JPWO2007032497A1 - 受信機、伝送方法、及び伝送システム - Google Patents

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英昭 酒井
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Abstract

伝送路の次数(物理的には伝送路のインパルス応答長に相当)が、CP長より大きいときでも、ブロック間干渉の影響を低減する。複数のシンボルからなるブロックを用いた伝送方式用の受信機20であって、伝送路の伝達関数を推定する伝達関数推定部21と、前記伝達関数推定部21で推定された伝達関数h及び受信した前ブロックの信号s(n−1)に基づいて、前ブロックから現ブロックへのブロック間干渉成分のレプリカを生成するブロック間干渉成分生成部24と、を有し、前記ブロック間干渉成分のレプリカを用いて、受信信号のブロック間干渉成分を低減させる。

Description

本発明は、受信機、伝送方法、及び伝送システムに関するものであり、好ましくは前ブロックから現ブロックへのブロック間干渉に対するガード区間にサイクリックプレフィックス(Cyclic Prefix、以下「CP」という)などの冗長信号が挿入されたブロックを用いた伝送方式に関するものである。
高速デジタル伝送の分野において、図2に示すようにデータ(送信信号)にCPを付加したブロックを伝送する伝送方式が知られている。CPは、M個のシンボルからなるデータ本体部分(ブロック本体部)の最後のK個のシンボルをデータ本体部分の先頭にコピーしたものである。
このような伝送方式としては、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing、直交周波数分割多重)方式や、サイクリックプレフィックスを適用したシングルキャリアブロック伝送(Single Carrier block transmission with Cyclic Prefix、SC−CP)方式を挙げることができる。
ここで、受信機で受信した受信信号は、伝送路による影響を受けており、これを取り除く処理を等化処理という。等化処理は、一般に、伝送路の伝達関数の逆特性をもつフィルタによって実現される。
図7に示すように、サイクリックプレフィックスを用いたブロック伝送方式(SC−CP)では、離散周波数領域の等化器100が用いられる。これは、CP除去後の受信信号ベクトルを離散フーリエ変換し、変換領域で各周波数成分毎にウェイトを乗算し、離散フーリエ逆変換によって再び時間領域の信号に戻すことで等化を実現する等化器である。
なお、図7における他の構成の機能は、後述の実施形態の説明によって明らかとなるであろう。
非特許文献1には、CPを送信信号ブロックに付加すると、ブロック間干渉を除去でき、周波数領域等化時の性能が向上することが示されている。
ブロック間干渉(Inter-Block Interference、以下「IBI」ともいう)は、伝送経路において生じた前ブロックの遅延信号が現ブロックの信号と重なることよって生じるものである。CPは、ブロック間のガード区間(Guard Interval)として挿入されていると考えた場合、前ブロックの遅延信号が現ブロックのCP内にとどまれば、ブロック間干渉による影響を除去することが可能である。
以下、上記を詳細に説明するため、送信信号から等化処理前までを数式化する。
まず、送信機において、送信信号を、M個のシンボルごとにブロック化する(ブロック本体部生成)。下記式(1)においてnはブロック毎に付けられた番号である。
Figure 2007032497
ブロック本体部にCPを付加することでCP付きブロックが生成され、このブロックが送信される。
Figure 2007032497
ただし、Tcpは、ブロック本体部s(n)の最後のK個の成分をそのままの順序で先頭にコピーする操作を表す。
Figure 2007032497
伝送路(通信路)のインパルス応答をh={h0, h1, ... ,hL}とすると、受信機における受信信号ブロックは、以下のように表される。
Figure 2007032497
ただし、Hは以下のように表せる。
Figure 2007032497
さらに、Hを(M + K) × (M + K) の2つの部分行列
Figure 2007032497
Figure 2007032497
に分解すると、受信ブロックは、
Figure 2007032497
となる。ここで、式(8)の右辺第1項は、(n−1)番目の送信ブロックからの信号成分であり、ブロック間干渉 (IBI)の成分を表している。
受信側では、CPを除去する。数式で表すと、以下のようになる。
Figure 2007032497
ただし、
Figure 2007032497
である。
このとき CP長Kと伝送路の次数(物理的には伝送路のインパルス応答長に相当)Lに関し、K≧L、すなわちCP長Kが伝送路の次数L以上であれば、送信信号ブロックにかかわらず、RcpH=0なので、CP除去後の受信信号r(n)は、
Figure 2007032497
となり、ブロック間干渉成分が除去される。
さて、式(11)のRcpH0Tcpを展開すると以下のようになる。
Figure 2007032497
式(12)のような構造を持つ行列は、巡回行列(Circulant Matrix)と呼ばれ、「離散フーリエ変換(Discrete Fourie Transform、DFT)行列によってユニタリ相似変換が可能である。」という性質を持つ。
巡回行列の性質を用いると、
Figure 2007032497
と書ける。
ただし、
Figure 2007032497
Figure 2007032497
である。
式(11)の右辺第2項の雑音成分をn(n)とおくと、CP除去後の受信信号r(n)は、以下のように書き表せる。
Figure 2007032497
CP除去後の等化処理を数式で表すと以下のようになる。
周波数領域等化はCP除去後の受信信号ブロックを離散フーリエ変換し、変換領域で各周波数成分毎にウェイトを乗算し、離散フーリエ変換によって再び時間領域の信号に戻すことで等化を実現する。離散周波数領域でのウェイトを{γ0, ... ,γM−1}とし、これを対角成分にもつ対角行列をとすると、等化器出力の信号は、下記式のようになる。
Figure 2007032497
また、非特許文献1には、ゼロフォーシング (zero forcing、ZF) 基準の等化器ウェイトと最小2乗誤差 (Minimum Mean-Square-Error、MMSE) 基準の等化器ウェイトが示されている。
ZF等化器ウェイト
Figure 2007032497
MMSE等化器ウェイト
Figure 2007032497
ここで、Λ={λ0,...,λM−1}は式(14)より伝送路のインパルス応答の離散フーリエ変換である。これらのウェイトを用いたシミュレーション例も非特許文献1 (図8) に示されている。シングルキャリアブロック伝送方式のMMSE基準等化器はZF基準等化器に比べて特性が優れている。
ZF基準等化器がMMSE基準等化器に劣る主な要因は、雑音増強 (Noise Enhancement) である。雑音増強とは「ある周波数での通信路の応答 i が0または0に近い値を取った場合、その周波数におけるウェイトは非常に大きな値をとり雑音が増幅されてしまう」現象である。
林和則 「変復調と等化方式の基礎(Fundamentals of Modulation/Demodulation and Equalization Technologies)」Proc.MWE2004,pp.523-532,2004
式(9)及び式(11)に関して説明したように、ブロック間干渉を回避するには、前ブロックの遅延信号が現ブロックのCP内にとどまる必要があり、前ブロックの遅延信号が現ブロックのCPを超えてブロック本体部にまで至る事態を避けなければならない。
つまり、ブロック間干渉を回避するには、CP長Kと伝送路の次数(物理的には伝送路のインパルス応答長に相当)Lに関し、K≧L、すなわちCP長Kが伝送路の次数L以上でなければならない。
これに反し、伝送路の次数LがCP長Kよりも長いと周波数領域等化は性能が急激に低下する。
一方、伝送路の次数は、通信環境によって様々であるため、ブロック間干渉を回避するために余裕をみてCP長Kを決定しようとする場合、CP長Kを大きくせざるを得ず、ブロックにおいてCPの占める割合が増大するとともにブロック本体部の割合が低下して、伝送効率が低下する。
そこで、本発明は、伝送路の次数(物理的には伝送路のインパルス応答長に相当)Lが、CP等の冗長信号の長さより大きいときでも、ブロック間干渉の影響を低減することを目的とする。
本発明は、複数のシンボルからなるブロックを用いた伝送方式用の受信機であって、伝送路の伝達関数を推定する伝達関数推定部と、前記伝達関数推定部で推定された伝達関数及び受信した前ブロックの信号に基づいて、前ブロックから現ブロックへのブロック間干渉成分のレプリカを生成するブロック間干渉成分生成部と、を有し、前記ブロック間干渉成分のレプリカを用いて、受信信号のブロック間干渉成分を低減させることを特徴とする。
本発明によれば、ブロック間干渉成分のレプリカを生成して、これによりブロック間干渉成分を低減することができるため、伝送路の次数が冗長信号の長さより大きいときでもブロック間干渉の影響を低減できる。
しかも、本発明によれば、ブロック間干渉成分のレプリカによってブロック間干渉成分を低減できるため、ブロックが冗長信号を有していない場合(冗長信号の長さ=0)でもブロック間干渉の影響を低減できる。すなわち、伝送路の次数が、冗長信号の長さ(冗長信号の長さ=0の場合を含む)より大きいときでも、ブロック間干渉の影響を低減することができ、良好なビット誤り率が得られ、信頼性の高い伝送が可能になる。
前記ブロックは前ブロックから現ブロックへのブロック間干渉に対するガード区間となる冗長信号を有することが好ましい。また前記冗長信号は、サイクリックプレフィックスを含んでいるのが好ましい。なお、冗長信号は、サイクリックプレフィックス以外の信号を含んでいても良い。
ブロック間干渉成分が低減された受信信号に対して所定式の演算によってサイクリックプレフィックス長が短いあるいは無いことによって生じたシンボル間干渉成分を低減する処理を行う等化器を備えているのが好ましい。サイクリックプレフィックス長が短い場合やサイクリックプレフィックスが無い場合にはブロック間干渉成分低減処理後の受信信号ブロックには背景技術で説明した従来の処理ではうまく等化できないような新たなシンボル間干渉成分が含まれているが、前記シンボル間干渉成分を低減する処理を行う等化器によって、これを低減できる。この場合、上記所定式としては、例えば、後述の実施形態における式(26)、式(27)、式(28)を用いることができる。これらの式の詳細は、後述の実施形態において説明する。
なお、「サイクリックプレフィックスが無い場合」には、ブロックが冗長信号を有しているが当該冗長信号がサイクリックプレフィックスを含まない場合や、ブロックが冗長信号を有していない場合がある。
また、ブロック間干渉成分が低減された受信信号及び伝送路の推定伝達関数に基づいて現ブロックにおけるシンボル間干渉成分のレプリカを生成するシンボル間干渉成分生成部を備え、前記シンボル間干渉成分のレプリカを用いて、受信信号の前記シンボル間干渉成分を低減するのが好ましい。これによりさらに特性を改善することができる。
前記シンボル間干渉成分生成部は、シンボル間干渉成分のレプリカを生成するために用いられる送信信号ブロックの判定値を、ブロック間干渉成分が低減された受信信号から得るために、後述の実施形態における式(34)〜(36)のいずれかによる演算を行うのが好ましい。これらの式(34)〜(36)の詳細は、後述の実施形態において説明する。
前記シンボル間干渉成分生成部は、後述の実施形態における式(37)〜(41)のようにして前記送信信号ブロックの判定値からシンボル間干渉成分のレプリカを生成するように構成されているのが好ましい。この場合、演算を高速化でき、特性も良好となる。
受信機は、伝送路の次数を判定する次数判定部を備え、伝送路の次数が冗長信号の長さよりも長いか否かを判定可能であるのが好ましい。この場合、受信機は、伝送路の次数を把握して、適切な処理を行うことができる。
伝送方法に係る本発明は、複数のシンボルからなるブロックを送信する伝送方法であって、伝送路の伝達関数を推定するステップと、推定された伝達関数及び受信した前ブロックの信号に基づいて、前ブロックから現ブロックへのブロック間干渉成分のレプリカを生成するステップと、
前記ブロック間干渉成分のレプリカを用いて、受信信号のブロック間干渉成分を低減するステップと、を含むことを特徴とする。
伝送システムに係る本発明は、複数のシンボルからなるブロックを送信機から送信して受信機で受信する伝送システムであって、前記受信機は、伝送路の伝達関数を推定する伝達関数推定部と、前記伝達関数推定部で推定された伝達関数及び受信した前ブロックの信号に基づいて、前ブロックから現ブロックへのブロック間干渉成分のレプリカを生成するブロック間干渉成分生成部と、を有し、前記ブロック間干渉成分のレプリカを用いて、受信信号のブロック間干渉成分を低減する、ことを特徴とする。
第1実施形態に係る伝送システムのブロック図である。 SC−CP伝送方式におけるデータ構造図である。 プリアンブルのブロック例である。 等化器のブロック図である。 第2実施形態に係る伝送システムのブロック図である。 シンボル間干渉成分生成部のブロック図である。 CP長Kが伝送路の次数L以上であることを前提にした伝送システムのブロック図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、サイクリックプレフィックスを適用したシングルキャリアブロック伝送(SC−CP)システムのブロック図である。この伝送システムは、送信機10及び受信機20を含んでおり、送信機10から送信された信号は伝送路30を経由して受信機20によって受信される。
また、図2は、上記伝送システムにおける伝送データ形式を示している。図2に示すように、複数のデータブロックに対してプリアンブルブロック(図3に例示)を付加したものをフレームと呼ぶ。データブロック(以下、単にブロックということもある)は、複数の複素ベースバンド信号(M個のシンボル)に対し、CP(K個のシンボル)を付加したものである。なお、シンボルといった場合、通常、複数ビットを1つのシンボルに割り当てたものをいうが、ここでは1ビットだけが1つのシンボルに割り当てられたものであってもよい。
前記プリアンブルブロック(以下、単にプリアンブルということもある)とは、フレームの先頭に付加した既知信号のことをいう。シングルキャリアブロック伝送においては周波数伝達関数を推定するのに用いる。そのほか受信機でクロックや周波数の同期を取るのにも用いる。
プリアンブルとしては、例えば、PN (Psuedorandom Noise) 信号系列、チャープ (chirp) 信号などが考えられる。ここで、PN信号の詳細は[横山光雄「スペクトラム拡散通信システム」科学技術出版社p.393, 6.3 PN系列]を参照。
チャープ信号は「線形に周波数が増加する正弦波」であり、文献[J. Cioffi and J. A. C. Bingham, A Data-Driven Multitone Echo Canceller, IEEE Transactions on Communications, Vol.42, No.10, p.2853-2869, 1994B, p.2866]に生成法が記載されている。時間軸と周波数軸の両方で振幅を一定にできるメリットがある。
パイロット信号は、データブロックに埋め込まれた既知信号である。シングルキャリアブロック伝送方式においては周波数伝達関数を推定するのに用いられる。そのほか受信機でクロックや周波数の同期を取るのにも用いられる。例えば、文献[K. Hayashi and S. Hara, A New Spatio-Temporal Equalization Method Based on Estimated Channel Response, IEEE Transactoins on Vehicular Technology, Vol. 50, No.5, p.1250-1259, 2001.]のFig.3では、データチャネルに抑圧されたPN系列を使う例が示されている。
図1に戻り、まず、送信機10側における処理を数式化して説明する。
送信信号は、既述の式(1)のように、M個のシンボルごとにブロック化される。
また、送信機10では、プリアンブルブロックも生成され、複数のデータブロックの先頭に付加される。ここで生成されるプリアンブルブロックもCPを有しており、プリアンブルのCP長Kpは、データブロックのCP長Kよりも大きくなっている。また、プリアンブルCP長Kpは、プリアンブルの既知系列長Mp以下の長さとなっている(Mp≧Kp≧L>K)。
これにより、データブロックのCP長Kよりも伝送路30の次数が大きい場合でも、プリアンブルブロックのCP長Kpは伝送路30の次数よりも大きくなりやすく、受信機20において、伝達関数の推定を確実に行うことができる。
また、プリアンブルのみCPを長くすれば良いので、データブロックのCPを通常よりも短く(伝送路の次数よりも短く)して伝送効率を改善することができる。
次に、パイロット信号も生成され、送信信号ブロックに合成される。
さらに、ブロックの最後の部分を先頭にコピーしたサイクリックプレフィックス(CP)が付加される。
このようにして生成されたフレームは、無線周波数に変調され、伝送路30に送信される。
受信機20では、信号を受信して復調する。受信機20は伝送路の伝達関数推定部21を備えている。伝達関数推定部21は、プリアンブルやパイロット信号に基づいて、伝送路30の伝達関数(インパルス応答)h ={h0, h1, ... ,hL}を推定する。伝達関数の推定は、プリアンブルやパイロット信号を高速フーリエ変換(FFT)した結果に基づいて行われる。
なお、伝達関数推定は、フレーム先頭のプリアンブルだけでも行うことができるが、ブロックに合成されたパイロット信号によって推定された伝達関数を更新(修正)することで、時々刻々と変化する伝送路の伝達関数をより正確に推定することができる。
また、受信機20は、伝送路30の次数判定部22も備えており、この次数判定部22によって伝送路30の次数Lを判定する。次数Lの判定は、伝達関数推定部21と同様に高速フーリエ変換(FFT)によって行ってもよいし、AIC(Akaike Information Criterion)やMDL(Minimum Description Length)などの次数判定アルゴリズムによって行っても良い。
なお、高速フーリエ変換によって行う場合、高速フーリエ変換結果に基づき信号以外の雑音部分を所定のしきい値によって除去した場合の信号の最大遅延から次数を求めればよい。
推定された伝達関数は、受信信号の等化処理のために等化器23に与えられる。また、伝送路の次数Lの方がCP長Kよりも大きい場合(L>K)、ブロック間干渉成分(IBIレプリカ)生成部24にも推定された伝達関数が与えられる。
ブロック間干渉成分生成部24は、L>Kの場合に、前ブロックから現ブロックへのブロック間干渉成分(IBIレプリカ)を生成するものである。ブロック間干渉成分生成部24で生成されたIBIレプリカは、受信信号r(n)(現ブロック)から引き算され、ブロック間干渉(IBI)成分を減らし、ビット誤り率を改善することができる。
なお、K≧Lの場合には、ブロック間干渉成分のレプリカが受信信号r(n)から引き算される等の処理は行われず、背景技術で説明した従来の処理が行われる。
ブロック間干渉成分生成部24では、伝達関数推定部21から与えられた伝送路30の伝達関数と、前ブロックの信号s(n−1)の判定値とからIBIレプリカを生成する。
前ブロックの信号s(n−1)の判定値は、等化器23の等化処理によって得られた前ブロックの信号を前ブロックの送信信号s(n−1)とみなし、1ブロック遅延部25によって次ブロックに与えたものである。
なお、図1において、信号判定部26は、同じシンボルを示す信号であっても、雑音の影響等によって、位相や振幅が一定でないことから、所定の基準(しきい値)によって、シンボルを決定するためのものである。
以上のブロック間干渉成分の低減処理を、数式に基づいて説明すると、次の通りである。まず、既述のように、シングルブロックキャリア伝送信号に対する周波数領域等化は、伝送路の次数(物理的にはインパルス応答長に相当)LがCP長Kより長いと性能が急激に劣化する。具体的には、L>Kの場合、RcpH≠0なので式(9)は以下のようになる。なお、Tcp,H,H,Rcpは式(3)、(6)、(7)、(10)で定義したとおりである。
Figure 2007032497
式(20)において、RcpHTcp,RcpHTcp,C,CISI,CIBIはそれぞれ以下のようになる。
Figure 2007032497
Figure 2007032497
Figure 2007032497
Figure 2007032497
式(20)において、CIBIs(n−1)は前ブロックから現ブロックへのブロック間干渉成分、CISIs(n)はサイクリックプレフィックス長が短いあるいは無いことによって新たに生じた現ブロック内のシンボル間干渉 (InterSymbol Interference、ISI)成分である。
本実施形態では、LがKより大きい場合に「伝達関数hの推定値」より作成した「C BIの推定値」と「s(n−1)の判定値」を用いて式(20)のブロック間干渉成分「CIBIs(n−1)のレプリカ(IBIレプリカ)」を生成し、受信信号r(n)からIBIレプリカを引き算する。
IBIレプリカを引いた後の信号は、式(25)のようになる。
Figure 2007032497
式(25)のようなレプリカを引いた後の信号では、IBI成分が低減されており、ビット誤り率を改善することができる。
ただし、式(25)では、ISI成分が残ったままである。このISI成分はサイクリックプレフィックス長が短いあるいは無いことによって新たに生じた符号間干渉である。本実施形態のように短いサイクリックプレフィックス長が伝送路の次数よりも短い場合、サイクリックプレフィックスを超えた遅延信号によって新たなシンボル間干渉成分が生じる。このようなシンボル間干渉成分は、背景技術で説明した従来の処理ではうまく等化ができないものである。本実施形態の等化器23では、下記式(26)の演算を行うことにより、前記ISI成分をキャンセルする。なお、ここでは、式(26)の演算を行う等化器23をZF等化器という。
Figure 2007032497
また、等化器23において、ISI成分をキャンセルするための他の演算式としては、下記式(27)であってもよい。なお、ここでは、式(27)の演算を行う等化器23をMMSE等化器という。
Figure 2007032497
上記式(26)、(27)は、それぞれ、時間領域での計算であり、比較的計算量が多くなる。そこで、計算量を少なくするため、周波数領域での計算を行うのが好ましい。すなわち、等化器23において、ISI成分をキャンセルするための他の演算式としては、式(28)が好ましい。図4に、式(28)の演算を行うための等化器23の構成を示した。なお、ここでは、式(28)の演算を行う等化器23を周波数領域等化器という。
Figure 2007032497
ただし、式(28)において、Dは、式(15)表されるDFT行列である。Γは{γ0, ... ,γM−1}を対角成分にもつ対角行列であり、以下の式で得られる。
Figure 2007032497
Figure 2007032497
Figure 2007032497
Figure 2007032497
図5及び図6は、第2実施形態に係る伝送システムを示している。なお、第2実施形態において説明を省略した部分は、既述の実施形態のものと同様である。
この伝送システムの受信機20は、図1の受信機20に、シンボル間干渉成分のレプリカを生成するシンボル間干渉成分生成部27を追加して、シンボル間成分のレプリカをブロック間干渉成分のレプリカ除去後の受信信号に足し算する構成である。
シンボル間干渉成分生成部27は、図1における等化器23及び信号判定部26と同様の等化器27aと信号判定部27bを有しており、これらの等化器27a及び信号判定部27bによって、ブロック間干渉成分レプリカ除去後の受信信号ブロックから、「仮に判定された」送信信号ブロックを求める。
また、シンボル間干渉成分生成部27は、ISIレプリカ生成部27cを有しており、このISIレプリカ生成部27cは、仮に判定された送信信号ブロックからシンボル間干渉成分のレプリカCISIs(n)(ISIレプリカ)を生成し、このISIレプリカを、ブロック間干渉成分のレプリカ(IBIレプリカ)除去後の受信信号に足し算する。
ISIレプリカを足した後の受信信号は以下のようになる。
Figure 2007032497
ここで、シンボル間干渉成分生成部27の等化器27aは、図1における等化器23における等化処理の計算式のいくつかのバリエーションと同様のバリエーションを持つ。
つまり、等化器27aは、式(26)、式(27)、又は式(28)のいずれの演算を行うものであってもよいし、さらには、式(18)、式(19)の演算を行うものであってもよい。
等化器27aの計算式が式(26)である場合、シンボル間干渉成分生成部27において送信信号として仮に判定された結果は、下記式によって表される。
Figure 2007032497
ただし、式(34)において<・>は、上述のように<>内に記載された信号を信号判定部(復調器)27bにおいて判定した判定結果を示す。下記式(35)、(36)においても同様である。
また、等化器27aの計算式が式(27)である場合、シンボル間干渉成分生成部27において送信信号ブロックとして仮に判定された結果は、下記式によって表される。
Figure 2007032497
また、等化器27aの計算式が式(28)である場合、シンボル間干渉成分生成部27において送信信号ブロックとして仮に判定された結果は、下記式によって表される。
Figure 2007032497
なお、式(36)において、γ0, ... ,γM−1は、式(29)〜(32)で与えられるのが好ましい。
ISIレプリカ生成部27cでは、単にCISIs(n)を演算してもよいが、演算を高速化し、特性を良好にするために、図6に示す構成を有し、下記式(37)〜(41)の演算を行うのが好ましい。
下記式(37)は、式(23)で示すCISIの行列に着目し、ISIレプリカ(C SIs(n)のレプリカ)を演算生成するためには、s(n)の行列の要素すべてではなく、下記式(38)で示す部分行列(特定部分行列G)があれば足りることを利用したものである。
また、式(38)の部分行列を求める際に、s(n)(ISIレプリカ生成部27cの入力)の行列の要素のうち、ISIの影響によって不確かな要素(M−L+1〜M−K番目の要素)ではなく、M−L+1〜M−K番目の要素以外の要素(より確かな要素)から式(38)に示す部分行列(特定部分行列G)を求めているため、特性が良好となる。
換言すると、等化器27aの出力のs(n)を信号判定部27bで仮判定した仮判定値は、1番目〜M番目までのM個の要素のうち、M−L+1〜M−K番目の要素がそれ以外の要素に比較して、ISIの影響を強く受けるため仮判定時の信頼度が低いという性質を持つ。この性質に着目し、式(41)に示すように、ISIレプリカ生成部27cでは、信号判定部27bでの仮判定値のうち、M−L+1〜M−K番目までの(L−K)個の要素は使わず、それ以外の要素(1〜M−L番目までの(M―L)個の要素、及びM−K+1〜M番目までのK個の要素)から、式(38)に示す特定部分行例Gを求めている。このため特性が良好になる。
Figure 2007032497
Figure 2007032497
Figure 2007032497
Figure 2007032497
Figure 2007032497
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図を逸脱しないかぎり、様々な変形が可能である。

Claims (12)

  1. 複数のシンボルからなるブロックを用いた伝送方式用の受信機であって、
    伝送路の伝達関数を推定する伝達関数推定部と、
    前記伝達関数推定部で推定された伝達関数及び受信した前ブロックの信号に基づいて、前ブロックから現ブロックへのブロック間干渉成分のレプリカを生成するブロック間干渉成分生成部と、を有し、
    前記ブロック間干渉成分のレプリカを用いて、受信信号のブロック間干渉成分を低減させることを特徴とする受信機。
  2. 前記ブロックは前ブロックから現ブロックへのブロック間干渉に対するガード区間となる冗長信号を有することを特徴とする請求項1記載の受信機。
  3. 前記ブロックは、サイクリックプレフィックスを含む冗長信号を有することを特徴とする請求項1記載の受信機。
  4. ブロック間干渉成分が低減された受信信号から、サイクリックプレフィックス長が短いあるいは無いことによって生じたシンボル間干渉成分を低減する処理を行う等化器を備えている請求項1記載の受信機。
  5. ブロック間干渉成分が低減された受信信号に対して下記式(A)、(B)、(C)のいずれか1つの式による演算によってシンボル間干渉成分を低減する処理を行う等化器を備えている請求項1記載の受信機。
    Figure 2007032497
    Figure 2007032497
  6. ブロック間干渉成分が低減された受信信号及び伝送路の推定伝達関数に基づいて現ブロックにおけるシンボル間干渉成分のレプリカを生成するシンボル間干渉成分生成部を備え、
    前記シンボル間干渉成分のレプリカを用いて、受信信号の前記シンボル間干渉成分を低減する請求項1記載の受信機。
  7. 前記シンボル間干渉成分生成部は、シンボル間干渉成分のレプリカを生成するために用いられる送信信号ブロックの判定値を、ブロック間干渉成分が低減された受信信号から得るために、下記式(D)、(E)、(F)のいずれか1つの式による演算を行う請求項6記載の受信機。
    Figure 2007032497
  8. 請求項7の式(F)中の前記のγ(m=0〜M−1)は、下記式で与えられる請求項7記載の受信機。
    Figure 2007032497
  9. 前記シンボル間干渉成分生成部は、下記式によりシンボル間干渉成分のレプリカを生成するように構成されていることを特徴とする請求項6記載の受信機。
    Figure 2007032497
    Figure 2007032497
  10. 伝送路の次数を判定する次数判定部を備え、伝送路の次数が冗長信号の長さよりも長いか否かを判定可能である請求項1記載の受信機。
  11. 複数のシンボルからなるブロックを送信する伝送方法であって、
    伝送路の伝達関数を推定するステップと、
    推定された伝達関数及び受信した前ブロックの信号に基づいて、前ブロックから現ブロックへのブロック間干渉成分のレプリカを生成するステップと、
    前記ブロック間干渉成分のレプリカを用いて、受信信号のブロック間干渉成分を低減するステップと、
    を含むことを特徴とする伝送方法。
  12. 複数のシンボルからなるブロックを送信機から送信して受信機で受信する伝送システムであって、
    前記受信機は、
    伝送路の伝達関数を推定する伝達関数推定部と、
    前記伝達関数推定部で推定された伝達関数及び受信した前ブロックの信号に基づいて、前ブロックから現ブロックへのブロック間干渉成分のレプリカを生成するブロック間干渉成分生成部と、を有し、
    前記ブロック間干渉成分のレプリカを用いて、受信信号のブロック間干渉成分を低減する、
    ことを特徴とする伝送システム。
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