JP2004307564A - スチレン系熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents

スチレン系熱可塑性エラストマー組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】柔軟性、耐油性、ゴム弾性に優れるスチレン系熱可塑性エラストマー組成物を提供する。
【解決手段】特定の分子量、水素添加率を有する2種類のブロック共重合体からなる(イ)と炭化水素系ゴム用軟化剤(ロ)、オレフィン系樹脂(ハ)を含有し、成分(イ)と成分(ロ)との配合比(重量)が(イ)/(ロ)=20/80〜80/20の範囲であって、且つ成分(イ)及び成分(ロ)の合計量100重量部に対する成分(ハ)の割合が1〜300重量部であり、架橋剤の存在下で動的に熱処理されたスチレン系熱可塑性エラストマー組成物。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物に関し、詳しくは柔軟性、耐油性、ゴム弾性に優れるスチレン系熱可塑性エラストマー組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ゴム的な軟質材料であって加硫工程を必要とせず、熱可塑性樹脂と同様な成形加工性を有する熱可塑性エラストマーが、自動車部品、家電部品、電線被覆、医療用部品、雑貨等の分野で広く用いられている。このような熱可塑性エラストマーの中で、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物(以下「水添ブロック共重合体」と略記することがある)を用いたエラストマー組成物に関し、いくつかの提案がなされており、例えば水添ブロック共重合体に炭化水素油及びオレフィン系重合体を配合したエラストマー状組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
他方、従来のスチレン系熱可塑性エラストマーは、加硫ゴムに比し、耐油性、ゴム弾性等の点で劣り、使用できる用途に限界がある。そこで、耐油性、ゴム弾性を改良するために架橋剤を用いてゴム弾性を高めたり、架橋助剤の併用による架橋度向上等の試みが種々行われてきた(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、架橋剤や架橋助剤を用いて架橋度を向上させたとしても、加硫ゴムに比べて耐油性、ゴム弾性の改良は不十分であり、使用可能な用途に限界があった。
【0004】
【特許文献1】
特開昭58―206644号公報
【特許文献2】
特許3102842号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、柔軟性に優れると共に、耐油性、ゴム弾性に優れるスチレン系熱可塑性エラストマー組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の組成の混合物を架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られるスチレン系熱可塑性エラストマー組成物が、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しうることを見出して本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の要旨は、下記の成分(イ)〜(ハ)を含有し、成分(イ)と成分(ロ)との配合比(重量)が(イ)/(ロ)=20/80〜80/20の範囲であって、且つ成分(イ)及び成分(ロ)の合計量100重量部に対する成分(ハ)の割合が1〜300重量部の混合物を、架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られるスチレン系熱可塑性エラストマー組成物に存している。
(イ)重量平均分子量が8.0万〜100万であるブロック共重合体であって、
一般式(I)で表されるブロック共重合体を水素添加して得られる、水素添加率70%以上の水添ブロック共重合体(イ−1)と、
重量平均分子量が5.0万〜20万であるブロック共重合体であって、一般式(I)で表される水素添加率5%以下の、他のブロック共重合体(イ−2)とからなり、(イ−2)の割合(重量)が、(イ−1)と(イ−2)の合計量の5〜60重量%であるブロック共重合体混合物
一般式 A(B−A)nおよび/または(A−B)n………(I)
(ただし、式中のAはビニル芳香族炭化水素の重合体ブロック(以下「Aブロック」と略記する)、Bはエラストマー性重合体ブロック(以下「Bブロック」と略記する)であり、nは1〜5の整数である)
(ロ)炭化水素系ゴム用軟化剤
(ハ)オレフィン系樹脂
【0008】
【発明の実施の形態】
(1)成分(イ)
本発明で使用する成分(イ)は、下記の一般式(I)で表されるブロック共重合体および/またはこれを水素添加して得られる水添ブロック共重合体である。
一般式 A(B−A)nおよび/または(A−B)n………(I)
(ただし、式中のAはビニル芳香族炭化水素の重合体ブロック(以下「Aブロック」と略記する)、Bはエラストマー性重合体ブロック(以下「Bブロック」と略記する)であり、nは1〜5の整数である)
上記ブロック共重合体において、ビニル芳香族炭化水素の重合体であるAブロックはハードセグメント、エラストマー性重合体であるBブロックはソフトセグメントを構成する。ブロック共重合体の代表例は、A−B又はA−B−Aで表される共重合体構造を有し、Bブロックの二重結合が部分的に或いは完全に水素添加されていてもよいブロック共重合体であって、一般にスチレン系熱可塑性エラストマーとして知られている。
【0009】
上記のAブロックにおけるビニル芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−、m−、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
上記のBブロックを構成するモノマーとしては、エラストマー性が発現される限り、その種類は特に制限されないが、共役ジエンからなるものが好ましい。共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられ、特に、ブタジエン、イソプレン、又は、ブタジエン/イソプレンの2/8〜6/4重量割合の混合物が好ましい。
【0010】
ブロック共重合体中、Aブロックの含有量は、10〜50重量%、好ましくは15〜45重量%、更に好ましくは20〜40重量%である。Aブロックの含有量が前記範囲未満では、機械的強度や耐熱性が劣る傾向となり、一方、前記範囲超過では、柔軟性、ゴム弾性が劣ると共に、後述する(ロ)成分の炭化水素系ゴム用軟化剤のブリードが生じ易い傾向となる。
【0011】
共役ジエンとしてブタジエンのみが用いられている場合、熱可塑性エラストマーとしてのゴム弾性を保持する面から、Bブロックにおける共役ジエンの1,2−結合の割合は、通常20〜50%、好ましくは25〜45%である。
成分(イ)は上記ブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体(イ−1)と、水素添加していないブロック共重合体(イ−2)の混合物からなる。水添ブロック共重合体(イ−1)は、Bブロックの二重結合の水素添加率は、70%以上、好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。水素添加率が前記範囲未満では、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物の耐候性、耐熱性が劣る傾向となる。水素添加していないブロック共重合体(イ−2)は、水素添加率5%以下、好ましくは3%以下、特に好ましくは0%のものである。水添率が前記範囲以上では、架橋剤の存在下で熱処理しても、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物のゴム弾性、耐油性の改良効果が不十分になる傾向にある。
【0012】
成分(イ−1)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の分子量として、8.0万〜100万であり、好ましくは、10万〜50万、更に好ましくは、15万〜40万である。重量平均分子量が前記範囲未満では、ゴム弾性、耐油性、機械的強度が劣り、押出成形加工性も劣る。一方、前記範囲超過では、成形加工が困難となる。また、成分(イ−2)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の分子量として、5.0万〜20万であり、好ましくは、6.0万〜16万、更に好ましくは、7.0万〜12万である。重量平均分子量が前記範囲未満では、組成物としてゴム弾性、耐油性、機械的強度が劣り、前記範囲超過では、粘度が高すぎるため、上記成分(イ−1)と混ざりにくく、ゴム弾性、耐油性、機械的強度が劣る。
【0013】
成分(イ−2)の配合割合(重量)は、成分(イ−1)と(イ−2)の合計量の0.05〜0.6であり、好ましくは、0.08〜0.55である。前記範囲未満では、架橋剤の存在下で熱処理しても架橋反応が起こりにくく、スチレン系熱可塑性エラストマー組成物のゴム弾性、耐油性の改良効果が不十分になる。一方、前記範囲超過では耐候性に劣るとともに、後述する成分(ロ)がブリードし易い傾向になる。
【0014】
前述のように、本発明の成分(イ)は、特定の水素添加率、分子量を有している成分(イ−1)と成分(イ−2)の混合物からなる。成分(イ)に、成分(イ−1)と成分(イ−2)を混合した場合の平均に近い値を有するブロック共重合体を単独で用いたとしても、本発明の効果を発現し難く、特に射出成形加工性に劣るものとなる。これは、得られるスチレン系熱可塑性エラストマー組成物のモルフォロジーや、架橋密度、その分布等によると考えられるが、その理由は明確ではない。
【0015】
上記ブロック共重合体の製造方法は、上記の構造・物性が得られる限り、如何なる方法であってもよい。例えば、特公昭40−23798号公報に記載された方法、即ち、リチウム触媒の存在下に不活性溶媒中でブロック重合を行う方法を採用することができる。また、これらのブロック共重合体の水素添加処理は、例えば特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特開昭59−133203号公報、特開昭60−79005号公報などに記載された方法により、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下で行うことができる。
【0016】
また、上記のようなブロック共重合体は、スチレン又はその誘導体とエラストマー性ブロックを重合し、これをカップリング剤によりカップリングして得ることも出来る。また、ジリチウム化合物を開始剤としてエラストマー性ブロックを重合し、次いで、スチレン又はその誘導体を逐次重合して得ることも出来る。
上記の様なブロック共重合体の市販品としては、「KRATON−G」(クレイトンポリマー社)、「セプトン」(株式会社クラレ)、「タフテック」(旭化成株式会社)等の商品が例示できる。
2)成分(ロ)
本発明で使用する成分(ロ)は、炭化水素系ゴム用軟化剤である。炭化水素系ゴム用軟化剤としては、重量平均分子量が通常300〜2,000、好ましくは500〜1,500の炭化水素が使用され、例えば、芳香族系、ナフテン系、及びパラフィン系の鉱物油系炭化水素、及びポリブテン系、ポリブタジエン系、ポリエステル系の低分子量物等の合成樹脂系炭化水素が好適である。
【0017】
一般に、鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素、及びパラフィン系炭化水素の混合物である。全炭素量に対し、芳香族炭化水素の炭素の割合が35重量%以上のものは芳香族系オイル、ナフテン系炭化水素の炭素の割合が30〜45重量%のものはナフテン系オイル、パラフィン系炭化水素の炭素の割合が50重量%以上のものはパラフィン系オイルと呼ばれる。本発明においては、パラフィン系オイルが好適に使用される。
【0018】
パラフィン系オイルの40℃での動粘度は通常20〜800cSt(センチストークス)、好ましくは50〜600cSt、流動点は通常−40〜0℃、好ましくは−30〜0℃、引火点(COC)は通常200〜400℃、好ましくは250〜350℃である。炭化水素系ゴム用軟化剤(ロ)は、得られる組成物の流動性を向上して成形加工性に寄与する。
【0019】
成分(ロ)を成分(イ)に配合する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、ミキシングロールやバンバリミキサーのような装置を用い、成分(イ)と成分(ロ)とを機械的に混練して油展する方法、或いは、成分(イ)の溶液に所定量の成分(ロ)を添加し、その後スチームストリッピング等の方法により脱溶媒して油展ゴムを得る方法、或いはクラム状の成分(イ)と成分(ロ)の混合物をヘンシェルミキサー等で撹拌して含浸させる方法などがある。
【0020】
これらの方法の中で、ヘンシェルミキサー等で撹拌して成分(イ)に成分(ロ)を含浸させる方法が、操作が容易となり好ましい。
3)成分(ハ)
本発明で使用する成分(ハ)は、オレフィン系樹脂である。オレフィン系樹脂としては、プロピレン系樹脂、エチレン系樹脂、結晶性ポリブテン−1樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合樹脂等が挙げられるが、プロピレン系樹脂が好適に用いられる。プロピレン系樹脂の具体例としては、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンを主成分とするプロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂、プロピレン−エチレンブロック共重合体樹脂等が挙げられる。重合様式は、樹脂状物が得られる限り、如何なる重合様式を採用しても差し支えない。
【0021】
上記のプロピレン系樹脂のメルトフローレート(JIS−K7210、230℃、21.2N荷重)は、通常0.05〜200g/10分、好ましくは0.1〜100g/10分である。メルトフローレートが上記範囲未満のものを用いた場合は、得られる組成物の成形性が悪化して外観に不良が生じやすく、上記範囲を超えるものを用いた場合は、得られる組成物の機械的特性、特に引張破壊強度が低下する傾向となる。
4)配合割合
本発明において、上記各成分の組成割合は次の通りである。すなわち、成分(イ)と成分(ロ)の配合比(重量)は、(イ)/(ロ)=20/80〜80/20の範囲であって、好ましくは(イ)/(ロ)=25/75〜70/30である。(イ)/(ロ)の配合比において成分(イ)が20/80より少ない場合は、得られる熱可塑性エラストマー組成物のゴム弾性が劣ると共に、軟化剤の耐ブリード性が低下し、成分(イ)が80/20超過の場合は、得られる組成物の柔軟性および成形加工性が劣る。
【0022】
一方成分(ハ)の配合量は、成分(イ)及び(ロ)の合計量100重量部あたり、1〜300重量部、好ましくは5〜200重量部であり、特に好ましくは10〜100重量部である。成分(ハ)の量が1重量部未満の場合は得られる熱可塑性エラストマー組成物の成形加工性が劣り、300重量部超過の場合は得られる組成物の柔軟性およびゴム弾性が劣る。
5)その他の配合成分
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、酸化防止剤を添加しておくことが好ましい。酸化防止剤として、例えば、モノフェノール系、ビスフェノール系、トリ以上のポリフェノール系、チオビスフェノール系、ナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、フェニレンジアミン系のもの等が挙げられる。これらの中では、モノフェノール系、ビスフェノール系、トリ以上のポリフェノール系、チオビスフェノール系の酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤の使用割合は、成分(イ)〜(ハ)の合計量に対し、通常0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%である。この添加量が0.01重量%未満では、酸化防止剤の効果が得られにくく、また5重量%を越すと添加量の増加に見合う効果の向上が得られず経済的に不利になったり、着色などの影響が出る場合がある。
【0023】
また、本発明における組成物には、本発明の目的、効果を損わない範囲内において、必要に応じて、各種熱可塑性樹脂やゴム、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、タルク、マイカ、シリカ、チタニア、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の充填剤、及び、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、分散剤、難燃剤、導電性付与剤、あるいは着色剤等を含有していてもよく、これらは、前記成分(イ)〜(ハ)のいずれかに予め含有させておくか、又は、各成分を均一に混合する時、溶融混練時或いは後述の動的熱処理時に配合される。
【0024】
ここで、必須成分以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂等を挙げることができる。
【0025】
また、任意のゴムとしては、例えばエチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム等のオレフィン系ゴム、ポリブタジエン等、また必須成分以外のスチレン系共重合体ゴム等を挙げることができる。
6)動的熱処理
本発明のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物は、前記成分(イ)〜(ハ)を含有し、架橋剤の存在下に動的に熱処理された組成物であり、少なくとも部分的に架橋されたものである。動的熱処理を行うことにより、得られる組成物のゴム弾性、耐熱性、耐油性が向上する。
【0026】
ここに、動的熱処理とは溶融状態又は半溶融状態で混練することを指す。通常、動的熱処理は、前記成分(イ)、(ロ)、及び(ハ)を均一に混合した後、架橋剤、必要に応じて架橋助剤の存在下に溶融混練することによって行なわれる。混合装置としては、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等が使用され、混練装置としては、ミキシングロール、ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダープラストグラフ、一軸又は二軸押出機等が使用される。混練温度は通常、100〜300℃、好ましくは110〜280℃であり、混練時間は、10秒〜30分、好ましくは20秒〜20分間である。また、動的熱処理時の材料の状態は使用する材料の種類や動的熱処理温度によって異なり、通常は半溶融状態または溶融状態となるが、特に制限されない。混練に際しては、各成分を一括して混練しても、また任意の成分を混練した後、他の残りの成分を添加して混練する多段分割混練法を用いても良い。
【0027】
この動的熱処理の際に用いる架橋剤としては有機過酸化物、硫黄、フェノール系架橋剤、マレイミド系架橋剤、オキシム類、ポリアミン等が用いられるが有機過酸化物、フェノール系架橋剤、マレイミド系架橋剤が好ましく、特に有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等のジアルキルパーオキシド類、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル類、アセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド類等が挙げられる。これらの中では、1分間の半減期温度が140℃以上の有機過酸化物が好ましく、例えば、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、又は、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。
【0028】
前記の架橋助剤としては、例えば、p−キノンジオキシム、p−ジニトロソベンゼン、1,3−ジフェニルグアニジン、m−フェニレンビスマレイミド等の過酸化物架橋用助剤、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の多官能ビニル化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」等の表記は、「アクリル又はメタクリル」等の意味を示すものである。
【0029】
動的熱処理に用いる有機過酸化物の使用割合としては、成分(イ)と(ロ)の合計量に対し、通常0.1〜3重量部、好ましくは0.1〜1重量部であり、架橋助剤の使用割合は0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部である。
動的熱処理を行って少なくとも部分的に架橋させることにより、組成物のゲル分率が上がり、ゴム弾性(圧縮永久歪み率)、耐油性等が改善される。ここでいう「部分的に架橋された」とは、下記の方法で測定したゴム成分のゲル分率(沸騰キシレン不溶解分)が例えば10重量%以上、特に20重量%以上98重量%未満である場合をいう。「完全に架橋された」とは、98重量%以上である場合をいう。本発明においては、ゲル分率が30重量%以上であることが好ましい。
【0030】
ゲル分率(沸騰キシレン不溶解分)の測定法としては熱可塑性エラストマーの試料を約100mg秤量し、50mlの沸騰キシレンに10時間含浸する。次にこの試料を濾紙上に取り出し室温にて72時間静置し乾燥させる。この乾燥残さの重量からポリマー成分以外の沸騰キシレン不溶成分(フィラー、充填剤等)の重量を減じた値を「補正された最終重量」とする。一方、試料の重量からポリマー成分以外の沸騰キシレン可溶成分(軟化剤等)の重量及びポリマー成分以外の沸騰キシレン不溶成分(フィラー、充填剤等)の重量を減じた値を「補正された初期重量」とする。
【0031】
ゲル分率は次式により求められる。
ゲル分率(重量%)=「補正された最終重量」/「補正された初期重量」×100
7)用途
上記のようにして得られたスチレン系熱可塑性エラストマー組成物は、通常、熱可塑性エラストマーに用いられる成形方法、例えば、射出成形法、押出成形法、中空成形法、圧縮成形法等によって、又はその後の積層成形、熱成形等の二次加工によって、単独であるいは他の材料と積層して成形体とされる。そして、自動車部品(ウェザーストリップ、天井材、内装シート、バンパーモール、サイドモール、グロメット、エアスポイラー、エアダクトホース、各種パッキン類等)、土木・建材部品(止水材、目地材、窓枠等)、スポーツ用品(ゴルフクラブやテニスラケットのグリップ類)、工業用部品(ホースチューブ、ガスケット等)、家電部品(ホース、パッキン類)、医療用機器部品、電線、及び雑貨等の広汎な分野での資材として用いられる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例により限定されるものではない。以下の諸例で使用した材料および評価方法は以下に示すとおりである。
<原材料>
成分(イ−1a);スチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロックの共重合構造からなるスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含有量33重量%、水素添加率98%以上、重量平均分子量245,000)。
成分(イ−1b)(比較例用);スチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロックの共重合構造からなるスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含有量29重量%、水素添加率98%以上、重量平均分子量75,000)。
成分(イ−2a);スチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロックの共重合構造からなるスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素未添加物(スチレン含有量31重量%、重量平均分子量144,700)。
成分(イ−2b);スチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロックの共重合構造からなるスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素未添加物(スチレン含有量30重量%、重量平均分子量104,900)。
成分(イ−3)(比較例用);スチレンブロック−ブタジエン・イソプレン−ブロック−スチレンブロックの共重合構造からなるスチレン−ブタジエン・イソプレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含有量30重量%、水素添加率51%、重量平均分子量215,000)。
成分(ロ);パラフィン系オイル(重量平均分子量746、40℃の動粘度382cSt、流動点−15℃、引火点300℃、出光興産(株)製「PW380」)。
成分(ハ);ポリプロピレン樹脂(日本ポリケム(株)製、メルトフローレート0.9g/10分(230℃、21.2N荷重)
架橋剤(POX);1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(化薬アクゾ(株)製「パーカドックス14」)
架橋助剤(DVB);ジビニルベンゼン(三成化成(株)製、55%品)
<評価方法>
以下の(1)〜(5)の測定には、インラインスクリュウタイプ射出成形機(東芝機械社製「IS130」)にて、射出圧力50MPa、シリンダ温度220℃、金型温度40℃の条件で射出成形して得られたシート(横120mm、縦80mm、肉厚2mm)を使用した。
(1)硬度:JIS K6253に準拠して測定した(JIS−A硬度)。
(2)圧縮永久歪み:JIS K6262に準拠し、70℃、100℃、120℃にて、22時間、25%圧縮の条件で測定した。
(3)耐油性:JIS K6258に準拠し、IRM903号オイル、120℃、22時間の条件にて、次式で表される重量変化率△Wを求めた。
【0033】
△W=(W2−W1)×100/W1
△W:重量変化率(%)
W1:浸せき前の空気中の質量
W2:浸せき後の空気中の質量
(4)軟化剤のブリード
射出成形シートを80℃で1週間ギヤオーブン中に静置した後、下記の基準で目視にて評価した。
【0034】
無:射出成形シートの表面にブリードが無い
有:射出成形シートの表面にブリードが見られる
(5)射出成形加工性
上記の成形条件で射出成形シートを得る際、その加工性や成形シート外観について、下記の基準で評価した。
【0035】
良好:材料に起因する問題として、ショートショットが無く、かつゲート近傍でのデラミやフローマーク等の著しい外観不良が無い
不良:材料に起因してショートショットや、ゲート近傍でのデラミやフローマーク等の著しい外観不良が発生した
<実施例1〜4および比較例1〜7>
表1に示す配合量(重量部)にて配合したエラストマー組成物の(イ)〜(ハ)成分の合計量100重量部に対して、テトラキス[メチレン−3−(3‘,5’−ジ−t−ブチル−4‘−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(商品名「イルガノックス1010」チバスペシャリティケミカルズ社製)0.1重量部を添加し、圧縮比L/Dが41、シリンダー径45mmの二軸押出機を用いて、110〜210℃の温度に設定して溶融混練して動的熱処理を行い、これをダイよりストランド状に押し出し、カッティングして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。このペレットを用い、上記の方法にて射出成形シートを作成して評価した。評価結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
Figure 2004307564
<結果の評価>
1)比較例1は、成分(イ−2)及び架橋剤を配合していないため、圧縮永久歪み、耐油性が劣っている。
2)比較例2は、成分(イ−2)を配合していないため、圧縮永久歪み、耐油性が劣っている。
3)比較例3は、架橋剤を配合していないため、対応する実施例1に比べ、圧縮永久歪み、耐油性が劣っている。
4)比較例4は、架橋剤を配合していないため、対応する実施例2に比べ、圧縮永久歪み、耐油性が劣っている。
5)比較例5は、成分(イ−2)の配合量が多く、本発明の範囲外であるため、圧縮永久歪みが劣っており、軟化剤のブリードが有り、また射出成形加工性が不良である。
6)比較例6は、成分(イ−1)として重量平均分子量が本発明の範囲外である成分(イ−1b)を用いているため、対応する実施例1に比べ、圧縮永久歪み、耐油性が劣っており、軟化剤のブリードが有り、射出成形加工性が不良である。
7)比較例7は、成分(イ−1)と成分(イ−2)を配合せず、両者の中間的な特性をもつブロック共重合体を単独で用いた例であるが、射出成形加工性が不良である。
【0037】
【発明の効果】
本発明により、柔軟性、耐油性、ゴム弾性に優れるスチレン系熱可塑性エラストマー組成物が提供され、車両用部材、家電製品用部材、OA機器用部材、医療用部材、雑貨などに有用に使用することが可能となり、本発明の工業的価値は顕著である。

Claims (5)

  1. 下記の成分(イ)〜(ハ)を含有し、成分(イ)と成分(ロ)との配合比(重量)が(イ)/(ロ)=20/80〜80/20の範囲であって、且つ成分(イ)及び成分(ロ)の合計量100重量部に対する成分(ハ)の割合が1〜300重量部の混合物を、架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られるスチレン系熱可塑性エラストマー組成物。
    (イ)重量平均分子量が8.0万〜100万であるブロック共重合体であって、一般式(I)で表されるブロック共重合体を水素添加して得られる、水素添加率70%以上の水添ブロック共重合体(イ−1)と、
    重量平均分子量が5.0万〜20万であるブロック共重合体であって、一般式(I)で表される水素添加率5%以下の、他のブロック共重合体(イ−2)とからなり、(イ−2)の割合(重量)が、(イ−1)と(イ−2)の合計量の5〜60重量%であるブロック共重合体混合物
    一般式 A(B−A)nおよび/または(A−B)n………(I)
    (ただし、式中のAはビニル芳香族炭化水素の重合体ブロック(以下「Aブロック」と略記する)、Bはエラストマー性重合体ブロック(以下「Bブロック」と略記する)であり、nは1〜5の整数である)
    (ロ)炭化水素系ゴム用軟化剤
    (ハ)オレフィン系樹脂
  2. 一般式(I)に記載のBブロックが共役ジエンのエラストマー性重合体ブロックである請求項1に記載のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 一般式(I)に記載のAブロックがスチレン重合体ブロックであり、Bブロックがブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック又はブタジエン・イソプレン共重合体ブロックであり、かつ成分(イ)中のAブロックの割合が10〜50重量%である請求項1又は2に記載のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物。
  4. 成分(ハ)が、プロピレン系樹脂である請求項1乃至3の何れか1項に記載のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物。
  5. 架橋剤が有機過酸化物である請求項1乃至4の何れか1項に記載のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物。
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