JP2004321015A - 老化促進および免疫不全症のモデル動物 - Google Patents

老化促進および免疫不全症のモデル動物 Download PDF

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Abstract

【課題】広く老化促進や免疫不全症などの病態のモデルとして有用な遺伝子変異動物を提供する。
【解決手段】APエンドヌクレアーゼであるAPEX2酵素をコードする遺伝子が欠損している非ヒト哺乳動物、特にマウス。APEX2酵素をコードする遺伝子がその機能欠損型遺伝子に置換されているES細胞を用いて作製される。自然DNA損傷に起因する発育遅延を呈し、且つ、該損傷に因る障害に感受性が高く免疫担当の細胞の減少が顕著であるので、老化促進や免疫不全などに関与する多くの病態のモデルとして有用である。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遺伝子変異動物を作製する技術分野に属し、特に、特定の酵素をコードする遺伝子が欠損しており老化促進や免疫不全症などのモデルとして有用な新規な非ヒト哺乳動物に関する。
【0002】
【従来の技術】
トランスジェニックマウスおよびノックアウトマウスに代表される遺伝子変異動物は、特定の遺伝子を人為的に導入したり欠損(破壊)させることによりその遺伝子の関与する表現型の変化を直接観察することができ、その解析を通して新しい薬剤や治療法の開発に資するものとして各種のモデルマウス等が提案されている。
【0003】
老化や免疫不全は新規な薬剤や治療法の開発にきわめて重要な表現型と考えられるが、特定の遺伝子との関連においてこれらの表現型を直接の対象として案出されたモデル動物は意外に少ない。例えば、特表2001−513991号公報(特許文献1)には、腫瘍サプレッサーであるBRCA2が減損した非ヒトトランスジェニック動物が早期複製老化のモデルとして有用であることが開示され、また、特許第3326770号公報(特許文献2)にはRAG2をコードする遺伝子を欠損している非ヒト哺乳動物が自己免疫疾患のモデル動物として有用であることが開示されている程度である。この他に、特定の病態を対象とするモデルマウス等は多数提案されているが、老化促進および免疫不全症の研究一般に適用でき、それらの対する薬剤や治療法の開発に有用性が期待されるようなマウス等のモデル動物は殆ど見当らない。
【特許文献1】特表2001−513991号
【特許文献2】特許第3326770号
【非特許文献1】B. Demple他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88 (1991) 11450−11454
【非特許文献2】C. N. Robson他、Nucleic Acids Res. 19 (1991) 5519−5523
【非特許文献3】S. Seki他、Biochim. Biophsc. Acta 1131 (1992) 287−299
【非特許文献4】S. Xanthoudakis他、EMBO J. 11 (1992) 653−665
【非特許文献5】D. Tsuchimoto他、Nucleic Acids Res. 29 (2001) 2349−2360
【非特許文献6】M. Z. Hadi他、Environ. Mol. Mutagen. 36 (2000) 312−324
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、広く老化促進や免疫不全症などの多くの病態のモデルとして有用な新しいタイプの遺伝子変異動物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、研究を重ねた結果、APエンドヌクレアーゼの1種である酵素が欠損(破壊)した哺乳動物が老化促進や免疫不全症のモデルとして好適な表現型を呈することを見出し、本発明を導き出したものである。
【0006】
かくして、本発明に従えば、APエンドヌクレアーゼであるAPEX2酵素をコードする遺伝子が欠損していることを特徴とする非ヒト哺乳動物が提供される。本発明の特に好ましい態様においては非ヒト哺乳動物はマウスであり、APエンドヌクレアーゼであるマウスAPEX2酵素をコードする遺伝子が欠損していることを特徴とするマウスが提供される。
【0007】
本発明に従えば、さらに、上記の非ヒト哺乳動物の作製に使用されるものとして、APエンドヌクレアーゼであるAPEX2酵素をコードする遺伝子がその機能欠損型変異遺伝子に置換されていることを特徴とする非ヒト哺乳動物由来のES細胞が提供され、特に好ましい態様としてマウス由来の当該ES細胞が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に従うモデル動物として主としてノックアウトマウスの場合に沿ってその作製法や材料等に関して本発明の実施の形態を説明する。
APEX2酵素 本発明において遺伝子欠損(破壊)の対象となるAPEX2とは、塩基除去修復(BER: Base Excision Repair)に関与するAPエンドヌクレアーゼに属する酵素の1種である。
【0009】
DNA中に生じた損傷塩基や一部の誤対合塩基は特異的なDNAグリコシラーゼにより除去され、生じた脱塩基部位の5’側で脱塩基部位特異的DNAエンドヌクレアーゼ(APエンドヌクレアーゼ)によりリン酸ジエステル結合が切断されることにより塩基除去修復(BER)が進行する。従来より、哺乳動物では主要なAPエンドヌクレアーゼとしてAPEX1(APE1、HAP1、またはREF−1と記されることもある)が知られていた〔B. Demple他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88 (1991) 11450−11454(非特許文献1);C. N. Robson他、Nucleic Acids Res. 19 (1991) 5519−5523(非特許文献2);S. Seki他、Biochim. Biophsc. Acta 1131 (1992) 287−299(非特許文献3);S. Xanthoudakis他、EMBO J. 11 (1992) 653−665(非特許文献4)〕。これに対して、本発明者らは、先に、第2のAPエンドヌクレアーゼ(APEX2)をコードするヒトの遺伝子のクローニングに成功している〔D. Tsuchimoto他、Nucleic Acids Res. 29 (2001) 2349−2360(非特許文献5);M. Z. Hadi他、Environ. Mol. Mutagen. 36 (2000) 312−324(非特許文献6)〕。
【0010】
APEX2(APE2)をコードする遺伝子(Apex2)は、X染色体上にマップされ、APEX2はAPEX1とホモロジーの高いN末端側のAPエンドヌクレアーゼドメインに続いてAPEX2に特有のC末端領域を有している。すなわち、APEX2のC末端領域には、DNA合成の足場タンパク質となるPCNAへの結合モチーフとDNA複製停止の解除に関わるトポイソメラーゼIIIのC末端領域の繰り返し配列にホモロジーを持つ配列が保存されている。大部分のAPEX2は細胞の核に局在し、一部がミトコンドリアに局在する。PCNAへの結合モチーフを有するので、APEX2は、PCNA依存性である複製後BERに関与するものと考えられるが、その機能の詳細については未だ不明な点も残されている。
【0011】
Apex 2遺伝子のcDNA 本発明に従いAPEX2酵素をコードする遺伝子(Apex2)が欠損している非ヒト哺乳動物を作製するには、先ず、当該遺伝子のcDNAを単離することが必要である。マウスの場合、このcDNAの単離は、例えば次のようにして行なうことができる。
【0012】
C57BL/6マウスから作製したマウスの脾臓cDNAライブラリーからPCR法によりApex2遺伝子のcDNAをクローニングした。PCRのプライマーとしてヒトのAPEX2をコードするcDNAにホモロジーのあるEST(GenBankのAccession No. AA032608)を用い、また、ベクターとしてはLambda ZAP II(Stratagene製)を用いた。得られるマウスのApex2遺伝子のcDNAは、ポリ(A)テールを含めると1903個の塩基から成る。そのオープンリーディングフレームは516個のアミノ酸残基をコードする1548個の塩基から成り、これはヒトのAPEX2をコードするcDNAに比べて6塩基分短い。このマウスのApex2遺伝子のcDNAは、配列番号1として末尾の配列表に記しており、また、本発明者によりGenBankのデータライブラリーにアクセションNo. AB072498として登録している。
他の動物についても同様の操作によりそれぞれのAPEX2酵素をコードするcDNAを入手することができる。
【0013】
Apex 2遺伝子のゲノムDNA 本発明に従うノックアウト非ヒト哺乳動物を作製するには、欠損対象となるApex2遺伝子のゲノムDNAを単離することが必要である。これは、一般に、Apex2遺伝子のcDNA配列に基づくプローブを用いてそれぞれのゲノムDNAライブラリーをスクリーニングすることにより行なわれ、例えば、本発明者が実施した方法によれば、マウスの場合、次のように行なわれる。
【0014】
既述のようにして得られたマウスのApex2遺伝子のcDNA(配列番号1)から調製したプローブを用いて、129vJマウスのλファージゲノムDNAライブラリー(Stratagene製)から3種類のクローン(λmAPEX2M1−1、O1−1、Q1−1)を単離した(図1参照)。次に、PCR法により、CCE ES細胞のゲノムDNAから、クローンQ1−1の3’端およびクローンM1−1の5’端をカバーするゲノムDNAを増幅しクローニングした(pT7:mAPEX2EX3−6)。この際、用いるプライマーは、既述のマウスApex2遺伝子のcDNA(配列番号1)にハイブリダイズするものであり、また、DNAポリメラーゼとしては、例えば、LA Taq(宝酒造製)を用い、ベクターとしては、例えば、pT7Blue T(Novagen製)を用いる。
【0015】
得られるマウスApex2遺伝子のゲノムDNAは、X染色体63.0にあるAlas2遺伝子に3’端が接しており、長さ16.5kbで、6つのエキソンから成る。また、このApex2遺伝子の5’端には、106bpの遺伝子間配列から成る新規な遺伝子が接していることも見出されている。マウスApex2遺伝子の最長のエキソンはエキソン6であり、1175bpから成りcDNAの62%をカバーし、また、イントロン5は11.5kbの長さを有し、対応するヒトApex2遺伝子のもの(2.65kb)より長い(図1参照)。このマウスApex2遺伝子のゲノムDNAは、本発明者により、アクセションNo.AB085234およびNo.085235としてGenBankのデータライブラリーに登録されている。
他の動物についても同様の操作によりそれぞれのApex2遺伝子のゲノムDNAを単離することができる。既述のマウスApex2遺伝子のcDNA(配列番号1)は、そのような単離操作におけるプローブとしてきわめて有用である。
【0016】
Apex 2遺伝子欠損動物 上記のようにしてApex2遺伝子のゲノムDNAが得られれば、よく知られたように、その遺伝子の機能を欠損(破壊)するとともに、薬剤で選別し得るように構築したベクターをES細胞に導入し、もとの遺伝子と相同組換えで置き換えることによって遺伝子が破壊されたES細胞(Apex2遺伝子がその機能欠損型変異遺伝子に置換されているES細胞)を樹立し、このES細胞を用いて動物個体を作製する。すなわち、ES細胞が確立されている系に公知の遺伝子ターゲッティング法を適用することによって所望のApex2遺伝子欠損非ヒト哺乳動物を得ることができる。ES細胞は、マウスについては古くから確立されており、この他に、ラット(Dev. Biol. 163(1): 288−292, 1994)、サル(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92(17): 7844−7848, 1995)、ウサギ(Mol. Reprod. Dev. 45(4): 439−443, 1998)などにおいても確立している。したがって、本発明のApex2遺伝子欠損非ヒト哺乳動物は、これらの動物種を対象に作製することができるが、特に、遺伝子ノックアウト動物の作製に関して技術の蓄積の多いマウスに適用されるのが好ましい。Apex2遺伝子欠損マウスを作製する具体的方法は、後の実施例に詳述している。
【0017】
Apex 2遺伝子欠損の表現型 Apex2遺伝子欠損マウスに代表される本発明のApex2遺伝子欠損非ヒト哺乳動物は、老化促進と免疫不全症に関与する表現型を呈することが見出されている。すなわち、Apex2遺伝子が破壊されたマウスは、当該遺伝子が正常に機能する野生型のものに比べて、顕著な体重増加の遅延を伴なう全身性の発育遅延を示す。また、このApex2欠損マウスは、野生株に比べて胸腺等の免疫担当臓器の発達不全が著しく、さらに、T細胞およびB細胞(リンパ球)の分化成熟が不全であり、免疫応答時のT細胞およびB細胞の増殖の活性化が著しく低下している(後述の実施例参照)。これは、Apex2欠損マウスは、DNA中の自然損傷(塩基の酸化、脱塩基等)を修復できず、成長・老化の過程で蓄積したDNA中の損傷が全身性に発達障害を引き起こし、さらに細胞増殖の最も盛んな免疫担当細胞の分化成熟不全を引き起こすためと考えられる。
【0018】
【実施例】
以下に、本発明の実施の形態をさらに具体的に示すため実施例を記す。実施例1は、本発明に従うApex2遺伝子欠損マウスの作製法を例示し、また、実施例2〜5は本発明のApex2遺伝子欠損マウスに現われる表現型を調べるための実験例である。
実施例1: Apex 2遺伝子欠損マウスの作製
まずApex2遺伝子のイントロン5とエキソン6を含むマウスゲノムDNA断片をプラスミドに挿入、更にイントロン5の一部とエキソン6の一部をネオマイシン耐性遺伝子カセットと置き換え、さらに、単純ヘルペスウィルスのチミジンキナーゼのウィルス(HSV−tk)をつないだターゲティングベクターを作成した。このターゲティングベクターをエレクトロポレーションによりマウス胚性幹細胞(ES細胞)株CCEに導入、G418抵抗性を指標に相同組換え株を単離した(図2参照)。なお、このCCE細胞株は研究目的であれば無償配布されており(Robertson, E. J. Tetracarcinomas and Embrionic Stem Cells: A Practical Approach, IRL Press, NY (1987)参照)、同等のES細胞は、例えば、ATCCよりCRL−11632としても入手することができる。単離株はサザンブロット法およびノザンブロット法により標的組換えを確認し、Apex2遺伝子欠損ES細胞(APEX2酵素をコードする遺伝子がその機能欠損型遺伝子に置換されているマウスES細胞)とした(図3A、B)。
樹立したES株は常法に従い、C57BL/6Jマウスの胚盤胞に注入し、仮親であるICRマウスの子宮へ移入した。生まれてきたマウスの中でオスのキメラマウスを選択しメスのC57BL/6Jマウスと交配させた。生まれてきたマウスの中で変異Apex2対立遺伝子を有するアグーチのメスマウスをF1世代(Apex2 /−)とした。
これ以降はApex2 /−メスマウスとC57BL/6Jオスマウスを交配させることにより戻し交配を続けた。この交配により生まれてくるマウスは、Apex2遺伝子がX染色体上に位置することから,伴性遺伝の法則に従いApex2 メスマウス、Apex2 /−メスマウス、Apex2オスマウス、Apex2オスマウスが各々1:1:1:1の比で生まれてくることが期待される。実際に出生率を調べたところ、4タイプのマウスがほぼ同率の割合で生まれてくることが確認された(図4)。こうして生まれてきたApex2オスマウス(Apex2遺伝子欠損マウス)とApex2オスマウス(野生型マウス)について、以下の実施例2〜5に示すように、その表現型を次のように比較した。
【0019】
実施例2:マウス表現型1(発育不全)
新生児マウスの体重を測定したところ、Apex2遺伝子欠損マウス(KO)の体重は同腹の野生型マウス(WT)の平均値に対して82%と低い値を示し、胎生期において既に発育遅延が起きていることが示された(図5A)。
4週齢のApex2遺伝子欠損マウス13匹の体重の平均値は同腹野生型マウス11匹の平均値の約83%であった(図5B)。更に8腹由来のApex2遺伝子欠損マウス7匹と野生型マウス12匹について2歳齢までの体重変化を調べたところ一貫してApex2遺伝子欠損マウスの発育遅延を認めた(図5C)。
4週齢のマウスについて各臓器重量を測定し、体重比の値を比較したところ脾臓、精巣、腎臓、心臓、肺、肝臓、脳の各臓器ではApex2遺伝子欠損マウスと野生型マウスの間で有意な差を認めなかったが、調べた中では唯一Apex2遺伝子欠損マウス(KO)の胸腺重量の体重比の値が野生型マウス(WT)の値の約50%と有意に減少していた(図6)。
【0020】
実施例3:マウス表現型2(胸腺細胞の異常)
Apex2遺伝子欠損マウス(KO)の胸腺の組織切片をヘマトキシリン/エオシン(HE)染色して観察したところ、野生型(WT)に比べて大型細胞の割合が増加していた(図7)。胸腺より回収した胸腺細胞を顕微鏡下で計数したところ、Apex2遺伝子欠損マウスでは胸腺細胞数が野生型マウス約20%と著しく減少していた。更にこの胸腺細胞をヨウ化プロピジウム染色してフローサイトメトリーで解析したところ、Apex2遺伝子欠損マウスでは小型胸腺細胞の減少が顕著であった(80.7%→44.9%)(図8)。更に蛍光強度の比較から細胞周期のS期およびG2/M期の細胞集団の比率が各々8.2%から12.2%へ、9.7%から19.0%へとApex2遺伝子欠損マウスにおいて上昇していた(図9)。
次に個体における胸腺細胞のX線感受性を調べた。マウスをX線照射し、21時間後に胸腺細胞を回収、生細胞数を計数したところ、Apex2遺伝子欠損マウスの胸腺細胞の顕著な減少を認め、Apex2欠損胸腺細胞が野生型に比してX線高感受性を示すことが明らかになった(図10)。
胸腺細胞の分化マーカーをフローサイトメトリーで解析したところ、CD4CD8細胞、CD4CD8細胞、CD4CD8細胞、CD4CD8細胞の数は各々野生型の31%、179%、40%、50%であった(各2匹の13週齢マウスのデータ)。さらに、CD3、4、8トリプルネガティブ細胞に関して調べたところ、トリプルネガティブ細胞数は野生型マウスと同等であったが、そのうちのCD44CD25細胞数が36.3%に減少していた。一方、CD44CD25細胞とCD44CD25細胞は減少しておらず、むしろ若干増加していた。CD44CD25細胞は野生型マウスの27.8%に減少していた(各2匹の10週齢マウスのデータ)。
【0021】
実施例4:マウス表現型3(末梢血リンパ球異常)
末梢血中の白血球数を動物用血球計算装置により計数したところ白血球数の減少を認めた(野生型の55%)。更に白血球中の各分画をフローサイトメトリーにより解析したところ、T細胞は野生型の37%、B細胞は野生型の47%まで減少していた。一方NK細胞数は177%に増大していた(各2匹の15週齢マウスのデータ)。T細胞中のCD4CD8/CD4CD8比は正常値であった。
【0022】
実施例5:マウス表現型4(脾臓リンパ球の異常)
Apex2遺伝子欠損マウスの脾臓細胞数は野生型マウスの63.2%に減少していた。脾臓細胞の表面マーカーをフローサイトメトリーで解析したところ、脾臓細胞中でのT細胞(CD3)とB細胞(B220)の比率は,野生型マウスでは各々26.0%、75.7%であったのに対し、Apex2遺伝子欠損マウスでも28.7%、73.8%と変化は認められなかった。
次に脾臓細胞をLPSまたはコンカナバリンA(ConA)を添加した培地中で増殖させ、トリパンブルー染色した後に顕微鏡下で観察して計数したところ、Apex2遺伝子欠損マウス由来脾臓細胞はいずれのマイトジェンの刺激下においても野生型マウス由来脾臓細胞に比べて細胞数が低下していた。この際に死細胞数にはほとんど差が無かった。またLPS刺激48時間後、あるいはConA刺激60時間後の脾臓細胞の細胞周期をフローサイトメトリーで解析したところいずれもG2/M期の細胞の比率の増加を認めた(図11)。
【0023】
【発明の効果】
APEX2酵素欠損マウスに代表される本発明のAPEX2酵素欠損非ヒト哺乳動物は、自然DNA損傷に起因すると考えられる発生・発育遅延の表現型を呈し、この全身性の自然DNA損傷の修復欠損がもたらす表現型は、胎児の発生遅延、新生児の発育遅延、また老化の促進など多くの病態と関連しており、本発明のAPEX2欠損動物は、これらの病態のモデルとしてその治療法や薬剤の開発に有用である。
【0024】
さらに、APEX2欠損マウス等の本発明のAPEX2欠損非ヒト哺乳動物においては、全身の組織細胞に比較して免疫担当細胞が特に自然DNA損傷に起因する障害に感受性が高く、通常から免疫担当細胞の減少が顕著である。このことから、APEX2欠損マウスに代表される本発明のAPEX2欠損動物は、自然DNA損傷の修復欠損の結果として特発性の免疫不全症や易感染性のモデルとして有用であり、それらの疾患の治療法や薬剤の開発に資することもできる。
【0025】
【配列表】
Figure 2004321015
Figure 2004321015

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従い欠損対象となるApex2遺伝子のゲノム上の位置関係(A)およびイントロン/エキソン境界のヌクレオチド配列(B)を示す。
【図2】本発明に従うApex2遺伝子欠損ES細胞を作製するために用いられたターゲティングベクターを正常および変異後の対立遺伝子の位置と対比して示す。
【図3】本発明に従うApex2遺伝子欠損ES細胞が樹立されたことを示すデータである。
【図4】本発明に従いApex2遺伝子欠損マウスが作製されたことを示すデータである。
【図5】本発明に従うApex2遺伝子欠損マウスが発育不全を呈することを示すデータである。
【図6】本発明に従うApex2遺伝子欠損マウスにおいては、胸腺が萎縮していることを示すデータである。
【図7】本発明に従うApex2遺伝子欠損マウスにおいては、通常の細胞が少なく大型細胞の割合が増加することを示すデータである。
【図8】本発明に従うApex2遺伝子欠損マウスにおける胸腺細胞のサイズを解析して野性型のものと対比して示すデータである。
【図9】本発明に従うApex2遺伝子欠損マウスにおける胸腺細胞の細胞周期分布を解析して野性型のものと対比して示すデータである。
【図10】本発明に従うApex2遺伝子欠損マウスが野性型のものに比べてX線照射に対して感受性が高いことを示すデータである。
【図11】本発明に従うApex2遺伝子欠損マウスの脾臓細胞のマイトジェンによる活性化の様子を野性型のものと対比して示すデータである。

Claims (4)

  1. APエンドヌクレアーゼであるAPEX2酵素をコードする遺伝子が欠損していることを特徴とする非ヒト哺乳動物。
  2. APエンドヌクレアーゼであるマウスAPEX2酵素をコードする遺伝子が欠損していることを特徴とするマウス。
  3. APエンドヌクレアーゼであるAPEX2酵素をコードする遺伝子がその機能欠損型遺伝子に置換されていることを特徴とする非ヒト哺乳動物由来のES細胞。
  4. マウス由来であることを特徴とする請求項3のES細胞。
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