JP2004324371A - 組立式構造物の耐火被覆構造物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】組立式構造物表面の凹部を耐火性の蓋材で塞ぎ、この蓋材表面を覆う耐火被覆材層を設けることを特徴とする組立式構造物の耐火被覆構造物であり、例えば、組立式構造物表面の凹部に蓋材を固定する金具が設けられており、該金具は構造物の上記凹部壁面または上記凹部周辺表面に固着される接合部、蓋材の支持部、および蓋材表面の位置決め部を有する耐火被覆構造物。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に凹部を有する組立式構造物について、その耐火被覆構造物に関するものであり、特にセグメントを組立て製造するシールドトンネルの耐火被覆構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで、組立式構造物の耐火に関しては、特にトンネルにおいて、構造物表面に二次覆工のコンクリートを設けることによって耐火機能を持たせてきた。しかしながら、近年はトンネル建設コストを低減する方策として、二次覆工コンクリートを省略し、高強度コンクリートを用いたRCセグメントや鋼製セグメントならびに鋼殻と高強度コンクリートの合成セグメントを用いたシールドトンネル工法が用いられるようになった。これらの二次覆工を省略したトンネルでは、二次覆工コンクリートに代わる耐火対策が求められており、これまでに、耐火パネルを用いた構造(特許文献1参照)、耐火塗料(特許文献2参照)および耐火モルタル(特許文献3参照)などの耐火被覆が提案されている。特に、トンネルの表面に直接耐火被覆材を吹付けて施工する方法は、施工作業の効率が良く、しかも、耐火材の継ぎ目のない仕上がりを得ることができる点で優れている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−201896号公報
【特許文献2】特許第2857453号公報
【特許文献3】特許第3223255号公報
【0004】
しかしながら、シールドトンネルの一次覆工などの組立式構造物においては、構造部材どうしの接合箇所に継ぎ手金具等を組入れる必要があり、組立式構造物の表面が凹凸になることが多い。特にセグメントのボルトボックスはその数が極めて多く、またボルトボックス1つあたりの容積が大きい。このような組立式構造物に対して耐火被覆を施す場合、特にこのような構造物の表面に耐火被覆材を直接に吹付け施工するケースでは、凹部の作業スペースが狭いために作業効率が著しく低下し、しかも凹部内面に耐火材の施工厚さが均一になるように制御しながら耐火材を被覆することが困難な場合があり、また耐火材施工後の仕上がり面に凹部の跡が残って美観性を損なうなどの問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の表面に凹部を有する組立式構造物の耐火構造における上記問題を解決したものであり、組立式構造物の耐火構造として充分な耐火性能を有し、作業効率に優れ、しかも耐火被覆材の仕上がり面が平坦であって美観性に優れた耐火被覆材構造物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決する手段として、組立式構造物表面の凹部を耐火性(不燃性または難燃性)の蓋材で塞ぎ、その表面を耐火被覆することによって上記目的を達成した。すなわち、本発明によれば以下の構成からなる耐火被覆構造物が提供される。
【0007】
(1)表面に凹部を有する組立式構造物の上記凹部を耐火性の蓋材で塞ぎ、この蓋材表面を覆う耐火被覆材層を設けたことを特徴とする組立式構造物の耐火被覆構造物。
(2)表面に凹部を有する組立式構造物の上記凹部に、蓋材を固定する金具が設けられており、該金具が構造物の上記凹部壁面または上記凹部周辺表面に固着される接合部、蓋材の支持部、および蓋材表面の位置決め部を有する上記(1)の耐火被覆構造物。
(3)蓋材を固定する金具が板状であって、片側は組立式構造物の凹部壁面に貼着される接合部を形成し、他方の側は少なくとも2分割して折り曲げ可能であって、その一方は蓋材裏面側に突き出して蓋材の支持部を形成し、他方は蓋材表面側に突き出して位置決め部を形成する上記(2)の耐火材構造物。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明は、表面に凹部を有する組立式構造物の上記凹部を耐火性の蓋材で塞ぎ、この蓋材表面を覆う耐火被覆材層を設けたことを特徴とする組立式構造物の耐火被覆構造物に関する。ここで、凹部とは、組立式構造物を構築する場合にその製造工程上の理由や設計上の理由等により、組立式構造物の表面に存在する凹部のことを云う。例えば、シールド工法に用いられるセグメントに存在するボルトボックス、排水溝、配線溝、配管溝、柱,梁,桁,床,壁又は天井で囲まれた部分、構造物表面に表れているジャンカ等が挙げられ、該凹部は貫通孔であっても良い。また、斫りやコンクリートカッター等により構造物の一部分を除去した凹状又は孔状の部分も本発明で云う凹部に含まれる。
【0009】
本発明の表面に凹部を有する組立式構造物とは、建築施工或いは土木施工によって得られる構造物であって、あらかじめ工場または建設現場で製造された構造部材を接合して組み立てる構造物を云う。例えば各種セグメントによって組み立てられるトンネル構造物、プレキャストコンクリート製スラブを用いて組み立てた橋梁やスラブ軌道、プレキャストガードフェンスを組み立てた道路の防護柵、ボックスカルバートを組み立てた共同溝、プレキャストコンクリート製柱やカーテンウォールを組み立てたビルなどが該当する。
【0010】
上記組立式構造物表面の凹部を塞ぐ蓋材は、(イ)火災下でも変形せず、また有毒ガスも発生せず、(ロ)耐火被覆材の施工によって変形や破損を生じない耐火性すなわち不燃性ないし難燃性の材料が用いられる。組立式構造物の凹部を塞ぐ蓋材の表面はこの凹部周辺の表面と略同一面であることが好ましい。ただし、この蓋材表面と構造物凹部周辺の表面との間に僅かな段差が生じても良い。この蓋材表面と構造物凹部周辺の表面の段差は作業効率の面からは塞がれる凹部の深さの1/5以下が好ましい。蓋材表面と構造部凹部周囲の表面の段差が塞がれる凹部の深さの1/5を上回ると、蓋材を設けても段差部分の吹付けに時間がかかり、しかも凹部の開口形状よりも小さい蓋材を用いた場合には段差が凹部の内側に生じるので、上記段差が凹部の深さの1/5よりも大きいと凹部内部壁面への吹付け施工面積が大きくなると共に、凹部内の狭いスペースに吹付けノズルを入れて吹付け作業を行わねばならないために作業性が大幅に低下する。また、上記段差が凹部の深さの1/5よりも大きいと、凹部内で作業する間は耐火被覆材の圧送量、空気圧、吹付けノズルから吹付け施工面までの距離等の調整を凹部外での作業時と異なるように調整する必要があり、これを調整しないと吹付け後の仕上がり面の凹凸が大きくなる。
【0011】
また美観性の面から上記段差は耐火被覆材層の厚さの1/3以下が好ましく、1/10以下が更に好ましい。上記段差が耐火被覆材層の厚さの1/3以下であると、吹付け施工後の仕上げ面に上記段差による凹凸が殆ど表れず、1/10以下であれば全く表れない。蓋材の具体的な材料としては、例えば、鉄やステンレス鋼の金属製の板もしくはメッシュ、石膏やセメントを用いた無機質系板もしくはブロック体、耐熱性の樹脂を用いた板もしくはメッシュ、ガラス繊維や炭素繊維製のメッシュまたはシートなどのうち少なくとも1種以上で形成することができる。蓋材の形状および寸法は組立式構造物の凹部または開口部を塞ぐまたは覆うことができる形状と寸法であれば良い。
【0012】
上記蓋材の固定手段は、耐火被覆材の施工によって蓋材もしくは蓋材の固定部が変形や破損を招かず、かつ蓋材表面が構造物の凹部周辺の表面とほぼ同一面になるように蓋材を固定するものが好ましい。例えば、蓋材を固定する金具による方法、固定部を接着剤によって構造物の凹部または凹部周辺に固定する方法、インサートナットまたはアンカーボルトを構造物の凹部または凹部周辺に設け、蓋材に設けた孔にボルトを挿通してインサートナットで固定し、あるいは蓋材の孔にアンカーボルトを挿通してナットで固定する方法、コンクリート釘により蓋材を構造物の凹部または凹部周辺に打ちつける方法、蓋材の金属部分を構造物の凹部または凹部周辺の金属部分に溶接する方法等が採用できる。特に蓋材を金具によって固定する方法は、容易に蓋材表面と構造部の凹部周辺の表面との段差を無くすことができるので好ましい。なお、先に述べたように、塞がれる凹部の深さの1/5以下であれば、蓋材表面と構造物の凹部周辺の表面との間に僅かな段差が生じるものでもよい。
【0013】
上記蓋材を固定する金具の一例を図1に示す。図1(A)に示す金具10は板状であって、片側11は組立式構造物の凹部壁面に固着される接合部を形成している。ここで、固着とは、例えば貼着、螺着、溶着、接着、係止等を云う。金具10の他方の側12は少なくとも2分割に折り曲げ可能に形成されている。図示する例では、コ字形の外周部分13を残して、中央部14が蓋材の裏面側に突き出して蓋材の支持部を形成する。さらに、他方の外周部13は蓋材15の表面側に突き出して蓋材表面を押さえるように折り曲げることによって蓋材表面の位置決め部を形成する。この外周部13を折り曲げて、蓋材の支持部とともに蓋材15を挟み、蓋材15の表面を位置決めする。なお、金具10の中央部14は、折り曲げ可能な状態に代えて、予めL字型に突き出した状態に形成しても良い。また、金具の接合部、蓋材の支持部、および蓋材表面の位置決め部は、それぞれ独立している必要は無い。例えば接合部が蓋材の支持部を兼ねていれば、蓋材の支持部を兼ねる接合部と蓋材表面の位置決め部からなる金具でも良い。
【0014】
金具の他の例を図2、図3に示した。図2(A)(B)(C)に示す金具20は片側21がL字形に折れ曲がり、他方の側の中央部22は反対側に折れ曲がった形状を有している。折れ曲がった一方の部分21は蓋材の支持部を形成し、他方の折れ曲がった部分22は組立式構造物の凹部周辺の表面に固着される接合部を形成している。また、他方の側の外周部23には溝24に沿って蓋材の表面に折り曲げるように形成されており、蓋材表面の位置決め部を形成している。この金具20を用いて蓋材15を構造物の凹部に取り付けた状態を図2(D)に示す。
【0015】
図3(A)(B)(C)に示す金具30は片側31がL字形に折れ曲がった形状を有しており、この折れ曲がった部分31は蓋材の支持部を形成している。また、他方の側32は溝34に沿って蓋材の表面に折り曲げるように形成されており、蓋材表面の位置決め部を形成している。さらに、中央部分33は組立式構造物の凹部壁面に固着される接合部を形成している。この金具30を用いて蓋材15を構造物の凹部に取り付けた状態を図3(D)に示す。
【0016】
組立構造物表面の凹部を塞いだ蓋材を覆う耐火被覆材は、耐火性能を有する不定形の被覆材であれば良く、例えば耐火塗料、耐火モルタル等が挙げられる。具体例としては、セメントを含む無機結合材に吸熱物質、無機軽量骨材、有機軽量骨材などを配合したものを用いることができる。この吸熱物質としては水酸化アルミニウム、アルミナ水和物、ゼオライト類、ハロイサイト、ドロマイト等が用いられる。また無機軽量骨材としては膨張性粘土、膨張頁岩、膨張バーミュキライト、軽石、スラグやガラスの造粒発泡物等が用いられる。耐火被覆材を施工する方法は限定されない。例えば吹付け、鏝塗り、刷毛塗、ローラー塗等の一般的な方法を用いることができる。
【0017】
本発明の表面に凹部を有する組立式構造物の耐火被覆構造物においては、組立式構造物の上記凹部を塞いで耐火被覆材を被覆するので、構造物表面の凹部は外面に表れないが、耐火被覆施工後の構造物表面の美観性をより高めるために耐火被覆材の表面を仕上げ加工しても良い。また、蓋材で塞がれた凹部内の金属部分を保護する等の目的で、凹部内に防食塗装を塗布しても良く、硬質発泡ウレタン、エアモルタル、急結モルタル、もしくは軽量モルタル等を充填しても良い。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に示す。なお、本例では、(イ)RCセグメントを組み立てた時の継ぎ手部近傍の模擬試験体(以下、単に模擬RCセグメント試験体という)に耐火被覆材を施工し、その作業性と施工後の表面の美観性を評価した。また、(ロ)上記施工(イ)によって得た耐火被覆構造物について耐火試験による耐火性能を確認した。
【0019】
実施例および比較例において用いた模擬RCセグメント試験体、および使用材料とコンクリートの配合は以下のとおりである。
[模擬RCセグメント試験体]:模擬RCセグメント試験体は、2個のRCセグメントを組み立てた時の継ぎ手部近傍を想定し、2個のボルトボックスおよび1個の継ぎ手部鋼材を有する構造物である。この試験体(構造物)のボルトボックスを耐火性の蓋材で塞ぎこの蓋材表面を覆う耐火被覆材層を設けた構造を図4(A)〜(C)に示した。構造物40は縦1200mm、横550mm、高さ550mmのブロックであり、図示するように、この構造物40の中央に縦720mm、横150mm、深さ385mmの凹部41が形成されている。凹部41の中央には接合用の厚さ50mmの鋼板42が、凹部を二分するように開口部に設けられている。つまり、模擬RCセグメント試験体の表面には、縦335mm、横150mmの開口形状のボルトボックスが2つ存在する。この凹部41の開口を塞ぐように蓋材43が取り付けられている。
[使用材料およびコンクリートの配合]:使用材料およびコンクリートの配合を表1に示した。耐火被覆材としては湿式耐火被覆材(製品名:太平洋フェンドライトMII、太平洋マテリアル社製品、膨張バーミキュライトおよびポルトランドセメント含有)を用いた。
【0020】
【表1】
【0021】
[実施例1]
上記模擬RCセグメント試験体のボルトボックス開口部の開口形状(縦335mm、横150mmの長方形)より縦・横とも3mm小さい形状(縦332mm、横147mmの長方形)を有する厚さ5mmの石綿スレートボード(平板)を蓋材として用い、模擬RCセグメントのボルトボックスの開口をこの蓋材で塞ぎ、その上に湿式耐火被覆材を厚さ30mmに吹付け施工した。蓋材として用いた石綿スレートボードは、凹部の壁面にエポキシ系接着剤により貼着した図1の金具を用いて、凹部周辺の表面と石綿スレートボード表面との間に段差がないように固定した。
【0022】
[実施例2]
実施例1と同じ模擬RCセグメント試験体を用いて、この模擬RCセグメント試験体の凹部の開口形状(縦720mm、横150mmの長方形)よりも縦・横とも10mm大きな形状(縦730mm、横160mmの長方形)で厚さ3mmのステンレス板によって模擬RCセグメントのボルトボックス開口部を覆うように塞ぎ、その上に湿式耐火被覆材を厚さ30mmに吹付け施工した。蓋材として用いたステンレス板は、この蓋材に設けた孔にステンレス製ボルトを挿通し、このボルトを凹部周辺の表面に設置したインサートナットに螺合させて固定した。
【0023】
[実施例3]
実施例1と同じ模擬RCセグメント試験体を用いて、この模擬RCセグメント試験体の凹部の開口形状よりも縦・横とも10mm大きな形状(縦730mm、横160mmの長方形)で厚さ10mmの石膏ボードによって模擬RCセグメントのボルトボックス開口部を覆うように塞ぎ、その上に湿式耐火被覆材を厚さ30mmに吹付け施工した。蓋材として用いた石膏ボードは、この蓋材の石膏ボードに設けた孔にステンレス製ボルトを挿通し、このボルトを凹部周辺の表面に設置したインサートナットに螺合させて固定した。
【0024】
[実施例4]
実施例1と同じ模擬RCセグメント試験体を用いて、この模擬RCセグメント試験体の凹部の開口形状よりも縦・横とも10mm大きな形状(縦730mm、横160mmの長方形)で厚さ12.5mmの石膏ボードによって模擬RCセグメントのボルトボックス開口部を覆うように塞ぎ、その上に湿式耐火被覆材を厚さ30mmに吹付け施工した。蓋材として用いた石膏ボードは、この蓋材の石膏ボードに設けた孔にステンレス製ボルトを挿通し、このボルトを凹部周辺の表面に設置したインサートナットに螺合させて固定した。
【0025】
[実施例5]
実施例1と同じ模擬RCセグメント試験体を用いて、この模擬RCセグメント試験体のボルトボックス開口部の開口形状よりも縦・横とも3mm小さい形状(縦332mm、横147mmの長方形)で厚さ5mmの石綿スレートボード(平板)を蓋材として用い、模擬RCセグメントのボルトボックス開口部を蓋材で塞ぎ、その上に湿式耐火被覆材を厚さ30mmに吹付け施工した。この蓋材として用いた石綿スレートボードは、凹部の壁面にエポキシ系接着剤により貼着した図1の金具を用いて、凹部周辺の表面と石綿スレートボード表面との段差が77mmになるように固定した。本例では、構造物のボルトボックス内もその形状に沿って内面に湿式耐火被覆材を厚さ30mmに吹付け施工した。
【0026】
[実施例6]
実施例1と同じ模擬RCセグメント試験体を用いて、この模擬RCセグメント試験体のボルトボックス開口部の開口形状よりも縦・横とも3mm小さい形状(縦332mm、横147mmの長方形)で厚さ5mmの石綿スレートボード(平板)を蓋材として用い、模擬RCセグメントのボルトボックス開口部を蓋材で塞ぎ、その上に湿式耐火被覆材を厚さ30mmに吹付け施工した。この蓋材として用いた石綿スレートボードは、凹部の壁面にエポキシ系接着剤により貼着した図1の金具を用いて、凹部周辺の表面と石綿スレートボード表面との段差が193mmになるように固定した。本例では、構造物のボルトボックス内もその形状に沿って内面に湿式耐火被覆材を厚さ30mmに吹付け施工した。
【0027】
[実施例7]
実施例1と同じ模擬RCセグメント試験体を用いて、この模擬RCセグメント試験体の凹部の開口形状よりも縦・横とも20mm大きな形状(縦740mm、横170mmの長方形)で厚さ5mmのメタルラス(東邦建材社製商品名「ブラインドラスB−5」)によって模擬RCセグメントのボルトボックス開口部を覆うように塞ぎ、その上に湿式耐火被覆材を厚さ30mmに吹付け施工した。この蓋材として用いたメタルラスは、凹部周辺の表面に埋設した針金により凹部周辺の表面に固定した。
【0028】
[比較例1]
実施例1と同じ模擬RCセグメント試験体を用いて、蓋材を設けずにこの模擬RCセグメント試験体の表面に湿式耐火被覆材を厚さ30mmに吹付け施工した。本例では、構造物のボルトボックス内もその形状に沿って内面に湿式耐火被覆材を厚さ30mmに吹付け施工した。
【0029】
[比較例2]
実施例1と同じ模擬RCセグメント試験体を用いて、蓋材を設けずにこの模擬RCセグメント試験体のボルトボックス内に吹付けにより湿式耐火被覆材を充填した上で、更にその表面および凹部周辺の表面に湿式耐火被覆材を厚さ30mmに吹付け施工した。
【0030】
実施例1〜7および比較例1、2の耐火被覆構造物について、耐火被覆材の施工における作業性ならびに耐火被覆材の仕上がり面の美観性を表2に示した。表中の作業性および美観性に関する記号の意味は以下のとおりである。
[作業性]
◎:作業全般に作業スペースが充分にあるので、作業に支障が無い。
○:一部、作業スペースの狭い箇所での作業があり、その部分は作業し難い。
×:作業スペースの狭い箇所での作業が多いので、全般的に作業し難い。
[美観性]
◎:仕上面の表面の凹凸が3mm以下。
○:仕上面の表面の凹凸が3mmを上回り10mm以下。
×:仕上面の表面の凹凸が10mmを上回る。
【0031】
表2の結果に示すように、実施例1〜3および7は、比較例1、2と比較して作業性および美観性に優れている。これは、実施例1〜3および7の構造物は耐火被覆の施工面が平坦であり、かつ耐火被覆材の施工面積および吹付け量が比較例1および2に比べて少ないことによる。特に、実施例1および2の構造物の吹付け施工後の仕上がり面は蓋材表面と構造部凹部周囲の表面の段差による凹凸が外観上わからない。また、実施例3および7の構造物の吹付け施工後の仕上がり面は、蓋材表面と構造部凹部周囲の表面の段差による凹凸があるが、実施例7ではその段差が3mm未満であるため注視しない限り殆ど仕上がり面の凹凸がわからない。なお、実施例4〜6は蓋材表面と構造部凹部周囲の表面の段差による仕上がり面の凹凸が3mmを上回っているため美観性は低いが作業性に優れている。特に実施例4および5はボルトボックス内に吹付けノズル
を入れずに吹付け作業を行うことができる。
【0032】
一方、比較例1および2の構造物では、ボルトボックス内部の狭部に吹付けノズルを入れて耐火被覆材を吹付け施工しなくてはならず、吹付け作業のスペースを確保できないために作業時間が著しく長く、作業効率が大幅に低下している。例えば、幅1mのセグメントを組み立て、直径が12mのリング体とし、更にこのリング体を継いで組み立てたシールドトンネルの場合では、トンネル延長で1m当りのボルトボックスの数の一例は、セグメント間が60個、リング体間が40個あるので、実施例と比較例の作業時間の差は大きい。また、比較例1の構造物では、ボルトボックス壁面の吹き付け施工時に、吹付けノズルから吹付け施工面までの距離が充分取れずに、仕上げ面に吹付け空気の圧力等による凹凸が10mmを超えて生じた。
【0033】
【表2】
【0034】
[実施例8]
実施例1の耐火被覆構造物について耐火試験を行い、耐火性能を確認した。耐火試験における加熱曲線を図5に示した。耐火試験の結果を図6、図7、図8に示した。なお、図6のグラフは、ボルトボックス内深さが190mmの位置(ボルトボックスの略中央)、ボルトボックス内深さが385mmの位置(ボルトボックスの底部)、およびボルトボックス裏側のコンクリート面の温度変化を示す。また、図7のグラフは、鋼板表面から0mmの位置(鋼板と耐火被覆材の界面)、鋼板表面から190mmの位置(ボルトボックス深さの略半分の深さ)、および鋼板表面から385mmの位置(ボルトボックスの底部)における鋼板の温度変化を示す。さらに、図8のグラフは、凹部周辺のコンクリート表面から0mmの位置(コンクリートと耐火被覆材の界面)、凹部周辺のコンクリート表面から80mmの位置(コンクリート内部)、凹部周辺のコンクリート表面から190mmの位置(コンクリート内部)、および凹部周辺のコンクリート表面から385mmの位置(コンクリート内部)における温度変化を示す。これらのグラフに示すように、本発明に係る耐火構造を有する実施例1の模擬RCセグメントはコンクリート表面温度が170℃程度であって、構造物内部の温度は何れも100℃以下であり、充分な耐火性能を有していることが確認された。
【0035】
【発明の効果】
本発明の耐火被覆方法ならびに耐火被覆構造物は、耐火構造として充分な耐火性能を有し、耐火被覆材の仕上がり面が平坦であり美観性に優れ、かつ作業効率に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の耐火構造に用いる蓋材の固定金具の外観図。
【図2】他の固定金具に係り、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は上面図、(D)は取り付け状態の断面模式図。
【図3】他の固定金具に係り、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は上面図、(D)は取り付け状態の断面模式図。
【図4】実施例および比較例に用いた構造物に係り、(A)は上面図、(B)はD−D線断面図、(C)はA−A線断面、(D)はB−B線断面、(E)はC−C線断面。
【図5】耐火試験の加熱曲線を示すグラフ。
【図6】構造物のボルトボックス内部と裏面の温度変化を示すグラフ。
【図7】構造物の鋼材部分の温度変化を示すグラフ。
【図8】構造物のコンクリート部分の温度変化を示すグラフ。
【符号の説明】10−固定金具、11−接合部、12−金具の片方の側、13−位置決め部(金具外周部)、14−支持部(金具中央部)、15−蓋材、20−金具、21−折れ曲がり部(支持部)、22−中央部(接合部)、23−外周部(位置決め部)、24−溝、30−金具、31−折れ曲がり部(支持部)、32−片側(位置決め部)、33−中央部(接合部)、34−溝、40−構造物、41−凹部、42−鋼板、43−蓋材、44−耐火被覆材。
Claims (3)
- 表面に凹部を有する組立式構造物の上記凹部を耐火性の蓋材で塞ぎ、この蓋材表面を覆う耐火被覆材層を設けたことを特徴とする組立式構造物の耐火被覆構造物。
- 表面に凹部を有する組立式構造物の上記凹部に、蓋材を固定する金具が設けられており、該金具が構造物の上記凹部壁面または上記凹部周辺表面に固着される接合部、蓋材の支持部、および蓋材表面の位置決め部を有する請求項1の耐火被覆構造物。
- 蓋材を固定する金具が板状であって、片側は組立式構造物の凹部壁面に貼着される接合部を形成し、他方の側は少なくとも2分割して折り曲げ可能であって、その一方は蓋材裏面側に突き出して蓋材の支持部を形成し、他方は蓋材表面側に突き出して位置決め部を形成する請求項2の耐火材構造物。
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Cited By (3)
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JP2007327174A (ja) * | 2006-06-06 | 2007-12-20 | Kajima Corp | トンネル用セグメント |
JP2009235890A (ja) * | 2008-03-06 | 2009-10-15 | Metropolitan Expressway Co Ltd | 合成セグメントへの内壁取付部材の施工方法および合成セグメントへの内壁取付部材の設置構造 |
JP2010242307A (ja) * | 2009-04-01 | 2010-10-28 | Kajima Corp | トンネル用セグメント |
-
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- 2003-04-28 JP JP2003124441A patent/JP2004324371A/ja active Pending
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