JP2004324571A - 燃料噴射ノズル - Google Patents
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Abstract
【課題】バルブシートとニードルバルブ先端との接触部の偏摩耗を好適に抑制することのできる燃料噴射ノズル提供することにある。
【解決手段】ノズルボディ内部に往復動可能に配設されて、そのノズルボディ内部に形成されたバルブシート16に着座されるニードルバルブ14を備える燃料噴射ノズルにおいて、ニードルバルブ14に、その往復動に応じて、その径方向に放射状に吐出される燃料の流れを形成させる丸穴21,22を形成する。
【選択図】 図2
【解決手段】ノズルボディ内部に往復動可能に配設されて、そのノズルボディ内部に形成されたバルブシート16に着座されるニードルバルブ14を備える燃料噴射ノズルにおいて、ニードルバルブ14に、その往復動に応じて、その径方向に放射状に吐出される燃料の流れを形成させる丸穴21,22を形成する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料噴射ノズルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7に、自動車用等のエンジンに適用される燃料噴射ノズルの一例を示す。同図に示すように、燃料噴射ノズル50は、ソレノイドコイル51、スプリング52、コア53、ニードルバルブ54、ノズルボディ55等を備えて構成されている。
【0003】
筒状に形成されたノズルボディ55の先端部には、テーパ状のバルブシート55aが形成されている。ノズルボディ55の内部には、ニードルバルブ54が往復動可能に配設されている。ニードルバルブ54先端は、テーパ状に形成され、上記バルブシート55aに着座可能となっている。ニードルバルブ54先端とバルブシート55aとは、着座時に線接触にて互いに当接されるようになっている。
【0004】
ノズルボディ55内部には、ニードルバルブ54とノズルボディ55内周との間に、高圧燃料が供給される燃料室55bが形成されている。またノズルボディ55内部において、そのバルブシート55aとニードルバルブ54先端との着座部よりも先端側には、燃料噴射孔55cが形成されている。
【0005】
一方、ノズルボディ55内部においてニードルバルブ54の基端側には、ソレノイドコイル51が収容されたコア53、及びスプリング52が配設されている。スプリング52は、バルブシート55aに着座させる側にニードルバルブ54を付勢している。
【0006】
以上のように構成された燃料噴射ノズル50において、ソレノイドコイル51への通電がなされると、それにより発生する電磁吸引力によって、ニードルバルブ54がスプリング52の付勢力に抗してコア53に向けて移動する。これにより、ニードルバルブ54がバルブシート55aから離間されると、上記燃料室55bと燃料噴射孔55cとが連通されて、燃料室55b内の高圧燃料が燃料噴射孔55cを通じて噴射される。
【0007】
ここでソレノイドコイル51への通電が停止されると、スプリング52の付勢力によってニードルバルブ54は、バルブシート55aに着座される。その結果、上記燃料室55bと燃料噴射孔55cとの連通が遮断され、噴射が停止される。
【0008】
さて、こうした燃料噴射ノズル50では、ニードルバルブ54の摺動を許容すべく、ノズルボディ55内周とニードルバルブ54外周との間に若干のクリアランスが形成されている。そのため、ニードルバルブ54の中心軸が本来あるべき位置からずれたり、傾いたりすることがある。
【0009】
ここでニードルバルブ54の中心軸が傾いた場合、コア53に対してニードルバルブ54は、その基端のエッジにて突き当たるようになり、片当たりが生じてコア53やニードルバルブ54の損傷を招く虞がある。そこで従来、ニードルバルブ54基端のエッジを面取り加工することで、中心軸の傾き発生時のコア53に対するニードルバルブ54の当接部を鈍角として、そうした中心軸の傾きによるコア53とニードルバルブ54との当接部の損傷を抑制する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0010】
【特許文献1】
特開平11―200980号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のようなニードルバルブ54の中心軸のずれや傾きが生じると、着座時にニードルバルブ54先端とバルブシート55aとが片当たりして、それらが偏摩耗されるようにもなる。そうした偏摩耗が生じると、ニードルバルブ54先端とバルブシート55aとの間に形成される燃料流路の形状や面積が不適切に変化して、燃料噴射量等の燃料噴射制御における精度の悪化等の不具合を招くこととなる。
【0012】
従来、そうしたニードルバルブ54先端とバルブシート55aとの接触部の偏摩耗については、ニードルバルブ54やバルブシート55aに耐摩耗性の高い材料を使用したり、それらの加工精度を向上させたりすることで対処する他なく、燃料噴射ノズルの製造コストの増大を招く要因となっていた。
【0013】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、バルブシートとニードルバルブ先端との接触部の偏摩耗を好適に抑制することのできる燃料噴射ノズル提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
以下、上述した目的を達成するための手段及びその作用効果を記載する。
請求項1に記載の発明は、ノズルボディ内部に往復動可能に配設されて、該ノズルボディ内部に形成されたバルブシートに着座されるニードルバルブを備える燃料噴射ノズルにおいて、前記ニードルバルブの往復動に応じてその径方向に放射状に吐出される燃料の流れを形成させる燃料通路を備えるようにしたものである。
【0015】
上記構成では、ノズルボディ内部をニードルバルブが往復動されると、燃料が燃料通路を通じて該ニードルバルブの径方向に放射状に吐出される。そしてニードルバルブは、そうした燃料の吐出に伴う反力を受けるようになる。よって上記構成では、そうした反力により、ニードルバルブの中心軸のずれや傾きを抑制することが可能となり、バルブシートに対するニードルバルブ先端部の片当たりが抑えられるようになる。したがって、バルブシートとニードルバルブの先端部との接触部の偏摩耗の発生を抑制することができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の燃料噴射ノズルにおいて、前記燃料通路は、前記バルブシートに着座されるテーパ状の前記ニードルバルブの先端部に開口され、前記燃料を吐出させる吐出口を有することをその要旨とする。
【0017】
上記構成では、ニードルバルブの往復動に応じて、そのテーパ状の先端部に形成された吐出口から燃料がバルブシートに向けて吐出されるようになる。そのため、燃料吐出に伴う反力をより好適に発生させ、ニードルバルブの中心軸のずれや傾きをより効果的に抑制することができる。
【0018】
なおニードルバルブの開弁時、すなわちニードルバルブをバルブシートから離間させるときに、そうした燃料の吐出が行われるのであれば、上記反力によりニードルバルブの開弁がアシストされるようになり、開弁時の応答性が向上されるようにもなる。
【0019】
また請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の燃料噴射ノズルにおいて、前記燃料通路は、前記ニードルバルブの前記先端部よりも基端側に形成された燃料の流入口を有することをその要旨とする。
【0020】
上記構成のように燃料通路の吐出口、流入口を形成することで、ニードルバルブの往復動に応じて、流入口から流入され、吐出口から吐出される燃料の流れを好適に形成することが可能となる。
【0021】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の燃料噴射ノズルにおいて、前記吐出口の開口面積は、前記流入口の開口面積に比して小さく形成されることをその要旨とする。
【0022】
上記構成のように吐出口及び流入口の開口面積を設定することで、流入口から吐出口への燃料の流れが形成され易くなり、ニードルバルブの往復動に応じて吐出口から燃料をより好適に吐出させることができる。
【0023】
また請求項5に記載の発明は、ノズルボディ内部に往復動可能に配設されて、テーパ状に形成された先端部を有して、該ノズルボディ内部に形成されたテーパ状のバルブシートに着座されるニードルバルブを備える燃料噴射ノズルにおいて、前記ニードルバルブの内部にその径方向に放射状に延伸され、前記ニードルバルブの先端部に形成された複数の吐出口を有する第1の燃料通路と、前記ニードルバルブの内部において前記第1の燃料通路と連通され、且つ前記ニードルバルブの外周にあって前記先端部よりも基端側に形成された流入口を有する第2の燃料通路とを備えることをその要旨とする。
【0024】
上記構成では、ニードルバルブが往復動されると、上記流入口から第2の燃料通路内に燃料が流入され、更に第1の燃料通路を通って上記吐出口から吐出されるように燃料が流れるようになる。よって、ニードルバルブの往復動に応じて、ニードルバルブの径方向に放射状に燃料が吐出されるようになる。そうした燃料吐出の反力により、ニードルバルブの中心軸のずれや傾きを抑制することが可能となり、バルブシートに対するニードルバルブ先端部の片当たりが抑えられるようになる。したがって、バルブシートとニードルバルブの先端部との接触部の偏摩耗の発生を抑制することができる。
【0025】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の燃料噴射ノズルにおいて、前記第1の燃料通路の流路面積は、前記第2の燃料通路の流路面積に比して小さく形成されることをその要旨とする。
【0026】
上記構成のように第1及び第2の燃料通路の流路面積を設定することで、流入口から吐出口への燃料の流れが形成され易くなり、ニードルバルブの往復動に応じて吐出口から燃料をより好適に吐出させることができる。
【0027】
また、請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の燃料噴射ノズルにおいて、前記第1の燃料通路の延伸方向と前記ニードルバルブの中心軸とがなす角度を、前記バルブシートの表面に対する垂線と前記ニードルバルブの中心軸とがなす角度と略同一に形成するものである。
【0028】
上記構成では、吐出口から吐出される燃料が、バルブシート表面に略垂直に吹きつけられるようになるため、その吐出に伴う反力を、より効果的にニードルバルブに作用させることができる。
【0029】
また請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の燃料噴射ノズルにおいて、前記吐出口を3つ以上備えることをその要旨とする。
上記構成のように、吐出口を少なくとも3つ設け、3箇所以上から燃料を吐出させれば、ニードルバルブの中心軸が所定の位置にあるときに、燃料吐出に伴う反力が釣り合いを保つようになる。そのため、ニードルバルブの中心軸が適正な位置にあるときに、それら各吐出口からの燃料吐出に伴う反力を釣り合わせることが比較的容易に行なえるなど、その中心軸のずれや傾きの抑制をより容易かつ適切に行うことができる。
【0030】
また請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の燃料噴射ノズルにおいて、前記吐出口はそれぞれ、前記ニードルバルブの中心軸周りに等角度間隔で配設されてなることをその要旨とする。
【0031】
上記構成では、ニードルバルブの往復動に応じて、その中心軸周りに等角度間隔の位置から燃料が吐出されるようになる。そのため、ニードルバルブの中心軸が適正な位置にあるときに、それら各吐出口からの燃料吐出に伴う反力を釣り合わせることが比較的容易に行なえるなど、その中心軸のずれや傾きの抑制をより容易かつ適切に行うことができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る燃料噴射ノズルを具体化した一実施の形態を図1〜図4を参照し説明する。
【0033】
図1に示されるように、燃料噴射ノズル10は、ソレノイドコイル11、スプリング12、コア13、ニードルバルブ14、ノズルボディ15等を備えて構成されている。
【0034】
ノズルボディ15は略中空筒状に形成されており、その先端部の内周には、テーパ状のバルブシート16が形成されている。またノズルボディ15のバルブシート16よりも先端側には、同ノズルボディ15の内外を連通する小径の燃料噴射孔18が形成されている。
【0035】
ノズルボディ15の内部には、ニードルバルブ14が往復動可能に配設されている。ニードルバルブ14の先端は、テーパ状に形成され、上記バルブシート16に着座可能となっている。ニードルバルブ14の先端は着座時に、バルブシート16と線接触されるようになっている。またノズルボディ15内周とニードルバルブ14との間には、高圧燃料が供給される燃料室17が形成されている。
【0036】
ノズルボディ15の内部にあって、上記ニードルバルブ14の基端側には、強磁性体で形成されたコア13が固定されており、その外周にはソレノイドコイル11が配設されている。これらコア13及びソレノイドコイル11によって、ニードルバルブ14に対する電磁吸引力を発生する電磁石が構成されている。またノズルボディ15内部の上記ニードルバルブ14の基端側には、スプリング12が配設されており、ニードルバルブ14はそのスプリング12によってノズルボディ15先端側に向けて、すなわちバルブシート16側に向けて付勢されている。
【0037】
更に上記ニードルバルブ14先端部には、同ニードルバルブ14の中心軸L1の傾きやずれを自律的に補正する燃料通路が形成されている。以下、そうした本実施の形態の燃料噴射ノズル10における燃料通路の構成について詳細に説明する。
【0038】
図2に、燃料噴射ノズル10の先端部の断面構造を示す。同図に示すように、ニードルバルブ14先端部には、径の異なる2種の丸穴21,22がそれぞれ複数(ここでは各4つ)形成されている。
【0039】
より大径の丸穴21は、ニードルバルブ14外周にあって、そのバルブシート16との接触部Pよりも基端側にそれぞれ開口されている。各丸穴21は、中心軸L1の垂直方向に延伸されており、ニードルバルブ14の中心の点Oにて互いに接続されている。
【0040】
一方、より小径の丸穴22は、上記丸穴21よりも更に先端側のテーパ状となったニードルバルブ14の外周部分において、同ニードルバルブ14の上記バルブシート16との接触部Pの基端側に開口されている。各丸穴22はそれぞれ上記点Oに向けて延伸されている。そして、その点Oにて、これら4つの小径の丸穴22、及び上記4つの大径の丸穴21のすべてが接続されている。
【0041】
こうした丸穴22は、バルブシート16の表面に対して略直交する方向に延伸されている。すなわち、丸穴22の延伸方向とニードルバルブ14の中心軸L1とがなす角度θ1は、バルブシート16の表面に対する垂線とニードルバルブ14の中心軸L1とがなす角度θ2と略同一に形成されている。
【0042】
なお、図3に図2のA−A線に沿ったニードルバルブ14の断面構造を示すように、各大径の丸穴21は、上記点Oを中心として、ニードルバルブ14の中心軸L1周りに等角度間隔(ここでは90°)に、放射状に形成されている。また各小径の丸穴22も、同様に中心軸L1周りに等角度間隔に、放射状に形成されている。
【0043】
続いて、以上説明したように構成された本実施の形態の燃料噴射ノズル10の作用を説明する。
上記燃料噴射ノズル10において、ソレノイドコイル11への通電がなされると、それにより発生する電磁吸引力によって、上記スプリング12の付勢力に抗してコア13がソレノイドコイル11側に移動する。これにより、ニードルバルブ14がバルブシート16から離間され、上記燃料室17と燃料噴射孔18とが連通されて、高圧燃料が燃料噴射孔18を通じて噴射される。その後、ソレノイドコイル11への通電が停止されると、スプリング12の付勢力により、ニードルバルブ14がバルブシート16に着座され、燃料室17と燃料噴射孔18との連通が遮断されて、燃料噴射が停止される。
【0044】
図4に、ニードルバルブ14がバルブシート16に着座される直前の、すなわちニードルバルブ14が閉弁される直前の燃料噴射ノズル10先端部の状態を示す。
【0045】
同図に示すように、このときのニードルバルブ14先端部とバルブシート16との隙間は非常に狭くなっており、その隙間を通っては高圧燃料が流れ難い状態となる(図中矢印A)。そのため、このときには、多くの高圧燃料が、ニードルバルブ14内部の上記丸穴21及び丸穴22を通って流れるようになる(図中矢印B)。
【0046】
丸穴21,22を通過して流れる高圧燃料は、ニードルバルブ14先端に形成された4つの丸穴22の開口からバルブシート16に向けて吐出される。そうした高圧燃料の吐出に応じてニードルバルブ14には、反力Fが作用するようになる。ニードルバルブ14の中心軸L1にずれが生じていなければ、各丸穴22からの高圧燃料の吐出に応じた反力Fの大きさは等しくなる。また各丸穴22がニードルバルブ14の中心軸L1周りに等角度間隔に形成されている。そのため、ニードルバルブ14の径方向においては、すなわち中心軸L1の垂直方向においては、各吐出口からの燃料吐出による反力Fが釣り合いを保つようになる。
【0047】
一方、ニードルバルブ14の中心軸L1が本来あるべき位置L0からずれ、片当たりが生じた状態となると、高圧燃料の吐出される各丸穴22の開口とバルブシート16との距離が丸穴22毎に異なるようになる。このときの高圧燃料の吐出に応じた反力Fの大きさは、その距離が小さくなるほど大きくなる。
【0048】
こうした反力Fの大きさを、上記各丸穴22及びその各丸穴22から吐出された高圧燃料によってニードルバルブ14が受ける各反力Fに添え字a〜dを付して図5を参照し説明する。
【0049】
図5に、丸穴22bの開口からバルブシート16までの距離が縮小され、その丸穴22bとは反対方向に延伸された丸穴22aの開口からバルブシート16までの距離が拡大されるように、ニードルバルブ14の中心軸L1のずれが生じたときの状態を示す。このときのバルブシート16までの距離の縮小された丸穴22bの開口からの高圧燃料の吐出に応じた反力Fbは、丸穴22aの開口からの高圧燃料の吐出に応じた反力Faよりも大きくなる。一方、残りの2つの丸穴22c,22dの開口については、バルブシート16までの距離は互いに等しく、両開口からの高圧燃料の吐出に応じた反力Fc,Fdの大きさは互いに等しくなる。そのため、各反力Fa〜Fdの合力Ftは、中心軸L1のずれを縮小させる側に作用するようになる。
【0050】
このようにニードルバルブ14の中心軸L1のずれが生じた場合には、上記丸穴21,22を通じた高圧燃料の流れにより、そのずれを縮小させる側への力が発生される。そのため、この燃料噴射ノズル10では、ニードルバルブ14の調芯が自律的になされるようになる。
【0051】
ちなみに、こうした本実施の形態の燃料噴射ノズル10では、丸穴22が上記第1の燃料通路に、丸穴21が上記第2の燃料通路に、それぞれ対応する構成となっている。更に丸穴21の開口が上記流入口に、丸穴22の開口が上記吐出口にそれぞれ対応する構成となっている。
【0052】
なお、こうした燃料噴射ノズル10では、摩耗による燃料噴射開始時の噴射量の立ち上がりの遅れが抑えられるようにもなる。以下、その理由を説明する。
図6(a)は、ニードルバルブ14の接触部Pに摩耗が生じていないときの燃料噴射開始直後における燃料噴射ノズル10先端の状態を示している。同図に示すように、ニードルバルブ14先端とバルブシート16とが離間され、それらの隙間を流れる高圧燃料の流勢によって、ニードルバルブ14をバルブシート16から離間させる揚力Fpが発生する。
【0053】
なおこのとき、本実施の形態の燃料噴射ノズル10では、上記丸穴21,22を通じても高圧燃料が流れ、丸穴22の開口からバルブシート16に向けて高圧燃料が吐出される。この吐出に応じた反力Fによっても、ニードルバルブ14をバルブシート16から離間させる揚力Fuが発生する。そのため、ニードルバルブ14は、上記ソレノイドコイル11の発生する電磁吸引力に加え、この揚力Fp及び揚力Fuによるアシストを受け、速やかに開かれるようになっている。
【0054】
同図(b)には、上記接触部Pの摩耗が生じたときの燃料噴射開始直後における燃料噴射ノズル10先端の状態が示されている。同図に示すように、接触部Pが摩耗すると、ニードルバルブ14先端とバルブシート16との隙間が狭くなり、それらの隙間を流れる高圧燃料の流量が減少するため、上記揚力Fpが小さくなってしまう。しかしながら、上記揚力Fuの大きさは、そうした接触部Pの摩耗によって減少することはなく、むしろ丸穴21,22を通る高圧燃料の流量が増大することで、その大きさは増大するようになる。
【0055】
ここで、ニードルバルブ14先端に上記丸穴21,22が形成されておらず、上記揚力Fuによるアシストを受けられないのであれば、接触部Pの摩耗による揚力Fpの減少により、ニードルバルブ14の上昇速度が低下して、摩耗の進行と共に噴射開始時の燃料噴射量の立ち上がりが遅れてしまう。その点、この燃料噴射ノズル10では、丸穴21,22を流れる高圧燃料によって発生される揚力Fuによるアシストを、接触部Pの摩耗に拘わらず受けることができるため、摩耗の進行に伴うニードルバルブ14の上昇速度の低下が好適に抑えられるようになる。
【0056】
以上説明したように、上記実施の形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ニードルバルブ14の中心軸L1の偏心を抑制することができる。またそれにより、バルブシート16に対するニードルバルブ14の片当たりを抑え、偏摩耗の発生を抑制することができる。
【0057】
(2)ニードルバルブ14開弁の応答性を向上することができる。
(3)接触部Pの摩耗によるニードルバルブ14の開弁の遅れを抑制し、経時変化による燃料噴射量の変化を抑制することができる。
【0058】
(4)ニードルバルブ14の中心軸L1の偏心やニードルバルブ14開弁の応答性の変化による燃料噴射量の変化が抑制されるため、燃料噴射の制御精度が向上されるようにもなる。
【0059】
以上、説明した実施の形態を以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、吐出口を有する第1の燃料通路(丸穴22)を、バルブシート16の表面に対して略直交する方向に延伸していたが、燃料の吐出に伴いニードルバルブ14に作用する反力を十分に確保できるのであれば、上記第1の燃料通路の延伸方向を適宜変更しても良い。また流入口を有する第2の燃料通路(丸穴21)についても、同様にその延伸方向は任意に変更しても良い。
【0060】
・上記構成では、上記4つの第2の燃料通路(丸穴21)、及び上記4つの第1の燃料通路(丸穴22)を、ニードルバルブ14の中心軸L1周りに等角度間隔にそれぞれ配設するようにしていたが必ずしもそのようにしなくても良い。中心軸L1が適正な位置にあるときに、それら燃料通路を通じた燃料の流入、吐出に伴いニードルバルブ14に作用するその径方向の力の釣り合いを保つことができるのであれば、それらを等角度間隔に配設しなくても、中心軸L1のずれや傾きを好適に抑制することはできる。
【0061】
・上記実施の形態では、丸穴21を4つ形成して流入口を4つ備える燃料通路をニードルバルブ14に形成するようにしていたが、流入口、及びその流入口を有する第2の燃料通路(丸穴21)の数は任意に変更しても良い。
【0062】
・上記実施の形態では、丸穴22を4つ形成して吐出口を4つ備える燃料通路をニードルバルブ14に形成するようにしていたが、吐出口及びそれを有する第1の燃料通路(丸穴22)の数についても、適宜変更することができる。例えばニードルバルブ14の中心軸周りに3つ以上の吐出口が形成されていれば、その中心軸L1が適正な位置にあるときに、燃料吐出に伴う反力を釣り合わせることが可能となり、中心軸L1のずれや傾きを容易且つ適正に抑制することができるようになる。もっとも、ニードルバルブ14の中心軸L1に対して予め荷重が作用しているような場合には、2つ以下の吐出口のみでも、同様の中心軸L1のずれや傾きの抑制が可能となることもある。
【0063】
・上記実施の形態では、燃料の流入口を有する第2の燃料通路(丸穴21)、及び燃料の吐出される第1の燃料通路(丸穴22)を各断面円形状の穴としてニードルバルブ14内部に形成するようにしたが、それら燃料通路の断面形状は、これに限らず適宜変更しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る燃料噴射ノズルの断面図。
【図2】同燃料噴射ノズル先端部の断面図。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図。
【図4】同燃料噴射ノズル先端部のニードルバルブ閉弁直前の状態を示す断面図。
【図5】軸ずれ発生時の反力の発生状態を例示する図。
【図6】(a)接触部の摩耗非発生時、及び(b)発生時の同燃料噴射ノズル先端部のニードルバルブ開弁直後の状態を示す断面図。
【図7】従来の燃料噴射ノズルの断面図。
【符号の説明】
10,50…燃料噴射ノズル、11,51…ソレノイドコイル、12,52…スプリング、13,53…コア、14,54…ニードルバルブ、15,55…ノズルボディ、16,55a…バルブシート、17,55b…燃料室、18,55c…燃料噴射孔、21,22,22a,22b,22c,22d…丸穴。
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料噴射ノズルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7に、自動車用等のエンジンに適用される燃料噴射ノズルの一例を示す。同図に示すように、燃料噴射ノズル50は、ソレノイドコイル51、スプリング52、コア53、ニードルバルブ54、ノズルボディ55等を備えて構成されている。
【0003】
筒状に形成されたノズルボディ55の先端部には、テーパ状のバルブシート55aが形成されている。ノズルボディ55の内部には、ニードルバルブ54が往復動可能に配設されている。ニードルバルブ54先端は、テーパ状に形成され、上記バルブシート55aに着座可能となっている。ニードルバルブ54先端とバルブシート55aとは、着座時に線接触にて互いに当接されるようになっている。
【0004】
ノズルボディ55内部には、ニードルバルブ54とノズルボディ55内周との間に、高圧燃料が供給される燃料室55bが形成されている。またノズルボディ55内部において、そのバルブシート55aとニードルバルブ54先端との着座部よりも先端側には、燃料噴射孔55cが形成されている。
【0005】
一方、ノズルボディ55内部においてニードルバルブ54の基端側には、ソレノイドコイル51が収容されたコア53、及びスプリング52が配設されている。スプリング52は、バルブシート55aに着座させる側にニードルバルブ54を付勢している。
【0006】
以上のように構成された燃料噴射ノズル50において、ソレノイドコイル51への通電がなされると、それにより発生する電磁吸引力によって、ニードルバルブ54がスプリング52の付勢力に抗してコア53に向けて移動する。これにより、ニードルバルブ54がバルブシート55aから離間されると、上記燃料室55bと燃料噴射孔55cとが連通されて、燃料室55b内の高圧燃料が燃料噴射孔55cを通じて噴射される。
【0007】
ここでソレノイドコイル51への通電が停止されると、スプリング52の付勢力によってニードルバルブ54は、バルブシート55aに着座される。その結果、上記燃料室55bと燃料噴射孔55cとの連通が遮断され、噴射が停止される。
【0008】
さて、こうした燃料噴射ノズル50では、ニードルバルブ54の摺動を許容すべく、ノズルボディ55内周とニードルバルブ54外周との間に若干のクリアランスが形成されている。そのため、ニードルバルブ54の中心軸が本来あるべき位置からずれたり、傾いたりすることがある。
【0009】
ここでニードルバルブ54の中心軸が傾いた場合、コア53に対してニードルバルブ54は、その基端のエッジにて突き当たるようになり、片当たりが生じてコア53やニードルバルブ54の損傷を招く虞がある。そこで従来、ニードルバルブ54基端のエッジを面取り加工することで、中心軸の傾き発生時のコア53に対するニードルバルブ54の当接部を鈍角として、そうした中心軸の傾きによるコア53とニードルバルブ54との当接部の損傷を抑制する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0010】
【特許文献1】
特開平11―200980号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のようなニードルバルブ54の中心軸のずれや傾きが生じると、着座時にニードルバルブ54先端とバルブシート55aとが片当たりして、それらが偏摩耗されるようにもなる。そうした偏摩耗が生じると、ニードルバルブ54先端とバルブシート55aとの間に形成される燃料流路の形状や面積が不適切に変化して、燃料噴射量等の燃料噴射制御における精度の悪化等の不具合を招くこととなる。
【0012】
従来、そうしたニードルバルブ54先端とバルブシート55aとの接触部の偏摩耗については、ニードルバルブ54やバルブシート55aに耐摩耗性の高い材料を使用したり、それらの加工精度を向上させたりすることで対処する他なく、燃料噴射ノズルの製造コストの増大を招く要因となっていた。
【0013】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、バルブシートとニードルバルブ先端との接触部の偏摩耗を好適に抑制することのできる燃料噴射ノズル提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
以下、上述した目的を達成するための手段及びその作用効果を記載する。
請求項1に記載の発明は、ノズルボディ内部に往復動可能に配設されて、該ノズルボディ内部に形成されたバルブシートに着座されるニードルバルブを備える燃料噴射ノズルにおいて、前記ニードルバルブの往復動に応じてその径方向に放射状に吐出される燃料の流れを形成させる燃料通路を備えるようにしたものである。
【0015】
上記構成では、ノズルボディ内部をニードルバルブが往復動されると、燃料が燃料通路を通じて該ニードルバルブの径方向に放射状に吐出される。そしてニードルバルブは、そうした燃料の吐出に伴う反力を受けるようになる。よって上記構成では、そうした反力により、ニードルバルブの中心軸のずれや傾きを抑制することが可能となり、バルブシートに対するニードルバルブ先端部の片当たりが抑えられるようになる。したがって、バルブシートとニードルバルブの先端部との接触部の偏摩耗の発生を抑制することができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の燃料噴射ノズルにおいて、前記燃料通路は、前記バルブシートに着座されるテーパ状の前記ニードルバルブの先端部に開口され、前記燃料を吐出させる吐出口を有することをその要旨とする。
【0017】
上記構成では、ニードルバルブの往復動に応じて、そのテーパ状の先端部に形成された吐出口から燃料がバルブシートに向けて吐出されるようになる。そのため、燃料吐出に伴う反力をより好適に発生させ、ニードルバルブの中心軸のずれや傾きをより効果的に抑制することができる。
【0018】
なおニードルバルブの開弁時、すなわちニードルバルブをバルブシートから離間させるときに、そうした燃料の吐出が行われるのであれば、上記反力によりニードルバルブの開弁がアシストされるようになり、開弁時の応答性が向上されるようにもなる。
【0019】
また請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の燃料噴射ノズルにおいて、前記燃料通路は、前記ニードルバルブの前記先端部よりも基端側に形成された燃料の流入口を有することをその要旨とする。
【0020】
上記構成のように燃料通路の吐出口、流入口を形成することで、ニードルバルブの往復動に応じて、流入口から流入され、吐出口から吐出される燃料の流れを好適に形成することが可能となる。
【0021】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の燃料噴射ノズルにおいて、前記吐出口の開口面積は、前記流入口の開口面積に比して小さく形成されることをその要旨とする。
【0022】
上記構成のように吐出口及び流入口の開口面積を設定することで、流入口から吐出口への燃料の流れが形成され易くなり、ニードルバルブの往復動に応じて吐出口から燃料をより好適に吐出させることができる。
【0023】
また請求項5に記載の発明は、ノズルボディ内部に往復動可能に配設されて、テーパ状に形成された先端部を有して、該ノズルボディ内部に形成されたテーパ状のバルブシートに着座されるニードルバルブを備える燃料噴射ノズルにおいて、前記ニードルバルブの内部にその径方向に放射状に延伸され、前記ニードルバルブの先端部に形成された複数の吐出口を有する第1の燃料通路と、前記ニードルバルブの内部において前記第1の燃料通路と連通され、且つ前記ニードルバルブの外周にあって前記先端部よりも基端側に形成された流入口を有する第2の燃料通路とを備えることをその要旨とする。
【0024】
上記構成では、ニードルバルブが往復動されると、上記流入口から第2の燃料通路内に燃料が流入され、更に第1の燃料通路を通って上記吐出口から吐出されるように燃料が流れるようになる。よって、ニードルバルブの往復動に応じて、ニードルバルブの径方向に放射状に燃料が吐出されるようになる。そうした燃料吐出の反力により、ニードルバルブの中心軸のずれや傾きを抑制することが可能となり、バルブシートに対するニードルバルブ先端部の片当たりが抑えられるようになる。したがって、バルブシートとニードルバルブの先端部との接触部の偏摩耗の発生を抑制することができる。
【0025】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の燃料噴射ノズルにおいて、前記第1の燃料通路の流路面積は、前記第2の燃料通路の流路面積に比して小さく形成されることをその要旨とする。
【0026】
上記構成のように第1及び第2の燃料通路の流路面積を設定することで、流入口から吐出口への燃料の流れが形成され易くなり、ニードルバルブの往復動に応じて吐出口から燃料をより好適に吐出させることができる。
【0027】
また、請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の燃料噴射ノズルにおいて、前記第1の燃料通路の延伸方向と前記ニードルバルブの中心軸とがなす角度を、前記バルブシートの表面に対する垂線と前記ニードルバルブの中心軸とがなす角度と略同一に形成するものである。
【0028】
上記構成では、吐出口から吐出される燃料が、バルブシート表面に略垂直に吹きつけられるようになるため、その吐出に伴う反力を、より効果的にニードルバルブに作用させることができる。
【0029】
また請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の燃料噴射ノズルにおいて、前記吐出口を3つ以上備えることをその要旨とする。
上記構成のように、吐出口を少なくとも3つ設け、3箇所以上から燃料を吐出させれば、ニードルバルブの中心軸が所定の位置にあるときに、燃料吐出に伴う反力が釣り合いを保つようになる。そのため、ニードルバルブの中心軸が適正な位置にあるときに、それら各吐出口からの燃料吐出に伴う反力を釣り合わせることが比較的容易に行なえるなど、その中心軸のずれや傾きの抑制をより容易かつ適切に行うことができる。
【0030】
また請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の燃料噴射ノズルにおいて、前記吐出口はそれぞれ、前記ニードルバルブの中心軸周りに等角度間隔で配設されてなることをその要旨とする。
【0031】
上記構成では、ニードルバルブの往復動に応じて、その中心軸周りに等角度間隔の位置から燃料が吐出されるようになる。そのため、ニードルバルブの中心軸が適正な位置にあるときに、それら各吐出口からの燃料吐出に伴う反力を釣り合わせることが比較的容易に行なえるなど、その中心軸のずれや傾きの抑制をより容易かつ適切に行うことができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る燃料噴射ノズルを具体化した一実施の形態を図1〜図4を参照し説明する。
【0033】
図1に示されるように、燃料噴射ノズル10は、ソレノイドコイル11、スプリング12、コア13、ニードルバルブ14、ノズルボディ15等を備えて構成されている。
【0034】
ノズルボディ15は略中空筒状に形成されており、その先端部の内周には、テーパ状のバルブシート16が形成されている。またノズルボディ15のバルブシート16よりも先端側には、同ノズルボディ15の内外を連通する小径の燃料噴射孔18が形成されている。
【0035】
ノズルボディ15の内部には、ニードルバルブ14が往復動可能に配設されている。ニードルバルブ14の先端は、テーパ状に形成され、上記バルブシート16に着座可能となっている。ニードルバルブ14の先端は着座時に、バルブシート16と線接触されるようになっている。またノズルボディ15内周とニードルバルブ14との間には、高圧燃料が供給される燃料室17が形成されている。
【0036】
ノズルボディ15の内部にあって、上記ニードルバルブ14の基端側には、強磁性体で形成されたコア13が固定されており、その外周にはソレノイドコイル11が配設されている。これらコア13及びソレノイドコイル11によって、ニードルバルブ14に対する電磁吸引力を発生する電磁石が構成されている。またノズルボディ15内部の上記ニードルバルブ14の基端側には、スプリング12が配設されており、ニードルバルブ14はそのスプリング12によってノズルボディ15先端側に向けて、すなわちバルブシート16側に向けて付勢されている。
【0037】
更に上記ニードルバルブ14先端部には、同ニードルバルブ14の中心軸L1の傾きやずれを自律的に補正する燃料通路が形成されている。以下、そうした本実施の形態の燃料噴射ノズル10における燃料通路の構成について詳細に説明する。
【0038】
図2に、燃料噴射ノズル10の先端部の断面構造を示す。同図に示すように、ニードルバルブ14先端部には、径の異なる2種の丸穴21,22がそれぞれ複数(ここでは各4つ)形成されている。
【0039】
より大径の丸穴21は、ニードルバルブ14外周にあって、そのバルブシート16との接触部Pよりも基端側にそれぞれ開口されている。各丸穴21は、中心軸L1の垂直方向に延伸されており、ニードルバルブ14の中心の点Oにて互いに接続されている。
【0040】
一方、より小径の丸穴22は、上記丸穴21よりも更に先端側のテーパ状となったニードルバルブ14の外周部分において、同ニードルバルブ14の上記バルブシート16との接触部Pの基端側に開口されている。各丸穴22はそれぞれ上記点Oに向けて延伸されている。そして、その点Oにて、これら4つの小径の丸穴22、及び上記4つの大径の丸穴21のすべてが接続されている。
【0041】
こうした丸穴22は、バルブシート16の表面に対して略直交する方向に延伸されている。すなわち、丸穴22の延伸方向とニードルバルブ14の中心軸L1とがなす角度θ1は、バルブシート16の表面に対する垂線とニードルバルブ14の中心軸L1とがなす角度θ2と略同一に形成されている。
【0042】
なお、図3に図2のA−A線に沿ったニードルバルブ14の断面構造を示すように、各大径の丸穴21は、上記点Oを中心として、ニードルバルブ14の中心軸L1周りに等角度間隔(ここでは90°)に、放射状に形成されている。また各小径の丸穴22も、同様に中心軸L1周りに等角度間隔に、放射状に形成されている。
【0043】
続いて、以上説明したように構成された本実施の形態の燃料噴射ノズル10の作用を説明する。
上記燃料噴射ノズル10において、ソレノイドコイル11への通電がなされると、それにより発生する電磁吸引力によって、上記スプリング12の付勢力に抗してコア13がソレノイドコイル11側に移動する。これにより、ニードルバルブ14がバルブシート16から離間され、上記燃料室17と燃料噴射孔18とが連通されて、高圧燃料が燃料噴射孔18を通じて噴射される。その後、ソレノイドコイル11への通電が停止されると、スプリング12の付勢力により、ニードルバルブ14がバルブシート16に着座され、燃料室17と燃料噴射孔18との連通が遮断されて、燃料噴射が停止される。
【0044】
図4に、ニードルバルブ14がバルブシート16に着座される直前の、すなわちニードルバルブ14が閉弁される直前の燃料噴射ノズル10先端部の状態を示す。
【0045】
同図に示すように、このときのニードルバルブ14先端部とバルブシート16との隙間は非常に狭くなっており、その隙間を通っては高圧燃料が流れ難い状態となる(図中矢印A)。そのため、このときには、多くの高圧燃料が、ニードルバルブ14内部の上記丸穴21及び丸穴22を通って流れるようになる(図中矢印B)。
【0046】
丸穴21,22を通過して流れる高圧燃料は、ニードルバルブ14先端に形成された4つの丸穴22の開口からバルブシート16に向けて吐出される。そうした高圧燃料の吐出に応じてニードルバルブ14には、反力Fが作用するようになる。ニードルバルブ14の中心軸L1にずれが生じていなければ、各丸穴22からの高圧燃料の吐出に応じた反力Fの大きさは等しくなる。また各丸穴22がニードルバルブ14の中心軸L1周りに等角度間隔に形成されている。そのため、ニードルバルブ14の径方向においては、すなわち中心軸L1の垂直方向においては、各吐出口からの燃料吐出による反力Fが釣り合いを保つようになる。
【0047】
一方、ニードルバルブ14の中心軸L1が本来あるべき位置L0からずれ、片当たりが生じた状態となると、高圧燃料の吐出される各丸穴22の開口とバルブシート16との距離が丸穴22毎に異なるようになる。このときの高圧燃料の吐出に応じた反力Fの大きさは、その距離が小さくなるほど大きくなる。
【0048】
こうした反力Fの大きさを、上記各丸穴22及びその各丸穴22から吐出された高圧燃料によってニードルバルブ14が受ける各反力Fに添え字a〜dを付して図5を参照し説明する。
【0049】
図5に、丸穴22bの開口からバルブシート16までの距離が縮小され、その丸穴22bとは反対方向に延伸された丸穴22aの開口からバルブシート16までの距離が拡大されるように、ニードルバルブ14の中心軸L1のずれが生じたときの状態を示す。このときのバルブシート16までの距離の縮小された丸穴22bの開口からの高圧燃料の吐出に応じた反力Fbは、丸穴22aの開口からの高圧燃料の吐出に応じた反力Faよりも大きくなる。一方、残りの2つの丸穴22c,22dの開口については、バルブシート16までの距離は互いに等しく、両開口からの高圧燃料の吐出に応じた反力Fc,Fdの大きさは互いに等しくなる。そのため、各反力Fa〜Fdの合力Ftは、中心軸L1のずれを縮小させる側に作用するようになる。
【0050】
このようにニードルバルブ14の中心軸L1のずれが生じた場合には、上記丸穴21,22を通じた高圧燃料の流れにより、そのずれを縮小させる側への力が発生される。そのため、この燃料噴射ノズル10では、ニードルバルブ14の調芯が自律的になされるようになる。
【0051】
ちなみに、こうした本実施の形態の燃料噴射ノズル10では、丸穴22が上記第1の燃料通路に、丸穴21が上記第2の燃料通路に、それぞれ対応する構成となっている。更に丸穴21の開口が上記流入口に、丸穴22の開口が上記吐出口にそれぞれ対応する構成となっている。
【0052】
なお、こうした燃料噴射ノズル10では、摩耗による燃料噴射開始時の噴射量の立ち上がりの遅れが抑えられるようにもなる。以下、その理由を説明する。
図6(a)は、ニードルバルブ14の接触部Pに摩耗が生じていないときの燃料噴射開始直後における燃料噴射ノズル10先端の状態を示している。同図に示すように、ニードルバルブ14先端とバルブシート16とが離間され、それらの隙間を流れる高圧燃料の流勢によって、ニードルバルブ14をバルブシート16から離間させる揚力Fpが発生する。
【0053】
なおこのとき、本実施の形態の燃料噴射ノズル10では、上記丸穴21,22を通じても高圧燃料が流れ、丸穴22の開口からバルブシート16に向けて高圧燃料が吐出される。この吐出に応じた反力Fによっても、ニードルバルブ14をバルブシート16から離間させる揚力Fuが発生する。そのため、ニードルバルブ14は、上記ソレノイドコイル11の発生する電磁吸引力に加え、この揚力Fp及び揚力Fuによるアシストを受け、速やかに開かれるようになっている。
【0054】
同図(b)には、上記接触部Pの摩耗が生じたときの燃料噴射開始直後における燃料噴射ノズル10先端の状態が示されている。同図に示すように、接触部Pが摩耗すると、ニードルバルブ14先端とバルブシート16との隙間が狭くなり、それらの隙間を流れる高圧燃料の流量が減少するため、上記揚力Fpが小さくなってしまう。しかしながら、上記揚力Fuの大きさは、そうした接触部Pの摩耗によって減少することはなく、むしろ丸穴21,22を通る高圧燃料の流量が増大することで、その大きさは増大するようになる。
【0055】
ここで、ニードルバルブ14先端に上記丸穴21,22が形成されておらず、上記揚力Fuによるアシストを受けられないのであれば、接触部Pの摩耗による揚力Fpの減少により、ニードルバルブ14の上昇速度が低下して、摩耗の進行と共に噴射開始時の燃料噴射量の立ち上がりが遅れてしまう。その点、この燃料噴射ノズル10では、丸穴21,22を流れる高圧燃料によって発生される揚力Fuによるアシストを、接触部Pの摩耗に拘わらず受けることができるため、摩耗の進行に伴うニードルバルブ14の上昇速度の低下が好適に抑えられるようになる。
【0056】
以上説明したように、上記実施の形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ニードルバルブ14の中心軸L1の偏心を抑制することができる。またそれにより、バルブシート16に対するニードルバルブ14の片当たりを抑え、偏摩耗の発生を抑制することができる。
【0057】
(2)ニードルバルブ14開弁の応答性を向上することができる。
(3)接触部Pの摩耗によるニードルバルブ14の開弁の遅れを抑制し、経時変化による燃料噴射量の変化を抑制することができる。
【0058】
(4)ニードルバルブ14の中心軸L1の偏心やニードルバルブ14開弁の応答性の変化による燃料噴射量の変化が抑制されるため、燃料噴射の制御精度が向上されるようにもなる。
【0059】
以上、説明した実施の形態を以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、吐出口を有する第1の燃料通路(丸穴22)を、バルブシート16の表面に対して略直交する方向に延伸していたが、燃料の吐出に伴いニードルバルブ14に作用する反力を十分に確保できるのであれば、上記第1の燃料通路の延伸方向を適宜変更しても良い。また流入口を有する第2の燃料通路(丸穴21)についても、同様にその延伸方向は任意に変更しても良い。
【0060】
・上記構成では、上記4つの第2の燃料通路(丸穴21)、及び上記4つの第1の燃料通路(丸穴22)を、ニードルバルブ14の中心軸L1周りに等角度間隔にそれぞれ配設するようにしていたが必ずしもそのようにしなくても良い。中心軸L1が適正な位置にあるときに、それら燃料通路を通じた燃料の流入、吐出に伴いニードルバルブ14に作用するその径方向の力の釣り合いを保つことができるのであれば、それらを等角度間隔に配設しなくても、中心軸L1のずれや傾きを好適に抑制することはできる。
【0061】
・上記実施の形態では、丸穴21を4つ形成して流入口を4つ備える燃料通路をニードルバルブ14に形成するようにしていたが、流入口、及びその流入口を有する第2の燃料通路(丸穴21)の数は任意に変更しても良い。
【0062】
・上記実施の形態では、丸穴22を4つ形成して吐出口を4つ備える燃料通路をニードルバルブ14に形成するようにしていたが、吐出口及びそれを有する第1の燃料通路(丸穴22)の数についても、適宜変更することができる。例えばニードルバルブ14の中心軸周りに3つ以上の吐出口が形成されていれば、その中心軸L1が適正な位置にあるときに、燃料吐出に伴う反力を釣り合わせることが可能となり、中心軸L1のずれや傾きを容易且つ適正に抑制することができるようになる。もっとも、ニードルバルブ14の中心軸L1に対して予め荷重が作用しているような場合には、2つ以下の吐出口のみでも、同様の中心軸L1のずれや傾きの抑制が可能となることもある。
【0063】
・上記実施の形態では、燃料の流入口を有する第2の燃料通路(丸穴21)、及び燃料の吐出される第1の燃料通路(丸穴22)を各断面円形状の穴としてニードルバルブ14内部に形成するようにしたが、それら燃料通路の断面形状は、これに限らず適宜変更しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る燃料噴射ノズルの断面図。
【図2】同燃料噴射ノズル先端部の断面図。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図。
【図4】同燃料噴射ノズル先端部のニードルバルブ閉弁直前の状態を示す断面図。
【図5】軸ずれ発生時の反力の発生状態を例示する図。
【図6】(a)接触部の摩耗非発生時、及び(b)発生時の同燃料噴射ノズル先端部のニードルバルブ開弁直後の状態を示す断面図。
【図7】従来の燃料噴射ノズルの断面図。
【符号の説明】
10,50…燃料噴射ノズル、11,51…ソレノイドコイル、12,52…スプリング、13,53…コア、14,54…ニードルバルブ、15,55…ノズルボディ、16,55a…バルブシート、17,55b…燃料室、18,55c…燃料噴射孔、21,22,22a,22b,22c,22d…丸穴。
Claims (9)
- ノズルボディ内部に往復動可能に配設されて、該ノズルボディ内部に形成されたバルブシートに着座されるニードルバルブを備える燃料噴射ノズルにおいて、
前記ニードルバルブの往復動に応じて、その径方向に放射状に吐出される燃料の流れを形成させる燃料通路を備える
ことを特徴とする燃料噴射ノズル。 - 前記燃料通路は、前記バルブシートに着座されるテーパ状の前記ニードルバルブの先端部に開口され、前記燃料を吐出させる吐出口を有する請求項1に記載の燃料噴射ノズル。
- 前記燃料通路は、前記ニードルバルブの前記先端部よりも基端側に形成された燃料の流入口を有する請求項2に記載の燃料噴射ノズル。
- 前記吐出口の開口面積は、前記流入口の開口面積に比して小さく形成される請求項3に記載の燃料噴射ノズル。
- ノズルボディ内部に往復動可能に配設されて、テーパ状に形成された先端部を有して、該ノズルボディ内部に形成されたテーパ状のバルブシートに着座されるニードルバルブを備える燃料噴射ノズルにおいて、
前記ニードルバルブの内部にその径方向に放射状に延伸され、前記ニードルバルブの先端部に形成された複数の吐出口を有する第1の燃料通路と、
前記ニードルバルブの内部において前記第1の燃料通路と連通され、且つ前記ニードルバルブの外周にあって該吐出口よりも更に基端側に形成された流入口を有する第2の燃料通路と、
を備えることを特徴とする燃料噴射ノズル。 - 前記第1の燃料通路の流路面積は、前記第2の燃料通路の流路面積に比して小さく形成される請求項5に記載の燃料噴射ノズル。
- 前記第1の燃料通路の延伸方向と前記ニードルバルブの中心軸とがなす角度は、前記バルブシートの表面に対する垂線と前記ニードルバルブの中心軸とがなす角度と略同一に形成されてなる請求項5又は6に記載の燃料噴射ノズル。
- 前記吐出口を、3つ以上備える請求項1〜7のいずれかに記載の燃料噴射ノズル。
- 前記吐出口はそれぞれ、前記ニードルバルブの中心軸周りに、等角度間隔で配設されてなる請求項8に記載の燃料噴射ノズル。
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2003
- 2003-04-25 JP JP2003121851A patent/JP2004324571A/ja active Pending
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