JP2004314085A - 冷間鍛造加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】冷間鍛造加工を効率よく行うとともに、鍛造加工用金型の寿命を長期化する。
【解決手段】第1次冷間鍛造加工において、ワークWに対し、端部に湾曲部Rを設ける。次に、湾曲部Rが設けられたワークWに対し、鍛造加工用金型装置10にて第2次冷間鍛造加工を施す。この鍛造加工用金型装置10は、内部に金属部20を有する一方で外表面および内表面にセラミックス部22a、22bをそれぞれ有し、かつこれら金属部20とセラミックス部22a、22bとの間に介在して金属部20からセラミックス部22a、22bに向かうに従って金属の組成比が漸減する傾斜部24a、24bを有する。ワークWは、第1次冷間鍛造加工が施された後にオイルが塗布されることによって100〜400℃とされ、好ましくは5秒以内に第2次冷間鍛造加工が施される。
【選択図】図3
【解決手段】第1次冷間鍛造加工において、ワークWに対し、端部に湾曲部Rを設ける。次に、湾曲部Rが設けられたワークWに対し、鍛造加工用金型装置10にて第2次冷間鍛造加工を施す。この鍛造加工用金型装置10は、内部に金属部20を有する一方で外表面および内表面にセラミックス部22a、22bをそれぞれ有し、かつこれら金属部20とセラミックス部22a、22bとの間に介在して金属部20からセラミックス部22a、22bに向かうに従って金属の組成比が漸減する傾斜部24a、24bを有する。ワークWは、第1次冷間鍛造加工が施された後にオイルが塗布されることによって100〜400℃とされ、好ましくは5秒以内に第2次冷間鍛造加工が施される。
【選択図】図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷間鍛造加工方法に関し、一層詳細には、加工効率に優れ、かつ鍛造加工用金型の寿命を長期化させることが可能であり、このために加工コストを低廉化することが可能な鍛造加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鍛造加工は、所定の形状の製品を得るための一般的な加工方法である。冷間鍛造加工はそのうちの1種であり、歩留まりがよい、寸法精度が優れる等の利点を有することから、広汎に採用されるに至っている。
【0003】
ところで、冷間鍛造加工には、ワークの変形抵抗が高くなるので、ワークを大きく変形させることが困難であるという不具合がある。換言すれば、冷間鍛造加工では、加工効率が小さくなってしまう。
【0004】
このような不具合を回避するべく、特許文献1においては、円柱形状のワークに対して複数個の段部を1工程で設ける際、変形の最中の加工熱によってワークの温度を200〜300℃とすることで該ワークの変形抵抗を低下させることが提案されている。また、特許文献2および特許文献3では、ステンレス鋼からなるワークを80〜300℃に予め加熱した上で、ヘッダーによる冷間鍛造加工を施すことが提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された方法は、ワークが上記の温度範囲となるようにワークの寸法を予め設定するものであるので、限られた寸法のワークしか使用することができない。
【0006】
また、特許文献2および特許文献3においては、ワークを加熱するための加熱装置を設置する必要があるため、設備投資が高騰するという不具合を招く。そして、冷間鍛造加工を施す前に所定の時間を経過すると、ワークの内部から時効硬化が進行し、このために冷間鍛造加工中に割れが発生することがある。
【0007】
そこで、特許文献4に記載されているような複合傾斜材から鍛造加工用金型を構成することが想起される。傾斜複合材からなる鍛造加工用金型は耐久性に優れるので、ワークの変形率を大きくすることができるからである。
【0008】
【特許文献1】
特公平3−37451号公報
【特許文献2】
特開平6−79389号公報
【特許文献3】
特開平6−89778号公報
【特許文献4】
特開2000−355705号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、冷間鍛造加工は、1つのワークに対して複数回、一般的には3〜5回程度に分け、別々の鍛造加工用金型装置を使用して遂行されるのが通例である。したがって、全ての鍛造加工用金型を傾斜複合材製のものとすると、設備投資が高騰するという不具合を招いてしまう。
【0010】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、鍛造加工用金型の寿命を短くすることなくワークを大きく変形させることが可能であり、これにより加工コストを低廉化するとともに加工効率を向上させることが可能な鍛造加工方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明は、ワークに対して少なくとも2回の冷間鍛造加工を施す冷間鍛造加工方法において、
前記ワークに対して冷間鍛造加工を施した後、前記ワークに潤滑剤を塗布することによって該ワークの温度を100〜400℃として、次なる冷間鍛造加工を加工速度0.5〜5.0m/秒で施すことを特徴とする。
【0012】
温度が100〜400℃であるワークは、比較的容易に塑性流動する。このため、加工速度を0.5〜5.0m/秒と一般的な冷間鍛造加工に比して大きくしても、ワークを所定の形状に容易に、かつ寸法精度よく成形することができる。また、ワークの変形率を大きくすることも可能であるので、加工効率を向上させることもできる。
【0013】
しかも、この場合、ワークが比較的容易に塑性流動を起こすことから、鍛造加工用金型に作用する負荷が低減する。このため、鍛造加工用金型の寿命が長期化するので、該鍛造加工用金型の交換頻度が低減する。したがって、加工コストを低廉化することが可能となる。
【0014】
なお、ワークの温度が100℃未満では、塑性流動が起こり難くなる。一方、400℃を超えると、成形されたワークの寸法精度が低下する傾向が発現するとともに、製造歩留まりが低下する。
【0015】
ここで、ワークの温度を100〜400℃とするには、例えば、該ワークの表面積をScm2、該ワークに塗布する潤滑剤の吐出速度をVcm3/秒とするとき、V/Sを30〜300cm/秒とすればよい。これにより、ワークの温度を容易かつ簡便に100〜400℃とすることができる。
【0016】
V/Sが30cm/秒未満では潤滑油の量が充分ではないので、冷間鍛造加工時にワークと鍛造加工用金型との凝着が生じることがあり、その結果、ワークの変形抵抗が増大する懸念がある。一方、300cm/秒を超える場合、ワークの温度が100℃未満となることがある。
【0017】
そして、V/Sを確実に30〜300cm/秒とするには、ワークの表面積Sを3〜500cm2に設定することが好ましい。
【0018】
また、冷間鍛造加工が施されたワークを長時間放置すると、時効硬化によってワークが硬化し、次なる冷間鍛造加工を施した際に該ワークに割れが発生することもある。このような事態が生じることを回避するために、冷間鍛造加工が施されたワークに対し、次なる冷間鍛造加工を5秒以内に開始することが好ましい。
【0019】
いずれの場合においても、ワークの変形率が最大となる冷間鍛造加工を行う際に、セラミックスと金属とを含有し、かつ表面から内部に指向してセラミックスおよび金属の組成比が変化する傾斜複合材からなる鍛造加工用金型を使用することが好ましい。
【0020】
このような鍛造加工用金型は耐久性に優れるので、ワークの変形率および加工速度を一層大きくすることが可能である。したがって、加工効率を一層向上させることができる。
【0021】
このような鍛造加工用金型の好適な例としては、該鍛造加工用金型での金属の組成比が該鍛造加工用金型の表面から内部に指向して上昇するとともに、セラミックスの組成比が該鍛造加工用金型の表面から内部に指向して低下するものを挙げることができる。この場合、表面が硬質であるので、耐摩耗性に優れる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る冷間鍛造加工方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
本実施の形態に係る冷間鍛造加工方法においては、図1中の(a)〜(e)に示すように、当初は円柱形状であるワークWに対して4段階の冷間鍛造加工を施し、最終的に、自動車用内燃機関を構成するバルブKを作製する。ここで、ワークWの表面積は、およそ17cm2である。
【0024】
まず、図1(a)に示される円柱形状のワークWに対し、パルボンド(日本パーカライジング社の商品名)を潤滑剤として塗布する、いわゆるボンデ処理を施した後、第1次冷間鍛造加工にて、図1(b)に示すように、ワークWを長手方向に沿って若干縮小させるとともにその端面に湾曲部Rを設ける。
【0025】
この第1次冷間鍛造加工において変形されることに伴って、ワークWが熱を帯びる。換言すれば、ワークWの温度が上昇する。
【0026】
このワークWに対して、潤滑剤および冷却剤として機能するオイルを塗布することにより、ワークWの温度を100〜400℃の範囲内となるように下降させる。
【0027】
ワークWの温度を100〜400℃の範囲内とするには、例えば、以下のようにすればよい。該ワークWの表面積をScm2、ワークWに塗布するオイルの吐出速度をVcm3/秒とするとき、図2に示すように、横軸をS、縦軸をV/Sとする両対数グラフを作成する。なお、図2中の曲線L1、L2は、それぞれ、ワークWが100℃、400℃に到達した際のSとV/Sとの関係を示す。
【0028】
次に、これら曲線L1、L2の直線部分同士に縦軸に平行な線L3、L4を引き、L1およびL2とL3との交点、L1およびL2とL4との交点M1〜M4を各々求める。SおよびV/Sは、交点M1〜M4によって囲繞される領域の数値内とすればよい。具体的には、Sが3〜500cm2である場合、V/Sを30〜300cm/秒に設定することが好ましい。V/Sは、例えば、45cm/秒とすればよい。
【0029】
そして、時効硬化が生じるより前、好ましくは5秒以内に、端面に湾曲部Rが設けられたワークWに対する第2次冷間鍛造加工を開始する。この第2次冷間鍛造加工(前方押し出し加工)を遂行するための鍛造加工用金型装置につき、その縦断面説明図である図3と、平面図である図4を参照して説明する。
【0030】
この鍛造加工用金型装置10は、キャビティ12が設けられる金型部14と、3分割されて前記金型部14の外側に配置され、該金型部14を補強する補強部材16と、前記補強部材16を前記金型部14側に押圧保持する締付治具(押圧部材)18とを備える。
【0031】
鍛造加工用金型の1つである金型部14は、円筒形状に設定されており、その中央部には、軸方向に延在して多段棒状のキャビティ12が形成されている。
【0032】
ここで、この金型部14は、特開2000−355705号公報に開示された構成を有する傾斜複合材からなる。具体的には、金型部14においては、外表面および内表面から内部に向かうに従って金属の組成比が増加する一方でセラミックスの組成比が減少する。すなわち、金型部14では、金属の組成比は外表面および内表面で最小かつ内部で最大であり、セラミックスの組成比は外表面および内表面で最大かつ内部で最小である。なお、以下の説明においては、金属の組成比が最大である部位(内部)を「金属部」と表記するとともに、セラミックスの組成比が最大である部位(表面)を「セラミックス部」と表記する。
【0033】
なお、金型部14には、図3のIV−IV線断面図である図5に示すように、金属部20とセラミックス部22a、22bとの間に、金属部20からセラミックス部22a、22bに向かうに従って金属の組成比が漸減する傾斜部24a、24bが存在する。
【0034】
金型部14を囲繞する補強部材16は、断面略円弧形状に設定されている(図4参照)。該補強部材16は、HRC(Cスケールのロックウェル硬度)が52であるSKH58等のハイス鋼から構成されている。
【0035】
この補強部材16の軸方向外周両端には、それぞれ径方向外方に突出して突起部26a、26bが突出形成されている。そして、補強部材16の外周中央部には、SKD11製の係止板部28が埋入されている。
【0036】
締付治具18は、例えば、焼き入れされたボルトを備え、複数に分割された断面略円弧状の取付板部30に螺合されている。この締付治具18の先端には、押圧力が各補強部材16に充分に付与されるようにボール32が配設される。
【0037】
取付板部30の軸方向両端部には、ねじ穴34a、34bが所定の深さまで形成されており、該ねじ穴34a、34bを介して固定リング36a、36bが配置される。この固定リング36a、36bには、所定間隔ずつ離間してボルト挿通用の孔部38a、38bが設けられる。これら孔部38a、38bに止めねじ40a、40bが挿入されて、それぞれの先端部がねじ穴34a、34bに螺合することにより、固定リング36a、36bを介して各補強部材16が一体的に締め付け保持される。
【0038】
そして、金型部14の下部側には、緩衝用のダイス鋼(SKD11)42が配置されている。
【0039】
この鍛造加工用金型装置10は、さらに、鍛造加工用金型であるパンチ44を有する。このパンチ44も金型部14と同様に、特開2000−355705号公報に開示された構成を有する傾斜複合材からなる。すなわち、このパンチ44には、図3のV−V線断面図である図6に示すように、内部に金属部46が存在する一方で表面にセラミックス部48が存在し、これら金属部46とセラミックス部48との間には、金属部46からセラミックス部48に向かうに従って金属の組成比が漸減する傾斜部50が存在する。
【0040】
このように構成された鍛造加工用金型装置10を使用しての第2次冷間鍛造加工は、金型部14に設けられたキャビティ12にワークWを挿入した後、パンチ44を下降動作させることにより遂行される。すなわち、パンチ44の下降動作に伴ってワークWに前方押し出し加工が施され、その結果、図1(c)に示すように、ワークWが伸張されて該ワークWに小径部C1が形成される。なお、伸張されなかった部位は、大径部C2として残存する。
【0041】
上記したように、ワークWは100〜400℃の温度範囲にある。すなわち、塑性流動が比較的容易に起こる温度に設定されている。
【0042】
また、ワークWには、第1次冷間鍛造加工にて湾曲部Rが形成されている。換言すれば、ワークWにおいて、金型部14と当接する部位には鋭角部が存在しない。このため、塑性変形するワークWによって押圧される金型部14に応力が局所的に集中することがないので、金型部14に作用する負荷が著しく低減する。さらに、この場合、金型部14およびパンチ44は、耐久性に優れる傾斜複合材からなる。
【0043】
すなわち、ワークWは塑性流動を比較的起こし易い状態にあり、かつ金型部14およびパンチ44は耐久性に優れ、しかも、前方押し出し加工中に金型部14に作用する負荷が著しく小さい。以上の理由から、ワークWの変形率および加工速度を大きく設定した場合においても、ワークWを破損させることなく速やかに所定の形状に成形することができるとともに、金型部14やパンチ44に損傷や摩耗が生じることを回避することができる。
【0044】
具体的には、この場合、変形率を約72%とすることができる。また、加工速度は、0.5〜5.0m/秒と、一般的な冷間鍛造加工における加工速度がおよそ0.45m/秒であるのに比して著しく大きくすることができる。
【0045】
このように、本実施の形態においては、ワークWが比較的容易に塑性流動を起こす温度範囲に保たれているので、ワークWの変形率および加工速度を大きくすることができる。このため、加工効率が著しく向上する。
【0046】
しかも、この場合、金型部14に過度の負荷が作用することを回避することができるので、該金型部14の寿命を長期化することができる。すなわち、金型部14の交換頻度が著しく低減するので、交換用の金型部14の在庫数を少なくすることもできる。
【0047】
例えば、金型部がSCM420等の一般的な鋼材からなる鍛造加工用金型装置の場合、加工速度を0.45m/秒としても、該金型部は、第2次冷間鍛造加工を約5万回繰り返した時点で交換が必要となる。換言すれば、最終製品であるバルブKを100万本作製する場合、金型部を約20回交換する必要がある。交換の間は、鍛造加工用金型装置を稼動できないので、必然的にバルブKを作製することもできない。
【0048】
これに対し、本実施の形態においては、加工速度を3.4m/秒としても、金型部14を100万回繰り返して使用することができ、この間、交換は不要である。しかも、金型部14を交換するために鍛造加工用金型装置を停止させる必要もない。このため、加工効率が著しく向上する。
【0049】
以上の理由から、本実施の形態によれば、加工効率を著しく向上させることができるとともに、加工コストを著しく低廉化することができる。
【0050】
なお、第2次冷間鍛造加工が進行している最中は、上記したようにワークWに熱が発生する。このため、金型部14や補強部材16の温度も上昇し、その結果、これら部材14、16が熱膨張する。前記固定リング36a、36bは、この熱膨張に伴う締め付け力の低下による緩みを防止する役割を果たす。
【0051】
以上のようにして第2次冷間鍛造加工が施されたワークWを、鍛造加工用金型装置10から取り出した後、第1次冷間鍛造加工終了時と同様に、オイルを塗布する。これにより、ワークWの温度が100〜400℃の範囲内に下降する。この際にも、ワークWの表面積Sとオイルの吐出速度Vとの関係は、V/S=30〜300cm/秒の範囲内に設定される。
【0052】
そして、ワークWに対して5秒以内に第3次冷間鍛造加工を開始する。この第3次冷間鍛造加工では、図1(d)に示されるように、大径部C2が圧潰されて円錐部CNが設けられる圧潰加工が営まれる。
【0053】
この第3次冷間鍛造加工(圧潰加工)では、ワークWの変形率は11%と比較的小さい。しかも、この圧潰加工においてもワークWが100〜400℃に保持されているので、比較的容易に塑性流動する。このため、一般的な鋼材からなる金型部を有する鍛造加工用金型装置を使用して、加工速度を第2次冷間鍛造加工と同様に0.5〜5.0m/秒としても、金型部に摩耗や損傷が生じ難い。
【0054】
次に、第3次冷間鍛造加工が施されたワークWに対し、第1次および第2次冷間鍛造加工終了時と同様に、オイルを塗布することによって該ワークWの温度を100〜400℃とする。この際にも、ワークWの表面積Sとオイルの吐出速度Vとの関係は、V/S=30〜300cm/秒の範囲内に設定される。
【0055】
そして、ワークWに対して5秒以内に第4次冷間鍛造加工を開始する。この第4次冷間鍛造加工が施されることによって、図1(e)に示されるように、小径部C1を軸部とし、かつ大径部C2を頭部とするバルブKが得られるに至る。
【0056】
この第4次冷間鍛造加工におけるワークWの変形率は、17%と比較的小さい。しかも、この第4次冷間鍛造加工においても、ワークWが100〜400℃に保持されているので、該ワークWが比較的容易に塑性流動する。このため、第3次冷間鍛造加工と同様に、一般的な鋼材からなる金型部を有する鍛造加工用金型装置を使用して、加工速度を0.5〜5.0m/秒としても、金型部に摩耗や損傷が生じ難い。
【0057】
このように、本実施の形態においては、前回の冷間鍛造加工においてワークWに生じた熱を該ワークWに保持させた状態で、次なる冷間鍛造加工を行うようにしている。このため、ワークWが比較的容易に塑性流動を起こすので、第3次および第4次冷間鍛造加工においても、加工速度を大きく設定することが可能となる。
【0058】
しかも、ワークWが比較的容易に塑性流動を起こすので、金型部やパンチに作用する負荷も小さい。このため、第3次および第4次冷間鍛造加工で使用される鍛造加工用金型装置の金型部やパンチの寿命を長期化することもできる。
【0059】
例えば、SCM420からなる金型部を使用した場合、一般的な第3次冷間鍛造加工では8万回、第4次冷間鍛造加工では12万回で金型部を交換する必要があったのに対し、本実施の形態においては、金型部の構成素材を同じくSCM420としても、30万回まで交換することなく繰り返して使用することができる。
【0060】
このように、本実施の形態によれば、一般的な鋼材からなる金型部やパンチ44を使用する場合においても、その寿命を著しく長期化させることができる。このため、加工効率を向上させることができるとともに、加工コストを低廉化することができる。
【0061】
なお、上記した実施の形態においては、第2次冷間鍛造加工を遂行する鍛造加工用金型装置10の金型部14およびパンチ44のみを傾斜複合材からなるものとしたが、第1次〜第4次の全鍛造加工用金型装置の金型部およびパンチも傾斜複合材からなるものとしてもよい。
【0062】
また、冷間鍛造加工の工程数を増加し、1回の冷間鍛造加工における変形率を20%程度と小さくする場合には、全鍛造加工用金型装置の金型部およびパンチを一般的な鋼材からなるものとしてもよい。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、前回の冷間鍛造加工が終了したワークを、比較的容易に塑性流動を起こす温度範囲とし、この状態で次なる冷間鍛造加工を遂行するようにしている。このため、変形率を比較的大きくすることができるとともに、鍛造加工用金型に作用する負荷を低減することが可能となり、加工効率を向上させることができ、かつ加工コストの低廉化も達成するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1次〜第4次冷間鍛造加工が施されたワークの形状をそれぞれ示すフロー図である。
【図2】ワークの表面積をScm2、該ワークに塗布するオイルの吐出速度をVcm3/秒とするとき、横軸をS、縦軸をV/Sとする両対数グラフである。
【図3】第2次冷間鍛造加工を遂行するための鍛造加工用金型装置の要部概略縦断面図である。
【図4】図3の鍛造加工用金型装置の平面図である。
【図5】図3のIV−IV線矢視断面図である。
【図6】図3のV−V線矢視断面図である。
【符号の説明】
10…鍛造加工用金型装置 12…キャビティ
14…金型部(鍛造加工用金型) 16…補強部材
20、46…金属部 22a、22b、48…セラミックス部
24a、24b、50…傾斜部 44…パンチ(鍛造加工用金型)
W…ワーク K…バルブ
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷間鍛造加工方法に関し、一層詳細には、加工効率に優れ、かつ鍛造加工用金型の寿命を長期化させることが可能であり、このために加工コストを低廉化することが可能な鍛造加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鍛造加工は、所定の形状の製品を得るための一般的な加工方法である。冷間鍛造加工はそのうちの1種であり、歩留まりがよい、寸法精度が優れる等の利点を有することから、広汎に採用されるに至っている。
【0003】
ところで、冷間鍛造加工には、ワークの変形抵抗が高くなるので、ワークを大きく変形させることが困難であるという不具合がある。換言すれば、冷間鍛造加工では、加工効率が小さくなってしまう。
【0004】
このような不具合を回避するべく、特許文献1においては、円柱形状のワークに対して複数個の段部を1工程で設ける際、変形の最中の加工熱によってワークの温度を200〜300℃とすることで該ワークの変形抵抗を低下させることが提案されている。また、特許文献2および特許文献3では、ステンレス鋼からなるワークを80〜300℃に予め加熱した上で、ヘッダーによる冷間鍛造加工を施すことが提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された方法は、ワークが上記の温度範囲となるようにワークの寸法を予め設定するものであるので、限られた寸法のワークしか使用することができない。
【0006】
また、特許文献2および特許文献3においては、ワークを加熱するための加熱装置を設置する必要があるため、設備投資が高騰するという不具合を招く。そして、冷間鍛造加工を施す前に所定の時間を経過すると、ワークの内部から時効硬化が進行し、このために冷間鍛造加工中に割れが発生することがある。
【0007】
そこで、特許文献4に記載されているような複合傾斜材から鍛造加工用金型を構成することが想起される。傾斜複合材からなる鍛造加工用金型は耐久性に優れるので、ワークの変形率を大きくすることができるからである。
【0008】
【特許文献1】
特公平3−37451号公報
【特許文献2】
特開平6−79389号公報
【特許文献3】
特開平6−89778号公報
【特許文献4】
特開2000−355705号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、冷間鍛造加工は、1つのワークに対して複数回、一般的には3〜5回程度に分け、別々の鍛造加工用金型装置を使用して遂行されるのが通例である。したがって、全ての鍛造加工用金型を傾斜複合材製のものとすると、設備投資が高騰するという不具合を招いてしまう。
【0010】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、鍛造加工用金型の寿命を短くすることなくワークを大きく変形させることが可能であり、これにより加工コストを低廉化するとともに加工効率を向上させることが可能な鍛造加工方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明は、ワークに対して少なくとも2回の冷間鍛造加工を施す冷間鍛造加工方法において、
前記ワークに対して冷間鍛造加工を施した後、前記ワークに潤滑剤を塗布することによって該ワークの温度を100〜400℃として、次なる冷間鍛造加工を加工速度0.5〜5.0m/秒で施すことを特徴とする。
【0012】
温度が100〜400℃であるワークは、比較的容易に塑性流動する。このため、加工速度を0.5〜5.0m/秒と一般的な冷間鍛造加工に比して大きくしても、ワークを所定の形状に容易に、かつ寸法精度よく成形することができる。また、ワークの変形率を大きくすることも可能であるので、加工効率を向上させることもできる。
【0013】
しかも、この場合、ワークが比較的容易に塑性流動を起こすことから、鍛造加工用金型に作用する負荷が低減する。このため、鍛造加工用金型の寿命が長期化するので、該鍛造加工用金型の交換頻度が低減する。したがって、加工コストを低廉化することが可能となる。
【0014】
なお、ワークの温度が100℃未満では、塑性流動が起こり難くなる。一方、400℃を超えると、成形されたワークの寸法精度が低下する傾向が発現するとともに、製造歩留まりが低下する。
【0015】
ここで、ワークの温度を100〜400℃とするには、例えば、該ワークの表面積をScm2、該ワークに塗布する潤滑剤の吐出速度をVcm3/秒とするとき、V/Sを30〜300cm/秒とすればよい。これにより、ワークの温度を容易かつ簡便に100〜400℃とすることができる。
【0016】
V/Sが30cm/秒未満では潤滑油の量が充分ではないので、冷間鍛造加工時にワークと鍛造加工用金型との凝着が生じることがあり、その結果、ワークの変形抵抗が増大する懸念がある。一方、300cm/秒を超える場合、ワークの温度が100℃未満となることがある。
【0017】
そして、V/Sを確実に30〜300cm/秒とするには、ワークの表面積Sを3〜500cm2に設定することが好ましい。
【0018】
また、冷間鍛造加工が施されたワークを長時間放置すると、時効硬化によってワークが硬化し、次なる冷間鍛造加工を施した際に該ワークに割れが発生することもある。このような事態が生じることを回避するために、冷間鍛造加工が施されたワークに対し、次なる冷間鍛造加工を5秒以内に開始することが好ましい。
【0019】
いずれの場合においても、ワークの変形率が最大となる冷間鍛造加工を行う際に、セラミックスと金属とを含有し、かつ表面から内部に指向してセラミックスおよび金属の組成比が変化する傾斜複合材からなる鍛造加工用金型を使用することが好ましい。
【0020】
このような鍛造加工用金型は耐久性に優れるので、ワークの変形率および加工速度を一層大きくすることが可能である。したがって、加工効率を一層向上させることができる。
【0021】
このような鍛造加工用金型の好適な例としては、該鍛造加工用金型での金属の組成比が該鍛造加工用金型の表面から内部に指向して上昇するとともに、セラミックスの組成比が該鍛造加工用金型の表面から内部に指向して低下するものを挙げることができる。この場合、表面が硬質であるので、耐摩耗性に優れる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る冷間鍛造加工方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
本実施の形態に係る冷間鍛造加工方法においては、図1中の(a)〜(e)に示すように、当初は円柱形状であるワークWに対して4段階の冷間鍛造加工を施し、最終的に、自動車用内燃機関を構成するバルブKを作製する。ここで、ワークWの表面積は、およそ17cm2である。
【0024】
まず、図1(a)に示される円柱形状のワークWに対し、パルボンド(日本パーカライジング社の商品名)を潤滑剤として塗布する、いわゆるボンデ処理を施した後、第1次冷間鍛造加工にて、図1(b)に示すように、ワークWを長手方向に沿って若干縮小させるとともにその端面に湾曲部Rを設ける。
【0025】
この第1次冷間鍛造加工において変形されることに伴って、ワークWが熱を帯びる。換言すれば、ワークWの温度が上昇する。
【0026】
このワークWに対して、潤滑剤および冷却剤として機能するオイルを塗布することにより、ワークWの温度を100〜400℃の範囲内となるように下降させる。
【0027】
ワークWの温度を100〜400℃の範囲内とするには、例えば、以下のようにすればよい。該ワークWの表面積をScm2、ワークWに塗布するオイルの吐出速度をVcm3/秒とするとき、図2に示すように、横軸をS、縦軸をV/Sとする両対数グラフを作成する。なお、図2中の曲線L1、L2は、それぞれ、ワークWが100℃、400℃に到達した際のSとV/Sとの関係を示す。
【0028】
次に、これら曲線L1、L2の直線部分同士に縦軸に平行な線L3、L4を引き、L1およびL2とL3との交点、L1およびL2とL4との交点M1〜M4を各々求める。SおよびV/Sは、交点M1〜M4によって囲繞される領域の数値内とすればよい。具体的には、Sが3〜500cm2である場合、V/Sを30〜300cm/秒に設定することが好ましい。V/Sは、例えば、45cm/秒とすればよい。
【0029】
そして、時効硬化が生じるより前、好ましくは5秒以内に、端面に湾曲部Rが設けられたワークWに対する第2次冷間鍛造加工を開始する。この第2次冷間鍛造加工(前方押し出し加工)を遂行するための鍛造加工用金型装置につき、その縦断面説明図である図3と、平面図である図4を参照して説明する。
【0030】
この鍛造加工用金型装置10は、キャビティ12が設けられる金型部14と、3分割されて前記金型部14の外側に配置され、該金型部14を補強する補強部材16と、前記補強部材16を前記金型部14側に押圧保持する締付治具(押圧部材)18とを備える。
【0031】
鍛造加工用金型の1つである金型部14は、円筒形状に設定されており、その中央部には、軸方向に延在して多段棒状のキャビティ12が形成されている。
【0032】
ここで、この金型部14は、特開2000−355705号公報に開示された構成を有する傾斜複合材からなる。具体的には、金型部14においては、外表面および内表面から内部に向かうに従って金属の組成比が増加する一方でセラミックスの組成比が減少する。すなわち、金型部14では、金属の組成比は外表面および内表面で最小かつ内部で最大であり、セラミックスの組成比は外表面および内表面で最大かつ内部で最小である。なお、以下の説明においては、金属の組成比が最大である部位(内部)を「金属部」と表記するとともに、セラミックスの組成比が最大である部位(表面)を「セラミックス部」と表記する。
【0033】
なお、金型部14には、図3のIV−IV線断面図である図5に示すように、金属部20とセラミックス部22a、22bとの間に、金属部20からセラミックス部22a、22bに向かうに従って金属の組成比が漸減する傾斜部24a、24bが存在する。
【0034】
金型部14を囲繞する補強部材16は、断面略円弧形状に設定されている(図4参照)。該補強部材16は、HRC(Cスケールのロックウェル硬度)が52であるSKH58等のハイス鋼から構成されている。
【0035】
この補強部材16の軸方向外周両端には、それぞれ径方向外方に突出して突起部26a、26bが突出形成されている。そして、補強部材16の外周中央部には、SKD11製の係止板部28が埋入されている。
【0036】
締付治具18は、例えば、焼き入れされたボルトを備え、複数に分割された断面略円弧状の取付板部30に螺合されている。この締付治具18の先端には、押圧力が各補強部材16に充分に付与されるようにボール32が配設される。
【0037】
取付板部30の軸方向両端部には、ねじ穴34a、34bが所定の深さまで形成されており、該ねじ穴34a、34bを介して固定リング36a、36bが配置される。この固定リング36a、36bには、所定間隔ずつ離間してボルト挿通用の孔部38a、38bが設けられる。これら孔部38a、38bに止めねじ40a、40bが挿入されて、それぞれの先端部がねじ穴34a、34bに螺合することにより、固定リング36a、36bを介して各補強部材16が一体的に締め付け保持される。
【0038】
そして、金型部14の下部側には、緩衝用のダイス鋼(SKD11)42が配置されている。
【0039】
この鍛造加工用金型装置10は、さらに、鍛造加工用金型であるパンチ44を有する。このパンチ44も金型部14と同様に、特開2000−355705号公報に開示された構成を有する傾斜複合材からなる。すなわち、このパンチ44には、図3のV−V線断面図である図6に示すように、内部に金属部46が存在する一方で表面にセラミックス部48が存在し、これら金属部46とセラミックス部48との間には、金属部46からセラミックス部48に向かうに従って金属の組成比が漸減する傾斜部50が存在する。
【0040】
このように構成された鍛造加工用金型装置10を使用しての第2次冷間鍛造加工は、金型部14に設けられたキャビティ12にワークWを挿入した後、パンチ44を下降動作させることにより遂行される。すなわち、パンチ44の下降動作に伴ってワークWに前方押し出し加工が施され、その結果、図1(c)に示すように、ワークWが伸張されて該ワークWに小径部C1が形成される。なお、伸張されなかった部位は、大径部C2として残存する。
【0041】
上記したように、ワークWは100〜400℃の温度範囲にある。すなわち、塑性流動が比較的容易に起こる温度に設定されている。
【0042】
また、ワークWには、第1次冷間鍛造加工にて湾曲部Rが形成されている。換言すれば、ワークWにおいて、金型部14と当接する部位には鋭角部が存在しない。このため、塑性変形するワークWによって押圧される金型部14に応力が局所的に集中することがないので、金型部14に作用する負荷が著しく低減する。さらに、この場合、金型部14およびパンチ44は、耐久性に優れる傾斜複合材からなる。
【0043】
すなわち、ワークWは塑性流動を比較的起こし易い状態にあり、かつ金型部14およびパンチ44は耐久性に優れ、しかも、前方押し出し加工中に金型部14に作用する負荷が著しく小さい。以上の理由から、ワークWの変形率および加工速度を大きく設定した場合においても、ワークWを破損させることなく速やかに所定の形状に成形することができるとともに、金型部14やパンチ44に損傷や摩耗が生じることを回避することができる。
【0044】
具体的には、この場合、変形率を約72%とすることができる。また、加工速度は、0.5〜5.0m/秒と、一般的な冷間鍛造加工における加工速度がおよそ0.45m/秒であるのに比して著しく大きくすることができる。
【0045】
このように、本実施の形態においては、ワークWが比較的容易に塑性流動を起こす温度範囲に保たれているので、ワークWの変形率および加工速度を大きくすることができる。このため、加工効率が著しく向上する。
【0046】
しかも、この場合、金型部14に過度の負荷が作用することを回避することができるので、該金型部14の寿命を長期化することができる。すなわち、金型部14の交換頻度が著しく低減するので、交換用の金型部14の在庫数を少なくすることもできる。
【0047】
例えば、金型部がSCM420等の一般的な鋼材からなる鍛造加工用金型装置の場合、加工速度を0.45m/秒としても、該金型部は、第2次冷間鍛造加工を約5万回繰り返した時点で交換が必要となる。換言すれば、最終製品であるバルブKを100万本作製する場合、金型部を約20回交換する必要がある。交換の間は、鍛造加工用金型装置を稼動できないので、必然的にバルブKを作製することもできない。
【0048】
これに対し、本実施の形態においては、加工速度を3.4m/秒としても、金型部14を100万回繰り返して使用することができ、この間、交換は不要である。しかも、金型部14を交換するために鍛造加工用金型装置を停止させる必要もない。このため、加工効率が著しく向上する。
【0049】
以上の理由から、本実施の形態によれば、加工効率を著しく向上させることができるとともに、加工コストを著しく低廉化することができる。
【0050】
なお、第2次冷間鍛造加工が進行している最中は、上記したようにワークWに熱が発生する。このため、金型部14や補強部材16の温度も上昇し、その結果、これら部材14、16が熱膨張する。前記固定リング36a、36bは、この熱膨張に伴う締め付け力の低下による緩みを防止する役割を果たす。
【0051】
以上のようにして第2次冷間鍛造加工が施されたワークWを、鍛造加工用金型装置10から取り出した後、第1次冷間鍛造加工終了時と同様に、オイルを塗布する。これにより、ワークWの温度が100〜400℃の範囲内に下降する。この際にも、ワークWの表面積Sとオイルの吐出速度Vとの関係は、V/S=30〜300cm/秒の範囲内に設定される。
【0052】
そして、ワークWに対して5秒以内に第3次冷間鍛造加工を開始する。この第3次冷間鍛造加工では、図1(d)に示されるように、大径部C2が圧潰されて円錐部CNが設けられる圧潰加工が営まれる。
【0053】
この第3次冷間鍛造加工(圧潰加工)では、ワークWの変形率は11%と比較的小さい。しかも、この圧潰加工においてもワークWが100〜400℃に保持されているので、比較的容易に塑性流動する。このため、一般的な鋼材からなる金型部を有する鍛造加工用金型装置を使用して、加工速度を第2次冷間鍛造加工と同様に0.5〜5.0m/秒としても、金型部に摩耗や損傷が生じ難い。
【0054】
次に、第3次冷間鍛造加工が施されたワークWに対し、第1次および第2次冷間鍛造加工終了時と同様に、オイルを塗布することによって該ワークWの温度を100〜400℃とする。この際にも、ワークWの表面積Sとオイルの吐出速度Vとの関係は、V/S=30〜300cm/秒の範囲内に設定される。
【0055】
そして、ワークWに対して5秒以内に第4次冷間鍛造加工を開始する。この第4次冷間鍛造加工が施されることによって、図1(e)に示されるように、小径部C1を軸部とし、かつ大径部C2を頭部とするバルブKが得られるに至る。
【0056】
この第4次冷間鍛造加工におけるワークWの変形率は、17%と比較的小さい。しかも、この第4次冷間鍛造加工においても、ワークWが100〜400℃に保持されているので、該ワークWが比較的容易に塑性流動する。このため、第3次冷間鍛造加工と同様に、一般的な鋼材からなる金型部を有する鍛造加工用金型装置を使用して、加工速度を0.5〜5.0m/秒としても、金型部に摩耗や損傷が生じ難い。
【0057】
このように、本実施の形態においては、前回の冷間鍛造加工においてワークWに生じた熱を該ワークWに保持させた状態で、次なる冷間鍛造加工を行うようにしている。このため、ワークWが比較的容易に塑性流動を起こすので、第3次および第4次冷間鍛造加工においても、加工速度を大きく設定することが可能となる。
【0058】
しかも、ワークWが比較的容易に塑性流動を起こすので、金型部やパンチに作用する負荷も小さい。このため、第3次および第4次冷間鍛造加工で使用される鍛造加工用金型装置の金型部やパンチの寿命を長期化することもできる。
【0059】
例えば、SCM420からなる金型部を使用した場合、一般的な第3次冷間鍛造加工では8万回、第4次冷間鍛造加工では12万回で金型部を交換する必要があったのに対し、本実施の形態においては、金型部の構成素材を同じくSCM420としても、30万回まで交換することなく繰り返して使用することができる。
【0060】
このように、本実施の形態によれば、一般的な鋼材からなる金型部やパンチ44を使用する場合においても、その寿命を著しく長期化させることができる。このため、加工効率を向上させることができるとともに、加工コストを低廉化することができる。
【0061】
なお、上記した実施の形態においては、第2次冷間鍛造加工を遂行する鍛造加工用金型装置10の金型部14およびパンチ44のみを傾斜複合材からなるものとしたが、第1次〜第4次の全鍛造加工用金型装置の金型部およびパンチも傾斜複合材からなるものとしてもよい。
【0062】
また、冷間鍛造加工の工程数を増加し、1回の冷間鍛造加工における変形率を20%程度と小さくする場合には、全鍛造加工用金型装置の金型部およびパンチを一般的な鋼材からなるものとしてもよい。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、前回の冷間鍛造加工が終了したワークを、比較的容易に塑性流動を起こす温度範囲とし、この状態で次なる冷間鍛造加工を遂行するようにしている。このため、変形率を比較的大きくすることができるとともに、鍛造加工用金型に作用する負荷を低減することが可能となり、加工効率を向上させることができ、かつ加工コストの低廉化も達成するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1次〜第4次冷間鍛造加工が施されたワークの形状をそれぞれ示すフロー図である。
【図2】ワークの表面積をScm2、該ワークに塗布するオイルの吐出速度をVcm3/秒とするとき、横軸をS、縦軸をV/Sとする両対数グラフである。
【図3】第2次冷間鍛造加工を遂行するための鍛造加工用金型装置の要部概略縦断面図である。
【図4】図3の鍛造加工用金型装置の平面図である。
【図5】図3のIV−IV線矢視断面図である。
【図6】図3のV−V線矢視断面図である。
【符号の説明】
10…鍛造加工用金型装置 12…キャビティ
14…金型部(鍛造加工用金型) 16…補強部材
20、46…金属部 22a、22b、48…セラミックス部
24a、24b、50…傾斜部 44…パンチ(鍛造加工用金型)
W…ワーク K…バルブ
Claims (6)
- ワークに対して少なくとも2回の冷間鍛造加工を施す冷間鍛造加工方法において、
前記ワークに対して冷間鍛造加工を施した後、前記ワークに潤滑剤を塗布することによって該ワークの温度を100〜400℃として、次なる冷間鍛造加工を加工速度0.5〜5.0m/秒で施すことを特徴とする冷間鍛造加工方法。 - 請求項1記載の加工方法において、前記ワークの表面積をScm2、前記ワークに塗布する潤滑剤の吐出速度をVcm3/秒とするとき、V/Sを30〜300cm/秒とすることによって前記ワークの温度を100〜400℃とすることを特徴とする冷間鍛造加工方法。
- 請求項2記載の加工方法において、前記ワークの表面積Sが3〜500cm2であることを特徴とする冷間鍛造加工方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の加工方法において、冷間鍛造加工が施された前記ワークに対し、5秒以内に次なる冷間鍛造加工を開始することを特徴とする冷間鍛造加工方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の加工方法において、ワークの変形率が最大となる冷間鍛造加工を行う際に、セラミックスと金属とを含有し、かつ表面から内部に指向してセラミックスおよび金属の組成比が変化する傾斜複合材からなる鍛造加工用金型を使用することを特徴とする冷間鍛造加工方法。
- 請求項5記載の加工方法において、前記鍛造加工用金型での金属の組成比が該鍛造加工用金型の表面から内部に指向して上昇するとともに、セラミックスの組成比が該鍛造加工用金型の表面から内部に指向して低下することを特徴とする冷間鍛造加工方法。
Priority Applications (1)
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JP2003107463A JP2004314085A (ja) | 2003-04-11 | 2003-04-11 | 冷間鍛造加工方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2005051565A1 (ja) * | 2003-11-26 | 2005-06-09 | Honda Motor Co., Ltd. | 鍛造成形方法及び装置 |
CN111069502A (zh) * | 2019-12-26 | 2020-04-28 | 顺科新能源技术股份有限公司 | 零件锻造装置及零件锻造方法 |
-
2003
- 2003-04-11 JP JP2003107463A patent/JP2004314085A/ja active Pending
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WO2005051565A1 (ja) * | 2003-11-26 | 2005-06-09 | Honda Motor Co., Ltd. | 鍛造成形方法及び装置 |
CN111069502A (zh) * | 2019-12-26 | 2020-04-28 | 顺科新能源技术股份有限公司 | 零件锻造装置及零件锻造方法 |
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