JP2004329171A - 両軸受リールの発音装置 - Google Patents

両軸受リールの発音装置 Download PDF

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Takeshi Ikuta
剛 生田
Katsuji Nakagawa
勝二 中川
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Abstract

【課題】両軸受リールの発音装置において、発音時に固定部からリール本体への振動を伝わりにくくして音色をクリアにする。
【解決手段】両軸受リールのスプール発音装置27は、リール本体に回転自在に装着されたスプール15の回転に応じて発音する装置であって、第1発音部70と、第2発音部71と、振動吸収部72とを備えている。第1発音部70は、スプールの回転に連動して回転し、外周に凹凸部70aを有する。第2発音部71は、頭部80aを有するボルト80により第1カバー13にねじ止め固定される金属製の固定部75aを有し、凹凸部70aに先端が接触して振動する弾性を有するものである。振動吸収部72は、固定部75aと第1カバー13との間及び固定部75とボルト80の頭部80aとの間に配置されて振動を吸収する合成樹脂製のものである。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発音装置、特に、両軸受リールのリール本体に回転自在に装着されたスプールの回転に応じて発音する両軸受リールの発音装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
両軸受リールは、釣り竿の長手方向と食い違う軸回りに釣り糸を巻き取るリールである。両軸受リールは、釣り竿に装着されたリール本体と、リール本体に回転自在に装着されたハンドルと、リール本体に回転自在に支持された糸巻用のスプールと、ハンドルの回転をスプールに伝達する回転伝達機構と、回転伝達機構の途中に設けられたクラッチ機構と、クラッチ機構の状態に関わらずスプールを制動させるためのキャスティングコントロール機構と呼ばれる制動機構を備えている。
【0003】
この種の両軸受リールでクラッチ機構のオンオフにかかわらずスプールが回転すると発音するとともに、発音可能状態と発音不能状態とを切換可能な発音装置を備えたものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。前記従来の発音装置は、スプール軸に回転不能に装着されたギア部材と、リール本体に移動自在に装着される揺動軸と、揺動軸に揺動自在に装着され先端がギア部材に接触可能な爪部材と、揺動軸を移動させて爪部材を先端がギア部材に接触する発音位置と離反する離反位置とに移動させる切換部材と、リール本体にねじ止め固定される固定部を有し爪部材を中立位置に付勢するリング状のばね部材とを有している。
【0004】
爪部材は先細りの先端部と揺動中心となる基端部との間にくびれ部を有している。ばね部材は、開放端を有するC字状のばね部と、リール本体にねじ止め固定される固定部とを有している。ばね部材は、爪部材が発音位置にあるとき爪部材のくびれ部をばね部の開放端が挟み込む状態に配置され、爪部材を中立位置に付勢するとともに発音位置に保持する。また、爪部材が離反位置に配置されると、開放端が先細りの先端部を挟み込む状態に配置され、爪部材を離反位置に保持する。
【0005】
このような発音装置では、釣りを行っているときには爪部材を発音位置に配置する。この状態でスプールが回転すると、ばね部材により中立位置に付勢された爪部材がギア部材に接触して振動して発音する。仕掛けを投入するときや巻き上げるときには爪部材を離反位置に配置する。この状態ではスプールが回転しても爪部材がギア部材に接触しないので発音しない。このように切換操作をすると、仕掛けに魚がかかったときに発音によりそのことを報知できるとともに、仕掛けを投入するときや巻き上げるときに回転抵抗を小さくすることができる。また、ばね部材により爪部材を中立位置に付勢するとともに、発音位置と離反位置とに保持しているので、付勢構造が簡素になり、コストを低減できる。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−4731号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来のねじ止め固定されたばね部材を有する発音装置では、爪部材が振動するとばね部材も振動する。この振動がばね部材の固定部からリール本体に伝達され、リール本体やリール本体に装着された部品からも種々の音色の音が発生してクリアな音色が得られにくい。
【0008】
本発明の課題は、両軸受リールの発音装置において、発音時に固定部からリール本体への振動を伝わりにくくして音色をクリアにすることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明1に係る両軸受リールの発音装置は、両軸受リールのリール本体に回転自在に装着されたスプールの回転に応じて発音する装置であって、第1発音部と、第2発音部と、振動吸収部とを備えている。第1発音部は、スプールの回転に連動して回転し、外周に凹凸部を有するものである。第2発音部は、頭部を有するボルトによりリール本体にねじ止め固定される金属製の固定部を有し、凹凸部に先端が接触して振動する弾性を有するものである。振動吸収部は、固定部とリール本体との間及び固定部とボルトの頭部との間に配置されて振動を吸収する合成樹脂製のものである。
【0010】
この発音装置では、スプールが回転すると、第2発音部が凹凸部に接触して振動し、固定部を含む装置全体が発音する。ここでは、リール本体と固定部との間及びボルトの頭部と固定部との間に振動吸収部を配置したので、発音時に金属製の固定部の振動は、リール本体と固定部との間に配置された振動吸収部により吸収されリール本体に伝達されにくくなる。また、固定部からボルトを介して伝達される振動は、ボルトの頭部と固定部との間に配置された振動吸収部により吸収されリール本体に伝達されにくくなる。このため、第2発音部が第1発音部に接触して振動する音だけが他に比べて大きな音で発生しクリアな音色が得られやすい。
【0011】
発明2に係る両軸受リールの発音装置は、発明1に記載の装置において、振動吸収部は、リール本体と固定部との間に配置される第1シート部材と、固定部とボルトの頭部との間に配置される第2シート部材とを有する。この場合には、2枚のシート部材をリール本体と固定部との間及び頭部と固定部との間に装着してねじ止め第2発音部とともに固定することにより、簡素な構成で振動の伝達を抑えることができる。
【0012】
発明3に係る両軸受リールの発音装置は、発明1に記載の装置において、振動吸収部は、少なくとも固定部の周囲を覆うように成形された成形部材を有する。この場合には、たとえば固定部の周囲にアウトサート成形などの成形方法により成形部材を一体形成することにより、第2発音部をねじ止め固定するだけで振動の伝達を抑えることができる。
【0013】
発明4に係る両軸受リールの発音装置は、発明1から3のいずれかに記載の装置において、第1発音部は、スプールが回転不能に装着されたスプール軸に回転不能に装着されている。この場合には、比較的径が細いスプール軸に第1発音部が装着されているので、第1発音部の径が小さくなり軽量化を図ることができるとともに、スプール軸と連動する部材に装着されている場合に比べて構成が簡素になる。
【0014】
発明5に係る両軸受リールの発音装置は、発明1から4のいずれかに記載の装置において、第2発音部は、リール本体に設けられた揺動軸と、揺動軸に揺動自在に装着され先端が凹凸部に接触可能な爪部材と、固定部を有し、爪部材を凹凸部に接触する中立位置に向けて付勢する金属製の付勢部材とを有する。この場合には、揺動軸に装着された爪部材が付勢部材により中立位置に付勢されているので、第1発音部が回転すると付勢部材に付勢された爪部材が凹凸部との接触を繰り返して振動して発音する。ここでは、第2発音部を付勢する部材と揺動軸と揺動して振動する部材とに分けたので音色がよりクリアになる。
【0015】
発明6に係る両軸受リールの発音装置は、発明5に記載の装置において、揺動軸は、爪部材を先端が凹凸部に接触する発音位置と凹凸部から離反する離反位置との間で移動させるように、第1発音部と接離する方向に移動自在にリール本体に設けられている。この場合には、揺動軸が移動することにより爪部材を発音可能な発音位置と発音不能な離反位置とに切り換えることができる。このため、釣りをしているときにアタリをとるためなどの発音が必要なときと、仕掛けを投入するときや巻き上げるときに回転抵抗を小さくするときなどの発音が不要なときとに応じて発音装置を切り換えできる。
【0016】
発明7に係る両軸受リールの発音装置は、発明6に記載の装置において、爪部材は、先端に形成され凹凸部に接触する先細りの接触部と、揺動軸に装着される装着部と、接触部と装着部との間に配置されたくびれ部とを有し、付勢部材は、固定部と、固定部から爪部材のくびれ部を両側から挟むように湾曲して形成され先端が対向して配置されたばね部とを有し、爪部材が発音位置にあるとき、ばね部の先端がくびれ部に両側から当接して付勢部材が爪部材を中立位置に向けて付勢するとともに揺動自在に発音位置に保持し、爪部材が離反位置にあるとき、ばね部の先端が先細りの接触部に両側から接触して付勢部材が爪部材を離反位置に保持する。この場合には、爪部材が発音位置にあるとき、ばね部が爪部材を発音位置に保持した状態で中立位置に付勢して凹凸部との衝突により振動を繰り返して発音することができるとともに、凹凸部との衝突による爪部材の離反位置側への移動を抑えることができる。また、離反位置での爪部材の発音位置への移動も抑えることができ、爪部材の付勢構造を簡素化できコストを削減できる。
【0017】
発明8に係る両軸受リールの発音装置は、発明7に記載の装置において、付勢部材の固定部は、第1発音部を挟んで揺動軸と逆側に配置されている。この場合には、第1発音部を挟んで固定部が揺動軸と逆側に配置されているので、第1発音部を挟んで第1発音部を配置でき、リール内部に発音装置をコンパクトに配置できる。
【0018】
発明9に係る両軸受リールの発音装置は、発明6から8のいずれかに記載の装置において、揺動軸は、爪部材が揺動自在に装着される先端に形成された揺動支持部と、リール本体の外方に露出して移動操作するために基端に形成された操作部とを有する。この場合には、揺動軸をリール本体の外方から操作できるので、発音装置を発音可能状態と発音不能状態とに切り換える操作が容易になる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1において、本発明の一実施形態による両軸受リールは、たとえば、5号の釣り糸を300m程度巻き付け可能な中型の丸型のリールである。両軸受リールは、リール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用のハンドル組立体2と、ハンドル組立体2のリール本体1側に配置されたスタードラグ(操作部材の一例)3とを備えている。なお、この両軸受リールは、レベルワインド機構は有していない。
【0020】
リール本体1には、スプール15が回転自在に装着されている。リール本体1は、竿取付脚4を介して釣り竿RDに装着され得る。リール本体1は、図1及び図2に示すように、所定の間隔をあけて配置された左右1対の側板10,11と側板10,11を連結する複数の連結部材12とを有するフレーム5と、フレーム5の両側方に装着された第1カバー13及び第2カバー14と、第2カバー14に装着された機構装着板16(図2)とを有している。機構装着板16は側板11に接触して配置され、機構装着板16と第2カバー14との間には、後述する各種機構を収納するための空間が形成されている。
【0021】
フレーム5はダイキャスト成形により得られ、第2カバー14は、金属薄板をプレス成形して得られる。1対の側板10,11及び第1カバー13は、それぞれ側面から見て円形をなしており、外周面はたとえば旋盤等を用いて機械加工されている。第2カバー14及び機構装着板16は、側面から見て円形の一部が径方向に突出した形状である。第2カバー14は、ハンドル軸30(後述)の装着部分を中心に軸方向外方にも膨出している。
【0022】
連結部材12は、両側板10,11の外周に沿う形状で両側板10,11と一体で形成された板状の部材であり、たとえばリール本体1の後部と下部と前部との3か所(図1)で1対の側板10,11を連結している。このように側板10,11と複数の連結部材12とを一体で形成することで、リール本体1に大きな荷重が作用しても撓み等の変形が生じがたく、巻上げ効率の低下が抑制される。この連結部材12の外周部と側板10,11とは一体で、第1カバー13と同様に機械加工されている。
【0023】
下部の連結部材12には竿取付脚4が固定されている。竿取付脚4は、フレーム5の側板10,11間の中心位置に沿って配置されている。この中心位置は、スプール15の糸巻取部の中心位置でもある。
ハンドル組立体2は、図1に示すように、ハンドル軸30の先端に回転不能に装着されたクランクアーム6と、クランクアーム6の一端にクランクアーム6の一端部と直交する軸回りに回転自在に装着されたハンドル把手7とを有している。クランクアーム6は、ハンドル把手7側がリール本体1に接近するように途中で折れ曲がっている。
【0024】
スプール15は、図2に示すように、1対の側板10,11間に回転自在に配置されている。スプール15は、糸巻胴部15aと、糸巻胴部15aの両端に一体で形成されたフランジ部15bとを有している。スプール15の中心にはスプール軸25が貫通して固定されている。スプール軸25は第1カバー13及び機構装着板16に軸受24a,24bを介して回転自在に支持されている。
【0025】
機構装着板16と第2カバー14の間の空間には、ハンドル組立体2からのトルクをスプール15に伝えるための回転伝達機構20と、回転伝達機構20の途中に設けられたクラッチ機構21と、クラッチ機構21をオンオフ操作するためのクラッチ操作機構22とが配置されている。
回転伝達機構20は、スプール15からハンドル組立体2側にトルクが逆に伝達された場合のトルクを規制するための回転制御機構23を含んでいる。側板10の外側で第1カバー13内には、クラッチ機構21の状態に関わらずスプール15の糸繰り出し方向の逆転を禁止する逆転禁止状態と許可する逆転許可状態に切換可能なスプールロック機構26と、スプール15の回転時に発音する発音可能状態と発音不能状態とに切換可能なスプール発音機構27とが配置されている。
【0026】
回転伝達機構20は、一端にハンドル組立体2が固定されたハンドル軸30と、ハンドル軸30の他端に回転制御機構23を介して連結されたメインギア31と、メインギア31に噛み合うピニオンギア32とを有している。
ハンドル軸30は、スプール軸25と平行に配置されており、一端側が機構装着板16に回転自在に支持されている。メインギア31は、ハンドル軸30に対して回転自在に装着されており、ハンドル軸30の一端側に回転制御機構23を介して相対回転不能に連結することが可能である。このような構成では、クラッチ機構21がオンされた状態では、ハンドル組立体2からのトルクがメインギア31及びピニオンギア32を介してスプール15に直接伝達される。
【0027】
クラッチ機構21は、スプール軸25の外周部にスライド自在に装着された筒状のピニオンギア32と、ピニオンギア32の一部に配置された係合溝32aと、スプール軸25に配置されたピン33とを有している。スプール軸25に沿ってピニオンギア32を摺動させて、係合溝32aをピン33と係合すれば、スプール軸25とピニオンギア32との間で回転力が伝達される。この状態が連結状態(クラッチオン状態)である。係合溝32aとピン33の係合を外せば、スプール軸25とピニオンギア32との間で回転力は伝達されない。この状態が遮断状態(クラッチオフ状態)である。クラッチオフ状態では、スプール15は自由に回転する。ピニオンギア32は、クラッチ操作機構22により係合溝32aとピン33とが係合する方向すなわちクラッチオン状態に付勢されている。クラッチ操作機構22は、リール本体1の第2カバー14に連結姿勢と遮断姿勢との間で揺動自在に装着されたクラッチレバー35を備えている。
【0028】
回転制御機構23は、ハンドル軸30を糸巻取方向にのみ回転させる(糸繰り出し方向の回転を禁止する)ローラ型のワンウェイクラッチ機構40と、スプール15の糸繰り出し方向の回転に対して設定したドラグ力を作用させるためのドラグ機構42と、ハンドル軸30を糸巻取方向にのみ回転させる爪式のラチェット機構44とを有している。
【0029】
なお、ハンドル軸30の逆転(糸繰り出し方向の回転)を禁止するだけであれば、ラチェット機構44のみを設けてワンウェイクラッチ機構40を省いてもよい。しかし、ラチェット機構44は、ラチェット爪がラチェットホイールに噛み合ったり外れたりする動作にある程度の時間がかかる。釣りの動作に要求される迅速で滑らかな逆転禁止動作を果たすには、前記のようなローラ型のワンウェイクラッチ機構40が好ましく、ワンウェイクラッチ機構40では負担できないような過大な力をラチェット機構44で負担することが有効である。
【0030】
ドラグ機構42は、ハンドル軸30に螺合するスタードラグ3の操作によりクラッチオン時にドラグ力を調整可能である。ドラグ機構42は、メインギア31と、ワンウェイクラッチ機構40に隣接して配置された配置されたディスク部材45と、メインギア31とディスク部材45との間に配置された複数枚のドラグディスク46とを有している。ディスク部材45は、ワンウェイクラッチ機構40の内輪に回転不能に係止され、糸繰り出し方向の回転が禁止されている。このディスク部材45に複数枚のドラグディスク46を介してメインギア31を圧接することで、ドラグ機構42は、メインギア31を介してスプール15に糸繰り出し時にドラグ力を作用させる。
【0031】
スプールロック機構26は、クラッチ機構21の状態に関わらずスプール15の糸繰り出し方向の逆転を禁止可能であり、逆転禁止状態と逆転許可状態とに切換可能な機構である。スプールロック機構26を逆転禁止状態にするとスプール15が完全にロックされるので、仕掛けが根掛かりしたときなどに釣り糸を切断するのに便利である。
【0032】
スプールロック機構26は、図3に示すように、スプール軸25の係合部25b(後述)に回転不能に装着されたラチェットホイール50と、ラチェットホイール50に噛み合うラチェット爪51とを有している。ラチェット爪51は、図4に示すように、第1カバー13の裏面に突出して形成された揺動ピン13aに揺動自在に装着されている。ラチェット爪51は、図3及び図4に示す切換操作部材60によりラチェットホイール50に噛み合うロック位置と離反するロック解除位置とに移動する。
【0033】
具体的には、切換操作部材60は、第1カバー13の裏面に固定された押さえ板61により抜け止めされた状態で左右に移動自在に第1カバー13に装着されている。この切換操作部材60の裏面に切換軸62が押さえ板61を貫通して装着されている。切換軸62は、揺動ピン13aにラチェット爪51とともに揺動自在に装着された切換アーム63の一端に係止されている。この結果、切換アーム63は、切換操作部材60の左右の移動により揺動する。切換アーム63の他端はラチェット爪51に係止されており、ラチェット爪51は、切換操作部材60の左右の移動により揺動して他端に係止されたラチェット爪51をラチェットホイール50に噛み合うロック位置とラチェットホイールから離反するロック解除位置とに揺動する。このラチェット爪51がラチェットホイール50に噛み合うと、スプール軸25を介してスプール15が逆転不能なロック状態になる。しかし、糸巻取方向の回転はロック状態でも可能である。
【0034】
スプール発音機構27は、スプール15の回転に応じて発音可能でありかつ発音可能な状態と発音不能な状態とに切換可能な機構である。スプール発音機構27は、図3及び図5に示すように、スプール軸25に回転不能に装着され外周に凹凸部70aを有する第1発音部70と、頭部80aを有するたとえば2本のボルト80により第1カバー13の裏面にねじ止め固定される金属製の固定部75aを有し、凹凸部70aに先端が接触して振動する弾性を有する第2発音部71と、固定部75aと第1カバー13との間及び固定部75aとボルト80の頭部80aとの間に配置されて振動を吸収する合成樹脂製の振動吸収部72とを有している。
【0035】
第1発音部70は、ラチェットホイール50よりスプール15側でスプール軸に回転不能に装着されている。第1発音部70は、外周面に周方向に間隔を隔ててギア歯形状の多数の凹凸部70aが並べて形成された円板状の金属製の部材である。第1発音部70の内周部には、長円形の係止孔70bが形成されている。スプール軸25には、図5及び6に示すように、互いに平行な面取り部25aを含む長円形の軸断面を有する係合部25bが形成されており、係止孔70bが係合部25bに装着されることにより、第1発音部70がスプール軸25に回転不能に係合する。これにより、第1発音部70がスプール軸25に回転不能に装着されている。
【0036】
第2発音部71は、第1カバー13に左右に移動自在に装着された揺動軸73と、揺動軸73に揺動自在に装着され先端が凹凸部70aに接触可能な爪部材74と、爪部材74を凹凸部70aに接触する中立位置に向けて付勢する付勢部材75とを有している。
揺動軸73は、爪部材74を先端が凹凸部70aに接触する発音位置と凹凸部70aから離反する離反位置との間で移動させるように、第1発音部70と接離する方向に移動自在に第1カバー13に設けられている。揺動軸73は、第1カバー13の裏面に内方に突出して形成された第1突起部13bに装着されている。第1突起部13bには、左右に長い長孔部13cが形成されており、揺動軸73は、長孔部13cに左右に案内支持された丸棒状の揺動支持部81と、揺動支持部81の先端に形成され揺動支持部81より大径の操作部82とを有している。揺動支持部81は第1突起部13bよりやや長い軸長を有しており、第1突起部13bから内方に突出している。この突出部分に間座部材85を介して2枚のワッシャ83,84に挟まれた爪部材74が揺動自在に装着されている。爪部材74は、たとえばE形止め輪86により抜け止めされている。
【0037】
操作部82は、第1カバー13の外方に露出して配置されており、揺動軸73を第1カバー13の外から2つの位置に移動操作できる。
爪部材74は、金属製の部材であり、図6及び図7に示すように、先端に形成され凹凸部70aに接触する先細りの尖った接触部74aと、揺動軸73の揺動支持部81の先端に揺動自在に装着される装着部74bと、接触部74aと装着部74bとの間に配置されたくびれ部74cとを有している。爪部材74は、図6に示す凹凸部70aに接触部74aが接触する発音位置と、図7に示す凹凸部70aから離反する離反位置とに揺動軸73の移動操作により移動する。
【0038】
付勢部材75は、第1カバー13の裏面から突出する長円断面の第2突起部13dにボルト80により固定される固定部75aと、固定部75aから爪部材74のくびれ部74cを両側から挟むように湾曲して形成され先端が対向して配置されたばね部75bとを有する金属製のばね部材である。
固定部75aは、ばね部75bと一体形成され、ばね部75bから折り曲げて形成されている。固定部75aは、第1発音部70を挟んで揺動軸73と逆側に配置されている。ばね部75bは、C形に湾曲しており、爪部材74が発音位置にあるとき先端の開放端がくびれ部74cを挟んで対向して配置されている。付勢部材75は、爪部材74が発音位置にあるとき、ばね部75bの先端がくびれ部74cに両側から当接して爪部材74を中立位置に向けて付勢するとともに揺動自在に発音位置に保持する。このため、発音時に爪部材74に離反位置に向けて後退するような力が作用しても爪部材74は発音位置に保持される。また、付勢部材75は、爪部材74が離反位置にあるとき、ばね部75bの先端が先細りの接触部74aに両側から接触して爪部材74を離反位置に保持する。ここでは、付勢部材75により爪部材74を凹凸部70aに接触する中立位置へ付勢するとともに、爪部材74を発音位置と離反位置とで保持している。このため、爪部材74の付勢と位置保持とをひとつの付勢部材75で実現でき、爪部材の付勢構造を簡素化できる。
【0039】
振動吸収部72は、たとえば、6ナイロンやポリアセタール樹脂などの比較的軟質の弾性を有する合成樹脂製の部材であり、振動を吸収しやすい部材である。振動吸収部72は、第1カバー13と固定部75aとの間に配置される第1シート部材72aと、固定部75aとボルト80の頭部80aとの間に配置される第2シート部材72bとを有している。両シート部材72a,72bは、長円形の部材であり、2本のボルト80が貫通する貫通孔72c,72dが両端近傍に間隔を隔てて形成されている。
【0040】
このように構成された両軸受リールでは、スプール15の回転による発音時に金属製の固定部75aの振動は、第2突起部13dと固定部75aとの間に配置された第1シート部材72aにより吸収され第1カバー13に伝達されにくくなる。また、固定部75aからボルト80を介して伝達される振動は、ボルト80の頭部80aと固定部75aとの間に配置された第2シート部材72bにより吸収され第1カバー13に伝達されにくくなる。このため、第2発音部71が第1発音部70に接触して振動する音だけが他に比べて大きな音で発生し、クリアな音色が得られやすい。
【0041】
次に、リールの動作について説明する。
釣りを行う前には、スタードラグ3を回転させてドラグ力を調整する。
釣り糸を繰り出す時には、スプール発音機構27を発音不能状態にしてスプール15に作用する抵抗力を減少させる。もちろん、スプールロック機構26は、ロック解除状態にする。そして、クラッチレバー35によりクラッチ機構21をクラッチオフ状態にする。
【0042】
スプール発音機構27を発音不能状態にするには、揺動軸73の操作部82を図4に2点鎖線で示す位置に移動させる。すると、爪部材74が図7に示す離反位置に配置され、スプール発音機構27が発音不能状態になる。
仕掛けが所定の棚に到達しアタリを待つ際には、操作部82を図4に実線で示す位置に移動させる。すると、爪部材74が図6に示す発音位置に配置され、スプール発音機構27が発音可能状態になる。
【0043】
魚がかかると、スプール15が糸繰り出し方向に回転して間隔が短い大きな音をスプール発音機構27が発する。すると、釣り人はクラッチレバー35を操作してクラッチ機構21をオン状態にしドラグ機構42を作動状態にする。そして、合わせを行い、操作部82を発音不能位置側に操作して巻き上げ時の回転抵抗を少なくした状態でハンドル組立体2によりスプール15を糸巻取方向に回転させて魚を取り込む。
【0044】
ここでは、仕掛けに魚がかかったりしてスプール15が回転して発音するとき、金属製の固定部75aの振動は、第2突起部13dと固定部75aとの間に配置された合成樹脂製の第1シート部材72aにより吸収され第1カバー13に伝達されにくくなる。また、固定部75aからボルト80を介して伝達される振動は、ボルト80の頭部80aと固定部75aとの間に配置された合成樹脂製の第2シート部材72bにより吸収されやはり第1カバー13に伝達されにくくなる。このため、第2発音部71が第1発音部70に接触して振動する音だけが他に比べて大きな音で発生し、クリアな音色が得られやすい。
【0045】
〔他の実施形態〕
(a)前記実施形態では、2枚のシート部材72a,72bにより振動吸収部72を構成したが、図8に示すように、少なくとも固定部75aの周囲を覆うように成形された合成樹脂製の成形部材91により振動吸収部90を構成してもよい。この実施形態では、ばね部75bの一部も成形部材91により覆っている。この場合、付勢部材75に成形部材91をアウトサート成形してもよい。このような振動吸収部90では、付勢部材75をボルト80によりねじ止め固定するだけで振動の伝達を抑えることができる。
【0046】
(b)前記実施形態では、第2発音部を揺動軸と爪部材と付勢部材とで構成したが、第2発音部をばね部材だけで構成してもよい。また、第2発音部を第1発音部に常に接触するように構成してもよい。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、リール本体と固定部との間及びボルトの頭部と固定部との間に振動吸収部を配置したので、発音時に金属製の固定部の振動は、リール本体と固定部との間に配置された振動吸収部により吸収されリール本体に伝達されにくくなる。また、固定部からボルトを介して伝達される振動は、ボルトの頭部と固定部との間に配置された振動吸収部により吸収されリール本体に伝達されにくくなる。このため、第2発音部が第1発音部に接触して振動する音だけが他に比べて大きな音で発生しクリアな音色が得られやすい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を採用した両軸受リールの斜視図。
【図2】その断面図。
【図3】リール左側部分の各機構の分解斜視図。
【図4】リールの左側の側面図。
【図5】図4のV−V断面拡大図。
【図6】爪部材が発音位置にあるときの側面断面図。
【図7】爪部材が離反位置にあるときの側面断面図。
【図8】他の実施形態の図6に相当する図。
【符号の説明】
1 リール本体
15 スプール
27 スプール発音機構
70 第1発音部
71 第2発音部
72,90 振動吸収部
72a 第1シート部材゛
72b 第2シート部材
73 揺動軸
74 爪部材
74a 接触部
74b 装着部
74c くびれ部
75 付勢部材
75a 固定部
75b ばね部
80 ボルト
80a 頭部
81 揺動支持部
82 操作部
91 成形部材

Claims (9)

  1. 両軸受リールのリール本体に回転自在に装着されたスプールの回転に応じて発音する両軸受リールの発音装置であって、
    前記スプールの回転に連動して回転し、外周に凹凸部を有する第1発音部と、
    頭部を有するボルトにより前記リール本体にねじ止め固定される金属製の固定部を有し、前記凹凸部に先端が接触して振動する弾性を有する第2発音部と、
    前記固定部と前記リール本体との間及び前記固定部と前記ボルトの頭部との間に配置されて振動を吸収する合成樹脂製の振動吸収部と、
    を備えた両軸受リールの発音装置。
  2. 前記振動吸収部は、
    前記リール本体と前記固定部との間に配置される第1シート部材と、
    前記固定部と前記ボルトの頭部との間に配置される第2シート部材とを有する、請求項1に記載の両軸受リールの発音装置。
  3. 前記振動吸収部は、少なくとも前記固定部の周囲を覆うように成形された成形部材を有する、請求項1に記載の両軸受リールの発音装置。
  4. 前記第1発音部は、前記スプールが回転不能に装着されたスプール軸に回転不能に装着されている、請求項1から3のいずれかに記載の両軸受リールの発音装置。
  5. 前記第2発音部は、
    前記リール本体に設けられた揺動軸と、
    前記揺動軸に揺動自在に装着され先端が前記凹凸部に接触可能な爪部材と、
    前記固定部を有し、前記爪部材を前記凹凸部に接触する中立位置に向けて付勢する金属製の付勢部材とを有する、請求項1から4のいずれかに記載の両軸受リールの発音装置。
  6. 前記揺動軸は、前記爪部材を先端が前記凹凸部に接触する発音位置と前記凹凸部から離反する離反位置との間で移動させるように、前記第1発音部と接離する方向に移動自在に前記リール本体に設けられている、請求項5に記載の両軸受リールの発音装置。
  7. 前記爪部材は、
    先端に形成され前記凹凸部に接触する先細りの接触部と、前記揺動軸に装着される装着部と、前記接触部と装着部との間に配置されたくびれ部とを有し、
    前記付勢部材は、
    前記固定部と、前記固定部から前記爪部材の前記くびれ部を両側から挟むように湾曲して形成され先端が対向して配置されたばね部とを有し、
    前記爪部材が発音位置にあるとき、前記ばね部の先端が前記くびれ部に両側から当接して前記付勢部材が前記爪部材を前記中立位置に向けて付勢するとともに前記揺動自在に前記発音位置に保持し、
    前記爪部材が離反位置にあるとき、前記ばね部の先端が先細りの前記接触部に両側から接触して前記付勢部材が前記爪部材を離反位置に保持する、請求項6に記載の両軸受リールの発音装置。
  8. 前記付勢部材の固定部は、前記第1発音部を挟んで前記揺動軸と逆側に配置されている、請求項7に記載の両軸受リールの発音装置。
  9. 前記揺動軸は、前記爪部材が揺動自在に装着される先端に形成された揺動支持部と、前記リール本体の外方に露出して移動操作するために基端に形成された操作部とを有する、請求項6から8のいずれかに記載の両軸受リールの発音装置。
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