JP2004329014A - 偽造行為防止機能を備えた識別手段を付加する識別添加物質及び識別情報保持物並びに識別情報保持物の不正使用検出方法 - Google Patents
偽造行為防止機能を備えた識別手段を付加する識別添加物質及び識別情報保持物並びに識別情報保持物の不正使用検出方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】偽造行為防止機能を備えた識別手段を付加する識別添加物質及び識別情報保持物並びに識別情報保持物の不正使用検出方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる識別添加物質(10)は、識別DNA塩基配列(10a)からなり、識別情報部(11)と、該識別情報部の両端にあり、該識別情報部の座位を示す位置情報を備えかつその塩基配列情報が秘匿された位置情報部(12a,12b)とを有することを特徴とする。該識別DNA塩基配列に加え、1種類又は複数種類のダミーDNA塩基配列(10b)を備えるものであってもよい。本発明にかかる識別情報保持物(20)は、該識別添加物質を含有するものである。本発明にかかる、識別情報保持物の不正使用検出方法は、該識別DNA塩基配列と該ダミーDNA塩基配列とからなる識別添加物質を識別情報保持物に添加することを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明にかかる識別添加物質(10)は、識別DNA塩基配列(10a)からなり、識別情報部(11)と、該識別情報部の両端にあり、該識別情報部の座位を示す位置情報を備えかつその塩基配列情報が秘匿された位置情報部(12a,12b)とを有することを特徴とする。該識別DNA塩基配列に加え、1種類又は複数種類のダミーDNA塩基配列(10b)を備えるものであってもよい。本発明にかかる識別情報保持物(20)は、該識別添加物質を含有するものである。本発明にかかる、識別情報保持物の不正使用検出方法は、該識別DNA塩基配列と該ダミーDNA塩基配列とからなる識別添加物質を識別情報保持物に添加することを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セキュリティ管理における個人の識別や商品の真偽鑑定などに利用する識別情報保持物に関する。
【0002】
【従来の技術】
記録された情報が第三者に容易に盗み取られることを防止するための手段として、本出願人は、特願2001−355502号にかかる、識別手段を付加する添加物(識別添加物質)及びその添加物(識別添加物質)を含有する識別情報保持物を考案している。
【0003】
上記識別手段を付加する識別添加物質は、複数の記号が複数のパターン(例えば00、01、10、11のパターン)で繰り返し出現して構成される識別情報に従って、その所定のパターン毎に特定の物質を対応させて構成したものからなる。また、上記識別情報保持物は、任意の物にこの識別添加物質を含有させたものである。
【0004】
この識別情報保持物によれば、識別添加物質を構成する物質の配列を分析し各物質に対応するパターンの記号を当てはめることにより、識別をしようとする者が識別情報を得られるようにすることができる。この際、識別情報は分析作業によらなければ得ることができないので、簡単な操作で容易に盗み取られるおそれがない。
【0005】
特に、上記識別添加物質より製造する識別情報保持物において、識別情報に従って構成される識別添加物質を識別DNA塩基配列(例えば人工DNA)とした場合、識別情報を識別精度の高いものにでき、しかも確立された統一手法、すなわちDNAの分析技術を情報抽出に適用することができるという利点がある。
【0006】
【特許文献1】
特願2001−355502号
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記識別添加物質より製造する識別情報保持物によれば、識別情報に従って構成される識別添加物質を識別DNA塩基配列とした場合、そこに記録された情報は、DNA増幅技術に精通した第三者に読み取られるおそれがあった。そして、ある程度の時間と技術が必要とされるものの、その読み取った情報に基づいて、識別情報保持物そのものが第三者により偽造されるおそれがあった。
【0008】
また、識別情報に従って構成される識別添加物質がどのようなものであっても、識別情報の読み取られるおそれがあるかどうかに関わらず、識別情報保持物そのものが第三者により偽造されるおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明は、 偽造行為防止機能を備えた識別手段を付加する識別添加物質及び識別情報保持物並びに識別情報保持物の不正使用検出方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる、第一の識別添加物質は、複数の記号が複数のパターンで繰り返し出現して構成される識別情報に従って、該所定のパターン毎にアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)を対応させて構成した識別DNA塩基配列からなり、識別情報部と、該識別情報部の両端にあり、該識別情報部の座位を示す位置情報を備えかつその塩基配列情報が秘匿された位置情報部とを有することを特徴とする。
また、本発明にかかる第一の識別情報保持物は、この第一の識別添加物質を含有することを特徴とする。
【0011】
この第一の識別添加物質及び第一の識別情報保持物によれば、識別情報部の位置(座位)を示す位置情報部(例えばプライマ)のDNA塩基配列情報が秘匿されているため、識別DNA塩基配列を第三者が増幅させる場合、適当なプライマを使用しながら試行錯誤で作業することになる。そのため、第三者が行う増幅作業に要する時間や費用を増加させ、偽造行為を抑制できる
なお、本発明において識別DNA塩基配列は、位置情報部を識別情報部の両端に備えている。すなわち、位置情報部のDNA塩基配列は、互いに異なる配列(後述の12a、12b)となっており、増幅しようとする識別情報部の両端の座位を特定することができる。
【0012】
本発明にかかる、第二の識別添加物質は、識別DNA塩基配列と1種類又は複数種類のダミーDNA塩基配列とからなることを特徴とする。すなわち、上記第一の識別添加物質に、アデニン、シトシン、グアニン、チミンで構成した1種類又は複数種類のダミーDNA塩基配列を加えたものである。
また、本発明にかかる第二の識別情報保持物は、この第二の識別添加物質を含有することを特徴とする。
【0013】
この第二の識別添加物質及び第二の識別情報保持物によれば、識別DNA塩基配列(識別情報部及び位置情報部)の塩基配列を知らない第三者が、ランダム・プライマ(多用途プライマ)を使用して識別DNA塩基配列の増幅を試みた際に、複数種類加えてあるダミー塩基配列は増幅される確率が高くなる。そして、増幅されたダミーDNA塩基配列を真の識別DNA塩基配列と誤解させ、識別DNA塩基配列の増幅を防止することにより、偽造行為を抑制できる。
【0014】
本発明にかかる、第二の識別添加物質及び第二の識別情報保持物において、該識別DNA塩基配列は、1本鎖又は2本鎖のみが存在するものであってもよい。また、該ダミーDNA塩基配列は各種毎に1本鎖又は2本鎖のどちらか一方の形態のみが存在するものであってもよく、或いは1本鎖及び2本鎖の両形態が存在するものであってもよい。
ファージや大腸菌を用いてプラスミドを増やす方法によれば、位置情報部の配列を知らない第三者であっても識別DNA塩基配列を増幅させることができる可能性がある。しかしながら、この方法では、環状DNAであるベクター・プラスミドが取り込むことができるのは2本鎖のみである。従って、この方法に対しては、2本鎖のダミー塩基配列を存在させておくことにより、ダミーDNA塩基配列を増幅させ、識別DNA塩基配列の増幅を防止できる。そして、偽造行為を抑制できる。また、この方法に対しては、識別DNA塩基配列を1本鎖のみとしておけば、ダミーDNA塩基配列のみが増幅されることになり偽造行為を更に有効に抑制できる。
一方、ランダム・プライマを使用する方法では、1本鎖及び2本鎖の双方の塩基配列が増幅されることになるため、ダミーDNA塩基配列が増幅される確率を高めるために、1本鎖と2本鎖の双方の形態を存在させることが有効である。
【0015】
該識別DNA塩基配列は、1本鎖及び2本鎖の両形態が存在するものであってもよい。
この場合、1本鎖及び2本鎖の両形態が共に偽造される確率は極めて低いことから、これら両形態が確認できるもののみを真の識別添加物質又は識別情報保持物とすることで、その識別をより確実なものとすることができる。ただし、これら両形態を存在させるためのコストは、一方の形態のみを存在させるコストよりも高くなる。
【0016】
該識別DNA塩基配列は複数種類が存在するものであってもよい。
この場合、複数種類全ての塩基配列が確認できるもののみを真の識別添加物質又は識別情報保持物と判断することで、その識別を更に確実なものとすることができる。ただし、複数種類を存在させるためのコストは、一の形態のみを存在させるコストよりも高くなる。
【0017】
本発明にかかる、第三の識別情報保持物は、複数の記号が複数のパターンで繰り返し出現して構成される識別情報に従って、該所定のパターン毎に特定の物質を対応させて構成した、識別手段を付加する識別添加物質と、所定の手段でのみ検知される属性識別用添加物を含有することを特徴とする。
【0018】
この第三の識別情報保持物によれば、属性識別用添加物が検知されたかどうかによって識別情報保持物の真偽を判定できる。また、もし属性識別用添加物も含めて偽造されたものが流通した場合でも、正規の識別情報保持物において偽造されたものと異なる属性識別用添加物を使用し検知手段を変えることにより、真偽の判定をすることが可能となる。
【0019】
本発明にかかる、第三の識別情報保持物において、該所定の手段は、光学的手段、電磁的手段、熱的手段又は化学的手段のいずれかであってもよい。
この場合、検知手段として公知の技術を利用することができる。
【0020】
本発明にかかる、識別情報保持物の不正使用を検出する第一の方法(第一の不正使用検出方法)は、本発明にかかる上記第二の識別添加物質を識別情報保持物に添加することを特徴とする。
この第一の不正使用検出方法によれば、記述のように、偽造品はダミーDNA塩基配列のみを含むものとなる確率が極めて高くなるので、識別DNA塩基配列の有無を確認すること、すなわち識別情報が正規の方法で抽出できるかどうかを確認することで不正使用を検出できる。
【0021】
本発明にかかる、識別情報保持物の不正使用を検出する第二の方法(第二の不正使用検出方法)は、本発明にかかる上記第一又は第二の識別添加物質を使用して識別DNA塩基配列を識別情報保持物に添加し、該識別情報保持物で形成した識別情報表示物を視認できない態様で貼付し、該識別情報表示物を貼付する位置、及び該識別情報部を、製品ロット毎に替えることを特徴とする。
【0022】
この第二の不正使用検出方法によれば、識別情報表示物を視認できない態様で貼付することで、識別情報表示物を第三者に気付かれにくいものとし、識別情報保持物の不正使用そのものを未然に防止することができる。また、もし識別情報表示物が発見されたとしても、その位置は製品ロット毎に異なるものとなっているので、識別情報表示物の貼付位置を確認することにより、識別情報保持物の不正使用を検出できる。更に、不正使用された識別情報保持物が正しい位置に貼付されたとしても、識別情報部が製品ロット毎に異なるので、抽出される識別情報がその製品ロットに適合しているかどうかを確認することで、識別情報保持物の不正使用を検出できる。
【0023】
なお、この方法において、最終的には識別情報を抽出して不正使用を検出することになるが、識別情報表示物の有無やその貼付位置の確認という、正当な使用者であれば極めて容易な確認作業を併用することで、複雑な識別情報の抽出作業の頻度を低減できるという効果がある。また、この方法で検出されない識別情報表示物を偽造するためには、1ロットの製品が全て消費される前に、識別情報表示物の貼付位置を発見しかつその識別情報部から情報を抽出しなければならず、その行為は極めて困難なものとなる。従って、偽造行為そのものの抑制を図るという効果が期待できる。
【0024】
本発明にかかる、識別情報保持物の不正使用を検出する第三の方法(第三の不正使用検出方法)は、識別情報保持物の属性を製品ロット毎に異なるものにすることを特徴とする。なお、本発明において、識別情報保持物の属性とは、識別情報保持物の真偽判定がどのように行われるか、或いはそこに保持されている情報がどのように抽出されるか等の性質の分類を示す。例えば、識別情報保持物が不可視であれば、どの波長の赤外線によって検出されるかがその識別情報保持物の属性である。
【0025】
この第三の不正使用検出方法によれば、識別情報保持物の属性を製品ロット毎に異なるものとすることにより、そのロットの製品が全て消費された後では、そのロットの識別情報保持物の偽造品に対し、情報の抽出や検出が不能になる等の不具合を生じさせることができる。そのため、それら不具合の有無を確認することで識別情報保持物の不正使用を検出できる。
【0026】
本発明にかかる、識別情報保持物の不正使用を検出する第四の方法(第四の不正使用検出方法)は、識別情報保持物を不可視にし、製品への貼付位置を、製品ロット毎に替えることを特徴とする。
【0027】
この第四の不正使用検出方法によれば、識別情報保持物を不可視として視認できないようにすることで、識別情報保持物を第三者に気付かれにくいものとし、識別情報保持物の不正使用そのものを未然に防止することができる。また、もし識別情報保持物が発見されたとしても、その貼付位置は製品ロット毎に異なるものとなっているので、識別情報保持物の貼付位置を確認することにより、識別情報保持物の不正使用を検出できる。
【0028】
なお、上記第二の不正使用検出方法は、識別情報表示物が不可視であればよく、例えば貼付される物の表面形態と一体化させたものが該当する。これに対しこの第四の不正使用検出方法は、識別情報保持物そのものを不可視とするものであり、例えば識別情報保持物を透明にしたものが該当し、識別情報表示物が貼付される物の表面形態が複雑でその加工が困難な場合などに特に有効である。
【0029】
本発明にかかる、識別情報保持物の不正使用を検出する第五の方法(第五の不正使用検出方法)は、識別情報表示物と、製品デザインに秘密に加える印を、製品ロット毎に異なるものにすることを特徴とする。
【0030】
この第五の不正使用検出方法によれば、識別情報表示物は製品ロット毎に異なるので、識別情報表示物の形態等を確認することにより、識別情報保持物の不正使用を検出できる。なお、製品デザインに秘密に加える印として、例えば、製品に製造元の名称を表示する際、その名称の一部に任意で加えられた誤字が知られている。このような印を使用する偽造防止手法は公知であるが、このような公知手法を併用することにより、不正使用をより効果的に検出することが可能となる。
【0031】
【発明実施の形態】
図1を参照しながら、本発明にかかる、偽造行為防止機能を備えた識別手段を付加する識別添加物質及び識別情報保持物の具体例について説明する。図1は、同識別情報保持物を付加した物品の要部を拡大して示す図である。
【0032】
識別対象である物品30には、その物品30が本物であることを保証する識別情報表示物(認証マーク)31が付加されている。識別情報表示物31は、識別手段を付加する識別添加物質10を含有する識別情報保持物(インク)20で印刷されている。
【0033】
識別添加物質10は、2進数で表示され、複数の記号、0と1が複数のパターン00、01、10及び11で繰り返し出現して構成される識別情報に従って、これらのパターン00、01、10又は11毎にアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)を対応させて構成した識別DNA塩基配列(人工DNA)10aを備える。そして、識別情報部11と、この識別情報部11の両端にあり、識別情報部11の両端の座位を示す位置情報を備えかつその塩基配列が秘匿された位置情報部(いわゆるプライマ)12a、12bを有する。これら2つの位置情報部12a、12bは相互に異なる塩基配列を有するものとなっている。
【0034】
この識別情報保持物20の形態はインクとなっているが、本発明にかかる識別情報保持物は、インクの他、商品やIDカードなどであってもよい。ただし、識別情報保持物をインクにした場合は、識別対象物に貼付する識別シールを印刷により大量生産したり、塗布できるものであればあらゆる物品に適用できるなどの利点がある。
【0035】
この識別添加物質10及び識別情報保持物20によれば、位置情報部12a、12bの塩基配列情報が秘匿されているため、識別DNA塩基配列10aを第三者が増幅させる場合、適当なプライマを使用しながら試行錯誤で作業することになる。そのため、第三者が行う増幅作業に要する時間や費用を増加させ、偽造行為を抑制することができる。
【0036】
位置情報部12a、12bの長さ、及びA、C、G、Tの配列は任意に決めることができるが、正規の情報抽出作業の支障にならない範囲でできるだけ長くすることが好ましい。例えば、位置情報部12a、12bの長さが20塩基であれば、1塩基はA、C、G、Tの4通りの情報、即ち2ビットの情報を持ち、また位置情報部12a、12bは識別情報部11両端の2箇所にあることから、位置情報部12a、12b全体の情報量は420×420で約1024となる。この場合、第三者が識別情報部のDNA塩基配列10aの増幅作業を行う場合、使用するプライマが位置情報部12a、12bの塩基配列と完全に一致し目的の分析に使えるか否かを調べるために、すべての配列のプライマを総当たりで作り実験で確認するための費用と分析時間は、一つのプライマにかかる費用と分析時間の約1024であり天文学的な数字となる。従って、現実に第三者が偽造を行うことは困難になる。
【0037】
識別添加物質10は、識別DNA塩基配列10aの他、更に、アデニン、シトシン、グアニン、チミンで構成した複数種類のダミーDNA塩基配列10bを備えている。すなわち、識別情報保持物20は、識別DNA塩基配列10aと複数種類のダミーDNA塩基配列10bを含有している。なお、図1において、ダミーDNA塩基配列10bは、識別DNA塩基配列10aと区別するため破線で示されている。
【0038】
こうすると、識別DNA塩基配列10a(識別情報部11及び位置情報部12a、12b)の配列を知らない第三者が、ランダム・プライマを使用して識別DNA塩基配列10aの増幅を試みた際に、ダミーDNA塩基配列10bの増幅される確率が高くなる。そして、増幅されたダミーDNA塩基配列10bを真の識別DNA塩基配列10aと誤解させ、識別DNA塩基配列10aの増幅を防止することにより、偽造行為を抑制できる。
【0039】
偽造行為を抑制できる場合の具体例として、ランダム・プライマの一種であるランダムヘキサマーの市販品Random Primers(製品名、Promega社)を使用した場合について説明する。ランダムヘキサマーは、6塩基の短い配列のプライマで、識別DNA塩基配列10aの他にダミーDNA塩基配列10bをある確率で包含して弁別し、増幅する機能を有する。このプライマの有する情報量は46×46で約104となり、20塩基長の位置情報部12a、12bを有する識別DNA塩基配列10aを増幅させるにあたり、識別DNA塩基配列10aの位置情報部12a、12bと同じ長さのプライマを使用した場合と比較して、識別DNA塩基配列10aが出現する確率は約1020倍となる。一方、ダミーDNA塩基配列10bが出現する確率も同様となる。ただし、n種類のダミーDNA塩基配列10bを含有させた場合、各ダミーDNA塩基配列10bが出現する確率も同様であるため、ダミーDNA塩基配列10bが出現する確率は識別DNA塩基配列10aが出現する確率のn倍になる。従って、含有させるダミーDNA塩基配列10bの種類を増やすことにより、識別DNA塩基配列10aの配列を知らない第三者が、ランダム・プライマを使用して識別DNA塩基配列10aの増幅を試みた際に、ダミーDNA塩基配列10bをより高い確率で出現させることができる。この場合、その第三者が偽造した識別情報保持物10にダミーDNA塩基配列10bのみが含まれていることを確認すれば、偽造を行っている事実を証拠として掴むことができる。
【0040】
なお、ランダム・プライマの塩基配列を長くすると、増幅される塩基配列が識別DNA塩基配列10aの識別情報部11と一致する確率は高くなるが、何らかの塩基配列が増幅される確率そのものは低くなる。一方、ランダム・プライマの塩基配列を短くすれと、何らかの塩基配列が出現する確率は高くなるが、ノイズとなる他の塩基配列もより多く含まれることになる。従って、ランダム・プライマの塩基配列の長さの選択は両者のトレードオフとなるが、どちらの場合であっても識別DNA塩基配列10aの増幅は、識別DNA塩基配列10a(識別情報部11及び位置情報部12a、12b)の配列を知らない第三者にとって極めて困難な作業となる。
【0041】
ダミーDNA塩基配列10bは各種毎に1本鎖及び2本鎖の両形態が存在している。
こうすると、位置情報部12a、12bの配列を知らない第三者が、ファージや大腸菌を用いてプラスミドを増やす方法で識別DNA塩基配列10aの増幅を試みた際に、ダミーDNA塩基配列10bを増幅させ、識別DNA塩基配列10aの増幅を防止できる。そして、偽造行為を抑制できる。また、ランダム・プライマを使用する方法では、1本鎖及び2本鎖の双方の塩基配列が増幅されることになるため、ダミーDNA塩基配列10bが増幅される確率を高めるために、1本鎖と2本鎖の双方の形態を存在させることが有効である。ただし、その他の偽造防止機能も併せて具備させる場合など、十分な偽造防止効果を得られる範囲であれば、1本鎖又は2本鎖のどちらか一方の形態のみが存在するものであってもよい。
【0042】
識別DNA塩基配列10bは、1本鎖及び2本鎖の両形態が存在している。
識別DNA塩基配列の形態は、1本鎖又は2本鎖のいずれか一方のみであってもよいが、1本鎖及び2本鎖の両形態を存在させると、1本鎖及び2本鎖の両形態が共に偽造される確率は極めて低いことから、これら両形態が確認できるもののみを真の識別添加物質又は識別情報保持物とすることで、その識別をより確実なものとすることができる。ただし、これら両形態を存在させるためのコストは、一方の形態のみを存在させるコストよりも高くなる。また、ファージや大腸菌を用いてプラスミドを増やす方法に対しては、識別DNA塩基配列10aを1本鎖のみとしておけば、ダミーDNA塩基配列10bのみが増幅されることになり偽造行為を更に有効に抑制できる。
【0043】
更に、識別DNA塩基配列10bは複数種類が存在している。
こうすると、複数種類全ての塩基配列が確認できるもののみを真の識別添加物質又は識別情報保持物と判断することで、その識別を更に確実なものとすることができる。ただし、複数種類を存在させるためのコストは、一の形態のみを存在させるコストよりも高くなる。
【0044】
識別情報保持物20は、更に、所定の手段でのみ検知される属性識別用添加物22を含有している。
【0045】
こうすると、属性識別用添加物22が検知されたかどうかによって識別情報保持物20の真偽を判定できる。また、もし属性識別用添加物22も含めて偽造されたものが流通した場合でも、正規の識別情報保持物20において偽造されたものと異なる属性識別用添加物を使用し検知手段を変えることにより真偽の判定をすることが可能となる。例えば、所定波長の赤外線に反応する属性識別用添加物が偽造された場合、次回の製品ロット(次に製造する識別情報保持物)においては、異なる波長の赤外線に反応するものを属性識別用添加物として採用することにより、真偽の判定をすることが可能となる。
【0046】
なお、この識別情報保持物20のように、識別手段を付加する情報添加物質10がDNA塩基配列からなるものであれば、既述のように、情報添加物質10そのものに偽造防止機能を持たせることも可能である。しかし、複数の記号が複数のパターンで繰り返し出現して構成される識別情報に従って、その所定のパターン毎に特定の物質を対応させて構成した識別添加物質であって、偽造防止機能を持たせることができないものを使用する場合には、属性識別用添加物22を含有させること、即ち本発明にかかる第三の識別情報保持物とすることで偽造を効果的に防止することが可能となる。
【0047】
属性識別用添加物22を検知する所定の手段は、光学的手段、電磁的手段、熱的手段又は化学的手段のいずれかとすることが好ましく、こうすると、検知手段として公知の技術を利用することができる。
なお、光学的手段として、例えば、所定波長の赤外線や紫外線を用いて識別する技術を利用できる。また、電磁的手段として、例えば、NMR(核磁気共鳴)の粒子を検知するラジオ波を用いて識別する技術を利用できる。更に、熱的手段として、例えば、可逆反応を示す示温物質を用いて識別する技術を利用できる。更にまた、化学的手段として、例えば、キレート反応物質やロイコ染料反応物質を用いて識別する技術を利用できる。
【0048】
この識別添加物質10が添加された識別情報保持物20の不正使用に対しては、本発明にかかる第一の不正使用検出方法を適用することができる。
第一の不正使用検出方法を適用した場合、記述のように、識別情報保持物20の偽造品はダミーDNA塩基配列10bのみを含むものとなる確率が極めて高くなる。従って、識別DNA塩基配列10aの有無を確認すること、すなわち識別情報が正規の方法で抽出できるかどうかを確認することで識別情報保持物20不正使用を検出できる。
【0049】
識別情報表示物30を視認できない態様で貼付し、識別情報表示物30を貼付する位置、及び識別情報部11を、製品ロット毎に替えることで、識別情報保持物20の不正使用に対し、本発明にかかる第二の不正使用検出方法を適用することができる。
第二の不正使用検出方法を適用した場合、識別情報表示物30を視認できない態様で貼付することで、識別情報表示物30を第三者に気付かれにくいものとし、識別情報保持物20の不正使用そのものを未然に防止することができる。また、もし識別情報表示物30が発見されたとしても、その位置は製品ロット毎に異なるものとなっているので、識別情報表示物30の貼付位置を確認することにより、識別情報保持物20の不正使用を検出できる。更に、不正使用された識別情報保持物20が正しい位置に貼付されたとしても、識別情報部11が製品ロット毎に異なるので、抽出される識別情報がその製品ロットに適合しているかどうかを確認することで、識別情報保持物20の不正使用を検出できる。
【0050】
属性識別用添加物22を製品ロット毎に替え、識別情報保持物20の属性を製品ロット毎に異なるものとすれば、この識別情報保持物20の不正使用に対し、本発明にかかる第三の不正使用検出方法を適用することができる。
第三の不正使用検出方法を適用した場合、識別情報保持物20の属性を製品ロット毎に異なるものとすることにより、そのロットの製品が全て消費された後では、そのロットの識別情報保持物20の偽造品に対し、情報の抽出や検出が不能になる等の不具合を生じさせることができる。そのため、それら不具合の有無を確認することで識別情報保持物20の不正使用を検出できる。
【0051】
識別情報保持物20を不可視にし、物品30への貼付位置を、製品ロット毎に替えることで、識別情報保持物20の不正使用に対し、本発明にかかる第四の不正使用検出方法を適用することができる。
第四の不正使用検出方法を適用した場合、識別情報保持物20を不可視として視認できないようにすることで、識別情報保持物20を第三者に気付かれにくいものとし、識別情報保持物20の不正使用そのものを未然に防止することができる。また、もし識別情報保持物20が発見されたとしても、その貼付位置は製品ロット毎に異なるものとなっているので、識別情報保持物20の貼付位置を確認することにより、識別情報保持物の不正使用を検出できる。
【0052】
識別情報表示物30と、物品30のデザインに秘密に加える図示しない印を、製品ロット毎に異なるものにすることで、識別情報保持物20の不正使用に対し、本発明にかかる第五の不正使用検出方法を適用することができる。
第五の不正使用検出方法を適用した場合、識別情報表示物30は製品ロット毎に異なるので、識別情報表示物30の形態等を確認することにより、識別情報保持物20の不正使用を検出できる。
【0053】
【発明の効果】
本発明にかかる第一の識別添加物質、又は請求項6による本発明にかかる第一の識別情報保持物によれば、第三者が行うDNA塩基配列の増幅作業に要する時間や費用を増加させ、偽造行為を抑制できる。
【0054】
請求項2による本発明にかかる第二の識別添加物質、又は請求項7による本発明にかかる第二の識別情報保持物によれば、識別DNA塩基配列(識別情報部及び位置情報部)の塩基配列を知らない第三者が、ランダム・プライマ(多用途プライマ)を使用して識別DNA塩基配列の増幅を試みた際に、ダミー塩基配列の増幅される確率を高くし、識別DNA塩基配列の増幅を防止できる。そして、偽造行為を抑制できる。
【0055】
請求項3、8によれば、位置情報部の配列を知らない第三者が、ファージや大腸菌を用いてプラスミドを増やす方法で識別DNA塩基配列の増幅を試みた際に、ダミーDNA塩基配列を増幅させ、識別DNA塩基配列の増幅を防止できる。そして、偽造行為を抑制できる。
【0056】
請求項4、9によれば、1本鎖及び2本鎖の両形態が確認できるもののみを真の識別添加物質又は識別情報保持物とすることで、その識別をより確実なものとすることができる。
【0057】
請求項5、10によれば、複数種類全ての塩基配列が確認できるもののみを真の識別添加物質又は識別情報保持物と判断することで、その識別を更に確実なものとすることができる。
【0058】
請求項11による本発明にかかる第三の識別情報保持物によれば、属性識別用添加物が検知されたかどうかによって識別情報保持物の真偽を判定できる。また、もし属性識別用添加物も含めて偽造されたものが流通した場合でも、正規の識別情報保持物において偽造されたものと異なる属性識別用添加物を使用し検知手段を変えることにより、真偽の判定をすることが可能となる。
【0059】
請求項12によれば、検知手段として公知の技術を利用することができる。
【0060】
請求項13による本発明にかかる第一の不正使用検出方法によれば、識別DNA塩基配列の有無を確認すること、すなわち識別情報が正規の方法で抽出できるかどうかを確認することで不正使用を検出できる。
【0061】
請求項14による本発明にかかる第二の不正使用検出方法によれば、識別情報保持物の不正使用そのものを未然に防止することができる。また、もし識別情報表示物が発見されたとしても、識別情報表示物の貼付位置を確認することにより、識別情報保持物の不正使用を検出できる。更に、不正使用された識別情報保持物が正しい位置に貼付されたとしても、抽出される識別情報がその製品ロットに適合しているかどうかを確認することで、識別情報保持物の不正使用を検出できる。
【0062】
請求項15による本発明にかかる第三の不正使用検出方法によれば、情報の抽出や検出が不能になる等の不具合の有無を確認することで識別情報保持物の不正使用を検出できる。
【0063】
請求項16による本発明にかかる第四の不正使用検出方法によれば、識別情報保持物の不正使用そのものを未然に防止することができる。また、もし識別情報保持物が発見されたとしても、識別情報保持物の貼付位置を確認することにより、識別情報保持物の不正使用を検出できる。
【0064】
請求項17による本発明にかかる第五の不正使用検出方法によれば識別情報表示物の形態等を確認することにより、識別情報保持物の不正使用を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる識別情報保持物を付加した物品の要部を拡大して示す図である。
【符号の説明】
10 識別添加物質
10a 識別DNA塩基配列
10b ダミーDNA塩基配列
11 識別情報部
12a、12b 位置情報部
20 識別情報保持物
22 属性識別用添加物
31 識別情報表示物
【発明の属する技術分野】
本発明は、セキュリティ管理における個人の識別や商品の真偽鑑定などに利用する識別情報保持物に関する。
【0002】
【従来の技術】
記録された情報が第三者に容易に盗み取られることを防止するための手段として、本出願人は、特願2001−355502号にかかる、識別手段を付加する添加物(識別添加物質)及びその添加物(識別添加物質)を含有する識別情報保持物を考案している。
【0003】
上記識別手段を付加する識別添加物質は、複数の記号が複数のパターン(例えば00、01、10、11のパターン)で繰り返し出現して構成される識別情報に従って、その所定のパターン毎に特定の物質を対応させて構成したものからなる。また、上記識別情報保持物は、任意の物にこの識別添加物質を含有させたものである。
【0004】
この識別情報保持物によれば、識別添加物質を構成する物質の配列を分析し各物質に対応するパターンの記号を当てはめることにより、識別をしようとする者が識別情報を得られるようにすることができる。この際、識別情報は分析作業によらなければ得ることができないので、簡単な操作で容易に盗み取られるおそれがない。
【0005】
特に、上記識別添加物質より製造する識別情報保持物において、識別情報に従って構成される識別添加物質を識別DNA塩基配列(例えば人工DNA)とした場合、識別情報を識別精度の高いものにでき、しかも確立された統一手法、すなわちDNAの分析技術を情報抽出に適用することができるという利点がある。
【0006】
【特許文献1】
特願2001−355502号
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記識別添加物質より製造する識別情報保持物によれば、識別情報に従って構成される識別添加物質を識別DNA塩基配列とした場合、そこに記録された情報は、DNA増幅技術に精通した第三者に読み取られるおそれがあった。そして、ある程度の時間と技術が必要とされるものの、その読み取った情報に基づいて、識別情報保持物そのものが第三者により偽造されるおそれがあった。
【0008】
また、識別情報に従って構成される識別添加物質がどのようなものであっても、識別情報の読み取られるおそれがあるかどうかに関わらず、識別情報保持物そのものが第三者により偽造されるおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明は、 偽造行為防止機能を備えた識別手段を付加する識別添加物質及び識別情報保持物並びに識別情報保持物の不正使用検出方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる、第一の識別添加物質は、複数の記号が複数のパターンで繰り返し出現して構成される識別情報に従って、該所定のパターン毎にアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)を対応させて構成した識別DNA塩基配列からなり、識別情報部と、該識別情報部の両端にあり、該識別情報部の座位を示す位置情報を備えかつその塩基配列情報が秘匿された位置情報部とを有することを特徴とする。
また、本発明にかかる第一の識別情報保持物は、この第一の識別添加物質を含有することを特徴とする。
【0011】
この第一の識別添加物質及び第一の識別情報保持物によれば、識別情報部の位置(座位)を示す位置情報部(例えばプライマ)のDNA塩基配列情報が秘匿されているため、識別DNA塩基配列を第三者が増幅させる場合、適当なプライマを使用しながら試行錯誤で作業することになる。そのため、第三者が行う増幅作業に要する時間や費用を増加させ、偽造行為を抑制できる
なお、本発明において識別DNA塩基配列は、位置情報部を識別情報部の両端に備えている。すなわち、位置情報部のDNA塩基配列は、互いに異なる配列(後述の12a、12b)となっており、増幅しようとする識別情報部の両端の座位を特定することができる。
【0012】
本発明にかかる、第二の識別添加物質は、識別DNA塩基配列と1種類又は複数種類のダミーDNA塩基配列とからなることを特徴とする。すなわち、上記第一の識別添加物質に、アデニン、シトシン、グアニン、チミンで構成した1種類又は複数種類のダミーDNA塩基配列を加えたものである。
また、本発明にかかる第二の識別情報保持物は、この第二の識別添加物質を含有することを特徴とする。
【0013】
この第二の識別添加物質及び第二の識別情報保持物によれば、識別DNA塩基配列(識別情報部及び位置情報部)の塩基配列を知らない第三者が、ランダム・プライマ(多用途プライマ)を使用して識別DNA塩基配列の増幅を試みた際に、複数種類加えてあるダミー塩基配列は増幅される確率が高くなる。そして、増幅されたダミーDNA塩基配列を真の識別DNA塩基配列と誤解させ、識別DNA塩基配列の増幅を防止することにより、偽造行為を抑制できる。
【0014】
本発明にかかる、第二の識別添加物質及び第二の識別情報保持物において、該識別DNA塩基配列は、1本鎖又は2本鎖のみが存在するものであってもよい。また、該ダミーDNA塩基配列は各種毎に1本鎖又は2本鎖のどちらか一方の形態のみが存在するものであってもよく、或いは1本鎖及び2本鎖の両形態が存在するものであってもよい。
ファージや大腸菌を用いてプラスミドを増やす方法によれば、位置情報部の配列を知らない第三者であっても識別DNA塩基配列を増幅させることができる可能性がある。しかしながら、この方法では、環状DNAであるベクター・プラスミドが取り込むことができるのは2本鎖のみである。従って、この方法に対しては、2本鎖のダミー塩基配列を存在させておくことにより、ダミーDNA塩基配列を増幅させ、識別DNA塩基配列の増幅を防止できる。そして、偽造行為を抑制できる。また、この方法に対しては、識別DNA塩基配列を1本鎖のみとしておけば、ダミーDNA塩基配列のみが増幅されることになり偽造行為を更に有効に抑制できる。
一方、ランダム・プライマを使用する方法では、1本鎖及び2本鎖の双方の塩基配列が増幅されることになるため、ダミーDNA塩基配列が増幅される確率を高めるために、1本鎖と2本鎖の双方の形態を存在させることが有効である。
【0015】
該識別DNA塩基配列は、1本鎖及び2本鎖の両形態が存在するものであってもよい。
この場合、1本鎖及び2本鎖の両形態が共に偽造される確率は極めて低いことから、これら両形態が確認できるもののみを真の識別添加物質又は識別情報保持物とすることで、その識別をより確実なものとすることができる。ただし、これら両形態を存在させるためのコストは、一方の形態のみを存在させるコストよりも高くなる。
【0016】
該識別DNA塩基配列は複数種類が存在するものであってもよい。
この場合、複数種類全ての塩基配列が確認できるもののみを真の識別添加物質又は識別情報保持物と判断することで、その識別を更に確実なものとすることができる。ただし、複数種類を存在させるためのコストは、一の形態のみを存在させるコストよりも高くなる。
【0017】
本発明にかかる、第三の識別情報保持物は、複数の記号が複数のパターンで繰り返し出現して構成される識別情報に従って、該所定のパターン毎に特定の物質を対応させて構成した、識別手段を付加する識別添加物質と、所定の手段でのみ検知される属性識別用添加物を含有することを特徴とする。
【0018】
この第三の識別情報保持物によれば、属性識別用添加物が検知されたかどうかによって識別情報保持物の真偽を判定できる。また、もし属性識別用添加物も含めて偽造されたものが流通した場合でも、正規の識別情報保持物において偽造されたものと異なる属性識別用添加物を使用し検知手段を変えることにより、真偽の判定をすることが可能となる。
【0019】
本発明にかかる、第三の識別情報保持物において、該所定の手段は、光学的手段、電磁的手段、熱的手段又は化学的手段のいずれかであってもよい。
この場合、検知手段として公知の技術を利用することができる。
【0020】
本発明にかかる、識別情報保持物の不正使用を検出する第一の方法(第一の不正使用検出方法)は、本発明にかかる上記第二の識別添加物質を識別情報保持物に添加することを特徴とする。
この第一の不正使用検出方法によれば、記述のように、偽造品はダミーDNA塩基配列のみを含むものとなる確率が極めて高くなるので、識別DNA塩基配列の有無を確認すること、すなわち識別情報が正規の方法で抽出できるかどうかを確認することで不正使用を検出できる。
【0021】
本発明にかかる、識別情報保持物の不正使用を検出する第二の方法(第二の不正使用検出方法)は、本発明にかかる上記第一又は第二の識別添加物質を使用して識別DNA塩基配列を識別情報保持物に添加し、該識別情報保持物で形成した識別情報表示物を視認できない態様で貼付し、該識別情報表示物を貼付する位置、及び該識別情報部を、製品ロット毎に替えることを特徴とする。
【0022】
この第二の不正使用検出方法によれば、識別情報表示物を視認できない態様で貼付することで、識別情報表示物を第三者に気付かれにくいものとし、識別情報保持物の不正使用そのものを未然に防止することができる。また、もし識別情報表示物が発見されたとしても、その位置は製品ロット毎に異なるものとなっているので、識別情報表示物の貼付位置を確認することにより、識別情報保持物の不正使用を検出できる。更に、不正使用された識別情報保持物が正しい位置に貼付されたとしても、識別情報部が製品ロット毎に異なるので、抽出される識別情報がその製品ロットに適合しているかどうかを確認することで、識別情報保持物の不正使用を検出できる。
【0023】
なお、この方法において、最終的には識別情報を抽出して不正使用を検出することになるが、識別情報表示物の有無やその貼付位置の確認という、正当な使用者であれば極めて容易な確認作業を併用することで、複雑な識別情報の抽出作業の頻度を低減できるという効果がある。また、この方法で検出されない識別情報表示物を偽造するためには、1ロットの製品が全て消費される前に、識別情報表示物の貼付位置を発見しかつその識別情報部から情報を抽出しなければならず、その行為は極めて困難なものとなる。従って、偽造行為そのものの抑制を図るという効果が期待できる。
【0024】
本発明にかかる、識別情報保持物の不正使用を検出する第三の方法(第三の不正使用検出方法)は、識別情報保持物の属性を製品ロット毎に異なるものにすることを特徴とする。なお、本発明において、識別情報保持物の属性とは、識別情報保持物の真偽判定がどのように行われるか、或いはそこに保持されている情報がどのように抽出されるか等の性質の分類を示す。例えば、識別情報保持物が不可視であれば、どの波長の赤外線によって検出されるかがその識別情報保持物の属性である。
【0025】
この第三の不正使用検出方法によれば、識別情報保持物の属性を製品ロット毎に異なるものとすることにより、そのロットの製品が全て消費された後では、そのロットの識別情報保持物の偽造品に対し、情報の抽出や検出が不能になる等の不具合を生じさせることができる。そのため、それら不具合の有無を確認することで識別情報保持物の不正使用を検出できる。
【0026】
本発明にかかる、識別情報保持物の不正使用を検出する第四の方法(第四の不正使用検出方法)は、識別情報保持物を不可視にし、製品への貼付位置を、製品ロット毎に替えることを特徴とする。
【0027】
この第四の不正使用検出方法によれば、識別情報保持物を不可視として視認できないようにすることで、識別情報保持物を第三者に気付かれにくいものとし、識別情報保持物の不正使用そのものを未然に防止することができる。また、もし識別情報保持物が発見されたとしても、その貼付位置は製品ロット毎に異なるものとなっているので、識別情報保持物の貼付位置を確認することにより、識別情報保持物の不正使用を検出できる。
【0028】
なお、上記第二の不正使用検出方法は、識別情報表示物が不可視であればよく、例えば貼付される物の表面形態と一体化させたものが該当する。これに対しこの第四の不正使用検出方法は、識別情報保持物そのものを不可視とするものであり、例えば識別情報保持物を透明にしたものが該当し、識別情報表示物が貼付される物の表面形態が複雑でその加工が困難な場合などに特に有効である。
【0029】
本発明にかかる、識別情報保持物の不正使用を検出する第五の方法(第五の不正使用検出方法)は、識別情報表示物と、製品デザインに秘密に加える印を、製品ロット毎に異なるものにすることを特徴とする。
【0030】
この第五の不正使用検出方法によれば、識別情報表示物は製品ロット毎に異なるので、識別情報表示物の形態等を確認することにより、識別情報保持物の不正使用を検出できる。なお、製品デザインに秘密に加える印として、例えば、製品に製造元の名称を表示する際、その名称の一部に任意で加えられた誤字が知られている。このような印を使用する偽造防止手法は公知であるが、このような公知手法を併用することにより、不正使用をより効果的に検出することが可能となる。
【0031】
【発明実施の形態】
図1を参照しながら、本発明にかかる、偽造行為防止機能を備えた識別手段を付加する識別添加物質及び識別情報保持物の具体例について説明する。図1は、同識別情報保持物を付加した物品の要部を拡大して示す図である。
【0032】
識別対象である物品30には、その物品30が本物であることを保証する識別情報表示物(認証マーク)31が付加されている。識別情報表示物31は、識別手段を付加する識別添加物質10を含有する識別情報保持物(インク)20で印刷されている。
【0033】
識別添加物質10は、2進数で表示され、複数の記号、0と1が複数のパターン00、01、10及び11で繰り返し出現して構成される識別情報に従って、これらのパターン00、01、10又は11毎にアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)を対応させて構成した識別DNA塩基配列(人工DNA)10aを備える。そして、識別情報部11と、この識別情報部11の両端にあり、識別情報部11の両端の座位を示す位置情報を備えかつその塩基配列が秘匿された位置情報部(いわゆるプライマ)12a、12bを有する。これら2つの位置情報部12a、12bは相互に異なる塩基配列を有するものとなっている。
【0034】
この識別情報保持物20の形態はインクとなっているが、本発明にかかる識別情報保持物は、インクの他、商品やIDカードなどであってもよい。ただし、識別情報保持物をインクにした場合は、識別対象物に貼付する識別シールを印刷により大量生産したり、塗布できるものであればあらゆる物品に適用できるなどの利点がある。
【0035】
この識別添加物質10及び識別情報保持物20によれば、位置情報部12a、12bの塩基配列情報が秘匿されているため、識別DNA塩基配列10aを第三者が増幅させる場合、適当なプライマを使用しながら試行錯誤で作業することになる。そのため、第三者が行う増幅作業に要する時間や費用を増加させ、偽造行為を抑制することができる。
【0036】
位置情報部12a、12bの長さ、及びA、C、G、Tの配列は任意に決めることができるが、正規の情報抽出作業の支障にならない範囲でできるだけ長くすることが好ましい。例えば、位置情報部12a、12bの長さが20塩基であれば、1塩基はA、C、G、Tの4通りの情報、即ち2ビットの情報を持ち、また位置情報部12a、12bは識別情報部11両端の2箇所にあることから、位置情報部12a、12b全体の情報量は420×420で約1024となる。この場合、第三者が識別情報部のDNA塩基配列10aの増幅作業を行う場合、使用するプライマが位置情報部12a、12bの塩基配列と完全に一致し目的の分析に使えるか否かを調べるために、すべての配列のプライマを総当たりで作り実験で確認するための費用と分析時間は、一つのプライマにかかる費用と分析時間の約1024であり天文学的な数字となる。従って、現実に第三者が偽造を行うことは困難になる。
【0037】
識別添加物質10は、識別DNA塩基配列10aの他、更に、アデニン、シトシン、グアニン、チミンで構成した複数種類のダミーDNA塩基配列10bを備えている。すなわち、識別情報保持物20は、識別DNA塩基配列10aと複数種類のダミーDNA塩基配列10bを含有している。なお、図1において、ダミーDNA塩基配列10bは、識別DNA塩基配列10aと区別するため破線で示されている。
【0038】
こうすると、識別DNA塩基配列10a(識別情報部11及び位置情報部12a、12b)の配列を知らない第三者が、ランダム・プライマを使用して識別DNA塩基配列10aの増幅を試みた際に、ダミーDNA塩基配列10bの増幅される確率が高くなる。そして、増幅されたダミーDNA塩基配列10bを真の識別DNA塩基配列10aと誤解させ、識別DNA塩基配列10aの増幅を防止することにより、偽造行為を抑制できる。
【0039】
偽造行為を抑制できる場合の具体例として、ランダム・プライマの一種であるランダムヘキサマーの市販品Random Primers(製品名、Promega社)を使用した場合について説明する。ランダムヘキサマーは、6塩基の短い配列のプライマで、識別DNA塩基配列10aの他にダミーDNA塩基配列10bをある確率で包含して弁別し、増幅する機能を有する。このプライマの有する情報量は46×46で約104となり、20塩基長の位置情報部12a、12bを有する識別DNA塩基配列10aを増幅させるにあたり、識別DNA塩基配列10aの位置情報部12a、12bと同じ長さのプライマを使用した場合と比較して、識別DNA塩基配列10aが出現する確率は約1020倍となる。一方、ダミーDNA塩基配列10bが出現する確率も同様となる。ただし、n種類のダミーDNA塩基配列10bを含有させた場合、各ダミーDNA塩基配列10bが出現する確率も同様であるため、ダミーDNA塩基配列10bが出現する確率は識別DNA塩基配列10aが出現する確率のn倍になる。従って、含有させるダミーDNA塩基配列10bの種類を増やすことにより、識別DNA塩基配列10aの配列を知らない第三者が、ランダム・プライマを使用して識別DNA塩基配列10aの増幅を試みた際に、ダミーDNA塩基配列10bをより高い確率で出現させることができる。この場合、その第三者が偽造した識別情報保持物10にダミーDNA塩基配列10bのみが含まれていることを確認すれば、偽造を行っている事実を証拠として掴むことができる。
【0040】
なお、ランダム・プライマの塩基配列を長くすると、増幅される塩基配列が識別DNA塩基配列10aの識別情報部11と一致する確率は高くなるが、何らかの塩基配列が増幅される確率そのものは低くなる。一方、ランダム・プライマの塩基配列を短くすれと、何らかの塩基配列が出現する確率は高くなるが、ノイズとなる他の塩基配列もより多く含まれることになる。従って、ランダム・プライマの塩基配列の長さの選択は両者のトレードオフとなるが、どちらの場合であっても識別DNA塩基配列10aの増幅は、識別DNA塩基配列10a(識別情報部11及び位置情報部12a、12b)の配列を知らない第三者にとって極めて困難な作業となる。
【0041】
ダミーDNA塩基配列10bは各種毎に1本鎖及び2本鎖の両形態が存在している。
こうすると、位置情報部12a、12bの配列を知らない第三者が、ファージや大腸菌を用いてプラスミドを増やす方法で識別DNA塩基配列10aの増幅を試みた際に、ダミーDNA塩基配列10bを増幅させ、識別DNA塩基配列10aの増幅を防止できる。そして、偽造行為を抑制できる。また、ランダム・プライマを使用する方法では、1本鎖及び2本鎖の双方の塩基配列が増幅されることになるため、ダミーDNA塩基配列10bが増幅される確率を高めるために、1本鎖と2本鎖の双方の形態を存在させることが有効である。ただし、その他の偽造防止機能も併せて具備させる場合など、十分な偽造防止効果を得られる範囲であれば、1本鎖又は2本鎖のどちらか一方の形態のみが存在するものであってもよい。
【0042】
識別DNA塩基配列10bは、1本鎖及び2本鎖の両形態が存在している。
識別DNA塩基配列の形態は、1本鎖又は2本鎖のいずれか一方のみであってもよいが、1本鎖及び2本鎖の両形態を存在させると、1本鎖及び2本鎖の両形態が共に偽造される確率は極めて低いことから、これら両形態が確認できるもののみを真の識別添加物質又は識別情報保持物とすることで、その識別をより確実なものとすることができる。ただし、これら両形態を存在させるためのコストは、一方の形態のみを存在させるコストよりも高くなる。また、ファージや大腸菌を用いてプラスミドを増やす方法に対しては、識別DNA塩基配列10aを1本鎖のみとしておけば、ダミーDNA塩基配列10bのみが増幅されることになり偽造行為を更に有効に抑制できる。
【0043】
更に、識別DNA塩基配列10bは複数種類が存在している。
こうすると、複数種類全ての塩基配列が確認できるもののみを真の識別添加物質又は識別情報保持物と判断することで、その識別を更に確実なものとすることができる。ただし、複数種類を存在させるためのコストは、一の形態のみを存在させるコストよりも高くなる。
【0044】
識別情報保持物20は、更に、所定の手段でのみ検知される属性識別用添加物22を含有している。
【0045】
こうすると、属性識別用添加物22が検知されたかどうかによって識別情報保持物20の真偽を判定できる。また、もし属性識別用添加物22も含めて偽造されたものが流通した場合でも、正規の識別情報保持物20において偽造されたものと異なる属性識別用添加物を使用し検知手段を変えることにより真偽の判定をすることが可能となる。例えば、所定波長の赤外線に反応する属性識別用添加物が偽造された場合、次回の製品ロット(次に製造する識別情報保持物)においては、異なる波長の赤外線に反応するものを属性識別用添加物として採用することにより、真偽の判定をすることが可能となる。
【0046】
なお、この識別情報保持物20のように、識別手段を付加する情報添加物質10がDNA塩基配列からなるものであれば、既述のように、情報添加物質10そのものに偽造防止機能を持たせることも可能である。しかし、複数の記号が複数のパターンで繰り返し出現して構成される識別情報に従って、その所定のパターン毎に特定の物質を対応させて構成した識別添加物質であって、偽造防止機能を持たせることができないものを使用する場合には、属性識別用添加物22を含有させること、即ち本発明にかかる第三の識別情報保持物とすることで偽造を効果的に防止することが可能となる。
【0047】
属性識別用添加物22を検知する所定の手段は、光学的手段、電磁的手段、熱的手段又は化学的手段のいずれかとすることが好ましく、こうすると、検知手段として公知の技術を利用することができる。
なお、光学的手段として、例えば、所定波長の赤外線や紫外線を用いて識別する技術を利用できる。また、電磁的手段として、例えば、NMR(核磁気共鳴)の粒子を検知するラジオ波を用いて識別する技術を利用できる。更に、熱的手段として、例えば、可逆反応を示す示温物質を用いて識別する技術を利用できる。更にまた、化学的手段として、例えば、キレート反応物質やロイコ染料反応物質を用いて識別する技術を利用できる。
【0048】
この識別添加物質10が添加された識別情報保持物20の不正使用に対しては、本発明にかかる第一の不正使用検出方法を適用することができる。
第一の不正使用検出方法を適用した場合、記述のように、識別情報保持物20の偽造品はダミーDNA塩基配列10bのみを含むものとなる確率が極めて高くなる。従って、識別DNA塩基配列10aの有無を確認すること、すなわち識別情報が正規の方法で抽出できるかどうかを確認することで識別情報保持物20不正使用を検出できる。
【0049】
識別情報表示物30を視認できない態様で貼付し、識別情報表示物30を貼付する位置、及び識別情報部11を、製品ロット毎に替えることで、識別情報保持物20の不正使用に対し、本発明にかかる第二の不正使用検出方法を適用することができる。
第二の不正使用検出方法を適用した場合、識別情報表示物30を視認できない態様で貼付することで、識別情報表示物30を第三者に気付かれにくいものとし、識別情報保持物20の不正使用そのものを未然に防止することができる。また、もし識別情報表示物30が発見されたとしても、その位置は製品ロット毎に異なるものとなっているので、識別情報表示物30の貼付位置を確認することにより、識別情報保持物20の不正使用を検出できる。更に、不正使用された識別情報保持物20が正しい位置に貼付されたとしても、識別情報部11が製品ロット毎に異なるので、抽出される識別情報がその製品ロットに適合しているかどうかを確認することで、識別情報保持物20の不正使用を検出できる。
【0050】
属性識別用添加物22を製品ロット毎に替え、識別情報保持物20の属性を製品ロット毎に異なるものとすれば、この識別情報保持物20の不正使用に対し、本発明にかかる第三の不正使用検出方法を適用することができる。
第三の不正使用検出方法を適用した場合、識別情報保持物20の属性を製品ロット毎に異なるものとすることにより、そのロットの製品が全て消費された後では、そのロットの識別情報保持物20の偽造品に対し、情報の抽出や検出が不能になる等の不具合を生じさせることができる。そのため、それら不具合の有無を確認することで識別情報保持物20の不正使用を検出できる。
【0051】
識別情報保持物20を不可視にし、物品30への貼付位置を、製品ロット毎に替えることで、識別情報保持物20の不正使用に対し、本発明にかかる第四の不正使用検出方法を適用することができる。
第四の不正使用検出方法を適用した場合、識別情報保持物20を不可視として視認できないようにすることで、識別情報保持物20を第三者に気付かれにくいものとし、識別情報保持物20の不正使用そのものを未然に防止することができる。また、もし識別情報保持物20が発見されたとしても、その貼付位置は製品ロット毎に異なるものとなっているので、識別情報保持物20の貼付位置を確認することにより、識別情報保持物の不正使用を検出できる。
【0052】
識別情報表示物30と、物品30のデザインに秘密に加える図示しない印を、製品ロット毎に異なるものにすることで、識別情報保持物20の不正使用に対し、本発明にかかる第五の不正使用検出方法を適用することができる。
第五の不正使用検出方法を適用した場合、識別情報表示物30は製品ロット毎に異なるので、識別情報表示物30の形態等を確認することにより、識別情報保持物20の不正使用を検出できる。
【0053】
【発明の効果】
本発明にかかる第一の識別添加物質、又は請求項6による本発明にかかる第一の識別情報保持物によれば、第三者が行うDNA塩基配列の増幅作業に要する時間や費用を増加させ、偽造行為を抑制できる。
【0054】
請求項2による本発明にかかる第二の識別添加物質、又は請求項7による本発明にかかる第二の識別情報保持物によれば、識別DNA塩基配列(識別情報部及び位置情報部)の塩基配列を知らない第三者が、ランダム・プライマ(多用途プライマ)を使用して識別DNA塩基配列の増幅を試みた際に、ダミー塩基配列の増幅される確率を高くし、識別DNA塩基配列の増幅を防止できる。そして、偽造行為を抑制できる。
【0055】
請求項3、8によれば、位置情報部の配列を知らない第三者が、ファージや大腸菌を用いてプラスミドを増やす方法で識別DNA塩基配列の増幅を試みた際に、ダミーDNA塩基配列を増幅させ、識別DNA塩基配列の増幅を防止できる。そして、偽造行為を抑制できる。
【0056】
請求項4、9によれば、1本鎖及び2本鎖の両形態が確認できるもののみを真の識別添加物質又は識別情報保持物とすることで、その識別をより確実なものとすることができる。
【0057】
請求項5、10によれば、複数種類全ての塩基配列が確認できるもののみを真の識別添加物質又は識別情報保持物と判断することで、その識別を更に確実なものとすることができる。
【0058】
請求項11による本発明にかかる第三の識別情報保持物によれば、属性識別用添加物が検知されたかどうかによって識別情報保持物の真偽を判定できる。また、もし属性識別用添加物も含めて偽造されたものが流通した場合でも、正規の識別情報保持物において偽造されたものと異なる属性識別用添加物を使用し検知手段を変えることにより、真偽の判定をすることが可能となる。
【0059】
請求項12によれば、検知手段として公知の技術を利用することができる。
【0060】
請求項13による本発明にかかる第一の不正使用検出方法によれば、識別DNA塩基配列の有無を確認すること、すなわち識別情報が正規の方法で抽出できるかどうかを確認することで不正使用を検出できる。
【0061】
請求項14による本発明にかかる第二の不正使用検出方法によれば、識別情報保持物の不正使用そのものを未然に防止することができる。また、もし識別情報表示物が発見されたとしても、識別情報表示物の貼付位置を確認することにより、識別情報保持物の不正使用を検出できる。更に、不正使用された識別情報保持物が正しい位置に貼付されたとしても、抽出される識別情報がその製品ロットに適合しているかどうかを確認することで、識別情報保持物の不正使用を検出できる。
【0062】
請求項15による本発明にかかる第三の不正使用検出方法によれば、情報の抽出や検出が不能になる等の不具合の有無を確認することで識別情報保持物の不正使用を検出できる。
【0063】
請求項16による本発明にかかる第四の不正使用検出方法によれば、識別情報保持物の不正使用そのものを未然に防止することができる。また、もし識別情報保持物が発見されたとしても、識別情報保持物の貼付位置を確認することにより、識別情報保持物の不正使用を検出できる。
【0064】
請求項17による本発明にかかる第五の不正使用検出方法によれば識別情報表示物の形態等を確認することにより、識別情報保持物の不正使用を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる識別情報保持物を付加した物品の要部を拡大して示す図である。
【符号の説明】
10 識別添加物質
10a 識別DNA塩基配列
10b ダミーDNA塩基配列
11 識別情報部
12a、12b 位置情報部
20 識別情報保持物
22 属性識別用添加物
31 識別情報表示物
Claims (17)
- 複数の記号が複数のパターンで繰り返し出現して構成される識別情報に従って、該所定のパターン毎にアデニン、シトシン、グアニン、チミンを対応させて構成した識別DNA塩基配列(10a)からなり、
識別情報部(11)と、
該識別情報部(11)の両端にあり、該識別情報部(11)の座位を示す位置情報を備えかつその塩基配列情報が秘匿された位置情報部(12a,12b)とを有する、
ことを特徴とする識別手段を付加する識別添加物質(10)。 - 複数の記号が複数のパターンで繰り返し出現して構成される識別情報に従って、該所定のパターン毎にアデニン、シトシン、グアニン、チミンを対応させて構成され、識別情報部(11)と、該識別情報部(11)の両端にあり、該識別情報部(11)の座位を示す位置情報を備えかつその塩基配列情報が秘匿された位置情報部(12a,12b)とを有する、識別DNA塩基配列(10a)と、
アデニン、シトシン、グアニン、チミンで構成された1種類又は複数種類のダミーDNA塩基配列(10b)と、
からなることを特徴とする識別添加物質(10)。 - 該識別DNA塩基配列(10a)は1本鎖又は2本鎖のみが存在し、該ダミーDNA塩基配列(10b)は各種毎に1本鎖又は2本鎖のどちらか一方の形態のみ、或いは1本鎖及び2本鎖の両形態が存在している請求項2に記載の識別添加物質(10)。
- 該識別DNA塩基配列(10a)は1本鎖及び2本鎖の両形態が存在し、該ダミーDNA塩基配列(10b)は各種毎に1本鎖又は2本鎖のどちらか一方の形態のみ、或いは1本鎖及び2本鎖の両形態が存在している請求項2に記載の識別添加物質(10)。
- 該識別DNA塩基配列(10a)は複数種類が存在する請求項2〜4のいずれか一つの項に記載の識別添加物質(10)。
- 複数の記号が複数のパターンで繰り返し出現して構成される識別情報に従って、該所定のパターン毎にアデニン、シトシン、グアニン、チミンを対応させて構成され、識別情報部(11)と、該識別情報部(11)の両端にあり、該識別情報部(11)の座位を示す位置情報を備えかつその塩基配列情報が秘匿された位置情報部(12a,12b)とを有する識別DNA塩基配列(10a)からなる、識別手段を付加する識別添加物質(10)を含有すること、を特徴とする識別情報保持物(20)。
- 複数の記号が複数のパターンで繰り返し出現して構成される識別情報に従って、該所定のパターン毎にアデニン、シトシン、グアニン、チミンを対応させて構成され、識別情報部(11)と、該識別情報部(11)の両端にあり、該識別情報部(11)の座位を示す位置情報を備えかつその塩基配列情報が秘匿された位置情報部(12a,12b)とを有する識別DNA塩基配列(10a)と、
アデニン、シトシン、グアニン、チミンで構成された1種類又は複数種類のダミーDNA塩基配列(10b)と、
からなる識別手段を付加する識別添加物質(10)を含有することを特徴とする識別情報保持物(20)。 - 該識別DNA塩基配列(10a)は1本鎖又は2本鎖のみが存在し、該ダミーDNA塩基配列(20)は各種毎に1本鎖又は2本鎖のどちらか一方の形態のみ、或いは1本鎖及び2本鎖の両形態が存在している請求項7に記載の識別情報保持物(20)。
- 該識別DNA塩基配列(10a)は1本鎖及び2本鎖の両形態が存在し、該ダミーDNA塩基配列(10b)は各種毎に1本鎖又は2本鎖のどちらか一方の形態のみ、或いは1本鎖及び2本鎖の両形態が存在している請求項7に記載の識別情報保持物(20)。
- 該識別DNA塩基配列(10a)は複数種類のである請求項7〜9のいずれか一つの項に記載の識別情報保持物(20)。
- 複数の記号が複数のパターンで繰り返し出現して構成される識別情報に従って、該所定のパターン毎に特定の物質を対応させて構成した、識別手段を付加する識別添加物質(10)と、所定の手段でのみ検知される属性識別用添加物(22)を含有することを特徴とする識別情報保持物(20)。
- 該所定の手段は、光学的手段、電磁的手段、熱的手段又は化学的手段のいずれかである請求項11に記載の識別情報保持物(20)。
- 複数の記号が複数のパターンで繰り返し出現して構成される識別情報に従って、該所定のパターン毎にアデニン、シトシン、グアニン、チミンを対応させて構成され、識別情報部(11)と、該識別情報部(11)の両端にあり、該識別情報部(11)の座位を示す位置情報を備えかつその塩基配列情報が秘匿された位置情報部(12a,12b)とを有する識別DNA塩基配列(10a)と、
アデニン、シトシン、グアニン、チミンで構成された1種類又は複数種類のダミーDNA塩基配列(10b)と、
からなる識別手段を付加する識別添加物質(10)を、識別情報保持物(20)に添加することを特徴とする不正使用検出方法。 - 複数の記号が複数のパターンで繰り返し出現して構成される識別情報に従って、該所定のパターン毎にアデニン、シトシン、グアニン、チミンを対応させて構成され、識別情報部(11)と、該識別情報部(11)の両端にあり、該識別情報部(11)の座位を示す位置情報を備えかつその塩基配列情報が秘匿された位置情報部(12a,12b)とを有する識別DNA塩基配列(10a)を備えた、識別手段を付加する識別添加物質(10)を、識別情報保持物(20)に添加し、該識別情報保持物(20)で形成した識別情報表示物(31)を視認できない態様で貼付し、該識別情報表示物(31)を貼付する位置、及び該識別情報部(11)を、製品ロット毎に替えることを特徴とする不正使用検出方法。
- 識別情報保持物(20)の属性を製品ロット毎に異なるものにすることを特徴とする不正使用検出方法。
- 識別情報保持物(20)を不可視にし、製品への貼付位置を、製品ロット毎に替えることを特徴とする不正使用検出方法。
- 識別情報保持物(20)で形成した識別情報表示物(31)と、製品デザインに秘密に加える印を、製品ロット毎に異なるものにすることを特徴とする不正使用検出方法。
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