JP2004324998A - 熱交換器及びその製造方法並びに熱交換器用チューブ - Google Patents
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Abstract
【課題】生産効率に優れると共に、耐食性に優れ、かつフィン剥がれを生じない熱交換器及びその製造方法並びに熱交換器用チューブを提供する。
【解決手段】チューブ2間にフィン3がろう付け接合された熱交換器1において、チューブ2表面のZn拡散層はZnの濃度分布を有し、表面Zn濃度が0.3〜4.0質量%の範囲、平均表面Zn濃度が0.6〜1.6質量%、表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合が20%以上100%未満である構成とする。Zn付着量が1〜7g/m2 で、Znの被覆面積割合が20〜80%であるZn溶射層が形成されたチューブにフィンを加熱ろう付けにより接合して熱交換器を製造する。
【選択図】 図1
【解決手段】チューブ2間にフィン3がろう付け接合された熱交換器1において、チューブ2表面のZn拡散層はZnの濃度分布を有し、表面Zn濃度が0.3〜4.0質量%の範囲、平均表面Zn濃度が0.6〜1.6質量%、表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合が20%以上100%未満である構成とする。Zn付着量が1〜7g/m2 で、Znの被覆面積割合が20〜80%であるZn溶射層が形成されたチューブにフィンを加熱ろう付けにより接合して熱交換器を製造する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、耐食性に優れると共にフィン剥がれがなくて耐久性能に優れた熱交換器及びその製造方法並びに熱交換器用チューブに関する。
【0002】
なお、この明細書において、「アルミニウム」の語は、アルミニウム及びその合金を含む意味で用いる。
【0003】
【従来の技術】
アルミニウム製熱交換器としては、複数本の扁平チューブが相互間にフィンを介在させた状態で厚さ方向に積層され、これらチューブの両端に中空ヘッダーが連通接続された構成のものが公知であり、扁平チューブとフィンとはろう付けにより接合一体化されている。このようなアルミニウム製熱交換器は、このまま使用を続けているとチューブに孔食が発生して、これがチューブ内面にまで達して貫通し、熱交換器としての機能が損なわれてしまうことから、チューブの表面にZn溶射層を形成して表面にZnを拡散せしめることによって犠牲防食することが従来より多く行われている。
【0004】
ところで、上記Znの付着量が多いと、Znがチューブとフィンのフィレット部に多く拡散して該フィレット部が腐食してしまい、これによりフィンがチューブから離脱するフィン剥がれを多数生じる一方、Znの付着量が少ないと犠牲防食作用が殆ど得られなくなることから、Zn付着量をやや低量側で精密に制御する手法が検討されている。このようにZn付着量をやや低量側で精密に制御する手法として、特許文献1では、亜鉛含有率が30〜90重量%のアルミニウム−亜鉛合金を溶射することによってZn溶射層を形成することが提案され、また特許文献2では、亜鉛含有率が10〜85重量%のアルミニウム−亜鉛合金を溶射することによってZn溶射層を形成することが提案されている。なお、これらの従来技術では、上記Zn溶射層におけるZnの拡散分布は均一であることが良いとされていた。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−15496号公報(特許請求の範囲)
【0006】
【特許文献2】
特開平9−137245号公報(請求項1、段落0017)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では次のような問題があった。即ち、アルミニウム−亜鉛合金を溶射に用いるので材料コストが高くなるし、またZnの含有率の小さい合金を用いた場合にはアルミニウムがチューブ表面に多く付着してチューブ厚さが増大してしまうので溶射層厚さを厳密に制御しなければならないが、このような厳密な制御を実現するためには生産効率を低下させた状態(ライン速度を遅くした状態)で製造せざるを得ないという問題があった。更に、アルミニウム−亜鉛合金を溶射するので、溶射層が腐食層になりやすく、しかも腐食深さも深くなるという問題もあった。
【0008】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、生産効率に優れると共に、耐食性に優れ、かつフィン剥がれを生じない熱交換器及びその製造方法並びに熱交換器用チューブを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
(1)チューブよりも卑なる金属の拡散層が表面に形成された複数本のチューブが相互間にフィンを介在させた状態で積層され、前記チューブと前記フィンとがろう付けにより接合一体化されると共に、前記チューブの両端に中空ヘッダーが連通接続された熱交換器において、前記チューブよりも卑なる金属の拡散層は該卑金属の濃度分布を有するものとなされ、前記チューブにおける卑金属の表面濃度が0.01〜4.0質量%の範囲にあり、前記チューブにおける卑金属の平均表面濃度が0.03〜1.6質量%であり、前記卑金属の表面濃度が0.05質量%を超えた割合が20%以上100%未満であることを特徴とする熱交換器。
【0011】
(2)表面にZnの拡散層が形成された複数本のチューブが相互間にフィンを介在させた状態で積層され、前記チューブと前記フィンとがろう付けにより接合一体化されると共に、前記チューブの両端に中空ヘッダーが連通接続された熱交換器において、前記チューブ表面のZn拡散層はZnの濃度分布を有するものとなされ、前記チューブにおける表面Zn濃度が0.3〜4.0質量%の範囲にあり、前記チューブにおける平均表面Zn濃度が0.6〜1.6質量%であり、表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合が20%以上100%未満であることを特徴とする熱交換器。
【0012】
(3)前記チューブにおける表面Zn濃度が0.4〜3.0質量%の範囲にある前項2に記載の熱交換器。
【0013】
(4)前記チューブにおける平均表面Zn濃度が0.7〜1.2質量%である前項2または3に記載の熱交換器。
【0014】
(5)前記表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合が20〜60%である前項2〜4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0015】
(6)前記チューブにおける平均表面Zn濃度を「x」(質量%)とし、前記表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合を「y」(%)としたとき、「y≦100x−20」の関係が成立する前項2〜5のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0016】
(7)表面にInの拡散層が形成された複数本のチューブが相互間にフィンを介在させた状態で積層され、前記チューブと前記フィンとがろう付けにより接合一体化されると共に、前記チューブの両端に中空ヘッダーが連通接続された熱交換器において、前記チューブ表面のIn拡散層はInの濃度分布を有するものとなされ、前記チューブにおける表面In濃度が0.01〜0.13質量%の範囲にあり、前記チューブにおける平均表面In濃度が0.03〜0.06質量%であり、表面In濃度が0.05質量%を超えた割合が20%以上100%未満であることを特徴とする熱交換器。
【0017】
(8)表面にSnの拡散層が形成された複数本のチューブが相互間にフィンを介在させた状態で積層され、前記チューブと前記フィンとがろう付けにより接合一体化されると共に、前記チューブの両端に中空ヘッダーが連通接続された熱交換器において、前記チューブ表面のSn拡散層はSnの濃度分布を有するものとなされ、前記チューブにおける表面Sn濃度が0.01〜0.13質量%の範囲にあり、前記チューブにおける平均表面Sn濃度が0.03〜0.06質量%であり、表面Sn濃度が0.05質量%を超えた割合が20%以上100%未満であることを特徴とする熱交換器。
【0018】
(9)前記チューブはアルミニウムからなる前項1〜8のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0019】
(10)アルミニウム製チューブの表面に該チューブよりも卑なる金属の被覆層が形成された熱交換器用チューブにおいて、前記チューブよりも卑なる金属の付着量が0.03〜7g/m2 であり、前記チューブ表面において卑金属に覆われている領域の面積割合が20%以上100%未満であることを特徴とする熱交換器用チューブ。
【0020】
(11)アルミニウム製チューブの表面にZnの被覆層が形成された熱交換器用チューブにおいて、前記Znの付着量を「α」(g/m2 )とし、前記チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合を「β」(%)とし、これら数値を、Znの付着量(g/m2 )を横軸にし、チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合(%)を縦軸にしたグラフにプロットしたとき、このプロット点(α、β)が下記5つのラインで取り囲まれた領域内に位置することを特徴とする熱交換器用チューブ。
第1ライン:Zn付着量が1(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第2ライン:Zn付着量が7(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第3ライン:Znに覆われている領域の面積割合が20(%)の横直線(境界線を含む)
第4ライン:Znに覆われている領域の面積割合が100(%)の横直線(境界線を含まない)
第5ライン:座標点A(2、100)と座標点B(1、90)を通る斜め直線(境界線を含む)。
【0021】
(12)アルミニウム製チューブの表面にZnの被覆層が形成された熱交換器用チューブにおいて、前記Znの付着量を「α」(g/m2 )とし、前記チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合を「β」(%)とし、これら数値を、Znの付着量(g/m2 )を横軸にし、チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合(%)を縦軸にしたグラフにプロットしたとき、このプロット点(α、β)が下記4つのラインで取り囲まれた領域内に位置することを特徴とする熱交換器用チューブ。
第1ライン:Zn付着量が2(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第2ライン:Zn付着量が6(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第3ライン:Znに覆われている領域の面積割合が20(%)の横直線(境界線を含む)
第4ライン:Znに覆われている領域の面積割合が100(%)の横直線(境界線を含まない)。
【0022】
(13)アルミニウム製チューブの表面にZnの被覆層が形成された熱交換器用チューブにおいて、前記Znの付着量が1〜7g/m2 であり、前記チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合が20〜80%であることを特徴とする熱交換器用チューブ。
【0023】
(14)前記Znの付着量が2〜6g/m2 である前項13に記載の熱交換器用チューブ。
【0024】
(15)前記Znの付着量が2〜4g/m2 である前項13に記載の熱交換器用チューブ。
【0025】
(16)前記Zn被覆層は、亜鉛が溶射されて形成されたものである前項10〜15のいずれか1項に記載の熱交換器用チューブ。
【0026】
(17)アルミニウム製チューブの表面にInの被覆層が形成された熱交換器用チューブにおいて、前記Inの付着量を「α」(g/m2 )とし、前記チューブ表面においてInに覆われている領域の面積割合を「β」(%)とし、これら数値を、Inの付着量(g/m2 )を横軸にし、チューブ表面においてInに覆われている領域の面積割合(%)を縦軸にしたグラフにプロットしたとき、このプロット点(α、β)が下記5つのラインで取り囲まれた領域内に位置することを特徴とする熱交換器用チューブ。
第1ライン:In付着量が0.04(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第2ライン:In付着量が0.3(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第3ライン:Inに覆われている領域の面積割合が20(%)の横直線(境界線を含む)
第4ライン:Inに覆われている領域の面積割合が100(%)の横直線(境界線を含まない)
第5ライン:座標点C(0.09、100)と座標点D(0.04、90)を通る斜め直線(境界線を含む)。
【0027】
(18)アルミニウム製チューブの表面にSnの被覆層が形成された熱交換器用チューブにおいて、前記Snの付着量を「α」(g/m2 )とし、前記チューブ表面においてSnに覆われている領域の面積割合を「β」(%)とし、これら数値を、Snの付着量(g/m2 )を横軸にし、チューブ表面においてSnに覆われている領域の面積割合(%)を縦軸にしたグラフにプロットしたとき、このプロット点(α、β)が下記5つのラインで取り囲まれた領域内に位置することを特徴とする熱交換器用チューブ。
第1ライン:Sn付着量が0.04(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第2ライン:Sn付着量が0.3(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第3ライン:Snに覆われている領域の面積割合が20(%)の横直線(境界線を含む)
第4ライン:Snに覆われている領域の面積割合が100(%)の横直線(境界線を含まない)
第5ライン:座標点E(0.09、100)と座標点F(0.04、90)を通る斜め直線(境界線を含む)。
【0028】
(19)チューブは押出により形成されたものである前項10〜18のいずれか1項に記載の熱交換器用チューブ。
【0029】
(20)前記被覆層は、溶射により形成された溶射層である前項10〜19のいずれか1項に記載の熱交換器用チューブ。
【0030】
(21)前項10〜20のいずれか1項に記載の熱交換器用チューブにフィンを組み付ける工程と、前記組み付け状態で所定温度に加熱することにより、前記チューブとフィンとをろう付け接合する工程とを含むことを特徴とする熱交換器の製造方法。
【0031】
(22)前記加熱温度を550〜620℃の範囲に設定する前項21に記載の熱交換器の製造方法。
【0032】
(23)前記フィンとして、ろう材をクラッドしたアルミニウムブレージング材からなるフィンを用いる前項21または22に記載の熱交換器の製造方法。
【0033】
(1)の発明では、チューブよりも卑なる金属の拡散層は該卑金属の濃度分布を有するものとなされ、かつ「チューブよりも卑なる金属の表面濃度」、「チューブよりも卑なる金属の平均表面濃度」および「チューブよりも卑なる金属の表面濃度が0.05質量%を超えた割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、耐食性に優れており、フィン剥がれを生じない。
【0034】
(2)の発明では、チューブ表面のZn拡散層はZnの濃度分布を有するものとなされ、かつ「表面Zn濃度」、「平均表面Zn濃度」および「表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、耐食性に優れており、フィン剥がれを生じない。
【0035】
(3)の発明では、耐食性を一層向上させることができる。
【0036】
(4)の発明では、耐食性をさらに向上できると共にフィン剥がれも確実に防止できる。
【0037】
(5)(6)の発明では、耐食性をより一層向上させることができる。
【0038】
(7)の発明では、チューブ表面のIn拡散層はInの濃度分布を有するものとなされ、かつ「表面In濃度」、「平均表面In濃度」および「表面In濃度が0.05質量%を超えた割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、耐食性に優れており、フィン剥がれを生じない。
【0039】
(8)の発明では、チューブ表面のSn拡散層はSnの濃度分布を有するものとなされ、かつ「表面Sn濃度」、「平均表面Sn濃度」および「表面Sn濃度が0.05質量%を超えた割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、耐食性に優れており、フィン剥がれを生じない。
【0040】
(9)の発明では、軽量性に優れた熱交換器が提供される。
【0041】
(10)の発明では、「チューブよりも卑なる金属の付着量」および「チューブ表面において卑金属に覆われている領域の面積割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、ろう付け時等の加熱により被覆層中の卑金属がチューブ表面に拡散して形成されたチューブ表面の卑金属拡散層は、該卑金属の濃度分布を有するものとなる。従って、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性に優れると共に、フィン剥がれを生じない。
【0042】
(11)の発明では、「Znの付着量」および「チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、ろう付け時等の加熱により被覆層中のZnがチューブ表面に拡散して形成されたチューブ表面のZn拡散層は、Znの濃度分布を有するものとなる。従って、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性に優れると共に、フィン剥がれを生じない。
【0043】
(12)の発明によれば、これを用いて製造した熱交換器の耐食性をさらに向上できると共に、フィン剥がれを確実に防止できる。
【0044】
(13)の発明では、「Znの付着量」および「チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、ろう付け時等の加熱により被覆層中のZnがチューブ表面に拡散して形成されたチューブ表面のZn拡散層は、Znの濃度分布を有するものとなる。従って、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性に優れると共に、フィン剥がれを生じない。
【0045】
(14)の発明によれば、これを用いて製造した熱交換器の耐食性をさらに向上できると共に、フィン剥がれを確実に防止できる。
【0046】
(15)の発明によれば、これを用いて製造した熱交換器の耐食性をさらに向上できると共に、フィン剥がれをより確実に防止できる。
【0047】
(16)の発明では、(アルミニウム−亜鉛合金の溶射ではなく)亜鉛の溶射によりZn被覆層が形成されているので、Zn被覆層の腐食を防止できて、耐食性を一層向上できる。
【0048】
(17)の発明では、「Inの付着量」および「チューブ表面においてInに覆われている領域の面積割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、ろう付け時等の加熱により被覆層中のInがチューブ表面に拡散して形成されたチューブ表面のIn拡散層は、Inの濃度分布を有するものとなる。従って、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性に優れると共に、フィン剥がれを生じない。
【0049】
(18)の発明では、「Snの付着量」および「チューブ表面においてSnに覆われている領域の面積割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、ろう付け時等の加熱により被覆層中のSnがチューブ表面に拡散して形成されたチューブ表面のSn拡散層は、Snの濃度分布を有するものとなる。従って、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性に優れると共に、フィン剥がれを生じない。
【0050】
(19)の発明では、生産効率が向上するので高品質の熱交換器用チューブが低コストで提供される。
【0051】
(20)の発明では、溶射により被覆層が形成されているので、生産効率が良く、これにより高品質の熱交換器用チューブがより低コストで提供される。
【0052】
(21)の発明では、上記いずれかの熱交換器用チューブを用いているから、ろう付け時の加熱により被覆層中のZn等の卑金属がチューブ表面に拡散して形成された卑金属の拡散層は該卑金属の濃度分布を有するものとなる。従って、得られた熱交換器は、耐食性に優れると共に、フィン剥がれを生じない。
【0053】
(22)の発明では、加熱温度を前記特定範囲に規定しているので、(1)〜(9)の発明に係る熱交換器を製造することができる。
【0054】
(23)の発明では、チューブとフィンとの接合強度をさらに向上させることができる。
【0055】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の一実施形態に係る熱交換器を示す正面図である。この熱交換器(1)は、自動車用カーエアコンにおける冷凍サイクルのコンデンサとして用いられるものであって、マルチフロータイプの熱交換器を構成するものである。
【0056】
即ち、この熱交換器(1)は、平行に配置された垂直方向に沿う左右一対の中空ヘッダー(4)(4)間に、熱交換管路としての水平方向に沿う多数本の扁平なチューブ(2)が、各両端を両中空ヘッダー(4)(4)に連通接続した状態で並列に配置されると共に、これらチューブ(2)の各間及び最外側のチューブの外側にコルゲートフィン(3)が配置され、更に最外側のコルゲートフィン(3)の外側にサイドプレート(10)が配置されている。
【0057】
前記チューブ(2)は、アルミニウムの中空押出材からなり、長さ方向に連続して延びる仕切壁(2a)によって内部が複数本の冷媒流路(2b)に区分けされている。このチューブ(2)の表面には、チューブよりも卑なる金属の拡散層が形成されている。また、コルゲートフィン(3)は、ろう材をクラッドしたアルミニウムブレージング材により構成されている。そして、チューブ(2)とフィン(3)とが交互に積層されて組み付けられた状態で(仮組状態で)炉中にて加熱されて、チューブ(2)とフィン(3)とがろう材によりろう付け接合されている。
【0058】
前記チューブ(2)表面の拡散層は、卑金属の濃度分布を有するものとなされ、前記チューブ(2)における卑金属の表面濃度は0.01〜4.0質量%の範囲、前記チューブにおける卑金属の平均表面濃度は0.03〜1.6質量%、前記卑金属の表面濃度が0.05質量%を超えた割合は20%以上100%未満に設定されている。
【0059】
前記アルミニウム製チューブよりも卑なる金属としては、Zn、In、Sn、Bi、Mg、Ga等が挙げられる。これらの中でも、Zn、In、Snが好ましく用いられ、特に好ましいのはZnである。
【0060】
この発明において、前記チューブ(2)表面にZn拡散層が形成された構成を採用する場合において、Zn拡散層は、下記1)〜4)の条件を全て満たしているのが好ましい。
1)チューブ表面のZn拡散層はZnの濃度分布を有する
2)チューブにおける表面Zn濃度が0.3〜4.0質量%の範囲にある
3)チューブにおける平均表面Zn濃度が0.6〜1.6質量%である
4)表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合が20%以上100%未満である
これら1)〜4)の条件を全て満たすことによって、優れた耐食性が得られるとともに、フィン剥がれ(フィンのチューブからの脱離)を生じないものとなる。
【0061】
表面Zn濃度が0.3質量%未満の箇所が存在すると、その箇所での犠牲防食作用が得られなくなるし、表面Zn濃度が4.0質量%を超える箇所が存在すると、その箇所で腐食が生じるものとなる。また、平均表面Zn濃度が0.6質量%未満では全体としてのZn量の不足により犠牲防食作用が得られなくなるし、平均表面Zn濃度が1.6質量%を超えると、時間の経過とともにフィン剥がれを生じる。また、表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合が20%未満では、表面Zn濃度が大きい箇所が少なくなり過ぎて犠牲防食作用が発揮され難くなるし、同100%のものを得るのは工業的にみて製造効率が悪い。以上の理由から、上記特定範囲に設定するのが好ましい。
【0062】
中でも、チューブにおける表面Zn濃度は0.4〜3.0質量%の範囲にあるのがより好ましい。また、チューブにおける平均表面Zn濃度は0.7〜1.2質量%であるのがより好ましい。また、表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合は20〜60%であるのがより好ましい。
【0063】
また、チューブにおける平均表面Zn濃度を「x」(質量%)とし、前記表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合を「y」(%)としたとき、
y≦100x−20
の関係が成立するように構成されているのがさらに好ましい。これにより、耐食性をさらに向上させることができる。
【0064】
なお、前記「表面Zn濃度」とは、島津製作所製X線マイクロアナライザー(EPMA−8705)を用いてチューブ表面から5μm入った位置にX線ビーム(5μm径)を照射して測定されるZn濃度である。測定ヘッドの径は10μmである。「表面In濃度」、「表面Sn濃度」、「卑金属の表面濃度」についても同様である。
【0065】
また、前記「表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合」とは、前記島津製作所製X線マイクロアナライザー(EPMA−8705)を用いた表面Zn濃度の測定を任意の100箇所で行い、表面Zn濃度が1.2質量%を超えた箇所の数の割合であり、例えば100箇所中40箇所で1.2質量%を超えていれば割合は40%と評価される。「表面In濃度が0.05質量%を超えた割合」、「表面Sn濃度が0.05質量%を超えた割合」、「卑金属の表面濃度が0.05質量%を超えた割合」についても同様である。
【0066】
この発明において、前記チューブ(2)表面にIn拡散層が形成された構成を採用する場合において、In拡散層は、下記5)〜8)の条件を全て満たしているのが好ましい。
5)チューブ表面のIn拡散層はInの濃度分布を有する
6)チューブにおける表面In濃度が0.01〜0.13質量%の範囲にある
7)チューブにおける平均表面In濃度が0.03〜0.06質量%である
8)表面In濃度が0.05質量%を超えた割合が20%以上100%未満である
これら5)〜8)の条件を全て満たすことによって、優れた耐食性が得られるとともに、フィン剥がれ(フィンのチューブからの脱離)を生じないものとなる。
【0067】
表面In濃度が0.01質量%未満の箇所が存在すると、その箇所での犠牲防食作用が得られなくなるし、表面In濃度が0.13質量%を超える箇所が存在すると、その箇所で腐食が生じるものとなる。また、平均表面In濃度が0.03質量%未満では全体としてのIn量の不足により犠牲防食作用が得られなくなるし、平均表面In濃度が0.06質量%を超えると、時間の経過とともにフィン剥がれを生じる。また、表面In濃度が0.05質量%を超えた割合が20%未満では、表面In濃度が大きい箇所が少なくなり過ぎて犠牲防食作用が発揮され難くなるし、同100%のものを得るのは工業的にみて製造効率が悪い。以上の理由から、上記特定範囲に設定するのが好ましい。
【0068】
中でも、チューブにおける表面In濃度は0.01〜0.10質量%の範囲にあるのがより好ましい。また、チューブにおける平均表面In濃度は0.03〜0.05質量%であるのがより好ましい。また、表面In濃度が0.05質量%を超えた割合は20〜80%であるのがより好ましい。
【0069】
この発明において、前記チューブ(2)表面にSn拡散層が形成された構成を採用する場合において、Sn拡散層は、下記9)〜12)の条件を全て満たしているのが好ましい。
9)チューブ表面のSn拡散層はSnの濃度分布を有する
10)チューブにおける表面Sn濃度が0.01〜0.13質量%の範囲にある
11)チューブにおける平均表面Sn濃度が0.03〜0.06質量%である
12)表面Sn濃度が0.05質量%を超えた割合が20%以上100%未満である
これら9)〜12)の条件を全て満たすことによって、優れた耐食性が得られるとともに、フィン剥がれ(フィンのチューブからの脱離)を生じないものとなる。
【0070】
表面Sn濃度が0.01質量%未満の箇所が存在すると、その箇所での犠牲防食作用が得られなくなるし、表面Sn濃度が0.13質量%を超える箇所が存在すると、その箇所で腐食が生じるものとなる。また、平均表面Sn濃度が0.03質量%未満では全体としてのSn量の不足により犠牲防食作用が得られなくなるし、平均表面Sn濃度が0.06質量%を超えると、時間の経過とともにフィン剥がれを生じる。また、表面Sn濃度が0.05質量%を超えた割合が20%未満では、表面Sn濃度が大きい箇所が少なくなり過ぎて犠牲防食作用が発揮され難くなるし、同100%のものを得るのは工業的にみて製造効率が悪い。以上の理由から、上記特定範囲に設定するのが好ましい。
【0071】
中でも、チューブにおける表面Sn濃度は0.01〜0.10質量%の範囲にあるのがより好ましい。また、チューブにおける平均表面Sn濃度は0.03〜0.05質量%であるのがより好ましい。また、表面Sn濃度が0.05質量%を超えた割合は20〜80%であるのがより好ましい。
【0072】
この発明の熱交換器(1)は、例えば次のようにして製造される。即ち、次のような特徴を備えた熱交換器用チューブ(2)を用いるものとし、これにフィン(3)を組み付けた状態(図2参照)で炉中において所定温度に加熱することによって、チューブ(2)とフィン(3)とをろう付け接合することで製造できる。
【0073】
前記熱交換器用チューブ(2)としては、アルミニウム製チューブの表面に該チューブよりも卑なる金属の被覆層が形成されたものからなり、チューブよりも卑なる金属の付着量が0.03〜7g/m2 であり、かつチューブ表面において卑金属に覆われている領域の面積割合が20%以上100%未満であるチューブを用いる。
【0074】
中でも、前記熱交換器用チューブとしては、アルミニウム製チューブ(2)の表面にZnの被覆層(20)が形成されたものであって、かつ下記条件Xを満たすものを用いるのが特に好ましい。
【0075】
条件X:Znの付着量を「α」(g/m2 )とし、チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合を「β」(%)とし、これら数値を、Znの付着量(g/m2 )を横軸にし、チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合(%)を縦軸にしたグラフにプロットしたとき、このプロット点(α、β)が下記5つのライン(51)(52)(53)(54)(55)で取り囲まれた領域内に位置する(図3参照)。
第1ライン(51):Zn付着量が1(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第2ライン(52):Zn付着量が7(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第3ライン(53):Znに覆われている領域の面積割合が20(%)の横直線(境界線を含む)
第4ライン(54):Znに覆われている領域の面積割合が100(%)の横直線(境界線を含まない)
第5ライン(55):座標点A(2、100)と座標点B(1、90)を通る斜め直線(境界線を含む)。
【0076】
このような特徴を備えた熱交換器用チューブでは、ろう付け時等の加熱により被覆層(20)中のZnがチューブ(2)表面に拡散して形成されたZn拡散層は、Znの濃度分布を有するものとなる。
【0077】
Zn付着量が1g/m2 未満では全体としてのZn量の不足により犠牲防食作用が得られなくなるし、7g/m2 を超えると時間の経過とともにフィン剥がれを生じる。また、Znに覆われている領域の面積割合が20%未満では表面Zn濃度が大きい箇所が少なくなり過ぎて犠牲防食作用が発揮され難くなるし、同100%のものを得るのは工業的にみて製造効率が悪い。以上の理由から、上記範囲に限定するのが好ましい。
【0078】
中でも、Zn付着量は2〜6g/m2 に設定されるのがより好ましく、特に好ましい範囲は2〜4g/m2 である。また、Znに覆われている領域の面積割合は20〜80%であるのがより好ましい。
【0079】
また、前記製造方法において、前記熱交換器用チューブとしては、アルミニウム製チューブ(2)の表面にInの被覆層(20)が形成されたものであって、かつ下記条件Yを満たすものを用いるのが好ましい。
【0080】
条件Y:Inの付着量を「α」(g/m2 )とし、チューブ表面においてInに覆われている領域の面積割合を「β」(%)とし、これら数値を、Inの付着量(g/m2 )を横軸にし、チューブ表面においてInに覆われている領域の面積割合(%)を縦軸にしたグラフにプロットしたとき、このプロット点(α、β)が下記5つのライン(61)(62)(63)(64)(65)で取り囲まれた領域内に位置する(図4参照)。
第1ライン(61):In付着量が0.04(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第2ライン(62):In付着量が0.3(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第3ライン(63):Inに覆われている領域の面積割合が20(%)の横直線(境界線を含む)
第4ライン(64):Inに覆われている領域の面積割合が100(%)の横直線(境界線を含まない)
第5ライン(65):座標点C(0.09、100)と座標点D(0.04、90)を通る斜め直線(境界線を含む)。
【0081】
このような特徴を備えた熱交換器用チューブでは、ろう付け時等の加熱により被覆層(20)中のInがチューブ(2)表面に拡散して形成されたIn拡散層は、Inの濃度分布を有するものとなる。
【0082】
In付着量が0.04g/m2 未満では全体としてのIn量の不足により犠牲防食作用が得られなくなるし、0.3g/m2 を超えると時間の経過とともにフィン剥がれを生じる。また、Inに覆われている領域の面積割合が20%未満では表面In濃度が大きい箇所が少なくなり過ぎて犠牲防食作用が発揮され難くなるし、同100%のものを得るのは工業的にみて製造効率が悪い。以上の理由から、上記範囲に限定するのが好ましい。
【0083】
中でも、In付着量は0.05〜0.2g/m2 に設定されるのがより好ましい。また、Inに覆われている領域の面積割合は20〜80%であるのがより好ましい。
【0084】
或いはまた、前記製造方法において、前記熱交換器用チューブとしては、アルミニウム製チューブ(2)の表面にSnの被覆層(20)が形成されたものであって、かつ下記条件Zを満たすものを用いるのが好ましい。
【0085】
条件Z:Snの付着量を「α」(g/m2 )とし、チューブ表面においてSnに覆われている領域の面積割合を「β」(%)とし、これら数値を、Snの付着量(g/m2 )を横軸にし、チューブ表面においてSnに覆われている領域の面積割合(%)を縦軸にしたグラフにプロットしたとき、このプロット点(α、β)が下記5つのライン(71)(72)(73)(74)(75)で取り囲まれた領域内に位置する(図5参照)。
第1ライン(71):Sn付着量が0.04(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第2ライン(72):Sn付着量が0.3(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第3ライン(73):Snに覆われている領域の面積割合が20(%)の横直線(境界線を含む)
第4ライン(74):Snに覆われている領域の面積割合が100(%)の横直線(境界線を含まない)
第5ライン(75):座標点E(0.09、100)と座標点F(0.04、90)を通る斜め直線(境界線を含む)。
【0086】
このような特徴を備えた熱交換器用チューブでは、ろう付け時等の加熱により被覆層(20)中のSnがチューブ(2)表面に拡散して形成されたSn拡散層は、Snの濃度分布を有するものとなる。
【0087】
Sn付着量が0.04g/m2 未満では全体としてのSn量の不足により犠牲防食作用が得られなくなるし、0.3g/m2 を超えると時間の経過とともにフィン剥がれを生じる。また、Snに覆われている領域の面積割合が20%未満では表面Sn濃度が大きい箇所が少なくなり過ぎて犠牲防食作用が発揮され難くなるし、同100%のものを得るのは工業的にみて製造効率が悪い。以上の理由から、上記範囲に限定するのが好ましい。
【0088】
中でも、Sn付着量は0.05〜0.2g/m2 に設定されるのがより好ましい。また、Snに覆われている領域の面積割合は20〜80%であるのがより好ましい。
【0089】
上記製造方法において、前記被覆層(20)の形成方法は特に限定されないが、例えば溶射、部分的なスパッタ、蒸着、さらにはマスキングしてのメッキ等が挙げられる。中でも、溶射により被覆層(20)を形成するのが、生産性に優れる点で、好ましい。
【0090】
溶射の手法としては、特に限定されるものではないが、例えば従来から使用されているアーク溶射機を用いる手法等が挙げられる。また、溶射は、溶射ガンをチューブに対して走査させつつ行うようにしても良いし、コイル状のアルミニウム材を繰り出しながらこれに固定溶射ガンで溶射するようにしても良い。或いはまた、チューブを押出機から押出しつつ、その直後に連続的に溶射するようにしても良い。
【0091】
また、前記被覆層(20)は、扁平チューブ(2)の片面のみに形成しても良いし、上下両面に形成しても良い。
【0092】
上記製造方法において、チューブ(2)とフィン(3)のろう付けは、どのような手法で行っても良い。例えばろう材をクラッドしたアルミニウムブレージング材からなるフィンを用い、該ろう材の加熱溶融によってチューブとフィンをろう付け接合しても良いし、或いはフラックスを被接合部に塗布して乾燥させた後、窒素等の不活性ガス雰囲気で加熱してろう付け接合しても良い。この加熱により被覆層(20)中の卑金属(チューブよりも卑なる金属)がチューブ表面に拡散し、こうして形成されたチューブ表面の卑金属(Zn等)拡散層は該卑金属の濃度分布を有するものとなる。
【0093】
前記加熱温度は、550〜620℃の範囲に設定するのが好ましい。このような範囲に設定することにより、この発明の熱交換器を効率良く高品質で安定して製造することができる。加熱温度が前記下限値より小さくなると、チューブよりも卑なる金属(Zn等)の拡散が不十分となって犠牲防食作用が低下するので好ましくないし、一方前記上限値より大きくなると濃度分布の拡がりが抑制されるので好ましくない。中でも、前記加熱温度は、590〜610℃の範囲に設定するのが特に好ましい。
【0094】
なお、前記炉中ろう付けに際しては、他の熱交換器構成部材、例えばヘッダー(4)(4)、サイドプレート(10)(10)等も一緒に仮組みし、熱交換器全体を同時にろう付けして製作することが推奨される。しかして、これらの他の構成部材についても、ブレージング材にて製作したものを用いても良いし、部材相互の接合部のみにろう材を介在させる構成としても良い。
【0095】
【実施例】
次に、この発明の具体的実施例について説明する。
【0096】
<実施例1〜12、比較例1〜6>
押出機より連続的に押し出されるアルミニウム製の扁平チューブの表裏の平坦面に、その押出直後の位置においてその上下に配置された溶射ノズル(アーク溶射機)から亜鉛を溶射してチューブを得た。上記押出扁平チューブは、アルミニウム合金(Cu含有量0.4質量%)を用い、温度450℃の条件で、チューブ幅:16mm、チューブ厚み(高さ):3mm、肉厚:0.5mm、中空部個数:4個の扁平チューブに押出成形した。
【0097】
次に、上記扁平チューブ(2)と、ろう材をクラッドしたアルミニウムブレージング材からなるコルゲートフィン(3)とを交互に積層して(図2参照)熱交換器のコア部を組み付ける(仮組みする)と共に、ヘッダー(4)(4)、サイドプレート(10)(10)等も一緒に仮組みし、これを炉中で600℃で加熱してろう付けを行い、図1に示すような熱交換器を製作した。
【0098】
この時、Zn溶射時のチューブにおけるZnの付着量、チューブ表面におけるZnに覆われている領域の面積割合を変えることにより、表1に示す特徴を備えたZn拡散層を有するチューブで構成された熱交換器を得た。
【0099】
【表1】
【0100】
<実施例13〜28、比較例7〜10>
押出機より連続的に押し出されるアルミニウム製の扁平チューブの表裏の平坦面に、その押出直後の位置においてその上下に配置された溶射ノズル(アーク溶射機)から亜鉛を溶射して熱交換器用チューブを得た。この時、溶射電流を20〜50A、溶射電圧を20〜25V、押出速度を30〜100m/分の範囲で変えることにより、表2に示す特徴を備えたZn溶射層を表面に有した熱交換器用チューブを得た。
【0101】
上記押出扁平チューブは、アルミニウム合金(Cu含有量0.4質量%)を用い、温度450℃の条件で、チューブ幅:16mm、チューブ厚み(高さ):3mm、肉厚:0.5mm、中空部個数:4個の扁平チューブに押出成形した。
【0102】
次に、上記扁平チューブ(2)と、ろう材をクラッドしたアルミニウムブレージング材からなるコルゲートフィン(3)とを交互に積層して(図2参照)熱交換器のコア部を組み付ける(仮組みする)と共に、ヘッダー(4)(4)、サイドプレート(10)(10)等も一緒に仮組みし、これを炉中で600℃で加熱してろう付けを行い、図1に示すような熱交換器を製作した。
【0103】
【表2】
【0104】
<実施例29〜32、比較例11〜16>
押出機より連続的に押し出されるアルミニウム製の扁平チューブの表裏の平坦面に、部分的にマスキングした状態でスパッタリングを行うことによってInを付着せしめてチューブを得た。上記押出扁平チューブとしては、実施例1で用いたものと同様のものを用いた。
【0105】
次に、上記扁平チューブ(2)と、ろう材をクラッドしたアルミニウムブレージング材からなるコルゲートフィン(3)とを交互に積層して(図2参照)熱交換器のコア部を組み付ける(仮組みする)と共に、ヘッダー(4)(4)、サイドプレート(10)(10)等も一緒に仮組みし、これを炉中で600℃で加熱してろう付けを行い、図1に示すような熱交換器を製作した。
【0106】
この時、チューブにおけるInの付着量、チューブ表面におけるInに覆われている領域の面積割合を変えることにより、表3に示す特徴を備えたIn拡散層を有するチューブで構成された熱交換器を得た。
【0107】
【表3】
【0108】
<実施例33〜38、比較例17〜20>
押出機より連続的に押し出されるアルミニウム製の扁平チューブの表裏の平坦面に、部分的にマスキングした状態でスパッタリングを行うことによってInを付着せしめて熱交換器用チューブを得た。上記押出扁平チューブとしては、実施例1で用いたものと同様のものを用いた。この時、スパッタ電力を5〜500Wの範囲で変えることにより、表4に示す特徴を備えたIn被覆層を表面に有した熱交換器用チューブを得た。
【0109】
次に、上記扁平チューブ(2)と、ろう材をクラッドしたアルミニウムブレージング材からなるコルゲートフィン(3)とを交互に積層して(図2参照)熱交換器のコア部を組み付ける(仮組みする)と共に、ヘッダー(4)(4)、サイドプレート(10)(10)等も一緒に仮組みし、これを炉中で600℃で加熱してろう付けを行い、図1に示すような熱交換器を製作した。
【0110】
【表4】
【0111】
<実施例39〜42、比較例21〜26>
押出機より連続的に押し出されるアルミニウム製の扁平チューブの表裏の平坦面に、部分的にマスキングした状態でスパッタリングを行うことによってSnを付着せしめてチューブを得た。上記押出扁平チューブとしては、実施例1で用いたものと同様のものを用いた。
【0112】
次に、上記扁平チューブ(2)と、ろう材をクラッドしたアルミニウムブレージング材からなるコルゲートフィン(3)とを交互に積層して(図2参照)熱交換器のコア部を組み付ける(仮組みする)と共に、ヘッダー(4)(4)、サイドプレート(10)(10)等も一緒に仮組みし、これを炉中で600℃で加熱してろう付けを行い、図1に示すような熱交換器を製作した。
【0113】
この時、チューブにおけるSnの付着量、チューブ表面におけるSnに覆われている領域の面積割合を変えることにより、表5に示す特徴を備えたSn拡散層を有するチューブで構成された熱交換器を得た。
【0114】
【表5】
【0115】
<実施例43〜48、比較例27〜30>
押出機より連続的に押し出されるアルミニウム製の扁平チューブの表裏の平坦面に、部分的にマスキングした状態でスパッタリングを行うことによってSnを付着せしめて熱交換器用チューブを得た。上記押出扁平チューブとしては、実施例1で用いたものと同様のものを用いた。この時、スパッタ電力を5〜500Wの範囲で変えることにより、表6に示す特徴を備えたSn被覆層を表面に有した熱交換器用チューブを得た。
【0116】
次に、上記扁平チューブ(2)と、ろう材をクラッドしたアルミニウムブレージング材からなるコルゲートフィン(3)とを交互に積層して(図2参照)熱交換器のコア部を組み付ける(仮組みする)と共に、ヘッダー(4)(4)、サイドプレート(10)(10)等も一緒に仮組みし、これを炉中で600℃で加熱してろう付けを行い、図1に示すような熱交換器を製作した。
【0117】
【表6】
【0118】
上記のようにして得られた各熱交換器について、耐食性およびフィン剥がれの有無を調べた。これらの結果を表1〜6に示す。なお、各項目の評価方法は次のとおりである。
【0119】
<腐食試験1>
ASTM D1141によるSWAAT試験を960時間行い、チューブに孔食が認められなかったものを「○」、チューブに孔食が顕著に認められたものを「×」、孔食がチューブ内部まで貫通したものを「×(貫通)」とした。
【0120】
<腐食試験2>
5%NaCl中性液による塩水噴霧・乾燥・湿潤を1サイクルとするCCT試験を240日行った。その結果、チューブに孔食が認められなかったものを「○」、チューブに孔食が顕著に認められたものを「×」、孔食がチューブ内部まで貫通したものを「×(貫通)」とした。
【0121】
<フィン剥がれの有無>
SWAAT試験を960時間行った後に、フィン剥がれ(フィンのチューブからの離脱)の有無を調べた。
【0122】
表1、3、5から明らかなように、この発明の実施例1〜12、29〜32、39〜42の熱交換器は、耐食性に優れると共に、フィン剥がれ防止性にも優れていた。これに対し、本発明の規定範囲を逸脱する比較例1〜6、11〜16、21〜26では上記各評価の少なくともいずれかについて良好な結果が得られなかった。
【0123】
表2、4、6から明らかなように、この発明の製造方法で製造された実施例13〜28、33〜38、43〜48の熱交換器は、耐食性に優れると共に、フィン剥がれ防止性にも優れていた。これに対し、本発明の規定範囲を逸脱する比較例7〜10、17〜20、27〜30では上記各評価の少なくともいずれかについて良好な結果が得られなかった。
【0124】
【発明の効果】
第1の発明によれば、チューブよりも卑なる金属の拡散層は該卑金属の濃度分布を有するものとなされ、かつ「チューブよりも卑なる金属の表面濃度」、「チューブよりも卑なる金属の平均表面濃度」および「チューブよりも卑なる金属の表面濃度が0.05質量%を超えた割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、耐食性に優れており、フィン剥がれを生じない。
【0125】
第2の発明によれば、Zn拡散層は濃度分布を有するものとなされ、かつ「表面Zn濃度」、「平均表面Zn濃度」および「表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合」がそれぞれ特定範囲に規定されているから、耐食性に優れると共にフィン剥がれを生じることがなくて耐久性に優れた熱交換器が提供される。
【0126】
第3の発明によれば、耐食性を一層向上させることができる。
【0127】
第4の発明によれば、耐食性をさらに向上できると共に、フィン剥がれも確実に防止できる。
【0128】
第5、6の発明によれば、耐食性をより一層向上させることができる。
【0129】
第7の発明によれば、In拡散層は濃度分布を有するものとなされ、かつ「表面In濃度」、「平均表面In濃度」および「表面In濃度が0.05質量%を超えた割合」がそれぞれ特定範囲に規定されているから、耐食性に優れると共にフィン剥がれを生じることがなくて耐久性に優れた熱交換器が提供される。
【0130】
第8の発明によれば、Sn拡散層は濃度分布を有するものとなされ、かつ「表面Sn濃度」、「平均表面Sn濃度」および「表面Sn濃度が0.05質量%を超えた割合」がそれぞれ特定範囲に規定されているから、耐食性に優れると共にフィン剥がれを生じることがなくて耐久性に優れた熱交換器が提供される。
【0131】
第9の発明によれば、より軽量化された熱交換器が提供される。
【0132】
第10の発明によれば、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性が良好であると共にフィン剥がれを効果的に防止できる。
【0133】
第11の発明によれば、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性に優れると共にフィン剥がれを生じることがない。
【0134】
第12の発明によれば、耐食性をさらに向上できると共に、フィン剥がれも確実に防止できる。
【0135】
第13の発明によれば、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性に優れると共にフィン剥がれを生じることがない。
【0136】
第14の発明によれば、耐食性をさらに向上できると共に、フィン剥がれも確実に防止できる。
【0137】
第15の発明によれば、耐食性をさらに向上できると共に、フィン剥がれもより確実に防止できる。
【0138】
第16の発明によれば、耐食性を一層向上させることができる。
【0139】
第17の発明によれば、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性に優れると共にフィン剥がれを生じることがない。
【0140】
第18の発明によれば、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性に優れると共にフィン剥がれを生じることがない。
【0141】
第19の発明によれば、熱交換器用チューブがより低コストで提供される。
【0142】
第20の発明によれば、熱交換器用チューブがより一層低コストで提供される。
【0143】
第21の発明によれば、耐食性に優れると共にフィン剥がれを生じることがなくて耐久性に優れた熱交換器を製造することができる。
【0144】
第22の発明によれば、耐食性がさらに向上されかつフィン剥がれも確実に防止され得る熱交換器を製造できる。
【0145】
第23の発明によれば、チューブとフィンの接合強度をさらに向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る熱交換器を示す正面図である。
【図2】熱交換器用チューブとフィンとを組み付けた状態を示す斜視図である。
【図3】この発明の、Zn被覆層が形成された熱交換器用チューブの規定範囲を説明するためのグラフである。
【図4】この発明の、In被覆層が形成された熱交換器用チューブの規定範囲を説明するためのグラフである。
【図5】この発明の、Sn被覆層が形成された熱交換器用チューブの規定範囲を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
1…熱交換器
2…チューブ
3…フィン
4…中空ヘッダー
20…被覆層
51、61、71…第1ライン
52、62、72…第2ライン
53、63、73…第3ライン
54、64、74…第4ライン
55、65、75…第5ライン
【発明の属する技術分野】
この発明は、耐食性に優れると共にフィン剥がれがなくて耐久性能に優れた熱交換器及びその製造方法並びに熱交換器用チューブに関する。
【0002】
なお、この明細書において、「アルミニウム」の語は、アルミニウム及びその合金を含む意味で用いる。
【0003】
【従来の技術】
アルミニウム製熱交換器としては、複数本の扁平チューブが相互間にフィンを介在させた状態で厚さ方向に積層され、これらチューブの両端に中空ヘッダーが連通接続された構成のものが公知であり、扁平チューブとフィンとはろう付けにより接合一体化されている。このようなアルミニウム製熱交換器は、このまま使用を続けているとチューブに孔食が発生して、これがチューブ内面にまで達して貫通し、熱交換器としての機能が損なわれてしまうことから、チューブの表面にZn溶射層を形成して表面にZnを拡散せしめることによって犠牲防食することが従来より多く行われている。
【0004】
ところで、上記Znの付着量が多いと、Znがチューブとフィンのフィレット部に多く拡散して該フィレット部が腐食してしまい、これによりフィンがチューブから離脱するフィン剥がれを多数生じる一方、Znの付着量が少ないと犠牲防食作用が殆ど得られなくなることから、Zn付着量をやや低量側で精密に制御する手法が検討されている。このようにZn付着量をやや低量側で精密に制御する手法として、特許文献1では、亜鉛含有率が30〜90重量%のアルミニウム−亜鉛合金を溶射することによってZn溶射層を形成することが提案され、また特許文献2では、亜鉛含有率が10〜85重量%のアルミニウム−亜鉛合金を溶射することによってZn溶射層を形成することが提案されている。なお、これらの従来技術では、上記Zn溶射層におけるZnの拡散分布は均一であることが良いとされていた。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−15496号公報(特許請求の範囲)
【0006】
【特許文献2】
特開平9−137245号公報(請求項1、段落0017)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では次のような問題があった。即ち、アルミニウム−亜鉛合金を溶射に用いるので材料コストが高くなるし、またZnの含有率の小さい合金を用いた場合にはアルミニウムがチューブ表面に多く付着してチューブ厚さが増大してしまうので溶射層厚さを厳密に制御しなければならないが、このような厳密な制御を実現するためには生産効率を低下させた状態(ライン速度を遅くした状態)で製造せざるを得ないという問題があった。更に、アルミニウム−亜鉛合金を溶射するので、溶射層が腐食層になりやすく、しかも腐食深さも深くなるという問題もあった。
【0008】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、生産効率に優れると共に、耐食性に優れ、かつフィン剥がれを生じない熱交換器及びその製造方法並びに熱交換器用チューブを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
(1)チューブよりも卑なる金属の拡散層が表面に形成された複数本のチューブが相互間にフィンを介在させた状態で積層され、前記チューブと前記フィンとがろう付けにより接合一体化されると共に、前記チューブの両端に中空ヘッダーが連通接続された熱交換器において、前記チューブよりも卑なる金属の拡散層は該卑金属の濃度分布を有するものとなされ、前記チューブにおける卑金属の表面濃度が0.01〜4.0質量%の範囲にあり、前記チューブにおける卑金属の平均表面濃度が0.03〜1.6質量%であり、前記卑金属の表面濃度が0.05質量%を超えた割合が20%以上100%未満であることを特徴とする熱交換器。
【0011】
(2)表面にZnの拡散層が形成された複数本のチューブが相互間にフィンを介在させた状態で積層され、前記チューブと前記フィンとがろう付けにより接合一体化されると共に、前記チューブの両端に中空ヘッダーが連通接続された熱交換器において、前記チューブ表面のZn拡散層はZnの濃度分布を有するものとなされ、前記チューブにおける表面Zn濃度が0.3〜4.0質量%の範囲にあり、前記チューブにおける平均表面Zn濃度が0.6〜1.6質量%であり、表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合が20%以上100%未満であることを特徴とする熱交換器。
【0012】
(3)前記チューブにおける表面Zn濃度が0.4〜3.0質量%の範囲にある前項2に記載の熱交換器。
【0013】
(4)前記チューブにおける平均表面Zn濃度が0.7〜1.2質量%である前項2または3に記載の熱交換器。
【0014】
(5)前記表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合が20〜60%である前項2〜4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0015】
(6)前記チューブにおける平均表面Zn濃度を「x」(質量%)とし、前記表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合を「y」(%)としたとき、「y≦100x−20」の関係が成立する前項2〜5のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0016】
(7)表面にInの拡散層が形成された複数本のチューブが相互間にフィンを介在させた状態で積層され、前記チューブと前記フィンとがろう付けにより接合一体化されると共に、前記チューブの両端に中空ヘッダーが連通接続された熱交換器において、前記チューブ表面のIn拡散層はInの濃度分布を有するものとなされ、前記チューブにおける表面In濃度が0.01〜0.13質量%の範囲にあり、前記チューブにおける平均表面In濃度が0.03〜0.06質量%であり、表面In濃度が0.05質量%を超えた割合が20%以上100%未満であることを特徴とする熱交換器。
【0017】
(8)表面にSnの拡散層が形成された複数本のチューブが相互間にフィンを介在させた状態で積層され、前記チューブと前記フィンとがろう付けにより接合一体化されると共に、前記チューブの両端に中空ヘッダーが連通接続された熱交換器において、前記チューブ表面のSn拡散層はSnの濃度分布を有するものとなされ、前記チューブにおける表面Sn濃度が0.01〜0.13質量%の範囲にあり、前記チューブにおける平均表面Sn濃度が0.03〜0.06質量%であり、表面Sn濃度が0.05質量%を超えた割合が20%以上100%未満であることを特徴とする熱交換器。
【0018】
(9)前記チューブはアルミニウムからなる前項1〜8のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0019】
(10)アルミニウム製チューブの表面に該チューブよりも卑なる金属の被覆層が形成された熱交換器用チューブにおいて、前記チューブよりも卑なる金属の付着量が0.03〜7g/m2 であり、前記チューブ表面において卑金属に覆われている領域の面積割合が20%以上100%未満であることを特徴とする熱交換器用チューブ。
【0020】
(11)アルミニウム製チューブの表面にZnの被覆層が形成された熱交換器用チューブにおいて、前記Znの付着量を「α」(g/m2 )とし、前記チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合を「β」(%)とし、これら数値を、Znの付着量(g/m2 )を横軸にし、チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合(%)を縦軸にしたグラフにプロットしたとき、このプロット点(α、β)が下記5つのラインで取り囲まれた領域内に位置することを特徴とする熱交換器用チューブ。
第1ライン:Zn付着量が1(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第2ライン:Zn付着量が7(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第3ライン:Znに覆われている領域の面積割合が20(%)の横直線(境界線を含む)
第4ライン:Znに覆われている領域の面積割合が100(%)の横直線(境界線を含まない)
第5ライン:座標点A(2、100)と座標点B(1、90)を通る斜め直線(境界線を含む)。
【0021】
(12)アルミニウム製チューブの表面にZnの被覆層が形成された熱交換器用チューブにおいて、前記Znの付着量を「α」(g/m2 )とし、前記チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合を「β」(%)とし、これら数値を、Znの付着量(g/m2 )を横軸にし、チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合(%)を縦軸にしたグラフにプロットしたとき、このプロット点(α、β)が下記4つのラインで取り囲まれた領域内に位置することを特徴とする熱交換器用チューブ。
第1ライン:Zn付着量が2(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第2ライン:Zn付着量が6(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第3ライン:Znに覆われている領域の面積割合が20(%)の横直線(境界線を含む)
第4ライン:Znに覆われている領域の面積割合が100(%)の横直線(境界線を含まない)。
【0022】
(13)アルミニウム製チューブの表面にZnの被覆層が形成された熱交換器用チューブにおいて、前記Znの付着量が1〜7g/m2 であり、前記チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合が20〜80%であることを特徴とする熱交換器用チューブ。
【0023】
(14)前記Znの付着量が2〜6g/m2 である前項13に記載の熱交換器用チューブ。
【0024】
(15)前記Znの付着量が2〜4g/m2 である前項13に記載の熱交換器用チューブ。
【0025】
(16)前記Zn被覆層は、亜鉛が溶射されて形成されたものである前項10〜15のいずれか1項に記載の熱交換器用チューブ。
【0026】
(17)アルミニウム製チューブの表面にInの被覆層が形成された熱交換器用チューブにおいて、前記Inの付着量を「α」(g/m2 )とし、前記チューブ表面においてInに覆われている領域の面積割合を「β」(%)とし、これら数値を、Inの付着量(g/m2 )を横軸にし、チューブ表面においてInに覆われている領域の面積割合(%)を縦軸にしたグラフにプロットしたとき、このプロット点(α、β)が下記5つのラインで取り囲まれた領域内に位置することを特徴とする熱交換器用チューブ。
第1ライン:In付着量が0.04(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第2ライン:In付着量が0.3(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第3ライン:Inに覆われている領域の面積割合が20(%)の横直線(境界線を含む)
第4ライン:Inに覆われている領域の面積割合が100(%)の横直線(境界線を含まない)
第5ライン:座標点C(0.09、100)と座標点D(0.04、90)を通る斜め直線(境界線を含む)。
【0027】
(18)アルミニウム製チューブの表面にSnの被覆層が形成された熱交換器用チューブにおいて、前記Snの付着量を「α」(g/m2 )とし、前記チューブ表面においてSnに覆われている領域の面積割合を「β」(%)とし、これら数値を、Snの付着量(g/m2 )を横軸にし、チューブ表面においてSnに覆われている領域の面積割合(%)を縦軸にしたグラフにプロットしたとき、このプロット点(α、β)が下記5つのラインで取り囲まれた領域内に位置することを特徴とする熱交換器用チューブ。
第1ライン:Sn付着量が0.04(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第2ライン:Sn付着量が0.3(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第3ライン:Snに覆われている領域の面積割合が20(%)の横直線(境界線を含む)
第4ライン:Snに覆われている領域の面積割合が100(%)の横直線(境界線を含まない)
第5ライン:座標点E(0.09、100)と座標点F(0.04、90)を通る斜め直線(境界線を含む)。
【0028】
(19)チューブは押出により形成されたものである前項10〜18のいずれか1項に記載の熱交換器用チューブ。
【0029】
(20)前記被覆層は、溶射により形成された溶射層である前項10〜19のいずれか1項に記載の熱交換器用チューブ。
【0030】
(21)前項10〜20のいずれか1項に記載の熱交換器用チューブにフィンを組み付ける工程と、前記組み付け状態で所定温度に加熱することにより、前記チューブとフィンとをろう付け接合する工程とを含むことを特徴とする熱交換器の製造方法。
【0031】
(22)前記加熱温度を550〜620℃の範囲に設定する前項21に記載の熱交換器の製造方法。
【0032】
(23)前記フィンとして、ろう材をクラッドしたアルミニウムブレージング材からなるフィンを用いる前項21または22に記載の熱交換器の製造方法。
【0033】
(1)の発明では、チューブよりも卑なる金属の拡散層は該卑金属の濃度分布を有するものとなされ、かつ「チューブよりも卑なる金属の表面濃度」、「チューブよりも卑なる金属の平均表面濃度」および「チューブよりも卑なる金属の表面濃度が0.05質量%を超えた割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、耐食性に優れており、フィン剥がれを生じない。
【0034】
(2)の発明では、チューブ表面のZn拡散層はZnの濃度分布を有するものとなされ、かつ「表面Zn濃度」、「平均表面Zn濃度」および「表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、耐食性に優れており、フィン剥がれを生じない。
【0035】
(3)の発明では、耐食性を一層向上させることができる。
【0036】
(4)の発明では、耐食性をさらに向上できると共にフィン剥がれも確実に防止できる。
【0037】
(5)(6)の発明では、耐食性をより一層向上させることができる。
【0038】
(7)の発明では、チューブ表面のIn拡散層はInの濃度分布を有するものとなされ、かつ「表面In濃度」、「平均表面In濃度」および「表面In濃度が0.05質量%を超えた割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、耐食性に優れており、フィン剥がれを生じない。
【0039】
(8)の発明では、チューブ表面のSn拡散層はSnの濃度分布を有するものとなされ、かつ「表面Sn濃度」、「平均表面Sn濃度」および「表面Sn濃度が0.05質量%を超えた割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、耐食性に優れており、フィン剥がれを生じない。
【0040】
(9)の発明では、軽量性に優れた熱交換器が提供される。
【0041】
(10)の発明では、「チューブよりも卑なる金属の付着量」および「チューブ表面において卑金属に覆われている領域の面積割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、ろう付け時等の加熱により被覆層中の卑金属がチューブ表面に拡散して形成されたチューブ表面の卑金属拡散層は、該卑金属の濃度分布を有するものとなる。従って、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性に優れると共に、フィン剥がれを生じない。
【0042】
(11)の発明では、「Znの付着量」および「チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、ろう付け時等の加熱により被覆層中のZnがチューブ表面に拡散して形成されたチューブ表面のZn拡散層は、Znの濃度分布を有するものとなる。従って、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性に優れると共に、フィン剥がれを生じない。
【0043】
(12)の発明によれば、これを用いて製造した熱交換器の耐食性をさらに向上できると共に、フィン剥がれを確実に防止できる。
【0044】
(13)の発明では、「Znの付着量」および「チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、ろう付け時等の加熱により被覆層中のZnがチューブ表面に拡散して形成されたチューブ表面のZn拡散層は、Znの濃度分布を有するものとなる。従って、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性に優れると共に、フィン剥がれを生じない。
【0045】
(14)の発明によれば、これを用いて製造した熱交換器の耐食性をさらに向上できると共に、フィン剥がれを確実に防止できる。
【0046】
(15)の発明によれば、これを用いて製造した熱交換器の耐食性をさらに向上できると共に、フィン剥がれをより確実に防止できる。
【0047】
(16)の発明では、(アルミニウム−亜鉛合金の溶射ではなく)亜鉛の溶射によりZn被覆層が形成されているので、Zn被覆層の腐食を防止できて、耐食性を一層向上できる。
【0048】
(17)の発明では、「Inの付着量」および「チューブ表面においてInに覆われている領域の面積割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、ろう付け時等の加熱により被覆層中のInがチューブ表面に拡散して形成されたチューブ表面のIn拡散層は、Inの濃度分布を有するものとなる。従って、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性に優れると共に、フィン剥がれを生じない。
【0049】
(18)の発明では、「Snの付着量」および「チューブ表面においてSnに覆われている領域の面積割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、ろう付け時等の加熱により被覆層中のSnがチューブ表面に拡散して形成されたチューブ表面のSn拡散層は、Snの濃度分布を有するものとなる。従って、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性に優れると共に、フィン剥がれを生じない。
【0050】
(19)の発明では、生産効率が向上するので高品質の熱交換器用チューブが低コストで提供される。
【0051】
(20)の発明では、溶射により被覆層が形成されているので、生産効率が良く、これにより高品質の熱交換器用チューブがより低コストで提供される。
【0052】
(21)の発明では、上記いずれかの熱交換器用チューブを用いているから、ろう付け時の加熱により被覆層中のZn等の卑金属がチューブ表面に拡散して形成された卑金属の拡散層は該卑金属の濃度分布を有するものとなる。従って、得られた熱交換器は、耐食性に優れると共に、フィン剥がれを生じない。
【0053】
(22)の発明では、加熱温度を前記特定範囲に規定しているので、(1)〜(9)の発明に係る熱交換器を製造することができる。
【0054】
(23)の発明では、チューブとフィンとの接合強度をさらに向上させることができる。
【0055】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の一実施形態に係る熱交換器を示す正面図である。この熱交換器(1)は、自動車用カーエアコンにおける冷凍サイクルのコンデンサとして用いられるものであって、マルチフロータイプの熱交換器を構成するものである。
【0056】
即ち、この熱交換器(1)は、平行に配置された垂直方向に沿う左右一対の中空ヘッダー(4)(4)間に、熱交換管路としての水平方向に沿う多数本の扁平なチューブ(2)が、各両端を両中空ヘッダー(4)(4)に連通接続した状態で並列に配置されると共に、これらチューブ(2)の各間及び最外側のチューブの外側にコルゲートフィン(3)が配置され、更に最外側のコルゲートフィン(3)の外側にサイドプレート(10)が配置されている。
【0057】
前記チューブ(2)は、アルミニウムの中空押出材からなり、長さ方向に連続して延びる仕切壁(2a)によって内部が複数本の冷媒流路(2b)に区分けされている。このチューブ(2)の表面には、チューブよりも卑なる金属の拡散層が形成されている。また、コルゲートフィン(3)は、ろう材をクラッドしたアルミニウムブレージング材により構成されている。そして、チューブ(2)とフィン(3)とが交互に積層されて組み付けられた状態で(仮組状態で)炉中にて加熱されて、チューブ(2)とフィン(3)とがろう材によりろう付け接合されている。
【0058】
前記チューブ(2)表面の拡散層は、卑金属の濃度分布を有するものとなされ、前記チューブ(2)における卑金属の表面濃度は0.01〜4.0質量%の範囲、前記チューブにおける卑金属の平均表面濃度は0.03〜1.6質量%、前記卑金属の表面濃度が0.05質量%を超えた割合は20%以上100%未満に設定されている。
【0059】
前記アルミニウム製チューブよりも卑なる金属としては、Zn、In、Sn、Bi、Mg、Ga等が挙げられる。これらの中でも、Zn、In、Snが好ましく用いられ、特に好ましいのはZnである。
【0060】
この発明において、前記チューブ(2)表面にZn拡散層が形成された構成を採用する場合において、Zn拡散層は、下記1)〜4)の条件を全て満たしているのが好ましい。
1)チューブ表面のZn拡散層はZnの濃度分布を有する
2)チューブにおける表面Zn濃度が0.3〜4.0質量%の範囲にある
3)チューブにおける平均表面Zn濃度が0.6〜1.6質量%である
4)表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合が20%以上100%未満である
これら1)〜4)の条件を全て満たすことによって、優れた耐食性が得られるとともに、フィン剥がれ(フィンのチューブからの脱離)を生じないものとなる。
【0061】
表面Zn濃度が0.3質量%未満の箇所が存在すると、その箇所での犠牲防食作用が得られなくなるし、表面Zn濃度が4.0質量%を超える箇所が存在すると、その箇所で腐食が生じるものとなる。また、平均表面Zn濃度が0.6質量%未満では全体としてのZn量の不足により犠牲防食作用が得られなくなるし、平均表面Zn濃度が1.6質量%を超えると、時間の経過とともにフィン剥がれを生じる。また、表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合が20%未満では、表面Zn濃度が大きい箇所が少なくなり過ぎて犠牲防食作用が発揮され難くなるし、同100%のものを得るのは工業的にみて製造効率が悪い。以上の理由から、上記特定範囲に設定するのが好ましい。
【0062】
中でも、チューブにおける表面Zn濃度は0.4〜3.0質量%の範囲にあるのがより好ましい。また、チューブにおける平均表面Zn濃度は0.7〜1.2質量%であるのがより好ましい。また、表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合は20〜60%であるのがより好ましい。
【0063】
また、チューブにおける平均表面Zn濃度を「x」(質量%)とし、前記表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合を「y」(%)としたとき、
y≦100x−20
の関係が成立するように構成されているのがさらに好ましい。これにより、耐食性をさらに向上させることができる。
【0064】
なお、前記「表面Zn濃度」とは、島津製作所製X線マイクロアナライザー(EPMA−8705)を用いてチューブ表面から5μm入った位置にX線ビーム(5μm径)を照射して測定されるZn濃度である。測定ヘッドの径は10μmである。「表面In濃度」、「表面Sn濃度」、「卑金属の表面濃度」についても同様である。
【0065】
また、前記「表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合」とは、前記島津製作所製X線マイクロアナライザー(EPMA−8705)を用いた表面Zn濃度の測定を任意の100箇所で行い、表面Zn濃度が1.2質量%を超えた箇所の数の割合であり、例えば100箇所中40箇所で1.2質量%を超えていれば割合は40%と評価される。「表面In濃度が0.05質量%を超えた割合」、「表面Sn濃度が0.05質量%を超えた割合」、「卑金属の表面濃度が0.05質量%を超えた割合」についても同様である。
【0066】
この発明において、前記チューブ(2)表面にIn拡散層が形成された構成を採用する場合において、In拡散層は、下記5)〜8)の条件を全て満たしているのが好ましい。
5)チューブ表面のIn拡散層はInの濃度分布を有する
6)チューブにおける表面In濃度が0.01〜0.13質量%の範囲にある
7)チューブにおける平均表面In濃度が0.03〜0.06質量%である
8)表面In濃度が0.05質量%を超えた割合が20%以上100%未満である
これら5)〜8)の条件を全て満たすことによって、優れた耐食性が得られるとともに、フィン剥がれ(フィンのチューブからの脱離)を生じないものとなる。
【0067】
表面In濃度が0.01質量%未満の箇所が存在すると、その箇所での犠牲防食作用が得られなくなるし、表面In濃度が0.13質量%を超える箇所が存在すると、その箇所で腐食が生じるものとなる。また、平均表面In濃度が0.03質量%未満では全体としてのIn量の不足により犠牲防食作用が得られなくなるし、平均表面In濃度が0.06質量%を超えると、時間の経過とともにフィン剥がれを生じる。また、表面In濃度が0.05質量%を超えた割合が20%未満では、表面In濃度が大きい箇所が少なくなり過ぎて犠牲防食作用が発揮され難くなるし、同100%のものを得るのは工業的にみて製造効率が悪い。以上の理由から、上記特定範囲に設定するのが好ましい。
【0068】
中でも、チューブにおける表面In濃度は0.01〜0.10質量%の範囲にあるのがより好ましい。また、チューブにおける平均表面In濃度は0.03〜0.05質量%であるのがより好ましい。また、表面In濃度が0.05質量%を超えた割合は20〜80%であるのがより好ましい。
【0069】
この発明において、前記チューブ(2)表面にSn拡散層が形成された構成を採用する場合において、Sn拡散層は、下記9)〜12)の条件を全て満たしているのが好ましい。
9)チューブ表面のSn拡散層はSnの濃度分布を有する
10)チューブにおける表面Sn濃度が0.01〜0.13質量%の範囲にある
11)チューブにおける平均表面Sn濃度が0.03〜0.06質量%である
12)表面Sn濃度が0.05質量%を超えた割合が20%以上100%未満である
これら9)〜12)の条件を全て満たすことによって、優れた耐食性が得られるとともに、フィン剥がれ(フィンのチューブからの脱離)を生じないものとなる。
【0070】
表面Sn濃度が0.01質量%未満の箇所が存在すると、その箇所での犠牲防食作用が得られなくなるし、表面Sn濃度が0.13質量%を超える箇所が存在すると、その箇所で腐食が生じるものとなる。また、平均表面Sn濃度が0.03質量%未満では全体としてのSn量の不足により犠牲防食作用が得られなくなるし、平均表面Sn濃度が0.06質量%を超えると、時間の経過とともにフィン剥がれを生じる。また、表面Sn濃度が0.05質量%を超えた割合が20%未満では、表面Sn濃度が大きい箇所が少なくなり過ぎて犠牲防食作用が発揮され難くなるし、同100%のものを得るのは工業的にみて製造効率が悪い。以上の理由から、上記特定範囲に設定するのが好ましい。
【0071】
中でも、チューブにおける表面Sn濃度は0.01〜0.10質量%の範囲にあるのがより好ましい。また、チューブにおける平均表面Sn濃度は0.03〜0.05質量%であるのがより好ましい。また、表面Sn濃度が0.05質量%を超えた割合は20〜80%であるのがより好ましい。
【0072】
この発明の熱交換器(1)は、例えば次のようにして製造される。即ち、次のような特徴を備えた熱交換器用チューブ(2)を用いるものとし、これにフィン(3)を組み付けた状態(図2参照)で炉中において所定温度に加熱することによって、チューブ(2)とフィン(3)とをろう付け接合することで製造できる。
【0073】
前記熱交換器用チューブ(2)としては、アルミニウム製チューブの表面に該チューブよりも卑なる金属の被覆層が形成されたものからなり、チューブよりも卑なる金属の付着量が0.03〜7g/m2 であり、かつチューブ表面において卑金属に覆われている領域の面積割合が20%以上100%未満であるチューブを用いる。
【0074】
中でも、前記熱交換器用チューブとしては、アルミニウム製チューブ(2)の表面にZnの被覆層(20)が形成されたものであって、かつ下記条件Xを満たすものを用いるのが特に好ましい。
【0075】
条件X:Znの付着量を「α」(g/m2 )とし、チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合を「β」(%)とし、これら数値を、Znの付着量(g/m2 )を横軸にし、チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合(%)を縦軸にしたグラフにプロットしたとき、このプロット点(α、β)が下記5つのライン(51)(52)(53)(54)(55)で取り囲まれた領域内に位置する(図3参照)。
第1ライン(51):Zn付着量が1(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第2ライン(52):Zn付着量が7(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第3ライン(53):Znに覆われている領域の面積割合が20(%)の横直線(境界線を含む)
第4ライン(54):Znに覆われている領域の面積割合が100(%)の横直線(境界線を含まない)
第5ライン(55):座標点A(2、100)と座標点B(1、90)を通る斜め直線(境界線を含む)。
【0076】
このような特徴を備えた熱交換器用チューブでは、ろう付け時等の加熱により被覆層(20)中のZnがチューブ(2)表面に拡散して形成されたZn拡散層は、Znの濃度分布を有するものとなる。
【0077】
Zn付着量が1g/m2 未満では全体としてのZn量の不足により犠牲防食作用が得られなくなるし、7g/m2 を超えると時間の経過とともにフィン剥がれを生じる。また、Znに覆われている領域の面積割合が20%未満では表面Zn濃度が大きい箇所が少なくなり過ぎて犠牲防食作用が発揮され難くなるし、同100%のものを得るのは工業的にみて製造効率が悪い。以上の理由から、上記範囲に限定するのが好ましい。
【0078】
中でも、Zn付着量は2〜6g/m2 に設定されるのがより好ましく、特に好ましい範囲は2〜4g/m2 である。また、Znに覆われている領域の面積割合は20〜80%であるのがより好ましい。
【0079】
また、前記製造方法において、前記熱交換器用チューブとしては、アルミニウム製チューブ(2)の表面にInの被覆層(20)が形成されたものであって、かつ下記条件Yを満たすものを用いるのが好ましい。
【0080】
条件Y:Inの付着量を「α」(g/m2 )とし、チューブ表面においてInに覆われている領域の面積割合を「β」(%)とし、これら数値を、Inの付着量(g/m2 )を横軸にし、チューブ表面においてInに覆われている領域の面積割合(%)を縦軸にしたグラフにプロットしたとき、このプロット点(α、β)が下記5つのライン(61)(62)(63)(64)(65)で取り囲まれた領域内に位置する(図4参照)。
第1ライン(61):In付着量が0.04(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第2ライン(62):In付着量が0.3(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第3ライン(63):Inに覆われている領域の面積割合が20(%)の横直線(境界線を含む)
第4ライン(64):Inに覆われている領域の面積割合が100(%)の横直線(境界線を含まない)
第5ライン(65):座標点C(0.09、100)と座標点D(0.04、90)を通る斜め直線(境界線を含む)。
【0081】
このような特徴を備えた熱交換器用チューブでは、ろう付け時等の加熱により被覆層(20)中のInがチューブ(2)表面に拡散して形成されたIn拡散層は、Inの濃度分布を有するものとなる。
【0082】
In付着量が0.04g/m2 未満では全体としてのIn量の不足により犠牲防食作用が得られなくなるし、0.3g/m2 を超えると時間の経過とともにフィン剥がれを生じる。また、Inに覆われている領域の面積割合が20%未満では表面In濃度が大きい箇所が少なくなり過ぎて犠牲防食作用が発揮され難くなるし、同100%のものを得るのは工業的にみて製造効率が悪い。以上の理由から、上記範囲に限定するのが好ましい。
【0083】
中でも、In付着量は0.05〜0.2g/m2 に設定されるのがより好ましい。また、Inに覆われている領域の面積割合は20〜80%であるのがより好ましい。
【0084】
或いはまた、前記製造方法において、前記熱交換器用チューブとしては、アルミニウム製チューブ(2)の表面にSnの被覆層(20)が形成されたものであって、かつ下記条件Zを満たすものを用いるのが好ましい。
【0085】
条件Z:Snの付着量を「α」(g/m2 )とし、チューブ表面においてSnに覆われている領域の面積割合を「β」(%)とし、これら数値を、Snの付着量(g/m2 )を横軸にし、チューブ表面においてSnに覆われている領域の面積割合(%)を縦軸にしたグラフにプロットしたとき、このプロット点(α、β)が下記5つのライン(71)(72)(73)(74)(75)で取り囲まれた領域内に位置する(図5参照)。
第1ライン(71):Sn付着量が0.04(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第2ライン(72):Sn付着量が0.3(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第3ライン(73):Snに覆われている領域の面積割合が20(%)の横直線(境界線を含む)
第4ライン(74):Snに覆われている領域の面積割合が100(%)の横直線(境界線を含まない)
第5ライン(75):座標点E(0.09、100)と座標点F(0.04、90)を通る斜め直線(境界線を含む)。
【0086】
このような特徴を備えた熱交換器用チューブでは、ろう付け時等の加熱により被覆層(20)中のSnがチューブ(2)表面に拡散して形成されたSn拡散層は、Snの濃度分布を有するものとなる。
【0087】
Sn付着量が0.04g/m2 未満では全体としてのSn量の不足により犠牲防食作用が得られなくなるし、0.3g/m2 を超えると時間の経過とともにフィン剥がれを生じる。また、Snに覆われている領域の面積割合が20%未満では表面Sn濃度が大きい箇所が少なくなり過ぎて犠牲防食作用が発揮され難くなるし、同100%のものを得るのは工業的にみて製造効率が悪い。以上の理由から、上記範囲に限定するのが好ましい。
【0088】
中でも、Sn付着量は0.05〜0.2g/m2 に設定されるのがより好ましい。また、Snに覆われている領域の面積割合は20〜80%であるのがより好ましい。
【0089】
上記製造方法において、前記被覆層(20)の形成方法は特に限定されないが、例えば溶射、部分的なスパッタ、蒸着、さらにはマスキングしてのメッキ等が挙げられる。中でも、溶射により被覆層(20)を形成するのが、生産性に優れる点で、好ましい。
【0090】
溶射の手法としては、特に限定されるものではないが、例えば従来から使用されているアーク溶射機を用いる手法等が挙げられる。また、溶射は、溶射ガンをチューブに対して走査させつつ行うようにしても良いし、コイル状のアルミニウム材を繰り出しながらこれに固定溶射ガンで溶射するようにしても良い。或いはまた、チューブを押出機から押出しつつ、その直後に連続的に溶射するようにしても良い。
【0091】
また、前記被覆層(20)は、扁平チューブ(2)の片面のみに形成しても良いし、上下両面に形成しても良い。
【0092】
上記製造方法において、チューブ(2)とフィン(3)のろう付けは、どのような手法で行っても良い。例えばろう材をクラッドしたアルミニウムブレージング材からなるフィンを用い、該ろう材の加熱溶融によってチューブとフィンをろう付け接合しても良いし、或いはフラックスを被接合部に塗布して乾燥させた後、窒素等の不活性ガス雰囲気で加熱してろう付け接合しても良い。この加熱により被覆層(20)中の卑金属(チューブよりも卑なる金属)がチューブ表面に拡散し、こうして形成されたチューブ表面の卑金属(Zn等)拡散層は該卑金属の濃度分布を有するものとなる。
【0093】
前記加熱温度は、550〜620℃の範囲に設定するのが好ましい。このような範囲に設定することにより、この発明の熱交換器を効率良く高品質で安定して製造することができる。加熱温度が前記下限値より小さくなると、チューブよりも卑なる金属(Zn等)の拡散が不十分となって犠牲防食作用が低下するので好ましくないし、一方前記上限値より大きくなると濃度分布の拡がりが抑制されるので好ましくない。中でも、前記加熱温度は、590〜610℃の範囲に設定するのが特に好ましい。
【0094】
なお、前記炉中ろう付けに際しては、他の熱交換器構成部材、例えばヘッダー(4)(4)、サイドプレート(10)(10)等も一緒に仮組みし、熱交換器全体を同時にろう付けして製作することが推奨される。しかして、これらの他の構成部材についても、ブレージング材にて製作したものを用いても良いし、部材相互の接合部のみにろう材を介在させる構成としても良い。
【0095】
【実施例】
次に、この発明の具体的実施例について説明する。
【0096】
<実施例1〜12、比較例1〜6>
押出機より連続的に押し出されるアルミニウム製の扁平チューブの表裏の平坦面に、その押出直後の位置においてその上下に配置された溶射ノズル(アーク溶射機)から亜鉛を溶射してチューブを得た。上記押出扁平チューブは、アルミニウム合金(Cu含有量0.4質量%)を用い、温度450℃の条件で、チューブ幅:16mm、チューブ厚み(高さ):3mm、肉厚:0.5mm、中空部個数:4個の扁平チューブに押出成形した。
【0097】
次に、上記扁平チューブ(2)と、ろう材をクラッドしたアルミニウムブレージング材からなるコルゲートフィン(3)とを交互に積層して(図2参照)熱交換器のコア部を組み付ける(仮組みする)と共に、ヘッダー(4)(4)、サイドプレート(10)(10)等も一緒に仮組みし、これを炉中で600℃で加熱してろう付けを行い、図1に示すような熱交換器を製作した。
【0098】
この時、Zn溶射時のチューブにおけるZnの付着量、チューブ表面におけるZnに覆われている領域の面積割合を変えることにより、表1に示す特徴を備えたZn拡散層を有するチューブで構成された熱交換器を得た。
【0099】
【表1】
【0100】
<実施例13〜28、比較例7〜10>
押出機より連続的に押し出されるアルミニウム製の扁平チューブの表裏の平坦面に、その押出直後の位置においてその上下に配置された溶射ノズル(アーク溶射機)から亜鉛を溶射して熱交換器用チューブを得た。この時、溶射電流を20〜50A、溶射電圧を20〜25V、押出速度を30〜100m/分の範囲で変えることにより、表2に示す特徴を備えたZn溶射層を表面に有した熱交換器用チューブを得た。
【0101】
上記押出扁平チューブは、アルミニウム合金(Cu含有量0.4質量%)を用い、温度450℃の条件で、チューブ幅:16mm、チューブ厚み(高さ):3mm、肉厚:0.5mm、中空部個数:4個の扁平チューブに押出成形した。
【0102】
次に、上記扁平チューブ(2)と、ろう材をクラッドしたアルミニウムブレージング材からなるコルゲートフィン(3)とを交互に積層して(図2参照)熱交換器のコア部を組み付ける(仮組みする)と共に、ヘッダー(4)(4)、サイドプレート(10)(10)等も一緒に仮組みし、これを炉中で600℃で加熱してろう付けを行い、図1に示すような熱交換器を製作した。
【0103】
【表2】
【0104】
<実施例29〜32、比較例11〜16>
押出機より連続的に押し出されるアルミニウム製の扁平チューブの表裏の平坦面に、部分的にマスキングした状態でスパッタリングを行うことによってInを付着せしめてチューブを得た。上記押出扁平チューブとしては、実施例1で用いたものと同様のものを用いた。
【0105】
次に、上記扁平チューブ(2)と、ろう材をクラッドしたアルミニウムブレージング材からなるコルゲートフィン(3)とを交互に積層して(図2参照)熱交換器のコア部を組み付ける(仮組みする)と共に、ヘッダー(4)(4)、サイドプレート(10)(10)等も一緒に仮組みし、これを炉中で600℃で加熱してろう付けを行い、図1に示すような熱交換器を製作した。
【0106】
この時、チューブにおけるInの付着量、チューブ表面におけるInに覆われている領域の面積割合を変えることにより、表3に示す特徴を備えたIn拡散層を有するチューブで構成された熱交換器を得た。
【0107】
【表3】
【0108】
<実施例33〜38、比較例17〜20>
押出機より連続的に押し出されるアルミニウム製の扁平チューブの表裏の平坦面に、部分的にマスキングした状態でスパッタリングを行うことによってInを付着せしめて熱交換器用チューブを得た。上記押出扁平チューブとしては、実施例1で用いたものと同様のものを用いた。この時、スパッタ電力を5〜500Wの範囲で変えることにより、表4に示す特徴を備えたIn被覆層を表面に有した熱交換器用チューブを得た。
【0109】
次に、上記扁平チューブ(2)と、ろう材をクラッドしたアルミニウムブレージング材からなるコルゲートフィン(3)とを交互に積層して(図2参照)熱交換器のコア部を組み付ける(仮組みする)と共に、ヘッダー(4)(4)、サイドプレート(10)(10)等も一緒に仮組みし、これを炉中で600℃で加熱してろう付けを行い、図1に示すような熱交換器を製作した。
【0110】
【表4】
【0111】
<実施例39〜42、比較例21〜26>
押出機より連続的に押し出されるアルミニウム製の扁平チューブの表裏の平坦面に、部分的にマスキングした状態でスパッタリングを行うことによってSnを付着せしめてチューブを得た。上記押出扁平チューブとしては、実施例1で用いたものと同様のものを用いた。
【0112】
次に、上記扁平チューブ(2)と、ろう材をクラッドしたアルミニウムブレージング材からなるコルゲートフィン(3)とを交互に積層して(図2参照)熱交換器のコア部を組み付ける(仮組みする)と共に、ヘッダー(4)(4)、サイドプレート(10)(10)等も一緒に仮組みし、これを炉中で600℃で加熱してろう付けを行い、図1に示すような熱交換器を製作した。
【0113】
この時、チューブにおけるSnの付着量、チューブ表面におけるSnに覆われている領域の面積割合を変えることにより、表5に示す特徴を備えたSn拡散層を有するチューブで構成された熱交換器を得た。
【0114】
【表5】
【0115】
<実施例43〜48、比較例27〜30>
押出機より連続的に押し出されるアルミニウム製の扁平チューブの表裏の平坦面に、部分的にマスキングした状態でスパッタリングを行うことによってSnを付着せしめて熱交換器用チューブを得た。上記押出扁平チューブとしては、実施例1で用いたものと同様のものを用いた。この時、スパッタ電力を5〜500Wの範囲で変えることにより、表6に示す特徴を備えたSn被覆層を表面に有した熱交換器用チューブを得た。
【0116】
次に、上記扁平チューブ(2)と、ろう材をクラッドしたアルミニウムブレージング材からなるコルゲートフィン(3)とを交互に積層して(図2参照)熱交換器のコア部を組み付ける(仮組みする)と共に、ヘッダー(4)(4)、サイドプレート(10)(10)等も一緒に仮組みし、これを炉中で600℃で加熱してろう付けを行い、図1に示すような熱交換器を製作した。
【0117】
【表6】
【0118】
上記のようにして得られた各熱交換器について、耐食性およびフィン剥がれの有無を調べた。これらの結果を表1〜6に示す。なお、各項目の評価方法は次のとおりである。
【0119】
<腐食試験1>
ASTM D1141によるSWAAT試験を960時間行い、チューブに孔食が認められなかったものを「○」、チューブに孔食が顕著に認められたものを「×」、孔食がチューブ内部まで貫通したものを「×(貫通)」とした。
【0120】
<腐食試験2>
5%NaCl中性液による塩水噴霧・乾燥・湿潤を1サイクルとするCCT試験を240日行った。その結果、チューブに孔食が認められなかったものを「○」、チューブに孔食が顕著に認められたものを「×」、孔食がチューブ内部まで貫通したものを「×(貫通)」とした。
【0121】
<フィン剥がれの有無>
SWAAT試験を960時間行った後に、フィン剥がれ(フィンのチューブからの離脱)の有無を調べた。
【0122】
表1、3、5から明らかなように、この発明の実施例1〜12、29〜32、39〜42の熱交換器は、耐食性に優れると共に、フィン剥がれ防止性にも優れていた。これに対し、本発明の規定範囲を逸脱する比較例1〜6、11〜16、21〜26では上記各評価の少なくともいずれかについて良好な結果が得られなかった。
【0123】
表2、4、6から明らかなように、この発明の製造方法で製造された実施例13〜28、33〜38、43〜48の熱交換器は、耐食性に優れると共に、フィン剥がれ防止性にも優れていた。これに対し、本発明の規定範囲を逸脱する比較例7〜10、17〜20、27〜30では上記各評価の少なくともいずれかについて良好な結果が得られなかった。
【0124】
【発明の効果】
第1の発明によれば、チューブよりも卑なる金属の拡散層は該卑金属の濃度分布を有するものとなされ、かつ「チューブよりも卑なる金属の表面濃度」、「チューブよりも卑なる金属の平均表面濃度」および「チューブよりも卑なる金属の表面濃度が0.05質量%を超えた割合」がそれぞれ前記特定範囲に規定されているから、耐食性に優れており、フィン剥がれを生じない。
【0125】
第2の発明によれば、Zn拡散層は濃度分布を有するものとなされ、かつ「表面Zn濃度」、「平均表面Zn濃度」および「表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合」がそれぞれ特定範囲に規定されているから、耐食性に優れると共にフィン剥がれを生じることがなくて耐久性に優れた熱交換器が提供される。
【0126】
第3の発明によれば、耐食性を一層向上させることができる。
【0127】
第4の発明によれば、耐食性をさらに向上できると共に、フィン剥がれも確実に防止できる。
【0128】
第5、6の発明によれば、耐食性をより一層向上させることができる。
【0129】
第7の発明によれば、In拡散層は濃度分布を有するものとなされ、かつ「表面In濃度」、「平均表面In濃度」および「表面In濃度が0.05質量%を超えた割合」がそれぞれ特定範囲に規定されているから、耐食性に優れると共にフィン剥がれを生じることがなくて耐久性に優れた熱交換器が提供される。
【0130】
第8の発明によれば、Sn拡散層は濃度分布を有するものとなされ、かつ「表面Sn濃度」、「平均表面Sn濃度」および「表面Sn濃度が0.05質量%を超えた割合」がそれぞれ特定範囲に規定されているから、耐食性に優れると共にフィン剥がれを生じることがなくて耐久性に優れた熱交換器が提供される。
【0131】
第9の発明によれば、より軽量化された熱交換器が提供される。
【0132】
第10の発明によれば、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性が良好であると共にフィン剥がれを効果的に防止できる。
【0133】
第11の発明によれば、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性に優れると共にフィン剥がれを生じることがない。
【0134】
第12の発明によれば、耐食性をさらに向上できると共に、フィン剥がれも確実に防止できる。
【0135】
第13の発明によれば、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性に優れると共にフィン剥がれを生じることがない。
【0136】
第14の発明によれば、耐食性をさらに向上できると共に、フィン剥がれも確実に防止できる。
【0137】
第15の発明によれば、耐食性をさらに向上できると共に、フィン剥がれもより確実に防止できる。
【0138】
第16の発明によれば、耐食性を一層向上させることができる。
【0139】
第17の発明によれば、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性に優れると共にフィン剥がれを生じることがない。
【0140】
第18の発明によれば、この熱交換器用チューブを用いて製造した熱交換器は、耐食性に優れると共にフィン剥がれを生じることがない。
【0141】
第19の発明によれば、熱交換器用チューブがより低コストで提供される。
【0142】
第20の発明によれば、熱交換器用チューブがより一層低コストで提供される。
【0143】
第21の発明によれば、耐食性に優れると共にフィン剥がれを生じることがなくて耐久性に優れた熱交換器を製造することができる。
【0144】
第22の発明によれば、耐食性がさらに向上されかつフィン剥がれも確実に防止され得る熱交換器を製造できる。
【0145】
第23の発明によれば、チューブとフィンの接合強度をさらに向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る熱交換器を示す正面図である。
【図2】熱交換器用チューブとフィンとを組み付けた状態を示す斜視図である。
【図3】この発明の、Zn被覆層が形成された熱交換器用チューブの規定範囲を説明するためのグラフである。
【図4】この発明の、In被覆層が形成された熱交換器用チューブの規定範囲を説明するためのグラフである。
【図5】この発明の、Sn被覆層が形成された熱交換器用チューブの規定範囲を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
1…熱交換器
2…チューブ
3…フィン
4…中空ヘッダー
20…被覆層
51、61、71…第1ライン
52、62、72…第2ライン
53、63、73…第3ライン
54、64、74…第4ライン
55、65、75…第5ライン
Claims (23)
- チューブよりも卑なる金属の拡散層が表面に形成された複数本のチューブが相互間にフィンを介在させた状態で積層され、前記チューブと前記フィンとがろう付けにより接合一体化されると共に、前記チューブの両端に中空ヘッダーが連通接続された熱交換器において、
前記チューブよりも卑なる金属の拡散層は該卑金属の濃度分布を有するものとなされ、前記チューブにおける卑金属の表面濃度が0.01〜4.0質量%の範囲にあり、前記チューブにおける卑金属の平均表面濃度が0.03〜1.6質量%であり、前記卑金属の表面濃度が0.05質量%を超えた割合が20%以上100%未満であることを特徴とする熱交換器。 - 表面にZnの拡散層が形成された複数本のチューブが相互間にフィンを介在させた状態で積層され、前記チューブと前記フィンとがろう付けにより接合一体化されると共に、前記チューブの両端に中空ヘッダーが連通接続された熱交換器において、
前記チューブ表面のZn拡散層はZnの濃度分布を有するものとなされ、前記チューブにおける表面Zn濃度が0.3〜4.0質量%の範囲にあり、前記チューブにおける平均表面Zn濃度が0.6〜1.6質量%であり、表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合が20%以上100%未満であることを特徴とする熱交換器。 - 前記チューブにおける表面Zn濃度が0.4〜3.0質量%の範囲にある請求項2に記載の熱交換器。
- 前記チューブにおける平均表面Zn濃度が0.7〜1.2質量%である請求項2または3に記載の熱交換器。
- 前記表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合が20〜60%である請求項2〜4のいずれか1項に記載の熱交換器。
- 前記チューブにおける平均表面Zn濃度を「x」(質量%)とし、前記表面Zn濃度が1.2質量%を超えた割合を「y」(%)としたとき、
y≦100x−20
の関係が成立する請求項2〜5のいずれか1項に記載の熱交換器。 - 表面にInの拡散層が形成された複数本のチューブが相互間にフィンを介在させた状態で積層され、前記チューブと前記フィンとがろう付けにより接合一体化されると共に、前記チューブの両端に中空ヘッダーが連通接続された熱交換器において、
前記チューブ表面のIn拡散層はInの濃度分布を有するものとなされ、前記チューブにおける表面In濃度が0.01〜0.13質量%の範囲にあり、前記チューブにおける平均表面In濃度が0.03〜0.06質量%であり、表面In濃度が0.05質量%を超えた割合が20%以上100%未満であることを特徴とする熱交換器。 - 表面にSnの拡散層が形成された複数本のチューブが相互間にフィンを介在させた状態で積層され、前記チューブと前記フィンとがろう付けにより接合一体化されると共に、前記チューブの両端に中空ヘッダーが連通接続された熱交換器において、
前記チューブ表面のSn拡散層はSnの濃度分布を有するものとなされ、前記チューブにおける表面Sn濃度が0.01〜0.13質量%の範囲にあり、前記チューブにおける平均表面Sn濃度が0.03〜0.06質量%であり、表面Sn濃度が0.05質量%を超えた割合が20%以上100%未満であることを特徴とする熱交換器。 - 前記チューブはアルミニウムからなる請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱交換器。
- アルミニウム製チューブの表面に該チューブよりも卑なる金属の被覆層が形成された熱交換器用チューブにおいて、
前記チューブよりも卑なる金属の付着量が0.03〜7g/m2 であり、前記チューブ表面において卑金属に覆われている領域の面積割合が20%以上100%未満であることを特徴とする熱交換器用チューブ。 - アルミニウム製チューブの表面にZnの被覆層が形成された熱交換器用チューブにおいて、
前記Znの付着量を「α」(g/m2 )とし、前記チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合を「β」(%)とし、
これら数値を、Znの付着量(g/m2 )を横軸にし、チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合(%)を縦軸にしたグラフにプロットしたとき、このプロット点(α、β)が下記5つのラインで取り囲まれた領域内に位置することを特徴とする熱交換器用チューブ。
第1ライン:Zn付着量が1(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第2ライン:Zn付着量が7(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第3ライン:Znに覆われている領域の面積割合が20(%)の横直線(境界線を含む)
第4ライン:Znに覆われている領域の面積割合が100(%)の横直線(境界線を含まない)
第5ライン:座標点A(2、100)と座標点B(1、90)を通る斜め直線(境界線を含む) - アルミニウム製チューブの表面にZnの被覆層が形成された熱交換器用チューブにおいて、
前記Znの付着量を「α」(g/m2 )とし、前記チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合を「β」(%)とし、
これら数値を、Znの付着量(g/m2 )を横軸にし、チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合(%)を縦軸にしたグラフにプロットしたとき、このプロット点(α、β)が下記4つのラインで取り囲まれた領域内に位置することを特徴とする熱交換器用チューブ。
第1ライン:Zn付着量が2(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第2ライン:Zn付着量が6(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第3ライン:Znに覆われている領域の面積割合が20(%)の横直線(境界線を含む)
第4ライン:Znに覆われている領域の面積割合が100(%)の横直線(境界線を含まない) - アルミニウム製チューブの表面にZnの被覆層が形成された熱交換器用チューブにおいて、
前記Znの付着量が1〜7g/m2 であり、前記チューブ表面においてZnに覆われている領域の面積割合が20〜80%であることを特徴とする熱交換器用チューブ。 - 前記Znの付着量が2〜6g/m2 である請求項13に記載の熱交換器用チューブ。
- 前記Znの付着量が2〜4g/m2 である請求項13に記載の熱交換器用チューブ。
- 前記Zn被覆層は、亜鉛が溶射されて形成されたものである請求項11〜15のいずれか1項に記載の熱交換器用チューブ。
- アルミニウム製チューブの表面にInの被覆層が形成された熱交換器用チューブにおいて、
前記Inの付着量を「α」(g/m2 )とし、前記チューブ表面においてInに覆われている領域の面積割合を「β」(%)とし、
これら数値を、Inの付着量(g/m2 )を横軸にし、チューブ表面においてInに覆われている領域の面積割合(%)を縦軸にしたグラフにプロットしたとき、このプロット点(α、β)が下記5つのラインで取り囲まれた領域内に位置することを特徴とする熱交換器用チューブ。
第1ライン:In付着量が0.04(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第2ライン:In付着量が0.3(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第3ライン:Inに覆われている領域の面積割合が20(%)の横直線(境界線を含む)
第4ライン:Inに覆われている領域の面積割合が100(%)の横直線(境界線を含まない)
第5ライン:座標点C(0.09、100)と座標点D(0.04、90)を通る斜め直線(境界線を含む) - アルミニウム製チューブの表面にSnの被覆層が形成された熱交換器用チューブにおいて、
前記Snの付着量を「α」(g/m2 )とし、前記チューブ表面においてSnに覆われている領域の面積割合を「β」(%)とし、
これら数値を、Snの付着量(g/m2 )を横軸にし、チューブ表面においてSnに覆われている領域の面積割合(%)を縦軸にしたグラフにプロットしたとき、このプロット点(α、β)が下記5つのラインで取り囲まれた領域内に位置することを特徴とする熱交換器用チューブ。
第1ライン:Sn付着量が0.04(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第2ライン:Sn付着量が0.3(g/m2 )の縦直線(境界線を含む)
第3ライン:Snに覆われている領域の面積割合が20(%)の横直線(境界線を含む)
第4ライン:Snに覆われている領域の面積割合が100(%)の横直線(境界線を含まない)
第5ライン:座標点E(0.09、100)と座標点F(0.04、90)を通る斜め直線(境界線を含む) - チューブは押出により形成されたものである請求項10〜18のいずれか1項に記載の熱交換器用チューブ。
- 前記被覆層は、溶射により形成された溶射層である請求項10〜19のいずれか1項に記載の熱交換器用チューブ。
- 請求項10〜20のいずれか1項に記載の熱交換器用チューブにフィンを組み付ける工程と、
前記組み付け状態で所定温度に加熱することにより、前記チューブとフィンとをろう付け接合する工程とを含むことを特徴とする熱交換器の製造方法。 - 前記加熱温度を550〜620℃の範囲に設定する請求項21に記載の熱交換器の製造方法。
- 前記フィンとして、ろう材をクラッドしたアルミニウムブレージング材からなるフィンを用いる請求項21または22に記載の熱交換器の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2003121507A JP2004324998A (ja) | 2003-04-25 | 2003-04-25 | 熱交換器及びその製造方法並びに熱交換器用チューブ |
Publications (1)
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Family
ID=33500059
Family Applications (1)
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JP2003121507A Pending JP2004324998A (ja) | 2003-04-25 | 2003-04-25 | 熱交換器及びその製造方法並びに熱交換器用チューブ |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009145020A (ja) * | 2007-12-18 | 2009-07-02 | Showa Denko Kk | 熱交換器用チューブ及びその製造方法並びに熱交換器 |
JP2010085066A (ja) * | 2008-10-02 | 2010-04-15 | Mitsubishi Alum Co Ltd | フィンチューブ型エアコン熱交換器用アルミニウム合金押出チューブ |
-
2003
- 2003-04-25 JP JP2003121507A patent/JP2004324998A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009145020A (ja) * | 2007-12-18 | 2009-07-02 | Showa Denko Kk | 熱交換器用チューブ及びその製造方法並びに熱交換器 |
JP2010085066A (ja) * | 2008-10-02 | 2010-04-15 | Mitsubishi Alum Co Ltd | フィンチューブ型エアコン熱交換器用アルミニウム合金押出チューブ |
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