JP2004309859A - 画像記録材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】高出力レーザを用いて記録することにより、コンピューター等のデジタルデータから高感度で直接製版可能であり、現像ラチチュードに優れ、コントラストに優れ、高解像度の画像を形成しうる画像記録材料を提供する。
【解決手段】支持体上に、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)光熱変換物質と、(C)下記一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーと、を含有し、赤外線レーザー露光によりアルカリ現像液への溶解性が向上する感光/感熱層を有することを特徴とする。下記式中、Pはポリマー主鎖を表し、Yは2価の連結基を表す。R1、R2はそれぞれ独立に水素原子、または炭化水素基を表す。nは10〜1000の整数を表す。
【化1】
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)光熱変換物質と、(C)下記一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーと、を含有し、赤外線レーザー露光によりアルカリ現像液への溶解性が向上する感光/感熱層を有することを特徴とする。下記式中、Pはポリマー主鎖を表し、Yは2価の連結基を表す。R1、R2はそれぞれ独立に水素原子、または炭化水素基を表す。nは10〜1000の整数を表す。
【化1】
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、支持体上に、露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が向上する、感光/感熱層を有する画像記録材料に関し、詳細には、コンピュータ等のデジタル信号に基づいて赤外線レーザ等の高エネルギー密度のレーザ光を走査することにより直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能なポジ型画像記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のレーザの発展は目ざましく、特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザ・半導体レーザは高出力かつ小型の物が容易に入手できる様になっている。このような高出力レーザを用いた露光(通常、露光エネルギー密度が5kW〜10kW/cm2より大きい)により、感光性樹脂の溶解性を変化させる記録方式はヒートモード記録又はサーマル記録方式と呼ばれ、近年、平版印刷の分野において、コンピュータ等のディジタルデータから直接製版するダイレクト製版に用いる記録方式として注目されている。
具体的には、支持体上に、高出力レーザ露光により溶解性が増大する感光層(ポジ型感光層という)を設けたサーマルポジ型平版印刷版原版や、支持体上に高出力レーザ露光によりその溶解性が低下する感光層(ネガ型感光層という)を設けたサーマルネガ型平版印刷版が上市されている。
ダイレクト製版用赤外線レーザ用ポジ画像記録材料は、アルカリ可溶性樹脂に、光を吸収し熱を発生する物質と、キノンジアジド化合物類等のようなポジ型感光性化合物を添加した画像記録材料であり、画像部ではポジ型感光性化合物が、アルカリ水溶液可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる溶解阻止剤として働き、非画像部では熱により分解して溶解阻止能を発現しなくなり、現像により除去され得るようになって、画像を形成するもので、アルカリ可溶性樹脂や溶解阻止剤などについて種々の提案がなされている。(例えば、特許文献1乃至3参照。)
【0003】
しかしながら、公知のサーマルポジ型平版印刷版原版の記録層として用いられる公知の感光性組成物は、露光部と非露光部との現像液に対する溶解性の差(溶解性ディスクリミネーション:以下、適宜、溶解性ディスクリと呼ぶ)が不十分であり、使用条件の変動による現像過剰や現像不良が起きやすく、ひいては、露光現像後の画像のコントラストが不充分となるいった問題があった。
ポジ型平版印刷版材料の画像ディスクリミネーションを向上する方法として、例えば、フェノール性水酸基含有化合物を添加する技術が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、このフェノール性水酸基含有化合物はアルカリ現像液に対する非画像部の除去性(溶解性)を改良する反面、同時に画像部の溶解性をも高めてしまうため、画像の鮮鋭度が低下するなどの問題があり、特に、細線や面積率の低い網点画像領域でこの傾向が著しく、このような観点からコントラストの点で、なお、改良が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−285275号公報
【特許文献2】
特開平10−268512号
【特許文献3】
特表平11−506550号公報
【特許文献4】
特開2000−241966号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、赤外線レーザを用いて記録することにより、コンピューター等のデジタルデータから高感度で直接製版可能であり、現像ラチチュードに優れ、網点や細線部分であってもコントラストが高い画像を形成しうるポジ型画像記録材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意研究の結果、画像記録材料の感光/感熱層に特定の側鎖構造を有するポリマーを添加することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を解決するに至った。
【0007】
即ち、本発明のポジ型画像記録材料は、支持体上に、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)光熱変換物質と、(C)一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーと、を含有し、赤外線レーザー露光によりアルカリ現像液への溶解性が向上する感光/感熱層を有することを特徴とする。
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、Pはポリマー主鎖を表し、Yは2価の連結基を表す。R1、R2はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基又はヘテロ環基を表す。nは10〜1000の整数を表す。)
また、本発明の請求項2に係るポジ型画像記録材料は、支持体上に、アルカリ現像液可溶性の第1層と、赤外線レーザー露光によりアルカリ現像液への溶解性が向上する第2層とを順次設けてなり、該第1層及び第2層の少なくとも1層に、前記一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーを含有することを特徴とする。
ここで、一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーは、前記重層構造の記録層のうち、アルカリ現像液可溶性の第1層に含有することが好ましい態様である。
【0010】
本発明の作用機構は明確ではないが、画像記録材料の感光/感熱層に添加される(C)一般式(I)で表される化合物は、活性メチレンヘテロ環構造を有し、その構造に起因してアルカリ可溶性樹脂中の酸基との間に水素結合等による相互作用を形成し、その結果、未露光部(画像部)ではアルカリ溶解性を効果的に抑制し、アルカリ現像液に対する耐溶解性を発現するとともに、露光部(非画像部)では、熱によりその相互作用が容易に解除され、活性メチレン構造に由来する酸基の働きにより、高いアルカリ溶解性を発現するものと考えられる。
また、その効果は特に細線や微少網点等の部分で顕著であり、結果として、従来から困難であった高感度化に伴う低解像度化や現像ディスクリ低下を抑制し、すなわち、高い感度を維持しながら、高解像度、高現像ディスクリを発現し得るものと考える。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のポジ型画像記録材料の感光/感熱層は、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)光熱変換物質と、(C)一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマー〔以下、適宜、(C)特定ポリマーと称する〕と、を含有し、赤外線レーザー露光によりアルカリ現像液への溶解性が向上することを特徴とする。以下に、本発明の画像記録材料に用いられる各成分について順次説明する。
また、本発明の画像記録材料における感光/感熱層は、単層構造のみならず重層構造をとることもできる。重層構造の記録層の場合、本発明の特徴的な成分である(C)一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーは、重層構造のいずれの層に含有されていてもよいが、特に、支持体と赤外線レーザに対する感応性を有する層との間に設けられるアルカリ現像液に可溶性の第1層に含まれることが効果の観点から好ましい。
【0012】
〔(C)一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマー〕
本発明の特徴的な成分である(C)活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーは、下記一般式(I)で表されるポリマーである。
【0013】
【化3】
【0014】
式中、Pはポリマー主鎖を表す。ポリマー主鎖構造には特に制限はないが、好ましくは、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアミド、ポリウレア、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリエチレン等が挙げられる。感光/感熱層中の他の化合物との相溶性の観点から、特に好ましくはポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
本発明のポリマー主鎖構造Pには、一般式(I)に記載の活性メチレン環状側鎖構造以外の側鎖を有していても良く、好ましい側鎖としてはヒドロキシ基、カルボン酸基、置換オキシ基、置換アミノ基、ニトリル基等が挙げられる。
【0015】
式中Yは、活性メチレン環状側鎖をポリマー主鎖構造と連結するための2価の連結基を表し、具体的には、単結合、炭化水素連結基、−O−、−NH−、−C(=O)−などが挙げられ、また、これらの連結基を2つ以上組み合わせてなる2価の連結基であってもよく、これらの中から選択される2価の連結基があげられる。
【0016】
式中、R1、R2はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基又はヘテロ環基を表し、炭化水素基としては、アルキル基、アリール基等が挙げられる。また、これら炭化水素基は置換基を有していても良い。
好ましい炭化水素基としては、炭素原子数1から20までのものが挙げられ、特に好ましいアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基が挙げられ、また、ベンジル基、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基等の不飽和炭化水素基も好適なものとして例示される。
特に好ましいアリール基としてはフェニル基、ナフチル基、アントラニル基が挙げられる。
また、ヘテロ環基としては、複素芳香族であるピリジニル基、フラニル基、チオフェニル基、及び2個以上の窒素を含有する複素芳香環などが挙げられる。
【0017】
R1、R2の炭化水素基又はヘテロ環基に導入可能な好ましい置換基としては、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシルオキシ基(エステル基)、スルホニルオキシ基(スルホン酸エステル基)等に代表される置換オキシ基;アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルチオ基、スルホニルチオ基(スルホン酸チオエステル基)等に代表される置換チオ基;アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基(アミド基)、スルホニルアミノ基(スルホン酸アミド基)に代表される置換アミノ基;ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、置換カルボニル基(R10−C(=O)−)、置換スルホニル基(R20−S(=O)2−)が挙げられる。ここでR10、R20は水素原子、炭化水素基、置換オキシ基、置換チオ基、置換アミノ基である。
【0018】
特に好ましい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、アリルオキシ基、フェノキシ基、アセチルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、ベンジルチオ基、アリルチオ基、フェニルチオ基、アセチルチオ基、トルエンスルホニルチオ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、アリルアミノ基、フェニルアミノ基、アセチルアミド基、トルエンスルホン酸アミド基、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジノ基、
フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、
メトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、チオフェンカルボニル基、ピリジンカルボニル基、メタンスルホニル基、トルエンスルホニル基、クロロフェニルスルホニル基等が挙げられる。
【0019】
nは10〜1000の整数を表す。
(C)成分のポリマー分子量としては、重量平均分子量1000〜10万の範囲であることが好ましい。溶剤溶解性及び現像液溶解性の点でより好ましくは2000〜2万である。
【0020】
活性メチレン環側鎖ポリマーとして、より好ましくは、pH10以上のアルカリに対して可溶化するものが好ましい。最も好ましくはpH12以上のアルカリに対して可溶化するものである。活性メチレン環側鎖構造は、水素が解離することで、酸基として機能する。この酸基はカルボン酸自体よりやや弱い酸であるが、ポリマーはpH7以上のアルカリ現像液に対する可溶性を発現するようになる。アルカリ現像液に対する可溶性は、活性メチレン環構造を示す前記一般式(I)におけるR1、R2の置換基の電子吸引性により制御することができる。即ち、電子吸引性が大きくなると酸性度があがり、可溶化しやすくなる傾向がある。
【0021】
(C)一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーは、例えば、特開平2−44345号記載のモノマー単独或いは該モノマーと既存の不飽和2重結合を有するモノマーとのラジカル共重合により、特開2000−19724公報記載の方法等に従い容易に合成できる。
【0022】
(C)活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーは、前記一般式(I)で表される構造単位のみから構成されるポリマーであってもよいが、側鎖に活性メチレンヘテロ環構造を有しない他の構造単位との共重合体であってもよい。他の構造単位との共重合体の場合、一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖構造を有する構造単位は5.0モル%以上であることが好ましい。
また、共重合し得る他の構造単位は、後に詳述するが、例えば、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、スチレン及びその誘導体、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0023】
以下に、(C)一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
【化4】
【0025】
【化5】
【0026】
【化6】
【0027】
【化7】
【0028】
【化8】
【0029】
【化9】
【0030】
本発明における(C)特定ポリマーは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明に係る(C)特定ポリマーは、感光/感熱層の全固形分中、1.0〜50.0質量%添加されることが好ましく、特に5.0〜30.0質量%添加されることが好ましい。添加量が少なすぎると、本発明の効果である優れた現像ラチチュードおよび画像コントラストが得難く、添加量が多すぎると塗膜の皮膜特性が低下する傾向にある。
【0031】
〔(A)アルカリ可溶性樹脂〕
本発明の画像記録材料に使用する(A)アルカリ可溶性樹脂としては、高分子中の主鎖および/または側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体またはこれらの混合物を包含する。
中でも、下記(1)〜(6)に挙げる酸性基を高分子の主鎖および/または側鎖中に有するものが、耐現像性の点、アルカリ水溶液に対する溶解性の点で好ましい。
【0032】
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2 NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2 NHCOR、−SO2 NHSO2 R、−CONHSO2 R〕
(4)カルボン酸基(−CO2 H)
(5)スルホン酸基(−SO3 H)
(6)リン酸基(−OPO3 H2 )
【0033】
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0034】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂の中でも、(1)フェノール基、(2)スルホンアミド基および(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性樹脂が好ましく、特に、(1)フェノール基または(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂が、アルカリ性現像液に対する溶解性、現像ラチチュード、膜強度を十分に確保する点から最も好ましい。
【0035】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、p−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、フェノールとクレゾール(m−、p−、またはm−/p−混合のいずれでもよい)とホルムアルデヒドとの縮重合体等のノボラック樹脂、およびピロガロールとアセトンとの縮重合体を挙げることができる。さらに、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を挙げることもできる。或いは、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を用いることもできる。
【0036】
フェノール基を有する化合物としては、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、またはヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0037】
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、スルホンアミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物が挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基、またはビニロキシ基と、置換あるいはモノ置換アミノスルホニル基または置換スルホニルイミノ基と、を分子内に有する低分子化合物が好ましく、例えば、下記一般式(i)〜一般式(v)で表される化合物が挙げられる。
【0038】
【化10】
【0039】
〔式中、X1、X2 は、それぞれ独立に−O−または−NR7を表す。R1、R4は、それぞれ独立に水素原子又は−CH3を表す。R2、R5、R9、R12、及び、R16は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。R3、R7、及び、R13は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R6、R17は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R8、R10、R14は、それぞれ独立に水素原子又は−CH3を表す。R11、R15は、それぞれ独立に単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Y1、Y2は、それぞれ独立に単結合又はCOを表す。〕
【0040】
一般式(i)〜一般式(v)で表される化合物のうち、本発明の画像記録材料では、特に、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0041】
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、活性イミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、下記構造式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物を挙げることができる。
【0042】
【化11】
【0043】
具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0044】
(4)カルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、カルボン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
(5)スルホン酸基を有するアルカリ可溶性高分子としては、例えば、スルホン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成単位とする重合体を挙げることができる。
(6)リン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、リン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
【0045】
本発明の画像記録材料に用いるアルカリ可溶性樹脂を構成する、前記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する最小構成単位は、特に1種類のみである必要はなく、同一の酸性基を有する最小構成単位を2種以上、または異なる酸性基を有する最小構成単位を2種以上共重合させたものを用いることもできる。
【0046】
前記共重合体は、共重合させる(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する化合物が共重合体中に10モル%以上含まれているものが好ましく、20モル%以上含まれているものがより好ましい。10モル%未満であると、現像ラチチュードを十分に向上させることができない傾向がある。
【0047】
本発明では、化合物を共重合してアルカリ可溶性樹脂を共重合体として用いる場合、共重合させる化合物として、前記(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物を用いることもできる。(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物の例としては、下記(m1)〜(m12)に挙げる化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、これらは前記(C)成分の共重合成分としても好適である。
(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
【0048】
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(m10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(m12)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
【0049】
アルカリ可溶性樹脂としては、赤外線レーザ等による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性水酸基を有することが好ましく、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,又はm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。
【0050】
また、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。
【0051】
アルカリ可溶性樹脂は、その質量平均分子量が500以上であることが画像形成性の点で好ましく、1,000〜700,000であることがより好ましい。また、その数平均分子量が500以上であることが好ましく、750〜650,000であることがより好ましい。分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は1.1〜10であることが好ましい。
【0052】
また、これらのアルカリ可溶性樹脂は単独で用いるのみならず、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。組み合わせる場合には、米国特許第4123279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体や、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、本発明者らが先に提出した特開2000−241972号公報に記載の芳香環上に電子吸引性基を有するフェノール構造を有するアルカリ可溶性樹脂などを併用してもよい。
【0053】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は、その合計の含有量が、画像記録材料の全固形分中、30〜98質量%が好ましく、40〜95質量%がより好ましい。含有量が30質量%未満である場合には、耐久性が悪化する傾向にあり、また、98質量%を超える場合には、感度、画像形成性が低下する傾向があるため好ましくない。
【0054】
〔(B)光熱変換物質〕
本発明に用いられる光熱変換物質としては、光エネルギー照射線を吸収し、熱を発生する物質であれば特に吸収波長域の制限はなく用いることができるが、入手容易な高出力レーザへの適合性の観点から、波長760nm〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料又は顔料が好ましく挙げられる。
【0055】
染料としては、市販の染料、例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体、オキソノール染料、ジイモニウム染料、アミニウム染料、クロコニウム染料等の染料が挙げられる。
【0056】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクアリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0057】
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0058】
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0059】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。さらに、下記一般式(a)〜一般式(e)で示される染料が光熱変換効率に優れるため好ましく、特に下記一般式(a)で示されるシアニン色素は、本発明の画像記録材料で使用した場合に、アルカリ溶解性樹脂との高い相互作用を与え、且つ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
【0060】
【化12】
【0061】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子又は、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
L1として、例えば、次に示すようなイオン化されたものでもよい。
【0062】
【化13】
【0063】
前記式中、Xa−は後述するZa−と同様に定義され、Raは水素原子、アルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0064】
R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0065】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za−は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素がその構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合は、Za−は必要ない。好ましいZa−は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0066】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特開2001−133969明細書の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638明細書の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360明細書の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
【0067】
【化14】
【0068】
【化15】
【0069】
【化16】
【0070】
【化17】
【0071】
前記一般式(b)中、Lは共役炭素原子数7以上のメチン鎖を表し、該メチン鎖は置換基を有していてもよく、置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zb+は対カチオンを示す。好ましい対カチオンとしては、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、アルカリ金属カチオン(Ni+、K+、Li+)などが挙げられる。R9〜R14及びR15〜R20は互いに独立に水素原子又はハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基から選択される置換基、或いは、これらを2つ若しくは3つ組合せた置換基を表し、互いに結合して環構造を形成していてもよい。ここで、前記一般式(b)中、Lが共役炭素原子数7のメチン鎖を表すもの、及び、R9〜R14及びR15〜R20がすべて水素原子を表すものが入手の容易性と効果の観点から好ましい。
【0072】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(b)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0073】
【化18】
【0074】
【化19】
【0075】
前記一般式(c)中、Y3及びY4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又はテルル原子を表す。Mは、共役炭素数5以上のメチン鎖を表す。R21〜R24及びR25〜R28は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基を表す。また、式中Za−は対アニオンを表し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0076】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(c)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0077】
【化20】
【0078】
【化21】
【0079】
前記一般式(d)中、R29ないしR31は各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を示す。R33及びR34は各々独立に、アルキル基、置換オキシ基、又はハロゲン原子を示す。n及びmは各々独立に0ないし4の整数を示す。R29とR30、又はR31とR32はそれぞれ結合して環を形成してもよく、またR29及び/又はR30はR33と、またR31及び/又はR32はR34と結合して環を形成しても良く、さらに、R33或いはR34が複数存在する場合に、R33同士あるいはR34同士は互いに結合して環を形成してもよい。X2及びX3は各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、X2及びX3の少なくとも一方は水素原子又はアルキル基を示す。Qは置換基を有していてもよいトリメチン基又はペンタメチン基であり、2価の有機基とともに環構造を形成してもよい。Zc−は対アニオンを示し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0080】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(d)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0081】
【化22】
【0082】
【化23】
【0083】
前記一般式(e)中、R35〜R50はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基、オニウム塩構造を示す。Mは2つの水素原子若しくは金属原子、ハロメタル基、オキシメタル基を示すが、そこに含まれる金属原子としては、周期律表のIA、IIA、IIIB、IVB族原子、第一、第二、第三周期の遷移金属、ランタノイド元素が挙げられ、中でも、銅、マグネシウム、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、チタン、バナジウムが好ましい。
【0084】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(e)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0085】
【化24】
【0086】
本発明において赤外線吸収剤として使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が挙げられる。
【0087】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0088】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0089】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の画像記録層塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを越えると画像記録層の均一性の点で好ましくない。
【0090】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0091】
これらの光熱変換剤である顔料もしくは染料は、感光/感熱層を構成する全固形分に対し0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10重量%、顔料の場合特に好ましくは0.1〜10重量%の割合で添加することができる。添加量が少なすぎると感度が低下する傾向になり、また、多すぎる場合、感光/感熱層の皮膜特性に好ましくない影響を与える虞がある。
なお、重層構造の記録層の第2層(上層)に用いる場合は、基板界面における現像性の問題がない分、添加量の自由度が高く、全固形分に対して0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜40重量%、特に好ましくは、0.5〜30重量%の割合で添加することができる。
【0092】
〔その他の成分〕
本発明の画像記録材料の感光/感熱層(記録層)には、上記の各成分の他、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて種々の添加剤を添加することができる。
例えば、有用な添加剤として、オニウム塩、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物、多官能アミン化合物等、添加するとアルカリ水可溶性高分子(アルカリ可溶性樹脂)の現像液への溶解阻止機能を向上させるいわゆる溶解抑止剤を挙げることができる。中でも、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、スルホン酸アルキルエステル等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質を併用することが、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を観点から好ましい。分解性溶解抑止剤としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩および、o−キノンジアジド化合物が好ましく、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のオニウム塩がより好ましい。
【0093】
本発明において用いられるオニウム塩として、好適なものとしては、例えばS.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、特開平3−140140号の明細書に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivelloet al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第5,041,358号、同第4,491,628号、特開平2−150848号、特開平2−296514号に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,PolymerBull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同5,041,358号、同4,491,628号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等があげられる。
これらのオニウム塩の中でも、溶解阻止能や熱分解性の観点から、ジアゾニウム塩が特に好ましい。特に、特開平5−158230号公報に記載の一般式(I)で示されるジアゾニウム塩や特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が好ましく、可視光領域の吸収波長が小さい特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が最も好ましい。
【0094】
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
【0095】
好適なキノンジアジド類としてはo−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley&Sons.Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物あるいは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステル又はスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号及び同第3,188,210号に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
【0096】
さらにナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号などの各明細書中に記載されているものをあげることができる。
【0097】
分解性溶解抑止剤であるオニウム塩、及び/または、o−キノンジアジド化合物の添加量は好ましくは記録層の全固形分に対し、1〜10質量%、更に好ましくは1〜5質量%、特に好ましくは1〜2質量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
【0098】
o−キノンジアジド化合物以外の添加剤の添加量は、好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.1〜2質量%、特に好ましくは0.1〜1.5質量%である。本発明に係る添加剤と結着剤は、同一層へ含有させることが好ましい。
【0099】
また、分解性を有さない溶解抑止剤を併用してもよく、好ましい溶解抑止剤としては、特開平10−268512号公報に詳細に記載されているスルホン酸エステル、燐酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、芳香族ジスルホン、カルボン酸無水物、芳香族ケトン、芳香族アルデヒド、芳香族アミン、芳香族エーテル等、同じく特開平11−190903号公報に詳細に記載されているラクトン骨格、N,N−ジアリールアミド骨格、ジアリールメチルイミノ骨格を有し着色剤を兼ねた酸発色性色素、同じく特開2000−105454号公報に詳細に記載されている非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0100】
さらに、感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を添加剤として併用することができる。また、後述する界面活性剤、画像着色剤、および、可塑剤等も、一般に使用される添加剤として挙げることができる。
環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4’’−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3’’,4’’−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類及びカルボン酸類などが挙げられる。
上記の環状酸無水物、フェノール類及び有機酸類の記録層中に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0101】
また、これら以外にも、エポキシ化合物、ビニルエーテル類、更には特開平8−276558号公報に記載のヒドロキシメチル基を有するフェノール化合物、アルコキシメチル基を有するフェノール化合物及び本発明者らが先に提案した特開平11−160860号公報に記載のアルカリ溶解抑制作用を有する架橋性化合物等を目的に応じて適宜添加することができる。
【0102】
また、本発明に係る記録層を形成するにあたっては、その塗布液中に、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、EP950517公報に記載されているようなシロキサン系化合物、特開平11−288093号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。両面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業(株)製)等が挙げられる。
シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として、(株)チッソ社製、DBE−224,DBE−621,DBE−712,DBP−732,DBP−534、独Tego社製、Tego Glide100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることが出来る。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の感光性組成物中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0103】
また、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0104】
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、記録層全固形分に対し、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の割合で記録層中に添加することができる。
【0105】
更に、記録層中には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
【0106】
〔画像記録材料の形成〕
本発明の画像記録材料を形成するには、適切な支持体上に、上記記録層に含まれる各成分を溶媒に溶かした記録材料層塗布液を塗布すればよい。なお、記録層は、赤外線レーザ感応性の感光/感熱層のみからなる1層構成であっても、支持体上に、アルカリ現像液可溶性の第1層(下層)と赤外線レーザ感応性の第2層(上層)を積層してなる重層構造の記録層であってもよい。重層構造の記録層を有する場合、本発明の必須成分である(C)成分は、下層と上層のいずれに含まれてもよく、双方に含まれてもよいが、少なくとも下層に添加されることが、画質(解像度)向上の観点から好ましい。
また、本発明の画像記録材料には、記録層の他、目的に応じて、後述する保護層、下塗り層、バックコート層なども同様にして形成することができる。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等をあげることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。
溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0107】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の記録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、平版印刷版原版として適用される場合、1層構造の場合には、一般的に0.5〜5.0g/m2 が好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、記録層の皮膜特性は低下する。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
【0108】
次に、本発明に係る感光/感熱層が重層構造をとる場合について説明する。重層構造をとる記録層は、アルカリ水可溶性の第1層(下層)と、赤外線レーザー露光によりアルカリ現像液への溶解性が向上する第2層(上層)とからなり、前記第1層及び第2層の少なくとも1層に、本発明に係る(C)特定ポリマーを含有することを要する。
このような構成の記録層の場合、画像部領域においては上層が未露光の状態では、良好な膜性と耐アルカリ現像性を有するため、画像部表面は高い耐アルカリ現像性を有するが、露光部即ち非画像部領域で現像抑制剤による耐現像性が露光により速やかに解除され、上層が現像除去されると高い現像性を有するアルカリ現像液可溶性の下層が露出し、それ自体が有する高いアルカリ水溶液に対する溶解性が発現し、速やかに除去されて親水性の支持体が露出し、非画像部に汚れの無い優れた画像が形成される。
【0109】
まず、赤外線レーザー露光によりアルカリ現像液への溶解性が向上する第2層(上層)について説明する。この上層は、前記(C)特定ポリマーを必須成分としない他は、上述の感光/感熱層と同じ構成をとることができ、好ましい成分も同様である。また、この上層には(C)特定ポリマーを含んでもよいし、後述する下層に(C)特定ポリマーを含有する場合には、必ずしも含んでいなくてもよい。
【0110】
次に、下層について説明する。
本発明に係る下層は、アルカリ現像液に可溶性であることを要し、この観点から、アルカリ可溶性樹脂を主成分とすることが好ましい。下層に用いられるアルカリ可溶性樹脂は、前記感光/感熱層において説明した(A)アルカリ可溶性樹脂と同じものが好ましく挙げられる。これらのなかでも、感度、画像形成性の観点からは後述する上層に用いられるアルカリ可溶性樹脂よりも相互作用を形成し難く、アルカリ現像液に対する溶解性に優れた樹脂を選択することが好ましく、例えば、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アセタール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン樹脂等を好ましく挙げることができる。
【0111】
下層に用いるアルカリ可溶性樹脂としては、上層を塗布する際にその塗布溶媒により溶解されない、溶剤溶解性の低い樹脂を選択することが好ましい。このような樹脂を選択することで、2つの層の界面における所望されない相溶を抑制することができる。このような観点から上記の中でも、アセタール樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が特に好ましい。
【0112】
本発明に係る下層成分中のアルカリ可溶性樹脂の含有量は、全固形分中、約40〜95質量%、好ましくは約50〜90質量%である。
下層には、前記アルカリ可溶性樹脂に加えて、前記赤外線吸収剤や種々の添加剤を併用することができる。また、下層に前記(C)特定ポリマーを含有することが、効果の観点から好ましい。
【0113】
本発明に係る(C)特定ポリマーは、下層に含まれる場合、下層の全固形分中、1.0〜50.0質量%添加されることが好ましく、特に5.0〜30.0質量%添加されることが好ましい。
また、前記(C)特定ポリマーは上層にも添加することができるが、そのときの好ましい添加量は、上層全固形分に対して、1.0〜50.0質量%添加されることが好ましく、特に好ましくは5.0〜30.0質量%の範囲である。
【0114】
なお、該下層および上層は、原則的に2つの層を分離して形成することが好ましい。
2つの層を分離して形成する方法としては、例えば、下層に含まれる成分と、上層に含まれる成分との溶剤溶解性の差を利用する方法、または、上層を塗布した後、急速に溶剤を乾燥、除去させる方法等が挙げられる。
【0115】
本発明において、記録層が重層構造を取る場合、支持体上に塗布される下層成分の乾燥後の塗布量は、0.05〜1.5g/m2の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.1〜1.0g/m2の範囲である。この範囲において優れた耐刷性向上効果と、良好な画像再現性が達成でき、高感度で記録可能である。また、上層成分の乾燥後の塗布量は、0.05〜3.5g/m2の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.1〜1.5g/m2の範囲である。この好ましい範囲において、高感度で記録可能であり、優れた耐刷性向上効果を得ることができる。
下層および上層を合わせた乾燥後の塗布量としては、0.5〜5.0g/m2の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは1.0〜3.0g/m2の範囲である。
【0116】
本発明に係る記録層塗布液中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、記録層全固形分中0.01〜1質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0117】
(支持体)
本発明の画像記録材料に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、必要な強度、可撓性などの物性を満たすものであれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィルム等が挙げられる。
本発明に適用し得る支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0118】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0119】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0120】
本発明の画像記録材料は、支持体上にポジ型の記録層を設けたものであるが、必要に応じて支持体と記録層との間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、及びトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。
【0121】
この有機下塗層は次のような方法で設けることができる。即ち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。また後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、画像記録材料の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。
有機下塗層の乾燥後の塗布量は、2〜200mg/m2が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2である。上記範囲において好ましい耐刷性能向上効果が得られる。
【0122】
上記のようにして作製された本発明の画像記録材料は、平版印刷版原版として好適に用いられ、通常、像露光、現像処理を施される。以下、本発明の画像記録材料を平版印刷版原版に用いた場合の画像記録方法について説明する。
露光条件としては、露光エネルギー密度が5kW〜10kW/cm2より大きいことが画像形成における熱の有効利用の点で好ましく、このような条件での露光により、望ましい感度が得られる。露光エネルギー密度は高いほど、感度の点で有利である反面、例えば露光パワー密度が50kW/cm2を超えるような場合にはアブレーションが生じやすくなり、光学系汚染等の弊害を生じる場合がある。
露光波長に関しては、現時点では、高出力レーザの経済性の観点で、近赤外から赤外領域を利用することが好ましい。露光光源としては、固体レーザ、半導体レーザが経済性、光源寿命の点で好ましい。
【0123】
本発明に係る平版印刷版の現像液及び補充液としては従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。
例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。
これらのアルカリ剤の中で特に好ましい現像液は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩水溶液である。その理由はケイ酸塩の成分である酸化珪素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率と濃度によって現像性の調節が可能となるためであり、例えば、特開昭54−62004号公報、特公昭57−7427号に記載されているようなアルカリ金属ケイ酸塩が有効に用いられる。
【0124】
更に自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換する事なく、多量のPS版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。現像液及び補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。
好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤があげられる。更に現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
上記現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の画像記録材料を平版印刷版として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0125】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽及びスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0126】
本発明に係る平版印刷版原版においては、画像露光し、現像し、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きして得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば原画フィルムのフィルムエッジ跡など)がある場合には、その不必要な画像部の消去が行なわれる。このような消去は、例えば特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行なう方法が好ましいが、特開平59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
【0127】
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力平版印刷版としたい場合には、所望によりバーニング処理が施される。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、あるいは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
【0128】
整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥重量)が適当である。整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(たとえば富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0129】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行なわれている処理を施こすことができるが水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0130】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本願実施例においては、本発明の画像記録材料を平版印刷版原版に適用して評価を行い、その評価を本発明の画像記録材料の評価とする。
【0131】
〔支持体の作製〕
厚さ0.3mmのJIS−A−1050アルミニウム板を用いて、下記に示す工程を組み合わせて処理することで支持体を作製した。
【0132】
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
【0133】
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0134】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0135】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0136】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0137】
(f)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0138】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0139】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0140】
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0141】
(j)陽極酸化処理
電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度は43℃であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
電流密度はともに約30A/dm2であった。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
【0142】
上記(a)〜(j)の各工程を順に行い(e)工程におけるエッチング量は3.4g/m2となるようにして支持体を作製した。
上記によって得られた支持体は続けて下記の親水化処理、下塗り処理を行った。
【0143】
(k)アルカリ金属ケイ酸塩処理
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理層中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。その際のシリケート付着量は3.6mg/m2であった。
(下塗り処理)
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、下記組成の下塗り液を塗布し、80℃で15秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は15mg/m2であった。
【0144】
<下塗り液組成>
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1.0g
【0145】
【化25】
【0146】
〔実施例1〜5、比較例1〜2〕
得られた支持体に以下の画像記録層用塗布液1を塗布し、150℃のオーブンで1分乾燥後、乾燥膜厚が2.1g/m2のポジ型画像記録層を有する平版印刷版原版を作製した。
【0147】
【0148】
【化26】
【0149】
〔現像ラチチュードの評価〕
得られた平版印刷版原版を温度25℃相対湿度50%の条件下で5日間保存した後に、Creo社製Trendsetter3244にてビーム強度9.0W、ドラム回転速度150rpmでテストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、下記A組成又はB組成のアルカリ現像液の水の量を変更することにより、希釈率を変えて電導度を変化させたものを仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー900Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間20秒で現像した。この時、画像部が溶出されず、かつ、現像不良の記録層残膜に起因する汚れや着色がなくコントラストの良好な画像を与える現像液の電導度の一番高いものと、一番低い物の差を現像ラチチュードとして評価した。なお、この差が大きい程、現像ラチチュードに優れ、コントラストに優れた画像を形成し得る。結果を表1に示す。
【0150】
【0151】
【0152】
〔感度の評価〕
得られた平版印刷用原板をCreo社製Trendsetter3244にて露光エネルギーを変えて、テストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、上記現像ラチチュードの評価において画像部が溶出されず、かつ、現像不良の記録層残膜に起因する汚れや着色がなくコントラストの良好な画像を与える現像液の電導度の一番高いものと、一番低い物の中間(平均値)の電導度のアルカリ現像液で現像し、この現像液で非画像部が現像できる露光量(ドラム回転速度150rpmのときのビーム強度)を測定し、感度とした。数値が小さいほど高感度であると評価する。
【0153】
〔解像度の評価〕
上記感度の評価におけるテストパターンで、出力7.5Wで、面積率0.5%の網点を露光し、現像後、画像再現性を顕微鏡による形状観察により行ない、また、画像濃度を測定することで画像の再現率を確認した。
ここで、再現率100%とは、全ての網点が飛ばずに再現されていることを示し、0%とは全ての網点が現像により除去されてしまった状態を示す。従って、100%に近い値ほど、高い画像コントラストであり高解像度であると評価する。
【0154】
【表1】
【0155】
表1に明らかなように、本発明に係る(C)特定ポリマーを含有する感光/感熱層を有する実施例1〜5の平版印刷版原版は、シリケート系現像液、非シリケート系現像液のいずれを用いた場合においても、現像ラチチュード及び感度に優れ、且つ、解像度が高く、コントラストに優れた画像が形成されていることが確認された。
一方、本発明に係る(C)特定ポリマーを含有しない感光/感熱層を有する比較例1、2の平版印刷版原版は、現像ラチチュード、感度ともに劣っており、解像度も実施例と比べ低いことがわかった。また、(C)特定ポリマーに代えてp−アセチルフェノールを添加剤として用いた比較例3の平版印刷版原版は、添加剤を用いなかった比較例1に比べ、感度、現像ラチチュードに改良は見られるものの、実用上問題のあるレベルであり、解像度は却って低下していることが確認された。
【0156】
〔実施例6〜10、比較例4〕
実施例1〜5で用いたのと同様の下塗り層を有する支持体に、下記組成の下層用塗布液を、ウェット塗布量が28ml/m2のワイヤーバーで塗布して塗布量を0.8g/m2としたのち、150℃の乾燥オーブンで60秒間乾燥した。
得られた下層付き支持体に、下記組成の画像記録層(上層)用塗布液2を、ウエット塗布量が11ml/m2のワイヤーバーで塗布を行い総塗布量を1.0g/m2とした。塗布後、乾燥オーブンで、140℃で70秒間の乾燥を行いポジ型平版印刷版原版を作製した。
【0157】
【0158】
【0159】
【化27】
【0160】
〔現像ラチチュードおよび感度の評価〕
得られた平版印刷版原版に対し、現像液を富士写真フイルム(株)製現像液DT−1希釈液に替え、現像時間を14秒に変更した以外は実施例1〜5と同様の方法により露光及び現像を行い、現像ラチチュード、感度、及び、解像度を評価した。結果を表2に示す。
【0161】
【表2】
【0162】
表2に明らかなように、本発明に係る(C)特定ポリマーを含有する感光/感熱層を有する実施例6〜10の平版印刷版原版は、現像ラチチュード及び感度に優れ、且つ、解像度が高く、コントラストに優れた画像が形成されていることから、記録層が重層構造をとった場合でも、単層構造と同様の効果を奏することが確認された。また、重層構造の場合においても、本発明に係る(C)特定ポリマーを含有しない感光/感熱層を有する比較例4の平版印刷版原版は、現像ラチチュード、感度ともに劣っており、解像度も実施例と比べ低いことがわかった。
【0163】
〔実施例11〜13、比較例5〕
実施例1〜5で用いたのと同様の下塗り層を有する支持体に、下記組成の画像記録層用塗布液3をウエット塗布量が19cc/m2のワイヤーバーで塗布したのち乾燥し、平版印刷版原版を得た。
【0164】
【0165】
〔現像ラチチュードのおよび感度の評価〕
得られた平版印刷版原版に対し、実施例1〜5と同様の方法により露光及び現像を行い、現像ラチチュード、感度、及び、解像度を評価した。結果を表3に示す。
【0166】
【表3】
【0167】
表3に明らかなように、本発明に係る(C)特定ポリマーを含有する感光/感熱層を有する実施例11〜13の平版印刷版原版は、アルカリ可溶性樹脂の主成分としてアクリル系ポリマーを用いた場合においても、現像ラチチュード、感度及び解像度に優れていることが確認された。
以上、実施例によれば、本発明の画像記録材料は、平版印刷版原版として有用であることがわかった。
また、表1〜3の対比において、記録層が重層構造をとった場合でも、単層構造と同様に、現像ラチチュード及び感度に優れ、且つ、解像度が高く、コントラストに優れた画像が形成され、さらに、記録層を重層構造とし、下層に(C)特定ポリマーを含有させた場合においては、感度、解像度にさらなる向上が見られ、この態様において本発明の効果が著しいことがわかった。
【0168】
【発明の効果】
本発明の画像記録材料は、赤外線を放射する固体レーザまたは半導体レーザを用いて記録することにより、コンピューター等のデジタルデータから高感度で直接製版可能であり、現像ラチチュードに優れ、コントラストに優れた高解像度の画像を形成することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、支持体上に、露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が向上する、感光/感熱層を有する画像記録材料に関し、詳細には、コンピュータ等のデジタル信号に基づいて赤外線レーザ等の高エネルギー密度のレーザ光を走査することにより直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能なポジ型画像記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のレーザの発展は目ざましく、特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザ・半導体レーザは高出力かつ小型の物が容易に入手できる様になっている。このような高出力レーザを用いた露光(通常、露光エネルギー密度が5kW〜10kW/cm2より大きい)により、感光性樹脂の溶解性を変化させる記録方式はヒートモード記録又はサーマル記録方式と呼ばれ、近年、平版印刷の分野において、コンピュータ等のディジタルデータから直接製版するダイレクト製版に用いる記録方式として注目されている。
具体的には、支持体上に、高出力レーザ露光により溶解性が増大する感光層(ポジ型感光層という)を設けたサーマルポジ型平版印刷版原版や、支持体上に高出力レーザ露光によりその溶解性が低下する感光層(ネガ型感光層という)を設けたサーマルネガ型平版印刷版が上市されている。
ダイレクト製版用赤外線レーザ用ポジ画像記録材料は、アルカリ可溶性樹脂に、光を吸収し熱を発生する物質と、キノンジアジド化合物類等のようなポジ型感光性化合物を添加した画像記録材料であり、画像部ではポジ型感光性化合物が、アルカリ水溶液可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる溶解阻止剤として働き、非画像部では熱により分解して溶解阻止能を発現しなくなり、現像により除去され得るようになって、画像を形成するもので、アルカリ可溶性樹脂や溶解阻止剤などについて種々の提案がなされている。(例えば、特許文献1乃至3参照。)
【0003】
しかしながら、公知のサーマルポジ型平版印刷版原版の記録層として用いられる公知の感光性組成物は、露光部と非露光部との現像液に対する溶解性の差(溶解性ディスクリミネーション:以下、適宜、溶解性ディスクリと呼ぶ)が不十分であり、使用条件の変動による現像過剰や現像不良が起きやすく、ひいては、露光現像後の画像のコントラストが不充分となるいった問題があった。
ポジ型平版印刷版材料の画像ディスクリミネーションを向上する方法として、例えば、フェノール性水酸基含有化合物を添加する技術が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、このフェノール性水酸基含有化合物はアルカリ現像液に対する非画像部の除去性(溶解性)を改良する反面、同時に画像部の溶解性をも高めてしまうため、画像の鮮鋭度が低下するなどの問題があり、特に、細線や面積率の低い網点画像領域でこの傾向が著しく、このような観点からコントラストの点で、なお、改良が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−285275号公報
【特許文献2】
特開平10−268512号
【特許文献3】
特表平11−506550号公報
【特許文献4】
特開2000−241966号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、赤外線レーザを用いて記録することにより、コンピューター等のデジタルデータから高感度で直接製版可能であり、現像ラチチュードに優れ、網点や細線部分であってもコントラストが高い画像を形成しうるポジ型画像記録材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意研究の結果、画像記録材料の感光/感熱層に特定の側鎖構造を有するポリマーを添加することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を解決するに至った。
【0007】
即ち、本発明のポジ型画像記録材料は、支持体上に、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)光熱変換物質と、(C)一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーと、を含有し、赤外線レーザー露光によりアルカリ現像液への溶解性が向上する感光/感熱層を有することを特徴とする。
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、Pはポリマー主鎖を表し、Yは2価の連結基を表す。R1、R2はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基又はヘテロ環基を表す。nは10〜1000の整数を表す。)
また、本発明の請求項2に係るポジ型画像記録材料は、支持体上に、アルカリ現像液可溶性の第1層と、赤外線レーザー露光によりアルカリ現像液への溶解性が向上する第2層とを順次設けてなり、該第1層及び第2層の少なくとも1層に、前記一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーを含有することを特徴とする。
ここで、一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーは、前記重層構造の記録層のうち、アルカリ現像液可溶性の第1層に含有することが好ましい態様である。
【0010】
本発明の作用機構は明確ではないが、画像記録材料の感光/感熱層に添加される(C)一般式(I)で表される化合物は、活性メチレンヘテロ環構造を有し、その構造に起因してアルカリ可溶性樹脂中の酸基との間に水素結合等による相互作用を形成し、その結果、未露光部(画像部)ではアルカリ溶解性を効果的に抑制し、アルカリ現像液に対する耐溶解性を発現するとともに、露光部(非画像部)では、熱によりその相互作用が容易に解除され、活性メチレン構造に由来する酸基の働きにより、高いアルカリ溶解性を発現するものと考えられる。
また、その効果は特に細線や微少網点等の部分で顕著であり、結果として、従来から困難であった高感度化に伴う低解像度化や現像ディスクリ低下を抑制し、すなわち、高い感度を維持しながら、高解像度、高現像ディスクリを発現し得るものと考える。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のポジ型画像記録材料の感光/感熱層は、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)光熱変換物質と、(C)一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマー〔以下、適宜、(C)特定ポリマーと称する〕と、を含有し、赤外線レーザー露光によりアルカリ現像液への溶解性が向上することを特徴とする。以下に、本発明の画像記録材料に用いられる各成分について順次説明する。
また、本発明の画像記録材料における感光/感熱層は、単層構造のみならず重層構造をとることもできる。重層構造の記録層の場合、本発明の特徴的な成分である(C)一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーは、重層構造のいずれの層に含有されていてもよいが、特に、支持体と赤外線レーザに対する感応性を有する層との間に設けられるアルカリ現像液に可溶性の第1層に含まれることが効果の観点から好ましい。
【0012】
〔(C)一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマー〕
本発明の特徴的な成分である(C)活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーは、下記一般式(I)で表されるポリマーである。
【0013】
【化3】
【0014】
式中、Pはポリマー主鎖を表す。ポリマー主鎖構造には特に制限はないが、好ましくは、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアミド、ポリウレア、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリエチレン等が挙げられる。感光/感熱層中の他の化合物との相溶性の観点から、特に好ましくはポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
本発明のポリマー主鎖構造Pには、一般式(I)に記載の活性メチレン環状側鎖構造以外の側鎖を有していても良く、好ましい側鎖としてはヒドロキシ基、カルボン酸基、置換オキシ基、置換アミノ基、ニトリル基等が挙げられる。
【0015】
式中Yは、活性メチレン環状側鎖をポリマー主鎖構造と連結するための2価の連結基を表し、具体的には、単結合、炭化水素連結基、−O−、−NH−、−C(=O)−などが挙げられ、また、これらの連結基を2つ以上組み合わせてなる2価の連結基であってもよく、これらの中から選択される2価の連結基があげられる。
【0016】
式中、R1、R2はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基又はヘテロ環基を表し、炭化水素基としては、アルキル基、アリール基等が挙げられる。また、これら炭化水素基は置換基を有していても良い。
好ましい炭化水素基としては、炭素原子数1から20までのものが挙げられ、特に好ましいアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基が挙げられ、また、ベンジル基、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基等の不飽和炭化水素基も好適なものとして例示される。
特に好ましいアリール基としてはフェニル基、ナフチル基、アントラニル基が挙げられる。
また、ヘテロ環基としては、複素芳香族であるピリジニル基、フラニル基、チオフェニル基、及び2個以上の窒素を含有する複素芳香環などが挙げられる。
【0017】
R1、R2の炭化水素基又はヘテロ環基に導入可能な好ましい置換基としては、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシルオキシ基(エステル基)、スルホニルオキシ基(スルホン酸エステル基)等に代表される置換オキシ基;アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルチオ基、スルホニルチオ基(スルホン酸チオエステル基)等に代表される置換チオ基;アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基(アミド基)、スルホニルアミノ基(スルホン酸アミド基)に代表される置換アミノ基;ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、置換カルボニル基(R10−C(=O)−)、置換スルホニル基(R20−S(=O)2−)が挙げられる。ここでR10、R20は水素原子、炭化水素基、置換オキシ基、置換チオ基、置換アミノ基である。
【0018】
特に好ましい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、アリルオキシ基、フェノキシ基、アセチルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、ベンジルチオ基、アリルチオ基、フェニルチオ基、アセチルチオ基、トルエンスルホニルチオ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、アリルアミノ基、フェニルアミノ基、アセチルアミド基、トルエンスルホン酸アミド基、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジノ基、
フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、
メトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、チオフェンカルボニル基、ピリジンカルボニル基、メタンスルホニル基、トルエンスルホニル基、クロロフェニルスルホニル基等が挙げられる。
【0019】
nは10〜1000の整数を表す。
(C)成分のポリマー分子量としては、重量平均分子量1000〜10万の範囲であることが好ましい。溶剤溶解性及び現像液溶解性の点でより好ましくは2000〜2万である。
【0020】
活性メチレン環側鎖ポリマーとして、より好ましくは、pH10以上のアルカリに対して可溶化するものが好ましい。最も好ましくはpH12以上のアルカリに対して可溶化するものである。活性メチレン環側鎖構造は、水素が解離することで、酸基として機能する。この酸基はカルボン酸自体よりやや弱い酸であるが、ポリマーはpH7以上のアルカリ現像液に対する可溶性を発現するようになる。アルカリ現像液に対する可溶性は、活性メチレン環構造を示す前記一般式(I)におけるR1、R2の置換基の電子吸引性により制御することができる。即ち、電子吸引性が大きくなると酸性度があがり、可溶化しやすくなる傾向がある。
【0021】
(C)一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーは、例えば、特開平2−44345号記載のモノマー単独或いは該モノマーと既存の不飽和2重結合を有するモノマーとのラジカル共重合により、特開2000−19724公報記載の方法等に従い容易に合成できる。
【0022】
(C)活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーは、前記一般式(I)で表される構造単位のみから構成されるポリマーであってもよいが、側鎖に活性メチレンヘテロ環構造を有しない他の構造単位との共重合体であってもよい。他の構造単位との共重合体の場合、一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖構造を有する構造単位は5.0モル%以上であることが好ましい。
また、共重合し得る他の構造単位は、後に詳述するが、例えば、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、スチレン及びその誘導体、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0023】
以下に、(C)一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
【化4】
【0025】
【化5】
【0026】
【化6】
【0027】
【化7】
【0028】
【化8】
【0029】
【化9】
【0030】
本発明における(C)特定ポリマーは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明に係る(C)特定ポリマーは、感光/感熱層の全固形分中、1.0〜50.0質量%添加されることが好ましく、特に5.0〜30.0質量%添加されることが好ましい。添加量が少なすぎると、本発明の効果である優れた現像ラチチュードおよび画像コントラストが得難く、添加量が多すぎると塗膜の皮膜特性が低下する傾向にある。
【0031】
〔(A)アルカリ可溶性樹脂〕
本発明の画像記録材料に使用する(A)アルカリ可溶性樹脂としては、高分子中の主鎖および/または側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体またはこれらの混合物を包含する。
中でも、下記(1)〜(6)に挙げる酸性基を高分子の主鎖および/または側鎖中に有するものが、耐現像性の点、アルカリ水溶液に対する溶解性の点で好ましい。
【0032】
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2 NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2 NHCOR、−SO2 NHSO2 R、−CONHSO2 R〕
(4)カルボン酸基(−CO2 H)
(5)スルホン酸基(−SO3 H)
(6)リン酸基(−OPO3 H2 )
【0033】
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0034】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂の中でも、(1)フェノール基、(2)スルホンアミド基および(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性樹脂が好ましく、特に、(1)フェノール基または(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂が、アルカリ性現像液に対する溶解性、現像ラチチュード、膜強度を十分に確保する点から最も好ましい。
【0035】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、p−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、フェノールとクレゾール(m−、p−、またはm−/p−混合のいずれでもよい)とホルムアルデヒドとの縮重合体等のノボラック樹脂、およびピロガロールとアセトンとの縮重合体を挙げることができる。さらに、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を挙げることもできる。或いは、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を用いることもできる。
【0036】
フェノール基を有する化合物としては、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、またはヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0037】
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、スルホンアミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物が挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基、またはビニロキシ基と、置換あるいはモノ置換アミノスルホニル基または置換スルホニルイミノ基と、を分子内に有する低分子化合物が好ましく、例えば、下記一般式(i)〜一般式(v)で表される化合物が挙げられる。
【0038】
【化10】
【0039】
〔式中、X1、X2 は、それぞれ独立に−O−または−NR7を表す。R1、R4は、それぞれ独立に水素原子又は−CH3を表す。R2、R5、R9、R12、及び、R16は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。R3、R7、及び、R13は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R6、R17は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R8、R10、R14は、それぞれ独立に水素原子又は−CH3を表す。R11、R15は、それぞれ独立に単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Y1、Y2は、それぞれ独立に単結合又はCOを表す。〕
【0040】
一般式(i)〜一般式(v)で表される化合物のうち、本発明の画像記録材料では、特に、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0041】
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、活性イミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、下記構造式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物を挙げることができる。
【0042】
【化11】
【0043】
具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0044】
(4)カルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、カルボン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
(5)スルホン酸基を有するアルカリ可溶性高分子としては、例えば、スルホン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成単位とする重合体を挙げることができる。
(6)リン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、リン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
【0045】
本発明の画像記録材料に用いるアルカリ可溶性樹脂を構成する、前記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する最小構成単位は、特に1種類のみである必要はなく、同一の酸性基を有する最小構成単位を2種以上、または異なる酸性基を有する最小構成単位を2種以上共重合させたものを用いることもできる。
【0046】
前記共重合体は、共重合させる(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する化合物が共重合体中に10モル%以上含まれているものが好ましく、20モル%以上含まれているものがより好ましい。10モル%未満であると、現像ラチチュードを十分に向上させることができない傾向がある。
【0047】
本発明では、化合物を共重合してアルカリ可溶性樹脂を共重合体として用いる場合、共重合させる化合物として、前記(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物を用いることもできる。(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物の例としては、下記(m1)〜(m12)に挙げる化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、これらは前記(C)成分の共重合成分としても好適である。
(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
【0048】
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(m10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(m12)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
【0049】
アルカリ可溶性樹脂としては、赤外線レーザ等による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性水酸基を有することが好ましく、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,又はm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。
【0050】
また、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。
【0051】
アルカリ可溶性樹脂は、その質量平均分子量が500以上であることが画像形成性の点で好ましく、1,000〜700,000であることがより好ましい。また、その数平均分子量が500以上であることが好ましく、750〜650,000であることがより好ましい。分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は1.1〜10であることが好ましい。
【0052】
また、これらのアルカリ可溶性樹脂は単独で用いるのみならず、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。組み合わせる場合には、米国特許第4123279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体や、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、本発明者らが先に提出した特開2000−241972号公報に記載の芳香環上に電子吸引性基を有するフェノール構造を有するアルカリ可溶性樹脂などを併用してもよい。
【0053】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は、その合計の含有量が、画像記録材料の全固形分中、30〜98質量%が好ましく、40〜95質量%がより好ましい。含有量が30質量%未満である場合には、耐久性が悪化する傾向にあり、また、98質量%を超える場合には、感度、画像形成性が低下する傾向があるため好ましくない。
【0054】
〔(B)光熱変換物質〕
本発明に用いられる光熱変換物質としては、光エネルギー照射線を吸収し、熱を発生する物質であれば特に吸収波長域の制限はなく用いることができるが、入手容易な高出力レーザへの適合性の観点から、波長760nm〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料又は顔料が好ましく挙げられる。
【0055】
染料としては、市販の染料、例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体、オキソノール染料、ジイモニウム染料、アミニウム染料、クロコニウム染料等の染料が挙げられる。
【0056】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクアリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0057】
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0058】
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0059】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。さらに、下記一般式(a)〜一般式(e)で示される染料が光熱変換効率に優れるため好ましく、特に下記一般式(a)で示されるシアニン色素は、本発明の画像記録材料で使用した場合に、アルカリ溶解性樹脂との高い相互作用を与え、且つ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
【0060】
【化12】
【0061】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子又は、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
L1として、例えば、次に示すようなイオン化されたものでもよい。
【0062】
【化13】
【0063】
前記式中、Xa−は後述するZa−と同様に定義され、Raは水素原子、アルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0064】
R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0065】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za−は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素がその構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合は、Za−は必要ない。好ましいZa−は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0066】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特開2001−133969明細書の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638明細書の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360明細書の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
【0067】
【化14】
【0068】
【化15】
【0069】
【化16】
【0070】
【化17】
【0071】
前記一般式(b)中、Lは共役炭素原子数7以上のメチン鎖を表し、該メチン鎖は置換基を有していてもよく、置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zb+は対カチオンを示す。好ましい対カチオンとしては、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、アルカリ金属カチオン(Ni+、K+、Li+)などが挙げられる。R9〜R14及びR15〜R20は互いに独立に水素原子又はハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基から選択される置換基、或いは、これらを2つ若しくは3つ組合せた置換基を表し、互いに結合して環構造を形成していてもよい。ここで、前記一般式(b)中、Lが共役炭素原子数7のメチン鎖を表すもの、及び、R9〜R14及びR15〜R20がすべて水素原子を表すものが入手の容易性と効果の観点から好ましい。
【0072】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(b)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0073】
【化18】
【0074】
【化19】
【0075】
前記一般式(c)中、Y3及びY4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又はテルル原子を表す。Mは、共役炭素数5以上のメチン鎖を表す。R21〜R24及びR25〜R28は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基を表す。また、式中Za−は対アニオンを表し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0076】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(c)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0077】
【化20】
【0078】
【化21】
【0079】
前記一般式(d)中、R29ないしR31は各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を示す。R33及びR34は各々独立に、アルキル基、置換オキシ基、又はハロゲン原子を示す。n及びmは各々独立に0ないし4の整数を示す。R29とR30、又はR31とR32はそれぞれ結合して環を形成してもよく、またR29及び/又はR30はR33と、またR31及び/又はR32はR34と結合して環を形成しても良く、さらに、R33或いはR34が複数存在する場合に、R33同士あるいはR34同士は互いに結合して環を形成してもよい。X2及びX3は各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、X2及びX3の少なくとも一方は水素原子又はアルキル基を示す。Qは置換基を有していてもよいトリメチン基又はペンタメチン基であり、2価の有機基とともに環構造を形成してもよい。Zc−は対アニオンを示し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0080】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(d)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0081】
【化22】
【0082】
【化23】
【0083】
前記一般式(e)中、R35〜R50はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基、オニウム塩構造を示す。Mは2つの水素原子若しくは金属原子、ハロメタル基、オキシメタル基を示すが、そこに含まれる金属原子としては、周期律表のIA、IIA、IIIB、IVB族原子、第一、第二、第三周期の遷移金属、ランタノイド元素が挙げられ、中でも、銅、マグネシウム、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、チタン、バナジウムが好ましい。
【0084】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(e)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0085】
【化24】
【0086】
本発明において赤外線吸収剤として使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が挙げられる。
【0087】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0088】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0089】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の画像記録層塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを越えると画像記録層の均一性の点で好ましくない。
【0090】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0091】
これらの光熱変換剤である顔料もしくは染料は、感光/感熱層を構成する全固形分に対し0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10重量%、顔料の場合特に好ましくは0.1〜10重量%の割合で添加することができる。添加量が少なすぎると感度が低下する傾向になり、また、多すぎる場合、感光/感熱層の皮膜特性に好ましくない影響を与える虞がある。
なお、重層構造の記録層の第2層(上層)に用いる場合は、基板界面における現像性の問題がない分、添加量の自由度が高く、全固形分に対して0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜40重量%、特に好ましくは、0.5〜30重量%の割合で添加することができる。
【0092】
〔その他の成分〕
本発明の画像記録材料の感光/感熱層(記録層)には、上記の各成分の他、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて種々の添加剤を添加することができる。
例えば、有用な添加剤として、オニウム塩、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物、多官能アミン化合物等、添加するとアルカリ水可溶性高分子(アルカリ可溶性樹脂)の現像液への溶解阻止機能を向上させるいわゆる溶解抑止剤を挙げることができる。中でも、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、スルホン酸アルキルエステル等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質を併用することが、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を観点から好ましい。分解性溶解抑止剤としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩および、o−キノンジアジド化合物が好ましく、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のオニウム塩がより好ましい。
【0093】
本発明において用いられるオニウム塩として、好適なものとしては、例えばS.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、特開平3−140140号の明細書に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivelloet al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第5,041,358号、同第4,491,628号、特開平2−150848号、特開平2−296514号に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,PolymerBull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同5,041,358号、同4,491,628号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等があげられる。
これらのオニウム塩の中でも、溶解阻止能や熱分解性の観点から、ジアゾニウム塩が特に好ましい。特に、特開平5−158230号公報に記載の一般式(I)で示されるジアゾニウム塩や特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が好ましく、可視光領域の吸収波長が小さい特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が最も好ましい。
【0094】
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
【0095】
好適なキノンジアジド類としてはo−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley&Sons.Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物あるいは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステル又はスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号及び同第3,188,210号に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
【0096】
さらにナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号などの各明細書中に記載されているものをあげることができる。
【0097】
分解性溶解抑止剤であるオニウム塩、及び/または、o−キノンジアジド化合物の添加量は好ましくは記録層の全固形分に対し、1〜10質量%、更に好ましくは1〜5質量%、特に好ましくは1〜2質量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
【0098】
o−キノンジアジド化合物以外の添加剤の添加量は、好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.1〜2質量%、特に好ましくは0.1〜1.5質量%である。本発明に係る添加剤と結着剤は、同一層へ含有させることが好ましい。
【0099】
また、分解性を有さない溶解抑止剤を併用してもよく、好ましい溶解抑止剤としては、特開平10−268512号公報に詳細に記載されているスルホン酸エステル、燐酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、芳香族ジスルホン、カルボン酸無水物、芳香族ケトン、芳香族アルデヒド、芳香族アミン、芳香族エーテル等、同じく特開平11−190903号公報に詳細に記載されているラクトン骨格、N,N−ジアリールアミド骨格、ジアリールメチルイミノ骨格を有し着色剤を兼ねた酸発色性色素、同じく特開2000−105454号公報に詳細に記載されている非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0100】
さらに、感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を添加剤として併用することができる。また、後述する界面活性剤、画像着色剤、および、可塑剤等も、一般に使用される添加剤として挙げることができる。
環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4’’−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3’’,4’’−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類及びカルボン酸類などが挙げられる。
上記の環状酸無水物、フェノール類及び有機酸類の記録層中に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0101】
また、これら以外にも、エポキシ化合物、ビニルエーテル類、更には特開平8−276558号公報に記載のヒドロキシメチル基を有するフェノール化合物、アルコキシメチル基を有するフェノール化合物及び本発明者らが先に提案した特開平11−160860号公報に記載のアルカリ溶解抑制作用を有する架橋性化合物等を目的に応じて適宜添加することができる。
【0102】
また、本発明に係る記録層を形成するにあたっては、その塗布液中に、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、EP950517公報に記載されているようなシロキサン系化合物、特開平11−288093号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。両面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業(株)製)等が挙げられる。
シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として、(株)チッソ社製、DBE−224,DBE−621,DBE−712,DBP−732,DBP−534、独Tego社製、Tego Glide100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることが出来る。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の感光性組成物中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0103】
また、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0104】
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、記録層全固形分に対し、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の割合で記録層中に添加することができる。
【0105】
更に、記録層中には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
【0106】
〔画像記録材料の形成〕
本発明の画像記録材料を形成するには、適切な支持体上に、上記記録層に含まれる各成分を溶媒に溶かした記録材料層塗布液を塗布すればよい。なお、記録層は、赤外線レーザ感応性の感光/感熱層のみからなる1層構成であっても、支持体上に、アルカリ現像液可溶性の第1層(下層)と赤外線レーザ感応性の第2層(上層)を積層してなる重層構造の記録層であってもよい。重層構造の記録層を有する場合、本発明の必須成分である(C)成分は、下層と上層のいずれに含まれてもよく、双方に含まれてもよいが、少なくとも下層に添加されることが、画質(解像度)向上の観点から好ましい。
また、本発明の画像記録材料には、記録層の他、目的に応じて、後述する保護層、下塗り層、バックコート層なども同様にして形成することができる。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等をあげることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。
溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0107】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の記録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、平版印刷版原版として適用される場合、1層構造の場合には、一般的に0.5〜5.0g/m2 が好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、記録層の皮膜特性は低下する。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
【0108】
次に、本発明に係る感光/感熱層が重層構造をとる場合について説明する。重層構造をとる記録層は、アルカリ水可溶性の第1層(下層)と、赤外線レーザー露光によりアルカリ現像液への溶解性が向上する第2層(上層)とからなり、前記第1層及び第2層の少なくとも1層に、本発明に係る(C)特定ポリマーを含有することを要する。
このような構成の記録層の場合、画像部領域においては上層が未露光の状態では、良好な膜性と耐アルカリ現像性を有するため、画像部表面は高い耐アルカリ現像性を有するが、露光部即ち非画像部領域で現像抑制剤による耐現像性が露光により速やかに解除され、上層が現像除去されると高い現像性を有するアルカリ現像液可溶性の下層が露出し、それ自体が有する高いアルカリ水溶液に対する溶解性が発現し、速やかに除去されて親水性の支持体が露出し、非画像部に汚れの無い優れた画像が形成される。
【0109】
まず、赤外線レーザー露光によりアルカリ現像液への溶解性が向上する第2層(上層)について説明する。この上層は、前記(C)特定ポリマーを必須成分としない他は、上述の感光/感熱層と同じ構成をとることができ、好ましい成分も同様である。また、この上層には(C)特定ポリマーを含んでもよいし、後述する下層に(C)特定ポリマーを含有する場合には、必ずしも含んでいなくてもよい。
【0110】
次に、下層について説明する。
本発明に係る下層は、アルカリ現像液に可溶性であることを要し、この観点から、アルカリ可溶性樹脂を主成分とすることが好ましい。下層に用いられるアルカリ可溶性樹脂は、前記感光/感熱層において説明した(A)アルカリ可溶性樹脂と同じものが好ましく挙げられる。これらのなかでも、感度、画像形成性の観点からは後述する上層に用いられるアルカリ可溶性樹脂よりも相互作用を形成し難く、アルカリ現像液に対する溶解性に優れた樹脂を選択することが好ましく、例えば、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アセタール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン樹脂等を好ましく挙げることができる。
【0111】
下層に用いるアルカリ可溶性樹脂としては、上層を塗布する際にその塗布溶媒により溶解されない、溶剤溶解性の低い樹脂を選択することが好ましい。このような樹脂を選択することで、2つの層の界面における所望されない相溶を抑制することができる。このような観点から上記の中でも、アセタール樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が特に好ましい。
【0112】
本発明に係る下層成分中のアルカリ可溶性樹脂の含有量は、全固形分中、約40〜95質量%、好ましくは約50〜90質量%である。
下層には、前記アルカリ可溶性樹脂に加えて、前記赤外線吸収剤や種々の添加剤を併用することができる。また、下層に前記(C)特定ポリマーを含有することが、効果の観点から好ましい。
【0113】
本発明に係る(C)特定ポリマーは、下層に含まれる場合、下層の全固形分中、1.0〜50.0質量%添加されることが好ましく、特に5.0〜30.0質量%添加されることが好ましい。
また、前記(C)特定ポリマーは上層にも添加することができるが、そのときの好ましい添加量は、上層全固形分に対して、1.0〜50.0質量%添加されることが好ましく、特に好ましくは5.0〜30.0質量%の範囲である。
【0114】
なお、該下層および上層は、原則的に2つの層を分離して形成することが好ましい。
2つの層を分離して形成する方法としては、例えば、下層に含まれる成分と、上層に含まれる成分との溶剤溶解性の差を利用する方法、または、上層を塗布した後、急速に溶剤を乾燥、除去させる方法等が挙げられる。
【0115】
本発明において、記録層が重層構造を取る場合、支持体上に塗布される下層成分の乾燥後の塗布量は、0.05〜1.5g/m2の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.1〜1.0g/m2の範囲である。この範囲において優れた耐刷性向上効果と、良好な画像再現性が達成でき、高感度で記録可能である。また、上層成分の乾燥後の塗布量は、0.05〜3.5g/m2の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.1〜1.5g/m2の範囲である。この好ましい範囲において、高感度で記録可能であり、優れた耐刷性向上効果を得ることができる。
下層および上層を合わせた乾燥後の塗布量としては、0.5〜5.0g/m2の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは1.0〜3.0g/m2の範囲である。
【0116】
本発明に係る記録層塗布液中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、記録層全固形分中0.01〜1質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0117】
(支持体)
本発明の画像記録材料に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、必要な強度、可撓性などの物性を満たすものであれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィルム等が挙げられる。
本発明に適用し得る支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0118】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0119】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0120】
本発明の画像記録材料は、支持体上にポジ型の記録層を設けたものであるが、必要に応じて支持体と記録層との間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、及びトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。
【0121】
この有機下塗層は次のような方法で設けることができる。即ち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。また後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、画像記録材料の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。
有機下塗層の乾燥後の塗布量は、2〜200mg/m2が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2である。上記範囲において好ましい耐刷性能向上効果が得られる。
【0122】
上記のようにして作製された本発明の画像記録材料は、平版印刷版原版として好適に用いられ、通常、像露光、現像処理を施される。以下、本発明の画像記録材料を平版印刷版原版に用いた場合の画像記録方法について説明する。
露光条件としては、露光エネルギー密度が5kW〜10kW/cm2より大きいことが画像形成における熱の有効利用の点で好ましく、このような条件での露光により、望ましい感度が得られる。露光エネルギー密度は高いほど、感度の点で有利である反面、例えば露光パワー密度が50kW/cm2を超えるような場合にはアブレーションが生じやすくなり、光学系汚染等の弊害を生じる場合がある。
露光波長に関しては、現時点では、高出力レーザの経済性の観点で、近赤外から赤外領域を利用することが好ましい。露光光源としては、固体レーザ、半導体レーザが経済性、光源寿命の点で好ましい。
【0123】
本発明に係る平版印刷版の現像液及び補充液としては従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。
例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。
これらのアルカリ剤の中で特に好ましい現像液は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩水溶液である。その理由はケイ酸塩の成分である酸化珪素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率と濃度によって現像性の調節が可能となるためであり、例えば、特開昭54−62004号公報、特公昭57−7427号に記載されているようなアルカリ金属ケイ酸塩が有効に用いられる。
【0124】
更に自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換する事なく、多量のPS版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。現像液及び補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。
好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤があげられる。更に現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
上記現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の画像記録材料を平版印刷版として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0125】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽及びスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0126】
本発明に係る平版印刷版原版においては、画像露光し、現像し、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きして得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば原画フィルムのフィルムエッジ跡など)がある場合には、その不必要な画像部の消去が行なわれる。このような消去は、例えば特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行なう方法が好ましいが、特開平59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
【0127】
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力平版印刷版としたい場合には、所望によりバーニング処理が施される。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、あるいは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
【0128】
整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥重量)が適当である。整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(たとえば富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0129】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行なわれている処理を施こすことができるが水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0130】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本願実施例においては、本発明の画像記録材料を平版印刷版原版に適用して評価を行い、その評価を本発明の画像記録材料の評価とする。
【0131】
〔支持体の作製〕
厚さ0.3mmのJIS−A−1050アルミニウム板を用いて、下記に示す工程を組み合わせて処理することで支持体を作製した。
【0132】
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
【0133】
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0134】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0135】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0136】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0137】
(f)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0138】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0139】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0140】
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0141】
(j)陽極酸化処理
電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度は43℃であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
電流密度はともに約30A/dm2であった。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
【0142】
上記(a)〜(j)の各工程を順に行い(e)工程におけるエッチング量は3.4g/m2となるようにして支持体を作製した。
上記によって得られた支持体は続けて下記の親水化処理、下塗り処理を行った。
【0143】
(k)アルカリ金属ケイ酸塩処理
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理層中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。その際のシリケート付着量は3.6mg/m2であった。
(下塗り処理)
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、下記組成の下塗り液を塗布し、80℃で15秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は15mg/m2であった。
【0144】
<下塗り液組成>
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1.0g
【0145】
【化25】
【0146】
〔実施例1〜5、比較例1〜2〕
得られた支持体に以下の画像記録層用塗布液1を塗布し、150℃のオーブンで1分乾燥後、乾燥膜厚が2.1g/m2のポジ型画像記録層を有する平版印刷版原版を作製した。
【0147】
【0148】
【化26】
【0149】
〔現像ラチチュードの評価〕
得られた平版印刷版原版を温度25℃相対湿度50%の条件下で5日間保存した後に、Creo社製Trendsetter3244にてビーム強度9.0W、ドラム回転速度150rpmでテストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、下記A組成又はB組成のアルカリ現像液の水の量を変更することにより、希釈率を変えて電導度を変化させたものを仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー900Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間20秒で現像した。この時、画像部が溶出されず、かつ、現像不良の記録層残膜に起因する汚れや着色がなくコントラストの良好な画像を与える現像液の電導度の一番高いものと、一番低い物の差を現像ラチチュードとして評価した。なお、この差が大きい程、現像ラチチュードに優れ、コントラストに優れた画像を形成し得る。結果を表1に示す。
【0150】
【0151】
【0152】
〔感度の評価〕
得られた平版印刷用原板をCreo社製Trendsetter3244にて露光エネルギーを変えて、テストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、上記現像ラチチュードの評価において画像部が溶出されず、かつ、現像不良の記録層残膜に起因する汚れや着色がなくコントラストの良好な画像を与える現像液の電導度の一番高いものと、一番低い物の中間(平均値)の電導度のアルカリ現像液で現像し、この現像液で非画像部が現像できる露光量(ドラム回転速度150rpmのときのビーム強度)を測定し、感度とした。数値が小さいほど高感度であると評価する。
【0153】
〔解像度の評価〕
上記感度の評価におけるテストパターンで、出力7.5Wで、面積率0.5%の網点を露光し、現像後、画像再現性を顕微鏡による形状観察により行ない、また、画像濃度を測定することで画像の再現率を確認した。
ここで、再現率100%とは、全ての網点が飛ばずに再現されていることを示し、0%とは全ての網点が現像により除去されてしまった状態を示す。従って、100%に近い値ほど、高い画像コントラストであり高解像度であると評価する。
【0154】
【表1】
【0155】
表1に明らかなように、本発明に係る(C)特定ポリマーを含有する感光/感熱層を有する実施例1〜5の平版印刷版原版は、シリケート系現像液、非シリケート系現像液のいずれを用いた場合においても、現像ラチチュード及び感度に優れ、且つ、解像度が高く、コントラストに優れた画像が形成されていることが確認された。
一方、本発明に係る(C)特定ポリマーを含有しない感光/感熱層を有する比較例1、2の平版印刷版原版は、現像ラチチュード、感度ともに劣っており、解像度も実施例と比べ低いことがわかった。また、(C)特定ポリマーに代えてp−アセチルフェノールを添加剤として用いた比較例3の平版印刷版原版は、添加剤を用いなかった比較例1に比べ、感度、現像ラチチュードに改良は見られるものの、実用上問題のあるレベルであり、解像度は却って低下していることが確認された。
【0156】
〔実施例6〜10、比較例4〕
実施例1〜5で用いたのと同様の下塗り層を有する支持体に、下記組成の下層用塗布液を、ウェット塗布量が28ml/m2のワイヤーバーで塗布して塗布量を0.8g/m2としたのち、150℃の乾燥オーブンで60秒間乾燥した。
得られた下層付き支持体に、下記組成の画像記録層(上層)用塗布液2を、ウエット塗布量が11ml/m2のワイヤーバーで塗布を行い総塗布量を1.0g/m2とした。塗布後、乾燥オーブンで、140℃で70秒間の乾燥を行いポジ型平版印刷版原版を作製した。
【0157】
【0158】
【0159】
【化27】
【0160】
〔現像ラチチュードおよび感度の評価〕
得られた平版印刷版原版に対し、現像液を富士写真フイルム(株)製現像液DT−1希釈液に替え、現像時間を14秒に変更した以外は実施例1〜5と同様の方法により露光及び現像を行い、現像ラチチュード、感度、及び、解像度を評価した。結果を表2に示す。
【0161】
【表2】
【0162】
表2に明らかなように、本発明に係る(C)特定ポリマーを含有する感光/感熱層を有する実施例6〜10の平版印刷版原版は、現像ラチチュード及び感度に優れ、且つ、解像度が高く、コントラストに優れた画像が形成されていることから、記録層が重層構造をとった場合でも、単層構造と同様の効果を奏することが確認された。また、重層構造の場合においても、本発明に係る(C)特定ポリマーを含有しない感光/感熱層を有する比較例4の平版印刷版原版は、現像ラチチュード、感度ともに劣っており、解像度も実施例と比べ低いことがわかった。
【0163】
〔実施例11〜13、比較例5〕
実施例1〜5で用いたのと同様の下塗り層を有する支持体に、下記組成の画像記録層用塗布液3をウエット塗布量が19cc/m2のワイヤーバーで塗布したのち乾燥し、平版印刷版原版を得た。
【0164】
【0165】
〔現像ラチチュードのおよび感度の評価〕
得られた平版印刷版原版に対し、実施例1〜5と同様の方法により露光及び現像を行い、現像ラチチュード、感度、及び、解像度を評価した。結果を表3に示す。
【0166】
【表3】
【0167】
表3に明らかなように、本発明に係る(C)特定ポリマーを含有する感光/感熱層を有する実施例11〜13の平版印刷版原版は、アルカリ可溶性樹脂の主成分としてアクリル系ポリマーを用いた場合においても、現像ラチチュード、感度及び解像度に優れていることが確認された。
以上、実施例によれば、本発明の画像記録材料は、平版印刷版原版として有用であることがわかった。
また、表1〜3の対比において、記録層が重層構造をとった場合でも、単層構造と同様に、現像ラチチュード及び感度に優れ、且つ、解像度が高く、コントラストに優れた画像が形成され、さらに、記録層を重層構造とし、下層に(C)特定ポリマーを含有させた場合においては、感度、解像度にさらなる向上が見られ、この態様において本発明の効果が著しいことがわかった。
【0168】
【発明の効果】
本発明の画像記録材料は、赤外線を放射する固体レーザまたは半導体レーザを用いて記録することにより、コンピューター等のデジタルデータから高感度で直接製版可能であり、現像ラチチュードに優れ、コントラストに優れた高解像度の画像を形成することができる。
Claims (3)
- 支持体上に、アルカリ現像液可溶性の第1層と、赤外線レーザー露光によりアルカリ現像液への溶解性が向上する第2層とを順次設けてなり、該第1層及び第2層の少なくとも1層に、前記一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーを含有することを特徴とする赤外線レーザー対応ポジ型画像記録材料。
- 前記一般式(I)で表される活性メチレンヘテロ環側鎖ポリマーを、アルカリ現像液可溶性の第1層に含有することを特徴とする請求項2に記載の赤外線レーザー対応ポジ型画像記録材料。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2009139208A1 (ja) * | 2008-05-16 | 2009-11-19 | コニカミノルタエムジー株式会社 | 平版印刷版材料 |
-
2003
- 2003-04-08 JP JP2003104223A patent/JP2004309859A/ja active Pending
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