JP2004308601A - 内燃機関のバルブ特性制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃焼室の内壁への液状燃料の付着が多くなる機関低温時に、スモーク発生を効果的に抑制することのできる内燃機関のバルブ特性制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン低温時であって、エンジン始動開始から燃焼室3の内面に液状燃料が付着した状態になる所定期間の間は、燃料の燃焼として、まず気化した燃料が予め空気と混合された状態で燃焼する予混合燃焼が行われる。その後、燃焼室3の内面に付着した液状燃料が上記予混合燃焼時の燃焼熱等によって気化して燃焼する拡散燃焼が行われる。このときには排気バルブ21の開弁時期が拡散燃焼の開始時期に近づけられる。従って、燃焼室3内で予混合燃焼から拡散燃焼に移行する際、排気バルブ21が開弁して燃焼室3内の温度や圧力が低下させられ、燃焼室3内で消炎が図られることから、スモーク発生の原因となる拡散燃焼が行われるとしてもその実行期間は極めて短いものとなる。
【選択図】 図1
【解決手段】エンジン低温時であって、エンジン始動開始から燃焼室3の内面に液状燃料が付着した状態になる所定期間の間は、燃料の燃焼として、まず気化した燃料が予め空気と混合された状態で燃焼する予混合燃焼が行われる。その後、燃焼室3の内面に付着した液状燃料が上記予混合燃焼時の燃焼熱等によって気化して燃焼する拡散燃焼が行われる。このときには排気バルブ21の開弁時期が拡散燃焼の開始時期に近づけられる。従って、燃焼室3内で予混合燃焼から拡散燃焼に移行する際、排気バルブ21が開弁して燃焼室3内の温度や圧力が低下させられ、燃焼室3内で消炎が図られることから、スモーク発生の原因となる拡散燃焼が行われるとしてもその実行期間は極めて短いものとなる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関のバルブ特性制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用エンジン等の内燃機関においては、冷えた状態からの始動時など機関温度が低いとき、燃焼室内に供給された燃料の揮発性が低下していることから、燃料の一部が気化しきらずに液状のままとなる。従って、燃焼室内に供給された燃料のうち、一部は気化して空気と混合された状態になるものの、それ以外の燃料はピストンの頂面やシリンダの内壁など燃焼室の内面に液状のまま付着することとなる。
【0003】
このような状況下での燃焼室内の燃料の燃焼としては、まず気化した燃料が予め空気と混合された状態で燃焼する予混合燃焼が行われ、その後に燃焼室の内面に付着した液状燃料が上記予混合燃焼時の燃焼熱等によって気化して燃焼する拡散燃焼が行われる。ただし、この拡散燃焼では、液状燃料が気化して燃焼するものであるため、気化した燃料が燃焼室内の空気とあまり混合されずに燃焼が行われ、酸素不足の状態での燃焼となって排気中に多量のスモークが発生することは避けられない。
【0004】
このため、冷えた状態からの機関始動時などには、燃焼室の内面にできる限り液状燃料を付着させないよう燃料噴射を行うことが考えられている。例えば、特許文献1に示されるような筒内噴射式の内燃機関においては、冷えた状態からの機関始動時に吸気行程噴射が行われる際の燃料噴射時期を遅角補正するようにしている。この場合、燃料噴射時期の遅角補正により、ピストンが燃料噴射弁から離れた状態で燃料噴射が行われることから、噴射燃料がピストンの頂面に当たりにくくなる。このため、同頂面に付着する液状燃料の量が少なくなり、上述した拡散燃焼及びスモークの発生を抑制することが可能になる。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−176562公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、燃料噴射時期の遅角補正など燃料噴射を調節することによって、燃焼室の内面に付着する液状燃料の量を少なくして拡散燃焼及びスモークの発生を抑制することが可能にはなる。しかし、燃料噴射時期の遅角補正など燃料噴射の調節は、燃焼に与える影響も大きいことから、燃料噴射時期を大幅に遅角させるなどの燃料噴射の大幅な調整は困難である。従って、例えば極低温での機関始動時など多量の液状燃料の付着が生じる状況のもとでは、燃料噴射時期の遅角補正など燃料噴射の調節によっては液状燃料の付着を抑制しきれず、拡散燃焼及びスモークの発生を効果的に抑制することが困難になる。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、燃焼室の内面への液状燃料の付着が多くなる機関低温時に、スモーク発生を効果的に抑制することのできる内燃機関のバルブ特性制御装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、排気バルブのバルブ特性を可変とするバルブ特性可変機構を備え、機関温度が低いときに燃焼室内で、気化燃料が予め空気と混合された状態で燃焼する予混合燃焼から、前記燃焼室の内面に付着した液状燃料が気化して燃焼する拡散燃焼への変化が生じる内燃機関のバルブ特性制御装置において、機関温度が低いとき、前記排気バルブの開弁時期が前記拡散燃焼の開始時期に近づくよう、前記バルブ特性可変機構を制御する制御手段を備えた。
【0009】
機関温度が低いときに燃焼室内で予混合燃焼から拡散燃焼に移行する際、排気バルブが開弁して燃焼室内の温度や圧力が低下させられ、燃焼室内で消炎が図られることから、拡散燃焼が行われるとしてもその実行期間は極めて短いものになる。従って、機関低温時という燃焼室の内面への液状燃料の付着が多くなる状況であったとしても、スモーク発生の原因となる拡散燃焼の実行期間が極めて短くなるため、同スモークの発生を効果的に抑制することができる。
【0010】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記制御手段は、前記排気バルブの開弁時期を進角させて前記拡散燃焼の開始時に近づけるものであって、スモーク発生量が許容値未満となる程度まで前記排気バルブの開弁時期を進角させるものとした。
【0011】
スモーク発生量については、排気バルブを開弁時期を進角させて拡散燃焼の開始時期に近づけ、同拡散燃焼の実行期間を短くするほど少なくなる。上記構成によれば、排気バルブの開弁時期の進角によってスモーク発生量を的確に許容値未満に抑制し、同スモークの発生が問題になるのを回避することができる。
【0012】
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の発明において、前記制御手段は、前記排気バルブの開弁時期を進角させて前記拡散燃焼の開始時期に近づけるものであって、機関出力の低下量が許容値以上にならないよう前記排気バルブの開弁時期を進角させるものとした。
【0013】
排気バルブの開弁時期が進角しすぎて拡散燃焼の開始よりも前になると、機関出力の発生に寄与する予混合燃焼中に排気バルブが開弁して消炎が図られることから、機関出力の低下を招くことになる。上記構成によれば、排気バルブの開弁時期を進角させたとしても、機関出力の低下量が許容値以上にはならないため、同機関出力の低下が問題になるのを回避することができる。
【0014】
請求項4記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記制御手段は、機関回転速度及び機関温度に基づき、前記排気バルブの開弁時期が前記拡散燃焼の開始時期に近づくよう、前記排気バルブの開弁時期を制御するものとした。
【0015】
拡散燃焼の開始時期は機関回転速度や機関温度に基づき変化する。即ち、予混合燃焼の実行期間を一定とすると、機関回転速度が低くなるほどピストンが上死点から下死点に至るまでの期間が長くなり、同期間における予混合燃焼の占める割合が小となるため、予混合燃焼後に開始される拡散燃焼の開始時期が早まるようになる。また、機関温度が高くなるほど予混合燃焼の燃焼速度が速くなって同予混合燃焼の実行期間が短くなり、拡散燃焼の開始時期が早まるようになる。上記構成によれば、拡散燃焼の開始時期に影響を及ぼす機関回転速度及び機関温度に基づき排気バルブの開弁時期を制御することで、排気バルブの開弁時期を的確に拡散燃焼の開始時期に近づけることができる。
【0016】
請求項5記載の発明では、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記制御手段は、機関温度が低いとき、前記排気バルブの最大リフト量が大きくなるよう、前記バルブ特性可変機構を制御するものとした。
【0017】
拡散燃焼が開始される際の排気バルブの開弁により燃焼室内の温度や圧力が低下させられるが、これらの低下傾向が排気バルブの最大リフト量を大とすることで急なものとなる。従って、拡散燃焼が開始される際、的確に燃焼室内の消炎を行ってスモーク発生の原因となる拡散燃焼が行われないようにし、スモークの発生を一層効果的に抑制することができる。
【0018】
請求項6記載の発明では、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記内燃機関は、一つの気筒につき排気バルブを複数備えるものであって、前記制御手段は、機関温度が低いとき、一つの気筒における少なくとも一つの排気バルブのバルブ特性が、同気筒における他の排気バルブのバルブ特性とは異なるものとなるよう、前記バルブ特性可変機構を制御するものとした。
【0019】
拡散燃焼が開始される際の排気バルブの開弁により燃焼室内の消炎が図られるが、排気バルブの開弁開始から消炎完了までの間は拡散燃焼が続けられることになる。このとき、一つの気筒における各排気バルブのバルブ特性が異なるものとされることから、燃焼室から排気バルブ周りを通じて外部に流出する排気の量が各排気バルブ毎に異なるものとなる。その結果、燃焼室からの排気の流出が偏った状態で排出されることになり、燃焼室内での排気の流れに乱れが生じる。ピストン及びシリンダライナの壁面付近など燃焼室の内面付近には燃焼に寄与しない空気が残存するが、この空気が上記排気の流れの乱れによって燃焼室の中央側に流され、上述した消炎完了までの燃料の燃焼に利用されることとなる。従って、消炎完了までの燃料の燃焼が空気と混合された状態で行われ、その燃焼が行われるときのスモーク発生を低減することができる。
【0020】
請求項7記載の発明では、請求項6記載の発明において、前記制御手段は、機関温度が低いとき、一つの気筒における少なくとも一つの排気バルブの開弁時期が前記拡散燃焼の開始時期に近づくよう、且つ同気筒における他の排気バルブが閉弁状態に維持されるよう、前記バルブ特性可変機構を制御するものとした。
【0021】
拡散燃焼が開始される際、一つの気筒においては、少なくとも一つの排気バルブが開弁されて燃焼室内の消炎が図られる。また、同気筒における他の排気バルブは閉弁状態に維持されることから、同気筒の燃焼室からの排気の流出は上記開弁された排気バルブ周りのみから行われることとなる。このように一つの気筒における各排気バルブのバルブ特性を大きく異ならせることで、燃焼室からの排気の流出を的確に偏った状態とすることができ、燃焼室内の排気の流れに、上述した残存空気を燃焼室中央側に流す上で好適な乱れを生じさせることができるようになる。
【0022】
請求項8記載の発明では、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、前記内燃機関は、前記燃焼室内に直接燃料を噴射供給する筒内噴射式の内燃機関であることを要旨とした。
【0023】
筒内噴射式の内燃機関においては、機関温度が低いとき、燃焼室内に噴射された燃料が液状のままピストン頂面やシリンダ内壁に付着し易く、スモーク発生の原因となる拡散燃焼が生じ易い。こうした拡散燃焼の発生を排気バルブの開弁時期の制御によって抑制することができるため、筒内噴射式の内燃機関においては機関低温時のスモーク発生の抑制を一層効果的に行うことができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
以下、本発明を自動車用の筒内噴射火花点火式エンジンに適用した第1実施形態を図1〜図7に従って説明する。
【0025】
図1に示されるエンジン1においては、吸気通路2から燃焼室3へと吸入される空気と、燃料噴射弁4から燃焼室3内に噴射供給される燃料とからなる混合気に対し、点火プラグ5による点火が行われる。そして、この点火により燃焼室3内の混合気が燃焼すると、そのときの燃焼エネルギによりピストン6が往復移動する。このピストン6の往復移動は、コネクティングロッド8によってエンジン1の出力軸であるクランクシャフト9の回転へと変換される。
【0026】
エンジン1において、吸気通路2と燃焼室3との間は吸気バルブ20の開閉動作によって連通・遮断され、排気通路7と燃焼室3との間は排気バルブ21の開閉動作によって連通・遮断される。そして、吸気バルブ20及び排気バルブ21は、クランクシャフト9の回転が伝達される吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の回転に伴い、それらシャフト22,23の吸気カム及び排気カムに押されて開閉動作する。
【0027】
また、エンジン1には、排気バルブ21のバルブ特性を可変とするバルブ特性可変機構25が設けられている。このバルブ特性可変機構25は、クランクシャフト9の回転に対する排気カムシャフト23の相対回転位相を変更することで、排気バルブ21のバルブ特性としてバルブタイミング(開閉タイミング)を変更するものである。そして、このバルブ特性可変機構25を作動させ、排気バルブ21のバルブタイミングを進角側又は遅角側に移行させることにより、排気バルブ21の開弁時期及び閉弁時期が変化するようになる。
【0028】
次に、本実施形態におけるバルブ特性制御装置の電気的構成を説明する。
このバルブ特性制御装置は、エンジン1を運転制御すべく自動車に搭載された電子制御装置35を備えている。電子制御装置35は、燃料噴射弁4の駆動を通じての燃料噴射制御、及びバルブ特性可変機構25の駆動を通じての排気バルブ21のバルブタイミング制御を行うとともに、吸気通路2に設けられたスロットルバルブ11の駆動を通じてのスロットル開度制御も行う。また、電子制御装置35には、以下に示される各種センサからの検出信号が入力される。
【0029】
・クランクシャフト9の回転に対応した信号を出力するクランクポジションセンサ10。
・排気カムシャフト23の回転位置を検出するためのカムポジションセンサ24。
【0030】
・自動車の運転者によって踏み込み操作されるアクセルペダル13の踏み込み量(アクセル踏込量)を検出するアクセルポジションセンサ14。
・スロットルバルブ11の開度(スロットル開度)を検出するスロットルポジションセンサ15。
【0031】
・吸気通路2におけるスロットルバルブ11よりも下流側の圧力(吸気圧)を検出するバキュームセンサ12。
・エンジン1の冷却水の温度を検出する水温センサ16。
【0032】
ところで、エンジン1においては、冷えた状態からの始動時などエンジン温度が低いとき、燃焼室3に供給された燃料の揮発性が低下していることから、燃料の一部が気化しきらずに液状のままピストン6の頂面やシリンダの内壁など燃焼室3の内面に付着する。特に、筒内噴射式のエンジン1においては、燃焼室3に噴射された燃料がピストン6の頂面やシリンダの内壁に当たるため、それらの箇所に液状燃料が付着し易くなる。このような状況下での燃焼室3内での燃料の燃焼について、図2のタイミングチャートを併せ参照して説明する。
【0033】
点火プラグ5による点火時点において、燃焼室3内には気化して空気と混合された燃料と燃焼室3の内面に付着した液状燃料とが存在しており、上記点火に伴い空気と混合された状態の気化燃料が最初に燃焼する。この燃焼は、気化した燃料が予め空気と混合された状態で燃焼する予混合燃焼であって、必要量の酸素が燃焼に用いられるために酸素不足での燃料の燃焼によるスモークの発生は少ない。こうした予混合燃焼によって、燃焼室3内の圧力(筒内圧)が図2(a)に示されるように急激に上昇するとともに、燃焼室3内での熱発生率が図2(b)に示されるように筒内圧に対応して上昇することとなる。
【0034】
予混合燃焼が進むと、筒内圧がピークを越えて低下し始め、それに対応して燃焼室3内での熱発生率も低下する。そして、予め空気と混合されていた気化燃料が燃焼しきると、燃焼室3内での熱発生率が最低値に達して予混合燃焼が終了する。予混合燃焼が行われているときには同燃焼時の熱によって燃焼室3の内面に付着している液状燃料が徐々に気化してゆくが、予混合燃焼が終了したときには当該液状燃料が気化して燃焼する拡散燃焼へと移行する。この拡散燃焼では、気化した燃料が燃焼室3内の空気とあまり混合されずに燃焼が行われ、酸素不足の状態での燃焼となって図3に破線で示されるように排気中に多量のスモークが発生することとなる。
【0035】
本実施形態では、このように多量のスモークが発生するのを抑制すべく、冷えた状態でのエンジン1の始動開始から所定時間が経過するまでの間は、排気バルブ21の開弁時期が拡散燃焼の開始時期に近づくよう、排気バルブ21のバルブタイミングを制御する。具体的には、エンジン1が冷えた状態にあるときの通常の排気バルブ21のバルブタイミングを図2(c)に破線で示される状態とすると、上記所定期間中は排気バルブ21のバルブタイミングが破線から実線で示される状態へと進角側に制御される。
【0036】
冷えた状態でのエンジン1の始動直後には、燃焼室3の内壁に液状燃料が付着していることから予混合燃焼の後に拡散燃焼が行われるが、上記排気バルブ21のバルブタイミング制御により拡散燃焼が抑制されるようになる。即ち、予混合燃料から拡散燃焼への移行の際、上記バルブタイミング制御により排気バルブ21が開弁して燃焼室3内の温度や圧力が低下させられ、燃焼室3内で消炎が図られることから、拡散燃焼が行われるとしてもその実行期間は極めて短いものになる。このようにスモーク発生の原因となる拡散燃焼の実行期間が極めて短くなるため、同スモークの発生を例えば図3に破線で示される状態から実線で示される状態へと効果的に抑制することができる。
【0037】
次に、排気バルブ21のバルブタイミング制御に用いられる最終バルブタイミングV/Tfin の算出手順について、最終バルブタイミング算出ルーチンを示す図4のフローチャートを参照して説明する。この最終バルブタイミング算出ルーチンは、電子制御装置35を通じて例えば所定クランク角毎の角度割り込みにて実行される。
【0038】
最終バルブタイミング算出ルーチンにおいては、まずエンジン温度に対応した値となるエンジン1の冷却水温が所定値(例えば50℃)未満であるか否か(S101)、即ち燃焼が安定しにくくなるほど冷却水温が低い値であるか否かが判断される。
【0039】
ここで、肯定判定であればエンジン低温時に用いられる最終バルブタイミングV/Tfin の算出処理が行われ(S102〜S104,S106,S107)、否定判定であればエンジン非低温時に用いられる最終バルブタイミングV/Tfin の算出処理が行われる(S105〜S107)。こうして算出された最終バルブタイミングV/Tfin に基づきバルブ特性可変機構25が駆動され、排気バルブ21のバルブタイミングが制御されるようになる。
【0040】
エンジン非低温時に用いられる最終バルブタイミングV/Tfin の算出処理(S105〜S107)では、まずエンジン回転速度及びエンジン負荷に基づき基本バルブタイミングV/Tbaseが算出される(S105)。この基本バルブタイミングV/Tbaseは、エンジン回転速度及びエンジン負荷に応じた最適な排気バルブ21のバルブタイミングの理論上の値であって、エンジン回転速度及びエンジン負荷に応じて図5(a)に示されるように変化するようになる。なお、エンジン回転速度はクランクポジションセンサの検出信号から求められ、エンジン負荷はエンジン1の吸入空気量に関係するパラメータ及び上記エンジン回転速度に基づき求められる。この吸入空気量に関係するパラメータとしては、例えばエンジン1の吸気圧、スロットルバルブ11の開度、及びアクセルペダル13の踏込量等があげられる。
【0041】
続いてバルブタイミング補正量V/Ttempが「0」に設定される(S106)。このバルブタイミング補正量V/Ttempは、エンジン低温時であって燃焼室3の内面に液状燃料が付着するときに排気バルブ21のバルブタイミングを進角側に補正するためのものである。そして、バルブタイミング補正量V/Ttemp及び上記基本バルブタイミングV/Tbase等に基づき最終バルブタイミングV/Tfin が算出される(S107)。当該最終バルブタイミングV/Tfin に基づきバルブ特性可変機構25が駆動されて排気バルブ21のバルブタイミングが制御されるが、この場合はバルブタイミング補正量V/Ttempが「0」であるため、上記のようにバルブタイミングが進角側に補正されることはない。
【0042】
一方、エンジン低温時に用いられる最終バルブタイミングV/Tfin の算出処理(S102〜S104,S106,S107)では、まず基本バルブタイミングV/Tbaseがエンジン回転速度やエンジン負荷に関係なく、図5(b)に示されるように所定の一定値として算出される(S102)。続いてエンジン1の始動開始から所定時間以内であるか否かが判断される(S103)。この所定時間としては、例えばエンジン始動時に燃焼室3の内面に付着した液状燃料がエンジン1の温度上昇に伴い気化しきるのに必要な時間に設定される。
【0043】
そして、ステップS103で否定判定がなされた場合、燃焼室3の内面に付着した液状燃料が気化しきった状態になることから、燃焼室3の内面に液状燃料が付着していることはなく、予混合燃焼の後に拡散燃焼が行われることもない。このため、バルブタイミング補正量V/Ttempは「0」に設定される(S106)。その後、最終バルブタイミングV/Tfin の算出が行われ(S107)、同最終バルブタイミングV/Tfin に基づき排気バルブ21のバルブタイミングが制御されるが、このときに排気バルブ21のバルブタイミングがバルブタイミング補正量V/Ttempによって進角側に補正されることはない。
【0044】
また、ステップS103で肯定判定がなされた場合、燃焼室3の内面に液状燃料が付着した状態となることから、予混合燃焼の後に拡散燃焼が行われることとなる。この場合、冷却水温及びエンジン回転速度に基づきバルブタイミング補正量V/Ttempが排気バルブ21のバルブタイミングを進角側に補正する値として算出される(S104)。その後、最終バルブタイミングV/Tfin の算出が行われ(S107)、同最終バルブタイミングV/Tfin に基づき排気バルブ21のバルブタイミングが制御される。このときには排気バルブ21のバルブタイミングがバルブタイミング補正量V/Ttempによって進角側に補正され、排気バルブ21の開弁時期が図2(c)に実線で示されるように拡散燃焼の開始時期に近づけられる。
【0045】
このように排気バルブ21の開弁時期を拡散燃焼の開始時期に近づけることにより、予混合燃焼から拡散燃焼に移行する際、排気バルブ21が開弁して燃焼室3内の温度や圧力が低下させられ、燃焼室3内での消炎が図られることから、拡散燃焼が行われるとしてもその実行期間が極めて短くなる。従って、排気バルブ21の開弁時期を進角させて拡散燃焼の開始時期に近づけるほど、拡散燃焼の実行期間が短くなってスモークの発生を抑制する上では有利である。ただし、排気バルブ21の開弁時期を進角させすぎて予混合燃焼中に排気バルブ21が開弁すると、予混合燃焼中に消炎がなされてエンジン出力が低下してしまう。
【0046】
上記バルブタイミング補正量V/Ttempは、スモーク発生量が許容値未満となるよう、且つエンジン出力の低下量が許容値以上にならないよう、排気バルブ21の開弁時期を拡散燃焼の開始時期に近づけるべく、排気バルブ21のバルブタイミングを進角させる値をとる。こうしたバルブタイミング補正量V/Ttempは、図6に示されるように、冷却水温一定の条件下ではエンジン回転速度が低くなるほど、またエンジン回転速度一定の条件下では冷却水温が高くなるほど、排気バルブ21のバルブタイミングを進角側に補正する値になる。上記のようにエンジン回転速度及び冷却水温に応じてバルブタイミング補正量V/Ttempを可変とするのは、エンジン回転速度及び冷却水温に応じて拡散燃焼の開始時期が変化するためである。
【0047】
即ち、予混合燃焼の実行期間を一定とすると、エンジン回転速度が低くなるほどピストン6が上死点から下死点に至るまでの期間が長くなり、同期間における予混合燃焼の占める割合が小となるため、予混合燃焼後に開始される拡散燃焼の開始時期が早まるようになる。また、冷却水温が高くなるほど予混合燃焼の燃焼速度が速くなって同予混合燃焼の実行期間が短くなり、拡散燃焼の開始時期が早まるようになる。以上のようなエンジン回転速度及び冷却水温の変化に伴う拡散燃焼の開始時期の変化に対応して、排気バルブ21の開弁時期が変化するようエンジン回転速度及び冷却水温に応じてバルブタイミング補正量V/Ttempが可変とされる。
【0048】
なお、バルブタイミング補正量V/Ttempが排気バルブ21のバルブタイミングを進角させる値をとるのは、エンジン回転速度一定のもとでは冷却水温が例えば0℃〜10℃などの低温から極低温のときであり、それよりも高温のときには上記バルブタイミングを進角させることのない値、即ち「0」になる。これは、拡散燃焼の原因となる燃焼室3の内面への液状燃料の付着が上記のような冷却水温が極低温のときに生じ、そのようなときに的確に拡散燃焼を抑制すべく排気バルブ21のバルブタイミングを進角側に補正するためである。
【0049】
このバルブタイミング補正量V/Ttemp等に基づき算出される最終バルブタイミングV/Tfin は、エンジン回転速度及び冷却水温に応じて図7に示されるように変化する。
【0050】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)エンジン低温時であってエンジン始動開始から、燃焼室3の内面に液状燃料が付着した状態になる所定期間が経過するまでの間は、排気バルブ21の開弁時期が拡散燃焼の開始時期に近づけられる。このため、燃焼室3内で予混合燃焼から拡散燃焼に移行する際、排気バルブ21が開弁して燃焼室3内の温度や圧力が低下させられ、燃焼室3内で消炎が図られることから、拡散燃焼が行われるとしてもその実行期間は極めて短いものとなる。従って、燃焼室3の内面に液状燃料が付着するエンジン低温始動時に、スモーク発生の原因となる拡散燃焼の実行期間が極めて短くなるため、同スモークの発生を効果的に抑制することができる。
【0051】
(2)上記スモークの発生量については、排気バルブ21の開弁時期を進角させて拡散燃焼の開始時期に近づけ、拡散燃焼の実行期間を短くするほど少なくなる。ただし、排気バルブ21の開弁時期を進角させすぎて排気バルブ21の開弁時期が拡散燃焼の開始時期よりも早くなると、予混合燃焼で消炎が図られてエンジン出力が低下することとなる。上記排気バルブ21の開弁時期の進角については、当該開弁時期が拡散燃焼の開始時期に対しスモーク発生量が許容値未満になる程度まで、且つエンジン出力の低下量が許容値以上にならない程度に近づくよう行われる。従って、上記のように排気バルブ21の開弁時期を進角させるに際し、スモークの発生やエンジン出力の低下が問題になるのを回避することができる。
【0052】
(3)拡散燃焼の開始時期はエンジン回転速度や冷却水温に基づき変化する。即ち、予混合燃焼の実行期間を一定とすると、エンジン回転速度が低くなるほどピストン6が上死点から下死点に至るまでの期間が長くなり、同期間における予混合燃焼の占める割合が小となるため、予混合燃焼後に開始される拡散燃焼の開始時期が早まるようになる。また、冷却水温が高くなるほど予混合燃焼の燃焼速度が速くなって同予混合燃焼の実行期間が短くなり、拡散燃焼の開始時期が早まるようになる。以上のようなエンジン回転速度及び冷却水温の変化に伴う拡散燃焼の開始時期の変化に対応して、排気バルブ21の開弁時期が変化するようエンジン回転速度及び冷却水温に応じてバルブタイミング補正量V/Ttempが可変とされる。このため、排気バルブ21の開弁時期を的確に拡散燃焼の開始時期に近づけることができる。
【0053】
(4)筒内噴射式のエンジン1においては、燃焼室3に噴射された燃料がピストン6の頂面やシリンダの内壁に当たるため、それらの箇所に液状燃料が付着し易く、スモーク発生の原因となる拡散燃焼が生じ易い。こうした拡散燃焼の発生を排気バルブ21のバルブタイミング進角制御、即ち開弁時期の進角制御によって抑制することができるため、筒内噴射式のエンジン1においてはエンジン低温時のスモーク発生の抑制を一層効果的に行うことができる。
【0054】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図8及び図9に従って説明する。
この実施形態では、排気バルブ21のバルブ特性として最大リフト量及び開弁期間を可変とするバルブ特性可変機構25が設けられている。こうしたバルブ特性可変機構25としては、例えば、排気カムのカムプロフィールを排気カムシャフト23の軸線方向に連続的に変化するように形成し、同排気カムを排気カムシャフト23の軸線方向に変位させるものを採用することができる。
【0055】
図8は、本実施形態のバルブ特性可変機構25の駆動による排気バルブのバルブ特性、即ち最大リフト量及び開弁期間の変化態様を示すものである。図中の実線はクランク角に対する排気バルブのリフト量の変化態様を示しており、その変化態様はバルブ特性可変機構25の駆動によって図中最も上側のものと図中最も下側のものとの間で変化する。この図から分かるように、排気バルブ21の最大リフト量及び開弁期間が大となるようバルブ特性可変機構25を駆動することにより、排気バルブ21の開弁時期が進角側に変化するようになる。
【0056】
電子制御装置35は、冷えた状態でのエンジン始動開始から所定期間が経過するまでの間は、排気バルブ21の開弁時期が進角して拡散燃焼の開始時期に近づくよう、排気バルブ21の最大リフト量及び開弁期間が大となる側にバルブ特性可変機構25を駆動制御する。こうした排気バルブ21のバルブ特性の制御量については、エンジン回転速度及び冷却水温に基づき可変とされ、排気バルブ21の開弁時期が拡散燃焼の開始時期に対し、スモーク発生量を許容値未満とすることが可能で、且つエンジン出力の低下量が許容値以上にならない程度まで、近づくような値とされる。
【0057】
次に、冷えた状態からのエンジン始動時といった燃焼室3の内面に液状燃料が付着する状況下での燃焼室3内での燃料の燃焼、及びその際の排気バルブ21のバルブ特性制御について、図9のタイミングチャートを参照して説明する。
【0058】
点火プラグ5による点火に伴い最初に予混合燃焼が行われ、筒内圧が図9(a)に示されるように急激に上昇するとともに、燃焼室3内での熱発生率が図9(b)に示されるように筒内圧に対応して上昇する。予混合燃焼が進むと、筒内圧がピークを越えて低下し始め、それに対応して燃焼室3内での熱発生率も低下する。そして、予め空気と混合されていた気化燃料が燃焼しきると、燃焼室3内での熱発生率が最低値に達して予混合燃焼が終了し、拡散燃焼へと移行することとなる。
【0059】
こうした予混合燃焼から拡散燃焼への移行の際、排気バルブ21の最大リフト量及び開弁期間が図9(c)に破線で示される状態から実線で示される状態へと変化し、排気バルブ21の開弁時期が進角して拡散燃焼の開始時期に近づけられる。この排気バルブ21のバルブ特性制御により排気バルブ21が開弁して燃焼室3内の温度や圧力が低下させられ、燃焼室3内で消炎が図られることから、拡散燃焼が行われるとしてもその実行期間は極めて短いものになる。このようにスモーク発生の原因となる拡散燃焼の実行期間が極めて短くなるため、同スモークの発生を効果的に抑制することができる。
【0060】
本実施形態によれば、第1実施形態に記載した(1)〜(4)と同等の効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(5)予混合燃焼から拡散燃焼への移行の際、拡散燃焼の開始時期に近付くよう排気バルブ21の開弁時期が進角させられるが、それに加えて排気バルブ21の最大リフト量の拡大も行われる。このように排気バルブ21の最大リフト量を大とすることで、排気バルブ21の開弁による燃焼室3内の温度や圧力の低下傾向が急なものとなり、拡散燃焼が開始される際の消炎を的確に行ってスモーク発生の原因となる拡散燃焼が行われないようにし、スモークの発生を一層効果的に抑制することができる。
【0061】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を図10及び図11に従って説明する。
この実施形態は、第2実施形態において、バルブ特性可変機構25の駆動による排気バルブ21のバルブ特性の変化態様を異ならせたものである。同機構25の駆動による排気バルブ21のバルブ特性、即ち最大リフト量及び開弁期間の変化態様を図10に示す。
【0062】
同図から分かるように、この実施形態においても、排気バルブ21の最大リフト量及び開弁期間が大となるようバルブ特性可変機構25を駆動することにより、排気バルブ21の開弁時期が進角側に変化するようになる。第2実施形態では、排気バルブ21のリフト量が最大となるときのクランク角がバルブ特性可変機構25の駆動に関係なく一定である(図8参照)。これに対し、この実施形態では、排気バルブ21の最大リフト量及び開弁期間が大となるようバルブ特性可変機構25を駆動すると、排気バルブ21のリフト量が最大となるときのクランク角が進角側に変化することとなる。即ち、バルブ特性可変機構25の駆動により、上記のように排気バルブ21のバルブ特性が変化するよう、排気カムのカムプロフィールが設定されている。
【0063】
電子制御装置35は、拡散燃焼の抑制として、排気バルブ21の開弁時期が進角して拡散燃焼の開始時期に近づくよう、排気バルブ21の最大リフト量及び開弁期間が大となる側にバルブ特性可変機構25を駆動制御する。こうした排気バルブ21のバルブ特性の制御量については、エンジン回転速度及び冷却水温に基づき可変とされ、排気バルブ21の開弁時期が拡散燃焼の開始時期に対し、スモーク発生量を許容値未満とすることが可能で、且つエンジン出力の低下量が許容値以上にならない程度まで、近づくような値とされる。
【0064】
次に、冷えた状態からのエンジン始動時といった燃焼室3の内面に液状燃料が付着する状況下での燃焼室3内での燃料の燃焼、及びその際の排気バルブ21のバルブ特性制御について、図11のタイミングチャートを参照して説明する。
【0065】
点火プラグ5による点火に伴い最初に予混合燃焼が行われ、筒内圧が図11(a)に示されるように急激に上昇するとともに、燃焼室3内での熱発生率が図11(b)に示されるように筒内圧に対応して上昇する。予混合燃焼が進むと、筒内圧がピークを越えて低下し始め、それに対応して燃焼室3内での熱発生率も低下する。そして、予め空気と混合されていた気化燃料が燃焼しきると、燃焼室3内での熱発生率が最低値に達して予混合燃焼が終了し、拡散燃焼へと移行することとなる。
【0066】
こうした予混合燃焼から拡散燃焼への移行の際、排気バルブ21の最大リフト量及び開弁期間が図11(c)に破線で示される状態から実線で示される状態へと変化し、排気バルブ21の開弁時期が進角して拡散燃焼の開始時期に近づけられる。この排気バルブ21のバルブ特性制御により排気バルブ21が開弁して燃焼室3内の温度や圧力が低下させられ、燃焼室3内で消炎が図られることから、拡散燃焼が行われるとしてもその実行期間は極めて短いものになる。このようにスモーク発生の原因となる拡散燃焼の実行期間が極めて短くなるため、同スモークの発生を効果的に抑制することができる。
【0067】
この実施形態においても、第2実施形態と同等の効果を得ることができる。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態を図12〜図14に従って説明する。
【0068】
この実施形態では、図12に示されるように、エンジン1の一つの気筒について複数(本実施形態では二つ)の排気バルブ21a,21bが設けられている。また、排気バルブ21a,21bのバルブ特性としてバルブタイミングを可変とし、且つエンジン1の運転中に一方の排気バルブ21bの開弁動作を停止させることの可能なバルブ特性可変機構25が設けられている。こうしたバルブ特性可変機構25としては、例えば第1実施形態のようなクランクシャフト9に対する排気カムシャフト23の相対回転位相を変更する機構と、排気バルブ21bに対する排気カムの押し付け動作が同バルブ21の開閉動作に換えられるのを無効化する機構とを組み合わせたものを採用することができる。
【0069】
電子制御装置35は、拡散燃焼の抑制として、排気バルブ21aのバルブタイミングを進角させて同バルブ21aの開弁時期が拡散燃焼の開始時期に近づくように、且つ排気バルブ21bの開弁動作が停止されるようにバルブ特性可変機構25を駆動制御する。上記排気バルブ21aのバルブイミング制御量については、エンジン回転速度及び冷却水温に基づき可変とされ、排気バルブ21の開弁時期が拡散燃焼の開始時期に対し、スモーク発生量を許容値未満とすることが可能で、且つエンジン出力の低下量が許容値以上にならない程度まで、近づくような値とされる。
【0070】
次に、冷えた状態からのエンジン始動時といった燃焼室3の内面に液状燃料が付着する状況下での燃焼室3内での燃料の燃焼、及びその際の排気バルブ21a,21bのバルブ特性制御について、図14のタイミングチャートを参照して説明する。
【0071】
点火プラグ5による点火に伴い最初に予混合燃焼が行われ、筒内圧が図14(a)に示されるように急激に上昇するとともに、燃焼室3内での熱発生率が図14(b)に示されるように筒内圧に対応して上昇する。予混合燃焼が進むと、筒内圧がピークを越えて低下し始め、それに対応して燃焼室3内での熱発生率も低下する。そして、予め空気と混合されていた気化燃料が燃焼しきると、燃焼室3内での熱発生率が最低値に達して予混合燃焼が終了し、拡散燃焼へと移行することとなる。
【0072】
こうした予混合燃焼から拡散燃焼への移行の際、排気バルブ21aのバルブタイミングが図14(c)に破線で示される状態から実線で示される状態へと変化し、排気バルブ21aの開弁時期が進角して拡散燃焼の開始時期に近づけられる。この排気バルブ21aのバルブタイミング制御により排気バルブ21aが開弁して燃焼室3内の温度や圧力が低下させられ、燃焼室3内で消炎が図られることから、拡散燃焼が行われるとしてもその実行期間は極めて短いものになる。このようにスモーク発生の原因となる拡散燃焼の実行期間が極めて短くなるため、同スモークの発生を効果的に抑制することができる。
【0073】
一方、排気バルブ21aが上記のようにバルブタイミング制御されるのに対し、排気バルブ21bについては、その開弁動作が停止されて図14(d)に破線で示される状態から太い実線で示される状態へと変化する。従って、このときには排気バルブ21aだけが開弁して排気バルブ21bが閉弁状態に維持され、排気バルブ21aのバルブ特性と排気バルブ21bのバルブ特性とが異なるものになる。この状態にあっては、燃焼室3内からの排気の流出は開弁された排気バルブ21a周りのみから行われるため、燃焼室3から排気が偏った状態で流出し、燃焼室3内での排気の流れに図12及び図13に破線の矢印で示されるような乱れが生じる。
【0074】
ピストン6及びシリンダライナの壁面付近など燃焼室3の内面には、燃焼に寄与しない空気が残存するが、この空気が上記排気の流れの乱れによって燃焼室3の中央に流され、燃料の燃焼に用いられることとなる。
【0075】
この実施形態によれば、第1実施形態に記載した(1)〜(4)と同等の効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(6)拡散燃焼が開始される際の排気バルブ21aの開弁により燃焼室3内の消炎が図られるが、排気バルブ21aの開弁開始から消炎までの間は拡散燃焼が続けられることになる。このとき、上述した燃焼室3内の排気の流れの乱れにより、ピストン6及びシリンダライナの壁面付近など燃焼室3の内面に残存した燃焼に寄与していない空気が燃焼室3の中央に流され、上記消炎完了までの燃料の燃焼に利用される。従って、消炎完了までの燃料の燃焼が空気と混合された状態で行われ、その燃焼が行われるときのスモーク発生を低減することができる。
【0076】
(7)燃焼室3内に排気の流れの乱れを生じさせるため、排気バルブ21aを開弁するとともに排気バルブ21bを閉弁状態に維持した。このように排気バルブ21aのバルブ特性と排気バルブ21bのバルブ特性とを大きく異ならせることで、燃焼室3内からの排気の流出を的確に偏った状態とすることができ、燃焼室3内に排気の流れに、上述した残存空気を燃焼室3の中央に流す上で好適な乱れを生じさせることができる。
【0077】
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・第4実施形態において、排気バルブ21aのバルブ特性と排気バルブ21bのバルブ特性とを異ならせる態様としては、例えば図15〜図19に示される態様とすることも考えられる。
【0078】
図15においては、排気バルブ21aのバルブタイミングを図15(a)に破線で示される状態から実線で示される状態へと変化させ、同バルブ21aの開弁時期を拡散燃焼の開始時期に近づけている。また、排気バルブ21bのバルブタイミングを図15(b)に破線で示される状態から実線L1で示される状態、或いは実線L2で示される状態へと変化させ、同バルブ21bの開弁時期を排気バルブ21aの開弁時期よりも遅角させている。この場合、排気バルブ21aが開弁してから排気バルブ21bが開弁するため、排気バルブ21a周りから流出する排気の量と排気バルブ21b周りから流出する排気の量とは異なるものとなる。従って、燃焼室3からの排気の流出を的確に偏った状態とすることができ、燃焼室3内の排気の流れに、上述した残存空気を燃焼室3の中央に流す上で好適な乱れを生じさせることができる。なお、排気バルブ21aのバルブタイミングと排気バルブ21bのバルブタイミングとを別々に制御するには、例えば排気バルブ21a,21bを電磁力を利用して開閉動作する電磁駆動バルブによって構成し、この電磁駆動バルブをバルブ特性可変機構25とすることが考えられる。
【0079】
図16においては、排気バルブ21aの最大リフト量及び開弁期間を第2実施形態と同じように図16(a)に破線で示される状態から実線で示される状態へと変化させ、同バルブ21aの開弁時期を拡散燃焼の開始時期に近づけている。また、排気バルブ21bを閉弁状態に維持して同バルブ21bのバルブ特性を図16(b)に破線で示される状態から太い実線で示される状態に変化させている。この場合、第4実施形態に記載した(6)及び(7)と同等の効果が得られるようになる。なお、上記のように排気バルブ21a、21bを制御可能なバルブ特性可変機構25としては、第2実施形態の機構と、排気バルブ21bに対する排気カムの押し付け動作が同バルブ21の開閉動作に換えられるのを無効化する機構とを組み合わせたものを採用することが考えられる。また、上記と同じく電磁駆動バルブをバルブ特性可変機構25として採用してもよい。
【0080】
図17においては、排気バルブ21aの最大リフト量及び開弁期間を第2実施形態と同じように図17(a)に破線で示される状態から実線で示される状態へと変化させ、同バルブ21aの開弁時期を拡散燃焼の開始時期に近づけている。また、排気バルブ21bの最大リフト量及び開弁期間を図17(b)に破線で示される状態から実線L3で示される状態、或いは実線L4で示される状態へと変化させ、同バルブ21bの最大リフト量及び開弁期間を排気バルブ21aよりも小としている。この場合、排気バルブ21aの最大リフト量が排気バルブ21bの最大リフト量よりも大とされるため、排気バルブ21a周りから流出する排気の量と排気バルブ21b周りから流出する排気の量とは異なるものとなる。従って、燃焼室3からの排気の流出を的確に偏った状態とすることができ、燃焼室3内の排気の流れに、上述した残存空気を燃焼室3の中央に流す上で好適な乱れを生じさせることができる。なお、バルブ特性可変機構25としては、上記と同じく電磁駆動バルブを採用することができる。
【0081】
図18においては、排気バルブ21aの最大リフト量及び開弁期間を第3実施形態と同じように図18(a)に破線で示される状態から実線で示される状態へと変化させ、同バルブ21aの開弁時期を拡散燃焼の開始時期に近づけている。また、排気バルブ21bを閉弁状態に維持して同バルブ21bのバルブ特性を図18(b)に破線で示される状態から太い実線で示される状態に変化させている。この場合、第4実施形態に記載した(6)及び(7)と同等の効果が得られるようになる。なお、上記のように排気バルブ21a,21bを制御可能なバルブ特性可変機構25としては、第3実施形態の機構と、排気バルブ21bに対する排気カムの押し付け動作が同バルブ21の開閉動作に換えられるのを無効化する機構とを組み合わせたものを採用することが考えられる。また、上記と同じく電磁駆動バルブをバルブ特性可変機構25として採用してもよい。
【0082】
図19においては、排気バルブ21aの最大リフト量及び開弁期間を第3実施形態と同じように図19(a)に破線で示される状態から実線で示される状態へと変化させ、同バルブ21aの開弁時期を拡散燃焼の開始時期に近づけている。また、排気バルブ21bの最大リフト量及び開弁期間を図19(b)に破線で示される状態から実線L5で示される状態、或いは実線L6で示される状態へと変化させ、同バルブ21bの最大リフト量及び開弁期間を排気バルブ21aよりも小としている。この場合、排気バルブ21aの最大リフト量が排気バルブ21bの最大リフト量よりも大とされるため、排気バルブ21a周りから流出する排気の量と排気バルブ21b周りから流出する排気の量とは異なるものとなる。従って、燃焼室3からの排気の流出を的確に偏った状態とすることができ、燃焼室3内の排気の流れに、上述した残存空気を燃焼室3の中央に流す上で好適な乱れを生じさせることができる。なお、バルブ特性可変機構25としては、上記と同じく電磁駆動バルブを採用することができる。
【0083】
・第1〜第4実施形態において、バルブ特性可変機構25として上述した電磁駆動バルブを採用してもよい。
・第2及び第3実施形態において、排気バルブ21の開閉させるためのカムとしてカムプロフィールの異なる複数のカムを設け、排気バルブ21の開閉に寄与するカムを上記複数のカムから選択するタイプのバルブ特性可変機構25を採用してもよい。
【0084】
・上記各実施形態では、エンジン1の温度として冷却水温を用いたが、エンジン1の温度を直接検出し、これを用いてもよい。
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を、その効果とともに以下に記載する。
【0085】
(1)請求項6記載の内燃機関のバルブ特性制御装置において、前記制御手段は、機関温度が低いとき、一つの気筒における少なくとも一つの排気バルブの開弁時期が前記拡散燃焼の開始時期に近づくよう、且つ前記排気バルブの開弁時期に対し同気筒における他の排気バルブの開弁時期が遅角側の時期になるよう、前記バルブ特性可変機構を制御することを特徴とする内燃機関のバルブ特性制御装置。
【0086】
拡散燃焼が開始される際、一つの気筒においては、少なくとも一つの排気バルブの開弁時期が拡散燃焼の開始時期に近づけられ、その排気バルブの開弁時期に対し同気筒の他の排気バルブの開弁時期が遅角側の時期とされる。このことから、同気筒の燃焼室からの排気の流出量は、最初に開弁される排気バルブ周りと後開弁される排気バルブ周りとで異なるものなる。従って、燃焼室からの排気の流出を的確に偏った状態とすることができ、燃焼室内の排気の流れに関して、燃焼室内の残存空気を燃焼室中央側に流す上で好適な乱れを生じさせることができる。
【0087】
(2)請求項6記載の内燃機関のバルブ特性制御装置において、前記制御手段は、機関温度が低いとき、一つの気筒における少なくとも一つの排気バルブの最大リフト量が、同気筒における他の排気バルブの最大リフト量よりも大となるよう、前記バルブ特性可変機構を制御することを特徴とする内燃機関のバルブ特性制御装置。
【0088】
拡散燃焼が開始される際、一つの気筒においては、少なくとも一つの排気バルブの最大リフト量が、同気筒における他の排気バルブの最大リフト量よりも大とされる。このことから、同気筒の燃焼室からの排気の流出量は、各排気バルブ毎に異なるものなる。従って、燃焼室からの排気の流出を的確に偏った状態とすることができ、燃焼室内の排気の流れに関して、残存空気を燃焼室中央側に流す上で好適な乱れを生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のバルブ特性制御装置が適用されるエンジン全体を示す略図。
【図2】(a)〜(c)は、エンジン温度が低いときの筒内圧、及び熱発生率の推移、並びに排気バルブのバルブタイミング制御態様を示すタイミングチャート。
【図3】エンジン温度が低いときの冷却水温に対するスモーク発生量の推移を示すグラフ。
【図4】最終バルブタイミングV/Tfin の算出手順を示すフローチャート。
【図5】(a)及び(b)は、エンジン低温時及びエンジン非低温時におけるエンジン回転速度及びエンジン負荷の変化に対する基本バルブタイミングV/Tbaseの変化を示すグラフ。
【図6】エンジン回転速度及び冷却水温の変化に対するバルブタイミング補正量V/Ttempの変化を示すグラフ。
【図7】エンジン回転速度及び冷却水温の変化に対する最終バルブタイミングV/Tfin の変化を示すグラフ。
【図8】第2実施形態のバルブ特性可変機構の駆動に伴う排気バルブのバルブ特性の変化態様を示すグラフ。
【図9】(a)〜(c)は、エンジン温度が低いときの筒内圧、及び熱発生率の推移、並びに排気バルブの特性制御態様を示すタイミングチャート。
【図10】第3実施形態のバルブ特性可変機構の駆動に伴う排気バルブのバルブ特性の変化態様を示すグラフ。
【図11】(a)〜(c)は、エンジン温度が低いときの筒内圧、及び熱発生率の推移、並びに排気バルブのバルブ特性の制御態様を示すタイミングチャート。
【図12】第4実施形態の排気バルブ及び燃焼室を示す略図。
【図13】燃焼室内に生じる排気の流れの乱れを示す略図。
【図14】(a)〜(d)は、エンジン温度が低いときの筒内圧、及び熱発生率の推移、並びに排気バルブ21a,21bのバルブ特性の制御態様を示すタイミングチャート。
【図15】(a)及び(b)は、排気バルブ21a,21bのバルブ特性の制御態様の他の例を示すタイミングチャート。
【図16】(a)及び(b)は、排気バルブ21a,21bのバルブ特性の制御態様の他の例を示すタイミングチャート。
【図17】(a)及び(b)は、排気バルブ21a,21bのバルブ特性の制御態様の他の例を示すタイミングチャート。
【図18】(a)及び(b)は、排気バルブ21a,21bのバルブ特性の制御態様の他の例を示すタイミングチャート。
【図19】(a)及び(b)は、排気バルブ21a,21bのバルブ特性の制御態様の他の例を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
1…エンジン、2…吸気通路、3…燃焼室、4…燃料噴射弁、5…点火プラグ、6…ピストン、7…排気通路、8…コネクティングロッド、9…クランクシャフト、10…クランクポジションセンサ、11…スロットルバルブ、12…バキュームセンサ、13…アクセルペダル、14…アクセルポジションセンサ、15…スロットルポジションセンサ、16…水温センサ、20…吸気バルブ、21,21a,21b…排気バルブ、22…吸気カムシャフト、23…排気カムシャフト、24…カムポジションセンサ、25…バルブ特性可変機構、35…電子制御装置(制御手段)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関のバルブ特性制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用エンジン等の内燃機関においては、冷えた状態からの始動時など機関温度が低いとき、燃焼室内に供給された燃料の揮発性が低下していることから、燃料の一部が気化しきらずに液状のままとなる。従って、燃焼室内に供給された燃料のうち、一部は気化して空気と混合された状態になるものの、それ以外の燃料はピストンの頂面やシリンダの内壁など燃焼室の内面に液状のまま付着することとなる。
【0003】
このような状況下での燃焼室内の燃料の燃焼としては、まず気化した燃料が予め空気と混合された状態で燃焼する予混合燃焼が行われ、その後に燃焼室の内面に付着した液状燃料が上記予混合燃焼時の燃焼熱等によって気化して燃焼する拡散燃焼が行われる。ただし、この拡散燃焼では、液状燃料が気化して燃焼するものであるため、気化した燃料が燃焼室内の空気とあまり混合されずに燃焼が行われ、酸素不足の状態での燃焼となって排気中に多量のスモークが発生することは避けられない。
【0004】
このため、冷えた状態からの機関始動時などには、燃焼室の内面にできる限り液状燃料を付着させないよう燃料噴射を行うことが考えられている。例えば、特許文献1に示されるような筒内噴射式の内燃機関においては、冷えた状態からの機関始動時に吸気行程噴射が行われる際の燃料噴射時期を遅角補正するようにしている。この場合、燃料噴射時期の遅角補正により、ピストンが燃料噴射弁から離れた状態で燃料噴射が行われることから、噴射燃料がピストンの頂面に当たりにくくなる。このため、同頂面に付着する液状燃料の量が少なくなり、上述した拡散燃焼及びスモークの発生を抑制することが可能になる。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−176562公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、燃料噴射時期の遅角補正など燃料噴射を調節することによって、燃焼室の内面に付着する液状燃料の量を少なくして拡散燃焼及びスモークの発生を抑制することが可能にはなる。しかし、燃料噴射時期の遅角補正など燃料噴射の調節は、燃焼に与える影響も大きいことから、燃料噴射時期を大幅に遅角させるなどの燃料噴射の大幅な調整は困難である。従って、例えば極低温での機関始動時など多量の液状燃料の付着が生じる状況のもとでは、燃料噴射時期の遅角補正など燃料噴射の調節によっては液状燃料の付着を抑制しきれず、拡散燃焼及びスモークの発生を効果的に抑制することが困難になる。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、燃焼室の内面への液状燃料の付着が多くなる機関低温時に、スモーク発生を効果的に抑制することのできる内燃機関のバルブ特性制御装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、排気バルブのバルブ特性を可変とするバルブ特性可変機構を備え、機関温度が低いときに燃焼室内で、気化燃料が予め空気と混合された状態で燃焼する予混合燃焼から、前記燃焼室の内面に付着した液状燃料が気化して燃焼する拡散燃焼への変化が生じる内燃機関のバルブ特性制御装置において、機関温度が低いとき、前記排気バルブの開弁時期が前記拡散燃焼の開始時期に近づくよう、前記バルブ特性可変機構を制御する制御手段を備えた。
【0009】
機関温度が低いときに燃焼室内で予混合燃焼から拡散燃焼に移行する際、排気バルブが開弁して燃焼室内の温度や圧力が低下させられ、燃焼室内で消炎が図られることから、拡散燃焼が行われるとしてもその実行期間は極めて短いものになる。従って、機関低温時という燃焼室の内面への液状燃料の付着が多くなる状況であったとしても、スモーク発生の原因となる拡散燃焼の実行期間が極めて短くなるため、同スモークの発生を効果的に抑制することができる。
【0010】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記制御手段は、前記排気バルブの開弁時期を進角させて前記拡散燃焼の開始時に近づけるものであって、スモーク発生量が許容値未満となる程度まで前記排気バルブの開弁時期を進角させるものとした。
【0011】
スモーク発生量については、排気バルブを開弁時期を進角させて拡散燃焼の開始時期に近づけ、同拡散燃焼の実行期間を短くするほど少なくなる。上記構成によれば、排気バルブの開弁時期の進角によってスモーク発生量を的確に許容値未満に抑制し、同スモークの発生が問題になるのを回避することができる。
【0012】
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の発明において、前記制御手段は、前記排気バルブの開弁時期を進角させて前記拡散燃焼の開始時期に近づけるものであって、機関出力の低下量が許容値以上にならないよう前記排気バルブの開弁時期を進角させるものとした。
【0013】
排気バルブの開弁時期が進角しすぎて拡散燃焼の開始よりも前になると、機関出力の発生に寄与する予混合燃焼中に排気バルブが開弁して消炎が図られることから、機関出力の低下を招くことになる。上記構成によれば、排気バルブの開弁時期を進角させたとしても、機関出力の低下量が許容値以上にはならないため、同機関出力の低下が問題になるのを回避することができる。
【0014】
請求項4記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記制御手段は、機関回転速度及び機関温度に基づき、前記排気バルブの開弁時期が前記拡散燃焼の開始時期に近づくよう、前記排気バルブの開弁時期を制御するものとした。
【0015】
拡散燃焼の開始時期は機関回転速度や機関温度に基づき変化する。即ち、予混合燃焼の実行期間を一定とすると、機関回転速度が低くなるほどピストンが上死点から下死点に至るまでの期間が長くなり、同期間における予混合燃焼の占める割合が小となるため、予混合燃焼後に開始される拡散燃焼の開始時期が早まるようになる。また、機関温度が高くなるほど予混合燃焼の燃焼速度が速くなって同予混合燃焼の実行期間が短くなり、拡散燃焼の開始時期が早まるようになる。上記構成によれば、拡散燃焼の開始時期に影響を及ぼす機関回転速度及び機関温度に基づき排気バルブの開弁時期を制御することで、排気バルブの開弁時期を的確に拡散燃焼の開始時期に近づけることができる。
【0016】
請求項5記載の発明では、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記制御手段は、機関温度が低いとき、前記排気バルブの最大リフト量が大きくなるよう、前記バルブ特性可変機構を制御するものとした。
【0017】
拡散燃焼が開始される際の排気バルブの開弁により燃焼室内の温度や圧力が低下させられるが、これらの低下傾向が排気バルブの最大リフト量を大とすることで急なものとなる。従って、拡散燃焼が開始される際、的確に燃焼室内の消炎を行ってスモーク発生の原因となる拡散燃焼が行われないようにし、スモークの発生を一層効果的に抑制することができる。
【0018】
請求項6記載の発明では、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記内燃機関は、一つの気筒につき排気バルブを複数備えるものであって、前記制御手段は、機関温度が低いとき、一つの気筒における少なくとも一つの排気バルブのバルブ特性が、同気筒における他の排気バルブのバルブ特性とは異なるものとなるよう、前記バルブ特性可変機構を制御するものとした。
【0019】
拡散燃焼が開始される際の排気バルブの開弁により燃焼室内の消炎が図られるが、排気バルブの開弁開始から消炎完了までの間は拡散燃焼が続けられることになる。このとき、一つの気筒における各排気バルブのバルブ特性が異なるものとされることから、燃焼室から排気バルブ周りを通じて外部に流出する排気の量が各排気バルブ毎に異なるものとなる。その結果、燃焼室からの排気の流出が偏った状態で排出されることになり、燃焼室内での排気の流れに乱れが生じる。ピストン及びシリンダライナの壁面付近など燃焼室の内面付近には燃焼に寄与しない空気が残存するが、この空気が上記排気の流れの乱れによって燃焼室の中央側に流され、上述した消炎完了までの燃料の燃焼に利用されることとなる。従って、消炎完了までの燃料の燃焼が空気と混合された状態で行われ、その燃焼が行われるときのスモーク発生を低減することができる。
【0020】
請求項7記載の発明では、請求項6記載の発明において、前記制御手段は、機関温度が低いとき、一つの気筒における少なくとも一つの排気バルブの開弁時期が前記拡散燃焼の開始時期に近づくよう、且つ同気筒における他の排気バルブが閉弁状態に維持されるよう、前記バルブ特性可変機構を制御するものとした。
【0021】
拡散燃焼が開始される際、一つの気筒においては、少なくとも一つの排気バルブが開弁されて燃焼室内の消炎が図られる。また、同気筒における他の排気バルブは閉弁状態に維持されることから、同気筒の燃焼室からの排気の流出は上記開弁された排気バルブ周りのみから行われることとなる。このように一つの気筒における各排気バルブのバルブ特性を大きく異ならせることで、燃焼室からの排気の流出を的確に偏った状態とすることができ、燃焼室内の排気の流れに、上述した残存空気を燃焼室中央側に流す上で好適な乱れを生じさせることができるようになる。
【0022】
請求項8記載の発明では、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、前記内燃機関は、前記燃焼室内に直接燃料を噴射供給する筒内噴射式の内燃機関であることを要旨とした。
【0023】
筒内噴射式の内燃機関においては、機関温度が低いとき、燃焼室内に噴射された燃料が液状のままピストン頂面やシリンダ内壁に付着し易く、スモーク発生の原因となる拡散燃焼が生じ易い。こうした拡散燃焼の発生を排気バルブの開弁時期の制御によって抑制することができるため、筒内噴射式の内燃機関においては機関低温時のスモーク発生の抑制を一層効果的に行うことができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
以下、本発明を自動車用の筒内噴射火花点火式エンジンに適用した第1実施形態を図1〜図7に従って説明する。
【0025】
図1に示されるエンジン1においては、吸気通路2から燃焼室3へと吸入される空気と、燃料噴射弁4から燃焼室3内に噴射供給される燃料とからなる混合気に対し、点火プラグ5による点火が行われる。そして、この点火により燃焼室3内の混合気が燃焼すると、そのときの燃焼エネルギによりピストン6が往復移動する。このピストン6の往復移動は、コネクティングロッド8によってエンジン1の出力軸であるクランクシャフト9の回転へと変換される。
【0026】
エンジン1において、吸気通路2と燃焼室3との間は吸気バルブ20の開閉動作によって連通・遮断され、排気通路7と燃焼室3との間は排気バルブ21の開閉動作によって連通・遮断される。そして、吸気バルブ20及び排気バルブ21は、クランクシャフト9の回転が伝達される吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト23の回転に伴い、それらシャフト22,23の吸気カム及び排気カムに押されて開閉動作する。
【0027】
また、エンジン1には、排気バルブ21のバルブ特性を可変とするバルブ特性可変機構25が設けられている。このバルブ特性可変機構25は、クランクシャフト9の回転に対する排気カムシャフト23の相対回転位相を変更することで、排気バルブ21のバルブ特性としてバルブタイミング(開閉タイミング)を変更するものである。そして、このバルブ特性可変機構25を作動させ、排気バルブ21のバルブタイミングを進角側又は遅角側に移行させることにより、排気バルブ21の開弁時期及び閉弁時期が変化するようになる。
【0028】
次に、本実施形態におけるバルブ特性制御装置の電気的構成を説明する。
このバルブ特性制御装置は、エンジン1を運転制御すべく自動車に搭載された電子制御装置35を備えている。電子制御装置35は、燃料噴射弁4の駆動を通じての燃料噴射制御、及びバルブ特性可変機構25の駆動を通じての排気バルブ21のバルブタイミング制御を行うとともに、吸気通路2に設けられたスロットルバルブ11の駆動を通じてのスロットル開度制御も行う。また、電子制御装置35には、以下に示される各種センサからの検出信号が入力される。
【0029】
・クランクシャフト9の回転に対応した信号を出力するクランクポジションセンサ10。
・排気カムシャフト23の回転位置を検出するためのカムポジションセンサ24。
【0030】
・自動車の運転者によって踏み込み操作されるアクセルペダル13の踏み込み量(アクセル踏込量)を検出するアクセルポジションセンサ14。
・スロットルバルブ11の開度(スロットル開度)を検出するスロットルポジションセンサ15。
【0031】
・吸気通路2におけるスロットルバルブ11よりも下流側の圧力(吸気圧)を検出するバキュームセンサ12。
・エンジン1の冷却水の温度を検出する水温センサ16。
【0032】
ところで、エンジン1においては、冷えた状態からの始動時などエンジン温度が低いとき、燃焼室3に供給された燃料の揮発性が低下していることから、燃料の一部が気化しきらずに液状のままピストン6の頂面やシリンダの内壁など燃焼室3の内面に付着する。特に、筒内噴射式のエンジン1においては、燃焼室3に噴射された燃料がピストン6の頂面やシリンダの内壁に当たるため、それらの箇所に液状燃料が付着し易くなる。このような状況下での燃焼室3内での燃料の燃焼について、図2のタイミングチャートを併せ参照して説明する。
【0033】
点火プラグ5による点火時点において、燃焼室3内には気化して空気と混合された燃料と燃焼室3の内面に付着した液状燃料とが存在しており、上記点火に伴い空気と混合された状態の気化燃料が最初に燃焼する。この燃焼は、気化した燃料が予め空気と混合された状態で燃焼する予混合燃焼であって、必要量の酸素が燃焼に用いられるために酸素不足での燃料の燃焼によるスモークの発生は少ない。こうした予混合燃焼によって、燃焼室3内の圧力(筒内圧)が図2(a)に示されるように急激に上昇するとともに、燃焼室3内での熱発生率が図2(b)に示されるように筒内圧に対応して上昇することとなる。
【0034】
予混合燃焼が進むと、筒内圧がピークを越えて低下し始め、それに対応して燃焼室3内での熱発生率も低下する。そして、予め空気と混合されていた気化燃料が燃焼しきると、燃焼室3内での熱発生率が最低値に達して予混合燃焼が終了する。予混合燃焼が行われているときには同燃焼時の熱によって燃焼室3の内面に付着している液状燃料が徐々に気化してゆくが、予混合燃焼が終了したときには当該液状燃料が気化して燃焼する拡散燃焼へと移行する。この拡散燃焼では、気化した燃料が燃焼室3内の空気とあまり混合されずに燃焼が行われ、酸素不足の状態での燃焼となって図3に破線で示されるように排気中に多量のスモークが発生することとなる。
【0035】
本実施形態では、このように多量のスモークが発生するのを抑制すべく、冷えた状態でのエンジン1の始動開始から所定時間が経過するまでの間は、排気バルブ21の開弁時期が拡散燃焼の開始時期に近づくよう、排気バルブ21のバルブタイミングを制御する。具体的には、エンジン1が冷えた状態にあるときの通常の排気バルブ21のバルブタイミングを図2(c)に破線で示される状態とすると、上記所定期間中は排気バルブ21のバルブタイミングが破線から実線で示される状態へと進角側に制御される。
【0036】
冷えた状態でのエンジン1の始動直後には、燃焼室3の内壁に液状燃料が付着していることから予混合燃焼の後に拡散燃焼が行われるが、上記排気バルブ21のバルブタイミング制御により拡散燃焼が抑制されるようになる。即ち、予混合燃料から拡散燃焼への移行の際、上記バルブタイミング制御により排気バルブ21が開弁して燃焼室3内の温度や圧力が低下させられ、燃焼室3内で消炎が図られることから、拡散燃焼が行われるとしてもその実行期間は極めて短いものになる。このようにスモーク発生の原因となる拡散燃焼の実行期間が極めて短くなるため、同スモークの発生を例えば図3に破線で示される状態から実線で示される状態へと効果的に抑制することができる。
【0037】
次に、排気バルブ21のバルブタイミング制御に用いられる最終バルブタイミングV/Tfin の算出手順について、最終バルブタイミング算出ルーチンを示す図4のフローチャートを参照して説明する。この最終バルブタイミング算出ルーチンは、電子制御装置35を通じて例えば所定クランク角毎の角度割り込みにて実行される。
【0038】
最終バルブタイミング算出ルーチンにおいては、まずエンジン温度に対応した値となるエンジン1の冷却水温が所定値(例えば50℃)未満であるか否か(S101)、即ち燃焼が安定しにくくなるほど冷却水温が低い値であるか否かが判断される。
【0039】
ここで、肯定判定であればエンジン低温時に用いられる最終バルブタイミングV/Tfin の算出処理が行われ(S102〜S104,S106,S107)、否定判定であればエンジン非低温時に用いられる最終バルブタイミングV/Tfin の算出処理が行われる(S105〜S107)。こうして算出された最終バルブタイミングV/Tfin に基づきバルブ特性可変機構25が駆動され、排気バルブ21のバルブタイミングが制御されるようになる。
【0040】
エンジン非低温時に用いられる最終バルブタイミングV/Tfin の算出処理(S105〜S107)では、まずエンジン回転速度及びエンジン負荷に基づき基本バルブタイミングV/Tbaseが算出される(S105)。この基本バルブタイミングV/Tbaseは、エンジン回転速度及びエンジン負荷に応じた最適な排気バルブ21のバルブタイミングの理論上の値であって、エンジン回転速度及びエンジン負荷に応じて図5(a)に示されるように変化するようになる。なお、エンジン回転速度はクランクポジションセンサの検出信号から求められ、エンジン負荷はエンジン1の吸入空気量に関係するパラメータ及び上記エンジン回転速度に基づき求められる。この吸入空気量に関係するパラメータとしては、例えばエンジン1の吸気圧、スロットルバルブ11の開度、及びアクセルペダル13の踏込量等があげられる。
【0041】
続いてバルブタイミング補正量V/Ttempが「0」に設定される(S106)。このバルブタイミング補正量V/Ttempは、エンジン低温時であって燃焼室3の内面に液状燃料が付着するときに排気バルブ21のバルブタイミングを進角側に補正するためのものである。そして、バルブタイミング補正量V/Ttemp及び上記基本バルブタイミングV/Tbase等に基づき最終バルブタイミングV/Tfin が算出される(S107)。当該最終バルブタイミングV/Tfin に基づきバルブ特性可変機構25が駆動されて排気バルブ21のバルブタイミングが制御されるが、この場合はバルブタイミング補正量V/Ttempが「0」であるため、上記のようにバルブタイミングが進角側に補正されることはない。
【0042】
一方、エンジン低温時に用いられる最終バルブタイミングV/Tfin の算出処理(S102〜S104,S106,S107)では、まず基本バルブタイミングV/Tbaseがエンジン回転速度やエンジン負荷に関係なく、図5(b)に示されるように所定の一定値として算出される(S102)。続いてエンジン1の始動開始から所定時間以内であるか否かが判断される(S103)。この所定時間としては、例えばエンジン始動時に燃焼室3の内面に付着した液状燃料がエンジン1の温度上昇に伴い気化しきるのに必要な時間に設定される。
【0043】
そして、ステップS103で否定判定がなされた場合、燃焼室3の内面に付着した液状燃料が気化しきった状態になることから、燃焼室3の内面に液状燃料が付着していることはなく、予混合燃焼の後に拡散燃焼が行われることもない。このため、バルブタイミング補正量V/Ttempは「0」に設定される(S106)。その後、最終バルブタイミングV/Tfin の算出が行われ(S107)、同最終バルブタイミングV/Tfin に基づき排気バルブ21のバルブタイミングが制御されるが、このときに排気バルブ21のバルブタイミングがバルブタイミング補正量V/Ttempによって進角側に補正されることはない。
【0044】
また、ステップS103で肯定判定がなされた場合、燃焼室3の内面に液状燃料が付着した状態となることから、予混合燃焼の後に拡散燃焼が行われることとなる。この場合、冷却水温及びエンジン回転速度に基づきバルブタイミング補正量V/Ttempが排気バルブ21のバルブタイミングを進角側に補正する値として算出される(S104)。その後、最終バルブタイミングV/Tfin の算出が行われ(S107)、同最終バルブタイミングV/Tfin に基づき排気バルブ21のバルブタイミングが制御される。このときには排気バルブ21のバルブタイミングがバルブタイミング補正量V/Ttempによって進角側に補正され、排気バルブ21の開弁時期が図2(c)に実線で示されるように拡散燃焼の開始時期に近づけられる。
【0045】
このように排気バルブ21の開弁時期を拡散燃焼の開始時期に近づけることにより、予混合燃焼から拡散燃焼に移行する際、排気バルブ21が開弁して燃焼室3内の温度や圧力が低下させられ、燃焼室3内での消炎が図られることから、拡散燃焼が行われるとしてもその実行期間が極めて短くなる。従って、排気バルブ21の開弁時期を進角させて拡散燃焼の開始時期に近づけるほど、拡散燃焼の実行期間が短くなってスモークの発生を抑制する上では有利である。ただし、排気バルブ21の開弁時期を進角させすぎて予混合燃焼中に排気バルブ21が開弁すると、予混合燃焼中に消炎がなされてエンジン出力が低下してしまう。
【0046】
上記バルブタイミング補正量V/Ttempは、スモーク発生量が許容値未満となるよう、且つエンジン出力の低下量が許容値以上にならないよう、排気バルブ21の開弁時期を拡散燃焼の開始時期に近づけるべく、排気バルブ21のバルブタイミングを進角させる値をとる。こうしたバルブタイミング補正量V/Ttempは、図6に示されるように、冷却水温一定の条件下ではエンジン回転速度が低くなるほど、またエンジン回転速度一定の条件下では冷却水温が高くなるほど、排気バルブ21のバルブタイミングを進角側に補正する値になる。上記のようにエンジン回転速度及び冷却水温に応じてバルブタイミング補正量V/Ttempを可変とするのは、エンジン回転速度及び冷却水温に応じて拡散燃焼の開始時期が変化するためである。
【0047】
即ち、予混合燃焼の実行期間を一定とすると、エンジン回転速度が低くなるほどピストン6が上死点から下死点に至るまでの期間が長くなり、同期間における予混合燃焼の占める割合が小となるため、予混合燃焼後に開始される拡散燃焼の開始時期が早まるようになる。また、冷却水温が高くなるほど予混合燃焼の燃焼速度が速くなって同予混合燃焼の実行期間が短くなり、拡散燃焼の開始時期が早まるようになる。以上のようなエンジン回転速度及び冷却水温の変化に伴う拡散燃焼の開始時期の変化に対応して、排気バルブ21の開弁時期が変化するようエンジン回転速度及び冷却水温に応じてバルブタイミング補正量V/Ttempが可変とされる。
【0048】
なお、バルブタイミング補正量V/Ttempが排気バルブ21のバルブタイミングを進角させる値をとるのは、エンジン回転速度一定のもとでは冷却水温が例えば0℃〜10℃などの低温から極低温のときであり、それよりも高温のときには上記バルブタイミングを進角させることのない値、即ち「0」になる。これは、拡散燃焼の原因となる燃焼室3の内面への液状燃料の付着が上記のような冷却水温が極低温のときに生じ、そのようなときに的確に拡散燃焼を抑制すべく排気バルブ21のバルブタイミングを進角側に補正するためである。
【0049】
このバルブタイミング補正量V/Ttemp等に基づき算出される最終バルブタイミングV/Tfin は、エンジン回転速度及び冷却水温に応じて図7に示されるように変化する。
【0050】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)エンジン低温時であってエンジン始動開始から、燃焼室3の内面に液状燃料が付着した状態になる所定期間が経過するまでの間は、排気バルブ21の開弁時期が拡散燃焼の開始時期に近づけられる。このため、燃焼室3内で予混合燃焼から拡散燃焼に移行する際、排気バルブ21が開弁して燃焼室3内の温度や圧力が低下させられ、燃焼室3内で消炎が図られることから、拡散燃焼が行われるとしてもその実行期間は極めて短いものとなる。従って、燃焼室3の内面に液状燃料が付着するエンジン低温始動時に、スモーク発生の原因となる拡散燃焼の実行期間が極めて短くなるため、同スモークの発生を効果的に抑制することができる。
【0051】
(2)上記スモークの発生量については、排気バルブ21の開弁時期を進角させて拡散燃焼の開始時期に近づけ、拡散燃焼の実行期間を短くするほど少なくなる。ただし、排気バルブ21の開弁時期を進角させすぎて排気バルブ21の開弁時期が拡散燃焼の開始時期よりも早くなると、予混合燃焼で消炎が図られてエンジン出力が低下することとなる。上記排気バルブ21の開弁時期の進角については、当該開弁時期が拡散燃焼の開始時期に対しスモーク発生量が許容値未満になる程度まで、且つエンジン出力の低下量が許容値以上にならない程度に近づくよう行われる。従って、上記のように排気バルブ21の開弁時期を進角させるに際し、スモークの発生やエンジン出力の低下が問題になるのを回避することができる。
【0052】
(3)拡散燃焼の開始時期はエンジン回転速度や冷却水温に基づき変化する。即ち、予混合燃焼の実行期間を一定とすると、エンジン回転速度が低くなるほどピストン6が上死点から下死点に至るまでの期間が長くなり、同期間における予混合燃焼の占める割合が小となるため、予混合燃焼後に開始される拡散燃焼の開始時期が早まるようになる。また、冷却水温が高くなるほど予混合燃焼の燃焼速度が速くなって同予混合燃焼の実行期間が短くなり、拡散燃焼の開始時期が早まるようになる。以上のようなエンジン回転速度及び冷却水温の変化に伴う拡散燃焼の開始時期の変化に対応して、排気バルブ21の開弁時期が変化するようエンジン回転速度及び冷却水温に応じてバルブタイミング補正量V/Ttempが可変とされる。このため、排気バルブ21の開弁時期を的確に拡散燃焼の開始時期に近づけることができる。
【0053】
(4)筒内噴射式のエンジン1においては、燃焼室3に噴射された燃料がピストン6の頂面やシリンダの内壁に当たるため、それらの箇所に液状燃料が付着し易く、スモーク発生の原因となる拡散燃焼が生じ易い。こうした拡散燃焼の発生を排気バルブ21のバルブタイミング進角制御、即ち開弁時期の進角制御によって抑制することができるため、筒内噴射式のエンジン1においてはエンジン低温時のスモーク発生の抑制を一層効果的に行うことができる。
【0054】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図8及び図9に従って説明する。
この実施形態では、排気バルブ21のバルブ特性として最大リフト量及び開弁期間を可変とするバルブ特性可変機構25が設けられている。こうしたバルブ特性可変機構25としては、例えば、排気カムのカムプロフィールを排気カムシャフト23の軸線方向に連続的に変化するように形成し、同排気カムを排気カムシャフト23の軸線方向に変位させるものを採用することができる。
【0055】
図8は、本実施形態のバルブ特性可変機構25の駆動による排気バルブのバルブ特性、即ち最大リフト量及び開弁期間の変化態様を示すものである。図中の実線はクランク角に対する排気バルブのリフト量の変化態様を示しており、その変化態様はバルブ特性可変機構25の駆動によって図中最も上側のものと図中最も下側のものとの間で変化する。この図から分かるように、排気バルブ21の最大リフト量及び開弁期間が大となるようバルブ特性可変機構25を駆動することにより、排気バルブ21の開弁時期が進角側に変化するようになる。
【0056】
電子制御装置35は、冷えた状態でのエンジン始動開始から所定期間が経過するまでの間は、排気バルブ21の開弁時期が進角して拡散燃焼の開始時期に近づくよう、排気バルブ21の最大リフト量及び開弁期間が大となる側にバルブ特性可変機構25を駆動制御する。こうした排気バルブ21のバルブ特性の制御量については、エンジン回転速度及び冷却水温に基づき可変とされ、排気バルブ21の開弁時期が拡散燃焼の開始時期に対し、スモーク発生量を許容値未満とすることが可能で、且つエンジン出力の低下量が許容値以上にならない程度まで、近づくような値とされる。
【0057】
次に、冷えた状態からのエンジン始動時といった燃焼室3の内面に液状燃料が付着する状況下での燃焼室3内での燃料の燃焼、及びその際の排気バルブ21のバルブ特性制御について、図9のタイミングチャートを参照して説明する。
【0058】
点火プラグ5による点火に伴い最初に予混合燃焼が行われ、筒内圧が図9(a)に示されるように急激に上昇するとともに、燃焼室3内での熱発生率が図9(b)に示されるように筒内圧に対応して上昇する。予混合燃焼が進むと、筒内圧がピークを越えて低下し始め、それに対応して燃焼室3内での熱発生率も低下する。そして、予め空気と混合されていた気化燃料が燃焼しきると、燃焼室3内での熱発生率が最低値に達して予混合燃焼が終了し、拡散燃焼へと移行することとなる。
【0059】
こうした予混合燃焼から拡散燃焼への移行の際、排気バルブ21の最大リフト量及び開弁期間が図9(c)に破線で示される状態から実線で示される状態へと変化し、排気バルブ21の開弁時期が進角して拡散燃焼の開始時期に近づけられる。この排気バルブ21のバルブ特性制御により排気バルブ21が開弁して燃焼室3内の温度や圧力が低下させられ、燃焼室3内で消炎が図られることから、拡散燃焼が行われるとしてもその実行期間は極めて短いものになる。このようにスモーク発生の原因となる拡散燃焼の実行期間が極めて短くなるため、同スモークの発生を効果的に抑制することができる。
【0060】
本実施形態によれば、第1実施形態に記載した(1)〜(4)と同等の効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(5)予混合燃焼から拡散燃焼への移行の際、拡散燃焼の開始時期に近付くよう排気バルブ21の開弁時期が進角させられるが、それに加えて排気バルブ21の最大リフト量の拡大も行われる。このように排気バルブ21の最大リフト量を大とすることで、排気バルブ21の開弁による燃焼室3内の温度や圧力の低下傾向が急なものとなり、拡散燃焼が開始される際の消炎を的確に行ってスモーク発生の原因となる拡散燃焼が行われないようにし、スモークの発生を一層効果的に抑制することができる。
【0061】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を図10及び図11に従って説明する。
この実施形態は、第2実施形態において、バルブ特性可変機構25の駆動による排気バルブ21のバルブ特性の変化態様を異ならせたものである。同機構25の駆動による排気バルブ21のバルブ特性、即ち最大リフト量及び開弁期間の変化態様を図10に示す。
【0062】
同図から分かるように、この実施形態においても、排気バルブ21の最大リフト量及び開弁期間が大となるようバルブ特性可変機構25を駆動することにより、排気バルブ21の開弁時期が進角側に変化するようになる。第2実施形態では、排気バルブ21のリフト量が最大となるときのクランク角がバルブ特性可変機構25の駆動に関係なく一定である(図8参照)。これに対し、この実施形態では、排気バルブ21の最大リフト量及び開弁期間が大となるようバルブ特性可変機構25を駆動すると、排気バルブ21のリフト量が最大となるときのクランク角が進角側に変化することとなる。即ち、バルブ特性可変機構25の駆動により、上記のように排気バルブ21のバルブ特性が変化するよう、排気カムのカムプロフィールが設定されている。
【0063】
電子制御装置35は、拡散燃焼の抑制として、排気バルブ21の開弁時期が進角して拡散燃焼の開始時期に近づくよう、排気バルブ21の最大リフト量及び開弁期間が大となる側にバルブ特性可変機構25を駆動制御する。こうした排気バルブ21のバルブ特性の制御量については、エンジン回転速度及び冷却水温に基づき可変とされ、排気バルブ21の開弁時期が拡散燃焼の開始時期に対し、スモーク発生量を許容値未満とすることが可能で、且つエンジン出力の低下量が許容値以上にならない程度まで、近づくような値とされる。
【0064】
次に、冷えた状態からのエンジン始動時といった燃焼室3の内面に液状燃料が付着する状況下での燃焼室3内での燃料の燃焼、及びその際の排気バルブ21のバルブ特性制御について、図11のタイミングチャートを参照して説明する。
【0065】
点火プラグ5による点火に伴い最初に予混合燃焼が行われ、筒内圧が図11(a)に示されるように急激に上昇するとともに、燃焼室3内での熱発生率が図11(b)に示されるように筒内圧に対応して上昇する。予混合燃焼が進むと、筒内圧がピークを越えて低下し始め、それに対応して燃焼室3内での熱発生率も低下する。そして、予め空気と混合されていた気化燃料が燃焼しきると、燃焼室3内での熱発生率が最低値に達して予混合燃焼が終了し、拡散燃焼へと移行することとなる。
【0066】
こうした予混合燃焼から拡散燃焼への移行の際、排気バルブ21の最大リフト量及び開弁期間が図11(c)に破線で示される状態から実線で示される状態へと変化し、排気バルブ21の開弁時期が進角して拡散燃焼の開始時期に近づけられる。この排気バルブ21のバルブ特性制御により排気バルブ21が開弁して燃焼室3内の温度や圧力が低下させられ、燃焼室3内で消炎が図られることから、拡散燃焼が行われるとしてもその実行期間は極めて短いものになる。このようにスモーク発生の原因となる拡散燃焼の実行期間が極めて短くなるため、同スモークの発生を効果的に抑制することができる。
【0067】
この実施形態においても、第2実施形態と同等の効果を得ることができる。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態を図12〜図14に従って説明する。
【0068】
この実施形態では、図12に示されるように、エンジン1の一つの気筒について複数(本実施形態では二つ)の排気バルブ21a,21bが設けられている。また、排気バルブ21a,21bのバルブ特性としてバルブタイミングを可変とし、且つエンジン1の運転中に一方の排気バルブ21bの開弁動作を停止させることの可能なバルブ特性可変機構25が設けられている。こうしたバルブ特性可変機構25としては、例えば第1実施形態のようなクランクシャフト9に対する排気カムシャフト23の相対回転位相を変更する機構と、排気バルブ21bに対する排気カムの押し付け動作が同バルブ21の開閉動作に換えられるのを無効化する機構とを組み合わせたものを採用することができる。
【0069】
電子制御装置35は、拡散燃焼の抑制として、排気バルブ21aのバルブタイミングを進角させて同バルブ21aの開弁時期が拡散燃焼の開始時期に近づくように、且つ排気バルブ21bの開弁動作が停止されるようにバルブ特性可変機構25を駆動制御する。上記排気バルブ21aのバルブイミング制御量については、エンジン回転速度及び冷却水温に基づき可変とされ、排気バルブ21の開弁時期が拡散燃焼の開始時期に対し、スモーク発生量を許容値未満とすることが可能で、且つエンジン出力の低下量が許容値以上にならない程度まで、近づくような値とされる。
【0070】
次に、冷えた状態からのエンジン始動時といった燃焼室3の内面に液状燃料が付着する状況下での燃焼室3内での燃料の燃焼、及びその際の排気バルブ21a,21bのバルブ特性制御について、図14のタイミングチャートを参照して説明する。
【0071】
点火プラグ5による点火に伴い最初に予混合燃焼が行われ、筒内圧が図14(a)に示されるように急激に上昇するとともに、燃焼室3内での熱発生率が図14(b)に示されるように筒内圧に対応して上昇する。予混合燃焼が進むと、筒内圧がピークを越えて低下し始め、それに対応して燃焼室3内での熱発生率も低下する。そして、予め空気と混合されていた気化燃料が燃焼しきると、燃焼室3内での熱発生率が最低値に達して予混合燃焼が終了し、拡散燃焼へと移行することとなる。
【0072】
こうした予混合燃焼から拡散燃焼への移行の際、排気バルブ21aのバルブタイミングが図14(c)に破線で示される状態から実線で示される状態へと変化し、排気バルブ21aの開弁時期が進角して拡散燃焼の開始時期に近づけられる。この排気バルブ21aのバルブタイミング制御により排気バルブ21aが開弁して燃焼室3内の温度や圧力が低下させられ、燃焼室3内で消炎が図られることから、拡散燃焼が行われるとしてもその実行期間は極めて短いものになる。このようにスモーク発生の原因となる拡散燃焼の実行期間が極めて短くなるため、同スモークの発生を効果的に抑制することができる。
【0073】
一方、排気バルブ21aが上記のようにバルブタイミング制御されるのに対し、排気バルブ21bについては、その開弁動作が停止されて図14(d)に破線で示される状態から太い実線で示される状態へと変化する。従って、このときには排気バルブ21aだけが開弁して排気バルブ21bが閉弁状態に維持され、排気バルブ21aのバルブ特性と排気バルブ21bのバルブ特性とが異なるものになる。この状態にあっては、燃焼室3内からの排気の流出は開弁された排気バルブ21a周りのみから行われるため、燃焼室3から排気が偏った状態で流出し、燃焼室3内での排気の流れに図12及び図13に破線の矢印で示されるような乱れが生じる。
【0074】
ピストン6及びシリンダライナの壁面付近など燃焼室3の内面には、燃焼に寄与しない空気が残存するが、この空気が上記排気の流れの乱れによって燃焼室3の中央に流され、燃料の燃焼に用いられることとなる。
【0075】
この実施形態によれば、第1実施形態に記載した(1)〜(4)と同等の効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(6)拡散燃焼が開始される際の排気バルブ21aの開弁により燃焼室3内の消炎が図られるが、排気バルブ21aの開弁開始から消炎までの間は拡散燃焼が続けられることになる。このとき、上述した燃焼室3内の排気の流れの乱れにより、ピストン6及びシリンダライナの壁面付近など燃焼室3の内面に残存した燃焼に寄与していない空気が燃焼室3の中央に流され、上記消炎完了までの燃料の燃焼に利用される。従って、消炎完了までの燃料の燃焼が空気と混合された状態で行われ、その燃焼が行われるときのスモーク発生を低減することができる。
【0076】
(7)燃焼室3内に排気の流れの乱れを生じさせるため、排気バルブ21aを開弁するとともに排気バルブ21bを閉弁状態に維持した。このように排気バルブ21aのバルブ特性と排気バルブ21bのバルブ特性とを大きく異ならせることで、燃焼室3内からの排気の流出を的確に偏った状態とすることができ、燃焼室3内に排気の流れに、上述した残存空気を燃焼室3の中央に流す上で好適な乱れを生じさせることができる。
【0077】
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・第4実施形態において、排気バルブ21aのバルブ特性と排気バルブ21bのバルブ特性とを異ならせる態様としては、例えば図15〜図19に示される態様とすることも考えられる。
【0078】
図15においては、排気バルブ21aのバルブタイミングを図15(a)に破線で示される状態から実線で示される状態へと変化させ、同バルブ21aの開弁時期を拡散燃焼の開始時期に近づけている。また、排気バルブ21bのバルブタイミングを図15(b)に破線で示される状態から実線L1で示される状態、或いは実線L2で示される状態へと変化させ、同バルブ21bの開弁時期を排気バルブ21aの開弁時期よりも遅角させている。この場合、排気バルブ21aが開弁してから排気バルブ21bが開弁するため、排気バルブ21a周りから流出する排気の量と排気バルブ21b周りから流出する排気の量とは異なるものとなる。従って、燃焼室3からの排気の流出を的確に偏った状態とすることができ、燃焼室3内の排気の流れに、上述した残存空気を燃焼室3の中央に流す上で好適な乱れを生じさせることができる。なお、排気バルブ21aのバルブタイミングと排気バルブ21bのバルブタイミングとを別々に制御するには、例えば排気バルブ21a,21bを電磁力を利用して開閉動作する電磁駆動バルブによって構成し、この電磁駆動バルブをバルブ特性可変機構25とすることが考えられる。
【0079】
図16においては、排気バルブ21aの最大リフト量及び開弁期間を第2実施形態と同じように図16(a)に破線で示される状態から実線で示される状態へと変化させ、同バルブ21aの開弁時期を拡散燃焼の開始時期に近づけている。また、排気バルブ21bを閉弁状態に維持して同バルブ21bのバルブ特性を図16(b)に破線で示される状態から太い実線で示される状態に変化させている。この場合、第4実施形態に記載した(6)及び(7)と同等の効果が得られるようになる。なお、上記のように排気バルブ21a、21bを制御可能なバルブ特性可変機構25としては、第2実施形態の機構と、排気バルブ21bに対する排気カムの押し付け動作が同バルブ21の開閉動作に換えられるのを無効化する機構とを組み合わせたものを採用することが考えられる。また、上記と同じく電磁駆動バルブをバルブ特性可変機構25として採用してもよい。
【0080】
図17においては、排気バルブ21aの最大リフト量及び開弁期間を第2実施形態と同じように図17(a)に破線で示される状態から実線で示される状態へと変化させ、同バルブ21aの開弁時期を拡散燃焼の開始時期に近づけている。また、排気バルブ21bの最大リフト量及び開弁期間を図17(b)に破線で示される状態から実線L3で示される状態、或いは実線L4で示される状態へと変化させ、同バルブ21bの最大リフト量及び開弁期間を排気バルブ21aよりも小としている。この場合、排気バルブ21aの最大リフト量が排気バルブ21bの最大リフト量よりも大とされるため、排気バルブ21a周りから流出する排気の量と排気バルブ21b周りから流出する排気の量とは異なるものとなる。従って、燃焼室3からの排気の流出を的確に偏った状態とすることができ、燃焼室3内の排気の流れに、上述した残存空気を燃焼室3の中央に流す上で好適な乱れを生じさせることができる。なお、バルブ特性可変機構25としては、上記と同じく電磁駆動バルブを採用することができる。
【0081】
図18においては、排気バルブ21aの最大リフト量及び開弁期間を第3実施形態と同じように図18(a)に破線で示される状態から実線で示される状態へと変化させ、同バルブ21aの開弁時期を拡散燃焼の開始時期に近づけている。また、排気バルブ21bを閉弁状態に維持して同バルブ21bのバルブ特性を図18(b)に破線で示される状態から太い実線で示される状態に変化させている。この場合、第4実施形態に記載した(6)及び(7)と同等の効果が得られるようになる。なお、上記のように排気バルブ21a,21bを制御可能なバルブ特性可変機構25としては、第3実施形態の機構と、排気バルブ21bに対する排気カムの押し付け動作が同バルブ21の開閉動作に換えられるのを無効化する機構とを組み合わせたものを採用することが考えられる。また、上記と同じく電磁駆動バルブをバルブ特性可変機構25として採用してもよい。
【0082】
図19においては、排気バルブ21aの最大リフト量及び開弁期間を第3実施形態と同じように図19(a)に破線で示される状態から実線で示される状態へと変化させ、同バルブ21aの開弁時期を拡散燃焼の開始時期に近づけている。また、排気バルブ21bの最大リフト量及び開弁期間を図19(b)に破線で示される状態から実線L5で示される状態、或いは実線L6で示される状態へと変化させ、同バルブ21bの最大リフト量及び開弁期間を排気バルブ21aよりも小としている。この場合、排気バルブ21aの最大リフト量が排気バルブ21bの最大リフト量よりも大とされるため、排気バルブ21a周りから流出する排気の量と排気バルブ21b周りから流出する排気の量とは異なるものとなる。従って、燃焼室3からの排気の流出を的確に偏った状態とすることができ、燃焼室3内の排気の流れに、上述した残存空気を燃焼室3の中央に流す上で好適な乱れを生じさせることができる。なお、バルブ特性可変機構25としては、上記と同じく電磁駆動バルブを採用することができる。
【0083】
・第1〜第4実施形態において、バルブ特性可変機構25として上述した電磁駆動バルブを採用してもよい。
・第2及び第3実施形態において、排気バルブ21の開閉させるためのカムとしてカムプロフィールの異なる複数のカムを設け、排気バルブ21の開閉に寄与するカムを上記複数のカムから選択するタイプのバルブ特性可変機構25を採用してもよい。
【0084】
・上記各実施形態では、エンジン1の温度として冷却水温を用いたが、エンジン1の温度を直接検出し、これを用いてもよい。
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を、その効果とともに以下に記載する。
【0085】
(1)請求項6記載の内燃機関のバルブ特性制御装置において、前記制御手段は、機関温度が低いとき、一つの気筒における少なくとも一つの排気バルブの開弁時期が前記拡散燃焼の開始時期に近づくよう、且つ前記排気バルブの開弁時期に対し同気筒における他の排気バルブの開弁時期が遅角側の時期になるよう、前記バルブ特性可変機構を制御することを特徴とする内燃機関のバルブ特性制御装置。
【0086】
拡散燃焼が開始される際、一つの気筒においては、少なくとも一つの排気バルブの開弁時期が拡散燃焼の開始時期に近づけられ、その排気バルブの開弁時期に対し同気筒の他の排気バルブの開弁時期が遅角側の時期とされる。このことから、同気筒の燃焼室からの排気の流出量は、最初に開弁される排気バルブ周りと後開弁される排気バルブ周りとで異なるものなる。従って、燃焼室からの排気の流出を的確に偏った状態とすることができ、燃焼室内の排気の流れに関して、燃焼室内の残存空気を燃焼室中央側に流す上で好適な乱れを生じさせることができる。
【0087】
(2)請求項6記載の内燃機関のバルブ特性制御装置において、前記制御手段は、機関温度が低いとき、一つの気筒における少なくとも一つの排気バルブの最大リフト量が、同気筒における他の排気バルブの最大リフト量よりも大となるよう、前記バルブ特性可変機構を制御することを特徴とする内燃機関のバルブ特性制御装置。
【0088】
拡散燃焼が開始される際、一つの気筒においては、少なくとも一つの排気バルブの最大リフト量が、同気筒における他の排気バルブの最大リフト量よりも大とされる。このことから、同気筒の燃焼室からの排気の流出量は、各排気バルブ毎に異なるものなる。従って、燃焼室からの排気の流出を的確に偏った状態とすることができ、燃焼室内の排気の流れに関して、残存空気を燃焼室中央側に流す上で好適な乱れを生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のバルブ特性制御装置が適用されるエンジン全体を示す略図。
【図2】(a)〜(c)は、エンジン温度が低いときの筒内圧、及び熱発生率の推移、並びに排気バルブのバルブタイミング制御態様を示すタイミングチャート。
【図3】エンジン温度が低いときの冷却水温に対するスモーク発生量の推移を示すグラフ。
【図4】最終バルブタイミングV/Tfin の算出手順を示すフローチャート。
【図5】(a)及び(b)は、エンジン低温時及びエンジン非低温時におけるエンジン回転速度及びエンジン負荷の変化に対する基本バルブタイミングV/Tbaseの変化を示すグラフ。
【図6】エンジン回転速度及び冷却水温の変化に対するバルブタイミング補正量V/Ttempの変化を示すグラフ。
【図7】エンジン回転速度及び冷却水温の変化に対する最終バルブタイミングV/Tfin の変化を示すグラフ。
【図8】第2実施形態のバルブ特性可変機構の駆動に伴う排気バルブのバルブ特性の変化態様を示すグラフ。
【図9】(a)〜(c)は、エンジン温度が低いときの筒内圧、及び熱発生率の推移、並びに排気バルブの特性制御態様を示すタイミングチャート。
【図10】第3実施形態のバルブ特性可変機構の駆動に伴う排気バルブのバルブ特性の変化態様を示すグラフ。
【図11】(a)〜(c)は、エンジン温度が低いときの筒内圧、及び熱発生率の推移、並びに排気バルブのバルブ特性の制御態様を示すタイミングチャート。
【図12】第4実施形態の排気バルブ及び燃焼室を示す略図。
【図13】燃焼室内に生じる排気の流れの乱れを示す略図。
【図14】(a)〜(d)は、エンジン温度が低いときの筒内圧、及び熱発生率の推移、並びに排気バルブ21a,21bのバルブ特性の制御態様を示すタイミングチャート。
【図15】(a)及び(b)は、排気バルブ21a,21bのバルブ特性の制御態様の他の例を示すタイミングチャート。
【図16】(a)及び(b)は、排気バルブ21a,21bのバルブ特性の制御態様の他の例を示すタイミングチャート。
【図17】(a)及び(b)は、排気バルブ21a,21bのバルブ特性の制御態様の他の例を示すタイミングチャート。
【図18】(a)及び(b)は、排気バルブ21a,21bのバルブ特性の制御態様の他の例を示すタイミングチャート。
【図19】(a)及び(b)は、排気バルブ21a,21bのバルブ特性の制御態様の他の例を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
1…エンジン、2…吸気通路、3…燃焼室、4…燃料噴射弁、5…点火プラグ、6…ピストン、7…排気通路、8…コネクティングロッド、9…クランクシャフト、10…クランクポジションセンサ、11…スロットルバルブ、12…バキュームセンサ、13…アクセルペダル、14…アクセルポジションセンサ、15…スロットルポジションセンサ、16…水温センサ、20…吸気バルブ、21,21a,21b…排気バルブ、22…吸気カムシャフト、23…排気カムシャフト、24…カムポジションセンサ、25…バルブ特性可変機構、35…電子制御装置(制御手段)。
Claims (8)
- 排気バルブのバルブ特性を可変とするバルブ特性可変機構を備え、機関温度が低いときに燃焼室内で、気化燃料が予め空気と混合された状態で燃焼する予混合燃焼から、前記燃焼室の内面に付着した液状燃料が気化して燃焼する拡散燃焼への変化が生じる内燃機関のバルブ特性制御装置において、
機関温度が低いとき、前記排気バルブの開弁時期が前記拡散燃焼の開始時期に近づくよう、前記バルブ特性可変機構を制御する制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関のバルブ特性制御装置。 - 前記制御手段は、前記排気バルブの開弁時期を進角させて前記拡散燃焼の開始時に近づけるものであって、スモーク発生量が許容値未満となる程度まで前記排気バルブの開弁時期を進角させる
請求項1記載の内燃機関のバルブ特性制御装置。 - 前記制御手段は、前記排気バルブの開弁時期を進角させて前記拡散燃焼の開始時期に近づけるものであって、機関出力の低下量が許容値以上にならないよう前記排気バルブの開弁時期を進角させる
請求項1又は2記載の内燃機関のバルブ特性制御装置。 - 前記制御手段は、機関回転速度及び機関温度に基づき、前記排気バルブの開弁時期が前記拡散燃焼の開始時期に近づくよう、前記排気バルブの開弁時期を制御する
請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関のバルブ特性制御装置。 - 前記制御手段は、機関温度が低いとき、前記排気バルブの最大リフト量が大きくなるよう、前記バルブ特性可変機構を制御する
請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関のバルブ特性制御装置。 - 前記内燃機関は、一つの気筒につき排気バルブを複数備えるものであって、
前記制御手段は、機関温度が低いとき、一つの気筒における少なくとも一つの排気バルブのバルブ特性が、同気筒における他の排気バルブのバルブ特性とは異なるものとなるよう、前記バルブ特性可変機構を制御するものである
請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関のバルブ特性制御装置。 - 前記制御手段は、機関温度が低いとき、一つの気筒における少なくとも一つの排気バルブの開弁時期が前記拡散燃焼の開始時期に近づくよう、且つ同気筒における他の排気バルブが閉弁状態に維持されるよう、前記バルブ特性可変機構を制御する
請求項6記載の内燃機関のバルブ特性制御装置。 - 前記内燃機関は、前記燃焼室内に直接燃料を噴射供給する筒内噴射式の内燃機関である
請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関のバルブ特性制御装置。
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Date | Code | Title | Description |
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A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
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