JP2004330242A - 剛性に優れた鋼管及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】衝撃特性に優れた部材用として用いることのできる鋼管を提供する。
【解決手段】圧延鋼板が有するヤング率には異方性が認められる。ヤング率が最大となる方向は圧延方向とは異なる方向である。ヤング率が最大となる方向の近傍であれば、ヤング率を215GPa以上とすることが可能である。圧延鋼板11の圧延方向18に対して任意の角度で鋼板12を斜めに切出し、その鋼板12の切出し方向14が鋼管1の管軸方向4と一致するようにロールベンドまたはプレス成形により管状に成形した鋼管は、管軸方向4のヤング率が215GPa以上である耐軸圧潰部材用鋼管とすることができる。また、円周方向5のヤング率が215GPa以上である、鋼管の横方向から衝撃曲げ荷重を受ける部材用鋼管とすることができる。
【選択図】 図3
【解決手段】圧延鋼板が有するヤング率には異方性が認められる。ヤング率が最大となる方向は圧延方向とは異なる方向である。ヤング率が最大となる方向の近傍であれば、ヤング率を215GPa以上とすることが可能である。圧延鋼板11の圧延方向18に対して任意の角度で鋼板12を斜めに切出し、その鋼板12の切出し方向14が鋼管1の管軸方向4と一致するようにロールベンドまたはプレス成形により管状に成形した鋼管は、管軸方向4のヤング率が215GPa以上である耐軸圧潰部材用鋼管とすることができる。また、円周方向5のヤング率が215GPa以上である、鋼管の横方向から衝撃曲げ荷重を受ける部材用鋼管とすることができる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、剛性に優れた鋼管及びその製造方法に関するものであり、特に耐軸圧潰部材用鋼管あるいは鋼管の横方向から衝撃曲げ荷重を受ける部材用鋼管であって剛性に優れた鋼管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の車体を構成する各鋼部材は、衝突安全性を確保するために高い剛性強度が要求される。一方、自動車の燃費改善のため、あるいは走行性能の向上のためには、車体の軽量化が必要とされる。部材の剛性を向上するためには、部材を構成する素材の厚肉化が有効であるが、逆に軽量化のためには部材の薄肉化が必要である。
【0003】
自動車の衝突安全性の更なる向上と車体軽量化の両立をはかるために、車体構造ならびに新材料の研究・開発が進められている。衝突安全の観点からみた車体の構造要件では、客室は変形を最小限に止めて乗員の生存空間を確保する強固な構造とされ、客室以外は変形により効率よく衝突エネルギを吸収する構造とされる。そこで、車体構造部材のなかでも、エネルギ吸収部材としての役割を兼ねたフロントサイドメンバなどの鋼部材については、エネルギ吸収特性の最適化を図ることによって衝撃特性を向上することが重要となる。従来は、素材の高強度化や部材形状の工夫によって、剛性の向上と軽量化との両立がなされてきた。
【0004】
ハイドロフォーム技術は複雑形状部品の一体化と高精度化が可能なことから、自動車の軽量化およびコストダウンが可能な新車体構造実現の技術として期待されている。このような背景のもと鋼管を素材とし、ハイドロフォームにより成形した足廻り部品およびボディー部品の適用が増加しつつある。ハイドロフォームは軸力+内圧を高精度に制御することにより複雑形状部品の一体化と高精度化が可能な技術である。
【0005】
自動車の車体を構成する各鋼部材のうちの特に剛性強度を要求される部材、自動車以外の用途において同じく剛性強度を要求される部材の中には、鋼管が用いられる場合が多い。また、鋼管を素材として上記ハイドロフォーム加工によって部材の最終形状を形成することも多い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
材料の高強度化及び形状の最適化により、上記のように衝突安全性の向上と部材の軽量化との両立が図られているが、さらなる衝突安全性の向上と部材の軽量化とが求められている。本発明は、より一層衝撃特性に優れた部材用として用いることのできる鋼管を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
圧延鋼板が有する材質のうちには、異方性を有するものがある。また、自動車の車体を構成する部材は、衝撃を受ける方向が特定の方向に限定されるものが多い。材質の異方性と衝撃を受ける方向とをうまく組み合わせることにより、従来と同じ材質、同じ形状の鋼管であっても、衝撃特性を向上させることが可能となることがある。本発明は以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
【0008】
(1)管軸方向4のヤング率が215GPa以上であることを特徴とする鋼管。
(2)耐軸圧潰部材用鋼管であることを特徴とする上記(1)に記載の鋼管。
(3)円周方向5のヤング率が215GPa以上であることを特徴とする鋼管。
(4)鋼管の横方向から衝撃曲げ荷重を受ける部材であることを特徴とする上記(3)に記載の鋼管。
(5)圧延鋼板11を用いてなる溶接鋼管であり、溶接部が鋼管の管軸方向に平行あるいは略平行であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の鋼管。
(6)鋼管を構成する圧延鋼板11の圧延方向18は鋼管の管軸方向4に対して斜めであることを特徴とする上記(5)に記載の鋼管。
(7)圧延鋼板11の圧延方向18に対して任意の角度で鋼板12を斜めに切出し、その鋼板12の切出し方向14が鋼管1の管軸方向4と一致するようにロールベンドまたはプレス成形により管状に成形することを特徴とする上記(6)に記載の鋼管の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
圧延鋼板が有するヤング率には異方性が認められる。図2は、圧延方向を0°として、圧延方向からの角度θを横軸に取り、角度θとヤング率との関係について例示したものである。図2に示す例において、ヤング率が最大となる角度θはθ=0°の圧延方向とは異なる方向であり、θ=45〜60°の方向である。ヤング率が最大となる方向の近傍であれば、ヤング率を215GPa以上とすることが可能である。ヤング率が最大となる角度θは圧延鋼板の材質や製造方法によって異なるが、通常は圧延方向(θ=0°)以外の方向においてヤング率が最大となる。そのため、圧延方向のヤング率を215GPa以上とすることができない。
【0010】
鋼管1あるいは鋼管1を素材とした鋼部材が衝撃を受ける方向3としては、第1に鋼管1の管軸方向4に衝撃を受ける部材がある(図1(a))。フロントサイドメンバー等が該当する。このような用途に用いられる鋼管は、耐軸圧潰部材用鋼管と呼ばれる。このような部材については、鋼管の管軸方向4の剛性を高めることによって衝撃特性を向上することができる。本発明においては、鋼管の管軸方向4のヤング率を215GPa以上とすることにより、管軸方向の剛性を向上し、これによって衝撃特性が改善することを見いだした。
【0011】
鋼管1あるいは鋼管を素材とした鋼部材が衝撃を受ける方向3としては、第2に鋼管の横方向、即ち管軸方向4に直角の方向から衝撃曲げ荷重を受ける部材がある(図1(b))。ドアーガードバー、センターピラー等が該当する。このような部材については、衝撃を受けると鋼管に衝撃曲げが生じるので、鋼管の円周方向5の剛性を高めることによって衝撃特性を向上することができる。本発明においては、鋼管の円周方向5のヤング率を215GPa以上とすることにより、円周方向5の剛性を向上し、これによって衝撃特性が改善することを見いだした。
【0012】
圧延鋼板を素材として鋼管を製造するに際し、従来は圧延鋼板の圧延方向と鋼管の管軸方向が一致するように製造されていた。圧延鋼板を用いてなる溶接鋼管であり、溶接部が鋼管の管軸方向に平行あるいは略平行であるような鋼管、例えば電縫鋼管であれば、圧延方向に平行に切り出された帯鋼を用い、圧延方向と直角の方向において曲げ加工を行い、帯鋼の突き合せ部を溶接することによって製造される。このような従来の鋼管においては、鋼管の管軸方向が圧延方向と一致しているので、管軸方向のヤング率を215GPa以上とすることはできず、耐軸圧潰部材用鋼管として衝撃特性の向上を図ることができない。また、円周方向のヤング率も215GPa以上とすることができず、鋼管の横方向から衝撃曲げ荷重を受ける部材における衝撃特性の向上も図ることができない。
【0013】
上述の通り、圧延鋼板11の圧延方向18のヤング率は低い値であるのに対し、圧延方向に対して斜めの方向のヤング率が高い値を有し、その方向でヤング率を215GPa以上とすることができる。本発明においては、図3に示すように圧延鋼板11から鋼管1の素材である鋼板12を切り出すに際し、圧延方向とは斜めの方向に鋼板12を切り出す。次いで切り出した鋼板12を曲げ加工して円筒形状とし、突き合せ部17を溶接することによって鋼管1を形成する。
【0014】
衝撃を受ける方向2が鋼管の管軸方向4である耐軸圧潰部材用鋼管の場合には、鋼管の管軸方向4となる方向と圧延鋼板11のヤング率が高い方向とが一致するように斜めの方向に鋼板12を切り出す。これにより、その鋼板12を用いて製造した鋼管は、管軸方向4のヤング率を215GPa以上の特性を有するものとすることができる。
【0015】
鋼管の横方向から衝撃曲げ荷重を受ける場合には、鋼管の円周方向5となる方向と圧延鋼板11のヤング率が高い方向とが一致するように斜めの方向に鋼板12を切り出す。これにより、その鋼板12を用いて製造した鋼管は、円周方向5のヤング率を215GPa以上の特性を有するものとすることができる。
【0016】
以上のように構成された本発明の鋼管は、圧延鋼板11を用いてなる溶接鋼管であり、圧延鋼板11を管状に成形し、突合せ部7を接合した溶接鋼管である。突合せ部17の方向は鋼管の管軸方向4と一致している。そのため、溶接部が鋼管の管軸方向に平行あるいは略平行である。また、鋼管を構成する圧延鋼板11の圧延方向18は鋼管の管軸方向4に対して斜めである。そのため、圧延方向と斜めのヤング率が215GPaより大きい方向を管軸方向4とすることができ、結果として管軸方向4においてヤング率が215GPa以上である。また、圧延方向と斜めのヤング率が215GPaより大きい方向を円周方向5とすることができ、この場合は結果として円周方向5においてヤング率が215GPa以上である。
【0017】
次に本発明の鋼管の製造方法について説明する。
【0018】
図3において、熱薄鋼板又は冷薄鋼板である圧延鋼板11から、圧延鋼板でのヤング率が215GPa以上を有する方向の角度15を切り出し方向14とし、所定の幅と長さの薄鋼板12を切り出す。切り出し方向14は鋼板の圧延方向18に対して斜めであり、圧延方向18に一致する方向ではなく、圧延方向18と直角の方向でもない。所定の幅と長さに切り出した鋼板12はヤング率が215GPa以上である切り出し方向14が鋼管1の管軸方向4となるようにロールベンドまたはプレス成形により管状に成形し、突合せ部17を接合して鋼管1とする。接合方法としては、高周波誘導加熱方法、あるいはレーザ溶接方法を採用することができる。突合せ部17の方向は管軸方向4と一致する。
【0019】
本発明において、切り出し方向14を圧延方向18とは異なる斜め方向とする理由は、所望のヤング率に合わせて所定の長さの鋼板を歩留まり良く効率的に板取りするためである。それによって、圧延方向に直角な方向から板取りするよりもより長い鋼管を得ることができるからである。
【0020】
図1(b)に示すように衝撃を受ける方向3が鋼管1の管軸方向4と直角の方向となる場合には、鋼管1を製造する方法としては、圧延鋼板11を管状に成形するに際し、215GPa以上のヤング率を有する方向と切り出し方向14に直角の方向とが一致するように所定の幅と長さの薄鋼板12を切り出し、切り出し方向14と鋼管1の管軸方向4が一致するように造管することである。これによって、鋼管の円周方向5におけるヤング率を215GPa以上とすることができる。
【0021】
上記のように形成された本発明の鋼管を素材としてハイドロフォーム加工を行えば、種々の形状を有する鋼部材を形成することができる。鋼管の軸方向のヤング率が215GPa以上となるように形成した鋼管を用いて鋼部材とした場合においては、この鋼部材を耐軸圧潰部材として用いると良好な衝撃特性を得ることができる。鋼管の円周方向5のヤング率が215GPa以上となるように形成した鋼管を用いて鋼部材とした場合においては、この鋼部材の横方向から衝撃曲げ荷重を受ける部材として用いると良好な衝撃特性を得ることができる。
【0022】
【実施例】
(実施例1)
耐軸圧潰部材用鋼管を対象として、本発明を適用した。圧延鋼板から種々の切り出し方向で鋼板を切り出し、切り出した鋼板12の切り出し方向14が鋼管1の管軸方向4となるようにロールベンドまたはプレス成形により管状に成形し、突合せ部17をレーザー接合して鋼管1とした。突合せ部17の方向は管軸方向4と一致する。表1に示すように、本発明例No.1〜3は圧延方向に対する切り出し角度がそれぞれ35°、45°、60°、比較例1は圧延方向と切り出し方向が一致している。切り出し方向(管軸方向)のヤング率を表1に示す。
【0023】
本発明例の軸圧潰吸収エネルギー量について、比較例1を基準とした相対値を表1に示す。エネルギー吸収量は衝撃時の時間毎での部材の反力と変形移動距離から吸収エネルギーを算出している。本発明例においては、管軸方向のヤング率が215GPa以上であることから、優れた軸圧潰吸収エネルギー量を実現することができた。
【0024】
【表1】
【0025】
(実施例2)
鋼管の横方向から衝撃曲げ荷重を受ける部材を対象として、本発明を適用した。圧延鋼板から種々の切り出し方向で鋼板を切り出し、切り出した鋼板12の切り出し方向14が鋼管1の管軸方向4となるようにロールベンドまたはプレス成形により管状に成形し、突合せ部17をレーザー接合して鋼管1とした。突合せ部17の方向は管軸方向4と一致する。表2に示すように、本発明例No.1〜3は圧延方向に対する切り出し角度がそれぞれ125°、135°、150°、比較例1は圧延方向と切り出し方向が一致している。切り出し方向に対して直角方向(円周方向)のヤング率を表2に示す。
【0026】
本発明例の曲げ吸収エネルギー量について、比較例1を基準とした相対値を表2に示す。エネルギー吸収量は衝撃時の時間毎での部材の反力と変形移動距離から吸収エネルギーを算出している。本発明例においては、円周方向のヤング率が215GPa以上であることから、優れた曲げ吸収エネルギー量を実現することができた。
【0027】
【表2】
【0028】
【発明の効果】
本発明は、圧延鋼板から鋼管の素材を切り出すに際して切り出し方向に配慮することにより、鋼管の管軸方向のヤング率が215GPa以上となる鋼管、また鋼管の円周方向のヤング率が215GPa以上となる鋼管とすることができ、鋼管の衝撃特性を向上して剛性の優れた鋼管とすることを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼管の衝撃を受ける方向について説明する斜視図であり、(a)は衝撃を受ける方向が鋼管の管軸方向である場合、(b)は衝撃を受ける方向が鋼管の横方向の場合である。
【図2】圧延鋼板の圧延方向からの角度とヤング率との関係を例示する図である。
【図3】本発明の鋼管を形成する状況を示す斜視図であり、(a)は圧延鋼板から素材としての鋼板を切り出す状況を示す図、(b)は切り出した鋼板を用いて鋼管を成形する状況を示す図である。
【符号の説明】
1 鋼管
3 衝撃を受ける方向
4 管軸方向
5 円周方向
11 圧延鋼板
12 切り出した鋼板
14 切り出し方向
15 切り出し角度
17 突き合せ部
18 圧延方向
19 曲げ加工
【発明の属する技術分野】
本発明は、剛性に優れた鋼管及びその製造方法に関するものであり、特に耐軸圧潰部材用鋼管あるいは鋼管の横方向から衝撃曲げ荷重を受ける部材用鋼管であって剛性に優れた鋼管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の車体を構成する各鋼部材は、衝突安全性を確保するために高い剛性強度が要求される。一方、自動車の燃費改善のため、あるいは走行性能の向上のためには、車体の軽量化が必要とされる。部材の剛性を向上するためには、部材を構成する素材の厚肉化が有効であるが、逆に軽量化のためには部材の薄肉化が必要である。
【0003】
自動車の衝突安全性の更なる向上と車体軽量化の両立をはかるために、車体構造ならびに新材料の研究・開発が進められている。衝突安全の観点からみた車体の構造要件では、客室は変形を最小限に止めて乗員の生存空間を確保する強固な構造とされ、客室以外は変形により効率よく衝突エネルギを吸収する構造とされる。そこで、車体構造部材のなかでも、エネルギ吸収部材としての役割を兼ねたフロントサイドメンバなどの鋼部材については、エネルギ吸収特性の最適化を図ることによって衝撃特性を向上することが重要となる。従来は、素材の高強度化や部材形状の工夫によって、剛性の向上と軽量化との両立がなされてきた。
【0004】
ハイドロフォーム技術は複雑形状部品の一体化と高精度化が可能なことから、自動車の軽量化およびコストダウンが可能な新車体構造実現の技術として期待されている。このような背景のもと鋼管を素材とし、ハイドロフォームにより成形した足廻り部品およびボディー部品の適用が増加しつつある。ハイドロフォームは軸力+内圧を高精度に制御することにより複雑形状部品の一体化と高精度化が可能な技術である。
【0005】
自動車の車体を構成する各鋼部材のうちの特に剛性強度を要求される部材、自動車以外の用途において同じく剛性強度を要求される部材の中には、鋼管が用いられる場合が多い。また、鋼管を素材として上記ハイドロフォーム加工によって部材の最終形状を形成することも多い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
材料の高強度化及び形状の最適化により、上記のように衝突安全性の向上と部材の軽量化との両立が図られているが、さらなる衝突安全性の向上と部材の軽量化とが求められている。本発明は、より一層衝撃特性に優れた部材用として用いることのできる鋼管を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
圧延鋼板が有する材質のうちには、異方性を有するものがある。また、自動車の車体を構成する部材は、衝撃を受ける方向が特定の方向に限定されるものが多い。材質の異方性と衝撃を受ける方向とをうまく組み合わせることにより、従来と同じ材質、同じ形状の鋼管であっても、衝撃特性を向上させることが可能となることがある。本発明は以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
【0008】
(1)管軸方向4のヤング率が215GPa以上であることを特徴とする鋼管。
(2)耐軸圧潰部材用鋼管であることを特徴とする上記(1)に記載の鋼管。
(3)円周方向5のヤング率が215GPa以上であることを特徴とする鋼管。
(4)鋼管の横方向から衝撃曲げ荷重を受ける部材であることを特徴とする上記(3)に記載の鋼管。
(5)圧延鋼板11を用いてなる溶接鋼管であり、溶接部が鋼管の管軸方向に平行あるいは略平行であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の鋼管。
(6)鋼管を構成する圧延鋼板11の圧延方向18は鋼管の管軸方向4に対して斜めであることを特徴とする上記(5)に記載の鋼管。
(7)圧延鋼板11の圧延方向18に対して任意の角度で鋼板12を斜めに切出し、その鋼板12の切出し方向14が鋼管1の管軸方向4と一致するようにロールベンドまたはプレス成形により管状に成形することを特徴とする上記(6)に記載の鋼管の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
圧延鋼板が有するヤング率には異方性が認められる。図2は、圧延方向を0°として、圧延方向からの角度θを横軸に取り、角度θとヤング率との関係について例示したものである。図2に示す例において、ヤング率が最大となる角度θはθ=0°の圧延方向とは異なる方向であり、θ=45〜60°の方向である。ヤング率が最大となる方向の近傍であれば、ヤング率を215GPa以上とすることが可能である。ヤング率が最大となる角度θは圧延鋼板の材質や製造方法によって異なるが、通常は圧延方向(θ=0°)以外の方向においてヤング率が最大となる。そのため、圧延方向のヤング率を215GPa以上とすることができない。
【0010】
鋼管1あるいは鋼管1を素材とした鋼部材が衝撃を受ける方向3としては、第1に鋼管1の管軸方向4に衝撃を受ける部材がある(図1(a))。フロントサイドメンバー等が該当する。このような用途に用いられる鋼管は、耐軸圧潰部材用鋼管と呼ばれる。このような部材については、鋼管の管軸方向4の剛性を高めることによって衝撃特性を向上することができる。本発明においては、鋼管の管軸方向4のヤング率を215GPa以上とすることにより、管軸方向の剛性を向上し、これによって衝撃特性が改善することを見いだした。
【0011】
鋼管1あるいは鋼管を素材とした鋼部材が衝撃を受ける方向3としては、第2に鋼管の横方向、即ち管軸方向4に直角の方向から衝撃曲げ荷重を受ける部材がある(図1(b))。ドアーガードバー、センターピラー等が該当する。このような部材については、衝撃を受けると鋼管に衝撃曲げが生じるので、鋼管の円周方向5の剛性を高めることによって衝撃特性を向上することができる。本発明においては、鋼管の円周方向5のヤング率を215GPa以上とすることにより、円周方向5の剛性を向上し、これによって衝撃特性が改善することを見いだした。
【0012】
圧延鋼板を素材として鋼管を製造するに際し、従来は圧延鋼板の圧延方向と鋼管の管軸方向が一致するように製造されていた。圧延鋼板を用いてなる溶接鋼管であり、溶接部が鋼管の管軸方向に平行あるいは略平行であるような鋼管、例えば電縫鋼管であれば、圧延方向に平行に切り出された帯鋼を用い、圧延方向と直角の方向において曲げ加工を行い、帯鋼の突き合せ部を溶接することによって製造される。このような従来の鋼管においては、鋼管の管軸方向が圧延方向と一致しているので、管軸方向のヤング率を215GPa以上とすることはできず、耐軸圧潰部材用鋼管として衝撃特性の向上を図ることができない。また、円周方向のヤング率も215GPa以上とすることができず、鋼管の横方向から衝撃曲げ荷重を受ける部材における衝撃特性の向上も図ることができない。
【0013】
上述の通り、圧延鋼板11の圧延方向18のヤング率は低い値であるのに対し、圧延方向に対して斜めの方向のヤング率が高い値を有し、その方向でヤング率を215GPa以上とすることができる。本発明においては、図3に示すように圧延鋼板11から鋼管1の素材である鋼板12を切り出すに際し、圧延方向とは斜めの方向に鋼板12を切り出す。次いで切り出した鋼板12を曲げ加工して円筒形状とし、突き合せ部17を溶接することによって鋼管1を形成する。
【0014】
衝撃を受ける方向2が鋼管の管軸方向4である耐軸圧潰部材用鋼管の場合には、鋼管の管軸方向4となる方向と圧延鋼板11のヤング率が高い方向とが一致するように斜めの方向に鋼板12を切り出す。これにより、その鋼板12を用いて製造した鋼管は、管軸方向4のヤング率を215GPa以上の特性を有するものとすることができる。
【0015】
鋼管の横方向から衝撃曲げ荷重を受ける場合には、鋼管の円周方向5となる方向と圧延鋼板11のヤング率が高い方向とが一致するように斜めの方向に鋼板12を切り出す。これにより、その鋼板12を用いて製造した鋼管は、円周方向5のヤング率を215GPa以上の特性を有するものとすることができる。
【0016】
以上のように構成された本発明の鋼管は、圧延鋼板11を用いてなる溶接鋼管であり、圧延鋼板11を管状に成形し、突合せ部7を接合した溶接鋼管である。突合せ部17の方向は鋼管の管軸方向4と一致している。そのため、溶接部が鋼管の管軸方向に平行あるいは略平行である。また、鋼管を構成する圧延鋼板11の圧延方向18は鋼管の管軸方向4に対して斜めである。そのため、圧延方向と斜めのヤング率が215GPaより大きい方向を管軸方向4とすることができ、結果として管軸方向4においてヤング率が215GPa以上である。また、圧延方向と斜めのヤング率が215GPaより大きい方向を円周方向5とすることができ、この場合は結果として円周方向5においてヤング率が215GPa以上である。
【0017】
次に本発明の鋼管の製造方法について説明する。
【0018】
図3において、熱薄鋼板又は冷薄鋼板である圧延鋼板11から、圧延鋼板でのヤング率が215GPa以上を有する方向の角度15を切り出し方向14とし、所定の幅と長さの薄鋼板12を切り出す。切り出し方向14は鋼板の圧延方向18に対して斜めであり、圧延方向18に一致する方向ではなく、圧延方向18と直角の方向でもない。所定の幅と長さに切り出した鋼板12はヤング率が215GPa以上である切り出し方向14が鋼管1の管軸方向4となるようにロールベンドまたはプレス成形により管状に成形し、突合せ部17を接合して鋼管1とする。接合方法としては、高周波誘導加熱方法、あるいはレーザ溶接方法を採用することができる。突合せ部17の方向は管軸方向4と一致する。
【0019】
本発明において、切り出し方向14を圧延方向18とは異なる斜め方向とする理由は、所望のヤング率に合わせて所定の長さの鋼板を歩留まり良く効率的に板取りするためである。それによって、圧延方向に直角な方向から板取りするよりもより長い鋼管を得ることができるからである。
【0020】
図1(b)に示すように衝撃を受ける方向3が鋼管1の管軸方向4と直角の方向となる場合には、鋼管1を製造する方法としては、圧延鋼板11を管状に成形するに際し、215GPa以上のヤング率を有する方向と切り出し方向14に直角の方向とが一致するように所定の幅と長さの薄鋼板12を切り出し、切り出し方向14と鋼管1の管軸方向4が一致するように造管することである。これによって、鋼管の円周方向5におけるヤング率を215GPa以上とすることができる。
【0021】
上記のように形成された本発明の鋼管を素材としてハイドロフォーム加工を行えば、種々の形状を有する鋼部材を形成することができる。鋼管の軸方向のヤング率が215GPa以上となるように形成した鋼管を用いて鋼部材とした場合においては、この鋼部材を耐軸圧潰部材として用いると良好な衝撃特性を得ることができる。鋼管の円周方向5のヤング率が215GPa以上となるように形成した鋼管を用いて鋼部材とした場合においては、この鋼部材の横方向から衝撃曲げ荷重を受ける部材として用いると良好な衝撃特性を得ることができる。
【0022】
【実施例】
(実施例1)
耐軸圧潰部材用鋼管を対象として、本発明を適用した。圧延鋼板から種々の切り出し方向で鋼板を切り出し、切り出した鋼板12の切り出し方向14が鋼管1の管軸方向4となるようにロールベンドまたはプレス成形により管状に成形し、突合せ部17をレーザー接合して鋼管1とした。突合せ部17の方向は管軸方向4と一致する。表1に示すように、本発明例No.1〜3は圧延方向に対する切り出し角度がそれぞれ35°、45°、60°、比較例1は圧延方向と切り出し方向が一致している。切り出し方向(管軸方向)のヤング率を表1に示す。
【0023】
本発明例の軸圧潰吸収エネルギー量について、比較例1を基準とした相対値を表1に示す。エネルギー吸収量は衝撃時の時間毎での部材の反力と変形移動距離から吸収エネルギーを算出している。本発明例においては、管軸方向のヤング率が215GPa以上であることから、優れた軸圧潰吸収エネルギー量を実現することができた。
【0024】
【表1】
【0025】
(実施例2)
鋼管の横方向から衝撃曲げ荷重を受ける部材を対象として、本発明を適用した。圧延鋼板から種々の切り出し方向で鋼板を切り出し、切り出した鋼板12の切り出し方向14が鋼管1の管軸方向4となるようにロールベンドまたはプレス成形により管状に成形し、突合せ部17をレーザー接合して鋼管1とした。突合せ部17の方向は管軸方向4と一致する。表2に示すように、本発明例No.1〜3は圧延方向に対する切り出し角度がそれぞれ125°、135°、150°、比較例1は圧延方向と切り出し方向が一致している。切り出し方向に対して直角方向(円周方向)のヤング率を表2に示す。
【0026】
本発明例の曲げ吸収エネルギー量について、比較例1を基準とした相対値を表2に示す。エネルギー吸収量は衝撃時の時間毎での部材の反力と変形移動距離から吸収エネルギーを算出している。本発明例においては、円周方向のヤング率が215GPa以上であることから、優れた曲げ吸収エネルギー量を実現することができた。
【0027】
【表2】
【0028】
【発明の効果】
本発明は、圧延鋼板から鋼管の素材を切り出すに際して切り出し方向に配慮することにより、鋼管の管軸方向のヤング率が215GPa以上となる鋼管、また鋼管の円周方向のヤング率が215GPa以上となる鋼管とすることができ、鋼管の衝撃特性を向上して剛性の優れた鋼管とすることを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼管の衝撃を受ける方向について説明する斜視図であり、(a)は衝撃を受ける方向が鋼管の管軸方向である場合、(b)は衝撃を受ける方向が鋼管の横方向の場合である。
【図2】圧延鋼板の圧延方向からの角度とヤング率との関係を例示する図である。
【図3】本発明の鋼管を形成する状況を示す斜視図であり、(a)は圧延鋼板から素材としての鋼板を切り出す状況を示す図、(b)は切り出した鋼板を用いて鋼管を成形する状況を示す図である。
【符号の説明】
1 鋼管
3 衝撃を受ける方向
4 管軸方向
5 円周方向
11 圧延鋼板
12 切り出した鋼板
14 切り出し方向
15 切り出し角度
17 突き合せ部
18 圧延方向
19 曲げ加工
Claims (7)
- 管軸方向のヤング率が215GPa以上であることを特徴とする鋼管。
- 耐軸圧潰部材用鋼管であることを特徴とする請求項1に記載の鋼管。
- 円周方向のヤング率が215GPa以上であることを特徴とする鋼管。
- 鋼管の横方向から衝撃曲げ荷重を受ける部材であることを特徴とする請求項3に記載の鋼管。
- 圧延鋼板を用いてなる溶接鋼管であり、溶接部が鋼管の管軸方向に平行あるいは略平行であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の鋼管。
- 鋼管を構成する圧延鋼板の圧延方向は鋼管の管軸方向に対して斜めであることを特徴とする請求項5に記載の鋼管。
- 圧延鋼板の圧延方向に対して任意の角度で鋼板を斜めに切出し、その鋼板の切出し方向が鋼管の管軸方向と一致するようにロールベンドまたはプレス成形により管状に成形することを特徴とする請求項6に記載の鋼管の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003129132A JP2004330242A (ja) | 2003-05-07 | 2003-05-07 | 剛性に優れた鋼管及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003129132A JP2004330242A (ja) | 2003-05-07 | 2003-05-07 | 剛性に優れた鋼管及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004330242A true JP2004330242A (ja) | 2004-11-25 |
Family
ID=33505075
Family Applications (1)
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JP2003129132A Withdrawn JP2004330242A (ja) | 2003-05-07 | 2003-05-07 | 剛性に優れた鋼管及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004330242A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009274571A (ja) * | 2008-05-14 | 2009-11-26 | Nippon Steel Corp | 自動車フレーム部材 |
CN112008207A (zh) * | 2020-07-22 | 2020-12-01 | 海洋石油工程(青岛)有限公司 | 一种结构管预制方法 |
-
2003
- 2003-05-07 JP JP2003129132A patent/JP2004330242A/ja not_active Withdrawn
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