JP2004317060A - フィン部材を内装した伝熱管 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属製の基板5の一面に直交して、複数の板状フィン3を互いに平行に突設する。この板状フィン3を内側にして基板5を円筒形に湾曲成形する事により円筒形のフィン部材4形成を形成する。この円筒形のフィン部材4を、金属製の素管2内に複数個直列に挿入配設し、フィン部材4の円筒形とした基板5の外周面を、素管2の内周面に密着固定させる。
【選択図】 図1
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、EGRガス冷却装置等の多管式熱交換器、ラジエーター組込式オイルクーラーにて、冷却水、冷却風、カーエアコン用冷媒、その他の冷媒液等の冷却媒体と、EGRガス、煤を含有する燃焼排気ガス等の被冷却高温熱媒体流体との熱交換を行うために用いるもの等、種々の用途の伝熱管に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平11−108578号公報
【特許文献2】特開2000−179410号公報
【特許文献3】特開2001−227413号公報
【0003】
従来、自動車のエンジン等では、排気ガスの一部を排気ガス系から取り出して、再びエンジンの吸気系に戻し、混合気や吸入空気に加えるEGRシステムが、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンに用いられていた。EGRシステム、特にディーゼルエンジンの高EGR率のクールドEGRシステムでは、排気ガス中のNOxを低減し、燃費の悪化を防止するとともに、過剰な温度上昇によるEGRバルブの機能低下や耐久性の低下を防止するため、高温化したEGRガスを冷却水、冷却風、カーエアコン用冷媒、その他の冷媒液等の冷却媒体で冷却するEGRガス冷却装置を設けている。
【0004】
そして、このEGRガス冷却装置として、上記特許文献1〜特許文献3の従来発明等に示す如く、内部をEGRガスが流通可能な複数の細径の伝熱管を配置し、この伝熱管の外側に冷却水や冷却風、冷媒液等の冷却媒体を流通させる事により、伝熱管を介してEGRガスと冷却媒体との熱交換を行うものが存在した。
【0005】
上述の如きEGRガス冷却装置で使用する伝熱管は、内周面が平滑な金属管が多く用いられているが、このような伝熱管ではEGRガスの殆どが伝熱管の中心付近を高速に流動し、伝熱管の内表面側を通過するEGRガスから熱が伝導されるのみで、冷却媒体との熱交換が良好に行われにくかった。この熱交換性能の向上のため、前記特許文献1、2の従来発明では、内周面に突起を突設した金属製の素管内に、平板を螺旋状に捻って形成したフィン部材を挿入配設して伝熱管を形成している。また、特許文献3では、素管内に平板状のフィン部材を一体に突出して伝熱管を形成している。
【0006】
このように、素管内に螺旋状に捻ったフィン部材を配設したり平板状のフィン部材を一体に突設する事で、伝熱管の伝熱面積を増大させ、伝熱管の内表面を流動するEGRガスだけでなく、中心付近を流動するEGRガスの熱をフィン部材に伝達させ、EGRガスからの伝熱管への熱伝導効率を高めようとしていた。更に、フィン部材によって伝熱管内のEGRガスの流れを乱流化して、EGRガスの伝熱管内の流動距離を長くし、伝熱管とEGRガスとの接触時間を長くするとともに、境界層を剥離して、伝熱管を介したEGRガスと冷却媒体との熱交換効率を高めようとするものであった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1、2の従来技術では、フィン部材と素管との接触は、フィン部材の両側縁と素管の内周面の突起部分との断続した点接触である。そのため、フィン部材と素管との接触面積が少なく、フィン部材がEGRガスの熱を受熱しても、このフィン部材から素管への熱伝達が十分に行われず、EGRガスと伝熱管の外周を流動する冷却媒体との熱交換効率を高めるには限界があった。
【0008】
これに対して、特許文献3では、素管と板状フィンとを一体に設けているので、素管と板状フィンとは板状フィンの肉厚分の面接触となり、特許文献1、2の点接触に比べて素管と板状フィンとの熱伝導性は高まる。しかしながら、特許文献3では、フープ材を用いてロール成形によって円筒形に素管を形成する際に、フープ材の一端又は両端を、素管の内方に折り曲げて板状フィンを形成したり、予め所定の直径で形成した素管の外壁を、内方に押圧変形して板状フィンを形成しているので、製作に手数を要するものであった。
【0009】
そのため、例えば使用目的に応じて熱交換性能の異なる複数種の伝熱管を形成する場合には、素管の成形時に、大小様々なフープ材を使用して形成したり、突設するフィン部材の枚数や大きさに応じて直径の異なる素管を複数形成する必要があり、製作工数が増えてコスト高となる可能性がある。また、特許文献1、2に於いても、上述の如き熱交換性能の異なる複数種の伝熱管を得るには、伝熱管の種類毎に螺旋のピッチ等を変えて、形状の異なる複数の螺旋状フィン部材を形成する必要があり、生産性に影響を及ぼす虞がある。
【0010】
本発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、フィン部材を内装し熱交換効率に優れた伝熱管を、容易な製造方法で低コストに得る事を可能とするものである。また、使用目的に応じて熱交換性能の異なる複数種の伝熱管を、複数の形状の異なるフィン部材を個別に形成する等の煩雑な手数を必要とせずに、熱交換性能を調整する事を可能として、製品の汎用性や発展性を高めるものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述の如き課題を解決するため、金属製の基板の一面に直交して、複数の板状フィンを互いに平行に突設し、この板状フィンを内側にして基板を円筒形に湾曲成形する事により形成した円筒形のフィン部材を、金属製の素管内に複数個直列に挿入配設し、フィン部材の円筒形とした基板の外周面を、素管の内周面に密着固定させて成るものである。
【0012】
また、フィン部材は、素管内に複数個を密着若しくは間隔を介して挿入配設しても良い。
【0013】
また、板状フィンは、貫通孔又は長尺な凹凸条を設けても良い。
【0014】
【作用】
本発明は上述の如く構成したものであり、伝熱管を得るには、金属材製の基板の一面に、この面と直交して複数の金属材製の板状フィンを、互いに平行に突設する。次に上記板状フィンを設けた一面を内側にして基板を円筒形に湾曲成形し、円筒形のフィン部材を形成する。この円筒形のフィン部材を、金属製の素管内に複数個、直列に挿入配設し、各フィン部材の基板の外周面を素管の内周面に密着固定させる事により本発明の伝熱管を形成する事ができる。
【0015】
このように、熱伝導性に優れた金属材製の素管内に、金属材製であるとともに板状フィンを複数突設して伝熱面積を多くしたフィン部材を配設しているので、伝熱管全体の伝熱特性を高める事ができる。また、板状フィンと基板とは、板状フィンの肉厚幅での面接触となっており、この接触面を介して板状フィンと基板との熱伝導を良好に行う事ができる。
【0016】
更に、フィン部材の基板は、外周面全体を素管の内周面と面接触させているので、素管と基板との熱伝導性も良好であり、基板を介して板状フィンと素管との熱伝導性を高める事ができる。また、板状フィンの存在により、伝熱管の内部を流動する流体に乱流を発生させるものとなり、伝熱管と流体との接触頻度を高めるとともに、素管の内表面付近に発生し易い境界層を剥離して、伝熱管を介した内外流体の熱交換を促進させる事ができ、熱交換性能の高い伝熱管を得る事ができる。
【0017】
また、この熱交換性能の高い伝熱管を、前述の如く、基板に板状フィンを設けて円筒形に成形したフィン部材を、素管内に複数個を挿入配設するだけで形成する事ができるので、高度な製作技術を用いる事なく容易に形成する事ができ、廉価な製品を得る事ができる。また、伝熱管は、素管内に挿入するフィン部材の挿入個数を調整する事により、熱交換性能を変化させる事ができる。
【0018】
また、前記フィン部材は、基板と板状フィンとを溶接やろう付け等により互いに接続固定する事で、流体の流動や伝熱管の振動等による板状フィンのブレや変形を防ぐ事ができる。更に、板状フィンや基板、及び基板が接触している素管の壁面のフレッティング等を抑制して、伝熱管の使用性や耐久性を向上させる事が可能となる。また、板状フィンと基板との熱伝導が、板状フィンの肉厚分での接触面だけでなく、ろう材や溶けた金属材のフィレットをも介しても行われ、双方の熱伝導性を高める事ができる。更に、フィン部材の基板の外周面と素管の内周面との間に多少の隙間を生じていても、ろう材や溶けた金属材が入り込んで隙間を閉塞するので、フィン部材と素管との熱伝導をより確実なものとする事ができる。
【0019】
また、複数のフィン部材を素管に挿入配設する際は、隣接するフィン部材を互いに密着させて配設しても良いし、隣接するフィン部材との間に間隔を設けて配設しても良い。また、間隔を介して又は密着して隣接するフィン部材同士の板状フィンが、軸方向に同一平面上に配置されるように配設すれば、伝熱管の製作が容易となる。また、隣接するフィン部材同士の板状フィンが、同一平面上に配置されないよう、互いの板状フィンの位置を円周方向に適宜ずらしながら各フィン部材を配設しても良く、この場合は流体の流れが蛇行化して、流体から伝熱管への熱伝導性が高まるとともに、煤の付着・堆積を抑えて熱交換性能の低下を抑える事が可能となる。
【0020】
また、フィン部材は、素管内に複数個を間隔を介して挿入配設した場合は、軽量な製品を得る事ができるし、フィン部材の配設位置では基板の肉厚分、流体の流通経路の断面積が狭くなり、フィン部材の非配設位置では、流通経路の断面積が大面積に復元する。このように、伝熱管内部を流動する流体が狭い流通経路から広い流通経路に流出する事により、流体の流れが乱流化し、流れの渦が多数発生する。そして、この流れの渦が伝熱管の内表面側を流動するので、フィン部材の非配設部に於いても流体の境界層が薄くなり、流体と伝熱管との熱伝達性が向上する。また、流体の乱流化により、伝熱管の内表面に付着した煤の剥離も促進され、熱伝導性の低下を抑える事ができる。
【0021】
そして、フィン部材を間隔を介して複数個配設しているので、上記流れの絞り作用と流通経路の復元による乱流化を繰り返すものとなり、伝熱管の全長に渡って熱伝達性が向上する。そして、伝熱管の内部を流動する流体と伝熱管外部の流体との熱交換が促進され、温度効率が向上するとともに、伝熱管内表面及び中央を流通する流体の全体がムラ無く均一に冷却又は加熱されるものとなる。また、温度効率が向上するだけでなく、伝熱管内を流動する流体の流動速度が衰えず、伝熱管内を流動する事による流体の圧力損失を良好に防止する事ができる。
【0022】
また、フィン部材を密着させて複数個配設した場合は、伝熱管の伝熱面積をより多くする事ができる。また、伝熱管内を流動する流体への流動抵抗が大きくなり、伝熱管内を高速で通過しようとする流体の伝熱管内での滞留時間を長くし、流体とフィン部材との接触頻度を高める事ができるので、伝熱管を介した内外流体の熱交換を効率的に行う事ができる。
【0023】
また、特許文献1〜3等の従来発明の伝熱管では、使用目的や予算に応じた様々な熱交換性能を有する伝熱管を得るのは、伝熱管毎にフィン部材を複数形成したり、複雑な製作技術を必要とする等により、コスト高となっていた。しかし本発明の伝熱管は、前述の如く、素管内に配設するフィン部材の挿入個数を変えるだけで、熱交換性能の異なる複数種の伝熱管を容易に得る事ができる。即ち、素管とフィン部材とは同一のものを使用した場合でも、素管内に密接又は間隔を狭くして多くのフィン部材を挿入配設すれば、伝熱面積を大きく増大させる事ができるとともに、流体の乱流化による境界層の剥離や板状フィンと流体の接触頻度が高まり、熱交換性のより高い伝熱管を得る事ができる。そのため、高温のEGRガスの冷却を行ったり、流動速度の高速な流体の熱交換を行う場合等に好適である。
【0024】
逆に、素管内に配設するフィン部材の数を少なくすれば、上記に示すフィン部材の密な伝熱管に比べて伝熱面積は少なくなるが、従来の伝熱管に比べた場合では伝熱面積を多くする事ができる。更に、流体の乱流化による境界層の剥離等によって、良好な熱交換性能がえられ、且つ流体の圧力損失をより少なくする事ができるとともに、より軽量で廉価な伝熱管を得る事ができる。そのため、流体の流動圧が低く流動速度が遅い場合や、熱交換量の少ない流体に用いる等に好適なものとなる。
【0025】
また、フィン部材の複数の板状フィンは、貫通孔又は長尺な凹凸条を設ければ、フィン部材の表面積がより広くなり、伝熱管の伝熱面積を更に増大させる事ができるとともに、伝熱管の内部を流動する流体の乱流化が更に促進されたり、流体の撹拌作用が生じるものとなり、境界層の剥離が促進され、伝熱管を介した内外流体の熱交換効率を高める事ができる。また、金属材に凹凸条や貫通孔を設けるのは、プレス加工等により容易に行う事ができ、伝熱管の生産性に影響を及ぼす事はないものである。
【0026】
また、上記伝熱管は、自動車のエンジン、その他内燃機関、冷暖房等、熱交換を行う何れの装置にも用いる事ができる。そして、本発明の伝熱管を、エンジンのEGRガス冷却装置、その他の多管式熱交換器に組付ければ、EGRガスの冷却を効率的に行う事ができる。従って、EGRシステム、特にディーゼルエンジンの高EGR率のクールドEGRシステムに於いて、排気ガス中のNOxを低減できるとともに、燃費の悪化も防止する事ができる。また、過剰な温度上昇を防止して、EGRバルブの劣化や機能低下も確実に防止する事ができる。
【0027】
また、高温オイルを内部に流通させて、エンジン冷却水で冷却するラジエーターへの組込式オイルクーラー等に本発明の伝熱管を組付けても良く、優れた熱交換を行って、伝熱特性の高いオイルクーラーを得る事ができる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の伝熱管を、自動車のクールドEGRシステムに於けるEGRガス冷却装置に使用した実施例を図面に於て詳細に説明する。図1は第1実施例の伝熱管の斜視図で、4枚の板状フィンを内方に突設したフィン部材を、間隔を設けて複数個金属製の素管内に挿入配設したものである。図2は、第1実施例のフィン部材を円筒形とする前の斜視図で、同一形状の4枚の板状フィンを基板に突設している。図3は、第2実施例の伝熱管の斜視図で、形成高さの異なる2種類の板状フィンを交互に突設し、合計8枚の板状フィンを内方に設設したフィン部材を、間隔を設けて複数個、金属製の素管内に配設したものである。図4は第2実施例のフィン部材を円筒形とする前の斜視図で、基板に形成高さの異なる8枚の板状フィンを交互に突設している。
【0029】
また、図5は第3実施例の円筒形とする前のフィン部材の斜視図で、両表面に波状の凹凸条を設けた4枚の板状フィンを基板に突設している。図6は、第4実施例の円筒とする前のフィン部材の斜視図で、複数の貫通孔を設けた4枚の板状フィンを基板に突設している。また、図7は本発明の伝熱管を用いたEGRガス冷却装置の概略図である。
【0030】
そして、本発明の第1実施例を図1、図2、図7を用いて詳細に説明すれば、(1)は伝熱管で、内部をEGRガスが流通可能な細径の金属製の素管(2)内に、管軸方向と平行に4枚の板状フィン(3)を内方に突設した金属製のフィン部材(4)を、間隔を介して複数個、直列に挿入配設して形成している。
【0031】
上記素管(2)及びフィン部材(4)は、銅、アルミニウム、黄銅、又はステンレス等で形成する事により、熱伝導性に優れるとともにEGRガスや凝縮液等に対する耐食性にも優れた伝熱管(1)を得る事ができる。尚、素管(2)とフィン部材(4)とは、同一の金属材で形成しても良いし、後述のろう付けや溶接を行う事が可能であれば、使用目的やコスト等に応じて、双方を異なる金属材で形成しても良い。
【0032】
また、伝熱管(1)の耐食性の信頼性を更に高めるため、前述の如き金属材に、亜鉛、銅、錫、錫−亜鉛合金、ニッケル、亜鉛−ニッケル合金等から成る1層の犠牲腐食性のメッキ処理を行い、必要に応じクロメート被膜等を施しても良いし、金属材の外表面にニッケルをメッキし、このニッケルの外周面に更に亜鉛−ニッケル合金をメッキする等、2層以上のメッキ処理を行っても良い。また、これらのメッキ処理等が予め施された量産品の素管(2)やフィン部材(4)用の金属板を使用する事もでき、メッキ処理等の製作の手間を省いて、伝熱管の生産性を向上させる事ができる。
【0033】
上記伝熱管(1)の製造のため、まずフィン部材(4)として、前記金属材製の平板を用いて長方形の基板(5)を形成するが、この基板(5)は、長手方向の形成長さを、素管(2)の内周面の円周長よりもやや短尺に形成している。そして、基板(5)の一面に、図2に示す如く、基板(5)の幅方向の両側辺と平行で、且つ基板(5)の一面と直交する4枚の板状フィン(3)を互いに平行に突設する事により、フィン部材(4)を形成している。この4枚の板状フィン(3)は、後述の如く基板(5)を円筒形とした際に、基板(5)の内周面から内方に略一定間隔で放射状に各板状フィン(3)が突出されるような間隔を設けて基板(5)に設けるとともに、各板状フィン(3)の一側端面全体が基板(5)の表面に面接触させて配設する。
【0034】
また、板状フィン(3)と基板(5)とをろう付けして、板状フィン(3)の固定性を高めるとともに、前記板状フィン(3)と基板(5)との面接触を確実として、双方の熱伝導性を高めている。更に、このろう付けにより、板状フィン(3)と基板(5)との熱伝導面積が、板状フィン(3)の肉厚分の接触面積に加えて、ろう材のフィレットの肉厚の面積分、増大させる事ができ、板状フィン(3)と基板(5)との熱伝導性をより高める事ができる。また、ろう付けの際は、板状フィン(3)と基板(5)との接触面の一方又は双方にろう材をメッキしても良いし、板状フィン(3)と基板(5)の全体にろう材をメッキして行っても良いし、他の方法で行っても良い。また、ろう付けではなく、溶接により板状フィン(3)と基板(5)とを接続固定するものであっても良く、フィン部材(4)の構造が簡易であるから、ろう付け及び溶接の何れの場合も作業を容易に行う事ができる。
【0035】
次に、図2に示す如きフィン部材(4)の基板(5)を、板状フィン(3)を突設した一面を内側にして、素管(2)の内径と略同一な外径とする円筒形に成形する。そして、この円筒形としたフィン部材(4)を複数個、素管(2)内に間隔を設けて直列に挿入配設する。ところで、フィン部材(4)は、基板(5)の長手方向の形成長さを素管(2)の内周面の円周長よりもやや短尺としているので、基板(5)の幅方向の一対の両端縁を付合わせて円筒形としたフィン部材(4)の外径は、素管(2)の内径よりもやや小径となる。そのため、この素管(2)よりも小径とした状態でフィン部材(4)を素管(2)内に挿入する事により、前記挿入配設作業を円滑且つ容易に行う事ができる。また、挿入配設後は、基板(5)の復元力が作用し、フィン部材(4)の外径が拡開する事で、フィン部材(4)の外周面を素管(2)の内周面に密着固定させる事ができ、フィン部材(4)の素管(2)内での固定性が得られるものとなる。
【0036】
そして、この固定性を更に高めるため、素管(2)の内周面とこれに密着するフィン部材(4)の外周面とを溶接又はろう付けにより接続固定する。このフィン部材(4)の素管(2)への固定性の向上により、EGRガスの流動や伝熱管(1)の振動等による板状フィン(3)のブレや変形、この板状フィン(3)が接触している基板(5)、及び基板(5)が接触している素管(2)の壁面のフレッティング等を抑制して、伝熱管(1)の使用性や耐久性を向上させる事が可能となる。また、フィン部材(4)の基板(5)の外周面と素管(2)の内周面との間に、多少の隙間を生じていた場合でも、ろう材や溶けた金属材が隙間に入り込んで隙間を閉塞するので、板状フィン(3)と素管(2)との熱伝導性及び固定性を高める事ができる。
【0037】
また、ろう付けによりフィン部材(4)と素管(2)とを接続固定する場合は、素管(2)へのフィン部材(4)の挿入前に、予めフィン部材(4)の基板(5)の少なくとも長尺側の両側縁、或いは基板(5)の外表面全体にろう材をメッキしておく。
また、このろう材のメッキは、好ましくは作業が容易な事から、フィン部材(4)の全体、即ち基板(5)及び板状フィン(3)の全表面に施しても良いし、素管(2)の内周面にろう材をメッキしても良い。また、フィン部材(4)の形成素材である金属板にろう材をクラッドし、このクラッド材を加工してフィン部材(4)を形成しても良い。
【0038】
また、基板(5)の両側縁にろう材付着用のバインダーを塗布したフィン部材(4)を素管(2)に挿入後、該素管(2)内にパウダー状のろう材を供給しても良い。他のろう付け手段として、基板(5)の長手方向の両側縁にろう材ペーストを供給したフィン部材(4)を素管(2)へ挿入しても良いし、素管(2)内にフィン部材(4)を挿入後、該素管(2)内にろう材ペーストを供給しても良い。そして、伝熱管(1)の製作時にろう付けを行っても良いし、或いは伝熱管(1)を後述のEGRガス冷却装置(10)に組付け後に、ろう付けを行っても良い。
【0039】
上述の如く形成した伝熱管(1)では、4枚の板状フィン(3)を内方に突設したフィン部材(4)を複数内装する事により伝熱面積が増大し、伝熱管(1)の内部空間(6)を流動するEGRガスの熱を、素管(2)の内表面だけでなく板状フィン(3)に効率的に伝熱する事ができる。また、この板状フィン(3)に伝達された熱は、板状フィン(3)が面接触する基板(5)に伝達された後、この基板(5)と素管(2)との接触面を介して素管(2)の内表面に伝達される。そして、これらのEGRガスからの熱が素管(2)の外表面を介して外部を流動する冷媒液に効率的に放熱されるものとなる。
【0040】
また、EGRガスの流通経路である内部空間(6)内に、複数の板状フィン(3)が突出する事により、EGRガスに乱流を発生させるものとなり、フィン部材(4)の配設位置での境界層を剥離して、伝熱管(1)を介したEGRガスと冷媒液との熱交換を促進させる事ができる。更に、本実施例では、素管(2)内に複数のフィン部材(4)を間隔を設けて配設している。そのため、フィン部材(4)の配設位置では基板(5)の肉厚分、内部空間(6)の断面積が狭くなり、フィン部材(4)の非配設位置では、内部空間(6)の断面積が大面積に復元する。
【0041】
このように、伝熱管(1)内部を流動するEGRガスが狭い空間から広い空間に流出する事により、EGRガスの流れの乱流化が促進され、流れの渦が多数発生する。そして、この流れの渦が素管(2)の内表面側を流動するので、フィン部材(4)の非配設部に於いてもEGRガスの境界層が薄くなり、EGRガスと素管(2)との熱伝導性が向上する。そして、素管(2)内にフィン部材(4)を間隔を介して複数個配設しているので、上記流れの絞り作用と内部空間(6)の大面積への復元による乱流化を繰り返すものとなり、伝熱管(1)の全長に渡って熱伝導性が向上する。
【0042】
従って、伝熱管(1)の内部空間(6)を流動するEGRガスと伝熱管(1)の外部を流動する冷媒液との熱交換が促進され、温度効率が向上するとともに、伝熱管(1)の内表面側及び中央側を流通するEGRガスの全体がムラ無く均一に冷却又は加熱されるものとなる。また、温度効率が向上するだけでなく、伝熱管(1)内を流動するEGRガスの流動速度が衰えず、伝熱管(1)内を流動する事による流体の圧力損失を良好に防止する事ができる。更に、EGRガスの乱流化により、素管(2)の内表面に付着した煤の剥離も促進され、熱伝導性の低下を良好に抑える事ができる。
【0043】
そして、上述の如き伝熱管(1)を組付けたEGRガス冷却装置(10)は、図7に示す如く、円筒形の胴管(11)の両端にチューブシート(12)を一対接続し、内部を密閉可能としている。そして、一対のチューブシート(12)間に、本実施例の伝熱管(1)を複数本、チューブシート(12)を貫通して接続配置している。また、胴管(11)の両端には、一対のボンネット(16)を接続し、各ボンネット(16)の中央にEGRガスの流入口(14)と流出口(15)とを設けている。
【0044】
更に、胴管(11)の外周には、エンジン冷却水や冷却風等の冷却媒体の導入路(17)と導出路(18)を設ける事により、一対のチューブシート(12)で仕切られた気密空間内を、冷却媒体が流通可能な熱交換部(13)としている。また、この熱交換部(13)内に、複数の支持板(20)を接合配置し、この支持板(20)に設けた挿通孔(21)に、伝熱管(1)を挿通する事により、バッフルプレートとして伝熱管(1)を安定的に支持するとともに、熱交換部(13)内を流動する冷却媒体の流れを蛇行化している。
【0045】
上記EGRガス冷却装置(10)に於いて、エギゾーストマニホールド側から流入口(14)を介して高温化したEGRガスが胴管(11)内に導入されると、このEGRガスは胴管(11)内に複数配置した伝熱管(1)内に流入する。この伝熱管(1)を配置した熱交換部(13)では、予め伝熱管(1)の外部にエンジン冷却水等の冷却媒体を流通しているので、伝熱管(1)の外表面を介してEGRガスと冷却媒体とで熱交換が行われる。
【0046】
この伝熱管(1)は、前述の如く、フィン部材(4)の配設により伝熱面積を増大させるとともに、EGRガスの流れの絞り作用と内部空間(6)の大面積への復元によるEGRガスの乱流化を生じさせる事で、フィン部材(4)と素管(2)との熱伝導性を高めている。そのため、素管(2)の内表面側のEGRガスの熱だけでなく、中央付近を流動するEGRガスの熱も、フィン部材(4)を介して素管(2)の内表面に伝熱された後、素管(2)の外表面を介して冷却媒体に放熱され、従来に比べてEGRガスへの優れた冷却効果が得られる。
【0047】
このように良好に冷却されたEGRガスは、流出口(15)を介してEGRガス冷却装置(10)から流出し、インテークマニホールド側に戻される。従って、EGRバルブの高温化を防止して、EGRバルブの優れた機能性と耐久性を得る事ができるとともに、吸入空気の温度を低下するのでNOxの低減と良好な燃費が可能となる。また、伝熱管(1)内でのEGRガスの乱流化により、EGRガスに混入する煤の剥離が促進されて、大きな塊となるのを防ぐ事ができ、目詰まり等に起因する冷却性能の劣化やエンジントラブルを防ぐ事も可能となる。
【0048】
上述の如く、本発明の同一形状の伝熱管(1)を複数配設したEGRガス冷却装置(10)では、EGRガスへの優れた冷却効果が得られる。しかしながら、EGRガス冷却装置(10)では、装置内に流入するEGRガスは、流入口(14)から断面積の大きな胴管(11)内に導入され、外方向に拡散しながら伝熱管(1)方向に流動する。そのため、胴管(11)の中央付近ではEGRガスは高圧状態であり、この中央付近の伝熱管(1)内に高速に流入し易いが、流入口(14)からの距離が大きくなる程、中央付近に比べEGRガスの圧力が低く流動速度も遅くなっていくため、外方に配置した伝熱管(1)ではEGRガスが流入しにくいものとなる。その結果、胴管(11)内の中央付近の伝熱管(1)では交換熱量が多く効率的な熱交換が行われるが、中央から離れるに従って伝熱管(1)での交換熱量が少なくなり、EGRガス冷却装置(10)の優れた熱交換機能を十分に発揮できなくなる場合がある。
【0049】
この不具合を解消するため、EGRガスに対する流動抵抗の異なる複数の伝熱管(1)を形成し、図7の如きEGRガス冷却装置(10)の胴管(11)内に於いて、EGRガスの流入の難易に対応して、流動抵抗の異なる伝熱管(1)を配設している。このような伝熱管(1)の配設とする事により、胴管(11)内の全ての伝熱管(1)に均一にEGRガスを通過させて、EGRガスの効率的な冷却を可能とするものである。
【0050】
この、流動抵抗の調整は、フィン部材(4)の板状フィン(3)の枚数を増減しても良いが、本実施例では素管(2)内に挿入配設するフィン部材(4)の個数を増減する事によって伝熱管(1)のEGRガスに対する流動抵抗を調整している。そして、流入口(14)に近い胴管(11)の中央付近では、EGRガスの圧力が高く伝熱管(1)内に流入し易いので、フィン部材(4)の挿入個数を多くして、流体への流動抵抗を大きくした伝熱管(1)を配設している。また、EGRガスの流入口(14)から離れる程、EGRガスの圧力が小さくなって伝熱管(1)内に流入しにくくなるので、流入口(14)からの距離に応じてフィン部材(4)の挿入個数を少なくして、流動抵抗を小さくした伝熱管(1)を各々配設する。
【0051】
上述の如く伝熱管(1)を配設したEGRガス冷却装置(10)では、まず流入口(14)から、断面積の大きなボンネット(16)内にEGRガスが導入されると、EGRガスの殆どは胴管(11)の中央付近に配設した伝熱管(1)内に流入して高速に通過しようとする。しかし、この中央付近の伝熱管(1)は、多数のフィン部材(4)を内装しているので、EGRガスへの流動抵抗が大きく、伝熱管(1)へのEGRガスの流入量が制限される。この、中央付近の伝熱管(1)へのEGRガスの流入が制限された分、EGRガスがボンネット(16)内を径方向に流動するものとなり、流入口(14)から離れた外方の伝熱管(1)にもEGRガスが流入し易いものとなる。従って、胴管(11)内の全ての伝熱管(1)に、より均一にEGRガスを流入させる事ができる。
【0052】
そして、胴管(11)の中央付近に配設した伝熱管(1)では、多くのフィン部材(4)を内装しているので伝熱面積を大きく増大させる事ができ、板状フィン(3)によるEGRガスの乱流化によって、EGRガスと板状フィン(3)との接触頻度を高める事ができる。また、EGRガスの乱流化による境界層の剥離等により、伝熱管(1)の熱伝導性が向上して、伝熱管(1)を介したEGRガスと冷却媒体との熱交換を効率的に行う事ができる。
【0053】
一方、胴管(11)の外方に配設した伝熱管(1)では、フィン部材(4)の挿入個数を少なくして、EGRガスの流動抵抗を小さくしているから、伝熱管(1)内を流動するEGRガスの圧力損失の少ない流動が可能となる。また、フィン部材(4)の挿入個数が少なくても、フィン部材(4)の存在により従来に比べて伝熱面積を多くする事ができ、フィン部材(4)と素管(2)との熱伝導性にも優れている。更に、フィン部材(4)の配設位置での流れの絞り作用とフィン部材(4)の非配設位置での内部空間(6)の大面積への復元の繰り返しにより、EGRガスの乱流化も促進され、伝熱管(1)の全長に渡って熱伝達性が向上する。従って、外方に配設した伝熱管(1)に於いても、EGRガスと冷媒液との交換熱量が多く、伝熱管(1)としての熱交換機能を十分に発揮する事ができる。
【0054】
このように、胴管(11)内に配設した何れの伝熱管(1)に於いても、EGRガスと冷媒液との熱交換が効率的に行われるので、EGRガス冷却装置(10)に導入されたEGRガス全体が、ムラ無く均一に冷却されるものとなり、熱交換性能を十分発揮する事が可能な高性能のEGRガス冷却装置(10)を得る事ができる。
【0055】
そして、従来技術の伝熱管では、素管の一端から他端までの長尺な螺旋状のフィン部材を配設したり、素管の壁面を折り畳んで平板状のフィン部材を内方に突設している。そのため、上述の如き流体の流動抵抗の異なる複数種の伝熱管を形成する際には、フィン部材の螺旋のピッチを変えて形成したり、素管の折り畳み回数を増やしてフィン部材の数を多くする等の必要があり、製作に手間やコストがかかって実施が困難である。しかし、本発明では前述の如く、素管(2)内に挿入配設するフィン部材(4)の個数を変えるだけで、流動抵抗の異なる伝熱管(1)を容易に形成する事ができ、フィン部材(4)を同一形状で大量生産する事が可能である。しかも素管(2)へのフィン部材(4)の配設作業も、高度な製作技術を必要とする事なく、容易に行う事が可能であるので、本発明の伝熱管(1)は、廉価な実施が可能となる。
【0056】
また、上記第1実施例の伝熱管(1)では、素管(2)内に配設するフィン部材(4)は、基板(5)の内周面から軸中心方向に同一形状の4枚の板状フィン(3)を突設しているが、他の異なる第2実施例の伝熱管(1)では、図3に示す如く、フィン部材(4)に形成高さの異なる8枚の板状フィン(3)を突設している。このようなフィン部材(4)を形成するには、図4に示す如く、素管(2)の内周面の円周長よりも、長手方向の長さをやや短尺とした基板(5)の一面に、第1実施例と同形の板状フィン(3)を4枚と、これらと形成幅と形成長さは同一であるが形成高さが低い板状フィン(3)を4枚とを、間隔を介して交互に接続固定している。この高低差のある板状フィン(3)を設けた基板(5)を、円筒形に成形して得たフィン部材(4)を、素管(2)内に複数個、間隔を介して挿入配設している。
【0057】
また、この場合も、フィン部材(4)の外径を縮径して素管(2)の内径よりも小径としながら挿入する事により、作業が容易となる。そして、配設完了後は、基板(5)の復元力によりフィン部材(4)の外周面が素管(2)の内周面に弾性的に密着固定されるので、フィン部材(4)の固定性が得られる。また、各フィン部材(4)の板状フィン(3)と基板(5)、及び基板(5)の外周面と素管(2)の内周面とを、溶接やろう付け等により接続する事により、フィン部材(4)と素管(2)との固定性及び熱伝導性を高める事が可能となる。
【0058】
上述の如く形成した第2実施例の伝熱管(1)では、高低差のある8枚の板状フィン(3)を突設したフィン部材(4)を内装する事により、伝熱管(1)の伝熱面積を更に増大させる事ができるとともに、EGRガスの乱流化も更に促進される。そして、フィン部材(4)を介して、素管(2)に効率的にEGRガスの熱を伝達する事ができる。更に、フィン部材(4)の配設位置での流れの絞り作用とフィン部材(4)の非配設位置での内部空間(6)の大面積への復元の繰り返しにより、EGRガスの乱流化を繰り返すものとなり、伝熱管(1)の全長に渡って熱伝達性が向上する。従って、伝熱管(1)を介してEGRガスと冷却媒体との熱交換を効率的に行う事が可能となる。
【0059】
また、上記第1、第2実施例では、フィン部材(4)の基板(5)の長手方向の形成長さを、素管(2)の内周面の円周長よりもやや短尺としているので、フィン部材(4)の外周面を弾性復元力により素管(2)の内周面に密着固定させた際に、図1、図3に示す如く、フィン部材(4)の幅方向の互いの両端縁との間に隙間を生じる。このような隙間を生じていても、フィン部材(4)の外周面と素管(2)の内周面とをろう付けや溶接により接続固定しているので、固定性に何等支障はないし、ろう材や金属材の充填により、この隙間を閉塞する事も可能である。
【0060】
ここで、他の異なる実施例としてフィン部材(4)の基板(5)の長手方向の形成長さを、素管(2)の内周面の円周長と略同一に形成しても良い。このようなフィン部材(4)であっても、基板(5)を円筒形に湾曲成形しただけであるから、基板(5)の幅方向の両側を積層する事でフィン部材(4)の外径を縮径して、素管(2)の内径よりも小径とする事ができ、素管(2)への挿入作業を容易に行う事ができる。この挿入配設完了後は、基板(5)の復元力によりフィン部材(4)の外周面が素管(2)の内周面に密着固定するとともに、フィン部材(4)の幅方向の互いの両端縁が隙間を生じる事なく当接するものとなり、フィン部材(4)の安定した固定性が得られるだけでなく、外観も良好なものとなる。
【0061】
また、上記第1、第2実施例の伝熱管(1)では、板状フィン(3)の表面に波状等の凹凸や貫通孔等を何等設けていない平滑なものとしているが、他の異なる第3実施例では、図5に示す如く、板状フィン(3)の両表面に、管軸方向に平行な複数の波状の凹凸条(7)を設けている。この凹凸条(7)の形成により、フィン部材(4)の伝熱面積を更に増大させる事ができ、伝熱管(1)の熱伝導性を向上させて、優れた熱交換性能を得る事ができる。また、このような凹凸条(7)は、プレス加工等により金属材でも簡単に設ける事ができ、伝熱管(1)の容易な製作が可能となる。
【0062】
また、図6に示す他の異なる第4実施例では、板状フィン(3)に複数の円形の貫通孔(8)を開口している。このような貫通孔(8)の開口によっても、フィン部材(4)の伝熱面積をより増大させる事ができるとともに、EGRガス等の流体が貫通孔(8)を通過する事により、乱流化が生じる。更に、フィン部材(4)にエッヂ部が多くなり、流体の乱流化を更に促進して、境界層の剥離により熱伝導効率を向上させる事ができ、熱交換性能に優れた伝熱管(1)を得る事ができる。また、この貫通孔(8)の開口作業も、プレス加工等により容易に行う事ができる。また、貫通孔(8)は、円形ではなく、楕円形、長円形、三角形、四角形、その他の多角形等の形状で開口するものであっても良い。
【0063】
また、上記第1〜第4実施例では、基板(5)に突設する複数の板状フィン(3)を、基板(5)の幅方向の両側辺と平行に配設して、板状フィン(3)を流体の流動方向と平行に配置している。しかし、他の異なる実施例として、板状フィン(3)を、基板(5)の幅方向の両側辺に対して斜めに配設する事により、流体の流動方向に対して板状フィン(3)をテーパー状に配設しても良い。また、幅方向に弧状に湾曲形成した板状フィン(3)を基板(5)に設ける事により、流体の流動方向に対して板状フィン(3)を弧状に配設するものであっても良い。また、板状フィン(3)の先端側を基板(5)方向に弧状に湾曲形成したり、斜め方向に捻り形成しても良い。また、第3実施例では、板状フィン(3)の波状の凹凸条(7)は、管軸方向即ち幅方向に平行なものとしているが、板状フィン(3)の高さ方向に平行な波状の凹凸条(7)を設けたものであっても良い。また、矩形、V字形、その他の凹凸条(7)等を板状フィン(3)に設けるものであっても良い。
【0064】
また、上記各実施例では、EGRガス冷却装置(10)に本発明の伝熱管(1)を組付けたものとして説明しているが、他の異なる多管式熱交換器に本発明の伝熱管(1)を用いても良く、優れた熱交換性能を得る事ができる。また、エンジンオイル、ミッションオイル、ATF、パワステオイル等の高温オイルを内部に流通させて、この高温オイルをエンジン冷却水で冷却するラジエーターへの組込式オイルクーラーに、本発明の伝熱管(1)を組付ける事もできる。そして、本発明の伝熱面積が広く且つ熱伝導性の高い伝熱管(1)を介して、伝熱管(1)内を流通するエンジン冷却水と伝熱管(1)外部を流通する被冷却オイルとの熱交換が促進され、被冷却オイルの冷却を均一且つ効率的に行えるものである。
【0065】
【発明の効果】
本発明は上述の如く構成したもので、熱伝導性に優れる金属製の素管内に、複数の板状フィンを内方に突設した金属製のフィン部材を複数個配設しているので、伝熱管の伝熱面積を増大させる事ができる。また、この板状フィンの突設により、伝熱管内を流動する流体の乱流化を促進して、素管の内表面付近に発生し易い境界層を剥離して、伝熱管を介した内外流体の熱交換を促進させる事ができ、熱交換性能の高い伝熱管を得る事ができる。
【0066】
また、板状フィンを突設した基板を円筒形に成形して形成したフィン部材を、素管内に複数配設するだけで簡易に製作可能で、熱交換性能に優れる製品を廉価に提供する事が可能となる。更に、素管内へのフィン部材の挿入個数を調整する事により、伝熱管の熱交換性能を調整する事が可能となる。そして、この熱交換性能に優れる伝熱管を、多管式熱交換器や、ラジエーター組込式オイルクーラー等に使用する事により、伝熱特性の高い製品を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の伝熱管を示す斜視図。
【図2】第1実施例のフィン部材の斜視図で、4枚の板状フィンを基板に突設した状態を示す。
【図3】本発明の第2実施例の伝熱管を示す斜視図。
【図4】第2実施例のフィン部材の斜視図で、形成高さの異なる8枚の板状フィンを基板に突設した状態を示す。
【図5】第3実施例のフィン部材の斜視図で、両表面に凹凸条を設けた4枚の板状フィンを基板に突設した状態を示す。
【図6】第4実施例のフィン部材の斜視図で、複数の貫通孔を設けた4枚の板状フィンを基板に突設した状態を示す。
【図7】本発明の伝熱管を組付けたEGRガス冷却装置の一部切り欠き平面図。
【符号の説明】
2 素管
3 板状フィン
4 フィン部材
5 基板
7 凹凸条
8 貫通孔
Claims (3)
- 金属製の基板の一面に直交して、複数の板状フィンを互いに平行に突設し、この板状フィンを内側にして基板を円筒形に湾曲成形する事により形成した円筒形のフィン部材を、金属製の素管内に複数個直列に挿入配設し、フィン部材の円筒形とした基板の外周面を、素管の内周面に密着固定させる事を特徴とするフィン部材を内装した伝熱管。
- フィン部材は、素管内に複数個を密着若しくは間隔を介してして挿入配設した事を特徴とする請求項1のフィン部材を内装した伝熱管。
- 板状フィンは、貫通孔又は長尺な凹凸条を設けた事を特徴とする請求項1のフィン部材を内装した伝熱管。
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