JP2004321272A - 水系消火剤及び該水系消火剤を使用した小型消火器具 - Google Patents
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Abstract
【課題】てんぷら油火災、石油ストーブ火災、屑籠火災、クッション火災、カーテン火災の5種の火災に確実に対応できる、優れた再着火防止効果及び初期消火力を有し、少ない使用量でも消火可能で、かつ、pHも中性に近く安全に使用できる水系消火剤、及び該水系消火剤を使用した小型消火器具、特にお年寄りや女性、子供まで手軽に使用することができる、エアゾール式簡易消火具、を提供する。
【解決手段】有機カリウム塩及び/又は無機カリウム塩の20〜45重量%水溶液に、塩存在下で下限臨界溶液温度を有するポリマー、好ましくは純水中においては100℃まで下限臨界溶液温度を有さず、30重量%酢酸カリウム水溶液中においては下限臨界溶液温度を有するポリマー、を混合してなる水系消火剤。
【解決手段】有機カリウム塩及び/又は無機カリウム塩の20〜45重量%水溶液に、塩存在下で下限臨界溶液温度を有するポリマー、好ましくは純水中においては100℃まで下限臨界溶液温度を有さず、30重量%酢酸カリウム水溶液中においては下限臨界溶液温度を有するポリマー、を混合してなる水系消火剤。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、てんぷら油火災、石油ストーブ火災、屑籠火災、クッション火災、カーテン火災等の消火に好適な、速消性及び優れた再燃防止性を有する水系消火剤及び該水系消火剤を使用した小型消火器具に関する。
【0002】
【従来の技術】
てんぷら油は、約360℃の発火点を超えると熱分解を伴いながら可燃性ガスが多量に発生し、種火がなくても着火して火災を起こすようになり、その燃焼によりてんぷら油の温度もさらに上昇し、火災が拡大する。また、石油ストーブは、現に一般家庭や事業所内で広く使用されており、転倒や漏洩などにより火災が多発している。更に、屑篭、クッション、カーテンなど可燃性固体が燃える場合には、物質の熱分解で発生した可燃性物が着火し、火災を生じて、この火災の熱によって更に熱分解が進行して燃焼を続ける。何れの火災も確実な初期消火を特に必要とされている。
【0003】
かかる火災に対して、従来、強化液消火薬剤が使用されてきた。強化液消火薬剤は、初期消火効果を向上させるために、主成分である炭酸カリウムの多量添加が必要であった。しかしながら、消火性能の不安定さや強アルカリ性であるという不安全な面があり、これら火災に対して十分対応できているとは言い難い。
特許文献1には、炭酸カリウムを主成分とし、燐酸一水素カリウム、燐酸二水素カリウム、界面活性剤を配合した強化液消火薬剤の組成が開示されており、初期消火性能を向上させてはいるが、40〜50重量%という高濃度の強アルカリ性カリウム塩が添加されており、pHも高く必ずしも安全とは言い難い。
【0004】
また、従来の強化液消火薬剤は、保水性が殆どなく、持続的な消火力を有さないため、再燃防止効果及び延焼抑制効果が低いという欠点もあり、少ない消火剤の使用で有効な消火活動を行うことができなかった。
かかる欠点を解消するため、例えばポリアミン系水溶性高分子等が添加された水成膜あるいは泡形成性の多くの種類の水系消火薬剤が提案されているが(特許文献2)、保水性及び再着火防止性能の改善は必ずしも十分とはいえず、また、ポリアミン系水溶性高分子はアミンの骨格が酸化されやすく保存中変質してしまうという問題点が残る。
【0005】
更に、水膨潤性ポリマー、含水ゲル化物等を使用した消火薬剤も報告されている(特許文献3)。しかしながら、これらは一般に粘度が高く、有効に使用することは困難であった。また、特許文献4には、疎水性モノマー(アルキル置換アクリルアミド誘導体)と親水性モノマー(アクリルアミドスルホン酸類)とを共重合させたエーロゾル制御とせん断安定性を有する組成物が開示されている。しかしながら、該組成物は、それ自体が消火における有効な作用を有するものではない。
【0006】
従来から、初期の小火災を消火する目的で消火器具が用いられてきた。消火器具には、水バケツ、水槽、砂等の簡易消火器具と、消火薬剤を充填した消火器がある。簡易消火器具は、主として酸素を遮断する効果が利用されているが、限定的な効果しかなく、また配置に広いスペースが必要である等の問題があった。一方、備え付き消火器は広く利用されているが、初期小火災等に対しては操作性が悪く、また重量上及び設置場所の制限もあり、応急時において正しく操作できず、大事に至りやすい上記小火災の初期消火に対応し難いという種々の問題を残している。
従って、扱いやすく、少ない使用量で、有効な消火効果を奏する高性能の小型消火器具の開発が求められている。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−42132号公報
【特許文献2】
特開2000−126327号公報、特開2000−325493号公報、特開2001−79108号公報、特開2001−269421号公報、特開2001−314525号公報
【特許文献3】
特開平8−107946号公報、特開平9−140826号公報、特開平10−155932号公報
【特許文献4】
特表2002−518545号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、特定の感温性ポリマーとカリウム塩からなる水系消火剤を先に提案した(特開2002−291939号)。該水系消火剤は、火災の延焼拡大阻止、再燃焼防止、水損抑制に優れたものであるが、一定量のカリウム塩を添加すると感温性ポリマーが不溶となり均一な溶液として得ることができず、カリウム塩の高濃度配合が必要とされる初期消火力の向上に限界があった。
従って、本発明の目的は、消防法で規定するてんぷら油火災、石油ストーブ火災、屑籠火災、クッション火災、カーテン火災に対して優れた再着火防止効果を有するのみならず、優れた初期消火力を奏する水系消火剤を提供することにある。
更に、少ない使用量でも優れた消火力と再着火防止効果を有する小型消火器具、特に、お年寄りや女性、子供まで手軽に使用できる小型消火器具を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、水系消火剤について鋭意研究した結果、高濃度のカリウム塩水溶液に特定のポリマーを含有せしめることにより、かかる課題を解決できることを見いだし、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
(1)有機カリウム塩及び/又は無機カリウム塩の20〜45重量%水溶液に、塩存在下で下限臨界溶液温度を有するポリマーを混合してなる水系消火剤、
(2)有機カリウム塩が、酢酸カリウム、クエン酸カリウムの中から選択される少なくとも1種以上である、上記(1)記載の水系消火剤、
(3)無機カリウム塩が、四硼酸カリウムと、重炭酸カリウム、燐酸二水素カリウム、燐酸水素二カリウムの中から選ばれた1種以上の無機カリウム塩との混合物である、上記(1)記載の水系消火剤、
(4)塩存在下で下限臨界溶液温度を有するポリマーが、純水中においては100℃まで下限臨界溶液温度を有さず、30重量%酢酸カリウム水溶液中においては下限臨界溶液温度を有するものである、上記(1)乃至(3)のいずれか一に記載の水系消火剤、
(5)30重量%酢酸カリウム水溶液中の下限臨界共溶温度が、35〜100℃の温度範囲内である、上記(1)乃至(4)のいずれか一に記載の水系消火剤、
(6)ポリマーが、ノニオン性アクリルアミド誘導体又はノニオン性ビニルアルキルアミドとイオン性モノマーとの共重合体である、上記(1)乃至(5)のいずれか一に記載の水系消火剤、
(7)ノニオン性アクリルアミド誘導体が、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリンの中から選択される少なくとも1種以上である、上記(1)乃至(6)のいずれか一に記載の水系消火剤。
(8)上記(1)乃至(7)のいずれか一に記載の水系消火剤と、該水系消火剤を収納する収納容器と、該水系消火剤を前記収納容器から噴出させる圧縮されたキャリアガスとを有することを特徴とする小型消火器具、
(9)小型消火器具がエアゾール式簡易消火具である、上記(8)記載の小型消火器具、
(10)水系消火剤の25℃における比重が1.05〜1.25である、上記(8)乃至(9)記載の小型消火器具、
(11)水系消火剤の0℃における粘度が10〜60mPa・sである、上記(8)乃至(10)のいずれか一に記載の小型消火器具、
を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の水系消火剤は、有機酸カリウム塩及び/又は無機カリウム塩の20〜45重量%水溶液に、塩存在下で下限臨界溶液温度を有するポリマーを併用添加したものである。
本発明に使用される物質の種類及び添加量の範囲並びにそれぞれの効能について説明する。
本発明に使用されるポリマーは、塩存在下で下限臨界溶液温度を有するもので、純水中においては100℃まで下限臨界溶液温度を有さず、30重量%酢酸カリウム水溶液中では下限臨界溶液温度を有するものが好ましい。
該ポリマーの下限臨界溶液温度(増粘乃至ゲル化温度)は、季節や使用条件などにより異なるが、30重量%酢酸カリウム水溶液で測定した温度を、概ね35〜100℃に制御することが好ましい。
【0011】
かかるポリマーは、特に性能と入手の容易さを考慮すると、▲1▼ノニオン性アクリルアミド誘導体又はビニルアルキルアミドを主成分として、▲2▼イオン性ビニルモノマーを導入した、ビニル系ラジカル共重合体が好ましい。
重合を開始する方法としては、加熱のみによっても行い得るが、通常、重合開始剤を使用することが好ましい。
重合開始剤としてはラジカル重合を開始する能力を有するものであれば特に制限はなく、無機過酸化物、有機過酸化物、それらの過酸化物と還元剤との組み合わせ、アゾ化合物等の、通常用いられる化合物を使用することができる。
【0012】
用いられる▲1▼のノニオン性アクリルアミド誘導体としては、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン等のアクリルアミド誘導体を例示することができる。また▲1▼のビニルアルキルアミドとしては、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミド、ビニルピロリドン等が例示される。これらのビニルモノマーは、単独で使用してもよく、二種類以上を併用してもよい。
これらのビニルモノマーは、一定濃度以上のカリウム塩水溶液中において、下限臨界溶液温度(増粘又はゲル化特性)を付与するために使用される成分であり、その共重合の割合は、ビニルモノマーの種類並びにポリマーの増粘乃至ゲル化温度の相違によって異なるが、総使用量は80モル%以上が好ましく、95モル%以上が更に好ましい。これらのビニルモノマーの割合が80モル%未満の場合には、昇温によるポリマーの増粘乃至ゲル化性が著しく低下してしまうため、初期消火力の向上並びに再着火防止効果を達成できない。
【0013】
また、▲2▼のイオン性ビニルモノマーは、ポリマーの下限臨界溶液温度の制御並びにポリマーの増粘乃至ゲル化後の保水力を向上させるための成分であり、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩)、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩)、アクリルアミドエチルスルホン酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩)、p−スチレンスルホン酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩)、ビニルスルホン酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩)、メタアリルスルホン酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩)、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩)、ビニルホスホン酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩)、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩)などのアニオン性ビニルモノマー、第3級アミノ基を有する(メタ)アクリレート誘導体由来の各種4級アンモニウム塩、第3級アミノ基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体由来の各種4級アンモニウム塩などのカチオン性ビニルモノマー、第3級アミノ基を有する(メタ)アクリレート誘導体由来の各種両性イオン基を持つ分子内塩形成性単量体、第3級アミノ基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体由来の各種両性イオン基を持つ分子内塩形成性単量体などの両性ビニルモノマー、アミノ酸塩を含むアクリルアミド誘導体などが挙げられるが、特に限定されるものではない。これらのイオン性ビニルモノマーは、単独で使用してもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
これらのイオン性ビニルモノマーのうち、アニオン性ビニルモノマーが好ましく、アクリル酸のアルカリ金属塩、スルホン酸塩型のアニオン性ビニルモノマーがより好ましい。
【0014】
ポリマーは、1重量%水溶液の粘度が50〜1000mPa・sであることが好ましく、50〜500mPa・sであることがより好ましく、50〜200mPa・sであることが更に好ましい。
【0015】
水系消火剤としてのポリマーの添加量は、主として生成したポリマーの粘度等によって異なるが、水系消火剤に対して、0.1〜2.5重量%が好ましく、0.1〜1.0重量%がより好ましく、0.1〜0.5重量%が更に好ましい。
添加量が0.1重量%未満の場合は、消火剤が十分な増粘乃至ゲル化効果を発揮できない恐れがあり、逆に、2.5重量%を超えると、消火剤の粘度が高くなりすぎて、有効に使用できる消火用具が限定される。
【0016】
本発明に使用される有機カリウム塩は、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、酒石酸カリウム、乳酸カリウム、シュウ酸カリウム、マレイン酸カリウムなどのカルボン酸カリウム塩が例示される。中でも、潮解性、溶解性並びに融点を考慮すると、これらのカリウム塩のうち、酢酸カリウム、クエン酸カリウムが好ましく、酢酸カリウムがより好ましい。
本発明に使用される無機カリウム塩は、四硼酸カリウム、重炭酸カリウム、燐酸二水素カリウム、燐酸水素二カリウムなどが挙げられる。これらの無機カリウム塩は、単独で使用してもよいが、相乗効果を引き出すために二種類以上を併用することがより好ましい。
併用する場合は、四硼酸カリウムと、他の無機カリウム塩を併用することが望ましい。併用割合は任意であるが、四硼酸カリウムが0.5〜5.0重量%、その他無機カリウム塩が4.5〜10.0重量%程度が好ましい。
【0017】
本発明において、有機カリウム塩及び/又は無機カリウム塩は、20〜45重量%水溶液、好ましくは20〜35重量%水溶液、として使用される。
カリウム塩の濃度がそれ未満であると消火効果を初期の目的通り発揮することが困難であり、一方、それを超えても効果の向上が見られず経済的に不利であり、また、ポリマーが十分に溶解しない場合もある。
有機カリウム塩と無機カリウム塩はそれぞれ単独でも良いが、混合して用いることが望ましい。混合割合は任意であるが、有機カリウム塩が10〜40重量%、無機カリウム塩が5〜15重量%となる範囲から選択することが好ましい。
【0018】
本発明の水系消火剤の各成分の作用は以下の通りである。
(1)塩存在下で下限臨界溶液温度を有するポリマーは、火災の熱により高濃度のカリウム塩水溶液と共に増粘乃至ゲル化することができ、空気を遮断する不流動性のゲル化隔離層が形成され、燃焼物の表面で長時間滞留することができ、持続的な冷却作用及び空気遮断効果を発揮する。即ち、少ない消火剤の使用量で鎮火可能となり、高い消火効率を達成でき、消火力の一層向上を実現できる。
(2)有機カリウム塩、例えば酢酸カリウムは、水に対して極めて高い溶解度を有し、上記ポリマーとの相溶性も優れているため、消火剤の調製を容易にすると共に、低温において析出が起こりにくい。また、高い潮解性を示しており、保水性の向上に寄与すると同時に融点以上になると液状の溶融塩となり、特に燃えているてんぷら油の表面で緻密な膜の形成を促進する作用があり、延焼を防止する。更に、pHも低く、人体や環境に対して極めて安全であり、廃棄処理もし易いという結果に寄与する。有機カリウム塩の添加量の最適範囲は、15〜40重量%である。
(3)炭酸水素カリウムは、従来強化液消火薬剤に使用されている炭酸カリウムに比べて、pHの低下効果を発揮する。また、〜200℃付近で分解反応が起こり、二酸化炭素を発することにより、空気(酸素)が排除され、燃焼が抑制されるため、消火作用の一翼を担うものである。
(4)燐酸二水素カリウム及び燐酸一水素カリウムは、火災に対して防炎効果を向上させ、てんぷら油火災に対して反応膜の形成を促進させ、酢酸カリウムと炭酸水素カリウムとの相乗作用により、一層強力な消火効果を発揮する。また、pHの低下作用もある。
(5)四硼酸カリウムは、一般に油脂のゲル化剤として熱によるガラス皮膜の形成効果が優れると共に、防錆性も高く、水系消火剤中で重要な役割を果たす物質である。
【0019】
本発明の水系消火剤の調整方法は任意であるが、例えば、所定量の有機カリウム塩、無機カリウム塩を溶解した水溶液に、特定の濃度のポリマー水溶液を加え均一に混合させる方法、特定の濃度のポリマー水溶液に、有機カリウム塩、無機カリウム塩の水溶液を加え均一に混合させる方法、等を挙げることができ、調製の容易さを考慮すると後者の調製方法がより好ましい。
本発明の水系消火剤の粘度は、有機カリウム塩、無機カリウム塩、ポリマーの種類及び添加量によって任意に制御することができ、その粘度値(0℃)は10〜60mPa・s、好ましくは10〜30mPa・sであるが、小型消火器具、特にエアゾール式簡易消火具に適するためには、10〜20mPa・sが更に好ましい。粘度が10mPa・s未満の場合は、十分な消火力を奏することができない。一方、粘度が60mPa・sを越す場合は、小型消火器具に充填できるとしても噴射性が大きく低下してしまうため、実用上において不都合を生じる。
また、水系消火剤の比重は、有機カリウム塩、無機カリウム塩、ポリマーの種類及び添加量によって変化するが、25℃における値が1.05〜1.25、好ましくは1.10〜1.20、特に1.14〜1.16であることがより好ましい。比重が1.10未満の場合、消火力が弱いため、消火剤の使用量並びに消火時間がかかると同時に、再着火する場合があり得る。一方、比重が1.25を越すと、ポリマーが不溶となる場合があり、均一な消火剤を調製できない。
【0020】
本発明の水系消火剤は、バケツなどの容器の収納しておき、単純に火元に向けて散布することも可能であるが、キャリアガスによって消火剤を火元に散布するような消火器具を利用して使用することもできる。
消火器具としては、本発明の水系消火剤、水系消火剤を収納する収納容器及び水系消火剤を収納容器から噴出させる圧縮された窒素ガス、二酸化炭素ガス等のキャリアガスとを有した消火器具、例えば小型消火器、エアゾール式簡易消火具等が例示されるが、特に、お年寄りや女性、子供まで手軽に使用できるエアゾール式簡易消火具が好ましい。
これら小型消火器具は、通常の水系の消火薬剤を使用した小型消火器具の製法に準じて製造することができる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。また、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
合成例1;ポリマーA1の合成
1L容量のセパラブルフラスコにN,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)120g、脱イオン水600gを加えて、攪拌しながら5重量%の硫酸水溶液を徐々に添加し、溶液のpHを7.30に合わせ、中和操作を行った後、モノマー水溶液の濃度が15重量%になるように、脱イオン水を補填した。そして、モノマー調製液を、20℃の恒温槽に入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら窒素ガスをバブリングし、1時間通気した。そこで、重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド(VA−044)の5重量%水溶液を2.740g、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシート2水和物(ロンガリット)の5重量%水溶液を3.731g、tert−ブチルヒドロペルオキシド(t−BHPO)の5重量%水溶液を2.182gを順次投入し、20℃にて重合反応を開始させた。5分後、攪拌並びに窒素ガスの通気を止め、密閉状態で室温下16時間重合反応を続けた後、85重量%の水を含む水あめ状のポリマーA1を得た。さらにA1を裁断し、脱イオン水に溶解させ、1、2、5重量%の水溶液をそれぞれ調製した。
【0022】
合成例2;ポリマーA2の合成
1L容量のセパラブルフラスコにN−メチルアクリルアミド(NMAA)120g、脱イオン水600gを加えて、攪拌しながら5重量%の硫酸水溶液を徐々に添加し、溶液のpHを7.30に合わせ、中和操作を行った後、モノマー水溶液の濃度が15重量%になるように、脱イオン水を補填した。モノマー調製液を20℃の恒温槽に入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら窒素ガスをバブリングし、1時間通気した。そこで、VA−044の5重量%水溶液を4.559g、ロンガリットの5重量%水溶液を4.346g、t−BHPOの5重量%水溶液を2.542gを順次投入し、20℃にて重合反応を開始させた。5分後、攪拌並びに窒素ガスの通気を止め、密閉状態で室温下16時間重合反応を続けた後、85重量%の水を含む水あめ状のポリマーA2を得た。さらにA2を裁断し、脱イオン水に溶解させ、1、2、5重量%の水溶液をそれぞれ調製した。
【0023】
合成例3;ポリマーA3の合成
1L容量のセパラブルフラスコにDMAA64.57g、NMAA55.43g、脱イオン水600gを加えて、合成例2と同様に中和操作を行い、15重量%のモノマー水溶液を調製した。これを20℃の恒温槽に入れ、同様に窒素ガスを1時間通気した。そこで、VA−044の5重量%水溶液を4.212g、ロンガリットの5重量%水溶液を4.015g、t−BHPOの5重量%水溶液を2.348gを順次投入し、20℃にて重合反応を開始させた。5分後、攪拌並びに窒素ガスの通気を止め、密閉状態で室温下16時間重合反応を続けた後、85重量%の水を含む水あめ状のポリマーA3を得た。さらにA3を裁断し、脱イオン水に溶解させ、1、2、5重量%の水溶液をそれぞれ調製した。
【0024】
合成例4;ポリマーA4の合成
1L容量のセパラブルフラスコにDMAA120g、アクリル酸(AAc)0.881g、脱イオン水600gを加えて、攪拌しながら5重量%の水酸化カリウム水溶液を徐々に添加し、溶液のpHを7.30に合わせ、中和操作を行った後、モノマー水溶液の濃度が15重量%になるように、脱イオン水を補充した。モノマー調製液を20℃の恒温槽に入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら窒素ガスをバブリングし、1時間通気した。そこで、VA−044の5重量%水溶液を2.767g、ロンガリットの5重量%水溶液を5.654g、t−BHPOの5重量%水溶液を3.306gを順次投入し、20℃にて重合反応を開始させた。5分後、攪拌並びに窒素ガスの通気を止め、密閉状態で室温下16時間重合反応を続けた後、85重量%の水を含む水あめ状のポリマーA4を得た。さらにA4を裁断し、脱イオン水に溶解させ、1、2、5重量%の水溶液をそれぞれ調製した。
【0025】
合成例5;ポリマーA5〜7の合成
1L容量のセパラブルフラスコにDMAA120g、AAc2.698g、脱イオン水600gを加えて、合成例4と同様に中和操作を行い、15重量%のモノマー水溶液を三つ調製した。それぞれを0、13、20℃の恒温槽に入れ、同様に窒素ガスを1時間通気した。その後、VA−044の5重量%水溶液を2.824g、ロンガリットの5重量%水溶液を3.847g、t−BHPOの5重量%水溶液を2.249gを順次投入し、それぞれ0、13、20℃にて重合反応を開始させた。5分後、攪拌並びに窒素ガスの通気を止め、密閉状態で室温下16時間重合反応を続けた後、85重量%の水を含む水あめ状のポリマーA5、A6、A7を得た。さらにA5〜7を裁断し、脱イオン水に溶解させ、各々の1、2、5重量%の水溶液をそれぞれ調製した。
【0026】
前記ポリマーA1〜7の組成並びに1重量%水溶液の粘度を表1に纏めた。
【0027】
【表1】
【0028】
実施例1〜14、比較例1〜5
合成例で得られた、1、2、又は5重量%のポリマー水溶液に、有機カリウム塩、無機カリウム塩の水溶液を加え、均一に混合させて、本発明の水系消火剤を調製した。
本発明の水系消火剤の組成並びに物性を表2に示す。
この結果から、明らかのようにカリウム塩の濃度が50重量%以上になるとポリマーの溶解性は著しく低下し、消火剤の調製は困難となった。
【0029】
【表2】
【0030】
比較例6〜12
本発明の水系消火剤と比較するための比較の水系消火剤の組成並びに物性を表3に示す。
【0031】
【表3】
【0032】
評価例1
上記実施例及び比較例に基づく組成物及び市販品を用いて、エアゾール式簡易消火具に300gづつ充填して、キャリアガスとして液化窒素ガスで加圧し、0℃における噴射試験及びてんぷら油、石油ストーブ、屑籠、クッション、カーテン火災の5種の火災に対する消火試験を行った。
なお、試験は、エアゾール式簡易消火具鑑定基準に基づいて行い、噴射ノズルの口径は1.6mmであった。
0℃の噴射試験の結果を表4に示す。
【0033】
【表4】
【0034】
表4から明らかなように、エアゾール式簡易消火具に充填される水系消火剤の粘度が高すぎると、噴射が困難であり、噴射距離も短くなってしまうため、消火活動に著しく支障を生じることが分かる。
【0035】
てんぷら油火災の消火試験については、直径300mm、深さ50mmのてんぷら鍋に700mLの大豆油を入れて、ガスコンロで加熱発火させ、油の温度が400℃になった時点で、ガスコンロの火を消してからエアゾール式簡易消火具により消火を開始した。そして、噴射直後から消火に至るまでの時間を計測した。また、消火中炎の上昇有無、消火後の再着火有無並びに消火後油表面の状態について観察した。
結果を表5に示す。
なお、消火可否の基準は以下の通りである。
○;消火可、×;消火不可(全量噴出しても、消火できない)
【0036】
【表5】
【0037】
更に、上述したてんぷら油の消火試験において、油の温度が400℃になった時点で、ガスコンロの火を消すことなくエアゾール式簡易消火具により消火を開始し、消火後から再着火に至るまでの時間を計測した。
結果を表6に示す。
【0038】
【表6】
【0039】
石油ストーブ火災、屑籠火災、クッション火災、カーテン火災の消火試験結果を表7〜10に示す。
【0040】
【表7】
【0041】
【表8】
【0042】
【表9】
【0043】
【表10】
【0044】
【発明の効果】
本発明の水系消火剤は、カリウム塩が高濃度に配合されているために初期消火力に優れるとともに、火災の熱により増粘乃至ゲル化を起こすことによって、燃焼物の表面に対する付着性が著しく向上し、緻密な皮膜を形成できる。これによって、空気(酸素)を遮断し、持続的な消火力を発揮することができ、消火後再着火を充分に防止することができるという極めて優れた効果を奏し、てんぷら油火災、石油ストーブ火災、屑籠火災、クッション火災、カーテン火災の5種の火災に確実に対応できる。更に、本発明の水系消火剤は、常温で低粘度を有しており、少量の放出でも消火活動を実施することができ、かつ、pHも中性に近く安全に使用できるので、小型消火器具、特に、軽量でかつ優れた操作性を有し、お年寄りや女性、子供まで手軽に使用することができる、エアゾール式簡易消火具のような小型消火器具の充填に好適に使用できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、てんぷら油火災、石油ストーブ火災、屑籠火災、クッション火災、カーテン火災等の消火に好適な、速消性及び優れた再燃防止性を有する水系消火剤及び該水系消火剤を使用した小型消火器具に関する。
【0002】
【従来の技術】
てんぷら油は、約360℃の発火点を超えると熱分解を伴いながら可燃性ガスが多量に発生し、種火がなくても着火して火災を起こすようになり、その燃焼によりてんぷら油の温度もさらに上昇し、火災が拡大する。また、石油ストーブは、現に一般家庭や事業所内で広く使用されており、転倒や漏洩などにより火災が多発している。更に、屑篭、クッション、カーテンなど可燃性固体が燃える場合には、物質の熱分解で発生した可燃性物が着火し、火災を生じて、この火災の熱によって更に熱分解が進行して燃焼を続ける。何れの火災も確実な初期消火を特に必要とされている。
【0003】
かかる火災に対して、従来、強化液消火薬剤が使用されてきた。強化液消火薬剤は、初期消火効果を向上させるために、主成分である炭酸カリウムの多量添加が必要であった。しかしながら、消火性能の不安定さや強アルカリ性であるという不安全な面があり、これら火災に対して十分対応できているとは言い難い。
特許文献1には、炭酸カリウムを主成分とし、燐酸一水素カリウム、燐酸二水素カリウム、界面活性剤を配合した強化液消火薬剤の組成が開示されており、初期消火性能を向上させてはいるが、40〜50重量%という高濃度の強アルカリ性カリウム塩が添加されており、pHも高く必ずしも安全とは言い難い。
【0004】
また、従来の強化液消火薬剤は、保水性が殆どなく、持続的な消火力を有さないため、再燃防止効果及び延焼抑制効果が低いという欠点もあり、少ない消火剤の使用で有効な消火活動を行うことができなかった。
かかる欠点を解消するため、例えばポリアミン系水溶性高分子等が添加された水成膜あるいは泡形成性の多くの種類の水系消火薬剤が提案されているが(特許文献2)、保水性及び再着火防止性能の改善は必ずしも十分とはいえず、また、ポリアミン系水溶性高分子はアミンの骨格が酸化されやすく保存中変質してしまうという問題点が残る。
【0005】
更に、水膨潤性ポリマー、含水ゲル化物等を使用した消火薬剤も報告されている(特許文献3)。しかしながら、これらは一般に粘度が高く、有効に使用することは困難であった。また、特許文献4には、疎水性モノマー(アルキル置換アクリルアミド誘導体)と親水性モノマー(アクリルアミドスルホン酸類)とを共重合させたエーロゾル制御とせん断安定性を有する組成物が開示されている。しかしながら、該組成物は、それ自体が消火における有効な作用を有するものではない。
【0006】
従来から、初期の小火災を消火する目的で消火器具が用いられてきた。消火器具には、水バケツ、水槽、砂等の簡易消火器具と、消火薬剤を充填した消火器がある。簡易消火器具は、主として酸素を遮断する効果が利用されているが、限定的な効果しかなく、また配置に広いスペースが必要である等の問題があった。一方、備え付き消火器は広く利用されているが、初期小火災等に対しては操作性が悪く、また重量上及び設置場所の制限もあり、応急時において正しく操作できず、大事に至りやすい上記小火災の初期消火に対応し難いという種々の問題を残している。
従って、扱いやすく、少ない使用量で、有効な消火効果を奏する高性能の小型消火器具の開発が求められている。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−42132号公報
【特許文献2】
特開2000−126327号公報、特開2000−325493号公報、特開2001−79108号公報、特開2001−269421号公報、特開2001−314525号公報
【特許文献3】
特開平8−107946号公報、特開平9−140826号公報、特開平10−155932号公報
【特許文献4】
特表2002−518545号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、特定の感温性ポリマーとカリウム塩からなる水系消火剤を先に提案した(特開2002−291939号)。該水系消火剤は、火災の延焼拡大阻止、再燃焼防止、水損抑制に優れたものであるが、一定量のカリウム塩を添加すると感温性ポリマーが不溶となり均一な溶液として得ることができず、カリウム塩の高濃度配合が必要とされる初期消火力の向上に限界があった。
従って、本発明の目的は、消防法で規定するてんぷら油火災、石油ストーブ火災、屑籠火災、クッション火災、カーテン火災に対して優れた再着火防止効果を有するのみならず、優れた初期消火力を奏する水系消火剤を提供することにある。
更に、少ない使用量でも優れた消火力と再着火防止効果を有する小型消火器具、特に、お年寄りや女性、子供まで手軽に使用できる小型消火器具を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、水系消火剤について鋭意研究した結果、高濃度のカリウム塩水溶液に特定のポリマーを含有せしめることにより、かかる課題を解決できることを見いだし、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
(1)有機カリウム塩及び/又は無機カリウム塩の20〜45重量%水溶液に、塩存在下で下限臨界溶液温度を有するポリマーを混合してなる水系消火剤、
(2)有機カリウム塩が、酢酸カリウム、クエン酸カリウムの中から選択される少なくとも1種以上である、上記(1)記載の水系消火剤、
(3)無機カリウム塩が、四硼酸カリウムと、重炭酸カリウム、燐酸二水素カリウム、燐酸水素二カリウムの中から選ばれた1種以上の無機カリウム塩との混合物である、上記(1)記載の水系消火剤、
(4)塩存在下で下限臨界溶液温度を有するポリマーが、純水中においては100℃まで下限臨界溶液温度を有さず、30重量%酢酸カリウム水溶液中においては下限臨界溶液温度を有するものである、上記(1)乃至(3)のいずれか一に記載の水系消火剤、
(5)30重量%酢酸カリウム水溶液中の下限臨界共溶温度が、35〜100℃の温度範囲内である、上記(1)乃至(4)のいずれか一に記載の水系消火剤、
(6)ポリマーが、ノニオン性アクリルアミド誘導体又はノニオン性ビニルアルキルアミドとイオン性モノマーとの共重合体である、上記(1)乃至(5)のいずれか一に記載の水系消火剤、
(7)ノニオン性アクリルアミド誘導体が、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリンの中から選択される少なくとも1種以上である、上記(1)乃至(6)のいずれか一に記載の水系消火剤。
(8)上記(1)乃至(7)のいずれか一に記載の水系消火剤と、該水系消火剤を収納する収納容器と、該水系消火剤を前記収納容器から噴出させる圧縮されたキャリアガスとを有することを特徴とする小型消火器具、
(9)小型消火器具がエアゾール式簡易消火具である、上記(8)記載の小型消火器具、
(10)水系消火剤の25℃における比重が1.05〜1.25である、上記(8)乃至(9)記載の小型消火器具、
(11)水系消火剤の0℃における粘度が10〜60mPa・sである、上記(8)乃至(10)のいずれか一に記載の小型消火器具、
を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の水系消火剤は、有機酸カリウム塩及び/又は無機カリウム塩の20〜45重量%水溶液に、塩存在下で下限臨界溶液温度を有するポリマーを併用添加したものである。
本発明に使用される物質の種類及び添加量の範囲並びにそれぞれの効能について説明する。
本発明に使用されるポリマーは、塩存在下で下限臨界溶液温度を有するもので、純水中においては100℃まで下限臨界溶液温度を有さず、30重量%酢酸カリウム水溶液中では下限臨界溶液温度を有するものが好ましい。
該ポリマーの下限臨界溶液温度(増粘乃至ゲル化温度)は、季節や使用条件などにより異なるが、30重量%酢酸カリウム水溶液で測定した温度を、概ね35〜100℃に制御することが好ましい。
【0011】
かかるポリマーは、特に性能と入手の容易さを考慮すると、▲1▼ノニオン性アクリルアミド誘導体又はビニルアルキルアミドを主成分として、▲2▼イオン性ビニルモノマーを導入した、ビニル系ラジカル共重合体が好ましい。
重合を開始する方法としては、加熱のみによっても行い得るが、通常、重合開始剤を使用することが好ましい。
重合開始剤としてはラジカル重合を開始する能力を有するものであれば特に制限はなく、無機過酸化物、有機過酸化物、それらの過酸化物と還元剤との組み合わせ、アゾ化合物等の、通常用いられる化合物を使用することができる。
【0012】
用いられる▲1▼のノニオン性アクリルアミド誘導体としては、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン等のアクリルアミド誘導体を例示することができる。また▲1▼のビニルアルキルアミドとしては、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミド、ビニルピロリドン等が例示される。これらのビニルモノマーは、単独で使用してもよく、二種類以上を併用してもよい。
これらのビニルモノマーは、一定濃度以上のカリウム塩水溶液中において、下限臨界溶液温度(増粘又はゲル化特性)を付与するために使用される成分であり、その共重合の割合は、ビニルモノマーの種類並びにポリマーの増粘乃至ゲル化温度の相違によって異なるが、総使用量は80モル%以上が好ましく、95モル%以上が更に好ましい。これらのビニルモノマーの割合が80モル%未満の場合には、昇温によるポリマーの増粘乃至ゲル化性が著しく低下してしまうため、初期消火力の向上並びに再着火防止効果を達成できない。
【0013】
また、▲2▼のイオン性ビニルモノマーは、ポリマーの下限臨界溶液温度の制御並びにポリマーの増粘乃至ゲル化後の保水力を向上させるための成分であり、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩)、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩)、アクリルアミドエチルスルホン酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩)、p−スチレンスルホン酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩)、ビニルスルホン酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩)、メタアリルスルホン酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩)、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩)、ビニルホスホン酸塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩)、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩)などのアニオン性ビニルモノマー、第3級アミノ基を有する(メタ)アクリレート誘導体由来の各種4級アンモニウム塩、第3級アミノ基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体由来の各種4級アンモニウム塩などのカチオン性ビニルモノマー、第3級アミノ基を有する(メタ)アクリレート誘導体由来の各種両性イオン基を持つ分子内塩形成性単量体、第3級アミノ基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体由来の各種両性イオン基を持つ分子内塩形成性単量体などの両性ビニルモノマー、アミノ酸塩を含むアクリルアミド誘導体などが挙げられるが、特に限定されるものではない。これらのイオン性ビニルモノマーは、単独で使用してもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
これらのイオン性ビニルモノマーのうち、アニオン性ビニルモノマーが好ましく、アクリル酸のアルカリ金属塩、スルホン酸塩型のアニオン性ビニルモノマーがより好ましい。
【0014】
ポリマーは、1重量%水溶液の粘度が50〜1000mPa・sであることが好ましく、50〜500mPa・sであることがより好ましく、50〜200mPa・sであることが更に好ましい。
【0015】
水系消火剤としてのポリマーの添加量は、主として生成したポリマーの粘度等によって異なるが、水系消火剤に対して、0.1〜2.5重量%が好ましく、0.1〜1.0重量%がより好ましく、0.1〜0.5重量%が更に好ましい。
添加量が0.1重量%未満の場合は、消火剤が十分な増粘乃至ゲル化効果を発揮できない恐れがあり、逆に、2.5重量%を超えると、消火剤の粘度が高くなりすぎて、有効に使用できる消火用具が限定される。
【0016】
本発明に使用される有機カリウム塩は、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、酒石酸カリウム、乳酸カリウム、シュウ酸カリウム、マレイン酸カリウムなどのカルボン酸カリウム塩が例示される。中でも、潮解性、溶解性並びに融点を考慮すると、これらのカリウム塩のうち、酢酸カリウム、クエン酸カリウムが好ましく、酢酸カリウムがより好ましい。
本発明に使用される無機カリウム塩は、四硼酸カリウム、重炭酸カリウム、燐酸二水素カリウム、燐酸水素二カリウムなどが挙げられる。これらの無機カリウム塩は、単独で使用してもよいが、相乗効果を引き出すために二種類以上を併用することがより好ましい。
併用する場合は、四硼酸カリウムと、他の無機カリウム塩を併用することが望ましい。併用割合は任意であるが、四硼酸カリウムが0.5〜5.0重量%、その他無機カリウム塩が4.5〜10.0重量%程度が好ましい。
【0017】
本発明において、有機カリウム塩及び/又は無機カリウム塩は、20〜45重量%水溶液、好ましくは20〜35重量%水溶液、として使用される。
カリウム塩の濃度がそれ未満であると消火効果を初期の目的通り発揮することが困難であり、一方、それを超えても効果の向上が見られず経済的に不利であり、また、ポリマーが十分に溶解しない場合もある。
有機カリウム塩と無機カリウム塩はそれぞれ単独でも良いが、混合して用いることが望ましい。混合割合は任意であるが、有機カリウム塩が10〜40重量%、無機カリウム塩が5〜15重量%となる範囲から選択することが好ましい。
【0018】
本発明の水系消火剤の各成分の作用は以下の通りである。
(1)塩存在下で下限臨界溶液温度を有するポリマーは、火災の熱により高濃度のカリウム塩水溶液と共に増粘乃至ゲル化することができ、空気を遮断する不流動性のゲル化隔離層が形成され、燃焼物の表面で長時間滞留することができ、持続的な冷却作用及び空気遮断効果を発揮する。即ち、少ない消火剤の使用量で鎮火可能となり、高い消火効率を達成でき、消火力の一層向上を実現できる。
(2)有機カリウム塩、例えば酢酸カリウムは、水に対して極めて高い溶解度を有し、上記ポリマーとの相溶性も優れているため、消火剤の調製を容易にすると共に、低温において析出が起こりにくい。また、高い潮解性を示しており、保水性の向上に寄与すると同時に融点以上になると液状の溶融塩となり、特に燃えているてんぷら油の表面で緻密な膜の形成を促進する作用があり、延焼を防止する。更に、pHも低く、人体や環境に対して極めて安全であり、廃棄処理もし易いという結果に寄与する。有機カリウム塩の添加量の最適範囲は、15〜40重量%である。
(3)炭酸水素カリウムは、従来強化液消火薬剤に使用されている炭酸カリウムに比べて、pHの低下効果を発揮する。また、〜200℃付近で分解反応が起こり、二酸化炭素を発することにより、空気(酸素)が排除され、燃焼が抑制されるため、消火作用の一翼を担うものである。
(4)燐酸二水素カリウム及び燐酸一水素カリウムは、火災に対して防炎効果を向上させ、てんぷら油火災に対して反応膜の形成を促進させ、酢酸カリウムと炭酸水素カリウムとの相乗作用により、一層強力な消火効果を発揮する。また、pHの低下作用もある。
(5)四硼酸カリウムは、一般に油脂のゲル化剤として熱によるガラス皮膜の形成効果が優れると共に、防錆性も高く、水系消火剤中で重要な役割を果たす物質である。
【0019】
本発明の水系消火剤の調整方法は任意であるが、例えば、所定量の有機カリウム塩、無機カリウム塩を溶解した水溶液に、特定の濃度のポリマー水溶液を加え均一に混合させる方法、特定の濃度のポリマー水溶液に、有機カリウム塩、無機カリウム塩の水溶液を加え均一に混合させる方法、等を挙げることができ、調製の容易さを考慮すると後者の調製方法がより好ましい。
本発明の水系消火剤の粘度は、有機カリウム塩、無機カリウム塩、ポリマーの種類及び添加量によって任意に制御することができ、その粘度値(0℃)は10〜60mPa・s、好ましくは10〜30mPa・sであるが、小型消火器具、特にエアゾール式簡易消火具に適するためには、10〜20mPa・sが更に好ましい。粘度が10mPa・s未満の場合は、十分な消火力を奏することができない。一方、粘度が60mPa・sを越す場合は、小型消火器具に充填できるとしても噴射性が大きく低下してしまうため、実用上において不都合を生じる。
また、水系消火剤の比重は、有機カリウム塩、無機カリウム塩、ポリマーの種類及び添加量によって変化するが、25℃における値が1.05〜1.25、好ましくは1.10〜1.20、特に1.14〜1.16であることがより好ましい。比重が1.10未満の場合、消火力が弱いため、消火剤の使用量並びに消火時間がかかると同時に、再着火する場合があり得る。一方、比重が1.25を越すと、ポリマーが不溶となる場合があり、均一な消火剤を調製できない。
【0020】
本発明の水系消火剤は、バケツなどの容器の収納しておき、単純に火元に向けて散布することも可能であるが、キャリアガスによって消火剤を火元に散布するような消火器具を利用して使用することもできる。
消火器具としては、本発明の水系消火剤、水系消火剤を収納する収納容器及び水系消火剤を収納容器から噴出させる圧縮された窒素ガス、二酸化炭素ガス等のキャリアガスとを有した消火器具、例えば小型消火器、エアゾール式簡易消火具等が例示されるが、特に、お年寄りや女性、子供まで手軽に使用できるエアゾール式簡易消火具が好ましい。
これら小型消火器具は、通常の水系の消火薬剤を使用した小型消火器具の製法に準じて製造することができる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。また、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
合成例1;ポリマーA1の合成
1L容量のセパラブルフラスコにN,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)120g、脱イオン水600gを加えて、攪拌しながら5重量%の硫酸水溶液を徐々に添加し、溶液のpHを7.30に合わせ、中和操作を行った後、モノマー水溶液の濃度が15重量%になるように、脱イオン水を補填した。そして、モノマー調製液を、20℃の恒温槽に入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら窒素ガスをバブリングし、1時間通気した。そこで、重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド(VA−044)の5重量%水溶液を2.740g、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシート2水和物(ロンガリット)の5重量%水溶液を3.731g、tert−ブチルヒドロペルオキシド(t−BHPO)の5重量%水溶液を2.182gを順次投入し、20℃にて重合反応を開始させた。5分後、攪拌並びに窒素ガスの通気を止め、密閉状態で室温下16時間重合反応を続けた後、85重量%の水を含む水あめ状のポリマーA1を得た。さらにA1を裁断し、脱イオン水に溶解させ、1、2、5重量%の水溶液をそれぞれ調製した。
【0022】
合成例2;ポリマーA2の合成
1L容量のセパラブルフラスコにN−メチルアクリルアミド(NMAA)120g、脱イオン水600gを加えて、攪拌しながら5重量%の硫酸水溶液を徐々に添加し、溶液のpHを7.30に合わせ、中和操作を行った後、モノマー水溶液の濃度が15重量%になるように、脱イオン水を補填した。モノマー調製液を20℃の恒温槽に入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら窒素ガスをバブリングし、1時間通気した。そこで、VA−044の5重量%水溶液を4.559g、ロンガリットの5重量%水溶液を4.346g、t−BHPOの5重量%水溶液を2.542gを順次投入し、20℃にて重合反応を開始させた。5分後、攪拌並びに窒素ガスの通気を止め、密閉状態で室温下16時間重合反応を続けた後、85重量%の水を含む水あめ状のポリマーA2を得た。さらにA2を裁断し、脱イオン水に溶解させ、1、2、5重量%の水溶液をそれぞれ調製した。
【0023】
合成例3;ポリマーA3の合成
1L容量のセパラブルフラスコにDMAA64.57g、NMAA55.43g、脱イオン水600gを加えて、合成例2と同様に中和操作を行い、15重量%のモノマー水溶液を調製した。これを20℃の恒温槽に入れ、同様に窒素ガスを1時間通気した。そこで、VA−044の5重量%水溶液を4.212g、ロンガリットの5重量%水溶液を4.015g、t−BHPOの5重量%水溶液を2.348gを順次投入し、20℃にて重合反応を開始させた。5分後、攪拌並びに窒素ガスの通気を止め、密閉状態で室温下16時間重合反応を続けた後、85重量%の水を含む水あめ状のポリマーA3を得た。さらにA3を裁断し、脱イオン水に溶解させ、1、2、5重量%の水溶液をそれぞれ調製した。
【0024】
合成例4;ポリマーA4の合成
1L容量のセパラブルフラスコにDMAA120g、アクリル酸(AAc)0.881g、脱イオン水600gを加えて、攪拌しながら5重量%の水酸化カリウム水溶液を徐々に添加し、溶液のpHを7.30に合わせ、中和操作を行った後、モノマー水溶液の濃度が15重量%になるように、脱イオン水を補充した。モノマー調製液を20℃の恒温槽に入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら窒素ガスをバブリングし、1時間通気した。そこで、VA−044の5重量%水溶液を2.767g、ロンガリットの5重量%水溶液を5.654g、t−BHPOの5重量%水溶液を3.306gを順次投入し、20℃にて重合反応を開始させた。5分後、攪拌並びに窒素ガスの通気を止め、密閉状態で室温下16時間重合反応を続けた後、85重量%の水を含む水あめ状のポリマーA4を得た。さらにA4を裁断し、脱イオン水に溶解させ、1、2、5重量%の水溶液をそれぞれ調製した。
【0025】
合成例5;ポリマーA5〜7の合成
1L容量のセパラブルフラスコにDMAA120g、AAc2.698g、脱イオン水600gを加えて、合成例4と同様に中和操作を行い、15重量%のモノマー水溶液を三つ調製した。それぞれを0、13、20℃の恒温槽に入れ、同様に窒素ガスを1時間通気した。その後、VA−044の5重量%水溶液を2.824g、ロンガリットの5重量%水溶液を3.847g、t−BHPOの5重量%水溶液を2.249gを順次投入し、それぞれ0、13、20℃にて重合反応を開始させた。5分後、攪拌並びに窒素ガスの通気を止め、密閉状態で室温下16時間重合反応を続けた後、85重量%の水を含む水あめ状のポリマーA5、A6、A7を得た。さらにA5〜7を裁断し、脱イオン水に溶解させ、各々の1、2、5重量%の水溶液をそれぞれ調製した。
【0026】
前記ポリマーA1〜7の組成並びに1重量%水溶液の粘度を表1に纏めた。
【0027】
【表1】
【0028】
実施例1〜14、比較例1〜5
合成例で得られた、1、2、又は5重量%のポリマー水溶液に、有機カリウム塩、無機カリウム塩の水溶液を加え、均一に混合させて、本発明の水系消火剤を調製した。
本発明の水系消火剤の組成並びに物性を表2に示す。
この結果から、明らかのようにカリウム塩の濃度が50重量%以上になるとポリマーの溶解性は著しく低下し、消火剤の調製は困難となった。
【0029】
【表2】
【0030】
比較例6〜12
本発明の水系消火剤と比較するための比較の水系消火剤の組成並びに物性を表3に示す。
【0031】
【表3】
【0032】
評価例1
上記実施例及び比較例に基づく組成物及び市販品を用いて、エアゾール式簡易消火具に300gづつ充填して、キャリアガスとして液化窒素ガスで加圧し、0℃における噴射試験及びてんぷら油、石油ストーブ、屑籠、クッション、カーテン火災の5種の火災に対する消火試験を行った。
なお、試験は、エアゾール式簡易消火具鑑定基準に基づいて行い、噴射ノズルの口径は1.6mmであった。
0℃の噴射試験の結果を表4に示す。
【0033】
【表4】
【0034】
表4から明らかなように、エアゾール式簡易消火具に充填される水系消火剤の粘度が高すぎると、噴射が困難であり、噴射距離も短くなってしまうため、消火活動に著しく支障を生じることが分かる。
【0035】
てんぷら油火災の消火試験については、直径300mm、深さ50mmのてんぷら鍋に700mLの大豆油を入れて、ガスコンロで加熱発火させ、油の温度が400℃になった時点で、ガスコンロの火を消してからエアゾール式簡易消火具により消火を開始した。そして、噴射直後から消火に至るまでの時間を計測した。また、消火中炎の上昇有無、消火後の再着火有無並びに消火後油表面の状態について観察した。
結果を表5に示す。
なお、消火可否の基準は以下の通りである。
○;消火可、×;消火不可(全量噴出しても、消火できない)
【0036】
【表5】
【0037】
更に、上述したてんぷら油の消火試験において、油の温度が400℃になった時点で、ガスコンロの火を消すことなくエアゾール式簡易消火具により消火を開始し、消火後から再着火に至るまでの時間を計測した。
結果を表6に示す。
【0038】
【表6】
【0039】
石油ストーブ火災、屑籠火災、クッション火災、カーテン火災の消火試験結果を表7〜10に示す。
【0040】
【表7】
【0041】
【表8】
【0042】
【表9】
【0043】
【表10】
【0044】
【発明の効果】
本発明の水系消火剤は、カリウム塩が高濃度に配合されているために初期消火力に優れるとともに、火災の熱により増粘乃至ゲル化を起こすことによって、燃焼物の表面に対する付着性が著しく向上し、緻密な皮膜を形成できる。これによって、空気(酸素)を遮断し、持続的な消火力を発揮することができ、消火後再着火を充分に防止することができるという極めて優れた効果を奏し、てんぷら油火災、石油ストーブ火災、屑籠火災、クッション火災、カーテン火災の5種の火災に確実に対応できる。更に、本発明の水系消火剤は、常温で低粘度を有しており、少量の放出でも消火活動を実施することができ、かつ、pHも中性に近く安全に使用できるので、小型消火器具、特に、軽量でかつ優れた操作性を有し、お年寄りや女性、子供まで手軽に使用することができる、エアゾール式簡易消火具のような小型消火器具の充填に好適に使用できる。
Claims (11)
- 有機カリウム塩及び/又は無機カリウム塩の20〜45重量%水溶液に、塩存在下で下限臨界溶液温度を有するポリマーを混合してなる水系消火剤。
- 有機カリウム塩が、酢酸カリウム、クエン酸カリウムの中から選択される少なくとも1種以上である、請求項1記載の水系消火剤。
- 無機カリウム塩が、四硼酸カリウムと、重炭酸カリウム、燐酸二水素カリウム、燐酸水素二カリウムの中から選ばれた1種以上の無機カリウム塩との混合物である、請求項1記載の水系消火剤。
- 塩存在下で下限臨界溶液温度を有するポリマーが、純水中においては100℃まで下限臨界溶液温度を有さず、30重量%酢酸カリウム水溶液中においては下限臨界溶液温度を有するものである、請求項1乃至3のいずれか1項記載の水系消火剤。
- 30重量%酢酸カリウム水溶液中の下限臨界溶液温度が、35〜100℃の温度範囲内である、請求項1乃至4のいずれか1項記載の水系消火剤。
- ポリマーが、ノニオン性アクリルアミド誘導体又はノニオン性ビニルアルキルアミドとイオン性モノマーとの共重合体である、請求項1乃至5のいずれか1項記載の水系消火剤。
- ノニオン性アクリルアミド誘導体が、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリンの中から選択される少なくとも1種以上である、請求項1乃至6のいずれか1項記載の水系消火剤。
- 請求項1乃至7のいずれか1項記載の水系消火剤と、該水系消火剤を収納する収納容器と、該水系消火剤を前記収納容器から噴出させる圧縮されたキャリアガスとを有することを特徴とする小型消火器具。
- 小型消火器具がエアゾール式簡易消火具である、請求項8記載の小型消火器具。
- 水系消火剤の25℃における比重が1.05〜1.25である、請求項8乃至9記載の小型消火器具。
- 水系消火剤の0℃における粘度が10〜60mPa・sである、請求項8乃至10のいずれか1項記載の小型消火器具。
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