JP4343415B2 - 車両の自動変速装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にトラクタ等の大型車両に適用される車両の自動変速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近ではドライバの負担を軽減するため、トラクタやトラック等の大型車両においても自動変速装置を採用する例が多く見られる。この場合、車速に応じた最適ギヤ段がマップに従って定められ、車両の加速・減速に合わせて自動的にシフトアップ・シフトダウンがなされる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、かかる自動変速装置では以下のような問題が起こり得る。即ち、登坂加速走行中にシフトアップしたとき、シフトアップの過程でクラッチが切られるので車両が失速する。するとシフトアップしたにも拘らず、マップ上では1段低いギヤ段、つまり元のギヤ段に戻すべきという変速要求が出され、シフトアップ直後元のギヤ段にシフトダウンしてしまうという所謂シフトビジーの問題が発生する。この後、元のギヤ段に戻して再加速したとしても、次のシフトアップでまた失速して再度シフトダウンを繰り返すというような問題が生ずる。
【0004】
そこで、本発明の目的は、このようなシフトビジーの問題を解消することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、多段変速機と、該変速機の変速を制御する信号を出力するコントロールユニットと、該コントロールユニットの信号に基づいて上記変速機の変速を実行するアクチュエータと、アクセル開度を検知するアクセル開度センサと、上記変速機の出力軸回転数を検知する出力軸回転センサと、アクセル開度と上記変速機の出力軸回転数とから目標変速ギヤ段を決定するマップとを備え、上記コントロールユニットが上記アクセル開度センサで検知したアクセル開度と上記出力軸回転センサで検知した上記変速機の出力軸回転数とから上記マップに従って目標変速ギヤ段を決定すると共に目標変速ギヤ段に応じた信号を上記アクチュエータに送り、上記アクチュエータが目標変速ギヤ段に応じた信号に基づいて上記変速機の自動変速を実行する自動変速モードを有した自動変速装置であって、上記コントロールユニットは、上記自動変速モード中、シフトアップ後所定時間を超える前に、上記マップから所定段数内のシフトダウンが必要と判断された場合は上記シフトアップ後の変速ギヤ段を保持し、シフトアップ後、上記所定時間を超える前であっても、上記マップから上記所定段数を越えたシフトダウンが必要と判断された場合は上記マップに基づいて決定される目標変速ギヤ段に応じた信号を上記アクチュエータに送り、シフトダウンを実行し、該シフトダウンの実行後、上記所定時間を超えるまで、上記マップから所定段数内の変速が必要と判断された場合は、上記シフトダウン実行後の変速ギヤ段を保持し、上記所定時間を超えると、上記マップに基づいて決定される目標変速ギヤ段への変速を実行するものである。
【0006】
ここで、上記所定段数内のシフトダウンが1段のシフトダウンであるのが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0009】
図2に本実施形態に係る車両の自動変速装置を示す。ここでは車両がトレーラを牽引するトラクタであり、エンジンがディーゼルエンジンである。図示するように、エンジン1にクラッチ2を介して変速機3が取り付けられ、変速機3の出力軸4(図3参照、アウトプットシャフトともいう)が図示しないプロペラシャフトに連結されて後輪(図示せず)を駆動するようになっている。エンジン1はエンジンコントロールユニット(ECU)6によって電子制御される。即ち、ECU6は、エンジン回転センサ7とアクセル開度センサ8との出力から現在のエンジン回転速度及びエンジン負荷を読取り、主にこれらに基づいて燃料噴射ポンプ1aを制御し、燃料噴射時期及び燃料噴射量を制御する。
【0010】
図3に示すように、エンジンのクランク軸にフライホイール1bが取り付けられ、フライホイール1bの外周にリングギヤ1cが形成され、リングギヤ1cの歯が通過する度にエンジン回転センサ7がパルスを出力し、ECU6が単位時間当たりのパルス数をカウントしてエンジン回転数を算出する。
【0011】
図2に示すように、ここではクラッチ2と変速機3とがトランスミッションコントロールユニット(TMCU)9の制御信号に基づいて自動制御される。ECU6とTMCU9とは互いにバスケーブル等を介して接続され、相互に連絡可能である。
【0012】
図2、図3、図4に示すように、クラッチ2は機械式摩擦クラッチであり、入力側をなすフライホイール1b、出力側をなすドリブンプレート2a、及びドリブンプレート2aをフライホイール1bに摩擦接触或いは離反させるプレッシャプレート2bから構成される。そしてクラッチ2は、クラッチブースタ10によりプレッシャプレート2bを軸方向に操作し、基本的には自動断接され、ドライバの負担を軽減し得るものとなっている。一方、微低速バックに際しての微妙なクラッチワークや、非常時のクラッチ急断を可能とするため、ここではクラッチペダル11によるマニュアル断接も可能となっている。所謂セレクティブオートクラッチの構成である。クラッチ自体のストローク(即ちプレッシャプレート2bの位置)を検知するクラッチストロークセンサ14と、クラッチペダル11の踏込みストロークを検知するクラッチペダルストロークセンサ16とが設けられ、それぞれTMCU9に接続される。
【0013】
図4に分かりやすく示すが、クラッチブースタ10は実線で示す二系統の空圧通路a,bを通じてエアタンク5に接続され、エアタンク5から供給される空圧で作動する。一方の通路aがクラッチ自動断接用、他方の通路bがクラッチマニュアル断接用である。一方の通路aが二股状に分岐され、そのうちの一方に自動断接用の電磁弁MVC1,MVC2が直列に設けられ、他方に非常用の電磁弁MVCEが設けられる。分岐合流部にダブルチェックバルブDCV1が設けられる。他方の通路bに、クラッチブースタ10に付設される油圧作動弁12が設けられる。両通路a,bの合流部にもダブルチェックバルブDCV2が設けられる。ダブルチェックバルブDCV1,DCV2は差圧作動型の三方弁である。
【0014】
上記電磁弁MVC1,MVC2,MVCEはTMCU9によりON/OFF制御され、ONのとき上流側を下流側に連通し、OFF のとき上流側を遮断して下流側を大気開放する。まず自動側を説明すると、電磁弁MVC1は単にイグニッションキーのON/OFFに合わせてON/OFFされるだけである。イグニッションキーOFF 、つまり停車中はOFF となり、エアタンク5からの空圧を遮断する。電磁弁MVC2は比例制御弁で、供給又は排出エア量を自由にコントロールできる。これはクラッチの断接速度制御を行うためである。電磁弁MVC1,MVC2がともにONだとエアタンク5の空圧がダブルチェックバルブDCV1,DCV2をそれぞれ切り換えてクラッチブースタ10に供給される。これによりクラッチが分断される。クラッチを接続するときはMVC2のみがOFF され、これによりクラッチブースタ10の空圧がMVC2から排出されてクラッチが接続される。
【0015】
ところでもし仮にクラッチ分断中に電磁弁MVC1又はMVC2に異常が生じ、いずれかがOFF となると、ドライバの意思に反してクラッチが急接されてしまう。そこでこのような異常がTMCU9の異常診断回路で検知されたら、即座に電磁弁MVCEをONする。すると電磁弁MVCEを通過した空圧がダブルチェックバルブDCV1を逆に切り換えてクラッチブースタ10に供給され、クラッチ分断状態が維持され、クラッチ急接が防止される。
【0016】
次にマニュアル側を説明する。クラッチペダル11の踏込み・戻し操作に応じてマスタシリンダ13から油圧が給排され、この油圧が破線で示す油圧通路13aを介して油圧作動弁12に供給される。これによって油圧作動弁12が開閉され、クラッチブースタ10への空圧の給排が行われ、クラッチ2のマニュアル断接が実行される。油圧作動弁12が開くと、これを通過した空圧がダブルチェックバルブDCV2を切り換えてクラッチブースタ10に至る。なお、クラッチの自動断接とマニュアル断接とが干渉した場合はマニュアル断接を優先させるようになっている。
【0017】
図3に詳細に示すように、変速機3は基本的に常時噛み合い式のいわゆる多段変速機で、前進16段、後進2段に変速可能である。変速機3は入力側と出力側とにそれぞれ副変速機としてのスプリッタ17及びレンジギヤ19を備え、これらの間に主変速機としてのメインギヤ18を備えている。そして、入力軸15に伝達されてきたエンジン動力をスプリッタ17、メインギヤ18、レンジギヤ19へと順に送って出力軸4に出力する。
【0018】
変速機3を自動変速すべくギヤシフトユニットGSUが設けられ、これはスプリッタ17、メインギヤ18、レンジギヤ19それぞれの変速を担当するスプリッタアクチュエータ20、メインアクチュエータ21及びレンジアクチュエータ22から構成される。これらアクチュエータもクラッチブースタ10同様空圧作動され、TMCU9によって制御される。各ギヤ17,18,19の現在ポジションはギヤポジションスイッチ23(図2参照)で検知される。カウンタシャフト32の回転速度がカウンタシャフト回転センサ26で検知され、出力軸4の回転速度が出力軸回転センサ28で検知される。これら検知信号はTMCU9に送られる。
【0019】
この自動変速装置では通常の自動変速モードの他、マニュアルモードが設定され、ドライバのシフトチェンジ操作に基づくマニュアル変速が可能である。この場合、図2に示すように、クラッチ2の断接制御及び変速機3の変速制御は運転席に設けられたシフトレバー装置29からの変速指示信号を合図に行われる。即ち、ドライバが、シフトレバー装置29のシフトレバー29aをシフト操作すると、シフトレバー装置29に内蔵されたシフトスイッチが作動し、変速指示信号がTMCU9に送られ、これを基にTMCU9はクラッチブースタ10、スプリッタアクチュエータ20、メインアクチュエータ21及びレンジアクチュエータ22を適宜作動させ、一連の変速操作(クラッチ断→ギヤ抜き→ギヤ入れ→クラッチ接)を実行する。そしてTMCU9は現在のシフト段をモニター31に表示する。
【0020】
シフトレバー装置29において、Rはリバース、Nはニュートラル、Dはドライブ、UPはシフトアップ、DOWNはシフトダウンをそれぞれ意味する。シフトスイッチはこれら各ポジションに対応した変速指示信号を出力する。また運転席に、変速モードを自動又はマニュアルに切り換えるためのモードスイッチ24と、変速を1段ずつ行うか(通常モード)、所定段数飛ばしで行うか(スキップモード)を切り換えるためのスキップスイッチ25とが設けられる。これらスイッチは手動スイッチである。
【0021】
自動変速モードのとき、シフトレバー29aをDレンジに入れておけば車速に応じて自動的に変速が行われる。またこの自動変速モードでも、ドライバがシフトレバー29aをUP又はDOWNに操作すれば、マニュアルでのシフトアップ又はシフトダウンが可能である。この自動変速モードにおいて、スキップスイッチ25がOFF (通常モード)なら変速は1段ずつ行われる。これはトレーラ牽引時等、積載荷重が比較的大きいときに有効である。またスキップスイッチ25がON(スキップモード)なら変速は所定段数飛ばし、ここでは1段飛ばしで行われる。これはトレーラを牽引してないときや荷が軽いときなどに有効である。
【0022】
一方、マニュアル変速モードのときは、変速は完全にドライバの意思に従う。シフトレバー29aがDレンジのときは変速は行われず、現在ギヤが保持され、ドライバの積極的な意思でシフトレバー29aをUP又はDOWNに操作したときのみ、シフトアップ又はシフトダウンが可能である。このときも前記同様、スキップスイッチ25がOFF なら変速は1段ずつ行われ、スキップスイッチ25がONなら変速は1段飛ばしで行われる。このモードではDレンジは現ギヤ段を保持するH(ホールド)レンジとなる。
【0023】
なお、運転席に非常用変速スイッチ27が設けられ、GSUの電磁弁等が故障したときはスイッチ27の手動切換により変速できるようになっている。
【0024】
図3に示すように、変速機3にあっては、入力軸15、メインシャフト33及び出力軸4が同軸上に配置され、カウンタシャフト32がそれらの下方に平行配置される。入力軸15がクラッチ2のドリブンプレート2aに接続され、入力軸15とメインシャフト33とが相対回転可能に支持される。
【0025】
まずスプリッタ17とメインギヤ18の構成を説明する。入力軸15にスプリットハイギヤSHが回転可能に取り付けられる。またメインシャフト33にも前方から順にギヤM4,M3,M2,M1,MRが回転可能に取り付けられる。MRを除くギヤSH,M4,M3,M2,M1は、それぞれカウンタシャフト32に固設されたカウンタギヤCH,C4,C3,C2,C1に常時噛合される。ギヤMRはアイドルリバースギヤIRに常時噛合され、アイドルリバースギヤIRはカウンタシャフト32に固設されたカウンタギヤCRに常時噛合される。
【0026】
入力軸15及びメインシャフト33に取り付けられた各ギヤSH,M4…に、当該ギヤを選択し得るようスプライン36が一体的に設けられ、これらスプライン36に隣接して入力軸15及びメインシャフト33に第1〜第4スプライン37〜40が固設される。第1〜第4スプライン37〜40に常時係合して第1〜第4スリーブ42〜45が前後スライド可能に設けられる。第1〜第4スリーブ42〜45を適宜選択してスライド移動させ、ギヤ側スプライン36と係合・離脱させることによりギヤ入れ・ギヤ抜きを行える。第1スリーブ42の移動をスプリッタアクチュエータ20で行い、第2〜第4スリーブ43〜45の移動をメインアクチュエータ21で行う。
【0027】
このように、スプリッタ17とメインギヤ18とは各アクチュエータ20,21によって自動変速され得る常時噛み合い式の構成とされる。特に、スプリッタ17のスプライン部には通常の機械的なシンクロ機構が存在するものの、メインギヤ18のスプライン部にはシンクロ機構が存在しない。このため、シンクロ制御なるものを行って同期を図り、シンクロ機構なしで変速できるようになっている。ここではメインギヤ18以外にスプリッタ17にもニュートラルポジションが設けられ、所謂ガラ音対策がなされている(特願平11-319915 号参照)。
【0028】
次にレンジギヤ19の構成を説明する。レンジギヤ19は遊星歯車機構34を採用しており、ハイ・ローいずれかのポジションに切り替えることができる。遊星歯車機構34は、メインシャフト33の最後端に固設されたサンギヤ65と、その外周に噛合される複数のプラネタリギヤ66と、プラネタリギヤ66の外周に噛合される内歯を有したリングギヤ67とからなる。各プラネタリギヤ66は共通のキャリア68に回転可能に支持され、キャリア68は出力軸4に連結される。リングギヤ67は管部69を一体的に有し、管部69は出力軸4の外周に相対回転可能に嵌め込まれて出力軸4とともに二重軸を構成する。
【0029】
第5スプライン41が管部69に一体的に設けられる。また第5スプライン41の後方に隣接して、出力軸4に出力軸スプライン70が一体的に設けられる。第5スプライン41の前方に隣接して、ミッションケース側に固定された固定スプライン71が設けられる。第5スプライン41に常時係合して第5スリーブ46が前後スライド可能に設けられる。第5スリーブ46の移動がレンジアクチュエータ22で行われる。レンジギヤ19のスプライン部には機械的なシンクロ機構が存在する。
【0030】
第5スリーブ46が前方に移動するとこれが固定スプライン71に係合し、第5スプライン41と固定スプライン71とが連結される。これによりリングギヤ67がミッションケース側に固定され、出力軸4が1より大きい減速比(ここでは4.5)で回転駆動されるようになる。これがローのポジションである。
【0031】
一方、第5スリーブ46が後方に移動するとこれが出力軸スプライン70に係合し、第5スプライン41と出力軸スプライン70とが連結される。これによりリングギヤ67とキャリア68とが互いに固定され、出力軸4が1の減速比で直結駆動されるようになる。これがハイのポジションである。
【0032】
このように、この変速機3では、前進側において、スプリッタ17でハイ・ローの2段、メインギヤ18で4段、レンジギヤ19でハイ・ローの2段に変速可能であり、計2×4×2=16段に変速することができる。
【0033】
また後進側では、メインギヤ18でRevが選択され、レンジギヤ19はロー固定となる。そしてスプリッタ17でハイ・ローが切り換えられ、リバース段はハイ・ロー2段に切り換えることができる。
【0034】
次に、各アクチュエータ20,21,22について説明する。これらアクチュエータはエアタンク5の空圧で作動する空圧シリンダと、空圧シリンダへの空圧の給排を切り替える電磁弁とで構成される。そしてこれら電磁弁がTMCU9で選択的に切り替えられ、空圧シリンダを選択的に作動させるようになっている。スプリッタアクチュエータ20は、ダブルピストンを有した空圧シリンダ47と三つの電磁弁MVH,MVF,MVGとで構成される。スプリッタ17をニュートラルにするときはMVH/ON,MVF/OFF,MVG/ONとされる。スプリッタ17をハイにするときはMVH/OFF,MVF/OFF,MVG/ONとされる。スプリッタ17をローにするときはMVH/OFF,MVF/ON,MVG/OFFとされる。
【0035】
メインアクチュエータ21は、ダブルピストンを有しセレクト側の動作を担当する空圧シリンダ48と、シングルピストンを有しシフト側の動作を担当する空圧シリンダ49とを備える。各空圧シリンダに対し三つずつ電磁弁MVC,MVD,MVE及びMVB,MVAが設けられる。
【0036】
セレクト側空圧シリンダ48は、MVC/OFF,MVD/ON,MVE/OFFのとき図の下方に移動し、メインギヤの3rd、4th又はN3を選択可能とし、MVC/ON,MVD/OFF,MVE/ONのとき中立となり、メインギヤの1st、2nd又はN2を選択可能とし、MVC/ON,MVD/OFF,MVE/OFFのとき図の上方に移動し、メインギヤのRev又はN1を選択可能とする。
【0037】
シフト側空圧シリンダ49は、MVA/ON,MVB/ONのとき中立となり、メインギヤのN1、N2又はN3を選択可能とし、MVA/ON,MVB/OFFのとき図の左側に移動し、メインギヤの2nd,4th又はRevを選択可能とし、MVA/OFF,MVB/ONのとき図の右側に移動し、メインギヤの1st又は3rdを選択可能とする。
【0038】
レンジアクチュエータ21は、シングルピストンを有した空圧シリンダ50と二つの電磁弁MVI,MVJとで構成される。空圧シリンダ50は、MVI/ON,MVJ/OFFのとき図の右側に移動し、レンジギヤをハイとし、MVI/OFF,MVJ/ONのとき図の左側に移動し、レンジギヤをローとする。
【0039】
ところで、上記シンクロ制御に際してカウンタシャフト32を制動するため、カウンタシャフト32にはカウンタシャフトブレーキ27が設けられる。カウンタシャフトブレーキ27は湿式多板ブレーキであって、エアタンク5の空圧で作動する。この空圧の給排を切り替えるため電磁弁MV BRKが設けられる。電磁弁MV BRKがONのときカウンタシャフトブレーキ27に空圧が供給され、カウンタシャフトブレーキ27が作動状態となる。電磁弁MV BRKがOFFのときにはカウンタシャフトブレーキ27から空圧が排出され、カウンタシャフトブレーキ27が非作動となる。
【0040】
次に、自動変速制御の内容を説明する。TMCU9には図5に示すシフトアップマップと図6に示すシフトダウンマップとがメモリされており、TMCU9は、自動変速モードのとき、これらマップに従って自動変速を実行する。例えば図5のシフトアップマップにおいて、ギヤ段n(nは1から15までの整数)からn+1へのシフトアップ線図がアクセル開度(%)と出力軸回転数(rpm )との関数で決められている。そしてマップ上では現在のアクセル開度(%)と出力軸回転数(rpm )とからただ1点が定まる。車両加速中は、車輪に連結された出力軸4の回転数が次第に増加していく。そこで通常の自動変速モードでは、現在の1点が各線図を越える度に1段ずつシフトアップを行うこととなる。具体的には、現在の1点が各線図を越える度にTMCU9内部で変速要求が出され、これに従ってTMCU9が所定の変速制御を実行することになる。なお、このときスキップモードであれば線図を交互に1本ずつ飛ばして2段ずつシフトアップを行う。
【0041】
図6のシフトダウンマップにおいても同様に、ギヤ段n+1(nは1から15までの整数)からnへのシフトダウン線図がアクセル開度(%)と出力軸回転数(rpm )との関数で決められている。そしてマップ上では現在のアクセル開度 (%)と出力軸回転数(rpm )とからただ1点が定まる。車両減速中は出力軸4の回転数が次第に減少していくので、通常の自動変速モードでは、現在の1点が各線図を越える度に1段ずつシフトダウンを行う。スキップモードであれば線図を交互に1本ずつ飛ばして2段ずつシフトダウンする。
【0042】
一方、マニュアルモードのときは、これらマップと無関係にドライバが自由にシフトアップ・ダウンを行える。通常モードなら1回のシフトチェンジ操作で1段変速でき、スキップモードなら1回のシフトチェンジ操作で2段変速できる。現在のアクセル開度はアクセル開度センサ8により検知され、現在の出力軸回転数は出力軸回転センサ28により検知される。特に、TMCU9は、現在の出力軸回転数の値から現在の車速を換算し、これをスピードメータに表示する。つまり車速が出力軸回転数から間接的に検知され、出力軸回転数と車速とは比例関係にある。
【0043】
ところで、かかる自動変速装置では以下のような問題が起こり得る。即ち、登坂加速走行中にシフトアップしたとき、シフトアップの過程でクラッチが切られるので車両が失速する。するとシフトアップしたにも拘らず、マップ上では1段低いギヤ段、つまり元のギヤ段に戻すべきという変速要求が出され、シフトアップ直後元のギヤ段にシフトダウンしてしまうという所謂シフトビジーの問題が発生する。この後、元のギヤ段に戻して再加速したとしても、次のシフトアップでまた失速して再度シフトダウンを繰り返すという問題が生ずる。
【0044】
そこで、このようなシフトビジーの問題を解決するため、本装置では以下の制御を実行するようにしている。
【0045】
図1はかかるシフトビジー防止制御の内容を示すフローチャートである。なおこのフローはTMCU9により所定の制御時間(ex.32ms )毎に繰り返し実行される。
【0046】
TMCU9はまずステップ101でモードスイッチ24の出力に基づき現在マニュアルモードでなく自動変速モードが選択されているか否かを判断する。NOのときはステップ110に進んでタイマをクリアした後、ステップ111で変速を許可する。つまり本制御は自動変速モードのときのみ実質的に有効である。YES のときはステップ102に進む。
【0047】
ステップ102ではシフトスイッチの出力に基づき現在シフトレバー29aがD(ドライブ)レンジに入っているか否かを判断する。Dレンジ以外ならステップ110,111へと進み、Dレンジならステップ103に進む。Dレンジなので、このときはドライバが何等シフトレバーを操作せずとも車速等に応じて自動的にシフトアップ・ダウンがなされる。ステップ103では現在の車速が0以外、即ち車両走行中か否かを判断する。車速0ならステップ110,111へと進み、0以外ならステップ104に進む。
【0048】
ステップ104では、目標ギヤ段と現ギヤ段とが一致しているか否かを判断している。ここでいう目標ギヤ段とは、現在のアクセル開度と出力軸回転数とから図5、図6のマップに従って決定されるギヤ段であり、現ギヤ段とはギヤポジションスイッチ23により検知される実際の変速機のギヤ段である。よって目標ギヤ段が現ギヤ段と一致しているとは、変速要求がなく変速完了の状態にあることを意味し、逆にそれらが一致してないとはマップに従った変速要求があり現在変速中である状態を意味する。変速中のときはステップ109に進み、変速完了のときはステップ105に進む。
【0049】
ステップ109では現在変速禁止中か否かを判断している。つまり、前回以前のフロー実行でステップ108を通過し、変速禁止となっているか否かを判断している。YES ならステップ105に進み、NOならステップ110,111へと進む。
【0050】
ステップ105ではタイマをインクリメント(加算)する。そして次のステップ106では、このタイマ値を予め決められた時間tと比較し、タイマ値がt未満か否かを判断する。ここでのtは5(s) である。t以上ならステップ111に進み、t未満ならステップ107に進む。
【0051】
ステップ107では、目標ギヤ段と現ギヤ段とが2段以上異なるか否かを判断している。変速要求があったとき、それが1段のシフトアップ又はシフトダウンなら本ステップはNOとなり、2段以上のシフトアップ又はシフトダウンなら本ステップはYES となる。ただし、ここでは登坂加速時におけるシフトアップ直後のシフトダウンを問題にしているので、実質的には後述するように、1段のシフトダウン要求が出されたかどうかを判断していることとなる。YES のときはステップ111に進んで変速を許可し、NOのときはステップ108に進んで変速を禁止する。以上により本フローを終了する。
【0052】
本フローを実際の車両運転状況に当てはめてみる。車両が自動変速モード、Dレンジ固定で十分な時間(少なくともt以上)登坂加速走行をしている場合、ステップ101〜104に至り、ステップ104でYES となってステップ105に至る。そしてここでタイマがインクリメントされ、ステップ106でタイマ≧tなのでNOに進み、ステップ111で変速許可となる。
【0053】
この状態でシフトアップ要求が入ると、初回はステップ101〜104を経てステップ109に至る。現時点では変速許可なのでNOに進み、ステップ110でタイマがクリアされた後ステップ111で変速許可が維持される。このルートを繰り返していくうちにやがてシフトアップが完了する。シフトアップに要する時間はtに比べて極めて短時間である。
【0054】
シフトアップ完了後初回のフローは次のようになる。ステップ101〜104に至り、ステップ104でYES となってステップ105に至る。ステップ105でタイマが1単位カウントされるが、先のシフトアップ中のフローによってタイマがクリアされているので、ステップ106でタイマ<tが成立する。するとYES となり、ステップ107に進む。現在変速要求は出ていないので、ステップ107はNOとなり、ステップ108で変速禁止となる。この状態は変速要求が出るか(ステップ104がNOとなる)、タイマ≧t(ステップ106がNO)となるまで維持される。
【0055】
ここで、タイマ≧tとなる前に、シフトアップによって車両が失速し、1段のシフトダウン要求が出されたとする。すると、ステップ101〜104からステップ109に至ったとき、既に変速禁止されているのでYES に進む。この後ステップ105,106を経てステップ107に至る。ステップ107でNOとなるので、ステップ108で変速禁止が維持される。
【0056】
このように、シフトアップ後所定時間tが経過する前は、元のギヤ段に戻すような1段のシフトダウンが禁止され、シフトアップ後のギヤ段が保持される。シフトアップ後のギヤ段で一定時間粘らせるのである。この間車両が加速されているので、通常はタイマ≧tとなる前に先のシフトダウン要求が消失する。こうなればシフトダウンが実行されないまま時間tの経過を終えることとなる。
【0057】
この場合、ステップ106がNOとなる前にステップ104がYES となる。そしてステップ104からステップ105、106、107、108と進むルートを繰り返す。次いでステップ106がNOとなるとステップ111で変速許可となり最初の状態に戻る。
【0058】
もっとも、時間tを経過してもシフトダウン要求が残っている場合があり、このときは時間tの経過と同時に即1段のシフトダウンを実行する。この場合、ステップ106からステップ111に進み変速許可となり、即シフトダウンが実行される。
【0059】
ここで、シフトアップ中の失速の程度が大きく、シフトアップ完了時点で2段以上も低い変速要求が出る場合も想定される。このときは時間tが経過する前であっても直ちにシフトダウンを許可する。こうしないとやがて車両が止まってしまうからである。この場合、ステップ107からステップ111に進み、変速許可となる。
【0060】
このようにして上記の如きシフトビジーの問題は解消される。そしてシフトアップ中の失速の程度が大きいときは直ちにシフトダウンが実行されるので、車両が止まってしまうようなこともない。なお、本制御はスキップモードか否かの判断を行っておらず、スキップモードでも実行されるが、スキップモードでは常に2段のシフトダウンとなり、1段のシフトダウンはあり得ないので、ステップ107で必ずYES となり、実質的に意味を持たない。本制御はスキップモードでない通常モードのときのみ実質的な意味を持つ。
【0061】
ちなみに、本実施形態で変速禁止されるのは1段のシフトダウンのみである。本発明にいう「所定段数内の変速」のうち、「所定段数」とは本実施形態では1段を意味し、変速とはシフトダウンを意味する。もっとも1段より低い段数はないので1段内とは1段のことである。応用例として、「所定段数」を2段、3段…等と変更したり、「変速」をシフトアップとしたりすることも可能である。例えば「所定段数」を2段とした場合、2段内即ち1段又は2段の変速は禁止され、2段を越える3段、4段…の変速は許容される。
【0062】
以上、本発明の実施形態は上述のものに限られない。時間tの値も5(s) に限らず、実際の車両運転モードに応じて適宜変更可能である。
【0063】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0064】
(1) 登坂加速中のシフトアップに際し、シフトビジーの問題を解消できる。
【0065】
(2) シフトアップ時の車両失速の程度が大きいときは即シフトダウンを許容できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るシフトビジー防止制御の内容を示すフローチャートである。
【図2】実施形態に係る車両の自動変速装置を示す構成図である。
【図3】自動変速機を示す構成図である。
【図4】自動クラッチ装置を示す構成図である。
【図5】シフトアップマップである。
【図6】シフトダウンマップである。
【符号の説明】
3 変速機
9 トランスミッションコントロールユニット(TMCU)
17 スプリッタ
18 メインギヤ
19 レンジギヤ
20 スプリッタアクチュエータ
21 メインアクチュエータ
22 レンジアクチュエータ
23 ギヤポジションスイッチ
25 スキップスイッチ
29 シフトレバー装置
GSU ギヤシフトユニット
Claims (2)
- 多段変速機と、該変速機の変速を制御する信号を出力するコントロールユニットと、該コントロールユニットの信号に基づいて上記変速機の変速を実行するアクチュエータと、アクセル開度を検知するアクセル開度センサと、上記変速機の出力軸回転数を検知する出力軸回転センサと、アクセル開度と上記変速機の出力軸回転数とから目標変速ギヤ段を決定するマップとを備え、
上記コントロールユニットが上記アクセル開度センサで検知したアクセル開度と上記出力軸回転センサで検知した上記変速機の出力軸回転数とから上記マップに従って目標変速ギヤ段を決定すると共に目標変速ギヤ段に応じた信号を上記アクチュエータに送り、上記アクチュエータが目標変速ギヤ段に応じた信号に基づいて上記変速機の自動変速を実行する自動変速モードを有した自動変速装置であって、
上記コントロールユニットは、上記自動変速モード中、
シフトアップ後所定時間を超える前に、上記マップから所定段数内のシフトダウンが必要と判断された場合は上記シフトアップ後の変速ギヤ段を保持し、
シフトアップ後、上記所定時間を超える前であっても、上記マップから上記所定段数を越えたシフトダウンが必要と判断された場合は上記マップに基づいて決定される目標変速ギヤ段に応じた信号を上記アクチュエータに送り、シフトダウンを実行し、
該シフトダウンの実行後、上記所定時間を超えるまで、上記マップから所定段数内の変速が必要と判断された場合は、上記シフトダウン実行後の変速ギヤ段を保持し、
上記所定時間を超えると、上記マップに基づいて決定される目標変速ギヤ段への変速を実行することを特徴とする車両の自動変速装置。 - 上記所定段数内のシフトダウンが1段のシフトダウンである請求項1記載の車両の自動変速装置。
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