JP2004308667A - ゴムローラ及びゴムローラの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】芯金へのゴム層の焼きつきや付着及び芯金の変色が生じず、しかも、製造が容易で低コストなゴムローラを提供する。
【解決手段】芯金と、芯金の外周上に設けられた少なくとも一層の加硫ゴム層と、を有するゴムローラであって、該芯金の外周面を形成する材料を、Cr含量が5質量%以上12質量%未満、Ti炭硫化物含量が0.1〜2.5質量%のFe系金属材料とする。
【選択図】 なし
【解決手段】芯金と、芯金の外周上に設けられた少なくとも一層の加硫ゴム層と、を有するゴムローラであって、該芯金の外周面を形成する材料を、Cr含量が5質量%以上12質量%未満、Ti炭硫化物含量が0.1〜2.5質量%のFe系金属材料とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴムローラに関し、さらに詳しくは、複写機、レーザープリンタ、ファクシミリなどの電子写真装置や静電記録装置などに好適に使用される帯電ローラ、転写ローラ、トナー供給ローラ、現像ローラ、紙搬送ローラなどのゴムローラに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真装置には帯電ローラ、転写ローラ、トナー供給ローラ、現像ローラ、紙搬送ローラ等多数のゴムローラが用いられている。これらのゴムローラは、耐食性を確保するため芯金の外周面に無電解ニッケルメッキ皮膜を形成(以下無電解ニッケルメッキ芯金と記す場合がある)し、その無電解ニッケルメッキ皮膜上に少なくとも一層の加硫ゴム層を形成することにより構成されている。そして上記ゴムローラは、通常、芯金の左右両端に軸芯部を設け、この軸芯部を軸受部に嵌合することにより電子写真装置に取付け固定される。
【0003】
従来、このようなゴムローラは、例えば以下のようにして製造されていた。ゴム組成物としてエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリン系ゴム(CO、ECO、CO−AGE、ECO−AGE)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)等のゴムに加硫剤、カーボンブラック等のフィラー類、加硫促進剤、加硫助剤、軟化剤、発泡剤等の添加剤を加えたものを混練りし、チューブ状に押出成形した後、加硫缶やマイクロ波加硫装置(UHF)、熱風炉(HAV)等を用いてこれらの組成物を加硫し、加硫したゴムチューブを作成する。次に、芯金の外周面に無電解ニッケルメッキ皮膜を形成し(以後、無電解ニッケルメッキ芯金と記す場合がある)、あらかじめ必要部分(ゴム層と芯金を接着させる部分)に接着剤を塗布した芯金をゴムチューブの内部に圧入し、さらにゴムチューブと芯金の接着のために加熱を行った後、所定のゴム長になるようにゴムチューブの両端部のゴムを切り取る工程を経て製造する。
【0004】
また、工程を簡略化するために、あらかじめ必要部分に接着剤を塗布した無電解ニッケルメッキ芯金上に上記未加硫のゴム組成物を配置し、芯金上でゴム組成物の加硫と芯金への接着を同時に行い、所定のゴム層の長さとなるよう両端部のゴム層を切り取る工程を経て製造されるゴムローラも知られている。
【0005】
しかしながら、上記のようなゴムローラは、一般的に接着剤を塗布していないニッケルメッキ皮膜の部分にもゴム層が焼きつき、芯金両端部上のゴム層を切り取ることが出来なかったり、たとえ芯金両端部上のゴム層を切り取ることが出来ても芯金上にゴムかすが付着したり、あるいは無電解ニッケルメッキ芯金が変色するというような問題があった。
【0006】
このような問題に対応するため、ゴム層を切り取る部分にあらかじめ離型剤等を塗布し、ゴム層との接着が必要な部分に接着剤を塗布した芯金上に上記未加硫ゴムを配置し、芯金上で未加硫ゴムの加硫と接着が同時に行われている。ところが、このような方法では、離型剤を塗布した部分は芯金とゴム層が接着しないため、極めて精度良く芯金上に離型剤を塗布する必要があり、接着が必要な部分に離型剤が入り込んだ場合には接着不良が生じる場合があった。
【0007】
また、これらの問題に対する解決方法として、芯金の外周面に無電解ニッケルメッキを施した後、クロム酸溶液に、このニッケルメッキ芯金を浸漬し無電解ニッケルメッキを不活性化処理することによりゴム層の焼きつきを防止する方法や100〜300℃で熱処理(表面酸化)を施し、無電解ニッケルメッキを不活性化処理する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
一方、芯金の材質としてPb、Sなどを含有するCr含有量が12%以上の快削性ステンレス鋼を用いることにより、耐食性を確保できることも知られている。
また、耐食性及び低コスト実現のためにCr含有量6.0〜11.0質量%、Ni含有量0.1〜0.3質量%のFe系鋼材をゴムローラ用芯金として使用する提案もなされている(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
【特許文献1】
特公平7−74056号公報
【特許文献2】
特開平9−176799号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1記載の方法では、加工工程が増加しコストアップにつながる上、六価クロムを含有する有害なクロム酸を使用した芯金表面の不活性化工程が存在する。近年、環境問題が非常に重要視され、六価クロムを含有するクロム酸の使用を廃止することが望まれており、クロム酸処理による不活性化処理工程は好ましくない。また、100〜300℃で熱処理を行い表面酸化する方法においては、一般的に表面を酸化するために無電解ニッケルメッキ芯金の1本1本を十分に空気(酸素)に触れさせる必要が生じ、1度に多数の処理を行うことが難しいうえ、熱処理によって無電解ニッケルメッキ芯金が変色するという問題を有している。
【0011】
また、芯金の材質としてPb、Sなどを含有するCr含有量が12%以上の快削性ステンレス鋼は高価であるうえ、一般的に被削性向上のためにPbやSを含有していても精密な仕上げ加工精度を確保することが難しいという問題があるため、ほとんど使用されていない。
特許文献2記載の芯金を用いたゴムロールは、一般的に耐食性を十分に満足するものとはなっていない。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、芯金へのゴム層の焼きつきや付着及び芯金の変色が生じず、しかも、製造の容易なゴムローラを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明らは鋭意研究の結果、以下の構成を有するゴムローラを完成するに至った。
すなわち、本発明のゴムローラは、芯金と、芯金上に設けられた少なくとも一層の加硫ゴム層と、を有するゴムローラであって、該芯金の外周面を形成する材料が、Crを5質量%以上12質量%未満、Ti炭硫化物を0.1〜2.5質量%含むFe系金属材料であることを特徴とする。
【0013】
更に、本発明は前記ローラの芯金が、引き抜き加工によって形成され、該引き抜き加工後の芯金の外周面を5〜100μmの厚さだけ研削したものであることが好ましい。
更に、本発明は前記ローラのFe系金属材料が、Pbを実質的に含有しないことが好ましい。
本発明は少なくとも、芯金上に未加硫のゴム組成物を積層する工程と、該未加硫のゴム組成物を加熱加硫する工程と、を有するゴムローラの製造方法であって、該芯金の外周面を形成する材料が、Crを5質量%以上12質量%未満、Ti炭硫化物を0.1〜2.5質量%含むFe系金属材料であることを特徴とするゴムローラの製造方法に関する。
更に、本発明は前記ゴムローラの製造方法の前記未加硫のゴム組成物層を積層する工程が、芯金を少なくとも一つの押出機のクロスヘッドダイ内を連続的に通過させ、該芯金の通過時に該芯金の外周上に未加硫のゴム組成物を押出すことによって行われることが好ましい。
更に、本発明は前記未加硫のゴム組成物が加硫剤としてイオウ及びイオウ化合物の少なくとも一方を有することが好ましい。
更に、本発明は前記製造方法によって製造されたゴムローラに関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のゴムローラは、芯金と、加硫ゴム層とを有し、芯金の外周面を形成する材料は、Crを5質量%以上12質量%未満、Ti炭硫化物を0.1〜2.5質量%含むFe系金属材料である。本発明のゴムローラは、製造が容易であり芯金へのゴム層の焼きつきや付着及び芯金の変色が生じず、高耐久性を有することができる。
【0015】
なお、芯金の外周面がFe系金属材料で構成されていれば良く、芯金全部がFe系金属材料からなっていても、芯金の一部のみがFe系金属材料で構成されていても良い。
【0016】
本発明者らは、耐食性を確保しつつ芯金へのゴム層の焼きつきや付着及び芯金の変色の原因について鋭意検討を行った。その結果、無電解ニッケルメッキ芯金へのゴム層の焼きつきや付着及び芯金の変色の原因は完全には解明されていないが、ゴム組成物に加硫等を行う際の熱付加により芯金表面とゴム組成物中の添加物あるいは、これらの組成物の加熱により生じる反応生成物とが化学反応することによるものと考えた。そして、さらに検討を重ねた結果、芯金の外周面を形成するFe系金属材料中のCr含量を一定範囲内とすることによって、ゴム層の焼きつきや付着及び芯金の変色が発生しないことを見出した。ただし、Fe系金属材料中のCrは、芯金に耐食性を確保するための必須成分であり、Fe系金属材料中に5質量%以上含有する必要がある。Cr含有量が5%未満では、著しく耐食性が低下するためである。また、Cr含有量が12質量%以上になるとローラ材料のコストアップにつながるうえ、芯金を加工する際の加工性が悪くなってしまうため、12質量%未満の割合で含有する必要がある。Fe系金属材料中のCr含有量は6質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。また、11質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0017】
また、芯金の外周面を形成するFe系金属材料中のTi炭硫化物は、芯金の被削性と耐食性向上に有効な化合物であり、Fe系金属材料中に0.1質量%以上、含有する必要がある。耐食性向上の理由は明確ではないが、Ti炭硫化物が耐食性を低下させる硫化金属塩(例えばFeS、MnS等)の生成を防止または抑制しているものと考えられる。また、Fe系金属材料中のTi炭硫化物の含有量が2.5質量%を超えるとコストアップにつながるうえ、芯金を加工する際の加工性が悪くなってしまうためTi炭硫化物の含有量は2.5質量%以下にする必要がある。Ti炭硫化物の含有量は0.2質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、2.0質量%以下であることが好ましく、1.8質量%以下であることがより好ましい。Ti炭硫化物としては、主として組成式Ti4S2C2で示される化合物が挙げられ、Fe系金属材料中に分散形成されている。なお、CrとTi炭硫化物以外の大多数はFeである。Fe系金属材料に含有されるその他の元素として、従来より公知の元素をそれぞれ2質量%以下の微量範囲で含んでいても良い。その他の元素としては例えば、Ni、Si、Al、Mn、N、O、Cu、P、Se等が挙げられる。
【0018】
また、本発明のゴムローラは、少なくとも、芯金上に未加硫の加硫ゴム組成物層を積層する工程と、該未加硫の加硫ゴム組成物層を加熱加硫する工程と、を有する製造方法によって製造することによって、容易にゴムローラの製造を行なうことができる。
【0019】
前述の如く、ゴムローラの製造方法としては、あらかじめ必要部分に接着剤を塗布した芯金を加硫ゴムチューブ内部に圧入し、さらに接着のために加熱を行った後、所定のゴム層の長さになるように両端部のゴム層を切り取る工程を経て製造される方法や、あらかじめ必要部分に接着剤を塗布した芯金上に未加硫のゴム組成物を配置し、芯金上で加硫と接着を同時に行い、所定のゴム層の長さになるように両端部のゴム層を切り取る工程を経て製造される方法等がある。
【0020】
後者の製造方法の方が未加硫のゴム組成物の加硫と芯金への接着が同時に行えるため製造工程上、望ましい。従来の無電解ニッケルメッキ芯金を用いた場合、この加硫と接着を同時に行なう製造方法では芯金へのゴム層の焼きつきや付着がより生じやすいという問題を有していた。しかし、本発明では芯金の外周面を形成するFe系金属材料中のCr含有量及びTi炭硫化物の含有量が所定範囲にある芯金を用いているため、芯金へのゴム層の焼きつきや付着及び芯金の変色を防止でき、加硫と接着を同時に行なう製造方法を用いてゴムローラを安定的に製造することが可能となる。
【0021】
また、未加硫のゴム組成物層の積層は、芯金を少なくとも一つの押出機のクロスヘッドダイ内を連続的に通過させ、芯金の通過時に芯金の外周上に未加硫のゴム組成物を押出すことによって行われることが好ましい。
【0022】
上記押出機のクロスヘッドダイを用いた製造工程を経て製造されるゴムローラは、芯金が押出機のクロスヘッドダイ通過時に、芯金の外周上に未加硫のゴム組成物を配置するので、芯金と未加硫のゴム組成物を均一に密着させることができる。従来の無電解ニッケルメッキ芯金を用いた場合、加硫後のゴム層の焼きつきや付着が激しいという問題があった。しかし、本発明では芯金の外周面を形成する材料中のCr含有量及びTi炭硫化物の含有量が所定範囲にある芯金を用いているため、製造工程数がより少ない押出機を用いた上記工程でもゴム層の焼きつきや付着が起こらないゴムローラを製造することが可能となる。なお、2台以上の押出機を用いて、更に加硫ゴム層を積層させたり、弾性層、離型層等を積層しても良い。
【0023】
また、このときゴム層と芯金の接着が必要な部分には、あらかじめ芯金の外周上に接着剤を塗布しておくことが好ましい。接着剤としては、公知のものが使用でき、例えば、加硫接着剤やホットメルト系の接着剤等が挙げられる。
【0024】
未加硫のゴムの加硫剤としてイオウ及びイオウ化合物の少なくとも一方を用いることが好ましい。ゴムローラ用の未加硫のゴム組成物の加硫剤としては、その加硫ゴムの物性に優れること及び種々の加硫方法が採用できる等の理由から、イオウ及びイオウドナーとなるイオウ化合物(イオウ及びイオウ化合物を以下、イオウ系加硫剤と記すことがある)の少なくとも一方が好適に用いられる。しかしながら、このイオウ系加硫剤を含有するゴム組成物は、従来の無電解ニッケルメッキ芯金に用いた場合、無電解ニッケルメッキ皮膜と化学反応しやすく、芯金へのゴム層の焼きつきや付着がより生じやすいという問題を有していた。しかし、本発明では外周面を形成するFe系金属材料中のCr含有量及びTi炭硫化物の含有量が所定範囲にある芯金を用いているため、芯金へのゴム層の焼きつきや付着及び芯金の変色を防止できる。
【0025】
イオウ化合物とは、前述のようにイオウドナーとなり得る化合物であり、具体的にはテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、モルフォリンジスルフィド、2−(4’−モルフォリノジチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。加硫剤としてのイオウ及びイオウ化合物は、単独若しくは2種以上が混合して用いられ、加硫剤の添加量は好ましくはゴム成分100質量部に対して0.3〜8質量部であるのが良い。
【0026】
芯金は、熱圧延した鋼材を引き抜き加工し、切断する工程を経て製造されるが、引き抜き加工後に表面平滑性が不十分な場合やスケールの残渣が存在する場合があり、従来、この粗い表面を持つ芯金上にゴム組成物層を積層すると、芯金へのゴム層の焼きつきや付着が生じる場合があった。芯金は熱圧延した鋼材を引き抜き加工後に芯金の外周表面を5〜100μmだけ研削することで、芯金表面の平滑性が向上し、このような問題を解決することができる。なお、より好ましくは、芯金の外周表面を10〜90μmの厚さだけ研削するのが良い。
【0027】
本発明のFe系金属材料は、Pbを実質的に含有しないことが好ましい。Pbは被削性向上元素として知られ、Sと比較して耐食性や他の加工性をほとんど低下させないことから非常に有用な元素であるが、多量のPbは環境に対して悪影響を及ぼす場合があるためである。本発明のゴムローラでは、芯金の被削性を向上させるためTi炭硫化物を0.1〜2.5質量%含有しており、Pbを含有しなくともゴムローラは被削性を有することができる。
【0028】
なお、本発明に使用するゴム組成物の主ゴム成分としては特に限定されるものではなく、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリン系ゴム(CO、ECO、CO−AGE、ECO−AGE)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)等が挙げられる。また、本発明のゴムローラに使用されるゴム組成物には、上記成分の他にも各種添加剤を適宜配合することができる。添加剤としては、導電性カーボンブラックやゴム用カーボンブラック等の導電性充填剤、ゴム用カーボンブラック等の補強剤、充填剤、加硫促進剤、加硫助剤、発泡剤、老化防止剤、加工助剤等があげられる。これらの添加剤は単独あるいは、2種以上を併用して用いても良い。
【0029】
なお、本発明のゴムローラは、抵抗調整や保護や表面平滑性の向上等を目的として前記加硫ゴム層の外周面上に樹脂、熱活性エラストマー、加硫ゴム等の層を設けても構わない。
【0030】
【実施例】
次に、本発明を実施例にもとづいて詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例に用いた芯金は、下記の通りである。
芯金A:Cr8質量%、Ti炭硫化物0.65質量%、Pb含有せず、Fe系鋼材
芯金B:Cr4質量%、Ti炭硫化物0.65質量%、Pb含有せず、Fe系鋼材
芯金C:Cr8質量%、Ni0.12質量%、Pb0.25質量%、Ti炭硫化物含有せず、Fe系鋼材(鋼材商品名 MAQ材 大同特殊鋼製)
芯金D:外周面に無電解ニッケルメッキ皮膜(5μm)を形成したSUM12L14材。
【0031】
なお、実施例及び比較例に用いた芯金の種類(A〜D)及びゴム組成物の配合割合を表1に、芯金への加硫ゴム層の付着性及び耐食性の評価結果を表2に示す。また、実施例及び比較例のゴムローラの製造方法とゴム層の付着性及びゴム耐食性の評価方法を下記に示す。
【0032】
〔ゴムローラの製造方法〕
表1記載の配合割合からなる組成物を密閉型混練機及びロール機を用いて混練を行い、各未加硫のゴム組成物を得た。また、直径6mmで長さ240mmの各芯金(芯金A〜D)を用い、芯金の両端から10mmを除く芯金外周面にホットメルト接着剤(スリーボンド3315E(商品名)、(株)スリーボンド社製)を塗布した。押出機を用いて未加硫のゴム組成物をクロスヘッドダイ内に押出すと同時に、接着剤を塗布済みの芯金を連続的に押出機のクロスヘッドダイ内を通過させ、芯金のクロスヘッドダイ通過時に芯金の外周上の接着剤塗布部分に未加硫のゴム組成物を配置し、ローラ形状とした後、200℃で20分間、熱風炉に投入して加硫を行い、芯金上に加硫ゴム層を形成した。更に、このローラを回転させながら芯金の両端部から10mmの位置までは、ゴム層表面から芯金表面までカッター刃を入れた後、芯金端部上のゴム層を切り取った。
【0033】
〔芯金へのゴム層の付着性評価〕
実施例及び比較例のゴムローラの上記ゴム層を切り取った部分の各芯金を目視で観察した。ゴム層の焼きつきや付着及び芯金の変色が全くないものを○、ゴム層の焼きつきや付着があるものを×、ゴム層の焼きつきや付着はないが、芯金の変色のあるものを△とし、芯金へのゴム層の付着性評価とした。
【0034】
〔ゴムローラ芯金の耐食性評価〕
実施例及び比較例のゴムローラを温度40℃、湿度95%の湿熱環境下に30日間放置し、上記ゴム層を切り取った部分の各芯金を観察し錆の発生を観察した。錆の発生が全くないものを○、点錆等の錆が少しでも発生しているものを×とした。なお、実施例及び比較例に用いた資材は以下の通りである。
【0035】
エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム[EPDM;商品名 EPT4070、三井化学(株)社製]
エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム[ECO−AGE;商品名 エピクロマーCG102、ダイソー(株)社製]酸化亜鉛[商品名 亜鉛華2種、白水テック(株)社製]
ステアリン酸[商品名 ステアリン酸S、花王(株)社製]
FT級カーボンブラック[商品名 旭#15、旭カーボン(株)社製]
導電性カーボンブラック[商品名 ケッチェンブラック600JD、ケッチェンブラックインターナショナル(株)社製]
炭酸カルシウム[商品名 シルバーW、白石工業(株)社製]
パラフィンオイル[商品名 ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産(株)社製]。
【0036】
イオウ系加硫剤テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)[商品名 ノクセラーTT、大内振興化学工業(株)社製]
イオウ系加硫剤ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)[商品名 ノクセラーTRA、大内振興化学工業(株)社製]
イオウ系加硫剤テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)[商品名 ノクセラーTET、大内振興化学工業(株)社製]
加硫促進剤ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)[商品名 ノクセラーDM 大内振興化学工業(株)社製]
イオウ[商品名 サルファックスPMC、鶴見化学工業(株)社製]
発泡剤アゾジカルボンアミド(発泡剤ADCA)[商品名 ビニホールAC#LQ、永和化成工業(株)社製]
尿素系発泡助剤[商品名 セルペースト101、永和化成工業(株)社製]。
【0037】
表2の結果より、実施例1〜3の芯金Aを用いて得られたゴムローラでは、芯金中にCrを8質量%(5質量%以上12質量%未満の範囲内)含み、かつTi炭硫化物を0.65質量%(0.1〜2.5質量%の範囲内)含むことにより、芯金上で未加硫のゴム組成物が加熱される工程を経て、ゴム層を形成しても芯金へのゴム層の付着等が生じず、耐食性も満足するものであり、かつ製造が容易なものであった。一方、比較例3及び5の無電解ニッケルメッキ芯金(芯金D)を用いたものは、芯金へのゴム層の焼きつきが生じ、無電解ニッケルメッキ皮膜上に付着したゴムを除去する工程が必須となり、製造がより困難なものとなった。また、比較例1及び4のCrを4質量%含有する芯金B及び比較例2のTi炭硫化物を含有しない芯金Cを用いたものは、耐食性が不十分であった。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【発明の効果】
本発明のゴムローラは、以上のように芯金上で未加硫のゴム組成物層が加熱工程を経て形成されてもゴム層が芯金へ焼きつかない。したがって、後工程で芯金に付着したゴムの除去等を必要とせず、外観および寸法精度の優れた状態となる。また、芯金上の必要部分に接着剤を塗布することにより、ゴム層を強固に芯金に接着することも可能となる。製造が容易であり製造コスト及び材料コストも低く抑えることが可能である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴムローラに関し、さらに詳しくは、複写機、レーザープリンタ、ファクシミリなどの電子写真装置や静電記録装置などに好適に使用される帯電ローラ、転写ローラ、トナー供給ローラ、現像ローラ、紙搬送ローラなどのゴムローラに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真装置には帯電ローラ、転写ローラ、トナー供給ローラ、現像ローラ、紙搬送ローラ等多数のゴムローラが用いられている。これらのゴムローラは、耐食性を確保するため芯金の外周面に無電解ニッケルメッキ皮膜を形成(以下無電解ニッケルメッキ芯金と記す場合がある)し、その無電解ニッケルメッキ皮膜上に少なくとも一層の加硫ゴム層を形成することにより構成されている。そして上記ゴムローラは、通常、芯金の左右両端に軸芯部を設け、この軸芯部を軸受部に嵌合することにより電子写真装置に取付け固定される。
【0003】
従来、このようなゴムローラは、例えば以下のようにして製造されていた。ゴム組成物としてエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリン系ゴム(CO、ECO、CO−AGE、ECO−AGE)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)等のゴムに加硫剤、カーボンブラック等のフィラー類、加硫促進剤、加硫助剤、軟化剤、発泡剤等の添加剤を加えたものを混練りし、チューブ状に押出成形した後、加硫缶やマイクロ波加硫装置(UHF)、熱風炉(HAV)等を用いてこれらの組成物を加硫し、加硫したゴムチューブを作成する。次に、芯金の外周面に無電解ニッケルメッキ皮膜を形成し(以後、無電解ニッケルメッキ芯金と記す場合がある)、あらかじめ必要部分(ゴム層と芯金を接着させる部分)に接着剤を塗布した芯金をゴムチューブの内部に圧入し、さらにゴムチューブと芯金の接着のために加熱を行った後、所定のゴム長になるようにゴムチューブの両端部のゴムを切り取る工程を経て製造する。
【0004】
また、工程を簡略化するために、あらかじめ必要部分に接着剤を塗布した無電解ニッケルメッキ芯金上に上記未加硫のゴム組成物を配置し、芯金上でゴム組成物の加硫と芯金への接着を同時に行い、所定のゴム層の長さとなるよう両端部のゴム層を切り取る工程を経て製造されるゴムローラも知られている。
【0005】
しかしながら、上記のようなゴムローラは、一般的に接着剤を塗布していないニッケルメッキ皮膜の部分にもゴム層が焼きつき、芯金両端部上のゴム層を切り取ることが出来なかったり、たとえ芯金両端部上のゴム層を切り取ることが出来ても芯金上にゴムかすが付着したり、あるいは無電解ニッケルメッキ芯金が変色するというような問題があった。
【0006】
このような問題に対応するため、ゴム層を切り取る部分にあらかじめ離型剤等を塗布し、ゴム層との接着が必要な部分に接着剤を塗布した芯金上に上記未加硫ゴムを配置し、芯金上で未加硫ゴムの加硫と接着が同時に行われている。ところが、このような方法では、離型剤を塗布した部分は芯金とゴム層が接着しないため、極めて精度良く芯金上に離型剤を塗布する必要があり、接着が必要な部分に離型剤が入り込んだ場合には接着不良が生じる場合があった。
【0007】
また、これらの問題に対する解決方法として、芯金の外周面に無電解ニッケルメッキを施した後、クロム酸溶液に、このニッケルメッキ芯金を浸漬し無電解ニッケルメッキを不活性化処理することによりゴム層の焼きつきを防止する方法や100〜300℃で熱処理(表面酸化)を施し、無電解ニッケルメッキを不活性化処理する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
一方、芯金の材質としてPb、Sなどを含有するCr含有量が12%以上の快削性ステンレス鋼を用いることにより、耐食性を確保できることも知られている。
また、耐食性及び低コスト実現のためにCr含有量6.0〜11.0質量%、Ni含有量0.1〜0.3質量%のFe系鋼材をゴムローラ用芯金として使用する提案もなされている(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
【特許文献1】
特公平7−74056号公報
【特許文献2】
特開平9−176799号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1記載の方法では、加工工程が増加しコストアップにつながる上、六価クロムを含有する有害なクロム酸を使用した芯金表面の不活性化工程が存在する。近年、環境問題が非常に重要視され、六価クロムを含有するクロム酸の使用を廃止することが望まれており、クロム酸処理による不活性化処理工程は好ましくない。また、100〜300℃で熱処理を行い表面酸化する方法においては、一般的に表面を酸化するために無電解ニッケルメッキ芯金の1本1本を十分に空気(酸素)に触れさせる必要が生じ、1度に多数の処理を行うことが難しいうえ、熱処理によって無電解ニッケルメッキ芯金が変色するという問題を有している。
【0011】
また、芯金の材質としてPb、Sなどを含有するCr含有量が12%以上の快削性ステンレス鋼は高価であるうえ、一般的に被削性向上のためにPbやSを含有していても精密な仕上げ加工精度を確保することが難しいという問題があるため、ほとんど使用されていない。
特許文献2記載の芯金を用いたゴムロールは、一般的に耐食性を十分に満足するものとはなっていない。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、芯金へのゴム層の焼きつきや付着及び芯金の変色が生じず、しかも、製造の容易なゴムローラを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明らは鋭意研究の結果、以下の構成を有するゴムローラを完成するに至った。
すなわち、本発明のゴムローラは、芯金と、芯金上に設けられた少なくとも一層の加硫ゴム層と、を有するゴムローラであって、該芯金の外周面を形成する材料が、Crを5質量%以上12質量%未満、Ti炭硫化物を0.1〜2.5質量%含むFe系金属材料であることを特徴とする。
【0013】
更に、本発明は前記ローラの芯金が、引き抜き加工によって形成され、該引き抜き加工後の芯金の外周面を5〜100μmの厚さだけ研削したものであることが好ましい。
更に、本発明は前記ローラのFe系金属材料が、Pbを実質的に含有しないことが好ましい。
本発明は少なくとも、芯金上に未加硫のゴム組成物を積層する工程と、該未加硫のゴム組成物を加熱加硫する工程と、を有するゴムローラの製造方法であって、該芯金の外周面を形成する材料が、Crを5質量%以上12質量%未満、Ti炭硫化物を0.1〜2.5質量%含むFe系金属材料であることを特徴とするゴムローラの製造方法に関する。
更に、本発明は前記ゴムローラの製造方法の前記未加硫のゴム組成物層を積層する工程が、芯金を少なくとも一つの押出機のクロスヘッドダイ内を連続的に通過させ、該芯金の通過時に該芯金の外周上に未加硫のゴム組成物を押出すことによって行われることが好ましい。
更に、本発明は前記未加硫のゴム組成物が加硫剤としてイオウ及びイオウ化合物の少なくとも一方を有することが好ましい。
更に、本発明は前記製造方法によって製造されたゴムローラに関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のゴムローラは、芯金と、加硫ゴム層とを有し、芯金の外周面を形成する材料は、Crを5質量%以上12質量%未満、Ti炭硫化物を0.1〜2.5質量%含むFe系金属材料である。本発明のゴムローラは、製造が容易であり芯金へのゴム層の焼きつきや付着及び芯金の変色が生じず、高耐久性を有することができる。
【0015】
なお、芯金の外周面がFe系金属材料で構成されていれば良く、芯金全部がFe系金属材料からなっていても、芯金の一部のみがFe系金属材料で構成されていても良い。
【0016】
本発明者らは、耐食性を確保しつつ芯金へのゴム層の焼きつきや付着及び芯金の変色の原因について鋭意検討を行った。その結果、無電解ニッケルメッキ芯金へのゴム層の焼きつきや付着及び芯金の変色の原因は完全には解明されていないが、ゴム組成物に加硫等を行う際の熱付加により芯金表面とゴム組成物中の添加物あるいは、これらの組成物の加熱により生じる反応生成物とが化学反応することによるものと考えた。そして、さらに検討を重ねた結果、芯金の外周面を形成するFe系金属材料中のCr含量を一定範囲内とすることによって、ゴム層の焼きつきや付着及び芯金の変色が発生しないことを見出した。ただし、Fe系金属材料中のCrは、芯金に耐食性を確保するための必須成分であり、Fe系金属材料中に5質量%以上含有する必要がある。Cr含有量が5%未満では、著しく耐食性が低下するためである。また、Cr含有量が12質量%以上になるとローラ材料のコストアップにつながるうえ、芯金を加工する際の加工性が悪くなってしまうため、12質量%未満の割合で含有する必要がある。Fe系金属材料中のCr含有量は6質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。また、11質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0017】
また、芯金の外周面を形成するFe系金属材料中のTi炭硫化物は、芯金の被削性と耐食性向上に有効な化合物であり、Fe系金属材料中に0.1質量%以上、含有する必要がある。耐食性向上の理由は明確ではないが、Ti炭硫化物が耐食性を低下させる硫化金属塩(例えばFeS、MnS等)の生成を防止または抑制しているものと考えられる。また、Fe系金属材料中のTi炭硫化物の含有量が2.5質量%を超えるとコストアップにつながるうえ、芯金を加工する際の加工性が悪くなってしまうためTi炭硫化物の含有量は2.5質量%以下にする必要がある。Ti炭硫化物の含有量は0.2質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、2.0質量%以下であることが好ましく、1.8質量%以下であることがより好ましい。Ti炭硫化物としては、主として組成式Ti4S2C2で示される化合物が挙げられ、Fe系金属材料中に分散形成されている。なお、CrとTi炭硫化物以外の大多数はFeである。Fe系金属材料に含有されるその他の元素として、従来より公知の元素をそれぞれ2質量%以下の微量範囲で含んでいても良い。その他の元素としては例えば、Ni、Si、Al、Mn、N、O、Cu、P、Se等が挙げられる。
【0018】
また、本発明のゴムローラは、少なくとも、芯金上に未加硫の加硫ゴム組成物層を積層する工程と、該未加硫の加硫ゴム組成物層を加熱加硫する工程と、を有する製造方法によって製造することによって、容易にゴムローラの製造を行なうことができる。
【0019】
前述の如く、ゴムローラの製造方法としては、あらかじめ必要部分に接着剤を塗布した芯金を加硫ゴムチューブ内部に圧入し、さらに接着のために加熱を行った後、所定のゴム層の長さになるように両端部のゴム層を切り取る工程を経て製造される方法や、あらかじめ必要部分に接着剤を塗布した芯金上に未加硫のゴム組成物を配置し、芯金上で加硫と接着を同時に行い、所定のゴム層の長さになるように両端部のゴム層を切り取る工程を経て製造される方法等がある。
【0020】
後者の製造方法の方が未加硫のゴム組成物の加硫と芯金への接着が同時に行えるため製造工程上、望ましい。従来の無電解ニッケルメッキ芯金を用いた場合、この加硫と接着を同時に行なう製造方法では芯金へのゴム層の焼きつきや付着がより生じやすいという問題を有していた。しかし、本発明では芯金の外周面を形成するFe系金属材料中のCr含有量及びTi炭硫化物の含有量が所定範囲にある芯金を用いているため、芯金へのゴム層の焼きつきや付着及び芯金の変色を防止でき、加硫と接着を同時に行なう製造方法を用いてゴムローラを安定的に製造することが可能となる。
【0021】
また、未加硫のゴム組成物層の積層は、芯金を少なくとも一つの押出機のクロスヘッドダイ内を連続的に通過させ、芯金の通過時に芯金の外周上に未加硫のゴム組成物を押出すことによって行われることが好ましい。
【0022】
上記押出機のクロスヘッドダイを用いた製造工程を経て製造されるゴムローラは、芯金が押出機のクロスヘッドダイ通過時に、芯金の外周上に未加硫のゴム組成物を配置するので、芯金と未加硫のゴム組成物を均一に密着させることができる。従来の無電解ニッケルメッキ芯金を用いた場合、加硫後のゴム層の焼きつきや付着が激しいという問題があった。しかし、本発明では芯金の外周面を形成する材料中のCr含有量及びTi炭硫化物の含有量が所定範囲にある芯金を用いているため、製造工程数がより少ない押出機を用いた上記工程でもゴム層の焼きつきや付着が起こらないゴムローラを製造することが可能となる。なお、2台以上の押出機を用いて、更に加硫ゴム層を積層させたり、弾性層、離型層等を積層しても良い。
【0023】
また、このときゴム層と芯金の接着が必要な部分には、あらかじめ芯金の外周上に接着剤を塗布しておくことが好ましい。接着剤としては、公知のものが使用でき、例えば、加硫接着剤やホットメルト系の接着剤等が挙げられる。
【0024】
未加硫のゴムの加硫剤としてイオウ及びイオウ化合物の少なくとも一方を用いることが好ましい。ゴムローラ用の未加硫のゴム組成物の加硫剤としては、その加硫ゴムの物性に優れること及び種々の加硫方法が採用できる等の理由から、イオウ及びイオウドナーとなるイオウ化合物(イオウ及びイオウ化合物を以下、イオウ系加硫剤と記すことがある)の少なくとも一方が好適に用いられる。しかしながら、このイオウ系加硫剤を含有するゴム組成物は、従来の無電解ニッケルメッキ芯金に用いた場合、無電解ニッケルメッキ皮膜と化学反応しやすく、芯金へのゴム層の焼きつきや付着がより生じやすいという問題を有していた。しかし、本発明では外周面を形成するFe系金属材料中のCr含有量及びTi炭硫化物の含有量が所定範囲にある芯金を用いているため、芯金へのゴム層の焼きつきや付着及び芯金の変色を防止できる。
【0025】
イオウ化合物とは、前述のようにイオウドナーとなり得る化合物であり、具体的にはテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、モルフォリンジスルフィド、2−(4’−モルフォリノジチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。加硫剤としてのイオウ及びイオウ化合物は、単独若しくは2種以上が混合して用いられ、加硫剤の添加量は好ましくはゴム成分100質量部に対して0.3〜8質量部であるのが良い。
【0026】
芯金は、熱圧延した鋼材を引き抜き加工し、切断する工程を経て製造されるが、引き抜き加工後に表面平滑性が不十分な場合やスケールの残渣が存在する場合があり、従来、この粗い表面を持つ芯金上にゴム組成物層を積層すると、芯金へのゴム層の焼きつきや付着が生じる場合があった。芯金は熱圧延した鋼材を引き抜き加工後に芯金の外周表面を5〜100μmだけ研削することで、芯金表面の平滑性が向上し、このような問題を解決することができる。なお、より好ましくは、芯金の外周表面を10〜90μmの厚さだけ研削するのが良い。
【0027】
本発明のFe系金属材料は、Pbを実質的に含有しないことが好ましい。Pbは被削性向上元素として知られ、Sと比較して耐食性や他の加工性をほとんど低下させないことから非常に有用な元素であるが、多量のPbは環境に対して悪影響を及ぼす場合があるためである。本発明のゴムローラでは、芯金の被削性を向上させるためTi炭硫化物を0.1〜2.5質量%含有しており、Pbを含有しなくともゴムローラは被削性を有することができる。
【0028】
なお、本発明に使用するゴム組成物の主ゴム成分としては特に限定されるものではなく、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリン系ゴム(CO、ECO、CO−AGE、ECO−AGE)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)等が挙げられる。また、本発明のゴムローラに使用されるゴム組成物には、上記成分の他にも各種添加剤を適宜配合することができる。添加剤としては、導電性カーボンブラックやゴム用カーボンブラック等の導電性充填剤、ゴム用カーボンブラック等の補強剤、充填剤、加硫促進剤、加硫助剤、発泡剤、老化防止剤、加工助剤等があげられる。これらの添加剤は単独あるいは、2種以上を併用して用いても良い。
【0029】
なお、本発明のゴムローラは、抵抗調整や保護や表面平滑性の向上等を目的として前記加硫ゴム層の外周面上に樹脂、熱活性エラストマー、加硫ゴム等の層を設けても構わない。
【0030】
【実施例】
次に、本発明を実施例にもとづいて詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例に用いた芯金は、下記の通りである。
芯金A:Cr8質量%、Ti炭硫化物0.65質量%、Pb含有せず、Fe系鋼材
芯金B:Cr4質量%、Ti炭硫化物0.65質量%、Pb含有せず、Fe系鋼材
芯金C:Cr8質量%、Ni0.12質量%、Pb0.25質量%、Ti炭硫化物含有せず、Fe系鋼材(鋼材商品名 MAQ材 大同特殊鋼製)
芯金D:外周面に無電解ニッケルメッキ皮膜(5μm)を形成したSUM12L14材。
【0031】
なお、実施例及び比較例に用いた芯金の種類(A〜D)及びゴム組成物の配合割合を表1に、芯金への加硫ゴム層の付着性及び耐食性の評価結果を表2に示す。また、実施例及び比較例のゴムローラの製造方法とゴム層の付着性及びゴム耐食性の評価方法を下記に示す。
【0032】
〔ゴムローラの製造方法〕
表1記載の配合割合からなる組成物を密閉型混練機及びロール機を用いて混練を行い、各未加硫のゴム組成物を得た。また、直径6mmで長さ240mmの各芯金(芯金A〜D)を用い、芯金の両端から10mmを除く芯金外周面にホットメルト接着剤(スリーボンド3315E(商品名)、(株)スリーボンド社製)を塗布した。押出機を用いて未加硫のゴム組成物をクロスヘッドダイ内に押出すと同時に、接着剤を塗布済みの芯金を連続的に押出機のクロスヘッドダイ内を通過させ、芯金のクロスヘッドダイ通過時に芯金の外周上の接着剤塗布部分に未加硫のゴム組成物を配置し、ローラ形状とした後、200℃で20分間、熱風炉に投入して加硫を行い、芯金上に加硫ゴム層を形成した。更に、このローラを回転させながら芯金の両端部から10mmの位置までは、ゴム層表面から芯金表面までカッター刃を入れた後、芯金端部上のゴム層を切り取った。
【0033】
〔芯金へのゴム層の付着性評価〕
実施例及び比較例のゴムローラの上記ゴム層を切り取った部分の各芯金を目視で観察した。ゴム層の焼きつきや付着及び芯金の変色が全くないものを○、ゴム層の焼きつきや付着があるものを×、ゴム層の焼きつきや付着はないが、芯金の変色のあるものを△とし、芯金へのゴム層の付着性評価とした。
【0034】
〔ゴムローラ芯金の耐食性評価〕
実施例及び比較例のゴムローラを温度40℃、湿度95%の湿熱環境下に30日間放置し、上記ゴム層を切り取った部分の各芯金を観察し錆の発生を観察した。錆の発生が全くないものを○、点錆等の錆が少しでも発生しているものを×とした。なお、実施例及び比較例に用いた資材は以下の通りである。
【0035】
エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム[EPDM;商品名 EPT4070、三井化学(株)社製]
エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム[ECO−AGE;商品名 エピクロマーCG102、ダイソー(株)社製]酸化亜鉛[商品名 亜鉛華2種、白水テック(株)社製]
ステアリン酸[商品名 ステアリン酸S、花王(株)社製]
FT級カーボンブラック[商品名 旭#15、旭カーボン(株)社製]
導電性カーボンブラック[商品名 ケッチェンブラック600JD、ケッチェンブラックインターナショナル(株)社製]
炭酸カルシウム[商品名 シルバーW、白石工業(株)社製]
パラフィンオイル[商品名 ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産(株)社製]。
【0036】
イオウ系加硫剤テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)[商品名 ノクセラーTT、大内振興化学工業(株)社製]
イオウ系加硫剤ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)[商品名 ノクセラーTRA、大内振興化学工業(株)社製]
イオウ系加硫剤テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)[商品名 ノクセラーTET、大内振興化学工業(株)社製]
加硫促進剤ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)[商品名 ノクセラーDM 大内振興化学工業(株)社製]
イオウ[商品名 サルファックスPMC、鶴見化学工業(株)社製]
発泡剤アゾジカルボンアミド(発泡剤ADCA)[商品名 ビニホールAC#LQ、永和化成工業(株)社製]
尿素系発泡助剤[商品名 セルペースト101、永和化成工業(株)社製]。
【0037】
表2の結果より、実施例1〜3の芯金Aを用いて得られたゴムローラでは、芯金中にCrを8質量%(5質量%以上12質量%未満の範囲内)含み、かつTi炭硫化物を0.65質量%(0.1〜2.5質量%の範囲内)含むことにより、芯金上で未加硫のゴム組成物が加熱される工程を経て、ゴム層を形成しても芯金へのゴム層の付着等が生じず、耐食性も満足するものであり、かつ製造が容易なものであった。一方、比較例3及び5の無電解ニッケルメッキ芯金(芯金D)を用いたものは、芯金へのゴム層の焼きつきが生じ、無電解ニッケルメッキ皮膜上に付着したゴムを除去する工程が必須となり、製造がより困難なものとなった。また、比較例1及び4のCrを4質量%含有する芯金B及び比較例2のTi炭硫化物を含有しない芯金Cを用いたものは、耐食性が不十分であった。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【発明の効果】
本発明のゴムローラは、以上のように芯金上で未加硫のゴム組成物層が加熱工程を経て形成されてもゴム層が芯金へ焼きつかない。したがって、後工程で芯金に付着したゴムの除去等を必要とせず、外観および寸法精度の優れた状態となる。また、芯金上の必要部分に接着剤を塗布することにより、ゴム層を強固に芯金に接着することも可能となる。製造が容易であり製造コスト及び材料コストも低く抑えることが可能である。
Claims (7)
- 芯金と、芯金上に設けられた少なくとも一層の加硫ゴム層と、を有するゴムローラであって、
該芯金の外周面を形成する材料が、Crを5質量%以上12質量%未満、Ti炭硫化物を0.1〜2.5質量%含むFe系金属材料であることを特徴とするゴムローラ。 - 前記芯金が、引き抜き加工によって形成され、該引き抜き加工後の芯金の外周面を5〜100μmの厚さだけ研削したものであることを特徴とする請求項1に記載のゴムローラ。
- 前記Fe系金属材料が、Pbを実質的に含有しないことを特徴とする請求項1又は2に記載のゴムローラ。
- 少なくとも、芯金上に未加硫のゴム組成物を積層する工程と、該未加硫のゴム組成物を加熱加硫する工程と、を有するゴムローラの製造方法であって、
該芯金の外周面を形成する材料が、Crを5質量%以上12質量%未満、Ti炭硫化物を0.1〜2.5質量%含むFe系金属材料であることを特徴とするゴムローラの製造方法。 - 前記未加硫のゴム組成物層を積層する工程が、
芯金を少なくとも一つの押出機のクロスヘッドダイ内を連続的に通過させ、該芯金の通過時に該芯金の外周上に未加硫のゴム組成物を押出すことによって行われることを特徴とする請求項4に記載のゴムローラの製造方法。 - 前記未加硫のゴム組成物が加硫剤としてイオウ及びイオウ化合物の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項4又は5に記載のゴムローラの製造方法。
- 請求項4乃至6の何れかに記載の方法によって製造されたゴムローラ。
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JP2007108214A (ja) * | 2005-10-11 | 2007-04-26 | Canon Electronics Inc | ゴムローラー |
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- 2003-04-01 JP JP2003098504A patent/JP2004308667A/ja active Pending
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