JP2004330237A - 熱間圧延鋼板の製造方法及び製造設備 - Google Patents

熱間圧延鋼板の製造方法及び製造設備 Download PDF

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正弘 土岐
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英樹 村上
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Abstract

【課題】熱間仕上げ圧延通過直後の温度を正確に測定できると共に、結晶粒粗大化による鋼板の材質劣化や酸化スケール発生を防止することができる位置にて急冷が可能な鋼板の製造方法及び製造設備を提供すること。
【解決手段】走行する鋼板が熱間仕上げ圧延機の最終スタンドを通過した直後に、当該鋼板の片面では温度測定が行われ、他の片面では通過直後から0.1秒以上、0.6秒以内に水冷を開始することにより熱間仕上げ圧延終了後に温度測定と冷却を適正な位置で行うことを可能とする熱延鋼板の製造方法。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼板の製造方法及び製造設備、特に、熱間圧延終了後に温度測定と冷却を行う熱間圧延鋼板の製造方法及びその設備に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に熱延鋼板は、加熱されたスラブを熱間粗圧延機および熱間仕上げ圧延機にて所望の板厚に圧延した後、ローラーテーブル上を走行しながら鋼板の上下面から冷却水を噴射することによって冷却され、熱間圧延ラインの最後部に設置された巻取り機によってコイル状に巻き取られて製造される。
前記熱間仕上げ圧延機においては、複数の圧延スタンドから構成され、最終スタンド出側には、フィードバック制御や品質管理保証のための各種データを収集するために、温度計、板厚計、板幅計、板形状プロフィルメータ等の各種測定装置が設置されているのが普通である。
【0003】
これらの各種測定装置を使用するにあたっては、鋼板表面上に滞留する冷却水および水蒸気の存在によって、測定精度が著しく低下する問題があったため、熱間仕上げ圧延機の最終スタンド出側から10m近くまでのゾーンは、通常各種測定のみが行われ、水冷しないことが多かった。しかし、この方法では冷却開始時期が、鋼板の搬送速度によっては1秒以上遅れることがあるため、鋼板の結晶粒を粗大化させ材質的に好ましくない結果をもたらしていた。
そこで従来、熱間仕上げ圧延を終了した鋼板を出来るだけ早い時期に急冷する方法が開発されてきた。たとえば、特許文献1では、熱間圧延に際し、圧延直後、0.5秒以内に直近冷却装置で鋼板の上下面を急冷した後、空冷域内で各種測定を行い、さらにゾーン冷却装置で冷却する技術が開示されている。また、他の従来例として特許文献2では、鋼板が仕上げ圧延機から出た直後に、当該鋼板を規定の冷却速度で急冷し、鋼板表面のスケール発生を低減する技術が開示されている。温度測定は最終スタンド入側のみで、出側は省略する旨の記載がある。
【0004】
【特許文献1】
特開昭60−243226号公報
【特許文献2】
特開昭61−56722号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
通常、結晶粒粗大化による鋼板の材質劣化、酸化スケール発生を防止するため、熱間仕上げ圧延機を通過した後、出来るだけ早く急冷させる必要がある。その一方で、通過後の各種測定も、装置制御や品質管理上の理由でリアルタイムに近い条件で行う必要があった。特に圧延機出側の温度測定については、板厚、板幅等の測定とは違い、圧延直後の温度を測定しなければ意味がない。
前記した特許文献1及び2に代表される従来方法では、鋼板を熱間仕上げ圧延直後に急冷することは実現可能ではあるものの、圧延直後の温度測定は、急冷が終わった後か、入側の測定で代償または推定するしか出来ず、これらの急冷と温度測定を両立させることは困難であるのが実情である。
【0006】
本発明は、このような従来方法の問題点を解決することを課題とし、熱間仕上げ圧延通過直後の温度を正確に測定できると共に、結晶粒粗大化による鋼板の材質劣化や酸化スケール発生を防止することができる位置にて急冷が可能な鋼板の製造方法及びこの方法を実施するための製造設備を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の要旨は、次のとおりである。
(1) 走行する鋼板が熱間仕上げ圧延機の最終スタンドを通過した直後に、当該鋼板の片面では温度測定が行われ、他の片面では通過直後から0.1秒以上、0.6秒以内に水冷を開始することにより熱間仕上げ圧延終了後に温度測定と冷却を行うことを特徴とする熱間圧延鋼板の製造方法。
(2) 急冷スプレーノズルの噴射方向が、鋼板進行方向に傾斜していることを特徴とする(1)記載の熱間圧延鋼板の製造方法。
(3) 熱間仕上げ圧延機の最終スタンドを通過した直後における鋼板の片面側の近傍に温度計を設置するとともに、該温度計の設置位置後段における鋼板の他面側に冷却用スプレーノズルを設けることを特徴とする熱間圧延鋼板の製造設備。
(4) 温度計に、昇降可能なカバー部材を装着することを特徴とする(3)記載の熱間圧延鋼板の製造設備。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて詳述する。図1及び図2は本発明の実施例である。
まず、図1は鋼板上部に温度計を、鋼板下部に急冷用スプレーノズルを設置した例である。
鋼板1は、熱間仕上げ圧延機の最終スタンド2を通過した後、当該鋼板の上反り防止目的に取り付けられたガイドプロテクター3を経て、最終スタンド2の出側直後に設置した温度計(例えば、放射温度計)4で鋼板上表面の温度測定が行われる。その後、温度計4の後位に配置した板厚・板幅・板形状プロフィルメータ8でこれら板厚、板幅、板形状プロフィルが測定される。一方、鋼板1の下部側に設置した複数の急冷スプレーノズル10からの水噴射で、各種測定を終えた鋼板下表面が冷却される。
【0009】
冷却水噴射の勢いで鋼板1が浮き上がらないよう、スプレー冷却ゾーン前後に設けた昇降可能なピンチロール9で鋼板上部から押さえられている。該ピンチロール9は主として水切り用として機能する。図1では示されていないが、ピンチロール9は鋼板の通過前は上に移動した状態で待機しており、鋼板通過後に降下して下ロールとの間に鋼板をはさみ、浮き上がりを防止する構造となっている。鋼板1は、急冷終了後、ゾーン冷却装置11で所望の巻取り温度まで緩冷却が行われて、最後部に設置された巻取り機12によってコイル状に巻き取られる。
【0010】
温度計4による圧延出側温度測定にあたっては、圧延直後に測定することが要求されている。一方、鋼板の反対面での急冷スプレーノズル10による冷却については、圧延後の遅れが0.6秒を越えなければ、材質劣化は無視できる範囲であることを別の実験で確認しているので、必ずしも圧延直後である必要はない。圧延直後に冷却すると、かえって反対面での温度測定に誤差を生じる恐れがあるから、少なくとも圧延直後から0.1秒以上遅らせて冷却することが適切である。このため本発明では、温度測定は圧延直後に、冷却スプレーによる急冷は0.1〜0.6秒の範囲で実施することが必須であるとした。
なお、本発明では、鋼板の片面に対して水冷を開始するが、板厚が約7mm以下の鋼板であれば、鋼板の表裏の違いによる材質の不均一性は、無視できる程度に小さい。当然ながら、温度計から十分に遠ざかった距離であれば、上下両面からの急冷却を行って良い。
【0011】
急冷スプレーノズル10から高温の鋼板に対して噴射された水や冷却に伴って発生する水蒸気が、温度計をはじめ各種測定装置に悪影響を及ぼさないようにするため、急冷スプレーノズル10の噴射方向は、鋼板に垂直ではなく、鋼板進行方向に向って傾斜するように配置する。このノズルの傾斜角度は、鋼板面に垂直な線に対して5〜15度の範囲とすることが好ましい。5度未満であると上述の効果が現れず、15度を超えると冷却性能が低下するからである。
【0012】
また、温度計4と鋼板1との間に水蒸気や湯気等が入り込むことによって計測の妨げにならないようにするため、鋼板側だけを開放した構造のカバー部材5を温度計4に装着することが好ましい。カバー部材5の中へガス吹き込み用配管6を通じて、空気、窒素、不活性ガス等を吹き込むと、水蒸気や湯気等が外部に排除(パージ)され、良好な測定が可能となる。なお、前記カバー部材5は鋼板面にできるだけ近接するが、該カバー部材5を昇降可能としておけば、鋼板先端が変形(反りなど)していてもその昇降動作により変形部を回避できる。
【0013】
図2は、図1の実施形態とは反対に、最終スタンド2の出側直後の鋼板1の下部側に温度計4を、鋼板上部側に急冷スプレーノズル10を設置した例である。板厚・板幅・板形状プロフィルメータ8も鋼板上部側に配設されている。図1とは配置が異なるだけで、各部の作用は基本的に図1と同じである。なおこの例では、温度計4およびカバー部材5が鋼板下側に取り付けられているため、カバー部材5の中に冷却水が溜まる恐れがあるので、水抜き孔7を開けておくことが望ましい。
このように本発明では温度計と急冷スプレーノズルの設置位置を常に鋼板を挟んで反対側にしたことにより、同一側にするより両者をより一層近づけることが可能となった結果、好適な位置での温度測定と急冷操作が支障無く行えることとなった。
【0014】
【実施例】
(実施条件)
普通炭素鋼のスラブを1250℃に加熱し、粗圧延機で肉厚40mm、仕上げ圧延機で肉厚1.2mmまで加工し薄鋼板に仕上げた。仕上げ圧延後、鋼板に対して温度計上側、冷却装置下側に設置された設備(図1の設備)にて、本発明の効果を確認した。一方、比較例としては、鋼板が仕上げ圧延通過後0.8秒、1.2秒および2.0秒経過してから急冷を行った鋼板を用いた。
・温度計の種類:放射温度計
・温度計の取付位置:鋼板上面から1000mm
・カバー部材先端部と鋼板との間隔:降下時300mm、上昇時1000mm
・急冷スプレーノズルの長手方向距離2〜10m
・急冷スプレーノズル:ローラーテーブル間に、幅方向60mmピッチ、ノズル型式はフラットスプレー、水圧8kg/cm、水量17m/min
・ローラーテーブル:長手方向に450mmピッチ、幅方向2300mm、直径350mm
・仕上げ圧延機出側温度:900℃
・急冷開始時間:0.2秒、0.4秒、0.6秒
・急冷後の温度:800℃ (冷却速度:500℃/秒)
・巻取り温度:600℃
【0015】
(実施結果)
上記の条件で実際の熱延鋼板の温度測定と冷却を行った結果を表1に結晶粒径で判断した。本発明の例はいずれも結晶粒径は微細であり、材質面で問題は無かったが、比較例は結晶粒はいずれも粗大化しており、材質が劣化した。また、本発明では酸化スケールの発生は極くわずかであったが、比較例2,3の冷却開始時間が1.2秒後及び2.0秒後のものには厚さ1μm以上のスケールの発生が認められた。
【0016】
【表1】
Figure 2004330237
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、熱間仕上げ圧延通過直後の温度を正確に測定できると共に、好適な位置での急冷も可能であるため、結晶粒粗大化による鋼板の材質劣化、酸化スケール発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る鋼板の製造方法を実施するための設備例を示す全体概略図。
【図2】本発明に係る鋼板の製造方法を実施するための他の設備例を示す全体概略図。
【符号の説明】
1 鋼板 2 熱間仕上げ圧延機の最終スタンド
3 ガイドプロテクター 4 温度計
5 カバー部材 6 ガス吹き込み用配管
7 水抜き孔
8 板厚・板幅・板形状プロフィルメータ
9 昇降自在ピンチロール 10 急冷スプレーノズル
11 ゾーン冷却装置 12 ローラーテーブル
13 巻取り機

Claims (4)

  1. 走行する鋼板が熱間仕上げ圧延機の最終スタンドを通過した直後に、当該鋼板の片面では温度測定が行われ、他の片面では通過直後から0.1秒以上、0.6秒以内に水冷を開始することにより熱間仕上げ圧延終了後に温度測定と冷却を行うことを特徴とする熱間圧延鋼板の製造方法。
  2. 急冷スプレーノズルの噴射方向が、鋼板進行方向に傾斜していることを特徴とする請求項1記載の熱間圧延鋼板の製造方法。
  3. 熱間仕上げ圧延機の最終スタンドを通過した直後における鋼板の片面側の近傍に温度計を設置するとともに、該温度計の設置位置後段における鋼板の他面側に冷却用スプレーノズルを設けることを特徴とする熱間圧延鋼板の製造設備。
  4. 温度計に、昇降可能なカバー部材を装着することを特徴とする請求項3記載の熱間圧延鋼板の製造設備。
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