JP2004307343A - 3価セリウム塩及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】水溶液中で3価のセリウムイオンとして安定に存在させることができる3価セリウム塩、その水溶液及び製造方法を提供する。
【解決手段】3個以上の配位部位を持つ還元性有機酸の3価セリウム塩。
【選択図】 なし
【解決手段】3個以上の配位部位を持つ還元性有機酸の3価セリウム塩。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、3価セリウム塩、その水溶液及び製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
3価セリウム塩は、例えば、電着塗料中の耐食性付与剤、硬化触媒等として使用することができるものである。
しかしながら、酢酸セリウム(III)等の3価セリウムは、通常、水性溶液中で安定性に劣り、3価のセリウムイオンが4価のセリウムイオンに容易に酸化され、生成した4価のセリウムイオンは水酸化セリウム(IV)又は酸化セリウム(IV)となって溶存できなくなってしまう。
【0003】
このため、水溶液中おいて、3価のセリウムイオンが長期間安定に存在するような3価セリウム塩を提供することは、一般的に困難であり、上述した耐食性付与剤、硬化触媒等の用途に対して好適に適用することができる3価セリウム塩の開発が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、水溶液中で3価のセリウムイオンとして安定に存在させることができる3価セリウム塩、その水溶液及び製造方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、3個以上の配位部位を持つ還元性有機酸の3価セリウム塩である。
上記還元性有機酸は、アスコルビン酸であることが好ましい。
本発明は、下記式(1);
【0006】
【化2】
【0007】
で表されることを特徴とする3価セリウム塩である。
本発明は、セリウム(III)化合物と還元性有機酸とを反応させることにより得られることを特徴とする3価セリウム塩である。
上記セリウム(III)化合物は、炭酸セリウムであることが好ましい。
【0008】
本発明は、上記3価セリウム塩の水溶液である。
本発明は、上記3価セリウム塩の製造方法であって、セリウム(III)化合物と還元性有機酸とを反応させる工程からなることを特徴とする3価セリウム塩の製造方法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明は、3個以上の配位部位を持つ還元性有機酸の3価セリウム塩である。
これにより、上記3価セリウム塩は、水溶液中において、3価のセリウムイオンとして安定に存在することができるものであり、4価のセリウムイオンに酸化されにくいものである。
【0010】
通常、例えば、酢酸セリウム(III)のような水溶化することによって3価のセリウムイオンを供給することができるセリウム化合物を水に溶解し、3価のセリウムイオンが溶解する水溶液を調製すると、その水溶液の調製後、比較的短時間のうちに、水溶液中の3価のセリウムイオンが4価のセリウムイオンに酸化されてしまう。水溶液中では、4価のセリウムイオンは安定性が低く、水と容易に反応して水酸化セリウム(IV)又は酸化セリウム(IV)に変化し、不溶化してしまう。従って、3価のセリウムイオンを含有する安定な水溶液を調製することは困難であった。
【0011】
一方、本発明の3価セリウム塩は、3個以上の配位部位を持つ有機酸の塩である。これにより、3価セリウムイオンにこの配位部位が配位することによって水溶液中での3価のセリウムイオンは安定化している。また、上記3価セリウム塩は、還元性を有する塩でもあることから、抗酸化能を有し、3価のセリウムイオンは、4価に酸化されることが抑制されている。即ち、上記3価セリウム塩の水溶液は、生成する3価のセリウムイオンに3個以上の配位部位を有する還元性有機酸がキレート状に配位し、その結果、セリウムイオンが3価として安定に存在する水溶液を得ることができる。
【0012】
上記配位部位は、水溶液中における3価のセリウムイオンに配位することができる還元性有機酸中の部位である。
上記配位部位としては、例えば、−OH、−CO−、−O−、−NH2、−NH−、−N<、−SH、−S−等を挙げることができる。上記配位部位は、同種のものであってもよく、異種のものであってもよい。なお、上記配位部位は、中性状態であってもよく、イオン化された状態であってもよい。
【0013】
上記還元性とは、3価のセリウムイオンが4価に酸化されることを抑制することができる性質である。
【0014】
上記還元性有機酸としては、例えば、以下の構造を有する有機酸を挙げることができる。
【0015】
【化3】
【0016】
上記還元性有機酸としては、3個以上の配位部位を有し、還元性を有する有機酸であれば特に限定されず、アスコルビン酸、グルクロン酸、没食子酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、2−ヒドロキシ酪酸、グリオキシル酸等を挙げることができる。なかでも、還元能が高く、かつ熱的にも安定で、3価のセリウムイオンを安定に存在させることができる点から、アスコルビン酸を用いるのが好ましい。上記の酸のうち、光学異性体を有するものがあるがD−体、L−体やこれらの混合物のいずれも好適に用いることができる。アスコルビン酸の場合、より入手しやすいL−アスコルビン酸を用いることが経済的な観点からより好適に用いられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
アスコルビン酸は3価のセリウムイオンの抗酸化能は高いが、分子量が大きいためアスコルビン酸のみと3価のセリウムの塩は水への溶解度自体は高くない。これは、比較的分子量の大きいアスコルビン酸の3分子が3価のセリウムイオン1分子に配位し、安定なキレート状態を維持すると、形成された塩が水への溶存状態を保持できずに固体として析出する傾向となるためである。そこで、セリウムイオンの還元能はアスコルビン酸より劣るものの、分子量が小さい還元性を有する酸とアスコルビン酸を併用して3価のセリウムとの塩を調製すると水への溶解度が高く、かつ、水溶液中でより安定に溶解させることができる。アスコルビン酸と併用する酸としては、溶解度の向上の観点から乳酸、2−ヒドロキシ酪酸が好ましい。経済的な観点から乳酸をアスコルビン酸と併用するのが更に好ましい。アスコルビン酸と乳酸を併用する場合、アスコルビン酸:乳酸をmol比でおよそ1:2〜2.6とするのが、溶解度と溶解安定性を両立させる点から好ましい。
【0018】
上記3価セリウム塩が還元性有機酸と還元性有機酸以外の有機酸とを含んでなるものである場合には、上記セリウム塩の調製において、セリウム(III)化合物におけるセリウム量と、還元性有機酸量と還元性有機酸以外の有機酸量との合計モル比としては、3価のセリウムイオンとして水溶液中で安定化させることから、およそ1:3となるように使用することが好ましい。還元性有機酸量と還元性有機酸以外の有機酸量との比は、得られる3価セリウム塩の水溶性に応じて適宜決定すればよい。これにより、3価のセリウムイオン1モルと、還元性有機酸と還元性有機酸以外の有機酸とが合計で3モルとからなる3価セリウム塩を得ることができ、3価のセリウムイオンの水溶液中での安定性を向上させることができる。
【0019】
上記還元性有機酸以外の有機酸としては、得られる3価セリウム塩を水溶液中において安定化させることができるものであれば特に限定されず、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クロトン酸、グルコン酸、シュウ酸、コハク酸、グリシン、アラニン、グルタミン酸、安息香酸、フタル酸等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記3価セリウム塩は、上記式(1)で表されるものであることが好ましい。
上記式(1)で表される3価セリウム塩は、3価のセリウムイオン1モルに対して、アスコルビン酸1モル及び乳酸2モルから形成される塩である。3個以上の配位部位を有し、還元性も有するアスコルビン酸が水溶液中で配位することにより、3価のセリウムイオンが4価に酸化されることが抑制され、更に、乳酸が配位することによって得られる3価セリウム塩の水溶性が高められ、結果として、3価のセリウムイオンを水溶液中に長期間安定に存在させることができる。
【0021】
上記3価セリウム塩は、セリウム(III)化合物と還元性有機酸とを反応させることにより得られるものであることが好ましい。例えば、炭酸セリウムの水和物[Ce2(CO3)3・8H2O]とアスコルビン酸と乳酸とを、水中で1:2:4(モル比)で混合し、加熱して反応させることにより上記式(1)で表される3価セリウム塩の水溶液を調製できる。
【0022】
上記セリウム(III)化合物としては、上記還元性有機酸の水溶液に溶解させることができ、上記還元性有機酸よりも弱酸のセリウム塩であれば特に限定されず、例えば、炭酸セリウム、ホウ酸セリウム、トリス−アセチルアセトナトセリウム、ステアリン酸セリウム等を挙げることができる。なかでも、溶解後に炭酸ガスとなって水溶液中に残存することがない点から、炭酸セリウムが好ましい。
【0023】
上記3価セリウム塩は、セリウム(III)化合物と還元性有機酸及び還元性有機酸以外の有機酸とを反応させることにより得られるものであることが好ましい。
【0024】
また、例えば、上述したようにして得られる3価セリウム塩の水溶液も本発明の1つである。上記3価セリウム塩の水溶液は、3価のセリウムイオンが水溶液中において安定に存在するものである。
【0025】
本発明の3価セリウム塩の製造方法は、上記3価セリウム塩の製造方法であって、セリウム(III)化合物と還元性有機酸とを反応させる工程からなるものである。
【0026】
上記セリウム(III)化合物と上記還元性有機酸とを反応させる工程は、セリウム(III)化合物と還元性有機酸とが反応して3価のセリウム塩を得ることができる工程であれば特に限定されず、例えば、上述したようにして行うことができる。また、セリウム(III)化合物と、還元性有機酸及び還元性有機酸以外の有機酸とを反応させることによっても3価のセリウム塩を得ることができる。なお、上記セリウム(III)化合物、上記還元性有機酸、上記還元性有機酸以外の有機酸しては、例えば、上述したセリウム(III)化合物、還元性有機酸、還元性有機酸以外の有機酸をそれぞれ挙げることができる。
【0027】
上記3価セリウム塩の具体的な製造方法としては、例えば、先ずアスコルビン酸及び乳酸を水に溶解させて50〜90℃まで昇温し、炭酸セリウムの水和物を徐々に添加し、その温度を保持したまま4〜5時間攪拌を続けて上記式(1)で表される3価セリウム塩の水溶液を得ることができる。このようにして得られた水溶液はそのまま(反応生成物から溶液を分離しないで)使用することができ、また、その後、反応生成物を溶液から分離する工程を行い、分離した反応生成物として使用することもできる。反応生成物の分離は、一般には、反応溶液を常温減圧濃縮し、結晶として析出させて行うことができる。
【0028】
本発明の3価セリウム塩は、3個以上の配位部位を持つ還元性有機酸が配位したものであることから、水溶液中において3価のセリウムイオンが長期間安定に溶存状態を維持することができるものである。また、還元性有機酸のみが配位した3価セリウム塩が水溶液中において安定に溶存状態を維持することができないものである場合には、還元性有機酸以外の有機酸も配位させることによって、得られる塩の水溶性を高めることができ、より安定な溶存状態を維持させることができるようになる。従って、上記3価セリウム塩は、水溶液中で3価のセリウムイオンとして安定に存在できるものであり、例えば、電着塗料中に添加する耐食性付与剤、硬化触媒等の用途、即ち、3価のセリウムイオンが水溶液中において長期間安定に溶存していることが要求される用途に好適に使用することができるものである。
【0029】
【実施例】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味する。
【0030】
実施例1
攪拌機、温度計、冷却器を装備したフラスコに、L−アスコルビン酸(キシダ化学社製)370部、イオン交換水4020部を加え湯浴中で約50℃に加熱しながら、L−アスコルビン酸を溶解し、L−アスコルビン酸水溶液を調製した。これに50%乳酸溶液(昭和加工社製)757部を加え、混合水溶液が相溶して透明になるまでよく攪拌した。フラスコ中の混合水溶液を攪拌しながら、これに炭酸セリウム八水和物(新日本金属化学社製)604部を徐々に加えた。炭酸セリウム八水和物の添加後、湯浴を用いて75℃になるまで加熱した。75℃となった時点から攪拌しながら5時間反応を行った。淡黄色できわめて透明性の高い液体を得た後、これを濾過して、淡黄色で完全に透明なL−アスコルビン酸と乳酸のセリウム(III)塩の水溶液を得た。
【0031】
実施例2
攪拌機、温度計、冷却器を装備したフラスコに、L−アスコルビン酸370部、イオン交換水3991部を加え湯浴中で約50℃に加熱しながら、L−アスコルビン酸を溶解し、L−アスコルビン酸水溶液を調製した。これに50%乳酸溶液568部を加え、混合水溶液が相溶して透明になるまでよく攪拌した。次に、別個の溶液にDL−2−ヒドロキシ酪酸(東京化成社製)109部とイオン交換水109部と混合し、溶解させた。DL−2−ヒドロキシ酪酸水溶液を先のフラスコに加え、同様に混合水溶液が相溶して透明になるまでよく攪拌した。このフラスコ中の混合水溶液を攪拌しながら、これに炭酸セリウム八水和物604部を徐々に加えた。炭酸セリウム八水和物の添加後、湯浴を用いて75℃になるまで加熱した。75℃となった時点から攪拌しながら5時間反応を行った。淡黄色で透明性の高い液体を得た後、これを濾過して、淡黄色で完全に透明なL−アスコルビン酸と乳酸及びDL−2−ヒドロキシ酪酸のセリウム(III)塩の水溶液を得た。
【0032】
実施例3
攪拌機、温度計、冷却器を装備したフラスコに、L−アスコルビン酸370部、イオン交換水3961部を加え湯浴中で約50℃に加熱しながら、L−アスコルビン酸を溶解し、L−アスコルビン酸水溶液を調製した。これに50%乳酸溶液378部を加え、混合水溶液が相溶して透明になるまでよく攪拌した。次に、別個の溶液にDL−2−ヒドロキシ酪酸219部とイオン交換水219部と混合し、溶解させた。DL−2−ヒドロキシ酪酸水溶液を先のフラスコに加え、同様に混合水溶液が相溶して透明になるまでよく攪拌した。このフラスコ中の混合水溶液を攪拌しながら、これに炭酸セリウム八水和物604部を徐々に加えた。炭酸セリウム八水和物の添加後、湯浴を用いて75℃になるまで加熱した。75℃となった時点から攪拌しながら5時間反応を行った。淡黄色で透明性の高い液体を得た後、これを濾過して、淡黄色で完全に透明なL−アスコルビン酸と乳酸及びDL−2−ヒドロキシ酪酸のセリウム(III)塩の水溶液を得た。
【0033】
実施例4
攪拌機、温度計、冷却器を装備したフラスコに、L−アスコルビン酸370部、イオン交換水4516部を加え湯浴中で約50℃に加熱しながら、L−アスコルビン酸を溶解し、L−アスコルビン酸水溶液を調製した。これに50%乳酸溶液568部と酢酸63部を加え、混合水溶液が相溶して透明になるまでよく攪拌した。このフラスコ中の混合水溶液を攪拌しながら、これに炭酸セリウム八水和物604部を徐々に加えた。炭酸セリウム八水和物の添加後、湯浴を用いて75℃になるまで加熱した。75℃となった時点から攪拌しながら5時間反応を行った。淡黄色で透明性の高い液体を得た後、これを濾過して、淡黄色で完全に透明なL−アスコルビン酸と乳酸及び酢酸のセリウム(III)塩の水溶液を得た。
【0034】
実施例5
攪拌機、温度計、冷却器を装備したフラスコに、L−アスコルビン酸370部、イオン交換水4516部を加え湯浴中で約50℃に加熱しながら、L−アスコルビン酸を溶解し、L−アスコルビン酸水溶液を調製した。これに50%乳酸溶液378部と酢酸126部を加え、混合水溶液が相溶して透明になるまでよく攪拌した。このフラスコ中の混合水溶液を攪拌しながら、これに炭酸セリウム八水和物604部を徐々に加えた。炭酸セリウム八水和物の添加後、湯浴を用いて75℃になるまで加熱した。75℃となった時点から攪拌しながら5時間反応を行った。淡黄色で透明性の高い液体を得た後、これを濾過して、淡黄色で完全に透明なL−アスコルビン酸と乳酸及び酢酸のセリウム(III)塩の水溶液を得た。
【0035】
比較例1
(酢酸セリウム水溶液の調製)
攪拌機、温度計、冷却器を装備したフラスコに、酢酸35部及びイオン交換水6062部を入れ、よく攪拌してこれらを相溶させた。この酢酸水溶液を湯浴中で50℃となるように加熱した。次にフラスコ内の酢酸水溶液を攪拌しながら、これに酢酸セリウム一水和物(新日本金属化学社製)804部を徐々に添加した。その後、50℃で5時間攪拌して懸濁液を得た。この懸濁液を濾過して無色透明の酢酸セリウム(III)水溶液を得た。
【0036】
比較例2
(ギ酸セリウム水溶液の調製)
攪拌機、温度計、冷却器を装備したフラスコに、ギ酸(キシダ化学社製)331部、イオン交換水4816部を加えて攪拌し、ギ酸水溶液を調製した。このフラスコ中の混合水溶液を攪拌しながら、これに炭酸セリウム八水和物604部を徐々に加えた。炭酸セリウム八水和物の添加後、湯浴を用いて75℃になるまで加熱した。75℃となった時点から攪拌しながら5時間反応を行った。得られた懸濁液を濾過して、無色透明なギ酸セリウム(III)水溶液を得た。
【0037】
比較例3
(グルコン酸セリウム水溶液の調製)
攪拌機、温度計、冷却器を装備したフラスコに、50%グルコン酸水溶液(キシダ化学社製)2825部、イオン交換水2322部を加えて攪拌し、グルコン酸水溶液を調製した。このフラスコ中の混合水溶液を攪拌しながら、これに炭酸セリウム八水和物604部を徐々に加えた。炭酸セリウム八水和物の添加後、湯浴を用いて75℃になるまで加熱した。75℃となった時点から攪拌しながら5時間反応を行った。得られた懸濁液を濾過して、無色透明なグルコン酸セリウム(III)水溶液を得た。
【0038】
(セリウム塩の溶解安定性の評価)
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られた水溶液に溶解しているセリウムイオンの濃度を、蛍光X線測定装置(XRF)を用いて調製直後と調製後に40℃で4週間経過後とで測定した。具体的な測定手順を以下に示す。
(1)前もって種々の濃度の塩化セリウム水溶液を調製し、蛍光X線測定装置で分析し、セリウム濃度の検量線を作成した。
(2)測定前に各水溶液を濾過し、沈殿物を除去した。
(3)各種セリウム塩水溶液を蛍光X線測定装置で分析し、(1)で作成した検量線を用いて水溶液中に含まれるセリウムイオンの濃度を求めた。
得られた結果を表1に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
表1から、実施例1〜5により得られた水溶液中に溶解しているセリウムイオン量は、調製直後及び4週間経過後のいずれもほぼ同様のセリウムイオン量であった。一方、比較例1〜3により得られた水溶液中に溶解しているセリウムイオン量は、調製直後に比べて、4週間経過後の量が少なくなっており、経時的に水酸化セリウム(IV)又は酸化セリウム(IV)となって析出してしまっていた。この結果、実施例1〜5により得られた水溶液は、3価のセリウムイオンとして水溶液中に長期間安定に存在させることができるものであった。
【0041】
【発明の効果】
本発明の3価セリウム塩は、上述した横成よりなるので、水溶液中で3価のセリウムイオンとして安定に存在させることができるものである。従って、例えば、電着塗料中に添加する耐食性付与剤、硬化触媒のような用途に好適に使用することができるものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、3価セリウム塩、その水溶液及び製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
3価セリウム塩は、例えば、電着塗料中の耐食性付与剤、硬化触媒等として使用することができるものである。
しかしながら、酢酸セリウム(III)等の3価セリウムは、通常、水性溶液中で安定性に劣り、3価のセリウムイオンが4価のセリウムイオンに容易に酸化され、生成した4価のセリウムイオンは水酸化セリウム(IV)又は酸化セリウム(IV)となって溶存できなくなってしまう。
【0003】
このため、水溶液中おいて、3価のセリウムイオンが長期間安定に存在するような3価セリウム塩を提供することは、一般的に困難であり、上述した耐食性付与剤、硬化触媒等の用途に対して好適に適用することができる3価セリウム塩の開発が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、水溶液中で3価のセリウムイオンとして安定に存在させることができる3価セリウム塩、その水溶液及び製造方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、3個以上の配位部位を持つ還元性有機酸の3価セリウム塩である。
上記還元性有機酸は、アスコルビン酸であることが好ましい。
本発明は、下記式(1);
【0006】
【化2】
【0007】
で表されることを特徴とする3価セリウム塩である。
本発明は、セリウム(III)化合物と還元性有機酸とを反応させることにより得られることを特徴とする3価セリウム塩である。
上記セリウム(III)化合物は、炭酸セリウムであることが好ましい。
【0008】
本発明は、上記3価セリウム塩の水溶液である。
本発明は、上記3価セリウム塩の製造方法であって、セリウム(III)化合物と還元性有機酸とを反応させる工程からなることを特徴とする3価セリウム塩の製造方法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明は、3個以上の配位部位を持つ還元性有機酸の3価セリウム塩である。
これにより、上記3価セリウム塩は、水溶液中において、3価のセリウムイオンとして安定に存在することができるものであり、4価のセリウムイオンに酸化されにくいものである。
【0010】
通常、例えば、酢酸セリウム(III)のような水溶化することによって3価のセリウムイオンを供給することができるセリウム化合物を水に溶解し、3価のセリウムイオンが溶解する水溶液を調製すると、その水溶液の調製後、比較的短時間のうちに、水溶液中の3価のセリウムイオンが4価のセリウムイオンに酸化されてしまう。水溶液中では、4価のセリウムイオンは安定性が低く、水と容易に反応して水酸化セリウム(IV)又は酸化セリウム(IV)に変化し、不溶化してしまう。従って、3価のセリウムイオンを含有する安定な水溶液を調製することは困難であった。
【0011】
一方、本発明の3価セリウム塩は、3個以上の配位部位を持つ有機酸の塩である。これにより、3価セリウムイオンにこの配位部位が配位することによって水溶液中での3価のセリウムイオンは安定化している。また、上記3価セリウム塩は、還元性を有する塩でもあることから、抗酸化能を有し、3価のセリウムイオンは、4価に酸化されることが抑制されている。即ち、上記3価セリウム塩の水溶液は、生成する3価のセリウムイオンに3個以上の配位部位を有する還元性有機酸がキレート状に配位し、その結果、セリウムイオンが3価として安定に存在する水溶液を得ることができる。
【0012】
上記配位部位は、水溶液中における3価のセリウムイオンに配位することができる還元性有機酸中の部位である。
上記配位部位としては、例えば、−OH、−CO−、−O−、−NH2、−NH−、−N<、−SH、−S−等を挙げることができる。上記配位部位は、同種のものであってもよく、異種のものであってもよい。なお、上記配位部位は、中性状態であってもよく、イオン化された状態であってもよい。
【0013】
上記還元性とは、3価のセリウムイオンが4価に酸化されることを抑制することができる性質である。
【0014】
上記還元性有機酸としては、例えば、以下の構造を有する有機酸を挙げることができる。
【0015】
【化3】
【0016】
上記還元性有機酸としては、3個以上の配位部位を有し、還元性を有する有機酸であれば特に限定されず、アスコルビン酸、グルクロン酸、没食子酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、2−ヒドロキシ酪酸、グリオキシル酸等を挙げることができる。なかでも、還元能が高く、かつ熱的にも安定で、3価のセリウムイオンを安定に存在させることができる点から、アスコルビン酸を用いるのが好ましい。上記の酸のうち、光学異性体を有するものがあるがD−体、L−体やこれらの混合物のいずれも好適に用いることができる。アスコルビン酸の場合、より入手しやすいL−アスコルビン酸を用いることが経済的な観点からより好適に用いられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
アスコルビン酸は3価のセリウムイオンの抗酸化能は高いが、分子量が大きいためアスコルビン酸のみと3価のセリウムの塩は水への溶解度自体は高くない。これは、比較的分子量の大きいアスコルビン酸の3分子が3価のセリウムイオン1分子に配位し、安定なキレート状態を維持すると、形成された塩が水への溶存状態を保持できずに固体として析出する傾向となるためである。そこで、セリウムイオンの還元能はアスコルビン酸より劣るものの、分子量が小さい還元性を有する酸とアスコルビン酸を併用して3価のセリウムとの塩を調製すると水への溶解度が高く、かつ、水溶液中でより安定に溶解させることができる。アスコルビン酸と併用する酸としては、溶解度の向上の観点から乳酸、2−ヒドロキシ酪酸が好ましい。経済的な観点から乳酸をアスコルビン酸と併用するのが更に好ましい。アスコルビン酸と乳酸を併用する場合、アスコルビン酸:乳酸をmol比でおよそ1:2〜2.6とするのが、溶解度と溶解安定性を両立させる点から好ましい。
【0018】
上記3価セリウム塩が還元性有機酸と還元性有機酸以外の有機酸とを含んでなるものである場合には、上記セリウム塩の調製において、セリウム(III)化合物におけるセリウム量と、還元性有機酸量と還元性有機酸以外の有機酸量との合計モル比としては、3価のセリウムイオンとして水溶液中で安定化させることから、およそ1:3となるように使用することが好ましい。還元性有機酸量と還元性有機酸以外の有機酸量との比は、得られる3価セリウム塩の水溶性に応じて適宜決定すればよい。これにより、3価のセリウムイオン1モルと、還元性有機酸と還元性有機酸以外の有機酸とが合計で3モルとからなる3価セリウム塩を得ることができ、3価のセリウムイオンの水溶液中での安定性を向上させることができる。
【0019】
上記還元性有機酸以外の有機酸としては、得られる3価セリウム塩を水溶液中において安定化させることができるものであれば特に限定されず、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クロトン酸、グルコン酸、シュウ酸、コハク酸、グリシン、アラニン、グルタミン酸、安息香酸、フタル酸等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記3価セリウム塩は、上記式(1)で表されるものであることが好ましい。
上記式(1)で表される3価セリウム塩は、3価のセリウムイオン1モルに対して、アスコルビン酸1モル及び乳酸2モルから形成される塩である。3個以上の配位部位を有し、還元性も有するアスコルビン酸が水溶液中で配位することにより、3価のセリウムイオンが4価に酸化されることが抑制され、更に、乳酸が配位することによって得られる3価セリウム塩の水溶性が高められ、結果として、3価のセリウムイオンを水溶液中に長期間安定に存在させることができる。
【0021】
上記3価セリウム塩は、セリウム(III)化合物と還元性有機酸とを反応させることにより得られるものであることが好ましい。例えば、炭酸セリウムの水和物[Ce2(CO3)3・8H2O]とアスコルビン酸と乳酸とを、水中で1:2:4(モル比)で混合し、加熱して反応させることにより上記式(1)で表される3価セリウム塩の水溶液を調製できる。
【0022】
上記セリウム(III)化合物としては、上記還元性有機酸の水溶液に溶解させることができ、上記還元性有機酸よりも弱酸のセリウム塩であれば特に限定されず、例えば、炭酸セリウム、ホウ酸セリウム、トリス−アセチルアセトナトセリウム、ステアリン酸セリウム等を挙げることができる。なかでも、溶解後に炭酸ガスとなって水溶液中に残存することがない点から、炭酸セリウムが好ましい。
【0023】
上記3価セリウム塩は、セリウム(III)化合物と還元性有機酸及び還元性有機酸以外の有機酸とを反応させることにより得られるものであることが好ましい。
【0024】
また、例えば、上述したようにして得られる3価セリウム塩の水溶液も本発明の1つである。上記3価セリウム塩の水溶液は、3価のセリウムイオンが水溶液中において安定に存在するものである。
【0025】
本発明の3価セリウム塩の製造方法は、上記3価セリウム塩の製造方法であって、セリウム(III)化合物と還元性有機酸とを反応させる工程からなるものである。
【0026】
上記セリウム(III)化合物と上記還元性有機酸とを反応させる工程は、セリウム(III)化合物と還元性有機酸とが反応して3価のセリウム塩を得ることができる工程であれば特に限定されず、例えば、上述したようにして行うことができる。また、セリウム(III)化合物と、還元性有機酸及び還元性有機酸以外の有機酸とを反応させることによっても3価のセリウム塩を得ることができる。なお、上記セリウム(III)化合物、上記還元性有機酸、上記還元性有機酸以外の有機酸しては、例えば、上述したセリウム(III)化合物、還元性有機酸、還元性有機酸以外の有機酸をそれぞれ挙げることができる。
【0027】
上記3価セリウム塩の具体的な製造方法としては、例えば、先ずアスコルビン酸及び乳酸を水に溶解させて50〜90℃まで昇温し、炭酸セリウムの水和物を徐々に添加し、その温度を保持したまま4〜5時間攪拌を続けて上記式(1)で表される3価セリウム塩の水溶液を得ることができる。このようにして得られた水溶液はそのまま(反応生成物から溶液を分離しないで)使用することができ、また、その後、反応生成物を溶液から分離する工程を行い、分離した反応生成物として使用することもできる。反応生成物の分離は、一般には、反応溶液を常温減圧濃縮し、結晶として析出させて行うことができる。
【0028】
本発明の3価セリウム塩は、3個以上の配位部位を持つ還元性有機酸が配位したものであることから、水溶液中において3価のセリウムイオンが長期間安定に溶存状態を維持することができるものである。また、還元性有機酸のみが配位した3価セリウム塩が水溶液中において安定に溶存状態を維持することができないものである場合には、還元性有機酸以外の有機酸も配位させることによって、得られる塩の水溶性を高めることができ、より安定な溶存状態を維持させることができるようになる。従って、上記3価セリウム塩は、水溶液中で3価のセリウムイオンとして安定に存在できるものであり、例えば、電着塗料中に添加する耐食性付与剤、硬化触媒等の用途、即ち、3価のセリウムイオンが水溶液中において長期間安定に溶存していることが要求される用途に好適に使用することができるものである。
【0029】
【実施例】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味する。
【0030】
実施例1
攪拌機、温度計、冷却器を装備したフラスコに、L−アスコルビン酸(キシダ化学社製)370部、イオン交換水4020部を加え湯浴中で約50℃に加熱しながら、L−アスコルビン酸を溶解し、L−アスコルビン酸水溶液を調製した。これに50%乳酸溶液(昭和加工社製)757部を加え、混合水溶液が相溶して透明になるまでよく攪拌した。フラスコ中の混合水溶液を攪拌しながら、これに炭酸セリウム八水和物(新日本金属化学社製)604部を徐々に加えた。炭酸セリウム八水和物の添加後、湯浴を用いて75℃になるまで加熱した。75℃となった時点から攪拌しながら5時間反応を行った。淡黄色できわめて透明性の高い液体を得た後、これを濾過して、淡黄色で完全に透明なL−アスコルビン酸と乳酸のセリウム(III)塩の水溶液を得た。
【0031】
実施例2
攪拌機、温度計、冷却器を装備したフラスコに、L−アスコルビン酸370部、イオン交換水3991部を加え湯浴中で約50℃に加熱しながら、L−アスコルビン酸を溶解し、L−アスコルビン酸水溶液を調製した。これに50%乳酸溶液568部を加え、混合水溶液が相溶して透明になるまでよく攪拌した。次に、別個の溶液にDL−2−ヒドロキシ酪酸(東京化成社製)109部とイオン交換水109部と混合し、溶解させた。DL−2−ヒドロキシ酪酸水溶液を先のフラスコに加え、同様に混合水溶液が相溶して透明になるまでよく攪拌した。このフラスコ中の混合水溶液を攪拌しながら、これに炭酸セリウム八水和物604部を徐々に加えた。炭酸セリウム八水和物の添加後、湯浴を用いて75℃になるまで加熱した。75℃となった時点から攪拌しながら5時間反応を行った。淡黄色で透明性の高い液体を得た後、これを濾過して、淡黄色で完全に透明なL−アスコルビン酸と乳酸及びDL−2−ヒドロキシ酪酸のセリウム(III)塩の水溶液を得た。
【0032】
実施例3
攪拌機、温度計、冷却器を装備したフラスコに、L−アスコルビン酸370部、イオン交換水3961部を加え湯浴中で約50℃に加熱しながら、L−アスコルビン酸を溶解し、L−アスコルビン酸水溶液を調製した。これに50%乳酸溶液378部を加え、混合水溶液が相溶して透明になるまでよく攪拌した。次に、別個の溶液にDL−2−ヒドロキシ酪酸219部とイオン交換水219部と混合し、溶解させた。DL−2−ヒドロキシ酪酸水溶液を先のフラスコに加え、同様に混合水溶液が相溶して透明になるまでよく攪拌した。このフラスコ中の混合水溶液を攪拌しながら、これに炭酸セリウム八水和物604部を徐々に加えた。炭酸セリウム八水和物の添加後、湯浴を用いて75℃になるまで加熱した。75℃となった時点から攪拌しながら5時間反応を行った。淡黄色で透明性の高い液体を得た後、これを濾過して、淡黄色で完全に透明なL−アスコルビン酸と乳酸及びDL−2−ヒドロキシ酪酸のセリウム(III)塩の水溶液を得た。
【0033】
実施例4
攪拌機、温度計、冷却器を装備したフラスコに、L−アスコルビン酸370部、イオン交換水4516部を加え湯浴中で約50℃に加熱しながら、L−アスコルビン酸を溶解し、L−アスコルビン酸水溶液を調製した。これに50%乳酸溶液568部と酢酸63部を加え、混合水溶液が相溶して透明になるまでよく攪拌した。このフラスコ中の混合水溶液を攪拌しながら、これに炭酸セリウム八水和物604部を徐々に加えた。炭酸セリウム八水和物の添加後、湯浴を用いて75℃になるまで加熱した。75℃となった時点から攪拌しながら5時間反応を行った。淡黄色で透明性の高い液体を得た後、これを濾過して、淡黄色で完全に透明なL−アスコルビン酸と乳酸及び酢酸のセリウム(III)塩の水溶液を得た。
【0034】
実施例5
攪拌機、温度計、冷却器を装備したフラスコに、L−アスコルビン酸370部、イオン交換水4516部を加え湯浴中で約50℃に加熱しながら、L−アスコルビン酸を溶解し、L−アスコルビン酸水溶液を調製した。これに50%乳酸溶液378部と酢酸126部を加え、混合水溶液が相溶して透明になるまでよく攪拌した。このフラスコ中の混合水溶液を攪拌しながら、これに炭酸セリウム八水和物604部を徐々に加えた。炭酸セリウム八水和物の添加後、湯浴を用いて75℃になるまで加熱した。75℃となった時点から攪拌しながら5時間反応を行った。淡黄色で透明性の高い液体を得た後、これを濾過して、淡黄色で完全に透明なL−アスコルビン酸と乳酸及び酢酸のセリウム(III)塩の水溶液を得た。
【0035】
比較例1
(酢酸セリウム水溶液の調製)
攪拌機、温度計、冷却器を装備したフラスコに、酢酸35部及びイオン交換水6062部を入れ、よく攪拌してこれらを相溶させた。この酢酸水溶液を湯浴中で50℃となるように加熱した。次にフラスコ内の酢酸水溶液を攪拌しながら、これに酢酸セリウム一水和物(新日本金属化学社製)804部を徐々に添加した。その後、50℃で5時間攪拌して懸濁液を得た。この懸濁液を濾過して無色透明の酢酸セリウム(III)水溶液を得た。
【0036】
比較例2
(ギ酸セリウム水溶液の調製)
攪拌機、温度計、冷却器を装備したフラスコに、ギ酸(キシダ化学社製)331部、イオン交換水4816部を加えて攪拌し、ギ酸水溶液を調製した。このフラスコ中の混合水溶液を攪拌しながら、これに炭酸セリウム八水和物604部を徐々に加えた。炭酸セリウム八水和物の添加後、湯浴を用いて75℃になるまで加熱した。75℃となった時点から攪拌しながら5時間反応を行った。得られた懸濁液を濾過して、無色透明なギ酸セリウム(III)水溶液を得た。
【0037】
比較例3
(グルコン酸セリウム水溶液の調製)
攪拌機、温度計、冷却器を装備したフラスコに、50%グルコン酸水溶液(キシダ化学社製)2825部、イオン交換水2322部を加えて攪拌し、グルコン酸水溶液を調製した。このフラスコ中の混合水溶液を攪拌しながら、これに炭酸セリウム八水和物604部を徐々に加えた。炭酸セリウム八水和物の添加後、湯浴を用いて75℃になるまで加熱した。75℃となった時点から攪拌しながら5時間反応を行った。得られた懸濁液を濾過して、無色透明なグルコン酸セリウム(III)水溶液を得た。
【0038】
(セリウム塩の溶解安定性の評価)
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られた水溶液に溶解しているセリウムイオンの濃度を、蛍光X線測定装置(XRF)を用いて調製直後と調製後に40℃で4週間経過後とで測定した。具体的な測定手順を以下に示す。
(1)前もって種々の濃度の塩化セリウム水溶液を調製し、蛍光X線測定装置で分析し、セリウム濃度の検量線を作成した。
(2)測定前に各水溶液を濾過し、沈殿物を除去した。
(3)各種セリウム塩水溶液を蛍光X線測定装置で分析し、(1)で作成した検量線を用いて水溶液中に含まれるセリウムイオンの濃度を求めた。
得られた結果を表1に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
表1から、実施例1〜5により得られた水溶液中に溶解しているセリウムイオン量は、調製直後及び4週間経過後のいずれもほぼ同様のセリウムイオン量であった。一方、比較例1〜3により得られた水溶液中に溶解しているセリウムイオン量は、調製直後に比べて、4週間経過後の量が少なくなっており、経時的に水酸化セリウム(IV)又は酸化セリウム(IV)となって析出してしまっていた。この結果、実施例1〜5により得られた水溶液は、3価のセリウムイオンとして水溶液中に長期間安定に存在させることができるものであった。
【0041】
【発明の効果】
本発明の3価セリウム塩は、上述した横成よりなるので、水溶液中で3価のセリウムイオンとして安定に存在させることができるものである。従って、例えば、電着塗料中に添加する耐食性付与剤、硬化触媒のような用途に好適に使用することができるものである。
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2003
- 2003-04-01 JP JP2003098537A patent/JP2004307343A/ja active Pending
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