JP2004316556A - 多気筒エンジンのクランクケース - Google Patents

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Yoshinori Takada
佳典 高田
Shigenobu Ishioka
重信 石岡
Koji Terada
幸司 寺田
Tadashi Kato
加藤  正
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Abstract

【課題】仕切り壁毎に形状が異なり、または、仕切り壁毎に様々な部材や空間が存在しても、それらを考慮しつつ、隣接するクランク室同士の連通を充分に行うことができる。
【解決手段】多気筒エンジンのクランクケースであって、多気筒エンジンの各気筒に対応して設けられた複数のクランク室をクランク軸の軸方向に沿って配列すると共に、隣接するクランク室22を仕切る仕切り壁として機能する上部ジャーナル支持壁17を、隣接するクランク室間に設けている。複数の上部ジャーナル支持壁17のうち少なくとも2つの上部ジャーナル支持壁17の各々に、隣接するクランク室同士を連通する連通孔を設けると共に、複数の連通孔の開口面積または開口形状を異ならせるようにしている。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多気筒エンジンの各気筒に対応して設けられた複数のクランク室をクランク軸の軸方向に沿って配列すると共に、隣接するクランク室を仕切る仕切り壁を設けた多気筒エンジンのクランクケースに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、多気筒エンジンの各気筒に対応するクランク室をクランクシャフトの軸方向に沿って配列し、このクランクシャフトを軸受けするとともに各クランク室の壁部をなす仕切り壁のそれぞれにクランク室へ連通するブリージング穴を設けた多気筒エンジンのクランクケースにおいて、ブリージング穴をクランクシャフトに沿って並べるととともに、これら複数のブリージング穴は、中心が他と異なるものを含む多気筒エンジンのクランクケースが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−136752号公報(第1−2頁、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来から知られる多気筒エンジンのクランクケースにおいては、各仕切り壁のそれぞれに設けられるブリージング穴の各々は、同一の刃具により形成されるため、同一の開口面積、同一形状とならざるを得ず、各仕切り壁毎に存在する様々な部材、即ち、様々な位置にあるオイル通路やネジ穴等を逃げるためには不充分であって、隣接するクランク室同士の連通を充分に行えるものではなかった。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、各仕切り壁毎に形状が異なり、又は、各仕切り壁毎に様々な部材や空間が存在しても、隣接するクランク室同士の連通を充分に行える多気筒エンジンのクランクケースを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以上の目的のため、本発明は、多気筒エンジンの各気筒に対応して設けられた複数のクランク室をクランク軸の軸方向に沿って配列すると共に、隣接するクランク室を仕切る仕切り壁を設けた多気筒エンジンのクランクケースであって、前記仕切り壁のうち少なくとも2つの仕切り壁に、隣接するクランク室同士を連通する連通孔を設けると共に、前記複数の連通孔のうち少なくとも1つの連通孔が少なくとも1つの他の連通孔と開口面積または開口形状が異なるようにしたことを特徴とする多気筒エンジンのクランクケースである。
本発明においては、複数の連通孔の開口面積または開口形状を異ならせるようにしたので、仕切り壁毎に形状が異なり、又は仕切り壁毎に様々な部材或いは空間が存在しても、それらを考慮しつつ、隣接するクランク室同士の連通を充分に行うことができる。
更に、本発明において、クランクケースは、上部クランクケース半体に下部クランクケース半体を接合することで構成し、上部クランクケース半体はシリンダブロックと一体に成形されていると共に、連通孔は、上部クランクケース半体に設けられている。この場合には、別体のクランクケースとシリンダブロックを連結した場合に比べ、連通孔がクランクケースとシリンダブロックとの境部にあったとしても、連通孔が多気筒エンジンの強度へ影響することを回避できる。
更に、本発明において、連通孔は、一対の締め付けボルトの間であって、かつ気筒の下方に設けられている。この場合には、締め付けボルトと同軸上に連通孔が設けられている場合に比べ、連通孔によるクランクケースの強度への影響を回避できると共に、気筒の下方近傍に連通孔が設けられているので、ブリージング効果を得やすいものである。
更に、連通孔の内壁は、前記連通孔の開口の一端が他端より大きいテーパ状である構成とした。この場合には、鋳造により連通孔を形成するために中子を用いたときに、中子の外周部をテーパ状にでき、鋳造によりクランクケースを成形した後に、中子の径の小さい方から大きい方に向かって叩くことにより、中子をクランクケースから押し出しつつ、容易に取り去ることができる。
更に、本発明は、多気筒エンジンの各気筒に対応して設けられた複数のクランク室をクランク軸の軸方向に沿って配列すると共に、隣接するクランク室を仕切る仕切り壁を設けた多気筒エンジンのクランクケースであって、前記仕切り壁の少なくとも1つに、隣接するクランク室同士を連通する連通孔を設けると共に、当該連通孔の内壁がテーパ状であることを特徴とする多気筒エンジンのクランクケースである。本発明においては、鋳造により連通孔を形成するために中子を用いたときに、中子の外周部をテーパ状にでき、鋳造によりクランクケースを成形した後に、中子の径の小さい方から大きい方に向かって叩くことにより、中子をクランクケースから押し出しつつ、容易に取り去ることができる。
更に、本発明は、多気筒エンジンの各気筒に対応して設けられた複数のクランク室をクランク軸の軸方向に沿って配列すると共に、隣接するクランク室を仕切る仕切り壁を設け、更にクランクケース両端部に壁面を備えた多気筒エンジンのクランクケースであって、前記多気筒エンジンは直列配列のエンジンであると共に、前記仕切り壁及び前記壁面のうち、前記仕切り壁のみに対し、隣接するクランク室同士を連通する連通孔を設けたことを特徴とする多気筒エンジンのクランクケースである。本発明においては、クランクケース両端部の壁面に孔を設けていないので、ピストンの上下運動の際に、クランク室内の空気の抵抗が少なくなり、エンジンの出力を増大することができる。更に、クランクケースの強度上の問題を回避できる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態によるクランクケース3を適用した多気筒エンジンEの縦断面図である。
【0007】
図1において、符号Eは本発明を適用した4サイクル・多気筒エンジンであり、具体的には、4つの気筒43を備えた直列4気筒エンジンである。即ち、エンジンEのシリンダブロック1には、直列する4本のシリンダスリーブ2、2・・・が鋳包まれると共に、これらシリンダスリーブ2、2・・・の下方に上部クランクケース半体3aが一体に成形される。その上部クランクケース半体3aの下面に下部クランクケース半体3bがボルトにより結合され、この両クランクケース半体3a、3bにより、クランク軸5を収容、支持するクランクケース3が構成される。クランク軸5の4本のクランクピン5p、5p・・・には、対応するシリンダスリーブ2、2・・・に嵌装されるピストン6,6・・・がコンロッド7、7・・・を介して連接される。クランク軸5の両端側でそれぞれ隣接する2本のクランクピン5p、5p・・・には180°の位相差があるが、中央で隣接する2本のクランクピン5p、5pは同位相である。
【0008】
シリンダブロック2の上面には、各シリンダスリーブ2に対応する各一対の吸気弁8、8及び排気弁(図示せず)を装着したシリンダヘッド9がボルトにより結合され、このシリンダヘッド9と、その上面に接合されるヘットカバー10との間に画成される動弁室11に、上記吸、排気弁を開閉駆動する動弁装置12が配設され、該装置12は調時伝動装置13を介してクランク軸5より連結される。調時伝動装置13を収容する伝動室14は、シリンダブロック2及びシリンダヘッド9の一端部に形成される。
【0009】
クランク軸5の、調時伝動装置13と反対側の端部には、入力ギア15と、発電機16のロータとが取り付けられる。
図1に示すように、クランク軸5の全5個のクランクジャーナル5j、5j・・・を支承するために、上部クランクケース半体3a及び下部クランクケース半体3bには、各5枚の上部ジャーナル支持壁17、17・・・及び下部ジャーナル支持壁18、18・・・がそれぞれ一体に成形され、それぞれ対向する上部ジャーナル支持壁17及び下部ジャーナル支持壁18は、対応するクランクジャーナル5jを挟むように配置される一対の締め付けボルトにより結合される。その際、上部ジャーナル支持壁17、17・・・及び下部ジャーナル支持壁18、18・・・の接合面の適当な複数箇所に位置決め用のノックピンが嵌入される。
尚、この明細書において、上下は、図1に示すように、シリンダヘッド1側を上方、クランク室22側を下方とする。
【0010】
図1に示すように、クランクケース3の内部は、各5枚の上部ジャーナル支持壁17、17・・・と下部ジャーナル支持壁18、18・・・により4つのクランク室22、22・・・に仕切られ、両端部にあるクランク室22とその隣接するクランク室22を仕切る上部ジャーナル支持壁17には、隣接するクランク室22同士を連通する連通孔(ブリージング孔)23、29が形成されるが、中央部に位置するクランク室22同士を仕切る上部ジャーナル支持壁17には、連通孔23、29が形成されていない。
【0011】
図2は、一体に成形されたシリンダブロック1と上部クランクケース半体3aを下方から見た図である。
上部クランクケース半体3aの下面には、クランク軸5のクランクジャーナル5jを支承するための溝37、37・・・が設けられている。
また、上部クランクケース半体3aには、下部クランクケース半体3bと連結する締め付けボルト26が挿入されるボルト孔38、38・・・が、各上部ジャーナル支持壁17、17・・・に設けられている。
【0012】
4つの気筒43、43・・と4つのクランク室22、22・・とは、連通するように形成されている。
シリンダブロック1と上部クランクケース半体3aを一体成形する際、中子30、31を置いた状態で、金型によりシリンダブロック1と上部クランクケース半体3aを一体的に鋳造する。そのため、シリンダブロック1と上部クランクケース半体3aを一体成形した後に金型から取り出した際には、中子30、31は、上部クランクケース半体3aの上部ジャーナル支持壁17に残された状態となっている。
【0013】
図3は、図2に示した本発明の実施の形態におけるクランクケース3の上部クランクケース半体3a及びそれと一体的に成形されるシリンダブロック1のA−A線縦断面図である。
上部クランクケース半体3a及び下部クランクケース半体3bを結合させるための一対の締め付けボルト26、26を挿入するボルト孔38、38が、上部ジャーナル支持壁17に設けられている。一対の締め付けボルト26、26を挿入するボルト孔38、38は、クランク軸5のクランクジャーナル5jを支承するための溝37を挟むように設けられている。ボルト孔38、38は、クランク軸5よりも上方に延びるように形成されている。よって、連通孔23は一対の締め付けボルト26、26の間であって、かつクランク軸5上方であり、かつ気筒43の下方に設けられる。即ち、連通孔23は、一対の締め付けボルト26、26、クランク軸5、気筒43により、囲まれる位置に設けられる。連通孔23は、横長の略長方形状に形成されており、その上面は気筒43下面にそって形成されると共に、その下面はクランク軸5の周面に概ね沿って形成されるものである。連通孔23の内壁27は、後述するように、テーパ状に形成されている。
【0014】
図4は、図2に示した本発明におけるクランクケース3の上部クランクケース半体3a及びそれと一体的に成形されるシリンダブロック1のB−B線縦断面図である。上部クランクケース半体3aへは下部クランクケース半体3bが連結される。
図4における上部クランクケース半体3a及びシリンダブロック1の断面形状、即ち上部ジャーナル支持壁17は、図4における上部クランクケース半体3aの右側の断面形状が図3における上部クランクケース半体3aの右側の断面形状より上方に大きな形状となっており、図3における上部クランクケース半体3a及びシリンダブロック1の断面形状と異なっている。
更に、図4における上部クランクケース半体3a及びシリンダブロック1に設けられる部材や空間は、図3における上部クランクケース半体3a及びシリンダブロック1に設けられる部材や空間と、設けられる位置や形状が異なっている。
連通孔29は、クランク軸5のクランクジャーナル5jを支承するための溝37の上方であり、かつ気筒43の下方に設けられており、溝37と、気筒43により挟まれて設けられている。連通孔29は、上辺が下辺より長い略台形状に形成されており、上面は気筒43下面に沿って形成されていると共に、その下面は溝37の周面と対峙する曲面となるように形成されている。連通孔29の内壁27は、後述するように、テーパ状に形成されている。
【0015】
図5〜図7は、本発明の実施の形態におけるクランクケース3の上部クランクケース半体3a及びシリンダブロック1を一体成形するための金型を示す図である。図5は、下部金型に中子を取り付ける状態を示す斜視図であり、図6は、下部金型と上部金型とを設置した状態を示す側面図であり、図7は、下部金型、中子、ボアピンの関係を示す正面図である。
図6におけるように、多気筒エンジンEを製造するため、上部クランクケース半体3aを成形するための下部金型32と気筒43を成形するための上部金型33とを備えている。図5におけるように、下部金型32は、各クランク室に対応する複数のブロック40を備えている。図5においては、複数のブロック40のうち2つのブロック40のみを示し、他のブロック40は省略している。図5において、2つのブロック40の間には間隔41が設けられている。この間隔41部分が、鋳造により上部ジャーナル支持壁17となる。2つのブロック40の間を掛け渡すように、中子30を固定するための切り欠き部34が設けられており、切り欠き部34には中子30を嵌めるための凸部35としてのピンが設けられている。中子30には凸部35に嵌り込む孔42が設けられている。中子30は、2つのブロック40の間を掛け渡すように支持される。図6におけるように、上部金型33は、気筒2を形成するためのボアピン36(気筒形成用金型部)を備えている。図7におけるように、下部金型32上の中子30の両端部の各々に、2つのボアピン36が載せられている。
【0016】
図8は、本発明の実施の形態によるクランクケース3に設ける連通孔23を形成するための中子30を示す斜視図である。図9は、本発明の実施の形態によるクランクケース3に設ける連通孔29を形成するための中子31を示す斜視図である。中子30と中子31は、側面が異なる形状であり且つ異なる面積となっている。連通孔23を形成するための中子30の外周部が、片側面33が他側面32より大きな面積を有するテーパ状となっており、また、連通孔29を形成するための中子31の外周部が、片側面35が他側面34より大きな面積を有するテーパ状となっている。
【0017】
本発明の実施の形態による多気筒エンジンEのクランクケース3を製造するための製造方法を図5乃至図7を参照して説明する。
まず始めに、図5におけるように、下部金型32の切り欠き部34に設けられた凸部35に中子30に設けられた孔42を嵌めて、下部金型32に対し中子30を位置決めする。
その後、図6における2点鎖線位置からボアピン36を備えた上部金型33を下部金型32にセットする。すると、ボアピン36が中子30を上方から抑えることで、中子30の位置を固定する。
【0018】
図7におけるように、中子30の両端側を夫々2つのボアピン36により上方から押さえるものである。
この状態で、上部金型33と下部金型32により形成される金型内に、溶解したアルミなどの金属材料(図示せず)を流し込むことにより鋳造を行う。これにより、シリンダブロック1と上部クランクケース半体3aが一体的に成形される。
この後に、図6におけるように、ボアピン36を矢印Aの方向に引抜いた後に、上部金型33を矢印Bの方向の離間位置へ移動させる。その際、中子30は鋳造品に付いて残る。鋳造品を上部金型33から取り外した後、中子30の側面積の小さい側から大きい側方向へ叩き、鋳造された上部クランクケース半体3aから中子30を押し出しつつ、取り去る。
【0019】
尚、シリンダスリーブ2は、ボアピン36周面に嵌められている状態で鋳造されるので、シリンダスリーブ2は、シリンダブロック1に鋳包される。しかし、シリンダブロック1を鋳造した後に、シリンダスリーブ2をシリンダブロック1に嵌め込んでも良い。
【0020】
以上のように、連通孔23と連通孔29とは、その開口形状及び開口面積が相違する。この相違は、図8における上部ジャーナル支持壁17と図9における上部ジャーナル支持壁17とは、その断面形状が異なると共に、図8における上部ジャーナル支持壁17と図9における上部ジャーナル支持壁17には異なる部材や異なる空間が設けられており、かかる関係による上部ジャーナル支持壁の強度を考慮したものである。これにより、上部ジャーナル支持壁17の強度を考慮しつつ、隣接するクランク室22同士の連通を充分に行うことができる。
【0021】
連通孔23、29は、両端のクランク室22とその隣のクランク室22を仕切る上部ジャーナル支持壁17にのみ形成されるものであり、中間部にある2つのクランク室22を仕切る上部ジャーナル支持壁17には形成されない。この理由は、4つの各気筒2に対応して設けられた4本のクランクピン5pのうち、中央部2本のクランクピン5pが同位相であるため、4つの気筒のうち中央部の2つの気筒におけるピストン6の昇降運動方向が同一であり、連通孔23、29を設けても、中央部の2つのクランク室22における圧力変動を相殺できないばかりか、連通孔23、29を設けることで、上部ジャーナル支持壁17の強度に問題を生じる可能性があるためである。これにより、上部ジャーナル支持壁17の強度を考慮しつつ、隣接するクランク室22同士の連通を充分に行うことができる。
【0022】
また、中子30、31の使用により、従来、刃具によりクランクケース成形後に外部から連通孔を形成した場合に比べ、クランク室22両端の壁面(クランクケース3両端部の壁面であり、特に上部クランクケース半体3aにおける両端部の壁面)に穴を空ける必要がなくなり、クランクケース3の強度上の問題を回避できる。また、従来の刃具により連通孔を形成した場合に生じるバリを加工する手間がない。
クランクケース3は、一対の締め付けボルト26、26で上部クランクケース半体3aに下部クランクケース半体3bを接合することで構成し、連通孔23は、一対の締め付けボルト26、26の間であって、かつシリンダスリーブ2の下方に設けられている場合には、連通孔23によるクランクケース3の強度への影響を回避できる。
【0023】
下部金型32の切り欠き部34に設けられた凸部35に中子30に設けられた孔42を嵌めて、下部金型32に対し中子30を位置決めし、その後、ボアピン36を固定した上部金型33を下部金型32上にセットするので、中子30は、上部金型33と下部金型32との境にあり、上部金型33の開き方向への移動を制約しないようにする必要があるが、それ以外は、中子30を自由な形状にすることができ、特に中子30の断面形状を自由にできる。即ち、従来、刃具により各仕切り壁のそれぞれに連通穴を形成した場合に比べ、中子30、31の形状を異ならせることにより、様々な形状の連通孔23、29を形成することができる。
【0024】
連通孔23を形成するための中子30及び連通孔29を形成するための中子31の外周部が、片側面33、35が他側面32、34より大きな面積を有するテーパ状となっている。よって、中子30により形成される連通孔23の内壁37及び中子31により形成される連通孔29の内壁37は、連通孔29の開口端の一端が他端より大きいテーパ状である。そのため、片側面33、35から他側面32、34へ押圧力をかけることによって、鋳造により成形後のクランクケース3から中子30、31を押し出しつつ、容易に取り出すことができる。
また、鋳造時に金属材料を流し込んでいる際、ボアピン36により中子30を固定しているため、中子30の位置がずれることを防止できる。
【0025】
尚、本発明の実施の形態において、連通孔23、29は、形状及び面積の双方が相違するものとしたが、本発明として、形状及び面積のうち、いずれか一方のみを相違するものとしても良い。
【0026】
また、連通孔が、3つ以上、設けられる場合には、すべての連通孔の形状または面積が相違しても良いし、1つの連通孔のみの形状または面積が相違しても良い。
【0027】
尚、本発明の実施の形態において、連通孔23、29を複数、設けているが、連通孔が1つであって、連通孔の内壁が、連通孔の開口の一端が他端より大きいテーパ状である構成とすることも可能である。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、複数の連通孔のうち少なくとも1つの連通孔が、少なくとも1つの他の連通孔と開口面積または開口形状が異なるようにしたので、仕切り壁毎に形状が異なり、又は仕切り壁毎に様々な部材或いは空間が存在しても、それらを考慮しつつ、隣接するクランク室同士の連通を充分に行うことができる。
【0029】
更に、本発明において、クランクケースは、上部クランクケース半体に下部クランクケース半体を接合することで構成し、上部クランクケース半体はシリンダブロックと一体に成形されていると共に、連通孔は、上部クランクケース半体に設けられているので、別体のクランクケースとシリンダブロックを連結した場合に比べ、連通孔がクランクケースとシリンダブロックとの境部にあったとしても、連通孔が多気筒エンジンの強度へ影響することを回避できる。
【0030】
更に、本発明において、連通孔は、一対の締め付けボルトの間であって、かつ気筒の下方に設けられているので、締め付けボルトと同軸上に連通孔が設けられている場合に比べ、連通孔によるクランクケースの強度への影響を回避できると共に、気筒の下方近傍に連通孔が設けられているので、ブリージング効果を得やすいものである。
【0031】
更に、又、連通孔の内壁は、前記連通孔の開口の一端が他端より大きいテーパ状である構成としたので、鋳造により連通孔を形成するために中子を用いたときに、中子の外周部をテーパ状にでき、鋳造によりクランクケースを成形した後に、中子の径の小さい方から大きい方に向かって叩くことにより、中子をクランクケースから押し出しつつ、容易に取り去ることができる。
【0032】
また、本発明は、多気筒エンジンの各気筒に対応して設けられた複数のクランク室をクランク軸の軸方向に沿って配列すると共に、隣接するクランク室を仕切る仕切り壁を設けた多気筒エンジンのクランクケースであって、前記仕切り壁の少なくとも1つに、隣接するクランク室同士を連通する連通孔を設けると共に、当該連通孔の内壁がテーパ状であることを特徴とする多気筒エンジンのクランクケースであり、この構成により、鋳造により連通孔を形成するために中子を用いたときに、中子の外周部をテーパ状にでき、鋳造によりクランクケースを成形した後に、中子の径の小さい方から大きい方に向かって叩くことにより、中子をクランクケースから押し出しつつ、容易に取り去ることができる。
【0033】
更に、本発明は、多気筒エンジンの各気筒に対応して設けられた複数のクランク室をクランク軸の軸方向に沿って配列すると共に、隣接するクランク室を仕切る仕切り壁を設け、更にクランクケース両端部に壁面を備えた多気筒エンジンのクランクケースであって、前記多気筒エンジンは直列配列のエンジンであると共に、前記仕切り壁及び前記壁面のうち、前記仕切り壁のみに対し、隣接するクランク室同士を連通する連通孔を設けたことを特徴とする多気筒エンジンのクランクケースである。本発明においては、クランクケース両端部の壁面に孔を設けていないので、ピストンの上下運動の際に、クランク室内の空気の抵抗が少なくなり、エンジンの出力を増大することができる。更に、クランクケースの強度上の問題を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態によるクランクケースを適用した多気筒エンジンの縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態による一体に成形されたシリンダブロックと上部クランクケース半体を下方から見た図である。
【図3】図2に示した本発明の実施の形態によるクランクケースのA−A線縦断面図である。
【図4】図2に示した本発明の実施の形態によるクランクケースのB−B線縦断面図である。
【図5】本発明の実施の形態によるクランクケースの製造工程としての下部金型に中子を取り付ける状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態によるクランクケースの製造工程としての下部金型と上部金型とを設置した状態を示す側面図である。
【図7】本発明の実施の形態によるクランクケースの製造工程としての下部金型、中子、ボアピンの関係を示す正面図である。
【図8】本発明の実施の形態によるクランクケースに設ける連通孔を形成するための中子を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態によるクランクケースに設ける連通孔を形成するための中子を示す斜視図である。
【符号の説明】
E 多気筒エンジン
1 シリンダブロック
2 シリンダスリーブ
3 クランクケース
3a 上部クランクケース半体
3b 下部クランクケース半体
5 クランク軸
6 ピストン
17 上部ジャーナル支持壁(仕切り壁)
22 クランク室
23 連通孔
26 一対の締め付けボルト
27 内壁
29 連通孔
30 中子
31 中子
43 気筒

Claims (6)

  1. 多気筒エンジンの各気筒に対応して設けられた複数のクランク室をクランク軸の軸方向に沿って配列すると共に、隣接するクランク室を仕切る仕切り壁を設けた多気筒エンジンのクランクケースであって、
    前記仕切り壁のうち少なくとも2つの仕切り壁に、隣接するクランク室同士を連通する連通孔を設けると共に、前記複数の連通孔のうち少なくとも1つの連通孔が、少なくとも1つの他の連通孔と開口面積または開口形状が異なるようにしたことを特徴とする多気筒エンジンのクランクケース。
  2. 前記クランクケースは、上部クランクケース半体に下部クランクケース半体を接合することで構成し、
    前記上部クランクケース半体はシリンダブロックと一体に成形されていると共に、
    前記連通孔は、前記上部クランクケース半体に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の多気筒エンジンのクランクケース。
  3. 前記連通孔は、一対の締め付けボルトの間であって、かつ気筒の下方に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の多気筒エンジンのクランクケース。
  4. 前記連通孔の内壁は、前記連通孔の開口の一端が他端より大きいテーパ状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多気筒エンジンのクランクケース。
  5. 多気筒エンジンの各気筒に対応して設けられた複数のクランク室をクランク軸の軸方向に沿って配列すると共に、隣接するクランク室を仕切る仕切り壁を設けた多気筒エンジンのクランクケースであって、
    前記仕切り壁の少なくとも1つに、隣接するクランク室同士を連通する連通孔を設けると共に、当該連通孔の内壁がテーパ状であることを特徴とする多気筒エンジンのクランクケース。
  6. 多気筒エンジンの各気筒に対応して設けられた複数のクランク室をクランク軸の軸方向に沿って配列すると共に、隣接するクランク室を仕切る仕切り壁を設け、更にクランクケース両端部に壁面を備えた多気筒エンジンのクランクケースであって、
    前記多気筒エンジンは直列配列のエンジンであると共に、前記仕切り壁及び前記壁面のうち、前記仕切り壁のみに対し、隣接するクランク室同士を連通する連通孔を設けたことを特徴とする多気筒エンジンのクランクケース。
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