JP2004307767A - アクリル樹脂板状物の製造方法 - Google Patents

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Tetsuya Suda
哲也 須田
Hiroki Hatakeyama
宏毅 畠山
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Abstract

【課題】光学用に適したアクリル樹脂板状物の製造方法を提供する。
【解決手段】メタクリル酸メチルを主成分とする重合性原料をキャスト製板法によって重合して厚さ10mm以上のアクリル樹脂板状物を製造する方法において、20℃以上60℃未満の重合温度条件でポリマーコンバージョンが30質量%〜60質量%の範囲内になるように重合させる第1工程と、次いで60℃以上100℃未満の重合温度条件でポリマーコンバージョンが90質量%以上になるように重合させる第2工程と、次いで100℃以上130℃以下の重合温度条件で重合を完結させる第3工程とを有し、且つ、第2工程における重合発熱ピーク温度をX℃、第2工程から第3工程移行時の樹脂板状物内部温度をY℃とした際に、X℃―Y℃が0℃を超えて30℃以下であることを特徴とするアクリル樹脂板状物の製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、各種のディスプレイ用面光源装置、面照明装置、光集光装置、光伝達装置などの導光板として用いられる光学用に適したアクリル樹脂板状物の製造方法に関する。更に詳しくは、導光板を構成する樹脂内部の白濁現象(チンダル現象)を抑えることができ、また、厚みの厚いアクリル樹脂板状物の製造時の重合発熱に伴う鋳型と樹脂板状物との熱膨張差に起因する鋳型と樹脂板状物との剥離時に発生する表面欠陥(凹欠陥)を防止できるアクリル樹脂板状物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、アクリル樹脂は、透明性および耐候性等に優れる点から、看板、照明カバー、水槽などの用途に用いられている。また、最近では、液晶表示装置の背面光源(バックライト)および前面光源(フロントライト)の導光板用途に使用されている。この種の面光源装置に用いられる導光板は、耐熱性が高く、かつ導光体中における光の吸収、散乱、反射などによる透過損失ができるだけ少ないことが望ましい。
【0003】
導光板の透過損失を改良する方法としては、例えば、アクリル樹脂中にホスファイト化合物を特定濃度で含有させることにより、射出成型時の加熱着色による光の吸収を低減する方法がある(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。また、紫外線吸収剤などの光を吸収する添加剤を含まないアクリル樹脂製導光体がある(例えば、特許文献4参照)。さらに、導光体への入光波長より大きく屈折率を異にする物質を含まないアクリル樹脂製導光体がある(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7参照)。
【0004】
しかしながら、これら特許文献1〜7に開示される導光板用アクリル樹脂組成物は、導光板と屈折率が異なる物質に起因する透過損失を添加剤の有無や物理的な方法によって低減しているものであり、根本的な問題の解決には至っていない。
【0005】
また、アクリル樹脂板状物の製造方法としては、例えば、メタクリル酸メチル単量体に、2,2’−アゾビスイソブチルニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化開始剤や、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等のパーオキサイド系開始剤を添加して、特定量の酸素を含有させて重合させることによる分子量が高く、且つ、残留モノマーが低い樹脂板のキャスト製板法が挙げられる(例えば、特許文献8参照)。しかしながら、このようなキャスト製板法によって、厚さ10mm以上の厚いアクリル樹脂板を製造する際には、通常、樹脂板の発泡を防止するために40℃程度の低温で重合の大部分を進行させた後、100℃以上の高温で重合を完結させる。しかしながら、そのような製法で得られたアクリル樹脂板状物は、その端部から光を入射すると樹脂内部に白濁が確認され、光の吸収や散乱、反射が発生し、導光板としての透明性の要求を満足するものではない。特に、長光路長となる大型の導光板の場合は、透過損失が大きい。
【0006】
この白濁欠陥が発生する要因に関しては不明な点が多いが、アクリル樹脂内部に不均一な組成分布あるいは密度ゆらぎが生じ、または未反応の残存不飽和単量体、開始剤の副生成物、添加剤の未溶解残渣など、基材(ポリメタクリル酸メチル等)とは屈折率が異なる物質が存在するため光の吸収や散乱や反射が生じ、樹脂内部で白濁現象が生じるものと考えられる。
【0007】
通常、板厚10mm以上のキャスト製板法では、重合時に発泡させないように重合発熱温度を抑えて重合を行う必要があり、低温度で長時間かけて重合を行う。しかしながら、従来の重合条件のキャスト製板法により得たアクリル樹脂板状物は内部透過損失が大きく、板状物の側面より光を入射したエッジライト観察では板状物全体が曇って見える。一方、高温度条件で短時間の重合を行うと、アクリル樹脂板状物の内部透過損失が小さくなるが、重合発熱温度が高温になるので発泡の危険性が生じ、かつ重合収縮が急激に大きくなって鋳型と樹脂板状物の剥離による表面欠陥(凹欠陥)が生じる。この表面欠陥(凹欠陥)は、アクリル樹脂板状物を導光板としてディスプレイ用面光源装置に組み込んだ際に、輝線欠陥となり、ディスプレイ画像の品質が低下する。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−331018号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平9−12822号公報
【0010】
【特許文献3】
特開平9−25386号公報
【0011】
【特許文献4】
特開平8−334626号公報
【0012】
【特許文献5】
特開平8−227004号公報
【0013】
【特許文献6】
特開平10−265530号公報
【0014】
【特許文献7】
特開平8−248416号公報
【0015】
【特許文献8】
特開平9−52904号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術の各課題を解決すべくなされたものである。すなわち本発明の目的は、板厚が10mm以上という厚いアクリル樹脂板状物を製造する場合であっても、透過損失が少なく、かつ表面欠陥の無い、光学用途に適したアクリル樹脂板状物を製造する方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、キャスト製板法において特定の重合条件を採用することによって、厚みの厚いアクリル樹脂板状物の製造時の重合発熱に伴う鋳型と樹脂板状物との熱膨張差に起因する鋳型と樹脂板状物との剥離時に発生する表面欠陥(凹欠陥)を防止でき、更に内部に発生する白濁を低減でき、光学用途に非常に好適なアクリル樹脂板状物が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち本発明の要旨は、メタクリル酸メチルを主成分とする重合性原料に重合開始剤とテルペノイド系連鎖移動剤とを添加して、キャスト製板法によって重合して厚さ10mm以上のアクリル樹脂板状物を製造する方法において、20℃以上60℃未満の重合温度条件で少なくとも1段階以上の昇温パターンによってポリマーコンバージョンが30質量%〜60質量%の範囲内になるように重合させる第1工程と、次いで60℃以上100℃未満の重合温度条件で少なくとも1段階以上の昇温パターンによってポリマーコンバージョンが90質量%以上になるように重合させる第2工程と、次いで100℃以上130℃以下の重合温度条件で重合を完結させる第3工程とを有し、且つ、第2工程における重合発熱ピーク温度をX℃、第2工程から第3工程移行時の樹脂板状物内部温度をY℃とした際に、X℃―Y℃が0℃を超えて30℃以下であることを特徴とするアクリル樹脂板状物の製造方法にある。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明において、メタクリル酸メチルを主成分とする重合性原料は、単量体としてメタクリル酸メチルのみを含む重合性原料であってもよいし、メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体との単量体混合物からなる重合性原料であってもよい。また、メタクリル酸メチル単独重合体もしくは単量体混合物の重合体と、メタクリル酸メチルもしくは単量体混合物とからなるシロップ状の重合性原料であってもよい。シロップ状の重合性原料の場合、重合性原料における重合体含有率は60質量%未満である。重合性原料中のメタクリル酸メチルの含有量(メタクリル酸メチル系重合体を含む場合は重合体中のメタクリル酸メチル単位の含有量も含む)は、50質量%以上であることが好ましい。
【0020】
メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体としては、従来より知られる種々のビニル系単量体を使用できる。例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステルや、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物が挙げられる。ここで「(メタ)アクリル」とは、アクリルとメタクリルの総称である。
【0021】
特に、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとを含む重合性原料を用いることが好ましい。このアクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることが最も好ましい。メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとを含む重合性原料を用いる場合、アクリル酸エステルの含有量は1〜10質量%が好ましく、この範囲において、3質量%以上がより好ましく、7質量%以下がより好ましい。メタクリル酸メチルの含有量は90〜99質量%が好ましく、この範囲において、93質量%以上がより好ましく、97質量%以下がより好ましい(メタクリル酸メチル重合体やアクリル酸エステル重合体を含む場合はその重合体の含有量も含む;また共重合体を含む場合は、共重合体を構成する各単量体単位の含有量も含む)。
【0022】
重合性原料がアクリル酸エステルを含むと、透過損失の小さい優れた透明性を有するアクリル樹脂板状物を得ることが容易となる。一方、アクリル酸エステルの含有量を上述した各上限値に抑えることは、アクリル樹脂板状物の耐熱性の点で意義がある。アクリル樹脂板状物が耐熱性に優れていれば、例えば、高熱を発する光源ランプと近接する導光板用途においても、融解や変形が生じ難い。
【0023】
重合性原料は、透明性が損なわれず、所望の特性を持つ板状物が得られる範囲内で、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)クリレート等の多官能(メタ)アクリレート等を含有していてもよい。
【0024】
本発明において用いる重合開始剤は、メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルを含む単量体混合物に溶解するものが好ましい。例えば、従来から知られるアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤を用いることができる。
【0025】
例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチルニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチル−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系重合開始剤;ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 等のパーオキシエステル類;オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、4−メトキシベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;などが挙げられる。
【0026】
重合開始剤は、特に、過酸化物系重合開始剤であることがより好ましい。過酸化物系重合開始剤を使用すると、アゾ系重合開始剤を使用した場合と比較して、透過損失の小さい優れた透明性を有するアクリル樹脂板状物を得ることが容易となる。
【0027】
重合開始剤は、透過損失の小さい優れた透明性を有するアクリル樹脂板状物を得るために、重合開始剤中の不純物が少ないものが好ましく、重合開始剤の純度は、70質量%以上の高純度であることが好ましい。
【0028】
また、重合開始剤は二種以上を混合して用いることもできる。
【0029】
重合開始剤の添加量は、製造するアクリル樹脂板状物の厚みや重合温度等の重合条件に応じて適宜設定すればよい。通常、重合開始剤の添加量は、重合性原料100質量部に対して、0.0001〜1質量部が好ましい。
【0030】
本発明において、テルペノイド系連鎖移動剤としては、従来より知られる各種のものを使用できる。具体例としては、リモネン、ミルセン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、β−ピネン、α−ピネン等が挙げられる。これら連鎖移動剤は単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。
【0031】
テルペノイド系連鎖移動剤の添加量は、重合性原料100質量部に対して、0.001〜0.05質量部が好ましい。この添加量が0.001質量部以上であれば、連鎖移動による所望の重合調節効果が得られ、更に20℃以上60℃未満の温度条件で重合させる工程において、ポリマーコンバージョンを30質量%〜60質量%の範囲内に制御することが容易になり、透過損失が小さく、光学用途に適したアクリル樹脂板状物が得られる傾向にある。また、添加量が0.05質量部以下であれば、60℃以上100℃未満の温度条件で重合させる工程において、重合発熱温度が抑えられ、急激な重合収縮が発生し難くなり、これにより鋳型と樹脂板状物の剥離による表面欠陥(凹欠陥)が生じ難くなる傾向にあり、かつアクリル樹脂板状物中の未反応単量体の残存量が少なくなり、これにより耐熱性の低下および耐光性の低下を抑制できる傾向にある。
【0032】
重合性原料には、これまで説明した重合開始剤とテルペノイド系連鎖移動剤を添加するが、それ以外にも、アクリル樹脂板状物の透明性が損なわれず、所望の特性を持つアクリル樹脂板が得られる範囲内で、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の安定剤、難燃剤、帯電防止剤、樹脂板の鋳型との剥離を容易にする離型剤等の従来より知られる各種の添加剤を添加してもよい。
【0033】
そして、この重合性原料をキャスト製板法により重合して、板厚10mm以上の光学用アクリル樹脂板状物を得る。キャスト製板法とは、重合性原料を鋳型内で塊状重合して板状重合体を得る方法である。この鋳型としては、例えば、ガラス板、鏡面研磨されたステンレス鋼板等からなる鋳型を用いることができる。バッチ式のキャスト製板法としては、例えば、2枚の板(ガラス板、鏡面研磨されたステンレス鋼板等)と、塩化ビニール製の無端ガスケットとからなる鋳型の空間部に、重合性原料を注入し、重合硬化させ、板状重合体を鋳型から剥離して取り出す方法が挙げられる。
【0034】
本発明におけるキャスト製板法は、特定の重合条件で行う。すなわち、まず重合開始剤とテルペノイド系連鎖移動剤とを添加した重合性原料を、20℃以上60℃未満の重合温度条件で少なくとも1段階以上の昇温パターンによってポリマーコンバージョンが30質量%〜60質量%の範囲内になるように重合させる第1工程と、次いで60℃以上100℃未満の重合温度条件で少なくとも1段階以上の昇温パターンによってポリマーコンバージョンが90質量%以上になるように重合させる第2工程と、次いで100℃以上130℃以下の重合温度条件で重合を完結させる第3工程とを有し、且つ、第2工程における重合発熱ピーク温度をX℃、第2工程から第3工程移行時の樹脂板状物内部温度をY℃とした際に、X℃―Y℃が0℃を超えて30℃以下であることが必要である。すなわち、第2工程において重合発熱ピークが発現してから次第に樹脂板状物の内部温度が低下してくるが、その内部温度の低下が重合発熱ピーク温度から30℃を超えないうちに第3工程に移行する必要がある。この条件で移行することによって、鋳型と樹脂板状物との温度差および熱膨張差が小さくなり、鋳型と樹脂板状物との剥離が抑えられ、平滑な表面の樹脂板状物を得ることができる。なお重合発熱ピークとは、ゲル効果によって重合発熱が極大値を示す現象のことであって、メタクリル酸メチルを主成分とする重合性原料の場合には、通常、ポリマーコンバージョンが80〜95質量%の範囲内にまで高くなったときに発現する。
【0035】
第2工程における重合発熱ピーク温度をX℃、第2工程から第3工程移行時の樹脂板状物内部温度をY℃とした際に、X℃―Y℃が20℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがより好ましい。
【0036】
また、第2工程から第3工程に移行する際の重合温度の昇温速度は、+1℃/1分間以上が好ましい。昇温速度が+1℃/1分間未満であると、重合発熱ピーク発現後の樹脂板状物の内部温度低下に比較して昇温速度が遅くなり、鋳型と樹脂板状物とが剥離しやすくなる。
【0037】
上述した各工程は、各々、1段階以上の昇温パターンにより行えばよい。すなわち、各工程は、各々、例えば、前の工程の温度から所定範囲内の温度Tまで昇温し、その温度Tで重合させて所定のポリマーコンバージョンにする1段階の昇温パターンでもよい。また例えば、前の工程の温度から所定範囲内(例えば20℃以上60℃未満)の温度Tまで昇温し、その温度Tである程度重合させ、引き続きさらに所定範囲内(例えば20℃以上60℃未満)の温度Tまで昇温し、その温度Tでさらに重合させて所定のポリマーコンバージョンにする2段階の昇温パターンでもよい。さらに、3段階以上の昇温パターンでも構わない。
【0038】
重合性原料の調製時、鋳型の組み立て時、および、鋳型への原料注入時においては、輝点不良の発生を防止する点から、異物の混入はできるだけ避けることが好ましい。また、重合性原料は、微細な目の濾過材(メンブレンフィルターや焼結金属フィルター等)で異物を除去した後に重合することが好ましい。
【0039】
製造したアクリル樹脂板状物において、未反応単量体の残存量は3質量%未満が好ましい。3質量%未満であれば、未反応単量体に起因する耐熱性の低下および耐光性の低下を抑制することができ、また残存する未反応単量体に起因する光散乱による透過損失の低下を抑制することができる。
【0040】
本発明の製法で得られたアクリル樹脂板状物は、各種のディスプレイ用面光源装置、面照明装置、光集光装置、光伝達装置などの導光板として用いられる光学用に適しており、その厚みは、10mm以上、200mm以下であることが好ましい。
【0041】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。以下の記載において「部」は「質量部」を示す。各評価は以下の方法に従い実施した。
【0042】
(1)重合発熱温度の測定:
鋳型を組み立てる際、坂口電熱(株)製のT35型シース熱電対(直径0.8mm、長さ1000mm)を板サイズの中央および板厚の中央部分に先端が来るようにセッティングし、これを(株)キーエンス製のデータレコーダーWAVE THERMO1000に接続して、重合発熱温度を測定した。
【0043】
(2)ポリマーコンバージョンの測定:
各重合温度条件におけるアクリル樹脂を液体窒素中で凍結粉砕し、その樹脂2gをクロロホルム100mlに溶解し、その溶液をn−ヘキサン3L中に滴下しながら攪拌して、ポリマーを再析出させた。その後、ガラスフィルターNO.2G3(孔径40μm〜100μm)にて溶剤をろ過処理してポリマーを得た。さらに、このポリマーを80℃真空乾燥機中にて一昼夜静置することにより、溶剤を揮発させ、乾燥させた。この乾燥したポリマーの質量を計測し、初期に溶解したアクリル樹脂から析出したポリマーの比率を算出し、ポリマーコンバージョンの値とした。
【0044】
(3)表面欠陥の判定:
重合時の鋳型とアクリル樹脂板状物表面の剥離状況(外観)を目視にて観察した。また、離型後のアクリル樹脂板の表面外観を目視にて観察した。それぞれ、剥離や凹部等の表面欠陥が無いものを「○」、表面欠陥が有るものを「×」と表記した。
【0045】
(4)輝度の測定:
アクリル樹脂板状物を、平面形状が長方形の200mm×400mm(光路長400mm)に切断し、周辺の4つの側面をプラビューティーにて鏡面研磨した。光入射面および光入射対面にはコの字型のリフレクター(反射)を設置し、メタルハライドファイバースポット照射装置MME−250((株)モリテックス製、ライトガイド光源の光出射面から200mm離れた場所の照度70000Lux±5%)を、光入射面における板厚方向での中央部に平行に、板状物の側面から30mmの距離に設置した。また、板状物の裏面側に、黒色板(アクリル樹脂製黒色板、三菱レイヨン(株)製アクリライトL#502、板厚2mm)を板状物から20mm離して平行に設置した。
【0046】
そして、クローズアップレンズ(ミノルタ(株)製No.122)を装着した輝度測定装置(ミノルタ(株)製LS−110)を、板状物の正面から350mm離した位置に設置し、暗室内において板状物の正面中央部における垂直方向の輝度を測定し、板状物内部の白濁度合いの指標を輝度で評価した。すなわち、板状物に光を入射した際、その光は透過および反射によりアクリル樹脂内を導光し、樹脂内部に異物あるいは不均一な組成分布等が存在すると光の散乱・反射が起き、白濁が確認されるので、この輝度の測定により透明性の度合いを評価できる。
【0047】
<実施例1>
まず、重合性原料として、メタクリル酸メチルの一部を重合させた重合体とメタクリル酸メチルとからなるシロップ(ポリマーコンバージョン10質量%、シロップ粘度500mPa・s)を用意した。このメタクリル酸メチルのシロップ100部に、重合開始剤としてビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート0.001部、連鎖移動剤としてテルピノレン0.005部を添加し、30分間攪拌した。
【0048】
この重合開始剤および連鎖移動剤を添加した重合性原料を、減圧下にて脱気し、長さ1500mm、幅1200mm、厚み6mmのガラス板2枚を塩化ビニール製の無端チューブを介して配設した構成の鋳型の中に注入した。そして、この鋳型を40℃温水浴にて加熱することにより重合性原料を60時間重合させ、次いで50℃温水浴にて16時間重合させ、次いで60℃温水浴にて20時間重合させ、次いで80℃の空気浴にて5.5時間重合させ、最後に130℃の空気浴にて3時間かけて重合を完結させて、サイズ1400mm×1100mm、厚さ60mmのアクリル樹脂板を得た。なお、第2工程から第3工程移行時の重合温度の昇温速度は1.35℃/分とした。重合条件、評価結果等を表1に示す。
【0049】
80℃の空気浴における重合発熱ピーク温度は149℃であった。また、第3工程移行時の樹脂内部温度は147℃であり、第2工程から第3工程移行時のアクリル樹脂板の外観は良好であった。離型後のアクリル樹脂板の表面も良好な平滑面であり、その輝度は32cd/mであった。
【0050】
<実施例2〜5>
表1に記載のように、原料組成、連鎖移動剤の量、重合開始剤の量、重合温度および重合時間等の条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル樹脂板を製造し、輝度を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
<比較例1〜3>
表2に記載のように、原料組成、連鎖移動剤の量、重合開始剤の量、重合温度および重合時間等の条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル樹脂板を製造し、輝度を測定した。結果を表2に示す。第2工程から第3工程移行時に、鋳型のガラス板とアクリル樹脂板の界面で広範囲の剥離が確認され、さらに離型後のアクリル樹脂板の表面には微小な凹面が発生していた。また、アクリル樹脂板の輝度測定時に平滑面(正常面)と凹面(剥離面)の境界線部分は、輝線欠陥として確認された。
【0052】
【表1】
Figure 2004307767
【表2】
Figure 2004307767
表1および表2中の略号は、以下の通りである。
【0053】
・「MMAシロップ」:メタクリル酸メチルの一部を重合させた重合体とメタクリル酸メチルとからなるシロップ(ポリマーコンバージョン10質量%、シロップ粘度500mPa・s)
・「MA」:アクリル酸メチル
・「BBPD」:ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート
・X:第2工程における重合発熱ピーク温度(℃)
・Y:第2工程から第3工程移行時の樹脂板状物内部温度(℃)
・X−Y:XとYとの温度差(℃)
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、板厚が10mm以上という厚いアクリル樹脂板状物を製造する場合であっても、白濁現象(チンダル現象)が抑えられ、透過損失が少ないものを製造できる。また、重合発熱に伴う鋳型と樹脂板状物との熱膨張差に起因する鋳型と樹脂板状物との剥離を防ぐため、表面欠陥(凹欠陥)が無く、表面平滑性に優れたものを製造できる。本発明により製造したアクリル樹脂板状物は、光学用途に適したものであり、特に、表示装置、液晶表示装置のフロントライト等に用いられる導光板用途に非常に好適である。

Claims (4)

  1. メタクリル酸メチルを主成分とする重合性原料に重合開始剤とテルペノイド系連鎖移動剤とを添加して、キャスト製板法によって重合して厚さ10mm以上のアクリル樹脂板状物を製造する方法において、20℃以上60℃未満の重合温度条件で少なくとも1段階以上の昇温パターンによってポリマーコンバージョンが30質量%〜60質量%の範囲内になるように重合させる第1工程と、次いで60℃以上100℃未満の重合温度条件で少なくとも1段階以上の昇温パターンによってポリマーコンバージョンが90質量%以上になるように重合させる第2工程と、次いで100℃以上130℃以下の重合温度条件で重合を完結させる第3工程とを有し、且つ、第2工程における重合発熱ピーク温度をX℃、第2工程から第3工程移行時の樹脂板状物内部温度をY℃とした際に、X℃―Y℃が0℃を超えて30℃以下であることを特徴とするアクリル樹脂板状物の製造方法。
  2. 重合開始剤が、過酸化物系重合開始剤である請求項1記載のアクリル樹脂板状物の製造方法。
  3. テルペノイド系連鎖移動剤の添加量が、重合性原料100質量部に対して0.001〜0.05質量部である請求項1記載のアクリル樹脂板状物の製造方法。
  4. 重合性原料が、さらにアクリル酸エステルを含む請求項1記載のアクリル樹脂板状物の製造方法。
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