JP2004324768A - 自動変速機 - Google Patents
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Abstract
【課題】上り勾配路であっても停車時には安全に自動変速機を中立状態に切り換える。
【解決手段】駆動歯車21a〜27aを備える入力軸12,13と、これら駆動歯車21a〜27aに噛み合う従動歯車21b〜27bを備える出力軸14とが設けられる。エンジン11と入力軸12,13との間には入力軸12,13に動力を伝達する入力クラッチ18,19が設けられ、駆動歯車21a〜27aと従動歯車21b〜27bとにより形成される変速歯車列を動力伝達状態に切り換える切換機構31〜34が設けられる。また、入力軸12とミッションケース15との間には、入力軸12の逆回転を規制する一方向クラッチ35が設けられ、入力軸12に設けられる変速歯車列を動力伝達状態に切り換えることにより、入力クラッチ18,19を解放した場合であっても車両の後退移動を規制する。
【選択図】 図1
【解決手段】駆動歯車21a〜27aを備える入力軸12,13と、これら駆動歯車21a〜27aに噛み合う従動歯車21b〜27bを備える出力軸14とが設けられる。エンジン11と入力軸12,13との間には入力軸12,13に動力を伝達する入力クラッチ18,19が設けられ、駆動歯車21a〜27aと従動歯車21b〜27bとにより形成される変速歯車列を動力伝達状態に切り換える切換機構31〜34が設けられる。また、入力軸12とミッションケース15との間には、入力軸12の逆回転を規制する一方向クラッチ35が設けられ、入力軸12に設けられる変速歯車列を動力伝達状態に切り換えることにより、入力クラッチ18,19を解放した場合であっても車両の後退移動を規制する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車に搭載される自動変速機に関し、特に、平行軸式の自動変速機に適用して有効な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動変速機は、エンジンに連結される入力軸と駆動輪に連結される出力軸とを備えるとともに、入力軸と出力軸との間に複数のギヤ比を形成する歯車列を備えており、この歯車列の動力伝達経路を自動的に切り換えることによって入力軸からの動力を適宜変速して出力軸に伝達する。このような自動変速機には歯車列の形態に応じて遊星歯車式と平行軸式とがあり、遊星歯車式においては1軸上での変速が行われる一方、平行軸式においては手動変速機と同様に平行軸上での変速が行われる。
【0003】
遊星歯車式の自動変速機は、入力軸と出力軸とを同軸上に連結する遊星歯車列を有しており、遊星歯車列の各要素に設けられたクラッチやブレーキなどを締結制御することによって、遊星歯車列内の動力伝達経路を切り換えることができ、入力軸の回転を減速、増速、等速、または逆転させて出力軸に伝達することができる。
【0004】
一方、平行軸式の自動変速機は、入力軸に設けられる複数の駆動歯車と出力軸に設けられる複数の従動歯車とを有しており、駆動歯車とこれに噛み合う従動歯車とにより複数の変速歯車列が形成される。これら変速歯車列のいずれかをシンクロメッシュ機構等により動力伝達状態に切り換えることによって、入力軸の回転を適宜選択された変速歯車列を介して出力軸に伝達することができる。
【0005】
これらの自動変速機は、運転者がクラッチ操作を行う必要がなく、その利便性から増加する傾向にあるが、環境保全や資源問題の観点から自動変速機に対してもエンジンの燃費性能を向上させるための技術が要求されている。そこで、エンジンがアイドリング状態となる停車時には、自動変速機内を中立状態に切り換えることによってエンジン負荷を軽減し、エンジンの燃料消費量を抑制するようにした自動変速機が開発されている。
【0006】
また、クラッチ等の摩擦係合要素を解放することによって自動変速機は中立状態に切り換えられるが、この状態より車両を再発進させる際にはクラッチ等が再締結されるまで若干のタイムラグが発生することになる。特に、上り勾配路で自動変速機を中立状態に切り換えた場合には、このタイムラグの間に車両が後退するおそれがあるため、上り勾配路を検出したときには中立状態への切り換えを禁止する自動変速機が開発されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−349424号公報(第4頁、図3)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エンジンに要求される燃費性能は年々高められており、平坦路や下り勾配路では勿論のこと、上り勾配路であっても安全に中立状態に切り換えることのできる自動変速機が所望されている。
【0009】
本発明の目的は、上り勾配路であっても停車時には安全に中立状態に切り換えることができ、再発進時にも車両を後退移動させることのない自動変速機を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の自動変速機は、複数の駆動歯車が設けられる入力軸と、前記駆動歯車に噛み合う複数の従動歯車が設けられる出力軸と、前記入力軸および出力軸を回転自在に収容するミッションケースとを備える自動変速機であって、エンジンと前記入力軸との間に設けられ、前記入力軸に動力を伝達する締結状態と遮断する解放状態とに切り換えられる入力クラッチと、前記駆動歯車と前記従動歯車とにより形成される変速歯車列を動力伝達状態と中立状態とに切り換える切換機構と、 前記入力軸と前記ミッションケースとの間に設けられ、前記入力軸の逆回転を規制する一方向クラッチとを有し、停車時には前記変速歯車列を動力伝達状態に切り換えることにより前記一方向クラッチを介して車両の後退移動を規制した状態のもとで、前記入力クラッチを解放することを特徴とする。
【0011】
本発明の自動変速機は、停車時間が所定時間を経過した後に前記入力クラッチを解放することを特徴とする。
【0012】
本発明の自動変速機は、前記複数の従動歯車に噛み合う駆動歯車が設けられる第1入力軸と、前記複数の従動歯車に噛み合う駆動歯車が設けられる第2入力軸と、前記エンジンと前記第1入力軸との間に設けられ、前記第1入力軸に動力を伝達する締結状態と遮断する解放状態とに切り換えられる第1入力クラッチと、前記エンジンと前記第2入力軸との間に設けられ、前記第2入力軸に動力を伝達する締結状態と遮断する解放状態とに切り換えられる第2入力クラッチとを有し、前記一方向クラッチを前記第1入力軸と前記第2入力軸との少なくともいずれか一方に設けることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、入力軸とミッションケースとの間に入力軸の逆回転を規制する一方向クラッチを設けるようにしたので、変速歯車列を動力伝達状態に切り換えることにより車両の後退移動を防止することができる。これにより、上り勾配路であっても停車時には安全に入力クラッチを解放することができ、車両の燃費性能を向上させるとともに振動や騒音を抑制することができる。
【0014】
また、予め変速歯車列を動力伝達状態に切り換えるため、入力クラッチを締結するだけで車両を再発進させることができ、再発進時の応答性を向上させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施の形態である自動変速機10を示すスケルトン図である。この自動変速機10はエンジン11に連結される中空の第1入力軸12と、この入力軸12に同軸上に設けられるとともに入力軸12に組み込まれる第2入力軸13と、これらに平行であって駆動輪に連結される出力軸14とを有している。入力軸12,13と出力軸14は車両の進行方向を向いてミッションケース15内に組み込まれており、この自動変速機10は縦置きに配置されて4輪駆動用の車両に適用される。
【0017】
エンジン11のクランク軸11aにはトルクコンバータ16が連結され、トルクコンバータ16のタービン軸16aと入力軸12との間には、入力軸12にエンジン動力を伝達する締結状態と、エンジン動力を遮断する解放状態とに切り換えられる湿式多板式の第1入力クラッチ18が設けられている。
【0018】
入力クラッチ18は入力軸12の端部に固定されるクラッチハブ18aと、タービン軸16aに固定されるクラッチドラム18bとを有している。クラッチハブ18aとクラッチドラム18bとにそれぞれ交互に設けられる複数枚のクラッチディスク18cを押圧することにより、入力クラッチ18は締結状態に切り換えられる一方、押圧を解放することにより入力クラッチ18は解放状態に切り換えられる。
【0019】
また、タービン軸16aと入力軸13との間には、入力軸13にエンジン動力を伝達する締結状態と、エンジン動力を遮断する解放状態とに切り換えられる湿式多板式の第2入力クラッチ19が設けられている。入力クラッチ19は入力軸13の端部に固定されるクラッチハブ19aと、タービン軸16aに固定されるクラッチドラム19bとを有している。クラッチハブ19aとクラッチドラム19bとにそれぞれ交互に設けられる複数枚のクラッチディスク19cを押圧することにより、入力クラッチ19は締結状態に切り換えられる一方、押圧を解放することにより入力クラッチ19は解放状態に切り換えられる。なお、これらの入力クラッチ18,19は隣接して設けられており、2つのクラッチドラム18b,19bは一体となっている。
【0020】
入力軸12には第2速、第4速、第6速の駆動歯車22a,24a,26aが固定され、入力軸13には第1速、第3速、第5速の駆動歯車21a,23a,25aが固定されている。一方、出力軸14には第1速〜第6速の従動歯車21b〜26bが回転自在に取り付けられており、これらの駆動歯車21a〜26aと従動歯車21b〜26bとはそれぞれに噛み合って前進段の変速歯車列を形成する。
【0021】
また、入力軸13には後退用の駆動歯車27aが固定され、出力軸14には後退用の従動歯車27bが回転自在に取り付けられている。入力軸13に対して平行に配置されたアイドル軸28には、後退用の駆動歯車27aと従動歯車27bとに噛み合うアイドル歯車28aが設けられており、駆動歯車27a、アイドル歯車28a、および従動歯車27bによって後退段の変速歯車列が形成されている。
【0022】
出力軸14には、第2速と第4速との変速歯車列を動力伝達状態と中立状態とに切り換える第1切換機構31と、第6速と第3速との変速歯車列を動力伝達状態と中立状態とに切り換える第2切換機構32が装着されている。さらに、出力軸14には、第5速と第1速との変速歯車列を動力伝達状態と中立状態とに切り換える第3切換機構33と、後退段の変速歯車列を動力伝達状態と中立状態とに切り換える第4切換機構34とが装着されている。これらの切換機構31〜34はシンクロメッシュ機構となっている。
【0023】
切換機構31は、第2速と第4速の2つの従動歯車22b,24bの間に配置されるとともに出力軸14に固定されるシンクロハブ31aと、これに常時噛み合うシンクロスリーブ31bとを有している。このシンクロスリーブ31bを従動歯車22bに一体形成されたスプライン22cに噛み合わせると第2速に設定され、逆に従動歯車24bに一体形成されたスプライン24cに噛み合わせると第4速に設定される。
【0024】
同様に、切換機構32は第3速と第6速の2つの従動歯車23b,26bの間に配置されるとともに出力軸14に固定されるシンクロハブ32aと、これに常時噛み合うシンクロスリーブ32bとを有している。このシンクロスリーブ32bを従動歯車23bに一体形成されたスプライン23cに噛み合わせると第3速に設定され、逆に従動歯車26bに一体形成されたスプライン26cに噛み合わせると第6速に設定される。
【0025】
また同様に、切換機構33は第1速と第5速の2つの従動歯車21b,25bの間に配置されるとともに出力軸14に固定されるシンクロハブ33aと、これに常時噛み合うシンクロスリーブ33bとを有している。このシンクロスリーブ33bを従動歯車21bに一体形成されたスプライン21cに噛み合わせると第1速に設定され、逆に従動歯車25bに一体形成されたスプライン25cに噛み合わせると第5速に設定される。
【0026】
さらに、切換機構34は後退用の従動歯車27bの隣りに配置されるとともに出力軸14に固定されるシンクロハブ34aと、これに常時噛み合うシンクロスリーブ34bとを有している。このシンクロスリーブ34bを従動歯車27bに一体形成されたスプライン27cに噛み合わせると後退段に設定され、入力軸の回転はアイドル歯車28aを介して逆転されて出力軸14に伝達される。
【0027】
このように、第2速と第4速の切り換えは切換機構31のシンクロスリーブ31bを切換移動させることによって行われ、第6速と第3速の切り換えは切換機構32のシンクロスリーブ32bを切換移動させることによって行われる。また、第5速と第1速の切り換えは切換機構33のシンクロスリーブ33bを切換移動させることによって行われ、後退段の切り換えは切換機構34のシンクロスリーブ34bを切換移動させることによって行われる。
【0028】
また、偶数の変速段が設けられる入力軸12には入力クラッチ18を介してエンジン動力が伝達され、奇数の変速段が設けられる入力軸13には入力クラッチ19を介してエンジン動力が伝達されるため、滑らかなアップシフトやダウンシフトが可能となる。たとえば、第1速から第2速にアップシフトを行う場合には、第1速と第2速とにエンジン動力を伝達する入力クラッチ18,19がそれぞれ別個に設けられるため、第1速での走行中に切換機構31により第2速の変速歯車列を動力伝達状態に切り換えることができる。このような状態のもとで、入力クラッチ19を徐々に解放するとともに入力クラッチ18を徐々に締結することにより、出力軸14に対して駆動トルクを伝達したまま変速動作を行うことができ、急激なトルク変動を抑制した滑らかな変速動作が可能となる。
【0029】
また、第2速の駆動歯車22aとクラッチハブ18aとの間には一方向クラッチ35が設けられており、一方向クラッチ35の内輪側は入力軸12に固定され、外輪側はミッションケース15に固定されている。この一方向クラッチ35は入力軸12の逆回転を規制する向きに取り付けられており、一方向クラッチ35により入力軸12の逆回転は禁止される。なお、車両を前進走行または後退走行させるため、エンジン11によって駆動される入力軸12の回転方向は、一方向クラッチ35により規制されることのない正転方向となる。
【0030】
さらに、自動変速機10には出力軸14に平行となって前輪出力軸36が組み込まれており、前輪出力軸36はセンタデファレンシャル装置37を介して出力軸14に連結されるとともに、フロントデファレンシャル装置38を介して図示しない前輪用のドライブシャフトに連結される。また、センタデファレンシャル装置37は駆動歯車39aと従動歯車39bとを介して後輪出力軸40に連結されており、後輪出力軸40は図示しないリヤデファレンシャル装置を介して図示しない後輪用のドライブシャフトに連結される。
【0031】
なお、センタデファレンシャル装置37は複合遊星歯車式であり、センタデファレンシャル装置37に組み込まれた一体型のピニオンギヤ37aを介して、前輪出力軸36と後輪出力軸40とに駆動トルクが分配され、前輪と後輪とを共に駆動することができる。また、一体型のピニオンギヤ37aの回転により前輪と後輪との回転差は差動吸収されるが、センタデファレンシャル装置37には差動制限クラッチ37bが設けられており、前輪または後輪がスリップして大きな差動回転が生じたときは、差動制限クラッチ37bが締結されて差動回転が抑制される。
【0032】
図1に示すように、自動変速機10は切換機構31〜34をそれぞれ切り換えるため4つのシフトアクチュエータ41〜44を有している。第1〜第3シフトアクチュエータ41〜43は、切換機構31〜33を動力伝達状態に切り換えるため、シンクロスリーブ31b〜33bをスプライン22c,26c,25cに噛み合わせて第2速、第6速、第5速に設定する位置と、スプライン24c,23c,21cに噛み合わせて第4速、第3速、第1速に設定する位置とに駆動する。また、切換機構31〜33を中立状態に切り換えるため、これらのスプライン21c〜26cに噛み合わない位置に駆動する。このように、シフトアクチュエータ41〜43は3つの切換位置に駆動する。
【0033】
また、第4シフトアクチュエータ44は、切換機構34を動力伝達状態に切り換えるため、シンクロスリーブ34bをスプライン27cに噛み合わせて後退段に設定する位置と、切換機構34を中立状態に切り換えるため、スプライン27cに噛み合わない位置とに駆動する。このように、シフトアクチュエータ44は2つの切換位置に駆動する。
【0034】
図2は自動変速機の変速制御系の一部を示すブロック図である。図2に示すように、入力クラッチ18,19やシフトアクチュエータ41〜44は、図示しないオイルポンプおよび所定のライン圧に調圧する調圧機器などを有するライン圧供給部45からのライン圧によって駆動される。入力クラッチ18にライン圧を供給する油路46には、この油路46を連通状態と遮断状態とに切り換える電磁弁SOL1が設けられており、電磁弁SOL1に対する通電制御により入力クラッチ18が締結制御される。同様に、入力クラッチ19にライン圧を供給する油路47には電磁弁SOL2が設けられ、電磁弁SOL2に対する通電制御により入力クラッチ19が締結制御される。
【0035】
シフトアクチュエータ41〜43の各作動ポートにライン圧を供給する油路48〜53には、それぞれの油路48〜53を連通状態と遮断状態とに切り換える電磁弁SOL3〜SOL8が設けられており、シフトアクチュエータ44の各作動ポートにライン圧を供給する油路54,55の一方には、油路55を連通状態と遮断状態とに切り換える電磁弁SOL9が設けられている。
【0036】
第2速または第4速の変速歯車列を動力伝達状態に設定する場合には、電磁弁SOL3,SOL4に対して通電制御を行うことにより、シフトアクチュエータ41を第2速位置または第4速位置に駆動する。同様に、第6速または第3速に設定する場合には電磁弁SOL5,SOL6に対して通電制御を行い、第5速または第1速に設定する場合には電磁弁SOL7,SOL8に対して通電制御を行い、後退段に設定する場合には電磁弁SOL9に対して通電制御を行うことになる。なお、シフトアクチュエータ44は2位置に切り換えられるため、シフトアクチュエータ44に対しては1つの電磁弁SOL9のみが設けられている。
【0037】
変速動作を実行するため各電磁弁SOL1〜SOL9に対して行われる通電と通電解除とは、電子制御ユニット(ECU60)によって制御される。ECU60にはインヒビタスイッチ61、スロットル開度センサ62、エンジン回転数センサ63、アクセルスイッチ64、ブレーキスイッチ65、車速センサ66等が接続されており、これらスイッチやセンサからの信号がECU60に入力される。
【0038】
ECU60はインヒビタスイッチ61からの信号によりセレクトレバーの位置を検出し、スロットル開度センサ62からの信号により電子制御スロットルの開閉状況を検出し、エンジン回転数センサ63からの信号によりエンジン回転数を検出する。また、ECU60はアクセルスイッチ64からの信号によりアクセルぺダルの操作状況を検出し、ブレーキスイッチ65からの信号によりブレーキぺダルの操作状況を検出し、車速センサ66からの信号により車両の走行速度を検出する。ECU60はこれらの検出信号から車両の走行状況を総合的に把握するとともに、予め設定された変速特性マップに従って各電磁弁SOL1〜SOL9に対して通電制御を行うことにより自動変速制御を実行する。
【0039】
以下、自動変速制御について説明する。まず、前進走行を開始する場合には、シフトアクチュエータ43により第1速を動力伝達状態に切り換えるとともに、シフトアクチュエータ41,42,44により他の変速段を中立状態に切り換える。次いで、第1速の駆動歯車21aが固定される入力軸13にエンジン動力を伝達するため入力クラッチ19が締結状態に切り換えられ、エンジン動力は入力軸13から第1速の変速歯車列を介して出力軸14に伝達されて車両は第1速による前進走行を開始する。
【0040】
第1速による前進走行を開始した後には、車両の走行状況に応じて適宜アップシフトが行われる。アップシフトを行う際には、第1速による走行中にシフトアクチュエータ41によって第2速が動力伝達状態に切り換えられる。次いで、入力クラッチ18,19に対してライン圧を供給制御することにより、入力クラッチ19が徐々に解放状態に切り換えられる一方、入力クラッチ18が徐々に締結状態に切り換えられ、車両は第2速による前進走行を開始する。
【0041】
同様に、第3速以降のアップシフトについても、変速歯車列が予め動力伝達状態に切り換えられた状態のもとで、2つの入力クラッチ18,19が交互に締結状態に切り換えられ、変速ショックが発生することのない滑らかな変速動作が実行される。なお、アップシフトに限られずダウンシフトについても同様の自動変速制御が実行される。
【0042】
続いて、後退走行を行う場合について説明する。後退走行を行う場合には、シフトアクチュエータ41〜43により前進段を中立状態に切り換えるとともに、シフトアクチュエータ44により後退段を動力伝達状態に切り換える。次いで、後退用の駆動歯車27aを備える入力軸13にエンジン動力を伝達するため入力クラッチ19が締結状態に切り換えられ、エンジン動力は入力軸13から後退段の変速歯車列を介して出力軸14に伝達されて車両は後退段による後退走行を開始する。
【0043】
次いで、車両がアイドリング状態で停止した場合に、エンジン11の負荷を軽減するため自動変速機10内を中立状態に切り換える自動ニュートラル制御について説明する。図3は自動変速機10内を中立状態に切り換える自動ニュートラル実行処理の手順を示すフローチャートであり、図4は自動変速機10内を動力伝達状態に切り換える自動ニュートラル解除処理の手順を示すフローチャートである。
【0044】
図3に示すように、ステップS1〜S4では自動変速機10内を中立状態に切り換えるための移行条件が判定される。まず、ステップS1では、インヒビタスイッチ61からの入力信号に基づいて、現在の走行レンジが入力クラッチ18,19のいずれかが締結状態となるドライブレンジ(Dレンジ)であるか否かが判定される。ステップS1において、Dレンジであると判定された場合には、ステップS2に進みアクセルスイッチ64からの入力信号が判定される。ステップS2において、アクセルスイッチ64がOFFつまりアクセルペダルが踏み込まれていないと判定された場合には、ステップS3に進みブレーキスイッチ65からの入力信号が判定される。ステップS3において、ブレーキスイッチ65がONつまりブレーキペダルが踏み込まれていると判定された場合には、ステップS4に進み、車速センサ66からの入力信号に基づいて車両の停車状態が判定される。そして、ステップS4において、所定時間を超えて車両が停止状態にあると判定された場合には、続くステップS5以降において自動変速機10内が中立状態に切り換えられる。なお、ステップS1〜S4で判定される各移行条件が全て満たされない場合には、再びステップS1から移行条件が判定される。
【0045】
ステップS1〜S4において全ての移行条件が満たされると、ステップS5に進み、ECU60から電磁弁SOL3〜SOL9に対して通電制御が行われる。この通電制御により、シフトアクチュエータ41,43は第1速と第2速との変速歯車列を動力伝達状態に切り換え、シフトアクチュエータ42,44は第3速〜第6速と後退段の変速歯車列を中立状態に切り換える。続くステップS6では、電磁弁SOL1,SOL2のいずれか一方に対して通電制御が行われ、入力クラッチ18,19のうち締結状態であった一方の入力クラッチが解放状態に切り換えられる。
【0046】
なお、通常、車両が停止状態となる際には、第1速に向けてダウンシフトが実行されるとともに第1速で停止状態となるため、ステップS5においては動力伝達状態にある第1速と第2速との変速歯車列が共に保持され、ステップS6においては第1速の変速歯車列に動力を伝達していた入力クラッチ19が解放状態に切り換えられることになる。
【0047】
このように、Dレンジが保持された状態で所定時間を超えて車両が停止した場合、たとえば、交差点での信号待ちで車両が停止した場合には、エンジン11から入力軸12,13に動力を伝達する入力クラッチ18,19が共に解放されることになる。つまり、自動変速機10が中立状態に切り換えられるため、エンジン11の負荷軽減により燃料消費量を軽減することができる。また、アイドリング状態でのエンジン回転数を抑制することができ、入力軸12,13の回転を停止させることができるため、エンジン11や自動変速機10の振動や騒音を抑制することができる。なお、停車時間に基づいて車両の停止状態を判定するため、車両の一時停止など停車時間が短時間であり直ちに走行を再開する場合には、自動ニュートラル制御は実行されない。
【0048】
続いて、車両を停止状態から再発進させるために自動変速機10内を動力伝達状態に切り換える手順について、図4のフローチャートに従って説明する。図4に示すように、ステップS11,S13,S14では自動変速機10内を中立状態から動力伝達状態に切り換えるための復帰条件が判定される。
【0049】
まずステップS11では、アクセルスイッチ64からの入力信号が判定される。ステップS11において、アクセルスイッチ64がONつまりアクセルペダルが踏み込まれている場合には、ステップS12に進み、入力クラッチ19が締結されて第1速での前進走行が開始される。
【0050】
ステップS11において、アクセルペダルが踏み込まれていないと判定された場合には、続くステップS13でブレーキスイッチ65からの入力信号が判定される。ステップS13において、ブレーキスイッチ65がOFFつまりブレーキペダルが離された場合には、ステップS12に進み、前述と同様に入力クラッチ19が締結される。
【0051】
また、ステップS13において、ブレーキペダルが踏み込まれていると判定された場合には、続くステップS14で車速センサ66からの入力信号に基づいて車両の移動状況が判定される。ステップS14において、車両が移動していると判定された場合には、ステップS12に進み、前述と同様に入力クラッチ19が締結される。
【0052】
このように、ステップS11〜S13で判定される復帰条件のいずれかが満たされた場合には、入力クラッチ19が締結されて自動変速機10内が動力伝達状態となり車両の再発進が可能となる。このとき、一方向クラッチ35によって入力軸12の逆回転は規制されるため、入力クラッチ19が締結されて車両が前進走行を開始するまでの間、車両に後退方向の推力が加えられた場合であっても、車両の不要な後退移動を回避することができる。つまり、後退回転する駆動輪から出力軸14と前進用の変速歯車列とを介して入力軸12に伝達される動力は、入力軸12を逆回転させることになるが、この入力軸12の逆回転は一方向クラッチ35により規制されるため、車両の後退移動は規制されることになる。
【0053】
特に、上り勾配路の途中で車両を再発進させる場合には、車両の後退方向に重力が作用することになるが、一方向クラッチ35によって確実に車両の後退移動を規制することができるため、上り勾配路であっても、安全に自動ニュートラル制御を実行することができ、車両の燃費性能を向上させるとともに振動や騒音を抑制することができる。
【0054】
また、予めステップS5において第1速が動力伝達状態に切り換えられているため、入力クラッチ19を締結するだけで車両の再発進が可能となり、再発進時の応答性を向上させることができる。さらに、車両の後退移動を規制する際には、低速段側の変速歯車列を介して入力軸12に動力が伝達されるため、一方向クラッチ35に加えられるトルクを小さくすることができる。これにより、小型の一方向クラッチ35を設けることができ、自動変速機10の大型化を抑制することができる。
【0055】
なお、図示する場合には、第1入力軸12に一方向クラッチ35を設け、第2速を動力伝達状態に切り換えることによって車両の後退移動を規制しているが、第2入力軸13に一方向クラッチを設け、第1速の変速歯車列を動力伝達状態に切り換えることによって車両の後退移動を規制しても良い。また、入力軸12,13のそれぞれに一方向クラッチを設けるようにしても良く、一方向クラッチを備えた入力軸に出力軸14からの動力を伝達する変速歯車列であれば、車両の重量、変速歯車列のギヤ比、一方向クラッチの耐トルク容量などを考慮した上で、第1速や第2速以外の変速歯車列を用いて車両の後退移動を規制しても良いことは言うまでもない。
【0056】
図5は本発明の他の実施の形態である自動変速機70を示すスケルトン図である。なお、図5においては図1の部材と同様の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。この自動変速機70はエンジン11に連結される入力軸71と、これに平行であって駆動輪に連結される中空の出力軸72とを有している。入力軸71と出力軸72は車両の進行方向を向いてミッションケース15内に組み込まれており、この自動変速機70は縦置きに配置されて4輪駆動用の車両に適用される。
【0057】
トルクコンバータ16のタービン軸16aと入力軸71との間には、入力軸71にエンジン動力を伝達する締結状態と、エンジン動力を遮断する解放状態とに切り換えられる湿式多板式の入力クラッチ73が設けられている。入力クラッチ73は入力軸71の端部に固定されるクラッチハブ73aと、タービン軸16aに固定されるクラッチドラム73bとを有している。クラッチハブ73aとクラッチドラム73bとにそれぞれ交互に設けられた複数枚のクラッチディスク73cを押圧することにより、入力クラッチ73は締結状態に切り換えられる一方、押圧を解放することにより入力クラッチ73は解放状態に切り換えられる。
【0058】
入力軸71には第1速、第2速の駆動歯車81a,82aが固定され、第3速〜第5速の駆動歯車83a〜85aが回転自在に取り付けられている。一方、出力軸72には第1速、第2速の従動歯車81b,82bが回転自在に取り付けられ、第3速〜第5速の従動歯車83b〜85bが固定されている。これらの駆動歯車81a〜85aと従動歯車81b〜85bとはそれぞれに噛み合って前進段の変速歯車列を形成する。
【0059】
出力軸72には、第1速と第2速の変速歯車列を動力伝達状態と中立状態とに切り換える第1切換機構91が装着されている。また、入力軸71には、第3速と第4速の変速歯車列を動力伝達状態と中立状態とに切り換える第2切換機構92と、第5速の変速歯車列を動力伝達状態と中立状態とに切り換える第3切換機構93とが装着されている。これらの切換機構91〜93はシンクロメッシュ機構となっている。
【0060】
切換機構91は、第1速と第2速の2つの従動歯車81b,82bの間に配置されるとともに出力軸14に固定されるシンクロハブ91aと、これに常時噛み合うシンクロスリーブ91bとを有している。このシンクロスリーブ91bを従動歯車81bに一体形成されたスプライン81cに噛み合わせると第1速に設定され、逆に従動歯車82bに一体形成されたスプライン82cに噛み合わせると第2速に設定される。他の切換機構92,93も切換機構91と同様の構造を備えており、入力軸に固定されるシンクロハブ92a,93aと、シンクロハブ92a,93aのそれぞれに常時噛み合うシンクロスリーブ92b,93bとを有している。これらのシンクロスリーブ92b,93bを駆動歯車83a〜85aのそれぞれに一体形成されたスプライン83c〜85cに噛み合わせることにより、第3速〜第5速に設定される。なお、これらの切換機構91〜93は、図示しないシフトアクチュエータによって切換駆動される。
【0061】
また、入力軸71には後退用の駆動歯車86aが固定され、切換機構91のシンクロスリーブ91bには後退用の従動歯車86bが固定されている。入力軸71に対して平行に配置されたアイドル軸74には、後退用の駆動歯車86aと従動歯車86bとに噛み合う位置と噛み合いを外す位置とに移動自在となるアイドル歯車86cが装着されている。したがって、シンクロスリーブ91bを中立位置に作動させた状態で、図示しないシフトアクチュエータによりアイドル歯車86cを駆動歯車86aと従動歯車86bとに噛み合わせると、駆動歯車86a、従動歯車86bおよびアイドル歯車86cからなる後退段の変速歯車列を介して入力軸71の回転は逆転されて出力軸72に伝達される。
【0062】
さらに、入力軸71には駆動歯車87aが回転自在に取り付けられており、出力軸72には駆動歯車87aに常時噛み合う従動歯車87bが固定されている。入力軸71にはバイパスクラッチ75が設けられており、バイパスクラッチ75は入力軸71に固定されるクラッチハブ75aと駆動歯車87aに固定されるクラッチドラム75bとを有している。クラッチハブ75aとクラッチドラム75bとにそれぞれ交互に設けられる複数枚のクラッチディスク75cを押圧することにより、バイパスクラッチ75は締結状態に切り換えられる一方、押圧を解放することによりバイパスクラッチ75は解放状態に切り換えられる。なお、駆動歯車87aと従動歯車87bとのギヤ比は、第3速と第4速との間のギヤ比に設定されており、バイパスクラッチ75を締結状態に切り換えることによって第3速と第4速との中間ギヤ比相当の駆動トルクを出力軸72に伝達することができる。
【0063】
第1速の駆動歯車81aとクラッチハブ73aとの間には一方向クラッチ76が設けられており、一方向クラッチ76の内輪側は入力軸71に固定され、外輪側はミッションケース15に固定されている。この一方向クラッチ76は入力軸71の逆回転を規制する向きに取り付けられており、一方向クラッチ76により入力軸71の逆回転は禁止される。なお、車両を前進走行または後退走行させるため、エンジン11によって駆動される入力軸71の回転方向は、一方向クラッチ76により規制されることのない正転方向となる。
【0064】
また、中空の出力軸72には前輪出力軸77が組み込まれており、前輪出力軸77は複合遊星歯車式のセンタデファレンシャル装置78を介して出力軸72に連結されるとともに、フロントデファレンシャル装置38を介して図示しない前輪用のドライブシャフトに連結される。また、センタデファレンシャル装置78は駆動歯車39aと従動歯車39bとを介して後輪出力軸40に連結されており、後輪出力軸40は図示しないリヤデファレンシャル装置を介して図示しない後輪用のドライブシャフトに連結される。なお、センタデファレンシャル装置78には差動制限クラッチ78aが設けられており、前輪または後輪がスリップして一体型のピニオンギヤ78bに大きな差動回転が生じたときは、差動制限クラッチ78aが締結されて差動回転が抑制される。
【0065】
以下、自動変速制御について説明する。まず、前進走行を開始する場合には、第1速を動力伝達状態に切り換えるとともに、他の変速段を中立状態に切り換える。次いで、入力クラッチ73が締結状態に切り換えられ、エンジン動力は入力軸71から第1速の変速歯車列を介して出力軸72に伝達されて車両は第1速による前進走行を開始する。
【0066】
第1速による前進走行を開始した後には、車両の走行状況に応じて適宜アップシフトが行われる。アップシフトを行う際には、入力クラッチ73の締結状態を維持したままバイパスクラッチ75は徐々に締結され始める。これにより、第1速の変速歯車列を介して出力軸72に伝達されていた動力が徐々に低下する一方、バイパスクラッチ75を介して出力軸72に伝達される動力が徐々に高められる。次いで、第1速の変速歯車列を介して伝達される動力が低下した状態のもとで、切換機構91が中立状態に切り換えられた後、バイパスクラッチ75の締結力は更に高められる。
【0067】
このとき、バイパスクラッチ75は第3速と第4速との中間ギヤ比相当の駆動トルクで動力を伝達することができるため、第1速での走行で上昇していたエンジン回転数は、上記の中間ギヤ比相当に向けて低下する。そして、エンジン回転数が第2速相当の回転数に低下した時点で、切換機構91が第2速側に切り換えられるとともに、バイパスクラッチ75は徐々に解放される。
【0068】
また、第2速から第1速にシフトダウンする場合にも、同様にバイパスクラッチ75が締結される。これにより、変速中に駆動トルクの落ち込みが発生し得る切換機構91の中立状態において、バイパスクラッチ75を介して駆動トルクを出力軸72に伝達することができ、良好なシフトフィーリングを得ることができる。なお、バイパスクラッチ75の締結は駆動トルクの差が生じ易い低速段に特に有効であるが、第1速や第2速以外の変速段に変速する際にもバイパスクラッチ75を締結することによって、駆動トルクの落ち込みが軽減される。
【0069】
なお、後退走行を行う場合には、入力クラッチ73が解放された状態のもとで、前進段の変速歯車列を中立状態に切り換えるとともに、アイドル歯車86cを駆動歯車86aと従動歯車86bとに噛み合わせる。次いで、入力クラッチ73を締結することにより車両は後退走行を開始する。
【0070】
また、車両がアイドリング状態で停止した場合には、前述の自動変速機10と同様に、エンジン11の負荷を軽減するため自動変速機70内を中立状態に切り換える自動ニュートラル制御が実行される。つまり、Dレンジに設定された状態で車両が所定時間を超えて停止した場合、たとえば、交差点での信号待ちで車両が停止した場合には、第1速を動力伝達状態に切り換えた上でエンジン11から入力軸71に動力を伝達する入力クラッチ73が解放されることになる。このため、エンジン11の負荷軽減により燃料消費量を低減することができ、エンジン回転数の抑制や入力軸71の回転停止により振動や騒音を抑制することができる。なお、この場合にも車両の一旦停止など停車時間が短時間であり直ちに走行を開始する場合には、自動ニュートラル制御は実行されない。
【0071】
続いて、車両を停止状態から再発進させる場合にも、前述の自動変速機10と同様に、自動変速機70内が動力伝達状態に切り換えられる。つまり、運転者によりアクセルペダルが踏み込まれた場合、ブレーキペダルが離された場合、そして車両が移動した場合には、入力クラッチ73が再び締結状態に切り換えられ車両の再発進が可能となる。このとき、一方向クラッチ76によって入力軸71の逆回転は規制されるため、入力クラッチ73が締結されて車両が前進走行を開始するまでの間、車両に後退方向の推力が加えられた場合であっても、車両の不要な後退移動を回避することができる。特に、上り勾配路の途中で車両を再発進させる場合には、車両の後退方向に重力が作用することになるが、一方向クラッチ76によって確実に車両の後退移動を規制することができるため、上り勾配路であっても、安全に自動ニュートラル制御を実行することができ、車両の燃費性能を向上させるとともに振動や騒音を抑制することができる。
【0072】
これまで説明したように、入力軸12,71とミッションケース15との間に入力軸の逆回転を規制する一方向クラッチ35,76を設けるようにしたので、入力クラッチ18,19,73を解放状態に切り換えた場合であっても、前進用の変速歯車列を動力伝達状態に切り換えることにより、車両の後退移動を規制することができる。これにより、停車時には路面勾配に拘わらず入力クラッチ18,19,73を解放することができ、車両の燃費性能を向上させるととともに振動や騒音を抑制することができる。
【0073】
また、予め前進段を動力伝達状態に切り換えておくようにしたので、入力クラッチ19,76を締結するだけで車両の走行が可能となり、再発進時の応答性を向上させることができる。さらに、車両の後退移動を規制する際には、低速段側の変速歯車列を介して入力軸12,71に動力が伝達されるため、一方向クラッチ35,73に加えられるトルクを小さくすることができる。これにより、小型の一方向クラッチ35,73を設けることができ、自動変速機10,70の大型化を抑制することができる。
【0074】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。たとえば、図1に示す自動変速機10にあっては2つの入力軸12,13を備え、図5に示す自動変速機70にあっては1つの入力軸71を備えているが、3つ以上の入力軸を備える自動変速機に本発明を適用しても良い。
【0075】
また、一方向クラッチ35,76としては、内輪と外輪との間にスプラグとしての繭形こま、ボール、ローラ等を備えたスプラグ式の一方向クラッチを設けるようにしても良く、他の一方向クラッチであっても適用することができる。
【0076】
さらに、変速歯車列の切換機構31〜34,91〜93としては、シンクロメッシュ機構が使用されているが、ドッククラッチ等を用いるようにしても良い。図示する自動変速機10は前進6段であり、自動変速機70は前進5段であるが、変速歯車列は任意の段数に設定することができる。また、図示する自動変速機10,70は4輪駆動車に適用されるが、FF車やFR車にも本発明を適用することができ、自動変速機10,70はエンジンルームに縦置きとしても良く、横置きとしても良い。
【0077】
【発明の効果】
本発明によれば、入力軸とミッションケースとの間に入力軸の逆回転を規制する一方向クラッチを設けるようにしたので、変速歯車列を動力伝達状態に切り換えることにより車両の後退移動を防止することができる。これにより、上り勾配路であっても停車時には安全に入力クラッチを解放することができ、車両の燃費性能を向上させるとともに振動や騒音を抑制することができる。
【0078】
また、予め変速歯車列を動力伝達状態に切り換えるため、入力クラッチを締結するだけで車両を再発進させることができ、再発進時の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態である自動変速機を示すスケルトン図である。
【図2】自動変速機の変速制御系の一部を示すブロック図である。
【図3】自動ニュートラル実行処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】自動ニュートラル解除処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施の形態である自動変速機を示すスケルトン図である。
【符号の説明】
10 自動変速機
11 エンジン
12 第1入力軸(入力軸)
13 第2入力軸(入力軸)
14 出力軸
15 ミッションケース
18 第1入力クラッチ(入力クラッチ)
19 第2入力クラッチ(入力クラッチ)
21a〜27a 駆動歯車
21b〜27b 従動歯車
31 第1切換機構(切換機構)
32 第2切換機構(切換機構)
33 第3切換機構(切換機構)
34 第4切換機構(切換機構)
35 一方向クラッチ
70 自動変速機
71 入力軸
72 出力軸
73 入力クラッチ
76 一方向クラッチ
81a〜87a 駆動歯車
81b〜87b 従動歯車
91 第1切換機構(切換機構)
92 第2切換機構(切換機構)
93 第3切換機構(切換機構)
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車に搭載される自動変速機に関し、特に、平行軸式の自動変速機に適用して有効な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動変速機は、エンジンに連結される入力軸と駆動輪に連結される出力軸とを備えるとともに、入力軸と出力軸との間に複数のギヤ比を形成する歯車列を備えており、この歯車列の動力伝達経路を自動的に切り換えることによって入力軸からの動力を適宜変速して出力軸に伝達する。このような自動変速機には歯車列の形態に応じて遊星歯車式と平行軸式とがあり、遊星歯車式においては1軸上での変速が行われる一方、平行軸式においては手動変速機と同様に平行軸上での変速が行われる。
【0003】
遊星歯車式の自動変速機は、入力軸と出力軸とを同軸上に連結する遊星歯車列を有しており、遊星歯車列の各要素に設けられたクラッチやブレーキなどを締結制御することによって、遊星歯車列内の動力伝達経路を切り換えることができ、入力軸の回転を減速、増速、等速、または逆転させて出力軸に伝達することができる。
【0004】
一方、平行軸式の自動変速機は、入力軸に設けられる複数の駆動歯車と出力軸に設けられる複数の従動歯車とを有しており、駆動歯車とこれに噛み合う従動歯車とにより複数の変速歯車列が形成される。これら変速歯車列のいずれかをシンクロメッシュ機構等により動力伝達状態に切り換えることによって、入力軸の回転を適宜選択された変速歯車列を介して出力軸に伝達することができる。
【0005】
これらの自動変速機は、運転者がクラッチ操作を行う必要がなく、その利便性から増加する傾向にあるが、環境保全や資源問題の観点から自動変速機に対してもエンジンの燃費性能を向上させるための技術が要求されている。そこで、エンジンがアイドリング状態となる停車時には、自動変速機内を中立状態に切り換えることによってエンジン負荷を軽減し、エンジンの燃料消費量を抑制するようにした自動変速機が開発されている。
【0006】
また、クラッチ等の摩擦係合要素を解放することによって自動変速機は中立状態に切り換えられるが、この状態より車両を再発進させる際にはクラッチ等が再締結されるまで若干のタイムラグが発生することになる。特に、上り勾配路で自動変速機を中立状態に切り換えた場合には、このタイムラグの間に車両が後退するおそれがあるため、上り勾配路を検出したときには中立状態への切り換えを禁止する自動変速機が開発されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−349424号公報(第4頁、図3)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エンジンに要求される燃費性能は年々高められており、平坦路や下り勾配路では勿論のこと、上り勾配路であっても安全に中立状態に切り換えることのできる自動変速機が所望されている。
【0009】
本発明の目的は、上り勾配路であっても停車時には安全に中立状態に切り換えることができ、再発進時にも車両を後退移動させることのない自動変速機を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の自動変速機は、複数の駆動歯車が設けられる入力軸と、前記駆動歯車に噛み合う複数の従動歯車が設けられる出力軸と、前記入力軸および出力軸を回転自在に収容するミッションケースとを備える自動変速機であって、エンジンと前記入力軸との間に設けられ、前記入力軸に動力を伝達する締結状態と遮断する解放状態とに切り換えられる入力クラッチと、前記駆動歯車と前記従動歯車とにより形成される変速歯車列を動力伝達状態と中立状態とに切り換える切換機構と、 前記入力軸と前記ミッションケースとの間に設けられ、前記入力軸の逆回転を規制する一方向クラッチとを有し、停車時には前記変速歯車列を動力伝達状態に切り換えることにより前記一方向クラッチを介して車両の後退移動を規制した状態のもとで、前記入力クラッチを解放することを特徴とする。
【0011】
本発明の自動変速機は、停車時間が所定時間を経過した後に前記入力クラッチを解放することを特徴とする。
【0012】
本発明の自動変速機は、前記複数の従動歯車に噛み合う駆動歯車が設けられる第1入力軸と、前記複数の従動歯車に噛み合う駆動歯車が設けられる第2入力軸と、前記エンジンと前記第1入力軸との間に設けられ、前記第1入力軸に動力を伝達する締結状態と遮断する解放状態とに切り換えられる第1入力クラッチと、前記エンジンと前記第2入力軸との間に設けられ、前記第2入力軸に動力を伝達する締結状態と遮断する解放状態とに切り換えられる第2入力クラッチとを有し、前記一方向クラッチを前記第1入力軸と前記第2入力軸との少なくともいずれか一方に設けることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、入力軸とミッションケースとの間に入力軸の逆回転を規制する一方向クラッチを設けるようにしたので、変速歯車列を動力伝達状態に切り換えることにより車両の後退移動を防止することができる。これにより、上り勾配路であっても停車時には安全に入力クラッチを解放することができ、車両の燃費性能を向上させるとともに振動や騒音を抑制することができる。
【0014】
また、予め変速歯車列を動力伝達状態に切り換えるため、入力クラッチを締結するだけで車両を再発進させることができ、再発進時の応答性を向上させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施の形態である自動変速機10を示すスケルトン図である。この自動変速機10はエンジン11に連結される中空の第1入力軸12と、この入力軸12に同軸上に設けられるとともに入力軸12に組み込まれる第2入力軸13と、これらに平行であって駆動輪に連結される出力軸14とを有している。入力軸12,13と出力軸14は車両の進行方向を向いてミッションケース15内に組み込まれており、この自動変速機10は縦置きに配置されて4輪駆動用の車両に適用される。
【0017】
エンジン11のクランク軸11aにはトルクコンバータ16が連結され、トルクコンバータ16のタービン軸16aと入力軸12との間には、入力軸12にエンジン動力を伝達する締結状態と、エンジン動力を遮断する解放状態とに切り換えられる湿式多板式の第1入力クラッチ18が設けられている。
【0018】
入力クラッチ18は入力軸12の端部に固定されるクラッチハブ18aと、タービン軸16aに固定されるクラッチドラム18bとを有している。クラッチハブ18aとクラッチドラム18bとにそれぞれ交互に設けられる複数枚のクラッチディスク18cを押圧することにより、入力クラッチ18は締結状態に切り換えられる一方、押圧を解放することにより入力クラッチ18は解放状態に切り換えられる。
【0019】
また、タービン軸16aと入力軸13との間には、入力軸13にエンジン動力を伝達する締結状態と、エンジン動力を遮断する解放状態とに切り換えられる湿式多板式の第2入力クラッチ19が設けられている。入力クラッチ19は入力軸13の端部に固定されるクラッチハブ19aと、タービン軸16aに固定されるクラッチドラム19bとを有している。クラッチハブ19aとクラッチドラム19bとにそれぞれ交互に設けられる複数枚のクラッチディスク19cを押圧することにより、入力クラッチ19は締結状態に切り換えられる一方、押圧を解放することにより入力クラッチ19は解放状態に切り換えられる。なお、これらの入力クラッチ18,19は隣接して設けられており、2つのクラッチドラム18b,19bは一体となっている。
【0020】
入力軸12には第2速、第4速、第6速の駆動歯車22a,24a,26aが固定され、入力軸13には第1速、第3速、第5速の駆動歯車21a,23a,25aが固定されている。一方、出力軸14には第1速〜第6速の従動歯車21b〜26bが回転自在に取り付けられており、これらの駆動歯車21a〜26aと従動歯車21b〜26bとはそれぞれに噛み合って前進段の変速歯車列を形成する。
【0021】
また、入力軸13には後退用の駆動歯車27aが固定され、出力軸14には後退用の従動歯車27bが回転自在に取り付けられている。入力軸13に対して平行に配置されたアイドル軸28には、後退用の駆動歯車27aと従動歯車27bとに噛み合うアイドル歯車28aが設けられており、駆動歯車27a、アイドル歯車28a、および従動歯車27bによって後退段の変速歯車列が形成されている。
【0022】
出力軸14には、第2速と第4速との変速歯車列を動力伝達状態と中立状態とに切り換える第1切換機構31と、第6速と第3速との変速歯車列を動力伝達状態と中立状態とに切り換える第2切換機構32が装着されている。さらに、出力軸14には、第5速と第1速との変速歯車列を動力伝達状態と中立状態とに切り換える第3切換機構33と、後退段の変速歯車列を動力伝達状態と中立状態とに切り換える第4切換機構34とが装着されている。これらの切換機構31〜34はシンクロメッシュ機構となっている。
【0023】
切換機構31は、第2速と第4速の2つの従動歯車22b,24bの間に配置されるとともに出力軸14に固定されるシンクロハブ31aと、これに常時噛み合うシンクロスリーブ31bとを有している。このシンクロスリーブ31bを従動歯車22bに一体形成されたスプライン22cに噛み合わせると第2速に設定され、逆に従動歯車24bに一体形成されたスプライン24cに噛み合わせると第4速に設定される。
【0024】
同様に、切換機構32は第3速と第6速の2つの従動歯車23b,26bの間に配置されるとともに出力軸14に固定されるシンクロハブ32aと、これに常時噛み合うシンクロスリーブ32bとを有している。このシンクロスリーブ32bを従動歯車23bに一体形成されたスプライン23cに噛み合わせると第3速に設定され、逆に従動歯車26bに一体形成されたスプライン26cに噛み合わせると第6速に設定される。
【0025】
また同様に、切換機構33は第1速と第5速の2つの従動歯車21b,25bの間に配置されるとともに出力軸14に固定されるシンクロハブ33aと、これに常時噛み合うシンクロスリーブ33bとを有している。このシンクロスリーブ33bを従動歯車21bに一体形成されたスプライン21cに噛み合わせると第1速に設定され、逆に従動歯車25bに一体形成されたスプライン25cに噛み合わせると第5速に設定される。
【0026】
さらに、切換機構34は後退用の従動歯車27bの隣りに配置されるとともに出力軸14に固定されるシンクロハブ34aと、これに常時噛み合うシンクロスリーブ34bとを有している。このシンクロスリーブ34bを従動歯車27bに一体形成されたスプライン27cに噛み合わせると後退段に設定され、入力軸の回転はアイドル歯車28aを介して逆転されて出力軸14に伝達される。
【0027】
このように、第2速と第4速の切り換えは切換機構31のシンクロスリーブ31bを切換移動させることによって行われ、第6速と第3速の切り換えは切換機構32のシンクロスリーブ32bを切換移動させることによって行われる。また、第5速と第1速の切り換えは切換機構33のシンクロスリーブ33bを切換移動させることによって行われ、後退段の切り換えは切換機構34のシンクロスリーブ34bを切換移動させることによって行われる。
【0028】
また、偶数の変速段が設けられる入力軸12には入力クラッチ18を介してエンジン動力が伝達され、奇数の変速段が設けられる入力軸13には入力クラッチ19を介してエンジン動力が伝達されるため、滑らかなアップシフトやダウンシフトが可能となる。たとえば、第1速から第2速にアップシフトを行う場合には、第1速と第2速とにエンジン動力を伝達する入力クラッチ18,19がそれぞれ別個に設けられるため、第1速での走行中に切換機構31により第2速の変速歯車列を動力伝達状態に切り換えることができる。このような状態のもとで、入力クラッチ19を徐々に解放するとともに入力クラッチ18を徐々に締結することにより、出力軸14に対して駆動トルクを伝達したまま変速動作を行うことができ、急激なトルク変動を抑制した滑らかな変速動作が可能となる。
【0029】
また、第2速の駆動歯車22aとクラッチハブ18aとの間には一方向クラッチ35が設けられており、一方向クラッチ35の内輪側は入力軸12に固定され、外輪側はミッションケース15に固定されている。この一方向クラッチ35は入力軸12の逆回転を規制する向きに取り付けられており、一方向クラッチ35により入力軸12の逆回転は禁止される。なお、車両を前進走行または後退走行させるため、エンジン11によって駆動される入力軸12の回転方向は、一方向クラッチ35により規制されることのない正転方向となる。
【0030】
さらに、自動変速機10には出力軸14に平行となって前輪出力軸36が組み込まれており、前輪出力軸36はセンタデファレンシャル装置37を介して出力軸14に連結されるとともに、フロントデファレンシャル装置38を介して図示しない前輪用のドライブシャフトに連結される。また、センタデファレンシャル装置37は駆動歯車39aと従動歯車39bとを介して後輪出力軸40に連結されており、後輪出力軸40は図示しないリヤデファレンシャル装置を介して図示しない後輪用のドライブシャフトに連結される。
【0031】
なお、センタデファレンシャル装置37は複合遊星歯車式であり、センタデファレンシャル装置37に組み込まれた一体型のピニオンギヤ37aを介して、前輪出力軸36と後輪出力軸40とに駆動トルクが分配され、前輪と後輪とを共に駆動することができる。また、一体型のピニオンギヤ37aの回転により前輪と後輪との回転差は差動吸収されるが、センタデファレンシャル装置37には差動制限クラッチ37bが設けられており、前輪または後輪がスリップして大きな差動回転が生じたときは、差動制限クラッチ37bが締結されて差動回転が抑制される。
【0032】
図1に示すように、自動変速機10は切換機構31〜34をそれぞれ切り換えるため4つのシフトアクチュエータ41〜44を有している。第1〜第3シフトアクチュエータ41〜43は、切換機構31〜33を動力伝達状態に切り換えるため、シンクロスリーブ31b〜33bをスプライン22c,26c,25cに噛み合わせて第2速、第6速、第5速に設定する位置と、スプライン24c,23c,21cに噛み合わせて第4速、第3速、第1速に設定する位置とに駆動する。また、切換機構31〜33を中立状態に切り換えるため、これらのスプライン21c〜26cに噛み合わない位置に駆動する。このように、シフトアクチュエータ41〜43は3つの切換位置に駆動する。
【0033】
また、第4シフトアクチュエータ44は、切換機構34を動力伝達状態に切り換えるため、シンクロスリーブ34bをスプライン27cに噛み合わせて後退段に設定する位置と、切換機構34を中立状態に切り換えるため、スプライン27cに噛み合わない位置とに駆動する。このように、シフトアクチュエータ44は2つの切換位置に駆動する。
【0034】
図2は自動変速機の変速制御系の一部を示すブロック図である。図2に示すように、入力クラッチ18,19やシフトアクチュエータ41〜44は、図示しないオイルポンプおよび所定のライン圧に調圧する調圧機器などを有するライン圧供給部45からのライン圧によって駆動される。入力クラッチ18にライン圧を供給する油路46には、この油路46を連通状態と遮断状態とに切り換える電磁弁SOL1が設けられており、電磁弁SOL1に対する通電制御により入力クラッチ18が締結制御される。同様に、入力クラッチ19にライン圧を供給する油路47には電磁弁SOL2が設けられ、電磁弁SOL2に対する通電制御により入力クラッチ19が締結制御される。
【0035】
シフトアクチュエータ41〜43の各作動ポートにライン圧を供給する油路48〜53には、それぞれの油路48〜53を連通状態と遮断状態とに切り換える電磁弁SOL3〜SOL8が設けられており、シフトアクチュエータ44の各作動ポートにライン圧を供給する油路54,55の一方には、油路55を連通状態と遮断状態とに切り換える電磁弁SOL9が設けられている。
【0036】
第2速または第4速の変速歯車列を動力伝達状態に設定する場合には、電磁弁SOL3,SOL4に対して通電制御を行うことにより、シフトアクチュエータ41を第2速位置または第4速位置に駆動する。同様に、第6速または第3速に設定する場合には電磁弁SOL5,SOL6に対して通電制御を行い、第5速または第1速に設定する場合には電磁弁SOL7,SOL8に対して通電制御を行い、後退段に設定する場合には電磁弁SOL9に対して通電制御を行うことになる。なお、シフトアクチュエータ44は2位置に切り換えられるため、シフトアクチュエータ44に対しては1つの電磁弁SOL9のみが設けられている。
【0037】
変速動作を実行するため各電磁弁SOL1〜SOL9に対して行われる通電と通電解除とは、電子制御ユニット(ECU60)によって制御される。ECU60にはインヒビタスイッチ61、スロットル開度センサ62、エンジン回転数センサ63、アクセルスイッチ64、ブレーキスイッチ65、車速センサ66等が接続されており、これらスイッチやセンサからの信号がECU60に入力される。
【0038】
ECU60はインヒビタスイッチ61からの信号によりセレクトレバーの位置を検出し、スロットル開度センサ62からの信号により電子制御スロットルの開閉状況を検出し、エンジン回転数センサ63からの信号によりエンジン回転数を検出する。また、ECU60はアクセルスイッチ64からの信号によりアクセルぺダルの操作状況を検出し、ブレーキスイッチ65からの信号によりブレーキぺダルの操作状況を検出し、車速センサ66からの信号により車両の走行速度を検出する。ECU60はこれらの検出信号から車両の走行状況を総合的に把握するとともに、予め設定された変速特性マップに従って各電磁弁SOL1〜SOL9に対して通電制御を行うことにより自動変速制御を実行する。
【0039】
以下、自動変速制御について説明する。まず、前進走行を開始する場合には、シフトアクチュエータ43により第1速を動力伝達状態に切り換えるとともに、シフトアクチュエータ41,42,44により他の変速段を中立状態に切り換える。次いで、第1速の駆動歯車21aが固定される入力軸13にエンジン動力を伝達するため入力クラッチ19が締結状態に切り換えられ、エンジン動力は入力軸13から第1速の変速歯車列を介して出力軸14に伝達されて車両は第1速による前進走行を開始する。
【0040】
第1速による前進走行を開始した後には、車両の走行状況に応じて適宜アップシフトが行われる。アップシフトを行う際には、第1速による走行中にシフトアクチュエータ41によって第2速が動力伝達状態に切り換えられる。次いで、入力クラッチ18,19に対してライン圧を供給制御することにより、入力クラッチ19が徐々に解放状態に切り換えられる一方、入力クラッチ18が徐々に締結状態に切り換えられ、車両は第2速による前進走行を開始する。
【0041】
同様に、第3速以降のアップシフトについても、変速歯車列が予め動力伝達状態に切り換えられた状態のもとで、2つの入力クラッチ18,19が交互に締結状態に切り換えられ、変速ショックが発生することのない滑らかな変速動作が実行される。なお、アップシフトに限られずダウンシフトについても同様の自動変速制御が実行される。
【0042】
続いて、後退走行を行う場合について説明する。後退走行を行う場合には、シフトアクチュエータ41〜43により前進段を中立状態に切り換えるとともに、シフトアクチュエータ44により後退段を動力伝達状態に切り換える。次いで、後退用の駆動歯車27aを備える入力軸13にエンジン動力を伝達するため入力クラッチ19が締結状態に切り換えられ、エンジン動力は入力軸13から後退段の変速歯車列を介して出力軸14に伝達されて車両は後退段による後退走行を開始する。
【0043】
次いで、車両がアイドリング状態で停止した場合に、エンジン11の負荷を軽減するため自動変速機10内を中立状態に切り換える自動ニュートラル制御について説明する。図3は自動変速機10内を中立状態に切り換える自動ニュートラル実行処理の手順を示すフローチャートであり、図4は自動変速機10内を動力伝達状態に切り換える自動ニュートラル解除処理の手順を示すフローチャートである。
【0044】
図3に示すように、ステップS1〜S4では自動変速機10内を中立状態に切り換えるための移行条件が判定される。まず、ステップS1では、インヒビタスイッチ61からの入力信号に基づいて、現在の走行レンジが入力クラッチ18,19のいずれかが締結状態となるドライブレンジ(Dレンジ)であるか否かが判定される。ステップS1において、Dレンジであると判定された場合には、ステップS2に進みアクセルスイッチ64からの入力信号が判定される。ステップS2において、アクセルスイッチ64がOFFつまりアクセルペダルが踏み込まれていないと判定された場合には、ステップS3に進みブレーキスイッチ65からの入力信号が判定される。ステップS3において、ブレーキスイッチ65がONつまりブレーキペダルが踏み込まれていると判定された場合には、ステップS4に進み、車速センサ66からの入力信号に基づいて車両の停車状態が判定される。そして、ステップS4において、所定時間を超えて車両が停止状態にあると判定された場合には、続くステップS5以降において自動変速機10内が中立状態に切り換えられる。なお、ステップS1〜S4で判定される各移行条件が全て満たされない場合には、再びステップS1から移行条件が判定される。
【0045】
ステップS1〜S4において全ての移行条件が満たされると、ステップS5に進み、ECU60から電磁弁SOL3〜SOL9に対して通電制御が行われる。この通電制御により、シフトアクチュエータ41,43は第1速と第2速との変速歯車列を動力伝達状態に切り換え、シフトアクチュエータ42,44は第3速〜第6速と後退段の変速歯車列を中立状態に切り換える。続くステップS6では、電磁弁SOL1,SOL2のいずれか一方に対して通電制御が行われ、入力クラッチ18,19のうち締結状態であった一方の入力クラッチが解放状態に切り換えられる。
【0046】
なお、通常、車両が停止状態となる際には、第1速に向けてダウンシフトが実行されるとともに第1速で停止状態となるため、ステップS5においては動力伝達状態にある第1速と第2速との変速歯車列が共に保持され、ステップS6においては第1速の変速歯車列に動力を伝達していた入力クラッチ19が解放状態に切り換えられることになる。
【0047】
このように、Dレンジが保持された状態で所定時間を超えて車両が停止した場合、たとえば、交差点での信号待ちで車両が停止した場合には、エンジン11から入力軸12,13に動力を伝達する入力クラッチ18,19が共に解放されることになる。つまり、自動変速機10が中立状態に切り換えられるため、エンジン11の負荷軽減により燃料消費量を軽減することができる。また、アイドリング状態でのエンジン回転数を抑制することができ、入力軸12,13の回転を停止させることができるため、エンジン11や自動変速機10の振動や騒音を抑制することができる。なお、停車時間に基づいて車両の停止状態を判定するため、車両の一時停止など停車時間が短時間であり直ちに走行を再開する場合には、自動ニュートラル制御は実行されない。
【0048】
続いて、車両を停止状態から再発進させるために自動変速機10内を動力伝達状態に切り換える手順について、図4のフローチャートに従って説明する。図4に示すように、ステップS11,S13,S14では自動変速機10内を中立状態から動力伝達状態に切り換えるための復帰条件が判定される。
【0049】
まずステップS11では、アクセルスイッチ64からの入力信号が判定される。ステップS11において、アクセルスイッチ64がONつまりアクセルペダルが踏み込まれている場合には、ステップS12に進み、入力クラッチ19が締結されて第1速での前進走行が開始される。
【0050】
ステップS11において、アクセルペダルが踏み込まれていないと判定された場合には、続くステップS13でブレーキスイッチ65からの入力信号が判定される。ステップS13において、ブレーキスイッチ65がOFFつまりブレーキペダルが離された場合には、ステップS12に進み、前述と同様に入力クラッチ19が締結される。
【0051】
また、ステップS13において、ブレーキペダルが踏み込まれていると判定された場合には、続くステップS14で車速センサ66からの入力信号に基づいて車両の移動状況が判定される。ステップS14において、車両が移動していると判定された場合には、ステップS12に進み、前述と同様に入力クラッチ19が締結される。
【0052】
このように、ステップS11〜S13で判定される復帰条件のいずれかが満たされた場合には、入力クラッチ19が締結されて自動変速機10内が動力伝達状態となり車両の再発進が可能となる。このとき、一方向クラッチ35によって入力軸12の逆回転は規制されるため、入力クラッチ19が締結されて車両が前進走行を開始するまでの間、車両に後退方向の推力が加えられた場合であっても、車両の不要な後退移動を回避することができる。つまり、後退回転する駆動輪から出力軸14と前進用の変速歯車列とを介して入力軸12に伝達される動力は、入力軸12を逆回転させることになるが、この入力軸12の逆回転は一方向クラッチ35により規制されるため、車両の後退移動は規制されることになる。
【0053】
特に、上り勾配路の途中で車両を再発進させる場合には、車両の後退方向に重力が作用することになるが、一方向クラッチ35によって確実に車両の後退移動を規制することができるため、上り勾配路であっても、安全に自動ニュートラル制御を実行することができ、車両の燃費性能を向上させるとともに振動や騒音を抑制することができる。
【0054】
また、予めステップS5において第1速が動力伝達状態に切り換えられているため、入力クラッチ19を締結するだけで車両の再発進が可能となり、再発進時の応答性を向上させることができる。さらに、車両の後退移動を規制する際には、低速段側の変速歯車列を介して入力軸12に動力が伝達されるため、一方向クラッチ35に加えられるトルクを小さくすることができる。これにより、小型の一方向クラッチ35を設けることができ、自動変速機10の大型化を抑制することができる。
【0055】
なお、図示する場合には、第1入力軸12に一方向クラッチ35を設け、第2速を動力伝達状態に切り換えることによって車両の後退移動を規制しているが、第2入力軸13に一方向クラッチを設け、第1速の変速歯車列を動力伝達状態に切り換えることによって車両の後退移動を規制しても良い。また、入力軸12,13のそれぞれに一方向クラッチを設けるようにしても良く、一方向クラッチを備えた入力軸に出力軸14からの動力を伝達する変速歯車列であれば、車両の重量、変速歯車列のギヤ比、一方向クラッチの耐トルク容量などを考慮した上で、第1速や第2速以外の変速歯車列を用いて車両の後退移動を規制しても良いことは言うまでもない。
【0056】
図5は本発明の他の実施の形態である自動変速機70を示すスケルトン図である。なお、図5においては図1の部材と同様の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。この自動変速機70はエンジン11に連結される入力軸71と、これに平行であって駆動輪に連結される中空の出力軸72とを有している。入力軸71と出力軸72は車両の進行方向を向いてミッションケース15内に組み込まれており、この自動変速機70は縦置きに配置されて4輪駆動用の車両に適用される。
【0057】
トルクコンバータ16のタービン軸16aと入力軸71との間には、入力軸71にエンジン動力を伝達する締結状態と、エンジン動力を遮断する解放状態とに切り換えられる湿式多板式の入力クラッチ73が設けられている。入力クラッチ73は入力軸71の端部に固定されるクラッチハブ73aと、タービン軸16aに固定されるクラッチドラム73bとを有している。クラッチハブ73aとクラッチドラム73bとにそれぞれ交互に設けられた複数枚のクラッチディスク73cを押圧することにより、入力クラッチ73は締結状態に切り換えられる一方、押圧を解放することにより入力クラッチ73は解放状態に切り換えられる。
【0058】
入力軸71には第1速、第2速の駆動歯車81a,82aが固定され、第3速〜第5速の駆動歯車83a〜85aが回転自在に取り付けられている。一方、出力軸72には第1速、第2速の従動歯車81b,82bが回転自在に取り付けられ、第3速〜第5速の従動歯車83b〜85bが固定されている。これらの駆動歯車81a〜85aと従動歯車81b〜85bとはそれぞれに噛み合って前進段の変速歯車列を形成する。
【0059】
出力軸72には、第1速と第2速の変速歯車列を動力伝達状態と中立状態とに切り換える第1切換機構91が装着されている。また、入力軸71には、第3速と第4速の変速歯車列を動力伝達状態と中立状態とに切り換える第2切換機構92と、第5速の変速歯車列を動力伝達状態と中立状態とに切り換える第3切換機構93とが装着されている。これらの切換機構91〜93はシンクロメッシュ機構となっている。
【0060】
切換機構91は、第1速と第2速の2つの従動歯車81b,82bの間に配置されるとともに出力軸14に固定されるシンクロハブ91aと、これに常時噛み合うシンクロスリーブ91bとを有している。このシンクロスリーブ91bを従動歯車81bに一体形成されたスプライン81cに噛み合わせると第1速に設定され、逆に従動歯車82bに一体形成されたスプライン82cに噛み合わせると第2速に設定される。他の切換機構92,93も切換機構91と同様の構造を備えており、入力軸に固定されるシンクロハブ92a,93aと、シンクロハブ92a,93aのそれぞれに常時噛み合うシンクロスリーブ92b,93bとを有している。これらのシンクロスリーブ92b,93bを駆動歯車83a〜85aのそれぞれに一体形成されたスプライン83c〜85cに噛み合わせることにより、第3速〜第5速に設定される。なお、これらの切換機構91〜93は、図示しないシフトアクチュエータによって切換駆動される。
【0061】
また、入力軸71には後退用の駆動歯車86aが固定され、切換機構91のシンクロスリーブ91bには後退用の従動歯車86bが固定されている。入力軸71に対して平行に配置されたアイドル軸74には、後退用の駆動歯車86aと従動歯車86bとに噛み合う位置と噛み合いを外す位置とに移動自在となるアイドル歯車86cが装着されている。したがって、シンクロスリーブ91bを中立位置に作動させた状態で、図示しないシフトアクチュエータによりアイドル歯車86cを駆動歯車86aと従動歯車86bとに噛み合わせると、駆動歯車86a、従動歯車86bおよびアイドル歯車86cからなる後退段の変速歯車列を介して入力軸71の回転は逆転されて出力軸72に伝達される。
【0062】
さらに、入力軸71には駆動歯車87aが回転自在に取り付けられており、出力軸72には駆動歯車87aに常時噛み合う従動歯車87bが固定されている。入力軸71にはバイパスクラッチ75が設けられており、バイパスクラッチ75は入力軸71に固定されるクラッチハブ75aと駆動歯車87aに固定されるクラッチドラム75bとを有している。クラッチハブ75aとクラッチドラム75bとにそれぞれ交互に設けられる複数枚のクラッチディスク75cを押圧することにより、バイパスクラッチ75は締結状態に切り換えられる一方、押圧を解放することによりバイパスクラッチ75は解放状態に切り換えられる。なお、駆動歯車87aと従動歯車87bとのギヤ比は、第3速と第4速との間のギヤ比に設定されており、バイパスクラッチ75を締結状態に切り換えることによって第3速と第4速との中間ギヤ比相当の駆動トルクを出力軸72に伝達することができる。
【0063】
第1速の駆動歯車81aとクラッチハブ73aとの間には一方向クラッチ76が設けられており、一方向クラッチ76の内輪側は入力軸71に固定され、外輪側はミッションケース15に固定されている。この一方向クラッチ76は入力軸71の逆回転を規制する向きに取り付けられており、一方向クラッチ76により入力軸71の逆回転は禁止される。なお、車両を前進走行または後退走行させるため、エンジン11によって駆動される入力軸71の回転方向は、一方向クラッチ76により規制されることのない正転方向となる。
【0064】
また、中空の出力軸72には前輪出力軸77が組み込まれており、前輪出力軸77は複合遊星歯車式のセンタデファレンシャル装置78を介して出力軸72に連結されるとともに、フロントデファレンシャル装置38を介して図示しない前輪用のドライブシャフトに連結される。また、センタデファレンシャル装置78は駆動歯車39aと従動歯車39bとを介して後輪出力軸40に連結されており、後輪出力軸40は図示しないリヤデファレンシャル装置を介して図示しない後輪用のドライブシャフトに連結される。なお、センタデファレンシャル装置78には差動制限クラッチ78aが設けられており、前輪または後輪がスリップして一体型のピニオンギヤ78bに大きな差動回転が生じたときは、差動制限クラッチ78aが締結されて差動回転が抑制される。
【0065】
以下、自動変速制御について説明する。まず、前進走行を開始する場合には、第1速を動力伝達状態に切り換えるとともに、他の変速段を中立状態に切り換える。次いで、入力クラッチ73が締結状態に切り換えられ、エンジン動力は入力軸71から第1速の変速歯車列を介して出力軸72に伝達されて車両は第1速による前進走行を開始する。
【0066】
第1速による前進走行を開始した後には、車両の走行状況に応じて適宜アップシフトが行われる。アップシフトを行う際には、入力クラッチ73の締結状態を維持したままバイパスクラッチ75は徐々に締結され始める。これにより、第1速の変速歯車列を介して出力軸72に伝達されていた動力が徐々に低下する一方、バイパスクラッチ75を介して出力軸72に伝達される動力が徐々に高められる。次いで、第1速の変速歯車列を介して伝達される動力が低下した状態のもとで、切換機構91が中立状態に切り換えられた後、バイパスクラッチ75の締結力は更に高められる。
【0067】
このとき、バイパスクラッチ75は第3速と第4速との中間ギヤ比相当の駆動トルクで動力を伝達することができるため、第1速での走行で上昇していたエンジン回転数は、上記の中間ギヤ比相当に向けて低下する。そして、エンジン回転数が第2速相当の回転数に低下した時点で、切換機構91が第2速側に切り換えられるとともに、バイパスクラッチ75は徐々に解放される。
【0068】
また、第2速から第1速にシフトダウンする場合にも、同様にバイパスクラッチ75が締結される。これにより、変速中に駆動トルクの落ち込みが発生し得る切換機構91の中立状態において、バイパスクラッチ75を介して駆動トルクを出力軸72に伝達することができ、良好なシフトフィーリングを得ることができる。なお、バイパスクラッチ75の締結は駆動トルクの差が生じ易い低速段に特に有効であるが、第1速や第2速以外の変速段に変速する際にもバイパスクラッチ75を締結することによって、駆動トルクの落ち込みが軽減される。
【0069】
なお、後退走行を行う場合には、入力クラッチ73が解放された状態のもとで、前進段の変速歯車列を中立状態に切り換えるとともに、アイドル歯車86cを駆動歯車86aと従動歯車86bとに噛み合わせる。次いで、入力クラッチ73を締結することにより車両は後退走行を開始する。
【0070】
また、車両がアイドリング状態で停止した場合には、前述の自動変速機10と同様に、エンジン11の負荷を軽減するため自動変速機70内を中立状態に切り換える自動ニュートラル制御が実行される。つまり、Dレンジに設定された状態で車両が所定時間を超えて停止した場合、たとえば、交差点での信号待ちで車両が停止した場合には、第1速を動力伝達状態に切り換えた上でエンジン11から入力軸71に動力を伝達する入力クラッチ73が解放されることになる。このため、エンジン11の負荷軽減により燃料消費量を低減することができ、エンジン回転数の抑制や入力軸71の回転停止により振動や騒音を抑制することができる。なお、この場合にも車両の一旦停止など停車時間が短時間であり直ちに走行を開始する場合には、自動ニュートラル制御は実行されない。
【0071】
続いて、車両を停止状態から再発進させる場合にも、前述の自動変速機10と同様に、自動変速機70内が動力伝達状態に切り換えられる。つまり、運転者によりアクセルペダルが踏み込まれた場合、ブレーキペダルが離された場合、そして車両が移動した場合には、入力クラッチ73が再び締結状態に切り換えられ車両の再発進が可能となる。このとき、一方向クラッチ76によって入力軸71の逆回転は規制されるため、入力クラッチ73が締結されて車両が前進走行を開始するまでの間、車両に後退方向の推力が加えられた場合であっても、車両の不要な後退移動を回避することができる。特に、上り勾配路の途中で車両を再発進させる場合には、車両の後退方向に重力が作用することになるが、一方向クラッチ76によって確実に車両の後退移動を規制することができるため、上り勾配路であっても、安全に自動ニュートラル制御を実行することができ、車両の燃費性能を向上させるとともに振動や騒音を抑制することができる。
【0072】
これまで説明したように、入力軸12,71とミッションケース15との間に入力軸の逆回転を規制する一方向クラッチ35,76を設けるようにしたので、入力クラッチ18,19,73を解放状態に切り換えた場合であっても、前進用の変速歯車列を動力伝達状態に切り換えることにより、車両の後退移動を規制することができる。これにより、停車時には路面勾配に拘わらず入力クラッチ18,19,73を解放することができ、車両の燃費性能を向上させるととともに振動や騒音を抑制することができる。
【0073】
また、予め前進段を動力伝達状態に切り換えておくようにしたので、入力クラッチ19,76を締結するだけで車両の走行が可能となり、再発進時の応答性を向上させることができる。さらに、車両の後退移動を規制する際には、低速段側の変速歯車列を介して入力軸12,71に動力が伝達されるため、一方向クラッチ35,73に加えられるトルクを小さくすることができる。これにより、小型の一方向クラッチ35,73を設けることができ、自動変速機10,70の大型化を抑制することができる。
【0074】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。たとえば、図1に示す自動変速機10にあっては2つの入力軸12,13を備え、図5に示す自動変速機70にあっては1つの入力軸71を備えているが、3つ以上の入力軸を備える自動変速機に本発明を適用しても良い。
【0075】
また、一方向クラッチ35,76としては、内輪と外輪との間にスプラグとしての繭形こま、ボール、ローラ等を備えたスプラグ式の一方向クラッチを設けるようにしても良く、他の一方向クラッチであっても適用することができる。
【0076】
さらに、変速歯車列の切換機構31〜34,91〜93としては、シンクロメッシュ機構が使用されているが、ドッククラッチ等を用いるようにしても良い。図示する自動変速機10は前進6段であり、自動変速機70は前進5段であるが、変速歯車列は任意の段数に設定することができる。また、図示する自動変速機10,70は4輪駆動車に適用されるが、FF車やFR車にも本発明を適用することができ、自動変速機10,70はエンジンルームに縦置きとしても良く、横置きとしても良い。
【0077】
【発明の効果】
本発明によれば、入力軸とミッションケースとの間に入力軸の逆回転を規制する一方向クラッチを設けるようにしたので、変速歯車列を動力伝達状態に切り換えることにより車両の後退移動を防止することができる。これにより、上り勾配路であっても停車時には安全に入力クラッチを解放することができ、車両の燃費性能を向上させるとともに振動や騒音を抑制することができる。
【0078】
また、予め変速歯車列を動力伝達状態に切り換えるため、入力クラッチを締結するだけで車両を再発進させることができ、再発進時の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態である自動変速機を示すスケルトン図である。
【図2】自動変速機の変速制御系の一部を示すブロック図である。
【図3】自動ニュートラル実行処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】自動ニュートラル解除処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施の形態である自動変速機を示すスケルトン図である。
【符号の説明】
10 自動変速機
11 エンジン
12 第1入力軸(入力軸)
13 第2入力軸(入力軸)
14 出力軸
15 ミッションケース
18 第1入力クラッチ(入力クラッチ)
19 第2入力クラッチ(入力クラッチ)
21a〜27a 駆動歯車
21b〜27b 従動歯車
31 第1切換機構(切換機構)
32 第2切換機構(切換機構)
33 第3切換機構(切換機構)
34 第4切換機構(切換機構)
35 一方向クラッチ
70 自動変速機
71 入力軸
72 出力軸
73 入力クラッチ
76 一方向クラッチ
81a〜87a 駆動歯車
81b〜87b 従動歯車
91 第1切換機構(切換機構)
92 第2切換機構(切換機構)
93 第3切換機構(切換機構)
Claims (3)
- 複数の駆動歯車が設けられる入力軸と、前記駆動歯車に噛み合う複数の従動歯車が設けられる出力軸と、前記入力軸および出力軸を回転自在に収容するミッションケースとを備える自動変速機であって、
エンジンと前記入力軸との間に設けられ、前記入力軸に動力を伝達する締結状態と遮断する解放状態とに切り換えられる入力クラッチと、
前記駆動歯車と前記従動歯車とにより形成される変速歯車列を動力伝達状態と中立状態とに切り換える切換機構と、
前記入力軸と前記ミッションケースとの間に設けられ、前記入力軸の逆回転を規制する一方向クラッチとを有し、
停車時には前記変速歯車列を動力伝達状態に切り換えることにより前記一方向クラッチを介して車両の後退移動を規制した状態のもとで、前記入力クラッチを解放することを特徴とする自動変速機。 - 請求項1記載の自動変速機において、停車時間が所定時間を経過した後に前記入力クラッチを解放することを特徴とする自動変速機。
- 請求項1または2記載の自動変速機において、
前記複数の従動歯車に噛み合う駆動歯車が設けられる第1入力軸と、
前記複数の従動歯車に噛み合う駆動歯車が設けられる第2入力軸と、
前記エンジンと前記第1入力軸との間に設けられ、前記第1入力軸に動力を伝達する締結状態と遮断する解放状態とに切り換えられる第1入力クラッチと、
前記エンジンと前記第2入力軸との間に設けられ、前記第2入力軸に動力を伝達する締結状態と遮断する解放状態とに切り換えられる第2入力クラッチとを有し、
前記一方向クラッチを前記第1入力軸と前記第2入力軸との少なくともいずれか一方に設けることを特徴とする自動変速機。
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