JP2004310869A - 吸水バランス層形成材及びそれを使用した多層光ディスク - Google Patents

吸水バランス層形成材及びそれを使用した多層光ディスク Download PDF

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耕一 藤井
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Abstract

【課題】構造的に非対称性の強い多層光ディスク:SACDの製造工程(高温から室温への冷却工程)で起きる2枚のポリカーボネート基板の吸水量差を緩和させる「吸水バランス層」を形成するための層形成材の提供、また、耐「反り」性に優れた高信頼性の光ディスクの提供。
【解決手段】紫外線硬化性化合物との光重合反応により樹脂構造に組み込まれる水接触角調整剤を含有した紫外線硬化型樹脂組成物を層形成材とする。なお、水接触角調整剤は、光重合するためのエチレン性不飽和二重結合と撥水性を付与するためのシリコン元素又はフッ素元素とを化学構造中に持つ化合物である。
また、上記層形成材で形成した「吸水バランス層」を有する光ディスクとする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスクにおける変形、特に「反り」を抑制するための層に用いる層形成材、また、それを使用した層を有する多層光ディスクに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、大容量のデジタル信号を記録する為の光記録媒体として、記録層を有する複数の基板を貼り合わせて多層記録層保有とした、多層光ディスクが提案され実用化されている。
この多層光ディスクには、「DVD」や「SACD」等がある。
「DVD」(デジタルバーサタイルディスクまたはデジタルビデオディスク)は、その最も一般的なものであり、映像信号等の記録媒体として利用される。各基板(通常はポリカーボネート製、厚さ0.6mm)は1層以上の記録層及び反射層を持ち、それらを2枚貼り合わせて総厚1.2mmとしている。その代表的なものは、2層の記録層を持つ「DVD−9」と称するものであり、各基板は1層ずつの記録層(1層ずつの反射層;半透明膜又は全反射膜)を持ち、その反射層側を対向させて紫外線硬化型樹脂等の接着剤で貼り合わせた構造である。片面から2層の記録層信号を読み出すことが可能であり、現在、主流となりつつある。さらには、4層の記録層を持ったものが有り、2層の記録層(反射層)を持つ2枚の基板を貼り合わせたもので「DVD−18」と称される多層光ディスクである。
【0003】
「SACD」(スーパーオーディオCD)は、DVDと類似の形態を持つものであって、その構造および基板材料等が開示されている(例えば、特許文献1、参照)。ここで、基板材料は、現行のDVDと同様、ポリカーボネート等である。そしてその構造的特徴としては、記録層及び反射層の位置が、ディスク厚み方向の中心に対して、DVDでは対称の位置(接着剤に接合)に在るのに対して、SACDでは大きくずれていて、非対称の位置に在ることである。
すなわち、その構造は、異なる位置にある二つの記録層信号、例えば、一方の記録層である、ディスク厚み方向で0.6mm位置にあるDVDに相当する信号と、他方の、同1.2mm位置にあるCD(コンパクトディスク)に相当する信号とを、片側の読み出し面から読み出すことを可能としたものである。そのため、DVDの記録層及び反射層がディスク厚み方向0.6mmのほぼ同位置(通常、0.1mm以内)に在るのとは相異する。DVD用の記録層(反射層)の位置とCD用のそれとは大きく異なり、ディスク厚みほぼ中央(約0.6mm位置)の貼り合わせ接着剤層を基準とした場合、接着剤層から約0mm(接着剤層に接する)位置と約0.6mm(基板外面)位置であって、接着剤層から見た場合、反射層位置が非対称性となっているのである。
さらにまた、反射層(金属反射層)には、通常、紫外線硬化型樹脂組成物等からなる保護層が必要である。ここで、DVD用の反射層には接着剤層が保護層の役目を果たすので不要であるが、CD用の反射層に対しては、このままでは外気に直接触れる等のため、保護層が必要であり付設する。このため、反射層位置に加えて、ディスクの層構成においても、より一層、非対称性が増している。
【0004】
ところで、光ディスクにおける記録密度の高密度化に伴い、生産する光ディスクに対しては、耐変形性(変形量抑制)の要求が、益々、厳しくなっている。
光ディスクの「変形」には、種々の形態が有り、例えば、▲1▼「反り」、▲2▼「うねり」、▲3▼「表面凹凸」及び▲4▼「▲1▼〜▲3▼の複合」等である。そして特に、前記▲1▼の「反り」は重要特性とされ、各種光ディスクの規格項目ともなっている。
そして、この「反り」に関しては、ほぼ対称的な構造であるDVDにおいてもそれが発生し、問題となる。
それは、前記したように、DVDの基板が、各種の材料特性―成形性・光学特性・価格等に優れるということから、通常は、ポリカーボネートであることに起因する。すなわち、このポリカーボネート製基板を使用して貼り合わせたDVDでは、高温高湿環境曝露負荷を与えた場合、基板の縁から基板同士が離反する状態で、「反り」を生じる。
そのため、それを解決するための提案がなされている。例えば、各基板の反射層側と読み出し面側(又はレーベル面側)とに、それぞれ、保護コート層とハードコート層とを設け、硬化後の収縮応力を調節することで基板が保護コート層側に凹状に反った状態とし、その後、保護コート層側を内側(接着剤層の断面を見た場合、凸レンズ状になる状態)にしてそれらを貼り合せることで「反り」が解決できるとの開示がある(例えば、特許文献2、参照)。
然しながら、収縮応力を調節して各基板を適切な凹状形体とし、それを使って平面性規格範囲内の貼り合わせディスクを調製することは非常に煩雑であり、実際上は困難なことであった。
【0005】
上記した、DVDに「高温高湿環境曝露負荷を与えた場合」と同じ状況が、SACDの製造プロセスでも起き、SACDに「反り」を発生させる。
SACD等の製造はインラインで実施する。そのため、貼り合わせ直後であっても、その基板温度は約80℃前後と高い。従って、室温(23±2℃)にまで放冷した場合、基板は、かなりの量で、吸水する。この吸水により、ディスクの「反り」が生じるのである。
そして、上述したように、SACDの構造は非対称性が大きい。しかも、ディスクを構成する一方の基板(レーベル面側基板)は、その外面に、反射層及び保護層を有するのに対して、他方の基板(読み出し面側基板)にはそれらが無く、ポリカーボネート基板が直接に外気に触れている。このため、レーベル面側基板の吸水量が小さいのに対して、読み出し面側基板の吸水量は著しく大きいものとなる。
このことから判るように、SACDの「反り」には特徴が有り、それは、貼り合わせた2枚の基板の吸水量がアンバランスとなって起きるということである。一方側すなわち先の例で言えば反射層と保護層のないDVD記録層を有する読み出し面側基板が他方に比較して著しい「反り」を起こすのである。この「反り」は、SACDの非対称性に起因するため、ほぼ対称なDVDに比較して、一段と、発生し易い。
以上のように、従来のSACDでは、製造プロセス起因に依り貼り合わせた2枚の基板の吸水量に差が生じるということが起きるために、ディスクの「反り」が発生しやすいという欠点が有り、問題であった。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−91752号公報(第4頁、図1)
【特許文献2】
特開平10−199049号公報(第2頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような問題に鑑み、本発明の目的は、構造的に非対称性の強い多層光ディスク:SACDの製造工程(高温から室温への冷却工程)で起きる2枚の貼り合わせ基板の吸水量差起因によるディスクの「反り」の抑制である。すなわち、反射層と保護層とを有する一方の基板に比較しその両層が無いことで吸水量が絶対的にも相対的にも大きくなる読み出し面側ポリカーボネート基板の吸水量を低減化させ、2枚の基板の吸水量をバランスさせるための層を付設する際に使用する層形成材料の提供であり、また、耐「反り」性に優れた高信頼性の光ディスクの提供である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため、読み取り面側ポリカーボネート基板上に吸水バランス層を形成することが有効であると考えると共に、より重要な要素は該層の層形成材に有ると考え、その材料適性に関して、各種の無機及び有機材料、中でも、紫外線硬化型樹脂主体の組成物材料について、鋭意検討した。
その結果、特定の水接触角調整剤を含有することで、硬化膜とした際に撥水機能ないし防水機能を有したものに変化する紫外線硬化型樹脂組成物からなる層形成材が、両基板の吸水量をバランスさせるのに顕著な効果を示すこと、また、その層形成材を使用して形成した吸水バランス層を有することで、多層光ディスク:SACDは、ポリカーボネート基板を使用するにも拘らず、「反り」が抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明は、ポリカーボネート製基板の貼り合わせ構造を有し且つ貼り合わせ接着層からみて非対称性の位置に反射層が在る多層光ディスクにおける、該ディスクの信号読み出し面側ポリカーボネート製基板に対する水または水蒸気の侵入を抑制することでディスクの「反り」を抑える機能を有する吸水バランス層を形成するための、紫外線硬化性化合物と光重合反応して樹脂構造に組み込まれるためのエチレン性不飽和二重結合と該層に撥水性を付与するシリコン原子又はフッ素原子とを化学構造中に持つ化合物からなる水接触角調整剤を含有した紫外線硬化型樹脂組成物からなる多層光ディスク用の吸水バランス層形成材である。
また本発明は、上記記載の吸水バランス層形成材を使用して形成した吸水バランス層をポリカーボネート製基板の信号読み出し面側に有する、ポリカーボネート製基板の貼り合わせ構造を有し且つ貼り合わせ接着層からみて非対称性の位置に反射層が在る、耐「反り」性に優れた多層光ディスクである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、図1に示した、ポリカーボネート製基板1(読み出し面側基板)と同・基板2(レーベル面側基板)により、非対称の位置に記録層及び反射層を有する多層光ディスク:SACDにおいて、基板1に付設する「吸水バランス層」の層形成材、及びそれを使用して形成した「吸水バランス層」を有する、耐「反り」性に優れた多層光ディスク:SACDに関するものである。
「吸水バランス層」は、SACD製造工程における放冷過程での基板吸水〔ここで、水とは、 “会合した水”および “ガス状の水(水蒸気)を指す〕に対して、基板1の吸水量が増大することを防止して基板2との吸水量差を緩和し、基板1と基板2との吸水量アンバランスによるディスクの「反り」を抑制する役目を果たすものである。
そしてこの場合、貼り合わせた2枚の基板の吸水量は、平衡状態にあることが理想的である。そのため、該層は、水が極端に浸透又は透過しないものであることは好ましくない。基板1と基板2との吸水量差のバランスが、ディスクの「反り」変化量を小さくする機能として働く。
【0011】
これに対して、従来型のSACDである本発明の「吸水バランス層」を有しないSACDにあっては、後述の比較例3に示したように、基板材料としてポリカーボネートを使用することは不可能である。
発明者らの知見に寄れば、ポリカーボネート製基板に対して、本発明の「吸水バランス層」の代わりに、無機物質膜や有機物質膜、例えば、熱硬化性樹脂膜や一般的な紫外線硬化型樹脂膜の付設を試験・検討したが、工程が増えることのコストアップや加熱による特性の劣化及び耐「反り」特性の未達・等のために、十分な結果は得られなかった。
そのため、基板にはどうしても、非常に高価な材料、例えば、環状ポリオレフィン系樹脂・等を使用する必要があると、予測されていた。
【0012】
本発明の層形成材は、特定の水接触角調整剤と紫外線硬化性化合物及び光重合開始剤とを含有する、紫外線等の活性エネルギー線の照射により光重合反応して、硬化膜の形成が可能な材料である。
【0013】
一般的な水接触角調整剤としては、大別して、その化学構造中に重合可能なエチレン性不飽和二重結合を持つ架橋型とそれを持たない非架橋型のものが有る。
本発明で使用する水接触角調整剤は、そのうちの、架橋型のものである。これを使用することに依り、層形成材の架橋密度を上げることができて「撥水性」を付与することが可能になると共に、紫外線硬化性化合物と重合して樹脂構造中に取り込まれることにより「吸水バランス層」の持続性・耐久性を向上させることが可能となる。
また同時に、本発明で使用する水接触角調整剤は、シリコン・Si原子又はフッ素・F原子を化学構造中に含有するものである。これに依り、「吸水バランス層」の「撥水性ないし防水性」を制御することが可能となる。
【0014】
上記のことから、本発明の層形成材に含有させる水接触角調整剤は、シリコン含有(メタ)アクリレートまたはフッ素含有(メタ)アクリレートである。シリコン含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランがあり、信越化学工業(株)製「KBM−503」等として入手可能である。また、フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレートがあり、大阪有機化学工業(株)製「ビスコート17FM」等として入手可能である。
【0015】
また、本発明の層形成材に使用する水接触角調整剤の含有量は、層形成材中で、0.5部〜2部が好ましい。0.5部未満であると硬化膜表面への移行及び分布が不十分で所望の効果が得られず好ましくなく、逆に2部超過であると該層形成材の紫外線硬化性が低下するため、同様に、好ましくない。
【0016】
本発明の層形成材に使用する紫外線硬化性化合物としては、光重合性モノマー及びオリゴマーが使用でき、それらを併用することもできる。
光重合性モノマーとしては、単官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートがある。そして、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、以下のものが挙げられる。すなわち、置換基としてメチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、テトラヒドロフルフリル、グリシジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル,カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル、イソボルニル,ジシクロペンタニル,ジシクロペンテニル,ジシクロペンテニロキシエチル等を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
又、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール,3−メチル−1,5−ペンタンジオール,1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール,1,8−オクタンジオール,1,9−ノナンジオール,トリシクロデカンジメタノール,エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート,ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート等があげられる。
【0018】
ここで、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物の使用量は、層形成材中で、30質量%以下にすることが好ましい。30質量%より多くなると架橋密度が増し、吸水バランス層とする硬化膜の収縮率が過大になり好ましくない。
【0019】
また、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミド、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド又はN−ヒドロキシエチルアクリルアミド及びそれらのアルキルエーテル化合物等も使用できる。
【0020】
光重合性オリゴマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート,ポリエーテル(メタ)アクリレート,エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等がある。
【0021】
本発明の層形成材に使用する光重合開始剤としては、使用する重合性モノマー及び/又は重合性オリゴマーに代表される紫外線硬化性化合物が硬化できる公知慣用のものがいずれも使用可能である。
【0022】
その光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチルベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒロドキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メチルフェニルグリオキシレート、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、2−ベンジル−2−ジメルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、アクリル化ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4‘−メチルジフェニルスルフィド等が挙げられる。
【0023】
また、上記光重合開始剤に対し、増感剤として、例えば、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N、N−ジメチルベンジルアミン及び4、4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、前述重合性成分と付加重合反応を起こさないアミン類を併用することができる。
【0024】
さらに、本発明の層形成材には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じ、他の添加剤を用いることができる。その添加剤としては、界面活性剤、レベリング剤、熱重合禁止剤、ヒンダードフェノール、ホスファイト等の酸化防止剤、ヒンダードアミン等の光安定剤などがある。
【0025】
次に本発明に係る光ディスクの実施形態の例について説明する。
<2枚のディスクの用意>
1枚目のディスクとして、基板1ポリカーボネート製円形透明基板面に第1信号記録(DVD・等)に対応するピット(ピットの代わりに、有機色素・相変化記録材料等からなる記録層でも良い)を形成し、その上に半透明膜の光反射層を設けたディスクを用意する。同様に、2枚目として、基板2面に第2信号記録(CD・等)及び全反射膜の光反射層を設けたをディスクを用意する。
【0026】
上記記録層に用いることができる有機色素としては、記録に用いるレーザー光によってピットを形成することができるものであれば、特に制限なく、例えばシアニン系、フタロシアニン系、アゾ系、ナフタロシアニン系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系、ピリリウムないしチアピリリウム塩系、スクワリリウム系、クロコニウム系、ホルマザン系、金属錯体色素系等が挙げられる。
【0027】
また、色素に一重項酸素クエンチャーを混合して用いるのもよい。クエンチャーとしては、アセチルアセトナート系、ビスジチオ−α−ジケトン系やビスフェニルジチオール系などのビスジチオール系、チオカテコール系、サリチルアルデヒドオキシム系、チオビスフェノレート系等の金属錯体が好ましい。また、窒素のラジカルカチオンを有するアミン系化合物やヒンダードアミン等のアミン系のクエンチャーも好適である。
【0028】
上記記録層に用いることができる相変化記録材料としては、GeSbTe、AgInSbTe等のカルコゲン合金が挙げられる。
【0029】
上記光反射層は、アルミニウム、銀、金、銅等の金属又はその合金、あるいはケイ素化合物等をスパッタリング、蒸着等の方法で薄膜形成することにより得ることができる。
【0030】
<基板1への「吸水バランス層」、および基板2への保護層の調製>
まず、基板1の、反射層を有する側とは反対面であるポリカーボネート面に、スピンコート法等によって硬化後の膜厚が3〜20μmになるように、本発明の層形成材を塗布し、紫外線照射により硬化膜として、本発明の層形成材を使用した「吸水バランス層」を形成する。
次に、基板2の全反射膜上に、市販・汎用の光ディスク用保護コート剤を塗布し、紫外線照射、硬化膜を形成して、通常の保護層とする。
【0031】
<貼り合わせ光ディスクの調製>
上記で調製した「吸水バランス層」を有するディスク1と、全反射膜と保護層を有するディスク2との2枚のディスクを接着して、貼り合わせ光ディスクとする。すなわち、市販の紫外線硬化型樹脂組成物からなる接着剤を介して基板1の半透明膜面側と基板2のポリカーボネート面側とを対向させ、それを紫外線照射して接着することで1枚とした、図1の貼り合わせ光ディスクとする。
【0032】
ここで、接着剤の塗布手段は、例えば、汎用のスピンコート法等により硬化後の膜厚を30〜70μmとする方法であり、また、紫外線照射の手段としては、例えば、高圧水銀灯・メタルハライドランプ等の連続照射方式の紫外線照射装置、または、キセノンフラッシュ等の閃光照射方式の紫外線照射装置を使用する方法であって、いずれも使用できる。
【0033】
更に、本発明の多層光ディスクは、従来のように、レーザー光による情報の記録・再生を、基板1を通して行うものであっても良いし、基板2の保護層を光透過層を兼ねる層として調製し、それを通して行うものであっても良い。
【0034】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
ここで、以下に記した実施例及び比較例内容は、「吸水バランス層」層形成材における配合組成のみであるが、後記表1の実施例及び比較例は、該層形成材を使用して「吸水バランス層」を形成・付設した多層光ディスク:SACDサンプルとしたときの評価結果である。
尚、以下実施例中の「部」は、「質量部」を表す。
【0035】
以下の配合組成の化合物を65℃で2時間加熱溶解して層形成材を調製した。その後、各層形成材を用い、前記方法により基板1のポリカーボネート面に「吸水バランス層」を形成して、評価用貼り合わせ光ディスク:SACDとした。
〔実施例1〕 水接触角調整剤:KBM−503(0.5部)使用例
<層形成剤の配合組成>
ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート 64部
ネオペンチルグリコールジアクリレート 20部
トリメチロールプロパントリアクリレート 5部
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 5部
ベンゾフェノン 4部
p−ジメチルアミノ安息香酸エチル 1部
メトキノン 0.1部
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 0.5部
(信越化学工業(株)製:KBM−503)
【0036】
〔実施例2〕 水接触角調整剤:KBM−503(1.0部)使用例
実施例1において、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503)の配合量を1.0部に変更した。他の組成は実施例1と同様である。
【0037】
〔実施例3〕 水接触角調整剤:KBM−503(1.5部)使用例
実施例1において、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503)の配合量を1.5部に変更した。他の組成は実施例1と同様である。
【0038】
〔実施例4〕 水接触角調整剤:ビスコート17FM(0.5部)使用例
実施例1において、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503)を、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製ビスコート17FM)に変更した。他の組成は実施例1と同様である。
【0039】
〔実施例5〕 水接触角調整剤:ビスコート17FM(1.0部)使用例
実施例2において、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503)を、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製ビスコート17FM)に変更した。他の組成は実施例2と同様である。
【0040】
〔実施例6〕 水接触角調整剤:ビスコート17FM(1.5部)使用例
実施例3において、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503)を、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製ビスコート17FM)に変更した。他の組成は実施例3と同様である。
【0041】
〔比較例1〕 水接触角調整剤は不添加の例
実施例1において、水接触角調整剤である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503)を不使用(配合量=0)とした。他の組成は実施例1〜6と同様である。
【0042】
〔比較例2〕 水接触角調整剤:KBM−503(0.2部)含有量過少の例
実施例1において、水接触角調整剤である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503)を0.2部に変更した。他の組成は実施例1〜6と同様である。
【0043】
〔比較例3〕 BLANK(「吸水バランス層」なし)
基板1のポリカーボネート面に、「吸水バランス層」を形成しなかった。
【0044】
≪試験および評価方法≫
<「吸水バランス層」の水接触角>
測定環境:23±2℃・50±10%RHに、1時間、実施例及び比較例の各ディスクサンプルを保管する。その後、「吸水バランス層」または基板1ポリカーボネート面(比較例3の場合)表面にイオン交換水を一滴、滴下し、接触角計(協和界面化学(株)製:CA−D)を使用して、水接触角を測定する。
評価は、水接触角が90度以上である場合を良好(○)とし、90度未満である場合を不良(×)と判定した。
【0045】
<ディスクの「反り」量>
測定用の各ディスクサンプルを、23±2℃・50±10%RH・72時間、環境試験室に放置し、ディスクの吸水を飽和させる。
その後、「反り」検査装置(大日本インキ化学工業(株)製:ILS−302)を用い、測定環境:23±2℃・50±10%RHにて、ディスクの読み取り面である下面よりラジアル方向について、「反り」を測定する。
「反り」の評価は、「反り」量の絶対値で行い、反り値が0.4°以下である場合(DVD「反り」規格値の1/2量)を良好(○)とし、0.4°超過である場合を不良(×)と判定した。
<総合判定>
上記<水接触角>及び<「反り」量>の、いずれもが良好である場合を総合評価良好(○)とし、いずれか片方又は両方共に不良である場合を総合評価(×)と判定した。
【0046】
実施例及び比較例の評価結果を、以下の表1に示した。
【表1】
Figure 2004310869
【0047】
表1から明らかなように、本発明の層形成材を使用した実施例1〜実施例6のサンプルは、ディスクの「反り」量が0.3°以下と小さく、耐「反り」性は、極めて良好であった。
【0048】
それに対して、比較例1〜比較例3は、水接触角値および「反り」値のいずれもで、不良であった。
これらは水接触角が小さすぎて、基板1の吸水量の抑制ができなかったことに起因すると推定された。
【0049】
【発明の効果】
本発明の層形成材を使用して「吸水バランス層」を有した多層光ディスク:SACDは、基板として、ポリカーボネート製基板を使用した場合でも、インライン生産システムで不可避の2枚の基板の吸水量差を制御できるため、ディスクの「反り」量を極めて小さくすることができる。
これにより、吸水しても変形し難い反面、高価である環状ポリオレフィン系樹脂材料を基板材料として使用する必要が無くなり、価格がその10分の1程度と安価なポリカーボネート基板を使用することができるため、多層光ディスク:SACDの大幅なコストダウン達成が可能となる。
また、多層光ディスクを始めとする、貼り合わせディスク全般の生産技術において、PMMAとポリカーボネート或いはポリオレフィンとポリカーボネート等、吸水量(吸水率)の異なる基板材料樹脂を貼り合わせなければならない場合に対する、「反り」抑制の可能性を示唆するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係わる多層光ディスク:SACDの概略層構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基板1(ポリカーボネート)
21 基板2(ポリカーボネート)
2 第1記録層
22 第2記録層
3 第1反射層(半透明膜)
23 第2反射層(全反射膜)
4 「吸水バランス層」
5 保護層
6 貼り合わせ接着剤層

Claims (3)

  1. ポリカーボネート製基板の貼り合わせ構造を有し且つ貼り合わせ接着層からみて非対称性の位置に反射層が在る多層光ディスクにおける、該ディスクの信号読み出し面側ポリカーボネート製基板に対する水または水蒸気の侵入を抑制することでディスクの「反り」を抑える機能を有する吸水バランス層を形成するための、紫外線硬化性化合物と光重合反応して樹脂構造に組み込まれるためのエチレン性不飽和二重結合と該層に撥水性を付与するシリコン原子又はフッ素原子とを化学構造中に持つ化合物からなる水接触角調整剤を含有した紫外線硬化型樹脂組成物からなる多層光ディスク用の吸水バランス層形成材。
  2. 請求項1記載の吸水バランス層形成材を使用して形成した吸水バランス層をポリカーボネート製基板の信号読み出し面側に有する、ポリカーボネート製基板の貼り合わせ構造を有し且つ貼り合わせ接着層からみて非対称性の位置に反射層が在る、耐「反り」性に優れた多層光ディスク。
  3. 耐「反り」性が、「反り」量で、0.4°以下である請求項2記載の多層光ディスク。
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