は、光沢紙やインクジェット専用紙など表面及び裏面を区別するべきものに好適であるが、他の記録媒体でも良く、例えば、普通紙、レジンコート紙、OHPシートなどでも良い。
【0068】
本発明のインクジェット用記録媒体に用いる支持体としては、上質紙、中質紙、アート紙、ボンド紙、再生紙、バライタ紙、キャストコート紙、レジンコート紙等の各種の紙や、ポリエチレンテレフタレート、アセチルアセテート(ジアセテート)、トリアセチルアセテート、セロハン、セルロイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックからなるフィルム等を使用できるが、本発明は、勿論これらに限定されない。本発明において使用する上記したような材料からなる基材は、その表面が滑らかなものであっても、凹凸のついたものであってもよいし、又、透明、半透明、不透明のいずれであってもよい。又、上記した基材材料の中から2種類以上を選択して、これらを貼り合わせたものでもよい。更に、インク受容層を設ける印字面の反対側に、マット層や剥離粘着層等を設けたものであってもよい。本発明においては、記録媒体の記録目的、記録画像の用途、或いは、その上部に被覆して形成するインク受容層用の組成物との密着性等の諸条件に応じて、上記した基材等の中から適宜に選択した基材を用いる。
【0069】
その中でも好ましいものは、写真画質を得る事が比較的容易なアート紙、バライタ紙、キャストコート紙、レジンコート紙の紙類や白色フィルムを使用することが好ましい。その中でもとりわけ銀塩写真に風合いや印刷物を得る事が可能なバライタ紙、キャストコート紙、レジンコート紙を用いることが好ましい。
【0070】
支持体の厚みは、100〜300μmが好ましく、150〜250μmがより好ましい。支持体の厚みがこの範囲内にあることによって、記録媒体の安定的な搬送性を有することができる。支持体の厚みがこの範囲内にあることによって、記録媒体の安定的な搬送性を有することができる。このような厚さの支持体を用い、ミシン目の深さをインク受容層を貫通し、支持体の途中までとする構成の場合は、ミシン目の切り込みは、また、ミシン目の切り込み部の深さは、インク受容層の厚さと同等か、インク受容層よりも大きい必要があり、インク受容層よりも大きい場合には、支持体の厚みの95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましい。
【0071】
本発明のインクジェット用記録媒体に用いるインク受容層としては、インク受容性のあるものであればよい。例えば、水性樹脂から、あるいは水性樹脂を主体としてインク受容層を形成することができる。この水性樹脂は、いわゆる水性インクを受容できる層を形成可能であり、かつ水性インクに対して溶解性或いは親和性を示す水溶性樹脂又は水分散性樹脂を意味する。
【0072】
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、及びアニオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アセタール変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコールの変性物;水系ポリウレタン;ポリビニルピロリドン、及びビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体、ビニルピロリドンとジメチルアミノエチル・メタクリル酸の共重合体、四級化したビニルピロリドンとジメチルアミノエチル・メタクリル酸の共重合体、ビニルピロリドンとメタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウムの共重合体等のポリビニルピロリドンの変性物;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系水溶性樹脂、及びカチオン化ヒドロキシエチルセルロース等のセルロースの変性物;ポリエステル、ポリアクリル酸(エステル)、メラミン樹脂、或いはこれらの変性物、少なくともポリエステルとポリウレタンとを含むグラフト共重合体等の合成樹脂、又、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、カチオン化でんぷん、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等の天然樹脂を挙げることができ、これらの少なくとも1種を用いることができるが、本発明はこれらに限定されない。本発明においては、これらの水溶性樹脂の中でも、発色性、インク吸収性の観点から、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アセタール変性ポリビニルアルコール、ポリエステル、水系ポリウレタン、少なくともポリエステルとポリウレタンとを含むグラフト共重合体がとりわけ好ましく、本発明においては、これらの水溶性樹脂から少なくとも1種を選択してインク受容層中に含有させることが好ましい。
【0073】
又、水分散性樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド系共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリビニルエーテル、シリコーン−アクリル系共重合体等、多数列挙することができ、これらの少なくとも1種を用いることができるが、勿論これらに限定されるものではない。又、N−メチロールアクリルアミド等の単位を含む共重合体で、自己架橋性を持つものであってもよい。尚、本発明においては、インク受容層の構成成分として上記した水性樹脂複数を同時に使用してもよい。
【0074】
これら水性樹脂を使用した場合、インク受容層を形成する場合の塗工液の塗工量としては、総量として、0.2〜50g/m2、より好ましくは1〜30g/m2の範囲内とするとよい。塗工量が0.2g/m2に満たない場合には、インク受容層を設けなかった場合に比べて染料の発色性、インクの吸収容量、インク定着性の点で効果が不十分であり、一方、塗工量が50g/m2を超えた場合には、特に、低温低湿環境下におけるカールの発生が著しい。又、塗工量を厚さで表した場合には、インク受容層の厚みが0.5〜50μmになる範囲が好適である。
【0075】
また、近年プリンタの印刷スピード向上により極めて素早くインクを吸収する無機顔料を使用したインク受容層を用いても良い。そのインク受容層は、一般的には、下記に挙げるような顔料と、必要に応じてバインダを含む塗工液を塗布することで形成できる。無機顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化マグネシウム等の無機顔料が挙げられ、有機顔料としては、例えば、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン粒子、マイクロカプセル粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等が挙げられる。本発明にかかる被記録媒体では、インク受容層の主成分として、上記した中でも、染料定着性、透明性、印字濃度、発色性、光沢性の点で特に好ましいアルミナ水和物を用いる。
【0076】
インク受容層を形成するための塗工液中におけるアルミナ水和物の含有率は、塗工液中に含有させる無機顔料の100〜60質量%とすることが好ましい。アルミナ水和物の含有量がこの範囲に満たない場合は、上記アルミナ水和物に起因して得られる性能が低下する恐れがある。
【0077】
アルミナ水和物としては、例えば、下記一般式(1)により表されるものが好適に利用できる。
【0078】
Al2O3−n(OH)2n・mH2O
(上記式中、nは0、1、2又は3の何れかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の範囲にある値を表す。但し、mとnは同時に0にはならない。mH2Oは、多くの場合、結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであるため、mは整数又は整数でない値をとることができる。又、この種の材料を加熱するとmは0の値に達することがあり得る。)
アルミナ水和物は一般的には、米国特許第4,242,271号明細書、同4,202,870号明細書に記載されているような、アルミニウムアルコキシドの加水分解やアルミン酸ナトリウムの加水分解を行う方法、又、特公昭57−447605号公報等に記載されている、アルミン酸ナトリウム等の水溶液に硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等の水溶液を加えて中和を行う方法、等の公知の方法で製造することができる。
【0079】
本発明において好適なアルミナ水和物としては、X線回折法による分析でベーマイト構造若しくは非晶質を示すアルミナ水和物であって、特に、特開平7−232473号公報、特開平8−132731号公報、特開平9−66664号公報、特開平9−76628号公報等に記載されているアルミナ水和物が挙げられる。
【0080】
尚、Rocekら(Collect Czech Chem Commun.,56巻、p1253〜1262、1991年)は、アルミニウム水和物の細孔構造は、析出温度、溶液pH、熟成時間、表面活性剤等に影響されることを報告しており、上記アルミナ水和物は、その製造過程において細孔物性の調整がなされる。その際に、インク受容層が、後述する好適なBET比表面積、細孔容積を満たすものとなるようにするためには、細孔容積が0.1〜1.0cm3/g、BET比表面積が40〜500m2/gに調整されたアルミナ水和物を用いることが好ましい。アルミナ水和物の細孔容積、BET比表面積が上記範囲外であると、形成されるインク受容層の細孔容積、BET比表面積を、後述する好ましい範囲内に調整することが困難になる場合がある。尚、アルミナ水和物の細孔容積、BET比表面積の値は、窒素吸着脱離法により求められる。
【0081】
又、本発明において好適なアルミナ水和物の形状としては、平板状で、平均アスペクト比が1〜10、平板面の縦横比0.6〜1.0であるものが好ましい。アスペクト比の定義は、特公平5−16015号公報に記載されている方法で求めることができる。上記アスペクト比は、粒子の「厚さ」に対する「直径」の比で示す。ここで「直径」とは、アルミナ水和物を顕微鏡又は電子顕微鏡で観察したときの粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径を示すものとする。上記平板面の縦横比は、アスペクト比と同様に、粒子を顕微鏡で観察して平板面の最小値を示す直径と最大値を示す直径の比である。平均アスペクト比が上記範囲を満たさないアルミナ水和物を使用した場合は、形成したインク受容層の細孔分布範囲が狭くなる恐れがある。又、上記範囲を超えるものを使用する場合は、アルミナ水和物の粒子径を揃えて製造するのが困難になる恐れがある。縦横比が上記範囲を満たさないものを使用する場合も、同様にインク受容層の細孔径分布が狭くなる。
【0082】
文献(Rocek J.,et al.、Applied Catalysis、74巻、p29〜36、1991年)にも記載されているように、アルミナ水和物の中には、繊毛状とそうでない形状のものがあることが一般に知られている。本発明者らの知見によれば、同じアルミナ水和物であっても、平板状のアルミナ水和物の方が、繊毛状のものよりも分散性がよい。又、繊毛状のアルミナ水和物の場合は、塗工時に下塗り層表面に対して平行に配向する傾向がみられ、形成される細孔が小さくなる場合があり、このためにインク受容層のインク吸収性が小さくなることがある。これに対して、平板状のアルミナ水和物を用いた場合は、塗工により配向する傾向は小さく、このため形成されるインク受容層の細孔の大きさや、インク吸収性への影響は少ない。更に、リウェット法でインク受容層を湿潤状態にさせてキャストを行う場合には、配向する傾向の小さい平板状アルミナ水和物の方が水分の吸収性がよいので、再湿液が浸透し易いため、インク受容層が膨潤し、アルミナ水和物粒子の再配列が起こり易い。従って、高い光沢性を得ることができる。又、効率よく再湿液が浸透するので、キャスト時の生産効率も高くなる。
【0083】
インク受容層を形成する顔料の一つとして、シリカ等の板状ではないものを用いることもできるが、得られる画像の光沢性を高くするということにおいては、上記のことから、板状のアルミナ水和物を用いることが特に好ましい。
【0084】
インク受容層を形成するための塗工液に使用するバインダとしては、例えば先に挙げた水性樹脂などを用いることができるが、ポリビニルアルコールを用いることが特に好ましい。ポリビニルアルコールとしては、アルミナ水和物等の顔料の結着性の点から、ケン化度70%以上、より好ましくは、80%以上のものが好ましく、又、重合度としては、500以上のものを使用することが好ましい。ポリビニルアルコールの含有量としては、アルミナ水和物に対して、5〜20質量%になるようにするのが好ましい。ポリビニルアルコールの含有量が上記範囲に満たない場合は、インク受容層にクラックが発生し易くなり、又、インク受容層の機械的強度が不十分となり、粉落ちが生じ易くなる。一方、上記範囲を超える場合は、インク吸収性の低下(例えば、インクが溢れ、画像に滲みの発生)や、インク染料の吸着性の低下が生じる恐れがあるので好ましくない。更に、高温高湿下においても十分なインク吸収性を得るためには、ポリビニルアルコールの含有量を5〜15質量%の範囲とすることが好ましい。
【0085】
本発明において使用するインク受容層を形成するためのバインダとしては、上記したポリビニルアルコールの他、上記に挙げた顔料を結着し、被膜を形成する能力のある材料であって、且つ、本発明の効果を損なわない範囲のものであれば、特に制限はなく利用することができる。例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルアルコール又はその誘導体;ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役重合体ラテックス;アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体等のアクリル系重合体ラテックス;エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス;或いは、これら各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス;或いは、これら各種重合体にカチオン基を用いてカチオン化したもの、カチオン性界面活性剤にて重合体表面をカチオン化したもの、カチオン性ポリビニルアルコール下で重合し、重合体表面に該ポリビニルアルコールを分布させたもの、カチオン性コロイド粒子の懸濁分散液中で重合を行い、重合体表面に該粒子が分布しているもの;メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂等の水性バインダ;ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体樹脂;ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系バインダ等を挙げることができる。上記は、単独或いは複数を混合して用いることができる。
【0086】
この場合も、バインダの含有量が、アルミナ水和物に対して、5〜20質量%になるようにするのが好ましい。先に述べたと同様に、上記範囲に満たない場合は、インク受容層にクラックが発生し易くなり、且つインク受容層の機械的強度が不十分となる。一方、上記範囲を超える場合は、インク吸収性の低下やインク染料の吸着性の低下が生じる恐れがあるので好ましくない。更に、本発明においては、バインダ中におけるポリビニルアルコールの含有率を70質量%以上とすることが好ましい。上記範囲に満たない場合は、インク受容層にクラックが発生し易くなるので好ましくない。
【0087】
上記のようにして形成するインク受容層の形成材料中に、ホウ酸及びホウ酸塩からなる群より選ばれた1種以上を含有させることは、インク受容層のクラック発生の抑制という点から極めて有効である。この際に用いることのできるホウ酸としては、オルトホウ酸(H3BO3)だけでなく、メタホウ酸や次ホウ酸等が挙げられる。ホウ酸塩としては、上記ホウ酸の水溶性の塩であることが好ましく、具体的には、例えば、ホウ酸のナトリウム塩(Na2B4O7・10H2O、NaBO2・4H2O等)や、カリウム塩(K2B4O7・5H2O、KBO2等)等のアルカリ金属塩、ホウ酸のアンモニウム塩(NH4B4O9・3H2O、NH4BO2等)、ホウ酸のマグネシウム塩やカルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等を挙げることができる。
【0088】
塗工液の経時安定性と、クラック発生の抑制効果の点からホウ酸を用いることが好ましい。又、その使用量としては、インク受容層中のポリビニルアルコールに対して、ホウ酸固形分1.0〜15.0質量%の範囲で用いることが好ましい。上記範囲に満たない場合は、クラックが発生する場合があり、又、上記範囲を超える場合は、塗工液の経時安定性が低下するため好ましくない。即ち、生産する場合においては、塗工液を長時間に渡って使用するので、ホウ酸の含有量が多いと、その間に塗工液の粘度の上昇や、又、ゲル化物の発生が起こし、塗工液の交換やコーターヘッドの清掃等が頻繁に必要となり、生産性が著しく低下してしまう。
【0089】
以上のようにして形成されるインク受容層は、高インク吸収性、高定着性等の本発明の所期の目的及び効果を達成する上から、その細孔物性が、下記の条件を満足するものであることが好ましい。インク受容層の細孔容積が、0.1〜1.0cm3/gの範囲内にああることが好ましい。即ち、細孔容積が、上記範囲に満たない場合は、十分なインク吸収性能が得られず、インク吸収性の劣ったインク受容層となり、場合によってはインクが溢れ、画像に滲みが発生する恐れがある。一方、上記範囲を超える場合は、インク受容層に、クラックや粉落ちが生じ易くなるという傾向がある。又、インク受容層のBET比表面積は、20〜450m2/gであることが好ましい。上記範囲に満たない場合、十分な光沢性が得られない場合があり、又、ヘイズが増加するため(透明性が低下するため)、画像が、「白もや」がかかったようになる恐れがある。更に、この場合には、インク中の染料の吸着性の低下を生じる恐れもあるので好ましくない。一方、上記範囲を超えると、インク受容層にクラックが生じ易くなるので好ましくない。尚、細孔容積、BET比表面積の値は、窒素吸着脱離法により求められる。
【0090】
又、インク受容層を形成する場合には、インク吸収性を考慮して、その乾燥塗工量が30g/m2より多く50g/m2以下となるようにすることが好ましい。上記範囲に満たない場合は、特に、シアン、マゼンタ、イエローの3色のインクに、ブラックインクの他、複数の淡色インクが加えられているようなプリンタに用いた場合に、十分なインク吸収性が得られず、即ち、インク溢れが生じ、ブリーディングとなる場合が発生したり、下塗り層にまでインク染料が拡散し、印字濃度が低下する場合があるので好ましくない。一方、上記範囲を超える場合には、クラックの発生を抑え切れないことが生じる恐れがある。更には、その乾燥塗工量が30g/m2より多く45g/m2以下となるようにすることが好ましい。即ち、30g/m2より多くすると、高温高湿環境下においても十分なインク吸収性を示すインク受容層が得られるので好ましく、乾燥塗工量を45g/m2以下とすると、インク受容層の塗工ムラが生じにくくなる。
【0091】
また、本発明の記録媒体を得るにあたり、必要に応じて基材とインク受容層の間に下塗り層を設けることも可能である。下塗り層の形成材料は、顔料とバインダとを含む塗工液によって形成できるが、インク受容性を有するものとすることが好ましい。顔料としては、無機顔料を決着する材料に使用できるものとして先に説明したと同様のバインダを用いることができる。以下に挙げるものの中から選択される1種以上を用いることができる。例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、及び加水ハロサイト等の無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン粒子、マイクロカプセル粒子、尿素樹脂粒子、及びメラミン樹脂粒子等の有機顔料等が挙げられる。
【0092】
バインダとしては、上記に挙げた顔料を結着し、被膜を形成する能力のある材料であって、且つ、本発明の効果を損なわない範囲のものであれば、特に制限はなく利用することができる。例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルアルコール又はその誘導体;ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役重合体ラテックス;アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体等のアクリル系重合体ラテックス;エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス;或いは、これら各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス;或いは、これら各種重合体にカチオン基を用いてカチオン化したもの、カチオン性界面活性剤にて重合体表面をカチオン化したもの、カチオン性ポリビニルアルコール下で重合し、重合体表面に該ポリビニルアルコールを分布させたもの、カチオン性コロイド粒子の懸濁分散液中で重合を行い、重合体表面に該粒子が分布しているもの;メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂等の水性バインダ;ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体樹脂;ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系バインダ等を挙げることができる。上記は、単独或いは複数を混合して用いることができる。
【0093】
下塗り層を形成する方法としては、上記に挙げたような顔料及びバインダを含有する塗工液を、基材表面に塗工し、乾燥等することによって容易に得られる。この際、基材の、少なくともインク受容層側の表面に下塗り層を形成すればよいが、勿論、裏面側にも下塗り層を形成し、基材両面に下塗り層を形成してもよい。被記録媒体の環境カールの安定性を考慮すると、下塗り層は、基材の表裏面に設けることが好ましい。下塗り層の塗工量としては、基材であるセルロースパルプ等の表面繊維を十分に覆うために、乾燥塗工量が10g/m2以上、更には15g/m2以上とすることが好ましい。乾燥塗工量が10g/m2未満では、基材のセルロースパルプ等の表面繊維を完全に覆うことが困難であり、光沢性に影響する場合が生じる。
【0094】
又、下塗り層用の塗工液中のバインダ量は、顔料に対して、5〜50質量%になるようにすることが好ましい。バインダ量が上記範囲に満たない場合は、下塗り層にクラックが発生し易くなり、且つ下塗り層の機械的強度が不十分となり、粉落ちが生じ易くなる。上記範囲を超える場合は、インク溶媒の吸収性の低下やキャスト時の水分等の蒸発(基材裏面への蒸気の移動)が悪化する傾向がみられる。本発明においては、更に、必要に応じて下塗り層形成後、カレンダ処理を施してもよく、これによって基材/下塗り層の厚み調整を行うことができる。
【0095】
インク受容層、下塗り層などにおける各塗工液の塗工は、前記したような適正塗工量が得られるように、例えば、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、エクストルージョン方式を用いたコーター、スライドホッパー方式を用いたコーター、サイズプレス等の各種塗工装置を適宜選択して用い、オンマシン、オフマシンで塗工される。
【0096】
塗工後の乾燥には、例えば、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等を、適宜選択して用いることができる。
【0097】
本発明にかかる被記録媒体は、上記のようにしてインク受容層を形成した後、下記のような方法を用いることで、インク受容層の表面に光沢面を形成することが好ましい。このようにすれば、光沢のある写真調画像の形成が可能な被記録媒体が得られる。光沢面を形成する方法としてはキャスト法を用いることができ、特に、リウェットキャスト法を適用することが好ましい。
【0098】
キャスト法とは、湿潤状態、又は可塑性を有している状態にあるインク受容層を、加熱された鏡面状のドラム(キャストドラム)面に圧着し、圧着した状態で乾燥し、その鏡面をインク受容層表面に写し取る方法であり、以下の3つの代表的方法がある。即ち、塗工液を過剰に基材に塗工し、プレスロールとキャストドラムの間で絞るようにして適正塗工量にした後、そのまま加熱されているキャストドラムに圧着して乾燥する直接法、基材に塗工された塗工液を一度乾燥、又は半乾燥状態にした後、水を主成分とする再湿液によりインク受容層を可塑性を有した状態(湿らせた状態)に戻し、その後に加熱されているキャストドラムに圧着して乾燥するリウェット法(間接法)、基材に塗工された塗工液をある程度乾燥し、続いて酸等の凝固剤で処理した後、流動性のないゲル状態で、加熱されているキャストドラムに圧着して乾燥する凝固法である。
【0099】
これらのキャスト法は、何れも、写真調画像の形成が可能な被記録媒体を製造する場合に利用できるが、製造速度という点において、リウェット法が、他2種の方法に比べはるかに速くなるので好ましい。又、本発明にかかる被記録媒体は、そのインク受容層にアルミナ水和物が用いられているが、この場合には、特にリウェットキャスト法を行うことによって、高光沢性が得られるので、より好ましい。
【0100】
リウェットキャスト法で用いる再湿液には、水を主成分とし、これに、例えば、アンモニウム塩、ポリアミド樹脂、ヘキサメタリン酸等のリン化合物、アミド化合物、フッ化物、硫酸亜鉛、蟻酸カルシウム等を添加したものを用いることが好ましい。
【0101】
キャスト法で使用するキャストドラムは、一般のキャストコート紙の製造条件と同様に、本発明においても、その表面粗度、表面温度、直径、線圧、速度を適宜選択することが可能であるが、ドラムの表面温度を、80〜120℃としておくことが好ましい。この範囲に満たない場合には、光沢面の光沢性が低下する可能性があり、この範囲を超える場合は、キャストドラムに圧着されたインク受容層が急激に加熱されて、沸騰され易くなる傾向がある。沸騰が起こると、インク受容層は、キャストドラムと完全に密着することができなくなり、キャストドラムの鏡面の写し取りが不十分となり、光沢面が著しく損なわれる場合がある。
【0102】
本発明にかかる被記録媒体を製造する場合には、更に、基材裏面(下塗り層の形成された面の反対側の面)に裏面層の形成工程を加え、裏面層を有する被記録媒体を製造してもよい。裏面層を形成することは、印字前や印字後において生じるカール低減のためには有効である。
【0103】
この場合に形成する裏面層は、顔料とバインダを含む層であり、先に説明した下塗り層やインク受容層の形成に用いる塗工液と同様の、顔料やバインダを用いることができる。被記録媒体の印字前、印字後のカール発生の抑制効果を考慮すると、吸湿時に、基材表面側の下塗り層及び/又はインク受容層と同様の収縮を生じるものが好ましく、下塗り層やインク受容層と同系統の顔料やバインダを用いることが好ましい。特に、厚めの層であるインク受容層の形成材料と同系統の、顔料やバインダを用いることがより好ましい。裏面層の乾燥塗工量も、印字前、印字後のカール発生の抑制効果を考慮すると、10g/m2以上とすることが好ましい。裏面層の塗工は、先に説明した、下塗り層、インク受容層、下塗り層の表面処理における、塗工及び乾燥と同様の方法で行うことができる。
【0104】
更に、本発明にかかる被記録媒体を製造する場合には、必要に応じて、上記した裏面層と基材の間に、前記した下塗り層のような別層を設けてもよい。この場合には、裏面側にも光沢面を形成することが可能となり、両面光沢媒体を得ることができる。又、裏面層、又は裏面層及び/又は別層に印字性能を付与すれば両面印字も可能となる。
【0105】
また、基材がレジンコート紙以外のアート紙、バライタ紙、キャストコート紙等の場合には、銀塩写真に類似した手触り、質感で高付加価値の印刷物を得るという点で、裏面層に樹脂被覆層を設けても良い。
【0106】
樹脂被覆層に用いられる樹脂材料としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましく、中でも溶融押出コーティング性の点からポリオレフィン系樹脂がさらに好ましい。また、電子線硬化樹脂で被覆してもよい。好ましく用いられるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等のホモポリマー、エチレン−ブチレン共重合体などのα−オレフィンの2つ以上から成る共重合体およびこれらの混合物であるが、特に溶融押出コーティング性および基紙との接着性の点からポリエチレン系樹脂が特に好ましい。それらのポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンとプロピレン、ブチレン等のα−オレフィンとの共重合体、カルボキシ変性ポリエチレン等およびこれらの混合物を単独にあるいは混合して有利に使用できる。
【0107】
さらに、本発明において、樹脂被覆層は、走行する原料シート上に、加熱溶融したポリオレフィン樹脂を流延する、いわゆる溶融押出コーティング法、またはポリオレフィン樹脂エマルジョンを塗工するエマルジョン塗工法等により製造される。押出コーティング法による時は、樹脂と原紙との接着性を向上させるために、樹脂を原紙に被覆する前に、原紙にコロナ放電処理、火炎処理等の活性化処理を施すことが好ましい。エマルジョン塗工法による時は、塗工後にカレンダー処理等を施して表面を平滑化することが好ましい。本発明における樹脂被覆層の厚みとしては、特に制限はないが、一般に5〜50μmの厚みが適当である。
【0108】
本発明の記録媒体は、副領域には予め文字、模様、各種の表示、ロゴマークなどを印刷した印刷部を設けた構成することもできる。例えば、図5や図6に示すように副領域に、記録媒体のプリンタへの挿入方向を示す矢印などを印刷することで、記録媒体のプリンタへの挿入方向を視覚的に指示することが可能であり、かつ、表裏判別の視覚的効果も得ることが可能となる。副領域に切り欠きを設けることで、記録媒体の表裏及び向き整えることが出来るが、矢印など挿入方向を図4に示すように視覚的に訴えかけることにより、誤挿入、誤装填をより効果的に防止可能である。印刷は矢印の他、文字、数字、文章、模様、図形、彩紋、イラスト、写真や各種マーキング、ロゴなど挿入方向を意味するもの、意味できるものであれば特に限定されるものではない。万国共通の記号、とりわけ矢印を使用することが好ましい。さらに、企業ロゴなどを矢印と一緒或いは別に印刷し、企業コマーシャルなどを行うことも出来る。企業ロゴなどを入れることで、記録媒体の素性が明らかにされることはもちろん、ユーザーに企業コマーシャルを有効的に行うことが出来る。
【0109】
印刷色数としては、特に1色に限られることは無く、2色、3色と多色印刷、可能であり、印刷する目的や狙う効果によって印刷色数が決定される。印刷方法としては、従来公知のオフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷など様々な方法を用いることが可能である。使用できるインク種としては、一般に使用されているオフセット印刷用インキ、グラビア印刷用インキ又はUVインキ等から選ぶことができる。
【0110】
これらのインキに使用される代表的な合成樹脂は、塩化ビニルを主体とする共重合体樹脂、ビニル・アミノ樹脂、アルキド・ビニル樹脂、オイルフリーアルキド樹脂、塩酢ビ系、硝化綿、ポリエステル、ポリアミドウレタン、ポリアクリル、ロジン変性マレイン酸、エチレン酢ビ、ビニールエーテル、ウレタン酢ビ、塩酢ビウレタン樹脂、変性アルキッド樹脂、変性フェノール樹脂、高分子ポリエステル・アミノ樹脂、低分子ポリエステル・アミノ樹脂、アルカリ可溶型樹脂(ロジン変性マレイン酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、スチレンアクリル酸樹脂、アクリル酸エステルアクリル酸樹脂、メタクリル酸エステルアクリル酸樹脂)、ハイドロゾル型樹脂(スチレンマレイン酸樹脂、スチレンアクリル酸樹脂、α−メチルスチレンアクリル酸樹、アクリル酸エステルアクリル酸樹脂、メタクリル酸エステルアクリル酸樹脂)、エマルジョン型樹脂(スチレン樹脂、スチレンアクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、メタクリル酸エステル共重合樹脂)、UVインキ用の樹脂としては、アクリル系不飽和基を持つポリマーが一般的に使用されており、代表的な例としてはポリエステル/アクリル酸エステル、ポリエステル/ウレタン樹脂/アクリル酸エステル、エポキシ樹脂/アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシエチレンメタクレートが挙げられる。
【0111】
また、これらのインキには一般に知られている着色剤が併用される。使用される着色剤としては、特開昭63−44653号公報等に記載されている各種顔料及びアゾ顔料(アゾレーキ;カーミン6B、レッド2B、不溶性アゾ;モノアゾイエロ(PY−1、3)、ジスアゾイエロ(PY−12、13、14、17、83)、ピラゾロオレンジ(PO−B−34)、バルカンオレンジ(PO−16)、縮合アゾ系;クロモフタルイエロ(PY−93、95)、クロモフタルレッド(PR−144、166)、多環式顔料(フタロシアニン系;銅フタロシアニンブルー(PB−15、15−1、15−3)、銅フタロシアニングリーン(PG−7)、シオキサジン系;ジオキサジンバイオレット(PV−23)、イソインドリノン系;イソインドリノンイエロ(PY−109、110)、スレン系;ペリレン、ペリノン、フラバントロン、チオインジゴ、レーキ顔料(マラカイトグリーン、ローダミンB、ローダミンG、ビクトリアブルーB)又無機顔料(酸化物;二酸化チタン、ベンガラ、硫酸塩;沈降性硫酸バリウム、炭酸塩;沈降性炭酸カルシムウ、珪酸塩;含水珪酸塩、無水珪酸塩、金属粉;アルミニウム粉、ブロンズ粉、亜鉛末、その他カーボンブラック、黄鉛、群青、紺青)等が挙げられる。またこれ等の顔料は遮光性物質として前述の樹脂層等に添加しても構わない。この他に油溶性染料、分散性染料等も使用される。代表的な染料を大別するとアゾ染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、フタロシアニン染料、カルボニル染料等がある。その他インキを構成する原材料として必要に応じて各種溶剤、分散剤、湿潤剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、安定剤、架橋剤、ワックス等の添加剤が使用される。
【0112】
副領域に印刷を施した被記録媒体の製造効率という点、例えば加工性、インクの受容層面からのインク転写の防止などの点からからは、副領域に予め設ける印刷部の形成にUVインクを用いることが好ましい。UVインクを用いた場合には、UV光を照射する工程において、100〜2000mJ程度の条件でUVを照射することによって、効率良くUVインクを硬化させることができると共に、他の印刷方式に比べ簡便な操作で印刷を行うことができ、しかも印刷のための設備の小型化も達成可能である。
【0113】
印刷を行う工程は、穴加工の前でも良いし、ミシン目加工或いは抜き加工の後でも良い。加工方法、加工性、加工コストなどの点から適宜効率の良い方法で行えばよい。印刷をUVインクで行う場合には、図13で示す一例のように印刷後にUV硬化を行う工程を設けることが一般的であり好ましい。二色以上で印刷を行う際には、印刷とUV硬化の工程を色の数だけ繰り返し行うことが好ましい。
【0114】
とりわけ、前記したインク受容層の中でも、アルミナやシリカなど顔料を主成分としたインク受容層とUVインクの組合せが特に好ましい。コストの点から、効率よく記録媒体を加工・製造する際、とりわけ、図13及び14に示すような連続した加工工程の場合、副領域に印刷する場合には印刷インクの極めて優れた乾燥性が必要となる。乾燥性が不十分の場合には、他の記録媒体に印刷インクが付着(転写)したり、加工機の内部に印刷インクが付着し、記録媒体の他の部分に印刷インクが転写したりしてしまう。さらに、印刷された記録媒体は、加工後様々な仕上げ工程を経て、ユーザーの手元に届きプリンタに装填される。この間、記録媒体同士の摩擦などにより印刷がかけてしまうことは許されず、印刷部は、優れた擦過性をも有していることが必要である。インク受容層として、顔料を主成分とするインク受容層は、インクジェット用のインクのみならず、印刷用インクについても良いインク吸収特性を有している。さらに、UVインクにより印刷した際、印刷直後は印刷部分の乾燥性は良くないが、UV光を照射する工程を印刷工程の直後に設けることで極めて素早くインクを固めることができる。また、UVインクにより印刷された印刷部は、顔料を主成分とするインク受容層内に染み込み、染み込んだ上でUV光を照射され硬化されるので極めて優れた擦過性をも併せ持つことができる。
【0115】
本発明の好ましい実施形態として、記録媒体1をシールの形状としてもよい。具体的には、印刷面とは反対側の面に、粘着層とその上に剥離紙とを積層して形成される。ハーフカットで囲まれた記録部位へ印刷後、ハーフカットで囲まれた記録部を剥がし、記録物を任意の面に接着することができる。なお、粘着層および剥離紙の存在が、副領域の穴や切り欠き、挿入方向明示印刷の機能の発揮に障害とならないことはいうまでもない。
【0116】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、「%」及び「部」は特に指定していない限り質量基準である。
【0117】
〔記録媒体の作成〕
〔光沢紙の作成〕
[支持体の作成]
支持体は、特開平11−091235号公報に記載されている方法をモデルに作成した。LBKPからなる坪量100g/m2の原紙の表面に、低密度ポリエチレン85重量部と二酸化チタン15重量部からなる樹脂組成物を25g/m2塗布し、裏面に、高密度ポリエチレン50重量部と低密度ポリエチレン50重量部からなる樹脂組成物を20g/m2塗布して、樹脂被覆紙を作製した。
【0118】
[アルミナ分散液の作成]
米国特許第4,242,271号、米国特許第4,202,870号に記載された方法でアルミニウムオクタキシドを合成し、その後加水分解してアルミニウムスラリーを製造した。このアルミナスラリーに純水を加え固形分が5重量%になるようにした。次にこれを80℃に昇温して10時間熟成反応を行った後、アルミナ分散液をスプレイ乾燥してアルミナ水和物を得た。次にこのアルミナ水和物を純水に混合、分散し、塩酸によりpHを4に調整した。更に、この分散液を90℃に昇温したのちpHを苛性ソーダにより10に調整して、6時間撹拌を行った。その後、室温まで冷却しpHを8に調整してアルミナ分散液Aを得た。このアルミナ分散液を脱塩処理、解膠処理を行った後、スプレイ乾燥によりアルミナ水和物を得た。これをX線回折により測定したところ、擬ベーマイト構造を有するものであった。このアルミナ水和物を再び純水と固形分が22重量%となるように混合し、更に固形分に対して2%分の酢酸/硝酸=1/1の混合液を加えてアルミナ分散液Bを得た。
【0119】
[インク受容層の塗工]
インク受容層は、支持体の表面に塗設した。インク受容層の塗被組成物は、上記アルミナ分散液Bを100部、ポリビニルアルコール(PVA117:クラレ株式会社製)を2.2部、ホウ酸を0.1部用い固形分濃度15%として、これらを調液した。この塗液をバーコータにより、乾燥塗工量30g/m2となるように支持体に塗工・乾燥した。
【0120】
〔コート紙の作成〕
[支持体の作製]
支持体は、特開平07−101142号公報に記載されている方法をモデルに作成した。LBKP(濾水度400mlcsf)80部とNBKP(濾水度450mlcsf)20部からなる木材パルプ100部に対して、軽質炭酸カルシウム/重質炭酸カルシウム/タルクの比率が10/10/10の顔料25部、市販アルキルケテンダイマー0.10部、市販カチオン系(メタ)アクリルアミド0.03部、市販カチオン化澱粉0.80部、硫酸バンド0.40部を調製後、坪量約90g/m2となるように抄造した。
【0121】
[インク受容層の塗工]
インク受容層は、支持体の表面に塗設した。インク受容層の塗被組成物は、合成非晶質シリカ(ファインシールX37B:徳山曹達株式会社製)100部、ポリビニルアルコール(PVA117:クラレ株式会社製)30部を用い、固形分濃度15%として、これらを調液した。この塗液をバーコータにより、乾燥塗工量30g/m2となるように支持体に塗工・乾燥した。
【0122】
〔ミシン目の作成〕
カット/アンカット率が0.3mm/0.2mmのマイクロミシン刃を使用し、上記のように得た記録媒体に対し、インク受容層面からマイクロミシン刃を入れミシン目を作成し、主領域と2つの副領域を有する記録媒体を作成した。このときの切れ込みの深さは、インク受容層を貫通し、支持体の厚さの90〜95%まで到達する程度に設定した。
【0123】
〔穴及び記録媒体の作成〕
トムソン型抜き機により、所定の外形寸法、副領域に穴及び副領域に切り欠きを設けるようにインク受容層面から刃を入れ記録媒体M1〜M6を得た。
M8及びM9にはミシン目加工を行わなかった。M10はM5に対して穴3の加工を行わなかった。穴2と穴3の上端は、記録媒体上端から6mmの位置で揃え、穴4と穴5の下端は、記録媒体下端から6mmの位置で揃えた。穴2と穴4の中心は記録媒体左端から10mm、穴3と穴5の中心は記録媒体右端から10mmとなるように穴を設けた。切り欠きの大きさは一辺5mmの直角二等辺三角形となるようにした。
【0124】
〔矢印の印刷〕
UVインクを使用し、赤色の矢印を副領域に作成した。記録媒体M2に対し、UVインクを印刷後、1000mJの条件でUV光を照射しUVインクを硬化させ、記録媒体M7を得た。記録媒体M1〜M10の詳細を表1に記載する。
【0125】
【表1】
【0126】
<評価>
光学センサーによる判別冶具を使用し、用意した記録媒体の自動判別を行った。
1.記録媒体のサイズ及び紙種判別
表裏、挿入方向共に正しく挿入し評価を行った。用紙サイズ、紙種違いを自動的に判別したものは○、自動判別できなかったものは×とした。
2.表裏判別
挿入方向は正しく、表裏を間違えて挿入し評価を行った。表裏間違っている旨のエラーランプが点灯し、自動的に記録媒体が排紙されたものは○、エラーランプなど無く自動的に排紙されたものは×とした。記録媒体にコーナーカットや矢印印刷などの付加手段によって判別が可能なもの或いはセンサー追加によりエラーランプ点灯が可能なものについては△とした。
3.挿入方向判別
表裏は正しく、挿入方向を間違えて挿入し評価を行った。挿入方向が間違っている旨のエラーランプが点灯し、自動的に記録媒体が排紙されたものは○、エラーランプなど無く自動的に排紙されたものは×とした。記録媒体にコーナーカットや矢印印刷などの付加手段によって判別が可能なもの或いはセンサー追加によりエラーランプ点灯が可能なものについては△とした。
4.表裏、挿入方向同時判別
表裏、挿入方向共に間違えて挿入し評価を行った。表裏、挿入方向共に間違っている旨のエラーランプが点灯し、自動的に記録媒体が排紙されたものは○、エラーランプなど無く自動的に排紙されたものは×とした。記録媒体にコーナーカットや矢印印刷などの付加手段によって判別が可能なもの或いはセンサー追加によりエラーランプ点灯が可能なものについては△とした。
5.誤装填率
M2、M6、M7の記録媒体を使用した。20人の被験者に対し、上記3種類の記録媒体を渡し、記録媒体の表裏、挿入方向を間違えずに何人が正しくプリンタにセットできるかを試験した。評価結果は「正しく挿入できた人/20」で記載する。
6.カール
温度:10℃、湿度10%の環境に、PP袋に入れた記録媒体を12時間放置し、該環境内で机上にインク受容層面を上にして5枚放置し、記録媒体の4隅について、30分後のカール量を測定する。その時、4隅のカール量が±2mmの範囲にあるものを○、±4mmの範囲にあるものを△、それ以上のものを×とした。
上記1〜6の評価結果を表2に記載する。
【0127】
【表2】
【0128】
【発明の効果】
以上の如き本発明によれば、従来ユーザー自らが行っていた用紙サイズの設定や用紙種の区別・設定等せずに、プリンタに記録媒体を装填、挿入すればプリンタが用紙サイズや用紙種を自動的に判別することが可能な記録媒体を提供すると共に、記録媒体が斜行した際には斜行を検知し、ユーザーに記録媒体を装填・挿入し直すよう促すことが可能な記録媒体を提供し、さらには、記録媒体の挿入方向を簡単に指示することが可能な記録媒体を提供し、線対称に穴を設けることで記録媒体にかかる応力が緩和し、安定した加工を可能とする記録媒体であると共に、プリンタ本体での搬送不具合も無く、良質な印刷物を得ることのできる記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るインクジェット用記録媒体の第一の実施形態を示す図である。
【図2】本発明に係るインクジェット用記録媒体の第二の実施形態を示す図である。
【図3】本発明に係るインクジェット用記録媒体、第一の実施形態の中でも好ましい記録媒体を示す図である。
【図4】本発明に係るインクジェット用記録媒体、第二の実施形態の中でも好ましい記録媒体を示す図である。
【図5】図4の記録媒体にプリンタへの挿入方向を矢印で明示した実施形態を示す図である。
【図6】図5の記録媒体に印刷する領域を示す図である。
【図7】図7は、図6の印刷物をミシン目から切り離したことを示す図である。
【図8】本発明に係るインクジェット用記録媒体の用紙サイズ或いは紙種違いを判別する穴の開き方の一例を示す。この一例においては、8種類の判別が可能である。
【図9】本発明に係るインクジェット用記録媒体における好ましい例を示す図である。
【図10】本発明に係るインクジェット用記録媒体における好ましい例を示す図である。
【図11】図5内のA−A’の断面図の模式図である。
【図12】本発明にかかる記録媒体の製造工程を説明するための図である。
【図13】本発明にかかる記録媒体の製造工程を説明するための図である。
【図14】本発明にかかる記録媒体の製造工程を説明するための図である。
【図15】本発明にかかる記録媒体の製造工程を説明するための図である。
【図16】本発明にかかる記録媒体における角を加工した状態の一例を示す図である。
【図17】オス型とメス型の組合せを用いて検知穴を形成する工程を説明するための図である。
【図18】ミシン目を開けるための切断刃の刃先の角度を説明するための図である。
【符号の説明】
1…記録媒体
2、3、4、5…穴
6、7…ミシン目
8…印刷
9…印刷領域
10…主領域
11、12…副領域
13−1…記録媒体左端から穴2または4中心までの距離:L1
13−2…記録媒体右端から穴3または5中心までの距離:L2
14−1…穴2、3の上端から記録媒体上端までの距離:L3
14−2…穴4、5の下端から記録媒体下端までの距離:L4
15−1…記録媒体の短手の中心線
15−2…CWと記録媒体の長手の中心線:CL
16…インク受容層
17…基材
18…巻き出し
19…穴加工ユニット(オス型付)
20…エアーブローユニット
21…印刷ユニット
22…UV硬化ユニット
23…ミシン目加工ユニット
24…抜き加工ユニット
25…集積部
26…オス型(凸型)部
27…26の拡大図
28…ミシン目
29…穴加工ユニット(メス型付)
30…加工前の記録媒体
31…オス型
32…メス型
33…切断刃
34…刃先の角度
Claims (2)
- 支持体上にインク受容層を有するシートからなる記録媒体であって、
前記シートの厚さ方向に貫通する少なくとも一対の検知穴が設けられており、かつ該一対の検知穴の開口形状が、該シートの記録時の搬送方向に沿った第1の中心軸または該第1の中心軸に直交する第2の中心軸に線対称をなす部分を含むことを特徴とする記録媒体。 - 微細多孔質体をインク受容層として有するシートに、同時穴加工される第1、第2穴部が記録媒体内で穴形状をなす形状の一部のいずれかが線対称となることを特徴とする記録媒体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003125610A JP2004330448A (ja) | 2003-04-30 | 2003-04-30 | 記録媒体 |
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JP2003125610A JP2004330448A (ja) | 2003-04-30 | 2003-04-30 | 記録媒体 |
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JP2003125610A Pending JP2004330448A (ja) | 2003-04-30 | 2003-04-30 | 記録媒体 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013103428A (ja) * | 2011-11-15 | 2013-05-30 | Seiko Epson Corp | インクジェット用連続用紙、インクジェットプリンター、およびインクジェットプリンターの予備吐出方法 |
JP2021075058A (ja) * | 2021-01-13 | 2021-05-20 | カシオ計算機株式会社 | 熱膨張性シート及び熱膨張性シートの製造方法 |
-
2003
- 2003-04-30 JP JP2003125610A patent/JP2004330448A/ja active Pending
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