JP2004325244A - 生体物質の識別方法及びその識別システム - Google Patents
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Abstract
【課題】従来のマイクロトランスポンダーは、レーザ光を照射して電子回路を駆動させるが、レーザー光の照射が難しく、ガラスや樹脂製ビーズ内に電子回路を封入する製造が複雑である。
【解決手段】本発明は、プローブ物質と関連づけられた個別識別信号が保持される個別識別信号保持部6と、プローブ物質と反応したサンプル中の物質濃度を示す電流値(プローブ情報)で検出する電流値測定部8と、高周波を受けて駆動用電圧を発生させる電源電圧発生部3が微小なチップの基板11上に半導体製造技術を用いて識別装置1が製作され、反応処理された識別装置1へ高周波を照射して、個別識別信号とプローブ情報を取り出し、検体中の生体物質との反応の有無及び反応状態を検出する生体物質の識別方法及びその識別システムである。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明は、プローブ物質と関連づけられた個別識別信号が保持される個別識別信号保持部6と、プローブ物質と反応したサンプル中の物質濃度を示す電流値(プローブ情報)で検出する電流値測定部8と、高周波を受けて駆動用電圧を発生させる電源電圧発生部3が微小なチップの基板11上に半導体製造技術を用いて識別装置1が製作され、反応処理された識別装置1へ高周波を照射して、個別識別信号とプローブ情報を取り出し、検体中の生体物質との反応の有無及び反応状態を検出する生体物質の識別方法及びその識別システムである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被検体中の生体物質を検出する識別方法及びその識別システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から公知な被検体中の多数の物質を同時に測定するマイクロアレイと称する手法は、測定信号を分離するために空間的に分離した多数のプローブを担体に固定している。この方法においては、位置の確定のために多くの画像処理が必要であり、それらの機器が高価となっている。
また、設計時にマイクロアレイ上の所定位置へ一度固定したプローブは後から動かせないので、項目設計の自由度が低い。さらに、マイクロアレイは、それぞれを個別に作成しなければならないので、同じ仕様でもマイクロアレイ間における品質が一定していないため、原理的に抜き取り検査ができず、全品検査という手間が掛かり問題となっている。
【0003】
これに対して、特許文献1及び特許文献2に開示されるようなマイクロアレイと同様な技術によるビーズアレイが提案されている。
このビーズアレイは、個別のビーズを識別するために1または2種類の蛍光物質を形成させているが、これら方法では識別装置が大掛かりになり、高価である。また、識別精度が低いため、誤測定が生じやすい欠点がある。さらに、蛍光物質は長期保管において劣化してしまい、取り扱いに問題がある。
【0004】
この問題を解決するものとして、個別のビーズを識別するために各ビーズ内に電子回路を内蔵させて、無線によって個別識別信号を受け取る方法として、例えば、特許文献3、4及び5にマイクロトランスポンダー技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特表2001−520323号公報、段落番号[0030]
【0006】
【特許文献2】
特表2002−501184号公報、段落番号[0025]
【0007】
【特許文献3】
米国特許番号(Patent Number):5,981,166
【0008】
【特許文献4】
米国特許番号(Patent Number):6,001,571
【0009】
【特許文献5】
米国特許番号(Patent Number):5,736,332
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前述した特許文献3、4、5に開示されるマイクロトランスポンダーは、ビーズ内に設けた電子回路を駆動するための駆動電圧の発生させるために、レーザ光をビーズに照射する方法を採用している。しかし、この方法は、レーザ光をビーズに確実に照射するための流路の設計が難しいことと、個別識別番号を得るためだけに光学装置と無線送受信装置とを設けなければならない問題がある。また、ガラスまたは樹脂製の粒子の内部に回路を封入するため、その製造プロセスが複雑となってしまい、コストが高くなる問題もある。
【0011】
そこで本発明は、高周波により駆動用電圧を発生させて、反応する物質を関係づけて予め保持される個別識別信号と、この反応する物質への電圧印加で測定された電流値に基づくプローブ情報とからなる送信データを電波として送信し、この送信データを受信して、個別識別信号に基づく生体物質の特定と、プローブ情報に基づく生体物質の識別方法及びその識別装置システムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、外部から受ける高周波により電圧を発生させて、被検体中の生体物質と反応する物質への電圧印加により生じた電流値をプローブ情報として、予め前記反応する物質と関連づけられて保持される個別識別信号と共に、電波にて発信出力し、その電波を受信して、前記個別識別信号に基づき前記反応する物質の種別を特定し、そのプローブ情報から生体物質の識別及び反応状態の検出を行う生体物質の識別方法を提供する。
【0013】
第2の方法として、外部から受ける高周波により電圧を発生させて、その電圧で被検体中の生体物質との反応によって生じた結合体と特異的に反応する物質と予め関連づけられた個別識別信号を保持する個別識別信号保持部を駆動して、前記個別識別信号を電波にて発信出力し、前記反応する物質に光を照射し、該物質からの発光、散乱光又は化学発光強度によって反応状態を測定し、受信した前記個別識別信号と、測定された前記発光、散乱光又は化学発光の強度から生体物質の識別及び反応状態の検出を行う生体物質の識別及び反応状態の検出を行う生体物質の識別方法を提供する。
【0014】
第1のシステムとして、基板上に設けられ、アンテナにより受信した高周波により駆動用電圧を発生する電圧発生部と、予め定められた個別識別信号を保持し、前記駆動用電圧の印加により起動し、該個別識別信号を出力する個別識別信号保持部と、前記基板上に所定間隔をあけて並設される一対の電極と、前記一対の電極に計測用電圧を印加し、被検体中の生体物質との反応によって生じた結合体と特異的に反応する物質を更に反応させた電流値を測定する電流値測定部と、前記電流値をデジタル処理したプローブ情報を生成する変換部と、前記個別識別信号と前記プローブ情報とを合成して送信データを生成し、前記アンテナを通じて外部へ電波として発信する合成・送信部と、前記基板上の前記電極表面を除く基板表面に設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜上に設けられた前記被検体中の生体物質と反応する物質とで構成される識別装置を用いて、前記識別装置から発信された電波を受信して、前記個別識別信号に基づき前記反応する物質の種別を特定し、前記プローブ情報から生体物質の識別及び反応状態の検出を行う生体物質の識別システムを提供する。
【0015】
第2のシステムとして、基板上に設けられ、アンテナにより受信した高周波により駆動用電圧を発生する電圧発生部と、予め定められた個別識別信号を保持し、前記駆動用電圧の印加により起動し、該個別識別信号を出力する個別識別信号保持部と、前記個別識別信号を外部に電波として発信する送信部と、前記基板上の前記電極表面を除く基板表面に設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜上に設けられた前記被検体中の生体物質と反応する物質とで構成される識別装置を用いて、前記識別装置から発信された電波を受信して得られた前記個別識別信号に基づき前記反応する物質の種別を特定し、前記基板上の前記反応する物質へ光を照射して、前記物質と前記被検体中の生体物質との反応を発光、散乱光又は化学発光によって測定して、生体物質の識別及び反応状態の検出を行う生体物質の識別システムを提供する。
【0016】
以上のような生体物質の識別方法及びその識別システムは、外部から受けた高周波により駆動用電圧を発生させて、この駆動用電圧で個別識別信号保持部を駆動し、設けられたプローブ物質と関連づけられて予め保持される個別識別信号と、電流値測定部により検出されたプローブ物質と反応したサンプル中の物質濃度を示す電流値(プローブ情報)とが合成された送信データを電波で送信する。この電波を受けて、個別識別信号に基づき反応する物質の種別を特定し、そのプローブ情報から反応状態が検出される。
【0017】
また、生体物質の識別方法及びその識別システムは、識別装置が外部から受けた高周波により駆動用電圧を発生させて、この駆動用電圧で個別識別信号保持部を駆動し、設けられたプローブ物質と関連づけられて予め保持される個別識別信号を電波で送信する。この電波を受けて、個別識別信号に基づき反応する物質の種別を特定し、同時に、光源による光を識別装置へ照射し、前記物質と前記被検体中の生体物質との反応状態を発光、散乱光又は化学発光によって測定する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1には、本発明による生体物質の識別方法を実現するための識別装置1からなる識別装置のブロック構成を示す図であり、図2は、この識別装置の外観構成図である。
【0020】
この識別装置1は、外部からの高周波信号の電波(高周波又は電磁波を示す)を受信し、後述する送信データを送信するためのアンテナ部2と、受信した高周波信号から各構成部位を駆動させるための電源電圧を発生させる電源電圧発生部3と、予め定められた個別識別信号を保持し駆動電圧の印加により起動して、その個別識別信号を出力する個別識別信号保持部6と、後述する狭い間隔で配置された一対の電極7と、これらの電極7に測定用電圧を印加し生じた電流値を測定する電流値測定部8と、電流値測定部8から出力された電流値(アナログ信号)をデジタル変換して測定値データ(プローブ情報)を生成するA/D変換部9と、このプローブ情報と個別識別信号とを合成して送信データを生成する合成部5と、生成された送信データをアンテナ部2を通じて、外部に発信する送信部4とで構成される。
【0021】
この識別装置は、例えば、図2に示すように微細なシリコン半導体チップ11上に、公知な半導体製造技術(蒸着法、CVD(Chemical vapor Deposition)法及びスパッタリング法などの成膜技術、エッチング技術、及びマスキング技術)を用いて、前述した電源電圧発生部3、送信部4、合成部5、個別識別信号保持部6、電流値測定部8及びA/D変換部9を集積して形成した回路素子部12と、基板11の素子回路形成面の外周に環状に形成されたアンテナ部2と、銅や金又はアルミニウム等の金属からなる一対の電極7とが形成される。
【0022】
この電極7は、処理液に腐食されにくい金属材料が好ましく、検出される電流値を大きくして測定をより効率的に行うためにできる限り長いパターンが好ましい。さらに、電極7面上を除き、回路素子部12を含む基板11上には絶縁膜10が保護膜として形成される。この絶縁膜10としては、処理液に対して回路素子を保護及び電気的絶縁として機能すればよく、特に制限はないが、酸化シリコン膜やチッ化シリコン膜等の無機膜、又はポリイミド薄膜やパリレン等の高分子薄膜が好ましい。
【0023】
この基板11の材料は、シリコンだけではなく、セラミックス、ガラス又は、石英等を用いることができる。処理液に対して耐腐食性、製造時の耐熱性等を有していれば、樹脂により基板11を形成してもよい。尚、セラミックス、ガラス、石英等の絶縁材料を用いる場合には、液晶基板製造技術と同様に、絶縁基板上に回路素子部12を設ける領域に活性層となる金属薄膜を形成することにより、シリコン基板と同様に回路素子を構築することができる。
【0024】
また、この基板11は、例えば、数インチのシリコンウエハ上に同じプロセス条件により多数作成し、完成した後、ダイシングにより微小なベアチップに分離する。このような製造工程により、同一形状で同一特性を有する識別装置1を一度に多数個、作成することができる。また、この基板11の絶縁膜10上には、後述する方法で1つの種類のプローブ13が設けられる。
【0025】
前記個別識別信号保持部6は、例えば、電気的に情報が書き換え可能なEEPROMが好ましく、この場合には、基板11上に露出する入力ポートを形成する必要がある。また、一度、識別信号を書き込んだ後、変更しないのであれば、ROM、EPROM又はPROM等のメモリであってもよい。これらを用いる場合には、情報を書き込んだ後、絶縁膜10を形成する。
【0026】
図3は、識別装置1からプローブ情報を得るための生体物質識別システムの構成例を示す。
この生体物質識別システムは、反応処理された識別装置1が含まれるバッファーを流すキャピラリー25と、キャピラリー25内を通過する識別装置1を検出するセンサ31と、キャピラリー25内をバッファと共に流れる識別装置1に外部から高周波信号(電磁波)を放射する送信用アンテナ23と、送信用アンテナ23から電磁波を出力させる高周波発振部22と、高周波発振部22を含む各構成部位に駆動用電源供給する電源24と、識別装置1から発信された送信データを受信用アンテナ部26を通じて受信し、信号増幅等の処理を行う受信部27と、本システムの各構成部位の制御を行い、受信された送信データを後述する処理部28へ転送する制御部21と、反応状態などの測定結果を表示する表示部32とで構成される。
【0027】
このような構成において、センサ31は、全部の識別装置1がキャピラリー25内を通過するまで電磁波を出力し続けた状態で、プローブ情報を検出するのであれば必ずしも設ける必要はない。また、センサ31によりキャピラリー25内を通過した識別装置1の総数をカウントして、得られた送信データの総数と比較して、読み出し漏れ検出の機能を持たせることも可能である。
【0028】
この処理部28は、パーソナルコンピュータ等からなり、入力された送信データからプローブ情報と個別識別信号とを分離して、外部ファイル30に予め記憶されている個別識別信号とプローブ物質の相関テーブルを参照して、所定のプログラムを用いて診断等の解析、例えば、該当するプローブ物質とその物質と反応したサンプル中の物質濃度を演算して、その結果を表示部32に表示する。この処理部28は、必ずしも現場のシステム自体に組み込まる必要はなく、インターネット等のネットワークを通じて有線又は無線によりアクセスして接続される1台又は複数台の外部機器でもよい。
【0029】
またキヤピラリー25はガラスで形成される場合が多いが、これに限定されず、電磁波が通過すれば、ガラスでなくとも良く、内径も識別装置1がスムーズに通過できる内径を有していれば良い。また、キャピラリー25でなくとも溝状の流路を形成した基材であっても構わない。
【0030】
このように構成された生体物質識別システムによる生体物質の識別方法について説明する。ここでは、1種類の生体物質と特異的に反応する物質(プローブ物質)を識別装置1上に固定したのち、検体溶液中に浸積し、反応させることで生じるプローブ物質と検体中の生体物質との結合を外部から検出する方法について説明する。
【0031】
前述したように識別装置1を製作し、処理装置28において、個別識別信号保持部6がEEPROMの場合には、形成するプローブ物質と関連づけた個別識別信号を電気的に書き込み、外部ファイル部30の相関テーブルを作成する。または、既に個別識別信号保持部6に個別識別信号が記憶されている場合には、個別識別信号を読み出し、作成するプローブ物質と関連づけた相関テーブルを作成する。尚、記憶された個別識別信号が目視で判るように識別装置1の外装にナンバーリングしてもよい。
【0032】
次に、識別装置1の表面(絶縁膜)上に例えば、オリゴDNAプローブを設ける。
まず、製作された識別装置1の表面にシランカップリング剤を処理し、5末端をアミノ修飾したオリゴDNAを反応させる。シランカップリング剤は、アミノプロピルトリメトキシシランをアセトンに3%濃度で溶解させ、識別装置1を溶液中に浸積し室温にて3時間ほど攪拌する。その攪拌により反応させた後、濾過して識別装置1とシランカップリング剤とを分離する。その後、識別装置1は、エタノール溶液中及び純水中でそれぞれ順に10分間ほど攪拌し、取り出した後乾燥させる。
【0033】
オリゴDNAプローブは、塩基数20であり、10uMの濃度に900mMクェン酸バッファーに溶解し、シランカップリング剤処理後の識別装置1を浸積させ、室温で1時間攪拌して反応させた。反応した後、濾過し15mMクエン酸バッファー中で10分間攪拌して、最後に乾燥させた。
【0034】
このような反応を個別識別信号の異なる識別装置1毎にオリゴDNAの塩基配列を変えて行う。尚、オリゴDNAを識別装置1を上に固定する方法は、前述した方法に限定されるものではなく、他の公知な方法を採用してもよい。
【0035】
また、オリゴDNA固定効率を上げるために、リンカー試薬を用いることはより好ましい方法である。また、シランカップリング剤に関しても、このリンカー試薬に制限されるものではなく、入手可能な試薬を使用することも可能である。さらに、識別装置1に固定させるプローブ物質はオリゴDNA以外にも、RNA、PNA、抗原、抗体オリゴペプチド、タンパク質、細胞など検出目的に応じて使用することができる。
【0036】
サンプルは、一般的に市販されているキット(和光純薬社製、ISOGEN、カタログNo.311−02501)を使用して生体の検体からRNAを抽出し、同じく市販されているキット(インビトロジェン社製、ファーストストランドcDNA合成キット、カタログNo.12328−032)を使用してcDNAへの逆転写した。
このサンプルを、前述した方法によって異なる塩基配列のオリゴDNAを固定した識別装置1を1つ以上含む900mMクエン酸バッファー中に投入し混合させた。容器を50℃に一定にして、攪拌させながら、1時間反応させた。
【0037】
その後、エチジウムブロマイドを1uMになるように溶解させて、室温で攪拌しながら10分間反応させる。その後、濾過してこの溶液と識別装置1とを分離し、別の容器の15mMクエン酸バッファーに入れて37℃に保ち、10分間攪拌する。再度、濾過して識別装置1を取り出し、15mMクエン酸バッファー内に投入する。ここで、各種試薬としては他のキットおよびバッファーを使用することに制限はない。サンプルの状態、検出の目的に応じて最適な条件を設定する。 また、エチジウムブロマイド以外の試薬であってもプローブ物質としてのオリゴDNAと反応して2本鎖となったDNAにインターカレートする試薬、例えばCYBRGreen等であっても構わない。前述したインターカレーとする試薬は、導電体としての作用があり、2本鎖が多くなると、電流値が増加し、反応した量を測定することが可能になる。
【0038】
次に、前述した図1乃至図3を参照して、上記のように反応させた識別装置1からのプローブ情報の読み出しについて説明する。
この識別装置1を含むバッファーをポンプ等(図示せず)で吸引しながら、キャピラリー25内で少しの間隔をあけて順次1つずつ通過するようにバッファー量を調整しつつ、識別装置1をキャピラリー25内を通過させる。ここでは、キャピラリー25の内径を識別装置1の大きさの2倍程度を想定している。
【0039】
センサ31は、キャピラリー25内の所定位置を通過する識別装置を検出し、その検出信号が制御部21へ出力される。制御部1は、高周波発信部22を起動して、送信用アンテナ23から高周波を放射させる。放射された高周波は、識別装置1のアンテナ部2で受信されて電源電圧発生部3へ入力される。電源電圧発生部3は、識別装置1の各構成部位に駆動するための電源電圧を供給して、それぞれを起動させる。
【0040】
電流値測定部8は、電極7に測定用電圧を印加して、電極7間に流れる電流を測定する。プローブ情報は、例えば図4に示したように生体物質とプローブとの反応量と電流には相関を有しており、測定された電流に基づく電流値信号は、A/D変換部9によりデジタル信号化されてプローブ情報として、合成部5へ出力される。この時、個別識別信号保持部6に保持されている個別識別信号が読み出され、合成部5へ出力される。
【0041】
この合成部5では、個別識別信号とプローブ情報が合成されて送信データが構築される。例えば、この送信データが24bitとIDコードからなるデジタル信号であり、このうち電流値信号を12bitのデジタル信号で表した場合、これらに対応するプローブとの反応量(検体中の測定物濃度)が4096段階で検出体を識別することが可能となる。勿論、送信データのデータ量は適宜、設計により変更できるものであり、上記に固定されるものではない。作成された送信データは、送信部4によりアンテナ部2を通じて電波に変換されて放射される。この送信データ(電波)は、受信用アンテナ部26で受信され、受信部27に入力される。この受信部27では、電波となっている微小な信号を増幅し、ノイズ等を除去する。また、受信部27は、符号訂正回路等の送信データに対する補正手段を有している。
【0042】
受信部27から出力された送信データは、制御部21により処理部28へ送出される。処理部28では、プローブ情報(電極7間の電流値)と個別識別信号を記憶する。この測定方法では、複数の識別装置1がキャピラリー25内を順次通過し、連続的に送られてくる送信データは、処理部28に設けられた記憶部(図示せず)に一端に記憶される。全ての識別装置1の通過により、その全ての識別装置1の送信データを取り込んだ後、処理部28は、相関テーブルを用いて、個別識別信号により関連づけられたプローブ物質と、プローブ情報(電流値)に基づく反応状態、即ち、そのプローブ物質と反応したサンプル中の物質濃度が表示部32に表示される。
【0043】
以上のように第1の実施形態によれば、複数の識別装置を識別するために、識別装置に予め保持される個別識別信号を電波利用してプローブ情報と共に読み出しているため、従来のレーザー光を利用したものよりも確実で誤りのない識別が可能となり、コストの面で有用である。従来のビーズアレイのように蛍光物質を用いて個別識別を行わないため、長期保管が可能であるという効果も得られる。
【0044】
これらの識別装置は、半導体製造技術を用いて、多数を同じ基板(例えば、シリコンウエハ等)上で作成した後、微小なチップとして分離されているため、許容できる範囲で同一形状と同一特性を有している。また、従来のビーズように回路素子をガラスや樹脂製の粒子の内部に封入せずに基板表面の少なくとも一部に絶縁膜を形成することで製造プロセスも簡易になり、低コスト化も見込むことができる。
【0045】
形成されるプローブ物質と検体中の生体物質との反応の有無または反応量を測定するために、電極間の電流値を読み取る方法を用いることにより、識別装置の個別識別信号と電流値をデジタル信号で外部に発信することで、各々の識別装置の識別と測定値を誤りなく測定できるため、非常に有用である。
【0046】
次に第2の実施形態に係る生体物質の識別方法およびその識別システムについて説明する。
図5は、第2の実施形態における生体物質の識別方法を実現するための識別装置41からなる識別装置のブロック構成を示す図であり、図6は、この識別装置41からプローブ情報を得るための生体物質識別システムの構成例を示す。本実施形態の構成部位において、前述した第1の実施形態の構成部位(図1乃至図3)と同じものには、同じ参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0047】
この第2の実施形態の識別装置41は、前述した基板11と同等な基板上にアンテ部2、電源電圧発生部3及び、個別識別信号保持部6を形成し、基板全面上に絶縁膜10を形成する。
この識別装置41は、外部からの高周波信号(高周波)を受信すると電源電圧発生部3が駆動用電源電圧号を発生させて、個別識別信号保持部6を起動し、予め保持される個別識別信号を読み出して、送信部4からアンテナ部2を通じて、外部へ発信される。
【0048】
図6に示す生体物質識別システムは、前述した第1の実施形態と同等に、制御部21、高周波発振部22と、送信用アンテナ23と、電源24と、キャピラリー25と、受信用アンテナ部26と、受信部27と、処理部28と、外部ファイル30と、センサ31と、表示部32とを有している。ここで、キャピラリー25は、材料としてガラスだけではなく、照明光、照明光による発光や散乱光、化学発光又は高周波が通過すれば良く、内径も識別装置41が通過できるものであればよい。
【0049】
この生体物質識別システムは、さらに、識別装置41へ照明光を照射する光源42と、識別装置1から発せられる発光又は散乱光の強度を測定する、フィルタを備える光検出器43とを備えている。この光源42は、例えば、548nmの照明光を照射する。
【0050】
このように構成された生体物質識別システムによる生体物質の識別方法について説明する。
前述した第1の実施形態と同様に、1種類の生体物質と特異的に反応する物質(プローブ物質)を識別装置41上に固定したのち、検体溶液中に浸積し、反応させることで生じるプローブ物質と検体中の生体物質との結合を外部から検出する方法について説明する。また識別装置41においても、同様にプローブ物質と関連づけた個別識別信号が相関テーブルに記憶される。または、既に記憶されている個別識別信号とプローブ物質が関連づけて相関テーブルに記憶される。
【0051】
まず、製作された識別装置41の表面にシランカップリング剤を処理し、5’末端をアミノ修飾したオリゴDNAを反応させる。シランカップリング剤は、アミノプロピルトリメトキシシランをアセトンに3%濃度で溶解させ、識別装置41を溶液中に浸積し、室温にて3時間攪拌する。その攪拌により反応させた後、濾過して識別装置41とシランカップリング剤を分離する。その後、識別装置41は、エタノール溶液中及び純水中でそれぞれ順に10分間ほど攪拌し、取り出した後乾燥させる。
【0052】
オリゴDNAプローブは、塩基数20であり、10uMの濃度に900mMクェン酸バッファーに溶解し、シランカップリング剤処理後の識別装置41を浸積させ、室温で1時間攪拌して反応させた。反応した後、濾過し15mMクエン酸バッファー中で10分間攪拌し、最後に乾燥させた。
【0053】
このような反応を個別識別信号の異なる識別装置41毎にオリゴDNAの塩基配列を変えて行う。尚、オリゴDNAの識別装置41ヘの固定化方法として上記の方法に限られるものではなく、他の公知な方法を採用してもよい。
【0054】
また、オリゴDNA固定効率を上げるために、リンカー試薬を用いることはより好ましい方法である。また、シランカップリング剤に関しても、このリンカー試薬に限定されるものではなく、入手可能な試薬を使用することが可能である。さらに、識別装置41に固定させるプローブ物質はオリゴDNA以外にも、RNA、PNA、抗原、抗体オリゴペプチド、タンパク質、細胞など検出目的に応じて使用することができる。
【0055】
サンプルは、一般に市販されているキット(和光純薬社製、ISOGEN、カタログNo.311−02501)を使用して生体の検体からRNAを抽出し、同じく市販のキット(TAKARA社製、RNA Fluorescence labeling core kit、カタログNo.TX810)を使用してcDNAへの逆転写とともにFITC色素を標識した。
【0056】
このサンプルを、前述した方法によって異なる塩基配列のオリゴDNAを固定した識別装置41を1つ以上含む900mMクエン酸バッファー中に投入し混合させた。容器を50℃に一定にして、撹伴しながら1時間反応させた。
【0057】
その後、溶液を濾過して、識別装置41を取り出し、15mMクエン酸バッファーに入れて37℃に保ち、10分間攪拌する。その後、再度濾過して識別装置41を取り出し、15mMクエン酸バッファー中に投入した。ここで、各種試薬としては他のキットおよびバッファーを使用することに制限はない。サンプルの状態、検出の目的に応じて最適な条件を設定することができる。
【0058】
次に、前述した図5乃び図6を参照して、第2の実施形態における識別装置1からのプローブ情報の読み出しについて説明する。尚、前述した第1の実施形態と同様な構成及び動作は簡略化して説明する。
【0059】
この識別装置41を含むバッファーをポンプ等(図示せず)で吸引しながら、識別装置41はキャピラリー25内を1つずつ通過される。
【0060】
センサ31により識別装置41が検出されると、高周波発信部22から送信用アンテナ23を通じて高周波が放射される。
【0061】
この高周波を受けた識別装置41は、電源電圧発生部3で各構成部位を駆動するための電源電圧を発生させて、この電源電圧は送信部4及び個別識別信号保持部6へ供給される。起動した個別識別信号保持部6は、保持している個別識別信号を送信部4へ出力され、送信部4は送信データをアンテナ部2を通じて電波として放射する。この送信データ(電波)は、受信用アンテナ部26通じて受信部27に入力される。この受信部27では送信データに所定の信号処理を施して、制御部21により処理部28へ送出される。
【0062】
また個別識別信号を読み出すと同時に、光源42は識別装置41へ例えば、548nmの励起光を照射する。光検出器43は、識別装置1から発せられる蛍光強度を測定して、処理部28へ送出する。処理部28は、キャピラリー25内を通過したすべての識別装置41から個別識別信号及び蛍光強度を得て、これらを関連づけて順次記憶する。
【0063】
全ての識別装置41の読み取りが完了すると、処理部28は、得られた個別識別信号及び蛍光強度を外部ファイル30の相関テーブルに参照して、プローブ物質とその物質と反応したサンプル中の物質濃度を算出して、表示部32に測定結果を表示する。
【0064】
以上のように第2の実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様に、複数の識別装置を識別するために、識別装置に予め保持される個別識別信号を電波利用して読み出し、誤りのない識別が可能となる。従来のビーズアレイのように個別識別に蛍光物質を使用しないため、長期保管が可能である。
【0065】
半導体製造技術を用いて、許容できる範囲で同一形状と同一特性を有している多数の識別装置を同時に製作することができる。
【0066】
以上のように本発明は、1種類の生体物質と特異的に反応する物質(プローブ物質)を識別装置1上に固定したのち、検体溶液中に浸積し、反応させることで生じるプローブ物質と検体中の生体物質との結合を外部から検出することが可能になる。
【0067】
各々の物質を固定化した識別装置1を識別するために識別装置1から個別識別信号を電波として外部へ発信することで識別システムの判別処理側にを可能とすることである。
【0068】
信号を発信するエネルギーは、外部からの高周波によって識別装置1に与えられるようにすることで、識別装置1ヘのエネルギー供給は、レーザー光などと異なり、幅広く均一に照射することが可能となり、検出のための流路設計が容易になり、検出装置も高周波の受発信回路のみと簡略化できる。このとき、プローブ物質と検体中の生体物質との反応の有無または反応量を測定する方法には特に制限はない。
【0069】
第2の実施形態では、生体物質の標識に蛍光色素であるFITCを用いた場合について説明したが、生体物質の標識に、金や銀、または、シリコン半導体の微粒子を用い、この微粒子の光共鳴散乱をした散乱光の強度を測定することにより、プローブ物質と検体中の生体物質との反応の有無または反応量を測定することが可能である。この場合、光共鳴散乱が起こるような波長の照明光を照射することができる光源を選択すればよい。
【0070】
好ましくは、識別装置1に形成した電極間の電流値の差、蛍光、化学発光などを用いることができる。特に電極間の電流値を読み取る方法は、識別装置1の個別識別信号と電流値をデジタル信号で外部に発信することで、各々の識別装置1の識別と測定値を誤りなく測定できるため、非常に有用である。従来のビーズアレイのように個別識別に蛍光物質を使用しないため、長期保管が可能と言う利点もある。さらに、ガラスまたは樹脂製の粒子の内部に封入せずに表面の少なくとも一部に絶縁膜を形成することで製造プロセスも簡易になり、低コストかも見込むことができる。
【0071】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、高周波により駆動用電圧を発生させて、反応する物質を関係づけて予め保持される個別識別信号と、この反応する物質への電圧印加で測定された電流値に基づくプローブ情報とからなる送信データを電波として送信し、この送信データを受信して、個別識別信号に基づく生体物質の特定と、プローブ情報に基づく生体物質の識別方法及びその識別装置システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1の実施形態に係る生体物質の識別方法を実現するための識別装置からなる識別装置のブロック構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態における識別装置の外観構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態における識別装置からプローブ情報を得るための生体物質識別システムの構成例を示す図である。
【図4】識別装置におけるプローブとの反応量と電流値との関係を示す図である。
【図5】本発明による第2の実施形態に係る生体物質の識別方法を実現するための識別装置からなる識別装置のブロック構成を示す図である。
【図6】第2の実施形態における識別装置からプローブ情報を得るための生体物質識別システムの構成例を示す図である。
【符号の説明】
1…識別装置、2…アンテナ部、3…電源電圧発生部、4…送信部、5…合成部、6…個別識別信号保持部、7…電極、8…電流値測定部、9…A/D変換部、12…回路素子部、22…高周波発振部、23…送信用アンテナ、24…電源、25…キャピラリー、26…受信用アンテナ部、27…受信部、28…処理部、29…制御部、30…外部ファイル、31…センサ、32…表示部。
【発明の属する技術分野】
本発明は、被検体中の生体物質を検出する識別方法及びその識別システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から公知な被検体中の多数の物質を同時に測定するマイクロアレイと称する手法は、測定信号を分離するために空間的に分離した多数のプローブを担体に固定している。この方法においては、位置の確定のために多くの画像処理が必要であり、それらの機器が高価となっている。
また、設計時にマイクロアレイ上の所定位置へ一度固定したプローブは後から動かせないので、項目設計の自由度が低い。さらに、マイクロアレイは、それぞれを個別に作成しなければならないので、同じ仕様でもマイクロアレイ間における品質が一定していないため、原理的に抜き取り検査ができず、全品検査という手間が掛かり問題となっている。
【0003】
これに対して、特許文献1及び特許文献2に開示されるようなマイクロアレイと同様な技術によるビーズアレイが提案されている。
このビーズアレイは、個別のビーズを識別するために1または2種類の蛍光物質を形成させているが、これら方法では識別装置が大掛かりになり、高価である。また、識別精度が低いため、誤測定が生じやすい欠点がある。さらに、蛍光物質は長期保管において劣化してしまい、取り扱いに問題がある。
【0004】
この問題を解決するものとして、個別のビーズを識別するために各ビーズ内に電子回路を内蔵させて、無線によって個別識別信号を受け取る方法として、例えば、特許文献3、4及び5にマイクロトランスポンダー技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特表2001−520323号公報、段落番号[0030]
【0006】
【特許文献2】
特表2002−501184号公報、段落番号[0025]
【0007】
【特許文献3】
米国特許番号(Patent Number):5,981,166
【0008】
【特許文献4】
米国特許番号(Patent Number):6,001,571
【0009】
【特許文献5】
米国特許番号(Patent Number):5,736,332
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前述した特許文献3、4、5に開示されるマイクロトランスポンダーは、ビーズ内に設けた電子回路を駆動するための駆動電圧の発生させるために、レーザ光をビーズに照射する方法を採用している。しかし、この方法は、レーザ光をビーズに確実に照射するための流路の設計が難しいことと、個別識別番号を得るためだけに光学装置と無線送受信装置とを設けなければならない問題がある。また、ガラスまたは樹脂製の粒子の内部に回路を封入するため、その製造プロセスが複雑となってしまい、コストが高くなる問題もある。
【0011】
そこで本発明は、高周波により駆動用電圧を発生させて、反応する物質を関係づけて予め保持される個別識別信号と、この反応する物質への電圧印加で測定された電流値に基づくプローブ情報とからなる送信データを電波として送信し、この送信データを受信して、個別識別信号に基づく生体物質の特定と、プローブ情報に基づく生体物質の識別方法及びその識別装置システムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、外部から受ける高周波により電圧を発生させて、被検体中の生体物質と反応する物質への電圧印加により生じた電流値をプローブ情報として、予め前記反応する物質と関連づけられて保持される個別識別信号と共に、電波にて発信出力し、その電波を受信して、前記個別識別信号に基づき前記反応する物質の種別を特定し、そのプローブ情報から生体物質の識別及び反応状態の検出を行う生体物質の識別方法を提供する。
【0013】
第2の方法として、外部から受ける高周波により電圧を発生させて、その電圧で被検体中の生体物質との反応によって生じた結合体と特異的に反応する物質と予め関連づけられた個別識別信号を保持する個別識別信号保持部を駆動して、前記個別識別信号を電波にて発信出力し、前記反応する物質に光を照射し、該物質からの発光、散乱光又は化学発光強度によって反応状態を測定し、受信した前記個別識別信号と、測定された前記発光、散乱光又は化学発光の強度から生体物質の識別及び反応状態の検出を行う生体物質の識別及び反応状態の検出を行う生体物質の識別方法を提供する。
【0014】
第1のシステムとして、基板上に設けられ、アンテナにより受信した高周波により駆動用電圧を発生する電圧発生部と、予め定められた個別識別信号を保持し、前記駆動用電圧の印加により起動し、該個別識別信号を出力する個別識別信号保持部と、前記基板上に所定間隔をあけて並設される一対の電極と、前記一対の電極に計測用電圧を印加し、被検体中の生体物質との反応によって生じた結合体と特異的に反応する物質を更に反応させた電流値を測定する電流値測定部と、前記電流値をデジタル処理したプローブ情報を生成する変換部と、前記個別識別信号と前記プローブ情報とを合成して送信データを生成し、前記アンテナを通じて外部へ電波として発信する合成・送信部と、前記基板上の前記電極表面を除く基板表面に設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜上に設けられた前記被検体中の生体物質と反応する物質とで構成される識別装置を用いて、前記識別装置から発信された電波を受信して、前記個別識別信号に基づき前記反応する物質の種別を特定し、前記プローブ情報から生体物質の識別及び反応状態の検出を行う生体物質の識別システムを提供する。
【0015】
第2のシステムとして、基板上に設けられ、アンテナにより受信した高周波により駆動用電圧を発生する電圧発生部と、予め定められた個別識別信号を保持し、前記駆動用電圧の印加により起動し、該個別識別信号を出力する個別識別信号保持部と、前記個別識別信号を外部に電波として発信する送信部と、前記基板上の前記電極表面を除く基板表面に設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜上に設けられた前記被検体中の生体物質と反応する物質とで構成される識別装置を用いて、前記識別装置から発信された電波を受信して得られた前記個別識別信号に基づき前記反応する物質の種別を特定し、前記基板上の前記反応する物質へ光を照射して、前記物質と前記被検体中の生体物質との反応を発光、散乱光又は化学発光によって測定して、生体物質の識別及び反応状態の検出を行う生体物質の識別システムを提供する。
【0016】
以上のような生体物質の識別方法及びその識別システムは、外部から受けた高周波により駆動用電圧を発生させて、この駆動用電圧で個別識別信号保持部を駆動し、設けられたプローブ物質と関連づけられて予め保持される個別識別信号と、電流値測定部により検出されたプローブ物質と反応したサンプル中の物質濃度を示す電流値(プローブ情報)とが合成された送信データを電波で送信する。この電波を受けて、個別識別信号に基づき反応する物質の種別を特定し、そのプローブ情報から反応状態が検出される。
【0017】
また、生体物質の識別方法及びその識別システムは、識別装置が外部から受けた高周波により駆動用電圧を発生させて、この駆動用電圧で個別識別信号保持部を駆動し、設けられたプローブ物質と関連づけられて予め保持される個別識別信号を電波で送信する。この電波を受けて、個別識別信号に基づき反応する物質の種別を特定し、同時に、光源による光を識別装置へ照射し、前記物質と前記被検体中の生体物質との反応状態を発光、散乱光又は化学発光によって測定する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1には、本発明による生体物質の識別方法を実現するための識別装置1からなる識別装置のブロック構成を示す図であり、図2は、この識別装置の外観構成図である。
【0020】
この識別装置1は、外部からの高周波信号の電波(高周波又は電磁波を示す)を受信し、後述する送信データを送信するためのアンテナ部2と、受信した高周波信号から各構成部位を駆動させるための電源電圧を発生させる電源電圧発生部3と、予め定められた個別識別信号を保持し駆動電圧の印加により起動して、その個別識別信号を出力する個別識別信号保持部6と、後述する狭い間隔で配置された一対の電極7と、これらの電極7に測定用電圧を印加し生じた電流値を測定する電流値測定部8と、電流値測定部8から出力された電流値(アナログ信号)をデジタル変換して測定値データ(プローブ情報)を生成するA/D変換部9と、このプローブ情報と個別識別信号とを合成して送信データを生成する合成部5と、生成された送信データをアンテナ部2を通じて、外部に発信する送信部4とで構成される。
【0021】
この識別装置は、例えば、図2に示すように微細なシリコン半導体チップ11上に、公知な半導体製造技術(蒸着法、CVD(Chemical vapor Deposition)法及びスパッタリング法などの成膜技術、エッチング技術、及びマスキング技術)を用いて、前述した電源電圧発生部3、送信部4、合成部5、個別識別信号保持部6、電流値測定部8及びA/D変換部9を集積して形成した回路素子部12と、基板11の素子回路形成面の外周に環状に形成されたアンテナ部2と、銅や金又はアルミニウム等の金属からなる一対の電極7とが形成される。
【0022】
この電極7は、処理液に腐食されにくい金属材料が好ましく、検出される電流値を大きくして測定をより効率的に行うためにできる限り長いパターンが好ましい。さらに、電極7面上を除き、回路素子部12を含む基板11上には絶縁膜10が保護膜として形成される。この絶縁膜10としては、処理液に対して回路素子を保護及び電気的絶縁として機能すればよく、特に制限はないが、酸化シリコン膜やチッ化シリコン膜等の無機膜、又はポリイミド薄膜やパリレン等の高分子薄膜が好ましい。
【0023】
この基板11の材料は、シリコンだけではなく、セラミックス、ガラス又は、石英等を用いることができる。処理液に対して耐腐食性、製造時の耐熱性等を有していれば、樹脂により基板11を形成してもよい。尚、セラミックス、ガラス、石英等の絶縁材料を用いる場合には、液晶基板製造技術と同様に、絶縁基板上に回路素子部12を設ける領域に活性層となる金属薄膜を形成することにより、シリコン基板と同様に回路素子を構築することができる。
【0024】
また、この基板11は、例えば、数インチのシリコンウエハ上に同じプロセス条件により多数作成し、完成した後、ダイシングにより微小なベアチップに分離する。このような製造工程により、同一形状で同一特性を有する識別装置1を一度に多数個、作成することができる。また、この基板11の絶縁膜10上には、後述する方法で1つの種類のプローブ13が設けられる。
【0025】
前記個別識別信号保持部6は、例えば、電気的に情報が書き換え可能なEEPROMが好ましく、この場合には、基板11上に露出する入力ポートを形成する必要がある。また、一度、識別信号を書き込んだ後、変更しないのであれば、ROM、EPROM又はPROM等のメモリであってもよい。これらを用いる場合には、情報を書き込んだ後、絶縁膜10を形成する。
【0026】
図3は、識別装置1からプローブ情報を得るための生体物質識別システムの構成例を示す。
この生体物質識別システムは、反応処理された識別装置1が含まれるバッファーを流すキャピラリー25と、キャピラリー25内を通過する識別装置1を検出するセンサ31と、キャピラリー25内をバッファと共に流れる識別装置1に外部から高周波信号(電磁波)を放射する送信用アンテナ23と、送信用アンテナ23から電磁波を出力させる高周波発振部22と、高周波発振部22を含む各構成部位に駆動用電源供給する電源24と、識別装置1から発信された送信データを受信用アンテナ部26を通じて受信し、信号増幅等の処理を行う受信部27と、本システムの各構成部位の制御を行い、受信された送信データを後述する処理部28へ転送する制御部21と、反応状態などの測定結果を表示する表示部32とで構成される。
【0027】
このような構成において、センサ31は、全部の識別装置1がキャピラリー25内を通過するまで電磁波を出力し続けた状態で、プローブ情報を検出するのであれば必ずしも設ける必要はない。また、センサ31によりキャピラリー25内を通過した識別装置1の総数をカウントして、得られた送信データの総数と比較して、読み出し漏れ検出の機能を持たせることも可能である。
【0028】
この処理部28は、パーソナルコンピュータ等からなり、入力された送信データからプローブ情報と個別識別信号とを分離して、外部ファイル30に予め記憶されている個別識別信号とプローブ物質の相関テーブルを参照して、所定のプログラムを用いて診断等の解析、例えば、該当するプローブ物質とその物質と反応したサンプル中の物質濃度を演算して、その結果を表示部32に表示する。この処理部28は、必ずしも現場のシステム自体に組み込まる必要はなく、インターネット等のネットワークを通じて有線又は無線によりアクセスして接続される1台又は複数台の外部機器でもよい。
【0029】
またキヤピラリー25はガラスで形成される場合が多いが、これに限定されず、電磁波が通過すれば、ガラスでなくとも良く、内径も識別装置1がスムーズに通過できる内径を有していれば良い。また、キャピラリー25でなくとも溝状の流路を形成した基材であっても構わない。
【0030】
このように構成された生体物質識別システムによる生体物質の識別方法について説明する。ここでは、1種類の生体物質と特異的に反応する物質(プローブ物質)を識別装置1上に固定したのち、検体溶液中に浸積し、反応させることで生じるプローブ物質と検体中の生体物質との結合を外部から検出する方法について説明する。
【0031】
前述したように識別装置1を製作し、処理装置28において、個別識別信号保持部6がEEPROMの場合には、形成するプローブ物質と関連づけた個別識別信号を電気的に書き込み、外部ファイル部30の相関テーブルを作成する。または、既に個別識別信号保持部6に個別識別信号が記憶されている場合には、個別識別信号を読み出し、作成するプローブ物質と関連づけた相関テーブルを作成する。尚、記憶された個別識別信号が目視で判るように識別装置1の外装にナンバーリングしてもよい。
【0032】
次に、識別装置1の表面(絶縁膜)上に例えば、オリゴDNAプローブを設ける。
まず、製作された識別装置1の表面にシランカップリング剤を処理し、5末端をアミノ修飾したオリゴDNAを反応させる。シランカップリング剤は、アミノプロピルトリメトキシシランをアセトンに3%濃度で溶解させ、識別装置1を溶液中に浸積し室温にて3時間ほど攪拌する。その攪拌により反応させた後、濾過して識別装置1とシランカップリング剤とを分離する。その後、識別装置1は、エタノール溶液中及び純水中でそれぞれ順に10分間ほど攪拌し、取り出した後乾燥させる。
【0033】
オリゴDNAプローブは、塩基数20であり、10uMの濃度に900mMクェン酸バッファーに溶解し、シランカップリング剤処理後の識別装置1を浸積させ、室温で1時間攪拌して反応させた。反応した後、濾過し15mMクエン酸バッファー中で10分間攪拌して、最後に乾燥させた。
【0034】
このような反応を個別識別信号の異なる識別装置1毎にオリゴDNAの塩基配列を変えて行う。尚、オリゴDNAを識別装置1を上に固定する方法は、前述した方法に限定されるものではなく、他の公知な方法を採用してもよい。
【0035】
また、オリゴDNA固定効率を上げるために、リンカー試薬を用いることはより好ましい方法である。また、シランカップリング剤に関しても、このリンカー試薬に制限されるものではなく、入手可能な試薬を使用することも可能である。さらに、識別装置1に固定させるプローブ物質はオリゴDNA以外にも、RNA、PNA、抗原、抗体オリゴペプチド、タンパク質、細胞など検出目的に応じて使用することができる。
【0036】
サンプルは、一般的に市販されているキット(和光純薬社製、ISOGEN、カタログNo.311−02501)を使用して生体の検体からRNAを抽出し、同じく市販されているキット(インビトロジェン社製、ファーストストランドcDNA合成キット、カタログNo.12328−032)を使用してcDNAへの逆転写した。
このサンプルを、前述した方法によって異なる塩基配列のオリゴDNAを固定した識別装置1を1つ以上含む900mMクエン酸バッファー中に投入し混合させた。容器を50℃に一定にして、攪拌させながら、1時間反応させた。
【0037】
その後、エチジウムブロマイドを1uMになるように溶解させて、室温で攪拌しながら10分間反応させる。その後、濾過してこの溶液と識別装置1とを分離し、別の容器の15mMクエン酸バッファーに入れて37℃に保ち、10分間攪拌する。再度、濾過して識別装置1を取り出し、15mMクエン酸バッファー内に投入する。ここで、各種試薬としては他のキットおよびバッファーを使用することに制限はない。サンプルの状態、検出の目的に応じて最適な条件を設定する。 また、エチジウムブロマイド以外の試薬であってもプローブ物質としてのオリゴDNAと反応して2本鎖となったDNAにインターカレートする試薬、例えばCYBRGreen等であっても構わない。前述したインターカレーとする試薬は、導電体としての作用があり、2本鎖が多くなると、電流値が増加し、反応した量を測定することが可能になる。
【0038】
次に、前述した図1乃至図3を参照して、上記のように反応させた識別装置1からのプローブ情報の読み出しについて説明する。
この識別装置1を含むバッファーをポンプ等(図示せず)で吸引しながら、キャピラリー25内で少しの間隔をあけて順次1つずつ通過するようにバッファー量を調整しつつ、識別装置1をキャピラリー25内を通過させる。ここでは、キャピラリー25の内径を識別装置1の大きさの2倍程度を想定している。
【0039】
センサ31は、キャピラリー25内の所定位置を通過する識別装置を検出し、その検出信号が制御部21へ出力される。制御部1は、高周波発信部22を起動して、送信用アンテナ23から高周波を放射させる。放射された高周波は、識別装置1のアンテナ部2で受信されて電源電圧発生部3へ入力される。電源電圧発生部3は、識別装置1の各構成部位に駆動するための電源電圧を供給して、それぞれを起動させる。
【0040】
電流値測定部8は、電極7に測定用電圧を印加して、電極7間に流れる電流を測定する。プローブ情報は、例えば図4に示したように生体物質とプローブとの反応量と電流には相関を有しており、測定された電流に基づく電流値信号は、A/D変換部9によりデジタル信号化されてプローブ情報として、合成部5へ出力される。この時、個別識別信号保持部6に保持されている個別識別信号が読み出され、合成部5へ出力される。
【0041】
この合成部5では、個別識別信号とプローブ情報が合成されて送信データが構築される。例えば、この送信データが24bitとIDコードからなるデジタル信号であり、このうち電流値信号を12bitのデジタル信号で表した場合、これらに対応するプローブとの反応量(検体中の測定物濃度)が4096段階で検出体を識別することが可能となる。勿論、送信データのデータ量は適宜、設計により変更できるものであり、上記に固定されるものではない。作成された送信データは、送信部4によりアンテナ部2を通じて電波に変換されて放射される。この送信データ(電波)は、受信用アンテナ部26で受信され、受信部27に入力される。この受信部27では、電波となっている微小な信号を増幅し、ノイズ等を除去する。また、受信部27は、符号訂正回路等の送信データに対する補正手段を有している。
【0042】
受信部27から出力された送信データは、制御部21により処理部28へ送出される。処理部28では、プローブ情報(電極7間の電流値)と個別識別信号を記憶する。この測定方法では、複数の識別装置1がキャピラリー25内を順次通過し、連続的に送られてくる送信データは、処理部28に設けられた記憶部(図示せず)に一端に記憶される。全ての識別装置1の通過により、その全ての識別装置1の送信データを取り込んだ後、処理部28は、相関テーブルを用いて、個別識別信号により関連づけられたプローブ物質と、プローブ情報(電流値)に基づく反応状態、即ち、そのプローブ物質と反応したサンプル中の物質濃度が表示部32に表示される。
【0043】
以上のように第1の実施形態によれば、複数の識別装置を識別するために、識別装置に予め保持される個別識別信号を電波利用してプローブ情報と共に読み出しているため、従来のレーザー光を利用したものよりも確実で誤りのない識別が可能となり、コストの面で有用である。従来のビーズアレイのように蛍光物質を用いて個別識別を行わないため、長期保管が可能であるという効果も得られる。
【0044】
これらの識別装置は、半導体製造技術を用いて、多数を同じ基板(例えば、シリコンウエハ等)上で作成した後、微小なチップとして分離されているため、許容できる範囲で同一形状と同一特性を有している。また、従来のビーズように回路素子をガラスや樹脂製の粒子の内部に封入せずに基板表面の少なくとも一部に絶縁膜を形成することで製造プロセスも簡易になり、低コスト化も見込むことができる。
【0045】
形成されるプローブ物質と検体中の生体物質との反応の有無または反応量を測定するために、電極間の電流値を読み取る方法を用いることにより、識別装置の個別識別信号と電流値をデジタル信号で外部に発信することで、各々の識別装置の識別と測定値を誤りなく測定できるため、非常に有用である。
【0046】
次に第2の実施形態に係る生体物質の識別方法およびその識別システムについて説明する。
図5は、第2の実施形態における生体物質の識別方法を実現するための識別装置41からなる識別装置のブロック構成を示す図であり、図6は、この識別装置41からプローブ情報を得るための生体物質識別システムの構成例を示す。本実施形態の構成部位において、前述した第1の実施形態の構成部位(図1乃至図3)と同じものには、同じ参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0047】
この第2の実施形態の識別装置41は、前述した基板11と同等な基板上にアンテ部2、電源電圧発生部3及び、個別識別信号保持部6を形成し、基板全面上に絶縁膜10を形成する。
この識別装置41は、外部からの高周波信号(高周波)を受信すると電源電圧発生部3が駆動用電源電圧号を発生させて、個別識別信号保持部6を起動し、予め保持される個別識別信号を読み出して、送信部4からアンテナ部2を通じて、外部へ発信される。
【0048】
図6に示す生体物質識別システムは、前述した第1の実施形態と同等に、制御部21、高周波発振部22と、送信用アンテナ23と、電源24と、キャピラリー25と、受信用アンテナ部26と、受信部27と、処理部28と、外部ファイル30と、センサ31と、表示部32とを有している。ここで、キャピラリー25は、材料としてガラスだけではなく、照明光、照明光による発光や散乱光、化学発光又は高周波が通過すれば良く、内径も識別装置41が通過できるものであればよい。
【0049】
この生体物質識別システムは、さらに、識別装置41へ照明光を照射する光源42と、識別装置1から発せられる発光又は散乱光の強度を測定する、フィルタを備える光検出器43とを備えている。この光源42は、例えば、548nmの照明光を照射する。
【0050】
このように構成された生体物質識別システムによる生体物質の識別方法について説明する。
前述した第1の実施形態と同様に、1種類の生体物質と特異的に反応する物質(プローブ物質)を識別装置41上に固定したのち、検体溶液中に浸積し、反応させることで生じるプローブ物質と検体中の生体物質との結合を外部から検出する方法について説明する。また識別装置41においても、同様にプローブ物質と関連づけた個別識別信号が相関テーブルに記憶される。または、既に記憶されている個別識別信号とプローブ物質が関連づけて相関テーブルに記憶される。
【0051】
まず、製作された識別装置41の表面にシランカップリング剤を処理し、5’末端をアミノ修飾したオリゴDNAを反応させる。シランカップリング剤は、アミノプロピルトリメトキシシランをアセトンに3%濃度で溶解させ、識別装置41を溶液中に浸積し、室温にて3時間攪拌する。その攪拌により反応させた後、濾過して識別装置41とシランカップリング剤を分離する。その後、識別装置41は、エタノール溶液中及び純水中でそれぞれ順に10分間ほど攪拌し、取り出した後乾燥させる。
【0052】
オリゴDNAプローブは、塩基数20であり、10uMの濃度に900mMクェン酸バッファーに溶解し、シランカップリング剤処理後の識別装置41を浸積させ、室温で1時間攪拌して反応させた。反応した後、濾過し15mMクエン酸バッファー中で10分間攪拌し、最後に乾燥させた。
【0053】
このような反応を個別識別信号の異なる識別装置41毎にオリゴDNAの塩基配列を変えて行う。尚、オリゴDNAの識別装置41ヘの固定化方法として上記の方法に限られるものではなく、他の公知な方法を採用してもよい。
【0054】
また、オリゴDNA固定効率を上げるために、リンカー試薬を用いることはより好ましい方法である。また、シランカップリング剤に関しても、このリンカー試薬に限定されるものではなく、入手可能な試薬を使用することが可能である。さらに、識別装置41に固定させるプローブ物質はオリゴDNA以外にも、RNA、PNA、抗原、抗体オリゴペプチド、タンパク質、細胞など検出目的に応じて使用することができる。
【0055】
サンプルは、一般に市販されているキット(和光純薬社製、ISOGEN、カタログNo.311−02501)を使用して生体の検体からRNAを抽出し、同じく市販のキット(TAKARA社製、RNA Fluorescence labeling core kit、カタログNo.TX810)を使用してcDNAへの逆転写とともにFITC色素を標識した。
【0056】
このサンプルを、前述した方法によって異なる塩基配列のオリゴDNAを固定した識別装置41を1つ以上含む900mMクエン酸バッファー中に投入し混合させた。容器を50℃に一定にして、撹伴しながら1時間反応させた。
【0057】
その後、溶液を濾過して、識別装置41を取り出し、15mMクエン酸バッファーに入れて37℃に保ち、10分間攪拌する。その後、再度濾過して識別装置41を取り出し、15mMクエン酸バッファー中に投入した。ここで、各種試薬としては他のキットおよびバッファーを使用することに制限はない。サンプルの状態、検出の目的に応じて最適な条件を設定することができる。
【0058】
次に、前述した図5乃び図6を参照して、第2の実施形態における識別装置1からのプローブ情報の読み出しについて説明する。尚、前述した第1の実施形態と同様な構成及び動作は簡略化して説明する。
【0059】
この識別装置41を含むバッファーをポンプ等(図示せず)で吸引しながら、識別装置41はキャピラリー25内を1つずつ通過される。
【0060】
センサ31により識別装置41が検出されると、高周波発信部22から送信用アンテナ23を通じて高周波が放射される。
【0061】
この高周波を受けた識別装置41は、電源電圧発生部3で各構成部位を駆動するための電源電圧を発生させて、この電源電圧は送信部4及び個別識別信号保持部6へ供給される。起動した個別識別信号保持部6は、保持している個別識別信号を送信部4へ出力され、送信部4は送信データをアンテナ部2を通じて電波として放射する。この送信データ(電波)は、受信用アンテナ部26通じて受信部27に入力される。この受信部27では送信データに所定の信号処理を施して、制御部21により処理部28へ送出される。
【0062】
また個別識別信号を読み出すと同時に、光源42は識別装置41へ例えば、548nmの励起光を照射する。光検出器43は、識別装置1から発せられる蛍光強度を測定して、処理部28へ送出する。処理部28は、キャピラリー25内を通過したすべての識別装置41から個別識別信号及び蛍光強度を得て、これらを関連づけて順次記憶する。
【0063】
全ての識別装置41の読み取りが完了すると、処理部28は、得られた個別識別信号及び蛍光強度を外部ファイル30の相関テーブルに参照して、プローブ物質とその物質と反応したサンプル中の物質濃度を算出して、表示部32に測定結果を表示する。
【0064】
以上のように第2の実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様に、複数の識別装置を識別するために、識別装置に予め保持される個別識別信号を電波利用して読み出し、誤りのない識別が可能となる。従来のビーズアレイのように個別識別に蛍光物質を使用しないため、長期保管が可能である。
【0065】
半導体製造技術を用いて、許容できる範囲で同一形状と同一特性を有している多数の識別装置を同時に製作することができる。
【0066】
以上のように本発明は、1種類の生体物質と特異的に反応する物質(プローブ物質)を識別装置1上に固定したのち、検体溶液中に浸積し、反応させることで生じるプローブ物質と検体中の生体物質との結合を外部から検出することが可能になる。
【0067】
各々の物質を固定化した識別装置1を識別するために識別装置1から個別識別信号を電波として外部へ発信することで識別システムの判別処理側にを可能とすることである。
【0068】
信号を発信するエネルギーは、外部からの高周波によって識別装置1に与えられるようにすることで、識別装置1ヘのエネルギー供給は、レーザー光などと異なり、幅広く均一に照射することが可能となり、検出のための流路設計が容易になり、検出装置も高周波の受発信回路のみと簡略化できる。このとき、プローブ物質と検体中の生体物質との反応の有無または反応量を測定する方法には特に制限はない。
【0069】
第2の実施形態では、生体物質の標識に蛍光色素であるFITCを用いた場合について説明したが、生体物質の標識に、金や銀、または、シリコン半導体の微粒子を用い、この微粒子の光共鳴散乱をした散乱光の強度を測定することにより、プローブ物質と検体中の生体物質との反応の有無または反応量を測定することが可能である。この場合、光共鳴散乱が起こるような波長の照明光を照射することができる光源を選択すればよい。
【0070】
好ましくは、識別装置1に形成した電極間の電流値の差、蛍光、化学発光などを用いることができる。特に電極間の電流値を読み取る方法は、識別装置1の個別識別信号と電流値をデジタル信号で外部に発信することで、各々の識別装置1の識別と測定値を誤りなく測定できるため、非常に有用である。従来のビーズアレイのように個別識別に蛍光物質を使用しないため、長期保管が可能と言う利点もある。さらに、ガラスまたは樹脂製の粒子の内部に封入せずに表面の少なくとも一部に絶縁膜を形成することで製造プロセスも簡易になり、低コストかも見込むことができる。
【0071】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、高周波により駆動用電圧を発生させて、反応する物質を関係づけて予め保持される個別識別信号と、この反応する物質への電圧印加で測定された電流値に基づくプローブ情報とからなる送信データを電波として送信し、この送信データを受信して、個別識別信号に基づく生体物質の特定と、プローブ情報に基づく生体物質の識別方法及びその識別装置システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1の実施形態に係る生体物質の識別方法を実現するための識別装置からなる識別装置のブロック構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態における識別装置の外観構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態における識別装置からプローブ情報を得るための生体物質識別システムの構成例を示す図である。
【図4】識別装置におけるプローブとの反応量と電流値との関係を示す図である。
【図5】本発明による第2の実施形態に係る生体物質の識別方法を実現するための識別装置からなる識別装置のブロック構成を示す図である。
【図6】第2の実施形態における識別装置からプローブ情報を得るための生体物質識別システムの構成例を示す図である。
【符号の説明】
1…識別装置、2…アンテナ部、3…電源電圧発生部、4…送信部、5…合成部、6…個別識別信号保持部、7…電極、8…電流値測定部、9…A/D変換部、12…回路素子部、22…高周波発振部、23…送信用アンテナ、24…電源、25…キャピラリー、26…受信用アンテナ部、27…受信部、28…処理部、29…制御部、30…外部ファイル、31…センサ、32…表示部。
Claims (13)
- 外部から受ける高周波により電圧を発生させて、被検体中の生体物質と反応する物質への電圧印加により生じた電流値をプローブ情報として、予め前記反応する物質と関連づけられて保持される個別識別信号と共に、電波にて発信出力し、
その電波を受信して、前記個別識別信号に基づき前記反応する物質の種別を特定し、そのプローブ情報から生体物質の識別及び反応状態の検出を行うことを特徴とする生体物質の識別方法。 - 外部から受ける高周波により電圧を発生させて、その電圧で被検体中の生体物質との反応によって生じた結合体と特異的に反応する物質と予め関連づけられた個別識別信号を保持する個別識別信号保持部を駆動して、前記個別識別信号を電波にて発信出力し、
前記反応する物質に光を照射し、該物質からの発光、散乱光又は化学発光強度によって反応状態を測定し、
受信した前記個別識別信号と、測定された前記反応状態から生体物質の識別及び反応状態の検出を行うことを特徴とする生体物質の識別方法。 - 前記生体物質の識別方法において、
前記物質がオリゴヌクレオチド、タンパク質、免疫物質又は細胞のいずれ1つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の生体物質の識別方法。 - 前記物質と前記被検体中の生体物質との反応によって生じた結合体と特異的に反応する物質を更に反応させた後に、測定用電圧を印加して、前記電流値としてプローブ情報を得ることを特徴とする請求項1に記載の生体物質の識別方法。
- 前記物質と前記被検体中の生体物質との反応を化学発光によって測定することを特徴とする請求項2に記載の生体物質の識別方法。
- 基板上に設けられ、アンテナにより受信した高周波により駆動用電圧を発生する電圧発生部と、
予め定められた個別識別信号を保持し、前記駆動用電圧の印加により起動し、該個別識別信号を出力する個別識別信号保持部と、
前記基板上に所定間隔をあけて並設される一対の電極と、
被検体中の生体物質との反応によって生じた結合体と特異的に反応する物質を更に反応させた後に、前記一対の電極に計測用電圧を印加し、電流値を測定する電流値測定部と、
前記電流値をデジタル処理したプローブ情報を生成する変換部と、
前記個別識別信号と前記プローブ情報とを合成して送信データを生成し、前記アンテナを通じて外部へ電波として発信する合成・送信部と、
前記基板上の前記電極表面を除く基板表面に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜上に設けられた前記被検体中の生体物質と反応する物質と、
で構成される識別装置を用いて、
前記識別装置から発信された電波を受信して、前記個別識別信号に基づき前記反応する物質の種別を特定し、前記プローブ情報から生体物質の識別及び反応状態の検出を行うことを特徴とする生体物質の識別システム。 - 基板上に設けられ、アンテナにより受信した高周波により駆動用電圧を発生する電圧発生部と、
予め定められた個別識別信号を保持し、前記駆動用電圧の印加により起動し、該個別識別信号を出力する個別識別信号保持部と、
前記個別識別信号を外部に電波として発信する送信部と、
前記基板上の前記電極表面を除く基板表面に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜上に設けられた前記被検体中の生体物質と反応する物質と、
で構成される識別装置を用いて、
前記識別装置から発信された電波を受信して得られた前記個別識別信号に基づき前記反応する物質の種別を特定し、前記基板上の前記反応する物質へ光を照射して、前記物質と前記被検体中の生体物質との反応を発光、散乱光又は化学発光によって測定して、生体物質の識別及び反応状態の検出を行うことを特徴とする生体物質の識別システム。 - 前記識別装置において、
異なった前記個別識別信号毎に前記基板表面に形成する前記物質が異なっていることを特徴とする請求項6又は7に記載の生体物質の識別システム。 - 前記識別装置において、
異なった個別識別信号を有する前記識別装置をそれぞれ1つ以上含む溶液中で前記被検体と反応させることを特徴とする請求項8に記載の生体物質の識別システム。 - 前記識別システムにおいて、
前記被検体と反応させた前記識別装置を複数含む溶液を狭い流路に流して該識別装置を空間的に分離する流路手段と、
前記流路手段を通過する前記識別装置へ高周波を照射する高周波発信部と、
前記識別装置が送信した送信データを受信する受信部と、
前記受信部からの送信データに含まれる前記個別識別信号に基づき前記反応する物質の種別を特定し、前記プローブ情報から生体物質の識別及び反応状態の検出を行う処理部と、
前記処理部による処理結果を表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする請求項6に記載の生体物質の識別システム。 - 前記識別システムにおいて、
前記被検体と反応させた前記識別装置を複数含む溶液を狭い流路に流して該識別装置を空間的に分離する流路手段と、
前記流路手段を通過する前記識別装置へ高周波を照射する高周波発信部と、
前記識別装置が送信した前記個別識別信号を受信する受信部と、
前記流路手段を通過する前記識別装置へ光を照射する光源と、
光が照射された前記識別装置から発光強度、散乱光強度又は化学発光強度を検出する光検出部と、
前記受信部からの前記個別識別信号に基づき前記反応する物質の種別を特定し、前記発光強度、散乱光強度又は化学発光強度の反応状態の検出を行う処理部と、
前記処理部による処理結果を表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする請求項7に記載の生体物質の識別システム。 - 前記識別装置は、シリコン半導体、ガラス、セラミックス又は石英ガラスのいずれか1つ又は、これらの複合体からなる基板上に複数配置されて同じプロセスにより同時に形成され、形成後に個々の分離されたチップからなることを特徴とする請求項6又は7記載の生体物質の識別システム。
- 識別システムにおいて、
前記流路手段の途中に、通過する前記識別装置を検出するセンサを設けたことを特徴とする請求項6又は7記載の生体物質の識別システム。
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JP2003120140A JP2004325244A (ja) | 2003-04-24 | 2003-04-24 | 生体物質の識別方法及びその識別システム |
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JP2003120140A Withdrawn JP2004325244A (ja) | 2003-04-24 | 2003-04-24 | 生体物質の識別方法及びその識別システム |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006250928A (ja) * | 2005-02-10 | 2006-09-21 | Semiconductor Energy Lab Co Ltd | 半導体装置 |
JP2009541775A (ja) * | 2006-06-23 | 2009-11-26 | ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー | 無線周波数トランスポンダアッセイ |
JP2010217051A (ja) * | 2009-03-17 | 2010-09-30 | Dkk Toa Corp | 卓上型測定装置 |
-
2003
- 2003-04-24 JP JP2003120140A patent/JP2004325244A/ja not_active Withdrawn
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