JP2004327121A - 写像投影方式電子線装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】面ビームで試料を照射できる高分解能且つ高スループットの写像投影方式電子線装置を提供すること。
【解決手段】面ビームを形成する一次電子によって試料Wを照射することがけ切る写像投影方式電子線装置EBIは、一次電子を発射する電子銃EGと、電子銃EGからの一次電子のビーム形状を調整する一次光学系2と、一次光学系2を通過した一時電子の進行方向を変えるウィーンフィルタ3と、ウィーンフィルタ3からの一次電子のビーム形状を調整して試料Wを面ビームによって照射させるレンズ系5と、試料Wから発せられた二次電子を導く二次光学系6、7と、二次光学系からの二次電子を検出するための二次電子検出系8とを具備する。
【選択図】 図1
【解決手段】面ビームを形成する一次電子によって試料Wを照射することがけ切る写像投影方式電子線装置EBIは、一次電子を発射する電子銃EGと、電子銃EGからの一次電子のビーム形状を調整する一次光学系2と、一次光学系2を通過した一時電子の進行方向を変えるウィーンフィルタ3と、ウィーンフィルタ3からの一次電子のビーム形状を調整して試料Wを面ビームによって照射させるレンズ系5と、試料Wから発せられた二次電子を導く二次光学系6、7と、二次光学系からの二次電子を検出するための二次電子検出系8とを具備する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、面ビームで検査対象を照射することができ、検査対象に応じて二次電子と反射電子とを切り換えて使用することが可能な高分解能且つ高スループットの写像投影方式電子線装置に関する。このように、試料上の1点ではなく少なくとも一次元方向に広がった視野に電子ビームを照射してその視野の像を形成する方式は「写像投影方式」と呼ばれている。
【0002】
【従来の技術】
これまでも、光や電子線を用いてウェーハやマスク等の検査対象に欠陥が存在するか否かの検査を行う装置が知られている。例えば、不要なパーティクルの有無を検出するために、移動ステージ上に検査対象を配置しておき、検査対象を二次元的に移動させながらレーザー光で照射する。そのとき発生する散乱光から検査対象を画像化し、散乱強度に基づいてパーティクルの存在を検出することが行われている。パーティクルやパターン欠陥を検査するには白色光が利用されており、白色光を移動ステージ上の検査対象に照射してその反射光から得た画像からパーティクルの存在やパターン欠陥の有無が検査される。また、パーティクルやパターン欠陥の有無ばかりでなく非導通、容量破壊、断線等の電気的欠陥をも検査するために電子線が利用されるようになり、移動ステージ上の検査対象に電子線を照射したときに発生する二次電子を用いて検査対象を画像化して欠陥検査を行う。
【0003】
欠陥検査装置としては、例えば、微細な欠陥をその位置とともに検出するものが公知である。この欠陥検査装置においては、パターンの欠陥を検査するに当たり、参照画像を被検査画像に対して二次元的に所定の量だけ各周辺方向にずらせた位置に配置し、それぞれの位置において参照画像と被検査画像との差の絶対値の画像を取得して、この差の絶対値の画像を処理することにより欠陥画像を得るようにしている。また、こうした画像処理を行うに際して、画像の濃度を平均化する処理、例えば平滑化処理を施すことも知られている。
【0004】
このように半導体検査装置が種々開発され提案されてきた背景には、DRAMやMPU等のための少品種大量生産からシステムLSIのための他品種少量生産へと半導体製造プロセスが変化していたのに加えて、ウェーハやマスクの一層の微細化、多層化、高集積化が進んだという事実が存在すると言える。ウェーハやマスクの高集積化によるパターンの微細化は、内部的な電気的欠陥、例えば、金属配線の接続不良、ビアやコンタクト等の層間接続孔の導通不良、を高分解能で検査する必要性を増大させ、電子線検査装置の需要を拡大することになった。また、微細化と多層化の進行により、工程間で高分解能且つ高スループットで検査を行うための欠陥検査装置の重要性が増し、そうした装置の開発が必須になったため、欠陥検査装置の市場が拡大された。
【0005】
図10の(A)は、ビーム走査方式を採用した従来の欠陥検査装置の基となっている走査型電子顕微鏡(SEM)の構成を概略的に示しており、(B)は検査画面を示している。フィラメント101、ウェーネルト102及びアノード103を有する電子銃EGから発射された一次電子104は第2レンズ105で径を絞られ、第1レンズ106によって再び径を絞られて、例えば直径0.1μmのビームスポットとしてウェーハ等の試料107を照射する。第1レンズ105及び第2レンズ106は磁界レンズである。
【0006】
一次電子104の照射により試料107から放出された二次電子108は、一次電子104の光軸から外れた位置に配置された検出器109によって検出されて電気信号に変換され、増幅器110によって増幅されてCRT111の画面上に表示される。図10の((A)に示すとおり、一次電子104は、CRT111の走査電源112と同期して動作する偏向電極113によって偏向されて試料107の表面上をラスタ状に走査する。一次電子104による試料107のラスタ走査にしたがって、図10の(B)に示すように、CRT111には、ビームスポットに対応した点の行が順に表示される。
【0007】
しかしながら、こうしたビーム走査方式の欠陥検査装置の検査時間即ちスループットは、ウェーハ1枚当たり約6時間が限界で、これよりもスループットを向上させることは困難であった。これは、電子銃から発射された電子の間に空間電荷効果が働くため、一次電子104のビーム電流を増そうにも、100nmピクセル・サイズ当たり200nA付近が限度となるばかりでなく、微細な一次電子による一筆書きの走査を行うために100MPPS程度が上限であり、スループットの向上を望むことができないからである。図11は、検査時間(単位は時間/ウェーハ)がプローブ電流(単位はnA)及び取り込み速度(単位はMPPS)とどのような関係にあるかを示しており、斜線で示す部分Aが、空間電荷効果によってビーム電流が制限される領域である。直線121は現状の欠陥検査装置における上記関係を示し、直線122は現状の欠陥検査装置のシステムノイズを改善した場合を示しており、このグラフから、検査時間の限界は約6時間/ウェーハであることが分かる。
【0008】
実際、従来の欠陥検査装置によって例えば8インチのウェーハを検査する場合、分解能を0.1μmとすると、ウェーハ1枚当たりの検査時間は7時間から11時間にも達し、検査に長時間を要するという問題がある。
【0009】
そのうえ、従来のビーム走査方式の欠陥検査装置においては、大電流の電子銃を使用する必要があるばかりでなく、欠陥検出率が75〜80%程度に止まり、分解能は0.1μm前後でしかなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上記の課題を解決するために提案されたものであり、この発明の目的は、空間電荷効果を回避でき、信号対雑音比が高く、並列処理による画像処理速度を向上させた高分解能且つ高スループットの写像投影方式電子線装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、
一次電子線を試料上の少なくとも一次元方向に広がった視野に照射する写像投影方式電子線装置であって、
一次電子を発射するための電子銃と、
第1の方向の光軸を有し、前記電子銃から発射された前記一次電子のビーム形状を調整するための一次光学系と、
前記一次光学系を通過した前記一次電子を前記第1の方向とは異なる試料方向への第2の方向へ進行させるウィーンフィルタと、
前記第2の方向へ進行する前記一次電子のビーム形状を調整して前記試料を照射させるレンズ系と、
前記試料から発せられた二次電子又は反射電子を前記レンズ系と協働して前記第2の方向とは逆の方向へ進行させる二次光学系と、
前記二次光学系を通過した前記二次電子と前記反射電子の少なくとも一方を検出するための検出系と、
を具備することを特徴とする電子線装置、
を提供する。
【0012】
請求項2の発明は、こうした電子線装置において、前記レンズ系及び前記二次光学系におけるレンズが静電レンズであることを特徴とする。
また、上記の目的を達成するために、請求項3の発明は、
面ビームを形成する一次電子によって試料を照射することができる写像投影方式電子線装置であって、
一次電子を発射するための電子銃と、
前記電子銃から発射された前記一次電子のビーム形状を調整し且つ前記一次電子を第1の方向に進行させて前記面ビームによって前記試料を照射させる一次光学系と、
前記面ビームによって照射された前記試料から発せられた二次電子又は反射電子を前記第1の方向とは異なる第2の方向とは逆の方向へ進行させるウィーンフィルタと、
前記ウィーンフィルタを通過した前記二次電子又は前記反射電子を拡大結像させる二次光学系と、
前記二次光学系を通過した前記二次電子と前記反射電子のいずれか一方を検出するための検出系と、
を具備することを特徴とする電子線装置、
を提供する。
【0013】
請求項4の発明は、こうした電子線装置において、前記一次光学系及び前記二次光学系におけるレンズが静電レンズであることを特徴とする。
請求項5の発明は、前記電子銃の加速電圧と前記試料に印加される試料電圧とから決定される前記一次電子の照射エネルギ及び前記二次電子又は前記反射電子の信号電子エネルギを選択的に変更して、前記電子線装置を正帯電モード、負帯電モード及び反射電子撮像モードのいずれか一つで動作することを可能としたことを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、前記検出系が、真空環境に設けられ、前記二次電子を受け取って光信号へ変換する電子−光変換部と、前記真空環境と大気環境との境界に設けられ、前記光信号を通過させるライトガイドと、前記大気環境に設けられ、前記ライトガイドを通過した前記光信号を受信して電気信号へ変換する光−電気変換部とを備えるようにしたことを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、前記電子線装置をマルチビーム型としたことを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係る写像投影方式電子線装置の若干の実施の形態を、この発明を欠陥検査装置として具体化した場合について、図1〜図7を参照しながら詳述する。なお、これらの図において、同一の参照数字又は参照符号は同じ又は対応する構成要素を指すものとする。
【0017】
図1の(A)は、この発明に係る写像投影方式電子線装置の一つの実施の形態である欠陥検査装置EBIの構成を概略的に示す図であり、(B)はこの欠陥検査装置EBIの二次光学系及び検出系の構成を概略的に示している。図において、電子銃EGは大電流で動作可能な熱電子放出型のLaB6製カソード1を有し、電子銃EGから第1の方向へ発射された一次電子は数段の四極子レンズ2を含む一次光学系を通過してビーム形状を調整されてからウィーンフィルタ3を通過する。ウィーンフィルタ3によって一次電子の進行方向は、検査対象であるウェーハWに対して入力するよう第2の方向へ変更される。ウィーンフィルタ3を出て第2の方向へ進む一次電子は、NA開口板4によってビーム径を絞られ、対物レンズ5を通過してウェーハWを照射する。対物レンズ5は高精度の静電レンズである。
【0018】
このように、一次光学系においては、電子銃EGとしてLaB6製の高輝度のものを使用しているので、従来の走査型の欠陥検査装置に比較して低エネルギで大電流且つ大面積の一次ビームを得ることができる。
【0019】
この実施の形態においては、ウェーハWは一次光学系によって断面が例えば200μm×50μmの矩形に形成された面ビームによって照射されるので、ウェーハW上の所定の広さの小さな領域を照射することができるようになる。この面ビームでウェーハWを走査するために、ウェーハWは例えば300mm対応の高精度のXYステージ(図示せず)上に載置され、面ビームを固定した状態でXYステージを二次元的に移動させる。また、一次電子をビームスポットに絞り込む必要がないので面ビームは低電流密度であり、ウェーハWのダメージが少ない。例えば、従来のビーム走査方式の欠陥検査装置においてはビームスポットの電流密度は103A/cm2であるが、図1の欠陥検査装置においては面ビームの電流密度は0.1A/cm2〜0.01A/cm2でしかない。一方、ドーズは、従来のビーム走査方式では1×10−5C/cm2であるのに対して、本方式では1×10−4C/cm2〜3×10−5C/cm2であり、本方式の方が高感度になっている。
【0020】
面ビーム状の一次電子によって照射されたウェーハWの領域からは二次電子と反射電子が出てくる。反射電子については後述するとして、まず二次電子の検出について説明すると、ウェーハWから放出された二次電子は、前記第2の逆の方向へ進むよう、対物レンズ5によって拡大されてNA開口板4及びウィーンフィルタ3を通過してから、中間レンズ6によって再び拡大され、投影レンズ7によって更に拡大されて二次電子検出系Dに入射する。二次電子を導く二次光学系においては、対物レンズ5、中間レンズ6及び投影レンズ7はいずれも高精度の静電レンズであり、二次光学系の倍率は可変であるよう構成される。一次電子をウェーハWにほぼ垂直に入射し、二次電子をほぼ垂直に取り出すので、ウェーハWの表面の凹凸による陰影を生じない。
【0021】
投影レンズ7からの二次電子を受け取る二次電子検出系Dは、入射された二次電子を増殖するマイクロチャンネルプレート8と、マイクロチャンネルプレート8から出た電子を光に変換する蛍光スクリーン9と、蛍光スクリーン9から出た光を電気信号へ変換するセンサユニット10とを備える。センサユニット10は、二次元に配列された多数の固体撮像素子からなる高感度のラインセンサ11を有しており、蛍光スクリーン9から発せられた蛍光はラインセンサ11によって電気信号へ変換されて画像処理部12に送られ、並列、多段且つ高速に処理される。
【0022】
ウェーハWを移動させてウェーハW上の個々の領域を順に面ビームで照射して走査していく間に、画像処理部12は、欠陥を含む領域のXY座標と画像とに関するデータを順次蓄積していき、一つのウェーハについて欠陥を含む検査対象の全ての領域の座標と画像とを含む検査結果ファイルを生成する。こうして、検査結果を一括して管理することができる。この検査結果ファイルを読み出すと、画像処理部12のディスプレイ上には当該ウェーハの欠陥分布と欠陥詳細リストとが表示される。
【0023】
実際には、欠陥検査装置EBIの各種の構成要素のうち、センサユニット10は大気中に配置されるが、その他の構成要素は真空に保たれた鏡筒内に配置されるため、この実施の形態においては、鏡筒の適宜の壁面にライトガイドを設け、蛍光スクリーン9から出た光をライトガイドを介して大気中に取り出してラインセンサ11に中継する。
【0024】
図2は、図1の欠陥検査装置EBIにおける電子検出系Dの具体的な構成例を示している。投影レンズ7によってマイクロチャンネルプレート8の入射面に二次電子像又は反射電子像13が形成される。マイクロチャンネルプレート8は例えば分解能が16μm、ゲインが103〜104、実効画素が2100×520であり、形成された電子像13に対応して電子を増殖して蛍光スクリーン9を照射する。これによって蛍光スクリーン9の電子で照射された部分から蛍光が発せられ、発せられた蛍光は低歪み(歪みが例えば0.4%)のライトガイド14を介して大気中へ放出される。放出された蛍光は光学リレーレンズ15を介してラインセンサ11に入射される。例えば、光学リレーレンズ15は倍率が1/2、透過率が2.3%、歪みが0.4%であり、ラインセンサ11は2048×512個の画素を有している。光学リレーレンズ15はラインセンサ11の入射面に電子像13に対応した光学像16を形成する。ライトガイド14及びリレーレンズ15の代わりにFOP(ファイバ・オプティック・プレート)を使うこともでき、この場合の倍率は1倍である。
【0025】
図1に示す欠陥検査装置EBIは、電子銃EGの加速電圧及びウェーハWに印加されるウェーハ電圧を調整するとともに電子検出系Dを使用することにより、二次電子の場合、正帯電モードと負帯電モードのいずれかで動作可能である。更に、電子銃EGの加速電圧、ウェーハWに印加されるウェーハ電圧及び対物レンズ条件を調整することにより、欠陥検査装置EBIを、一次電子の照射によってウェーハWから発せられる高エネルギの反射電子を検出する反射電子撮像モードで動作させることができる。反射電子は、一次電子がウェーハW等の試料に入射するときのエネルギと同じエネルギを持っており、二次電子に比べてエネルギが高いので、試料表面の帯電等による電位の影響を受けずらいという特徴がある。電子検出系は、二次電子又は反射電子の強度に対応した電気信号を出力する電子衝撃型CCD、電子衝撃型TDI等の電子衝撃型検出器を使用することもできる。この場合は、マイクロチャンネルプレート8、蛍光スクリーン9、リレーレンズ15(又はEOP)を使用せずに、結像位置に電子衝撃型検出器を設置して使用する。このように構成することにより、欠陥検査装置EBIは検査対象に適したモードで動作することが可能になる。例えば、メタル配線の欠陥、GC配線の欠陥、レジストパターンの欠陥を検出するには、負帯電モード又は反射電子撮像モードを利用すればよいし、ビアの導通不良やエッチング後のビア底の残渣を検出するには反射電子撮像モードを利用すればよい。
【0026】
図3の(A)は図1の欠陥検査装置EBIを上記の3つのモードで動作させるための要件を説明する図である。電子銃EGの加速電圧をVA、ウェーハWに印加されるウェーハ電圧をVW、ウェーハWを照射するときの一次電子の照射エネルギをEIN、電子検出系Dに入射する二次電子の信号エネルギをEOUTとする。電子銃EGは加速電圧VAを変えることができるよう構成され、ウェーハWには適宜の電源(図示せず)から可変のウェーハ電圧VWが印加される。そこで、加速電圧VA及びウェーハ電圧VWを調整し且つ電子検出系Dを使用すると、欠陥検査装置EBIは、図3の(B)に示すように、二次電子イールドが1よりも大きい範囲では正帯電モード、1よりも小さい範囲では負帯電モードで動作することができる。また、加速電圧VA、ウェーハ電圧VW及び対物レンズ条件を調整することにより、欠陥検査装置EBIは二次電子と反射電子とのエネルギ差を利用して反射電子撮像モードで動作することができる。なお、図3の(B)において、正帯電領域と負帯電領域との境界における電子照射エネルギEINの値は、実際には試料によって異なる。
【0027】
欠陥検査装置EBIを反射電子撮像モード、負帯電モード及び正帯電モードで動作させるためのVA、VW、EIN及びEOUTの値の一例を挙げると、
反射電子撮像モード
VA=−4.0kV
VW=−2.5kV
EIN=1.5keV
EOUT=4keV+α (α=二次電子のエネルギ幅)
負帯電モード
VA=−7.0kV
VW=−4.0kV
EIN=3.0keV
EOUT=4keV+α (α=二次電子のエネルギ幅)
正帯電モード
VA=−4.5kV
VW=−4.0kV
EIN=0.5keV
EOUT=4keV
となる。
【0028】
実際、二次電子と反射電子の検出量は、ウェーハW上の被検査領域の表面組成、パターン形状及び表面電位によって変わってくる。即ち、ウェーハW上の被検査対象の表面組成によって二次電子収率及び反射電子量は異なり、パターンの尖った個所や角では二次電子収率及び反射電子量は平面に比べて大きい。また、ウェーハW上の被検査対象の表面電位が高いと、二次電子放出量が減少する。こうして、検出系Dによって検出された二次電子及び反射電子から得られる電子信号強度は材料、パターン形状及び表面電位によって変動する。
【0029】
図4は、図1に示す欠陥検査装置EBIの電子光学系に使用される静電レンズの各電極の断面形状を示している。図に示すように、ウェーハWからマイクロチャンネルプレート8までの距離は例えば800mmであり、対物レンズ5、中間レンズ6及び投影レンズ7は特殊形状をした複数枚の電極を有する静電レンズである。いま、ウェーハWに−4kVを印加したとすると、対物レンズ5のウェーハWに最も近い電極には+20kVが印加され、残りの電極には−1476Vが印加される。同時に、中間レンズ6には−2450Vが、投影レンズ7には−4120Vが印加される。この結果、二次光学系で得られる倍率は、対物レンズ5によって2.4倍、中間レンズ6によって2.8倍、投影レンズ7によって37倍となり、合計では260倍となる。なお、図4における参照数字17、19はビーム径を制限するためのフィールド・アパーチャであり、参照数字18は偏光器である。
【0030】
図5の(A)は、この発明に係る写像投影方式電子線装置の第2の実施の形態であるマルチビーム・マルチピクセル型の欠陥検査装置EBIの構成を概略的に示す図である。この欠陥検査装置EBIにおける電子銃EGmはLaB6製のカソードを有し、複数本の一次電子ビーム20を発射することのできるマルチビーム型の電子銃である。電子銃EGmから発せられた複数本の一次電子ビーム20は、各一次電子ビームに対応した位置に小孔が形成された開口板21によってビーム径を調整された後、2段の軸対称レンズ22、23によって各ビームの位置を調整されて第1の方向へ進み、ウィーンフィルタ3を通過して進行方向を第1の方向から第2の方向へ変えてウェーハWに入射するよう進行する。その後、それぞれの一次電子ビーム20はNA開口板4、対物レンズ5を通過してウェーハWの所定の領域を照射する。
【0031】
複数本の一次電子ビーム20の照射によってウェーハWから放出された二次電子及び反射電子24は、図1の(A)について既に説明したと同様に、第2の方向とは逆の方向へ進行して対物レンズ5、NA開口板4、ウィーンフィルタ3、中間レンズ6、投影レンズ7を通って検出系Dに入射し、センサユニット10によって電気信号化される。
【0032】
電子銃EGmから見て下流側の軸対称レンズ23とウィーンフィルタ3との間には、複数本の一次電子ビーム20を偏向するための偏向器25が配置される。そこで、複数本の一次電子ビーム20によってウェーハW上の或る領域Rを走査するため、図5の(B)に示すように、ウェーハWをY軸方向に移動させながら、偏向器25によって、複数本の一次電子ビーム20をY軸に垂直なX軸方向に同時に偏向させる。これにより、複数本の一次電子ビーム20によって、領域Rがラスタ走査されることになる。
【0033】
図6の(A)は、この発明に係る写像投影方式電子線装置の第3の実施の形態であるマルチビーム・モノピクセル型の欠陥検査装置EBIの概略的な構成を示している。同図において、電子銃EGmは複数本の一次電子ビーム20を発射することができ、発射された複数本の一次電子ビーム20は、図5の(A)について説明したと同様に、第1の方向へ進行するよう、開口板21、軸対称レンズ22、23、偏向器25、ウィーンフィルタ3、対物レンズ5によって導かれてウェーハWを照射する。
【0034】
複数本の一次電子ビーム20によって照射されてウェーハWから放出された二次電子又は反射電子24は、対物レンズ5を通過した後、ウィーンフィルタ3によって所定の角度だけ進行方向を変えられた後、中間レンズ6、投影レンズ7を通過してマルチ検出系D´に入射する。図のマルチ検出系D´は二次電子検出系であって、開口電極21に形成されたn個の小孔と同数の孔が形成されたマルチ開口板26と、開口板26のn個の孔を通過した二次電子を捕捉して該二次電子の強度を表す電気信号へ変換するようマルチ開口板26の各孔に対応して設けられたn個の検出器27と、各検出器27から出力された電気信号を増幅するn個の増幅器28と、それぞれの増幅器28によって増幅された電気信号をディジタル信号へ変換してウェーハW上の被走査領域Rの画像信号を記憶、表示、比較等を行う画像処理部12´とを備える。
【0035】
図6の(A)に示す欠陥検査装置EBIにおいては、複数本の一次電子ビーム20による領域Rの走査は、図6の(B)に示すように行われる。即ち、図6の(B)に示すように、領域Rを一次電子ビーム20の数だけY軸方向に分割して小領域r1、r2、r3、r4を想定し、それぞれの一次電子ビーム20をこれらの小領域r1〜r4のそれぞれに割り当てる。そこで、ウェーハWをY軸方向に移動させながら、偏向器25によって、それぞれの一次電子ビーム20をX軸方向に同時に偏向させ、各一次電子ビーム20にその割り当てられた小領域r1〜r4を走査させる。これにより、複数本の一次電子ビーム20によって領域Rが走査されることになる。
【0036】
なお、マルチビームの一次光学系は、図5に限定されるものではなく、試料上に照射される時点でマルチビームであればよく、例えば、単一の電子銃であってもよい。
【0037】
これまで説明してきた欠陥検査装置EBIにおいては、ウェーハWをステージ上に載置し、該ステージを真空チャンバ内で精度良く位置決めすることができる機構を使用することが好ましい。かかるステージの高精度の位置決めために、例えば、ステージを静圧軸受けによって非接触支持する構造が採用される。この場合、静圧軸受けから供給される高圧ガスが真空チャンバに排気されないよう、高圧ガスを排気する差動排気機構を静圧軸受けの範囲に形成して真空チャンバの真空度を維持することが望ましい。
【0038】
図7は、ウェーハWを載置したステージを真空チャンバ内で精度良く位置決めするための機構の構成の一例と不活性ガスの循環配管系を示す図である。図7において、一次電子をウェーハWに向かって照射する鏡筒29の先端部すなわち一次電子照射部30が真空チャンバCを画成するハウジング31に取り付けられる。鏡筒29の直下には、高精度なXYステージ32のX方向(図7において左右方向)の可動テーブル上に載置されたウェーハWが配置される。XYステージ32をX方向及びY方向(図7において紙面に垂直の方向)に移動させることにより、ウェーハWの面上の任意の位置に対して正確に一次電子を照射することができる。
【0039】
XYステージ32の台座33はハウジング31の底壁に固定され、Y方向に移動するYテーブル34が台座33の上に載っている。Yテーブル34の両側面(図7において左右側面)には突部が形成され、これら突部は台座33に設けられた一対のY方向ガイド35a及び35bに形成された凹溝とそれぞれ嵌合する。各凹溝はY方向ガイド35a、35bのほぼ全長に亘ってY方向に伸びている。凹溝内に突出する突部の上、下面及び側面には公知の構造の静圧軸受け(図示せず)がそれぞれ設けられる。これらの静圧軸受けを介して高圧且つ高純度の不活性ガス(N2ガス、Arガス等)を吹き出すことにより、Yテーブル34はY方向ガイド35a、35bに対して非接触で支持され、Y方向に円滑に往復運動できる。また、台座33とYテーブル34との間には、Yテーブル34をY方向に駆動するために、公知の構造のリニアモータ36が配置される。
【0040】
Yテーブル34の上側にはXテーブル37がX方向に移動可能に載置されている。Xテーブル37を挟むように、Yテーブル34のためのY方向ガイド35a、35bと同じ構造の一対のX方向ガイド38a、38b(図7には38aのみ図示されている)が設けられる。これらX方向ガイドのXテーブル37に面した側にも凹溝が形成され、Xテーブル37のX方向ガイドに面した側部には、上記凹溝内に突出する突部が形成されている。これらの凹溝はX方向ガイドのほぼ全長に亘って伸びている。凹溝内に突出するX方向テーブル37の突部の上、下面及び側面には、Yテーブル34の非接触支持のための静圧軸受けと同様の静圧軸受け(図示せず)が設けられる。これらの静圧軸受けに高圧且つ高純度の不活性ガスを供給して静圧軸受けからX方向ガイド38a、38bの案内面に対して噴出させることにより、Xテーブル37はX方向ガイド38a、38bに対して高精度に非接触で支持される。Yテーブル34には、Xテーブル37をX方向に駆動するために公知の構造のリニアモータ39が配置される。
【0041】
XYステージ32として、大気中で用いられる静圧軸受け付きステージ機構をほぼそのまま使用することが可能なので、露光装置等で用いられる大気用の高精度のステージと同等の精度を有するXYステージを、ほぼ同等のコスト及び大きさで欠陥検査装置用のXYステージとして実現することができる。なお、ウェーハWはXテーブル37上に直接載置されるのではなく、ウェーハWを取り外し可能に保持し且つXYステージ32に対して微少な位置変更を行なう機能を有する試料台の上に載置されるのが普通である。
【0042】
上記不活性ガスはフレキシブル配管40、41及びXYステージ32内に形成されたガス通路(図示せず)を介して上記静圧軸受けに供給される。静圧軸受けに供給された高圧の不活性ガスは、Y方向ガイド35a、35b及びX方向ガイド38a、38bの対向する案内面との間に形成された数ミクロンから数十ミクロンの隙間に噴出してYテーブル34及びXテーブル37を案内面に対してX方向、Y方向及びZ方向(図7において上下方向)に正確に位置決めする。静圧軸受けから噴出した不活性ガスのガス分子は真空チャンバC内に拡散し、排気口42、43a、43b及び真空配管44、45を通してドライ真空ポンプ46によって排気される。排気口43a、43bの吸い込み口は台座33を貫通してその上面に設けられる。これにより、吸い込み口はXYステージ32から高圧ガスが排出される位置の近くに開口するので、静圧軸受けから噴出される高圧ガスにより真空チャンバC内の圧力が上昇するのが防止される。
【0043】
ドライ真空ポンプ46の排気口は、配管47を介して圧縮機48に接続され、圧縮機48の排気口は配管49、50、51及びレギュレータ52、53を介してフレキシブル配管40、41に接続される。このため、ドライ真空ポンプ46から排出された不活性ガスは、圧縮機48によって再び加圧されレギュレータ52、53で適正な圧力に調整された後、再びXYテーブルの静圧軸受けに供給される。こうすることによって、高純度の不活性ガスを循環させて再利用できるので、不活性ガスを節約でき、また、欠陥検査装置EBIから不活性ガスが放出されないので、不活性ガスによる窒息等の事故の発生を防止することができる。なお、圧縮機48の排出側の配管49の途中にコールドトラップやフィルタ等の除去手段54を設け、循環するガス中に混入した水分や油分等の不純物質をトラップして静圧軸受けに供給されないようにすることが好ましい。
【0044】
鏡筒29の先端部すなわち一次電子照射部30の周囲には、差動排気機構55が設けられる。これは、真空チャンバC内の圧力が高くても一次電子照射空間56の圧力が十分低くなるようにするためである。一次電子照射部30の周囲に取り付けられた差動排気機構55の環状部材57は、その下面(ウェーハWと対向する面)とウェーハWとの間に数ミクロンから数百ミクロンの微少な隙間が形成されるようにハウジング31に対して位置決めされる。
【0045】
環状部材57の下面には環状溝58が形成され、環状溝58は排気口59に接続される。排気口59は真空配管60を介して超高真空ポンプであるターボ分子ポンプ61に接続される。また、鏡筒29の適所には排気口62が設けられ、排気口62は真空配管63を介してターボ分子ポンプ64に接続される。これらのターボ分子ポンプ61、64は真空配管65、66によってドライ真空ポンプ46に接続される。したがって、差動排気機構55や荷電ビーム照射空間56に侵入した不活性ガスのガス分子は環状溝58、排気口59及び真空配管60を介してターボ分子ポンプ61によって排気されるので、真空チャンバCから環状部材57によって囲まれた空間56内に侵入したガス分子は排気されてしまう。これにより、一次電子照射空間56内の圧力を低く保つことができ、一次電子を問題なく照射することができる。また、鏡筒29の先端部から吸引されたガス分子は排気口62、真空配管63を通ってターボ分子ポンプ64によって排気される。ターボ分子ポンプ61、64から排出されたガス分子はドライ真空ポンプ46によって収集されて圧縮機48に供給される。
【0046】
なお、環状溝58は、真空チャンバC内の圧力や一次電子照射空間56内の圧力によっては、二重或いは三重の構造にしてもよい。また、図7に示す検査装置では、ターボ分子ポンプの粗引きポンプと真空チャンバの真空排気用ポンプを1台のドライ真空ポンプで兼用するようにしているが、XYステージの静圧軸受けに供給する高圧ガスの流量、真空チャンバの容積や内表面積、真空配管の内径や長さ等に応じて、別系統のドライ真空ポンプで排気することも可能である。
【0047】
XYステージ32の静圧軸受けに供給する高圧ガスとして、一般にドライ窒素が使用される。しかしながら、可能ならば、更に高純度の不活性ガスを用いることが好ましい。これは、水分や油分等の不純物がガス中に含まれると、これらの不純物分子が真空チャンバCを画成するハウジング31の内面やステージ構成部品の表面に付着して真空度を悪化させたり、ウェーハWの表面に付着して一次電子照射空間56の真空度を悪化させてしまうからである。また、水分や油分が極力含まれないようにする必要があるため、ターボ分子ポンプ61、64、ドライ真空ポンプ46及び圧縮機48は、ガス流路に水分や油分が混入しないような構造であることが求められる。
【0048】
なお、図7に示すように、不活性ガスの循環配管系には高純度不活性ガス供給系67が接続されており、ガスの循環を始める際に、真空チャンバCや真空配管44、45、60、63、65及び加圧側配管47、49、50、51、68を含む全ての循環系に高純度不活性ガスを満たす役割と、何らかの原因で循環するガスの流量が減少した際に不足分を供給する役割とを担っている。また、ドライ真空ポンプ46に大気圧以上まで圧縮する機能を持たせることによって、ドライ真空ポンプ46に圧縮機48の機能を兼用させることも可能である。更に、鏡筒29の排気に用いる超高真空ポンプとして、ターボ分子ポンプ64の代わりにイオンポンプやゲッタポンプ等のポンプを使用することも可能である。ただし、これらの溜込み式ポンプを用いた場合には、循環配管系を構築することができなくなる。ドライ真空ポンプ46の代わりに、ダイヤフラム式ドライポンプ等、他方式のドライポンプを使用することも可能である。
【0049】
図8は、差動排気機構55の環状部材57及びそれに形成された環状溝58の大きさの数値の例を示している。ここでは、半径方向に隔てられた二重構造の環状溝が用いられている。静圧軸受けに供給される高圧ガスの流量は、通常おおよそ20L/min(大気圧換算)程度である。真空チャンバCを、内径50mmで長さ2mの真空配管を介して20000L/minの排気速度を有するドライポンプで排気すると仮定すると、真空チャンバ内の圧力は、約160Pa(約1.2Torr)となる。この時、差動排気機構55の環状部材57及び環状溝58等の寸法を図8に示すように設定すると、一次電子照射空間56内の圧力を10−4Pa(10−6Torr)にすることができる。
【0050】
図9は、これまで図1〜図8によって説明してきた欠陥検査装置EBIを搭載した検査システムの全体的な構成を概略的に示している。図示のとおり、欠陥検査装置EBIの一次光学系からウェーハW、二次光学系を経て検出系Dに至る経路の構成要素は、磁気シールド機能を奏する鏡筒29の内部に収容され、鏡筒29は、外部からの振動が伝わるのを防止するようにアクティブ除振ユニットにより支持された除振台69の上面に設置される。鏡筒29の内部は真空排気系70によって真空に保たれる。鏡筒29の内部の一次光学系及び二次光学系の各構成要素に対しては、制御電源71から高圧ケーブル72を介して所要の電圧が供給される。
【0051】
鏡筒29の適宜の個所に、光学顕微鏡とオートフォーカス手段とを備えたアライメント機構73が設けられ、一次光学系及び二次光学系を構成する各要素を所定の光軸上に適正に配置するとともに電子銃から発射された一次電子がウェーハW上に焦点を自動的に結ぶよう調整される。
【0052】
除振台69の上面には、ウェーハWを載置して固定するためのチャック(図示せず)を備えたXYステージ32が設置され、走査期間におけるXYステージ32の位置は所定間隔でレーザー干渉計によって検出される。更に、除振台69の上面には、検査対象である複数枚のウェーハWを蓄積するためのローダー74と、ローダー74内のウェーハWを把持して鏡筒29内のXYステージ32に載置し、検査終了後にウェーハWを鏡筒29内から取り出すための搬送ロボット75とが設置される。
【0053】
システム全体の動作は、所要のプログラムがインストールされたメインコントローラ76によって制御される。メインコントローラ76はディスプレイ77を備えており、また、ケーブル78を介して検出系Dと接続される。これにより、メインコントローラ76は検出系Dからケーブル78を介してディジタル画像信号を受け取って画像処理部12によって処理し、ウェーハWの走査によって得られた検査結果ファイルの内容やウェーハWの欠陥分布等をディスプレイ77に表示させることができる。また、メインコントローラ76はシステム全体の動作を制御するためにシステムの動作状態をディスプレイ77に表示する。
【0054】
ここまで、この発明に係る写像投影方式電子線装置を、その実施の形態である欠陥検査装置について詳述してきたが、この発明はこうした実施の形態に限られるものではない。例えば、ウェーハWを載置するステージはXY平面内で移動可能であるとして説明してきたが、これに加えて、ステージは、XY平面に垂直な又はXY平面を通る任意の軸の回りに回転可能であってもよい。また、検査対象はウェーハに限られるものではなく、マスク等の電子線によって検査可能な試料を含むものとする。更に、この発明に係る写像投影型電子線装置と従来のビーム走査方式の欠陥レビュー装置とサーバとメインコントローラとをLANで相互に結合することにより、分散型の欠陥検査網を構築することができる。
【0055】
【発明の効果】
以上、この発明に係る写像投影型電子線装置の実施の形態について詳述したところから理解されるように、この発明は、
(1)面ビームによって試料を照射するので、スループットを向上させることができ、例えばウェーハ1枚あたりの欠陥検査時間を従来のビーム走査方式の検査装置に比べてほぼ1/7に短縮することができる、
(2)一次電子をビームスポットに絞る必要が無いので、空間電荷効果を回避することができるうえ、試料を低電流密度で照射するので、試料のダメージが小さい、
(3)面ビームによって試料を照射するので、1ピクセルよりも小さいサイズまで検査することができる、
(4)電子銃の加速電圧及び試料に印加される電圧を選定するとともに、対物レンズを調整することにより、正帯電モード、負帯電モード及び反射電子撮像モードのうちのいずれかの動作モードで動作することができるので、試料における検査部位に応じて適正は検査を実施することができる、
(5)静電レンズを使用することにより、一次光学系及び/又は二次光学系を小型で高精度にすることができる、
等の格別の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は、この発明に係る写像投影方式電子線装置の第1の実施の形態の構成を概略的に示す図であり、(B)は、その二次光学系の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の(A)における二次電子検出系の具体的構成を示す図である。
【図3】(A)及び(B)は、図1の(A)に示す欠陥検査装置の異なる動作モードを説明するための図である。
【図4】図1の(A)に示す欠陥検査装置における二次光学系のレンズの具体的構成を示す図である。
【図5】(A)は、この発明に係る写像投影方式電子線装置の第2の実施の形態を概略的に示す図であり、(B)は、その走査方法を説明するための図である。
【図6】(A)は、この発明に係る写像投影方式電子線装置の第3の実施の形態を概略的に示す図であり、(B)は、その走査方法を説明するための図である。
【図7】本発明に係る欠陥検査装置の一つの実施の形態における真空チャンバ及びXYステージの構造とそのための不活性ガス循環配管系を示す図である。
【図8】図7に示す差動排気機構の一例を示す図である。
【図9】この発明に係る写像投影方式電子線装置を搭載した検査システムの全体的構成を概略的に示す図である。
【図10】(A)は、従来のビーム走査型の欠陥検査装置の構成を概略的に示す図であり、(B)は、その走査方法を説明するための図である。
【図11】従来のビーム走査型の欠陥検査装置における検査時間の限界を説明するための図である。
【符号の説明】
EBI:欠陥検査装置、 EG:電子銃、 1:カソード、 2:4極子レンズ、 3:ウィーンフィルタ、 4:NA開口板、 5:対物レンズ、 6:中間レンズ、 7:投影レンズ、 D:二次電子検出系、 8:マイクロチャンネルプレート、 9:蛍光スクリーン、 10:センサユニット、 11:ラインセンサ、 W:ウェーハ、 12:画像処理部、
14:ライトガイド、 15:光学リレーレンズ、
EGm:電子銃、 20:一次電子ビーム、 21:開口板、 22、23:軸対称レンズ、 25:偏向器、
26:マルチ開口板、 27:検出器、 28:増幅器、 D´:マルチ検出系、 12´:画像処理部、
29:鏡筒、 30:一次電子照射部、 31:ハウジング、 32:XYステージ、 33:台座、 34:Yテーブル、 35a、35b:Y方向ガイド、 36:リニアモータ、 37:Xテーブル、 38a、38b:X方向ガイド、 39:リニアモータ、 40、41:フレキシブル配管、42,43a、43b:排気口、 44、45:真空配管、 46:ドライ真空ポンプ、 47:配管、 48:圧縮機、 49、50、51:配管、 52、53:レギュレータ、 54:除去手段、 55:差動排気機構、 56:一次電子照射空間、
57:環状部材、 58:環状溝、 59:排気口、 60:真空配管、 61:ターボ分子ポンプ、 62:排気口、 63:真空配管、 64:ターボ分子ポンプ、 65、66:真空配管、 67:不活性ガス供給系、 68:配管、 69:除振台、 70:真空排気系、 75:搬送ロボット、 76:メインコントローラ
【発明の属する技術分野】
この発明は、面ビームで検査対象を照射することができ、検査対象に応じて二次電子と反射電子とを切り換えて使用することが可能な高分解能且つ高スループットの写像投影方式電子線装置に関する。このように、試料上の1点ではなく少なくとも一次元方向に広がった視野に電子ビームを照射してその視野の像を形成する方式は「写像投影方式」と呼ばれている。
【0002】
【従来の技術】
これまでも、光や電子線を用いてウェーハやマスク等の検査対象に欠陥が存在するか否かの検査を行う装置が知られている。例えば、不要なパーティクルの有無を検出するために、移動ステージ上に検査対象を配置しておき、検査対象を二次元的に移動させながらレーザー光で照射する。そのとき発生する散乱光から検査対象を画像化し、散乱強度に基づいてパーティクルの存在を検出することが行われている。パーティクルやパターン欠陥を検査するには白色光が利用されており、白色光を移動ステージ上の検査対象に照射してその反射光から得た画像からパーティクルの存在やパターン欠陥の有無が検査される。また、パーティクルやパターン欠陥の有無ばかりでなく非導通、容量破壊、断線等の電気的欠陥をも検査するために電子線が利用されるようになり、移動ステージ上の検査対象に電子線を照射したときに発生する二次電子を用いて検査対象を画像化して欠陥検査を行う。
【0003】
欠陥検査装置としては、例えば、微細な欠陥をその位置とともに検出するものが公知である。この欠陥検査装置においては、パターンの欠陥を検査するに当たり、参照画像を被検査画像に対して二次元的に所定の量だけ各周辺方向にずらせた位置に配置し、それぞれの位置において参照画像と被検査画像との差の絶対値の画像を取得して、この差の絶対値の画像を処理することにより欠陥画像を得るようにしている。また、こうした画像処理を行うに際して、画像の濃度を平均化する処理、例えば平滑化処理を施すことも知られている。
【0004】
このように半導体検査装置が種々開発され提案されてきた背景には、DRAMやMPU等のための少品種大量生産からシステムLSIのための他品種少量生産へと半導体製造プロセスが変化していたのに加えて、ウェーハやマスクの一層の微細化、多層化、高集積化が進んだという事実が存在すると言える。ウェーハやマスクの高集積化によるパターンの微細化は、内部的な電気的欠陥、例えば、金属配線の接続不良、ビアやコンタクト等の層間接続孔の導通不良、を高分解能で検査する必要性を増大させ、電子線検査装置の需要を拡大することになった。また、微細化と多層化の進行により、工程間で高分解能且つ高スループットで検査を行うための欠陥検査装置の重要性が増し、そうした装置の開発が必須になったため、欠陥検査装置の市場が拡大された。
【0005】
図10の(A)は、ビーム走査方式を採用した従来の欠陥検査装置の基となっている走査型電子顕微鏡(SEM)の構成を概略的に示しており、(B)は検査画面を示している。フィラメント101、ウェーネルト102及びアノード103を有する電子銃EGから発射された一次電子104は第2レンズ105で径を絞られ、第1レンズ106によって再び径を絞られて、例えば直径0.1μmのビームスポットとしてウェーハ等の試料107を照射する。第1レンズ105及び第2レンズ106は磁界レンズである。
【0006】
一次電子104の照射により試料107から放出された二次電子108は、一次電子104の光軸から外れた位置に配置された検出器109によって検出されて電気信号に変換され、増幅器110によって増幅されてCRT111の画面上に表示される。図10の((A)に示すとおり、一次電子104は、CRT111の走査電源112と同期して動作する偏向電極113によって偏向されて試料107の表面上をラスタ状に走査する。一次電子104による試料107のラスタ走査にしたがって、図10の(B)に示すように、CRT111には、ビームスポットに対応した点の行が順に表示される。
【0007】
しかしながら、こうしたビーム走査方式の欠陥検査装置の検査時間即ちスループットは、ウェーハ1枚当たり約6時間が限界で、これよりもスループットを向上させることは困難であった。これは、電子銃から発射された電子の間に空間電荷効果が働くため、一次電子104のビーム電流を増そうにも、100nmピクセル・サイズ当たり200nA付近が限度となるばかりでなく、微細な一次電子による一筆書きの走査を行うために100MPPS程度が上限であり、スループットの向上を望むことができないからである。図11は、検査時間(単位は時間/ウェーハ)がプローブ電流(単位はnA)及び取り込み速度(単位はMPPS)とどのような関係にあるかを示しており、斜線で示す部分Aが、空間電荷効果によってビーム電流が制限される領域である。直線121は現状の欠陥検査装置における上記関係を示し、直線122は現状の欠陥検査装置のシステムノイズを改善した場合を示しており、このグラフから、検査時間の限界は約6時間/ウェーハであることが分かる。
【0008】
実際、従来の欠陥検査装置によって例えば8インチのウェーハを検査する場合、分解能を0.1μmとすると、ウェーハ1枚当たりの検査時間は7時間から11時間にも達し、検査に長時間を要するという問題がある。
【0009】
そのうえ、従来のビーム走査方式の欠陥検査装置においては、大電流の電子銃を使用する必要があるばかりでなく、欠陥検出率が75〜80%程度に止まり、分解能は0.1μm前後でしかなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上記の課題を解決するために提案されたものであり、この発明の目的は、空間電荷効果を回避でき、信号対雑音比が高く、並列処理による画像処理速度を向上させた高分解能且つ高スループットの写像投影方式電子線装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、
一次電子線を試料上の少なくとも一次元方向に広がった視野に照射する写像投影方式電子線装置であって、
一次電子を発射するための電子銃と、
第1の方向の光軸を有し、前記電子銃から発射された前記一次電子のビーム形状を調整するための一次光学系と、
前記一次光学系を通過した前記一次電子を前記第1の方向とは異なる試料方向への第2の方向へ進行させるウィーンフィルタと、
前記第2の方向へ進行する前記一次電子のビーム形状を調整して前記試料を照射させるレンズ系と、
前記試料から発せられた二次電子又は反射電子を前記レンズ系と協働して前記第2の方向とは逆の方向へ進行させる二次光学系と、
前記二次光学系を通過した前記二次電子と前記反射電子の少なくとも一方を検出するための検出系と、
を具備することを特徴とする電子線装置、
を提供する。
【0012】
請求項2の発明は、こうした電子線装置において、前記レンズ系及び前記二次光学系におけるレンズが静電レンズであることを特徴とする。
また、上記の目的を達成するために、請求項3の発明は、
面ビームを形成する一次電子によって試料を照射することができる写像投影方式電子線装置であって、
一次電子を発射するための電子銃と、
前記電子銃から発射された前記一次電子のビーム形状を調整し且つ前記一次電子を第1の方向に進行させて前記面ビームによって前記試料を照射させる一次光学系と、
前記面ビームによって照射された前記試料から発せられた二次電子又は反射電子を前記第1の方向とは異なる第2の方向とは逆の方向へ進行させるウィーンフィルタと、
前記ウィーンフィルタを通過した前記二次電子又は前記反射電子を拡大結像させる二次光学系と、
前記二次光学系を通過した前記二次電子と前記反射電子のいずれか一方を検出するための検出系と、
を具備することを特徴とする電子線装置、
を提供する。
【0013】
請求項4の発明は、こうした電子線装置において、前記一次光学系及び前記二次光学系におけるレンズが静電レンズであることを特徴とする。
請求項5の発明は、前記電子銃の加速電圧と前記試料に印加される試料電圧とから決定される前記一次電子の照射エネルギ及び前記二次電子又は前記反射電子の信号電子エネルギを選択的に変更して、前記電子線装置を正帯電モード、負帯電モード及び反射電子撮像モードのいずれか一つで動作することを可能としたことを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、前記検出系が、真空環境に設けられ、前記二次電子を受け取って光信号へ変換する電子−光変換部と、前記真空環境と大気環境との境界に設けられ、前記光信号を通過させるライトガイドと、前記大気環境に設けられ、前記ライトガイドを通過した前記光信号を受信して電気信号へ変換する光−電気変換部とを備えるようにしたことを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、前記電子線装置をマルチビーム型としたことを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係る写像投影方式電子線装置の若干の実施の形態を、この発明を欠陥検査装置として具体化した場合について、図1〜図7を参照しながら詳述する。なお、これらの図において、同一の参照数字又は参照符号は同じ又は対応する構成要素を指すものとする。
【0017】
図1の(A)は、この発明に係る写像投影方式電子線装置の一つの実施の形態である欠陥検査装置EBIの構成を概略的に示す図であり、(B)はこの欠陥検査装置EBIの二次光学系及び検出系の構成を概略的に示している。図において、電子銃EGは大電流で動作可能な熱電子放出型のLaB6製カソード1を有し、電子銃EGから第1の方向へ発射された一次電子は数段の四極子レンズ2を含む一次光学系を通過してビーム形状を調整されてからウィーンフィルタ3を通過する。ウィーンフィルタ3によって一次電子の進行方向は、検査対象であるウェーハWに対して入力するよう第2の方向へ変更される。ウィーンフィルタ3を出て第2の方向へ進む一次電子は、NA開口板4によってビーム径を絞られ、対物レンズ5を通過してウェーハWを照射する。対物レンズ5は高精度の静電レンズである。
【0018】
このように、一次光学系においては、電子銃EGとしてLaB6製の高輝度のものを使用しているので、従来の走査型の欠陥検査装置に比較して低エネルギで大電流且つ大面積の一次ビームを得ることができる。
【0019】
この実施の形態においては、ウェーハWは一次光学系によって断面が例えば200μm×50μmの矩形に形成された面ビームによって照射されるので、ウェーハW上の所定の広さの小さな領域を照射することができるようになる。この面ビームでウェーハWを走査するために、ウェーハWは例えば300mm対応の高精度のXYステージ(図示せず)上に載置され、面ビームを固定した状態でXYステージを二次元的に移動させる。また、一次電子をビームスポットに絞り込む必要がないので面ビームは低電流密度であり、ウェーハWのダメージが少ない。例えば、従来のビーム走査方式の欠陥検査装置においてはビームスポットの電流密度は103A/cm2であるが、図1の欠陥検査装置においては面ビームの電流密度は0.1A/cm2〜0.01A/cm2でしかない。一方、ドーズは、従来のビーム走査方式では1×10−5C/cm2であるのに対して、本方式では1×10−4C/cm2〜3×10−5C/cm2であり、本方式の方が高感度になっている。
【0020】
面ビーム状の一次電子によって照射されたウェーハWの領域からは二次電子と反射電子が出てくる。反射電子については後述するとして、まず二次電子の検出について説明すると、ウェーハWから放出された二次電子は、前記第2の逆の方向へ進むよう、対物レンズ5によって拡大されてNA開口板4及びウィーンフィルタ3を通過してから、中間レンズ6によって再び拡大され、投影レンズ7によって更に拡大されて二次電子検出系Dに入射する。二次電子を導く二次光学系においては、対物レンズ5、中間レンズ6及び投影レンズ7はいずれも高精度の静電レンズであり、二次光学系の倍率は可変であるよう構成される。一次電子をウェーハWにほぼ垂直に入射し、二次電子をほぼ垂直に取り出すので、ウェーハWの表面の凹凸による陰影を生じない。
【0021】
投影レンズ7からの二次電子を受け取る二次電子検出系Dは、入射された二次電子を増殖するマイクロチャンネルプレート8と、マイクロチャンネルプレート8から出た電子を光に変換する蛍光スクリーン9と、蛍光スクリーン9から出た光を電気信号へ変換するセンサユニット10とを備える。センサユニット10は、二次元に配列された多数の固体撮像素子からなる高感度のラインセンサ11を有しており、蛍光スクリーン9から発せられた蛍光はラインセンサ11によって電気信号へ変換されて画像処理部12に送られ、並列、多段且つ高速に処理される。
【0022】
ウェーハWを移動させてウェーハW上の個々の領域を順に面ビームで照射して走査していく間に、画像処理部12は、欠陥を含む領域のXY座標と画像とに関するデータを順次蓄積していき、一つのウェーハについて欠陥を含む検査対象の全ての領域の座標と画像とを含む検査結果ファイルを生成する。こうして、検査結果を一括して管理することができる。この検査結果ファイルを読み出すと、画像処理部12のディスプレイ上には当該ウェーハの欠陥分布と欠陥詳細リストとが表示される。
【0023】
実際には、欠陥検査装置EBIの各種の構成要素のうち、センサユニット10は大気中に配置されるが、その他の構成要素は真空に保たれた鏡筒内に配置されるため、この実施の形態においては、鏡筒の適宜の壁面にライトガイドを設け、蛍光スクリーン9から出た光をライトガイドを介して大気中に取り出してラインセンサ11に中継する。
【0024】
図2は、図1の欠陥検査装置EBIにおける電子検出系Dの具体的な構成例を示している。投影レンズ7によってマイクロチャンネルプレート8の入射面に二次電子像又は反射電子像13が形成される。マイクロチャンネルプレート8は例えば分解能が16μm、ゲインが103〜104、実効画素が2100×520であり、形成された電子像13に対応して電子を増殖して蛍光スクリーン9を照射する。これによって蛍光スクリーン9の電子で照射された部分から蛍光が発せられ、発せられた蛍光は低歪み(歪みが例えば0.4%)のライトガイド14を介して大気中へ放出される。放出された蛍光は光学リレーレンズ15を介してラインセンサ11に入射される。例えば、光学リレーレンズ15は倍率が1/2、透過率が2.3%、歪みが0.4%であり、ラインセンサ11は2048×512個の画素を有している。光学リレーレンズ15はラインセンサ11の入射面に電子像13に対応した光学像16を形成する。ライトガイド14及びリレーレンズ15の代わりにFOP(ファイバ・オプティック・プレート)を使うこともでき、この場合の倍率は1倍である。
【0025】
図1に示す欠陥検査装置EBIは、電子銃EGの加速電圧及びウェーハWに印加されるウェーハ電圧を調整するとともに電子検出系Dを使用することにより、二次電子の場合、正帯電モードと負帯電モードのいずれかで動作可能である。更に、電子銃EGの加速電圧、ウェーハWに印加されるウェーハ電圧及び対物レンズ条件を調整することにより、欠陥検査装置EBIを、一次電子の照射によってウェーハWから発せられる高エネルギの反射電子を検出する反射電子撮像モードで動作させることができる。反射電子は、一次電子がウェーハW等の試料に入射するときのエネルギと同じエネルギを持っており、二次電子に比べてエネルギが高いので、試料表面の帯電等による電位の影響を受けずらいという特徴がある。電子検出系は、二次電子又は反射電子の強度に対応した電気信号を出力する電子衝撃型CCD、電子衝撃型TDI等の電子衝撃型検出器を使用することもできる。この場合は、マイクロチャンネルプレート8、蛍光スクリーン9、リレーレンズ15(又はEOP)を使用せずに、結像位置に電子衝撃型検出器を設置して使用する。このように構成することにより、欠陥検査装置EBIは検査対象に適したモードで動作することが可能になる。例えば、メタル配線の欠陥、GC配線の欠陥、レジストパターンの欠陥を検出するには、負帯電モード又は反射電子撮像モードを利用すればよいし、ビアの導通不良やエッチング後のビア底の残渣を検出するには反射電子撮像モードを利用すればよい。
【0026】
図3の(A)は図1の欠陥検査装置EBIを上記の3つのモードで動作させるための要件を説明する図である。電子銃EGの加速電圧をVA、ウェーハWに印加されるウェーハ電圧をVW、ウェーハWを照射するときの一次電子の照射エネルギをEIN、電子検出系Dに入射する二次電子の信号エネルギをEOUTとする。電子銃EGは加速電圧VAを変えることができるよう構成され、ウェーハWには適宜の電源(図示せず)から可変のウェーハ電圧VWが印加される。そこで、加速電圧VA及びウェーハ電圧VWを調整し且つ電子検出系Dを使用すると、欠陥検査装置EBIは、図3の(B)に示すように、二次電子イールドが1よりも大きい範囲では正帯電モード、1よりも小さい範囲では負帯電モードで動作することができる。また、加速電圧VA、ウェーハ電圧VW及び対物レンズ条件を調整することにより、欠陥検査装置EBIは二次電子と反射電子とのエネルギ差を利用して反射電子撮像モードで動作することができる。なお、図3の(B)において、正帯電領域と負帯電領域との境界における電子照射エネルギEINの値は、実際には試料によって異なる。
【0027】
欠陥検査装置EBIを反射電子撮像モード、負帯電モード及び正帯電モードで動作させるためのVA、VW、EIN及びEOUTの値の一例を挙げると、
反射電子撮像モード
VA=−4.0kV
VW=−2.5kV
EIN=1.5keV
EOUT=4keV+α (α=二次電子のエネルギ幅)
負帯電モード
VA=−7.0kV
VW=−4.0kV
EIN=3.0keV
EOUT=4keV+α (α=二次電子のエネルギ幅)
正帯電モード
VA=−4.5kV
VW=−4.0kV
EIN=0.5keV
EOUT=4keV
となる。
【0028】
実際、二次電子と反射電子の検出量は、ウェーハW上の被検査領域の表面組成、パターン形状及び表面電位によって変わってくる。即ち、ウェーハW上の被検査対象の表面組成によって二次電子収率及び反射電子量は異なり、パターンの尖った個所や角では二次電子収率及び反射電子量は平面に比べて大きい。また、ウェーハW上の被検査対象の表面電位が高いと、二次電子放出量が減少する。こうして、検出系Dによって検出された二次電子及び反射電子から得られる電子信号強度は材料、パターン形状及び表面電位によって変動する。
【0029】
図4は、図1に示す欠陥検査装置EBIの電子光学系に使用される静電レンズの各電極の断面形状を示している。図に示すように、ウェーハWからマイクロチャンネルプレート8までの距離は例えば800mmであり、対物レンズ5、中間レンズ6及び投影レンズ7は特殊形状をした複数枚の電極を有する静電レンズである。いま、ウェーハWに−4kVを印加したとすると、対物レンズ5のウェーハWに最も近い電極には+20kVが印加され、残りの電極には−1476Vが印加される。同時に、中間レンズ6には−2450Vが、投影レンズ7には−4120Vが印加される。この結果、二次光学系で得られる倍率は、対物レンズ5によって2.4倍、中間レンズ6によって2.8倍、投影レンズ7によって37倍となり、合計では260倍となる。なお、図4における参照数字17、19はビーム径を制限するためのフィールド・アパーチャであり、参照数字18は偏光器である。
【0030】
図5の(A)は、この発明に係る写像投影方式電子線装置の第2の実施の形態であるマルチビーム・マルチピクセル型の欠陥検査装置EBIの構成を概略的に示す図である。この欠陥検査装置EBIにおける電子銃EGmはLaB6製のカソードを有し、複数本の一次電子ビーム20を発射することのできるマルチビーム型の電子銃である。電子銃EGmから発せられた複数本の一次電子ビーム20は、各一次電子ビームに対応した位置に小孔が形成された開口板21によってビーム径を調整された後、2段の軸対称レンズ22、23によって各ビームの位置を調整されて第1の方向へ進み、ウィーンフィルタ3を通過して進行方向を第1の方向から第2の方向へ変えてウェーハWに入射するよう進行する。その後、それぞれの一次電子ビーム20はNA開口板4、対物レンズ5を通過してウェーハWの所定の領域を照射する。
【0031】
複数本の一次電子ビーム20の照射によってウェーハWから放出された二次電子及び反射電子24は、図1の(A)について既に説明したと同様に、第2の方向とは逆の方向へ進行して対物レンズ5、NA開口板4、ウィーンフィルタ3、中間レンズ6、投影レンズ7を通って検出系Dに入射し、センサユニット10によって電気信号化される。
【0032】
電子銃EGmから見て下流側の軸対称レンズ23とウィーンフィルタ3との間には、複数本の一次電子ビーム20を偏向するための偏向器25が配置される。そこで、複数本の一次電子ビーム20によってウェーハW上の或る領域Rを走査するため、図5の(B)に示すように、ウェーハWをY軸方向に移動させながら、偏向器25によって、複数本の一次電子ビーム20をY軸に垂直なX軸方向に同時に偏向させる。これにより、複数本の一次電子ビーム20によって、領域Rがラスタ走査されることになる。
【0033】
図6の(A)は、この発明に係る写像投影方式電子線装置の第3の実施の形態であるマルチビーム・モノピクセル型の欠陥検査装置EBIの概略的な構成を示している。同図において、電子銃EGmは複数本の一次電子ビーム20を発射することができ、発射された複数本の一次電子ビーム20は、図5の(A)について説明したと同様に、第1の方向へ進行するよう、開口板21、軸対称レンズ22、23、偏向器25、ウィーンフィルタ3、対物レンズ5によって導かれてウェーハWを照射する。
【0034】
複数本の一次電子ビーム20によって照射されてウェーハWから放出された二次電子又は反射電子24は、対物レンズ5を通過した後、ウィーンフィルタ3によって所定の角度だけ進行方向を変えられた後、中間レンズ6、投影レンズ7を通過してマルチ検出系D´に入射する。図のマルチ検出系D´は二次電子検出系であって、開口電極21に形成されたn個の小孔と同数の孔が形成されたマルチ開口板26と、開口板26のn個の孔を通過した二次電子を捕捉して該二次電子の強度を表す電気信号へ変換するようマルチ開口板26の各孔に対応して設けられたn個の検出器27と、各検出器27から出力された電気信号を増幅するn個の増幅器28と、それぞれの増幅器28によって増幅された電気信号をディジタル信号へ変換してウェーハW上の被走査領域Rの画像信号を記憶、表示、比較等を行う画像処理部12´とを備える。
【0035】
図6の(A)に示す欠陥検査装置EBIにおいては、複数本の一次電子ビーム20による領域Rの走査は、図6の(B)に示すように行われる。即ち、図6の(B)に示すように、領域Rを一次電子ビーム20の数だけY軸方向に分割して小領域r1、r2、r3、r4を想定し、それぞれの一次電子ビーム20をこれらの小領域r1〜r4のそれぞれに割り当てる。そこで、ウェーハWをY軸方向に移動させながら、偏向器25によって、それぞれの一次電子ビーム20をX軸方向に同時に偏向させ、各一次電子ビーム20にその割り当てられた小領域r1〜r4を走査させる。これにより、複数本の一次電子ビーム20によって領域Rが走査されることになる。
【0036】
なお、マルチビームの一次光学系は、図5に限定されるものではなく、試料上に照射される時点でマルチビームであればよく、例えば、単一の電子銃であってもよい。
【0037】
これまで説明してきた欠陥検査装置EBIにおいては、ウェーハWをステージ上に載置し、該ステージを真空チャンバ内で精度良く位置決めすることができる機構を使用することが好ましい。かかるステージの高精度の位置決めために、例えば、ステージを静圧軸受けによって非接触支持する構造が採用される。この場合、静圧軸受けから供給される高圧ガスが真空チャンバに排気されないよう、高圧ガスを排気する差動排気機構を静圧軸受けの範囲に形成して真空チャンバの真空度を維持することが望ましい。
【0038】
図7は、ウェーハWを載置したステージを真空チャンバ内で精度良く位置決めするための機構の構成の一例と不活性ガスの循環配管系を示す図である。図7において、一次電子をウェーハWに向かって照射する鏡筒29の先端部すなわち一次電子照射部30が真空チャンバCを画成するハウジング31に取り付けられる。鏡筒29の直下には、高精度なXYステージ32のX方向(図7において左右方向)の可動テーブル上に載置されたウェーハWが配置される。XYステージ32をX方向及びY方向(図7において紙面に垂直の方向)に移動させることにより、ウェーハWの面上の任意の位置に対して正確に一次電子を照射することができる。
【0039】
XYステージ32の台座33はハウジング31の底壁に固定され、Y方向に移動するYテーブル34が台座33の上に載っている。Yテーブル34の両側面(図7において左右側面)には突部が形成され、これら突部は台座33に設けられた一対のY方向ガイド35a及び35bに形成された凹溝とそれぞれ嵌合する。各凹溝はY方向ガイド35a、35bのほぼ全長に亘ってY方向に伸びている。凹溝内に突出する突部の上、下面及び側面には公知の構造の静圧軸受け(図示せず)がそれぞれ設けられる。これらの静圧軸受けを介して高圧且つ高純度の不活性ガス(N2ガス、Arガス等)を吹き出すことにより、Yテーブル34はY方向ガイド35a、35bに対して非接触で支持され、Y方向に円滑に往復運動できる。また、台座33とYテーブル34との間には、Yテーブル34をY方向に駆動するために、公知の構造のリニアモータ36が配置される。
【0040】
Yテーブル34の上側にはXテーブル37がX方向に移動可能に載置されている。Xテーブル37を挟むように、Yテーブル34のためのY方向ガイド35a、35bと同じ構造の一対のX方向ガイド38a、38b(図7には38aのみ図示されている)が設けられる。これらX方向ガイドのXテーブル37に面した側にも凹溝が形成され、Xテーブル37のX方向ガイドに面した側部には、上記凹溝内に突出する突部が形成されている。これらの凹溝はX方向ガイドのほぼ全長に亘って伸びている。凹溝内に突出するX方向テーブル37の突部の上、下面及び側面には、Yテーブル34の非接触支持のための静圧軸受けと同様の静圧軸受け(図示せず)が設けられる。これらの静圧軸受けに高圧且つ高純度の不活性ガスを供給して静圧軸受けからX方向ガイド38a、38bの案内面に対して噴出させることにより、Xテーブル37はX方向ガイド38a、38bに対して高精度に非接触で支持される。Yテーブル34には、Xテーブル37をX方向に駆動するために公知の構造のリニアモータ39が配置される。
【0041】
XYステージ32として、大気中で用いられる静圧軸受け付きステージ機構をほぼそのまま使用することが可能なので、露光装置等で用いられる大気用の高精度のステージと同等の精度を有するXYステージを、ほぼ同等のコスト及び大きさで欠陥検査装置用のXYステージとして実現することができる。なお、ウェーハWはXテーブル37上に直接載置されるのではなく、ウェーハWを取り外し可能に保持し且つXYステージ32に対して微少な位置変更を行なう機能を有する試料台の上に載置されるのが普通である。
【0042】
上記不活性ガスはフレキシブル配管40、41及びXYステージ32内に形成されたガス通路(図示せず)を介して上記静圧軸受けに供給される。静圧軸受けに供給された高圧の不活性ガスは、Y方向ガイド35a、35b及びX方向ガイド38a、38bの対向する案内面との間に形成された数ミクロンから数十ミクロンの隙間に噴出してYテーブル34及びXテーブル37を案内面に対してX方向、Y方向及びZ方向(図7において上下方向)に正確に位置決めする。静圧軸受けから噴出した不活性ガスのガス分子は真空チャンバC内に拡散し、排気口42、43a、43b及び真空配管44、45を通してドライ真空ポンプ46によって排気される。排気口43a、43bの吸い込み口は台座33を貫通してその上面に設けられる。これにより、吸い込み口はXYステージ32から高圧ガスが排出される位置の近くに開口するので、静圧軸受けから噴出される高圧ガスにより真空チャンバC内の圧力が上昇するのが防止される。
【0043】
ドライ真空ポンプ46の排気口は、配管47を介して圧縮機48に接続され、圧縮機48の排気口は配管49、50、51及びレギュレータ52、53を介してフレキシブル配管40、41に接続される。このため、ドライ真空ポンプ46から排出された不活性ガスは、圧縮機48によって再び加圧されレギュレータ52、53で適正な圧力に調整された後、再びXYテーブルの静圧軸受けに供給される。こうすることによって、高純度の不活性ガスを循環させて再利用できるので、不活性ガスを節約でき、また、欠陥検査装置EBIから不活性ガスが放出されないので、不活性ガスによる窒息等の事故の発生を防止することができる。なお、圧縮機48の排出側の配管49の途中にコールドトラップやフィルタ等の除去手段54を設け、循環するガス中に混入した水分や油分等の不純物質をトラップして静圧軸受けに供給されないようにすることが好ましい。
【0044】
鏡筒29の先端部すなわち一次電子照射部30の周囲には、差動排気機構55が設けられる。これは、真空チャンバC内の圧力が高くても一次電子照射空間56の圧力が十分低くなるようにするためである。一次電子照射部30の周囲に取り付けられた差動排気機構55の環状部材57は、その下面(ウェーハWと対向する面)とウェーハWとの間に数ミクロンから数百ミクロンの微少な隙間が形成されるようにハウジング31に対して位置決めされる。
【0045】
環状部材57の下面には環状溝58が形成され、環状溝58は排気口59に接続される。排気口59は真空配管60を介して超高真空ポンプであるターボ分子ポンプ61に接続される。また、鏡筒29の適所には排気口62が設けられ、排気口62は真空配管63を介してターボ分子ポンプ64に接続される。これらのターボ分子ポンプ61、64は真空配管65、66によってドライ真空ポンプ46に接続される。したがって、差動排気機構55や荷電ビーム照射空間56に侵入した不活性ガスのガス分子は環状溝58、排気口59及び真空配管60を介してターボ分子ポンプ61によって排気されるので、真空チャンバCから環状部材57によって囲まれた空間56内に侵入したガス分子は排気されてしまう。これにより、一次電子照射空間56内の圧力を低く保つことができ、一次電子を問題なく照射することができる。また、鏡筒29の先端部から吸引されたガス分子は排気口62、真空配管63を通ってターボ分子ポンプ64によって排気される。ターボ分子ポンプ61、64から排出されたガス分子はドライ真空ポンプ46によって収集されて圧縮機48に供給される。
【0046】
なお、環状溝58は、真空チャンバC内の圧力や一次電子照射空間56内の圧力によっては、二重或いは三重の構造にしてもよい。また、図7に示す検査装置では、ターボ分子ポンプの粗引きポンプと真空チャンバの真空排気用ポンプを1台のドライ真空ポンプで兼用するようにしているが、XYステージの静圧軸受けに供給する高圧ガスの流量、真空チャンバの容積や内表面積、真空配管の内径や長さ等に応じて、別系統のドライ真空ポンプで排気することも可能である。
【0047】
XYステージ32の静圧軸受けに供給する高圧ガスとして、一般にドライ窒素が使用される。しかしながら、可能ならば、更に高純度の不活性ガスを用いることが好ましい。これは、水分や油分等の不純物がガス中に含まれると、これらの不純物分子が真空チャンバCを画成するハウジング31の内面やステージ構成部品の表面に付着して真空度を悪化させたり、ウェーハWの表面に付着して一次電子照射空間56の真空度を悪化させてしまうからである。また、水分や油分が極力含まれないようにする必要があるため、ターボ分子ポンプ61、64、ドライ真空ポンプ46及び圧縮機48は、ガス流路に水分や油分が混入しないような構造であることが求められる。
【0048】
なお、図7に示すように、不活性ガスの循環配管系には高純度不活性ガス供給系67が接続されており、ガスの循環を始める際に、真空チャンバCや真空配管44、45、60、63、65及び加圧側配管47、49、50、51、68を含む全ての循環系に高純度不活性ガスを満たす役割と、何らかの原因で循環するガスの流量が減少した際に不足分を供給する役割とを担っている。また、ドライ真空ポンプ46に大気圧以上まで圧縮する機能を持たせることによって、ドライ真空ポンプ46に圧縮機48の機能を兼用させることも可能である。更に、鏡筒29の排気に用いる超高真空ポンプとして、ターボ分子ポンプ64の代わりにイオンポンプやゲッタポンプ等のポンプを使用することも可能である。ただし、これらの溜込み式ポンプを用いた場合には、循環配管系を構築することができなくなる。ドライ真空ポンプ46の代わりに、ダイヤフラム式ドライポンプ等、他方式のドライポンプを使用することも可能である。
【0049】
図8は、差動排気機構55の環状部材57及びそれに形成された環状溝58の大きさの数値の例を示している。ここでは、半径方向に隔てられた二重構造の環状溝が用いられている。静圧軸受けに供給される高圧ガスの流量は、通常おおよそ20L/min(大気圧換算)程度である。真空チャンバCを、内径50mmで長さ2mの真空配管を介して20000L/minの排気速度を有するドライポンプで排気すると仮定すると、真空チャンバ内の圧力は、約160Pa(約1.2Torr)となる。この時、差動排気機構55の環状部材57及び環状溝58等の寸法を図8に示すように設定すると、一次電子照射空間56内の圧力を10−4Pa(10−6Torr)にすることができる。
【0050】
図9は、これまで図1〜図8によって説明してきた欠陥検査装置EBIを搭載した検査システムの全体的な構成を概略的に示している。図示のとおり、欠陥検査装置EBIの一次光学系からウェーハW、二次光学系を経て検出系Dに至る経路の構成要素は、磁気シールド機能を奏する鏡筒29の内部に収容され、鏡筒29は、外部からの振動が伝わるのを防止するようにアクティブ除振ユニットにより支持された除振台69の上面に設置される。鏡筒29の内部は真空排気系70によって真空に保たれる。鏡筒29の内部の一次光学系及び二次光学系の各構成要素に対しては、制御電源71から高圧ケーブル72を介して所要の電圧が供給される。
【0051】
鏡筒29の適宜の個所に、光学顕微鏡とオートフォーカス手段とを備えたアライメント機構73が設けられ、一次光学系及び二次光学系を構成する各要素を所定の光軸上に適正に配置するとともに電子銃から発射された一次電子がウェーハW上に焦点を自動的に結ぶよう調整される。
【0052】
除振台69の上面には、ウェーハWを載置して固定するためのチャック(図示せず)を備えたXYステージ32が設置され、走査期間におけるXYステージ32の位置は所定間隔でレーザー干渉計によって検出される。更に、除振台69の上面には、検査対象である複数枚のウェーハWを蓄積するためのローダー74と、ローダー74内のウェーハWを把持して鏡筒29内のXYステージ32に載置し、検査終了後にウェーハWを鏡筒29内から取り出すための搬送ロボット75とが設置される。
【0053】
システム全体の動作は、所要のプログラムがインストールされたメインコントローラ76によって制御される。メインコントローラ76はディスプレイ77を備えており、また、ケーブル78を介して検出系Dと接続される。これにより、メインコントローラ76は検出系Dからケーブル78を介してディジタル画像信号を受け取って画像処理部12によって処理し、ウェーハWの走査によって得られた検査結果ファイルの内容やウェーハWの欠陥分布等をディスプレイ77に表示させることができる。また、メインコントローラ76はシステム全体の動作を制御するためにシステムの動作状態をディスプレイ77に表示する。
【0054】
ここまで、この発明に係る写像投影方式電子線装置を、その実施の形態である欠陥検査装置について詳述してきたが、この発明はこうした実施の形態に限られるものではない。例えば、ウェーハWを載置するステージはXY平面内で移動可能であるとして説明してきたが、これに加えて、ステージは、XY平面に垂直な又はXY平面を通る任意の軸の回りに回転可能であってもよい。また、検査対象はウェーハに限られるものではなく、マスク等の電子線によって検査可能な試料を含むものとする。更に、この発明に係る写像投影型電子線装置と従来のビーム走査方式の欠陥レビュー装置とサーバとメインコントローラとをLANで相互に結合することにより、分散型の欠陥検査網を構築することができる。
【0055】
【発明の効果】
以上、この発明に係る写像投影型電子線装置の実施の形態について詳述したところから理解されるように、この発明は、
(1)面ビームによって試料を照射するので、スループットを向上させることができ、例えばウェーハ1枚あたりの欠陥検査時間を従来のビーム走査方式の検査装置に比べてほぼ1/7に短縮することができる、
(2)一次電子をビームスポットに絞る必要が無いので、空間電荷効果を回避することができるうえ、試料を低電流密度で照射するので、試料のダメージが小さい、
(3)面ビームによって試料を照射するので、1ピクセルよりも小さいサイズまで検査することができる、
(4)電子銃の加速電圧及び試料に印加される電圧を選定するとともに、対物レンズを調整することにより、正帯電モード、負帯電モード及び反射電子撮像モードのうちのいずれかの動作モードで動作することができるので、試料における検査部位に応じて適正は検査を実施することができる、
(5)静電レンズを使用することにより、一次光学系及び/又は二次光学系を小型で高精度にすることができる、
等の格別の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は、この発明に係る写像投影方式電子線装置の第1の実施の形態の構成を概略的に示す図であり、(B)は、その二次光学系の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の(A)における二次電子検出系の具体的構成を示す図である。
【図3】(A)及び(B)は、図1の(A)に示す欠陥検査装置の異なる動作モードを説明するための図である。
【図4】図1の(A)に示す欠陥検査装置における二次光学系のレンズの具体的構成を示す図である。
【図5】(A)は、この発明に係る写像投影方式電子線装置の第2の実施の形態を概略的に示す図であり、(B)は、その走査方法を説明するための図である。
【図6】(A)は、この発明に係る写像投影方式電子線装置の第3の実施の形態を概略的に示す図であり、(B)は、その走査方法を説明するための図である。
【図7】本発明に係る欠陥検査装置の一つの実施の形態における真空チャンバ及びXYステージの構造とそのための不活性ガス循環配管系を示す図である。
【図8】図7に示す差動排気機構の一例を示す図である。
【図9】この発明に係る写像投影方式電子線装置を搭載した検査システムの全体的構成を概略的に示す図である。
【図10】(A)は、従来のビーム走査型の欠陥検査装置の構成を概略的に示す図であり、(B)は、その走査方法を説明するための図である。
【図11】従来のビーム走査型の欠陥検査装置における検査時間の限界を説明するための図である。
【符号の説明】
EBI:欠陥検査装置、 EG:電子銃、 1:カソード、 2:4極子レンズ、 3:ウィーンフィルタ、 4:NA開口板、 5:対物レンズ、 6:中間レンズ、 7:投影レンズ、 D:二次電子検出系、 8:マイクロチャンネルプレート、 9:蛍光スクリーン、 10:センサユニット、 11:ラインセンサ、 W:ウェーハ、 12:画像処理部、
14:ライトガイド、 15:光学リレーレンズ、
EGm:電子銃、 20:一次電子ビーム、 21:開口板、 22、23:軸対称レンズ、 25:偏向器、
26:マルチ開口板、 27:検出器、 28:増幅器、 D´:マルチ検出系、 12´:画像処理部、
29:鏡筒、 30:一次電子照射部、 31:ハウジング、 32:XYステージ、 33:台座、 34:Yテーブル、 35a、35b:Y方向ガイド、 36:リニアモータ、 37:Xテーブル、 38a、38b:X方向ガイド、 39:リニアモータ、 40、41:フレキシブル配管、42,43a、43b:排気口、 44、45:真空配管、 46:ドライ真空ポンプ、 47:配管、 48:圧縮機、 49、50、51:配管、 52、53:レギュレータ、 54:除去手段、 55:差動排気機構、 56:一次電子照射空間、
57:環状部材、 58:環状溝、 59:排気口、 60:真空配管、 61:ターボ分子ポンプ、 62:排気口、 63:真空配管、 64:ターボ分子ポンプ、 65、66:真空配管、 67:不活性ガス供給系、 68:配管、 69:除振台、 70:真空排気系、 75:搬送ロボット、 76:メインコントローラ
Claims (7)
- 一次電子線を試料上の少なくとも一次元方向に広がった視野に照射する写像投影方式電子線装置であって、
一次電子を発射するための電子銃と、
第1の方向の光軸を有し、前記電子銃から発射された前記一次電子のビーム形状を調整するための一次光学系と、
前記一次光学系を通過した前記一次電子を前記第1の方向とは異なる試料方向への第2の方向へ進行させるウィーンフィルタと、
前記第2の方向へ進行する前記一次電子のビーム形状を調整して前記試料を照射させるレンズ系と、
前記試料から発せられた二次電子又は反射電子を前記レンズ系と協働して前記第2の方向とは逆の方向へ進行させる二次光学系と、
前記二次光学系を通過した前記二次電子と前記反射電子の少なくとも一方を検出するための検出系と、
を具備することを特徴とする電子線装置。 - 前記レンズ系及び前記二次光学系におけるレンズが静電レンズであることを特徴とする、請求項1記載の電子線装置。
- 面ビームを形成する一次電子によって試料を照射することができる写像投影方式電子線装置であって、
一次電子を発射するための電子銃と、
前記電子銃から発射された前記一次電子のビーム形状を調整し且つ前記一次電子を第1の方向に進行させて前記面ビームによって前記試料を照射させる一次光学系と、
前記面ビームによって照射された前記試料から発せられた二次電子又は反射電子を前記第1の方向とは異なる第2の方向とは逆の方向へ進行させるウィーンフィルタと、
前記ウィーンフィルタを通過した前記二次電子又は前記反射電子を拡大結像させる二次光学系と、
前記二次光学系を通過した前記二次電子と前記反射電子のいずれか一方を検出するための検出系と、
を具備することを特徴とする電子線装置。 - 前記一次光学系及び前記二次光学系におけるレンズが静電レンズであることを特徴とする、請求項3記載の電子線装置。
- 前記電子銃の加速電圧と前記試料に印加される試料電圧とから決定される前記一次電子の照射エネルギ及び前記二次電子又は前記反射電子の信号電子エネルギを選択的に変更して、正帯電モード、負帯電モード及び反射電子撮像モードのいずれか一つで動作することが可能であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の電子線装置。
- 前記検出系が、
真空環境に設けられ、前記二次電子を受け取って光信号へ変換する電子−光変換部と、
前記真空環境と大気環境との境界に設けられ、前記光信号を通過させるライトガイドと、
前記大気環境に設けられ、前記ライトガイドを通過した前記光信号を受信して電気信号へ変換する光−電気変換部と、
を備えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の電子線装置。 - マルチビーム型であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の電子線装置。
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