JP2004307383A - アスコルビン酸誘導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】酸化防止剤などとして有用なアスコルビン酸誘導体の製造方法に関する。さらに詳しくは、経済性及び操作性に優れ、地球環境への負担が少ない、工業的に優れた製造方法に関する。
【解決手段】アスコルビン酸の2位水酸基に地球環境への負担のない水溶媒中で反応試薬として硫酸ジエチルを用い、直接1工程でエチル基を導入する。
【選択図】 なし
【解決手段】アスコルビン酸の2位水酸基に地球環境への負担のない水溶媒中で反応試薬として硫酸ジエチルを用い、直接1工程でエチル基を導入する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化防止剤などとして有用なアスコルビン酸誘導体の製造方法に関する。さらに詳しくは、経済性及び操作性に優れ、地球環境への負担が少ない、工業的に優れた製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アスコルビン酸には2位、3位、5位及び6位の4個の水酸基があり、これら4個の水酸基のうち特定の1個の水酸基に選択的に置換基を導入することは困難である。特に2位水酸基に選択的に置換基を導入することは困難であり、2位水酸基のみが置換された誘導体の製造方法としては以下のような方法が知られているだけである。
【0003】
すなわち、アスコルビン酸の3位,5位及び6位の水酸基を保護基にて保護した後、2位水酸基を置換し、ついで加水分解反応、還元反応などにより3位,5位及び6位の保護基を脱離して目的とするアスコルビン酸誘導体を得る方法。(特許文献1,2)
【特許文献1】特開昭60−130582号
【特許文献2】特開昭61−263969号
【0004】
アスコルビン酸の5位及び6位水酸基をイソプロピリデン基で保護した5,6−O−イソプロピリデンアスコルビン酸の3位水酸基を保護した後、2位水酸基をアルキルハライドでアルキル化し、ついで加水分解反応によりイソプロピリデン基及び3位水酸基の保護基を脱離する、または加水分解反応によりイソプロピリデン基を脱離した後、3位水酸基の保護基を還元反応により脱離することにより目的とするアスコルビン酸誘導体を得る方法。(非特許文献1)
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・メディシナルケミストリー(J.Med.Chem.),31巻,793〜798ページ(1988年)
【0005】
また、特許文献3にはアスコルビン酸あるいは5位及び6位水酸基を保護したアスコルビン酸の2位水酸基を直接アルキル化またはアルケニル化して目的とするアスコルビン酸誘導体を得る方法が記載されている。しかしながら、特許文献3に記載されている実施例はすべて5位及び6位水酸基をイソプロピリデン基で保護したアスコルビン酸の2位水酸基を直接アルキル化またはアルケニル化し、ついで加水分解反応によりイソプロピリデン基を脱離して目的とするアスコルビン酸誘導体を得る方法が開示されているだけであり、アスコルビン酸の2位水酸基を選択的に直接アルキル化またはアルケニル化して目的とするアスコルビン酸誘導体を得る方法が具体的に開示されているとは言えない。
【特許文献3】特許第2830268号公報(特開平2−275874号)
【0006】
また、特許文献3ではアスコルビン酸の5位及び6位をイソプロピリデン基で保護することにより水溶性のアスコルビン酸を脂溶性の誘導体とすることにより有機溶媒への溶解性を高めて有機溶媒中にて反応を行うことが開示されているに過ぎず、水溶性のアスコルビン酸をそのまま水溶媒中で反応させる方法は全く開示されていない。
【0007】
さらに、特許文献3では2位水酸基を置換する置換基としてドデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、イコシル、等の長鎖アルキル基、3−フェニルプロピル等の炭素数9以上の極めて脂溶性の高い置換基が開示されているだけであり、アスコルビン酸の2位を置換する置換基として脂溶性の低いエチル基について具体的に開示されているとは言えない。2位置換基の脂溶性が高い場合と低い場合では化合物の物性が大きく異なり、反応溶媒への溶解性、反応試薬との反応性、分離精製方法なども大きく異なる。
従って、2位置換基の脂溶性が高い場合と低い場合では使用する反応溶媒、反応試薬、分離精製方法も大きく異なる。特許文献3では反応溶媒としてメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール等のアルコール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルスルホキシド、アセトニトリル、トルエン等の有機溶媒を単独または2種以上を混合して用いているが、これらの有機溶媒は脂溶性の高い化合物を扱う場合に用いる溶媒であり、脂溶性が低い化合物を扱う場合については開示されていない。
【0008】
また、特許文献3で反応溶媒として使用している有機溶媒は、製造後の廃棄処理の観点から考察すれば、地球環境への負担が大きく好ましくない。
【0009】
また、特許文献3の実施例では2位水酸基に置換基を導入する反応試薬としてはオクタデシルベンゼンスルホネート、ペンタデシルベンゼンスルホネート、ヘキサデシルベンゼンスルホネート、ヘプタデシルベンゼンスルホネート、イコシルベンゼンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、(3−フェニル)プロピルベンゼンスルホネート、(2−オクタデシルオキシ)エチルベンゼンスルホンネート、1−オクタデシルパラクロロベンゼンスルホネート、1−ヨードオクタデカン、1−ブロモオクタデカンハロゲン化アルキル、アルキルベンゼンスルホネート等の脂溶性の高いベンゼンスルホネート体及びハロゲン化体が開示されているが、脂溶性の低いエチル基を導入する試薬については具体的に開示されているとは言えない。さらに、エチル基を導入する試薬として硫酸ジエチルを使用することについては全く開示されていない。
【0010】
すなわち、特許文献3では、アスコルビン酸の5位及び6位水酸基をイソプロピリデン基で保護して有機溶媒への溶解性を高めた誘導体に、有機溶媒中、極めて脂溶性の高い置換基を、極めて脂溶性の高い反応試薬を用いて導入し、ついで加水分解によりイソプロピル基を脱離して、アスコルビン酸の2位水酸基を極めて脂溶性の高い置換基で置換したアスコルビン酸誘導体を得る製造方法が開示されているに過ぎず、アスコルビン酸の2位水酸基に脂溶性の低いエチル基を地球環境への負担のない水溶媒中で反応試薬として硫酸ジエチルを用いて直接1工程で導入するアスコルビン酸の2位水酸基を脂溶性の低いエチル基で置換したアスコルビン酸誘導体を得る製造方法が具体的に開示されているとは全く言えない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
アスコルビン酸の2位水酸基に置換基を導入しようとする場合には、まず、有機溶媒に対する溶解性を高めるために5位,6位の水酸基を保護し、次に2位の水酸基より酸性度が高く、反応性に富んでいる3位の水酸基を保護した後に2位水酸基に置換基を導入する方法がアスコルビン酸の2位置換誘導体の一般的製造法として採用されてきた。しかしながら、上記製造方法を工業的見地から考察すれば、保護基の導入及び脱離の工程を含み、経済性、操作性等の観点から不利である。また、反応溶媒としてメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール等のアルコール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルスルホキシド、アセトニトリル、トルエン等の有機溶媒が単独または2種以上を混合して用いられるが、これらの有機溶媒は製造後の廃棄処理の観点から考察すれば、地球環境への負担が大きく好ましくない。
【0012】
すなわち、アスコルビン酸の2位水酸基に直接1工程で脂溶性の低いエチル基を導入する、地球環境への負担が少なく、経済性、操作性に優れた、2位水酸基をエチル基で置換したアスコルビン酸誘導体の工業的製造方法は全く知られていなかった。
【0013】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、アスコルビン酸の2位水酸基に直接1工程で脂溶性の低いエチル基を導入する、地球環境への負担が少なく、経済性、操作性に優れた、2位水酸基をエチル基で置換したアスコルビン酸誘導体の工業的製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明者等が鋭意検討を重ねた結果、アスコルビン酸の2位水酸基に直接1工程で脂溶性の低いエチル基を導入する、地球環境への負担が少なく、経済性、操作性に優れた、2位水酸基をエチル基で置換したアスコルビン酸誘導体の工業的製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明はアスコルビン酸の2位水酸基に地球環境への負担のない水溶媒中で反応試薬として硫酸ジエチルを用いて直接1工程でエチル基を導入することを特徴とするアスコルビン酸の2位水酸基をエチル基で置換したアスコルビン酸誘導体を得る製造方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のアスコルビン酸誘導体の製造方法を以下に示す。
【化2】
本発明で用いるアスコルビン酸はL−アスコルビン酸、D−アスコルビン酸またはその混合物でもよい。反応溶媒はアスコルビン酸が溶解するものであれば特に制限はないが水が好ましい。反応温度は、特に制限はないが、室温から反応溶媒の沸点の範囲が好ましく、より好ましくは40〜80℃、更に好ましくは50〜70℃である。反応溶液のpHはアルカリ性が好ましく、より好ましくはpH9〜12、更に好ましくはpH10〜11である。アスコルビン酸に対する硫酸ジエチルの使用量は、特に制限はないが、1〜3当量が好ましく、1.5〜2.5当量が更に好ましい。硫酸ジエチルは一度に加えてもよいが、1〜数時間かけて徐々に加える方が好ましい。反応時間は反応溶媒、反応温度、硫酸ジエチルの使用量により異なるが、1〜24時間が好ましく、より好ましくは1〜10時間、更に好ましくは2〜4時間である。
【0017】
また、アスコルビン酸類は酸化されやすいため、反応系内をアルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガスで置換して反応を行うことが好ましい。さらに、反応は攪拌下行うが、反応溶媒として水を用いた場合には反応速度を増大させるために反応系内に塩化テトラブチルホスホニウム等の4級ホスホニウム塩や塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム等の4級アンモニウム塩等の相間移動触媒を加えることも好ましい。
【0018】
このようにして製造されるアスコルビン酸の2位水酸基をエチル基で置換したアスコルビン酸誘導体はシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー、活性炭処理、抽出、再結晶等の公知の分離、精製手段により単離することができる。反応系内よりアスコルビン酸誘導体を単離精製するための抽出溶媒としては水と混和しない溶媒、すなわち、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ヘキサン、n−ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタンなどの有機溶媒を用いることができるが、酢酸エチル、ジイソプロピルエーテル、ヘキサンなどが好ましい。また、アスコルビン酸誘導体の抽出をより効率的に行うために、反応系内を中性または酸性にするのが好ましく、酸性にするのが更に好ましい。そのためには反応系内に酸を加えればよいが、塩酸、硫酸などを無機酸を用いるのが好ましい。
【0019】
なお、本発明のアスコルビン酸誘導体は公知の方法により無機塩又は有機塩とすることができる。無機塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。有機塩としては、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
【0020】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
実施例1
アルゴン気流下、L−アスコルビン酸(10.0g,56.8mmol)を水(100mL)に溶解し、10M水酸化ナトリウム水溶液を加え、反応液のpHを10.5とした。10M水酸化ナトリウム水溶液により反応液のpHを10.5に保ちながら、60℃にて硫酸ジエチル(11.9mL,90.9mmol)を1時間かけて徐々に加えた。さらに60℃にて2時間攪拌後、放冷した。1M硫酸を加え反応液のpHを2とした後、酢酸エチルにて抽出した。
有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮し、得られた粗結晶を酢酸エチルより再結晶し、2−O−エチル−L−アスコルビン酸の白色結晶(3.82g,収率33%)を得た。
【0021】
得られた化合物の化学分析値は次の通りであった。
融点 130 〜 132℃(Capil.)
【0022】
元素分析値:C8H12O6として
【0023】
1H−NMR(DMSO−d6,TMS,ppm)
【化3】
δ:1.19(t,3H,J=6.8 Hz: H−a)
3.39 〜 3.47(m,2H,: H−g),
3.76(m,1H,: H−e),
3.93(m,2H,: H−b),
4.75(d,1H,J=1.5 Hz: H−d),
4.84(bs,2H,: H−f,H−h),
11.52(bs,1H: H−c)
【0024】
13C−NMR: (DMSO−d6,TMS,ppm)
【化4】
δ: 14.8(CH3CH2O−),61.8(C−6),66.5(CH3 CH2O−),68.4(C−5),74.5(C−4),119.5(C−2),159.2(C−3),169.6(C−1)
【0025】
MSスペクトル: MW=204(C8H12O6=204.18)
上記した 2−O−エチル−L−アスコルビン酸の化学分析値は以下の実施例においても同様であった。
【0026】
実施例2
窒素気流下、L−アスコルビン酸(10.0g,56.8mmol)を水(100mL)に溶解し、10M水酸化ナトリウム水溶液を加え、反応液のpHを11とした。10M水酸化ナトリウム水溶液により反応液のpHを11に保ちながら、50℃にて硫酸ジエチル(14.9mL,114.0mmol)を1時間かけて徐々に加えた。さらに50℃にて4時間攪拌後、放冷した。1M塩酸を加え反応液のpHを2とした後、酢酸エチルにて抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮し、得られた粗結晶を酢酸エチルより再結晶し、2−O−エチル−L−アスコルビン酸の白色結晶(4.12g,収率35%)を得た。
【0027】
実施例3
窒素気流下、L−アスコルビン酸(10.0g,56.8mmol)及び塩化テトラブチルアンモニウム(1.0g,3.6mmol)を水(100mL)に溶解し、10M水酸化カリウム水溶液を加え、反応液のpHを10とした。10M水酸化カリウム水溶液により反応液のpHを10に保ちながら、70℃にて硫酸ジエチル(18.6mL,142.3mmol)を1時間かけて徐々に加えた。さらに70℃にて1時間攪拌後、放冷した。1M硫酸を加え反応液のpHを2とした後、酢酸エチルにて抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮し、得られた粗結晶を酢酸エチルより再結晶し、2−O−エチル−L−アスコルビン酸の白色結晶(4.72g,収率41%)を得た。
【0028】
【発明の効果】
本発明の製造法によると、反応溶媒として水を用いてアスコルビン酸の2位水酸基に直接1工程でエチル基を導入することができるので、2位水酸基をエチル基で置換したアスコルビン酸誘導体を、地球環境への負担が少なく、経済性、操作性の点で有利に工業的に製造することが可能である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化防止剤などとして有用なアスコルビン酸誘導体の製造方法に関する。さらに詳しくは、経済性及び操作性に優れ、地球環境への負担が少ない、工業的に優れた製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アスコルビン酸には2位、3位、5位及び6位の4個の水酸基があり、これら4個の水酸基のうち特定の1個の水酸基に選択的に置換基を導入することは困難である。特に2位水酸基に選択的に置換基を導入することは困難であり、2位水酸基のみが置換された誘導体の製造方法としては以下のような方法が知られているだけである。
【0003】
すなわち、アスコルビン酸の3位,5位及び6位の水酸基を保護基にて保護した後、2位水酸基を置換し、ついで加水分解反応、還元反応などにより3位,5位及び6位の保護基を脱離して目的とするアスコルビン酸誘導体を得る方法。(特許文献1,2)
【特許文献1】特開昭60−130582号
【特許文献2】特開昭61−263969号
【0004】
アスコルビン酸の5位及び6位水酸基をイソプロピリデン基で保護した5,6−O−イソプロピリデンアスコルビン酸の3位水酸基を保護した後、2位水酸基をアルキルハライドでアルキル化し、ついで加水分解反応によりイソプロピリデン基及び3位水酸基の保護基を脱離する、または加水分解反応によりイソプロピリデン基を脱離した後、3位水酸基の保護基を還元反応により脱離することにより目的とするアスコルビン酸誘導体を得る方法。(非特許文献1)
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・メディシナルケミストリー(J.Med.Chem.),31巻,793〜798ページ(1988年)
【0005】
また、特許文献3にはアスコルビン酸あるいは5位及び6位水酸基を保護したアスコルビン酸の2位水酸基を直接アルキル化またはアルケニル化して目的とするアスコルビン酸誘導体を得る方法が記載されている。しかしながら、特許文献3に記載されている実施例はすべて5位及び6位水酸基をイソプロピリデン基で保護したアスコルビン酸の2位水酸基を直接アルキル化またはアルケニル化し、ついで加水分解反応によりイソプロピリデン基を脱離して目的とするアスコルビン酸誘導体を得る方法が開示されているだけであり、アスコルビン酸の2位水酸基を選択的に直接アルキル化またはアルケニル化して目的とするアスコルビン酸誘導体を得る方法が具体的に開示されているとは言えない。
【特許文献3】特許第2830268号公報(特開平2−275874号)
【0006】
また、特許文献3ではアスコルビン酸の5位及び6位をイソプロピリデン基で保護することにより水溶性のアスコルビン酸を脂溶性の誘導体とすることにより有機溶媒への溶解性を高めて有機溶媒中にて反応を行うことが開示されているに過ぎず、水溶性のアスコルビン酸をそのまま水溶媒中で反応させる方法は全く開示されていない。
【0007】
さらに、特許文献3では2位水酸基を置換する置換基としてドデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、イコシル、等の長鎖アルキル基、3−フェニルプロピル等の炭素数9以上の極めて脂溶性の高い置換基が開示されているだけであり、アスコルビン酸の2位を置換する置換基として脂溶性の低いエチル基について具体的に開示されているとは言えない。2位置換基の脂溶性が高い場合と低い場合では化合物の物性が大きく異なり、反応溶媒への溶解性、反応試薬との反応性、分離精製方法なども大きく異なる。
従って、2位置換基の脂溶性が高い場合と低い場合では使用する反応溶媒、反応試薬、分離精製方法も大きく異なる。特許文献3では反応溶媒としてメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール等のアルコール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルスルホキシド、アセトニトリル、トルエン等の有機溶媒を単独または2種以上を混合して用いているが、これらの有機溶媒は脂溶性の高い化合物を扱う場合に用いる溶媒であり、脂溶性が低い化合物を扱う場合については開示されていない。
【0008】
また、特許文献3で反応溶媒として使用している有機溶媒は、製造後の廃棄処理の観点から考察すれば、地球環境への負担が大きく好ましくない。
【0009】
また、特許文献3の実施例では2位水酸基に置換基を導入する反応試薬としてはオクタデシルベンゼンスルホネート、ペンタデシルベンゼンスルホネート、ヘキサデシルベンゼンスルホネート、ヘプタデシルベンゼンスルホネート、イコシルベンゼンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、(3−フェニル)プロピルベンゼンスルホネート、(2−オクタデシルオキシ)エチルベンゼンスルホンネート、1−オクタデシルパラクロロベンゼンスルホネート、1−ヨードオクタデカン、1−ブロモオクタデカンハロゲン化アルキル、アルキルベンゼンスルホネート等の脂溶性の高いベンゼンスルホネート体及びハロゲン化体が開示されているが、脂溶性の低いエチル基を導入する試薬については具体的に開示されているとは言えない。さらに、エチル基を導入する試薬として硫酸ジエチルを使用することについては全く開示されていない。
【0010】
すなわち、特許文献3では、アスコルビン酸の5位及び6位水酸基をイソプロピリデン基で保護して有機溶媒への溶解性を高めた誘導体に、有機溶媒中、極めて脂溶性の高い置換基を、極めて脂溶性の高い反応試薬を用いて導入し、ついで加水分解によりイソプロピル基を脱離して、アスコルビン酸の2位水酸基を極めて脂溶性の高い置換基で置換したアスコルビン酸誘導体を得る製造方法が開示されているに過ぎず、アスコルビン酸の2位水酸基に脂溶性の低いエチル基を地球環境への負担のない水溶媒中で反応試薬として硫酸ジエチルを用いて直接1工程で導入するアスコルビン酸の2位水酸基を脂溶性の低いエチル基で置換したアスコルビン酸誘導体を得る製造方法が具体的に開示されているとは全く言えない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
アスコルビン酸の2位水酸基に置換基を導入しようとする場合には、まず、有機溶媒に対する溶解性を高めるために5位,6位の水酸基を保護し、次に2位の水酸基より酸性度が高く、反応性に富んでいる3位の水酸基を保護した後に2位水酸基に置換基を導入する方法がアスコルビン酸の2位置換誘導体の一般的製造法として採用されてきた。しかしながら、上記製造方法を工業的見地から考察すれば、保護基の導入及び脱離の工程を含み、経済性、操作性等の観点から不利である。また、反応溶媒としてメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール等のアルコール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルスルホキシド、アセトニトリル、トルエン等の有機溶媒が単独または2種以上を混合して用いられるが、これらの有機溶媒は製造後の廃棄処理の観点から考察すれば、地球環境への負担が大きく好ましくない。
【0012】
すなわち、アスコルビン酸の2位水酸基に直接1工程で脂溶性の低いエチル基を導入する、地球環境への負担が少なく、経済性、操作性に優れた、2位水酸基をエチル基で置換したアスコルビン酸誘導体の工業的製造方法は全く知られていなかった。
【0013】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、アスコルビン酸の2位水酸基に直接1工程で脂溶性の低いエチル基を導入する、地球環境への負担が少なく、経済性、操作性に優れた、2位水酸基をエチル基で置換したアスコルビン酸誘導体の工業的製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明者等が鋭意検討を重ねた結果、アスコルビン酸の2位水酸基に直接1工程で脂溶性の低いエチル基を導入する、地球環境への負担が少なく、経済性、操作性に優れた、2位水酸基をエチル基で置換したアスコルビン酸誘導体の工業的製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明はアスコルビン酸の2位水酸基に地球環境への負担のない水溶媒中で反応試薬として硫酸ジエチルを用いて直接1工程でエチル基を導入することを特徴とするアスコルビン酸の2位水酸基をエチル基で置換したアスコルビン酸誘導体を得る製造方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のアスコルビン酸誘導体の製造方法を以下に示す。
【化2】
本発明で用いるアスコルビン酸はL−アスコルビン酸、D−アスコルビン酸またはその混合物でもよい。反応溶媒はアスコルビン酸が溶解するものであれば特に制限はないが水が好ましい。反応温度は、特に制限はないが、室温から反応溶媒の沸点の範囲が好ましく、より好ましくは40〜80℃、更に好ましくは50〜70℃である。反応溶液のpHはアルカリ性が好ましく、より好ましくはpH9〜12、更に好ましくはpH10〜11である。アスコルビン酸に対する硫酸ジエチルの使用量は、特に制限はないが、1〜3当量が好ましく、1.5〜2.5当量が更に好ましい。硫酸ジエチルは一度に加えてもよいが、1〜数時間かけて徐々に加える方が好ましい。反応時間は反応溶媒、反応温度、硫酸ジエチルの使用量により異なるが、1〜24時間が好ましく、より好ましくは1〜10時間、更に好ましくは2〜4時間である。
【0017】
また、アスコルビン酸類は酸化されやすいため、反応系内をアルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガスで置換して反応を行うことが好ましい。さらに、反応は攪拌下行うが、反応溶媒として水を用いた場合には反応速度を増大させるために反応系内に塩化テトラブチルホスホニウム等の4級ホスホニウム塩や塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム等の4級アンモニウム塩等の相間移動触媒を加えることも好ましい。
【0018】
このようにして製造されるアスコルビン酸の2位水酸基をエチル基で置換したアスコルビン酸誘導体はシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー、活性炭処理、抽出、再結晶等の公知の分離、精製手段により単離することができる。反応系内よりアスコルビン酸誘導体を単離精製するための抽出溶媒としては水と混和しない溶媒、すなわち、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ヘキサン、n−ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタンなどの有機溶媒を用いることができるが、酢酸エチル、ジイソプロピルエーテル、ヘキサンなどが好ましい。また、アスコルビン酸誘導体の抽出をより効率的に行うために、反応系内を中性または酸性にするのが好ましく、酸性にするのが更に好ましい。そのためには反応系内に酸を加えればよいが、塩酸、硫酸などを無機酸を用いるのが好ましい。
【0019】
なお、本発明のアスコルビン酸誘導体は公知の方法により無機塩又は有機塩とすることができる。無機塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。有機塩としては、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
【0020】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
実施例1
アルゴン気流下、L−アスコルビン酸(10.0g,56.8mmol)を水(100mL)に溶解し、10M水酸化ナトリウム水溶液を加え、反応液のpHを10.5とした。10M水酸化ナトリウム水溶液により反応液のpHを10.5に保ちながら、60℃にて硫酸ジエチル(11.9mL,90.9mmol)を1時間かけて徐々に加えた。さらに60℃にて2時間攪拌後、放冷した。1M硫酸を加え反応液のpHを2とした後、酢酸エチルにて抽出した。
有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮し、得られた粗結晶を酢酸エチルより再結晶し、2−O−エチル−L−アスコルビン酸の白色結晶(3.82g,収率33%)を得た。
【0021】
得られた化合物の化学分析値は次の通りであった。
融点 130 〜 132℃(Capil.)
【0022】
元素分析値:C8H12O6として
【0023】
1H−NMR(DMSO−d6,TMS,ppm)
【化3】
δ:1.19(t,3H,J=6.8 Hz: H−a)
3.39 〜 3.47(m,2H,: H−g),
3.76(m,1H,: H−e),
3.93(m,2H,: H−b),
4.75(d,1H,J=1.5 Hz: H−d),
4.84(bs,2H,: H−f,H−h),
11.52(bs,1H: H−c)
【0024】
13C−NMR: (DMSO−d6,TMS,ppm)
【化4】
δ: 14.8(CH3CH2O−),61.8(C−6),66.5(CH3 CH2O−),68.4(C−5),74.5(C−4),119.5(C−2),159.2(C−3),169.6(C−1)
【0025】
MSスペクトル: MW=204(C8H12O6=204.18)
上記した 2−O−エチル−L−アスコルビン酸の化学分析値は以下の実施例においても同様であった。
【0026】
実施例2
窒素気流下、L−アスコルビン酸(10.0g,56.8mmol)を水(100mL)に溶解し、10M水酸化ナトリウム水溶液を加え、反応液のpHを11とした。10M水酸化ナトリウム水溶液により反応液のpHを11に保ちながら、50℃にて硫酸ジエチル(14.9mL,114.0mmol)を1時間かけて徐々に加えた。さらに50℃にて4時間攪拌後、放冷した。1M塩酸を加え反応液のpHを2とした後、酢酸エチルにて抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮し、得られた粗結晶を酢酸エチルより再結晶し、2−O−エチル−L−アスコルビン酸の白色結晶(4.12g,収率35%)を得た。
【0027】
実施例3
窒素気流下、L−アスコルビン酸(10.0g,56.8mmol)及び塩化テトラブチルアンモニウム(1.0g,3.6mmol)を水(100mL)に溶解し、10M水酸化カリウム水溶液を加え、反応液のpHを10とした。10M水酸化カリウム水溶液により反応液のpHを10に保ちながら、70℃にて硫酸ジエチル(18.6mL,142.3mmol)を1時間かけて徐々に加えた。さらに70℃にて1時間攪拌後、放冷した。1M硫酸を加え反応液のpHを2とした後、酢酸エチルにて抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮し、得られた粗結晶を酢酸エチルより再結晶し、2−O−エチル−L−アスコルビン酸の白色結晶(4.72g,収率41%)を得た。
【0028】
【発明の効果】
本発明の製造法によると、反応溶媒として水を用いてアスコルビン酸の2位水酸基に直接1工程でエチル基を導入することができるので、2位水酸基をエチル基で置換したアスコルビン酸誘導体を、地球環境への負担が少なく、経済性、操作性の点で有利に工業的に製造することが可能である。
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2003
- 2003-04-04 JP JP2003102170A patent/JP2004307383A/ja active Pending
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