JP2004317796A - レーザ加工装置及びレーザ加工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】レーザ光による加工で用いられる電気光学素子の寿命を長くし、レーザ加工の稼働率を向上させる。
【解決手段】レーザ発振器21から出射されるレーザ光の偏波面を制御信号より制御する電気光学素子22と、前記レーザ光の偏光状態からレーザ光路を分岐する偏光ビームスプリッタ23とを介して、加工対象物にレーザ光を照射して加工を行うレーザ加工装置20において、前記電気光学素子に対して所定の周期に基づき交流電圧のパルス波形を印加する交流電圧印加部29と、前記交流電圧印加部における交流電圧の印加、及び前記レーザ発振器におけるレーザ光の照射を制御する制御部30とを有する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ加工装置及びレーザ加工方法に係り、特に、レーザ光による加工で用いられる電気光学素子の寿命を長くし、レーザ加工の稼働率を向上させることができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、レーザ加工において、加工の精度、処理効率を向上させる1つの手段として、レーザ発振器から出射されるレーザ光を光変調器のON/OFFにより分岐させて処理を行う加工処理方法がある(例えば、特許文献1参照。)。これにより、レーザ照射系は1つしかない場合にも複数の加工地点への加工処理が可能になり処理効率を向上させることができる。
【0003】
また、レーザ光の分岐手段としては、レーザ光が出射されてから加工対象物に照射されるまでの光路にハーフミラーやマスクモジュール等を設置し分岐を行うものや、電気光学素子を用いたEOM(Electro Optic Modulator;電気光学変調器)、又は音響光学素子を用いたAOM(Acoust Optic Modulator;音響光学変調器)等の光学変調器による分岐も行っている。
【0004】
特にEOMの場合は、電圧が印加されるとその領域の配列が変化し、透過する光の振動方向を変える。EOMは、特定の振動方向の光だけを透過させるので、EOMを通過する光の振動方向の違いが透過率の差として認識される。つまり、特定の偏光面を有するレーザ光を取得する場合に、EOMに電圧を印加するだけでよいため瞬時にレーザ光の偏波面の変更が可能であり、これによりレーザ光の高速な分岐が可能となり高い処理効率を実現することができる。
【0005】
ここで、上述の内容を示す一例としてEOMを用いた分岐の仕組みをレーザ光の偏光の様子と共に、図を用いて説明する。
【0006】
図1は、EOMを用いた分岐の様子を示す一例の図である。
【0007】
ここで、図1(a)は、EOMに電圧をかけていない場合(EOMがOFF)であり、図1(b)は、EOMに電圧を掛けている場合(EOMがON)の場合を示している。また、どちらの場合もEOM11と偏光面が縦偏光のレーザ光を通過させ、偏光面が横偏光のレーザ光を反射させる偏光ビームスプリッタ12による分岐を行うものとし、説明を容易にするため、EOMへ入射するレーザ光を縦偏光レーザ光とする。
【0008】
図1(a)の場合は(EOMがOFF)、EOM11に入射されたレーザ光は、縦偏光のまま出力される。出力されたレーザ光は、偏光ビームスプリッタ12に入力され、偏光ビームスプリッタ12は、縦偏光のレーザビームは通過させるため、入射したレーザ光は、図1(a)に示すように、そのまま通過する。
【0009】
一方、図1(b)の場合は(EOFがON)、EOM11により縦偏光で入射されたレーザ光が横偏光として出力される。また、偏光面が横偏光のレーザ光が偏光ビームスプリッタ12に入力されると、偏光ビームスプリッタ12は、レーザ光を通過させずに反射させる。図1(a)、(b)により、EOMに対する負荷電圧を与えるか否かにより、容易で且つ迅速にレーザ光の分岐を行うことができる。
【0010】
現在では、EOMはレーザ加工処理におけるレーザ光の分岐モジュールとして構成されるだけでなく、各種表示装置やコンピュータ端末、光シャッター等広い分野で使われるようになっている。
【0011】
【特許文献1】
特開平8−215875号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、EOMは所望のレーザ加工を行うために多大な負荷をかけ加工装置を構成している他の部分よりも寿命が短い場合が多い。その主な原因としては、従来、EOMに対しての電圧の印加手段は直流の電圧を印加しているが、その印加時間が長時間に及ぶと、電気光学素子を形成する電気光学結晶内において電気分解が発生してしまい、これにより電気光学結晶が融解してしまうためである。
【0013】
このため、電気光学素子の寿命がレーザ加工装置の他の主要構成部と比較して短いくなり電気光学素子(変調器)の取替え作業や、その装置毎の微妙な設定が取替え作業毎に必要となり、また、設定後の確認作業等が発生するため作業効率の低下を招いている。
【0014】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、特に、電気光学素子の寿命を長くし、レーザ加工の稼働率を向上させるためのレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本件発明は、以下の特徴を有する課題を解決するための手段を採用している。
【0016】
請求項1に記載された発明は、レーザ発振器から出射されるレーザ光の偏波面を制御信号により制御する電気光学素子と、前記レーザ光の偏光状態からレーザ光路を分岐する偏光ビームスプリッタとを介して、加工対象物にレーザ光を照射して加工を行うレーザ加工装置において、前記電気光学素子に対して所定の周期に基づき交流電圧のパルス波形を印加する交流電圧印加部と、前記交流電圧印加部における交流電圧の印加、及び前記レーザ発振器におけるレーザ光の照射を制御する制御部とを有することを特徴とする。
【0017】
請求項1記載の発明によれば、レーザ光の偏波面を制御するために印加される電圧を、所定の周期に基づき交流電圧のパルス波形とすることで、電気光学結晶内における電気分解の発生を防止して結晶の融解を防ぎ、電気光学素子の寿命を長くすることができ、レーザ加工装置の稼働率を向上させることができる。
【0018】
請求項2に記載された発明は、前記電気光学素子は、水素結合型誘電体であることを特徴とする。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、電気分解を有する水素結合型誘電体により、BBO等の水素結合型でない他の電気光学素子と比較しても安価であるため、レーザ加工装置のコストを削減させることができ、水素結合型誘電体であっても融解を防止して稼動率を向上させることができる。
【0020】
請求項3に記載された発明は、レーザ発振器から出射されるレーザ光の偏波面を制御信号により制御する電気光学素子と、前記レーザ光の偏光状態からレーザ光路を分岐する偏光ビームスプリッタとを介して、加工対象物にレーザ光を照射して加工を行うレーザ加工方法において、前記電気光学素子に対して所定の周期に基づき交流電圧のパルス波形を印加する交流電圧印加段階と、前記交流電圧印加段階における交流電圧の印加、及び前記レーザ発振器におけるレーザ光の照射を制御する制御段階とを有することを特徴とする。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、レーザ光の偏波面を制御するために印加される電圧を、所定の周期に基づき交流電圧のパルス波形とすることで、電気光学結晶内における電気分解を防止して結晶の融解を防ぎ、電気光学素子の寿命を長くすることができ、レーザ加工装置の稼働率を向上させることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明は、レーザ光の分岐に用いられる偏波面を制御するために印加される電圧を所定の周期に基づく交流電圧のパルス波形とすることにより、電気光学結晶が融解を防ぎ、電気光学素子の寿命を長くして、レーザ加工装置の稼働率を向上させるためのレーザ加工装置を提供する。
【0023】
また、電気光学素子には、KDP(KHPO)、ADP(NHPO)、又は、KDP(KDPO)、ADP(NHPO)等の重水素単一結晶等を含む水素結合型誘電体を用いるものとする。
【0024】
なお、電気光学素子としては、例えば、電気分解を行わないBBO(ベータバリウムボライト)もあるが、BBOは、他の素子に比べて高価であり、また、偏光するためには、ある程度の素子の長さが必要になるので、位置設定を正確に行わなければならない。そこで、本発明では、KDP、KDP、ADP、又はADP等の水素結合型誘電体を用いるものとする。
【0025】
次に、本発明における実施の形態について図を用いて説明する。なお、ここでは、電気光学変調器によるレーザ光の分岐の様子の説明を容易にするため、EOMを用いた2軸分岐型のレーザ加工装置を用いて説明する。
【0026】
図2は、本発明におけるレーザ加工装置の一実施例を示す図である。
【0027】
図2のレーザ加工装置20は、レーザ発振器21と、EOM22と、偏光ビームスプリッタ23と、全反射ミラー24と、レーザ光の夫々の光路に対応した集光レンズ25と、ステージ26と、交流電源27と、D/A変換器28と、反転アンプ29と、制御部30とを有するよう構成されている。また、ステージ26には加工対象物31が載置されている。
【0028】
制御部30は、レーザ発振器21からのレーザの出射タイミングと、EOM22へ供給する電圧の供給タイミングと、D/A変換器28においてパルス波形を生成するための変換タイミングと、反転アンプ29における電圧の反転タイミングと、ステージ26の移動タイミングの制御を行う。
【0029】
次に、動作について説明する。レーザ発振器21は、制御部30からの制御信号によりレーザ光を出射する。EOM22は、反転アンプ29からの電圧制御信号に対して入力されたレーザ光を偏光する。偏光ビームスプリッタ23は、レーザ光の偏光状態に基づいて反射又は通過を行い、全反射ミラー24は入射光を加工対象物31側へ反射させる。
【0030】
集光レンズ25−1及び集光レンズ25−2は、所望する形状にレーザ光を集光して加工対象物31の加工を行う。つまり、偏光ビームスプリッタ23により、レーザ光路が図1のK及びKに分岐されるため、2軸でのレーザ加工を実現し、これにより、作業効率を向上させることができる。
【0031】
ステージ26は、制御部30からの制御信号により載置された加工対象物31の移動を行い、所望の加工地点の加工を可能にする。なお、ステージ26は、XYZθテーブルであり、集光レンズ25に対して前後左右方向(X、Y方向)及び上下方向(Z方向)への移動が可能であり、且つステージ26を照射軸に対して傾斜角θ分傾かせることもできる。このようにステージ26を移動させることで多種の加工形状を形成することが可能となる。
【0032】
交流電源27は、制御部30からの制御信号により交流電圧を出力し、D/A変換器28は、制御部30からの制御信号により入力されたアナログの交流電圧波形をデジタル化しパルス状の電圧信号を生成して反転アンプ29に出力する。
【0033】
また、反転アンプ29は、制御部30からの制御信号によりパルス波形電圧を所定の周期において反転させ、電圧値がプラスとマイナスの値を持つパルス波形をEOM22に出力する。
【0034】
ここで、EOM22に印加される電圧はプラスとマイナスが存在することでEOM内における電界の方向が逆になるため、結晶内で電気分解が発生することがなく結晶の融解を防止し、EOM22の寿命を延ばすことができる。
【0035】
なお、EOM22にプラスの電圧を印加した場合と、マイナスの電荷を印加した場合はプラスの電圧値とマイナスの電圧値を同一にする必要があり、夫々の電圧値は、EOM22に入力されるレーザ光に対して+90°、及び−90°に偏光させるように、制御部30により交流電源の電圧値の電圧値が制御される。
ここで、プラス又はマイナスの電圧値により、電圧0V時の偏波面を0°として+90°又は−90°に偏波面が偏向されるため、どちらの電圧値により偏光されたレーザ光は、偏光ビームスプリッタ23において同じ方向の光路へ分岐される。なぜなら、プラスとマイナスの偏光差が180°であり、180°の変更差は偏光ビームスプリッタ23により同一方向に偏光されるからである。
【0036】
ここで、交流電源27と、D/A変換器28と、反転アンプ29とからなる交流電圧印加手段における電圧波形とレーザ加工装置の分岐の具体的な例について説明する。
【0037】
図3は、EOMにおける入力と出力に伴うレーザ光路の分岐の様子を示す図である。ここで、図3(a)は、図2におけるEOM22に入力されるレーザパルスの出射周期の例を示し、図3(b)は、EOM22にて偏光されず、偏光ビームスプリッタ23をそのまま通過し、光路Kにて加工対象物にレーザ光が照射されて加工を行う場合のレーザパルス周期の例を示し、図3(c)は、EOM22にて偏光され、偏光ビームスプリッタ23にて光路を偏光されて、光路Kにて加工対象物にレーザ光を照射されて加工を行う場合のレーザパルス周期の例を示すものである。また、図3(a)〜(c)におけて横軸は時間を示し、縦軸はレーザパルスのパルス強度を示す図である。図3(a)に示すパルスレーザにおいて、レーザが通過するEOM22にて周期的な電圧をかけることにより図3(b)、図3(c)に示すようなパルスレーザの分岐を行うことができ、2軸レーザ加工を実現する。
【0038】
ここで、図3に基づいてEOM22に印加する電圧の例について図を用いて説明する。図4は、印加する電圧例を示す図である。ここで、図4(a)は従来における直流電圧の印加例を示す図であり、図4(b)は、本発明おいて、反転アンプ29を用いて生成される交流電圧のパルス波形がEOM22に印加される電圧の周期の例を示すものである。また、図4(a)、図4(b)の横軸は時間を示し、縦軸は電圧値を示している。
【0039】
ここで、電圧を印加していない状態でレーザ光が入力された場合は(T〜T,T〜T,T〜T,T〜:電圧OFF時)、偏光ビームスプリッタ23ではレーザ光がそのまま通過するため、光路Kを通って加工対象物31に加工が行われる。また、電圧を印加した状態でレーザ光が入力された場合は(T〜T,T〜T,T〜T:電圧ON時)、偏光ビームスプリッタ23により偏光され、光路Kを通って加工対象物31へ加工が行われる。
【0040】
この時、図4(a)に示す電圧の印加方法では、電圧ONの状態においてパルス波形の電圧は一例として+2KVに設定されており、この電圧値がEOM22に印加されることにより、EOM22に入力されるレーザ光の偏波面を90°偏光させることができる。ここで、上述したように電圧ON状態が長く継続される場合に、電気分解による結晶の融解が発生する。これを防ぐために、図4(b)に示すようにプラスとマイナスの電圧を交互に印加する交流パルス波形とすることにより、電気分解による融解を防止することができる。なお、上述したようにプラスとマイナスに印加される電圧は、周期的に交互にEOM22に印加されることが好ましい。つまり、時間T〜T、T〜Tの場合は、制御部30の制御により反転アンプ29が動作し、入力される電圧を反転させマイナスの電圧していEOM22に印加する。これによりEOM22内の電荷の均一化を図ることができ、電気分解を防止して結晶の融解を防ぐ。
【0041】
なお、本発明におけるEOMの素子については、上述したようにKDP、KDP、ADP、又はADP等の重水素単一結晶等を含む水素結合型誘電体を使用することができるが、BBOでも実施することはできる。
【0042】
また、レーザ発振器21については、パルスレーザを発振可能なパルスYAGレーザは、エキシマレーザを用いることができる。
【0043】
上述したように、本発明によれば、レーザ光の分岐に用いられる偏波面を制御するために印加される電圧を所定の周期に基づく交流電圧のパルス波形とすることにより、電気光学結晶内における電気分解を防止して結晶の融解を防ぎ、電気光学素子の寿命を長くして、レーザ加工装置の稼働率を向上させることができる。
【0044】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、レーザ光によるレーザ加工で用いられる電気光学素子の寿命を長くし、レーザ加工の稼働率を向上させることができる。
【0046】
【図面の簡単な説明】
【図1】EOMを用いた分岐の様子を示す一例の図である。
【図2】本発明におけるレーザ加工装置の一実施例を示す図である。
【図3】EOMにおける入力と出力に伴うレーザ光路の分岐の様子を示す図である。
【図4】印加する電圧例を示す図である。
【符号の説明】
11,22 EOM
12,23 偏光ビームスプリッタ
21 レーザ発振器
24 全反射ミラー
25 集光レンズ
26 ステージ
27 交流電源
28 D/A変換器
29 反転アンプ
30 制御部
31 加工対象物

Claims (3)

  1. レーザ発振器から出射されるレーザ光の偏波面を制御信号により制御する電気光学素子と、前記レーザ光の偏光状態からレーザ光路を分岐する偏光ビームスプリッタとを介して、加工対象物にレーザ光を照射して加工を行うレーザ加工装置において、
    前記電気光学素子に対して所定の周期に基づき交流電圧のパルス波形を印加する交流電圧印加部と、
    前記交流電圧印加部における交流電圧の印加、及び前記レーザ発振器におけるレーザ光の照射を制御する制御部とを有することを特徴とするレーザ加工装置。
  2. 前記電気光学素子は、水素結合型誘電体であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
  3. レーザ発振器から出射されるレーザ光の偏波面を制御信号により制御する電気光学素子と、前記レーザ光の偏光状態からレーザ光路を分岐する偏光ビームスプリッタとを介して、加工対象物にレーザ光を照射して加工を行うレーザ加工方法において、
    前記電気光学素子に対して所定の周期に基づき交流電圧のパルス波形を印加する交流電圧印加段階と、
    前記交流電圧印加段階における交流電圧の印加、及び前記レーザ発振器におけるレーザ光の照射を制御する制御段階とを有することを特徴とするレーザ加工方法。
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WO2013073133A1 (en) * 2011-11-14 2013-05-23 Canon Kabushiki Kaisha Laser processing apparatus, method of laser processing, method of fabricating substrate, and method of fabricating inkjet head
CN105397284A (zh) * 2014-09-04 2016-03-16 株式会社迪思科 激光加工装置

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