JP2004308203A - 高強度線材の定着治具構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】PC鋼線の表面の軸方向応力を軸方向に広く分散させて、把持される部分のPC鋼線部分の全体として定着効率を高めることができる高強度線材の定着治具構造を提供すること。
【解決手段】2,000MPa以上の高強度PC鋼撚り線18に用いるコーン型の緊張定着治具構造において、分割型雄コーン5のテーパー状外周面の中心軸線Cとのなす角度βを、雌型受け金具17のテーパー状内周面の中心軸線となす角度よりも大き、例えば、0.3度以上0.6度以下の角度で大きくする。また、分割型雄コーン5の内周面に、先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部7と、楔型固定部9とを設けたり、その間に漸次後端側に向かって縮径するテーパー状の傾斜型楔部を設ける。分割型雄コーンの内周面とその周方向分割端面との内隅部を、面取り接続部、円弧状接続部等を介して接続する。
【選択図】 図4
【解決手段】2,000MPa以上の高強度PC鋼撚り線18に用いるコーン型の緊張定着治具構造において、分割型雄コーン5のテーパー状外周面の中心軸線Cとのなす角度βを、雌型受け金具17のテーパー状内周面の中心軸線となす角度よりも大き、例えば、0.3度以上0.6度以下の角度で大きくする。また、分割型雄コーン5の内周面に、先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部7と、楔型固定部9とを設けたり、その間に漸次後端側に向かって縮径するテーパー状の傾斜型楔部を設ける。分割型雄コーンの内周面とその周方向分割端面との内隅部を、面取り接続部、円弧状接続部等を介して接続する。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、PC床版やPC橋梁等の土木分野、あるいはPC梁やPC床等の建築分野において、コンクリートに圧縮力を導入するために使用されるPC鋼材等の高強度線材を定着するための定着治具構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、PC鋼線は、コンクリート部材製作時に、事前に型枠内に配筋し、コンクリート打設後、コンクリートが硬化した後に、緊張し両端を固定することで、コンクリートに圧縮力を与え、外力に対しコンクリートがひび割れ難く、高強度・高耐力なコンクリート部材を実現する目的で使用される。
【0003】
このようなPC鋼線を使用する部材または構造物として、橋梁分野でのPC床版やPC橋梁に多く使用されている。また、建築分野においても、PC梁、PC床等に用いられている。
【0004】
従来、先端部に向かって縮径するように傾斜するテーパー状外周面を有すると共に分割型円筒状内周面に内歯を備えた分割截頭円錐状の分割型テーパー付き雄コーン片(分割型楔片)を周方向に間隔をおいて配置して構成される分割型雄コーンまたは平型のコーンが知られている(例えば、特許文献1〜5参照)。
このような分割型雄コーンとして、図11に示すように、先端部に向かって縮径するように傾斜するテーパー状外周面11および必要に応じスリット12を有すると共に、分割円筒状内周面13に先端部から後端部のほぼ全長に渡って内歯14を有する複数の分割型雄コーン片15aからなる分割型雄コーン(分割型楔)15を使用し、また、図12に示すように、先端部に向かって縮径するように傾斜するテーパー状内周面16を有する雌型受け金具7を使用して、図13に示すように、PC鋼撚り線18を緊張定着する治具22が知られている。
【0005】
この図13に示す形態では、分割型雄コーン15におけるテーパー状外周面11の中心軸線Cとのなす角度αと、雌型受け金具17におけるテーパー状内周面16の中心軸線Cとのなす角度αとは同じ傾斜角であるので、雌型受け金具17に挿通されたPC鋼撚り線18を雌型受け金具17に圧入される分割型雄コーン15により把持した場合、PC鋼撚り線18の拘束力は大きい点では望ましいが、しかし、分割型雄コーン15の先端部で噛み込むように把持し、分割型雄コーン15の中間部から後端部では把持力が弱くなる。
【0006】
さらに説明すると、分割型雄コーン15におけるテーパー状外周面11の中心軸線Cとのなす角度αと、雌型受け金具17におけるテーパー状内周面16の中心軸線Cとのなす角度αとの角度差(A)は、ゼロ度であるので、図10の線図の曲線イで示すように、分割型雄コーン15先端部でPC鋼線表面の軸方向応力が応力集中して一番高くなり、先端部から若干離れると急激にPC鋼線表面の軸方向応力が落ちるようになる。
【0007】
したがって、定着部のPC鋼撚り線18におけるPC鋼線3の軸方向応力は、分割型雄コーン15の軸方向中間部にも内歯14があるにもかかわらず、分割型雄コーン15の挿し込み側の先端部で応力集中が大きくなる形態となっており、この部分では、分割型雄コーン15の先端部内歯14により噛み込み傷が発生しPC鋼線3(またはPC鋼撚り線18)の脆性破断が発生しやすくなる恐れのある形態である。したがって、分割型雄コーン15の軸方向中間部の内歯14でも負担し、PC鋼線3の軸方向応力を分割型雄コーン15の先端部で応力集中することなく、分割型雄コーン15の軸方向に分散させることが望まれる。
【0008】
また、最近は、PC鋼線3を高強度化することで施工本数を少なくし、低コスト、省力化施工が望まれている。しかしながら、高強度のPC鋼線3を用いた場合、前記のような従来の定着治具22では、▲1▼PC鋼線3が絞り切れ(細くなって切れること)が生じないで脆性破断したり、また、▲2▼PC鋼線3の耐疲労性が比較的低いという問題がある。これは、従来の2,000MPa以下の高強度PC鋼撚り線に比べ強度が高いため、より強固にPC鋼撚り線18を、内歯を有する分割型雄コーン(すなわち分割型楔)15により圧着把持する必要があるため生じる問題である。
【0009】
また、図14(b)に示すように、分割型雄コーン15の円筒状内周面13と周方向分割端面(周方向側端面)19との内隅部20が角部21とされていると、PC鋼撚り線18におけるPC鋼線3に、前記の角部21が噛み込み、PC鋼線3に傷23を付けることになり、PC鋼線3が早期に破断する恐れがあり、定着効率が低くなる恐れがある。
【0010】
ここで、定着効率とは、PC鋼線単身の引張破断荷重に対する、定着治具をセットしそれを介して引張試験を行なった際の破断荷重の比で表される。なお、定着効率には、JIS規格強度を用いた場合と、実強度を用いた場合とがある。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−242437号公報
【特許文献2】
特開2001−349001号公報
【特許文献3】
特開2000−202822号公報
【特許文献4】
特開平11−1995号公報
【特許文献5】
特開平11−210227号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来の問題点である、分割型雄コーン先端部において極度な噛み込み把持によるPC鋼線の表面の軸方向応力集中をさけ、分割型雄コーン先端部から中間部にかけてPC鋼撚り線を把持することにより、PC鋼線の表面の軸方向応力を軸方向に広く分散させて、把持される部分のPC鋼撚り線部分の全体として定着効率を高めることができ、また、従来のPC鋼撚り線あるいは超高強度のPC鋼撚り線にも適用することができる高強度線材の定着治具構造を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記の従来の問題点を有利に解決するために、第1発明の高強度線材の定着治具構造においては、PC鋼撚り線に用いるコーン型の緊張定着治具構造において、分割型雄コーンのテーパー状外周面の中心軸線とのなす角度を、雌型受け金具のテーパー状内周面の中心軸線となす角度よりも大きくしたことを特徴とする。
【0014】
また、第2発明の高強度線材の定着治具構造においては、PC鋼撚り線に用いるコーン型の緊張定着治具構造において、分割型雄コーン内周面に、その先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部を有し、かつそれに続くPC鋼撚り線との楔型固定部を有する分割型雄コーンとしたことを特徴とする。
さらに、第3発明の高強度線材の定着治具構造においては、第2発明の定着治具構造において、分割型雄コーン内周面の先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部と、それに続くPC鋼撚り線との楔型固定部との間に、漸次後端側に向かって縮径するテーパー状の傾斜型楔部を有する分割型雄コーンとしたことを特徴とする。
さらにまた、第4発明においては、第1発明の高強度線材の定着治具構造において、分割型雄コーン内周面に、その先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部を有し、かつそれに続くPC鋼撚り線との楔型固定部を有する分割型雄コーンとしたことを特徴とする。
【0015】
なおまた、第5発明においては、第1発明の定着治具構造において、分割型雄コーン内周面に、その先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部を有し、かつそれに続くPC鋼撚り線との楔型固定部を有する分割型雄コーンとし、さらに前記摩擦型固定部と、前記楔型固定部との間に、漸次後端側に向かって縮径するテーパー状の傾斜型楔部を有する分割型雄コーンとしたことを特徴とする。
【0016】
また、第6発明においては、第1発明〜第5発明のいずれかの高強度線材の定着治具構造において、円周方向に複数分割された分割型雄コーンの内周面とその周方向分割端面との内隅部を、面取り接続部、または円弧状接続部を介して接続するようにしたことを特徴とする。
【0017】
また、第7発明では、第1発明〜第6発明のいずれかの高強度線材の定着治具構造において、PC鋼撚り線に用いるコーン型の緊張定着治具構造において、分割型雄コーンのテーパー状外周面の中心軸線とのなす角度を、雌型受け金具におけるテーパー状内周面の中心軸線となす角度よりも、0.3度以上0.6度以下の角度で大きくしたことを特徴とする。
【0018】
また、第8発明においては、第1発明〜第5発明または第7発明のいずれかの定着治具構造において、円周方向に複数分割された分割型雄コーン内周面とその周方向分割端面との内隅部を、前記雄コーン内周面の内歯山部に接線状態で接続すると共に、分割切断面に近づくにしたがって漸次半径方向外側に拡径するように傾斜する傾斜面を介して接続するようにしたことを特徴とする。
【0019】
また、第9発明においては、第1発明〜第8発明の高強度線材の定着治具構造において、前記PC鋼撚り線が2,000MPa以上の高強度PC鋼撚り線であることを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1(a),(b)には、本発明の高強度線材の定着治具構造において使用される分割型雄コーン5の一実施形態が示されている。この分割型雄コーン5は、中空截頭円錐状体を円周方向に2分割(図示の場合)または3分割等の複数に分割された形態のテーパー付きの各分割型雄コーン片6を等角度間隔で配置されて構成され、各分割型雄コーン片6は、先端部に向かって縮径するように傾斜するテーパー状外周面11および必要に応じスリット12を有している。
【0021】
前記分割型雄コーン5のテーパー状外周面11の中心軸線Cとのなす角度βは、これと同心状に配置される後記する雌型受け金具17のテーパー状内周面16の中心軸線Cとなす角度αよりも、大きく設定され、例えば、0.3度以上0.6度以下の範囲で大きく設定されている。
【0022】
前記分割型雄コーン5のテーパー状外周面11の中心軸線Cとのなす角度βと、雌型受け金具17のテーパー状内周面16の中心軸線Cとなす角度αとの角度差(A=β―α)が、0度を超えると分割型雄コーン6の先端部付近におけるPC鋼線3部分の応力集中が緩和される効果がある。しかし、角度差(A=β―α)が、0.3度未満であると、分割型雄コーン6の先端部付近におけるPC鋼線3部分の応力集中の緩和効果が小さいため、好ましくは、角度差A=β―αを0.3度以上に設定するとよい。
【0023】
また、前記分割型雄コーン5のテーパー状外周面11の中心軸線Cとのなす角度βと、雌型受け金具17のテーパー状内周面16の中心軸線Cとなす角度αとの角度差(A=β―α)が、0.6度以上であると、雌型受け金具17のテーパー状内周面16に定着しずらくなるので、実用的には、角度差A=β―αを0.6度以下に設定すると好ましい。
【0024】
図示の形態の分割型雄コーン5では、分割型の円筒状内周面13は、その先端部側の円弧状内周面には、先端部から一定長のPC鋼撚り線18との摩擦型固定部7と、軸方向中間部から後端部にかけて、軸方向に所定ピッチの多数の平行な楔型の歯型の内歯14を有する楔型固定部9とを備えている。なお、楔型固定部とは、楔型の内歯を有して、PC鋼撚り線18に噛み込み圧着する部分を言う。
【0025】
前記の摩擦型固定部7は、断面円弧状で、極率半径が軸方向に一定の内周面で、PC鋼撚り線18の外周面に圧着して、PC鋼撚り線18を摩擦式に圧着把持する部分であり、表面を粗面としない摩擦型固定部7としてもよく、表面にガラス片を固着し粗面とした摩擦型固定部7とすることもできる。このように、摩擦型固定部7を設けると、摩擦型固定部7でもPC鋼撚り線を把持して、楔型固定部9先端部でのPC鋼線表面の軸方向の応力集中を防止することができる。なお、前記の摩擦型固定部7の長さ寸法は、設計により適宜設定される。前記の摩擦型固定部7を設ける場合は、前記分割型雄コーン5のテーパー状外周面11の中心軸線Cとのなす角度βと、雌型受け金具17のテーパー状内周面16の中心軸線Cとなす角度αとの角度差(A=β―α)が前記のようにある場合でも、あるいは角度差(A=β―α)が従来のように0度であっても、分割型雄コーン5先端部でのPC鋼線表面の軸方向の応力集中を防止することができる。
【0026】
前記の楔型固定部9は、PC鋼撚り線18を確実に把持して拘束力の大きな部分であり、この楔型固定部9を構成する内歯14は、内面の円周方向に沿って内径側に突出する山部4と、円周方向に沿って外径側に凹む谷部4cとが軸方向に交互に形成された楔型の内歯14であり、内歯14における山部4を形成する両側の斜面は、先端側の斜面4aが、後端側の斜面4bよりも軸方向に緩傾斜の斜面とされている。
【0027】
前記の円周方向に複数に分割された分割型雄コーン5における分割型雄コーン片6の内周面13とその周方向分割端面(周方向の側端面)19との内隅部(周方向内側コーナー部)20を、面取り接続部1(図1b,図6a参照)、または円弧状接続部2(図6b参照)を介して接続されている。このように内隅部20に面取り接続部1または円弧状接続部2を設けることで、PC鋼撚り線18におけるPC鋼線3に内隅部20が噛み込むことを防止し、PC鋼線3のきずの発生を防止し、PC鋼線3の脆性破断を防止している。
【0028】
図3には、本発明において使用される一実施形態の雌型受け金具17が示されている。この雌型受け金具17は、先端部に向かって先細状のテーパー状内周面16を有する筒状スリーブからなる雌型受け金具17の形態で、前記テーパー状内周面16の中心軸線Cとなす角度αは、分割型雄コーン15のテーパー状外周面11の中心軸線Cとなす角度βよりも小さく設定されている。前記のテーパー状内周面16の中心軸線Cとなす角度αが、分割型雄コーン15のテーパー状外周面11の中心軸線Cとなす角度βよりも大きく設定されていると、分割型雄コーン先端部での噛み込みが大きくなり、分割型雄コーン先端部でのPC鋼撚り線18の応力集中が高まり好ましくない。
【0029】
図示の形態では、一つの先細状のテーパー状内周面16を有する筒状スリーブからなる雌型受け金具17が示されているが、複数の先細状のテーパー状内周面16を間隔をおいて有する雌型受け金具(図示を省略)でも同様である。
【0030】
図4および図5には、前記雌型受け金具17と分割型雄コーン5を使用してPC鋼撚り線18を緊張定着した状態が示され、雌型受け金具17は、支圧プレート8により支承され、支圧プレート8を介して図示省略のコンクリートに圧縮力が導入される。
【0031】
ここで、分割型雄コーン5のテーパー状外周面11の中心軸線Cとのなす角度βをα度(例えば、7度)から、α+0.2度、α+0.3度、α+0.6度、α+0.9度と順次変化させ、雌型受け金具17のテーパー状内周面16の中心軸線Cとのなす角度αを一定(例えば、7度)とした場合、軸方向全長に内歯14を備えた分割形雄コーン片6の全長65mmに対するPC鋼線3の表面の軸方向応力について、数値解析した結果を示す図10を参照して説明する。
【0032】
分割型雄コーン5のテーパー状外周面11の中心軸線Cとのなす角度βと雌型受け金具17のテーパー状内周面16の中心軸線Cとのなす角度αとの角度差(A=β―α)がゼロ度の場合は、前記のように曲線イとなり、角度差Aが0.2度では曲線ロ、0.3度では曲線ハ、0.6度では曲線ニ、0.9度では曲線ホとなる。
【0033】
この線図から、従来の説明でも記載したように、角度差(A=β―α=0.00度)の場合が、分割形雄コーン先端部でのPC鋼線拘束力が大きく(2700MPa)望ましいが、分割形雄コーン先端部のPC鋼線表面で軸方向応力が集中しているので、分割形雄コーン先端部でPC鋼線に強く噛み込みでいる状態となり、PC鋼線に噛み込み傷が発生し脆性破断し易い。また、先端部から若干離れると急激にPC鋼線表面の軸方向応力が落ちるようになる。さらに、分割形雄コーン後端部では、比較的大きな負の軸方向応力(−1000MPa)が作用している状態となっているのがわかる。
【0034】
そして、前記角度差(A=β―α)が、0.2度(曲線イ)、0.3度(曲線ハ)、0.6度(曲線ニ)、0.9度(曲線ホ)と徐々に大きくなるにしたがって、分割形雄コーン先端部におけるPC鋼線表面の軸方向応力が緩和され、また分割形雄コーン中間部におけるPC鋼線表面の軸方向応力が高まり、さらに、分割形雄コーン後端部でのPC鋼線の負の軸方向応力も小さくなっていることがわかる。
【0035】
このことから、分割形雄コーン先端部におけるPC鋼線表面の軸方向応力の集中を避け、例えば、PC鋼線に1860MPa以上のPC鋼線表面の軸方向応力を期待する場合、前記角度差(A=β―α)が、0.3度(曲線ハ)、0.6度(曲線ニ)、0.9度(曲線ホ)を選択すればよいことがわかる。ただし、前記角度差(A=β―α)が、0.9度(曲線ホ)では、分割形雄コーン先端部におけるPC鋼線表面の軸方向応力の集中はないが、PC鋼線3の拘束力が2000MPaを超える程度なので、1860MPaに対してわずかな余裕しかなく、何らかの原因で変動があると、期待するPC鋼線の拘束力を失う恐れがある(1860MPa以下となる恐れがある)ので、安全性を高めるため、前記角度差(A=β―α)が0.6度(曲線ニ)を採用すると良く、このことは、分割形雄コーンを圧入する角度差の限界とも合っている。
【0036】
また、PC鋼撚り線18にけるPC鋼線3の定着部の軸方向応力は、分割型雄コーン5の軸方向中間部の内歯14でも負担し、PC鋼線3の軸方向応力を分割型雄コーン15の先端部で応力集中することなく、分割型雄コーン5の軸方向に分散させて、PC鋼線3の軸方向に分散させて伝達できることがわかる。
【0037】
次に、本発明の第2実施形態の定着治具構造において使用する分割型雄コーン5について、図7および図8を参照して説明する。なお、図4に対応する図は、分割型雄コーン5を置き換えると同様な図となるので省略した。この実施形態は、分割型雄コーン5を構成する各分割型雄コーン6の内周面13の先端部から一定長のPC鋼撚り線18の摩擦型固定部7と、それに続くPC鋼撚り線18との楔型固定部9との間に、漸次後端側に向かって縮径するテーパー状の傾斜型楔部25を有する分割型雄コーン5とした形態である。
【0038】
前記の楔型固定部9を構成する内歯14は、前記実施形態と同様、内面の円周方向に沿った山部4と、円周方向に沿った谷部4cとが交互に形成された楔型形状の内歯14であり、内歯14における山部4を形成する両側の斜面は、先端側の斜面4aが、後端側の斜面4bよりも軸方向に緩傾斜の斜面とされている。
【0039】
また、先端部内面の内歯14における複数の山部4が、中間部から後部内面の山部4よりも低く設定され、楔先端部から楔中間部に向って漸次縮径する2点鎖線で示す内側テーパー状緩傾斜面10に沿って、先端側の断面ほぼ台形形状の山部4dから順次、山部が内側に高くなるように、かつ中間部における断面ほぼ鋭角三角形状の山部4の形状に順次近づくように形成されている。
【0040】
さらに説明すると、先端部内面の内歯14における複数の山部4dが、先端部から中間部に向って漸次縮径する内側テーパー状緩傾斜面10に沿って、断面ほぼ三角形の山部の頂部が削り落とされて、ほぼ台形形状に形成されている。
【0041】
このように先端部内面の複数の山部4dが、漸次縮径する内側テーパー状緩傾斜面10に沿って、断面ほぼ三角形の山部の頂部が削り落とされたほぼ台形形状に形成されていると、楔型固定部9先端部でのPC鋼線3に対する噛み込みを防止すると共に、この部分でのPC鋼線表面の軸方向応力集中を防止することができる。なお、このような分割型雄コーン片6を製造する方法としては、機械切削加工あるいは鋳造法により製造することができる。
【0042】
その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、同様な部分には、同様な符号を付して説明を省略する。
【0043】
次に、本発明の第3実施形態の定着治具構造において使用する分割型雄コーン5について、図9を参照して説明する。なお、図4に対応する図は、前記と同様分割型雄コーン5を置き換えると同様な図となるので省略した。
【0044】
この実施形態は、前記の各実施形態の変形形態で、円周方向に複数分割された分割型雄コーン内周面13とその周方向分割端面19との内隅部20を、前記分割型雄コーン内周面13の円弧状内歯山部4に接線状態で接続すると共に、分割端面19に近づくにしたがって漸次半径方向外側に拡径するように傾斜する傾斜面26を介して接続するようにした形態である。
【0045】
前記の分割端面19に近づくにしたがって漸次半径方向外側に拡径するように傾斜する傾斜面26の傾斜角は設計により、適宜設定される。このような内歯山部に接線状態で接続する傾斜面26を設けると、前記のように、内隅部20に面取り接続部1または円弧状接続部2を設ける場合と同様に、PC鋼撚り線18におけるPC鋼線3に内隅部20が噛み込むことを確実に防止し、PC鋼線3に、傷が発生するのを防止し、PC鋼線3の脆性破断を確実に防止することができる。その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、同様な部分には、同様な符号を付して説明を省略する。
【0046】
本発明を実施する場合、図示の形態を適宜組み合わせても良い。
【0047】
本発明の定着治具構造は、通常のPC鋼撚り線および、より高強度のPC鋼撚り線の定着治具構造にも適用することができ、例えば、PC鋼撚り線が2,000MPa以上の高強度PC鋼撚り線からなる高強度線材の定着治具構造にも、分割型雄コーン先端部あるいは楔型固定部におけるPC鋼線表面部の軸方向応力集中を防止し、また、分割型雄コーン5における分割型雄コーン片6の内隅部20の噛み込みを防止することができる。
【0048】
【発明の効果】
本発明は以上の構成であるので次のような効果を有している。
第1発明によると、PC鋼撚り線に用いるコーン型の緊張定着治具構造において、分割型雄コーンのテーパー状外周面の中心軸線とのなす角度を、雌型受け金具のテーパー状内周面の中心軸線となす角度よりも大きくしたので、分割型雄コーンの先端部付近におけるPC鋼線部分の応力集中が緩和される効果がある。
【0049】
第2発明によると、PC鋼撚り線に用いるコーン型の緊張定着治具構造において、分割型雄コーン内周面に、その先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部を有し、かつそれに続くPC鋼撚り線との楔型固定部を有する分割型雄コーンとしたので、摩擦型固定部でもPC鋼線を把持して、分割型雄コーン先端部または楔型固定部先端部でのPC鋼線表面の軸方向の応力集中を防止することができる。
【0050】
また、第3発明によると、分割型雄コーン内周面の先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部と、それに続くPC鋼撚り線との楔型固定部との間に、漸次後端側に向かって縮径するテーパー状の傾斜型楔部を有する分割型雄コーンとしたので、傾斜型楔部で徐々にPC鋼線の拘束力を高めることができるため、楔型固定部先端側でのPC鋼線表面の軸方向の応力集中を防止することができる。
【0051】
第4発明によると、第1発明において、分割型雄コーン内周面に、その先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部を有し、かつそれに続くPC鋼撚り線との楔型固定部を有する分割型雄コーンとしたので、分割型雄コーンのテーパー状外周面の角度による分割型雄コーンの先端部付近におけるPC鋼線部分の応力集中の緩和効果と、摩擦型固定部を設けたことによる応力集中の緩和効果との、分割型雄コーン内外面によるPC鋼線部分の応力集中の緩和効果を奏することができる。
【0052】
第5発明によると、第1発明の定着治具構造において、分割型雄コーン内周面に、その先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部を有し、かつそれに続くPC鋼撚り線との楔型固定部を有する分割型雄コーンとし、さらに前記摩擦型固定部と、前記楔型固定部との間に、漸次後端側に向かって縮径するテーパー状の傾斜型楔部を有する分割型雄コーンとしたので、前記第1〜第4発明のすべての効果を奏することができる。
【0053】
また、第6発明によると、円周方向に複数分割された分割型雄コーンの内周面とその周方向分割端面との内隅部を、面取り接続部、または円弧状接続部を介して接続したので、このように内隅部に面取り接続部または円弧状接続部を設けることで、PC鋼撚り線に分割型雄コーンにおける内隅部が噛み込むことを防止し、PC鋼撚り線に、傷が発生するのを防止し、PC鋼撚り線の脆性破断を防止できる。
【0054】
また、第7発明によると、PC鋼撚り線に用いるコーン型の緊張定着治具構において、分割型雄コーンのテーパー状外周面の中心軸線とのなす角度を、雌型受け金具におけるテーパー状内周面の中心軸線となす角度よりも、0.3度以上0.6度以下の角度で大きくしたので、分割型雄コーンの先端部付近におけるPC鋼撚り線に対する応力集中の緩和効果が大きく、なおかつ、雌型受け金具のテーパー状内周面に入りやすく確実に定着しやすい、実用的な分割型雄コーンとすることができる。
【0055】
また、第8発明のように、円周方向に複数分割された分割型雄コーン内周面とその周方向分割端面との内隅部を、前記雄コーン内周面の内歯山部に接線状態で接続すると共に、分割端面に近づくにしたがって漸次半径方向外側に拡径するように傾斜する傾斜面を介して接続すると、PC鋼撚り線に、きずが発生するのを防止し、PC鋼撚り線の脆性破断を防止できる。
【0056】
また、第9発明のように、PC鋼撚り線が2,000MPa以上の高強度PC鋼撚り線であると、高強度線材の定着治具構造とことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る分割型雄コーンを示すものであって、(a)は一部縦断側面図であり、(b)は(a)の右方向から見た背面図である。
【図2】分割型雄コーン片の一部を拡大して示す縦断側面図である。
【図3】本発明の雌型受け金具の一形態を示すものであって、(a)は縦断側面図であり、(b)は(a)の右方向から見た背面図である。
【図4】雌型受け金具に雄コーンを圧入してPC鋼より線を定着する場合の縦断側面図である。
【図5】図4における雄コーン受け金具と雄コーンとPC鋼撚り線との関係を示す図である。
【図6】PC鋼撚り線の一部と雄コーン内側隅部との状態を示す図であり、(a)は雄コーン内側隅部を面取り加工した場合であり、(b)は雄コーン内側隅部をR加工した場合を示す背面説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る分割型雄コーンを示すものであって、(a)は縦断側面図、(b)は背面図である。
【図8】分割型雄コーン片の一部を拡大して示す縦断側面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る分割型雄コーンを示すものであって、(a)は縦断側面図、(b)は背面図である。
【図10】分割型雄コーンのテーパー状外周面の傾斜角を、雌型受け金具のテーパー状内周面の傾斜角と同じか、雌型受け金具のテーパー状内周面の傾斜角以上の角度差のあるテーパー状外周面の分割型雄コーンを使用した場合の、雄コーン軸方向位置に対応する鋼線表面の軸方向応力を示す線図である。
【図11】従来の分割型雄コーンを示すものであって、(a)は一部縦断側面図であり、(b)は(a)の右方向から見た背面図である。
【図12】従来の雌型受け金具の一形態を示すものであって、(a)は縦断側面図であり、(b)は(a)の右方向から見た背面図である。
【図13】雌型受け金具に分割型雄コーンを圧入してPC鋼撚り線を定着する場合の縦断側面図である。
【図14】(a)は図13における雌型受け金具と分割型雄コーンとPC鋼撚り線との関係を示す図、(b)は分割型雄コーン内側隅部が鋼線に噛み込んでいる状態を示す図である。
【符号の説明】
1 面取り接続部
2 円弧状接続部
3 PC鋼線
4 山部
4a 斜面
4b 斜面
4c 谷部
4d 山部
5 分割型雄コーン
6 分割型雄コーン片
7 摩擦型固定部
8 支圧プレート
9 楔型固定部
10 内側テーパー状緩傾斜面
11 テーパー状外周面
12 スリット
13 円筒状内周面
14 内歯
15 分割型雄コーン
15a 分割型雄コーン片
16 テーパー状内周面
17 雌型受け金具
18 PC鋼撚り線
19 円周方向分割端面
20 内隅部
21 角部
22 定着治具
23 傷
25 傾斜型楔部
26 傾斜面
【発明の属する技術分野】
本発明は、PC床版やPC橋梁等の土木分野、あるいはPC梁やPC床等の建築分野において、コンクリートに圧縮力を導入するために使用されるPC鋼材等の高強度線材を定着するための定着治具構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、PC鋼線は、コンクリート部材製作時に、事前に型枠内に配筋し、コンクリート打設後、コンクリートが硬化した後に、緊張し両端を固定することで、コンクリートに圧縮力を与え、外力に対しコンクリートがひび割れ難く、高強度・高耐力なコンクリート部材を実現する目的で使用される。
【0003】
このようなPC鋼線を使用する部材または構造物として、橋梁分野でのPC床版やPC橋梁に多く使用されている。また、建築分野においても、PC梁、PC床等に用いられている。
【0004】
従来、先端部に向かって縮径するように傾斜するテーパー状外周面を有すると共に分割型円筒状内周面に内歯を備えた分割截頭円錐状の分割型テーパー付き雄コーン片(分割型楔片)を周方向に間隔をおいて配置して構成される分割型雄コーンまたは平型のコーンが知られている(例えば、特許文献1〜5参照)。
このような分割型雄コーンとして、図11に示すように、先端部に向かって縮径するように傾斜するテーパー状外周面11および必要に応じスリット12を有すると共に、分割円筒状内周面13に先端部から後端部のほぼ全長に渡って内歯14を有する複数の分割型雄コーン片15aからなる分割型雄コーン(分割型楔)15を使用し、また、図12に示すように、先端部に向かって縮径するように傾斜するテーパー状内周面16を有する雌型受け金具7を使用して、図13に示すように、PC鋼撚り線18を緊張定着する治具22が知られている。
【0005】
この図13に示す形態では、分割型雄コーン15におけるテーパー状外周面11の中心軸線Cとのなす角度αと、雌型受け金具17におけるテーパー状内周面16の中心軸線Cとのなす角度αとは同じ傾斜角であるので、雌型受け金具17に挿通されたPC鋼撚り線18を雌型受け金具17に圧入される分割型雄コーン15により把持した場合、PC鋼撚り線18の拘束力は大きい点では望ましいが、しかし、分割型雄コーン15の先端部で噛み込むように把持し、分割型雄コーン15の中間部から後端部では把持力が弱くなる。
【0006】
さらに説明すると、分割型雄コーン15におけるテーパー状外周面11の中心軸線Cとのなす角度αと、雌型受け金具17におけるテーパー状内周面16の中心軸線Cとのなす角度αとの角度差(A)は、ゼロ度であるので、図10の線図の曲線イで示すように、分割型雄コーン15先端部でPC鋼線表面の軸方向応力が応力集中して一番高くなり、先端部から若干離れると急激にPC鋼線表面の軸方向応力が落ちるようになる。
【0007】
したがって、定着部のPC鋼撚り線18におけるPC鋼線3の軸方向応力は、分割型雄コーン15の軸方向中間部にも内歯14があるにもかかわらず、分割型雄コーン15の挿し込み側の先端部で応力集中が大きくなる形態となっており、この部分では、分割型雄コーン15の先端部内歯14により噛み込み傷が発生しPC鋼線3(またはPC鋼撚り線18)の脆性破断が発生しやすくなる恐れのある形態である。したがって、分割型雄コーン15の軸方向中間部の内歯14でも負担し、PC鋼線3の軸方向応力を分割型雄コーン15の先端部で応力集中することなく、分割型雄コーン15の軸方向に分散させることが望まれる。
【0008】
また、最近は、PC鋼線3を高強度化することで施工本数を少なくし、低コスト、省力化施工が望まれている。しかしながら、高強度のPC鋼線3を用いた場合、前記のような従来の定着治具22では、▲1▼PC鋼線3が絞り切れ(細くなって切れること)が生じないで脆性破断したり、また、▲2▼PC鋼線3の耐疲労性が比較的低いという問題がある。これは、従来の2,000MPa以下の高強度PC鋼撚り線に比べ強度が高いため、より強固にPC鋼撚り線18を、内歯を有する分割型雄コーン(すなわち分割型楔)15により圧着把持する必要があるため生じる問題である。
【0009】
また、図14(b)に示すように、分割型雄コーン15の円筒状内周面13と周方向分割端面(周方向側端面)19との内隅部20が角部21とされていると、PC鋼撚り線18におけるPC鋼線3に、前記の角部21が噛み込み、PC鋼線3に傷23を付けることになり、PC鋼線3が早期に破断する恐れがあり、定着効率が低くなる恐れがある。
【0010】
ここで、定着効率とは、PC鋼線単身の引張破断荷重に対する、定着治具をセットしそれを介して引張試験を行なった際の破断荷重の比で表される。なお、定着効率には、JIS規格強度を用いた場合と、実強度を用いた場合とがある。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−242437号公報
【特許文献2】
特開2001−349001号公報
【特許文献3】
特開2000−202822号公報
【特許文献4】
特開平11−1995号公報
【特許文献5】
特開平11−210227号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来の問題点である、分割型雄コーン先端部において極度な噛み込み把持によるPC鋼線の表面の軸方向応力集中をさけ、分割型雄コーン先端部から中間部にかけてPC鋼撚り線を把持することにより、PC鋼線の表面の軸方向応力を軸方向に広く分散させて、把持される部分のPC鋼撚り線部分の全体として定着効率を高めることができ、また、従来のPC鋼撚り線あるいは超高強度のPC鋼撚り線にも適用することができる高強度線材の定着治具構造を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記の従来の問題点を有利に解決するために、第1発明の高強度線材の定着治具構造においては、PC鋼撚り線に用いるコーン型の緊張定着治具構造において、分割型雄コーンのテーパー状外周面の中心軸線とのなす角度を、雌型受け金具のテーパー状内周面の中心軸線となす角度よりも大きくしたことを特徴とする。
【0014】
また、第2発明の高強度線材の定着治具構造においては、PC鋼撚り線に用いるコーン型の緊張定着治具構造において、分割型雄コーン内周面に、その先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部を有し、かつそれに続くPC鋼撚り線との楔型固定部を有する分割型雄コーンとしたことを特徴とする。
さらに、第3発明の高強度線材の定着治具構造においては、第2発明の定着治具構造において、分割型雄コーン内周面の先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部と、それに続くPC鋼撚り線との楔型固定部との間に、漸次後端側に向かって縮径するテーパー状の傾斜型楔部を有する分割型雄コーンとしたことを特徴とする。
さらにまた、第4発明においては、第1発明の高強度線材の定着治具構造において、分割型雄コーン内周面に、その先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部を有し、かつそれに続くPC鋼撚り線との楔型固定部を有する分割型雄コーンとしたことを特徴とする。
【0015】
なおまた、第5発明においては、第1発明の定着治具構造において、分割型雄コーン内周面に、その先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部を有し、かつそれに続くPC鋼撚り線との楔型固定部を有する分割型雄コーンとし、さらに前記摩擦型固定部と、前記楔型固定部との間に、漸次後端側に向かって縮径するテーパー状の傾斜型楔部を有する分割型雄コーンとしたことを特徴とする。
【0016】
また、第6発明においては、第1発明〜第5発明のいずれかの高強度線材の定着治具構造において、円周方向に複数分割された分割型雄コーンの内周面とその周方向分割端面との内隅部を、面取り接続部、または円弧状接続部を介して接続するようにしたことを特徴とする。
【0017】
また、第7発明では、第1発明〜第6発明のいずれかの高強度線材の定着治具構造において、PC鋼撚り線に用いるコーン型の緊張定着治具構造において、分割型雄コーンのテーパー状外周面の中心軸線とのなす角度を、雌型受け金具におけるテーパー状内周面の中心軸線となす角度よりも、0.3度以上0.6度以下の角度で大きくしたことを特徴とする。
【0018】
また、第8発明においては、第1発明〜第5発明または第7発明のいずれかの定着治具構造において、円周方向に複数分割された分割型雄コーン内周面とその周方向分割端面との内隅部を、前記雄コーン内周面の内歯山部に接線状態で接続すると共に、分割切断面に近づくにしたがって漸次半径方向外側に拡径するように傾斜する傾斜面を介して接続するようにしたことを特徴とする。
【0019】
また、第9発明においては、第1発明〜第8発明の高強度線材の定着治具構造において、前記PC鋼撚り線が2,000MPa以上の高強度PC鋼撚り線であることを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1(a),(b)には、本発明の高強度線材の定着治具構造において使用される分割型雄コーン5の一実施形態が示されている。この分割型雄コーン5は、中空截頭円錐状体を円周方向に2分割(図示の場合)または3分割等の複数に分割された形態のテーパー付きの各分割型雄コーン片6を等角度間隔で配置されて構成され、各分割型雄コーン片6は、先端部に向かって縮径するように傾斜するテーパー状外周面11および必要に応じスリット12を有している。
【0021】
前記分割型雄コーン5のテーパー状外周面11の中心軸線Cとのなす角度βは、これと同心状に配置される後記する雌型受け金具17のテーパー状内周面16の中心軸線Cとなす角度αよりも、大きく設定され、例えば、0.3度以上0.6度以下の範囲で大きく設定されている。
【0022】
前記分割型雄コーン5のテーパー状外周面11の中心軸線Cとのなす角度βと、雌型受け金具17のテーパー状内周面16の中心軸線Cとなす角度αとの角度差(A=β―α)が、0度を超えると分割型雄コーン6の先端部付近におけるPC鋼線3部分の応力集中が緩和される効果がある。しかし、角度差(A=β―α)が、0.3度未満であると、分割型雄コーン6の先端部付近におけるPC鋼線3部分の応力集中の緩和効果が小さいため、好ましくは、角度差A=β―αを0.3度以上に設定するとよい。
【0023】
また、前記分割型雄コーン5のテーパー状外周面11の中心軸線Cとのなす角度βと、雌型受け金具17のテーパー状内周面16の中心軸線Cとなす角度αとの角度差(A=β―α)が、0.6度以上であると、雌型受け金具17のテーパー状内周面16に定着しずらくなるので、実用的には、角度差A=β―αを0.6度以下に設定すると好ましい。
【0024】
図示の形態の分割型雄コーン5では、分割型の円筒状内周面13は、その先端部側の円弧状内周面には、先端部から一定長のPC鋼撚り線18との摩擦型固定部7と、軸方向中間部から後端部にかけて、軸方向に所定ピッチの多数の平行な楔型の歯型の内歯14を有する楔型固定部9とを備えている。なお、楔型固定部とは、楔型の内歯を有して、PC鋼撚り線18に噛み込み圧着する部分を言う。
【0025】
前記の摩擦型固定部7は、断面円弧状で、極率半径が軸方向に一定の内周面で、PC鋼撚り線18の外周面に圧着して、PC鋼撚り線18を摩擦式に圧着把持する部分であり、表面を粗面としない摩擦型固定部7としてもよく、表面にガラス片を固着し粗面とした摩擦型固定部7とすることもできる。このように、摩擦型固定部7を設けると、摩擦型固定部7でもPC鋼撚り線を把持して、楔型固定部9先端部でのPC鋼線表面の軸方向の応力集中を防止することができる。なお、前記の摩擦型固定部7の長さ寸法は、設計により適宜設定される。前記の摩擦型固定部7を設ける場合は、前記分割型雄コーン5のテーパー状外周面11の中心軸線Cとのなす角度βと、雌型受け金具17のテーパー状内周面16の中心軸線Cとなす角度αとの角度差(A=β―α)が前記のようにある場合でも、あるいは角度差(A=β―α)が従来のように0度であっても、分割型雄コーン5先端部でのPC鋼線表面の軸方向の応力集中を防止することができる。
【0026】
前記の楔型固定部9は、PC鋼撚り線18を確実に把持して拘束力の大きな部分であり、この楔型固定部9を構成する内歯14は、内面の円周方向に沿って内径側に突出する山部4と、円周方向に沿って外径側に凹む谷部4cとが軸方向に交互に形成された楔型の内歯14であり、内歯14における山部4を形成する両側の斜面は、先端側の斜面4aが、後端側の斜面4bよりも軸方向に緩傾斜の斜面とされている。
【0027】
前記の円周方向に複数に分割された分割型雄コーン5における分割型雄コーン片6の内周面13とその周方向分割端面(周方向の側端面)19との内隅部(周方向内側コーナー部)20を、面取り接続部1(図1b,図6a参照)、または円弧状接続部2(図6b参照)を介して接続されている。このように内隅部20に面取り接続部1または円弧状接続部2を設けることで、PC鋼撚り線18におけるPC鋼線3に内隅部20が噛み込むことを防止し、PC鋼線3のきずの発生を防止し、PC鋼線3の脆性破断を防止している。
【0028】
図3には、本発明において使用される一実施形態の雌型受け金具17が示されている。この雌型受け金具17は、先端部に向かって先細状のテーパー状内周面16を有する筒状スリーブからなる雌型受け金具17の形態で、前記テーパー状内周面16の中心軸線Cとなす角度αは、分割型雄コーン15のテーパー状外周面11の中心軸線Cとなす角度βよりも小さく設定されている。前記のテーパー状内周面16の中心軸線Cとなす角度αが、分割型雄コーン15のテーパー状外周面11の中心軸線Cとなす角度βよりも大きく設定されていると、分割型雄コーン先端部での噛み込みが大きくなり、分割型雄コーン先端部でのPC鋼撚り線18の応力集中が高まり好ましくない。
【0029】
図示の形態では、一つの先細状のテーパー状内周面16を有する筒状スリーブからなる雌型受け金具17が示されているが、複数の先細状のテーパー状内周面16を間隔をおいて有する雌型受け金具(図示を省略)でも同様である。
【0030】
図4および図5には、前記雌型受け金具17と分割型雄コーン5を使用してPC鋼撚り線18を緊張定着した状態が示され、雌型受け金具17は、支圧プレート8により支承され、支圧プレート8を介して図示省略のコンクリートに圧縮力が導入される。
【0031】
ここで、分割型雄コーン5のテーパー状外周面11の中心軸線Cとのなす角度βをα度(例えば、7度)から、α+0.2度、α+0.3度、α+0.6度、α+0.9度と順次変化させ、雌型受け金具17のテーパー状内周面16の中心軸線Cとのなす角度αを一定(例えば、7度)とした場合、軸方向全長に内歯14を備えた分割形雄コーン片6の全長65mmに対するPC鋼線3の表面の軸方向応力について、数値解析した結果を示す図10を参照して説明する。
【0032】
分割型雄コーン5のテーパー状外周面11の中心軸線Cとのなす角度βと雌型受け金具17のテーパー状内周面16の中心軸線Cとのなす角度αとの角度差(A=β―α)がゼロ度の場合は、前記のように曲線イとなり、角度差Aが0.2度では曲線ロ、0.3度では曲線ハ、0.6度では曲線ニ、0.9度では曲線ホとなる。
【0033】
この線図から、従来の説明でも記載したように、角度差(A=β―α=0.00度)の場合が、分割形雄コーン先端部でのPC鋼線拘束力が大きく(2700MPa)望ましいが、分割形雄コーン先端部のPC鋼線表面で軸方向応力が集中しているので、分割形雄コーン先端部でPC鋼線に強く噛み込みでいる状態となり、PC鋼線に噛み込み傷が発生し脆性破断し易い。また、先端部から若干離れると急激にPC鋼線表面の軸方向応力が落ちるようになる。さらに、分割形雄コーン後端部では、比較的大きな負の軸方向応力(−1000MPa)が作用している状態となっているのがわかる。
【0034】
そして、前記角度差(A=β―α)が、0.2度(曲線イ)、0.3度(曲線ハ)、0.6度(曲線ニ)、0.9度(曲線ホ)と徐々に大きくなるにしたがって、分割形雄コーン先端部におけるPC鋼線表面の軸方向応力が緩和され、また分割形雄コーン中間部におけるPC鋼線表面の軸方向応力が高まり、さらに、分割形雄コーン後端部でのPC鋼線の負の軸方向応力も小さくなっていることがわかる。
【0035】
このことから、分割形雄コーン先端部におけるPC鋼線表面の軸方向応力の集中を避け、例えば、PC鋼線に1860MPa以上のPC鋼線表面の軸方向応力を期待する場合、前記角度差(A=β―α)が、0.3度(曲線ハ)、0.6度(曲線ニ)、0.9度(曲線ホ)を選択すればよいことがわかる。ただし、前記角度差(A=β―α)が、0.9度(曲線ホ)では、分割形雄コーン先端部におけるPC鋼線表面の軸方向応力の集中はないが、PC鋼線3の拘束力が2000MPaを超える程度なので、1860MPaに対してわずかな余裕しかなく、何らかの原因で変動があると、期待するPC鋼線の拘束力を失う恐れがある(1860MPa以下となる恐れがある)ので、安全性を高めるため、前記角度差(A=β―α)が0.6度(曲線ニ)を採用すると良く、このことは、分割形雄コーンを圧入する角度差の限界とも合っている。
【0036】
また、PC鋼撚り線18にけるPC鋼線3の定着部の軸方向応力は、分割型雄コーン5の軸方向中間部の内歯14でも負担し、PC鋼線3の軸方向応力を分割型雄コーン15の先端部で応力集中することなく、分割型雄コーン5の軸方向に分散させて、PC鋼線3の軸方向に分散させて伝達できることがわかる。
【0037】
次に、本発明の第2実施形態の定着治具構造において使用する分割型雄コーン5について、図7および図8を参照して説明する。なお、図4に対応する図は、分割型雄コーン5を置き換えると同様な図となるので省略した。この実施形態は、分割型雄コーン5を構成する各分割型雄コーン6の内周面13の先端部から一定長のPC鋼撚り線18の摩擦型固定部7と、それに続くPC鋼撚り線18との楔型固定部9との間に、漸次後端側に向かって縮径するテーパー状の傾斜型楔部25を有する分割型雄コーン5とした形態である。
【0038】
前記の楔型固定部9を構成する内歯14は、前記実施形態と同様、内面の円周方向に沿った山部4と、円周方向に沿った谷部4cとが交互に形成された楔型形状の内歯14であり、内歯14における山部4を形成する両側の斜面は、先端側の斜面4aが、後端側の斜面4bよりも軸方向に緩傾斜の斜面とされている。
【0039】
また、先端部内面の内歯14における複数の山部4が、中間部から後部内面の山部4よりも低く設定され、楔先端部から楔中間部に向って漸次縮径する2点鎖線で示す内側テーパー状緩傾斜面10に沿って、先端側の断面ほぼ台形形状の山部4dから順次、山部が内側に高くなるように、かつ中間部における断面ほぼ鋭角三角形状の山部4の形状に順次近づくように形成されている。
【0040】
さらに説明すると、先端部内面の内歯14における複数の山部4dが、先端部から中間部に向って漸次縮径する内側テーパー状緩傾斜面10に沿って、断面ほぼ三角形の山部の頂部が削り落とされて、ほぼ台形形状に形成されている。
【0041】
このように先端部内面の複数の山部4dが、漸次縮径する内側テーパー状緩傾斜面10に沿って、断面ほぼ三角形の山部の頂部が削り落とされたほぼ台形形状に形成されていると、楔型固定部9先端部でのPC鋼線3に対する噛み込みを防止すると共に、この部分でのPC鋼線表面の軸方向応力集中を防止することができる。なお、このような分割型雄コーン片6を製造する方法としては、機械切削加工あるいは鋳造法により製造することができる。
【0042】
その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、同様な部分には、同様な符号を付して説明を省略する。
【0043】
次に、本発明の第3実施形態の定着治具構造において使用する分割型雄コーン5について、図9を参照して説明する。なお、図4に対応する図は、前記と同様分割型雄コーン5を置き換えると同様な図となるので省略した。
【0044】
この実施形態は、前記の各実施形態の変形形態で、円周方向に複数分割された分割型雄コーン内周面13とその周方向分割端面19との内隅部20を、前記分割型雄コーン内周面13の円弧状内歯山部4に接線状態で接続すると共に、分割端面19に近づくにしたがって漸次半径方向外側に拡径するように傾斜する傾斜面26を介して接続するようにした形態である。
【0045】
前記の分割端面19に近づくにしたがって漸次半径方向外側に拡径するように傾斜する傾斜面26の傾斜角は設計により、適宜設定される。このような内歯山部に接線状態で接続する傾斜面26を設けると、前記のように、内隅部20に面取り接続部1または円弧状接続部2を設ける場合と同様に、PC鋼撚り線18におけるPC鋼線3に内隅部20が噛み込むことを確実に防止し、PC鋼線3に、傷が発生するのを防止し、PC鋼線3の脆性破断を確実に防止することができる。その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、同様な部分には、同様な符号を付して説明を省略する。
【0046】
本発明を実施する場合、図示の形態を適宜組み合わせても良い。
【0047】
本発明の定着治具構造は、通常のPC鋼撚り線および、より高強度のPC鋼撚り線の定着治具構造にも適用することができ、例えば、PC鋼撚り線が2,000MPa以上の高強度PC鋼撚り線からなる高強度線材の定着治具構造にも、分割型雄コーン先端部あるいは楔型固定部におけるPC鋼線表面部の軸方向応力集中を防止し、また、分割型雄コーン5における分割型雄コーン片6の内隅部20の噛み込みを防止することができる。
【0048】
【発明の効果】
本発明は以上の構成であるので次のような効果を有している。
第1発明によると、PC鋼撚り線に用いるコーン型の緊張定着治具構造において、分割型雄コーンのテーパー状外周面の中心軸線とのなす角度を、雌型受け金具のテーパー状内周面の中心軸線となす角度よりも大きくしたので、分割型雄コーンの先端部付近におけるPC鋼線部分の応力集中が緩和される効果がある。
【0049】
第2発明によると、PC鋼撚り線に用いるコーン型の緊張定着治具構造において、分割型雄コーン内周面に、その先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部を有し、かつそれに続くPC鋼撚り線との楔型固定部を有する分割型雄コーンとしたので、摩擦型固定部でもPC鋼線を把持して、分割型雄コーン先端部または楔型固定部先端部でのPC鋼線表面の軸方向の応力集中を防止することができる。
【0050】
また、第3発明によると、分割型雄コーン内周面の先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部と、それに続くPC鋼撚り線との楔型固定部との間に、漸次後端側に向かって縮径するテーパー状の傾斜型楔部を有する分割型雄コーンとしたので、傾斜型楔部で徐々にPC鋼線の拘束力を高めることができるため、楔型固定部先端側でのPC鋼線表面の軸方向の応力集中を防止することができる。
【0051】
第4発明によると、第1発明において、分割型雄コーン内周面に、その先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部を有し、かつそれに続くPC鋼撚り線との楔型固定部を有する分割型雄コーンとしたので、分割型雄コーンのテーパー状外周面の角度による分割型雄コーンの先端部付近におけるPC鋼線部分の応力集中の緩和効果と、摩擦型固定部を設けたことによる応力集中の緩和効果との、分割型雄コーン内外面によるPC鋼線部分の応力集中の緩和効果を奏することができる。
【0052】
第5発明によると、第1発明の定着治具構造において、分割型雄コーン内周面に、その先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部を有し、かつそれに続くPC鋼撚り線との楔型固定部を有する分割型雄コーンとし、さらに前記摩擦型固定部と、前記楔型固定部との間に、漸次後端側に向かって縮径するテーパー状の傾斜型楔部を有する分割型雄コーンとしたので、前記第1〜第4発明のすべての効果を奏することができる。
【0053】
また、第6発明によると、円周方向に複数分割された分割型雄コーンの内周面とその周方向分割端面との内隅部を、面取り接続部、または円弧状接続部を介して接続したので、このように内隅部に面取り接続部または円弧状接続部を設けることで、PC鋼撚り線に分割型雄コーンにおける内隅部が噛み込むことを防止し、PC鋼撚り線に、傷が発生するのを防止し、PC鋼撚り線の脆性破断を防止できる。
【0054】
また、第7発明によると、PC鋼撚り線に用いるコーン型の緊張定着治具構において、分割型雄コーンのテーパー状外周面の中心軸線とのなす角度を、雌型受け金具におけるテーパー状内周面の中心軸線となす角度よりも、0.3度以上0.6度以下の角度で大きくしたので、分割型雄コーンの先端部付近におけるPC鋼撚り線に対する応力集中の緩和効果が大きく、なおかつ、雌型受け金具のテーパー状内周面に入りやすく確実に定着しやすい、実用的な分割型雄コーンとすることができる。
【0055】
また、第8発明のように、円周方向に複数分割された分割型雄コーン内周面とその周方向分割端面との内隅部を、前記雄コーン内周面の内歯山部に接線状態で接続すると共に、分割端面に近づくにしたがって漸次半径方向外側に拡径するように傾斜する傾斜面を介して接続すると、PC鋼撚り線に、きずが発生するのを防止し、PC鋼撚り線の脆性破断を防止できる。
【0056】
また、第9発明のように、PC鋼撚り線が2,000MPa以上の高強度PC鋼撚り線であると、高強度線材の定着治具構造とことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る分割型雄コーンを示すものであって、(a)は一部縦断側面図であり、(b)は(a)の右方向から見た背面図である。
【図2】分割型雄コーン片の一部を拡大して示す縦断側面図である。
【図3】本発明の雌型受け金具の一形態を示すものであって、(a)は縦断側面図であり、(b)は(a)の右方向から見た背面図である。
【図4】雌型受け金具に雄コーンを圧入してPC鋼より線を定着する場合の縦断側面図である。
【図5】図4における雄コーン受け金具と雄コーンとPC鋼撚り線との関係を示す図である。
【図6】PC鋼撚り線の一部と雄コーン内側隅部との状態を示す図であり、(a)は雄コーン内側隅部を面取り加工した場合であり、(b)は雄コーン内側隅部をR加工した場合を示す背面説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る分割型雄コーンを示すものであって、(a)は縦断側面図、(b)は背面図である。
【図8】分割型雄コーン片の一部を拡大して示す縦断側面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る分割型雄コーンを示すものであって、(a)は縦断側面図、(b)は背面図である。
【図10】分割型雄コーンのテーパー状外周面の傾斜角を、雌型受け金具のテーパー状内周面の傾斜角と同じか、雌型受け金具のテーパー状内周面の傾斜角以上の角度差のあるテーパー状外周面の分割型雄コーンを使用した場合の、雄コーン軸方向位置に対応する鋼線表面の軸方向応力を示す線図である。
【図11】従来の分割型雄コーンを示すものであって、(a)は一部縦断側面図であり、(b)は(a)の右方向から見た背面図である。
【図12】従来の雌型受け金具の一形態を示すものであって、(a)は縦断側面図であり、(b)は(a)の右方向から見た背面図である。
【図13】雌型受け金具に分割型雄コーンを圧入してPC鋼撚り線を定着する場合の縦断側面図である。
【図14】(a)は図13における雌型受け金具と分割型雄コーンとPC鋼撚り線との関係を示す図、(b)は分割型雄コーン内側隅部が鋼線に噛み込んでいる状態を示す図である。
【符号の説明】
1 面取り接続部
2 円弧状接続部
3 PC鋼線
4 山部
4a 斜面
4b 斜面
4c 谷部
4d 山部
5 分割型雄コーン
6 分割型雄コーン片
7 摩擦型固定部
8 支圧プレート
9 楔型固定部
10 内側テーパー状緩傾斜面
11 テーパー状外周面
12 スリット
13 円筒状内周面
14 内歯
15 分割型雄コーン
15a 分割型雄コーン片
16 テーパー状内周面
17 雌型受け金具
18 PC鋼撚り線
19 円周方向分割端面
20 内隅部
21 角部
22 定着治具
23 傷
25 傾斜型楔部
26 傾斜面
Claims (9)
- PC鋼撚り線に用いるコーン型の緊張定着治具構造において、分割型雄コーンのテーパー状外周面の中心軸線とのなす角度を、雌型受け金具のテーパー状内周面の中心軸線となす角度よりも大きくしたことを特徴とする高強度線材の定着治具構造。
- PC鋼撚り線に用いるコーン型の緊張定着治具構造において、分割型雄コーン内周面に、その先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部を有し、かつそれに続くPC鋼撚り線との楔型固定部を有する分割型雄コーンとしたことを特徴とする高強度線材の定着治具構造。
- 請求項2の定着治具構造において、分割型雄コーン内周面の先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部と、それに続くPC鋼撚り線との楔型固定部との間に、漸次後端側に向かって縮径するテーパー状の傾斜型楔部を有する分割型雄コーンとしたことを特徴とする高強度線材の定着治具構造。
- 分割型雄コーン内周面に、その先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部を有し、かつそれに続くPC鋼撚り線との楔型固定部を有する分割型雄コーンとしたことを特徴とする請求項1に記載の高強度線材の定着治具構造。
- 請求項1の定着治具構造において、分割型雄コーン内周面に、その先端部から一定長のPC鋼撚り線との摩擦型固定部を有し、かつそれに続くPC鋼撚り線との楔型固定部を有する分割型雄コーンとし、さらに前記摩擦型固定部と、前記楔型固定部との間に、漸次後端側に向かって縮径するテーパー状の傾斜型楔部を有する分割型雄コーンとしたことを特徴とする高強度線材の定着治具構造。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の高強度線材の定着治具構造において、円周方向に複数分割された分割型雄コーンの内周面とその周方向分割端面との内隅部を、面取り接続部、または円弧状接続部を介して接続するようにしたことを特徴とする高強度線材の定着治具構造。
- PC鋼撚り線に用いるコーン型の緊張定着治具構造において、分割型雄コーンのテーパー状外周面の中心軸線とのなす角度を、雌型受け金具におけるテーパー状内周面の中心軸線となす角度よりも、0.3度以上0.6度以下の角度で大きくしたことを特徴とした請求項1〜6のいずれかに記載の高強度線材の定着治具構造。
- 請求項1〜5または請求項7のいずれかに記載の定着治具構造において、円周方向に複数分割された分割型雄コーン内周面とその周方向分割端面との内隅部を、前記雄コーン内周面の内歯山部に接線状態で接続すると共に、分割切断面に近づくにしたがって漸次半径方向外側に拡径するように傾斜する傾斜面を介して接続するようにしたことを特徴とする高強度線材の定着治具構造。
- 前記PC鋼撚り線が2,000MPa以上の高強度PC鋼撚り線であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の高強度線材の定着治具構造。
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