JP2004319375A - 燃料電池の電極及びこの電極を使用した燃料電池 - Google Patents

燃料電池の電極及びこの電極を使用した燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】生成水の排水が効率良く行え、耐久性を向上できる燃料電池の電極と、生成水がフラッディングすることなく電圧低下の少ない燃料電池を提供する。
【解決手段】燃料電池の電極10は、燃料電池の単セル1の電解質膜2とガス流路22との間に配置され、電解質膜2に接触して配置される触媒層11と、ガス流路側に位置する拡散層13と、触媒層11と拡散層13との間に位置する導電性の中空体層12とを備える。中空体層12は、貫通孔15aを有する中空繊維としてカーボンチューブ15を平行状態に整列して構成したフィルム状であり、貫通孔15aの内径が2〜10μmでフィルム面と直角方向に開口するように配向される。前記の電極を触媒層が対向するように2つ配置し、触媒層間に電解質膜を接触して配置し、ガス流路の一方に水素を、他方に酸素を供給し燃料電池の単セルを構成する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型の燃料電池に使用する電極に係り、特に、触媒層で反応時に生成される生成水の排水を効率良く行える燃料電池の電極と、この電極を用いた燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の固体高分子型の燃料電池用電極基体は、電極基体の表面に電極触媒層が設けられ、この電極触媒層は固体高分子からなる電解質膜に被着され、電極基体は中空繊維がクロス状に編みこまれて構成されている。そして、中空繊維は表面に導電性が付与された高分子材料からなる外筒部の内部に、中空繊維を長さ方向に貫通する、数μm〜数百μm程度の径の中空部を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、遷移金属の酸化物および難還元性金属酸化物との固溶体相を含有する基体と、この基体上に析出された前記遷移金属から成長させたカーボンナノファイバーとからなるカーボンナノファイバー複合体がある。このカーボンナノファイバー複合体を例えば燃料電池に使用すると、燃料電池を高出力化することが可能となるものである(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−15123号公報(図1)
【特許文献2】
特開2002−110176号公報(図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記の特許文献1に記載の燃料電池用電極基体は、中空繊維の内径が大きく、中空繊維がランダムに配列されているため排水性が良好ではなく、高負荷運転時には生成水が溢れて耐久性を損なう問題点があった。また、特許文献2に記載のカーボンナノファイバー複合体は、基体表面にカーボンナノファイバーを高密度に成長させることができるが、反応生成水の排水については考慮されていない。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、反応時に触媒層で生成される生成水の排水が効率良く行え、耐久性を向上できる燃料電池の電極を提供することにある。また、前記の電極を用い、反応による生成水がフラッディングすることなく、電圧低下が少なく耐久性を向上できる燃料電池を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成すべく、本発明に係る燃料電池の電極は、燃料電池の電解質膜とガス流路との間に配置される電極であって、電解質膜に接触して配置される触媒層と、ガス流路側に位置する拡散層と、触媒層と拡散層との間に位置し該触媒層と拡散層とを連通する貫通孔が層面に対して垂直配向状態で形成された導電性の中空体層とを備えることを特徴とする。導電性の中空体層としては、貫通孔を有するカーボンチューブを、貫通孔が層面と直交する方向に配向したカーボンフィルムが好適であり、貫通孔は平行状態に整列し一端は触媒層側に開口し、他端は拡散層側に開口している。
【0008】
前記のごとく構成された本発明の燃料電池の電極は、カソード側に供給された酸化剤ガスに含まれる酸素がアノード側から移動してきた水素イオン及び電子と反応して起電力が生じると共に、水素と酸素から生成水が生成される。この反応生成水は中空体層の貫通孔を通過し、さらに拡散層を通過して効率良く排出されるため、高負荷運転時でも生成水が溢れることがない。
【0009】
また、本発明に係る燃料電池の電極の好ましい具体的な態様としては、前記中空体層は、貫通孔を有する中空繊維を平行状態に整列して構成したフィルム状であり、該貫通孔の内径が2〜10μmであることを特徴としている。中空繊維としては貫通孔を有するカーボンチューブが好適である。この構成によれば、貫通孔はフィルム面と直角方向に開口するように配向されて整列され、反応による生成水を効率良く排水できるため電圧低下を低減でき、燃料電池の耐久性を向上できる。
【0010】
さらに、本発明に係る燃料電池は、前記の電極を、触媒層が対向するように2つ配置し、該触媒層間に電解質膜を接触して配置し、拡散層の一方側のガス流路に水素含有ガスを供給すると共に、その他方側のガス流路に酸素含有ガスを供給するように構成したことを特徴としている。前記のように構成される燃料電池の単セルを並設することにより、燃料電池が構成される。
【0011】
このように構成された本発明の燃料電池は、アノード側の電極のガス流路から供給された水素と、カソード側の電極のガス流路から供給された酸素が反応して起電力が生じると共に生成水が生成されるが、生成水は中空体層の貫通孔を通って効率良く排水されるため、高負荷運転時でも生成水が溢れることがなくフラッディングを防止でき、電圧低下を防止して耐久性を向上することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る燃料電池の電極の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1aは、本実施形態に係る固体高分子型の燃料電池の電極の要部断面図、図1bは、図1aの中空体層部分の拡大断面図、図1cは、図1bの中空繊維の斜視図、図2は、図1の電極を用いた燃料電池の単セルの概略構成図である。
【0013】
図1,2において、本実施形態の電極10は、基本的には燃料電池の単セル1に2枚使用されるものであり、一方がアノード側の電極10Aであり、他方がカソード側の電極10Bとして使用され、電解質膜2の両側に触媒層が接触して配置される。図1aにおいて、電極10は右方より触媒層11と、中空体層12と、拡散層13と、集電極を構成するセパレータ14から構成され、触媒層11と拡散層13との間に中空体層12が位置していることが特徴となっており、例えば拡散層13と中空体層12とを一体化したあと触媒層11を製膜することにより形成される。
【0014】
触媒層11は電解質膜2に接触するものであり、電極10のベース(基材シート)となる拡散層13の一方の面に、中空体層12を介して例えば触媒インクを塗布することにより形成されている。拡散層13は、例えばカーボン繊維を織ったカーボンクロスから構成される。カーボンクロスの厚さは、150〜300μm程度が好ましい。拡散層13のカーボンクロスは、例えば表面を撥水処理した炭素繊維と、表面処理していない炭素繊維とを織り込むと、拡散層の表面全体が水で覆われることなく、良好なガス透過性を有するものとなる。撥水処理としては、表面をポリ4フッ化エチレンでコーティングしたものが好適である。
【0015】
本発明の電極10は、触媒層11と拡散層13との間に位置する中空体層12を備えることを特徴としており、この中空体層12は厚さが30μm程度のフィルム状であり、内径が2〜10μmの貫通孔15aを有するカーボンチューブ15が、貫通孔15aとフィルム面とが直角になるように密着して垂直配向されている。このように、フィルム面と直角に無数の貫通孔15aが形成されているため、酸化剤ガス21や燃料ガス20が容易に通過することができると共に、生成水が効率良く排水可能となっている。
【0016】
前記の中空体層12の拡散層13上への作製は、例えば以下のように行われる。先ず、拡散層13の表面に触媒を分散し、温度をかけながらベンゼン等の炭化水素ガスを流すと、カーボンチューブが拡散層13と垂直に成長する。そして、成長したカーボンチューブの上部を切断することにより、開口したカーボンチューブが拡散層上に垂直配向して形成される。
【0017】
また、中空体層12の他の作製方法としては、アルミナを陽極酸化したもの(直貫孔が厚さ方向に生成している)に高温中でベンゼン等の炭化水素ガスを流すと、直貫孔表面にカーボン層が生成する。このカーボンチューブ配向層を酸処理してアルミナを溶出させ、拡散層表面に配置して拡散層13と一体化するために焼結を行う。焼結時は拡散層表面にフェノール樹脂を予め塗工し、その上にカーボンチューブ配向層を載せて焼結し一体化する。なお、中空体層の作製は、前記の方法に限られるものではない。
【0018】
触媒層11は、触媒として白金あるいは白金と他の金属との合金の微粒子を、例えば20重量パーセント担持した触媒担持カーボンを高分子電解質に分散させた触媒インクより形成した、厚さが1〜100μm、好ましくは3〜10μmのシート状の電極であり、拡散層13と中空体層12とを一体化したあと、中空体層側に触媒インクを塗布して形成される。白金や合金の粒子の直径は平均的には約1nm程度が好ましく、触媒担持カーボン粒子の直径は平均的には20nm程度が好ましい。なお、触媒の微粒子の重量パーセントは前記に限られるものでない。
【0019】
セパレータ14は、例えばカーボンを圧縮して緻密化し、ガス不透過とした緻密質カーボンにより形成されており、拡散層13と接触する面には平行に配置された複数のリブ14aが形成されている。このリブ14aは、拡散層13との間に多数の溝を形成し、酸素を含有する空気等の酸化剤ガス21(例えば空気等)、又は水素を含有する燃料ガス20(例えばメタノール改質ガス等)の流路22を形成する。
【0020】
前記の構成の電極10は、触媒層11が対向するように2枚を平行に配置され、触媒層11,11間に電解質膜2を接触して配置し、拡散層13の一方側のガス流路22に水素含有ガスとして燃料ガス20を供給すると共に、その他方側のガス流路22に酸素含有ガスとして酸化剤ガス21を供給するように積層して固体高分子型の燃料電池の単セル1を構成する。燃料ガス20、及び酸化剤ガス21は、それぞれ図示を省略した水素供給手段、及び酸素供給手段から供給される。
【0021】
電解質膜2は高分子材料、例えばフッ素系樹脂より形成された厚さ50〜300μm、好ましくは100〜200μm程度のイオン交換膜であり、湿潤状態で良好な電気伝導性を有している。電解質膜2としては、例えば、Du Pont社製、商品名「ナフィオン」として販売されているパーフルオロカーボンスルホン酸高分子膜を使用すると好適である。
【0022】
前記の如く構成された本実施形態の電極10,10を用いた燃料電池の単セル1の動作について以下に説明する。
カソード側の電極10Bのガス流路22に供給された酸化剤ガス21に含まれる酸素が、アノード側の電極10Aのガス流路22に供給された燃料ガス20の水素イオン及び電子と反応して起電力が生じると共に、水素と酸素とから反応生成水が生成される。この生成水はカソード電極10B及びアノード電極10A内の拡散層13を通過して外部に排出される。
【0023】
本実施形態の燃料電池の単セル1は、アノード電極10A及びカソード電極10Bは中空体層12を備えており、この中空体層12にはカーボンチューブ15の貫通孔15aが垂直配向され、内径が2〜10μmの貫通孔15aが、ばらつきなく平行状態に整然と並んでいるため、生成水は貫通孔15aを通して効率良く排水される。このように水素と酸素の反応時に生じる生成水が中空体層12と拡散層13を通して効率良く排水できるため、フラッディングを防止して高電流密度域での性能向上を達成できる。
【0024】
前記のように、垂直配向され整然と配列された内径が2〜10μmの貫通孔15aを有するフィルム状の中空体層12を備えると、反応によって生じる生成水が効率良く排水できる点について考察する。触媒層11で水素と酸素が反応して生成された水は、反応を継続するためにセパレータ14側に排水する必要があり、生成水は例えば毛細管現象で吸引される。毛細管現象による吸い上げ高さHは、以下の式(1)から得られる。
H=(2Tcosθ/ρgR)…(1)
ここで、Tは表面張力、θは接触角、ρは液体の密度、gは重力加速度、Rは貫通孔15aの半径である。
【0025】
前記の式(1)からカーボンチューブ15の貫通孔15aの半径Rが小さいほど吸い上げ高さHが高くなることが分かる。しかし、排水される生成水の体積は、半径Rに基づく断面積に比例する。これらの点から吸い上げる高さが高く、吸い上げる水の量を多くするためにはカーボンチューブ15の貫通孔15aの内径が2〜10μmであることが最適であると考えられる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例と比較例により本実施形態を説明する。
[実施例1]
中空体層12として、カーボン層中に内径が2μmのカーボンチューブ15の貫通孔15aを触媒層11に対して垂直方向に配向した。
[実施例2]
中空体層12として、カーボン層中に内径が10μmのカーボンチューブ15の貫通孔15aを触媒層11に対して垂直方向に配向した。
【0027】
[比較例1]
中空体層12として、カーボン層中に内径が0.5μmのカーボンチューブ15の貫通孔15aを触媒層11に対して垂直方向に配向した。
[比較例2]
中空体層12として、カーボン層中に内径が12μmのカーボンチューブ15の貫通孔15aを触媒層11に対して垂直方向に配向した。
[比較例3]
中空体層12として、カーボン層中に内径が2μmのカーボンチューブ15をランダムに配置した。
【0028】
前記の実施例1,2と比較例1〜3に関して、セル温度70℃、活物質ガスはフル加湿条件として、1.5A/cmの電流密度で放電した時のアノード電極10A、カソード電極10B間の電圧を測定した実験結果を以下の表1に示す。
【0029】
【表1】
Figure 2004319375
【0030】
表1に示されるように、実施例1,2では出力電圧が高く、電圧低下が低減されているが、比較例1〜3では生成水の排水が効率良く行われず、出力電圧の電圧低下が大きいことが明らかである。この結果、実施例1,2では高負荷運転を行なっても生成水が溢れることがなくフラッディングを防止して、燃料電池の耐久性を向上することができる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、触媒層、拡散層は例示したものに限られるものでなく、その機能を有するものであれば他の構成でもよい。
【0032】
また、中空体層を構成する中空繊維として、カーボンチューブの例を示したが、高分子材料からなる中空繊維を用いることもできる。さらに、燃料電池を構成する電解質膜は、前記の構成に限られるものでない。前記の電極は、燃料電池のアノード電極とカソード電極の両方に使用した例を示したが、例えばカソード側の電極だけ使用するようにしてもよい。
【0033】
【発明の効果】
以上の説明から理解できるように、本発明の燃料電池の電極は、水素と酸素が反応して生じた生成水を効率良く排水できるためフラッディングを防止できると共に、電圧低下を低減できる。また、この電極を使用した燃料電池は電圧低下を低減でき、高負荷運転時でもフラッディングを防止でき耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に係る燃料電池の電極の一実施形態を示す要部断面図、(b)は図1aの中空体層部分の拡大断面図、(c)は中空繊維の斜視図。
【図2】図1の電極を用いた燃料電池の単セルの概略構成図。
【符号の説明】
1…燃料電池の単セル、2…電解質膜、10…燃料電池の電極、10A…アノード側電極、10B…カソード側電極、11…触媒層、12…中空体層、13…拡散層、14…セパレータ(集電極)、15…カーボンチューブ、15a…貫通孔、20…燃料ガス、21…酸化剤ガス、22…ガス流路

Claims (4)

  1. 燃料電池の電解質膜とガス流路との間に配置される電極であって、前記電解質膜に接触して配置される触媒層と、前記ガス流路側に位置する拡散層と、前記触媒層と拡散層との間に位置し該触媒層と拡散層とを連通する貫通孔が層面に対して垂直配向状態で形成された導電性の中空体層とを備えることを特徴とする燃料電池の電極。
  2. 前記中空体層は、前記貫通孔を有する中空繊維を平行状態に整列して構成したフィルム状であり、該貫通孔の内径が2〜10μmであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池の電極。
  3. 前記中空繊維は、カーボンチューブであることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池の電極。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の電極を前記触媒層が対向するように2つ配置し、該触媒層間に前記電解質膜を接触して配置し、前記拡散層の一方側のガス流路に水素含有ガスを供給すると共に、その他方側のガス流路に酸素含有ガスを供給するように構成したことを特徴とする燃料電池。
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