JP2004307250A - 光ファイバ及び光ファイバの製造方法 - Google Patents
光ファイバ及び光ファイバの製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004307250A JP2004307250A JP2003102013A JP2003102013A JP2004307250A JP 2004307250 A JP2004307250 A JP 2004307250A JP 2003102013 A JP2003102013 A JP 2003102013A JP 2003102013 A JP2003102013 A JP 2003102013A JP 2004307250 A JP2004307250 A JP 2004307250A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- optical fiber
- hole
- diameter
- holes
- pressure
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- G—PHYSICS
- G02—OPTICS
- G02B—OPTICAL ELEMENTS, SYSTEMS OR APPARATUS
- G02B6/00—Light guides; Structural details of arrangements comprising light guides and other optical elements, e.g. couplings
- G02B6/02—Optical fibres with cladding with or without a coating
- G02B6/02295—Microstructured optical fibre
- G02B6/02314—Plurality of longitudinal structures extending along optical fibre axis, e.g. holes
- G02B6/02319—Plurality of longitudinal structures extending along optical fibre axis, e.g. holes characterised by core or core-cladding interface features
- G02B6/02338—Structured core, e.g. core contains more than one material, non-constant refractive index distribution in core, asymmetric or non-circular elements in core unit, multiple cores, insertions between core and clad
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C03—GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
- C03B—MANUFACTURE, SHAPING, OR SUPPLEMENTARY PROCESSES
- C03B37/00—Manufacture or treatment of flakes, fibres, or filaments from softened glass, minerals, or slags
- C03B37/01—Manufacture of glass fibres or filaments
- C03B37/02—Manufacture of glass fibres or filaments by drawing or extruding, e.g. direct drawing of molten glass from nozzles; Cooling fins therefor
- C03B37/025—Manufacture of glass fibres or filaments by drawing or extruding, e.g. direct drawing of molten glass from nozzles; Cooling fins therefor from reheated softened tubes, rods, fibres or filaments, e.g. drawing fibres from preforms
- C03B37/027—Fibres composed of different sorts of glass, e.g. glass optical fibres
- C03B37/02781—Hollow fibres, e.g. holey fibres
-
- G—PHYSICS
- G02—OPTICS
- G02B—OPTICAL ELEMENTS, SYSTEMS OR APPARATUS
- G02B6/00—Light guides; Structural details of arrangements comprising light guides and other optical elements, e.g. couplings
- G02B6/02—Optical fibres with cladding with or without a coating
- G02B6/02295—Microstructured optical fibre
- G02B6/02314—Plurality of longitudinal structures extending along optical fibre axis, e.g. holes
- G02B6/02342—Plurality of longitudinal structures extending along optical fibre axis, e.g. holes characterised by cladding features, i.e. light confining region
- G02B6/02347—Longitudinal structures arranged to form a regular periodic lattice, e.g. triangular, square, honeycomb unit cell repeated throughout cladding
-
- G—PHYSICS
- G02—OPTICS
- G02B—OPTICAL ELEMENTS, SYSTEMS OR APPARATUS
- G02B6/00—Light guides; Structural details of arrangements comprising light guides and other optical elements, e.g. couplings
- G02B6/02—Optical fibres with cladding with or without a coating
- G02B6/02295—Microstructured optical fibre
- G02B6/02314—Plurality of longitudinal structures extending along optical fibre axis, e.g. holes
- G02B6/02342—Plurality of longitudinal structures extending along optical fibre axis, e.g. holes characterised by cladding features, i.e. light confining region
- G02B6/02371—Cross section of longitudinal structures is non-circular
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C03—GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
- C03B—MANUFACTURE, SHAPING, OR SUPPLEMENTARY PROCESSES
- C03B2203/00—Fibre product details, e.g. structure, shape
- C03B2203/10—Internal structure or shape details
- C03B2203/14—Non-solid, i.e. hollow products, e.g. hollow clad or with core-clad interface
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C03—GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
- C03B—MANUFACTURE, SHAPING, OR SUPPLEMENTARY PROCESSES
- C03B2203/00—Fibre product details, e.g. structure, shape
- C03B2203/42—Photonic crystal fibres, e.g. fibres using the photonic bandgap PBG effect, microstructured or holey optical fibres
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C03—GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
- C03B—MANUFACTURE, SHAPING, OR SUPPLEMENTARY PROCESSES
- C03B2205/00—Fibre drawing or extruding details
- C03B2205/10—Fibre drawing or extruding details pressurised
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C03—GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
- C03B—MANUFACTURE, SHAPING, OR SUPPLEMENTARY PROCESSES
- C03B2205/00—Fibre drawing or extruding details
- C03B2205/40—Monitoring or regulating the draw tension or draw rate
Landscapes
- Physics & Mathematics (AREA)
- General Physics & Mathematics (AREA)
- Optics & Photonics (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- General Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Geochemistry & Mineralogy (AREA)
- Manufacturing & Machinery (AREA)
- Materials Engineering (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Optical Fibers, Optical Fiber Cores, And Optical Fiber Bundles (AREA)
Abstract
【課題】ファイバ軸方向に延びる空孔を有し設計値により近い光伝送特性を得ることができる光ファイバ及び光ファイバを製造する方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る光ファイバの製造方法は、ファイバ軸方向に延びる空孔131〜134を有する光ファイバ10を製造する方法であって、空孔となるべき孔231〜234を有する光ファイバ母材20を用意する工程と、光ファイバ母材の孔内を加圧しながら、0.78[N]以上の線引張力で光ファイバ母材を線引きする工程とを備えることを特徴とする。これにより、空孔131〜134の変形を抑制することができるので、設計値により近い光伝送特性を得ることが可能である。
【選択図】 図3
【解決手段】本発明に係る光ファイバの製造方法は、ファイバ軸方向に延びる空孔131〜134を有する光ファイバ10を製造する方法であって、空孔となるべき孔231〜234を有する光ファイバ母材20を用意する工程と、光ファイバ母材の孔内を加圧しながら、0.78[N]以上の線引張力で光ファイバ母材を線引きする工程とを備えることを特徴とする。これにより、空孔131〜134の変形を抑制することができるので、設計値により近い光伝送特性を得ることが可能である。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ファイバ軸方向に延びる空孔を有する光ファイバ及び光ファイバを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ファイバ軸方向に延びる空孔を有する光ファイバには、ホーリーファイバやフォトニック結晶ファイバと呼ばれるものがある。以下、このようなファイバ軸方向に延びる空孔を有する光ファイバを微細構造光ファイバと称す。
【0003】
このような微細構造光ファイバは、ファイバ軸に直交する断面における空孔の大きさや空孔の分布を調整することでコア領域とクラッド領域との平均屈折率差を調整することができる。そのため、空孔を有さない光ファイバよりも優れた特性を得ることが可能である。例えば、波長1.55[μm]で大きな負分散を得ると共に実効コア断面積を大きくすることができる微細構造光ファイバが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この提案されている微細構造光ファイバは、コア領域を順次包囲する3層のクラッド領域を有し、各クラッド領域夫々に複数の空孔が配置されている。そして、ファイバ軸に直交する断面における空孔の径の大きさを3層のクラッド領域のうち外側にいくにつれて大きくすることで上記光伝送特性が得られている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−31737号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、微細構造光ファイバは、空孔となるべき孔を有する光ファイバ母材を線引きして製造される。孔を有する光ファイバ母材を線引きのために加熱して溶融すると、孔の界面にはその接線方向に表面張力が働く。このように孔の界面に表面張力が働いた場合、表面張力における孔の径方向への成分は孔の曲率に比例して大きくなり、孔を潰すように作用する。その結果、小さな径の孔ほど表面張力の影響で潰れやすく、その効果により線引時に孔の潰れや変形が生じていた。その結果、線引き後の光ファイバに設計通りの空孔が形成されていなかったり、空孔の形状が変形したりする場合があった。
【0006】
上述したように、微細構造光ファイバの光伝送特性は、ファイバ軸に直交する断面における空孔の大きさや空孔の分布を調整することで得られている。したがって、微細構造光ファイバに所望の空孔が形成されていない場合や空孔が変形している場合には、光伝送特性が設計値から大きく外れる場合があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであり、ファイバ軸方向に延びる空孔を有し設計値により近い光伝送特性を得ることができる光ファイバ及び光ファイバを製造する方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、微細構造光ファイバとなるべき孔を有する光ファイバ母材を線引きする際に、どのように孔の変形が生じるかに関して研究を重ねた。そして、孔内を加圧しないと光ファイバ母材の孔潰れは、光ファイバ母材を線引きしていく過程において、光ファイバ母材の直径が5[mm]程度になるまでの領域で、その80[%]程度が生じていることを見出した。
【0009】
即ち、線引炉のヒータ内部の領域では光ファイバ母材温度は十分に高く、粘性の観点から考えると孔は潰れやすい。しかし、孔の径は大きいので表面張力により孔が潰れる効果は小さい。これに対して、ヒータ下端より下の領域では光ファイバ母材温度が低く粘性が高いため、粘性の観点から考えると孔は潰れにくい。しかし、この領域では孔の径が非常に小さく、孔を潰すように作用する表面張力の効果は大きい。調査の結果、粘性の効果と表面張力の効果とでは、粘性の効果の方が孔潰れに対してより支配的に作用することが判明した。これが光ファイバ母材の直径が5[mm]程度までの領域で孔潰れの80[%]程度が発生する理由である。そして、更に鋭意研究を重ねて本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る光ファイバの製造方法は、ファイバ軸方向に延びる空孔を有する光ファイバを製造する方法であって、空孔となるべき孔を有する光ファイバ母材を用意する工程と、光ファイバ母材の孔内を加圧しながら、0.78[N]以上の線引張力で光ファイバ母材を線引きする工程とを備えることを特徴とする。この方法によれば、光ファイバ母材に形成されている孔を加圧しながら線引するので、孔が潰れることが抑制される。また、0.78[N](80[gf])以上の高い線引張力、つまり低い温度で線引きするのでガラス粘性が高く孔の変形も抑制することができる。
【0011】
また、本発明に係る光ファイバにおいては、線引張力が1.18[N]以上であることが好適である。線引張力が1.18[N](120[gf])以上の場合、より低温で線引きすることができるので、孔の変形を更に抑制することが可能である。
【0012】
更に、本発明に係る光ファイバにおいては、空孔の直径が2[μm]以下の場合、直径をd[μm]とし、孔内に加える圧力をP[kPa]としたときに、圧力Pが
【数13】
で表される関係を満たすことが望ましい。
【0013】
光ファイバ母材が線引炉で加熱され始めたときは、光ファイバ母材が加熱・溶融されて孔の周りの粘性は低くなるが、孔の径が大きいので表面張力の影響は小さい。そのため、孔を加圧していると、孔内に加えられた圧力の影響で孔は膨張する。一方、光ファイバ母材が線引きされて径が小さくなると、孔が小さくなることから表面張力の影響が大きくなり孔は収縮する。光ファイバの空孔の直径が2[μm]以下の場合、式(13)の関係を満たすように孔に圧力を加えることで、孔の膨張と収縮とをバランスさせることができる。
【0014】
また、空孔の直径が2[μm]以上4[μm]以下の場合、直径をd[μm]とし、孔内に加える圧力をP[kPa]としたときに、圧力Pが
【数14】
で表される関係を満たすことが望ましい。
【0015】
この場合、式(14)の関係を満たすように孔に圧力を加えることで、孔の膨張と収縮とをバランスさせることができる。
【0016】
更にまた、空孔の直径が4[μm]以上6[μm]以下の場合、直径をd[μm]とし、孔内に加える圧力をP[kPa]としたときに、圧力Pが
【数15】
で表される関係を満たすことが好ましい。
【0017】
この場合、式(15)の関係を満たすように孔に圧力を加えることで、孔の膨張と収縮とをバランスさせることができる。
【0018】
また、空孔の直径が6[μm]以上の場合、直径をd[μm]とし、孔内に加える圧力をP[kPa]としたときに、圧力Pが
【数16】
で表される関係を満たすことが好ましい。
【0019】
この場合、式(16)の関係を満たすように孔に圧力を加えることで、孔の膨張と収縮とをバランスさせることができる。
【0020】
更にまた、光ファイバ母材の線引き後の直径が100[μm]以下となるような場合、線引張力が1.76[N]以下となる条件で光ファイバ母材を線引きすることが好適である。線引張力が1.76[N](180[gf])以下であれば、光ファイバ母材の線引き後の直径が100[μm]の光ファイバを製造する場合でも、光ファイバが断線することを抑制できる。
【0021】
上述した線引き後の直径を100[μm]以下とする本発明に係る光ファイバの製造方法において、空孔の直径が2[μm]以下の場合、直径をd[μm]とし、孔内に加える圧力をP[kPa]としたときに、圧力Pが
【数17】
で表される関係を満たすことが好適である。
【0022】
この場合、式(17)の関係を満たすように孔に圧力を加えることで、光ファイバの断線を抑制しつつ、孔の膨張と収縮とをバランスさせることができる。
【0023】
更に、上述した線引き後の直径を100[μm]以下とする本発明に係る光ファイバの製造方法において、空孔の直径が2[μm]以上4[μm]以下の場合、直径をd[μm]とし、孔内に加える圧力をP[kPa]としたときに、圧力Pが
【数18】
で表される関係を満たすことが好適である。
【0024】
この場合、式(18)の関係を満たすように孔に圧力を加えることで、光ファイバの断線を抑制しつつ、孔の膨張と収縮とをバランスさせることができる。
【0025】
更にまた、上述した線引き後の直径を100[μm]以下とする本発明に係る光ファイバの製造方法において、空孔の直径が4[μm]以上6[μm]以下の場合、直径をd[μm]とし、孔内に加える圧力をP[kPa]としたときに、圧力Pが
【数19】
で表される関係を満たすことが望ましい。
【0026】
この場合、式(19)の関係を満たすように孔に圧力を加えることで、光ファイバの断線を抑制しつつ、孔の膨張と収縮とをバランスさせることができる。
【0027】
また、上述した線引き後の直径を100[μm]以下とする本発明に係る光ファイバの製造方法において、空孔の直径が6[μm]以上の場合、直径をd[μm]とし、孔内に加える圧力をP[kPa]としたときに、圧力Pが
【数20】
で表される関係を満たすことが好適である。
【0028】
この場合、式(20)の関係を満たすように孔に圧力を加えることで、光ファイバの断線を抑制しつつ、孔の膨張と収縮とをバランスさせることができる。
【0029】
また、本発明に係る光ファイバは、ファイバ軸方向に延びるコア領域と、コア領域を取り囲むように設けられたクラッド領域と、コア領域及びクラッド領域のうち少なくとも一方に形成され、ファイバ軸方向に延びており、ファイバ軸に直交する断面において3層以上の層構造を形成している複数の空孔とを備え、複数の空孔のうち最外層以外の層である内層の複数の空孔夫々の最大孔径をdMAX、最小孔径をdMINとし、最大孔径dMAX及び最小孔径dMINを、内層の複数の空孔において平均した値をdAとし、内層の複数の空孔夫々の第1偏差D1[%]を
【数21】
内層の複数の空孔夫々の第2偏差D2[%]を
【数22】
としたとき、内層の複数の空孔夫々の第1偏差D1及び第2偏差D2が何れも10[%]以下であることを特徴とする。
【0030】
空孔が層構造を形成している場合、最外層以外の層を構成している空孔の幾何学的形状が最外層を構成している空孔の幾何学的形状よりも光ファイバの光伝送特性に影響を与える。したがって、内層を構成している複数の空孔夫々の第1偏差D1及び第2偏差D2が何れも10[%]以内になっていることで、光伝送特性を設計値により近いものとすることが可能である。
【0031】
また、本発明に係る光ファイバは、ファイバ軸方向に延びるコア領域と、コア領域を取り囲むように設けられたクラッド領域と、コア領域及びクラッド領域のうち少なくとも一方に形成され、ファイバ軸方向に延びており、ファイバ軸に直交する断面において3層以上の層構造を形成している複数の空孔とを備え、複数の空孔夫々の最大孔径をdMAX、最小孔径をdMINとし、最大孔径dMAX及び最小孔径dMINを複数の空孔において平均した値をdAとし、複数の空孔夫々の第1偏差D1[%]を
【数23】
複数の空孔夫々の第2偏差D2[%]を
【数24】
としたとき、複数の空孔夫々の第1偏差D1及び第2偏差D2が何れも10[%]以下であることを特徴とする。この場合、最外層を構成している空孔まで含めて、夫々の空孔の第1偏差D1及び第2偏差D2が10[%]以下となっている。そのため、光ファイバの光伝送特性を設計値により近くすることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下に、図面と共に本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、同一の要素には同一の符号を用いることとし、重複する説明は省略する。また、図中の寸法比率は、説明のものとは必ずしも一致していない。
【0033】
図1は、本実施形態におけるファイバ軸方向に延びる空孔を有した光ファイバである微細構造光ファイバ10の説明図である。図1(a)は、微細構造光ファイバ10をファイバ軸に垂直な面で切断した時の断面を示している。微細構造光ファイバ10は、そのファイバ軸に沿って延びるコア領域11と、そのコア領域11の外周を取り囲むクラッド領域12とを備える。
【0034】
クラッド領域12には、コア領域11の周囲にファイバ軸方向に延びる複数の空孔131,132,133,134が形成されている。図1に示すように、空孔131〜134は、コア領域11の周りに六方格子状に配置され、4層構造を形成している。図中の点線は、空孔131〜134が層構造であることを示すために記載しているものであり、実際に形成されているものではない。なお、内側の層から順に第1層〜第4層とした際に、夫々の層を構成している空孔を空孔131〜134としている。空孔131〜134は、その直径をd[μm]、隣り合う空孔との中心間の距離をΛ[μm]としたとき、d/Λが0.5以上となるように配置されている。なお、図1(b)に示すように、空孔(例えば、空孔134)が真円から変形している場合には、直径dは、空孔の最大孔径(例えば、長径)をdMAX[μm]及び最小孔径(例えば、短径)をdMIN[μm]としたときの平均値とすれば良い。
【0035】
また、空孔131〜134夫々の第1偏差D1[%]を
【数25】
とし、第2偏差D2[%]を
【数26】
としたときに、空孔131〜134の最大孔径偏差D[%]を第1偏差D1及び第2偏差D2のうちより大きい方とした場合、最外層以外の層(内層)を構成している空孔131〜133夫々の最大孔径偏差Dが10[%]以下となっている。言い換えれば、第1偏差D1及び第2偏差D2の何れもが10[%]以下となっている。
【0036】
なお、式(25)、式(26)において、dA[μm]は内層を構成している空孔131,132,133夫々の最大孔径dMAX及び最小孔径dMINをそれらの空孔131〜133において平均した場合の値である。
【0037】
このように空孔131〜133の最大孔径偏差Dが10[%]以下である(即ち、空孔131〜133の変形が小さい)ので、微細構造光ファイバ10の波長分散特性などの光伝送特性が設計値により近いものとなっている。これは、微細構造光ファイバ10では、内層を構成している空孔131〜133の幾何学的形状の方が、最外層の空孔134の幾何学的形状よりも微細構造光ファイバ10の光伝送特性に影響を与えるからである。
【0038】
また、上記構成の微細構造光ファイバ10では、クラッド領域12が空孔131〜134を有しているので、クラッド領域12の平均屈折率は、空孔131〜134を有さない場合よりも小さくなっている。そのため、コア領域11とクラッド領域12との屈折率差は、クラッド領域12に空孔が形成されていない場合に比べて大きくなっている。
【0039】
次に、上記微細構造光ファイバ10を製造する方法について説明する。まず、微細構造光ファイバ10となるべき光ファイバ母材20を用意する。図2は、光ファイバ母材20を、その長手方向に直交する平面で切断した断面図である。光ファイバ母材20は、図2に示すように、コア領域11となるべき第1領域21、及び、クラッド領域12となるべき第2領域22を備えている。第1領域21と第2領域22とは同一の組成とする。また、第2領域22には空孔131,132,133,134となるべき貫通孔231,232,233,234が形成されている。貫通孔231〜234は、図2に示すように長手方向に直交する断面において第1領域21の周囲に六方格子状に、4層構造で配置されている。図2中の点線は、図1(a)の点線と同様に、貫通孔231〜234が層構造となっていることを示すために描いたものである。
【0040】
この光ファイバ母材20は、まず、VAD法、MCVD法又はOVD法などを用いて、第1領域21及び第2領域22を形成し、脱水焼結されて透明なガラス母材となり、次に第2領域22に貫通孔231〜234を形成することで作製される。貫通孔231〜234は例えば穿孔器具を用いて形成すれば良い。光ファイバ母材20の直径は特に限定されないが、例えば、約40〜70[mm]である。この光ファイバ母材20を延伸機により延伸し、例えば、直径25[mm]にした後に線引工程へ移される。
【0041】
次に、上記光ファイバ母材20の貫通孔231〜234を加圧しながら光ファイバ20を線引きする。図3は、線引装置30の概略構成図である。なお、図3は、光ファイバ母材20が線引装置30で線引きされている過程を示している。
【0042】
光ファイバ母材20は、その一端部に中空円筒型のダミーパイプ40が接続されている。光ファイバ母材20は、一端部に接続されているダミーパイプ40をチャック50で把持して線引炉60に維持される。
【0043】
ダミーパイプ40の直径(外径)は光ファイバ母材20の直径とほぼ同一である。また、ダミーパイプ40の内径は、光ファイバ母材20における最外層を構成している貫通孔234を取り囲む円の径とほぼ同じか少し大きくなっている。ダミーパイプ40の内部空間41は、光ファイバ母材20側と反対側の端部に取り付けられている加圧用継手70を介して、圧力調整手段80と繋がっている。圧力調整手段80は、ダミーパイプ40の内部空間41を通して光ファイバ母材20の貫通孔231〜234に圧力を加えて、貫通孔231〜234内を大気圧よりも高い状態にする。
【0044】
圧力調整手段80は、バッファタンク81、差圧計82、バキューム・ジェネレータ(Vacuum Generator : VG)83、マスフローコントローラ(Mass Flow Controller : MFC)84,85及びコントローラ86を備えている。コントローラ86は、MFC84,85を制御する。
【0045】
バッファタンク81内には、窒素ガス及び酸素ガスの混合ガスが充填されている。バッファタンク81は、パイプ87aにより加圧用継手70に接続されている。そして、バッファタンク81内の混合ガスの圧力を調整することでダミーパイプ40の内部空間41を介して光ファイバ母材20の貫通孔231〜234に圧力が加えられるようになっている。
【0046】
バッファタンク81内の圧力は差圧計82で測定され、その測定値に基づいてバッファタンク81内の圧力が調整される。バッファタンク81の圧力の調整方法についてより詳細に説明する。
【0047】
差圧計82はコントローラ86と電気的に接続されており、差圧計82の測定値はコントローラ86に入力される。コントローラ86は差圧計82の測定値に基づいて、MFC84,85を制御して、バッファタンク81内の圧力を変える。
【0048】
MFC84,85には夫々図中左側からパイプ87bを通して窒素ガス及び酸素ガスの混合ガスが流入される。MFC84を通過した混合ガスはパイプ87cを通ってVG83に流入する。VG83はバッファタンク81とパイプ87dで接続されている。また、MFC85を通過した混合ガスは、パイプ87eを通ってバッファタンク81に流入する。このMFC85を通過した混合ガスによりバッファタンク81内の初期ガス圧を決定しておく。ここで、コントローラ86がMFC85の流量を一定に保ちつつMFC84の流量を増やすと、VG83の図中右側のパイプ87fへの混合ガスの流量が増える。この場合、VG83とバッファタンク81とはパイプ87dで接続されていることから、バッファタンク81内が減圧される。また、バッファタンク81内を加圧する場合には、MFC85からバッファタンク81への混合ガスの流量を増やす、またはMFC84の流量を減らせばよい。以上述べたように、MFC84,85の流量を変えることで、バッファタンク81内の圧力を調整することができる。そして、バッファタンク81内の圧力を調整することで、光ファイバ母材20の貫通孔231〜234内に所望の圧力を加える。
【0049】
上記のようにして貫通孔231〜234内に圧力の加えられた光ファイバ母材20において、ダミーパイプ40が取り付けられている端部側と反対側の端部は線引炉60のヒータ61により加熱されて線引きされる。
【0050】
線引きされた光ファイバ母材20である微細構造光ファイバ10は、線引炉60の下流側(線引き方向側)で外径測定器90aにより外径が測定される。なお、微細構造光ファイバ10の直径は、特に断らない限りは、約125[μm]とする。次に樹脂コーティング部100により樹脂がコーティングされる。樹脂コーティング部100は、まず、プライマリコーティングダイスにより紫外線硬化樹脂を塗布し、この紫外線硬化樹脂を紫外光照射により硬化させる。続いて、セカンダリコーティングダイスにより紫外線硬化樹脂を塗布して、この紫外線硬化樹脂を紫外光照射により硬化させて、微細構造光ファイバ10を二重に被覆する。樹脂コーティング部100で被覆された微細構造光ファイバ10は、更に、外径測定器90bにより、外径が測定される。続いて、キャプスタン110、ローラ120a、ダンサローラ120b及びローラ120cを順に経てボビン130に巻き取られる。
【0051】
線引時の線引張力及び線速は、キャプスタン110の回転速度、ダンサローラ121の荷重、及び、線引炉60のヒータ61による加熱温度により決定する。
【0052】
同じ径の微細構造光ファイバ10を得る場合、線速を変えずに線引張力を上げるには線引炉60のヒータ61による光ファイバ母材20の加熱温度を下げる。加熱温度が低い場合には、光ファイバ母材20の粘性が高いので、より大きな力で線引きする必要があるからである。逆に、線速を変えずに線引張力を下げるには、光ファイバ母材20の加熱温度を上げる。加熱温度が高い場合には、光ファイバ母材20の粘性が低下し、小さな力でも線引きすることができるからである。
【0053】
また、本実施形態では線速を30〜100[m/min]としたが、400[m/min]程度までなら本実施形態における微細構造光ファイバ10を製造する方法の効果は全く変わらない。線引炉60の加熱温度を変えずに線速を上げると、線引張力はほぼ線速に比例して上昇する。従って、線引張力を一定に保った条件で線速を上げるには、線引炉60の加熱温度を上げる必要がある。この場合、ガラスの粘性が下がって貫通孔231〜234は変形しやすくなるが、線速が上昇した分だけ高温に保たれる時間は短くなる。粘性が下がり変形しやすくなる効果と、高温に保持される時間が短くなり変形し難くなる効果が相殺するので、張力一定の条件では線速に依らず、貫通孔231〜234の変形しやすさは一定となる。このような理由により線速400[m/min]程度までなら、本実施形態における微細構造光ファイバ10を製造する方法の効果は全く変わらない。また、線速400[m/min]以上の場合には、線速と線引張力との比例関係が多少崩れるため、高温保持時間と粘性の効果が完全には相殺しなくなるが、本実施形態における微細構造光ファイバ10を製造する方法は十分適用可能である。
【0054】
上記線引装置30において、圧力調整手段80で光ファイバ母材20の貫通孔231〜234を加圧して貫通孔231〜234内を大気圧よりも高い状態に維持しつつ、0.78[N]以上、好ましくは1.18[N]以上、更に好ましくは1.47[N]以上の線引張力で光ファイバ母材20を線引きする。このように、より大きな線引張力で線引きする(即ち、より低温で線引きする)ことは、光ファイバ母材20の粘性が高い状態で線引きすることに相当するので、貫通孔231〜234の変形を抑制することができる。なお、直径125[μm]の微細構造光ファイバ10を製造する場合には、線引張力は2.94[N](300[gf])以下が好適である。微細構造光ファイバ10が断線することを抑制することができるからである。
【0055】
また、上記の線引張力の条件の下で、圧力調整手段80により貫通孔231〜234を加圧する場合には、光ファイバ母材20の貫通孔231〜234に加える圧力をP[kPa]としたとき、空孔131〜134の所望の直径d[μm]に応じて、圧力Pは以下のような条件を満たすことが好適である。
【0056】
d≦2の場合、
【数27】
2≦d≦4の場合、
【数28】
4≦d≦6の場合、
【数29】
6≦dの場合、
【数30】
なお、微細構造光ファイバ10の直径が100[μm]以下の場合、以下の条件であることが好ましい。
【0057】
d≦2の場合、
【数31】
2≦d≦4の場合、
【数32】
4≦d≦6の場合、
【数33】
6≦dの場合、
【数34】
図4は、上記の圧力条件をグラフに示したものである。図中の実線I及び実線IIの間が直径125[μm]の微細構造光ファイバ10を製造する場合に対する最適加圧範囲である。また、図中の実線I及び実線IIIの間が直径100[μm]以下の微細構造光ファイバ10を製造する場合に対する最適加圧範囲である。
【0058】
ここで、上記圧力条件について説明する。光ファイバ母材20がヒータ61により加熱されはじめた領域(ヒートゾーンの上部)では光ファイバ母材20の粘性が小さいが、貫通孔231〜234の直径が大きいので表面張力の影響が小さい。そのため、貫通孔231〜234に圧力を加えると貫通孔231〜234は膨張する。そして、光ファイバ母材20が線引きされて貫通孔231〜234の直径が小さくなると、表面張力の影響が大きくなり、貫通孔231〜234は収縮する。また、貫通孔231〜234は線引きされて空孔131〜134となるので、収縮する場合の表面張力の影響の大きさは空孔131〜134の直径dに依存する。そして、空孔131〜134の直径dに応じて貫通孔231〜234に加えるべき圧力Pを上述した条件を満たす圧力、即ち、図4に示す実線Iと実線IIとの間(又は実線Iと実線IIIとの間)の圧力とすることにより貫通孔231〜234の膨張と収縮とのバランスを取ることができる。
【0059】
線引張力が高い条件では、光ファイバ母材20の温度が低く、ガラス粘性が高いため、貫通孔231〜234が変形し難くなる。線引前半の貫通孔231〜234が大きい領域での孔の膨張と、線引後半の貫通孔231〜234が小さい領域での孔の収縮を相殺させて孔形状を維持するのであるが、ガラス粘性の影響は線引前半により大きく現われる。従って、線引張力が高い条件では、線引前半で貫通孔231〜234を必要量だけ膨張させるために、より大きな加圧が必要となる。このような理由により、線引張力が高い場合の最適圧力は高くなる。逆に、線引張力が低い場合には、孔形状を維持するための最適圧力は低くなる。
【0060】
そのため、圧力Pの範囲の上限値及び下限値は、夫々線引張力に依存している。図4の実線IIは、2.94[N]の線引張力で線引きする場合の圧力Pに相当する。実線Iは、0.78[N]の線引張力で線引きする場合の圧力Pに相当する。
【0061】
また、微細構造光ファイバ10の直径が小さくなれば、単位面積あたりの線引張力が大きくなる。そのため、微細構造光ファイバ10の断線を抑制する観点から、直径100[μm]の微細構造光ファイバ10を製造する場合には、線引張力を1.76[N](180[gf])以下とすることが好ましい。このように線引張力の最大値がより小さくなる(即ち、より高温で加熱する)ので、直径100[μm]の微細構造光ファイバ10を製造する場合、最適加圧範囲の上限値は、図4に示すように直径125[μm]の場合よりも小さくなっている。
【0062】
更に、線引張力が小さい場合には、線引き開始時の貫通孔231〜234の直径が大きい領域での光ファイバ母材20の粘性が低いため、わずかな力で貫通孔231〜234が変形しやすい。そのため、圧力Pを精度良く調整する必要がある。一方、線引張力が大きい場合には、光ファイバ母材20を加熱する温度がより低くなるので、光ファイバ母材20の粘性が高い。したがって、多少の圧力変化があっても貫通孔231〜234が変形しにくい。そのため、圧力Pの許容範囲を広げることが可能である。
【0063】
図5〜図8は、図4に示す実線I及び実線IIの間の加圧条件において、夫々0.59[N](60[gf])、1.08[N](110[gf])、1.32[N](135[gf])、1.47[N](150[gf])の線引張力で線引きして得られた微細構造光ファイバ10のファイバ軸に垂直な断面の電子顕微鏡写真を示す図である。
【0064】
図5を見れば分かるように、空孔が変形する条件では外側の空孔ほど潰れやすい傾向があり、また、図5〜図8を比較すれば分かるように、線引張力が高くなるほど空孔の幾何学的形状は揃っている。これは以下の理由による。線引炉60内部で光ファイバ母材20が加熱される際、熱は光ファイバ母材20の表面から内部に伝わる。このとき、最外層の貫通孔234が断熱層として作用するため、貫通孔234のすぐ外側のガラス温度は、内部の貫通孔231〜233の周囲のガラス温度より僅かに高温となる。そのため粘性が低下し、貫通孔234の外側から変形しやすくなるのである。最外層の貫通孔234がある程度潰れて断熱層としての機能が失われると、外側から2層目の貫通孔233が断熱層として働くようになり、外側の貫通孔から順次潰れるのである。
【0065】
また、高張力の条件では、光ファイバ母材20の温度が低くガラス粘性が高いため、線引前半の貫通孔231〜234の膨張量と、線引後半での貫通孔231〜234の収縮量とがともに小さい。そのため、前述した最外層の貫通孔234と内部の貫通孔231〜233の変形量の差が小さくなる。図8に示すように張力1.47[N]で線引すれば最外層を含めて全ての空孔が殆ど変形しない。線引張力を低くすると、線引前半の貫通孔231〜234の膨張量と、線引後半での貫通孔231〜234の収縮量とがともに大きくなるため、最外層の貫通孔234と内部の貫通孔231〜233の変形量の差が大きくなる。そのため、図6,7に示すように最外層の空孔が潰れて変形する。尚、線引張力1.08[N]の図6の方が、線引張力1.32[N]の図7より最外層の変形が僅かに大きいことが見て取れる。
更に線引張力を低くすると、最外層の貫通孔234が潰れて断熱層としての機能が失われるため、外側から2層目の貫通孔233にも変形が現われる。図5は線引張力0.59[N]で線引した場合であるが、外側から2層目の空孔も潰れ始めている。
【0066】
図9は、図5〜図8に示す微細構造光ファイバ10において空孔の最大孔径偏差Dと線引張力との関係を示すグラフである。縦軸は、最大孔径偏差D[%]を示し、横軸は、線引張力を示している。図9には、最外層から2層目を構成している空孔夫々の最大孔径偏差Dのうち一番大きい値、及び、最外層を構成している空孔夫々の最大孔径偏差Dのうち一番大きい値をプロットしている。図9より、線引張力が0.78[N]以上で、最外層から2層目の空孔の最大孔径偏差Dが10[%]以下となっていることがわかる。また、線引張力が1.18[N]以上となると、最外層から2層目の空孔の最大孔径偏差Dは5[%]以下となっている。微細構造光ファイバ10において、内層を構成している空孔の幾何学的形状が光伝送特性に影響し易い。したがって、内層の空孔の最大孔径偏差Dが小さい(即ち、変形が小さい)ほど光伝送特性が設計値により近くなる。そのため、線引張力は、0.78[N]以上である必要があり、更に、1.18[N]であることが好適である。更に、線引張力が1.47[N]以上となると、最外層の空孔の最大孔径偏差Dも10[%]以下となっている。したがって、線引張力が、1.47[N]であることが更に好ましいことがわかる。
【0067】
図10は、最適加圧範囲と最大孔径偏差D[%]との関係を示すグラフである。縦軸は、貫通孔231〜234に加えるべき圧力P[kPa]を示し、横軸は、製造すべき微細構造光ファイバ10の空孔131〜134の直径d[μm]を示している。図10から理解されるように、上述した圧力条件(即ち、実線Iと実線IIとの間)を満たしている圧力Pを加えられて線引きされた場合では、空孔133の最大孔径偏差Dが10[%]以下となっていることがわかる。一方、上記最適加圧範囲外の圧力Pが加えられて製造された微細構造光ファイバ10の空孔133の最大孔径偏差Dは10[%]を越えている。言い換えれば、空孔133の変形が大きくなっていることがわかる。以上より、上記最適加圧範囲の圧力Pを貫通孔231〜234に加えて線引きすることにより、空孔133の変形を抑制することができることが理解できる。
【0068】
上記微細構造光ファイバ10を製造する方法が奏する作用・効果について説明する。
【0069】
従来、微細構造光ファイバを製造する場合、光ファイバ母材20を0.49〜0.74[N]で線引きするのに対して、本実施形態では、0.78[N]以上、好ましくは、1.18[N]以上の線引張力で線引きしている。言い換えれば、本実施形態では、光ファイバ母材20を加熱する温度をより低温にして高張力で線引きしている。そのため、光ファイバ母材20が線引きされる過程において、貫通孔231〜234の変形を抑制することができる。その結果、図6、図7及び図8に示すように微細構造光ファイバ10において、最外層以外の層を構成している空孔の変形が抑制される。したがって、光伝送特性をより設計値に近いものとすることができる。なお、図8に示すように、1.47[N](150[gf])以上の線引張力で線引きした場合には、最外層を構成している空孔の変形も抑制される。したがって、1.47[N]以上の線引張力で線引きすることが、更に好適である。
【0070】
また、線引時には、貫通孔231〜234内に図4に示す実線Iと実線IIとの間(又は、実線Iと実線IIIとの間)の圧力Pを加えている。これにより、貫通孔231〜234の膨張と収縮とのバランスを取ることができるので、空孔131〜134の変形が更に抑制されている。
【0071】
ところで、図5に示すような線引張力を下げた条件では、外側から2層目の空孔直径を保とうとして大きい圧力を加えると、内層の空孔が膨張し過ぎる。このような張力の低い条件では、圧力をどのように変えても内層の空孔を全て揃えることはできない。従って、線引張力を0.78[N]以上にした状態で、所望の空孔直径dに合わせた最適加圧条件を選ぶことが重要である。
【0072】
本実施形態では、微細構造光ファイバ10の空孔131〜134の直径dに応じて貫通孔231〜234に加える圧力Pを最適化している。これにより、層構造の貫通孔231〜234においても、貫通孔231〜234の膨張と収縮とのバランスが取れているので、図6及び図7に示すように外側から2層目の空孔における最大孔径偏差Dを小さくすることができると共に、図8に示すように、最外層を構成している空孔の変形も少なくすることができている。
【0073】
なお、図1に示すd/Λが0.5以上である空孔の分布を有する微細構造光ファイバ10を製造する場合、即ち、隣り合う空孔間が狭い微細構造光ファイバ10を製造する場合には、線引前半で貫通孔231〜234が膨張したときに、隣り合う貫通孔同士が互いに押し合って空孔が変形しやすくなる。上記製造方法のように、線引張力を0.78[N]以上に保ちつつ圧力Pを最適化することで、d/Λが0.5以上の貫通孔が変形しやすい構造の場合でも空孔131〜134の変形が抑制された微細構造光ファイバ10を製造することができる。本実施形態における微細構造光ファイバ10の製造方法では、d/Λが更に大きな構造であっても、線引張力の大きな条件(図4の実線IIや実線IIIに近い条件)で製造することで良好な微細構造光ファイバ10を得ることが可能である。
【0074】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、上記実施形態では、ファイバ軸に直交する断面において空孔131〜134を六方格子状であって、4層構造に配置しているが、特にこのような配置関係に限定する必要はない。例えば、空孔は、3層以上の層構造をしていればよい。また、ファイバ軸に直交する断面での空孔131〜134の配置は、微細構造光ファイバで実現すべき特性、例えば絶対値の大きな波長分散や、空孔を有さない光ファイバよりも大きい又は小さい実効コア断面積を実現するために必要な配置とすれば良い。
【0075】
また、コア領域11に屈折率を上昇させる添加材(例えば、Ge)を添加しても良く、屈折率を下げる添加材を添加しても良い。更に、添加材を添加しなくても良い。また、コア領域11は中空でもかまわない。
【0076】
更に、上記実施形態では、製造すべき微細構造光ファイバ10の直径を125[μm]としているが、特に125[μm]に限定する必要はない。更にまた、光ファイバ母材20の直径を25[mm]としているが、必ずしも25[mm]にする必要はない。例えば、36[mm]あるいは70[mm]などとしても良い。但し、光ファイバ母材の直径が大きい場合、直径が25[mm]である場合に比べて、36[mm]あるいは70[mm]などから25[mm]になるまでにも貫通孔が表面張力により潰れる効果の影響を受ける。これを相殺するように加圧条件を適性化するのであるが、前述のように貫通孔の変形量が大きいと隣り合う貫通孔同士が押し合い、変形の原因となる。そのため、貫通孔の変形量がより小さくなる高張力で線引することが好ましい。逆に、母材直径を15[mm]と小さくした場合、表面張力により貫通孔が潰れる効果は小さくなるので製造は易しくなる。
【0077】
更にまた、上記実施形態において、式(25)及び式(26)において、dAを、空孔131〜134夫々の最大孔径dMAX及び最小孔径dMINをそれらの空孔131〜134において平均した値とした場合に、空孔131〜134夫々の第1偏差D1及び第2偏差D2が10[%]以下としても良い。この場合には、更に光伝送特性を設計値に近いものとすることができる。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、光ファイバはファイバ軸方向に延びる空孔を有し、その光伝送特性を設計値により近いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る微細構造光ファイバの一実施形態において、ファイバ軸に垂直な面で微細構造光ファイバを切断した場合の断面図である。
【図2】図1の微細構造光ファイバとなるべき光ファイバ母材を長手方向に垂直な面で切断した場合の断面図である。
【図3】光ファイバ母材を線引きするための線引装置の構成を示す模式図である。
【図4】光ファイバ母材の貫通孔への最適加圧範囲を示すグラフである。
【図5】0.59[N]の線引張力で光ファイバ母材を線引きした場合の微細構造光ファイバの電子顕微鏡写真を示す図である。
【図6】1.08[N]の線引張力で光ファイバ母材を線引きした場合の微細構造光ファイバの電子顕微鏡写真を示す図である。
【図7】1.32[N]の線引張力で光ファイバ母材を線引きした場合の微細構造光ファイバの電子顕微鏡写真を示す図である。
【図8】1.47[N]の線引張力で光ファイバ母材を線引きした場合の微細構造光ファイバの電子顕微鏡写真を示す図である。
【図9】線引張力と最大孔径偏差との関係を示す図である。
【図10】最適加圧範囲と最大孔径偏差との関係を示す図である。
【符号の説明】
10…微細構造光ファイバ、11…コア領域、12…クラッド領域、131〜134…空孔、20…光ファイバ母材、21…第1領域、22…第2領域、231〜234…貫通孔、30…線引装置、40…ダミーパイプ、41…内部空間、50…チャック、60…線引炉、61…ヒータ、80…圧力調整手段、81…バッファタンク、82…差圧計、83…バキューム・ジェネレータ(VG)、84,85…マスフローコントローラ(MFC)、86…コントローラ、90a,90b…外径測定器、100…樹脂コーティング部、110…キャプスタン、120a…ローラ、120b…ダンサローラ、120c…ローラ、130…ボビン
【発明の属する技術分野】
本発明は、ファイバ軸方向に延びる空孔を有する光ファイバ及び光ファイバを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ファイバ軸方向に延びる空孔を有する光ファイバには、ホーリーファイバやフォトニック結晶ファイバと呼ばれるものがある。以下、このようなファイバ軸方向に延びる空孔を有する光ファイバを微細構造光ファイバと称す。
【0003】
このような微細構造光ファイバは、ファイバ軸に直交する断面における空孔の大きさや空孔の分布を調整することでコア領域とクラッド領域との平均屈折率差を調整することができる。そのため、空孔を有さない光ファイバよりも優れた特性を得ることが可能である。例えば、波長1.55[μm]で大きな負分散を得ると共に実効コア断面積を大きくすることができる微細構造光ファイバが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この提案されている微細構造光ファイバは、コア領域を順次包囲する3層のクラッド領域を有し、各クラッド領域夫々に複数の空孔が配置されている。そして、ファイバ軸に直交する断面における空孔の径の大きさを3層のクラッド領域のうち外側にいくにつれて大きくすることで上記光伝送特性が得られている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−31737号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、微細構造光ファイバは、空孔となるべき孔を有する光ファイバ母材を線引きして製造される。孔を有する光ファイバ母材を線引きのために加熱して溶融すると、孔の界面にはその接線方向に表面張力が働く。このように孔の界面に表面張力が働いた場合、表面張力における孔の径方向への成分は孔の曲率に比例して大きくなり、孔を潰すように作用する。その結果、小さな径の孔ほど表面張力の影響で潰れやすく、その効果により線引時に孔の潰れや変形が生じていた。その結果、線引き後の光ファイバに設計通りの空孔が形成されていなかったり、空孔の形状が変形したりする場合があった。
【0006】
上述したように、微細構造光ファイバの光伝送特性は、ファイバ軸に直交する断面における空孔の大きさや空孔の分布を調整することで得られている。したがって、微細構造光ファイバに所望の空孔が形成されていない場合や空孔が変形している場合には、光伝送特性が設計値から大きく外れる場合があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであり、ファイバ軸方向に延びる空孔を有し設計値により近い光伝送特性を得ることができる光ファイバ及び光ファイバを製造する方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、微細構造光ファイバとなるべき孔を有する光ファイバ母材を線引きする際に、どのように孔の変形が生じるかに関して研究を重ねた。そして、孔内を加圧しないと光ファイバ母材の孔潰れは、光ファイバ母材を線引きしていく過程において、光ファイバ母材の直径が5[mm]程度になるまでの領域で、その80[%]程度が生じていることを見出した。
【0009】
即ち、線引炉のヒータ内部の領域では光ファイバ母材温度は十分に高く、粘性の観点から考えると孔は潰れやすい。しかし、孔の径は大きいので表面張力により孔が潰れる効果は小さい。これに対して、ヒータ下端より下の領域では光ファイバ母材温度が低く粘性が高いため、粘性の観点から考えると孔は潰れにくい。しかし、この領域では孔の径が非常に小さく、孔を潰すように作用する表面張力の効果は大きい。調査の結果、粘性の効果と表面張力の効果とでは、粘性の効果の方が孔潰れに対してより支配的に作用することが判明した。これが光ファイバ母材の直径が5[mm]程度までの領域で孔潰れの80[%]程度が発生する理由である。そして、更に鋭意研究を重ねて本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る光ファイバの製造方法は、ファイバ軸方向に延びる空孔を有する光ファイバを製造する方法であって、空孔となるべき孔を有する光ファイバ母材を用意する工程と、光ファイバ母材の孔内を加圧しながら、0.78[N]以上の線引張力で光ファイバ母材を線引きする工程とを備えることを特徴とする。この方法によれば、光ファイバ母材に形成されている孔を加圧しながら線引するので、孔が潰れることが抑制される。また、0.78[N](80[gf])以上の高い線引張力、つまり低い温度で線引きするのでガラス粘性が高く孔の変形も抑制することができる。
【0011】
また、本発明に係る光ファイバにおいては、線引張力が1.18[N]以上であることが好適である。線引張力が1.18[N](120[gf])以上の場合、より低温で線引きすることができるので、孔の変形を更に抑制することが可能である。
【0012】
更に、本発明に係る光ファイバにおいては、空孔の直径が2[μm]以下の場合、直径をd[μm]とし、孔内に加える圧力をP[kPa]としたときに、圧力Pが
【数13】
で表される関係を満たすことが望ましい。
【0013】
光ファイバ母材が線引炉で加熱され始めたときは、光ファイバ母材が加熱・溶融されて孔の周りの粘性は低くなるが、孔の径が大きいので表面張力の影響は小さい。そのため、孔を加圧していると、孔内に加えられた圧力の影響で孔は膨張する。一方、光ファイバ母材が線引きされて径が小さくなると、孔が小さくなることから表面張力の影響が大きくなり孔は収縮する。光ファイバの空孔の直径が2[μm]以下の場合、式(13)の関係を満たすように孔に圧力を加えることで、孔の膨張と収縮とをバランスさせることができる。
【0014】
また、空孔の直径が2[μm]以上4[μm]以下の場合、直径をd[μm]とし、孔内に加える圧力をP[kPa]としたときに、圧力Pが
【数14】
で表される関係を満たすことが望ましい。
【0015】
この場合、式(14)の関係を満たすように孔に圧力を加えることで、孔の膨張と収縮とをバランスさせることができる。
【0016】
更にまた、空孔の直径が4[μm]以上6[μm]以下の場合、直径をd[μm]とし、孔内に加える圧力をP[kPa]としたときに、圧力Pが
【数15】
で表される関係を満たすことが好ましい。
【0017】
この場合、式(15)の関係を満たすように孔に圧力を加えることで、孔の膨張と収縮とをバランスさせることができる。
【0018】
また、空孔の直径が6[μm]以上の場合、直径をd[μm]とし、孔内に加える圧力をP[kPa]としたときに、圧力Pが
【数16】
で表される関係を満たすことが好ましい。
【0019】
この場合、式(16)の関係を満たすように孔に圧力を加えることで、孔の膨張と収縮とをバランスさせることができる。
【0020】
更にまた、光ファイバ母材の線引き後の直径が100[μm]以下となるような場合、線引張力が1.76[N]以下となる条件で光ファイバ母材を線引きすることが好適である。線引張力が1.76[N](180[gf])以下であれば、光ファイバ母材の線引き後の直径が100[μm]の光ファイバを製造する場合でも、光ファイバが断線することを抑制できる。
【0021】
上述した線引き後の直径を100[μm]以下とする本発明に係る光ファイバの製造方法において、空孔の直径が2[μm]以下の場合、直径をd[μm]とし、孔内に加える圧力をP[kPa]としたときに、圧力Pが
【数17】
で表される関係を満たすことが好適である。
【0022】
この場合、式(17)の関係を満たすように孔に圧力を加えることで、光ファイバの断線を抑制しつつ、孔の膨張と収縮とをバランスさせることができる。
【0023】
更に、上述した線引き後の直径を100[μm]以下とする本発明に係る光ファイバの製造方法において、空孔の直径が2[μm]以上4[μm]以下の場合、直径をd[μm]とし、孔内に加える圧力をP[kPa]としたときに、圧力Pが
【数18】
で表される関係を満たすことが好適である。
【0024】
この場合、式(18)の関係を満たすように孔に圧力を加えることで、光ファイバの断線を抑制しつつ、孔の膨張と収縮とをバランスさせることができる。
【0025】
更にまた、上述した線引き後の直径を100[μm]以下とする本発明に係る光ファイバの製造方法において、空孔の直径が4[μm]以上6[μm]以下の場合、直径をd[μm]とし、孔内に加える圧力をP[kPa]としたときに、圧力Pが
【数19】
で表される関係を満たすことが望ましい。
【0026】
この場合、式(19)の関係を満たすように孔に圧力を加えることで、光ファイバの断線を抑制しつつ、孔の膨張と収縮とをバランスさせることができる。
【0027】
また、上述した線引き後の直径を100[μm]以下とする本発明に係る光ファイバの製造方法において、空孔の直径が6[μm]以上の場合、直径をd[μm]とし、孔内に加える圧力をP[kPa]としたときに、圧力Pが
【数20】
で表される関係を満たすことが好適である。
【0028】
この場合、式(20)の関係を満たすように孔に圧力を加えることで、光ファイバの断線を抑制しつつ、孔の膨張と収縮とをバランスさせることができる。
【0029】
また、本発明に係る光ファイバは、ファイバ軸方向に延びるコア領域と、コア領域を取り囲むように設けられたクラッド領域と、コア領域及びクラッド領域のうち少なくとも一方に形成され、ファイバ軸方向に延びており、ファイバ軸に直交する断面において3層以上の層構造を形成している複数の空孔とを備え、複数の空孔のうち最外層以外の層である内層の複数の空孔夫々の最大孔径をdMAX、最小孔径をdMINとし、最大孔径dMAX及び最小孔径dMINを、内層の複数の空孔において平均した値をdAとし、内層の複数の空孔夫々の第1偏差D1[%]を
【数21】
内層の複数の空孔夫々の第2偏差D2[%]を
【数22】
としたとき、内層の複数の空孔夫々の第1偏差D1及び第2偏差D2が何れも10[%]以下であることを特徴とする。
【0030】
空孔が層構造を形成している場合、最外層以外の層を構成している空孔の幾何学的形状が最外層を構成している空孔の幾何学的形状よりも光ファイバの光伝送特性に影響を与える。したがって、内層を構成している複数の空孔夫々の第1偏差D1及び第2偏差D2が何れも10[%]以内になっていることで、光伝送特性を設計値により近いものとすることが可能である。
【0031】
また、本発明に係る光ファイバは、ファイバ軸方向に延びるコア領域と、コア領域を取り囲むように設けられたクラッド領域と、コア領域及びクラッド領域のうち少なくとも一方に形成され、ファイバ軸方向に延びており、ファイバ軸に直交する断面において3層以上の層構造を形成している複数の空孔とを備え、複数の空孔夫々の最大孔径をdMAX、最小孔径をdMINとし、最大孔径dMAX及び最小孔径dMINを複数の空孔において平均した値をdAとし、複数の空孔夫々の第1偏差D1[%]を
【数23】
複数の空孔夫々の第2偏差D2[%]を
【数24】
としたとき、複数の空孔夫々の第1偏差D1及び第2偏差D2が何れも10[%]以下であることを特徴とする。この場合、最外層を構成している空孔まで含めて、夫々の空孔の第1偏差D1及び第2偏差D2が10[%]以下となっている。そのため、光ファイバの光伝送特性を設計値により近くすることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下に、図面と共に本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、同一の要素には同一の符号を用いることとし、重複する説明は省略する。また、図中の寸法比率は、説明のものとは必ずしも一致していない。
【0033】
図1は、本実施形態におけるファイバ軸方向に延びる空孔を有した光ファイバである微細構造光ファイバ10の説明図である。図1(a)は、微細構造光ファイバ10をファイバ軸に垂直な面で切断した時の断面を示している。微細構造光ファイバ10は、そのファイバ軸に沿って延びるコア領域11と、そのコア領域11の外周を取り囲むクラッド領域12とを備える。
【0034】
クラッド領域12には、コア領域11の周囲にファイバ軸方向に延びる複数の空孔131,132,133,134が形成されている。図1に示すように、空孔131〜134は、コア領域11の周りに六方格子状に配置され、4層構造を形成している。図中の点線は、空孔131〜134が層構造であることを示すために記載しているものであり、実際に形成されているものではない。なお、内側の層から順に第1層〜第4層とした際に、夫々の層を構成している空孔を空孔131〜134としている。空孔131〜134は、その直径をd[μm]、隣り合う空孔との中心間の距離をΛ[μm]としたとき、d/Λが0.5以上となるように配置されている。なお、図1(b)に示すように、空孔(例えば、空孔134)が真円から変形している場合には、直径dは、空孔の最大孔径(例えば、長径)をdMAX[μm]及び最小孔径(例えば、短径)をdMIN[μm]としたときの平均値とすれば良い。
【0035】
また、空孔131〜134夫々の第1偏差D1[%]を
【数25】
とし、第2偏差D2[%]を
【数26】
としたときに、空孔131〜134の最大孔径偏差D[%]を第1偏差D1及び第2偏差D2のうちより大きい方とした場合、最外層以外の層(内層)を構成している空孔131〜133夫々の最大孔径偏差Dが10[%]以下となっている。言い換えれば、第1偏差D1及び第2偏差D2の何れもが10[%]以下となっている。
【0036】
なお、式(25)、式(26)において、dA[μm]は内層を構成している空孔131,132,133夫々の最大孔径dMAX及び最小孔径dMINをそれらの空孔131〜133において平均した場合の値である。
【0037】
このように空孔131〜133の最大孔径偏差Dが10[%]以下である(即ち、空孔131〜133の変形が小さい)ので、微細構造光ファイバ10の波長分散特性などの光伝送特性が設計値により近いものとなっている。これは、微細構造光ファイバ10では、内層を構成している空孔131〜133の幾何学的形状の方が、最外層の空孔134の幾何学的形状よりも微細構造光ファイバ10の光伝送特性に影響を与えるからである。
【0038】
また、上記構成の微細構造光ファイバ10では、クラッド領域12が空孔131〜134を有しているので、クラッド領域12の平均屈折率は、空孔131〜134を有さない場合よりも小さくなっている。そのため、コア領域11とクラッド領域12との屈折率差は、クラッド領域12に空孔が形成されていない場合に比べて大きくなっている。
【0039】
次に、上記微細構造光ファイバ10を製造する方法について説明する。まず、微細構造光ファイバ10となるべき光ファイバ母材20を用意する。図2は、光ファイバ母材20を、その長手方向に直交する平面で切断した断面図である。光ファイバ母材20は、図2に示すように、コア領域11となるべき第1領域21、及び、クラッド領域12となるべき第2領域22を備えている。第1領域21と第2領域22とは同一の組成とする。また、第2領域22には空孔131,132,133,134となるべき貫通孔231,232,233,234が形成されている。貫通孔231〜234は、図2に示すように長手方向に直交する断面において第1領域21の周囲に六方格子状に、4層構造で配置されている。図2中の点線は、図1(a)の点線と同様に、貫通孔231〜234が層構造となっていることを示すために描いたものである。
【0040】
この光ファイバ母材20は、まず、VAD法、MCVD法又はOVD法などを用いて、第1領域21及び第2領域22を形成し、脱水焼結されて透明なガラス母材となり、次に第2領域22に貫通孔231〜234を形成することで作製される。貫通孔231〜234は例えば穿孔器具を用いて形成すれば良い。光ファイバ母材20の直径は特に限定されないが、例えば、約40〜70[mm]である。この光ファイバ母材20を延伸機により延伸し、例えば、直径25[mm]にした後に線引工程へ移される。
【0041】
次に、上記光ファイバ母材20の貫通孔231〜234を加圧しながら光ファイバ20を線引きする。図3は、線引装置30の概略構成図である。なお、図3は、光ファイバ母材20が線引装置30で線引きされている過程を示している。
【0042】
光ファイバ母材20は、その一端部に中空円筒型のダミーパイプ40が接続されている。光ファイバ母材20は、一端部に接続されているダミーパイプ40をチャック50で把持して線引炉60に維持される。
【0043】
ダミーパイプ40の直径(外径)は光ファイバ母材20の直径とほぼ同一である。また、ダミーパイプ40の内径は、光ファイバ母材20における最外層を構成している貫通孔234を取り囲む円の径とほぼ同じか少し大きくなっている。ダミーパイプ40の内部空間41は、光ファイバ母材20側と反対側の端部に取り付けられている加圧用継手70を介して、圧力調整手段80と繋がっている。圧力調整手段80は、ダミーパイプ40の内部空間41を通して光ファイバ母材20の貫通孔231〜234に圧力を加えて、貫通孔231〜234内を大気圧よりも高い状態にする。
【0044】
圧力調整手段80は、バッファタンク81、差圧計82、バキューム・ジェネレータ(Vacuum Generator : VG)83、マスフローコントローラ(Mass Flow Controller : MFC)84,85及びコントローラ86を備えている。コントローラ86は、MFC84,85を制御する。
【0045】
バッファタンク81内には、窒素ガス及び酸素ガスの混合ガスが充填されている。バッファタンク81は、パイプ87aにより加圧用継手70に接続されている。そして、バッファタンク81内の混合ガスの圧力を調整することでダミーパイプ40の内部空間41を介して光ファイバ母材20の貫通孔231〜234に圧力が加えられるようになっている。
【0046】
バッファタンク81内の圧力は差圧計82で測定され、その測定値に基づいてバッファタンク81内の圧力が調整される。バッファタンク81の圧力の調整方法についてより詳細に説明する。
【0047】
差圧計82はコントローラ86と電気的に接続されており、差圧計82の測定値はコントローラ86に入力される。コントローラ86は差圧計82の測定値に基づいて、MFC84,85を制御して、バッファタンク81内の圧力を変える。
【0048】
MFC84,85には夫々図中左側からパイプ87bを通して窒素ガス及び酸素ガスの混合ガスが流入される。MFC84を通過した混合ガスはパイプ87cを通ってVG83に流入する。VG83はバッファタンク81とパイプ87dで接続されている。また、MFC85を通過した混合ガスは、パイプ87eを通ってバッファタンク81に流入する。このMFC85を通過した混合ガスによりバッファタンク81内の初期ガス圧を決定しておく。ここで、コントローラ86がMFC85の流量を一定に保ちつつMFC84の流量を増やすと、VG83の図中右側のパイプ87fへの混合ガスの流量が増える。この場合、VG83とバッファタンク81とはパイプ87dで接続されていることから、バッファタンク81内が減圧される。また、バッファタンク81内を加圧する場合には、MFC85からバッファタンク81への混合ガスの流量を増やす、またはMFC84の流量を減らせばよい。以上述べたように、MFC84,85の流量を変えることで、バッファタンク81内の圧力を調整することができる。そして、バッファタンク81内の圧力を調整することで、光ファイバ母材20の貫通孔231〜234内に所望の圧力を加える。
【0049】
上記のようにして貫通孔231〜234内に圧力の加えられた光ファイバ母材20において、ダミーパイプ40が取り付けられている端部側と反対側の端部は線引炉60のヒータ61により加熱されて線引きされる。
【0050】
線引きされた光ファイバ母材20である微細構造光ファイバ10は、線引炉60の下流側(線引き方向側)で外径測定器90aにより外径が測定される。なお、微細構造光ファイバ10の直径は、特に断らない限りは、約125[μm]とする。次に樹脂コーティング部100により樹脂がコーティングされる。樹脂コーティング部100は、まず、プライマリコーティングダイスにより紫外線硬化樹脂を塗布し、この紫外線硬化樹脂を紫外光照射により硬化させる。続いて、セカンダリコーティングダイスにより紫外線硬化樹脂を塗布して、この紫外線硬化樹脂を紫外光照射により硬化させて、微細構造光ファイバ10を二重に被覆する。樹脂コーティング部100で被覆された微細構造光ファイバ10は、更に、外径測定器90bにより、外径が測定される。続いて、キャプスタン110、ローラ120a、ダンサローラ120b及びローラ120cを順に経てボビン130に巻き取られる。
【0051】
線引時の線引張力及び線速は、キャプスタン110の回転速度、ダンサローラ121の荷重、及び、線引炉60のヒータ61による加熱温度により決定する。
【0052】
同じ径の微細構造光ファイバ10を得る場合、線速を変えずに線引張力を上げるには線引炉60のヒータ61による光ファイバ母材20の加熱温度を下げる。加熱温度が低い場合には、光ファイバ母材20の粘性が高いので、より大きな力で線引きする必要があるからである。逆に、線速を変えずに線引張力を下げるには、光ファイバ母材20の加熱温度を上げる。加熱温度が高い場合には、光ファイバ母材20の粘性が低下し、小さな力でも線引きすることができるからである。
【0053】
また、本実施形態では線速を30〜100[m/min]としたが、400[m/min]程度までなら本実施形態における微細構造光ファイバ10を製造する方法の効果は全く変わらない。線引炉60の加熱温度を変えずに線速を上げると、線引張力はほぼ線速に比例して上昇する。従って、線引張力を一定に保った条件で線速を上げるには、線引炉60の加熱温度を上げる必要がある。この場合、ガラスの粘性が下がって貫通孔231〜234は変形しやすくなるが、線速が上昇した分だけ高温に保たれる時間は短くなる。粘性が下がり変形しやすくなる効果と、高温に保持される時間が短くなり変形し難くなる効果が相殺するので、張力一定の条件では線速に依らず、貫通孔231〜234の変形しやすさは一定となる。このような理由により線速400[m/min]程度までなら、本実施形態における微細構造光ファイバ10を製造する方法の効果は全く変わらない。また、線速400[m/min]以上の場合には、線速と線引張力との比例関係が多少崩れるため、高温保持時間と粘性の効果が完全には相殺しなくなるが、本実施形態における微細構造光ファイバ10を製造する方法は十分適用可能である。
【0054】
上記線引装置30において、圧力調整手段80で光ファイバ母材20の貫通孔231〜234を加圧して貫通孔231〜234内を大気圧よりも高い状態に維持しつつ、0.78[N]以上、好ましくは1.18[N]以上、更に好ましくは1.47[N]以上の線引張力で光ファイバ母材20を線引きする。このように、より大きな線引張力で線引きする(即ち、より低温で線引きする)ことは、光ファイバ母材20の粘性が高い状態で線引きすることに相当するので、貫通孔231〜234の変形を抑制することができる。なお、直径125[μm]の微細構造光ファイバ10を製造する場合には、線引張力は2.94[N](300[gf])以下が好適である。微細構造光ファイバ10が断線することを抑制することができるからである。
【0055】
また、上記の線引張力の条件の下で、圧力調整手段80により貫通孔231〜234を加圧する場合には、光ファイバ母材20の貫通孔231〜234に加える圧力をP[kPa]としたとき、空孔131〜134の所望の直径d[μm]に応じて、圧力Pは以下のような条件を満たすことが好適である。
【0056】
d≦2の場合、
【数27】
2≦d≦4の場合、
【数28】
4≦d≦6の場合、
【数29】
6≦dの場合、
【数30】
なお、微細構造光ファイバ10の直径が100[μm]以下の場合、以下の条件であることが好ましい。
【0057】
d≦2の場合、
【数31】
2≦d≦4の場合、
【数32】
4≦d≦6の場合、
【数33】
6≦dの場合、
【数34】
図4は、上記の圧力条件をグラフに示したものである。図中の実線I及び実線IIの間が直径125[μm]の微細構造光ファイバ10を製造する場合に対する最適加圧範囲である。また、図中の実線I及び実線IIIの間が直径100[μm]以下の微細構造光ファイバ10を製造する場合に対する最適加圧範囲である。
【0058】
ここで、上記圧力条件について説明する。光ファイバ母材20がヒータ61により加熱されはじめた領域(ヒートゾーンの上部)では光ファイバ母材20の粘性が小さいが、貫通孔231〜234の直径が大きいので表面張力の影響が小さい。そのため、貫通孔231〜234に圧力を加えると貫通孔231〜234は膨張する。そして、光ファイバ母材20が線引きされて貫通孔231〜234の直径が小さくなると、表面張力の影響が大きくなり、貫通孔231〜234は収縮する。また、貫通孔231〜234は線引きされて空孔131〜134となるので、収縮する場合の表面張力の影響の大きさは空孔131〜134の直径dに依存する。そして、空孔131〜134の直径dに応じて貫通孔231〜234に加えるべき圧力Pを上述した条件を満たす圧力、即ち、図4に示す実線Iと実線IIとの間(又は実線Iと実線IIIとの間)の圧力とすることにより貫通孔231〜234の膨張と収縮とのバランスを取ることができる。
【0059】
線引張力が高い条件では、光ファイバ母材20の温度が低く、ガラス粘性が高いため、貫通孔231〜234が変形し難くなる。線引前半の貫通孔231〜234が大きい領域での孔の膨張と、線引後半の貫通孔231〜234が小さい領域での孔の収縮を相殺させて孔形状を維持するのであるが、ガラス粘性の影響は線引前半により大きく現われる。従って、線引張力が高い条件では、線引前半で貫通孔231〜234を必要量だけ膨張させるために、より大きな加圧が必要となる。このような理由により、線引張力が高い場合の最適圧力は高くなる。逆に、線引張力が低い場合には、孔形状を維持するための最適圧力は低くなる。
【0060】
そのため、圧力Pの範囲の上限値及び下限値は、夫々線引張力に依存している。図4の実線IIは、2.94[N]の線引張力で線引きする場合の圧力Pに相当する。実線Iは、0.78[N]の線引張力で線引きする場合の圧力Pに相当する。
【0061】
また、微細構造光ファイバ10の直径が小さくなれば、単位面積あたりの線引張力が大きくなる。そのため、微細構造光ファイバ10の断線を抑制する観点から、直径100[μm]の微細構造光ファイバ10を製造する場合には、線引張力を1.76[N](180[gf])以下とすることが好ましい。このように線引張力の最大値がより小さくなる(即ち、より高温で加熱する)ので、直径100[μm]の微細構造光ファイバ10を製造する場合、最適加圧範囲の上限値は、図4に示すように直径125[μm]の場合よりも小さくなっている。
【0062】
更に、線引張力が小さい場合には、線引き開始時の貫通孔231〜234の直径が大きい領域での光ファイバ母材20の粘性が低いため、わずかな力で貫通孔231〜234が変形しやすい。そのため、圧力Pを精度良く調整する必要がある。一方、線引張力が大きい場合には、光ファイバ母材20を加熱する温度がより低くなるので、光ファイバ母材20の粘性が高い。したがって、多少の圧力変化があっても貫通孔231〜234が変形しにくい。そのため、圧力Pの許容範囲を広げることが可能である。
【0063】
図5〜図8は、図4に示す実線I及び実線IIの間の加圧条件において、夫々0.59[N](60[gf])、1.08[N](110[gf])、1.32[N](135[gf])、1.47[N](150[gf])の線引張力で線引きして得られた微細構造光ファイバ10のファイバ軸に垂直な断面の電子顕微鏡写真を示す図である。
【0064】
図5を見れば分かるように、空孔が変形する条件では外側の空孔ほど潰れやすい傾向があり、また、図5〜図8を比較すれば分かるように、線引張力が高くなるほど空孔の幾何学的形状は揃っている。これは以下の理由による。線引炉60内部で光ファイバ母材20が加熱される際、熱は光ファイバ母材20の表面から内部に伝わる。このとき、最外層の貫通孔234が断熱層として作用するため、貫通孔234のすぐ外側のガラス温度は、内部の貫通孔231〜233の周囲のガラス温度より僅かに高温となる。そのため粘性が低下し、貫通孔234の外側から変形しやすくなるのである。最外層の貫通孔234がある程度潰れて断熱層としての機能が失われると、外側から2層目の貫通孔233が断熱層として働くようになり、外側の貫通孔から順次潰れるのである。
【0065】
また、高張力の条件では、光ファイバ母材20の温度が低くガラス粘性が高いため、線引前半の貫通孔231〜234の膨張量と、線引後半での貫通孔231〜234の収縮量とがともに小さい。そのため、前述した最外層の貫通孔234と内部の貫通孔231〜233の変形量の差が小さくなる。図8に示すように張力1.47[N]で線引すれば最外層を含めて全ての空孔が殆ど変形しない。線引張力を低くすると、線引前半の貫通孔231〜234の膨張量と、線引後半での貫通孔231〜234の収縮量とがともに大きくなるため、最外層の貫通孔234と内部の貫通孔231〜233の変形量の差が大きくなる。そのため、図6,7に示すように最外層の空孔が潰れて変形する。尚、線引張力1.08[N]の図6の方が、線引張力1.32[N]の図7より最外層の変形が僅かに大きいことが見て取れる。
更に線引張力を低くすると、最外層の貫通孔234が潰れて断熱層としての機能が失われるため、外側から2層目の貫通孔233にも変形が現われる。図5は線引張力0.59[N]で線引した場合であるが、外側から2層目の空孔も潰れ始めている。
【0066】
図9は、図5〜図8に示す微細構造光ファイバ10において空孔の最大孔径偏差Dと線引張力との関係を示すグラフである。縦軸は、最大孔径偏差D[%]を示し、横軸は、線引張力を示している。図9には、最外層から2層目を構成している空孔夫々の最大孔径偏差Dのうち一番大きい値、及び、最外層を構成している空孔夫々の最大孔径偏差Dのうち一番大きい値をプロットしている。図9より、線引張力が0.78[N]以上で、最外層から2層目の空孔の最大孔径偏差Dが10[%]以下となっていることがわかる。また、線引張力が1.18[N]以上となると、最外層から2層目の空孔の最大孔径偏差Dは5[%]以下となっている。微細構造光ファイバ10において、内層を構成している空孔の幾何学的形状が光伝送特性に影響し易い。したがって、内層の空孔の最大孔径偏差Dが小さい(即ち、変形が小さい)ほど光伝送特性が設計値により近くなる。そのため、線引張力は、0.78[N]以上である必要があり、更に、1.18[N]であることが好適である。更に、線引張力が1.47[N]以上となると、最外層の空孔の最大孔径偏差Dも10[%]以下となっている。したがって、線引張力が、1.47[N]であることが更に好ましいことがわかる。
【0067】
図10は、最適加圧範囲と最大孔径偏差D[%]との関係を示すグラフである。縦軸は、貫通孔231〜234に加えるべき圧力P[kPa]を示し、横軸は、製造すべき微細構造光ファイバ10の空孔131〜134の直径d[μm]を示している。図10から理解されるように、上述した圧力条件(即ち、実線Iと実線IIとの間)を満たしている圧力Pを加えられて線引きされた場合では、空孔133の最大孔径偏差Dが10[%]以下となっていることがわかる。一方、上記最適加圧範囲外の圧力Pが加えられて製造された微細構造光ファイバ10の空孔133の最大孔径偏差Dは10[%]を越えている。言い換えれば、空孔133の変形が大きくなっていることがわかる。以上より、上記最適加圧範囲の圧力Pを貫通孔231〜234に加えて線引きすることにより、空孔133の変形を抑制することができることが理解できる。
【0068】
上記微細構造光ファイバ10を製造する方法が奏する作用・効果について説明する。
【0069】
従来、微細構造光ファイバを製造する場合、光ファイバ母材20を0.49〜0.74[N]で線引きするのに対して、本実施形態では、0.78[N]以上、好ましくは、1.18[N]以上の線引張力で線引きしている。言い換えれば、本実施形態では、光ファイバ母材20を加熱する温度をより低温にして高張力で線引きしている。そのため、光ファイバ母材20が線引きされる過程において、貫通孔231〜234の変形を抑制することができる。その結果、図6、図7及び図8に示すように微細構造光ファイバ10において、最外層以外の層を構成している空孔の変形が抑制される。したがって、光伝送特性をより設計値に近いものとすることができる。なお、図8に示すように、1.47[N](150[gf])以上の線引張力で線引きした場合には、最外層を構成している空孔の変形も抑制される。したがって、1.47[N]以上の線引張力で線引きすることが、更に好適である。
【0070】
また、線引時には、貫通孔231〜234内に図4に示す実線Iと実線IIとの間(又は、実線Iと実線IIIとの間)の圧力Pを加えている。これにより、貫通孔231〜234の膨張と収縮とのバランスを取ることができるので、空孔131〜134の変形が更に抑制されている。
【0071】
ところで、図5に示すような線引張力を下げた条件では、外側から2層目の空孔直径を保とうとして大きい圧力を加えると、内層の空孔が膨張し過ぎる。このような張力の低い条件では、圧力をどのように変えても内層の空孔を全て揃えることはできない。従って、線引張力を0.78[N]以上にした状態で、所望の空孔直径dに合わせた最適加圧条件を選ぶことが重要である。
【0072】
本実施形態では、微細構造光ファイバ10の空孔131〜134の直径dに応じて貫通孔231〜234に加える圧力Pを最適化している。これにより、層構造の貫通孔231〜234においても、貫通孔231〜234の膨張と収縮とのバランスが取れているので、図6及び図7に示すように外側から2層目の空孔における最大孔径偏差Dを小さくすることができると共に、図8に示すように、最外層を構成している空孔の変形も少なくすることができている。
【0073】
なお、図1に示すd/Λが0.5以上である空孔の分布を有する微細構造光ファイバ10を製造する場合、即ち、隣り合う空孔間が狭い微細構造光ファイバ10を製造する場合には、線引前半で貫通孔231〜234が膨張したときに、隣り合う貫通孔同士が互いに押し合って空孔が変形しやすくなる。上記製造方法のように、線引張力を0.78[N]以上に保ちつつ圧力Pを最適化することで、d/Λが0.5以上の貫通孔が変形しやすい構造の場合でも空孔131〜134の変形が抑制された微細構造光ファイバ10を製造することができる。本実施形態における微細構造光ファイバ10の製造方法では、d/Λが更に大きな構造であっても、線引張力の大きな条件(図4の実線IIや実線IIIに近い条件)で製造することで良好な微細構造光ファイバ10を得ることが可能である。
【0074】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、上記実施形態では、ファイバ軸に直交する断面において空孔131〜134を六方格子状であって、4層構造に配置しているが、特にこのような配置関係に限定する必要はない。例えば、空孔は、3層以上の層構造をしていればよい。また、ファイバ軸に直交する断面での空孔131〜134の配置は、微細構造光ファイバで実現すべき特性、例えば絶対値の大きな波長分散や、空孔を有さない光ファイバよりも大きい又は小さい実効コア断面積を実現するために必要な配置とすれば良い。
【0075】
また、コア領域11に屈折率を上昇させる添加材(例えば、Ge)を添加しても良く、屈折率を下げる添加材を添加しても良い。更に、添加材を添加しなくても良い。また、コア領域11は中空でもかまわない。
【0076】
更に、上記実施形態では、製造すべき微細構造光ファイバ10の直径を125[μm]としているが、特に125[μm]に限定する必要はない。更にまた、光ファイバ母材20の直径を25[mm]としているが、必ずしも25[mm]にする必要はない。例えば、36[mm]あるいは70[mm]などとしても良い。但し、光ファイバ母材の直径が大きい場合、直径が25[mm]である場合に比べて、36[mm]あるいは70[mm]などから25[mm]になるまでにも貫通孔が表面張力により潰れる効果の影響を受ける。これを相殺するように加圧条件を適性化するのであるが、前述のように貫通孔の変形量が大きいと隣り合う貫通孔同士が押し合い、変形の原因となる。そのため、貫通孔の変形量がより小さくなる高張力で線引することが好ましい。逆に、母材直径を15[mm]と小さくした場合、表面張力により貫通孔が潰れる効果は小さくなるので製造は易しくなる。
【0077】
更にまた、上記実施形態において、式(25)及び式(26)において、dAを、空孔131〜134夫々の最大孔径dMAX及び最小孔径dMINをそれらの空孔131〜134において平均した値とした場合に、空孔131〜134夫々の第1偏差D1及び第2偏差D2が10[%]以下としても良い。この場合には、更に光伝送特性を設計値に近いものとすることができる。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、光ファイバはファイバ軸方向に延びる空孔を有し、その光伝送特性を設計値により近いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る微細構造光ファイバの一実施形態において、ファイバ軸に垂直な面で微細構造光ファイバを切断した場合の断面図である。
【図2】図1の微細構造光ファイバとなるべき光ファイバ母材を長手方向に垂直な面で切断した場合の断面図である。
【図3】光ファイバ母材を線引きするための線引装置の構成を示す模式図である。
【図4】光ファイバ母材の貫通孔への最適加圧範囲を示すグラフである。
【図5】0.59[N]の線引張力で光ファイバ母材を線引きした場合の微細構造光ファイバの電子顕微鏡写真を示す図である。
【図6】1.08[N]の線引張力で光ファイバ母材を線引きした場合の微細構造光ファイバの電子顕微鏡写真を示す図である。
【図7】1.32[N]の線引張力で光ファイバ母材を線引きした場合の微細構造光ファイバの電子顕微鏡写真を示す図である。
【図8】1.47[N]の線引張力で光ファイバ母材を線引きした場合の微細構造光ファイバの電子顕微鏡写真を示す図である。
【図9】線引張力と最大孔径偏差との関係を示す図である。
【図10】最適加圧範囲と最大孔径偏差との関係を示す図である。
【符号の説明】
10…微細構造光ファイバ、11…コア領域、12…クラッド領域、131〜134…空孔、20…光ファイバ母材、21…第1領域、22…第2領域、231〜234…貫通孔、30…線引装置、40…ダミーパイプ、41…内部空間、50…チャック、60…線引炉、61…ヒータ、80…圧力調整手段、81…バッファタンク、82…差圧計、83…バキューム・ジェネレータ(VG)、84,85…マスフローコントローラ(MFC)、86…コントローラ、90a,90b…外径測定器、100…樹脂コーティング部、110…キャプスタン、120a…ローラ、120b…ダンサローラ、120c…ローラ、130…ボビン
Claims (13)
- ファイバ軸方向に延びる空孔を有する光ファイバを製造する方法であって、
前記空孔となるべき孔を有する光ファイバ母材を用意する工程と、
前記光ファイバ母材の前記孔内を加圧しながら、0.78[N]以上の線引張力で前記光ファイバ母材を線引きする工程と
を備えることを特徴とする光ファイバの製造方法。 - 前記線引張力が1.18[N]以上であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバの製造方法。
- 前記線引張力が1.76[N]以下で、前記光ファイバ母材の線引き後の直径が100[μm]以下となるように前記光ファイバ母材を線引きすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光ファイバの製造方法。
- ファイバ軸方向に延びるコア領域と、
前記コア領域を取り囲むように設けられたクラッド領域と、
前記コア領域及び前記クラッド領域のうち少なくとも一方に形成され、前記ファイバ軸方向に延びており、前記ファイバ軸に直交する断面において3層以上の層構造を形成している複数の空孔と
を備え、
前記複数の空孔のうち最外層以外の層である内層の複数の空孔夫々の最大孔径をdMAX、最小孔径をdMINとし、
前記最大孔径dMAX及び前記最小孔径dMINを、前記内層の複数の空孔において平均した値をdAとし、
前記内層の複数の空孔夫々の第1偏差D1[%]を
- ファイバ軸方向に延びるコア領域と、
前記コア領域を取り囲むように設けられたクラッド領域と、
前記コア領域及び前記クラッド領域のうち少なくとも一方に形成され、前記ファイバ軸方向に延びており、前記ファイバ軸に直交する断面において3層以上の層構造を形成している複数の空孔と
を備え、
前記複数の空孔夫々の最大孔径をdMAX、最小孔径をdMINとし、
前記最大孔径dMAX及び前記最小孔径dMINを、前記複数の空孔において平均した値をdAとし、前記複数の空孔夫々の第1偏差D1[%]を
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003102013A JP2004307250A (ja) | 2003-04-04 | 2003-04-04 | 光ファイバ及び光ファイバの製造方法 |
US10/815,799 US20050089288A1 (en) | 2003-04-04 | 2004-04-02 | Optical fiber and method of fabricating the same |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003102013A JP2004307250A (ja) | 2003-04-04 | 2003-04-04 | 光ファイバ及び光ファイバの製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004307250A true JP2004307250A (ja) | 2004-11-04 |
Family
ID=33465631
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003102013A Pending JP2004307250A (ja) | 2003-04-04 | 2003-04-04 | 光ファイバ及び光ファイバの製造方法 |
Country Status (2)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US20050089288A1 (ja) |
JP (1) | JP2004307250A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008310034A (ja) * | 2007-06-14 | 2008-12-25 | Furukawa Electric Co Ltd:The | ホーリーファイバの製造方法およびホーリーファイバ |
JP2009168914A (ja) * | 2008-01-11 | 2009-07-30 | Mitsubishi Cable Ind Ltd | 光ファイバ及びその製造方法 |
US8181487B2 (en) | 2009-01-23 | 2012-05-22 | Furukawa Electric Co., Ltd. | Optical fiber preform manufacturing method |
JP2017532556A (ja) * | 2014-10-14 | 2017-11-02 | ヘレーウス テネーヴォ エルエルシーHeraeus Tenevo Llc | その粘度に基づく母材または管引抜のための機器及び方法 |
Families Citing this family (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20050074215A1 (en) * | 2003-08-01 | 2005-04-07 | United States Of America As Represented By The Secretary Of The Navy | Fabrication of high air fraction photonic band gap fibers |
US8731356B2 (en) * | 2005-05-03 | 2014-05-20 | The Arizona Board Of Regents On Behalf Of The University Of Arizona | Microstructured optical fibers and manufacturing methods thereof |
JP2011247410A (ja) * | 2010-04-26 | 2011-12-08 | Sumitomo Electric Ind Ltd | 断熱材、断熱部品、断熱用細径繊維の製造方法、及び断熱材の製造方法 |
CN103030272B (zh) * | 2013-01-05 | 2015-04-08 | 中天科技光纤有限公司 | 一种截止波长自动控制的拉丝方法及控制系统 |
KR101955132B1 (ko) * | 2014-08-13 | 2019-03-06 | 헤래우스 테네보 엘엘씨 | 석영 유리 제품 및 석영 유리 광학 소자의 형성 방법 |
FR3093718B1 (fr) * | 2019-03-15 | 2023-02-17 | Univ Limoges | Procédé et dispositif de fabrication d’une fibre optique creuse |
Family Cites Families (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US5284499A (en) * | 1992-05-01 | 1994-02-08 | Corning Incorporated | Method and apparatus for drawing optical fibers |
US5802236A (en) * | 1997-02-14 | 1998-09-01 | Lucent Technologies Inc. | Article comprising a micro-structured optical fiber, and method of making such fiber |
US6097870A (en) * | 1999-05-17 | 2000-08-01 | Lucent Technologies Inc. | Article utilizing optical waveguides with anomalous dispersion at vis-nir wavelenghts |
US6766088B2 (en) * | 2000-05-01 | 2004-07-20 | Sumitomo Electric Industries, Ltd. | Optical fiber and method for making the same |
-
2003
- 2003-04-04 JP JP2003102013A patent/JP2004307250A/ja active Pending
-
2004
- 2004-04-02 US US10/815,799 patent/US20050089288A1/en not_active Abandoned
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008310034A (ja) * | 2007-06-14 | 2008-12-25 | Furukawa Electric Co Ltd:The | ホーリーファイバの製造方法およびホーリーファイバ |
JP2009168914A (ja) * | 2008-01-11 | 2009-07-30 | Mitsubishi Cable Ind Ltd | 光ファイバ及びその製造方法 |
US8181487B2 (en) | 2009-01-23 | 2012-05-22 | Furukawa Electric Co., Ltd. | Optical fiber preform manufacturing method |
JP2017532556A (ja) * | 2014-10-14 | 2017-11-02 | ヘレーウス テネーヴォ エルエルシーHeraeus Tenevo Llc | その粘度に基づく母材または管引抜のための機器及び方法 |
US11454580B2 (en) | 2014-10-14 | 2022-09-27 | Heraeus Quartz North America Llc | Method for preform or tube drawing based on its viscosity |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
US20050089288A1 (en) | 2005-04-28 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US7930904B2 (en) | Method of making an optical fiber having voids | |
JP5762604B2 (ja) | マイクロ構造伝送光ファイバ | |
JP2010520497A (ja) | フォトニック結晶ファイバおよびそれを製造する方法 | |
EP2910533A1 (en) | Optical fiber and method for producing optical fiber preform | |
EP1705157A1 (en) | Method of manufacturing microstructured optical fiber | |
JP2010513179A (ja) | 合成石英ガラス中空円筒の製造方法、および前記製造方法による厚肉中空円筒 | |
US9199877B2 (en) | Method for manufacturing optical fiber base material, and optical fiber | |
JPH09127354A (ja) | 分散補償ファイバ | |
US8041170B2 (en) | Photonic bandgap fiber | |
JP2004307250A (ja) | 光ファイバ及び光ファイバの製造方法 | |
KR20070090747A (ko) | 디프레스드 굴절형 광섬유 제조방법 | |
JP5949016B2 (ja) | 光ファイバ製造方法 | |
WO2019172197A1 (ja) | 光ファイバ | |
JP5147856B2 (ja) | 母材とファイバー製造のための半完成品としての石英ガラス管の製造方法 | |
EP2166385A2 (en) | Microstructure optical fiber and method for making same | |
JP7061628B2 (ja) | フォトニック結晶ファイバおよびその製造方法 | |
US20100195964A1 (en) | Fiber with airlines | |
US11530157B2 (en) | Method of manufacturing an optical fiber using axial tension control to reduce axial variations in optical properties | |
JP5113415B2 (ja) | 石英ガラス管の製造方法 | |
JP4245889B2 (ja) | 光ファイバ母材の作製方法 | |
WO2012111436A1 (ja) | 光ファイバの製造方法 | |
JP2011020861A (ja) | 光ファイバ母材の製造方法 | |
JP2013006750A (ja) | 光ファイバ製造方法 | |
CN115951445B (zh) | 抗弯曲高耐压光纤及其制备方法 | |
JP2005164938A (ja) | 光ファイバとその製造方法、光ファイバの製造装置及び光コネクタ |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050804 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20080521 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080603 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20081007 |