JP2004324759A - 内輪非分離形ころ軸受 - Google Patents
内輪非分離形ころ軸受 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004324759A JP2004324759A JP2003119590A JP2003119590A JP2004324759A JP 2004324759 A JP2004324759 A JP 2004324759A JP 2003119590 A JP2003119590 A JP 2003119590A JP 2003119590 A JP2003119590 A JP 2003119590A JP 2004324759 A JP2004324759 A JP 2004324759A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- inner ring
- rollers
- roller
- roller bearing
- side plate
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Mounting Of Bearings Or Others (AREA)
- Rolling Contact Bearings (AREA)
Abstract
【課題】内輪付きとすると共に、内輪、ころ、保持器が非分離で、取扱が容易であり、組立工数の削減が図れる内輪非分離形ころ軸受を提供する。
【解決手段】内輪1と、複数個のころ2と、保持器3と、側板4とで内輪非分離形ころ軸受を構成する。内輪1は一端の外周に鍔5を有する。ころ2は、内輪1の外周の転走面1aに転接する。保持器3は、周方向に複数のポケット6を有し上記ころ2を保持器外径側へ抜け出し不能に各ポケット内6に保持する。側板4は、内輪1の他端に取付けられて外周部が内輪1の外周面よりも外径側に突出し、ころ2の端面と係合可能とする。
【選択図】 図1
【解決手段】内輪1と、複数個のころ2と、保持器3と、側板4とで内輪非分離形ころ軸受を構成する。内輪1は一端の外周に鍔5を有する。ころ2は、内輪1の外周の転走面1aに転接する。保持器3は、周方向に複数のポケット6を有し上記ころ2を保持器外径側へ抜け出し不能に各ポケット内6に保持する。側板4は、内輪1の他端に取付けられて外周部が内輪1の外周面よりも外径側に突出し、ころ2の端面と係合可能とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、各種の機器に使用される内輪非分離形ころ軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、産業機械の減速装置等を構成する機構、例えば遊星歯車部に使用される軸受で、特に、重荷重が作用する箇所には、保持器付き針状ころの高負荷容量形が用いられる。この種の保持器付き針状ころとして、周方向に複数のポケットを有する環状の保持器と、複数のころとからなり、各ころを総ころ状態に密接配列したものが提案されている(例えば特許文献1)。この保持器付きころでは、高負荷容量化の要求により、ころ配列を密にしてころ本数をできるだけ多くするために、保持器は、ころの脱落防止を外径側のみとし、内径側への脱落阻止を行わないものとされている。内径側へのころの脱落防止機能を有しなくても、使用状態では、ころは軸または内輪に接するため、支障はない。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−276672号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記提案例の保持器付き針状ころの構造では、運転状態では問題がないが、取扱時等に以下に挙げるような問題がある。
▲1▼.ころが保持器の内径側に脱落する形式であることから、軸へ組み込むまでの間に保持器からころが脱落しないように、内径側にころ脱落防止用のスリーブやころ保持リングを別に設けなければならない。
▲2▼.遊星歯車装置等の軸受使用機器の軸へ組み込むときに、内輪と保持器付きころを別々に組まなければならず、組込み工数が多くなる。
▲3▼.保持器付きころが軸方向に抜けるのを防止するために、止め輪などを別に設ける必要があり、止め輪設置のために組込み工数がそれだけ多くなる。
【0005】
この発明は、内輪付きとすると共に、内輪、ころ、保持器が非分離で、取扱が容易であり、組立工数の削減が図れる内輪非分離形ころ軸受を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の内輪非分離形ころ軸受は、一端の外周に鍔を有する内輪と、この内輪の外周の転走面にそれぞれ転接する複数個のころと、周方向に複数のポケットを有し上記ころを保持器外径側へ抜け出し不能に各ポケット内に保持した保持器と、上記内輪の他端に取付けられて外周部が内輪の外周面よりも外径側に突出し上記ころの端面と係合可能な側板とを備える。
この構成によると、内輪付きであるため、内輪を別に組み込むことを必要としない。また、各ころは保持器に外径側へ抜け出し不能に保持されており、かつこれらのころは、内輪の一端の鍔、または内輪の他端に取付けられた側板に係合するため、取扱時に脱落することがない。このように、内輪、ころ、保持器が非分離であることから、取扱が容易になり、組立工数の削減が図れる。
【0007】
この発明において、上記側板の内周縁に軸方向に突出する突部を設け、この突部を上記内輪の内周面に嵌合状態に固定しても良い。これにより、内輪への側板の取付けを容易に行うことができる。
また、この発明において、上記内輪の上記他端の内周に円周溝を設け、上記側板を鋼板のプレス製品とし、上記側板の内周縁に軸方向に突出して設けた突部を上記円周溝に加締め固定しても良い。この構成の場合、内輪への側板の取付けを容易に、かつ堅固に行うことができる。また、側板を内輪の内径側へ突出させずに固定できる。
【0008】
この発明において、上記複数個のころは、互いに円周方向に略接し、または接して配置されたものであっても良い。このようにころ配列を密にすることで、コンパクトな構成で高負荷容量の軸受にできる。
【0009】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を図1および図2と共に説明する。図1はこの実施形態の内輪非分離形ころ軸受の部分縦断面図であり、図2は部分横断面図である。この内輪非分離形ころ軸受は、内輪1と、複数個のころ2と、保持器3と、側板4とで構成される。内輪1は、一端の外周に鍔5を有し、鍔5を除く外周は転走面1aとされる。この転走面1aに前記ころ2が転接する。内輪1は、例えば鋼材の削り出し品である。
【0010】
保持器3は、図2のように周方向に複数のポケット6を有する環状の部材であり、両端には内径側に向く鍔3a,3bが形成されている。保持器3は、例えば鋼板のプレス成形品である。ポケット6の円周方向幅は、ころ2の径よりも狭く設定されており、ころ2は保持器3の各ポケット6内に保持器外径側へ抜け出し不能に保持される。保持器3は、保持器内径側へのころ2の脱落阻止は行わないものであり、可能な範囲で大きな外径に形成される。例えば、保持器3の外径は、ころ2の配列の外接円よりも僅かに小径に形成される。このように保持器2の外径を大きくすることで、保持器3のポケット6間の柱部3cの幅を確保しながら、ころ2を可能なだけ密接させて多数本配列できるようにされる。ころ2の配列は、各ころ2が相互に接するように行っても良い。
【0011】
側板4は内輪1の他端に取付けられる環状の部材であって、例えばプレス鋼板からなり、その外周部は内輪1の外周面よりも外径側に突出し、ころ2の端面と係合可能である。側板4の内輪1への取付けは、側板4の内周縁に設けられ軸方向に突出する突部4aを、内輪1の内周の縁部に設けた内周溝1bに嵌合状態に固定して行う。内周溝1bは、内輪1の内周面に段差を持って形成された大径部分であり、かつその段差面側の周面部分がさらに深くなった深溝部分1baに形成されている。上記突部4aは、側板内周縁の全周に設けたものであっても、周方向の複数箇所に設けたものであっても良い。また、上記突部4aは、加締めにより先端を内輪内周溝1bの深溝部分に固定しても良い。また、例えば突部4aは、円周方向の複数箇所に設けられたステーキングであっても、全周に設けられる折り曲げ形状であっても良い。この実施形態では上記突部4aは、基端部分が側板4の全周にわたる円筒状部分となり、先端側部分がその円筒状部分から薄肉となって延びている。先端側部分は、全周に続くものであっても、円周方向の複数箇所に設けられたものであっても良い。突部4aを上記のいずれかの構成とすることより、内輪1の内周への側板4の取付けを容易に行うことができる。上記突部4aを内輪内周溝1bに固定した状態で、突部4aの内径縁が内輪1の内径面よりも外径側となるように、突部4aの厚みおよび内周溝1bの溝深さが設定される。
【0012】
この構成の内輪非分離形ころ軸受は、機器へ組み込むまでの単独状態で、各ころ2が、保持器3のポケット6に保持器外径側へ抜け出し不能に保持され、またころ2の一端面が内輪1の一端の鍔5に係合可能で、ころ2の他端面が側板4に係合可能である。そのため、内輪1、ころ2、および保持器3が非分離であり、一体品として取り扱うことができる。したがって取扱が容易であり、ころ脱落防止用のスリーブやころ保持リングを設ける必要もない。また、機器への組込みにおいて、内輪1をころ2や保持器3と別々に組まなくて良いので、組込み工数を低減できる。軸方向に軸受が抜けるのを防止するために、止め輪などを設ける必要もないので、止め輪設置による工数増もなく組込み工数をより低減できる。
また、この内輪非分離形ころ軸受は、保持器3が内径側へのころ2の脱落阻止機能を有しないもので良いため、各ころ3間に介在する柱部3aがころ3の配列のピッチ円よりも外径側のみにあるもので済み、そのためころ2の配列密度を高くして高負荷容量のものとできる。
【0013】
この軸受の軸受使用機器への設置は、機器の内径面からなる転走面にころ2を直接に転接させ、内輪1を機器の軸に嵌合させるように行う。運転時において、ころ2と保持器3は図1における軸方向a,bのいずれかに移動する。b方向に移動した場合には、ころ2の端面が内輪1の鍔5で案内される。a方向に移動した場合には、保持器3の鍔3aが、この軸受の組み込まれた機器の軸受隣接対向面Sで案内される。側板4はプレス鋼板製で薄肉のために低剛性であり、ころ2の移動によりころ端面が接触することは好ましくないので、上記のように軸受隣接対向面Sで案内される設置形態を採ることで、問題なく運転することができる。
【0014】
図3,図4は、この発明の内輪非分離ころ軸受を応用した遊星歯車減速装置の一例を示す。この装置は、ロボットのアームの駆動部等に用いられる。この遊星歯車減速装置は、内輪のリング歯車21と、回転出力部となるキャリア22と、このキャリア22に回転自在に支持されて隣接する複数の偏心軸部23a,23bを有するクランク軸23と、このクランク軸23の各偏心軸部23a,23bに回転自在に設置されてリング歯車21に噛み合う複数の遊星歯車24,25と、クランク軸23に回転を入力する回転入力部26とを有する。リング歯車21はハウジング27に固定され、キャリア22はリング歯車21と同心に回転自在なように、軸受28(図4)を介してハウジング27に設置されている。回転入力部26は、リング歯車21と同心の入力軸29と、各クランク軸23に設けられて入力軸29の歯車部に噛み合う伝達歯車30とで構成される。クランク軸23は、キャリア22の円周方向複数箇所(例えば3箇所)に設けられている。遊星歯車24,25は、図4に示すように、各々ころ軸受31を介してクランク軸23の偏心軸部23a,23bに設置されている。上記ころ軸受31に、この発明における例えば上記実施形態の内輪非分離ころ軸受が用いられる。
【0015】
この遊星歯車減速装置の動作を説明する。中心の入力軸29を回転させると、伝達歯車30を介して3本のクランク軸23が互いに同期して回転する。ここで、1段目の減速が行われる。クランク軸23と遊星歯車24,25とは、ころ軸受31を介して連結されており、クランク軸23の振れ回りは、遊星歯車24,25が内歯のリング歯車21の内側を回るときの公転と自転の合成運動に同期する。軸方向に並ぶ2枚の遊星歯車24,25は、互いに180°位相がずれた状態で内歯リング歯車21の内周を公転する。このため、2枚の遊星歯車24,25の振れ回りによる慣性力は打ち消し合う。内歯リング歯車21は固定してあり、遊星歯車24,25は内歯リング歯車21の内周を回る。3本のクランク軸23は、出力部材となるキャリア22の2枚の円盤部22a,22bの間に挟まっている。したがって、遊星歯車24,25の公転は、クランク軸23の公転を通じてキャリア22に達し、減速された回転運動が得られる。
【0016】
この構成の遊星歯車減速装置は、遊星歯車24,25とクランク軸23の間に介在したころ軸受31に大きな負荷が作用し、しかもころ軸受31の設置スペースは、減速装置全体の大型化を避けるために限られたスペースとなる。しかし、上記実施形態の内輪非分離ころ軸受によると、保持器3による内径側へのころ2の脱落阻止が不要であるため、ころ2を密に配列できて、限られたスペース内で大きな負荷容量を得ることができる。また、ころ軸受31の保持器3は、隣接する遊星歯車24,25またはキャリア21,22の幅面と摺接し、ある程度以上の軸方向移動が規制される。このため、これら遊星歯車24,25またはキャリア21,22の幅面が、図1で説明した軸受隣接対向面Sとして機能し、運転時における保持器2の軸方移動が阻止されて、ころ2が強度的に弱い側板4に接することが防止される。
【0017】
図5は遊星歯車減速装置の他の例を示す。この例は、各遊星歯車41,42が単列に配置された遊星歯車減速装置の例である。同図は、遊星歯車41,42とキャリア43,44との関係を示すための図であり、遊星歯車減速装置としての構成は一部を省略して示している。遊星歯車41は、第1のキャリア43に設けられた支持軸43aに軸受45を介して設置される。遊星歯車41は、キャリア43の円周方向の3箇所に等配されている。他の遊星歯車42は、第2のキャリア44に設けられた支持軸44aに、軸受46を介して設置されている。遊星歯車42は、キャリア44の円周方向の4箇所に等配されている。上記各軸受45,46に、図1の例の内輪非分離ころ軸受が用いられている。なお、この遊星歯車減速装置は、斜板型アキシャルプランジャポンプに組み込まれて、ポンプ部のピストンの駆動のための斜板49の駆動に使用されるものである。
【0018】
【発明の効果】
この発明の内輪非分離ころ軸受は、一端の外周に鍔を有する内輪と、この内輪の外周の転走面にそれぞれ転接する複数個のころと、周方向に複数のポケットを有し上記ころを保持器外径側へ抜け出し不能に各ポケット内に保持した保持器と、上記内輪の他端に取付けられて外周部が内輪の外周面よりも外径側に突出し上記ころの端面と係合可能な側板とからなるため、内輪を別個に組み込む必要がなく、また内輪、ころ、保持器が非分離で、取扱が容易であり、組立工数の削減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態にかかる内輪非分離ころ軸受の部分縦断面図である。
【図2】同内輪非分離ころ軸受の部分横断面図である。
【図3】同実施形態の内輪非分離ころ軸受を用いた遊星歯車減速装置の一例の模式図である。
【図4】同遊星歯車減速装置の部分切欠側面図である。
【図5】同実施形態の内輪非分離ころ軸受を用いた遊星歯車減速装置の他の例の部分破断側面図である。
【符号の説明】
1…内輪
1a…転走面
1b…内周溝
2…ころ
3…保持器
3a,3b…保持器の鍔
4…側板
4a…突部
5…内輪の鍔
6…ポケット
【発明の属する技術分野】
この発明は、各種の機器に使用される内輪非分離形ころ軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、産業機械の減速装置等を構成する機構、例えば遊星歯車部に使用される軸受で、特に、重荷重が作用する箇所には、保持器付き針状ころの高負荷容量形が用いられる。この種の保持器付き針状ころとして、周方向に複数のポケットを有する環状の保持器と、複数のころとからなり、各ころを総ころ状態に密接配列したものが提案されている(例えば特許文献1)。この保持器付きころでは、高負荷容量化の要求により、ころ配列を密にしてころ本数をできるだけ多くするために、保持器は、ころの脱落防止を外径側のみとし、内径側への脱落阻止を行わないものとされている。内径側へのころの脱落防止機能を有しなくても、使用状態では、ころは軸または内輪に接するため、支障はない。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−276672号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記提案例の保持器付き針状ころの構造では、運転状態では問題がないが、取扱時等に以下に挙げるような問題がある。
▲1▼.ころが保持器の内径側に脱落する形式であることから、軸へ組み込むまでの間に保持器からころが脱落しないように、内径側にころ脱落防止用のスリーブやころ保持リングを別に設けなければならない。
▲2▼.遊星歯車装置等の軸受使用機器の軸へ組み込むときに、内輪と保持器付きころを別々に組まなければならず、組込み工数が多くなる。
▲3▼.保持器付きころが軸方向に抜けるのを防止するために、止め輪などを別に設ける必要があり、止め輪設置のために組込み工数がそれだけ多くなる。
【0005】
この発明は、内輪付きとすると共に、内輪、ころ、保持器が非分離で、取扱が容易であり、組立工数の削減が図れる内輪非分離形ころ軸受を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の内輪非分離形ころ軸受は、一端の外周に鍔を有する内輪と、この内輪の外周の転走面にそれぞれ転接する複数個のころと、周方向に複数のポケットを有し上記ころを保持器外径側へ抜け出し不能に各ポケット内に保持した保持器と、上記内輪の他端に取付けられて外周部が内輪の外周面よりも外径側に突出し上記ころの端面と係合可能な側板とを備える。
この構成によると、内輪付きであるため、内輪を別に組み込むことを必要としない。また、各ころは保持器に外径側へ抜け出し不能に保持されており、かつこれらのころは、内輪の一端の鍔、または内輪の他端に取付けられた側板に係合するため、取扱時に脱落することがない。このように、内輪、ころ、保持器が非分離であることから、取扱が容易になり、組立工数の削減が図れる。
【0007】
この発明において、上記側板の内周縁に軸方向に突出する突部を設け、この突部を上記内輪の内周面に嵌合状態に固定しても良い。これにより、内輪への側板の取付けを容易に行うことができる。
また、この発明において、上記内輪の上記他端の内周に円周溝を設け、上記側板を鋼板のプレス製品とし、上記側板の内周縁に軸方向に突出して設けた突部を上記円周溝に加締め固定しても良い。この構成の場合、内輪への側板の取付けを容易に、かつ堅固に行うことができる。また、側板を内輪の内径側へ突出させずに固定できる。
【0008】
この発明において、上記複数個のころは、互いに円周方向に略接し、または接して配置されたものであっても良い。このようにころ配列を密にすることで、コンパクトな構成で高負荷容量の軸受にできる。
【0009】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を図1および図2と共に説明する。図1はこの実施形態の内輪非分離形ころ軸受の部分縦断面図であり、図2は部分横断面図である。この内輪非分離形ころ軸受は、内輪1と、複数個のころ2と、保持器3と、側板4とで構成される。内輪1は、一端の外周に鍔5を有し、鍔5を除く外周は転走面1aとされる。この転走面1aに前記ころ2が転接する。内輪1は、例えば鋼材の削り出し品である。
【0010】
保持器3は、図2のように周方向に複数のポケット6を有する環状の部材であり、両端には内径側に向く鍔3a,3bが形成されている。保持器3は、例えば鋼板のプレス成形品である。ポケット6の円周方向幅は、ころ2の径よりも狭く設定されており、ころ2は保持器3の各ポケット6内に保持器外径側へ抜け出し不能に保持される。保持器3は、保持器内径側へのころ2の脱落阻止は行わないものであり、可能な範囲で大きな外径に形成される。例えば、保持器3の外径は、ころ2の配列の外接円よりも僅かに小径に形成される。このように保持器2の外径を大きくすることで、保持器3のポケット6間の柱部3cの幅を確保しながら、ころ2を可能なだけ密接させて多数本配列できるようにされる。ころ2の配列は、各ころ2が相互に接するように行っても良い。
【0011】
側板4は内輪1の他端に取付けられる環状の部材であって、例えばプレス鋼板からなり、その外周部は内輪1の外周面よりも外径側に突出し、ころ2の端面と係合可能である。側板4の内輪1への取付けは、側板4の内周縁に設けられ軸方向に突出する突部4aを、内輪1の内周の縁部に設けた内周溝1bに嵌合状態に固定して行う。内周溝1bは、内輪1の内周面に段差を持って形成された大径部分であり、かつその段差面側の周面部分がさらに深くなった深溝部分1baに形成されている。上記突部4aは、側板内周縁の全周に設けたものであっても、周方向の複数箇所に設けたものであっても良い。また、上記突部4aは、加締めにより先端を内輪内周溝1bの深溝部分に固定しても良い。また、例えば突部4aは、円周方向の複数箇所に設けられたステーキングであっても、全周に設けられる折り曲げ形状であっても良い。この実施形態では上記突部4aは、基端部分が側板4の全周にわたる円筒状部分となり、先端側部分がその円筒状部分から薄肉となって延びている。先端側部分は、全周に続くものであっても、円周方向の複数箇所に設けられたものであっても良い。突部4aを上記のいずれかの構成とすることより、内輪1の内周への側板4の取付けを容易に行うことができる。上記突部4aを内輪内周溝1bに固定した状態で、突部4aの内径縁が内輪1の内径面よりも外径側となるように、突部4aの厚みおよび内周溝1bの溝深さが設定される。
【0012】
この構成の内輪非分離形ころ軸受は、機器へ組み込むまでの単独状態で、各ころ2が、保持器3のポケット6に保持器外径側へ抜け出し不能に保持され、またころ2の一端面が内輪1の一端の鍔5に係合可能で、ころ2の他端面が側板4に係合可能である。そのため、内輪1、ころ2、および保持器3が非分離であり、一体品として取り扱うことができる。したがって取扱が容易であり、ころ脱落防止用のスリーブやころ保持リングを設ける必要もない。また、機器への組込みにおいて、内輪1をころ2や保持器3と別々に組まなくて良いので、組込み工数を低減できる。軸方向に軸受が抜けるのを防止するために、止め輪などを設ける必要もないので、止め輪設置による工数増もなく組込み工数をより低減できる。
また、この内輪非分離形ころ軸受は、保持器3が内径側へのころ2の脱落阻止機能を有しないもので良いため、各ころ3間に介在する柱部3aがころ3の配列のピッチ円よりも外径側のみにあるもので済み、そのためころ2の配列密度を高くして高負荷容量のものとできる。
【0013】
この軸受の軸受使用機器への設置は、機器の内径面からなる転走面にころ2を直接に転接させ、内輪1を機器の軸に嵌合させるように行う。運転時において、ころ2と保持器3は図1における軸方向a,bのいずれかに移動する。b方向に移動した場合には、ころ2の端面が内輪1の鍔5で案内される。a方向に移動した場合には、保持器3の鍔3aが、この軸受の組み込まれた機器の軸受隣接対向面Sで案内される。側板4はプレス鋼板製で薄肉のために低剛性であり、ころ2の移動によりころ端面が接触することは好ましくないので、上記のように軸受隣接対向面Sで案内される設置形態を採ることで、問題なく運転することができる。
【0014】
図3,図4は、この発明の内輪非分離ころ軸受を応用した遊星歯車減速装置の一例を示す。この装置は、ロボットのアームの駆動部等に用いられる。この遊星歯車減速装置は、内輪のリング歯車21と、回転出力部となるキャリア22と、このキャリア22に回転自在に支持されて隣接する複数の偏心軸部23a,23bを有するクランク軸23と、このクランク軸23の各偏心軸部23a,23bに回転自在に設置されてリング歯車21に噛み合う複数の遊星歯車24,25と、クランク軸23に回転を入力する回転入力部26とを有する。リング歯車21はハウジング27に固定され、キャリア22はリング歯車21と同心に回転自在なように、軸受28(図4)を介してハウジング27に設置されている。回転入力部26は、リング歯車21と同心の入力軸29と、各クランク軸23に設けられて入力軸29の歯車部に噛み合う伝達歯車30とで構成される。クランク軸23は、キャリア22の円周方向複数箇所(例えば3箇所)に設けられている。遊星歯車24,25は、図4に示すように、各々ころ軸受31を介してクランク軸23の偏心軸部23a,23bに設置されている。上記ころ軸受31に、この発明における例えば上記実施形態の内輪非分離ころ軸受が用いられる。
【0015】
この遊星歯車減速装置の動作を説明する。中心の入力軸29を回転させると、伝達歯車30を介して3本のクランク軸23が互いに同期して回転する。ここで、1段目の減速が行われる。クランク軸23と遊星歯車24,25とは、ころ軸受31を介して連結されており、クランク軸23の振れ回りは、遊星歯車24,25が内歯のリング歯車21の内側を回るときの公転と自転の合成運動に同期する。軸方向に並ぶ2枚の遊星歯車24,25は、互いに180°位相がずれた状態で内歯リング歯車21の内周を公転する。このため、2枚の遊星歯車24,25の振れ回りによる慣性力は打ち消し合う。内歯リング歯車21は固定してあり、遊星歯車24,25は内歯リング歯車21の内周を回る。3本のクランク軸23は、出力部材となるキャリア22の2枚の円盤部22a,22bの間に挟まっている。したがって、遊星歯車24,25の公転は、クランク軸23の公転を通じてキャリア22に達し、減速された回転運動が得られる。
【0016】
この構成の遊星歯車減速装置は、遊星歯車24,25とクランク軸23の間に介在したころ軸受31に大きな負荷が作用し、しかもころ軸受31の設置スペースは、減速装置全体の大型化を避けるために限られたスペースとなる。しかし、上記実施形態の内輪非分離ころ軸受によると、保持器3による内径側へのころ2の脱落阻止が不要であるため、ころ2を密に配列できて、限られたスペース内で大きな負荷容量を得ることができる。また、ころ軸受31の保持器3は、隣接する遊星歯車24,25またはキャリア21,22の幅面と摺接し、ある程度以上の軸方向移動が規制される。このため、これら遊星歯車24,25またはキャリア21,22の幅面が、図1で説明した軸受隣接対向面Sとして機能し、運転時における保持器2の軸方移動が阻止されて、ころ2が強度的に弱い側板4に接することが防止される。
【0017】
図5は遊星歯車減速装置の他の例を示す。この例は、各遊星歯車41,42が単列に配置された遊星歯車減速装置の例である。同図は、遊星歯車41,42とキャリア43,44との関係を示すための図であり、遊星歯車減速装置としての構成は一部を省略して示している。遊星歯車41は、第1のキャリア43に設けられた支持軸43aに軸受45を介して設置される。遊星歯車41は、キャリア43の円周方向の3箇所に等配されている。他の遊星歯車42は、第2のキャリア44に設けられた支持軸44aに、軸受46を介して設置されている。遊星歯車42は、キャリア44の円周方向の4箇所に等配されている。上記各軸受45,46に、図1の例の内輪非分離ころ軸受が用いられている。なお、この遊星歯車減速装置は、斜板型アキシャルプランジャポンプに組み込まれて、ポンプ部のピストンの駆動のための斜板49の駆動に使用されるものである。
【0018】
【発明の効果】
この発明の内輪非分離ころ軸受は、一端の外周に鍔を有する内輪と、この内輪の外周の転走面にそれぞれ転接する複数個のころと、周方向に複数のポケットを有し上記ころを保持器外径側へ抜け出し不能に各ポケット内に保持した保持器と、上記内輪の他端に取付けられて外周部が内輪の外周面よりも外径側に突出し上記ころの端面と係合可能な側板とからなるため、内輪を別個に組み込む必要がなく、また内輪、ころ、保持器が非分離で、取扱が容易であり、組立工数の削減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態にかかる内輪非分離ころ軸受の部分縦断面図である。
【図2】同内輪非分離ころ軸受の部分横断面図である。
【図3】同実施形態の内輪非分離ころ軸受を用いた遊星歯車減速装置の一例の模式図である。
【図4】同遊星歯車減速装置の部分切欠側面図である。
【図5】同実施形態の内輪非分離ころ軸受を用いた遊星歯車減速装置の他の例の部分破断側面図である。
【符号の説明】
1…内輪
1a…転走面
1b…内周溝
2…ころ
3…保持器
3a,3b…保持器の鍔
4…側板
4a…突部
5…内輪の鍔
6…ポケット
Claims (4)
- 一端の外周に鍔を有する内輪と、この内輪の外周の転走面にそれぞれ転接する複数個のころと、周方向に複数のポケットを有し上記ころを保持器外径側へ抜け出し不能に各ポケット内に保持した保持器と、上記内輪の他端に取付けられて外周部が内輪の外周面よりも外径側に突出し上記ころの端面と係合可能な側板とを備えた内輪非分離形ころ軸受。
- 請求項1において、上記側板の内周縁に軸方向に突出する突部を設け、この突部を上記内輪の内周面に嵌合状態に固定した内輪非分離形ころ軸受。
- 請求項1において、上記内輪の上記他端の内周に円周溝を設け、上記側板を鋼板のプレス製品とし、上記側板の内周縁に軸方向に突出して設けた突部を上記円周溝に加締め固定した内輪非分離形ころ軸受。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、上記複数個のころは、互いに円周方向に略接し、または接して配置されたものである内輪非分離形ころ軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003119590A JP2004324759A (ja) | 2003-04-24 | 2003-04-24 | 内輪非分離形ころ軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003119590A JP2004324759A (ja) | 2003-04-24 | 2003-04-24 | 内輪非分離形ころ軸受 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004324759A true JP2004324759A (ja) | 2004-11-18 |
Family
ID=33498773
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003119590A Pending JP2004324759A (ja) | 2003-04-24 | 2003-04-24 | 内輪非分離形ころ軸受 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004324759A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE102007049050A1 (de) * | 2007-10-11 | 2009-04-23 | Getrag Ford Transmissions Gmbh | Anordnung eines Radial-Nadellagers |
-
2003
- 2003-04-24 JP JP2003119590A patent/JP2004324759A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE102007049050A1 (de) * | 2007-10-11 | 2009-04-23 | Getrag Ford Transmissions Gmbh | Anordnung eines Radial-Nadellagers |
DE102007049050B4 (de) * | 2007-10-11 | 2016-03-03 | Getrag Ford Transmissions Gmbh | Anordnung eines Radial-Nadellagers |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR101651549B1 (ko) | 파동 기어 장치의 파동 발생기 | |
EP1589261B1 (en) | Wave gear device having an internal gear which is diffusion bonded to an inner bearing ring | |
US9145919B2 (en) | Speed-reduction transmission bearing | |
EP2497914A1 (en) | Camshaft apparatus | |
KR101724659B1 (ko) | 역 사이클로이드 감속기 | |
US6857785B2 (en) | Caged roller assembly and reduction gear unit using the same | |
US6920969B2 (en) | One-way clutch | |
JP2008025687A (ja) | 波動歯車装置用軸受 | |
JP2004308792A (ja) | 複列式一体アンギュラ軸受およびそれを用いた歯車装置 | |
JP2000240661A (ja) | 保持器付きころ | |
JP4618915B2 (ja) | 総ころ軸受およびこれを用いた遊星歯車減速装置 | |
JP5083873B2 (ja) | 偏心揺動型歯車装置 | |
JP2009047294A (ja) | 減速機用ころ軸受 | |
JP2010255778A (ja) | ラジアルニードル軸受 | |
JP2004324759A (ja) | 内輪非分離形ころ軸受 | |
JP2000179544A (ja) | 保持器付き針状ころおよびこれを用いた減速装置 | |
EP2730805B1 (en) | Reduction gear | |
JP2004324844A (ja) | 針状ころ軸受用の保持器及び針状ころ軸受 | |
JP2010019286A (ja) | 減速装置 | |
EP3859189B1 (en) | Power transmission device | |
JP2004019923A (ja) | 保持器付きころおよびこれを用いた減速装置 | |
JP2009216112A (ja) | ラジアル針状ころ軸受 | |
JP2006144921A (ja) | 転がり軸受 | |
JP2000179555A (ja) | 保持器付き針状ころおよびこれを用いた減速装置 | |
JP2571381B2 (ja) | 遊星ロ−ラ式動力伝達装置 |