JP2004322535A - 溶液製膜方法及び光学用ポリマーフィルム、偏光板、偏光板保護膜、光学機能性膜、表示装置 - Google Patents

溶液製膜方法及び光学用ポリマーフィルム、偏光板、偏光板保護膜、光学機能性膜、表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】溶液製膜においてフィルムの厚みと光学特性を均一化する。
【解決手段】ポリマーの主たる成分をセルロースアシレートとして、支持体上に流延ドープを流延し溶液製膜を行う。バンド31の反流延面に加熱板51を設け、流延膜35の溶媒を揮発させる。また、バンド31の流延面に沿って凝縮板52を配し、揮発された溶媒を凝縮して回収する。流延面上での風速を0.01〜0.5m/秒とし、流延面が、流延開始位置PSより下向きになるようにバンド31を走行させる。流延面と凝縮板との距離をdmm、凝縮板の温度をTw℃、流延ドープの温度をTs℃とするとき、Q=(Ts−Tw)/d、及び5<Q<100とする。得られるフィルム36は、厚み及び光学特性の均一性に優れ、光学用ポリマーフィルムとして好適であり、さらにこれによって構成される偏光板、偏光板保護膜、光学機能性膜、液晶表示装置は光学特性に優れる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学フィルム及び溶液製膜方法、偏光板、偏光板保護膜、光学機能性膜、表示装置に関するものであり、特に、好ましい光学特性を有する光学フィルムと、その溶液製膜方法と、光学フィルムを用いることによって得られる光学的特性に優れた偏光板と偏光板保護膜、光学機能性膜、表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、液晶セルと、偏光素子と、光学補償シート(位相差板)とからなる。透過型液晶表示装置では、二枚の偏光素子を液晶セルの両側に取り付け、1枚または二枚の光学補償シートを液晶セルと偏光素子との間に配置する。反射型液晶表示装置は、反射板と、液晶セルと、一枚の光学補償シートと、一枚の偏光素子とを順次積層させて得られる。
【0003】
液晶セルは、棒状液晶性分子と、それを封入するための二枚の基板、及び棒状液晶性分子に電圧を加えるための電極層とからなる。液晶セルは、使用する棒状液晶性分子の配向状態の違いにより、透過型としてはTN( Twisted Nematic)と、IPS(In−Plane Switchig)と、FLC(Ferroelectric LiQuid Crystal)と、OCB(Optically Compensatory Bend)と、STN(Super Twisted Nematic)と、VA(Vertically Aligned)等、反射型としては、TN( Twisted Nematic)やHAN(Hybrid Aligned Nematic)等のような様々な表示モードが提案されている。偏光素子は、一般に、偏光膜の両側に二枚の透明保護膜を取り付けた構成を有する。
【0004】
また、光学補償シートは、画像着色を解消したり、視野角を拡大するために、様々な液晶表示装置で用いられている。光学補償シートとしては、延伸複屈折フィルムが従来から使用されており、近年では、延伸複屈折フィルムからなる光学補償シートに代えて、透明支持体上に液晶性分子、特にディスコティック液晶性分子から形成された光学的異方性を有する光学補償シートを使用することが提案されている。
【0005】
ここで、光学的異方性層は、液晶性分子を配向させ、その配向状態を固定することにより形成される。配向状態は、重合性基を有する液晶性分子を用いて、重合反応によって固定されるのが一般的である。液晶性分子は、大きな複屈折を有しており、それぞれ多様な配向形態を示す。このような性質を利用して、近年では、液晶性分子を用いることにより、従来の延伸複屈折フィルムでは得ることができない光学的性質を実現することが可能になった。
【0006】
光学補償シートの光学的性質は、液晶セルの光学的性質、具体的には上記のような表示モードの違いに応じて決定されるものであって、液晶性分子、特にディスコティック液晶性分子を用いると、液晶セルの様々な表示モードに対応する様々な光学的性質を有する光学補償シートを製造することができる。ディスコティック液晶性分子を用いた光学補償シートでは、例えば、TNモードの液晶セル用光学補償シート(例えば、特許文献1〜4参照。)や、IPSモードまたはFLCモードの液晶セル用光学補償シート(例えば、特許文献5参照。)、さらに、OCBモードまたはHANモードの液晶セル用光学補償シート(例えば、特許文献6,7参照。)や、STNモードの液晶セル用光学補償シート(例えば、特許文献8参照。)や、VAモードの液晶セル用光学補償シート(例えば、特許文献9参照。)等の様々な表示モードに対応するものが既に提案されている。
【0007】
しかし、液晶性分子には様々な配向形態があるものの、このような光学異方性のみでは、液晶セルを十分に光学的に補償できない場合もある。そのような場合には、光学補償シートの透明支持体を光学異方性にして、液晶性分子の光学異方性と共に、液晶セルを光学的に補償する方法が提案されている(例えば、特許文献10参照)。
【0008】
以上のような各種の光学用途の製品においては、多機能化が著しく進み、それに伴って、これらの製品の各層を構成するフィルムに対しては、高精度の厚み制御と均一性、さらに光学特性の均一性が求められるようになってきた。例えば、偏光板保護膜における厚味ムラは、偏光素子との貼り合わせの際に生じるシワや、貼り合わせ後の偏光板のカール等の原因となり問題とされる。また、光学フィルムは、表面保護のためにハードコート層や、反射防止のための反射防止層などを塗布により付与されることが多く、厚味ムラはこれらの塗膜の塗布ムラにもつながる。特に、このようなムラが周期的に現れている場合には、液晶表示装置での表示性能を著しく劣化させるという問題がある。そこで、製膜方法について、厚みの均一化を図る提案がなされている(例えば、特許文献11及び12参照。)。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−214116号公報
【特許文献2】
米国特許第5583679号明細書
【特許文献3】
米国特許第5646703号明細書
【特許文献4】
独国特許出願公開第3911620A1号明細書
【特許文献5】
特開平10−54982号公報
【特許文献6】
米国特許第5805253号明細書
【特許文献7】
国際特許出願WO96/37804号
【特許文献8】
特開平9−26572号公報
【特許文献9】
特許第2866372号明細書
【特許文献10】
米国特許第5646703号明細書
【特許文献11】
特開2002−234042号公報
【特許文献12】
特開2002−1745号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、薄層化や積層化及び生産性の向上を図るにつれて、ポリマーの製膜における厚みの要求精度は高まる一方であって、生産性を考慮した製膜方法としては十分なものは得られておらず、高度な厚み均一性と光学特性の均一性とを有するフィルムを得るには至っていない。光学特性、特に複屈折におけるリタデーション値Reやリタデーション値Rthにムラが有る場合にも、製品に大きな影響を与え、例えば、液晶表示装置においては、着色や反転が発生することがあり、また、視野角を拡大するような光学補償シートにおいては、これを液晶表示装置とすると視野角が変化したり、色反転したりすることがあって問題である。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、光学フィルムの厚み及び複屈折のムラを解消し、光学特性に優れたフィルム及び偏光板、偏光板保護膜、光学機能性膜、表示装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、溶媒によりポリマーを溶解してポリマー溶液とし、前記ポリマー溶液を移動する支持体上に流延ダイから流延してから剥ぎ取り乾燥してフィルムとする溶液製膜方法において、前記支持体のポリマー流延面と反対側の面に沿って設けられる加熱手段により、前記支持体を加熱し、前記支持体のポリマー流延面に沿って設けられる凝縮手段により、流延されたポリマー溶液から揮発した溶媒を凝縮して回収することを特徴として構成されている。
【0013】
また、前記支持体上の前記ポリマー溶液の面上での風速を0.01m/秒以上0.5m/秒以下とし、さらに、前記ポリマー溶液が前記支持体に流延を開始される前記支持体上の位置を流延開始位置とするとき、前記流延開始位置における前記ポリマー溶液の走行の向きが下向きであることが好ましい。
【0014】
また、前記凝縮手段の少なくとも前記ポリマー流延面に対面する表面温度をTw(単位;℃)とし、流延された前記ポリマー溶液の温度をTs(単位;℃)とし、前記凝縮手段と前記流延面までの距離をdmmとするとき、温度勾配Qが、Q=(Ts−Tw)/d、及び、5<Q<100の両式を満たすことが好ましく、前記温度勾配Qの変動幅を、前記温度勾配Qの10%以下とすることがさらに好ましい。
【0015】
前記凝縮手段の少なくとも前記流延面との対面する表面部位の温度分布については、これを10℃以内とすることが好ましく、前記凝縮手段と前記流延面までの距離をd(単位;mm)とするとき、前記支持体面の幅方向における前記距離dの変動幅を、前記距離dの平均値の10%以内とすることがさらに好ましい。
【0016】
また、本発明では、互いに異なる前記ポリマー溶液を共流延、あるいは逐次流延することを特徴としており、前記支持体上に流延した直後の前記ポリマー溶液の厚みが10μm以上1000μm以下であって、かつ、前記支持体と前記流延ダイとの相対速度が5m/分以上200m/分以下であることが好ましい。
【0017】
本発明においては、前記ポリマー溶液が、セルロースアシレートと、ポリカーボネートと、アラミド樹脂と、ポリスルフォンと、ポリスチレンとらなるポリマー群より選択される少なくともひとつを含有することが好ましく、セルロースアシレートを用いる場合には、前記セルロースアシレートの6位のアシレート基の置換比率をXとし、その他の位置の置換比率をYとするとき、前記ポリマー溶液に含有されるポリマーの少なくとも50体積%をセルロースアシレートとし、X>0.70、かつ、2.60<(X+Y)<2.99とすることが好ましく、X>0.85、かつ、2.70<(X+Y)<2.99とすることがさらに好ましい。
【0018】
さらに、本発明では、厚みのFFT変換による周波数スペクトルを有する光学用ポリマーフィルムにおいて、前記光学用ポリマーフィルムの任意の2点間における厚み平均値をTA1とし、前記2点間の厚みの偏差の平均値を第1平均偏差MD1とするとき、MD1≦0.10×TA1であって、前記厚みの周波数スペクトルにおける最大スペクトル値が、前記厚み平均値TA1の10%以下であることを特徴として構成されている。
【0019】
前記周波数スペクトルを空間周波数に変換した場合の波長が20cm以下の範囲の最大スペクトル値が、前記厚み平均値TA1の10%以下であることが好ましく、さらに、直交する任意の2方向において測定された厚み平均値をTA2とし、その厚みの偏差の平均値を第2平均偏差MD2とするとき、MD2≦0.1×TA2とし、前記周波数スペクトルを空間周波数に変換した場合の波長が20cm以下の範囲の最大スペクトル値が、前記平均厚みTA2の10%以下であることが望ましい。
【0020】
また、任意の一方向において測定された面方向のリタデーション値Reの偏差の平均値を第3平均偏差MD3とし、面方向のリタデーション値Reの平均値をRA1とするとき、MD≦0.10×RA1であって、前記リタデーション値Reの周波数スペクトルにおける最大スペクトル値が、前記リタデーション値Reの平均値RA1の10%以下であることが好ましい。
【0021】
前記リタデーション値Reの周波数スペクトルを空間周波数に変換した場合の波長が20cm以下の範囲である前記リタデーション値Reの周波数スペクトルにおける最大スペクトル値は、前記リタデーション値Reの平均値RA1の10%以下であることが好ましい。
【0022】
さらに、直交する任意の2方向において測定された前記リタデーション値Reの偏差の平均値を第4平均偏差MD4とし、このリタデーション値Reの平均値をRA2とするとき、MD4≦0.10×RA2であって、前記リタデーション値Reの周波数スペクトルを空間周波数に変換した場合の波長が20cm以下の範囲の最大スペクトル値が、前記リタデーション値Reの前記平均値RA2の10%以下であることが好ましい。
【0023】
任意の一方向において測定された厚み方向のリタデーション値Rthの偏差の平均値を第5平均偏差MD5とし、前記リタデーション値thの平均値をRA3とするときには、MD5≦0.10×RA3であって、前記リタデーション値Rthの周波数スペクトルにおける最大スペクトル値が、前記リタデーション値Rthの平均値RA3の10%以下であることが好ましい。
【0024】
また、厚み方向の前記リタデーション値Rthの周波数スペクトルを空間周波数に変換した場合の波長が20cm以下の範囲の最大スペクトル値が、前記リタデーション値Rthの前記平均値RA3の10%以下であることが好ましい。
【0025】
さらに、直交する任意の2方向において測定された厚み方向のリタデーション値Rthの偏差の平均値を第6平均偏差MD6とし、このリタデーション値Rthの平均値をRA4とするとき、MD6≦0.10×RA4であって、前記リタデーション値Rthの周波数スペクトルを空間周波数に変換した場合の波長が20cm以下の範囲における最大スペクトル値が、前記リタデーション値Rthの前記平均値RA4の10%以下であることが好ましい。
【0026】
なお、前記ポリマーフィルムは、相対湿度10%における表面抵抗率が1×1010以上1×1013であり、任意の2点における前記表面抵抗率の値の差が、その2点の表面抵抗率の平均値の20%以内であることが好ましく、10%以内であることがさらに好ましい。
【0027】
さらに、本発明は、上記の光学用ポリマーフィルムと、上記の溶液製膜方法によって得られた光学用ポリマーフィルムを用いて構成されたことを特徴とする偏光板と、偏光板保護膜と、光学機能性膜と、液晶表示装置とを含んで構成されている。
【0028】
【発明の実施の形態】
[溶液製膜方法]
図1は本発明の溶液製膜方法を実施するための製膜の一実施形態を示している概略工程図である。なお本発明において、ポリマー溶液とは、溶媒によってポリマー成分及び各種添加剤等を溶媒によって溶解、あるいは分散させて得られた溶液、あるいは分散液を意味し、これを、以降の説明においてドープと称するものとする。さらに、後に詳細に説明するドープ調製工程により調製されたものを調製ドープ11と称し、製膜工程において流延されるものであって、調製ドープの性状を流延するのに適した性状に変化させたものを流延ドープ12と称する。
【0029】
製膜工程は流延ドープ調製設備15と、流延設備16と、乾燥設備17と、巻き取り設備18とを、その基本構成としている。流延ドープ調製設備は、調製ドープを仕込むタンク21と送液用のポンプ22と、第1及び第2濾過装置23,24と、加熱装置27と、フラッシュ蒸発装置28とから構成されている。
【0030】
タンク21には、恒温槽21a及び温度計(図示なし)が備えられており、調製ドープ11を加熱、あるいは冷却することが適宜可能である。本発明において、このときの調製ドープの温度は、一旦加熱させてから、冷却し、固形成分の溶解性を向上させることが好ましい。また、加熱または冷却の際には、ドープの種類、中でも、溶媒組成を考慮して、その温度を設定する。特に、混合溶媒を用いるときには、多段階温度設定による加熱、あるいは冷却を行うことが好ましい。
【0031】
調製ドープ11は、ポンプ22によって一定の流量で流延設備16に送られる。調製ドープ11に含まれている不溶解物は、ポンプ13と流延ダイ14との間に設けられた第1及び第2濾過装置23,24によって除去される。また、第1濾過装置23にて濾過した後に、調製ドープ11を送液管に取り付けられている加熱装置27によって加熱し、フラッシュ蒸発装置28を用いて調製ドープ11の溶媒の一部をフラッシュ蒸発させる。なお、加熱装置27は、第1濾過装置23の上流側に取り付けられていてもよい。
【0032】
フラッシュ蒸発装置28は、調製ドープ11を好ましい流延のための流延ドープ12に性状を変化させる目的で用いている。フラッシュ蒸発装置28では、調製ドープ11を高圧状態にし、その後に大気圧中にフラッシュさせ調製ドープ11の中の溶媒の一部を蒸発させる。図示は省略するが、ここで蒸発させた溶媒は、通常は、凝縮器(コンデンサ)を用いて除去し、再利用溶媒として、製膜工程から排出させている。
【0033】
フラッシュ蒸発装置28から送り出された調製ドープ11は、第2濾過装置24を用いて不純物を濾別されてから、流延設備16に送液されることが好ましい。なお、調製ドープ11の一部の溶媒を除去する装置は、上記のようなフラッシュ蒸発装置28に限定されず、例えば、回転薄膜蒸発装置、多重効用蒸発装置など公知のものを本発明に適用することが可能である。さらに、第2濾過装置24と流延設備16との間にインライン静止型混合器(図示せず)を設置することにより、適宜、調製ドープの性状を変化させることも可能である。
【0034】
なお、本発明においては、第1濾過装置23のフィルタとして濾紙を用い、第2濾過装置24のフィルタとしては金属焼結フィルタを用いているが、これに限定はされない。また、本発明は以上の流延ドープ調製設備15に依存するものではない。
【0035】
流延設備16へ送られた流延ドープ12は、流延ダイ14から回転駆動装置(図示なし)により回転している支持体としてのバンド31に流延される。なお、バンド31は、少なくとも第1及び第2のふたつのバックアップローラ32,33により支持されて連続走行している。流延ドープ12は、バンド31上で流延膜35として徐々に溶媒が揮発される。そして、自己支持性を有するフイルム36になると、剥ぎ取りローラ37によりバンド31から剥ぎ取られる。剥取ローラ37は、フリーローラの場合と、駆動ローラの場合とがあるが、駆動する際には、フイルム36のドロー比、テンション、たるみ、のうち少なくとも1つの制御量をもとに駆動していることが好ましい。なお、ここでは、剥ぎ取りローラ37がフイルム36を剥ぎ取ることと、乾燥設備17へ導くこととの両方の機能を有するものとしているが、本発明では、フイルム36を剥ぎ取るための剥ぎ取りローラと、そのフイルム36を乾燥設備17へ導くガイドローラ(図示しない)とが、別個のものとして製膜工程に設けられたものでもよい。
【0036】
乾燥設備17は、テンター装置41とローラ乾燥装置42とから構成されている。テンター装置41では、フィルム36は、その両端が保持されて張力が与えられながら乾燥される。その後、フイルム31は、多数のローラ43が備えられた乾燥装置42にてさらに乾燥されるが、乾燥後には、乾燥装置42に付設された冷却器(図示せず)を通過することにより常温まで冷却されることが好ましい。
【0037】
十分な乾燥処理を施されたフィルム36は、耳切装置46で製品フイルム幅になるようにフイルム36の耳切りが行われることが好ましく、その後は、巻取機47で巻き取られる。なお、本発明においては、各設備間並びに装置間に適宜搬送用のローラ48を設置し、フィルム36を搬送させており、その設置個数は限定されない。ただし、本発明は、上記の乾燥設備17及び巻き取り設備18の構成と、その方法に依存するものではなく、公知である各種の乾燥方法及び巻き取り方法により実施されてよい。
【0038】
本発明の溶液製膜方法に係る流延工程について、図2及び図3を用いて以下に説明する。図2は流延設備16の要部を示す概略図であって、側面からの平面図である。図3は、流延膜35及びバンド31の近傍の概略図であって、図2におけるIV−IV線に沿う断面図である。なお、図2及び図3において、図1と同様の装置及び部材については、図1と同じ符号を付し、説明を略する。流延設備16は、流延ダイ14と、第1及び第2のバックアップローラ32,33と、バンド31と、剥ぎ取りローラ37と、加熱板51と、複数の凝縮板52と、複数の液受け53と、回収タンク56と、送液管とからなる。ただし、本発明はこの流延設備11に限定されるものではない。なお、本実施形態では、流延ドープ12として3種類をそれぞれ調製し、これらを一度の流延操作によって、流延膜35を3層構造としているので、図3においては、これら3層をバンド31側から順次、第1層35a、第2層35b、第3層35cとする。
【0039】
バンド31の反流延膜側の近傍には、バンド31の加熱手段としての加熱板51が設置されており、一方、流延膜の近傍であって、その反バンド側には、揮発溶媒の凝縮手段としての凝縮板52が複数設置されている。
【0040】
加熱板51は、その表面が金属製であって、温度制御機構(図示せず)によってその温度が制御され、バンド31上の流延膜35を加熱し、その溶媒の揮発を促進する。なお、加熱版51の表面材質は、本実施形態に限定されず、例えばセラミック製であってもよい。温度制御機構は、加熱板の部位毎にその調整を独立して行うことが可能なものとなっている。その設定可能温度領域については、常温以上であって、用いる溶媒成分のうち最も高い沸点またはポリマーの耐熱温度以下の範囲であれば、加熱板51として上記の機能を果たすことが可能である。また、加熱温度は、流延ドープ12の種類等により適宜決められるものであり、溶媒の沸点や揮発速度、流延ドープに含まれるポリマー及びその他の各固形成分の耐熱特性と熱依存特性、溶媒と固形成分の親和性等を考慮して適宜設定される。
【0041】
加熱板51は、対面するバンド31の面をほぼ均一に加熱するものであって、バンド31上の流延膜35の全面に対してほぼ均一に熱を加えることができるものとなっている。ここで、均一な加熱性は、溶媒の揮発速度を流延膜35の部位毎に制御することができるように、バンド31に対して部位毎に温度を調節することにより得られる。したがって、この形状は、上記の温度制御が可能であれば、図2に示すような一体型としてもいいし、独立して温度を制御される複数枚を隣接させることにより一体型と同一の面積を確保する様態であってもよい。また、加熱板51は、ほぼ直線に走行させているバンド面に対し概ね平行に設置されている。
【0042】
また、第1及び第2バックアップローラ32,33にラップされているバンド31の温度についても調整可能であることが好ましく、第1、第2のバックアップローラ32,33としては、バンド31を加温するための温度制御機能を有するものを用いることが好ましく、ふたつのバックアップローラのうち、少なくとも流延開始側の一方、つまり第1バックアップローラ32について温度制御手段(図示せず)を設けることが好ましい。これにより、バンド31は、その走行が第1と第2のバックアップローラ31,32間の直線部のときのみならず、第1または第2バックアップローラ上を走行するときにも加温されるので、流延膜35の溶媒の揮発速度をより好ましい様態で制御することができる。
【0043】
また、凝縮板52は、流延膜35の反バンド側近傍に、複数が互いに隙間を有して設置されている。設置区間は、流延開始位置PSの直後の位置から剥ぎ取りローラ37の直前までの区間となっている。また、隣り合う凝集板52同士の間の下方には、それぞれ液受け53を設置しているが、図示はその一部のみとしている。凝縮板52は、その表面が金属製であって、温度制御機構(図示せず)によってその温度がそれぞれ制御され、流延膜35からの気化溶媒を冷却し、凝縮させる。したがって、用いる溶媒成分のうち最も低い沸点をもつ溶媒の沸点以下であって、最も高い凝固点をもつ溶媒の凝固点以上の範囲の設定可能温度領域を有するものであれば、凝縮板52として上記の機能を果たすことが可能である。冷却温度が、揮発した溶媒の凝固点以下であると、凝縮板52の表面にその溶媒成分が固体として付着してしまい、回収が困難となるか、もしくは回収のための溶解手段の設置が必要となるので、溶媒の凝固点以下の設定可能温度領域を有するものとする必要はない。なお、凝縮板52の材質は、熱伝導率が高いものが好ましく、本実施形態に限定されない。
【0044】
凝縮板52の冷却温度は、溶媒の種類等により適宜決められるものであり、溶媒の沸点や凝縮速度、凝固点等を考慮して適宜設定される。凝縮して再び液体となった溶媒分子は、図2に示すように、液体が流下し回収しやすいように、凝縮板52の流延膜側(以下、内側と称する)の面から反流延膜側(以下、外側と称する)の面にかけて設けられた傾斜壁面をつたわって、流下し、液受け53に回収される。本発明においては、内側の面から外側の面にかけて、バンド31の走行方向に対して設けられている傾斜は、液が重力により流下して回収し易い構造とされていればよく、傾斜角度等は限定されない。バンド31の幅方向に関しては、内側面が水平となっていることから流延面にほぼ平行な形状となっている。なお、流延膜35の反バンド面の表面を、以下流延面と称し、この流延面と凝縮板52との距離をd(mm)とする。
【0045】
流延面の近傍においては、バンド31の走行により同伴流と一般に呼ばれる空気の流れが通常発生する。本発明においては、揮発溶媒を凝縮させてその回収率を高めるために、この同伴流を含め、流延面と凝縮板52との間の空気の流れをできるだけ小さくすることが好ましく、0.01m/秒以上0.5m/秒以下とすることがより好ましい。
【0046】
流延膜35は、加熱板51により加熱されたバンド31により昇温されており、流延面と凝縮板52との間には温度勾配Qが生じる。ここで、温度勾配Qは、バンド31に形成された流延膜35の温度をTs(単位;℃)とし、凝縮板52の表面温度をTc(単位;℃)とするとき、Q=(Ts−Tc)/dで表される値とする。この温度勾配Qは、5<Q<100を満たすことが好ましい。温度勾配Qをこの範囲とすることにより、流延膜35の厚みTのばらつきを抑制し、厚み均一性に優れたフィルム36を得ることができる。なお、凝集板52の表面温度Tcとは、少なくとも流延面と対面する表面、つまり内側表面の温度であればよい。
【0047】
揮発した溶媒の濃度は、流延面に近いほど高く、ここから離れるに従い小さくなる。気体の場合には、温度勾配が存在する系では、熱拡散現象によって、分子量の大きい成分が低温側に移動し、一方分子量の小さい分子が高温側に移動する。この現象は、特に混合気体の分離等に利用されているものである。溶媒として有機溶媒を用いている場合には、温度勾配が存在する流延面と凝集板の間の空間には、窒素分子や酸素分子、二酸化炭素等からなる空気と、揮発した有機溶媒の分子とが存在する。本発明のような主に光学用途の溶液製膜に用いられる有機溶媒の分子の多くは、空気の各成分分子よりも分子量が大きく、熱拡散現象により溶媒成分の分子が凝集板の方へ移動することになる。したがって、流延面近傍に存在する溶媒成分の分子は、この温度勾配の存在により、流延面近傍から凝集板52の方向へと順次移動していくので、流延面近傍における溶媒分子の飽和が抑制され、流延膜からの揮発が進む。
【0048】
温度勾配Qを100以上とすると、加熱板51における加熱温度と凝集板52による冷却温度との差が大きすぎて、気相で凝縮滴が発生し、これが流延面に付着する等の問題が生じる。また、これを5以下とすると、加熱による揮発性、または冷却による凝集性が抑制されてしまい、十分な効果を得ることができなくなる。
【0049】
また、加熱板51から凝集板52にかけての領域のように温度が一様でない環境においては、熱は、その場に存在する分子の輸送現象により運ばれるという性質がある。そのため、上記のように加熱板51をバンド31に対面する広い範囲に配することにより、熱が外部に放出されても、バンド31に対して連続的に、かつ、均一性をもたせて熱を提供することができる。このとき、温度勾配Qの変動幅を温度勾配Qの10%以内とすることが好ましい。これは、加熱板51と凝集板52の各温度設定の調整により、流延膜の温度Ts(単位;℃)と、凝縮板52の表面温度Tc(単位;℃)とを制御することによって行うことができる。
【0050】
温度勾配Qの変動幅が、温度勾配Qの10%よりも大きいと、流延されたポリマー溶液からの溶媒の揮発性が均一性を失い、フィルムとされたときの厚みや、フィルムの力学特性、または、例えば面方向や厚み方向のリタデーション値等の光学特性に関して、バラツキが大きくなるので好ましくない。また、この温度勾配Qは、8%以内とすることがさらに好ましく、5%以内とすることが特に好ましい。
【0051】
さらに、凝集板52の表面温度Tcについては、流延面に対面する範囲における温度分布、つまり変動幅が10℃以内となるように加熱板の温度と凝集板の表面温度Tsを設定することが好ましい。凝集板の表面温度Tcの変動幅を10℃より大きいものとすると、揮発した溶媒の凝集性における均一性を失わせるので、熱拡散現象の不均一化を招き、その結果、流延膜35における溶媒の揮発速度を部位毎に不均一にさせてしまうので好ましくない。表面温度Tcの変動幅は、8℃以内とすることがさらに好ましく、5℃以内とすることが特に好ましい。
【0052】
本発明においては、流延面と凝集板52との距離dについて、このバンド31の幅方向における変動幅を、距離dの平均値dAの10%以内とすることが好ましい。これにより、上記の各温度設定、及び温度偏差を効果的に調整し、維持することができ、その結果、製膜されて得られるフィルム36の厚みのばらつきを抑制することができる。流延面と凝集板52との距離dの変動幅を上記範囲とするためには、流延ドープ11の均一性と、流延速度の一定化と、凝集板52の表面の平滑性等が必要となる。
【0053】
通常、溶液製膜では、バンド31の走行方向は、第1バックアップローラ32上のバンド31に流延された流延ドープ12が流延開始位置PSから上方あるいは水平方向へ向かう向きとされており、これにより、溶媒含有率が高くなっている流延初期の流延膜35からの液だれを防止している。
【0054】
一方、本発明では、第1及び第2バックアップローラ32,33は、第1バックアップローラ32上のバンド31に流延された流延ドープ12が、流延開始位置PSより流延膜35として下方に走行されるような回転方向とすることが特に好ましい。したがって、流延開始位置PSは、第1バックアップローラ32にラップされているバンド31の範囲となることが多い。なお、流延ダイからバンドにかけて形成される流延ドープ12の流出曲線について、その流延開始位置PSにおける接線と、支持体の流延開始位置PSにおける接線が、一致または可能な限り近いものことが好ましい。
【0055】
このように、本発明においては、流延された直後の流延ドープ12が流延膜35として下向きに走行された場合であっても、上記のように加熱板51と凝集板52とを設け、さらに、流延開始位置PS及び流延方向とを設定することで、液だれを防止し、流延直後から揮発溶媒を高収率で回収することができる。
【0056】
本発明は、製膜されて得られるフィルム36の厚みに依存するものではないが、流延直後における流延膜35の厚みTを10μm以上1000μm以下とするときに有効である。流延直後における流延膜35の厚みTを20μm以上500μm以下とするとき、さらに好ましい効果を得ることができる。ここで、流延直後の流延膜35とは、流延開始位置PSと、流延膜が最初に通過する凝集板52までの間における任意の箇所を意味する。本実施形態のように、流延膜5が多層構造となっている場合には、その層数に係わらず、一度の流延操作で形成される層全体での厚みを流延膜の厚みTとする。
【0057】
上記の流延膜35の厚み条件に加え、バンド31の走行速度については、これを5m/分以上200m/分以下とすることが好ましい。ここで、バンド31の走行速度は、流延速度と等しいものである。流延膜35の厚みTを10μm未満とすると、単位面積あたりのポリマー溶液層に含有される溶媒量が少ないため、揮発速度を十分に制御することができない場合がある。また、これを1000μmより大きくすると、流延膜35においてバンド31に近い部分の溶媒は加熱されるが、流延面近傍には熱が伝わりにくく、溶媒の揮発が抑制されたり、あるいは、内部の溶媒が液体のまま、あるいは気体となって流延膜35の内部にとどまり、面状故障等を発生させる場合もある。さらに、乾燥速度は厚みの2乗に反比例して低下するため、厚みが大きすぎると生産性が著しく低下して好ましくない。
【0058】
本発明は、流延膜35及びフィルム36が単層構造の場合であっても有効であるが、本実施形態のように複層構造とする場合に特に有効である。流延方法は共流延方式であっても、逐次流延方式であってもよい。
【0059】
本発明の流延工程について、さらに、図4を用いて以下に説明する。図4は流延ダイ14の要部の概略を示す断面図である。なお、図1〜3と同様の装置及び機材等については同じ符号を付し、説明を略する。図4に示すように、本実施形態において、流延ダイ14はフィードブロック方式のものとなっている。
【0060】
流延ダイ14は、ダイブロック61とフィードブロック62とから構成されている。この形態は、コートハンガー型ダイと一般には呼ばれている。フィードブロック62は、ダイブロック61の、流延ドープ12の流出口61aとは反対側であるその背面に設置されている。フィードブロック62は流延ドープ12の供給口62a,62b,62cを有している。流延膜35の第1層35a、第2層35b、第3層35cの各層を形成する流延ドープ12にはそれぞれ流延ドープ12a,12b,12cが対応しており、フィードブロック61の供給口62a,62b,62cとが対応する。フィードブロック62の内部では、供給口62a,62b,62cとから続くスロットが合流しており、流延ドープ12a,12b,12cはここで合流し、層を形成して、ダイブロック61の内部に送られる。ダイブロック61は、単一のスロット61bを有しており、流延ドープ12は、3層を形成した状態で先端リップ61aからバンド31へ流延される。この方式は一般には共流延方式と呼ばれている。
【0061】
さらに、本発明においては、それぞれの流延ドープ12a,12b,12cの押し出し圧力については、独立してこれを制御することができる。これにより、第1層〜第3層35a,35b,35cの各厚みを任意に調整することができる。第1層〜第3層35a,35b,35cの各厚みの制御は、3種類の流延ドープ12a,12b,12cの流路である、フィードブロック62のスロット合流部におけるスロット径を適宜設定したり、あるいはこの方法と流延ドープの上記押し出し圧力の調整による方法を併用してもよい。
【0062】
図5は、別の実施形態としての流延ダイ71の概略を示す断面図である。流延ダイ71は、マルチマニホールド方式となっており、図4にて説明した上記流延ダイ14と同様に、3層を同時に形成することができるものとなっている。図1〜図4と同様のものについては、ここに同様の符号を付しており、説明を略する。3種類の流延ドープ12a,12b,12cは、それぞれ別の流路(図示せず)により流延ダイ71に供給される。流延ダイ71の背面には、ドープ12a,12b,12cの供給口72a,72b,72cが設けられており、3種類の流延ドープ12a,12b,12cはここからそれぞれのスロット75,76,77に設けられたポケット75a,76a,77aに一時的に滞留して、先端リップ71aから流出される。先端リップ71aの近傍で、スロット75,76,77は合流しており、3種類の流延ドープ12a,12b,12cは層状となって同時に流出される。
【0063】
なお、流延ダイ71において、流延ドープ12a,12b,12cの供給口72a,72b,72cの位置やスロット75,76,77の形状、ポケット75a,76a,77aの形状、並びに先端リップ71aにおけるスロット合流部の構造等は、これに限定されるものではなく、共流延を行うことができる一般的なマルチマニホールド方式の流延ダイであってよい。図示はしないが、N層(Nは2以上の自然数を示す)を同時に形成することができるマルチマニホールド方式の流延ダイの場合は、流延ドープの流路をN個有するものとなっており、基本構成は上記と同様のものとなっている。
【0064】
さらに、本発明では、図4のフィードブロック方式と図5のマルチマニホールド方式とを組み合わせた共流延方式としてもよい。この場合でも、支持体としては、バンド(図2〜4参照)とドラム(図5参照)のいずれを用いてもよい。
【0065】
本発明では、上記の共流延方式ではなく、逐次流延方式(重層流延方)でも流延することができる。図6は、別の実施形態を示すものであって、3種類の液12a〜12cを流延する場合の逐次流延設備81の要部を示す平面図である。ここで、図1〜図5と同様の装置等については、同様の符号を付し、説明を略する。図6に示すように、本実施形態では、3個の流延ダイ82,83,84がバンド31上に配置されている。このバンド31上に各流延ダイ82,83,84から流延ドープ12a〜12cがそれぞれ流延されて、3層構造の流延膜35が形成される。
【0066】
なお、加熱板51と凝縮板52は、図2における流延ダイ14に代えて流延ダイ84としたときと同様の位置となっている。液受け及び回収タンクも同様であるが、ここでは図示を省略する。
【0067】
逐次流延法の場合には、用いられる流延ダイの個数は図示した3個に限定されるものではなく、所望する層数と同等以下の個数とすることができる。したがって、N層を逐次流延により形成する場合には、流延回数をNC(NCは2以上の自然数とする)とするとき、2≦NC≦N(Nは2以上の自然数とする)を満たす任意の流延回数NCで流延することができる。NC<Nのときは、少なくともひとつの流延工程で共流延を実施することが必要となることは自明である。
【0068】
上記のような本発明の方法によると、得られるフィルムの厚みを均一化し、優れた光学用ポリマーフィルムを得ることができる。光学特性は、ポリマーフィルムの厚みのばらつきに依存する場合が多く、特に、この傾向は、芳香族系高分子化合物やその他の環状構造を部分的に有する高分子化合物をフィルムの主たる成分としている場合に顕著である場合が多い。偏光板や、液晶表示装置等の光学用途に使用されるポリマーフィルムとして、本発明は、その厚みのばらつきと、複屈折率、透過率等の光学特性の設定を含むものである。
【0069】
図7及び図8には、本発明において製膜されたポリマーフィルム36を示すものであり、図7はポリマーフィルム36の平面図であって、図8は、図7における任意の2点P1−P2に沿う断面図となっている。図7において、長尺方向をX軸とし、X軸と垂直な幅方向をY軸としている。ポリマーフィルムのXY平面上における任意の一方向、つまり任意の点P1及びP2によって定まる線分L1に沿って厚み測定を実施する。線分L1の長さは、大きいほど好ましいが、フィルムの面状及び膜厚の変化は一般に周期的傾向を示すことから、少なくともその1周期とすることが好ましい。フィルム36の厚み測定は、μmオーダーの計測が可能なものを用いることが好ましい。
【0070】
具体的には、線分L1上において任意に選ばれた点p1,p2,p3,・・・,p(n−2),P(n−1),P(n)(ここで、nは任意の自然数)における各厚みをt1,t2,t3,・・・,t(n−2),t(n−1),t(n)(ここで、nは任意の自然数)とし、これらの平均値を第1厚み平均値TA1とする。また、上記の各測定点p1,p2,p3,・・・≦,p(n−2),p(n−1),p(n)の厚みに関する偏差をそれぞれ求め、平均偏差を求める。本発明においては、これを第1平均偏差MD1とする。このとき、MD1≦0.1×TA1を満たすことが好ましく、MD1≦0.08×TA1を満たすことがより好ましい。なお、本発明において、偏差とは標本標準偏差を意味している。
【0071】
さらに、上記で求めた厚みデータについて、FFT変換(Fast Fourier Transform,高速フーリエ変換)して周波数スペクトルデータを得る。これは、ある測定ラインに沿ってほぼ連続的に測定したサンプルの厚みデータについて、その測定ラインにおける移動距離を波長に置き換えてこれを変数とし、厚みを周波数スペクトル強度とする方法であって、測定ラインにおける移動距離と波長とは一対一対応となる。フーリエ変換は、フーリエ成分を利用した、時間領域(波形)と周波数領域(波形)の変換公式であり、これを応用した離散的フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)の演算時間を飛躍的に短縮したものがFFT変換である。このデータ処理は、厚み測定において一般的なものであって、波長に変換された移動距離がさらに時間領域でも示され、このデータ処理機能を有する厚み測定機が各種市販されている。なお、本発明では、市販の接触式厚み測定計(シックネステスターKG601A、アンリツ(株)製)を用いている。
【0072】
本発明においては、スペクトルの最大値が、前記厚み平均値TA1の10%以下であることが好ましい。さらに、得られたスペクトルデータにおいて、空間距離に換算したとき20cm以下となる任意の波長区間について、最大スペクトル値が、前記厚み平均値TA1の10%以下であることが好ましい。
【0073】
また、図7に示すように、線分L1と直交する位置にある線分L2を規定する任意の点P3及び点P4間においても、同様に、線分L2に沿って厚みを測定し、このデータ群の平均値と、先に求めた線分L1における点P1及び点P2間のデータ群の平均値とから、第2厚み平均値TA2を求める。なお、ここで、直交する位置にあるとは、互いに交わらずとも、同一平面上にあって、これらの延長線をもって直交することを意味する。線分L1及び線分L2における厚みの偏差(標準偏差)をそれぞれ求め、平均偏差を求める。本発明においては、これを第2平均偏差MD2とする。このとき、MD2≦0.1×TA2を満たすことが好ましく、MD2≦0.08×TA2を満たすことがより好ましい。
【0074】
さらに、上記で求めた厚みデータについて、周波数スペクトルデータを得る。周波数スペクトルデータにおいて、空間距離に換算したとき20cm以下となる任意の波長区間について、その最大スペクトル値が、前記平均厚みTA2の10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましい。
【0075】
以上のように、フィルム36の厚みについて、その厚みの平均偏差と、厚みデータをFFT変換して得る周波数スペクトルにおけるスペクトル強度とを、フィルム36の任意の一方向に関して上記範囲とすることによって、光学用途に適する厚み性状を有するポリマーフィルムとすることができる。さらに、これを直交するふたつの方向に関して上記範囲とすることによって、より厚み性状に優れたポリマーフィルムとすることができる。なお、フィルム36の流延方向の厚み測定においては、幅の中央部でのデータ取りが好ましく、幅方向の厚み測定においては、流延方向における複数の箇所で測定することが好ましい。
【0076】
ところで、複屈折とは、光が物質中を透過するときに、振動面の向きによってその進行速度に差があることをいう。直交するx軸とy軸の方向に振動する光がそれぞれ存在し、x軸方向に振動する光がy軸方向に振動する光よりも、通過する速度が遅い場合、その差の分だけ位相差が生じる。これは、x軸とy軸とで光学的に違う性質、つまり異なる屈折率をもつからである。一般に、真空中での光の速度をcとし、物質内を透過するときの光の速度をvとするとき、その比n=c/vをもって屈折率と称しており、複屈折とは、上記のように、物質が異なる屈折率を2つもつ場合の現象である。
【0077】
振動が進む2つの方位が、複屈折の主軸と呼ばれるものであり、位相が進む方位、つまり光が透過する速度が大きい方位をその位相子の進相軸といい、一方、位相が遅れる方位、つまり透過速度が小さい方位をその位相子の遅相軸という。複屈折の大きさは、進相軸と遅相軸の位相差として検出及び定量化され、光の波の位相を角度で表した値を用いるのが基本ではあるが、360°に対応する波長によってその絶対量を表すことはできないため、一般には検出された位相差を波長で規格化し、長さ(単位:nm)に換算して表すことになっている。
【0078】
複屈折測定装置では、測定対象物質における主軸の検出、及び位相差(リタデーション)Δndが測定される。位相差Δndは、dをサンプルの厚みとし,入射光に対し平行な振動面の光が示す屈折率をne、垂直な振動面の光が示す屈折率をnoとしたとき、波長分散を無視して、Δnd=d(ne−no)で定義される値となっている。したがって、位相差、つまり複屈折は厚みに依存する値となっている。本発明においては、ポリマーフィルムの厚みを上記のように均一にすることによって、複屈折性に優れたものとすることができる。
【0079】
複屈折については、フィルム36の面方向におけるリタデーション値Reと、厚み方向におけるリタデーション値Rthとの両方を考慮せねばならない。本発明では、フィルム36の面方向において、つまり、図7におけるXY平面のように、任意の一線分に沿って測定したリタデーション値Reのデータ群について、それらの平均偏差を求める。これを第3平均偏差MD3とし、それらデータ群の平均値を第1平均リタデーション値RA1とするとき、MD3≦0.10×RA1とすることが好ましい。
【0080】
さらに、リタデーション値Reの周波数スペクトルデータにおいて、空間距離に換算したとき20cm以下となる任意の波長区間について、前記リタデーション値Reの周波数スペクトルにおける最大スペクトル値が、前記リタデーション値Reの平均値RA1の10%以下であることが好ましい。
【0081】
さらに、厚み性状の場合と同様に、直交方向におけるリタデーション値Reに関しても、周波数スペクトルデータを得る。周波数スペクトルデータにおいて、任意の直交線分に沿って測定したリタデーション値Reのデータ群について、それらの平均偏差を求める。これを第4平均偏差MD4とし、それらデータ群の平均値を第2平均リタデーション値RA2とするとき、MD4≦0.10×RA2とすることが好ましい。空間距離に換算したとき20cm以下となる任意の波長区間について、最大スペクトル値が、前記リタデーション値Reの前記平均値RA2の10%以下であることがさらに好ましい。
【0082】
以上のように、フィルム36について、そのリタデーション値Reの平均偏差と、リタデーション値ReデータをFFT変換して得る周波数スペクトルにおけるスペクトル強度とを、フィルム36の任意の一方向に関して上記範囲とすることによって、光学用途に適する厚み性状を有するポリマーフィルムとすることができる。さらに、これを直交するふたつの方向に関して上記範囲とすることによって、より光学用途に優れたリタデーション値Reを有するポリマーフィルムとすることができる。
【0083】
さらに、本発明では、フィルム36の面方向において、つまり、図7におけるXY平面のように、任意の一線分に沿って測定したリタデーション値Rthのデータ群について、それらの平均偏差(以下、第5平均偏差MD5と称する)が、それらデータ群の第3平均リタデーション値RA3に対し、MD5≦0.10×R3を満たすことが好ましい。
【0084】
また、リタデーション値thの周波数スペクトルデータにおいて、空間距離に換算したとき20cm以下となる任意の波長区間について、その最大スペクトル値が、リタデーション値Rthの前記平均値RA3の10%以下であることが好ましい。
【0085】
厚み性状の場合と同様に、直交方向におけるリタデーション値Rthに関しても、周波数スペクトルデータを得る。なおここでリタデーション値Rthの平均偏差MD6については、第4平均リタデーション値RA4に対し、MD6≦0.10×RA4とすることが好ましい。周波数スペクトルデータにおいては、空間距離に換算したとき20cm以下となる任意の波長区間について、最大スペクトル値が、前記リタデーション値Rthの前記平均値RA4の10%以下であることがさらに好ましい。
【0086】
以上のように、ポリマーフィルムについて、そのリタデーション値Rthの平均偏差と、リタデーション値RthデータをFFT変換して得る周波数スペクトルにおけるスペクトル強度のばらつきとを、フィルムの任意の一方向に関して上記範囲とすることによって、光学用途に適する厚み性状を有するポリマーフィルムとすることができる。さらに、これを直交するふたつの方向に関して上記範囲とすることによって、より光学用途に優れたリタデーション値Rthを有するポリマーフィルムとすることができる。なお、面方向のリタデーション値Re及び厚み方向のリタデーション値Rthの測定位置は、いずれもフィルムの厚み測定位置に準じることが好ましい。なお、厚みとリタデーション値Re,Rthの各平均偏差については、任意の一方向と、この1方向に直交する一方向との両方のデータにより、直交する任意の2方向における値が求められる。
【0087】
また、本発明では、ポリマーフィルムの、厚みを80μm換算としたときの可視光の透過率が90%以上であることが好ましく、93%以上であることがさらに好ましい。さらに、図7に示すようなXY平面、つまりフィルムの面方向の任意の2点において、それぞれの厚み方向の透過率の差が5%以内であることが好ましく、2%以内であることがさらに好ましい。これにより、光学用途に優れた効果を発揮する複屈折率と透過率を有するポリマーフィルムとすることができる。可視光の透過率が90%未満であると、光学用途、特に表示装置等にこれを用いたときに、表示画面の暗化や、着色等の問題があり、好ましくない。
【0088】
また、相対湿度が10%におけるポリマーフィルムの表面抵抗率は、1×1010Ω以上1×1013Ω以下であることが好ましく、1×1010Ω以上1×1011Ω以内であることがさらに好ましい。この表面抵抗率については、任意の2点における差が、その2点の平均値の20%以内であることが好ましく、10%以内であることがさらに好ましい。表面抵抗率が1×1013Ωより大きいと、これを表示装置等のように他のフィルム等と積層させて使用したときに、絶縁率が高すぎて、他の層に帯電している電荷がこのフィルムを通過することができず、好ましくない。また、静電気力によって周囲の塵等を吸着するため好ましくない。一方、1×1010Ωより小さいと、絶縁層としての機能を果たすことができず好ましくない。以上のような、光学特性及び電気特性を発現するために、本発明のポリマーフィルムは、上述の溶液製膜方法で製膜されることが好ましい。
【0089】
本発明は、ポリマーまたはその前駆体が溶媒によってドープとなり、溶液製膜をすることができるものであれば適用される。例えば、セルロースアシレート
、ポリカーボネート(PC)、アラミド樹脂、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、塩素化ポリエーテル、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)等を例示することができる。さらに、以上のような各種ポリマーをそれぞれ単独で使用しても、あるいは複数を混合して使用しても本発明に適用可能である。
【0090】
特に、本発明においては、化1〜7に示すようなセルロースアシレートと、ポリカーボネート(PC)と、アラミド樹脂と、ポリスルフォンと、ポリスチレンとのうち少なくともひとつを含むことが好ましい。なお、化1〜7におけるnまたはmは、いずれも10〜1000の自然数を表す。
【0091】
【化1】
Figure 2004322535
【0092】
【化2】
Figure 2004322535
【0093】
【化3】
Figure 2004322535
【0094】
【化4】
Figure 2004322535
【0095】
【化5】
Figure 2004322535
【0096】
【化6】
Figure 2004322535
【0097】
【化7】
Figure 2004322535
【0098】
また、ポリマー成分の少なくとも50重量%をセルロースアシレートとすることが好ましい。セルロースアシレートに関しては、その6位のアシレート基置換率をXとし、残余のアシレート基置換率をYとするとき、X>0.85、かつ、2.70<X+Y<2.99を満たすことが好ましく、X>0.90、かつ、2.80<X+Y<2.99を満たすことがさらに好ましい。
【0099】
本発明は、流延膜の走行方向について、流延開始位置PSから水平方向あるいは上向きになされた場合も有効である。図9及び図10は、本発明の別の実施形態を示す流延設備91の要部を示す概略図である。図9は、側面からの平面図であって、図10は、図9におけるV−V線に沿う断面図である。図9及び図10において、図2と同様の装置及び部材については、同じ符号を付し、説明を略する。本実施形態においては、図2における流延設備16に、加熱板92と凝縮板93と液受け94とをそれぞれ増やして設置したものとなっている。なお、液受け53と回収タンク56、及びそれらを接続する送液路については図示を省略している。
【0100】
第1及び第2のバックアップローラ32,33は、図2を用いて説明した前実施形態とは逆向きに回転しており、流延ダイ14から第1バックアップローラ32上のバンド31へ流延された流延ドープ12は、バンド31上で流延膜35を形成して、流延開始位置PSからほぼ水平方向へ走行される。図9に示すように、第1及び第2バックアップローラ32,33のそれぞれ上部を渡るバンド31の部位(以下、上部バンドと称する)について、バンド31の下方には加熱板92が設置されており、流延膜35の上方には凝縮板93が設置されている。したがって、流延膜35の溶媒は、加熱板82に加熱された上部バンド31を走行しながら揮発し、凝縮板83にて凝縮する。
【0101】
図10に示すように、凝縮板83の形状は、凝縮板52とは異なっており、幅方向における断面では、下面の中央部は水平面であって、側端部が傾斜となっている。傾斜は、側端部にかけて低いものとなっており、凝縮された溶媒はこの傾斜をつたわって、側端部の下方に設置されている液受け94に落下し、回収タンク56に回収される。なお、このときの流延膜35と凝縮板93との距離dは、0.1mm〜15mmとすることが好ましく、2mm〜10mmとすることがより好ましい。
【0102】
続いて、流延膜は、加熱手段(図示なし)を備える第2バックアップローラ上33を走行し、さらに、第2バックアップローラ33から第1バックアップローラの下部を渡されたバンド(以下、下部バンドと称する)31を走行して、剥ぎ取りローラ37にてフィルム36として剥ぎ取られる。第2バックアップローラ33上のバンド31と、下部バンド31と、第1バックアップローラ32上のバンド31とを走行するときにも、加熱板51及び凝縮板52にて溶媒は揮発、凝縮している。このように、本発明は、流延開始位置PSからの流延膜35の走行の向きに係わらず、溶媒を均一に揮発、凝縮させ、高収率で回収することができる。
【0103】
また、本発明は、支持体をドラムとした場合にも有効である。図11は、本発明の別の実施形態を示す流延設備101の要部を示す概略図であって、側面からの平面図である。なお、上述の図2と同様の装置及び部材については、同じ符号を付し、説明を略する。本実施形態においては、支持体として、バンドの代わりにドラム102を用いている。流延ダイ14からの流延ドープ12は、ドラム102上に形成された流延膜35が流延開始位置PSから下方に向かうように、ドラム102の最上部よりやや下方に流延されている。この場合も、ドラム102上の流延開始位置PSにおける接線と流延ダイ14からの流延曲線の接線とができるだけ一致するように、流延開始位置PSを定めることが好ましい。
【0104】
ドラム102は、温度調整機能を有しており、その表面を加熱することにより、流延膜35を加熱して溶媒を揮発させる。したがって、ドラム102は、図2における加熱板の機能をも兼ね備えている。流延膜35の外側には、複数の凝縮板105が設置されており、凝縮板105同士の隙間の傾斜をつたわって、外部の液受け53に入り、回収タンク56に回収される。ドラム102上を走行した流延膜35は、フィルム36として剥ぎ取りローラ37により剥ぎ取られ、次の工程である乾燥設備17(図1参照)に送られる。これにより、液だれを防止しながら、流延膜を均一に乾燥し、溶媒を高収率で回収することができる。ただし、ドラム105の回転方向を逆として、流延膜の走行方向が流延開始位置PSから上向きになされた場合にも、流延膜の均一乾燥と、フィルム36の厚みの均一化効果は得られる。
【0105】
また、本発明は、テンター装置41における乾燥の際にも適用可能である。図12は本発明の実施形態を示すものであって、テンター装置41における搬送工程の要部の一部断面を含む平面図である。クリップ本体111は、そのフィルム保持部111aにより、フィルム36の両側端部を保持しながらこれを搬送しており、フィルム36の上方に加熱手段としての加熱板112と、凝集手段としての凝集板113とを備えている。このように、テンター装置41でのに乾燥においても、加熱板112と凝集板113とを設けて、溶媒を加熱及び凝縮させることにより、光学用途として好ましい、均一な厚みのフィルム36を得ることができ、さらに、流延工程のみならず、乾燥設備17(図1参照)における乾燥工程でも溶媒を回収することができるので、有効である。
【0106】
また、加熱手段は、以上のような加熱板112に限定されない。図13は、別の実施形態としてのテンター装置121の一部断面を含む平面図である。ここでは、フィルム36の加熱手段として、図12における加熱板112の代わりに、マイクロ波導波管122を用いている。マイクロ波導波管122からフィルム36にマイクロ波を照射し、フィルム36中に含有される溶媒分子のエネルギーを高め、揮発させる。揮発した溶媒は、図12のような加熱板112を用いたときと同様に、凝縮板123により冷却されて回収される。
【0107】
また、テンタークリップ以外の各種テンター装置にも有効であって、本実施形態においては、ピンテンター125を用いたテンター装置121としている。ピンテンター125には複数のピン125aが備えられており、そのピンにフィルムは固定されて搬送される。マイクロ波導波管は、テンター装置において用いるだけではなく、そのエネルギー出力が必要十分なものであれば、流延装置16においても使用することができる。
【0108】
上記の方法で得られたフィルムは、偏光板保護膜として、偏光板に好適に用いることができる。偏光板の偏光膜の主成分ポリマーとしてはポリビニルアルコール系ポリマーが最も好ましい。ポリビニルアルコール系ポリマーとしては、ポリビニルアルコールの他、アルキル変性ポリビニルアルコールを例示することができる。また、ポリビニルアルコール系ポリマーは、通常酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをけん化して製造されるが、不飽和カルボン酸やその誘導体(例えば塩、エステル、アミド、ニトリル等)、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等の酢酸ビニルと共重合可能な化合物が少量共重合されているものでもよい。アルキル変性ポリビニルアルコールは、末端にアルキル基を有するものであって、けん化度が80%以上で、重合度が200以上のものが好ましい。
【0109】
本発明において偏光膜として用いることができるポリビニルアルコール系以外のポリマーとしては、例えば、ポリカーボネート系ポリマーやセルロース系ポリマー等を挙げることができる。
【0110】
偏光膜12の主成分としてポリビニルアルコール系ポリマーを用いた場合は、このフィルムを一般的染色方法である気相吸着法あるいは液相吸着法によって染色する。本実施形態においては液相吸着法を用いたが、本発明は染色方法に依存するものではない。
【0111】
液相吸着による染色には、ここではヨウ素を用いるがこれに限定されるものではない。ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素/ヨウ化カリウム(KI)水溶液に、30秒以上5000秒以下の浸積時間をもって浸漬した。このときの水溶液は、ヨウ素の濃度を0.1g/リットル以上20g/リットル以下とし、ヨウ化カリウムの濃度を1g/リットル以上100g/リットル以下とすることが好ましい。また、浸漬時の水溶液の温度は5℃以上50℃以下の範囲に設定されることが好ましい。
【0112】
液相吸着方法としては、上記の浸漬法に限らず、ヨウ素あるいはその他の染料溶液をポリビニルアルコールフィルムに塗布する方法や噴霧する方法など、公知の方法を適用してよい。染色を実施するのは、ポリビニルアルコールフィルムを延伸する前であっても延伸した後でもよいが、ポリビニルアルコールフィルムは染色を施されることにより適度に膨潤して延伸されやすくなることから、延伸工程の前に染色工程を設けることが特に好ましい。
【0113】
ヨウ素の代わりに二色性色素で染色することも好適である。二色性色素としては、アゾ系色素やスチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素、アントラキノン系色素等の色素系化合物を例示することができる。なお、水溶性の色素系化合物が好ましいがこの限りではない。また、これらの二色性色素の分子中に、スルホン酸基やアミノ基、水酸基等の親水性官能基が導入されていることが好ましい。
【0114】
二色性色素としては、シー・アイ・ダイレクト・イエロー12、シー・アイ・ダイレクト・オレンジ39、シー・アイ・ダイレクト・オレンジ72、シー・アイ・ダイレクト・レッド39、シー・アイ・ダイレクト・レッド79、シー・アイ・ダイレクト・レッド81、シー・アイ・ダイレクト・レッド83、シー・アイ・ダイレクト・レッド89、シー・アイ・ダイレクト・バイオレット48、シー・アイ・ダイレクト・ブルー67、シー・アイ・ダイレクト・ブルー90、シー・アイ・ダイレクト・グリーン59、シー・アイ・アシッド・レッド37等が例として挙げられる。
【0115】
さらに、特開平1−161202号公報、特開平1−172906号公報、特開平1−172907号公報、特開平1−183602号公報、特開平1−248105号公報、特開平1−265205号公報、特開平7−261024号公報等に記載の色素等が挙げられる。これらの二色性色素の化合物は、遊離酸やアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン類の塩として用いられる。
【0116】
上記の二色性色素化合物を2種以上を配合することにより、各種の色相を有する偏光子を製造することができる。偏光素子、または、偏光板として偏光軸を直交させたときに黒色を呈する化合物や、黒色を呈するように各種の二色性色素化合物を配合したものが、単板透過率と偏光率の双方に優れており好ましい。
【0117】
染色したポリビニルアルコール系フィルムを延伸して偏光膜を製造する際には、ポリビニルアルコールを架橋させる化合物を用いている。具体的には、任意の工程において架橋剤溶液にポリビニルアルコール系フィルムを浸積して架橋剤を含有させる。浸積する代わりに、架橋剤溶液をフィルムに塗布あるいは噴霧等してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムは、架橋剤の含有によって十分に硬膜化され、この結果、適切な配向が付与される。なお、ポリビニルアルコール系ポリマーの架橋剤としては、米国再発行明細書第232897号に記載のものの他、公知の架橋剤を使用することができるが、中でもホウ酸類がもっとも好ましい。
【0118】
得られたフィルムとと偏光膜との貼り合わせは、接着剤を介して積層する方法や、フィルムあるいは偏光膜の少なくとも一方の貼り合わせ面の化学的改質等の表面処理により接着性をもたせて積層する方法など、公知の貼り合わせ方法を適用することができる。フィルムの主たるポリマー成分としてセルロースアシレートを用いたときには、その表面処理方法として、特に、酸処理、アルカリ処理、コロナ放電処理、グロー放電処理、紫外線照射処理等が好ましい。
【0119】
本実施形態においては、フィルムを表面処理したあと、接着剤を介して偏光膜にこれに貼り合わせる。この表面処理はアルカリによるけん化としている。具体的には、セルロースアシレートフィルムを、アルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗してこれを乾燥した。アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの水溶液を用い、その濃度を0.1〜3.0Nとすることが好ましい。また、アルカリ溶液の温度を室温〜90℃の範囲とすることが好ましい。
【0120】
フィルムと偏光膜とを接着剤によって貼り合わせる場合には、公知の各種接着剤を用いることができる。中でも、アセトアセチル基やスルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等を有する変性ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール系ポリマーやホウ素化合物の水溶液が好ましい。この接着剤は、乾燥した後の厚みが0.01μm以上10μm以下となるように付与することが好ましく、0.05μm以上5μm以下となるように付与することがさらに好ましい。
【0121】
さらに、フィルム上に光学補償シートを貼付した光学補償フィルム、防眩層をフィルム上に形成した反射防止膜などの光学機能性膜を好ましいとして用いることもできる。さらに、これら製品からは、液晶表示装置の一部を構成することも可能である。
【0122】
本発明の効果をさらに再現性よく、また効果的に発揮させるために、本発明では、上記の記載の他に、以下のような実施の様態を有している。ただし、本発明は、以下の様態に依存するものではない。
【0123】
[調製ドープの調製]
調製ドープについては、常温における溶解が一般的な調製方法であるが、その均一性を向上させるために、冷却溶解法や高温溶解法をその調製方法として適用することができる。
【0124】
冷却溶解法では、まず、−10〜40℃くらいの室温近辺の温度で、溶媒中にセルロースアシレート等のポリマーと微粒子等の添加剤を同時にあるいは逐次的に、撹拌しながら徐々に添加する。各成分の溶液あるいは分散液をそれぞれ調製してからこれらの液を混合する場合もある。分散は、攪拌タンクによる方法や、例えば、連続噴射混合機(商品名;フロージェットミキサー、(株)粉研パウテックス製)等を用いる連続混合法等を適用することができるが、ドープとして用いるのに十分な分散状態を満足することができる方法であれば、これらに限定されるものではない。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施することができる。このように冷却すると、ポリマー溶液の固形成分と溶媒の混合物は固化する。さらに、これを概ね0〜200℃に加温すると、溶媒中に各成分が流動する溶液となる。昇温は、室温中に放置するだけでもよいし、温浴中で加温してもよい。
【0125】
高温溶解法では、まず、−10〜40℃くらいの室温近辺の温度で、溶媒中にポリマーと微粒子等の添加剤を同時にあるいは逐次的に、撹拌しながら徐々に添加する。次に溶媒を概ね0.2MPa〜30aの加圧下で70〜240℃に加熱する。この加熱温度は、80〜220℃とすることが好ましい。次に、加熱した溶液あるいは分散液を、使用した溶媒のうち、最も低い沸点のものの沸点以下に冷却する。一般には、これを−10〜50℃に冷却して常圧に戻す。好ましくは、冷却水等の各種冷媒を用いて、装置冷却により冷却する。なお、添加剤は必要に応じて必要なものが添加されていれば良い。
【0126】
さらに上記のように得られた調製ドープを濾過することにより、未溶解物やゲル状物等を濾別することが好ましい。濾過処理は、濾紙や濾布、金属メッシュ、金属繊維、不織布等をフィルタとして用いることができる。また、異物の含有に対して厳しい基準が設けられる用途とされるドープにおいては、複数の濾過装置を直列に設置して連続で、あるいはそれぞれの濾過装置をオフラインとして、複段濾過により調製ドープの均一性を向上させることが好ましい。
【0127】
また、調製ドープに微粒子を添加する系においては、微粒子を添加した状態で濾過を実施することが好ましい。微粒子には、その化合物の種類、または、調製ドープとの親和性等により凝集してしまうものがあり、大径化した微粒子は、取り除かれることが好ましい場合が多い。このような微粒子としてはマット剤等として添加されるシリカ(SiO)微粒子等が例示される。
【0128】
[溶媒]
本発明に用いられる溶媒は、ハロゲン化炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類などであるが、特に限定されるものではない。溶媒は、市販品の純度であれば、特に制限される要因はない。溶媒は単独(100重量%)で、使用しても良いし、複数の種類を適宜決定した混合比で混合した混合溶媒を用いても良い。
【0129】
使用できる溶媒としては、ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルムなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、メチルホルメート、エチルアセテート、アミルアセテート、ブチルアセテートなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテルなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノールなど)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサンなど)等を例示することができる。
【0130】
本発明で用いられる溶媒として、酢酸メチルを単独で用いたり、酢酸メチルを主成分とした混合溶媒を用いることが有効である。混合溶媒を用いることで、ゲル強度やせん断粘度等などのドープの各性状を容易に調節することができる。酢酸メチルに混合できる副成分の溶媒としては、ケトン類の他に、メタノール、n−ブタノールなどのアルコール類が特に好ましい。また、二種類以上の溶媒と酢酸メチルとから製造される混合溶媒を使用しても良い。なお、ここで、主成分としての溶媒とは、混合溶媒中で最大の組成比を有する溶媒を意味しており、副成分としての溶媒とは、混合溶媒中で最大の組成比でない溶媒を意味する。また、副成分とは、一種類の溶媒であるとは限らない。
【0131】
ポリマーにセルローストリアセテート(TAC)を用い、溶媒に酢酸メチルを主成分とした混合溶媒を用いてドープを調製する際には、混合溶媒の組成比が、酢酸メチルが50重量%〜93重量%、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどが挙げられ、これらのうち1種類を用いても良いし、複数のものを用いても良い)が2重量%〜20重量%、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノールなどが挙げられ、これらのうち1種類を用いても良いし、複数のものを用いても良い)が5重量%〜30重量%であることが、TACの溶解性の点から好ましい。また、93重量%以上の酢酸メチルに、ケトン類、アルコール類を混合させた混合溶媒を用いることも可能である。
【0132】
ポリマーにセルローストリアセテート(TAC)を用いたときには、ジクロロメタンを単独で用いたり、ジクロロメタンを主成分とした混合溶媒を用いたりすることも可能である。TACは、ジクロロメタンに容易に溶解するため、ポリマー溶液の調製を容易に行うことができる。また、酢酸メチルを用いた場合と同じ様に、ジクロロメタンを主成分とした混合溶媒を用いることで、ポリマー溶液のの性状を調節することができる。その溶媒比率が、ジクロロメタンが50重量%〜95重量%、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどが挙げられ、これらのうち1種類を用いても良いし、複数のものを用いても良い)が0重量%〜20重量%、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどが挙げられ、これらのうち1種類を用いても良いし、複数のものを用いても良い)が5重量%〜30重量%であることが好ましい。また、95重量%以上のジクロロメタンに、ケトン類、アルコール類を混合した混合溶媒を用いることも可能である。
【0133】
[添加剤]
本発明で用いることが可能な添加剤としては、特に限定されるものではなく、可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤、離型剤、フッ素系界面活性剤、剥離促進剤、劣化防止剤、リタデーション上昇剤、オイルゲル化剤などをポリマー溶液に添加することができる。これらの添加剤は、調製ドープの調製時のいずれかの段階で添加しても良いし、流延ドープとして流延する際または直前に添加してもよい。例えば、ポリマーを溶媒中で膨潤させる時に添加しても良いし、製膜工程において流延ダイから支持体に流延する直前に、流延ドープ中に添加してスタティックミキサ等で混合する方法としてもよい。
【0134】
(可塑剤)
可塑剤として、リン酸エステル系(例えば、トリフェニルフォスフェート(TPP)、トリクレジルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、オクチルジフェニルフォスフェート、ビフェニルジフェニルフォスフェート(BDP)、トリオクチルフォスフェート、トリブチルフォスフェートなど)、フタル酸エステル系(例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレートなど)、グリコール酸エステル系(例えば、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなど)、およびその他の可塑剤を用いることができる。
【0135】
これら添加剤は単独使用または併用してよい。これら可塑剤は、ドープのポリマーに対して1重量%〜20重量%含むように調製することが望ましい。さらに、特開平11−80381号公報、同11−124445号公報、同11−248940号公報に記載されている可塑剤も添加することができる。
【0136】
(紫外線吸収剤)
ドープには、紫外線吸収剤を添加することもできる。特に、好ましい様態は、一種または二種以上の紫外線吸収剤をドープに含有させることである。液晶用紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
【0137】
例えば、オキシベンゾフェノン系化合物,ベンゾトリアゾール系化合物,サリチル酸エステル系化合物,ベンゾフェノン系化合物,シアノアクリレート系化合物,ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルに対する不要な着色が少ないことから、好ましい。さらには、特開平8−29619号公報に記載されているベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、あるいは同8−239509号公報に記載されている紫外線吸収剤も添加することができる。その他、公知の紫外線吸収剤を添加しても良い。これら紫外線吸収剤は、ドープ中のポリマーに対して0.1重量%〜10重量%を含むように調製することが望ましい。
【0138】
好ましい紫外線吸収剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール,ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2(2’ −ヒドロキシ−3’ ,5’ −ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’ −ヒドロキシ−3’ ,5’ −ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N´−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。特に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が最も好ましい。また例えば、N,N´−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンなどのヒドラジン系化合物の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトなどのリン系加工安定剤を併用してもよい。
【0139】
(マット剤)
ドープには、フィルムの易滑性や高湿度下での耐接着性の改良のためにマット剤(微粒子粉体)を含有させることができる。マット剤の表面の突起物の平均高さは0.005〜10μmが好ましく、より好ましくは0.01〜5μmである。その突起物は表面に多数ある程良いが、必要以上に多いとへイズとなり問題である。また、1次粒子径が、1nm〜500nmの範囲のものを用いることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。使用されるマット剤としては、無機化合物、有機化合物ともに使用可能である。無機化合物としては、硫酸バリウム、マンガンコロイド、二酸化チタン、硫酸ストロンチウムバリウム、酸化ケイ素系(例えば、二酸化ケイ素など)、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウムなどの無機物の微粉末があるが、さらに例えば湿式法やケイ酸のゲル化より得られる合成シリカ等の二酸化ケイ素やチタンスラッグと硫酸により生成する二酸化チタン(ルチル型やアナタース型)等が挙げられる。
【0140】
また、粒径の比較的大きい、例えば20μm以上の無機物から粉砕した後、分級(振動濾過、風力分級など)することによっても得られる。有機化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、アクリルスチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系粉末、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、あるいはポリ弗化エチレン系樹脂、澱粉等の有機高分子化合物の粉砕分級物もあげられる。あるいは懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物、または無機化合物を用いることができる。また、微粒子粉体は、あまり多量に添加するとフイルムの柔軟性が損なわれるなどの弊害も生じるため、ドープ中のポリマーに対して0.01重量%〜5重量%を含むように調製することが望ましい。
【0141】
(離型剤)
また、ドープ中には、離型操作を容易にするための離型剤を添加することもできる。離型剤には、高融点のワックス類、高級脂肪酸およびその塩やエステル類、シリコーン油、ポリビニルアルコール、低分子量ポリエチレン、植物性タンパク質誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。離型剤の添加量は、フイルムの表面の光沢や平滑性に影響を及ぼすため、ドープ中のポリマーに対して0.001重量%〜1重量%を含むように調製することが望ましい。
【0142】
(フッ素系界面活性剤)
ドープには、フッ素系界面活性剤を添加することもできる。フッ素系界面活性剤は、フルオロカーボン鎖を疎水基とする界面活性剤であり、表面張力を著しく低下させるため有機溶媒中での塗布剤や、帯電防止剤として用いられる。フッ素系界面活性剤としては、C17CHCHO−(CHCHO)10−OSONa、C17SON(C)(CHCHO)16−H、C17SON(C)CHCOOK、C15COONH、C17SON(C)(CHCHO)−(CH−SONa、C17SON(C)−(CH−N(CH・I、C17SON(C)CHCHCH(CH−CHCOO、C17CHCHO(CHCHO)16−H、C17CHCHO(CH−N(CH・I、H(CF−CHCHOCOCHCH(SO)COOCHCHCHCH−(CF−H、H(CFCHCHO(CHCHO)16−H、H(CFCHCHO(CH−N(CH・I、H(CFCHCHOCOCHCH(SO)COOCHCHCHCH17、C17−C−SON(C)(CHCHO)16−H、C17−C−CSON(C)−(CH−N(CH・Iなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。ドープ中のポリマーに対して0.001重量%〜1重量%を含むように調製することが望ましい。
【0143】
(剥離促進剤)
さらに、剥離時の荷重を小さくするための剥離促進剤も、ドープに添加してもよい。それらは、界面活性剤が有効であり、リン酸系,スルフォン酸系,カルボン酸系,ノニオン系,カチオン系などがあるが、これらに特に限定されない。これらの剥離促進剤は、例えば特開昭61−243837号などに記載されている。特開昭57−500833号にはポリエトキシル化リン酸エステルが剥離促進剤として開示されている。特開昭61−69845号には非エステル化ヒドロキシ基が遊離酸の形であるモノまたはジリン酸アルキルエステルをセルロースエステルに添加することにより迅速に剥離できることが開示されている。また、特開平1−299847号には非エステル化ヒドロキシル基およびプロピレンオキシド鎖を含むリン酸エステル化合物と無機物粒子を添加することにより剥離荷重が低減できることが開示されており、それらを用いることも可能である。また、ドープ中のポリマーに対して0.001重量%〜1重量%を含むように調製することが望ましい。
【0144】
(劣化防止剤)
さらに、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤, 過酸化物分解剤, ラジカル禁止剤,金属不活性化剤,酸捕獲剤,アミンなど)や紫外線防止剤をドープに添加してもよい。これらの劣化防止剤や紫外線吸収剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。また、ポリマー溶液中のポリマーに対して0.01重量%〜5重量%を含むように調製することが望ましい。
【0145】
(リタデーション上昇剤)
また、本発明は、リタデーションのムラを抑制しているが、これに光学異方性をコントロールするためのリタデーション上昇剤を、ドープに添加してもよい。このリタデーション上昇剤は、リタデーションのフィルムにおける平均値を上げることを目的として添加され、それらは、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をリタデーション上昇剤として使用されることが好ましい。また、二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。なお、ドープ中のポリマーに対して0.01重量%〜10重量%を含むように調製することが望ましい。
【0146】
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。そして、これらの例としては、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノンや、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0147】
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が好ましく、ベンゼン環及び1,3,5−トリアジン環がさらに好ましい。芳香族化合物は、少なくともひとつの1,3,5−トリアジン環を有することが好ましい。
【0148】
芳香族化合物が有する芳香族環の数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直交する場合、及び、(c)連結基を介して結合する場合に分類することができる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない。)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。以下にこれらの具体例を示す。
【0149】
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例としては、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環及びチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環及びキノリン環が好ましい。
【0150】
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性複素環を形成してもよい。
【0151】
(c)の連結基も、二つ以上の芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アリキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−、またはこれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は逆になってもよい。
(c)1:−CO−O−
(c)2:−CO−NH−
(c)3:−アルキレン−O−
(c)4:−NH−CO−NH−
(c)5:−NH−CO−O−
(c)6:−O−CO−O−
(c)7:−O−アルキレン−O−
(c)8:−CO−アルケニレン−
(c)9:−CO−アルケニレン−NH−
(c)10:−CO−アルケニレン−O−
(c)11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
(c)12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
(c)13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
(c)14:−NH−CO−アルケニレン−
(c)15:−O−CO−アルキニレン−
【0152】
芳香族環及び連結基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、スルホ、カルバモイル、スルファモイル、ウレイド、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基、及び非芳香族性複素環基が含まれる。
【0153】
アルキル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例として、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。置換アルキル基を含むアルキル基の例としては、メチル、エチル、n−ブチル,n−ヘキシル、2−ヒドロキシエチル、4−カルボキシブチル、2−メトキシエチル、及び2−ジエチルアミノエチルが含まれる。アルケニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル、アリルおよび1−ヘキセニルが含まれる。アルキニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル、1−ブチニルおよび1−ヘキシニルが含まれる。
【0154】
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル、プロパノイルおよびブタノイルが含まれる。脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシが含まれる。アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。置換アルコキシ基を含むアルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、ブトキシおよびメトキシエトキシが含まれる。アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノおよびエトキシカルボニルアミノが含まれる。
【0155】
アルキルチオ基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ、エチルチオおよびオクチルチオが含まれる。アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニルおよびエタンスルホニルが含まれる。脂肪族アミド基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミドおよびn−オクタンスルホンアミドが含まれる。脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよび2−カルボキシエチルアミノが含まれる。脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイルおよびジエチルカルバモイルが含まれる。脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイルおよびジエチルスルファモイルが含まれる。脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイドが含まれる。非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノおよびモルホリノが含まれる。リタデーション上昇剤の分子量は、300〜800であることが好ましく、リタデーション上昇剤の具体例としては、特開2000−111914号公報、同2000−275434号、国際特許出願WO00/65384号明細書に記載の化合物があげられる。
【0156】
(ドープ中の固形分濃度の測定方法)
ドープ中の固形分濃度は、一定量のドープを製膜設備のラインから抜き出して重量を測定する。そして、そのドープを120℃で2時間乾燥させ、残った成分の重量を測定した。残った成分の重量と一定量のドープの重量との比から重量百分率を求めた。なお、本発明において、固形分とはフィルムの原料であるポリマーと添加剤とが混合しているものを意味している。そこで、室温でそれらが純物質で存在しているときに、必ずしも固体であるわけではない。ただし、本発明は、固形分濃度の測定方法に依存するものではない。
【0157】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明は、本実施例に限定されるものではない。
【0158】
(ドープの調製)
以下の組成により、3種類のドープA、B、Cを調製した。なお、以下のセルローストリアセテートについては、ドープA及びBにおいてはその原料が木材パルプであり、ドープCにおいては綿花リンターである。また、紫外線吸収剤I、II、III としては、それぞれ、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールと、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンと、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾールとを用いている。これらの紫外線吸収剤I、II、III は、リタデーション上昇剤としての機能も併せもっている。
【0159】
(ドープAの調製)
ドープAの組成は以下の通りである。塩化メチレン、メタノール、エタノール、n−ブタノールからなる混合溶媒を0℃に冷却し、固形成分をこれに添加して攪拌により均一に分散させる。その後、分散液を20kg/cmに加圧しながら、静止型熱交換器を具備してなる直管を用いて、温度設定を2段階として加熱し溶解する。この温度設定は、最初は70℃とし、続いて38℃とした。さらにこのドープを2段階の温度設定により冷却し、絶対阻止孔径が10μmの濾紙で濾過した。冷却時の温度設定は、はじめは70℃とし、続いて38℃とした。濾液を再度加熱してフラッシュさせることにより、溶媒の一部を除去し、固形分濃度を23%にまで高めてから、絶対阻止孔径が5μmの焼結金属フィルタにより濾過し、ドープAを得た。
・セルローストリアセテート 18.90重量部
(酢化率60.7%、重合度315、6位アセチル基置換比率0.94、平均粒径0.5mm)
・トリフェニルフォスフェート(TPP) 1.00重量部
・ビフェニルジフェニルフォスフェート(BDP) 0.60重量部
・ジエチルフタレート 0.50重量部
・紫外線吸収剤I 0.10重量部
・紫外線吸収剤II 0.20重量部
・紫外線吸収剤III 0.30重量部
・二酸化ケイ素微粒子 0.05重量部
(粒径15nm、モース高度約7)
・クエン酸部分エチルエステル 0.02重量部
・トリベンジルアミン 0.30重量部
・塩化メチレン 60.90重量部
・メタノール 15.60重量部
・エタノール 1.20重流部
・n−ブタノール 0.40重量部
【0160】
(ドープBの調製)
ドープBの組成は以下の通りである。酢酸メチル、メタノール、エタノール、n−ブタノール、アセトンからなる混合溶媒を−20℃に冷却し、連続混練ニーダーによって固形成分と、濾過助剤としての平均粒径60μmの珪藻土を0.2%添加して混合分散させ、冷却ジャケット付きのスクリュー押し出し機により−90℃にまで冷却した。この冷却ゲル状物を、温度設定を2段階として冷却した。この温度設定は、最初は50℃とし、続いて135℃とした。粒径60μmの珪藻土を、プレコートしたテフロン(登録商標)製の不織布により濾過した。なお、用いた不織布の絶対阻止孔径は20μmである。その後、この濾液を、絶対阻止孔径が2.5μmの焼結金属フィルタで濾過した。この濾液を、最初は70℃、続いて30℃とする2段階の温度設定により冷却し、ドープBを得た。なお、下記のセルロースアセテートプロピオネートは、その原料がパルプのものである。
・セルローストリアセテート 18.90重量部
(トータルアセチル基置換度2.83、重合度270、6位アセチル基置換度0.86、平均粒径0.5mm)
・セルロースアセテートプロピオネート 5.90重量部
(アシル基トータル置換度2.89、アセチル基置換度2.59、重合度270、6位アシル基置換度0.94、平均粒径0.5mm)
・ジペンタエリスリトールヘキサアセテート 1.00重量部
・トリフェニルフォスフェート(TPP) 1.00重量部
・ビフェニルジフェニルフォスフェート(BDP) 0.10重量部
・ジエチルフタレート 0.10重量部
・紫外線吸収剤I 0.10重量部
・紫外線吸収剤II 0.20重量部
・紫外線吸収剤III 0.30重量部
・二酸化ケイ素微粒子 0.05重量部
(粒径15nm、モース高度約7)
・クエン酸部分エチルエステル 0.02重量部
・トリベンジルアミン 0.30重量部
・酢酸メチル 62.10重量部
・メタノール 4.00重量部
・エタノール 5.00重量部
・n−ブタノール 3.00重量部
・アセトン 5.00重量部
【0161】
(ドープC)
以下の配合によりドープCを調製した。なお、組成以外の調整方法は、ドープAと同様である。
・セルローストリアセテート 19.00重量部
(トータルアシル基置換度2.5、重合度250、6位アセチル基置換度0.86、平均粒径0.5mm)
・二酸化ケイ素微粒子 0.05重量部
(粒径15nm、モース高度約7)
・クエン酸部分エチルエステル 0.02重量部
・トリベンジルアミン 0.30重量部
・塩化メチレン 60.90重量部
・メタノール 15.60重量部
・エタノール 1.20重量部
・n−ブタノール 0.40重量部
【0162】
(ドープDの調製)
上記のドープAにおける固形分濃度が19.5%となるようにインラインで静止型混合器を用いて混合希釈し、ドープDを得た。ここで用いた希釈溶媒は、ドープAの混合溶媒と同じ組成となっている。
【0163】
(ドープEの調製)
上記のドープBにおける固形分濃度が19.5%となるようにインラインで静止型混合器を用いて混合希釈し、ドープEを得た。
【0164】
〔実施例1〕
(製膜方法)
図4に示すような3層での共流延が可能なフィードブロックを具備したコートハンガー型ダイを用いて流延を実施した。支持体は、図11に示すようなドラム92であって、その表面は、ハードクロムメッキをして、中心線平均粗さを0.03μmになるように鏡面仕上げを施したものである。なお、ドラム92は、その表面温度を5℃に保持しており、その直径が1800mmであって、幅が1000mmである。
【0165】
このドラムに対し、第1層及び第3層35a,35cにドープCを、それぞれの乾燥後の厚みが1.5μmになるように、また、第2層の乾燥後の厚みが57μmになるようにドープをAを、それぞれフィードブロック62に供給して積層し幅1580mmで流延した。このとき、ドラム92と流延ダイ14のリップ先端との相対速度が30m/分になるように調節した。また、このドラム92に同伴される同伴ガスが流延面の側面から流出しないように遮風板を設けた。
【0166】
流延後の流延膜35より揮発した溶剤は、流延面から5.0mm離れて設置してある−25℃に冷却した凝縮板95により凝縮して複数設置してある液受け53により受けて回収した。このとき、温度勾配Qは35であって、幅方向における温度勾配Qのばらつきは5%であった。凝縮板95の幅方向における温度Tcのばらつきは5℃以内であった。また、流延面と冷却板との間における風速は0.5m/s以下であった。
【0167】
流延設備91は、気密ケーシング内に設置し、ここに少量の窒素ガスを流通させた。これにより、内部の雰囲気を、酸素濃度6体積%以下、水の露点を−35℃以下に保った。
【0168】
流延膜は、揮発分250重量%でテンション60Nでドラム92より剥ぎ取った。その後、ピンテンター125の保持部におけるフィルムの厚みは70μmとなるように、ピンテンター125にフィルム36の両側端部を保持させて、最初は80℃、続いて120℃とした2段階の加熱乾燥を施した。さらに110Nでローラ装置42にて加熱乾燥及び冷却をした。この加熱乾燥は、2段階の温度設定であって、最初は120℃、続いて135℃とし、冷却は25℃である。冷却されたフィルムは巻き取り装置47にて巻き取った。
【0169】
〔実施例2〕
(製膜方法)
図2に示すようなバンド式流延を実施した。バンド31は、ステンレス製である。その表面は、中心線平均粗さを0.03μmになるように鏡面仕上げを施したものであって、長さ10m、幅800mmとしている。なお、加熱板51は輻射ヒータを用いて、その表面温度を25℃に保持した。
【0170】
このドラムに対し、第1層及び第3層35a,35cにドープCを、それぞれの乾燥後の厚みが1.5μmになるように、また、第2層の乾燥後の厚みが37μmになるようにドープBを、それぞれフィードブロック14に供給して積層し幅650mmで流延した。このとき、バンド31と流延ダイ14のリップ先端との相対速度が6m/分になるように調節した。また、このバンド31に同伴される同伴ガスが流延面の側面から流出しないように遮風板を設けた。
【0171】
流延膜35より揮発した溶剤は、流延面から5.0mm離れて設置してある−5℃に冷却した凝縮板52により凝縮して複数設置してある液受け53により受けて回収した。このとき、温度勾配Qは30であって、幅方向における温度勾配Qのばらつきは5%であった。凝縮板52の幅方向における温度Tcのばらつきは5℃以内であった。また、流延面と冷却板との間における風速は0.5m/s以下であった。
【0172】
流延設備11は、気密ケーシング内に設置し、ここに少量の窒素ガスを流通させた。これにより、内部の雰囲気を、酸素濃度6体積%以下、水の露点を−15℃以下に保った。流延膜35は、揮発分150重量%でテンション40Nでバンド31より剥ぎ取った。その他の条件は実施例1と同様に実施した。
【0173】
〔実施例3〕
(製膜方法)
第1層及び第3層35a,35cとして、ドープCから、紫外線吸収剤及び可塑剤を除いたものを使用し、また、第2層は乾燥後の厚みが28μmとなるようにドープAを流延した。乾燥後の厚みは第1層が0.5μm、第3層が1.5μmとなるように調整した。その他の条件は実施例1と同様に実施した。
【0174】
〔実施例4〕
(製膜方法)
第1層35aとしてドープCから紫外線吸収剤及び可塑剤を除いたものを使用し、第2層35bとしてはドープAを使用し、第3層35cとしてはドープEを用いた。それぞれの乾燥後の厚みが、第1層35aから第3層35cへ順に、1.5μm、57μm、0.2μmとなるように共流延した。その他の条件は実施例1と同様に実施した。
【0175】
〔実施例5〕
(製膜方法)
第1層35a及び第3層35cとしては、ドープDから紫外線吸収剤及び可塑剤を除いたものを使用し、第2層35bとしてはドープBを使用した。それぞれの乾燥後の厚みが、第1層35aから第3層35bへ順に、1.0μm、77μm、2μmとなるように共流延した。その他の条件は実施例1と同様に実施した。
【0176】
〔比較例1〕
(製膜方法)
流延設備91において凝縮板95を使用せず、代わりに、流延面に対して乾燥風を送風し、乾燥させた。このときの流延面上での風速は、15m/秒となるように40℃の乾燥風とした。この乾燥風は循環させて利用し、排気された揮発溶媒は、別途外部に設けた冷却設備にて−30℃下で凝縮させて回収した。その他の条件は実施例1と同様に実施した。
【0177】
〔比較例2〕
(製膜方法)
流延設備11において凝縮板52を使用せず、代わりに、流延面に対して乾燥風を送風し、乾燥させた。このときの流延面上での風速は、10m/秒となるように80℃の乾燥風とした。この乾燥風は循環させて利用し、排気された揮発溶媒は、別途外部に設けた冷却設備にて−5℃下で凝縮させて回収した。その他の条件は実施例2と同様に実施した。
【0178】
〔比較例3〕
(製膜方法)
凝縮板95と流延面との距離を20mmとした。このとき幅方向における流延面と凝縮板95との距離のばらつきは11%であって、温度勾配3、凝縮板95の幅方向の温度のばらつきは12℃であった。
【0179】
〔比較例4〕
(製膜方法)
第1層及び第3層35a,35cとして、ドープCから、紫外線吸収剤及び可塑剤を除いたものを使用し、また、第2層は乾燥後の厚みが28μmとなるようにドープAを流延した。乾燥後の厚みは第1層が0.5μm、第3層が1.5μmとなるように調整した。また、流延設備91において凝縮板95を使用せず、代わりに、流延面に対して乾燥風を送風し、乾燥させた。このときの流延面上での風速は、15m/秒となるように40℃の乾燥風とした。この乾燥風は循環させて利用し、排気された揮発溶媒は、別途外部に設けた冷却設備にて−30℃下で凝縮させて回収した。その他の条件は実施例1と同様に実施した。
【0180】
[フィルムの厚み測定及び評価]
上記の実施例1〜5及び比較例1〜4で得られた各フィルムについて、厚みを測定し、それらの周波数スペクトルをそれぞれ求めた。厚み測定は、流延方向に関しては幅の中央箇所にあたる部位を測定し、幅方向に関しては流延方向の複数箇所で測定した。また、フィルムの外観評価については、目視にて実施した。これらの結果については、表1に示す。表1においては、フィルムの外観が良好なものを○とし、ムラが確認されたものを×とする。表1において、R1値は、流延方向に測定した厚みの平均偏差MD1の、厚み平均値TA1に対する比率であり、R2値は、上記厚みの測定値をFFT変換し得られた周波数スペクトルの最大値の、厚み平均値TA1に対する比率である。また、R3値は、幅方向に測定した厚みの平均偏差の、幅方向における厚み平均値に対する比率であり、R4値は、幅方向の厚みの測定値をFFT変換し得られた周波数スペクトルの最大値の、幅方向の厚み平均値に対する比率である。
【0181】
【表1】
Figure 2004322535
【0182】
[リタデーション値の測定]
実施例1〜5及び比較例1〜4で得られた各フィルムについて、下記の複屈折率測定方法にてリタデーション値を求めた。リタデーション値Re及びリタデーション値Rthの測定位置は、いずれも上記の厚み測定位置に準じた。なお、以下の測定における結果は、表2及び表3に示す。
【0183】
表2において、R5値は、流延方向にリタデーション値Reを測定し、リタデーション値Reの平均偏差MD3の、リタデーション値Reの平均値RA1に対する比率であり、R6値は、上記リタデーション値Reの周波数スペクトルデータの最大値の、上記平均値RA1に対する比率である。また、R7値は、幅方向のリタデーション値Reの平均偏差の、幅方向におけるリタデーション値Reの平均値に対する比率であり、R8値は、幅方向におけるリタデーション値Reの周波数スペクトルデータの最大値の、上記平均値に対する比率である。
【0184】
さらに、表3において、R9値は、流延方向に厚みリタデーション値Rthを測定し、リタデーション値Rthの平均偏差MD5の、リタデーション値Rthの平均値RA3に対する比率であり、R10値は、上記リタデーション値Rthの周波数スペクトルデータの最大値の、上記平均値RA3に対する比率である。また、R11値は、幅方向におけるリタデーション値Rthの平均偏差の、幅方向におけるリタデーション値Rthの平均値に対する比率であり、R12値は、幅方向におけるリタデーション値Rthの周波数スペクトルデータの最大値の、上記平均値に対する比率である。
【0185】
(リタデーション値Reの測定)
自動複屈折計(型式;KOBRA21DII、王子計測(株)製)を用いて、632.8nmにおける垂直方向からの測定リタデーション値Reの外挿値により算出し、求めたデータをFFT変換して、周波数スペクトルデータを得た。
【0186】
(リタデーション値Rthの測定)
自動複屈折計(型式;エリプソメータM150、日本分光(株)製)を用いて、632.8nmにおける垂直方向からのリタデーション値Reとフィルム面を傾けながら同様に測定して得たリタデーション値Reとの外挿値により、リタデーション値Rthを算出し、求めたデータをFFT変換して、周波数スペクトルデータを得た。
【0187】
【表2】
Figure 2004322535
【0188】
【表3】
Figure 2004322535
【0189】
[偏光板の作製]
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、実施例1〜5及び比較例1〜4で作成した各フィルムを、その遅相軸が偏光膜の透過軸と平行になるように両側に貼り付けた。この偏光板サンプルを80℃、90%RHの雰囲気下で500時間暴露した。偏光板の外観評価は、クロスニコルでの目視評価であって、その結果については表1に示す。なお表1において、良好なものを○とし、ムラが確認されたものを×として示している。
【0190】
[偏光度の評価方法]
分光光度計により可視領域における並行透過率Yp、直行透過率Ycを求め次式に基づき偏光度Pを決定した。
P=√{(Yp−Yc)/(Yp+Yc)}×100 (%)
実施例1〜5で得られたフィルムに関しては、いずれも偏光度は99.6%以上であり、十分な耐久性が認められた。これに対し、比較例1〜4で得られたフィルムは、偏光度は99.5%以上であったが、クロスニコルではムラが観察された。
【0191】
[光学補償フィルムの作製]
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、実施例1のフィルムを、その遅相軸が偏光膜の透過軸と平行になるように片側に貼り付けた。さらにフィルムにケン化処理を施し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。更に、光学補償シート(富士写真フイルム(株)製WVフィルム)を同偏光板のフィルム側にその遅相軸が互いに平行となるように粘着剤を介して貼り合わせた。このようにして光学補償膜を貼合した光学補償フィルムを作製した。また、実施例2〜5及び比較例1〜4から作成された各フィルムからも同じ条件でそれぞれ光学補償フィルムを作製した。
【0192】
実施例1〜5及び比較例1〜4のフィルムからそれぞれ作成した光学補償フィルム1組をTFT(薄膜トラジスター)方式の液晶表示装置に実装した結果、実施例1〜5のフィルムを用いたものに関しては、良好な視野角およびコントラストを達成することができた。一方、比較例1〜4のフィルムを用いたものに関しては、フィルムの流延方向において段状のムラが観察された。
【0193】
[反射防止膜の作製]
上記の各実施例1〜5及び比較例1〜4のフィルムを用い塗工による反射防止膜を下記の手順により作製した。
【0194】
(防眩層用塗布液Fの調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)125gと、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド(MPSMA、住友精化(株)製)125gとを、メチルエチルケトンとシクロヘキサノンの重量比率が1:1の混合溶媒439gに溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)5.0gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)3.0gを49gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を加えた。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗布層の屈折率は1.60であった。さらに、この溶液に平均粒径2μmの架橋ポリスチレン粒子(商品名:SX−200H、綜研化学(株)製)10gを添加して、高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌、分散した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩層の塗布液Fを調製した。
【0195】
(防眩層用塗布液Gの調製)
シクロヘキサノン104.1gと、メチルエチルケトン61.3gとの混合溶媒に、エアディスパで攪拌しながら酸化ジルコニウム分散物含有ハードコート塗布液(デソライトKZ−7886A、JSR(株)製)217.0gを添加した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗布層の屈折率は1.61であった。さらに、この溶液に平均粒径2μmの架橋ポリスチレン粒子(商品名:SX−200H、綜研化学(株)製)5gを添加して、高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌し、分散した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩層の塗布液Gを調製した。
【0196】
(防眩層用塗布液Hの調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)91gと、酸化ジルコニウム分散物含有ハードコート塗布液(デソライトKZ−7115、JSR(株)製)199gと、および酸化ジルコニウム分散物含有ハードコート塗布液(デソライトKZ−7161、JSR(株)製)19gとを、メチルエチルケトンとシクロヘキサノンの重量比率が54:46の混合溶媒52gに溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)10gを加えた。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗布層の屈折率は1.61であった。さらに、この溶液に、平均粒径2μmの架橋ポリスチレン粒子(商品名:SX−200H、綜研化学(株)製)20gを80gのメチルエチルケトンとシクロヘキサノンの重量比率が54:46の混合溶媒80gに高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌分散した分散液29gを添加して、攪拌した後に孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩層の塗布液Hを調製した。
【0197】
(ハードコート層用塗布液Iの調製)
紫外線硬化性ハードコート組成物(デソライトKZ−7689、72重量%、JSR(株)製)250gを、62gのメチルエチルケトンおよび88gのシクロヘキサノンに溶解した溶液を調製した。この溶液をガラス板に塗布して、紫外線硬化して得られる塗布層の屈折率は1.53であった。さらに、この溶液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層用塗布液Iを調製した。
【0198】
(低屈折率層用塗布液の調製)
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(TN−049、JSR(株)製)20093gに、MEK−ST(平均粒径10nm〜20nm、固形分濃度30重量%のSiOゾルのMEK(メチルエチルケトン)分散物と、日産化学(株)製)8gと、メチルエチルケトン100gとを添加し、攪拌した後に孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
【0199】
実施例1〜5及び比較例1〜4による各フィルム上に、前記ハードコート層用塗布液Iをバーコータを用いて塗布し、120℃で乾燥した後に160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量300mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ2.5μmのハードコート層を形成した。その上に、前記防眩層用塗布液Fをバーコータを用いて塗布し、上記ハードコート層と同条件にて乾燥した後に紫外線硬化して、厚さ約1.5μmの防眩層FLを形成した。さらに、その上に前記低屈折率層用塗布液をバーコータを用いて塗布し、80℃で乾燥した後に120℃で10分間熱架橋を行い、厚さ0.096μmの低屈折率層を形成して、反射防止膜を作成した。
【0200】
次に、防眩層用塗布液Fを防眩層用塗布液Gに代えて防眩層GLを形成し、その他の条件は同じにした反射防止膜を作成した。さらに、防眩層用塗布液Fを防眩層用塗布液Hに代えて防眩層HLを形成し、その他の条件は同じにした反射防止膜も作成した。
【0201】
[反射防止膜の評価]
実施例1〜5及び比較例1〜4の各フィルムを対象に、防眩層FL,GL,HLを形成されてそれぞれ得られた27種類の反射防止膜について、以下の項目の評価を行った。以下の評価方法から得られた結果については後に表4にまとめて示す。
【0202】
(1)鏡面反射率及び色味
分光光度計V−550(日本分光(株)製)にアダプターARV−474を装着して、380nm〜780nmの波長領域において、入射角5°における出射角−5度の鏡面反射率を測定し、450nm〜650nmの平均反射率を算出し、反射防止性を評価した。さらに、測定された反射スペクトルから、CIE標準光源D65の5度入射光に対する正反射光の色味を表わすCIE1976L*a*b*色空間のL*値、a*値、b*値を算出し、反射光の色味を評価した。
【0203】
(2)積分反射率
分光光度計V−550(日本分光(株)製)にアダプターILV−471を装着して、380nm〜780nmの波長領域において、入射角5°における積分反射率を測定し、450nm〜650nmの平均反射率を算出した。
【0204】
(3)ヘイズ
得られたフイルムのヘイズをヘイズメーター(MODEL 1001DP、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
【0205】
(4)鉛筆硬度評価
耐傷性の指標としてJIS K 5400に記載の鉛筆硬度評価を行った。反射防止膜を温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、JIS S 6006に規定する3Hの試験用鉛筆を用いて、1kgの荷重にて、n=5の評価において傷が全く認められない(○)、n=5の評価において傷が1または2つ(△)、n=5の評価において傷が3つ以上(×)の基準で評価をして表2中に示した。
【0206】
(5)接触角測定
表面の耐汚染性の指標として、得られた反射防止膜を温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、水に対する接触角を測定し、指紋付着性の指標とした。
【0207】
(6)動摩擦係数測定
表面滑り性の指標として動摩擦係数にて評価した。動摩擦係数は試料を25℃、相対湿度60%で2時間調湿した後、動摩擦測定機(型式;HEIDON−14、新東科学(株)製)により5mmφステンレス鋼球、荷重100g、速度60cm/minにて測定した値を用いた。
【0208】
(7)防眩性評価
得られた27種の反射防止膜に、ルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/m)を映して、その反射像のボケの程度を評価し、これを第1評価とした。蛍光灯の輪郭が全くわからないものを◎とし、蛍光灯の輪郭がわずかにわかるものを○とし、蛍光灯はぼけているが、輪郭は識別できるものを△とし、蛍光灯がほとんどぼけないものを×とする基準にて判定し、表4に示した。また、防眩性の程度について任意の複数部位でムラを目視で確認評価し、これを第2評価とした。
【0209】
【表4】
Figure 2004322535
【0210】
実施例1〜5から作製された反射防止膜は、いずれも防眩性、反射防止性に優れ、且つ色味が弱く、また、鉛筆硬度、指紋付着性、動摩擦係数のような膜物性を反映する評価の結果も良好であった。しかしながら、比較例1〜4のフィルムを用いて作製された反射防止膜は、反射防止性に優れ、色味が弱く、鉛筆硬度や指紋付着性、動摩擦係数等の膜物性を反映する評価の結果は良好であり、防眩性についても良好ではあったが、防眩の程度にムラが観察された。
【0211】
【発明の効果】
以上のように、本発明の溶液製膜方法によれば、厚み及び複屈折率のムラを高度に抑制し、光学特性に優れたフィルムを得ることができ、このフィルムを用いることによって、光学特性に優れた偏光板、偏光板保護膜、光学機能性膜、液晶表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶液製膜方法に用いられる製膜工程の概略図である。
【図2】本発明の実施形態の流延設備を示す概略図である。
【図3】図2におけるIV−IV線に沿う断面図である。
【図4】本発明を実施した流延ダイの断面図である。
【図5】本発明の別の実施形態である流延ダイの断面図である。
【図6】本発明を別の実施形態を示す流延設備の要部の平面図である。
【図7】本発明のフィルムの厚み測定位置及び複屈折率測定位置を示す平面図である。
【図8】本発明のフィルムの厚み測定位置及び複屈折率測定位置を示す断面図である。
【図9】本発明を別の実施形態を示す流延設備の要部の平面図である。
【図10】図9におけるV−V線に沿う断面図である。
【図11】本発明を別の実施形態を示す流延設備の要部の平面図である。
【図12】本発明を実施形態を示すテンター装置の要部の一部断面を含む平面図である。
【図13】本発明を別の実施形態を示すテンター装置の要部の一部断面を含む平面図である。
【符号の説明】
12 流延ドープ
16 流延設備
31 バンド
32 第1バックアップローラ
33 第2バックアップローラ
35 流延膜
35a 第1層
35b 第2層
35c 第3層
36 フィルム
51 加熱板
52 凝縮板
53 液受け
61 ダイブロック
62 フィードブロック
71 流延ダイ
81 流延設備
82〜84 流延ダイ
91 流延設備
92 加熱板
93 凝縮板
94 液受け
101 流延設備
102 ドラム
105 凝縮板
112 加熱板
113 凝縮板
122 マイクロ波導波管
123 凝縮板
D 流延面と凝縮板との距離
PS 流延開始位置

Claims (27)

  1. 溶媒によりポリマーを溶解してポリマー溶液とし、前記ポリマー溶液を移動する支持体上に流延ダイから流延してから剥ぎ取り乾燥してフィルムとする溶液製膜方法において、
    前記支持体のポリマー流延面と反対側の面に沿って設けられる加熱手段により、前記支持体を加熱し、
    前記支持体のポリマー流延面に沿って設けられる凝縮手段により、流延されたポリマー溶液から揮発した溶媒を凝縮して回収することを特徴とする溶液製膜方法。
  2. 前記支持体上の前記ポリマー溶液の面上での風速を0.01m/秒以上0.5m/秒以下とすることを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。
  3. 前記ポリマー溶液が前記支持体に流延を開始される前記支持体上の位置を流延開始位置とするとき、
    前記流延開始位置における前記ポリマー溶液の走行の向きが下向きであることを特徴とする請求項1または2記載の溶液製膜方法。
  4. 前記凝縮手段の少なくとも前記ポリマー流延面に対面する表面温度をTw(単位;℃)とし、
    流延された前記ポリマー溶液の温度をTs(単位;℃)とし、前記凝縮手段と前記流延面までの距離をdmmとするとき、
    温度勾配Qが以下の式(1)及び(2)の関係を満たすことを特徴とする請求項1ないし3いずれかひとつ記載の溶液製膜方法。
    Q=(Ts−Tw)/d・・・(1)
    5<Q<100・・・(2)
  5. 前記温度勾配Qの変動幅を、前記温度勾配Qの10%以下とすることを特徴とする請求項1ないし4いずれかひとつ記載の溶液製膜方法。
  6. 前記凝縮手段の少なくとも前記流延面との対面する表面部位の温度分布を10℃以内とすることを特徴とする請求項1ないし5いずれかひとつ記載の溶液製膜方法。
  7. 前記凝縮手段と前記流延面までの距離をd(単位;mm)とするとき、
    前記支持体面の幅方向における前記距離dの変動幅を、前記距離dの平均値の10%以内とすることを特徴とする請求項1ないし6いずれかひとつ記載の溶液製膜方法。
  8. 互いに異なる前記ポリマー溶液を共流延することを特徴とする請求項1ないし7いずれかひとつ記載の溶液製膜方法。
  9. 互いに異なる前記ポリマー溶液を逐次流延することを特徴とする請求項1ないし7いずれかひとつ記載の溶液製膜方法。
  10. 前記支持体上に流延した直後の前記ポリマー溶液の厚みが10μm以上1000μm以下であって、
    かつ、 前記支持体と前記流延ダイとの相対速度が5m/分以上200m/分以下であることを特徴とする請求項1ないし9いずれかひとつ記載の溶液製膜方法。
  11. 前記ポリマー溶液が、
    セルロースアシレートと、
    ポリカーボネートと、
    アラミド樹脂と、
    ポリスルフォンと、
    ポリスチレンと、
    からなるポリマー群より選択される少なくともひとつを含有することを特徴とする請求項1ないし10いずれかひとつ記載の溶液製膜方法
  12. 前記セルロースアシレートの6位のアシレート基の置換比率をXとし、その他の位置の置換比率をYとするとき、
    前記ポリマー溶液に含有されるポリマーの少なくとも50体積%をセルロースアシレートとし、
    X>0.85、かつ、2.70<(X+Y)<2.99とすることを特徴とする請求項1ないし11いずれかひとつ記載の溶液製膜方法。
  13. 厚みのFFT変換による周波数スペクトルを有する光学用ポリマーフィルムにおいて、
    前記光学用ポリマーフィルムの任意の2点間における厚み平均値をTA1とし、前記2点間の厚みの偏差の平均値を第1平均偏差MD1とするとき、MD1≦0.10×TA1であって、
    前記厚みの周波数スペクトルにおける最大スペクトル値が、前記厚み平均値TA1の10%以下であることを特徴とする光学用ポリマーフィルム。
  14. 前記周波数スペクトルを空間周波数に変換した場合の波長が20cm以下の範囲の最大スペクトル値が、
    前記厚み平均値TA1の10%以下であることを特徴とする請求項13記載の光学用ポリマーフィルム。
  15. 直交する任意の2方向において測定された厚み平均値をTA2とし、その厚みの偏差の平均値を第2平均偏差MD2とするとき、
    MD2≦0.1×TA2とし、
    前記周波数スペクトルを空間周波数に変換した場合の波長が20cm以下の範囲の最大スペクトル値が、
    前記厚み平均値TA2の10%以下であることを特徴とする請求項11または14記載の光学用ポリマーフィルム。
  16. 任意の一方向において測定された面方向のリタデーション値Reの偏差の平均値を第3平均偏差MD3とし、
    面方向のリタデーション値Reの平均値をRA1とするとき、
    MD≦0.10×RA1であって、
    前記リタデーション値Reの周波数スペクトルにおける最大スペクトル値が、
    前記リタデーション値Reの平均値RA1の10%以下であることを特徴とする請求項11ないし15いずれかひとつ記載の光学用ポリマーフィルム。
  17. 前記リタデーション値Reの周波数スペクトルを空間周波数に変換した場合の波長が20cm以下の範囲である前記リタデーション値Reの周波数スペクトルにおける最大スペクトル値が、
    前記リタデーション値Reの平均値RA1の10%以下であることを特徴とする請求項16記載の光学用ポリマーフィルム。
  18. 直交する任意の2方向において測定された前記リタデーション値Reの偏差の平均値を第4平均偏差MD4とし、このリタデーション値Reの平均値をRA2とするとき、
    MD4≦0.10×RA2であって、
    前記リタデーション値Reの周波数スペクトルを空間周波数に変換した場合の波長が20cm以下の範囲の最大スペクトル値が、
    前記リタデーション値Reの前記平均値RA2の10%以下であることを特徴とする請求項16または17記載の光学用ポリマーフィルム。
  19. 任意の一方向において測定された厚み方向のリタデーション値Rthの偏差の平均値を第5平均偏差MD5とし、前記リタデーション値thの平均値をRA3とするとき、
    MD5≦0.10×RA3であって、
    前記リタデーション値Rthの周波数スペクトルにおける最大スペクトル値が、
    前記リタデーション値Rthの平均値RA3の10%以下であることを特徴とする請求項11ないし18いずれかひとつ記載の光学用ポリマーフィルム。
  20. 厚み方向の前記リタデーション値Rthの周波数スペクトルを空間周波数に変換した場合の波長が20cm以下の範囲の最大スペクトル値が、
    前記リタデーション値Rthの前記平均値RA3の10%以下であることを特徴とする請求項19記載の光学用ポリマーフィルム。
  21. 直交する任意の2方向において測定された厚み方向のリタデーション値Rthの偏差の平均値を第6平均偏差MD6とし、このリタデーション値Rthの平均値をRA4とするとき、
    MD6≦0.10×RA4であって、
    前記リタデーション値Rthの周波数スペクトルを空間周波数に変換した場合の波長が20cm以下の範囲における最大スペクトル値が、
    前記リタデーション値Rthの前記平均値RA4の10%以下であることを特徴とする請求項19または20記載の光学用ポリマーフィルム。
  22. 相対湿度10%における表面抵抗率が1×1010以上1×1013であり、任意の2点における前記表面抵抗率の値の差が、その2点の前記表面抵抗率の平均値の20%以内であることを特徴とする請求項13ないし21いずれかひとつ記載の光学用ポリマーフィルム。
  23. 請求項1ないし12いずれかひとつ記載の溶液製膜方法によって製膜されたことを特徴とする光学用ポリマーフィルム。
  24. 請求項13ないし23いずれかひとつ記載の光学フィルムを用いて構成されたことを特徴とする偏光板
  25. 請求項13ないし23いずれかひとつ記載の光学フィルムを用いて構成されたことを特徴とする偏光板保護膜。
  26. 請求項13ないし23いずれかひとつ記載の光学フィルムより構成されたことを特徴とする光学機能性膜。
  27. 請求項13ないし23いずれかひとつ記載の光学フィルムより構成されたことを特徴とする表示装置。
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