JP2004328583A - デジタル放送受信装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】デジタル放送受信装置は、受信信号の特性を補正する可変係数フィルタ3と、受信信号に含まれる遅延波を検出する遅延波検出回路4とを有する。遅延波検出回路4は、検出遅延波において受信信号自身を参照信号として相関計算を行い、この相関計算によって得られた相関値に基づいて遅延波情報を求める。可変係数フィルタ3は、得られた遅延波情報に基づいてフィルタ係数を決定する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、OFDM(直交周波数分割多重)方式で伝送されるデジタル放送信号を受信するデジタル放送受信装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
社団法人電波産業会(ARIB)は、地上波デジタルテレビジョン放送及び地上波デジタル音声放送等の標準規格(例えば、規格番号ARIB STD−B31及びARIB STD−B29)を定めている。図14は、この規格に従うOFDM方式のデジタル放送受信装置の構成を概略的に示すブロック図である。図14に示されるデジタル放送受信装置においては、ベースバンドに変換されたOFDM信号は入力端子1を通してA/D変換器2に入力され、デジタル信号に変換される。デジタル信号に変換されたOFDM信号は、ガードインターバル除去(GI除去)回路5においてガードインターバル(GI)部を除去される(例えば、非特許文献1参照)。GI部を除去された信号は、高速フーリエ変換(FFT)回路6によって周波数領域に変換される。パイロット補正回路7は、変換された信号からパイロット信号を抽出し、この情報に応じて補正を行い、伝送路歪の影響を除去したデータを生成する。誤り訂正回路8は、パイロット補正されたデータに含まれる誤りを訂正する。誤りを訂正されたデータは、出力端子9から出力される。
【0003】
図15は、OFDM変調を実施する送信側の構成を概略的に示す図であり(例えば、非特許文献1参照)、図16は、OFDMシンボルの波形図である。図15に示される送信側の構成においては、デジタル情報が入力端子15を通して直列/並列変換器16に入力され、逆高速フーリエ変換(IFFT)回路17によるIFFTを受ける。この処理により、多数のキャリアがデータで変調された信号が形成される。IFFT後の信号は、時間領域で一定の長さ(図16に示される1変調シンボル)を有する。OFDM方式では、図16に示されるように、変調シンボルの最後部をコピーして変調シンボルの前方にGI部として付加する。GI部が付加されたOFDMシンボルは、マルチパスが生じた場合であっても、遅延時間がGI長より短ければ、遅延波の電力が非常に大きい場合を除き、受信後に補正が可能である。
【0004】
【非特許文献1】
堀智他、「OFDMにおけるガード区間を利用したアダプティブアレー」(電子情報通信学会論文誌B、Vol.J85−B、No.9、pp.1608−1615、2002年9月)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来のデジタル放送受信装置によって受信されるOFDMシンボルにGI長を超える遅延波が存在する場合には、シンボル間干渉が発生し、急激に受信性能が劣化するという問題がある。また、シンボル間干渉は伝送路歪の一つであるが、原理上FFT後のパイロット補正によって補正することが困難である。
【0006】
そこで、本発明は上記したような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、遅延時間の長いマルチパスが存在する環境下であっても高い受信性能を持つデジタル放送受信装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るデジタル放送受信装置は、OFDM方式で伝送される信号を受信する装置であって、受信信号の特性を補正する可変係数フィルタと、前記受信信号に含まれる遅延波を検出する遅延波検出手段とを有し、前記遅延波検出手段が、検出遅延波において受信信号自身を参照信号として相関計算を行い、この相関計算によって得られた相関値に基づいて遅延波情報を求め、前記可変係数フィルタが、前期遅延波情報に基づいて前記受信信号の特性を補正する際に用いるフィルタ係数を決定する係数設定回路を有するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1のデジタル放送受信装置の構成を概略的に示すブロック図である。図1に示されるように、実施の形態1のデジタル放送受信装置は、入力端子1と、A/D変換器2と、デジタル信号に変換されたOFDM(直交周波数分割多重)信号の特性を補正するフィルタ3と、フィルタ3の処理内容を制御する遅延波検出回路4とを有する。また、実施の形態1のデジタル放送受信装置は、ガードインターバル(GI)部を除去するガードインターバル除去(GI除去)回路5と、高速フーリエ変換(FFT)回路6と、パイロット補正回路7と、誤り訂正回路8と、出力端子9とを有する。
【0009】
実施の形態1のデジタル放送受信装置においては、受信部(図示せず)によって受信され、低域に変換されたOFDM信号が、入力端子1に入力される。入力されたOFDM信号は、A/D変換器2によりデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換されたOFDM信号は、フィルタ3により特性を補正される。フィルタ3は、可変特性のフィルタであり、遅延波検出回路4によりその特性を制御される。フィルタ3により補正されたOFDM信号は、GI除去回路5においてGI部を除去される。GI部を除去されたOFDM信号は、FFT回路6によって周波数領域に変換される。変換された信号には送信側でパイロット信号が挿入されており、これを抽出することにより伝送路の状態を知ることができる。パイロット補正回路7は、パイロット信号を抽出し、この情報(即ち、伝送路の状態)に応じて受信データの補正を行うことによって、伝送路歪の影響を除去したデータを生成する。誤り訂正回路8は、パイロット補正されたデータに含まれる誤りを訂正する。地上波デジタル放送用としてARIBが定める標準規格(例えば、規格番号ARIB STD−B31及びARIB STD−B29)では、誤り訂正符号として畳み込み符号とRS(リードソロモン)符号の連接符号を用いており、これに対応した復号回路を用いることにより誤り訂正を行う。誤り訂正回路8によって誤りを訂正されたデータは、出力端子9から出力される。
【0010】
次に、フィルタ3及び遅延波検出回路4によるシンボル間干渉の抑圧について説明する。フィルタ3は、FFT後のパイロット補正回路7によるパイロット補正で実施することが困難なシンボル間干渉を補正する。一般的に、特性補正を適応的に行うフィルタとしては、図3に示すような構成の判定帰還型等化器が知られている。図3に示される判定帰還型等化器は、複数の遅延素子51aを含む遅延線51と、遅延線51の各遅延位置に接続された複数の乗算器52と、加算器53と、判定部54と、誤差計算部55と、タップ係数を決定する係数更新部56と、複数の遅延素子57aを含む遅延線57と、遅延線57の各遅延位置に接続された複数の乗算器58とを有する。図3に示される判定帰還型等化器は、受信信号を予測し、予測値と受信信号の誤差を最小とするように制御されるものであり、単一搬送波の伝送方式では一般的に用いられている方式である。しかし、OFDM方式では受信信号は擬似雑音のような形態(図16を参照)をしており、受信信号を予測することは困難であるため、図3に示される判定帰還型等化器を用いることはできない。
【0011】
仮に遅延波の遅延時間・大きさ・位相が既知であるとすると、受信信号R(ω)は次式(1)のように表わされる。
【数1】
ここで、R(ω)は受信信号の周波数表現、X(ω)は送信信号の周波数表現、τiは遅延時間、ciは複素定数である。
【0012】
よって、次式(2)に示されるように、受信信号R(ω)に対し、逆特性となる関数を乗算することにより補正が可能となる。
【数2】
【0013】
このような関数の演算を実現する回路は、例えば、図4に示されるようなものになる。図4に示される回路は、複数の遅延素子51aを含む遅延線51と、遅延線51の各遅延位置に接続された複数の乗算器52と、加算器53と、タップ係数を決定する係数設定回路20と、複数の遅延素子57aを含む遅延線57と、遅延線57の各遅延位置に接続された乗算器58とを有する。図4において、係数設定回路20は、遅延波情報から、遅延線57の該当する遅延位置のタップ係数(乗算器58の乗算係数)を−ci(iは、0以上n以下の整数である)に設定し、その他のタップ係数を0とする。図4に示される構成を有するフィルタは、設定されたタップ係数を用いて式(2)の演算を実行し、受信信号を補正する。以上の説明では、遅延波の遅延時間・大きさ・位相が既知であると仮定したが、一般には、これらは未知であるため、デジタル放送受信装置においては何らかの検出・推定を行う必要がある。別言すれば、遅延波の遅延時間・大きさ・位相を検出・推定できれば、上記式(2)を用いてシンボル間干渉を抑圧することが可能になる。
【0014】
次に、遅延波検出回路4による遅延波検出について説明する。図2は、図1の遅延波検出回路4の構成を概略的に示すブロック図である。遅延波検出回路4の入力端子10には、デジタル信号に変換されたOFDM信号が入力される。入力されたOFDM信号の一部は、参照値メモリ12にコピーされる。コピーする長さは任意であるが、ここでは、kサンプルがコピーされる場合を説明する。一方、OFDM信号は相関値計算回路11に入力されて相関値を計算される。相関値は複数個計算される。i番目の相関値Miは次式(3)により計算される。
【数3】
ここで、r(i+j)は受信OFDM信号の中のi+j番目のサンプル値、a(j)は参照値メモリ12中のj番目のサンプル値、上付き添字「*」は複素共役を表わす。また、説明を簡単にするため、参照値メモリ12には受信OFDM信号の最後端のGI部と同じデータ部分のサンプルがコピーされているものとする。また、kは、GI長に等しい。また、a(j)=r(j+T)である。ここで、TはGI部を除いたOFDMシンボル長である。以上から相関値Miは、距離T−iの自己相関であることが分る。
【0015】
上記式(3)を用いて相関値Miを計算すると、例えば、M0はGI部と最後部の相関演算となるため、本来高い相関値が得られる(図5の原点位置を参照)。また、受信信号に遅延波が加算されている場合、遅延波の遅延時間に相当する位置で相関値が高くなるため、得られた相関値から遅延波の遅延時間を知ることができる。また、OFDM信号の性質から、非常に鋭いピークを持った相関値の検出結果を得ることができる(図5の遅延波位置を参照)。相関値Miを常に距離Tの自己相関として計算する方法によれば、ピークの広がりが大きくなり、遅延時間を正確に求めることが困難である。しかし、図2に示された遅延時間・係数検出回路13においては、相関値Miのピーク位置(図5の遅延波位置)から遅延波の遅延時間を算出することができる。
【0016】
シンボル間干渉を抑圧するためには、遅延波の遅延時間だけでなく、その大きさ・位相も併せて知る必要がある。デジタル化された受信信号r(i)を改めて書き直すと、次式(4)のようになる。
【数4】
ここで、dmは式(1)の遅延時間τmに等価な遅延を示し、x(i)は送信OFDMシンボルの中のi番目のサンプル値を示す。
【0017】
上記式(3)及び式(4)から、相関値Miは次式(5)のように表わすことができる。
【数5】
【0018】
上記式(5)を展開すると、次式(6)のようになる。
【数6】
【0019】
OFDM信号の自己相関特性は非常に急峻な特性を示すこと、及び、参照値の取り方から、x(j)=x(j+T)となることを考慮すると、式(6)の各項のうち第2項と第4項は小さな値となり、第1項と第3項が支配的となることが分る。また、式(6)の第1項は、i=0の場合のみ、大きな値を持つ。また、式(6)の第3項も、特別な条件、即ち、iがある遅延波の遅延時間dm0に等しいときにのみ大きな値を持つことがわかる。今、i=dm0とすると、x(j)=x(j+T)から、次式(7)が得られる。
【数7】
ここで、pはサンプルあたりの平均電力である。
【0020】
サンプル数kの値をある程度大きくとると、平均電力はiによらず一定とみなすことができるので、M0とMdm0の比からcm0を求めることができる。以上のことから、図2に示される遅延時間・係数検出回路13では、相関値Miの計算値から、遅延波の遅延時間・大きさ・位相の情報を得ることができることがわかる。
【0021】
以上説明したように、実施の形態1のデジタル放送受信装置においては、受信信号の一部を参照信号として用いて相関演算を行うように構成することにより、遅延波の遅延情報を検出することが可能となり、また、遅延波情報によりフィルタ3の係数を決定するように構成することにより効率的にシンボル間干渉を抑圧できる。また、フィルタ3及び遅延波検出回路4により、シンボル間干渉だけでなく、通常の伝送路歪の補正を行うこともできる。このため、実施の形態1のデジタル放送受信装置によれば、OFDM方式で伝送されるデジタル放送信号の受信性能を向上させることができる。
【0022】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2のデジタル放送受信装置の構成を概略的に示すブロック図である。図6において、図1(実施の形態1)の構成と論理的に同一の動作をするものには、同じ符号を付す。図6に示されるように、実施の形態2のデジタル放送受信装置は、図1のフィルタ3に代えて可変遅延線フィルタ3aを備えた点が、実施の形態1のデジタル放送受信装置と相違する。
【0023】
図7は、図6の可変遅延線フィルタ3aの構成を概略的に示すブロック図である。図7に示されるように、可変遅延線フィルタ3aは、入力端子21と、加算器22と、複数の可変遅延線23a(これらが遅延部23を構成する)と、可変遅延線23aのそれぞれに接続された複数の乗算器24a(これらが乗算部24を構成する)と、出力端子25と、係数設定回路20とを有する。
【0024】
図7に示されるように、可変遅延線フィルタ3aの入力端子21に入力されたOFDM信号は、加算器22で遅延信号と加算される。加算された信号は、各可変遅延線23aにより適宜遅延される。即ち、可変遅延線23aの数をn個として各可変遅延線23aの遅延時間を遅延波検出で得られた遅延波の遅延時間dm(m=0,1,…,n−1である)に設定する。適宜遅延された信号のそれぞれには、乗算器24aで遅延波検出で得られた大きさと位相を表わす係数cm(m=0,1,…,n−1である)が乗算される。加算器22は、OFDM信号に、乗算によって得られた値を加算する。加算後の信号は、出力端子25から出力される。
【0025】
図7に示される可変遅延線フィルタ3aの伝達関数H(Z)をZ変換を用いて表現すると、次式(8)のようになる。
【数8】
【0026】
一方、入力信号R(Z)は、上記式(4)をZ変換を用いて表現することにより、次式(9)のようになる。
【数9】
【0027】
式(8)及び式(9)から、R(Z)*H(Z)=X(Z)となる。X(Z)はZ変換で表現する送信信号であるから、この式を用いて伝送路歪を抑圧できる。このことは、シンボル間干渉を抑圧できることを意味する。また、図4(実施の形態1)に示される構成のフィルタ3においては、遅延波の数にかかわらず、最大遅延に対応した数の遅延素子及び乗算器を備えておく必要があるが、図7(実施の形態2)においては可変遅延線フィルタ3aを採用しているので、遅延波の数だけ可変遅延線23a及び乗算器24aを備えればよく、ハードウェア規模を小さくすることができる。このように、実施の形態2のデジタル放送受信装置においては、遅延波検出回路4により予め遅延波情報を得ることができるため、可変遅延線を用いたフィルタ構成が可能となっている。
【0028】
以上説明したように、実施の形態2のデジタル放送受信装置においては、可変遅延線フィルタ3a及び遅延波検出回路4を備えるように構成したため、シンボル間干渉や伝送路歪を抑圧して受信性能を向上しながらハードウェア規模の増大を抑えることができる。
【0029】
図8は、図6の可変遅延線フィルタの他の例の構成を概略的に示すブロック図である。図8において、図7の構成と同一又は対応する構成には、同じ符号を付す。図8に示される可変遅延線フィルタは、前ゴーストに対応するための複数の可変遅延線41a(これらが遅延部41を構成する)と、複数の乗算器42a(これらが乗算部42を構成する)とを有する点のみが、図7に示される可変遅延線フィルタと相違する。可変遅延線フィルタを、図8に示されるように構成することにより、受信信号に前ゴーストが加わるような環境下における受信性能を向上させることができる。
【0030】
なお、実施の形態2において、上記以外の点は、上記実施の形態1の場合と同じである。
【0031】
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3のデジタル放送受信装置の構成を概略的に示すブロック図である。図9において、図6(実施の形態2)の構成と論理的に同一の動作をするものには、同じ符号を付す。図9に示されるように、実施の形態3のデジタル放送受信装置は、図6の可変遅延線フィルタ3aに代えて拡張可変遅延線フィルタ3bを備えた点が、実施の形態2のデジタル放送受信装置と相違する。
【0032】
図10は、図9の拡張可変遅延線フィルタ3bの構成を概略的に示すブロック図である。図10において、図7(実施の形態2)の構成と論理的に同一の動作をするものには、同じ符号を付す。図10に示されるように、実施の形態3における拡張可変遅延線フィルタ3bは、図7の可変遅延線フィルタ3aの複数の乗算器24aに代えて複数のサブフィルタ26a(これらがサブフィルタ部26を構成する)備えた点が、実施の形態2の可変遅延線フィルタ3aと相違する。サブフィルタ26aは、遅延波検出回路4による遅延波検出で得られた情報から導出される特性を乗算する。
【0033】
実施の形態3のデジタル放送受信装置の基本的な動作は、実施の形態2のデジタル放送受信装置の動作と同様である。図10に示されるように、入力端子21に入力されたOFDM信号は、加算器22で遅延信号と加算される。加算された信号は、可変遅延線23aにより適宜遅延される。即ち、可変遅延線23aの数をn個として各可変遅延線23aの遅延時間を遅延波検出で得られた遅延波の遅延時間dm(m=0,1,…,n−1である)に相当する時間に設定する。実施の形態3においては、サブフィルタ26aが存在するため、実際の遅延値としてはサブフィルタ26aの遅延も見込む必要があるため、設定される遅延値はdmそのものではないが、原理的には同一とみなして議論してよい。適宜遅延された信号は、サブフィルタ26aで遅延波検出で得られた情報から導出される特性をかけられた後、加算器22で加算される。加算後の信号は出力端子25から出力される。
【0034】
次に、サブフィルタ26aの役割について説明する。上記式(1)と式(4)を比較すると、式(4)は厳密ではない。式(4)においては、遅延時間dmはデジタル化されたときのサンプリング周期の整数倍を仮定している。サンプリング周期が充分に短い場合には、式(1)と式(4)との差は無視できるが、そうでない場合には、受信性能が低下する。これは、実施の形態2の構成において可変遅延線フィルタ3aの遅延時間をサンプリング周期の整数倍単位で設定することに起因する。ひとつの解決方法として、サンプリング周期を短くとることが考えられるが、一般的に回路規模及び消費電力の増大を招くので好ましくない。そこで、図10に示されるように、サブフィルタ26aを設けることによって、各遅延信号に対し内挿処理を施すことと等価な処理が可能となり、サンプリング周期の整数倍でない遅延時間に対しても対応でき、その結果、受信性能の低下を抑制できる。
【0035】
以上説明したように、実施の形態3のデジタル放送受信装置においては、拡張可変遅延線フィルタ3b及び遅延波検出回路4を備え、拡張可変遅延線フィルタ3bの中にサブフィルタ26aを設けるように構成したため、シンボル間干渉や伝送路歪を抑圧し受信性能を向上しながらハードウェア規模の増大を抑えることができる。また、遅延波の遅延時間がサンプリング周期の整数倍から大きく異なる場合であっても、受信性能の低下を抑制することができる。
【0036】
なお、実施の形態3のデジタル放送受信装置において、図8(実施の形態2)に示されるように、前ゴーストに対応するための構成を追加することも可能であり、この場合には、受信性能を更に向上させることができる。
【0037】
また、実施の形態3において、上記以外の点は、上記実施の形態1又は2の場合と同じである。
【0038】
実施の形態4.
図11は、本発明の実施の形態4のデジタル放送受信装置の構成を概略的に示すブロック図である。図11において、図1(実施の形態1)の構成と論理的に同一の動作をするものには、同じ符号を付す。図11に示されるように、実施の形態4のデジタル放送受信装置は、誤差検出・係数更新回路27を備えた点が、実施の形態1のデジタル放送受信装置と相違する。
【0039】
図12は、図11の誤差検出・係数更新回路27の構成を概略的に示すブロック図である。図12に示されるように、誤差検出・係数更新回路27は、OFDM信号を入力する入力端子28と、遅延回路29と、入力信号と遅延信号との差分を計算する差分計算回路30と、差分データとOFDM信号よりフィルタ係数を算出する係数更新計算回路31と、出力端子32とを有する。
【0040】
実施の形態4のデジタル放送受信装置の基本的な動作は、実施の形態1のデジタル放送受信装置の動作と同様である。実施の形態1において説明したように、遅延波検出回路4は、上記式(7)に基づき遅延波情報を得る。しかし、上記式(7)により得られる相関値Mdm0(即ち、iが、ある遅延波の遅延時間dm0に等しいときの相関値)の値は近似値であるため、様々な要因により誤差を生じる。デジタル放送受信装置の受信性能を向上させるためには、上記式(7)により得られる相関値Mdm0の値の誤差をできるだけ小さくすることが望ましい。通常の判定帰還型等化器が用いられる場合には、最急降下法等のアルゴリズムを用いてフィルタ係数を繰り返し更新し、誤差を最小に近づける方法がとられる。しかし、前述したようにOFDM信号では理想値の推定が困難であるため、この手法を直接用いることができない。そこで、実施の形態4においては、誤差検出・係数更新回路27によって相関値の誤差をできるだけ小さくする。
【0041】
次に、誤差検出・係数更新回路27について説明する。図12において、遅延回路29の遅延量を変調シンボル長に設定することにより差分計算回路30ではOFDMシンボル後端部分と、本来そのコピーであるGI部との差分を計算する。図13に差分計算の様子を示す。差分計算は、GI期間と同じ長さにわたって計算を行う。送信信号では、OFDMシンボル後端部分とGI部は同じ物であるから、伝送路における歪がなければ差分は0となる。実際の伝送路においては雑音等が付加されるので、差分は0にならない。この差分の電力が最小となるように制御することにより、伝送路歪の影響を最小とすることができる。この方法は、ある種のMMSE(Minimum Mean Square Error:最小平均自乗誤差)基準で制御する方法である。上記非特許文献1は、同様のMMSE基準を用いてアレイアンテナを制御する方法について記述しているが、実施の形態4の構成では、予め得られた遅延波情報を基に、更にこのMMSE基準を用いてフィルタ制御により誤差最小化を図るっている。
【0042】
以上説明したように、実施の形態4のデジタル放送受信装置によれば、誤差検出・係数更新回路7を備えているので、遅延波情報の検出誤差が無視できない場合であっても、高精度でシンボル間干渉の抑圧が可能になる。
【0043】
なお、図11におけるフィルタ3を、実施の形態2の可変遅延線フィルタ3a、又は、実施の形態3の拡張可変遅延線フィルタ3bに置き換えることもできる。
【0044】
また、実施の形態4において、上記以外の点は、上記実施の形態1から3までの場合と同じである。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るデジタル放送受信装置によれば、地上波デジタルテレビジョン信号や地上波デジタル音声信号等のようなOFDM方式で伝送される信号の受信性能を向上させることができるという効果がある。
【0046】
また、本発明に係るデジタル放送受信装置が可変遅延フィルタを備えた場合には、ハードウェア規模の増大を抑えることができるという効果がある。
【0047】
また、本発明に係るデジタル放送受信装置が拡張可変遅延フィルタを備えた場合には、サンプリング周波数を不必要に高くすることなく性能向上することができ、消費電力を低く抑えかつハードウェア規模を小さくすることができるという効果がある。
【0048】
また、本発明に係るデジタル放送受信装置が誤差検出・係数更新回路を備えた場合には、遅延波情報の検出誤差が無視できない場合でも、高精度でシンボル間干渉の抑圧が可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1のデジタル放送受信装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1の遅延波検出回路の構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】一般的な判定帰還型等化器の構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】図1のフィルタの構成を概略的に示すブロック図である。
【図5】実施の形態1における遅延波検出動作の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態2のデジタル放送受信装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図7】図6の可変遅延線フィルタの構成を概略的に示すブロック図である。
【図8】図6の可変遅延線フィルタの他の例の構成を概略的に示すブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態3のデジタル放送受信装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図10】図9の拡張可変遅延線フィルタの構成を概略的に示すブロック図である。
【図11】本発明の実施の形態4のデジタル放送受信装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図12】図11の誤差検出・係数更新回路の構成を概略的に示すブロック図である。
【図13】実施の形態4における誤差検出処理の説明図である。
【図14】従来のデジタル放送受信装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図15】OFDM変調を実施する送信側の構成を示す図である。
【図16】OFDMシンボルの波形図である。
【符号の説明】
1 入力端子、 2 A/D変換器、 3 フィルタ、 3a 可変遅延線フィルタ、 3b 拡張可変遅延線フィルタ、 4 遅延波検出回路、 5 ガードインターバル除去(GI除去)回路、 6 高速フーリエ変換(FFT)回路、 7 パイロット補正回路、 8 誤り訂正回路、 9 出力端子、 10 遅延波検出回路の入力端子、 11 相関値計算回路、 12 参照値メモリ、13 遅延時間・係数検出回路、 14 遅延波検出回路の出力端子、 15送信側の構成の入力端子、 16 直列/並列変換回路、 17 逆高速フーリエ変換(IFFT)回路、 18 ガードインターバル付加(GI付加)回路、 19 送信側の構成の出力端子、 20 係数設定回路、 21 可変遅延線フィルタの入力端子、 22 加算器、 23 遅延部、 23a 可変遅延線、 24 乗算部、 24a 乗算器、 25 可変遅延線フィルタの出力端子、 26 サブフィルタ部、 26a サブフィルタ、 27 誤差検出・係数更新回路、 28 誤差検出・係数更新回路の入力端子、 29 遅延回路、30 差分計算回路、 31 係数更新計算回路、 32 誤差検出・係数更新回路の出力端子、 41 遅延部、 41a 可変遅延線、 42 乗算部、42a 乗算器、 51 遅延線、 51a 遅延素子、 52 乗算器、 53 加算器、 57 遅延線、 57a 遅延素子、 58 乗算器。
Claims (7)
- OFDM方式で伝送される信号を受信するデジタル放送受信装置において、
受信信号の特性を補正する可変係数フィルタと、
前記受信信号に含まれる遅延波を検出する遅延波検出手段と
を有し、
前記遅延波検出手段が、検出遅延波において受信信号自身を参照信号として相関計算を行い、この相関計算によって得られた相関値に基づいて遅延波情報を求め、
前記可変係数フィルタが、前期遅延波情報に基づいて前記受信信号の特性を補正する際に用いるフィルタ係数を決定する係数設定回路を有する
ことを特徴とするデジタル放送受信装置。 - 前記遅延波情報が、遅延波の遅延時間、大きさ、及び位相を含むことを特徴とする請求項1に記載のデジタル放送受信装置。
- 前記可変係数フィルタが、
前記受信信号が入力される第1の遅延線と、
前記第1の遅延線の各遅延位置に接続された複数の第1の乗算器と、
加算器と、
前記加算器の出力が入力される第2の遅延線と、
前記第2の遅延線の各遅延位置に接続された複数の第2の乗算器と、
を有し、
前記加算器が、前記複数の第1の乗算器の出力信号と前記複数の第2の乗算器の出力信号とを加算して出力し、
前記係数設定回路が決定するフィルタ係数が、前記複数の第2の乗算器のそれぞれの乗算係数を含む
ことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のデジタル放送受信装置。 - 前記可変係数フィルタが、
加算器と、
前記加算器の出力が入力され、それぞれの遅延時間が可変の複数の遅延線と、
前記複数の遅延線のそれぞれに接続された複数の乗算器と
を有し、
前記加算器が、前記受信信号と前記複数の乗算器の出力信号とを加算して出力し、
前記係数設定回路が決定するフィルタ係数が、前記複数の遅延線のそれぞれの遅延時間と、前記複数の乗算器のぞれぞれの乗算係数とを含む
ことを特徴とする請求項2に記載のデジタル放送受信装置。 - 前記可変係数フィルタが、
加算器と、
前記加算器の出力が入力され、それぞれの遅延時間が可変の複数の遅延線と、
前記複数の遅延線のそれぞれに接続され、乗算係数を整数値よりも小さい値に設定できる複数のサブフィルタと
を有し、
前記加算器が、前記受信信号と前記複数のサブフィルタの出力信号とを加算して出力し、
前記係数設定回路が決定するフィルタ係数が、前記複数の遅延線のそれぞれの遅延時間と、前記複数のサブフィルタの乗算係数とを含む
ことを特徴とする請求項2に記載のデジタル放送受信装置。 - 前記可変係数フィルタが、前記受信信号の前ゴーストを除去する回路を有することを特徴とする請求項4又は5のいずれかに記載のデジタル放送受信装置。
- 前記受信信号のガードインターバル期間とOFDM後端部との誤差を計算し、この誤差が最小となるように前記フィルタ係数を計算することを特徴とする請求項1から6までのいずれかに記載のデジタル放送受信装置。
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