JP2004316688A - 油圧装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造コストを低く抑えながら、油圧系から空気を可及的速く排出することができるようにする。
【解決手段】シリンダの内周面における使用時にはピストン(第2のピストン30)の移動範囲外であってかつ前記ピストンの移動可能範囲内に連通路(連通溝41)を開口させる。この連通路は、前記ピストンが使用時の移動範囲外に移動した状態でピストンによって画成される二つの油室どうしを互いに連通させる。
【選択図】 図3
【解決手段】シリンダの内周面における使用時にはピストン(第2のピストン30)の移動範囲外であってかつ前記ピストンの移動可能範囲内に連通路(連通溝41)を開口させる。この連通路は、前記ピストンが使用時の移動範囲外に移動した状態でピストンによって画成される二つの油室どうしを互いに連通させる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピストンによって画成された二つの油圧系を有する油圧装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の油圧装置としては、例えば特開平8−132846号公報に開示されたものがある。この公報に示された油圧装置は、車両の油圧式緩衝装置で、車体に対をなすように設けられた第1および第2の油圧式緩衝器と、これらの油圧式緩衝器の油室に接続された中間ユニットとによって構成されている。
【0003】
前記油圧式緩衝器は、シリンダ内に絞り付きピストンが嵌合され、このピストンによって画成された二つの油室の一方に前記中間ユニットが接続されている。この油圧式緩衝器内の作動油は、ピストンロッドにおけるシリンダ内に位置する部分の体積増減分に相当する量だけシリンダに対して出入りする。
【0004】
前記中間ユニットは、シリンダと、このシリンダ内を第1の油室と第2の油室とに画成するフリーピストンとを備えている。前記第1の油室は前記第1の油圧式緩衝器に接続され、前記第2の油室は前記第2の油圧式緩衝器に接続されている。また、これらの第1および第2の油室と、フリーピストンとは、このフリーピストンが移動したときの第1の油室の容積変化と第2の油室の容積変化とが互いに一致するように形成されている。
フリーピストンは、第1の油室と第2の油室とを連通するように絞りが設けられている。この絞りは、板ばねからなる弁体によって油通路の開口端が開閉される構成が採られている。
【0005】
このように構成された従来の油圧式緩衝装置においては、中間ユニットの第1の油室と第2の油室との圧力差を相殺するように前記フリーピストンの絞りを作動油が流れ、このように作動油が絞りを通過することによって減衰力が発生する。この絞りは、第1および第2の油圧式緩衝器の絞りに較べて少ない流量で相対的に大きい減衰力が発生するように、作動油の流量に対して発生する減衰力の割合が大きくなるように形成されている。
【0006】
この油圧式緩衝装置の組立てるためには、先ず、第1および第2の油圧式緩衝器を中間ユニットに接続し、その後、これらの油圧機器の内部に作動油を充填する。油圧系内に作動油を充填するにあたっては、最初に油圧系内の空気を真空ポンプにより排出することによって油圧系内を所定の真空度になるように減圧し、その後、油圧系内に作動油を圧力を加えながら充填する。従来の油圧式緩衝装置においては、油圧系の全域に一度に作動油を充填することができるように、油圧系の一箇所に空気の排出と作動油の充填を行うためのポンプ接続口が設けられている。
なお、本出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に密接に関連する先行技術文献を出願時までに見付け出すことはできなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−132846号公報(図1、図2)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したように構成された従来の油圧式緩衝装置においては、油圧系内から空気を排出するときに所定の真空度に達するまでに時間が長くかかるという問題があった。これは、排出作業中における空気は、中間ユニット内の絞りを微少量ずつしか通過できないからである。油圧系内の空気の残存量が所定量以下に低減されていなければ油圧装置として機能しなくなるおそれがあるから、空気を排出する作業を途中で停止することはできない。また、中間ユニットの第1の油室を有する油圧系と、第2の油室を有する油圧系との二箇所から空気を排出することも考えられるが、このようにするとポンプ接続口を形成する部材が増大し、製造コストが高くなってしまう。
【0009】
本発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、製造コストを低く抑えながら、油圧系内から空気を可及的速く排出することができるようにすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明に係る油圧装置は、シリンダの内周面における使用時には前記ピストンの移動範囲外であってかつ前記ピストンの移動可能範囲内に連通路を開口させ、この連通路は、ピストンが使用時の移動範囲外に移動した状態でピストンによって画成される二つの油室どうしを互いに連通させる構成が採られているものである。
【0011】
本発明によれば、ピストンにより画成されたシリンダ内の一方の油室と他方の油室は、ピストンが使用時の移動範囲外に移動することによって連通路を介して互いに連通される。
【0012】
請求項2に記載した発明に係る油圧装置は、請求項1に記載した発明に係る油圧装置において、連通路を連通溝によって形成してなり、この連通溝は、シリンダの内周面における使用時にはピストンの移動範囲外であってかつ前記ピストンの移動可能範囲内の位置に、ピストンのシール部より軸線方向の長さが長くなるように形成されているものである。
【0013】
この発明によれば、ピストンにより画成されたシリンダ内の一方の油室と他方の油室は、ピストンのシール部が連通路と交差することによって、この連通溝を介して互いに連通される。
【0014】
請求項3に記載した発明に係る油圧装置は、請求項2に記載した発明に係る油圧装置において、連通溝は、シリンダを成形する型によって成形された凹溝であるものである。
この発明によれば、専ら連通溝を形成する作業が不要である。
【0015】
請求項4に記載した発明に係る油圧装置は、請求項2に記載した発明に係る油圧装置において、連津溝は機械加工によって形成された凹溝であるものである。
この発明によれば、既存の油圧装置にも本発明を簡単に適用することができる。
【0016】
請求項5に記載した発明に係る油圧装置は、請求項2に記載した発明に係る油圧装置において、連通溝の開口幅は、使用時のピストンの移動範囲から外側に向かうにしたがって次第に広くなるように形成されているものであり、
請求項6に記載した発明に係る油圧装置は、請求項2に記載した発明に係る油圧装置において、連通溝の深さは、使用時のピストンの移動範囲から外側に向かうにしたがって次第に深くなるように形成されているものであり、請求項7に記載した発明に係る油圧装置は、請求項2に記載した発明に係る油圧装置において、連通溝の開口幅は、使用時のピストンの移動範囲から外側に向かうにしたがって次第に広くなるように形成されているとともに、連通溝の深さは、使用時のピストンの移動範囲から外側に向かうにしたがって次第に深くなるように形成されているものである。
【0017】
請求項5ないし請求項7に記載した発明によれば、使用時に何らかの理由によりピストンが連通溝と交差する位置まで移動したとしても、このときには、連通溝の最も開口幅が狭い部位から連通溝が開くようになるから、連通溝を通る作動油の量が徐々に増大するようになる。
【0018】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る油圧装置の一実施の形態を図1ないし図4によって詳細に説明する。
図1は本発明に係る油圧装置の正面図、図2は中間ユニットの断面図、図3は要部を拡大して示す断面図、図4は図3における第2のシリンダのIV−IV線断面図である。
【0019】
これらの図において、符号1で示すものは、この実施の形態による車両用油圧式緩衝装置である。この油圧式緩衝装置1は、自動車の前輪用懸架装置(図示せず)に用いられるもので、車体の左右方向に対をなすように設けられた第1および第2の油圧式緩衝器2,3と、これらの油圧式緩衝器2,3に接続された中間ユニット4とから構成されている。
【0020】
前記二つの油圧式緩衝器2,3は、シリンダ5内がピストン6によって上部油室7と下部油室8とに画成され、内部が作動油で満たされている。前記ピストン6は、前記上部油室7と前記下部油室8とを連通するように絞り9が設けられている。
また、前記第1および第2の油圧式緩衝器2,3は、シリンダ5の下端部が前輪懸架用リンク(図示せず)などの車体に対して上下する部位に枢支され、ピストンロッド10の上端部が自動車の車体(図示せず)に装着される状態で前輪側と車体側との間に介装されている。これらの油圧式緩衝器2,3のうち、車体右側(図1においても右側)に位置する第1の油圧緩衝器2の下部油室8と、車体左側に位置する第2の油圧式緩衝器3の下部油室8は、それぞれピストンロッド10内に形成された作動油通路11と、ピストンロッド10の上端部に接続された第1および第2の油圧管12,13とを介して後述する中間ユニット4の第1の油室15と第2の油室16とに連通されている。
【0021】
前記第1の油圧式緩衝器2と中間ユニット4とを接続する第1の油圧管12の途中には、ポンプ接続用のジョイント17が介装されている。このジョイント17は、油圧系内から空気を排出したり油圧系内に作動油を充填するときに真空ポンプ(図示せず)や作動油供給用ポンプ(図示せず)を接続するためのもので、前記ポンプを接続する接続部材17aと、油圧系内とポンプ側とを連通する通路を開閉する開閉弁(図示せず)とが設けられている。
【0022】
前記中間ユニット4は、図2に示すように、有底円筒状を呈するように形成された第1のシリンダ21と、この第1のシリンダ21の開口部に嵌合された第2のシリンダ22と、これら両シリンダ21,22の内部に移動自在に嵌合されたフリーピストン23などによって構成されている。
前記第1のシリンダ21は、後述するフリーピストン23の第1のピストン24によって内部が二室に画成されている。この実施の形態では、図2において、第1のピストン24より下側に形成された第1のシリンダ21内の空間25には、高圧なN2ガスが封入され、第1のピストン24より上側に形成された第1の油室15には作動油が充填されている。
【0023】
前記第2のシリンダ22は、内径が第1のシリンダ21の内径より小さくなるように形成され、前記第1のシリンダ21と同一軸線上に位置するように第1のシリンダ21に嵌合されている。この実施の形態による第2のシリンダ22は、鋳造によって所定の形状に成形され、鋳造後に機械加工によって内周面が仕上げられている。これら両シリンダ21,22の嵌合部には、作動油の漏洩を阻止するためにOリング26が介装されている。また、第2のシリンダ22は、中間ユニット4を図示していない車体側の支持用ブラケットなどに固定するための取付用フランジ22a,22bが一体に形成されるとともに、前記第1および第2の油圧管12,13が取付けられるねじ孔27,28が設けられている。第1の油圧管12が取付けられるねじ孔27は、第2のシリンダ22に穿設された作動油通路29を介して第1のシリンダ21内の前記第1の油室15に接続されている。また、第2の油圧管13が取付けられるねじ孔28は、前記第2の油室16における第1のシリンダ21とは反対側の端部に連通されている。
【0024】
前記フリーピストン23は、有底円筒状を呈するように形成された第1のピストン24と、この第1のピストン24の底部(図1および図2においては上端部)に同一軸線上に位置するように取付けられた第2のピストン30とから構成されている。前記第1のピストン24は、開口側の端部に他の部分より相対的に外径が大きくなるようにピストン本体24aが一体に形成されている。このピストン本体24aは、外周部にOリング31とシールリング32とが装着され、前記第1のシリンダ21に移動自在に嵌合されている。
【0025】
前記第2のピストン30は、図2および図3に示すように、前記第1のピストン24の底部に突設された支柱33に固定用ボルト34によって固定されて前記第2のシリンダ22に移動自在に嵌合されており、前記第2のシリンダ22の内部を前記第1の油室15と第2の油室16とに画成している。
この実施の形態による第2のピストン30は、円板状を呈するように形成され、外周部にシールリング35が装着されている。この第2のピストン30によって本発明でいうピストンが構成され、シールリング35によって本発明でいうシール部が構成されている。この第2のピストン30には、前記第1の油室15と第2の油室16とを連通するように絞り36が設けられている。
【0026】
この絞り36は、第2のピストン30を貫通するように形成された第1の連通路37および第2の連通路38と、これらの連通路37,38に介装された逆止弁39とから構成されている。この逆止弁39は、円板状を呈するように形成された板ばねからなる弁体39aを備え、この弁体39aによって第1の連通路37および第2の連通路38の開口端部を開閉するものである。前記弁体39aは、軸心部が第1のピストン24の支柱33に嵌合され、第2のピストン30とともに固定用ボルト34によって第1のピストン24に固定されている。
【0027】
前記第1の連通路37に設けられた逆止弁39は、第1の油室15から第2の油室16へのみ作動油が流れるように形成され、第2の連通路38に設けられた逆止弁39は、第2の油室16から第1の油室15へのみ作動油が流れるように形成されている。
このフリーピストン23と、前記第1および第2の油室16とは、フリーピストン23が移動したときの第1の油室15の容積変化と第2の油室16の容積変化とが互いに一致するように形成されている。
【0028】
このようにフリーピストン23が第1の油室15と第2の油室16の壁の一部を構成することにより、例えば第1および第2の油圧式緩衝器2,3が両方とも伸長した場合、すなわち第1の油室15から第1の油圧緩衝器側2へ作動油が流出するとともに、第2の油室16から第2の油圧緩衝器3側へ作動油が流出する場合は、フリーピストン23は、図示した位置から図において上側へ移動する。
【0029】
フリーピストン23は、両油圧式緩衝器2,3が上述したように伸長していわゆる伸びきり状態に達したときには、図2および図3中に二点鎖線Aで示す位置に移動する。なお、両油圧式緩衝器2,3が両方とも伸縮した場合は、フリーピストン23は図において下方へ移動する。
すなわち、フリーピストン23の使用時の移動範囲は、図2,3中に二点鎖線Aで示す位置より同図において下側に形成されることになる。また、この油圧式緩衝装置1に作動油が充填されていない状態では、フリーピストン23は、前記第1のピストン24のピストン本体24aが第2のシリンダ22の開口端に当接して移動が規制されるまで図2,3において上側へ移動することができる。すなわち、フリーピストン23の移動可能範囲は、図2,3中に二点鎖線Bで示す位置より図において下側に形成される。
【0030】
フリーピストン23の第2のピストン30が前記二点鎖線Bで示す位置に位置しているときに、この第2のピストン30のシールリング35の上下を連通させるように、第2のシリンダ22の内周面に連通溝41が形成されている。すなわち、この連通溝41は、第2のシリンダ22の軸線方向に沿って直線状に延び、第2のピストン30のシールリング35より軸線方向の長さが長くなるように形成されている。この連通溝41の溝幅(連通溝41における第2のシリンダ22の周方向の幅)は、連通溝41の一端から他端まで一定になるように形成されている。
【0031】
この実施の形態による連通溝41は、第2のシリンダ22を成形する金型(図示せず)によって鋳造時にシリンダの内周面に凹設されている。前記第2のシリンダ22の内周面は、鋳造によって成形された後、図4に示すように、連通溝41が消えることがないような加工量をもって機械加工が施される。図4においては、機械加工を施す以前の第2のシリンダ22の内周面の位置を二点鎖線で示す。
【0032】
上述したように構成された油圧式緩衝装置1は、二つの油圧式緩衝器2,3に中間ユニット4を接続した状態で油圧系内に作動油が充填される。作動油を充填するに当たっては、先ず、前記ジョイント17に真空ポンプ(図示せず)を接続し、この真空ポンプによって油圧系内を所定の真空度まで減圧する。このときには、中間ユニット4のフリーピストン23を図2および図3中に二点鎖線Bで示す移動限界位置まで移動させておく。
【0033】
このようにフリーピストン23を移動させることにより、第2のピストン30のシールリング35が連通溝41と交差するから、中間ユニット4内の第1の油室15と第2の油室16とが連通溝41を介して連通される。この状態で真空ポンプを作動させることにより、第2の油室16から連通溝41を介して第1の油室15に空気が流れる。
したがって、中間ユニット4の絞り36を迂回する通路が連通溝41によって形成されるから、油圧系の一箇所に設けられたジョイント17から油圧系内の空気を排出することができ、中間ユニット4の両側の油圧系内の空気を従来に較べて短時間で排出することができる。
【0034】
前記油圧系内の真空度が所定値に達した後、前記ジョイント17に真空ポンプの代わりに作動油供給用ポンプ(図示せず)を接続し、油圧系内に作動油を加圧しながら充填する。このように、この油圧式緩衝装置1は、油圧系内に空気が殆ど残存していない状態で作動油を充填することができるから、設計通りの緩衝能力を得ることができる。なお、この油圧式緩衝装置1の動作は、従来のものと同一であるから、ここにおいて詳細な説明は省略する。
【0035】
(第2の実施の形態)
連通溝は、図5および図6に示すように形成することができる。
図5は連通溝の他の実施の形態を示す断面図、図6は連通溝のシリンダ内側から見た正面図である。これらの図において、前記図1〜図4によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0036】
図5および図6に示された連通溝41は、第2のシリンダ22の内周面に機械加工によって形成されている。この実施の形態による連通溝41は、ドリル42を第2のシリンダ22の軸線Cに対して傾斜させた状態で回転させ、このドリル42によって第2のシリンダ22の内周面を部分的に削り取ることによって形成されている。なお、この連通溝41が形成される位置は、第1の実施の形態と同様に、使用時にはフリーピストン23の移動範囲外であってかつ前記フリーピストン23の移動可能範囲内の位置である。
【0037】
上述したように研削加工によって連通溝41を形成することにより、この連通溝41の開口形状は、図6に示すように、シリンダの内側から見た状態で同図の下方に向けて凸になる楔状を呈するように形成されている。このため、この連通溝41の開口幅は、使用時のピストンの移動範囲(二点鎖線Aより図5において下側)から外側(図5において上側)に向かうにしたがって次第に広くなる。
【0038】
このように連通溝41が楔状を呈するように形成されることにより、使用時に何らかの理由により第2のピストン30のシールリング35が連通溝41と交差する位置まで移動したとしても、このときには、連通溝41の最も開口幅が狭い部位(図6において下端部)から連通溝41が開くようになるから、連通溝41を通る作動油の量が徐々に増大するようになる。
【0039】
上述した実施の形態では、第1および第2の油室15,16内の容積が低減する方向へフリーピストン23が移動した状態で第2のピストン30が連通溝41と交差するように構成したが、連通溝41は、フリーピストン23が上記とは反対方向へ移動可能範囲の限界まで移動した状態で第2のピストン30と交差する位置に形成することができる。図1〜図6に示した実施の形態では、第1および第2の油室15,16内の容積が最小になるように移動したフリーピストン23の第2のピストン30と交差する位置に連通溝41が形成されているから、第1および第2の油圧式緩衝器2,3がいわゆる伸びきり状態からさらに伸びるようなことがない限り、連通溝41と第2のピストン30とが交差することはない。すなわち、車体へ組付けた状態ではフリーピストン23が移動することがない位置に連通溝41が形成されているから、使用時には、この連通溝41を介して第1の油室15と第2の油室16との間を作動油が流れることはない。
【0040】
上述した実施の形態では油圧式緩衝装置1の中間ユニット4に本発明を適用する例を示したが、本発明は、ピストンによって画成された二つの油圧系に一箇所から作動油を充填する構成の油圧装置であれば、どのようなものにも適用することができる。
【0041】
上述した実施の形態では、連通溝41によって二つの油室を連通させる例を示したが、本発明は、図示してはいないが、連通路41の代わりに連通路をシリンダに形成しても同等の効果を奏する。この構成を採る場合には、連通溝41の一端部と他端部とに対応する部位にそれぞれ孔を開口させ、これらの孔穴どうしをシリンダ内で接続させる。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ピストンにより画成されたシリンダ内の一方の油室と他方の油室は、ピストンが使用時の移動範囲外に移動することによって連通路を介して互いに連通される。
したがって、上述したように前記二つの油室が連通する状態で油圧系から空気を排出することによって、一箇所から空気を排出する構成を採ってコストダウンを図りながら、ピストンの両側の油圧系の空気を排出することができる。
【0043】
請求項2記載の発明によれば、ピストンにより画成されたシリンダ内の一方の油室と他方の油室は、ピストンのシール部が連通路と交差することによって、この連通溝を介して互いに連通される。したがって、連通路をシリンダに形成する場合に較べて容易に実施することができる。
【0044】
請求項3記載の発明によれば、専ら連通溝を形成する作業が不要であるから、より一層容易に本発明を実施することができる。
請求項4記載の発明によれば、既存の油圧装置にも本発明を簡単に適用することができる。
【0045】
請求項5〜請求項7記載の発明によれば、使用時に何らかの理由によりピストンが連通溝と交差する位置まで移動したとしても、このときには、連通溝の最も開口幅が狭い部位から連通溝が開くようになるから、連通溝を通る作動油の量が徐々に増大するようになる。このため、使用時にピストンが過度に移動した場合でも特性が急激に変化することがない油圧装置提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る油圧装置の正面図である。
【図2】中間ユニットの断面図である。
【図3】要部を拡大して示す断面図である。
【図4】図3における第2のシリンダのIV−IV線断面図である。
【図5】連通溝の他の実施の形態を示す断面図である。
【図6】連通溝のシリンダ内側から見た正面図である。
【符号の説明】
2,3…油圧式緩衝器、4…中間ユニット、15…第1の油室、16…第2の油室、21…第1のシリンダ、22…第2のシリンダ、23…フリーピストン、24…第1のピストン、30…第2のピストン、35…シールリング、36…絞り、41…連通溝。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピストンによって画成された二つの油圧系を有する油圧装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の油圧装置としては、例えば特開平8−132846号公報に開示されたものがある。この公報に示された油圧装置は、車両の油圧式緩衝装置で、車体に対をなすように設けられた第1および第2の油圧式緩衝器と、これらの油圧式緩衝器の油室に接続された中間ユニットとによって構成されている。
【0003】
前記油圧式緩衝器は、シリンダ内に絞り付きピストンが嵌合され、このピストンによって画成された二つの油室の一方に前記中間ユニットが接続されている。この油圧式緩衝器内の作動油は、ピストンロッドにおけるシリンダ内に位置する部分の体積増減分に相当する量だけシリンダに対して出入りする。
【0004】
前記中間ユニットは、シリンダと、このシリンダ内を第1の油室と第2の油室とに画成するフリーピストンとを備えている。前記第1の油室は前記第1の油圧式緩衝器に接続され、前記第2の油室は前記第2の油圧式緩衝器に接続されている。また、これらの第1および第2の油室と、フリーピストンとは、このフリーピストンが移動したときの第1の油室の容積変化と第2の油室の容積変化とが互いに一致するように形成されている。
フリーピストンは、第1の油室と第2の油室とを連通するように絞りが設けられている。この絞りは、板ばねからなる弁体によって油通路の開口端が開閉される構成が採られている。
【0005】
このように構成された従来の油圧式緩衝装置においては、中間ユニットの第1の油室と第2の油室との圧力差を相殺するように前記フリーピストンの絞りを作動油が流れ、このように作動油が絞りを通過することによって減衰力が発生する。この絞りは、第1および第2の油圧式緩衝器の絞りに較べて少ない流量で相対的に大きい減衰力が発生するように、作動油の流量に対して発生する減衰力の割合が大きくなるように形成されている。
【0006】
この油圧式緩衝装置の組立てるためには、先ず、第1および第2の油圧式緩衝器を中間ユニットに接続し、その後、これらの油圧機器の内部に作動油を充填する。油圧系内に作動油を充填するにあたっては、最初に油圧系内の空気を真空ポンプにより排出することによって油圧系内を所定の真空度になるように減圧し、その後、油圧系内に作動油を圧力を加えながら充填する。従来の油圧式緩衝装置においては、油圧系の全域に一度に作動油を充填することができるように、油圧系の一箇所に空気の排出と作動油の充填を行うためのポンプ接続口が設けられている。
なお、本出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に密接に関連する先行技術文献を出願時までに見付け出すことはできなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−132846号公報(図1、図2)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したように構成された従来の油圧式緩衝装置においては、油圧系内から空気を排出するときに所定の真空度に達するまでに時間が長くかかるという問題があった。これは、排出作業中における空気は、中間ユニット内の絞りを微少量ずつしか通過できないからである。油圧系内の空気の残存量が所定量以下に低減されていなければ油圧装置として機能しなくなるおそれがあるから、空気を排出する作業を途中で停止することはできない。また、中間ユニットの第1の油室を有する油圧系と、第2の油室を有する油圧系との二箇所から空気を排出することも考えられるが、このようにするとポンプ接続口を形成する部材が増大し、製造コストが高くなってしまう。
【0009】
本発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、製造コストを低く抑えながら、油圧系内から空気を可及的速く排出することができるようにすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明に係る油圧装置は、シリンダの内周面における使用時には前記ピストンの移動範囲外であってかつ前記ピストンの移動可能範囲内に連通路を開口させ、この連通路は、ピストンが使用時の移動範囲外に移動した状態でピストンによって画成される二つの油室どうしを互いに連通させる構成が採られているものである。
【0011】
本発明によれば、ピストンにより画成されたシリンダ内の一方の油室と他方の油室は、ピストンが使用時の移動範囲外に移動することによって連通路を介して互いに連通される。
【0012】
請求項2に記載した発明に係る油圧装置は、請求項1に記載した発明に係る油圧装置において、連通路を連通溝によって形成してなり、この連通溝は、シリンダの内周面における使用時にはピストンの移動範囲外であってかつ前記ピストンの移動可能範囲内の位置に、ピストンのシール部より軸線方向の長さが長くなるように形成されているものである。
【0013】
この発明によれば、ピストンにより画成されたシリンダ内の一方の油室と他方の油室は、ピストンのシール部が連通路と交差することによって、この連通溝を介して互いに連通される。
【0014】
請求項3に記載した発明に係る油圧装置は、請求項2に記載した発明に係る油圧装置において、連通溝は、シリンダを成形する型によって成形された凹溝であるものである。
この発明によれば、専ら連通溝を形成する作業が不要である。
【0015】
請求項4に記載した発明に係る油圧装置は、請求項2に記載した発明に係る油圧装置において、連津溝は機械加工によって形成された凹溝であるものである。
この発明によれば、既存の油圧装置にも本発明を簡単に適用することができる。
【0016】
請求項5に記載した発明に係る油圧装置は、請求項2に記載した発明に係る油圧装置において、連通溝の開口幅は、使用時のピストンの移動範囲から外側に向かうにしたがって次第に広くなるように形成されているものであり、
請求項6に記載した発明に係る油圧装置は、請求項2に記載した発明に係る油圧装置において、連通溝の深さは、使用時のピストンの移動範囲から外側に向かうにしたがって次第に深くなるように形成されているものであり、請求項7に記載した発明に係る油圧装置は、請求項2に記載した発明に係る油圧装置において、連通溝の開口幅は、使用時のピストンの移動範囲から外側に向かうにしたがって次第に広くなるように形成されているとともに、連通溝の深さは、使用時のピストンの移動範囲から外側に向かうにしたがって次第に深くなるように形成されているものである。
【0017】
請求項5ないし請求項7に記載した発明によれば、使用時に何らかの理由によりピストンが連通溝と交差する位置まで移動したとしても、このときには、連通溝の最も開口幅が狭い部位から連通溝が開くようになるから、連通溝を通る作動油の量が徐々に増大するようになる。
【0018】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る油圧装置の一実施の形態を図1ないし図4によって詳細に説明する。
図1は本発明に係る油圧装置の正面図、図2は中間ユニットの断面図、図3は要部を拡大して示す断面図、図4は図3における第2のシリンダのIV−IV線断面図である。
【0019】
これらの図において、符号1で示すものは、この実施の形態による車両用油圧式緩衝装置である。この油圧式緩衝装置1は、自動車の前輪用懸架装置(図示せず)に用いられるもので、車体の左右方向に対をなすように設けられた第1および第2の油圧式緩衝器2,3と、これらの油圧式緩衝器2,3に接続された中間ユニット4とから構成されている。
【0020】
前記二つの油圧式緩衝器2,3は、シリンダ5内がピストン6によって上部油室7と下部油室8とに画成され、内部が作動油で満たされている。前記ピストン6は、前記上部油室7と前記下部油室8とを連通するように絞り9が設けられている。
また、前記第1および第2の油圧式緩衝器2,3は、シリンダ5の下端部が前輪懸架用リンク(図示せず)などの車体に対して上下する部位に枢支され、ピストンロッド10の上端部が自動車の車体(図示せず)に装着される状態で前輪側と車体側との間に介装されている。これらの油圧式緩衝器2,3のうち、車体右側(図1においても右側)に位置する第1の油圧緩衝器2の下部油室8と、車体左側に位置する第2の油圧式緩衝器3の下部油室8は、それぞれピストンロッド10内に形成された作動油通路11と、ピストンロッド10の上端部に接続された第1および第2の油圧管12,13とを介して後述する中間ユニット4の第1の油室15と第2の油室16とに連通されている。
【0021】
前記第1の油圧式緩衝器2と中間ユニット4とを接続する第1の油圧管12の途中には、ポンプ接続用のジョイント17が介装されている。このジョイント17は、油圧系内から空気を排出したり油圧系内に作動油を充填するときに真空ポンプ(図示せず)や作動油供給用ポンプ(図示せず)を接続するためのもので、前記ポンプを接続する接続部材17aと、油圧系内とポンプ側とを連通する通路を開閉する開閉弁(図示せず)とが設けられている。
【0022】
前記中間ユニット4は、図2に示すように、有底円筒状を呈するように形成された第1のシリンダ21と、この第1のシリンダ21の開口部に嵌合された第2のシリンダ22と、これら両シリンダ21,22の内部に移動自在に嵌合されたフリーピストン23などによって構成されている。
前記第1のシリンダ21は、後述するフリーピストン23の第1のピストン24によって内部が二室に画成されている。この実施の形態では、図2において、第1のピストン24より下側に形成された第1のシリンダ21内の空間25には、高圧なN2ガスが封入され、第1のピストン24より上側に形成された第1の油室15には作動油が充填されている。
【0023】
前記第2のシリンダ22は、内径が第1のシリンダ21の内径より小さくなるように形成され、前記第1のシリンダ21と同一軸線上に位置するように第1のシリンダ21に嵌合されている。この実施の形態による第2のシリンダ22は、鋳造によって所定の形状に成形され、鋳造後に機械加工によって内周面が仕上げられている。これら両シリンダ21,22の嵌合部には、作動油の漏洩を阻止するためにOリング26が介装されている。また、第2のシリンダ22は、中間ユニット4を図示していない車体側の支持用ブラケットなどに固定するための取付用フランジ22a,22bが一体に形成されるとともに、前記第1および第2の油圧管12,13が取付けられるねじ孔27,28が設けられている。第1の油圧管12が取付けられるねじ孔27は、第2のシリンダ22に穿設された作動油通路29を介して第1のシリンダ21内の前記第1の油室15に接続されている。また、第2の油圧管13が取付けられるねじ孔28は、前記第2の油室16における第1のシリンダ21とは反対側の端部に連通されている。
【0024】
前記フリーピストン23は、有底円筒状を呈するように形成された第1のピストン24と、この第1のピストン24の底部(図1および図2においては上端部)に同一軸線上に位置するように取付けられた第2のピストン30とから構成されている。前記第1のピストン24は、開口側の端部に他の部分より相対的に外径が大きくなるようにピストン本体24aが一体に形成されている。このピストン本体24aは、外周部にOリング31とシールリング32とが装着され、前記第1のシリンダ21に移動自在に嵌合されている。
【0025】
前記第2のピストン30は、図2および図3に示すように、前記第1のピストン24の底部に突設された支柱33に固定用ボルト34によって固定されて前記第2のシリンダ22に移動自在に嵌合されており、前記第2のシリンダ22の内部を前記第1の油室15と第2の油室16とに画成している。
この実施の形態による第2のピストン30は、円板状を呈するように形成され、外周部にシールリング35が装着されている。この第2のピストン30によって本発明でいうピストンが構成され、シールリング35によって本発明でいうシール部が構成されている。この第2のピストン30には、前記第1の油室15と第2の油室16とを連通するように絞り36が設けられている。
【0026】
この絞り36は、第2のピストン30を貫通するように形成された第1の連通路37および第2の連通路38と、これらの連通路37,38に介装された逆止弁39とから構成されている。この逆止弁39は、円板状を呈するように形成された板ばねからなる弁体39aを備え、この弁体39aによって第1の連通路37および第2の連通路38の開口端部を開閉するものである。前記弁体39aは、軸心部が第1のピストン24の支柱33に嵌合され、第2のピストン30とともに固定用ボルト34によって第1のピストン24に固定されている。
【0027】
前記第1の連通路37に設けられた逆止弁39は、第1の油室15から第2の油室16へのみ作動油が流れるように形成され、第2の連通路38に設けられた逆止弁39は、第2の油室16から第1の油室15へのみ作動油が流れるように形成されている。
このフリーピストン23と、前記第1および第2の油室16とは、フリーピストン23が移動したときの第1の油室15の容積変化と第2の油室16の容積変化とが互いに一致するように形成されている。
【0028】
このようにフリーピストン23が第1の油室15と第2の油室16の壁の一部を構成することにより、例えば第1および第2の油圧式緩衝器2,3が両方とも伸長した場合、すなわち第1の油室15から第1の油圧緩衝器側2へ作動油が流出するとともに、第2の油室16から第2の油圧緩衝器3側へ作動油が流出する場合は、フリーピストン23は、図示した位置から図において上側へ移動する。
【0029】
フリーピストン23は、両油圧式緩衝器2,3が上述したように伸長していわゆる伸びきり状態に達したときには、図2および図3中に二点鎖線Aで示す位置に移動する。なお、両油圧式緩衝器2,3が両方とも伸縮した場合は、フリーピストン23は図において下方へ移動する。
すなわち、フリーピストン23の使用時の移動範囲は、図2,3中に二点鎖線Aで示す位置より同図において下側に形成されることになる。また、この油圧式緩衝装置1に作動油が充填されていない状態では、フリーピストン23は、前記第1のピストン24のピストン本体24aが第2のシリンダ22の開口端に当接して移動が規制されるまで図2,3において上側へ移動することができる。すなわち、フリーピストン23の移動可能範囲は、図2,3中に二点鎖線Bで示す位置より図において下側に形成される。
【0030】
フリーピストン23の第2のピストン30が前記二点鎖線Bで示す位置に位置しているときに、この第2のピストン30のシールリング35の上下を連通させるように、第2のシリンダ22の内周面に連通溝41が形成されている。すなわち、この連通溝41は、第2のシリンダ22の軸線方向に沿って直線状に延び、第2のピストン30のシールリング35より軸線方向の長さが長くなるように形成されている。この連通溝41の溝幅(連通溝41における第2のシリンダ22の周方向の幅)は、連通溝41の一端から他端まで一定になるように形成されている。
【0031】
この実施の形態による連通溝41は、第2のシリンダ22を成形する金型(図示せず)によって鋳造時にシリンダの内周面に凹設されている。前記第2のシリンダ22の内周面は、鋳造によって成形された後、図4に示すように、連通溝41が消えることがないような加工量をもって機械加工が施される。図4においては、機械加工を施す以前の第2のシリンダ22の内周面の位置を二点鎖線で示す。
【0032】
上述したように構成された油圧式緩衝装置1は、二つの油圧式緩衝器2,3に中間ユニット4を接続した状態で油圧系内に作動油が充填される。作動油を充填するに当たっては、先ず、前記ジョイント17に真空ポンプ(図示せず)を接続し、この真空ポンプによって油圧系内を所定の真空度まで減圧する。このときには、中間ユニット4のフリーピストン23を図2および図3中に二点鎖線Bで示す移動限界位置まで移動させておく。
【0033】
このようにフリーピストン23を移動させることにより、第2のピストン30のシールリング35が連通溝41と交差するから、中間ユニット4内の第1の油室15と第2の油室16とが連通溝41を介して連通される。この状態で真空ポンプを作動させることにより、第2の油室16から連通溝41を介して第1の油室15に空気が流れる。
したがって、中間ユニット4の絞り36を迂回する通路が連通溝41によって形成されるから、油圧系の一箇所に設けられたジョイント17から油圧系内の空気を排出することができ、中間ユニット4の両側の油圧系内の空気を従来に較べて短時間で排出することができる。
【0034】
前記油圧系内の真空度が所定値に達した後、前記ジョイント17に真空ポンプの代わりに作動油供給用ポンプ(図示せず)を接続し、油圧系内に作動油を加圧しながら充填する。このように、この油圧式緩衝装置1は、油圧系内に空気が殆ど残存していない状態で作動油を充填することができるから、設計通りの緩衝能力を得ることができる。なお、この油圧式緩衝装置1の動作は、従来のものと同一であるから、ここにおいて詳細な説明は省略する。
【0035】
(第2の実施の形態)
連通溝は、図5および図6に示すように形成することができる。
図5は連通溝の他の実施の形態を示す断面図、図6は連通溝のシリンダ内側から見た正面図である。これらの図において、前記図1〜図4によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0036】
図5および図6に示された連通溝41は、第2のシリンダ22の内周面に機械加工によって形成されている。この実施の形態による連通溝41は、ドリル42を第2のシリンダ22の軸線Cに対して傾斜させた状態で回転させ、このドリル42によって第2のシリンダ22の内周面を部分的に削り取ることによって形成されている。なお、この連通溝41が形成される位置は、第1の実施の形態と同様に、使用時にはフリーピストン23の移動範囲外であってかつ前記フリーピストン23の移動可能範囲内の位置である。
【0037】
上述したように研削加工によって連通溝41を形成することにより、この連通溝41の開口形状は、図6に示すように、シリンダの内側から見た状態で同図の下方に向けて凸になる楔状を呈するように形成されている。このため、この連通溝41の開口幅は、使用時のピストンの移動範囲(二点鎖線Aより図5において下側)から外側(図5において上側)に向かうにしたがって次第に広くなる。
【0038】
このように連通溝41が楔状を呈するように形成されることにより、使用時に何らかの理由により第2のピストン30のシールリング35が連通溝41と交差する位置まで移動したとしても、このときには、連通溝41の最も開口幅が狭い部位(図6において下端部)から連通溝41が開くようになるから、連通溝41を通る作動油の量が徐々に増大するようになる。
【0039】
上述した実施の形態では、第1および第2の油室15,16内の容積が低減する方向へフリーピストン23が移動した状態で第2のピストン30が連通溝41と交差するように構成したが、連通溝41は、フリーピストン23が上記とは反対方向へ移動可能範囲の限界まで移動した状態で第2のピストン30と交差する位置に形成することができる。図1〜図6に示した実施の形態では、第1および第2の油室15,16内の容積が最小になるように移動したフリーピストン23の第2のピストン30と交差する位置に連通溝41が形成されているから、第1および第2の油圧式緩衝器2,3がいわゆる伸びきり状態からさらに伸びるようなことがない限り、連通溝41と第2のピストン30とが交差することはない。すなわち、車体へ組付けた状態ではフリーピストン23が移動することがない位置に連通溝41が形成されているから、使用時には、この連通溝41を介して第1の油室15と第2の油室16との間を作動油が流れることはない。
【0040】
上述した実施の形態では油圧式緩衝装置1の中間ユニット4に本発明を適用する例を示したが、本発明は、ピストンによって画成された二つの油圧系に一箇所から作動油を充填する構成の油圧装置であれば、どのようなものにも適用することができる。
【0041】
上述した実施の形態では、連通溝41によって二つの油室を連通させる例を示したが、本発明は、図示してはいないが、連通路41の代わりに連通路をシリンダに形成しても同等の効果を奏する。この構成を採る場合には、連通溝41の一端部と他端部とに対応する部位にそれぞれ孔を開口させ、これらの孔穴どうしをシリンダ内で接続させる。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ピストンにより画成されたシリンダ内の一方の油室と他方の油室は、ピストンが使用時の移動範囲外に移動することによって連通路を介して互いに連通される。
したがって、上述したように前記二つの油室が連通する状態で油圧系から空気を排出することによって、一箇所から空気を排出する構成を採ってコストダウンを図りながら、ピストンの両側の油圧系の空気を排出することができる。
【0043】
請求項2記載の発明によれば、ピストンにより画成されたシリンダ内の一方の油室と他方の油室は、ピストンのシール部が連通路と交差することによって、この連通溝を介して互いに連通される。したがって、連通路をシリンダに形成する場合に較べて容易に実施することができる。
【0044】
請求項3記載の発明によれば、専ら連通溝を形成する作業が不要であるから、より一層容易に本発明を実施することができる。
請求項4記載の発明によれば、既存の油圧装置にも本発明を簡単に適用することができる。
【0045】
請求項5〜請求項7記載の発明によれば、使用時に何らかの理由によりピストンが連通溝と交差する位置まで移動したとしても、このときには、連通溝の最も開口幅が狭い部位から連通溝が開くようになるから、連通溝を通る作動油の量が徐々に増大するようになる。このため、使用時にピストンが過度に移動した場合でも特性が急激に変化することがない油圧装置提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る油圧装置の正面図である。
【図2】中間ユニットの断面図である。
【図3】要部を拡大して示す断面図である。
【図4】図3における第2のシリンダのIV−IV線断面図である。
【図5】連通溝の他の実施の形態を示す断面図である。
【図6】連通溝のシリンダ内側から見た正面図である。
【符号の説明】
2,3…油圧式緩衝器、4…中間ユニット、15…第1の油室、16…第2の油室、21…第1のシリンダ、22…第2のシリンダ、23…フリーピストン、24…第1のピストン、30…第2のピストン、35…シールリング、36…絞り、41…連通溝。
Claims (7)
- シリンダに嵌合するピストンによって画成された二つの油圧系を有する油圧装置において、前記シリンダの内周面における使用時には前記ピストンの移動範囲外であってかつ前記ピストンの移動可能範囲内に連通路を開口させ、この連通路は、ピストンが使用時の移動範囲外に移動した状態でピストンによって画成される二つの油室どうしを互いに連通させる構成が採られている油圧装置。
- 請求項1記載の油圧装置において、連通路を連通溝によって形成してなり、この連通溝は、シリンダの内周面における使用時にはピストンの移動範囲外であってかつ前記ピストンの移動可能範囲内の位置に、ピストンのシール部より軸線方向の長さが長くなるように形成されている油圧装置。
- 請求項2記載の油圧装置において、連通溝は、シリンダを成形する型によって成形された凹溝である油圧装置。
- 請求項2記載の油圧装置において、連津溝は機械加工によって形成された凹溝である油圧装置。
- 請求項2記載の油圧装置において、連通溝の開口幅は、使用時のピストンの移動範囲から外側に向かうにしたがって次第に広くなるように形成されていることを特徴とする油圧装置。
- 請求項2記載の油圧装置において、連通溝の深さは、使用時のピストンの移動範囲から外側に向かうにしたがって次第に深くなるように形成されていることを特徴とする油圧装置。
- 請求項2記載の油圧装置において、連通溝の開口幅は、使用時のピストンの移動範囲から外側に向かうにしたがって次第に広くなるように形成されているとともに、連通溝の深さは、使用時のピストンの移動範囲から外側に向かうにしたがって次第に深くなるように形成されていることを特徴とする油圧装置。
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