JP2004329179A - 屠体殺菌装置及び屠体殺菌方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】食用動物の中抜き屠体3を冷蔵又は冷凍保存前に殺菌する屠体殺菌装置は、中抜き屠体3を一方向に搬送する搬送部21と、搬送される中抜き屠体3に加熱蒸気を噴射する蒸気噴射部10と、蒸気噴射部10で加熱された中抜き屠体3に加熱蒸気よりも低い温度の殺菌剤を噴射する殺菌剤噴射部17とを備える。蒸気噴射部10及び殺菌剤噴射部17の少なくともいずれかは、中抜き屠体3に対し液体を膜状に噴射し、かつ膜状の気体又は液体が中抜き屠体3の搬送方向に対して垂直方向から斜めに傾斜するように構成される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食用動物の中抜き屠体を冷蔵又は冷凍保存する前に殺菌するための屠体殺菌装置及び屠体殺菌方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
牛、馬、豚、羊、鳥等食用動物を屠殺して、毛皮・内臓などを除いた中抜き屠体は、一般に内部温度を4℃以下に冷蔵し又は冷凍されて保存される。例えば鳥の場合、屠殺、放血、脱毛、内臓取り出し、予冷、冷却、解体、冷蔵等の各処理工程後に、商品流通過程に載る。その他牛、馬、豚、羊等も同様の工程が採られている。このような処理の際、中抜き屠体に微生物、細菌類が増殖して品質が低下することがあるため、これを防止するための処理が求められている。特に加工食品に使用される原材料においては、その衛生品質が細菌レベルによって大きく左右されるため、その衛生管理はHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Points:総合衛生管理製造過程)に沿った食品の危害分析、重要点管理等の衛生管理方式が要求される傾向にある。
【0003】
しかしながら、食用中抜き屠体を冷蔵や冷凍保存の前に加熱して殺菌しようとすると、次工程で冷蔵等のために温度を下げる必要があることから、エネルギー効率が悪くなる。また、加熱処理すると、中抜き屠体の肉質が悪くなるという問題もある。このため、食用中抜き屠体を冷蔵・冷凍保存前に加熱殺菌することは好ましくないと考えられてきた。従来の食品加工設備においては、冷蔵・冷凍保存前に中抜き屠体を殺菌処理する十分な設備がなかった。このことが食品加工時に微生物が増殖する一因となっていた。動物を屠殺した直後においては、屠体の温度は動物の体温とほぼ同じであるが、その後の湯漬け工程の後、脱毛処理、内蔵取り出し処理の際は58〜65℃に維持されるため、中抜き屠体の暖かい温度が、これが最終的に冷却されるまで、微生物の増殖を促進する。動物が屠殺されてから処理された中抜き屠体が冷却されるまでに、通常は多くの時間が経過するので、微生物の増殖がかなり起こりうる。例えば鳥を屠殺後洗浄することが行われているが、水による洗浄だけでは十分な殺菌効果を得ることができず、さらにこの設備には多量の水が必要となる上汚水の処理も面倒になる。
【0004】
一方で、中抜き屠体の処理工程において、生きた動物を微生物の増殖を抑制する食品加工方法が提案されている。例えば、特許文献1には、加工中にガスとオゾン/水混合物を屠体に噴霧し、壁体中の通路にガスを送って加工エリアを冷却し、屠体を取り囲んでいる雰囲気中にガスを流し込むことによって、動物屠体の温度および屠体を取り囲んでいる雰囲気を制御する方法が開示される。この方法によれば、食品加工中に使用される水をリサイクルするために、新鮮水の使用量が少なくて済む。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−99014号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1の方法では新鮮水の使用量を減らすことはできるが、装置が大型化し製造コストが高価になる一方、効果的な殺菌を得られないといった問題があった。特に食用動物の処理工程において、微生物の発育に必要な温度や水分を制御して静菌状態に置くだけでは、有害微生物の死滅、減少を期待することは難しい状況にある。また内蔵取り出し工程において、肛門切除、内臓破裂等によって中抜き屠体の腹腔内及び外表面に微生物、細菌類の拡散が生じるという問題もあった。さらにこの方法は基本的に脱毛処理工程において、オゾン/水混合物およびリン酸三ナトリウムを噴霧する際に、効果的な温度条件やその制御、殺菌剤の導入等について詳しく検討がなされていない。したがって、未だ中抜き屠体の効果的な殺菌を行う技術は確立されていないのが現状である。
【0007】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、食用動物の中抜き屠体を冷却保存する前に、効果的に中抜き屠体を殺菌することのできる屠体殺菌装置及び屠体殺菌方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載される屠体殺菌装置は、食用動物の中抜き屠体3を冷蔵又は冷凍保存前に殺菌する屠体殺菌装置であって、一方向に搬送された中抜き屠体3に加熱蒸気を噴射する蒸気噴射部10と、蒸気噴射部10で加熱された中抜き屠体3に加熱蒸気よりも低い温度の殺菌剤を噴射する殺菌剤噴射部17とを備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によって、中抜き屠体3に加熱蒸気を噴射して毛穴を開き、さらにこの状態で殺菌剤を噴射して開いた毛穴から中抜き屠体3内部に効率的に導入すると共に、殺菌剤で冷却することができ、食用中抜き屠体の肉質に影響を与えることなく確実に殺菌することができる。
【0010】
また、本発明の請求項2に記載される屠体殺菌装置は、請求項1に記載の屠体殺菌装置であって、前記蒸気噴射部10及び殺菌剤噴射部17の少なくともいずれかは、中抜き屠体3に対し気体又は液体を膜状に噴射し、かつ膜状の気体又は液体が中抜き屠体3の搬送方向に対して垂直方向から斜めに傾斜するように構成されてなることを特徴とする。
【0011】
この構成によって、搬送される中抜き屠体3に膜状の加熱蒸気や殺菌剤を走査させるようにして効率的に噴射でき、確実に加熱、殺菌、冷却を行うことができる。特に、中抜き屠体3の進行方向に対して中抜き屠体3の上から下方向に膜状の気体又は液体が走査するように、蒸気噴射部10や殺菌剤噴射部17の先端部分を突出される方向に傾斜させることで、中抜き屠体3が搬送方向に進行することで上から下に洗い流されるようになって、上から下に落下・滴下する液体で中抜き屠体3に効率よく液体が供給され、加熱や殺菌、冷却が効率的に行われる。
【0012】
さらに、本発明の請求項3に記載される屠体殺菌装置は、請求項1又は2に記載の屠体殺菌装置であって、前記蒸気噴射部で噴射される加熱蒸気により屠体の雰囲気温度が、68℃〜75℃の範囲に制御されてなることを特徴とする。
【0013】
この構成によって、中抜き屠体3の毛穴を開く際に中抜き屠体3を加熱して肉質を悪くする事態が防止され、中抜き屠体3を高品質に維持したままで殺菌が可能となる。
【0014】
さらにまた、本発明の請求項4に記載される屠体殺菌方法は、食用動物の中抜き屠体3を冷蔵又は冷凍保存前に殺菌する屠体殺菌方法であって、一方向に搬送される中抜き屠体3に対して、加熱蒸気を噴射する工程と、加熱蒸気で加熱された中抜き屠体3に加熱蒸気よりも低い温度の殺菌剤を噴射する工程とを備えることを特徴とする。
【0015】
この構成によって、中抜き屠体3に加熱蒸気を噴射して毛穴を開き、さらにこの状態で殺菌剤を噴射して開いた毛穴から中抜き屠体3内部に効率的に導入すると共に、殺菌剤で冷却することができ、食用中抜き屠体の肉質に影響を与えることなく確実に殺菌することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための屠体殺菌装置及び屠体殺菌方法を例示するものであって、本発明は屠体殺菌装置及び屠体殺菌方法を以下のものに特定しない。
【0017】
さらに、本明細書は、特許請求の範囲を理解し易いように、実施の形態に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲の欄」、および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置などは特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0018】
図1は、屠体殺菌装置に中抜き屠体を搬送する状態を示す概略斜視図、図2は図1の装置の、中抜き屠体の搬送方向における縦断面図をそれぞれ示す。これらの図に示す屠体殺菌装置4は、搬送部21で搬送される中抜き屠体3を通過させる間に、連続的に自動殺菌し洗浄する。その後、中抜き屠体3は図示しない冷却装置に搬送されて解体された後、冷蔵又は冷凍される。この屠体殺菌装置4は、食用動物の屠殺、放血、脱毛の処理工程と、冷却、解体、冷蔵処理工程の間の処理として、冷却前の殺菌用に設けられる。
【0019】
搬送部21は、ハンガーレール1やフックレール等により構成される。図1の例では、搬送部21は自動搬送装置として、ハンガーレール1に、吊り下げ金具としてハンガー2を例えば約6インチ等の等間隔で取り付け、ハンガー2に中抜き屠体3を吊り下げた状態で複数の中抜き屠体3をハンガーレール1に沿って連続的に搬送する。搬送速度は、好ましくは0.1〜0.6m/s、より好ましくは0.16〜0.20m/sの一定速度とする。この搬送速度に合わせて、中抜き屠体3を加熱、殺菌、洗浄処理に曝す時間が設定される。
【0020】
[中抜き屠体3]
中抜き屠体3は、屠殺した食用動物の毛皮・内臓などを除いた中抜き屠体3であり、さらに必要に応じて頭・四肢等も除去される。よって中抜き屠体3は、動物の胴体全体の他、頭を除いた胴体といった動物の胴体の一部も含む。この図においては、中抜き屠体3として鳥の中抜き屠体を使用する例を示す。
【0021】
[屠体殺菌装置4]
屠体殺菌装置4は、一対の壁状に直立される装置本体カバー9と、装置本体カバー9内部で中抜き屠体3に両側から加熱蒸気を膜状に噴射するための蒸気噴射部10と、加熱蒸気を蒸気噴射部10に供給するためのU字状の蒸気配管11と、蒸気配管11に蒸気を供給する蒸気供給配管12と、蒸気供給配管12と加熱蒸気源との間に接続される蒸気用制御弁8と、液化した水分を溜めるためのドレンパン14と、ドレンパン14に溜まった水分を排出するための排水口15とを備える。また上方には、温度センサ13と、排気チャンバ5と、排気ダクト6と、排気ファン7と、排気ファン7の回転速度を制御するインバータ22を備える。
【0022】
屠体殺菌装置4は、図1に示すように一対の壁状の装置本体カバー9の間を開口しており、一方の開口部を通じてハンガー2に吊り下げられた中抜き屠体3は、ハンガーレール1に沿って搬入され、他方の開口部から搬出される。開口部は、壁状の装置本体カバー9の左右に取り付けられた可撓性シート24で閉塞されており、装置本体カバー9内部の環境温度や湿度を一定値に保つ役目を果たす。可撓性シート24は、断熱性を備える半透明のフィルムシートなどが利用できる。搬送部21で搬送される中抜き屠体3が開口部から屠体殺菌装置4内に搬入される際、可撓性シート24に触れると、可撓性シート24が装置内部に押し込まれるように観音開き状に変形して中抜き屠体3を通過させる。その後、可撓性シート24は元の姿勢に復帰し、装置の内部を外部と遮断しようとする。また搬出側の開口部においても同様に、搬送部21で搬送される中抜き屠体3で押し出されるようにして可撓性シート24が観音開き状に開放され、中抜き屠体3が装置外部に搬出される。なお装置内部はファン7で吸気されて減圧状態であるため、搬出側の可撓性シート24は中抜き屠体3で開放された後、装置側に吸い込まれるように閉塞される。一対の壁状の装置本体カバー9の間では、搬入側から見た図2の断面図に示すように蒸気噴射部10が両側に設けられる。蒸気噴射部10は、両側から加熱蒸気を噴射して中抜き屠体3を加熱殺菌する。高温殺菌によって、中抜き屠体3表面の細菌や微生物を殺傷し、さらに水蒸気の圧力で洗い流すことができる。
【0023】
[温度制御]
この際、加熱によって中抜き屠体3の肉質を損ねないように、屠体殺菌装置4は加熱蒸気の温度を制御する。温度制御は、排気温度を計測して蒸気の供給量と排気量を同時に制御して設定温度を保持する構成とする。図2の例では、温度センサ13で屠体殺菌装置4内の温度を計測し、加熱蒸気の供給量を制御する蒸気用制御弁8と排気ファン7を回転させるインバータ22を制御することにより、噴射される蒸気量と排気される風量を制御して屠体殺菌装置4内の温度を調整する。屠体殺菌装置4内の屠体の雰囲気温度は、68℃〜75℃、好ましくは72℃を中心として±1℃の範囲に保たれるように制御される。68℃よりも低いと、殺菌能力が低下し、75℃よりも高いと肉質を損ねるおそれが生じるからであり、この温度内に制御することで殺菌と肉質の維持を図ることができる。
【0024】
[蒸気噴射部10]
図3に、蒸気噴射部10の配置パターンを示す図1の側面図から見た透視図を示す。この図に示すように、蒸気噴射部10は装置本体カバー9のそれぞれの内面で4列が斜めに配置されている。各列の蒸気噴射部10は、図4の正面図に示すように3段の蒸気噴射口20を備えている。そして各蒸気噴射口20は、図3に示すようにそれぞれ一対で構成される。したがって蒸気噴射口20は、1列あたり2×3=6つあり、4列で24、左右で48備えられている。各蒸気噴射口20は図6に示すように、バー状に延長されたスリット状ノズルを構成する噴射口を備えており、蒸気配管11にそれぞれ連結されると共に、装置本体カバー9の対向面に位置する蒸気噴射口20と下端で連通され、蒸気供給配管12を介して蒸気源と連結される。蒸気源は、例えば6kg/cm2前後の加熱蒸気を供給し、蒸気噴射口20で1.5〜2.0kg/cm2の圧力となるよう減圧される。このように蒸気配管11は対向する蒸気噴射口20を相通するためにU字型に構成されている。中抜き屠体3の左右両側に配置される蒸気噴射口20は、蒸気源から得た加熱蒸気を膜状に放出する。加熱蒸気は水滴の状態を調整でき、付勢した水蒸気を所定の圧力で膜状に放出して図4に示すようなカーテン状のパターンに構成する。加熱水蒸気の圧力は、例えば0.5〜1.5kg/cm2、好ましくは0.7kg/cm2前後とする。あるいは、加熱水蒸気をスチーム状に噴霧することもできる。膜状の水蒸気は、図5の断面図に示すように厚み方向にも若干の広がりを持たせて放出される。図4の正面図において、装置本体カバー9の間の略中心を中抜き屠体3が搬送されるようにハンガーレール1とハンガー2は配置される。これによって、左右から勢いよく放出される加熱蒸気は均等に中抜き屠体3の左右に放射される。
【0025】
蒸気噴射部10は、スリット状ノズルを多く設けることによって、蒸気を均一に噴射することができる。例えば1列の蒸気噴射部に細長いスリットを一だけ設けたとすると、噴射される蒸気の圧力が一定とならず、蒸気配管に近い位置では圧力が高く、遠い位置では圧力が低くなって圧力にムラが生じてしまう。中抜き屠体に噴射される蒸気の圧力が強すぎると、断熱膨張が生じて逆に温度が下がってしまうので好ましくない。したがって、中抜き屠体に噴射される蒸気の圧力を均一にする必要がある。このため本実施の形態では、蒸気噴射口20の数を増やし噴射口の面積を大きくすると共に、噴射される蒸気が複数枚の膜状となるよう蒸気噴射口20を略平面状上に配置し、さらに各列の蒸気噴射部10を傾斜して配置することで、複数の膜状の蒸気噴射が交差することなく、連続的に中抜き屠体3に照射されるので、全体に圧力のムラなく均一に蒸気を照射することができ、理想的な状態で加熱される。
【0026】
図3に示すように、各蒸気噴射部10は等間隔で斜めに配置される。角度は40〜50°の範囲で、好ましくは装置の水平方向に対して45°前後で傾斜させ、かつ蒸気噴射部10の上端が鉛直方向から中抜き屠体3に向かう方向に傾斜させて固定される。これによって、図の左方向から搬送される中抜き屠体3は、図中で一点鎖線で示す蒸気噴射部10と交差する点で加熱蒸気により加熱殺菌洗浄される。中抜き屠体3の進行方向に従って、交差点は上端から下端に向かって走査するように移動するので、中抜き屠体3は上から下に向かって全体を洗浄するように加熱される。これによって、中抜き屠体3表面は上から下に洗い流され、また洗い流された滴の落下方向とも一致するので、効率よく加熱洗浄される。また、複数の蒸気噴射部10を並列に備えているため、中抜き屠体3は進行に従って繰り返し加熱蒸気を浴び、確実に加熱洗浄される。なお、加熱洗浄の際には、温度管理のみならず、加熱時間も考慮すべき要因となる。長時間の加熱では中抜き屠体3の肉質に悪影響を及ぼす可能性が高くなるが、この屠体殺菌装置4では、装置本体カバー9の間を通過させる間に加熱処理が終わり、さらに冷却も行われるため、肉質に影響を与えることのない短時間で加熱冷却の一連の処理を行うことができる。なお中抜き屠体3の加熱時間は、ラインの長さ、すなわち図3の側面図に示す装置本体カバー9の長手方向における蒸気噴射部10を配置した水平方向の距離によって決まる。このため、加熱時間内に所定の温度まで中抜き屠体3を加熱できるよう、蒸気量と排気量を最適値に調整する。
【0027】
このように中抜き屠体3の蒸気噴射部10の間を通過させて表皮面に加熱蒸気を噴射させることで、中抜き屠体3表面が弛緩されて毛穴を開くことができる。さらに屠体殺菌装置4は、図3に示すように4本の蒸気噴射部10に続いて2本の殺菌剤噴射部17を備えている。殺菌剤噴射部17も蒸気噴射部10と同様に斜めに配置される。殺菌剤噴射部17は、中抜き屠体3の左右から殺菌剤を噴射し、加熱蒸気で温められて開いた毛穴から殺菌剤を効率よく導入する。
【0028】
[殺菌剤]
殺菌剤は、次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸ソーダ等の殺菌効果の高い薬剤と水の混合物である。水の温度は、加熱蒸気の温度より低い常温冷水とし、例えば17℃付近とする。この温度の殺菌剤を噴射することで、殺菌剤を毛穴から充満させると共に、冷却による寒冷収縮により毛穴が閉じて殺菌剤を封じ込めることができる。さらに加熱された中抜き屠体3を冷却することができるので、次工程の冷却の前段階として中抜き屠体3の温度を降下させ、効率的に冷却させることにも貢献できる。なお、この例では殺菌剤として殺菌薬剤と冷水の混合水をノズル23から噴射しているが、ノズル23および供給路を殺菌薬剤用と冷水用で個別に設け、個別に中抜き屠体3に噴射する構成としても良い。
【0029】
[殺菌剤噴射部17]
殺菌剤噴射部17は、図7の正面図に示すように装置本体カバー9の両側にそれぞれ配置され、水配管16を介して下端で連通される。各殺菌剤噴射部17は多数のノズル23を備えており、水配管16によって外部の冷水源と連結される。ノズル23と冷水源との間は、水用制御弁18を介在させて冷水の供給量を制御される。さらに水配管16の途中には殺菌薬剤注入管19が設けられ、ここから次亜塩素酸ナトリウム等の殺菌薬剤が投入される。この構成によって、殺菌剤噴射部17はノズル23から殺菌剤をそれぞれ三角状あるいは扇状に噴射あるいは噴霧する。ノズル23から噴射される殺菌剤は、蒸気噴射部10と同様に膜状とされて、液体を複数のカーテン状にして散布する。あるいは、噴射される殺菌剤は、平面状でなく円錐状に放射してもよい。
【0030】
また冷水の供給量は、ノズルの数でも調整できる。供給量を多くするときはノズルの数を多くし、供給量を少なくするときはノズルの数を少なくする。ノズルは所定の個数を設ける他、予め多数設けておき、使用しないノズルを閉塞することもできる。好ましくは各ノズルから5〜7リットル/分、より好ましくは6リットル/分前後の水を供給する。ノズルの数で冷水の供給量を調整することで、中抜き屠体3に噴射する殺菌剤の圧力を維持し、所定の圧力で押圧、衝撃を与えて殺菌効果を高めることができる。各ノズルの圧力は、好ましくは1.5〜4kg/cm2、より好ましくは3.5kg/cm2とする。
【0031】
このようにして屠体殺菌装置4は、中抜き屠体3に加熱蒸気を噴射し、熱影響が及ぶ手前で制御することにより加熱殺菌すると共に毛穴を開き、さらに殺菌剤を噴射して毛穴から中抜き屠体3内部に効率的に殺菌剤を導入して殺菌効果を高める共に、冷水を混合した殺菌剤で冷却して寒冷収縮により毛穴を閉じ、殺菌剤を閉じこめるという一連の処理を、屠体殺菌装置4を通過させる間に連続的に実行できる。また加熱温度を制御することで食用中抜き屠体の肉質に影響を与えることなく確実に殺菌することができる。
【0032】
また、冷水を混合した殺菌剤で中抜き屠体3を冷却することで、一端加熱された中抜き屠体3を予冷することができる。例えば次工程として冷却装置や冷蔵装置、冷凍装置を屠体殺菌装置4に併設して、殺菌後の中抜き屠体3を冷却のためこれらの装置に搬送する態様において好ましい。後工程としての冷却は、例えばハンガー2から中抜き屠体3を外してパドルチラーに投入し、30分〜1時間冷却する。あるいは、氷水に中抜き屠体3を含浸してオーバーフローさせ、内部温度を4℃以下に保つ。
【0033】
[排気設備]
なお屠体殺菌装置4は、連続自動殺菌の際に蒸気を多量に使用するため、余剰蒸気が装置より漏れ出し、屋内に充満して室内の環境、衛生管理面に負担をかけるおそれがある。このため、屠体殺菌装置4は図2に示すように排気ダクト6、排気チャンバ5、排気ファン7を備えており、排気ファン7を回転させて排気ダクト6から吸気し、蒸気を排気チャンバ5に導入した後、屋外に排気する。また凝縮した水や洗浄水は、屠体殺菌装置4の下面に設けたドレンパン14で受け、排水口15より排水する。
【0034】
【実施例】
屠体殺菌装置を使って中抜き屠体の殺菌を行った検査結果を、表1及び表2のグラフに示す。これらの表において、検体番号1〜3は殺菌、洗浄、冷却処理を行う直前での中抜き屠体における細菌数である。また検体番号4〜6は殺菌、洗浄を行った直後での中抜き屠体における細菌数である。さらに、検体番号7〜9は殺菌、洗浄、冷却処理後での中抜き屠体の細菌数である。なおカウント数300以下について実測した値は、表中においてかっこ内に示す。また表中で「−」で示した欄は陰性、すなわち細菌が検出されなかったことを示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
上記の表に示すとおり、屠体殺菌装置によって殺菌処理することで、処理後の細菌数が減少していることが確認できた。特に一般細菌数は1桁近く、大腸菌群数は100桁近くの減少が確認され、これらの細菌の抑制に極めて効果が高いことが確認された。
【0038】
さらに、表3に屠体殺菌方法により中抜き屠体殺菌を行った別の検体10〜12につき、処理直後から10℃に維持して24時間、48時間、72時間経過後の細菌数を測定した。検査項目は、中抜き屠体から採取した部分について、それぞれの菌数をカウントしている。一般細菌数については標準寒天培地で混釈し、35℃48時間培養後、発生したコロニーをカウントした。大腸菌群類については、デソキシコレート寒天培地で混釈・重層し、35℃48時間培養後、発生した赤色コロニーをカウントした。黄色ブドウ球菌については、MESY寒天培地で35℃48時間培養後、卵黄反応コロニーを確認した。サルモネラ属菌については、DHL寒天培地で35℃24時間培養後、黒色コロニーを確認した。カンピロバクターについては、バツラー培地で43℃48時間微好気培養後、発生したコロニーの有無を確認した。この結果に示すように、いずれも極めて良好な結果を示しており、食用中抜き屠体の品質保持に上記の屠体殺菌装置による殺菌方法が極めて効果的であることを確認できた。
【0039】
【表3】
【0040】
【発明の効果】
以上のように、本発明の屠体殺菌装置及び屠体殺菌方法によれば、従来困難とされてきた冷却前の食用中抜き屠体の効果的な殺菌が実現でき、これによって中抜き屠体に生育、付着した微生物、細菌類の死滅、減少を図ることができ、安心できる食用中抜き屠体を提供できる。それは、本発明の屠体殺菌装置及び屠体殺菌方法が、加熱蒸気を噴射して中抜き屠体の毛穴を開き、この状態で温度の低い殺菌剤を噴射して毛穴から殺菌剤を投入すると共に、毛穴を収縮させて閉じ、殺菌剤を確実に中抜き屠体内に封入できるからである。さらに加熱によって肉質に悪影響を生じない温度及び時間に維持することで、加熱による品質低下を回避して品質の高い中抜き屠体を維持できる。さらにまた、一連の処理によって中抜き屠体は最終的に冷却されるので、例えば併設される冷却設備で冷蔵・冷凍保存する場合でも、予冷された中抜き屠体を効率よく冷却できるので、エネルギー効率も良い。このように本発明によれば、中抜き屠体の品質保持を向上させて食品の危害防止を図ることのできる優れた殺菌が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る屠体殺菌装置を示す斜視図である。
【図2】図1の屠体殺菌装置を正面から見た断面図である。
【図3】図1の屠体殺菌装置を側面から見た透視図である。
【図4】蒸気噴射部の噴射パターンを示す図3のIV−IV線における断面図である。
【図5】蒸気噴射部の噴射パターンを示す図3のV−V線における断面図である。
【図6】蒸気噴射口を示す平面図及び側面図である。
【図7】殺菌剤噴射部の噴射パターンを示す図3のVII−VII線における断面図である。
【符号の説明】
1・・・ハンガーレール
2・・・ハンガー
3・・・中抜き屠体
4・・・屠体殺菌装置
5・・・排気チャンバ
6・・・排気ダクト
7・・・排気ファン
8・・・蒸気用制御弁
9・・・装置本体カバー
10・・・蒸気噴射部
11・・・蒸気配管
12・・・蒸気供給配管
13・・・温度センサ
14・・・ドレンパン
15・・・排水口
16・・・水配管
17・・・殺菌剤噴射部
18・・・水用制御弁
19・・・殺菌薬剤注入管
20・・・蒸気噴射口
21・・・搬送部
22・・・インバータ
23・・・ノズル
24・・・可撓性シート
Claims (4)
- 食用動物の中抜き屠体(3)を冷蔵又は冷凍保存前に殺菌するための屠体殺菌装置であって、
一方向に搬送された中抜き屠体(3)に加熱蒸気を噴射する蒸気噴射部(10)と、
蒸気噴射部(10)で加熱された中抜き屠体(3)に加熱蒸気よりも低い温度の殺菌剤を噴射する殺菌剤噴射部(17)と、
を備えることを特徴とする屠体殺菌装置。 - 請求項1に記載の屠体殺菌装置であって、前記蒸気噴射部(10)及び殺菌剤噴射部(17)の少なくともいずれかは、中抜き屠体(3)に対し気体又は液体を膜状に噴射し、かつ膜状の気体又は液体が中抜き屠体(3)の搬送方向に対して垂直方向から斜めに傾斜するように構成されてなることを特徴とする屠体殺菌装置。
- 請求項1又は2に記載の屠体殺菌装置であって、前記蒸気噴射部(10)で噴射される加熱蒸気により屠体の雰囲気温度が、68℃〜75℃の範囲に制御されてなることを特徴とする屠体殺菌装置。
- 食用動物の中抜き屠体(3)を冷蔵又は冷凍保存前に殺菌する屠体殺菌方法であって、
一方向に搬送される中抜き屠体(3)に対して、加熱蒸気を噴射する工程と、
加熱蒸気で加熱された中抜き屠体(3)に加熱蒸気よりも低い温度の殺菌剤を噴射する工程と、
を備えることを特徴とする屠体殺菌方法。
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