JP2004321114A - Nadh供給能力が向上した微生物 - Google Patents

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Abstract

【課題】NADHの供給能力が向上した微生物を用いた有用物質の製造法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、デオキシシチジン三リン酸デアミナーゼ活性が喪失、または野生型株より低下した微生物であり、かつNADHを補酵素とする酵素を生産する微生物を、該酵素の基質となる物質の存在下で培養し、培養物中に該物質が該酵素により還元されて生成する物質(以下、生成物質という)を蓄積させ、該培養物から該生成物質を採取することを特徴とする物質の製造法、および該微生物の培養物、または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源、糖、および該酵素の基質となる物質を水性媒体中に存在させ、該水性媒体中に該物質が該酵素により還元されて生成する物質(以下、生成物質という)を蓄積させ、該水性媒体中から該生成物質を採取することを特徴とする物質の製造法が提供される。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、NADHの供給能力が向上した微生物を用いる物質の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
NADHを利用する酵素反応によって有用物質を生産する方法が数多く報告されている(非特許文献1〜3)。該生産方法におけるNADHの供給方法としては、グルコースデヒドロゲナーゼを利用する方法が知られている(非特許文献4)。該方法では1分子のグルコースを酸化して1分子のグルコン酸が生じる際に、1分子のNADHを供給することができる。
【0003】
一方、微生物菌体内では、解糖系やTCAサイクルを利用して、1分子のグルコースから多数のNADHを生産し、該NADHを利用してさまざまな生体反応が行われている。よって、1分子のグルコースからより多くのNADHを供給できる微生物を酵素源として使用することにより、NADHを必要とする酵素反応を利用した有用物質のより効率的で経済的な製造法を構築することが可能である。
【0004】
しかしながら、特定の遺伝子の変異に起因してNADH供給能力が向上した微生物、およびNADH供給能力に関与する遺伝子は知られていない。
多くの微生物では、その染色体DNAの全塩基配列が明らかになっている(非特許文献5)。また、相同組換え手法を用いた、特定の遺伝子あるいは染色体DNA領域が意図した通りに欠損した微生物の作製方法が知られている(非特許文献6)。上記した染色体DNAの全塩基配列情報、および相同組換え手法を利用して微生物の染色体DNA上の各一遺伝子を網羅的に破壊したライブラリー、あるいは20kbp程度の削除可能染色体DNA領域のそれぞれを網羅的に欠損させた変異株ライブラリーなどが作製されている(非特許文献7および8)。
【0005】
Escherichiacoliのデオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼ遺伝子の塩基配列、および該遺伝子にコードされる蛋白質のアミノ酸配列は既に知られている(非特許文献9)。また、Escherichiacoliにおいて、デオキシウリジン 三リン酸シンセターゼの致死的変異は、デオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼを完全に不活性化することで、抑制されることが知られている(非特許文献10)が、デオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼ活性とEscherichia coliのNADH供給能力との関係は知られていない。
【0006】
【非特許文献1】
Appl. Environ. Microbiol.(アプライド オブ エンバイロメンタル マイクロバイオロジー), 69, 933(2003)
【0007】
【非特許文献2】
J. Mol. Catal. B: Enzymatic(ジャーナル オブ モレキュラー カタリシス B:エンザイマティック), , 41(1999)
【0008】
【非特許文献3】
J. Mol. Catal. B: Enzymatic(ジャーナル オブ モレキュラー カタリシス B:エンザイマティック), 11, 513(2001)
【0009】
【非特許文献4】
化学と生物、第38巻、313ページ、2000年
【0010】
【非特許文献5】
http://www.tigr.org/tdb/mdb/mdbcomplete.html
【0011】
【非特許文献6】
J. Bacteriol.(ジャーナル オブ バクテリオロジー), 180, 2063(1998)
【0012】
【非特許文献7】
蛋白質 核酸 酵素、第46巻、2386ページ、2001年
【0013】
【非特許文献8】
Nature Biotechnol.(ネイチャー バイオテクノロジー), 20, 1018(2002)
【0014】
【非特許文献9】
Science(サイエンス), 277, 1453(1997)
【0015】
【非特許文献10】
J. Bacteriol. (ジャーナル オブ バクテリオロジー), 174, 5647(1992)
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、NADH供給能力が向上した微生物、および該微生物を用いた有用物質の製造法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の(1)〜(8)に関する。
(1) NADHを補酵素とする酵素を生産する能力を有する微生物であり、かつデオキシシチジン三リン酸デアミナーゼ活性が喪失、または野生型株より低下した微生物を、該酵素の基質となる物質の存在下で培養し、培養物中に該物質が該酵素により変換されて生成する物質(以下、生成物質という)を蓄積させ、該培養物から該生成物質を採取することを特徴とする物質の製造法。
【0018】
(2) NADHを補酵素とする酵素を生産する能力を有する微生物であり、かつデオキシシチジン三リン酸デアミナーゼ活性が喪失、または野生型株より低下した微生物の培養物、または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源、糖、および該酵素の基質となる物質を水性媒体中に存在させ、該水性媒体中に該物質が該酵素により変換されて生成する物質(以下、生成物質という)を蓄積させ、該水性媒体中から該生成物質を採取することを特徴とする物質の製造法。
【0019】
(3) デオキシシチジン三リン酸デアミナーゼ活性が喪失、または野生型株より低下した微生物が、デオキシシチジン三リン酸デアミナーゼをコードするDNAの一部または全部が欠損した染色体DNAを有する微生物である上記(1)または(2)の製造法。
(4) デオキシシチジン三リン酸デアミナーゼ活性が喪失、または野生型株より低下した微生物が、デオキシシチジン三リン酸デアミナーゼのアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードするDNAを染色体DNA上に有する微生物である上記(1)または(2)の製造法。
【0020】
(5) 微生物が、Escherichia属、Pseudomonas属、Bacillus属、Corynebacterium属またはStreptomyces属に属する微生物である、上記(1)〜(4)の製造法。
(6) Escherichia属に属する微生物がEscherichia coliである、上記(5)の製造法。
【0021】
(7) NADHを補酵素とする酵素が、NADH依存性デヒロゲナーゼ、NADH依存性レダクターゼおよびNADH依存性オキシゲナーゼからなる群より選ばれる酵素である、上記(1)〜(6)の製造法。
(8) 培養物の処理物が、培養物の濃縮物、培養物の乾燥物、培養物を遠心分離して得られる菌体、該菌体の乾燥物、該菌体の凍結乾燥物、該菌体の界面活性剤処理物、該菌体の超音波処理物、該菌体の機械的摩砕処理物、該菌体の溶媒処理物、該菌体の酵素処理物、該菌体の蛋白質分画物、該菌体の固定化物あるいは該菌体より抽出して得られる酵素標品である、上記(2)〜(7)の製造法。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の製造法に用いられる微生物は、NADHを補酵素とする酵素を生産する能力を有する微生物であり、かつデオキシシチジン三リン酸デアミナーゼ活性が喪失、または野生型株より低下した微生物であればいずれの微生物であってもよいが、好ましくはEscherichia属、Pseudomonas属、Bacillus属、Corynebacterium属、またはStreptomyces属に属する微生物などをあげることができる。
【0023】
上記Escherichia属に属する微生物としてはEscherichia coliなど、Pseudomonas属に属する微生物としてはPseudomonas aeruginosaなど、Bacillus属に属する微生物としてはBacillus haloduransなど、Corynebacterium属に属する微生物としてはCorynebacteriumu glutamicumなど、Streptomyces属に属する微生物としてはStreptomycescoelicolorなどをあげることができる。
【0024】
上記Escherichia coliとしては、配列番号1で表されるDNAが欠損した染色体DNAを有するEscherichiacoliをあげることができる。
デオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼ活性が喪失、または野生型株より低下している微生物は、デオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼ遺伝子に変異が生じているために、その活性が完全に失われている微生物、または野生型株より低下している微生物であれば、いずれの微生物でもよく、該変異としては、例えばデオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼをコードするDNAの一部または全部が欠損している変異、およびデオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼのアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された変異などをあげることができる。
【0025】
本発明において野生型株とは、自然集団中でその微生物が属する種において、最も高頻度にみられる型の微生物のことをいう。
デオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼをコードするDNAの一部が欠損しているとは、該DNAの塩基配列において、任意の1以上の塩基が欠損しているDNAであり、かつ該DNAにコードされるデオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼが完全にその活性を消失しているか、または該欠損を有しないDNAにコードされる野生型デオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼより活性が低い変異型デオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼをコードするDNAをあげることがでる。該DNAとしては、例えば配列番号1で表される塩基配列において、任意の1以上の塩基、好ましくは任意の1〜578塩基、より好ましくは任意の50〜500塩基、さらに好ましくは任意の100〜400塩基、特に好ましくは任意の200〜300塩基が欠損しているDNAをあげることができ、該欠損によりフレームシフト変異が生じる欠損DNAが好ましい。
【0026】
デオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼのアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された変異とは、デオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼをコードするDNAに対し、部位特異的変異導入法により導入可能な数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された変異であり、かつ変異を有するデオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼが完全にその活性を消失しているか、または該変異を有しない野生型デオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼより活性が低い変異型デオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼを与える変異をいい、1個から数十個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された変異をあげることができる。
【0027】
部位特異的変異の導入は、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)(以下、モレキュラー・クローニング第3版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987−1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)、Nucleic Acids Research, 10, 6487 (1982)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409(1982)、Gene, 34, 315 (1985)、Nucleic Acids Research, 13, 4431 (1985)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)等に記載の方法に準じて行うことができる。
上記したデオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼ遺伝子に変異を有する微生物のデオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼ活性が、野生型株より低下しているか否かは、該微生物と親株とのデオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼ活性を比較することにより確認できる。上記親株とは、上記変異処理に供した元株のことをいい、親株は野生型の微生物であっても、産業上有用な改良を施された変異株、細胞融合株、形質導入株あるいは遺伝子組換え技術を用いて造成した組換え株であってもよい。
【0028】
微生物のデオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼの活性の測定法としては、微生物から調製した粗酵素抽出液または酵素の精製標品などを酵素源に用い、デオキシシチジン 三リン酸を基質にして反応を行ったときの▲1▼反応液の285nmまたは290nmの吸光度の減少を測定する方法[Curr. Top. Cell. Regul., , 177(1972)]、▲2▼生成したアンモニアを測定する方法[J. Biol. Chem., 253, 3536(1978)]などをあげることができる。
【0029】
NADHを補酵素とする酵素を生産する微生物は、該酵素を生産する微生物であれば特に限定されないが、該酵素の活性が強化された微生物が好ましい。酵素活性が強化された微生物としては、ニトロソグアニジンなどの変異処理剤を用いた変異手法によって得られる該酵素活性が強い変異株、強力なプロモーターの支配下に該酵素をコードする遺伝子をおいたDNAを有する遺伝子組換え微生物、該遺伝子を連結したプラスミドを有する組換え微生物などをあげることができる。
【0030】
NADHを補酵素とする酵素は、NADHを補酵素とする酵素であれば特に限定されないが、例えばNADH依存性デヒロゲナーゼ、NADH依存性レダクターゼ、およびNADH依存性オキシゲナーゼなどをあげることができる。
上記NADH依存性デヒロゲナーゼとしては、例えばアルコールデヒドロゲナーゼ[J. Biol. Chem., 258, 2674(1983)]、エリスロース 4リン酸デヒドロゲナーゼ[J. Mol. Microbiol., 146, 487(2000)]、および乳酸デヒドロゲナーゼ[Eur. J. Biochem., 144, 367(1984)]などをあげることができる。
【0031】
NADH依存性デヒロゲナーゼとしてアルコールデヒドロゲナーゼを用いる場合、該酵素の基質になる物質であれば、いずれの物質を基質として用いてもよいが、基質としては例えばアセトアルデヒドおよび3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドなどをあげることができ、エリスロース 4リン酸デヒドロゲナーゼを用いる場合、基質としてはエリスロース 4リン酸をあげることができ、D−乳酸デヒドロゲナーゼまたはL−乳酸デヒドロゲナーゼを用いる場合、基質としてピルビン酸をあげることができる。
【0032】
上記NADH依存性レダクターゼとしては、例えばキシルロースレダクターゼ[J. Biol. Chem., 277, 17883(2002)]などをあげることができる。NADH依存性レダクターゼとして、キシルロースレダクターゼを用いる場合、基質としてはキシルロースをあげることができる。
上記NADH依存性オキシゲナーゼとしては、NADH依存性P−450などをあげることができる。
【0033】
NADH依存性P−450としては、fkbD遺伝子産物[J. Bacteriol., 178, 5243(1996)]、eryF遺伝子産物[Mol. Gen. Genet., 230, 120(1991)]、P−450VD25[Biochim. Biophys. Acta, 1219, 179(1994)]およびP−450sca−2[Gene, 163, 81(1995)]などをあげることができる。P−450としてfkbD遺伝子産物を用いる場合、基質としては9−deoxo−31−O−demethyl−FK506、eryF遺伝子産物を用いる場合、基質としては6−deoxoerythronolide B、P−450VD25遺伝子産物を用いる場合、基質としてはビタミン D3、P450sca−2を用いる場合、基質としてはメバスタチン(シグマ アルドリッチ社製)などをあげることができる。
【0034】
デオキシシチジン三リン酸デアミナーゼ活性が喪失、または野生型株より低下した微生物の製造法としては、▲1▼微生物の染色体DNA上の各一遺伝子を網羅的に破壊した遺伝子欠損株ライブラリー、あるいは20kbp程度の削除可能染色体DNA領域のそれぞれを網羅的に欠損させた欠損変異株ライブラリーを用いて、該ライブラリーから親株よりNADHの供給能力が向上した株を選択する方法、▲2▼相同組換え法などを用いて、デオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼ遺伝子の全部または一部が欠損した微生物を製造する方法、▲3▼相同組換え法などを用いて、デオキシシチジン 三リン酸デアミナーゼ遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードするDNAを染色体DNA上に有する微生物を製造する方法などをあげることができる。
【0035】
▲1▼の方法でいう親株とは、上記遺伝子破壊または染色体DNA領域欠損処理に供した元株のことをいい、親株は野生型の微生物であっても、産業上有用な改良を施された変異株、細胞融合株、形質導入株あるいは遺伝子組換え技術を用いて造成した組換え株であってもよい。
【0036】
上記▲1▼の遺伝子または領域欠損株ライブラリーの作製法としては、欠損させたい遺伝子または領域の末端配列を含むDNAをサブクローニングし、次に該DNAで薬剤耐性遺伝子を挟んだDNA断片を構築した後、該DNA断片を二回相同組換えにより染色体DNAに導入することで遺伝子または領域欠損株ライブラリーを構築する方法[蛋白質 核酸 酵素、46、2386(2001)]をあげることができる。
【0037】
上記の遺伝子あるいは領域欠損株ライブラリーをスクリーニングソースとして用いることにより、明確に限定された一遺伝子あるいは遺伝子群の破壊のみがNADH供給能力に及ぼす影響を観察することができる。
【0038】
上記ライブラリーからNADHの供給能力が向上した株を選択する方法としては、該ライブラリーの各菌株にNADH依存性の反応を触媒する酵素をコードする遺伝子の発現プラスミドを導入して得られる形質転換株を培養し、得られた菌体を酵素源に用い、グルコースと該酵素の基質の存在下で反応を行い、該反応により生成した物質を定量する方法をあげることができる。反応産物の蓄積が多いほど、グルコースを代謝することによるNADHの供給量が多いと考えられる。
【0039】
NADH依存性の反応を触媒する酵素は、該性質を有する酵素であれば特に限定されないが、例えばバニリン酸脱メチル酵素などをあげることができ、具体的なバニリン酸脱メチル酵素としてはPseudomonas putida由来のvanA遺伝子およびvanB遺伝子[Microbiology, 144, 965(1998)]にコードされる蛋白質からなる酵素をあげることができる。
【0040】
vanA遺伝子およびvanB遺伝子の発現プラスミドは、両遺伝子を発現させることができるプラスミドであれば特に限定されないが、微生物としてEscherichia coliを用いる場合は、例えばvanA遺伝子およびvanB遺伝子をpMW118に連結した低コピー発現プラスミドpMQvanABをあげることができる。
【0041】
ライブラリーの各菌株にpMQvanABを常法に従い導入して形質転換株を取得し、該形質転換株および形質転換に供した親株をそれぞれ培養して得られる菌体を酵素源として用い、グルコースおよび基質であるバニリン酸の存在下で反応を行い、NADH依存的に進行するバニリン酸の脱メチル化反応により生成するプロトカテキ酸の生成量と、基質であるバニリン酸の減少量を測定することにより、親株よりNADHの供給能力が向上した菌株を選択することができる。
【0042】
pMQvanABを有する形質転換株の培養は、バニリン酸脱メチル酵素が発現する培養法であれば特に限定されないが、pMQvanABを有するEscherichia coliの場合は、例えば50mg/lのアンピシリンを含むLB液体培地[10g/l バクトトリプトン(ディフコ社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(ディフコ社製)、5g/l 塩化ナトリウム、1ml/lの1mol/l 水酸化ナトリウム溶液]を前培養の培地として用いて一晩培養後、得られた培養液を終濃度が0.5〜2%になるように、50mg/lのアンピシリンを含むM9最少培地(1.2% グルコース、0.6% リン酸ナトリウム、0.3% リン酸二水素カリウム、0.05% 塩化ナトリウム、0.1% 塩化アンモニウム、2mmol/l 硫酸マグネシウム・七水和物、100μmol/l 塩化カルシウム)に接種して培養し、660nmの吸光度が0.3〜1.5のいずれかに到達した時点で終濃度が1〜5mmol/lになるようにIPTGを添加してバニリン酸脱メチル酵素の発現を誘導し、さらに1〜3時間培養する方法をあげることができる。
【0043】
上記で得られた菌体のNADHの供給能力を測定する方法としては、上記で得られた培養液に、バニリン酸およびグルコースを添加してバニリン酸脱メチル化反応を行い、一定時間経過後のプロトカテキ酸の生成量と、基質であるバニリン酸の減少量を測定する方法をあげることができる。必要であれば内部標準物質としてベンゼン酸を反応液に添加してもよい。
【0044】
反応に用いる培養液は、37℃で1分間に1μmolのプロトカテキ酸を生成することのできる活性を1単位(U)として、1mU/l〜1000U/lであり、好ましくは10mU/l〜100U/lの濃度で用いる。
バニリン酸は、10μmol/l〜100mmol/l、好ましくは100μmol/l〜10mmol/lの濃度になるよう反応液に添加する。グルコースは、5μmol/l〜500mmol/l、好ましくは50μmol/l〜50mmol/lの濃度になるように反応液に添加する。
【0045】
反応液のバニリン酸脱メチル化活性は、ペルオキシターゼを用いる方法やHPLCを用いる方法でプロトカテキ酸を定量する方法により測定することができる。ペルオキシターゼを用いたプロトカテキ酸の定量は以下のように行うことができる。
10〜500μlの反応液に対し、0.5〜50μlの1mg/ml ペルオキシターゼ溶液、および0.5〜50μlの0.3% 過酸化水素水溶液を添加して撹拌後、30〜37℃で5〜30分間反応させ、プロトカテキ酸の重合反応を行う。重合反応後、反応液を5〜50倍に希釈して、分光光度計を用いて460nmの吸収を測定する。プロトカテキ酸の標準液も同様に重合反応を行い、標準液の吸光度と反応液の吸光度を比較することで、反応液中のプロトカテキ酸濃度を定量することができる。
【0046】
また、HPLCを用いてプロトカテキ酸濃度を定量することもでき、例えば反応液を遠心分離して培養液上清を調製し、該上清を分析サンプルとして、逆相カラムを用い、254nmの吸光度を測定することで培養液のプロトカテキ酸の濃度を定量することができる。
同一時間反応したとき、親株より高いプロトカテキ酸生産性を示す株を選択することにより、親株よりNADHの供給能力が向上した菌株を取得することができる。
【0047】
次に、上記方法にて選択した菌株それぞれが持つ遺伝子欠損を、形質導入法にて、親株とは系統が異なる同種の株、または親株として変異株を用いた場合は該変異株と同じ系統の野生型株に形質転換する。遺伝子欠損を導入する株は野生型株が好ましいが、該欠損が導入可能な株であれば、変異株であってもよい。例えば、親株としてEscherichia coli MG1655株の変異株を用いた場合、選択したNADH供給能力が向上した菌株が有する遺伝子欠損をP1ファージによる形質導入法によってEscherichia coli MG1655株に導入する方法をあげることができる。
【0048】
形質導入法としてはファージによる形質導入[Ann. Rev. Genetics, , 245(1968)]、ナチュラルコンピテンシーを用いる方法[Molecular Biological Method for Bacillus, 33,John Wiley & Sons Ltd.(1990)]などをあげることができる。微生物としてEscherichia coliを用いる場合、P1ファージによる形質導入方法が好ましい。
【0049】
上記のように、一度選択したNADH供給能力が向上した菌株それぞれが持つ遺伝子欠損を、形質導入法にて、親株とは系統が異なる同種の株、または親株として変異株を用いた場合は該変異株と同じ系統の野生型株に導入して得られる形質転換株を再度、バニリン酸脱メチル酵素などを用いたスクリーニングに供し、NADHの供給能力が野生型株よりも高い株を選択することにより、生育向上株が取得できたことを確認することができる。
【0050】
上記のようにして取得されるNADHの供給能力が向上した微生物としては、Science, 277, 1453 (1997)に示されたb番号表記で、b2064−b2081間の欠損、b2292−b2304間の欠損、またはb2065で表されるデオキシシチジン三リン酸デアミナーゼ遺伝子(以下、dcd遺伝子と略す)の単独の欠損を染色体DNA上に有するEscherichiacoliをあげることができる。
【0051】
上記▲2▼の方法としては、直鎖DNAによる染色体上の相同組換えが可能な微生物を用いる方法をあげることができる。
直鎖DNAとしては、クロラムフェニコール耐性遺伝子の両端にdcd遺伝子の末端の配列と相同性を有するDNAを配置した直鎖DNAをあげることができる。
【0052】
該直鎖DNAを、直鎖DNAによる染色体上の相同組換えが可能な微生物に、コンピテントセルを用いたエレクトロポレーションなどの方法により導入し、クロラムフェニコール耐性株を選択することで、dcd遺伝子欠損微生物を取得することができる。
上記▲3▼の方法としては、dcd遺伝子に、部位特異的変異を導入することにより、該遺伝子がコードするアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする変異型遺伝子を取得し、相同組換え法を用いることにより、dcd遺伝子が変異型dcd遺伝子に置換された染色体DNAを有する微生物を製造する方法などをあげることができる。
【0053】
本発明の製造法に用いられる微生物は、上記方法で製造されるデオキシシチジン三リン酸デアミナーゼ活性が喪失、または野生型株より低下した微生物に、NADHを補酵素とする酵素をコードする遺伝子を遺伝子組換え等の手法を用いて導入することにより製造することができるが、デオキシシチジン三リン酸デアミナーゼ活性が喪失、または野生型株より低下した微生物が、すでに目的とするNADHを補酵素とする酵素をコードする遺伝子を有している場合は必ずしも該遺伝子を導入する必要はない。
【0054】
また、NADHを補酵素とする酵素として、NADH依存性P−450を用いる場合、必要に応じて、該P−450をコードする遺伝子とともに、NADH−P450レダクターゼまたはフェレドキシン−NADHレダクターゼ(EC 1.18.1.3)をコードする遺伝子を導入することができる。
NADHを補酵素とする酵素をコードする遺伝子を有する形質転換体の作製は、モレキュラー・クローニング第3版やカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載された方法等を用い、例えば以下の方法により行うことができる。
【0055】
即ち、NADHを補酵素とする酵素をコードする遺伝子を基にして、必要に応じて蛋白質をコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製し、該DNA断片を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入した組換え体DNAを作製する。該組換え体DNAを、該発現ベクターに適合したデオキシシチジン三リン酸デアミナーゼ活性が喪失、または野生型株より低下した微生物に導入することにより形質転換体を作製することができる。
【0056】
発現ベクターとしては、上記デオキシシチジン三リン酸デアミナーゼ活性が喪失、または野生型株より低下した微生物において自立複製可能ないしは染色体DNA中への組込が可能で、NADHを補酵素とする酵素をコードする遺伝子を転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
細菌等の原核生物を宿主細胞として用いる場合は、NADHを補酵素とする酵素をコードする遺伝子を含有してなる組換え体DNAは原核生物中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、本発明のDNA、転写終結配列、より構成されたベクターであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
【0057】
発現ベクターとしては、例えば、pHelix1(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)、pKK233−2(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX−1(プロメガ社製)、pQE−8(キアゲン社製)、pKYP10(特開昭58−110600)、pKYP200 [Agric. Biol. Chem., 48, 669 (1984)]、pLSA1 [Agric. Biol. Chem., 53, 277 (1989)]、pGEL1 [Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 4306 (1985)]、pBluescript II SK(−)(ストラタジーン社製)、pTrs30 [Escherichia coli JM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製]、pTrs32 [Escherichia coli JM109/pTrS32(FERM BP−5408)より調製]、pPAC31 (WO98/12343)、pGHA2 [Escherichia coli IGHA2(FERM B−400)より調製、特開昭60−221091]、pGKA2 [Escherichia coli IGKA2(FERM BP−6798)より調製、特開昭60−221091]、pTerm2(US4686191、US4939094、US5160735)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pEG400 [J. Bacteriol., 172, 2392 (1990)]、pGEX(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)、pETシステム(ノバジェン社製)、pIJ702、pIJ922等をあげることができる。
【0058】
プロモーターとしては、宿主細胞中で機能するものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター、Pプロモーター、Pプロモーター、T7プロモーター等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーターをあげることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター(Ptrp×2)、tacプロモーター、lacT7プロモーター、let Iプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
【0059】
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine−Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
NADHを補酵素とする酵素をコードする遺伝子の発現には転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
【0060】
組換え体DNAの導入方法としては、原核細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)]、プロトプラスト法(特開昭63−248394)、またはGene, 17, 107 (1982)やMol. Gen. Genet., 168, 111 (1979)に記載の方法等をあげることができる。
【0061】
本発明の製造法は、デオキシシチジン三リン酸デアミナーゼ活性が喪失、または野生型株より低下した微生物であり、かつNADHを補酵素とする酵素を生産する微生物を、該酵素の基質となる物質の存在下で培養し、培養物中に該物質が該酵素により変換されて生成する物質(以下、生成物質という)を蓄積させ、該培養物から該生成物質を採取することを特徴とする物質の製造法に関する。
【0062】
本発明の製造法に用いられる微生物の培養は、以下に記載した通常の方法に従って行うことができる。
本発明の製造法に用いられる微生物を培養する培地は、該微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、該微生物の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
【0063】
炭素源としては、該微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノールなどのアルコール類等を用いることができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸または有機酸のアンモニウム塩、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕、大豆粕加水分解物、各種発酵菌体、およびその消化物等を用いることができる。
【0064】
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。
NADHを補酵素とする酵素の基質となる物質は、NADHを補酵素とする酵素の基質となる物質であれば、特に限定されないが、例えばアルデヒド、糖、有機酸、NADH依存性P−450の基質となる物質などをあげることができ、アルデヒドとしてはアセトアルデヒドおよび3−ヒドロキシプロピオンアルデヒドなど、糖としてはキシルロースおよびエリスロース 4リン酸など、有機酸としてはピルビン酸など、NADH依存性P−450の基質となる物質としては、9−deoxo−31−O−demethyl−FK506、6−deoxoerythronolide B、ビタミン D3、メバスタチンなどをあげることができる。
【0065】
該基質は、反応開始時に一括して添加してもよいし、反応中分割して、あるいは連続的に添加することもでき、0.1mmol/l〜2.0mol/lの濃度で用いられる。
培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養などの好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常 16時間〜7日間である。培養中のpHは3.0〜9.0に保持することが好ましい。pHの調整は、無機または有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。
【0066】
生成物質が、菌体外に生成、蓄積した場合には、培養終了後、培養物から菌体などの沈殿物を除去し、イオン交換処理法、濃縮法、塩析法などを併用することにより、培養物から目的する生成物質を単離、精製することができる。
生成物質が、菌体内に生成、蓄積される場合には、培養終了後、培養物から菌体を回収した後、機械的または科学的方法等の適切な方法で破砕する。該菌体破砕液から、イオン交換処理法、濃縮法、塩析法などを併用することにより、該菌体破砕液から目的とする生成物質を単離、精製することができる。
【0067】
生成物質は、本発明に用いられるNADHを補酵素とする酵素により生成される物質であれば特に限定されないが、例えばNADHを補酵素とする酵素としてアルコールデヒドロゲナーゼを用いた場合は、エタノールおよび1,3−プロパンジオールなどのアルコール、NADH依存性キシルロースレダクターゼを用いた場合は、キシリトール、エリスロース 4リン酸デヒドロゲナーゼを用いた場合は、エリスリトール 4リン酸、NADH依存性P−450を用いた場合は、9−hydroxy−31−O−demetyl−FK606、Erythronolide B、25−hydroxy vitamin D3、およびプラバスタチンなど、D−乳酸デヒドロゲナーゼまたはL−乳酸デヒドロゲナーゼを用いた場合は、D−乳酸およびL−乳酸をあげることができる。
【0068】
また、本発明の製造法としては、上記の培養により得られた微生物の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源、糖、およびNADHを補酵素とする酵素の基質となる物質を水性媒体中に存在させ、該水性媒体中に該物質が該酵素により還元されて生成する物質(以下、生成物質という)を蓄積させ、該水性媒体中から生成物質を採取することを特徴とする物質の製造法することができる。
【0069】
本発明の製造法に用いられる糖としてはグルコース、フラクトース等をあげることができる。該糖は、精製品を用いてもよいし、これらを含有するもので、夾雑物が反応を阻害しないものであればいずれも用いることができる。糖は反応開始時に一括して添加してもよいし、反応中分割して、あるいは連続的に添加することもでき、0.1mmol/l〜2.0mol/lの濃度で用いられる。
【0070】
培養物の処理物としては、培養物の濃縮物、培養物の乾燥物、培養物を遠心分離して得られる菌体、該菌体の乾燥物、該菌体の凍結乾燥物、該菌体の界面活性剤処理物、該菌体の溶媒処理物、該菌体の酵素処理物、または該菌体の固定化物などをあげることができる。
酵素源は、微生物の培養物または該培養物の処理物として、37℃で1分間に1μmolの生成物質を生成することのできる活性を1単位(U)として、0.1mU/l〜10,000U/lであり、好ましくは1mU/l〜1,000U/lの濃度で用いる。
【0071】
本発明の製造法に用いられる水性媒体としては、水、りん酸塩、炭酸塩、酢酸塩、ほう酸塩、クエン酸塩、トリスなどの緩衝液、メタノール、エタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、アセトアミドなどのアミド類などをあげることができる。また、酵素源として用いた微生物の培養液を水性媒体として用いることができる。
【0072】
また、必要に応じて界面活性剤あるいは有機溶媒を水性媒体に添加してもよい。界面活性剤としては、ポリオキシエチレン・オクタデシルアミン(例えばナイミーンS−215、日本油脂社製)などの非イオン界面活性剤、セチルトリメチルアンモニウム・ブロマイドやアルキルジメチル・ベンジルアンモニウムクロライド(例えばカチオンF2−40E、日本油脂社製)などのカチオン系界面活性剤、ラウロイル・ザルコシネートなどのアニオン系界面活性剤、アルキルジメチルアミン(例えば三級アミンFB、日本油脂社製)などの三級アミン類など、生成物質の生成を促進するものであればいずれでもよく、1種または数種を混合して使用することもできる。界面活性剤は、通常0.1〜50 g/lの濃度で用いられる。有機溶剤としては、キシレン、トルエン、脂肪族アルコール、アセトン、酢酸エチルなどが挙げられ、通常0.1〜50 ml/lの濃度で用いられる。
【0073】
また、必要に応じて、塩化マグネシウム、塩化マンガン等を水性媒体に添加してもよく、NADH依存性P−450を生産する微生物を酵素源として用いる場合は、フェレドキシンを水性媒体に添加してもよい。
生成物質の生成反応は水性媒体中、pH 5〜10、好ましくは pH 6〜8、20〜50℃の条件で1〜96時間行う。
【0074】
反応液中に生成した生成物質は、上記した方法により精製することができる。
【0075】
【実施例】
実施例1 染色体DNAの部分欠損株ライブラリーの作製
染色体DNAの部分欠損株ライブラリーは、Escherichia coli MG1655(rpsL, polA12)株を親株として作製した。Escherichiacoli MG1655(rpsL, polA12)株は、公知の方法に従ってEscherichia coli MG1655(ATCC 700926)に温度感受性変異を付与することにより取得した。
【0076】
Escherichia coli MG1655(rpsL, polA12)株を親株として、蛋白質 核酸 酵素、46、2386(2001)記載の方法に従い、染色体上の一部分を欠損している変異株ライブラリーを作製した。
【0077】
実施例2 NADH依存性バニリン酸脱メチル化酵素発現プラスミドpMQvanABの作成
Pseudomonas putida PpY101株由来のNADH依存性バニリン酸脱メチル化酵素構造遺伝子であるvanA遺伝子、およびvanB遺伝子を含むプラスミドpVanAB(東京農工大学・片山義博助教授より分与)から制限酵素SmaIとHindIIIを用いてvanAおよびVanB両遺伝子を含む2.1kbpのDNA断片を切り出し、該DNA断片の両末端をタカラバイオ社製のDNA Blunting Kitを使用して平滑化した後、プラスミドpQE32(キアゲン社製)のSmaI部位に再クローニングした。用いた遺伝子工学的手法はモレキュラー・クローニング第3版記載の方法に準拠し、使用した各制限酵素やプラスミドの供給メーカーの指示書に従って行った。得られたプラスミドpQvanABでは、N末端にヒスチジンタグが融合した形でVanAが、一方のVanBは本来のアミノ酸配列で生産される構造を有している。次にpQvanABを制限酵素EcoRIとXbaIで消化し、ヒスチジンタグが付いたvanA遺伝子およびvanB遺伝子を含む2.3kbpのDNA断片を切り出し、低コピー数プラスミドpMW118(ニッポンジーン社製)上のEcoRIとXbaI部位にクローニングすることで、図1に示すNADH供給力評価用プラスミドpMQvanABを作製した。pMQvanABではラクトースプロモーター発現制御系が使われており、イソプロピル 1−チオ−β−D−ガラクピラノシド(IPTG)を培地に添加することにより、プロモーター下流にあるヒスチジンタグが付いたvanAおよびvanBが発現する。該pMQvanABを実施例1で作製したEscherichia coli MG1655株の染色体部分欠損ライブラリーを構成する各菌株に導入し、実施例3で用いた組換え株を構築した。
【0078】
実施例3 バニリン酸脱メチル化反応を指標としたNADH供給力向上株の一次スクリーニング
実施例2にて作製した組換え株を50mg/lのアンピシリンを含む5mlのLB培地を用いて30℃で一晩振とう培養した。50μlの該培養液を50mg/lのアンピシリンを含む5mlのM9培地(1.2% グルコース、0.6% リン酸ナトリウム、0.3% リン酸二水素カリウム、0.05% 塩化ナトリウム、0.1% 塩化アンモニウム、2mmol/l 硫酸マグネシウム・七水和物、100μmol/l 塩化カルシウム)に接種し、30℃で振とう培養し、OD660nm=0.8〜1.0の時点でIPTGを終濃度2mmol/lになるように添加した。2時間後、培養液を十分に氷冷してから、基質であるバニリン酸と内部標準物質としてベンゼン酸をそれぞれ終濃度1mmol/lになるように添加し、十分懸濁してから1mlサンプリングした後、30℃で振とうすることで、バニリン酸脱メチル化反応を行った。反応開始時のグルコース量は、1g/l程度であったので、反応に必要なグルコースとして、培地に残存しているグルコースを用いた。グルコースの定量には日立製自動分析装置7070を使用し、協和メデックス社製の試薬デタミナーGLUIIを用いた。
【0079】
反応液からは一定時間(1、3、18時間目)ごとに1mlずつサンプリングした。サンプリングした培養液のうち100μ1を96穴ウェルプレートに分注した。各ウェルに1mg/mlのペルオキシダーゼ溶液を5μl、0.3%の過酸化水素水を5μl添加して撹拌後、37℃で15分間反応させ、プロトカテキ酸の重合反応を行った。重合反応後、反応液を10倍に希釈して、分光光度計を用いて460nmの吸収を測定し、プロトカテキ酸濃度を算出した。
【0080】
その結果、表1に示すように、野生型株であるMG1655株にpMQvanABを導入した株は、反応18時間で0.36mmol/lのプロトカテキ酸を生成した。そこで反応18時間でのプロトカテキ酸の生成がMG1655(pMQvanAB)株よりも多くなる株として、以下の9つの欠損領域を持つ株を選択した。
【0081】
【表1】
Figure 2004321114
【0082】
実施例4 P1ファージによる欠損領域の他系統株への導入とNADH供給能力評価
実施例3で取得した変異株が有するそれぞれの染色体上の欠損を、P1ファージを用いてMG1655株に形質導入した。実施例3で取得した各欠損のマーカーがカナマイシン耐性遺伝子であるため、カナマイシン耐性を利用したP1ファージを用いた形質導入を行った。まず各欠損株よりP1ファージを調製した。
【0083】
実施例3で取得した変異株を、20mg/lのカナマイシンを含むLB液体培地を用いて30℃で一夜培養した。0.5mlの該培養液を、1.4mlの新しいLB液体培地および100μlの0.1mol/l 塩化カルシウム溶液と混合した。30℃で5から6時間振とう培養した後、400μlを滅菌したチューブに移し、2μlのP1ファージストックを添加し、37℃にて10分間保温した。そこへ50℃に保温したソフトアガー溶液(10g/l バクトトリプトン、5g/l バクトイーストエキストラクト、5mmol/l 塩化カルシウム、1ml/lの1mol/l水酸化ナトリウム、3g/l 寒天)を3ml添加し、よく攪拌した後に、Ca−LB寒天培地プレート(10g/l バクトトリプトン、5g/l バクトイーストエキストラクト、5mmol/l 塩化カルシウム、1ml/lの1mol/l 水酸化ナトリウム、15g/l 寒天、プレートの直径は15cm)上にまいた。このプレートを37℃で7時間培養した後、スプレッダーでソフトアガー部分を細かく砕いて回収した。これを1500g、4℃、10分間遠心分離して得られた上清に、1.5mlの上清に対し100μlの割合でクロロホルムを添加し、4℃にて一晩保存した。翌日該溶液を15000gにて2分間遠心分離し、得られた上清をファージストックとして4℃で保存した。
【0084】
次に取得したファージを用いてMG1655株を形質転換した。Ca−LB液体培地を用いて30℃で4時間培養したMG1655株の培養液を200μl分取し、該培養液にファージストックを1μl添加した。37℃で10分間保温した後、5mlのLB液体培地(10g/l バクトトリプトン、5g/l バクトイーストエキストラクト、5g/l 塩化ナトリウム、1ml/lの1mol/l 水酸化ナトリウム)と200μlの1mol/l クエン酸ナトリウム溶液を添加し、攪拌した。1500g、25℃にて10分間遠心分離して上清を捨て、沈殿した細胞に1mlのLB液体培地と10μlの1mol/l クエン酸ナトリウム溶液を加え、30℃にて2時間保温した。この溶液100μlを20mg/lのカナマイシンを含むアンチバイオティックメディウム3寒天平板培地(0.15% 肉エキス、0.15% 酵母エキス、0.5% ペプトン、0.1% グルコース、0.35% 塩化ナトリウム、0.132% リン酸水素二カリウム、1.5% 寒天、pH7.0)に塗布し、30℃で培養した。翌日出現したコロニー24個をそれぞれ、20mg/lのカナマイシンを含むアンチバイオティックメディウム3寒天平板培地に塗布し、その薬剤感受性をチェックした。そこからカナマイシン耐性株を選抜することにより、各欠損領域が形質導入されたMG1655株を作製した。
【0085】
上記で取得した菌株を宿主として、実施例2と同様の方法によりプラスミドpMQvanABを用いて形質転換し、組換え株を作成した。次に実施例3と同様の方法で培養、反応を行い、NADH依存的なプロトカテキ酸生成量を比較した。ただし、バニリン酸脱メチル化反応は、以下のようにして行った。
LB培地を用いた前培養で得られた1m1の培養液を、100μmol/lの硫酸鉄および50mg/lのアンピシリンを含む100mlのM9培地に接種し、終濃度が2mmol/lになるようにIPTGを添加して、本培養を行った。本培養開始後1.5時間目に培養液を十分に氷冷して増殖を停止させた。次に、10mlの培養液を分取し、2mol/lのグルコース溶液50μlを加え、さらにバニリン酸とベンゼン酸をそれぞれ終濃度が1mmol/lになるように添加し、十分懸濁してから1mlサンプリングした後、30℃で振とうしながら反応を行った。反応1時間目と2時間目に基質であるバニリン酸を終濃度で1mmol/l増加するように添加した。プロトカテキ酸の定量はHPLCを用いて行った。
【0086】
その結果、表2に示すように、3時間の反応で、野生株であるMG1655にpMQvanaABを導入した株よりもプロトカテキ酸生成量が増加する株としてOCL−74−3欠損領域を持つ株(MG1655ΔOCL−74−3株)が選択された。上記反応におけるプロトカテキ酸の生産量は、これまでに報告されている組換えEscherichia coliにおけるプロトカテキ酸の生産性(J. Bacteriol., 179, 2595(1997)、8時間の反応で1mmol/l以下)を大きく上回るものであった。
【0087】
【表2】
Figure 2004321114
【0088】
実施例5 OCL−74−3欠損領域内の2領域破壊株の作製とNADH供給力の評価
実施例4で選択した欠損領域OCL−74−3には18個の推定遺伝子領域(CDS)が存在した。そこでb2064−b2073(領域I)とb2074−b2081(領域II)の二つに分けて、それぞれをクロラムフェニコール耐性遺伝子で破壊した菌株を作製し、実施例2と同様の方法でNADH供給力を評価した。
【0089】
上記領域欠損株は以下のようにして作製した。直鎖DNAによる染色体上の相同組換えが可能なEscherichia coli KM22株[Δ(recC ptr recB recD)::Plac−red kan][Gene, 246, 321−330(2000)]よりP1ファージを調製した。実施例3記載の方法に準じて、直鎖DNAによる染色体上の相同組換えを可能とする染色体領域[Δ(recC ptr recB recD)::Plac−red kan]をP1形質導入法にて野生株W3110に形質導入し、W3110red株を取得した。W3110red株に、破壊したい遺伝子の両末端に相同な領域をクロラムフェニコール耐性遺伝子の両末端に有する直鎖DNA断片を導入し、置換的に目的遺伝子を欠損させた。
【0090】
上記領域Iが欠損したW3110株は以下のように作製した。pHSG398プラスミドDNA(宝酒造社より購入可能)を鋳型にし、配列番号3および4で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いたPCRにより、クロラムフェニコール耐性遺伝子の5’上流に配列番号5で示した配列、3’下流に配列番号6で示した配列が付加したDNA断片を増幅させた。それぞれのプライマーDNAの3’末端の20merはpHSG398中のクロラムフェニコール耐性遺伝子の両末端にハイブリダイズするように設計した。PCRは、宝酒造社製のLA−Taqを用いて、精製プラスミドDNA 10ng、各プライマー 12.5pmolを含む反応液をLA−Taqに添付の指示書に従い調製し、94℃で10分間保温後、94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で1分30秒間のサイクルを25回繰り返した後、72℃で7分間保温するという条件で行った。
【0091】
増幅したDNA断片は、QIA quick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製した。次に該DNA 10ngを鋳型として、配列番号7および8で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに用いたPCRを上記と同様の条件で行った。配列番号7で表される塩基配列からなるDNAは、5’側に40merのb2064遺伝子との相同配列を有し、3’側に25merの配列番号5で表される塩基配列からなるDNAとの相同配列を有するDNAであり、配列番号8で表される塩基配列からなるDNAは、5’側に40merのb2073遺伝子との相同配列を有し、3’側に25merの配列番号6で表される塩基配列からなるDNAとの相同配列を有するDNAである。上記PCRにて、両末端にb2064A遺伝子末端40塩基ならびにb2073A遺伝子末端40塩基と相同な領域を有するクロラムフェニコール耐性遺伝子(cat遺伝子)を含むDNA断片を取得した。
【0092】
該DNA断片をQIA quick PCR Purification Kitを用いて精製した。該DNA 1μgを30μlのW3110red株のコンピテントセル溶液に添加して形質転換を行った。W3110red株のコンピテントセルは、Gene, 246, 321 (2000)に記載の方法に従って調製した。形質転換は、0.1cmのキュベット(BioRad社製)中で、1.8KV、25μFの条件で、エレクトロポレーションにより行った。形質転換に供した細胞は、2mmol/lのIPTGを含む1mlのSOB液体培地[20g/l バクトトリプトン(Difco社製)、5g/l バクトイーストエキストラクト(Difco社製)、0.5g/l 塩化ナトリウム、0.2ml/lの5mol/l NaOH、10ml/lの1mol/l 塩化マグネシウム、10ml/lの1mol/l 硫酸マグネシウム]を用いて30℃で3時間培養した後、100μlを、50μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天プレート(LB液体培地に寒天を1.5%含むもの。以下、LBcm寒天培地プレートと略す)上に塗布し、37℃で一晩培養した。クロラムフェニコール耐性株として形質転換株を取得した。
【0093】
上記した方法により、b2064からb2073までの領域をクロラムフェニコール耐性遺伝子と置換的に欠損させた、W3110redΔregionI株を取得した。該菌株から実施例4と同様の方法によりP1形質導入ファージを調製し、該ファージを用いて該欠損領域をMG1655株に形質導入することにより、MG1655ΔregionI株を取得した。
【0094】
MG1655ΔregionI株の作製と同様の方法によって、b2074からb2081までの領域を欠損させた菌株(MG1655ΔregionII株)を作製した。該菌株の作製においては、上記した配列番号7および8で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いる代わりに、配列番号9および10で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いた。配列番号9は、5’側に40merのb2074遺伝子との相同配列を有し、3’側に25merの配列番号5で表される塩基配列からなるDNAとの相同配列を有するDNAである。配列番号10は、5’側に40merのb2081遺伝子との相同配列を有し、3’側に25merの配列番号6で表される塩基配列からなるDNAとの相同配列を有するDNAである。
【0095】
上記方法で取得したMG1655ΔregionI株およびMG1655Δregion II株を、実施例3と同様の方法で培養し、バニリン酸脱メチル化反応を行った。ただし、実施例3に記載の方法において、IPTG添加後の培養時間を2時間から1.5時間に、培養液を氷冷後、反応を開始する際に、2mol/lのグルコース溶液を25μl加え、さらにバニリン酸とベンゼン酸をそれぞれ終濃度で1mmol/lになるように添加し、十分懸濁してから1mlサンプリングした後、30℃で振とうしながら、反応を行うように変更した。また、反応1時間目と2時間目に基質であるバニリン酸を終濃度で1mmol/l増加となるように添加した。プロトカテキ酸の定量はHPLCを用いて行った。
【0096】
その結果、表3に示すように、OCL−74−3領域を欠損させたときに見られるNADHの供給能力向上の原因は、regionIの欠損によるものであることが確認された。
【0097】
【表3】
Figure 2004321114
【0098】
実施例6 regionI領域内の一遺伝子破壊株作製とNADH供給能力の評価
欠損領域regionIには10個の推定遺伝子領域(CDS)が存在していた。W3110株を親株として、それぞれの遺伝子をカナマイシン耐性遺伝子で破壊した菌株を作製し、実施例3と同様の方法でNADH供給能力を評価した。
【0099】
実施例5と同様に、W3110red株に、破壊したい遺伝子の両末端に相同な領域をその両端に有するカナマイシン耐性遺伝子を含む直鎖DNA断片を導入し、置換的に目的遺伝子を欠損させた。
regionI領域内にあるdcd遺伝子が欠損したEscherichia coliは、以下に記載の方法により作製した。
【0100】
W3110red株の染色体DNAを鋳型とし、3’末端の25merは、W3110red株染色体上のカナマイシン耐性遺伝子の両末端にハイブリダイズするように設計してある配列番号11および12で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用い、実施例5と同様な条件でPCR反応を行い、カナマイシン耐性遺伝子の5’上流に配列番号13で表される塩基配列、3’下流に配列番号14で表される塩基配列が付加したDNA断片を取得した。
【0101】
該DNA断片をQIA quick PCR Purification Kitを用いて精製した。次に該DNA 10ngを鋳型として、実施例5と同様の反応条件にてPCRを行った。ただし配列番号7および8で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いる代わりに、配列番号15および16で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに用いた。配列番号15で表される塩基配列を有するDNAは、5’側に40merのdcd遺伝子のN末領域付近との相同配列を有し、3’側に25merの配列番号13で表される塩基配列からなるDNAとの相同配列を有するDNAである。配列番号16で表される塩基配列を有するDNAは、5’側に40merのdcd遺伝子のC末領域付近との相同配列を有し、3’側に25merの配列番号14で表される塩基配列からなるDNAとの相同配列を有するDNAである。
【0102】
上記PCRによって、その両末端にdcd遺伝子の両末端40塩基と相同な領域を有するカナマイシン耐性遺伝子(km遺伝子)を含むDNA断片を取得した。該DNA断片をQIA quick PCR Purification Kitを用いて精製した。該DNA 1μgを30μlのW3110red株のコンピテントセル溶液に添加して、実施例5と同様の方法で形質転換を行った。エレクトロポレーション後に回復培養を行った培養液 100μlを、50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天プレート上に塗布し、37℃で一晩培養することにより、カナマイシン耐性株を取得した。
【0103】
上記方法により、dcd遺伝子をカナマイシン耐性遺伝子によって置換的に削除した、W3110redΔdcd株を取得した。該菌株からP1形質導入ファージを実施例4と同様の方法によって調製し、該ファージを用いて該欠損領域をW3110株に形質導入し、W3110Δdcd株を取得した。
W3110Δdcd株作成と同様の方法により、regionIに含まれる、表4に記載した各遺伝子を破壊した菌株を作製した。各遺伝子欠損用のDNA断片を作製するために使用したプライマーを表4に示した。
【0104】
【表4】
Figure 2004321114
【0105】
上記で作製した各菌株を、実施例3と同様の方法で培養し、NADHの供給能力を評価した。ただし実施例5に記載の方法に対して、サンプリング間隔は20分ごとに行った点、反応20分後と40分後に基質であるバニリン酸を終濃度で1mmol/lの増加となるように添加した点を変更した。
また、プロトカテキ酸の蓄積量は、実施例3に示した重合反応を用いた測定法および以下の条件で行ったHPLC分析によるプロトカテキ酸の直接定量法の両方で測定した。
【0106】
HPLC分析条件
使用カラム:Pure SilC18(Waters社製)
移動相:分析時間0〜2分間は、移動相A(メタノール:1% 酢酸=1:1 ):移動相B(1% 酢酸)=1:1の溶液を用い、2〜3分間は、その間に移動相Aが100%になるように濃度勾配をかけ、3〜8分間は、移動相Aが100%の溶液を用い、8〜9分間は、その間に移動相A:移動相B=1:1になるように濃度勾配をかけ、9〜15分間は、移動相A:移動相B=1:1の溶液を用いた。
カラム温度:30℃
流量:1ml/min.
検出波長:280nm
【0107】
反応60分間後の測定結果を表5に示す。下表の重合反応の列中、〇は親株W3110株と同程度の重合反応を示したもの、◎は親株より強い、×は親株より弱い重合反応を示したものを表す。
【0108】
【表5】
Figure 2004321114
【0109】
実施例7 dcd欠損株によるバニリン酸からプロトカテキ酸の生産反応
実施例6で作製したW3110Δdcd株ならびにW3110株にOCL−74−3欠損領域を導入した株(W3110ΔOCL−74−3株)のNADH供給能力を評価した。比較対照としては野生株W3110株とMG1655株を用いた。各菌株について、実施例2で作成したプラスミドpMQvanABを導入した組換え株を作成し、実施例6と同様の方法でNADH供給力を測定した結果を図2に示す。W3110Δdcd株およびW3110ΔOCL−74−3株を宿主としてpMQvanABを導入した株では、野生株にpMQvanABを導入した株と比べて大幅に反応性が上昇していることがわかった。
【0110】
【発明の効果】
本発明によれば、NADHを補酵素とする酵素を生産する能力を有する微生物であり、かつデオキシシチジン三リン酸デアミナーゼ活性が喪失、または野生型株より低下した微生物を用いた、NADHを補酵素とする酵素により還元されて生成する物質を効率よく製造する方法を提供することができる。
【0111】
【配列表フリーテキスト】
配列番号3−人工配列の説明:合成DNA
配列番号4−人工配列の説明:合成DNA
配列番号5−人工配列の説明:合成DNA
配列番号6−人工配列の説明:合成DNA
配列番号7−人工配列の説明:合成DNA
配列番号8−人工配列の説明:合成DNA
配列番号9−人工配列の説明:合成DNA
配列番号10−人工配列の説明:合成DNA
配列番号11−人工配列の説明:合成DNA
配列番号12−人工配列の説明:合成DNA
配列番号13−人工配列の説明:合成DNA
配列番号14−人工配列の説明:合成DNA
配列番号15−人工配列の説明:合成DNA
配列番号16−人工配列の説明:合成DNA
配列番号17−人工配列の説明:合成DNA
配列番号18−人工配列の説明:合成DNA
配列番号19−人工配列の説明:合成DNA
配列番号20−人工配列の説明:合成DNA
配列番号21−人工配列の説明:合成DNA
配列番号22−人工配列の説明:合成DNA
配列番号23−人工配列の説明:合成DNA
配列番号24−人工配列の説明:合成DNA
配列番号25−人工配列の説明:合成DNA
配列番号26−人工配列の説明:合成DNA
配列番号27−人工配列の説明:合成DNA
配列番号28−人工配列の説明:合成DNA
配列番号29−人工配列の説明:合成DNA
配列番号30−人工配列の説明:合成DNA
【0112】
【配列表】
Figure 2004321114
Figure 2004321114
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、NADH供給力評価用プラスミドpMQvanABの構造を示す図である。
【図2】図2は、dcd欠損株によるバニリン酸からのプロトカテキ酸の生産能力を示す図である。図の縦軸はプロトカテキ酸の生産量、横軸は反応時間を示す。図中、●はEscherichia coli MG1655/pMQvanAB、×はEscherichiacoli W3110/pMQvanAB、○はEscherichia coli W3110 △OCL−74−3/pMQvanAB、◇はEscherichiacoli △dcd/pMQvanAB、を用いたときのプロトカテキ酸の生産量を示す。
【符号の説明】
6×His−tag:ヒスチジンが6個連結したタグ
lacP:ラクトースプロモーター

Claims (8)

  1. NADHを補酵素とする酵素を生産する能力を有する微生物であり、かつデオキシシチジン三リン酸デアミナーゼ活性が喪失、または野生型株より低下した微生物を、該酵素の基質となる物質の存在下で培養し、培養物中に該物質が該酵素により変換されて生成する物質(以下、生成物質という)を蓄積させ、該培養物から該生成物質を採取することを特徴とする物質の製造法。
  2. NADHを補酵素とする酵素を生産する能力を有する微生物であり、かつデオキシシチジン三リン酸デアミナーゼ活性が喪失、または野生型株より低下した微生物の培養物、または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源、糖、および該酵素の基質となる物質を水性媒体中に存在させ、該水性媒体中に該物質が該酵素により変換されて生成する物質(以下、生成物質という)を蓄積させ、該水性媒体中から該生成物質を採取することを特徴とする物質の製造法。
  3. デオキシシチジン三リン酸デアミナーゼ活性が喪失、または野生型株より低下した微生物が、デオキシシチジン三リン酸デアミナーゼをコードするDNAの一部または全部が欠損した染色体DNAを有する微生物である、請求項1または2記載の製造法。
  4. デオキシシチジン三リン酸デアミナーゼ活性が喪失、または野生型株より低下した微生物が、デオキシシチジン三リン酸デアミナーゼのアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードするDNAを染色体DNA上に有する微生物である、請求項1または2記載の製造法。
  5. 微生物が、Escherichia属、Pseudomonas属、Bacillus属、Corynebacterium属またはStreptomyces属に属する微生物である、請求項1〜4記載の製造法。
  6. Escherichia属に属する微生物がEscherichia coliである、請求項5記載の製造法。
  7. NADHを補酵素とする酵素が、NADH依存性デヒロゲナーゼ、NADH依存性レダクターゼおよびNADH依存性オキシゲナーゼからなる群より選ばれる酵素である、請求項1〜6記載の製造法。
  8. 培養物の処理物が、培養物の濃縮物、培養物の乾燥物、培養物を遠心分離して得られる菌体、該菌体の乾燥物、該菌体の凍結乾燥物、該菌体の界面活性剤処理物、該菌体の超音波処理物、該菌体の機械的摩砕処理物、該菌体の溶媒処理物、該菌体の酵素処理物、該菌体の蛋白質分画物、該菌体の固定化物あるいは該菌体より抽出して得られる酵素標品である、請求項2〜7記載の製造法。
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