JP2004308053A - ストレッチ織物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】経糸及び又は緯糸が、二種以上のポリエステル成分からなり、
その一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント原糸で構成されたストレッチ織物を製造するに際し、直接紡糸延伸法で製造された潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント原糸を用い、かつ8〜30%幅入れさせながら60〜100℃でオープンソーパー精練することを特徴とするストレッチ織物の製造方法。
【選択図】 選択図なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ストレッチ織物の製造方法に関する。更に詳しくは、ストレッチ性及び表面平滑性に優れたストレッチ織物、特に、裏地に好適なストレッチ織物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プレバルキーにより構成する繊維間で捲縮の位相をずらした潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を用いることにより、ストレッチ性及び表面平滑性に優れた織物が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この織物はプレバルキーされた嵩高い繊維を用いているために、捲縮加工糸使いと同様、厚ぼったさ(地厚感)を有する。また平滑性、薄地、軽量、良好な風合いが要求される裏地用途に用いる場合には改善が必要である。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−61031号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、厚ぼったさ(地厚感)がなく、ストレッチ性及び表面平滑性に優れた織物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の製法により得られた潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を用い、特定の精練方法を組み合わせることによって、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、二種以上のポリエステル成分からなり、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント原糸を、経糸及び緯糸の少なくとも一方に用いたストレッチ織物を製造するに際し、経糸及び緯糸の少なくとも一方に用いる前記の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント原糸として、直接紡糸延伸法で製造された原糸を用い、かつ、織物を8〜30%幅入れさせながら、60〜100℃でオープンソーパーを用いて精練することを特徴とするストレッチ織物の製造方法である。
【0006】
本発明について、以下に詳細に説明する。
本発明の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維は、二種以上のポリエステル成分で構成(具体的には、サイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合されたものが多い)され、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、熱処理によって捲縮を発現するものである。二種のポリエステル成分で構成されている場合の複合比(一般的に、質量%で70/30〜30/70の範囲内のものが多い)、及び接合面形状(直線又は曲線形状のものがある)は限定されない。具体的には、特開2001−40537号公報に開示されているような、ポリトリメチレンテレフタレートを一成分とするものがある。
【0007】
二種のポリエステル成分からなる繊維を例に説明する。二種のポリエステル成分からなる場合は、二種のポリエステルポリマーをサイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合した複合繊維であり、サイドバイサイド型の場合、二種のポリエステルポリマーの溶融粘度比は1.00〜2.00が好ましく、偏芯芯鞘型の場合は、鞘ポリマーと芯ポリマーのアルカリ減量速度比は、3倍以上鞘ポリマーが速いことが好ましい。
【0008】
具体的なポリマーの組み合わせとしては、ポリトリメチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい)とポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。又、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)との組み合わせ、及びポリトリメチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい)との組み合わせが好ましく、特に捲縮の内側にポリトリメチレンテレフタレートが配置されると好ましい。
【0009】
このように、本発明において、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を構成するポリエステル成分は、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである。上記特開2001−40537号公報以外にも、特公昭43−19108号公報、特開平11−189923号公報、特開2000−239927号公報、特開2000−256918号公報、特開2000−328382号公報、特開2001−81640号公報には、第一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、第二成分が、第一成分とは異なるポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のエステルを、並列的又は偏芯的に配置した、サイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に複合紡糸したものが開示されている。特に、ポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせや、極限粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが好ましい。
【0010】
以下に、固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートが互いにサイドバイサイド型に複合された複合繊維について説明する。
2種類のポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度差は、好ましくは0.05〜0.40(dl/g)、より好ましくは0.10〜0.35(dl/g)、最も好ましくは0.15〜0.35(dl/g)である。例えば、高粘度側の固有粘度を0.70〜1.30(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度を0.50〜1.10(dl/g)から選択するのが好ましい。低粘度側の固有粘度は、好ましくは0.80(dl/g)以上、より好ましくは0.85〜1.00(dl/g)、最も好ましくは0.90〜1.00(dl/g)である。
この複合繊維自体の固有粘度、すなわち、平均固有粘度は、好ましくは0.70〜1.20(dl/g)、より好ましくは0.80〜1.20(dl/g)、さらに好ましくは0.85〜1.15(dl/g)、最も好ましくは0.90〜1.10(dl/g)である。
【0011】
本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸した糸の粘度を指す。この理由は、ポリトリメチレンテレフタレート特有の欠点としてポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合マルチフィラメントにおいては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである。
【0012】
ポリトリメチレンテレフタレートは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルであり、トリメチレンテレフタレート単位を50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上含むものをいう。したがって、第三成分として、他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が50モル%以下、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、最も好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0013】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、又、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステルやナイロンと、ポリトリメチレンテレフタレートを別個に合成した後、ブレンドしたりしてもよい。ブレンドする際のポリトりメチレンテレフタレートの含有率は、好ましくは質量%で50%以上である。
【0014】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等がある。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用できる。さらに二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
【0015】
潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の形態は、マルチフィラメント原糸であり、いわゆる仮撚加工糸や流体噴射加工糸等のように嵩高加工された加工糸は除外されるが、インターレースによる交絡(交絡数は5〜50個/m程度)や500T/m程度以下の有撚糸は包含する。又、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよい。
繊維の断面は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平型(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型、不定形のもの等が挙げられる。
【0016】
本発明の第一の特徴は、直接紡糸延伸法で製造され、二種以上のポリエステル成分からなり、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント原糸を、経糸及び緯糸の少なくとも一方に用いる点にある。例えば、経糸及び緯糸に、種類の異なる前記の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント原糸を用いた場合、経糸及び緯糸のいずれか一方が直接紡糸延伸法で製造された原糸であればよい。勿論、両方共に直接紡糸延伸法で製造された原糸であっても差し支えない。
【0017】
直接紡糸延伸法とは、ポリマーを溶融紡糸し、冷却固化した繊維を一旦巻き取ることなく連続して延伸する方法である。この直接紡糸延伸法により製造された潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント原糸は、捲縮発現能力が高い為、該原糸を緯糸に用いて製織した織物(生機)をオープンソーパー精練機を用いて精練処理した場合、充分な幅入れが為され、高いストレッチ性と表面平滑性を併せ持った織物を得ることができる。また、該原糸を経糸に用いて製織した織物(生機)をオープンソーパー精練機を用いて精練処理した場合、充分な捲縮発現が達成され、経方向に高いストレッチ性を有し、かつ、表面平滑性が良好な織物を得ることができる。この織物は経方向にストレッチを有しているため、ジャケットやパンツに使用すると、着用動作時にひじやひざ部が受ける圧迫感が低減し着用感が向上する。
【0018】
一方、溶融紡糸され、冷却固化した繊維を一旦巻き取って未延伸糸を得、次いで、未延伸糸を延伸して延伸糸を得る、一般的なコンベンショルな製法で製造された潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント原糸は、捲縮発現能力が低い為、該原糸を経糸及び/または緯糸に用いて製織した織物(生機)をオープンソーパー精練機で精練しても、捲縮発現が小さく、高いストレッチ性を有する織物を得ることはできない。
【0019】
本発明における潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の好ましい特性は、以下のとおりである。
(1)沸水処理前に顕在化している捲縮の伸縮伸長率(Vc)は20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下である。
(2)3.5×10−3cN/dtexの荷重を掛けて沸水処理した後に測定される伸縮伸長率(CE3.5)は5〜50%であることが好ましく、より好ましくは、5%以上30%以下である。
(3)乾熱収縮極値応力値は0.05cN/dtex以上0.24cN/dtex以下であることが好ましく、より好ましくは0.05cN/dtex 以上0.20cN/dtex以下、最も好ましくは0.05cN/dtex 以上0.15cN/dtex以下である。
(4)乾熱収縮応力の発現開始温度は50℃以上80℃以下であることが好ましい。
(5)破断伸度は30%以上65%以下であることが好ましく、より好ましくは35%以上50%以下である。
(6)総繊度は20〜300dtex、単糸繊度は0.5〜20dtexが好ましい。
【0020】
本発明は、このような潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント原糸を経糸及び/又は緯糸に用いて織物を構成するものであり、交織する際の相手素材は制限されるものでなく、例えば、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、アセテート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維等、所望に応じて適宜選定することができる。
織物の組織としては、平織組織、綾織組織、朱子織組織をはじめ、それらから誘導された各種の変化組織を適用することができる。
【0021】
本発明の第二の特徴は、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント原糸で構成された織物を製織した、いわゆる生機を8〜30%幅入れさせながら、60〜100℃でオープンソ−パー精練機を用いて精練処理することにある。
オ−プンソ−パ−精練機によるストレッチ発現機構を説明する。潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント原糸を緯糸に用いて製織した織物(生機)をオ−プンソーパー精練機に導入し、60〜100℃の精練液中に浸漬すると、この精練液の熱によって捲縮が発現する。この発現した捲縮によって織物にストレッチが付与される。したがって、捲縮発現量が少ない場合には織物のストレッチは低いものとなる。逆に捲縮発現量が多すぎるとストレッチは充分となるものの楊柳、シボ欠点が発生し品位、風合い不良の織物となってしまう。捲縮発現量はオープンソーパー精練時の幅入れ率によって制御可能であり、幅入れ率が8%未満では高いストレッチ性が得られず、幅入れ率が30%を越えると楊柳、シボ欠点が生じ品位不良となる。したがって、8〜30%幅入れさせながら60〜100℃でオープンソ−パー精練機にて精練処理することが重要である。ストレッチ性、織物品位及び織物の物性面から、オープンソーパー精練の温度条件は70〜100℃、幅入れ率は8〜25%が好ましく、より好ましくは、精練温度は80〜95℃、幅入れ率は10〜20%である。
【0022】
潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント原糸を経糸、又は経糸と緯糸の両方に用いて製織した織物(生機)を、オ−プンソーパー精練機に導入し、張力を弱めて、60〜100℃で精練処理することによって経方向、経緯両方向にストレッチを付与することができる。
本発明のストレッチ織物とは、ストレッチ率が少なくとも10%、好ましくは12%以上、より好ましくは15%以上を有する織物を言う。
【0023】
潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント原糸で構成された織物を、一般的な液流染色機やソフサー精練機を用いて処理することによって、織物にストレッチ性を付与することができるが、この場合には、シボや楊柳が発現しやすく、織物の表面平滑性や品位が劣る。この理由は、液流染色機やソフサー精練機を用いた場合には、織物は、ほとんど拘束を受けない状態で、かつ、柔布作用が加わった状態で処理が行われる為、過剰な捲縮が発現し、過大な幅入れが起こるためである。
【0024】
一方、抱角の大きなロ−ルが多数配列されたオ−プンソ−パ−精練機を用いて精練する場合には、それらのロ−ルによって織物の幅方向は高度な拘束を受け、また経方向もこれらのロ−ルを多数通過することにより張力を受ける。 この様な拘束下で織物が精練処理される為、過剰な捲縮発現及び幅入れが抑制され、楊柳やシボのない表面平滑性に優れた織物を得ることができる。さらに、拘束下での捲縮発現能力の高い直接紡糸延伸法で製造された潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント原糸を用いる為、高いストレッチ性を併せ持った織物を得ることができる。
【0025】
以上述べたように、本発明は、(1)直接紡糸延伸法により製造した潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント原糸の特徴である、織物中で拘束を受けた状態でも充分に発揮する捲縮発現力の活用と、(2)織物の幅方向を拘束した拡布状態で、かつ、経方向に緊張した状態で処理できるオ−プンソ−パ−精練の特徴を活かすことによって、はじめて高いストレッチ性と表面平滑性を兼ね備えた織物が得られるのである。
【0026】
捲縮の位相をずらしたプレバルキーな潜在捲縮性発現性ポリエステル繊維を用いたストレッチ織物は、厚みが0.13mmもあり、厚ぼったさ(地厚感)があるが、本発明の織物は、原糸を使用し、かつ、過剰な捲縮発現を抑えることにより、厚みを0.09mmに低減でき、地厚感が解消される。
生機の経糸本数及び緯糸本数は、ストレッチ性、品位及び品質と密接な関係があり重要である。経糸本数が少ないと、ストレッチは発現するものの楊柳、シボ等の品位欠点が発生する場合がある。経糸本数が多いと品位はよくなるもののストレッチが発現しない場合がある。緯糸についても本数が少ないとメズレや引裂強力低下等品位、品質欠点が発生する場合がある。本数が多すぎるとストレッチが発現しない場合がある。
【0027】
これらの特徴と、織物組織、繊度、製品のストレッチ性、品位、品質を考慮して本数は適宜選定すればよい。例えば、経糸に56dtex/24fのポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント制電糸(無撚、糊付け糸)を用い、緯糸に56dtex/24fポリトリメチレンテレフタレート複合繊維を用いて、緯方向に12〜15%のストレッチを有する平組織の織物を製造する場合には、経密度110〜130本/2.54cm、緯密度100〜120本/2.54cmの範囲から品質(ストレッチ率、厚み、目付け、引裂強力等)や品位(メズレ等)、風合いを考慮して選ぶのが好ましい。精練後は、常法によりプレセット(通常有り幅が多い)に引き続き、染色、ファイナルセットすればよく、希望するストレッチ率や製品幅に応じてプレセットやファイナルセット時に幅出しや幅入れを行えばよい。風合い向上の為にプレセットの後に減量加工を行ってもよい。
【0028】
【発明の実施の態様】
以下に、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
本発明に用いられる測定方法及び測定条件は、以下のとおりである。
(1)固有粘度
固有粘度[η]は、次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
定義中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリトリメチレンテレフタレートポリマーの稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cは、g/100mlで表されるポリマー濃度である。
【0029】
(2)顕在捲縮の伸縮伸長率(Vc)
糸を周長1.125mの検尺機で10回かせ取りし、JIS−L−1013に定められた恒温恒湿室に無負荷のまま一昼夜静置する。次いで、かせに、以下に示す荷重を掛けてかせ長を測定し、以下の式から顕在の伸縮伸長率Vcを測定する。
伸縮伸長率(Vc)(%)=[(L2−L1)/L1] ×100
L1=1×10−3cN/dtex荷重付加時のかせ長
L2=0.18cN/dtex荷重付加時のかせ長
【0030】
(3)沸水処理後の伸縮伸長率(CE3.5)
糸を周長1.125mの検尺機で10回かせ取りし、3.5×10−3cN/dtexの荷重を掛けた状態で、沸騰水中で30分間熱処理する。次いで、同荷重を掛けたまま乾熱180℃で15分間乾熱処理する。処理後、JIS−L−1013に定められた恒温恒湿室に一昼夜静置する。次いで、かせに以下に示す荷重を掛けてかせ長を測定し、以下の式から伸縮伸長率を測定する。
沸水処理後の伸縮伸長率(CE3.5)(%)=[(L2−L1)/L1]×100
L1=1×10−3cN/dtex荷重付加時のかせ長
L2= 0.18cN/dtex荷重付加時のかせ長
【0031】
(4)破断強度,破断伸度
JIS−L−1013に基づいて測定する。
(5)乾熱収縮応力の極値応力値
熱応力測定装置(カネボウエンジニアリング社製、商品名KE−2)を用いて測定する。繊維を約20cm長の長さに切り取り、両端を結んで輪をつくり測定装置に装填する。初荷重0.05cN/dtex、昇温速度100℃/分の条件で測定し、熱応力の温度変化をチャートに書かせる。熱収縮応力は、高温域で山型の曲線を描く。このピーク値の読み取り値(cN)から、下記式で求められる値を極値応力値とする。
極値応力値(cN/dtex)
=〔(ピーク値の読み取り値CN)/(dtex×2)〕−初荷重(CN/dtex)]
【0032】
(6)織物評価
得られた織物を、加工技術者が官能評価し、以下の基準により判定する。
○ ;シボや楊柳がなく、極めて良好な表面平滑性を有する
△ ;シボや楊柳が散見されるが、ほぼ良好な表面平滑性を有する
× ;シボや楊柳が発現しており、表面平滑性に劣る
【0033】
(7)織物のストレッチ率
(株)カトーテック社製 KES‐FB1(商品名)を用いて、20cm×20cmの織物試料を引張り速度=0.2mm/秒で織物の緯方向に伸長した時の、4.9N/cm応力下での伸びより、下記の式によって求めた値である。
ストレッチ率(S)(%)=(A/20)×100
A:4.9N/cm応力下で伸びた長さ(cm)
【0034】
(8)幅入れ率(%)
下記の式によって求めた値である。
[(製織後の幅−精練後の幅)/製織後の幅]×100
【0035】
【実施例1】
一方の成分として、酸化チタンを0.4wt%含むポリトリメチレンテレフタレートペレット([η]=1.25)と、他方の成分として酸化チタンを0.4wt%含む低固有粘度のポリトリメチレンテレフタレートペレット([η]=1.00)を質量比率1:1でサイドバイサイド型複合紡糸用紡口から押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度2000m/minで紡糸した。一旦巻き取ることなく連続して延伸して56dtex/24fのポリトリメチレンテレフタレート複合繊維を得た。
【0036】
詳細な紡糸、延伸、熱処理条件は、以下のとおりである。
押出機温度 250℃
スピンヘッド温度 265℃
第1ゴデットロール速度 2000m/分
第1ゴデットロール温度 55℃
第2ゴデットロール温度 120℃
第2ゴデットロール速度 3000m/分
第3ゴデットロール温度 150℃
巻取速度 3000m/分
巻取張力 0.05cN/dtex
巻取時のパッケージ温度 25℃
経糸に56dtex/24fのポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント制電糸(無撚、糊付け糸)を用い、緯糸に上記の56dtex/24fポリトリメチレンテレフタレート複合繊維を打ち込んで、経密度125本/2.54cm、 緯密度108本/2.54cmの平組織の生機を製織した。
【0037】
この生機をオープンソーパー精練機を用いて、95℃で精練処理した後、シリンダ−乾燥(120℃)した。精練反の幅入れ率は15%であった。次いで、温度170℃でプレセットを行った後、10%の減量加工を行い、液流染色機にて130℃染色を行った。最後に温度170℃で仕上げセットを行い、ストレッチ織物を得た。
得られたストレッチ織物の評価結果を表1に示す。結果はいずれも良好であった。
【0038】
【実施例2】
経糸に56dtex/24fのポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント制電糸(無撚 糊付け糸)を用い、緯糸に実施例1の複合繊維を打ち込んで、経148本/2.54cm、 緯115本/2.54cmの綾組織の生機を製織した。
この生機を実施例1と同じ方法でオ−プンソ−パ−精練機を用いて精練処理した。この時の幅入れ率は22%であった。その後、温度170℃でプレセットを行った後、液流染色機にて130℃染色を行った。最後に温度170℃で仕上げセットを行い、綾組織のストレッチ織物を得た。
得られたストレッチ織物の評価結果を表1に示す。織物のストレッチ性及び表面平滑性は良好であった。
【0039】
【実施例3】
経糸に56dtex/30f のキュプラレーヨン原糸(無撚、糊付け糸)を用い、緯糸に実施例1の複合繊維を打ち込んで、経124本/2.54cm、緯110本/2.54cmの平組織の交織生機を製織した。この生機をオープン ソーパー精練機を用いて、95℃で精練した後、シリンダー乾燥機により乾燥した(120℃)。この場合の幅入れ率は24%であった。
次いで、温度170℃でプレセットを行った。プレセット後、ジッガー染色機により、複合繊維を染色し、コールドパッドバッチによりキュプラレーヨン原糸を染色した。その後、170℃で仕上、幅出し熱セットを行って交織ストレッチ織物を得た。
得られた交織ストレッチ織物の評価結果を表1示す。 得られた織物は高いストレッチ性を有し、かつ、キュプラとの交織により、滑り性及び風合いが良好なストレッチ織物が得られた。
【0040】
【比較例1】
一方の成分として、酸化チタンを0.4wt%含むポリトリメチレンテレフタレートペレット([η]=1.25)と、他方の成分として酸化チタンを0.4wt%含む低固有粘度のポリトリメチレンテレフタレートペレット([η]=1.00)を質量比率1:1でサイドバイサイド型複合紡糸用紡口から押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度2000m/minで紡糸して未延伸糸として一旦巻き取った。
【0041】
この未延伸糸をホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/min、延伸倍率は延伸後の繊度が56dtexとなるように設定して延撚し、56dtex/24fのコンベンショナル法によるポリトリメチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレート複合繊維を得た。この複合繊維を実施例1の経に緯糸として打ち込み、経125本/2.54cm、緯108本/2.54cmの平組織の織物を製織した。この織物を実施例1と同じ方法でオープンソーパー精練を行った。幅入れ率は7%であった。その後、実施例1と同じ方法及び条件でプリセット、減量を行った。
表1に得られた織物の評価結果を示す。この織物は、ストレッチが不足しており伸び感に欠けるものであった。
【0042】
【比較例2】
実施例1の織物をソフサー精練機で95℃で精練した後、乾燥し、テンターを用いてプレセットを行った(温度170℃)。次に、10%の減量加工を行い、液流染色機により130℃染色を実施した。最後にテンターで仕上げセット(温度170℃)を行い、ストレッチ織物を得た。
得られたストレッチ織物の評価結果を表1に示す。この織物は、ストレッチ性は充分発現しているが、楊柳、シボが発生しており品位に劣るものであった。
【0043】
【表1】
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、ストレッチ性及び表面平滑性に優れた織物、特に裏地に好適なストレッチ織物を製造することが可能になる。
Claims (1)
- 二種以上のポリエステル成分からなり、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント原糸を、経糸及び緯糸の少なくとも一方に用いたストレッチ織物を製造するに際し、経糸及び緯糸の少なくとも一方に用いる前記の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント原糸として、直接紡糸延伸法で製造された原糸を用い、かつ、織物を8〜30%幅入れさせながら、60〜100℃でオープンソーパーを用いて精練することを特徴とするストレッチ織物の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2003102730A JP2004308053A (ja) | 2003-04-07 | 2003-04-07 | ストレッチ織物の製造方法 |
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JP2006316364A (ja) * | 2005-05-11 | 2006-11-24 | Toray Ind Inc | ポリエステル系ストレッチ織物 |
JP2007191805A (ja) * | 2006-01-17 | 2007-08-02 | Nippon Ester Co Ltd | ポリエステル織編物 |
-
2003
- 2003-04-07 JP JP2003102730A patent/JP2004308053A/ja active Pending
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