JP2004312380A - 帯域管理システム - Google Patents
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Abstract
【課題】帯域資源の利用効率を高めるとともに、通信の信頼性を高める。
【解決手段】所定の通信ネットワーク上で所定の単位信号を用いたリアルタイム通信を実行するために帯域管理を行う帯域管理システムにおいて、予め搭載してある第1の経路表と、単位信号が有する第1の宛先識別子をもとに、単位信号の経路を決定して中継処理を行う複数の第1の中継装置と、予め搭載してある第2の経路表と、リアルタイム通信の最終的な宛先を指定するために単位信号が有する第2の宛先識別子をもとに、単位信号の経路を決定して中継処理を行う複数の第2の中継装置とを備え、第2の中継装置は、通信ネットワークの構造上、リアルタイム通信の最終的な宛先までの経路が複数存在する場合、第2の経路表をもとに、いずれか1つの経路を選択し、その選択結果に応じて第1の宛先識別子を書き換える。
【選択図】 図1
【解決手段】所定の通信ネットワーク上で所定の単位信号を用いたリアルタイム通信を実行するために帯域管理を行う帯域管理システムにおいて、予め搭載してある第1の経路表と、単位信号が有する第1の宛先識別子をもとに、単位信号の経路を決定して中継処理を行う複数の第1の中継装置と、予め搭載してある第2の経路表と、リアルタイム通信の最終的な宛先を指定するために単位信号が有する第2の宛先識別子をもとに、単位信号の経路を決定して中継処理を行う複数の第2の中継装置とを備え、第2の中継装置は、通信ネットワークの構造上、リアルタイム通信の最終的な宛先までの経路が複数存在する場合、第2の経路表をもとに、いずれか1つの経路を選択し、その選択結果に応じて第1の宛先識別子を書き換える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の所属する技術分野】
本発明は帯域管理システムに関し、例えば、ITU−T勧告H.323に準拠した環境などでVoIP(Voice ovre IP)による音声通信を行う場合などに適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
ITU−T勧告H.323に準拠したIPネットワークでVoIPによる音声通信を行う場合、そのIPネットワークにゲートキーパを設置すれば、ゲートキーパが提供する帯域管理機能を利用することができる。
【0003】
ゲートキーパが提供する帯域管理機能は、ゲートキーパが備える帯域管理テーブルのその時点の内容に基づいて実行される。すなわち、VoIP端末(IP電話機など)等のエンドポイントがARQメッセージを送信してゲートキーパにアドミッションを要求してきたとき、帯域管理テーブルの内容が十分な帯域の余裕があることを示す場合には、そのアドミッションを許可し、反対に、十分な帯域の余裕がないことを示す場合には、そのアドミッションを拒否する。
【0004】
アドミッションが許可されると、VoIP端末間で呼設定が行われ、音声データを収容したIPパケットが送受されるようになる。
【0005】
また、ITU−T勧告H.323に準拠したゲートキーパを用いた技術として、下記の特許文献1があげられる。
【0006】
特許文献1では、RSVPプロトコルを利用して、ゲートウエイ装置相互間や、ゲートウエイ装置と音声中継ルータの間における帯域予約を最適化して、通信品質を維持する方法が記載されている。
【0007】
この特許文献1にはまた、同じ宛先と通信するための経路が複数存在し、各経路に異なるゲートウエイ装置が配置されている場合、いずれかのゲートウエイ装置が輻輳状態や、装置障害状態となり、正常な通信を行うことができなくなったときには、ゲートキーパが、ゲートウエイ装置の選択を切り替えて、新たな経路で呼接続を行う方法が記載されている。
【0008】
【非特許文献1】
ITU−T勧告H.323
【0009】
【特許文献1】
特開2000−224239
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述したゲートキーパはIPネットワークの帯域資源を直接、監視する手段を持たないため、前記帯域管理テーブルの内容は不完全なものとなる可能性がある。これは、IPネットワーク内の多数のルータが備えたルーティングテーブルの内容を、ゲートキーパが知ることができないためである。
【0011】
ルーティングテーブルとは、基本的に、宛先IPアドレスとネクストホップの対応関係を登録したテーブルである。
【0012】
IP電話機のユーザがVoIPによる音声通話を行おうとする場合、IP電話機を操作して宛先のユーザの電話番号(着信先電話番号)を入力する。しかしながらIPネットワーク上で通信端末(IP電話機はその一例)を識別するたに使用できる唯一の識別子はIPアドレスであるため、この着信先電話番号はIPアドレスに変換され、変換後のIPアドレス(このIPアドレスはゲートキーパが提供するアドレス変換機能によって得られる)が前記IPパケットの宛先IPアドレスとされる。
【0013】
IPネットワーク上における経路は、前記ルータが行うルーティングに依存し、ゲートキーパによる制御や監視の及ばないところで決まってしまう。ルーティングとは、ルータが自身が搭載するルーティングテーブルと、受信したIPパケットの宛先IPアドレスの対応を検査し、そのIPパケットの直後の転送先(すなわち、ネクストホップ)を特定した上で、特定したネクストホップへIPパケットの転送を行う処理である。IPネットワーク上に存在する隣接するルータが次々にこのルーティングを実行することにより、前記経路が決まる。
【0014】
IPパケットの送信元から宛先にいたる経路が物理的に1つしか存在し得ない場合、ルータが行うルーティングをゲートキーパが制御、監視することができなくても問題は生じないが、例えば、図2に示すように物理的にメッシュ型のトポロジを有するIPネットワーク10の場合などには、IPパケットの送信元(例えば、電話機19)から宛先(例えば、電話機24)にいたる経路が物理的に複数存在するために問題が顕在化する。
【0015】
例えば、局ノード15の配下にある電話機19のユーザU1が、局ノード17の配下にある電話機24のユーザU6に電話をかけようとする場合、取りうる経路は、ルータ11(,リンクL1),ルータ14(,リンクL6)、ルータ13の経路のほか、ルータ11,ルータ12,ルータ13の経路や、ルータ11,ルータ12,ルータ14,ルータ13の経路など、多様である。各ルータで行われるルーティングにより、この多様な経路のうち、いずれか1つが選択されることになるが、その選択結果を、ゲートキーパ25が認識する方法はない。
【0016】
したがって、図2に示すIPネットワーク10で、点線で示すような経路SN1〜SN3でIPパケットが伝送されて音声通話が行われている状態では、ゲートキーパ25が認識している帯域の消費量(トラヒック量)と実際の音声トラヒック量のあいだに図3に示すような大きなずれが生じる可能性がある。ゲートキーパ25が認識している帯域の消費量は、その帯域管理テーブルBM1の内容に対応したものである。
【0017】
図3において、ゲートキーパ25が認識しているトラヒック量(前記帯域管理テーブルBM1の内容に相当)は、局ノード15と17のあいだが2通話分で、局ノード16と17のあいだが1通話分であるが、実際のトラヒックは、局ノード15と16のあいだが1通話分で、局ノード15と18のあいだが1通話分で、局ノード16と17のあいだが3通話分で、局ノード16と18のあいだが1通話分である。
【0018】
前記ARQメッセージや呼制御メッセージを通じてゲートキーパ25が認識し得るのは、音声通話のためのIPパケットの送信元(例えば、電話機19)と、最終的な宛先(例えば、電話機24)だけであり、途中の中継経路(前記ルーティングテーブルに相当)を認識することができないために、このようなずれが生じるものである。
【0019】
このように、実際の帯域消費量とゲートキーパ25の認識のあいだに大きなずれが存在する状態では、適切な帯域管理を行うことは不可能で、実際には十分な帯域の余裕があるのにアドミッション要求(ARQメッセージ)を拒否したり、反対に、十分な帯域の余裕がないのにアドミッション要求を許可したりする可能性がある。十分な帯域の余裕があるのにアドミッション要求を拒否することは、帯域資源の利用効率が低いことを意味し、十分な帯域の余裕がないのにアドミッション要求を許可することは、アドミッション要求の許可後、実際に呼制御や音声通話などを行う段階になって大量のパケット損失や大きな遅延が発生し、通信品質の低下などの不都合を招く可能性が高く、通信の信頼性が低いことを意味する。
【0020】
また、前記特許文献1では、いずれかのゲートウエイ装置に輻輳状態などの問題が発生したとき、ゲートキーパが、ゲートウエイ装置の選択を切り替えて、新たな経路で呼接続を行うことができるが、特許文献1におけるゲートウエイ装置や音声中継ルータは、図2に示した局ノード(例えば、15)に相当する構成要素である。そして、特許文献1のネットワーク構成は、エンド−エンドの経路がルータ(例えば、11)のルーティングによって決まるものではなく、ゲートキーパの制御によって一意に決まる単純な構成である。したがって、例えば、図2に示すネットワーク構成などのように、より複雑な構成の場合、特許文献1の技術で対応することは困難であり、特許文献1の技術を用いたとしても、帯域資源の利用効率を高め、通信の信頼性を高めることは難しい。
【0021】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するために、本発明では、所定の通信ネットワーク上で所定の単位信号を用いたリアルタイム通信を実行するために帯域管理を行う帯域管理システムにおいて、予め搭載してある第1の経路表と、前記単位信号が有する第1の宛先識別子をもとに、前記単位信号の経路を決定して中継処理を行う複数の第1の中継装置と、予め搭載してある第2の経路表と、前記リアルタイム通信の最終的な宛先を指定するために当該単位信号が有する第2の宛先識別子をもとに、当該単位信号の経路を決定して中継処理を行う複数の第2の中継装置とを備え、当該第2の中継装置は、前記通信ネットワークの構造上、前記リアルタイム通信の最終的な宛先までの経路が複数存在する場合、前記第2の経路表をもとに、いずれか1つの経路を選択し、その選択結果に応じて前記第1の宛先識別子を書き換えることを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
(A)実施形態
以下、本発明にかかる帯域管理システムを、ITU−T勧告H.323に準拠のVoIPネットワークに適用した場合を例に、実施形態について説明する。
【0023】
(A−1)実施形態の構成
本実施形態のVoIPネットワーク30の全体構成例を、図9に示す。
【0024】
図9において、当該VoIPネットワーク30は、ルータ31〜34と、局ノード35〜38と、電話機39〜44と、ゲートキーパ45と、リンクL10〜L13とを備えている。
【0025】
このうちリンクL10〜L13は、VoIPサービスを提供する通信事業者のIP−VPN網などであってもかまわないが、ここでは、専用線伝送網を想定する。
【0026】
したがって、リンクL10〜L13のそれぞれがディジタル専用線であり、各ルータ31〜34が当該ディジタル専用線L10〜L13を介して接続されている。なお、図示した各リンク(例えば、L10)は物理的に双方向の伝送路を含んでいる。例えば、リンクL10には、ルータ31から34への伝送路と、ルータ34から31への伝送路が含まれている。
【0027】
また、ルータ31〜34は、当該ディジタル専用線サービスを提供する通信事業者側の構成要素であってもよいが、ここでは、当該ディジタル専用線サービスを利用するユーザ企業などの拠点の構成要素であるものとする。したがって、このユーザ企業は4つの拠点(LAN(ローカルエリアネットワーク))ST1〜ST4を有しており、各拠点ST1〜ST4がディジタル専用線L10〜L13で接続されたネットワーク構成となる。
【0028】
拠点(例えば、ST1)の内部には、図示したルータ31、局ノード35や電話機39,40のほかに、ネットワーク機器(ルータ(31以外)、L2スイッチ、ハブなど)、サーバ類(DNSサーバなど)、データ通信用のホスト(パーソナルコンピュータなど)等が存在していてもよいことは当然である。
【0029】
ここで、前記拠点ST1のネットワークアドレスをAD10とし、拠点ST2のネットワークアドレスをAD20とし、拠点ST3のネットワークアドレスをAD30とし、拠点ST4のネットワークアドレスをAD40とする。
【0030】
全部で32ビット長のIPv4アドレスの場合、32ビットのうちどこまでをネットワーク部とするかは、通常、サブネットマスクを利用して決定されるが、例えば、左端の24ビットをネットワーク部とした場合、右端の8ビットはホスト部となる。ネットワーク部はネットワークを一意に指定する部分で、ホスト部はそのネットワークに属する1または複数のホストのなかで1つのホストを指定する部分である。ホスト部の全ビットが0のIPアドレスは、そのネットワーク(LAN)自身を指すIPアドレス(すなわち、ネットワークアドレス)である。
【0031】
ネットワークアドレスからホスト部の連続する0を除いたものはネットワーク部にほかならないから、ここでは、前記AD10からホスト部の0を除いたAD1を当該ネットワークアドレスAD10のネットワーク部とする。
【0032】
同様に、前記AD20から右端の0を除いたAD2を当該ネットワークアドレスAD20のネットワーク部とし、前記AD30から右端の0を除いたAD3を当該ネットワークアドレスAD30のネットワーク部とし、前記AD40から右端の0を除いたAD4を当該ネットワークアドレスAD40のネットワーク部とする。
【0033】
各ネットワークアドレスAD10〜AD40の拠点ST1〜ST4をLANポート側に接続したルータ31〜34は基本的に通常のルータであってよい。ただしリアルタイム性の高いVoIP通信を行うのであるから、ルータ31〜34が、VoIPパケット、すなわち音声データを収容したIPパケットを他のデータ(例えば、FTPプロトコルで転送されるデータなど)を収容したIPパケットより優先的に転送する優先制御機能などを搭載していることは望ましい。
【0034】
ルータ31の内部構成例を図12に示す。ルータ32〜34の内部構成も実質的に図12と同じであってよい。
【0035】
(A−1−1)ルータの内部構成例
図12において、当該ルータ31は、通信部50と、制御部51と、記憶部52と、ルーティングテーブル53とを備えている。
【0036】
このうち通信部50は、OSI参照モデルのデータリンク層および物理層に対応する通信機能を有する部分で、拠点の外部に接続するWANポートや、拠点の内部に接続するLANポートなどを含む。
【0037】
制御部51はハードウエア的にはルータ31のCPU(中央処理装置)に相当し、ソフトウエア的にはルータ31のOS(オペレーティングシステム)などに相当する部分である。ルータの本質的機能であるルーティングを実行するのは、このOSに含まれるIPモジュール(IPプロトコル処理ソフト)である。
【0038】
ルーティングテーブル部53は、上述したルーティングテーブルに対応する部分である。ルータ31のルーティングテーブルを他のルータのルーティングテーブルと区別するため、RT31とする。
【0039】
ルーティングテーブルRT31の内容は、一例として、図13(A)に示すようなものであってよい。図13(A)において、ルーティングテーブルRT31のデータ項目は、宛先IPアドレスと、ネクストホップの2項目である。
【0040】
宛先IPアドレスの値としては、32ビット長のIPv4アドレスのうち、上述したネットワーク部(例えば、AD2)だけを登録してある。また、ネクストホップは、各ルータ32または34をその符号で示してある。
【0041】
ルーティングテーブルRT31中、最上位の行(エントリ)E11の内容である「AD2,32」は、宛先IPアドレスとして、ネットワーク部がAD2のIPアドレスを持つIPパケットが転送されてきたら、ルータ32へ転送することを指定している。
【0042】
同様に、2番目の行E12の内容である「AD3,32」は、宛先IPアドレスとしてネットワーク部がAD3のIPアドレスを持つIPパケットが転送されてきたら、ルータ32へ転送することを指定し、最下位の行E13の内容である「AD4,34」は、宛先IPアドレスとしてネットワーク部がAD4のIPアドレスを持つIPパケットが転送されてきたら、ルータ34へ転送することを指定している。
【0043】
図13(B)にもこれと同様なルーティングテーブルRT32を示している。ただし、ルーティングテーブルRT32は、ルータ32に搭載されるルーティングテーブルであるから、各行の内容がRT1と異なるのは当然である。
【0044】
図12に示す記憶部52はハードウエア的には、RAM(ランダムアクセスメモリ)や、ハードディスクなどによって構成される記憶資源であり、ソフトウエア的には、データベースや各種のファイルがこの部分に含まれ得る。前記OSなどのプログラムファイルもこのようなファイルの一つであるから、OSも、その物理的な実体は、この記憶部52に位置する。同様に、ルーティングテーブルRT31も、その物理的な実体は記憶部52に位置する。
【0045】
一方、前記局ノード35は、このようなルータ31のLANポート側に接続されるノード装置であり、本実施形態の特徴的な構成要素である。
【0046】
局ノードの機能をどのような形態で各拠点に実装するかに関しては様々な方法が考えられ、例えば、ルータ31に局ノード35の機能を搭載したり、PBX(構内交換機)に局ノードの機能を搭載したり、独立した専用装置に局ノード35の機能を搭載したり、VoIPゲートウエイに局ノード35の機能を搭載したりすることも可能であるが、ここでは、IP−PBXに局ノードの機能を搭載するものとする。局ノード36〜38についても同様である。
【0047】
このIP−PBXは、別個にVoIPゲートウエイを必要としないIPトランク形式のIP−PBXである。
【0048】
局ノード35がIP−PBXである場合、局ノード35に収容されている電話機39、40は、VoIP対応の電話機(IP電話機)のこともあり、VoIP非対応の一般電話機のこともあるが、いずれにしてもアドミッションメッセージの送受や、呼制御メッセージの送受、および呼を確立したあとに転送される音声データを収容したIPパケットに関しては、IP−PBXが機能するものとする。
【0049】
局ノード35の内部構成例を図11に示す。局ノード36〜38の内部構成も実質的に図11と同じであってよい。
【0050】
(A−1−2)局ノードの内部構成例
図11において、この局ノード35は、通信部60と、制御部61と、記憶部62と、アドレス変換部63と、変換テーブル部64と、IPアドレス変換部65と、帯域管理部66とを備えている。
【0051】
このうち通信部60は前記通信部50に対応し、制御部61は前記制御部51に対応し、記憶部62は前記記憶部52に対応する。
【0052】
ただし本実施形態の場合、局ノード35は拠点ST1の内部に存在するため、その通信部60がWANポートを備える必要はない。
【0053】
また、IP−PBXとしての局ノード35は、収容している電話機(例えば、39)に呼制御メッセージが着信したり、反対に収容している電話機39から呼制御メッセージを発信したりするときには、電話機39と協調しながらゲートキーパ45と通信し、ゲートキーパ45が提供するサービスの内容に応じて処理を実行する。
【0054】
通常、IP−PBXはゲートキーパの機能を内蔵しているが、局ノード35はゲートキーパ機能を内蔵していないか、内蔵していたとしてもその機能を無効化していて、外部のゲートキーパ45のサービスを利用するものとする。
【0055】
ここでは、図9に示したVoIPネットワーク30全体が当該ゲートキーパ45が管理するゾーンに属するものとする。
【0056】
ゲートキーパを設けるか否かはオプションであるが、設けた場合、ゾーン内の各H.323構成要素(当該局ノード35もその1つ)は、ゲートキーパが提供する各種のサービスを利用しなければならない。このため、本実施形態では、局ノード35およびその他の局ノード36〜38も、ゲートキーパ45が提供するサービスを利用する必要がある。なお、H.323構成要素とは、ITU−T勧告H.323規格上の構成要素のことであり、IP−PBXやIP電話機などが該当し、一般のPBXや、一般電話機などは含まれない。
【0057】
ゲートキーパの機能にはアドレス変換機能、アドミッション制御機能、上述した帯域管理機能などがあり、局ノード35などのH.323構成要素に対し、これら各種機能に応じたサービスを提供する。
【0058】
本実施形態において、ゲートキーパ45は基本的にITU−T勧告H.323に準拠した通常のゲートキーパであってよい。したがって、ゲートキーパ45が備える各種機能も基本的に通常のものである。このゲートキーパ45は、帯域管理機能を実現するために、図8に示すように、帯域管理部46と、中央帯域管理テーブルBM11を備えている。
【0059】
この中央帯域管理テーブルBM11には、少なくとも、隣接する局ノード間の回線に関する使用中の帯域幅が格納されており、必要に応じて、隣接していない局ノード間の使用中の帯域幅も格納される。
【0060】
図8の例では、隣接する局ノード間で使用中の帯域幅は、35−36間がV11、38−35間がV12、36−37間がV13,37−34間がV14である。
【0061】
隣接していない局ノード間で使用中の帯域幅には、例えば、図9のネットワーク構成の場合、局ノード31と33のあいだの使用中帯域幅が該当する。隣接していない局ノード間の使用中帯域幅をゲートキーパ45の中央帯域管理テーブルBM11で管理する必要があるか否かは、ゲートキーパ45が具体的にどのような形でアドミッション制御を行うかに依存する。また、このアドミッション制御がどのような形の制御になるかは、局ノード(例えば、35)の機能などにも依存して決まる。
【0062】
実質的にゲートキーパ45の機能だけで一元的な帯域管理を行う場合には、VoIPネットワーク30上で起こり得るすべての組み合わせにつき、エンド−エンドで帯域管理を行う必要があるため、中央帯域管理テーブルBM11には、この組み合わせの数だけの行が必要となり、例えば、31−33間などの、隣接していない局ノード間で使用中の帯域幅も格納する必要がある。
【0063】
隣接していない局ノード間で使用中の帯域幅を中央帯域管理テーブルBM11で管理し、その管理を適切なものとするためには、ゲートキーパ45が、直接的または間接的に、ルーティングテーブル(例えば、RT31)の内容を認識する必要がある。間接的な認識は、ゲートキーパ45が後述する変換テーブル(例えば、TT35A、TT35Bなど)の内容を認識することによって形成され得る。
【0064】
ゲートキーパを介した制御信号のやり取り、すなわちシグナリングの方式としては、すべての制御信号をゲートキーパ経由でやり取りするGKRCS方式と、一部の制御信号(呼設定(SETUP)メッセージと応答(CONNECT)メッセージ)だけはエンドポイント(本実施形態では局ノード(例えば、35、37))間で直接やり取りするDECS方式があり、本発明はいずれの方式にも適用可能であるが、ここでは、DECS方式を用いるものとする。
【0065】
この制御信号には、例えば、ARQメッセージなどのアドミッションメッセージおよび、呼設定メッセージなどの呼制御メッセージが含まれる。
【0066】
局ノード35のアドレス変換部63は、発信時に、着信先電話番号の値から対応するIPアドレスを取得する部分で、取得したIPアドレスは、宛先IPアドレスとして使用する。このIPアドレスは、着信先電話番号をもとにゲートキーパ45に問い合わせを行うことによって取得されるものである。H.323構成要素である局ノード35は、直接、このような問い合わせをゲートキーパ45に対して行うことができる。
【0067】
ゲートキーパ45のアドレス変換機能は、ゾーン内におけるIPアドレスと電話番号の対応関係を登録したデータベースを装備しているため、この問い合わせに応えることができる。
【0068】
例えば、電話機40のユーザU40が電話機40を操作して電話機43の電話番号NB32を入力したものとすると、アドレス変換部63が、当該電話番号NB32に対応するIPアドレスをゲートキーパ45に問い合わせ、電話機43を指定するIPアドレス(ここでは、AD32とする)を取得することができる。これにより、局ノード35は、このIPアドレスAD32を、IPヘッダ中に宛先IPアドレスとして収容したIPパケットを送信することができる。
【0069】
ただしこの宛先IPアドレスとしてAD32を収容したIPパケットをそのまま送信したのでは、前記ルータ31が備えるルーティングテーブルRT31の行E12に応じてルータ32に転送され、ルータ32が備えるルーティングテーブルRT32の行E21に応じてルータ33へ転送されてしまい、図2に示したVoIPネットワーク10と同様、帯域管理テーブルBM1の内容と、VoIPネットワーク30上の実際の音声トラヒック量のあいだにずれが発生する可能性がある。ルーティングテーブル(例えば、RT31,RT32など)の内容を認識できないゲートキーパ45は、実際の音声トラヒック量を直接、認識することはできないからである。
【0070】
したがって、本実施形態の局ノード35は、ゲートキーパ45の問い合わせで得られたIPアドレス(例えば、AD32)をそのまま使用するのではなく、そのIPアドレスAD32をさらに変換した上で使用する。
【0071】
この変換の方法には様々なものがあり得るが、途中の局ノード(例えば、36,38)経由の転送が行えることと、最終的な宛先である電話機(ここでは、43)へIPパケット(その内容である音声データ(音声データに対応するアナログ音声信号))を届けることできることが必要である。したがって、この変換によって、最終的な宛先である電話機43を一意に指定する情報が失われてはならない。
【0072】
ここでは一例として、この変換では、IPアドレスのネットワーク部のみを変換し、ホスト部の値は変換せずに維持するものとする。
【0073】
したがって例えばAD32の場合なら、ホスト部に対応する右端の「2」は維持し、ネットワーク部に対応する「AD3」だけを変換することになる。当該AD3を変換するとき、変換先のネットワーク部をどのように決定するかは、変換テーブル部64が備える変換テーブルTT35の内容に応じて決まる。
【0074】
ネットワーク部の値を変更し、ホスト部の値を維持した結果、偶然、中継処理を行う局ノードの配下の電話機と同じIPアドレスとなることを防止する必要がある場合には、予め、各拠点ST1〜ST4の電話機に付与するIPアドレスのホスト部が重複しないようにIPアドレスを付与しておくとよい。
【0075】
なお、電話機を指定するIPアドレス(例えば、AD32)は、IP−PBXである局ノード37が搭載するIPトランクに付与されたIPアドレスであってよい。
【0076】
局ノード35が有する変換テーブルTT35は、発信用の変換テーブルTT35Aと、中継用の変換テーブルTT35Bから構成される。発信用変換テーブルTT35Aの内容は例えば図15(A)に示す通りであってよく、中継用変換テーブルTT35Bの内容は例えば図15(B)に示す通りであってよい。
【0077】
発信用変換テーブルTT35Aは自拠点ST1から他の拠点(例えば、ST3)へ発信するときに適用し、中継用変換テーブルTT35Bは、他拠点(例えば、ST2)から送信されたIPパケットを他拠点(例えば、ST4)へ中継するときに適用する。本実施形態において、局ノード(例えば、35)が行う中継(中継処理)は、形式的には、IP−PBXまたはゲートキーパの付加サービスとして着信呼を転送する際の動作に類似している。
【0078】
処理しようとするIPパケットが、自拠点ST1から送信されたIPパケットであるか否かを判定する方法には、様々なものがあり得るが、例えば、受信したIPパケットのIPヘッダに含まれる送信元IPアドレスに基づいて判定することもでき、そのIPパケット(または情報)を受信したポートをもとに判定することもできる。例えば、自拠点内の一般電話機の場合、接続されるのはアナログポートであるため、アナログポートから受信した情報(この場合、受信時点ではまだIPパケット化されていない)ならば、自拠点ST1から送信されたIPパケット(情報)であることが分かる。
【0079】
この判定に送信元IPアドレスを使用できるのは、本実施形態の構成上、局ノード(例えば、35)は、IPヘッダ中のアドレスのうち、宛先IPアドレスは中継時には必ず(必要に応じて発信時にも)変換する必要があるが、送信元IPアドレスは変換することなく、最初のものを維持することができるため、送信元IPアドレスをもとにIPパケットの送信元の拠点を特定することが可能だからである。
【0080】
また、後述する発信特番が入力されたことをもって、自拠点からの発信であると判定することができることは当然である。
【0081】
自拠点ST1から他の拠点(例えば、ST3)へ発信するときに適用する前記発信用変換テーブルTT35Aは、図15(A)の最上位の行E31に示すように、AD3すなわち拠点ST3へ発信するときには、当該AD3をAD2に変換する。拠点ST3はST1に隣接していないためにこのような変換が必要になる。拠点ST1に隣接している拠点(ST2,またはST4)へ発信する場合には、ネットワーク部は実質的に変換する必要はないが、ここでは、発信用変換テーブルTT35A内に変換元と変換先の値が同じ行E32,E33を容易して、形式的に変換を行うものとしている。
【0082】
なお、AD3を変換するとき、AD2ではなく、AD4へ変換するようにしてもよいことは当然である。例えば、リンクL10側の帯域に比べてリンクL11側の帯域が広い場合(L11のほうが、より高速なディジタル専用線である場合)などに、当該AD3をAD2へ変換することも望ましい。
【0083】
また、L10、L11双方の経路の輻輳度などを検査し、輻輳度の変動に応じて、行E31の内容を書き換えるようにしてもよい。輻輳していないほうの経路を利用すれば、高い通信品質が得られ、VoIPネットワーク30全体として帯域の利用効率が高まるからである。
【0084】
あるいは、もっと単純にラウンドロビン方式を用いて、自拠点ST1内から他の拠点(例えば、ST3)へ発信するたびに、交互に、経路を変更するようにしてもよい。これは、例えば、最初の発信ではAD3をAD2に変換し、2回目の発信ではAD3をAD4に変換し、3回目の発信ではAD3をAD2に変換し、…という処理を繰り返すものである。発信のたびに行E31の内容を書き換えることでこのような処理が可能となる。
【0085】
宛先IPアドレスのネットワーク部であるAD3をAD2に変換した上で当該IPパケットをルータ31に転送すれば、ルータ31は前記ルーティングテーブルRT31にしたがって当該IPパケットをルータ32へ転送する。ネットワーク部としてAD2を有する宛先IPアドレスは拠点ST2自身の内部のホスト宛てであることを意味するから、ルータ32は当該IPパケットを他のルータ(ここでは、33)へ中継することなく、LANポート側から拠点ST21内へ転送する。このIPパケットは局ノード36で受信されるから、確実に局ノード36による中継処理を受けることができる。
【0086】
このような発信用または中継用変換テーブルによる宛先IPアドレスの変換を繰り返せば、各ルータ31〜34のルーティングテーブルRT31〜RT34の内容にかかわらず、所望の局ノードによる中継を行わせ、経路を制御することもであるが、発信用変換テーブル(例えば、TT35A)や中継用変換テーブル(例えば、TT35B)の内容は、ルーティングテーブル(例えば、RT31)の内容を反映したものであることが望ましい
ルーティングテーブルに合わせて変換テーブルの内容を変更しなければ、局ノード(例えば、35)の動作とルータ(例えば、31)の動作が複合された結果として、VoIPのための1つのIPパケットが同じリンク(例えば、L11)を2度伝送されること等が起こり得、伝送効率の低下や、実際の帯域消費量とゲートキーパ45の認識の間のずれの発生などの問題が起きるからである。
【0087】
局ノード35も、前記局ノード36と同様に他の拠点のために中継処理を行うことがあり、また、自拠点内の電話機(例えば、39)宛てにIPパケットを転送することもあるのは当然である。
【0088】
局ノード35は、着信先電話番号を含むIPパケットを受信した場合、そのIPパケットを自拠点内の電話機(例えば、40)へ転送するか、または、隣接する拠点(例えば、ST2)へ中継するかは、その着信先電話番号が自局の局番NB1と一致するか否かをもとに判定することができる。
【0089】
呼制御メッセージのうち呼設定メッセージにより呼が確立されたあと、その呼の切断が行われるまでの間、同じ送信元IPアドレスから送信されてくるIPパケット群は、自拠点内へ転送(または、中継)のいずれかに固定して処理するようにするとよい。これにより局ノード36、ユーザ間の通話のために転送される音声データを収容したIPパケットに、着信先電話番号が収容されていなくても、中継を行うか、自拠点内へ転送するかを適切に判定することができる。
【0090】
1つの呼が確立されたか否かや、切断されたか否かの情報を管理する機能は、呼管理機能に属するものと考えられる。ゲートキーパ45もオプションの呼管理機能を有することがあるが、ゲートキーパ45の呼管理機能が、呼設定を要求する側のH.323構成要素(例えば、35)からその呼設定を最終的に受ける側のH.323構成要素(例えば、37)までを単位とするエンド−エンドの呼管理しか行えないのに対し、ここで局ノード(例えば、35)が行う呼管理はエンド−エンドの呼を複数の呼に分割し、分割した各呼を独立した呼として管理するものである。
【0091】
本実施形態では、隣接していない局ノード間に呼を設定する場合、経路の途中にある局ノードごとに呼設定を終端し、ホップバイホップに呼設定を行うためである。ただしここでいうホップバイホップとは、必ずしもルータごとであることを意味せず、局ノードごとに呼設定を行うことを意味する。図9の例では、局ノードの数とルータの数が一致しているが、一般的には、これらの数は一致せず、隣接する局ノードのあいだに多数のルータが存在していても、隣接する局ノード間は1ホップとみなす。
【0092】
この点は、経路上にルータ以外の図示しないネットワーク機器(例えば、L2スイッチなど)が存在していても同様である。一般的には、経路上の任意の場所にL2スイッチなどのネットワーク機器が存在し得る。
【0093】
局ノードによる呼管理は、局ノード35自身が、自局内に転送または中継する呼に関して実行するものである。このとき局ノードは、既存の空塞管理の機能を利用することができる。空塞管理機能は、例えば、図10に示すように、局ノードが自身に対する入回線や出回線に対する空きや塞がりに関する情報(トランク制御情報)を管理するために搭載している機能である。局ノード35は、呼制御メッセージの転送などに際してIPパケットに含まれ得る着信先電話番号などに基づいて、自局内の電話機へ転送するか、中継するかを判定することができる。
【0094】
この着信先電話番号などの電話番号に関し、局番とその局番に属する電話機の電話番号(内線番号)に、上述したIPアドレスのネットワーク部とホスト部と同様な表記を適用すると、例えば、拠点ST1の局番がNB1ならば、その局番に属する電話機(例えば、39)の電話番号は、局番+内線番号で、NB11となる。
【0095】
ただし、拠点ST1内のユーザ(例えば、U40)が他の拠点へ電話をかける場合、所定の特殊な番号(発信特番)を当該電話番号の前に入力する必要がある。この発信特番は、リンク(例えば、L11)などの中継線経由で遠隔地のPBX内線への発信であることを自拠点内のIP−PBXである局ノード35に伝えるための番号であるため、着信先電話番号として呼制御メッセージなどに含まれるものではない。
【0096】
図14に示すように、図9のVoIPネットワーク30では、電話番号の局番はIPアドレスのネットワーク部に対応し、電話機の電話番号(例えば、内線番号)は、IPアドレスのホスト部に対応する。
【0097】
したがって、着信先電話番号を含むIPパケットを受信した場合、局ノード35はその着信先電話番号の局番がNB1ならば中継せず、NB1以外の番号(例えば、NB3)なら中継することになる。
【0098】
局ノード35の前記アドレス変換部63は、この中継処理を行うときにも機能する。この中継処理を細分すると、着信(受信(例えば、呼設定の終端))と、中継と、発信(送信)に分けることができる。当該発信の際には拠点ST1の内部から発信する通常の発信と同様にアドレス変換のためにゲートキーパ45へ問い合わせを行うことも可能であるが、ここでは、中継処理に際しては、ゲートキーパ45に問い合わせを行うことなく、図15(B)に示す中継用変換テーブルTT35Bを用いてアドレス変換を実行するものとする。
【0099】
受信したIPパケットが呼設定メッセージに対応するものなど、着信先電話番号(着信先の局番があればよい)を含んでいる場合には、その着信先電話番号(着信局番)をもとに、受信時点の宛先IPアドレスのネットワーク部(中継処理の場合、拠点ST1の局ノード35が受信したのであるから、これは必ずAD1)を該当するネットワーク部に変換することができる。
【0100】
例えば、着信局番が拠点ST2を指すNB2である場合には、図15(B)の行E41の内容に応じて、宛先IPアドレスのネットワーク部をAD1からAD2に変換する。これにより、このIPパケットを受け取ったルータ31は、前記ルーティングテーブルRT31にしたがって、当該IPパケットをルータ32へ転送する。また、ルータ32はこのIPパケットを自拠点ST2内へ転送するから、局ノード36が受信することができる。
【0101】
着信局番が拠点ST4を指すNB4である場合には、図15(B)の行E42の内容に応じて、宛先IPアドレスのネットワーク部をAD1からAD4に変換する。これにより、このIPパケットを受け取ったルータ31は、前記ルーティングテーブルRT31にしたがって、当該IPパケットをルータ34へ転送する。また、ルータ34はこのIPパケットを自拠点ST4内へ転送するから、局ノード38が受信することができる。
【0102】
なお、図9のネットワーク構成では、例えば、拠点ST4から拠点ST3に属する宛先へIPパケットを送信する場合、ルータ34からルータ33へ転送するホップ数が最小となる経路以外に、ルータ34から、31,32,33の順番で転送するホップ数の大きな経路を選択することも可能であるが、図15(B)では、ホップ数が最小となる経路が選択されるものと想定し、このようなホップ数の大きい経路が選択される場合の中継に対応する行は用意していない。
【0103】
中継処理において、当該アドレス変換部63が行うアドレス変換は局ノード35自身が実行するものであり、ゲートキーパ45が提供するアドレス変換機能を利用する必要はないから、本実施形態により、ゲートキーパ45の負荷が図2に示したゲートキーパ25よりも大きくなることはない。
【0104】
IPアドレス変換部65は、受信したIPパケットが呼設定メッセージに対応するものなどのように着信先電話番号(着信局番)を含んでいるものでない場合に、宛先IPアドレスの変換を行う部分で、前記呼管理機能を利用する。
【0105】
本実施形態の場合、転送するIPパケットの宛先IPアドレスは各局ノード(例えば、35)で本来の宛先を示すものから変換されるため、着信局番が含まれていなければ、そのIPパケットのみから宛先を特定することは困難である。ただし、1つの呼が設定されてから切断されるまでのあいだは、同じ送信元IPアドレスから、同じ最終的な宛先に宛てたIPパケットの送信(または中継)が繰り返される点を利用して宛先IPアドレスのネットワーク部を変換することができる。
【0106】
したがって、例えば、呼設定のとき宛先IPアドレスのネットワーク部をAD2へ変換したものと同じ送信元IPアドレス(一例として、AD12)を持つIPパケットの宛先IPアドレスの変換では、そのネットワーク部を、当該AD2へ変換することになる。この処理は、送信の場合でも、中継の場合でも同じである。
【0107】
上述した局ノード(例えば、35)による呼管理機能は、このIPアドレス変換部65のためにも活用することができる。ただしIPアドレス変換部65のために必要な呼管理機能は、局ノード35自身が、発信(送信)または中継する呼に関するものでよい。
【0108】
前記制御部61に接続された帯域管理部66は、局ノード35の内部において帯域管理を行う部分で、帯域管理テーブルBB35を備えている。
【0109】
当該帯域管理テーブルBB35には、当該局ノード35が中継、発信、または着信する呼に関する帯域管理を行うためのテーブルで、例えば、図7に示すように回線ごと(リンクごと)に、局ノード35が中継、発信、または着信する呼のトラヒック量を格納している。VoIPネットワーク30が運用されているとき、各トラヒック量は時々刻々と変動し得る。なお、システム構成によっては、1つの呼が維持されている途中で、その呼のための帯域が増加したり、減少したりすることもあり得る。
【0110】
図7の例で、35−36間の回線(リンクL11)のトラヒック量はV11であり、38−35間の回線(リンクL10)のトラヒック量はV12である。このようなトラヒック量を各局ノードが取得する方法としては様々なものが考えられるが、例えば、IPトランクのチャネルの空塞を示す情報をもとに容易に取得することが可能である。
【0111】
図7は、当該局ノード35を図11とは別な観点から表現した構成例である。
【0112】
図7において、IP−PBXである局ノード35は、VoIP処理部80と、PRI(Primary Rate Interface)処理部81と、H.323処理部82と、Q.931処理部83と、呼処理部84と、前記帯域管理部66とを備えている。
【0113】
このうち構成要素80〜84は、主として、図11の制御部61に対応する機能である。
【0114】
以下、上記のような構成を有する本実施形態の動作について、図1のフローチャートを参照しながら説明する。図1のフローチャートは、S10〜S13の各ステップを備えている。
【0115】
(A−2)実施形態の動作
ここでは、拠点ST1内のユーザU39が電話機39を用いて拠点ST3内の電話機43へ電話をかける場合を例に説明する。
【0116】
ユーザU39が電話機39をオフフックして、前記発信特番と、それにつづく、電話機43の電話番号(着信先電話番号)NB33を指定する。
【0117】
局ノード35は、発信特番および着信先電話番号を受け取ると(S10)、この発信特番から遠隔地のPBX内線への発信であることが分かるため、ゲートキーパ45へ問い合わせを行い、当該着信先電話番号(着電番号)に対応するIPアドレスであるAD32を取得する。
【0118】
当該AD32の取得のまえに実際には、局ノード35からARQメッセージが送信されてゲートキーパ45によるアドミッション制御が行われるが、そのアドミッション制御の基礎となる中央帯域管理テーブルBM11の生成は、以降の動作と同様な動作によって各局ノードに蓄積された帯域管理テーブル(例えば、局ノード35の帯域管理テーブルBB35)をもとに実行されるものである。ここではゲートキーパ45によるアドミッション制御ではACFメッセージが返送され、当該局ノード35からのアドミッション要求が承認されたものとする。
【0119】
この承認の後に行われる前記問い合わせによって得られたIPアドレスAD32のネットワーク部である「AD3」は、図15(A)に示す前記発信用変換テーブルTT35Aの行E31をもとにAD2へ変換され(S11)、ホスト部である「2」は維持されるため(S12)、結局、当該AD32は、AD22(=AD2+2)に変換されてIPパケットの宛先IPアドレスとされる(S13)。
【0120】
前記局ノード35から当該IPパケットが送出されると、ルータ31が図13(A)に示すルーティングテーブルRT31に基づいてルーティングした結果、リンクL11を経てルータ32に届けられる。
【0121】
AD20は拠点ST2を示すネットワークアドレスであるから、当該IPパケットはルータ32におけるルーティングにより、拠点ST2の内部へ転送され、局ノード36に受信される。
【0122】
本実施形態は前記シグナリング方式として前記DECS方式を用いているため、呼を中継する1または複数の局ノード(ここでは、36)は、その呼に関し、ユーザU39などの会話音声を示す音声データを収容したIPパケットを受信する前に、呼設定(SETUP)メッセージを収容したIPパケットを受信することができる。呼設定メッセージには着電番号が含まれているため、例えば、局ノード36は中継用変換テーブルTT36B(図15(B)に示すTT35Bに対応)をもとに、中継処理を行うことが可能である。
【0123】
この中継処理は、上述したように、着信(受信)、中継、発信(送信)に分けることができるが、着信の部分では、最終的な宛先が電話機41である場合と同様に、呼設定の受付が行われ得る。また、発信の部分では、基本的に当該IPパケットの送信元である局ノード35で行われたものと同様、図1のフローチャートに応じた処理が実行される。
【0124】
ただし、中継処理では、ステップS10の着電番号の受付は、IPパケット中に収容されている着電番号をもとに行うことになる。また、上述したように中継処理では、ゲートキーパ45への問い合わせは省略し、中継用変換テーブルTT36Bに基づいたアドレス変換を実行する。
【0125】
局ノード36による中継処理のあと、当該IPパケットは、ルータ32,33を経由して最終的な宛先である電話機43を収容した拠点ST3の局ノード37に着信し、局ノード37を介して電話機43のベルを鳴らしユーザU43を呼び出すことができる。
【0126】
ユーザU43が電話機43をオフフックすれば、応答(CONNECT)メッセージが収容されたIPパケットが返送され、電話機39と43のあいだに呼が確立され、ユーザU39とU43の会話音声を収容したIPパケットがやり取りされる通話状態となる。
【0127】
応答メッセージは通常、呼設定メッセージと同じ経路(ここでは、35,31,32,36、32,33、37の経路)を反対方向に転送されるが、本実施形態のネットワーク構成では、呼設定メッセージと異なる経路(例えば、37,33,34,38,34,31、35の経路)を応答メッセージが転送されるようにすることも可能である。ただし応答メッセージは呼設定メッセージと同じ経路を反対方向に転送するようにしたほうが、経路上の局ノード(例えば、32)における呼管理などは容易になるものと考えられる。
【0128】
応答メッセージの転送経路が呼設定メッセージと同じであってもなくても、応答メッセージに対して経路上のルータや局ノードで行われる処理の内容は、呼設定メッセージが転送された場合と同様であってよい。
【0129】
なお、前記通話状態において局ノード(ここでは、36)が、音声データを収容したIPパケットを中継するとき、通常のH.323プロトコル体系にしたがった処理を行うと、H.323プロトコル体系中の各階層のプロトコルを処理するモジュールの機能によっては、VoIP処理部80でIPパケットから音声データを取り出したり、取り出した音声データをアナログ信号に変換したりする処理が行われる可能性が高い。
【0130】
しかし局ノード36が行うのは中継処理であるから、音声データを取り出すことも、アナログ信号に変換することも不要である。
【0131】
また、中継処理である以上、音声データを収容したIPパケットを送信することが必要であるため、音声データを取り出した場合には、再度、その音声データをIPパケットに収容する処理が必要になり、アナログ信号に変換した場合には、そのアナログ信号をPCMにより再度ディジタル信号(音声データ)に変換した上でその音声データをIPパケットに収容する処理が必要になってしまう。
【0132】
中継時にこのような処理を実行すると、遅延時間の増大や、音質低下などの問題をまねく可能性が高く、また、局ノード36の処理能力に対し、不必要に大きな負荷をかけることにもなる。
【0133】
そこで、本実施形態では、図5に示すように、中継処理を行う局ノード(ここでは、36)は、IPパケットから音声データを取り出すこと等の不必要な処理は実行せず、IPパケットのまま中継するものとする。これにより、遅延時間の低減、音質維持、負荷軽減などの効果を得ることができる。
【0134】
また、各局ノードの内部では、自局ノードでステップS10〜S13が実行されるとき、またはその前後に上述した帯域管理テーブル(例えば、局ノード35なら帯域管理テーブルBB35)の該当する行のトラヒック量の値(例えば、前記V11)が更新される。どのタイミングでこの更新を行うかについては、様々な方法が考えられるが、例えば、ある呼設定メッセージに対応する応答メッセージが返送されてきたタイミングで、この更新を行うようにするとよい。
【0135】
なお、呼設定メッセージの転送方向が反対のケース、例えば、拠点ST3内のユーザU43が電話機43を用いて拠点ST1内の電話機39へ電話をかける場合の動作も以上の動作と同様である。
【0136】
また、経路上にルータ以外のネットワーク機器、例えば、上述したL2スイッチなどが存在していても、以上の動作は同様である。
【0137】
この場合、以上の動作を例えば図4,図6を用いて表現することができる。
【0138】
図4および図6では、前記局番NB1〜NB3を、NB1=30,NB2=20,NB3=30とし、局ノード35と36のあいだには、2つのルータ85,86と、2つスイッチ89,90とが介在し、局ノード36と37のあいだには2つのルータ87,88と、2つのスイッチ90,91とが介在している。
【0139】
図4、図6の構成は、図9に示すVoIPネットワーク30のように、任意の局ノード間に複数の経路があり得るネットワーク構成のなかから一部を抜き出して示したものである。図4,図6上で、図9と同じ符号を付与した構成要素35,36,37,39,43の機能は、図9と対応する。
【0140】
図6には、局ノード37に収容された電話機43のユーザU43が局ノード35に収容された電話機39へ電話をかけた場合に各構成要素で実行される動作(S20〜S23)が示されている。すなわち、前記呼設定メッセージを収容したIPパケットが局ノード37から送信され、局ノード36による中継処理を経て、局ノード35に受信されている。
【0141】
これに対する応答メッセージが電話機39,局ノード35側から送信されると、応答メッセージを収容したIPパケットも、前記呼設定メッセージを収容したIPパケットと同様に各局ノード(例えば、36)で処理され、呼設定メッセージと同じ経路を反対方向に転送されるから、局ノード35,36間および局ノード36,37間で呼が確立され、これらの呼を合成した転送経路を持つ呼として、局ノード37、35間の呼も確立される。
【0142】
これにより図4の点線で示すように、局ノード37,36,35の経路で、ユーザU43,U39の会話音声に対応する音声データを収容したIPパケットがやり取りされる通話状態になる。
【0143】
一方、前記ゲートキーパ45が持つ中央帯域管理テーブルBM11を生成するための動作は次のようになる。
【0144】
各局ノードが管理してる帯域管理テーブル(例えば、BB35)の内容を各回線のトラヒック量が更新されるたびに制御用のIPパケットでゲートキーパ45に送信するようにすれば、ゲートキーパ45は、受信した複数の帯域管理テーブルの内容をマージすることにより前記中央帯域管理テーブルBM11を生成することができ、VoIPネットワーク30の各回線(各リンクL10〜L11)に関する使用中の帯域幅を正確に認識することも可能となる。
【0145】
これにより、実際の帯域消費量とゲートキーパ45の認識のあいだのずれがなくなり、適切な帯域管理を行うことが可能となる。
【0146】
ただしゲートキーパ45が実際に適切な帯域管理を行い、その効果をVoIPネットワーク30上で発揮するには、実際の帯域消費量とゲートキーパ45の認識のあいだのずれがないだけでは十分ではなく、上述したようにゲートキーパ45が、直接的または間接的に、ルーティングテーブル(例えば、RT31)の内容を認識している必要がある。
【0147】
例えば、図9に示す電話機40のユーザU40が電話機44へ電話をかけようとして前記ARQメッセージがゲートキーパ45まで届いたとしても、この電話のための呼制御メッセージや音声データを収容したIPパケットが、35,36,37の経路(ルータで表現すると、31,32,33の経路)で転送されるか、35,38,37の経路(ルータで表現すると31,34,33の経路)で転送されるかがゲートキーパ45に判定できなければ、そのアドミッション要求を許可するべきか、拒否するべきか正確に判断できないからである。
【0148】
ただしこのような認識は、各帯域管理テーブルの内容を収容した制御用IPパケットの送信元である個々の局ノード35〜38を、ゲートキーパ45が識別するだけで比較的容易に形成することができる。
【0149】
この認識があることによって、前記マージを適切に実行して適切な中央帯域管理テーブルBM11を生成することができる。
【0150】
例えば、図8に示す状態の中央帯域管理テーブルBM11において、上から5つ目の行は回線35−37間に対応し、トラヒック量がV11+V13であるが、この行のトラヒック量(およびこの行)は、最上の回線35−36間の行のトラヒック量であるV11と、上から3つ目の回線36−37間の行のトラヒック量であるV13を加算することによって得られたものである。このような加算は、ゲートキーパ45が各局ノードを識別できてはじめて可能となるものである。
【0151】
一例として、各局ノードを示すIPアドレスを予め決めておけば、前記帯域管理テーブル(例えば、BB35)の内容を収容した制御用のIPパケットが受信されたとき、ゲートキーパ45は、その送信元IPアドレスをもとに各局ノードを識別することができる。
【0152】
(A−3)実施形態の効果
本実施形態によれば、実際の帯域消費量とゲートキーパ(45)の認識のあいだのずれがなくなり、適切な帯域管理を行うことが可能となる。
【0153】
これにより、十分な帯域の余裕があるのにアドミッション要求を拒否することを防止できるので、帯域資源の利用効率が高まる。
【0154】
また、十分な帯域の余裕がないのにアドミッション要求を許可することも防止できるため、アドミッション要求の許可後、実際に呼制御や音声通話などを行う段階になって大量のパケット損失や大きな遅延が発生することがなく、通信品質が向上し、通信の信頼性が高まる。
【0155】
(B)他の実施形態
上記実施形態にかかわらず、局ノード(例えば、35)の機能の一部を自拠点内の他の構成要素に配置してもかまわない。
【0156】
なお、上記実施形態では、拠点の数が全部で4つであり、拠点ST1とST3のあいだの拠点はST2(または、ST4)だけであったが、拠点数は4つより少なくてもよく、多くてもよい。拠点数がもっと多い場合でも、前記中継処理を実行する拠点が増加するだけのことで実質的な動作が変化するわけではない。
【0157】
すなわち、中継処理を行う拠点が1つの経路上に多数存在する場合、各拠点内の局ノードごとに同様な中継処理が実行され、局ノードごとに、当該IPパケットの宛先IPアドレスのネットワーク部が変更されることになる。
【0158】
また、本発明のネットワーク構成は、図9に示したものに限定する必要がないことは当然である。例えば、メッシュ構造のネットワーク構成にも適用することができる。任意の局ノードが他のすべての局ノードと隣接するフルメッシュ構造(例えば、図2に示したような構造)の場合にも本発明は適用することができる。
【0159】
フルメッシュ構造の場合、すべての局ノードが他のすべての局ノードに対し、1ホップでIPパケットを転送することが可能であるが、輻輳状態の変化、障害発生、リンクごとの帯域幅の相違などに配慮したIPパケットの転送を行うには、よりホップ数の大きい迂回路を取ることが必要となることが起こり得、迂回路を取る場合に、本発明を適用することができる。
【0160】
さらに、上記実施形態にかかわらず、各局ノード(例えば、35)は、中継処理を行うたびに、ゲートキーパ45のアドミッション制御機能やアドレス変換機能を利用するようにしてもよい。これは、中継処理のなかの前記発信(送信)のたびに、ARQメッセージの送信や呼設定メッセージの送信を行い、ゲートキーパ45とシグナリングするものである。この構成によれば、シグナリングのための通信トラヒックの増大や、ゲートキーパ45の処理負荷の増大などの不利があるものの、ゲートキーパ45の帯域管理テーブルBM11に、上述した隣接していない局ノード間で使用中の帯域幅を格納する必要がなくなる等の利点がある。
【0161】
また、上記実施形態ではゲートキーパ45を使用したが、本発明は、ゲートキーパを用いない場合にも適用可能である。
【0162】
例えば、各局ノード(例えば、35)が自身が搭載している帯域管理テーブル(例えば、BB35)に基づいて、各呼に関する許可や拒否を行う構成とすることができるからである。
【0163】
この構成では、経路上の1または複数の局ノード(例えば、36)のうち、いずれか1つでも拒否した場合には、全体としてその呼でその経路を使用することはできなくなり、経路上のすべての局ノードが許可した場合にのみ、その呼でその経路を使用することが可能となる。
【0164】
なお、上記実施形態において、ゲートキーパ45を省略し、各局ノードがゲートキーパの機能を搭載するようにしてもよい。その場合、複数ゾーンにまたがる呼設定などに際してはゲートキーパ間の通信が発生することになるが、基本的に、上記実施形態と同様な効果を得ることが可能である。各局ノードが自身が搭載している帯域管理テーブルに基づいて、各呼に関する許可や拒否を行う上述した構成も、各局ノードがゲートキーパの機能を搭載するケースに適用可能である。
【0165】
また、上記実施形態では、DECS方式を用いたが、本発明は上述したように、GKRCS方式にも適用可能である。
【0166】
前記GKRCS方式の場合、呼が確立したあとにやり取りされるIPパケットに着信先電話番号が収容されていないものとすると、ある呼に関し、各局ノード(例えば、35)が最初に受け取るIPパケットには、着信先電話番号が含まれていないことになるため、局ノードがどのようにしてそのIPパケットの最終的な宛先を識別し、適切な中継処理を行うかが問題となる。
【0167】
この問題を解決するには様々な方法があり得るが、一例として、IPパケットのペイロード部(データ部)の所定の位置に、最終的な宛先を示す宛先IPアドレスを収容するフィールドを用意しておき、中継処理に際しては、その宛先IPアドレスを利用するようにしてもよい。IPヘッダ中の宛先IPアドレスは、各局ノードで隣接する拠点を指定するものに変更されるが、ペイロード部に対してはこのような変更が行われないからである。
【0168】
また、局ノードがVoIPネットワーク30のネットワーク構成と各拠点のネットワークアドレスを認識していれば、送信元IPアドレスをもとに適切な中継処理を行うことも可能である。
【0169】
例えば、局ノード36が送信元IPアドレスのネットワーク部が拠点ST1を示すAD1のIPパケットを中継する場合、ネットワーク構成から、そのIPパケットの最終的な宛先は、拠点ST3の方向にあることが推測できるため、そのネットワーク部を拠点ST3のネットワーク部AD3に変換することで、中継処理を行うことが可能である。
【0170】
この場合、局ノード36は最終的な宛先を特定しているわけではないが、VoIPネットワークが図9に示すような比較的簡単な構成であれば、十分に対応可能である。
【0171】
なお、上記実施形態では、局ノードは、ユーザ企業などの拠点の構成要素であるものとしたが、必ずしもその必要はない。特に中継処理を行う局ノードは、PBXとしての機能のすべてを持つことが必須であるわけではないので、必ずしも配下に電話機(例えば、41など)を収容している必要もない。例えば、通信事業者が、もっぱら中継処理だけを目的に、このようなPBXとしての機能を持たない局ノードを設置することも可能である。
【0172】
また、上記実施形態では、主としてリンク(例えば、L11)がディジタル専用線である場合を想定したが、リンクがディジタル専用線に限定されるものではないことは、すでに述べた通りである。本発明は、IP−VPN網などにも適用可能である。
【0173】
なお、ルーティングテーブルに経路情報(前記宛先IPアドレスとネクストホップの対応関係)を設定する方法には、ネットワーク管理者などが予め手作業で設定しておくスタティックルーティングと、ルーティングプロトコルを利用して動的に設定するダイナミックルーティングがあるが、そのいずれに対しても、本発明は適用可能である。
【0174】
ただしダイナミックルーティングの場合には、VoIPネットワークの各経路における障害発生や輻輳状態の発生などに応じて、ルーティングテーブルの内容(すなわち、経路情報)が動的に変更され得るから、その変更に応じて、前記変換テーブル(例えば、TT35A、TT35B)の内容を変更することが望ましい。
【0175】
もちろん、スタティックルーティングの場合でも、経路情報を変更した場合には、変換テーブルの内容を変更することが望ましいことは同じである。
【0176】
ルーティングテーブルの経路情報に合わせて変換テーブルの内容を変更しなければ、局ノード(例えば、35)の動作とルータ(例えば、31)の動作が複合された結果として、VoIPのためのIPパケットが同じリンク(例えば、L11)を2度伝送されること等が起こり得、伝送効率の低下や、実際の帯域消費量とゲートキーパ45の認識の間のずれの発生などの問題が起きるからである。
【0177】
局ノードがルータとしてのインタフェースを隣接するルータ(例えば、図9の例では、局ノード35の場合、ルータ31が隣接するルータ)に対してルータとしてのインタフェースを提供し、ダイナミックルーティングに応じた経路情報の交換などを実行する構成とすれば、局ノードが経路情報の変更を自動的に認識することが可能である。
【0178】
また、局ノードがtracerouteコマンドを定期的に実行して前回の実行結果と比較解析すること等により、経路情報の変更を自動的に認識することも可能である。この方法は、ダイナミックルーティングだけでなく、スタティックルーティングに対しても有効である。また、tracerouteコマンドの宛先を変更することにより、隣接するルータの経路情報だけでなく、VoIPネットワーク上の全ルータの経路情報の変更を認識することも可能である。
【0179】
なお、上記実施形態では、VoIPを例に説明したが、本発明は、音声データ以外の情報(例えば、動画像データなど)を収容したIPパケットを通信する場合などにも適用することが可能である。例えば、ビデオ会議などを行う場合には、動画像データを転送することが必要になる。
【0180】
また、本発明では、OSI参照モデルのネットワーク層のプロトコルを、IPプロトコルに限定する必要はない。
【0181】
以上の説明では主としてハードウエア的に本発明を実現したが、本発明はソフトウエア的に実現することも可能である。
【0182】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、リアルタイム通信に関し、帯域資源の利用効率を高めるとともに、通信の信頼性を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るVoIPネットワークで使用する局ノードの動作例を示すフローチャートである。
【図2】発明が解決しようとする課題を説明するためのVoIPネットワークの全体構成例を示す概略図である。
【図3】図2に示したVoIPネットワークの動作説明図である。
【図4】実施形態の動作説明図である。
【図5】実施形態の動作説明図である。
【図6】実施形態の動作説明図である。
【図7】実施形態の動作説明図である。
【図8】実施形態の動作説明図である。
【図9】実施形態に係るVoIPネットワークの全体構成例を示す概略図である。
【図10】実施形態の動作説明図である。
【図11】実施形態に係るVoIPネットワークで使用する局ノードの内部構成例を示す概略図である。
【図12】実施形態に係るVoIPネットワークで使用するルータの内部構成例を示す概略図である。
【図13】実施形態に係るVoIPネットワークで使用するルータが搭載するルーティングテーブルの構成例を示す概略図である。
【図14】実施形態の動作説明図である。
【図15】実施形態に係るVoIPネットワークで使用する局ノードが搭載する変換テーブルの構成例を示す概略図である。
【符号の説明】
10、30…VoIPネットワーク、11〜14,31〜34…ルータ、15〜18,35〜38…局ノード、19〜24、39〜44…電話機、25,45…ゲートキーパ、L1〜L6、L10〜L13…リンク、NB1〜NB4…局番、NB11〜NB33…電話番号、RT31…RT34…ルーティングテーブル、TT35〜TT38…変換テーブル、ST1〜ST4…拠点(LAN)。
【発明の所属する技術分野】
本発明は帯域管理システムに関し、例えば、ITU−T勧告H.323に準拠した環境などでVoIP(Voice ovre IP)による音声通信を行う場合などに適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
ITU−T勧告H.323に準拠したIPネットワークでVoIPによる音声通信を行う場合、そのIPネットワークにゲートキーパを設置すれば、ゲートキーパが提供する帯域管理機能を利用することができる。
【0003】
ゲートキーパが提供する帯域管理機能は、ゲートキーパが備える帯域管理テーブルのその時点の内容に基づいて実行される。すなわち、VoIP端末(IP電話機など)等のエンドポイントがARQメッセージを送信してゲートキーパにアドミッションを要求してきたとき、帯域管理テーブルの内容が十分な帯域の余裕があることを示す場合には、そのアドミッションを許可し、反対に、十分な帯域の余裕がないことを示す場合には、そのアドミッションを拒否する。
【0004】
アドミッションが許可されると、VoIP端末間で呼設定が行われ、音声データを収容したIPパケットが送受されるようになる。
【0005】
また、ITU−T勧告H.323に準拠したゲートキーパを用いた技術として、下記の特許文献1があげられる。
【0006】
特許文献1では、RSVPプロトコルを利用して、ゲートウエイ装置相互間や、ゲートウエイ装置と音声中継ルータの間における帯域予約を最適化して、通信品質を維持する方法が記載されている。
【0007】
この特許文献1にはまた、同じ宛先と通信するための経路が複数存在し、各経路に異なるゲートウエイ装置が配置されている場合、いずれかのゲートウエイ装置が輻輳状態や、装置障害状態となり、正常な通信を行うことができなくなったときには、ゲートキーパが、ゲートウエイ装置の選択を切り替えて、新たな経路で呼接続を行う方法が記載されている。
【0008】
【非特許文献1】
ITU−T勧告H.323
【0009】
【特許文献1】
特開2000−224239
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述したゲートキーパはIPネットワークの帯域資源を直接、監視する手段を持たないため、前記帯域管理テーブルの内容は不完全なものとなる可能性がある。これは、IPネットワーク内の多数のルータが備えたルーティングテーブルの内容を、ゲートキーパが知ることができないためである。
【0011】
ルーティングテーブルとは、基本的に、宛先IPアドレスとネクストホップの対応関係を登録したテーブルである。
【0012】
IP電話機のユーザがVoIPによる音声通話を行おうとする場合、IP電話機を操作して宛先のユーザの電話番号(着信先電話番号)を入力する。しかしながらIPネットワーク上で通信端末(IP電話機はその一例)を識別するたに使用できる唯一の識別子はIPアドレスであるため、この着信先電話番号はIPアドレスに変換され、変換後のIPアドレス(このIPアドレスはゲートキーパが提供するアドレス変換機能によって得られる)が前記IPパケットの宛先IPアドレスとされる。
【0013】
IPネットワーク上における経路は、前記ルータが行うルーティングに依存し、ゲートキーパによる制御や監視の及ばないところで決まってしまう。ルーティングとは、ルータが自身が搭載するルーティングテーブルと、受信したIPパケットの宛先IPアドレスの対応を検査し、そのIPパケットの直後の転送先(すなわち、ネクストホップ)を特定した上で、特定したネクストホップへIPパケットの転送を行う処理である。IPネットワーク上に存在する隣接するルータが次々にこのルーティングを実行することにより、前記経路が決まる。
【0014】
IPパケットの送信元から宛先にいたる経路が物理的に1つしか存在し得ない場合、ルータが行うルーティングをゲートキーパが制御、監視することができなくても問題は生じないが、例えば、図2に示すように物理的にメッシュ型のトポロジを有するIPネットワーク10の場合などには、IPパケットの送信元(例えば、電話機19)から宛先(例えば、電話機24)にいたる経路が物理的に複数存在するために問題が顕在化する。
【0015】
例えば、局ノード15の配下にある電話機19のユーザU1が、局ノード17の配下にある電話機24のユーザU6に電話をかけようとする場合、取りうる経路は、ルータ11(,リンクL1),ルータ14(,リンクL6)、ルータ13の経路のほか、ルータ11,ルータ12,ルータ13の経路や、ルータ11,ルータ12,ルータ14,ルータ13の経路など、多様である。各ルータで行われるルーティングにより、この多様な経路のうち、いずれか1つが選択されることになるが、その選択結果を、ゲートキーパ25が認識する方法はない。
【0016】
したがって、図2に示すIPネットワーク10で、点線で示すような経路SN1〜SN3でIPパケットが伝送されて音声通話が行われている状態では、ゲートキーパ25が認識している帯域の消費量(トラヒック量)と実際の音声トラヒック量のあいだに図3に示すような大きなずれが生じる可能性がある。ゲートキーパ25が認識している帯域の消費量は、その帯域管理テーブルBM1の内容に対応したものである。
【0017】
図3において、ゲートキーパ25が認識しているトラヒック量(前記帯域管理テーブルBM1の内容に相当)は、局ノード15と17のあいだが2通話分で、局ノード16と17のあいだが1通話分であるが、実際のトラヒックは、局ノード15と16のあいだが1通話分で、局ノード15と18のあいだが1通話分で、局ノード16と17のあいだが3通話分で、局ノード16と18のあいだが1通話分である。
【0018】
前記ARQメッセージや呼制御メッセージを通じてゲートキーパ25が認識し得るのは、音声通話のためのIPパケットの送信元(例えば、電話機19)と、最終的な宛先(例えば、電話機24)だけであり、途中の中継経路(前記ルーティングテーブルに相当)を認識することができないために、このようなずれが生じるものである。
【0019】
このように、実際の帯域消費量とゲートキーパ25の認識のあいだに大きなずれが存在する状態では、適切な帯域管理を行うことは不可能で、実際には十分な帯域の余裕があるのにアドミッション要求(ARQメッセージ)を拒否したり、反対に、十分な帯域の余裕がないのにアドミッション要求を許可したりする可能性がある。十分な帯域の余裕があるのにアドミッション要求を拒否することは、帯域資源の利用効率が低いことを意味し、十分な帯域の余裕がないのにアドミッション要求を許可することは、アドミッション要求の許可後、実際に呼制御や音声通話などを行う段階になって大量のパケット損失や大きな遅延が発生し、通信品質の低下などの不都合を招く可能性が高く、通信の信頼性が低いことを意味する。
【0020】
また、前記特許文献1では、いずれかのゲートウエイ装置に輻輳状態などの問題が発生したとき、ゲートキーパが、ゲートウエイ装置の選択を切り替えて、新たな経路で呼接続を行うことができるが、特許文献1におけるゲートウエイ装置や音声中継ルータは、図2に示した局ノード(例えば、15)に相当する構成要素である。そして、特許文献1のネットワーク構成は、エンド−エンドの経路がルータ(例えば、11)のルーティングによって決まるものではなく、ゲートキーパの制御によって一意に決まる単純な構成である。したがって、例えば、図2に示すネットワーク構成などのように、より複雑な構成の場合、特許文献1の技術で対応することは困難であり、特許文献1の技術を用いたとしても、帯域資源の利用効率を高め、通信の信頼性を高めることは難しい。
【0021】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するために、本発明では、所定の通信ネットワーク上で所定の単位信号を用いたリアルタイム通信を実行するために帯域管理を行う帯域管理システムにおいて、予め搭載してある第1の経路表と、前記単位信号が有する第1の宛先識別子をもとに、前記単位信号の経路を決定して中継処理を行う複数の第1の中継装置と、予め搭載してある第2の経路表と、前記リアルタイム通信の最終的な宛先を指定するために当該単位信号が有する第2の宛先識別子をもとに、当該単位信号の経路を決定して中継処理を行う複数の第2の中継装置とを備え、当該第2の中継装置は、前記通信ネットワークの構造上、前記リアルタイム通信の最終的な宛先までの経路が複数存在する場合、前記第2の経路表をもとに、いずれか1つの経路を選択し、その選択結果に応じて前記第1の宛先識別子を書き換えることを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
(A)実施形態
以下、本発明にかかる帯域管理システムを、ITU−T勧告H.323に準拠のVoIPネットワークに適用した場合を例に、実施形態について説明する。
【0023】
(A−1)実施形態の構成
本実施形態のVoIPネットワーク30の全体構成例を、図9に示す。
【0024】
図9において、当該VoIPネットワーク30は、ルータ31〜34と、局ノード35〜38と、電話機39〜44と、ゲートキーパ45と、リンクL10〜L13とを備えている。
【0025】
このうちリンクL10〜L13は、VoIPサービスを提供する通信事業者のIP−VPN網などであってもかまわないが、ここでは、専用線伝送網を想定する。
【0026】
したがって、リンクL10〜L13のそれぞれがディジタル専用線であり、各ルータ31〜34が当該ディジタル専用線L10〜L13を介して接続されている。なお、図示した各リンク(例えば、L10)は物理的に双方向の伝送路を含んでいる。例えば、リンクL10には、ルータ31から34への伝送路と、ルータ34から31への伝送路が含まれている。
【0027】
また、ルータ31〜34は、当該ディジタル専用線サービスを提供する通信事業者側の構成要素であってもよいが、ここでは、当該ディジタル専用線サービスを利用するユーザ企業などの拠点の構成要素であるものとする。したがって、このユーザ企業は4つの拠点(LAN(ローカルエリアネットワーク))ST1〜ST4を有しており、各拠点ST1〜ST4がディジタル専用線L10〜L13で接続されたネットワーク構成となる。
【0028】
拠点(例えば、ST1)の内部には、図示したルータ31、局ノード35や電話機39,40のほかに、ネットワーク機器(ルータ(31以外)、L2スイッチ、ハブなど)、サーバ類(DNSサーバなど)、データ通信用のホスト(パーソナルコンピュータなど)等が存在していてもよいことは当然である。
【0029】
ここで、前記拠点ST1のネットワークアドレスをAD10とし、拠点ST2のネットワークアドレスをAD20とし、拠点ST3のネットワークアドレスをAD30とし、拠点ST4のネットワークアドレスをAD40とする。
【0030】
全部で32ビット長のIPv4アドレスの場合、32ビットのうちどこまでをネットワーク部とするかは、通常、サブネットマスクを利用して決定されるが、例えば、左端の24ビットをネットワーク部とした場合、右端の8ビットはホスト部となる。ネットワーク部はネットワークを一意に指定する部分で、ホスト部はそのネットワークに属する1または複数のホストのなかで1つのホストを指定する部分である。ホスト部の全ビットが0のIPアドレスは、そのネットワーク(LAN)自身を指すIPアドレス(すなわち、ネットワークアドレス)である。
【0031】
ネットワークアドレスからホスト部の連続する0を除いたものはネットワーク部にほかならないから、ここでは、前記AD10からホスト部の0を除いたAD1を当該ネットワークアドレスAD10のネットワーク部とする。
【0032】
同様に、前記AD20から右端の0を除いたAD2を当該ネットワークアドレスAD20のネットワーク部とし、前記AD30から右端の0を除いたAD3を当該ネットワークアドレスAD30のネットワーク部とし、前記AD40から右端の0を除いたAD4を当該ネットワークアドレスAD40のネットワーク部とする。
【0033】
各ネットワークアドレスAD10〜AD40の拠点ST1〜ST4をLANポート側に接続したルータ31〜34は基本的に通常のルータであってよい。ただしリアルタイム性の高いVoIP通信を行うのであるから、ルータ31〜34が、VoIPパケット、すなわち音声データを収容したIPパケットを他のデータ(例えば、FTPプロトコルで転送されるデータなど)を収容したIPパケットより優先的に転送する優先制御機能などを搭載していることは望ましい。
【0034】
ルータ31の内部構成例を図12に示す。ルータ32〜34の内部構成も実質的に図12と同じであってよい。
【0035】
(A−1−1)ルータの内部構成例
図12において、当該ルータ31は、通信部50と、制御部51と、記憶部52と、ルーティングテーブル53とを備えている。
【0036】
このうち通信部50は、OSI参照モデルのデータリンク層および物理層に対応する通信機能を有する部分で、拠点の外部に接続するWANポートや、拠点の内部に接続するLANポートなどを含む。
【0037】
制御部51はハードウエア的にはルータ31のCPU(中央処理装置)に相当し、ソフトウエア的にはルータ31のOS(オペレーティングシステム)などに相当する部分である。ルータの本質的機能であるルーティングを実行するのは、このOSに含まれるIPモジュール(IPプロトコル処理ソフト)である。
【0038】
ルーティングテーブル部53は、上述したルーティングテーブルに対応する部分である。ルータ31のルーティングテーブルを他のルータのルーティングテーブルと区別するため、RT31とする。
【0039】
ルーティングテーブルRT31の内容は、一例として、図13(A)に示すようなものであってよい。図13(A)において、ルーティングテーブルRT31のデータ項目は、宛先IPアドレスと、ネクストホップの2項目である。
【0040】
宛先IPアドレスの値としては、32ビット長のIPv4アドレスのうち、上述したネットワーク部(例えば、AD2)だけを登録してある。また、ネクストホップは、各ルータ32または34をその符号で示してある。
【0041】
ルーティングテーブルRT31中、最上位の行(エントリ)E11の内容である「AD2,32」は、宛先IPアドレスとして、ネットワーク部がAD2のIPアドレスを持つIPパケットが転送されてきたら、ルータ32へ転送することを指定している。
【0042】
同様に、2番目の行E12の内容である「AD3,32」は、宛先IPアドレスとしてネットワーク部がAD3のIPアドレスを持つIPパケットが転送されてきたら、ルータ32へ転送することを指定し、最下位の行E13の内容である「AD4,34」は、宛先IPアドレスとしてネットワーク部がAD4のIPアドレスを持つIPパケットが転送されてきたら、ルータ34へ転送することを指定している。
【0043】
図13(B)にもこれと同様なルーティングテーブルRT32を示している。ただし、ルーティングテーブルRT32は、ルータ32に搭載されるルーティングテーブルであるから、各行の内容がRT1と異なるのは当然である。
【0044】
図12に示す記憶部52はハードウエア的には、RAM(ランダムアクセスメモリ)や、ハードディスクなどによって構成される記憶資源であり、ソフトウエア的には、データベースや各種のファイルがこの部分に含まれ得る。前記OSなどのプログラムファイルもこのようなファイルの一つであるから、OSも、その物理的な実体は、この記憶部52に位置する。同様に、ルーティングテーブルRT31も、その物理的な実体は記憶部52に位置する。
【0045】
一方、前記局ノード35は、このようなルータ31のLANポート側に接続されるノード装置であり、本実施形態の特徴的な構成要素である。
【0046】
局ノードの機能をどのような形態で各拠点に実装するかに関しては様々な方法が考えられ、例えば、ルータ31に局ノード35の機能を搭載したり、PBX(構内交換機)に局ノードの機能を搭載したり、独立した専用装置に局ノード35の機能を搭載したり、VoIPゲートウエイに局ノード35の機能を搭載したりすることも可能であるが、ここでは、IP−PBXに局ノードの機能を搭載するものとする。局ノード36〜38についても同様である。
【0047】
このIP−PBXは、別個にVoIPゲートウエイを必要としないIPトランク形式のIP−PBXである。
【0048】
局ノード35がIP−PBXである場合、局ノード35に収容されている電話機39、40は、VoIP対応の電話機(IP電話機)のこともあり、VoIP非対応の一般電話機のこともあるが、いずれにしてもアドミッションメッセージの送受や、呼制御メッセージの送受、および呼を確立したあとに転送される音声データを収容したIPパケットに関しては、IP−PBXが機能するものとする。
【0049】
局ノード35の内部構成例を図11に示す。局ノード36〜38の内部構成も実質的に図11と同じであってよい。
【0050】
(A−1−2)局ノードの内部構成例
図11において、この局ノード35は、通信部60と、制御部61と、記憶部62と、アドレス変換部63と、変換テーブル部64と、IPアドレス変換部65と、帯域管理部66とを備えている。
【0051】
このうち通信部60は前記通信部50に対応し、制御部61は前記制御部51に対応し、記憶部62は前記記憶部52に対応する。
【0052】
ただし本実施形態の場合、局ノード35は拠点ST1の内部に存在するため、その通信部60がWANポートを備える必要はない。
【0053】
また、IP−PBXとしての局ノード35は、収容している電話機(例えば、39)に呼制御メッセージが着信したり、反対に収容している電話機39から呼制御メッセージを発信したりするときには、電話機39と協調しながらゲートキーパ45と通信し、ゲートキーパ45が提供するサービスの内容に応じて処理を実行する。
【0054】
通常、IP−PBXはゲートキーパの機能を内蔵しているが、局ノード35はゲートキーパ機能を内蔵していないか、内蔵していたとしてもその機能を無効化していて、外部のゲートキーパ45のサービスを利用するものとする。
【0055】
ここでは、図9に示したVoIPネットワーク30全体が当該ゲートキーパ45が管理するゾーンに属するものとする。
【0056】
ゲートキーパを設けるか否かはオプションであるが、設けた場合、ゾーン内の各H.323構成要素(当該局ノード35もその1つ)は、ゲートキーパが提供する各種のサービスを利用しなければならない。このため、本実施形態では、局ノード35およびその他の局ノード36〜38も、ゲートキーパ45が提供するサービスを利用する必要がある。なお、H.323構成要素とは、ITU−T勧告H.323規格上の構成要素のことであり、IP−PBXやIP電話機などが該当し、一般のPBXや、一般電話機などは含まれない。
【0057】
ゲートキーパの機能にはアドレス変換機能、アドミッション制御機能、上述した帯域管理機能などがあり、局ノード35などのH.323構成要素に対し、これら各種機能に応じたサービスを提供する。
【0058】
本実施形態において、ゲートキーパ45は基本的にITU−T勧告H.323に準拠した通常のゲートキーパであってよい。したがって、ゲートキーパ45が備える各種機能も基本的に通常のものである。このゲートキーパ45は、帯域管理機能を実現するために、図8に示すように、帯域管理部46と、中央帯域管理テーブルBM11を備えている。
【0059】
この中央帯域管理テーブルBM11には、少なくとも、隣接する局ノード間の回線に関する使用中の帯域幅が格納されており、必要に応じて、隣接していない局ノード間の使用中の帯域幅も格納される。
【0060】
図8の例では、隣接する局ノード間で使用中の帯域幅は、35−36間がV11、38−35間がV12、36−37間がV13,37−34間がV14である。
【0061】
隣接していない局ノード間で使用中の帯域幅には、例えば、図9のネットワーク構成の場合、局ノード31と33のあいだの使用中帯域幅が該当する。隣接していない局ノード間の使用中帯域幅をゲートキーパ45の中央帯域管理テーブルBM11で管理する必要があるか否かは、ゲートキーパ45が具体的にどのような形でアドミッション制御を行うかに依存する。また、このアドミッション制御がどのような形の制御になるかは、局ノード(例えば、35)の機能などにも依存して決まる。
【0062】
実質的にゲートキーパ45の機能だけで一元的な帯域管理を行う場合には、VoIPネットワーク30上で起こり得るすべての組み合わせにつき、エンド−エンドで帯域管理を行う必要があるため、中央帯域管理テーブルBM11には、この組み合わせの数だけの行が必要となり、例えば、31−33間などの、隣接していない局ノード間で使用中の帯域幅も格納する必要がある。
【0063】
隣接していない局ノード間で使用中の帯域幅を中央帯域管理テーブルBM11で管理し、その管理を適切なものとするためには、ゲートキーパ45が、直接的または間接的に、ルーティングテーブル(例えば、RT31)の内容を認識する必要がある。間接的な認識は、ゲートキーパ45が後述する変換テーブル(例えば、TT35A、TT35Bなど)の内容を認識することによって形成され得る。
【0064】
ゲートキーパを介した制御信号のやり取り、すなわちシグナリングの方式としては、すべての制御信号をゲートキーパ経由でやり取りするGKRCS方式と、一部の制御信号(呼設定(SETUP)メッセージと応答(CONNECT)メッセージ)だけはエンドポイント(本実施形態では局ノード(例えば、35、37))間で直接やり取りするDECS方式があり、本発明はいずれの方式にも適用可能であるが、ここでは、DECS方式を用いるものとする。
【0065】
この制御信号には、例えば、ARQメッセージなどのアドミッションメッセージおよび、呼設定メッセージなどの呼制御メッセージが含まれる。
【0066】
局ノード35のアドレス変換部63は、発信時に、着信先電話番号の値から対応するIPアドレスを取得する部分で、取得したIPアドレスは、宛先IPアドレスとして使用する。このIPアドレスは、着信先電話番号をもとにゲートキーパ45に問い合わせを行うことによって取得されるものである。H.323構成要素である局ノード35は、直接、このような問い合わせをゲートキーパ45に対して行うことができる。
【0067】
ゲートキーパ45のアドレス変換機能は、ゾーン内におけるIPアドレスと電話番号の対応関係を登録したデータベースを装備しているため、この問い合わせに応えることができる。
【0068】
例えば、電話機40のユーザU40が電話機40を操作して電話機43の電話番号NB32を入力したものとすると、アドレス変換部63が、当該電話番号NB32に対応するIPアドレスをゲートキーパ45に問い合わせ、電話機43を指定するIPアドレス(ここでは、AD32とする)を取得することができる。これにより、局ノード35は、このIPアドレスAD32を、IPヘッダ中に宛先IPアドレスとして収容したIPパケットを送信することができる。
【0069】
ただしこの宛先IPアドレスとしてAD32を収容したIPパケットをそのまま送信したのでは、前記ルータ31が備えるルーティングテーブルRT31の行E12に応じてルータ32に転送され、ルータ32が備えるルーティングテーブルRT32の行E21に応じてルータ33へ転送されてしまい、図2に示したVoIPネットワーク10と同様、帯域管理テーブルBM1の内容と、VoIPネットワーク30上の実際の音声トラヒック量のあいだにずれが発生する可能性がある。ルーティングテーブル(例えば、RT31,RT32など)の内容を認識できないゲートキーパ45は、実際の音声トラヒック量を直接、認識することはできないからである。
【0070】
したがって、本実施形態の局ノード35は、ゲートキーパ45の問い合わせで得られたIPアドレス(例えば、AD32)をそのまま使用するのではなく、そのIPアドレスAD32をさらに変換した上で使用する。
【0071】
この変換の方法には様々なものがあり得るが、途中の局ノード(例えば、36,38)経由の転送が行えることと、最終的な宛先である電話機(ここでは、43)へIPパケット(その内容である音声データ(音声データに対応するアナログ音声信号))を届けることできることが必要である。したがって、この変換によって、最終的な宛先である電話機43を一意に指定する情報が失われてはならない。
【0072】
ここでは一例として、この変換では、IPアドレスのネットワーク部のみを変換し、ホスト部の値は変換せずに維持するものとする。
【0073】
したがって例えばAD32の場合なら、ホスト部に対応する右端の「2」は維持し、ネットワーク部に対応する「AD3」だけを変換することになる。当該AD3を変換するとき、変換先のネットワーク部をどのように決定するかは、変換テーブル部64が備える変換テーブルTT35の内容に応じて決まる。
【0074】
ネットワーク部の値を変更し、ホスト部の値を維持した結果、偶然、中継処理を行う局ノードの配下の電話機と同じIPアドレスとなることを防止する必要がある場合には、予め、各拠点ST1〜ST4の電話機に付与するIPアドレスのホスト部が重複しないようにIPアドレスを付与しておくとよい。
【0075】
なお、電話機を指定するIPアドレス(例えば、AD32)は、IP−PBXである局ノード37が搭載するIPトランクに付与されたIPアドレスであってよい。
【0076】
局ノード35が有する変換テーブルTT35は、発信用の変換テーブルTT35Aと、中継用の変換テーブルTT35Bから構成される。発信用変換テーブルTT35Aの内容は例えば図15(A)に示す通りであってよく、中継用変換テーブルTT35Bの内容は例えば図15(B)に示す通りであってよい。
【0077】
発信用変換テーブルTT35Aは自拠点ST1から他の拠点(例えば、ST3)へ発信するときに適用し、中継用変換テーブルTT35Bは、他拠点(例えば、ST2)から送信されたIPパケットを他拠点(例えば、ST4)へ中継するときに適用する。本実施形態において、局ノード(例えば、35)が行う中継(中継処理)は、形式的には、IP−PBXまたはゲートキーパの付加サービスとして着信呼を転送する際の動作に類似している。
【0078】
処理しようとするIPパケットが、自拠点ST1から送信されたIPパケットであるか否かを判定する方法には、様々なものがあり得るが、例えば、受信したIPパケットのIPヘッダに含まれる送信元IPアドレスに基づいて判定することもでき、そのIPパケット(または情報)を受信したポートをもとに判定することもできる。例えば、自拠点内の一般電話機の場合、接続されるのはアナログポートであるため、アナログポートから受信した情報(この場合、受信時点ではまだIPパケット化されていない)ならば、自拠点ST1から送信されたIPパケット(情報)であることが分かる。
【0079】
この判定に送信元IPアドレスを使用できるのは、本実施形態の構成上、局ノード(例えば、35)は、IPヘッダ中のアドレスのうち、宛先IPアドレスは中継時には必ず(必要に応じて発信時にも)変換する必要があるが、送信元IPアドレスは変換することなく、最初のものを維持することができるため、送信元IPアドレスをもとにIPパケットの送信元の拠点を特定することが可能だからである。
【0080】
また、後述する発信特番が入力されたことをもって、自拠点からの発信であると判定することができることは当然である。
【0081】
自拠点ST1から他の拠点(例えば、ST3)へ発信するときに適用する前記発信用変換テーブルTT35Aは、図15(A)の最上位の行E31に示すように、AD3すなわち拠点ST3へ発信するときには、当該AD3をAD2に変換する。拠点ST3はST1に隣接していないためにこのような変換が必要になる。拠点ST1に隣接している拠点(ST2,またはST4)へ発信する場合には、ネットワーク部は実質的に変換する必要はないが、ここでは、発信用変換テーブルTT35A内に変換元と変換先の値が同じ行E32,E33を容易して、形式的に変換を行うものとしている。
【0082】
なお、AD3を変換するとき、AD2ではなく、AD4へ変換するようにしてもよいことは当然である。例えば、リンクL10側の帯域に比べてリンクL11側の帯域が広い場合(L11のほうが、より高速なディジタル専用線である場合)などに、当該AD3をAD2へ変換することも望ましい。
【0083】
また、L10、L11双方の経路の輻輳度などを検査し、輻輳度の変動に応じて、行E31の内容を書き換えるようにしてもよい。輻輳していないほうの経路を利用すれば、高い通信品質が得られ、VoIPネットワーク30全体として帯域の利用効率が高まるからである。
【0084】
あるいは、もっと単純にラウンドロビン方式を用いて、自拠点ST1内から他の拠点(例えば、ST3)へ発信するたびに、交互に、経路を変更するようにしてもよい。これは、例えば、最初の発信ではAD3をAD2に変換し、2回目の発信ではAD3をAD4に変換し、3回目の発信ではAD3をAD2に変換し、…という処理を繰り返すものである。発信のたびに行E31の内容を書き換えることでこのような処理が可能となる。
【0085】
宛先IPアドレスのネットワーク部であるAD3をAD2に変換した上で当該IPパケットをルータ31に転送すれば、ルータ31は前記ルーティングテーブルRT31にしたがって当該IPパケットをルータ32へ転送する。ネットワーク部としてAD2を有する宛先IPアドレスは拠点ST2自身の内部のホスト宛てであることを意味するから、ルータ32は当該IPパケットを他のルータ(ここでは、33)へ中継することなく、LANポート側から拠点ST21内へ転送する。このIPパケットは局ノード36で受信されるから、確実に局ノード36による中継処理を受けることができる。
【0086】
このような発信用または中継用変換テーブルによる宛先IPアドレスの変換を繰り返せば、各ルータ31〜34のルーティングテーブルRT31〜RT34の内容にかかわらず、所望の局ノードによる中継を行わせ、経路を制御することもであるが、発信用変換テーブル(例えば、TT35A)や中継用変換テーブル(例えば、TT35B)の内容は、ルーティングテーブル(例えば、RT31)の内容を反映したものであることが望ましい
ルーティングテーブルに合わせて変換テーブルの内容を変更しなければ、局ノード(例えば、35)の動作とルータ(例えば、31)の動作が複合された結果として、VoIPのための1つのIPパケットが同じリンク(例えば、L11)を2度伝送されること等が起こり得、伝送効率の低下や、実際の帯域消費量とゲートキーパ45の認識の間のずれの発生などの問題が起きるからである。
【0087】
局ノード35も、前記局ノード36と同様に他の拠点のために中継処理を行うことがあり、また、自拠点内の電話機(例えば、39)宛てにIPパケットを転送することもあるのは当然である。
【0088】
局ノード35は、着信先電話番号を含むIPパケットを受信した場合、そのIPパケットを自拠点内の電話機(例えば、40)へ転送するか、または、隣接する拠点(例えば、ST2)へ中継するかは、その着信先電話番号が自局の局番NB1と一致するか否かをもとに判定することができる。
【0089】
呼制御メッセージのうち呼設定メッセージにより呼が確立されたあと、その呼の切断が行われるまでの間、同じ送信元IPアドレスから送信されてくるIPパケット群は、自拠点内へ転送(または、中継)のいずれかに固定して処理するようにするとよい。これにより局ノード36、ユーザ間の通話のために転送される音声データを収容したIPパケットに、着信先電話番号が収容されていなくても、中継を行うか、自拠点内へ転送するかを適切に判定することができる。
【0090】
1つの呼が確立されたか否かや、切断されたか否かの情報を管理する機能は、呼管理機能に属するものと考えられる。ゲートキーパ45もオプションの呼管理機能を有することがあるが、ゲートキーパ45の呼管理機能が、呼設定を要求する側のH.323構成要素(例えば、35)からその呼設定を最終的に受ける側のH.323構成要素(例えば、37)までを単位とするエンド−エンドの呼管理しか行えないのに対し、ここで局ノード(例えば、35)が行う呼管理はエンド−エンドの呼を複数の呼に分割し、分割した各呼を独立した呼として管理するものである。
【0091】
本実施形態では、隣接していない局ノード間に呼を設定する場合、経路の途中にある局ノードごとに呼設定を終端し、ホップバイホップに呼設定を行うためである。ただしここでいうホップバイホップとは、必ずしもルータごとであることを意味せず、局ノードごとに呼設定を行うことを意味する。図9の例では、局ノードの数とルータの数が一致しているが、一般的には、これらの数は一致せず、隣接する局ノードのあいだに多数のルータが存在していても、隣接する局ノード間は1ホップとみなす。
【0092】
この点は、経路上にルータ以外の図示しないネットワーク機器(例えば、L2スイッチなど)が存在していても同様である。一般的には、経路上の任意の場所にL2スイッチなどのネットワーク機器が存在し得る。
【0093】
局ノードによる呼管理は、局ノード35自身が、自局内に転送または中継する呼に関して実行するものである。このとき局ノードは、既存の空塞管理の機能を利用することができる。空塞管理機能は、例えば、図10に示すように、局ノードが自身に対する入回線や出回線に対する空きや塞がりに関する情報(トランク制御情報)を管理するために搭載している機能である。局ノード35は、呼制御メッセージの転送などに際してIPパケットに含まれ得る着信先電話番号などに基づいて、自局内の電話機へ転送するか、中継するかを判定することができる。
【0094】
この着信先電話番号などの電話番号に関し、局番とその局番に属する電話機の電話番号(内線番号)に、上述したIPアドレスのネットワーク部とホスト部と同様な表記を適用すると、例えば、拠点ST1の局番がNB1ならば、その局番に属する電話機(例えば、39)の電話番号は、局番+内線番号で、NB11となる。
【0095】
ただし、拠点ST1内のユーザ(例えば、U40)が他の拠点へ電話をかける場合、所定の特殊な番号(発信特番)を当該電話番号の前に入力する必要がある。この発信特番は、リンク(例えば、L11)などの中継線経由で遠隔地のPBX内線への発信であることを自拠点内のIP−PBXである局ノード35に伝えるための番号であるため、着信先電話番号として呼制御メッセージなどに含まれるものではない。
【0096】
図14に示すように、図9のVoIPネットワーク30では、電話番号の局番はIPアドレスのネットワーク部に対応し、電話機の電話番号(例えば、内線番号)は、IPアドレスのホスト部に対応する。
【0097】
したがって、着信先電話番号を含むIPパケットを受信した場合、局ノード35はその着信先電話番号の局番がNB1ならば中継せず、NB1以外の番号(例えば、NB3)なら中継することになる。
【0098】
局ノード35の前記アドレス変換部63は、この中継処理を行うときにも機能する。この中継処理を細分すると、着信(受信(例えば、呼設定の終端))と、中継と、発信(送信)に分けることができる。当該発信の際には拠点ST1の内部から発信する通常の発信と同様にアドレス変換のためにゲートキーパ45へ問い合わせを行うことも可能であるが、ここでは、中継処理に際しては、ゲートキーパ45に問い合わせを行うことなく、図15(B)に示す中継用変換テーブルTT35Bを用いてアドレス変換を実行するものとする。
【0099】
受信したIPパケットが呼設定メッセージに対応するものなど、着信先電話番号(着信先の局番があればよい)を含んでいる場合には、その着信先電話番号(着信局番)をもとに、受信時点の宛先IPアドレスのネットワーク部(中継処理の場合、拠点ST1の局ノード35が受信したのであるから、これは必ずAD1)を該当するネットワーク部に変換することができる。
【0100】
例えば、着信局番が拠点ST2を指すNB2である場合には、図15(B)の行E41の内容に応じて、宛先IPアドレスのネットワーク部をAD1からAD2に変換する。これにより、このIPパケットを受け取ったルータ31は、前記ルーティングテーブルRT31にしたがって、当該IPパケットをルータ32へ転送する。また、ルータ32はこのIPパケットを自拠点ST2内へ転送するから、局ノード36が受信することができる。
【0101】
着信局番が拠点ST4を指すNB4である場合には、図15(B)の行E42の内容に応じて、宛先IPアドレスのネットワーク部をAD1からAD4に変換する。これにより、このIPパケットを受け取ったルータ31は、前記ルーティングテーブルRT31にしたがって、当該IPパケットをルータ34へ転送する。また、ルータ34はこのIPパケットを自拠点ST4内へ転送するから、局ノード38が受信することができる。
【0102】
なお、図9のネットワーク構成では、例えば、拠点ST4から拠点ST3に属する宛先へIPパケットを送信する場合、ルータ34からルータ33へ転送するホップ数が最小となる経路以外に、ルータ34から、31,32,33の順番で転送するホップ数の大きな経路を選択することも可能であるが、図15(B)では、ホップ数が最小となる経路が選択されるものと想定し、このようなホップ数の大きい経路が選択される場合の中継に対応する行は用意していない。
【0103】
中継処理において、当該アドレス変換部63が行うアドレス変換は局ノード35自身が実行するものであり、ゲートキーパ45が提供するアドレス変換機能を利用する必要はないから、本実施形態により、ゲートキーパ45の負荷が図2に示したゲートキーパ25よりも大きくなることはない。
【0104】
IPアドレス変換部65は、受信したIPパケットが呼設定メッセージに対応するものなどのように着信先電話番号(着信局番)を含んでいるものでない場合に、宛先IPアドレスの変換を行う部分で、前記呼管理機能を利用する。
【0105】
本実施形態の場合、転送するIPパケットの宛先IPアドレスは各局ノード(例えば、35)で本来の宛先を示すものから変換されるため、着信局番が含まれていなければ、そのIPパケットのみから宛先を特定することは困難である。ただし、1つの呼が設定されてから切断されるまでのあいだは、同じ送信元IPアドレスから、同じ最終的な宛先に宛てたIPパケットの送信(または中継)が繰り返される点を利用して宛先IPアドレスのネットワーク部を変換することができる。
【0106】
したがって、例えば、呼設定のとき宛先IPアドレスのネットワーク部をAD2へ変換したものと同じ送信元IPアドレス(一例として、AD12)を持つIPパケットの宛先IPアドレスの変換では、そのネットワーク部を、当該AD2へ変換することになる。この処理は、送信の場合でも、中継の場合でも同じである。
【0107】
上述した局ノード(例えば、35)による呼管理機能は、このIPアドレス変換部65のためにも活用することができる。ただしIPアドレス変換部65のために必要な呼管理機能は、局ノード35自身が、発信(送信)または中継する呼に関するものでよい。
【0108】
前記制御部61に接続された帯域管理部66は、局ノード35の内部において帯域管理を行う部分で、帯域管理テーブルBB35を備えている。
【0109】
当該帯域管理テーブルBB35には、当該局ノード35が中継、発信、または着信する呼に関する帯域管理を行うためのテーブルで、例えば、図7に示すように回線ごと(リンクごと)に、局ノード35が中継、発信、または着信する呼のトラヒック量を格納している。VoIPネットワーク30が運用されているとき、各トラヒック量は時々刻々と変動し得る。なお、システム構成によっては、1つの呼が維持されている途中で、その呼のための帯域が増加したり、減少したりすることもあり得る。
【0110】
図7の例で、35−36間の回線(リンクL11)のトラヒック量はV11であり、38−35間の回線(リンクL10)のトラヒック量はV12である。このようなトラヒック量を各局ノードが取得する方法としては様々なものが考えられるが、例えば、IPトランクのチャネルの空塞を示す情報をもとに容易に取得することが可能である。
【0111】
図7は、当該局ノード35を図11とは別な観点から表現した構成例である。
【0112】
図7において、IP−PBXである局ノード35は、VoIP処理部80と、PRI(Primary Rate Interface)処理部81と、H.323処理部82と、Q.931処理部83と、呼処理部84と、前記帯域管理部66とを備えている。
【0113】
このうち構成要素80〜84は、主として、図11の制御部61に対応する機能である。
【0114】
以下、上記のような構成を有する本実施形態の動作について、図1のフローチャートを参照しながら説明する。図1のフローチャートは、S10〜S13の各ステップを備えている。
【0115】
(A−2)実施形態の動作
ここでは、拠点ST1内のユーザU39が電話機39を用いて拠点ST3内の電話機43へ電話をかける場合を例に説明する。
【0116】
ユーザU39が電話機39をオフフックして、前記発信特番と、それにつづく、電話機43の電話番号(着信先電話番号)NB33を指定する。
【0117】
局ノード35は、発信特番および着信先電話番号を受け取ると(S10)、この発信特番から遠隔地のPBX内線への発信であることが分かるため、ゲートキーパ45へ問い合わせを行い、当該着信先電話番号(着電番号)に対応するIPアドレスであるAD32を取得する。
【0118】
当該AD32の取得のまえに実際には、局ノード35からARQメッセージが送信されてゲートキーパ45によるアドミッション制御が行われるが、そのアドミッション制御の基礎となる中央帯域管理テーブルBM11の生成は、以降の動作と同様な動作によって各局ノードに蓄積された帯域管理テーブル(例えば、局ノード35の帯域管理テーブルBB35)をもとに実行されるものである。ここではゲートキーパ45によるアドミッション制御ではACFメッセージが返送され、当該局ノード35からのアドミッション要求が承認されたものとする。
【0119】
この承認の後に行われる前記問い合わせによって得られたIPアドレスAD32のネットワーク部である「AD3」は、図15(A)に示す前記発信用変換テーブルTT35Aの行E31をもとにAD2へ変換され(S11)、ホスト部である「2」は維持されるため(S12)、結局、当該AD32は、AD22(=AD2+2)に変換されてIPパケットの宛先IPアドレスとされる(S13)。
【0120】
前記局ノード35から当該IPパケットが送出されると、ルータ31が図13(A)に示すルーティングテーブルRT31に基づいてルーティングした結果、リンクL11を経てルータ32に届けられる。
【0121】
AD20は拠点ST2を示すネットワークアドレスであるから、当該IPパケットはルータ32におけるルーティングにより、拠点ST2の内部へ転送され、局ノード36に受信される。
【0122】
本実施形態は前記シグナリング方式として前記DECS方式を用いているため、呼を中継する1または複数の局ノード(ここでは、36)は、その呼に関し、ユーザU39などの会話音声を示す音声データを収容したIPパケットを受信する前に、呼設定(SETUP)メッセージを収容したIPパケットを受信することができる。呼設定メッセージには着電番号が含まれているため、例えば、局ノード36は中継用変換テーブルTT36B(図15(B)に示すTT35Bに対応)をもとに、中継処理を行うことが可能である。
【0123】
この中継処理は、上述したように、着信(受信)、中継、発信(送信)に分けることができるが、着信の部分では、最終的な宛先が電話機41である場合と同様に、呼設定の受付が行われ得る。また、発信の部分では、基本的に当該IPパケットの送信元である局ノード35で行われたものと同様、図1のフローチャートに応じた処理が実行される。
【0124】
ただし、中継処理では、ステップS10の着電番号の受付は、IPパケット中に収容されている着電番号をもとに行うことになる。また、上述したように中継処理では、ゲートキーパ45への問い合わせは省略し、中継用変換テーブルTT36Bに基づいたアドレス変換を実行する。
【0125】
局ノード36による中継処理のあと、当該IPパケットは、ルータ32,33を経由して最終的な宛先である電話機43を収容した拠点ST3の局ノード37に着信し、局ノード37を介して電話機43のベルを鳴らしユーザU43を呼び出すことができる。
【0126】
ユーザU43が電話機43をオフフックすれば、応答(CONNECT)メッセージが収容されたIPパケットが返送され、電話機39と43のあいだに呼が確立され、ユーザU39とU43の会話音声を収容したIPパケットがやり取りされる通話状態となる。
【0127】
応答メッセージは通常、呼設定メッセージと同じ経路(ここでは、35,31,32,36、32,33、37の経路)を反対方向に転送されるが、本実施形態のネットワーク構成では、呼設定メッセージと異なる経路(例えば、37,33,34,38,34,31、35の経路)を応答メッセージが転送されるようにすることも可能である。ただし応答メッセージは呼設定メッセージと同じ経路を反対方向に転送するようにしたほうが、経路上の局ノード(例えば、32)における呼管理などは容易になるものと考えられる。
【0128】
応答メッセージの転送経路が呼設定メッセージと同じであってもなくても、応答メッセージに対して経路上のルータや局ノードで行われる処理の内容は、呼設定メッセージが転送された場合と同様であってよい。
【0129】
なお、前記通話状態において局ノード(ここでは、36)が、音声データを収容したIPパケットを中継するとき、通常のH.323プロトコル体系にしたがった処理を行うと、H.323プロトコル体系中の各階層のプロトコルを処理するモジュールの機能によっては、VoIP処理部80でIPパケットから音声データを取り出したり、取り出した音声データをアナログ信号に変換したりする処理が行われる可能性が高い。
【0130】
しかし局ノード36が行うのは中継処理であるから、音声データを取り出すことも、アナログ信号に変換することも不要である。
【0131】
また、中継処理である以上、音声データを収容したIPパケットを送信することが必要であるため、音声データを取り出した場合には、再度、その音声データをIPパケットに収容する処理が必要になり、アナログ信号に変換した場合には、そのアナログ信号をPCMにより再度ディジタル信号(音声データ)に変換した上でその音声データをIPパケットに収容する処理が必要になってしまう。
【0132】
中継時にこのような処理を実行すると、遅延時間の増大や、音質低下などの問題をまねく可能性が高く、また、局ノード36の処理能力に対し、不必要に大きな負荷をかけることにもなる。
【0133】
そこで、本実施形態では、図5に示すように、中継処理を行う局ノード(ここでは、36)は、IPパケットから音声データを取り出すこと等の不必要な処理は実行せず、IPパケットのまま中継するものとする。これにより、遅延時間の低減、音質維持、負荷軽減などの効果を得ることができる。
【0134】
また、各局ノードの内部では、自局ノードでステップS10〜S13が実行されるとき、またはその前後に上述した帯域管理テーブル(例えば、局ノード35なら帯域管理テーブルBB35)の該当する行のトラヒック量の値(例えば、前記V11)が更新される。どのタイミングでこの更新を行うかについては、様々な方法が考えられるが、例えば、ある呼設定メッセージに対応する応答メッセージが返送されてきたタイミングで、この更新を行うようにするとよい。
【0135】
なお、呼設定メッセージの転送方向が反対のケース、例えば、拠点ST3内のユーザU43が電話機43を用いて拠点ST1内の電話機39へ電話をかける場合の動作も以上の動作と同様である。
【0136】
また、経路上にルータ以外のネットワーク機器、例えば、上述したL2スイッチなどが存在していても、以上の動作は同様である。
【0137】
この場合、以上の動作を例えば図4,図6を用いて表現することができる。
【0138】
図4および図6では、前記局番NB1〜NB3を、NB1=30,NB2=20,NB3=30とし、局ノード35と36のあいだには、2つのルータ85,86と、2つスイッチ89,90とが介在し、局ノード36と37のあいだには2つのルータ87,88と、2つのスイッチ90,91とが介在している。
【0139】
図4、図6の構成は、図9に示すVoIPネットワーク30のように、任意の局ノード間に複数の経路があり得るネットワーク構成のなかから一部を抜き出して示したものである。図4,図6上で、図9と同じ符号を付与した構成要素35,36,37,39,43の機能は、図9と対応する。
【0140】
図6には、局ノード37に収容された電話機43のユーザU43が局ノード35に収容された電話機39へ電話をかけた場合に各構成要素で実行される動作(S20〜S23)が示されている。すなわち、前記呼設定メッセージを収容したIPパケットが局ノード37から送信され、局ノード36による中継処理を経て、局ノード35に受信されている。
【0141】
これに対する応答メッセージが電話機39,局ノード35側から送信されると、応答メッセージを収容したIPパケットも、前記呼設定メッセージを収容したIPパケットと同様に各局ノード(例えば、36)で処理され、呼設定メッセージと同じ経路を反対方向に転送されるから、局ノード35,36間および局ノード36,37間で呼が確立され、これらの呼を合成した転送経路を持つ呼として、局ノード37、35間の呼も確立される。
【0142】
これにより図4の点線で示すように、局ノード37,36,35の経路で、ユーザU43,U39の会話音声に対応する音声データを収容したIPパケットがやり取りされる通話状態になる。
【0143】
一方、前記ゲートキーパ45が持つ中央帯域管理テーブルBM11を生成するための動作は次のようになる。
【0144】
各局ノードが管理してる帯域管理テーブル(例えば、BB35)の内容を各回線のトラヒック量が更新されるたびに制御用のIPパケットでゲートキーパ45に送信するようにすれば、ゲートキーパ45は、受信した複数の帯域管理テーブルの内容をマージすることにより前記中央帯域管理テーブルBM11を生成することができ、VoIPネットワーク30の各回線(各リンクL10〜L11)に関する使用中の帯域幅を正確に認識することも可能となる。
【0145】
これにより、実際の帯域消費量とゲートキーパ45の認識のあいだのずれがなくなり、適切な帯域管理を行うことが可能となる。
【0146】
ただしゲートキーパ45が実際に適切な帯域管理を行い、その効果をVoIPネットワーク30上で発揮するには、実際の帯域消費量とゲートキーパ45の認識のあいだのずれがないだけでは十分ではなく、上述したようにゲートキーパ45が、直接的または間接的に、ルーティングテーブル(例えば、RT31)の内容を認識している必要がある。
【0147】
例えば、図9に示す電話機40のユーザU40が電話機44へ電話をかけようとして前記ARQメッセージがゲートキーパ45まで届いたとしても、この電話のための呼制御メッセージや音声データを収容したIPパケットが、35,36,37の経路(ルータで表現すると、31,32,33の経路)で転送されるか、35,38,37の経路(ルータで表現すると31,34,33の経路)で転送されるかがゲートキーパ45に判定できなければ、そのアドミッション要求を許可するべきか、拒否するべきか正確に判断できないからである。
【0148】
ただしこのような認識は、各帯域管理テーブルの内容を収容した制御用IPパケットの送信元である個々の局ノード35〜38を、ゲートキーパ45が識別するだけで比較的容易に形成することができる。
【0149】
この認識があることによって、前記マージを適切に実行して適切な中央帯域管理テーブルBM11を生成することができる。
【0150】
例えば、図8に示す状態の中央帯域管理テーブルBM11において、上から5つ目の行は回線35−37間に対応し、トラヒック量がV11+V13であるが、この行のトラヒック量(およびこの行)は、最上の回線35−36間の行のトラヒック量であるV11と、上から3つ目の回線36−37間の行のトラヒック量であるV13を加算することによって得られたものである。このような加算は、ゲートキーパ45が各局ノードを識別できてはじめて可能となるものである。
【0151】
一例として、各局ノードを示すIPアドレスを予め決めておけば、前記帯域管理テーブル(例えば、BB35)の内容を収容した制御用のIPパケットが受信されたとき、ゲートキーパ45は、その送信元IPアドレスをもとに各局ノードを識別することができる。
【0152】
(A−3)実施形態の効果
本実施形態によれば、実際の帯域消費量とゲートキーパ(45)の認識のあいだのずれがなくなり、適切な帯域管理を行うことが可能となる。
【0153】
これにより、十分な帯域の余裕があるのにアドミッション要求を拒否することを防止できるので、帯域資源の利用効率が高まる。
【0154】
また、十分な帯域の余裕がないのにアドミッション要求を許可することも防止できるため、アドミッション要求の許可後、実際に呼制御や音声通話などを行う段階になって大量のパケット損失や大きな遅延が発生することがなく、通信品質が向上し、通信の信頼性が高まる。
【0155】
(B)他の実施形態
上記実施形態にかかわらず、局ノード(例えば、35)の機能の一部を自拠点内の他の構成要素に配置してもかまわない。
【0156】
なお、上記実施形態では、拠点の数が全部で4つであり、拠点ST1とST3のあいだの拠点はST2(または、ST4)だけであったが、拠点数は4つより少なくてもよく、多くてもよい。拠点数がもっと多い場合でも、前記中継処理を実行する拠点が増加するだけのことで実質的な動作が変化するわけではない。
【0157】
すなわち、中継処理を行う拠点が1つの経路上に多数存在する場合、各拠点内の局ノードごとに同様な中継処理が実行され、局ノードごとに、当該IPパケットの宛先IPアドレスのネットワーク部が変更されることになる。
【0158】
また、本発明のネットワーク構成は、図9に示したものに限定する必要がないことは当然である。例えば、メッシュ構造のネットワーク構成にも適用することができる。任意の局ノードが他のすべての局ノードと隣接するフルメッシュ構造(例えば、図2に示したような構造)の場合にも本発明は適用することができる。
【0159】
フルメッシュ構造の場合、すべての局ノードが他のすべての局ノードに対し、1ホップでIPパケットを転送することが可能であるが、輻輳状態の変化、障害発生、リンクごとの帯域幅の相違などに配慮したIPパケットの転送を行うには、よりホップ数の大きい迂回路を取ることが必要となることが起こり得、迂回路を取る場合に、本発明を適用することができる。
【0160】
さらに、上記実施形態にかかわらず、各局ノード(例えば、35)は、中継処理を行うたびに、ゲートキーパ45のアドミッション制御機能やアドレス変換機能を利用するようにしてもよい。これは、中継処理のなかの前記発信(送信)のたびに、ARQメッセージの送信や呼設定メッセージの送信を行い、ゲートキーパ45とシグナリングするものである。この構成によれば、シグナリングのための通信トラヒックの増大や、ゲートキーパ45の処理負荷の増大などの不利があるものの、ゲートキーパ45の帯域管理テーブルBM11に、上述した隣接していない局ノード間で使用中の帯域幅を格納する必要がなくなる等の利点がある。
【0161】
また、上記実施形態ではゲートキーパ45を使用したが、本発明は、ゲートキーパを用いない場合にも適用可能である。
【0162】
例えば、各局ノード(例えば、35)が自身が搭載している帯域管理テーブル(例えば、BB35)に基づいて、各呼に関する許可や拒否を行う構成とすることができるからである。
【0163】
この構成では、経路上の1または複数の局ノード(例えば、36)のうち、いずれか1つでも拒否した場合には、全体としてその呼でその経路を使用することはできなくなり、経路上のすべての局ノードが許可した場合にのみ、その呼でその経路を使用することが可能となる。
【0164】
なお、上記実施形態において、ゲートキーパ45を省略し、各局ノードがゲートキーパの機能を搭載するようにしてもよい。その場合、複数ゾーンにまたがる呼設定などに際してはゲートキーパ間の通信が発生することになるが、基本的に、上記実施形態と同様な効果を得ることが可能である。各局ノードが自身が搭載している帯域管理テーブルに基づいて、各呼に関する許可や拒否を行う上述した構成も、各局ノードがゲートキーパの機能を搭載するケースに適用可能である。
【0165】
また、上記実施形態では、DECS方式を用いたが、本発明は上述したように、GKRCS方式にも適用可能である。
【0166】
前記GKRCS方式の場合、呼が確立したあとにやり取りされるIPパケットに着信先電話番号が収容されていないものとすると、ある呼に関し、各局ノード(例えば、35)が最初に受け取るIPパケットには、着信先電話番号が含まれていないことになるため、局ノードがどのようにしてそのIPパケットの最終的な宛先を識別し、適切な中継処理を行うかが問題となる。
【0167】
この問題を解決するには様々な方法があり得るが、一例として、IPパケットのペイロード部(データ部)の所定の位置に、最終的な宛先を示す宛先IPアドレスを収容するフィールドを用意しておき、中継処理に際しては、その宛先IPアドレスを利用するようにしてもよい。IPヘッダ中の宛先IPアドレスは、各局ノードで隣接する拠点を指定するものに変更されるが、ペイロード部に対してはこのような変更が行われないからである。
【0168】
また、局ノードがVoIPネットワーク30のネットワーク構成と各拠点のネットワークアドレスを認識していれば、送信元IPアドレスをもとに適切な中継処理を行うことも可能である。
【0169】
例えば、局ノード36が送信元IPアドレスのネットワーク部が拠点ST1を示すAD1のIPパケットを中継する場合、ネットワーク構成から、そのIPパケットの最終的な宛先は、拠点ST3の方向にあることが推測できるため、そのネットワーク部を拠点ST3のネットワーク部AD3に変換することで、中継処理を行うことが可能である。
【0170】
この場合、局ノード36は最終的な宛先を特定しているわけではないが、VoIPネットワークが図9に示すような比較的簡単な構成であれば、十分に対応可能である。
【0171】
なお、上記実施形態では、局ノードは、ユーザ企業などの拠点の構成要素であるものとしたが、必ずしもその必要はない。特に中継処理を行う局ノードは、PBXとしての機能のすべてを持つことが必須であるわけではないので、必ずしも配下に電話機(例えば、41など)を収容している必要もない。例えば、通信事業者が、もっぱら中継処理だけを目的に、このようなPBXとしての機能を持たない局ノードを設置することも可能である。
【0172】
また、上記実施形態では、主としてリンク(例えば、L11)がディジタル専用線である場合を想定したが、リンクがディジタル専用線に限定されるものではないことは、すでに述べた通りである。本発明は、IP−VPN網などにも適用可能である。
【0173】
なお、ルーティングテーブルに経路情報(前記宛先IPアドレスとネクストホップの対応関係)を設定する方法には、ネットワーク管理者などが予め手作業で設定しておくスタティックルーティングと、ルーティングプロトコルを利用して動的に設定するダイナミックルーティングがあるが、そのいずれに対しても、本発明は適用可能である。
【0174】
ただしダイナミックルーティングの場合には、VoIPネットワークの各経路における障害発生や輻輳状態の発生などに応じて、ルーティングテーブルの内容(すなわち、経路情報)が動的に変更され得るから、その変更に応じて、前記変換テーブル(例えば、TT35A、TT35B)の内容を変更することが望ましい。
【0175】
もちろん、スタティックルーティングの場合でも、経路情報を変更した場合には、変換テーブルの内容を変更することが望ましいことは同じである。
【0176】
ルーティングテーブルの経路情報に合わせて変換テーブルの内容を変更しなければ、局ノード(例えば、35)の動作とルータ(例えば、31)の動作が複合された結果として、VoIPのためのIPパケットが同じリンク(例えば、L11)を2度伝送されること等が起こり得、伝送効率の低下や、実際の帯域消費量とゲートキーパ45の認識の間のずれの発生などの問題が起きるからである。
【0177】
局ノードがルータとしてのインタフェースを隣接するルータ(例えば、図9の例では、局ノード35の場合、ルータ31が隣接するルータ)に対してルータとしてのインタフェースを提供し、ダイナミックルーティングに応じた経路情報の交換などを実行する構成とすれば、局ノードが経路情報の変更を自動的に認識することが可能である。
【0178】
また、局ノードがtracerouteコマンドを定期的に実行して前回の実行結果と比較解析すること等により、経路情報の変更を自動的に認識することも可能である。この方法は、ダイナミックルーティングだけでなく、スタティックルーティングに対しても有効である。また、tracerouteコマンドの宛先を変更することにより、隣接するルータの経路情報だけでなく、VoIPネットワーク上の全ルータの経路情報の変更を認識することも可能である。
【0179】
なお、上記実施形態では、VoIPを例に説明したが、本発明は、音声データ以外の情報(例えば、動画像データなど)を収容したIPパケットを通信する場合などにも適用することが可能である。例えば、ビデオ会議などを行う場合には、動画像データを転送することが必要になる。
【0180】
また、本発明では、OSI参照モデルのネットワーク層のプロトコルを、IPプロトコルに限定する必要はない。
【0181】
以上の説明では主としてハードウエア的に本発明を実現したが、本発明はソフトウエア的に実現することも可能である。
【0182】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、リアルタイム通信に関し、帯域資源の利用効率を高めるとともに、通信の信頼性を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るVoIPネットワークで使用する局ノードの動作例を示すフローチャートである。
【図2】発明が解決しようとする課題を説明するためのVoIPネットワークの全体構成例を示す概略図である。
【図3】図2に示したVoIPネットワークの動作説明図である。
【図4】実施形態の動作説明図である。
【図5】実施形態の動作説明図である。
【図6】実施形態の動作説明図である。
【図7】実施形態の動作説明図である。
【図8】実施形態の動作説明図である。
【図9】実施形態に係るVoIPネットワークの全体構成例を示す概略図である。
【図10】実施形態の動作説明図である。
【図11】実施形態に係るVoIPネットワークで使用する局ノードの内部構成例を示す概略図である。
【図12】実施形態に係るVoIPネットワークで使用するルータの内部構成例を示す概略図である。
【図13】実施形態に係るVoIPネットワークで使用するルータが搭載するルーティングテーブルの構成例を示す概略図である。
【図14】実施形態の動作説明図である。
【図15】実施形態に係るVoIPネットワークで使用する局ノードが搭載する変換テーブルの構成例を示す概略図である。
【符号の説明】
10、30…VoIPネットワーク、11〜14,31〜34…ルータ、15〜18,35〜38…局ノード、19〜24、39〜44…電話機、25,45…ゲートキーパ、L1〜L6、L10〜L13…リンク、NB1〜NB4…局番、NB11〜NB33…電話番号、RT31…RT34…ルーティングテーブル、TT35〜TT38…変換テーブル、ST1〜ST4…拠点(LAN)。
Claims (2)
- 所定の通信ネットワーク上で所定の単位信号を用いたリアルタイム通信を実行するために帯域管理を行う帯域管理システムにおいて、
予め搭載してある第1の経路表と、前記単位信号が有する第1の宛先識別子をもとに、前記単位信号の経路を決定して中継処理を行う複数の第1の中継装置と、
予め搭載してある第2の経路表と、前記リアルタイム通信の最終的な宛先を指定するために当該単位信号が有する第2の宛先識別子をもとに、当該単位信号の経路を決定して中継処理を行う複数の第2の中継装置とを備え、
当該第2の中継装置は、
前記通信ネットワークの構造上、前記リアルタイム通信の最終的な宛先までの経路が複数存在する場合、前記第2の経路表をもとに、いずれか1つの経路を選択し、その選択結果に応じて前記第1の宛先識別子を書き換えることを特徴とする帯域管理システム。 - 請求項1の帯域管理システムにおいて、
前記リアルタイム通信に関し、前記通信ネットワーク全体の帯域管理を一元的に行う帯域管理装置を備え、
前記第2の中継装置は、
前記通信ネットワークの帯域資源の利用を要求する前記単位信号を受け取ったとき、その要求に応じた帯域の割り当てを、前記帯域管理装置に対して提案する帯域管理部を有し、
前記帯域管理装置が、当該提案を承認するか否かに応じて、前記通信ネットワーク全体の帯域管理を行うことを特徴とする帯域管理システム。
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JP2003103229A JP2004312380A (ja) | 2003-04-07 | 2003-04-07 | 帯域管理システム |
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JP2006333080A (ja) * | 2005-05-26 | 2006-12-07 | Nec Corp | 携帯通信端末および通信経路選択方法と通信経路選択プログラム |
WO2009044455A1 (ja) * | 2007-10-02 | 2009-04-09 | Fujitsu Limited | 経路制御装置及び経路制御方法 |
CN104468706A (zh) * | 2014-10-22 | 2015-03-25 | 小米科技有限责任公司 | 音频文件传输方法及装置 |
-
2003
- 2003-04-07 JP JP2003103229A patent/JP2004312380A/ja active Pending
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