JP2004306516A - 積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フイルム - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、インキとの密着性、湿し水適性、帯電防止性に優れ、かつ高速給紙時に重送せず安定した給紙が可能な易滑性を有するオフセット印刷用フィルムなどの印刷用途に適した積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体からなるフイルムの片面に接着性改質樹脂を含む易印刷性被覆層が、もう一方の面に粒子および/またはワックスを含む易滑性被覆層が積層されてなることを特徴とする積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フイルムである。
【選択図】 なし
【解決手段】シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体からなるフイルムの片面に接着性改質樹脂を含む易印刷性被覆層が、もう一方の面に粒子および/またはワックスを含む易滑性被覆層が積層されてなることを特徴とする積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フイルムである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、両面に異なる組成物を積層した、インキ密着性および滑り性に優れた積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムに関する。さらに詳しくは被印刷材料として好適な積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フイルム、特に多色刷の高速UVオフセット印刷機における給紙安定性、インキ密着性、湿し水適性などに優れ、高品位の印刷が可能な印刷用途に適した積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルム関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムは、耐熱性、電気特性、透明性、易引裂き性等に優れ、磁気テープ用、写真・製版用、コンデンサー用、包装用等、各種のフィルム用途に展開が期待されている。
【0003】
延伸フィルムを包装材料として用いる場合、一般的には延伸フィルムの少なくとも片面に必要に応じて印刷層、有機高分子を塗布積層したガスバリアー層、無機あるいは金属を蒸着したガスバリア層などを積層し、さらに接着剤を積層した上へ、ドライラミネート法や押出ラミネート法によりシーラント層などを設けた積層体とし、該積層体を用いて袋を作製し、それに内容物を充填後、開口部をヒートシールして、密閉包装された食品や薬品や雑貨品などを一般消費者に提供している。そのため、上記積層体を構成するために、延伸フィルムには印刷層やガスバリアー層またはシーラント層などとの十分な接着性を得るため、コロナ処理等の物理処理や接着性改質層を設けることが一般的になされている。
【0004】
シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの場合も、特開平5−338089号公報にはフィルム表面をコロナ処理して表面張力を高くしてからアンカーコート剤を塗布し、その上にシーラント層を設けることが開示されている。しかし、コロナ放電処理の場合、処理後のフィルムが半永久帯電しやすく作業性が低下する問題があり、また接着性も十分とは言えなかった。特開2000−6330号公報には、ガスバリアー層またはシーラント層との接着性を高めるために自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体からなる接着性改質層をシンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムに積層することが開示されている。
【0005】
一方、シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムにコート法で滑り性や耐削れ性の向上ための改質層を設けることは、特開平3−109453号公報、特開平3−109454号公報、特開平8−39741号公報、特開平8−48008号公報などで開示されているが、印刷性、接着性および帯電防止性は十分とは言えなかった。
【0006】
このように、従来検討されてきたシンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムでは、例えば印刷用途に使用した場合、スクラッチ傷の発生、被覆層からの粒子の脱落、インキの転移不良や剥離をもたらすなどの問題が十分に解消されていなかった。特に、枚葉オフセット印刷用途では、オフセット印刷方式における固有の特性である湿し水適性、枚葉で用いる際の給紙・搬送時に強い摩擦を受けること、UV硬化型インキに対する高度な密着性がの要求があることなどにより、湿し水適性、易滑性、帯電防止性、インキとの密着性は不可欠な特性である。
【0007】
近年、フィルムに印刷を施す方式の一つとして枚葉UVオフセット多色刷印刷機の比率が高まり、印刷速度の高速化(1枚当り0.5秒前後の給紙速度)が進んできている。これは主に印刷機の改良、進化によるものであるが、この印刷の際にはフィルムに対して、インキとの密着性、湿し水適性、帯電防止性が必要なことはもちろん、さらに高速給紙時に重送せず安定した給紙が可能な易滑性が必要となる。この高速印刷に耐えられるシンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムは従来存在しなかった。
【0008】
【特許文献1】
特開平5−338089号公報
【特許文献2】
特開平3−109453号公報
【特許文献3】
特開平3−109454号公報
【特許文献4】
特開平8−39741号公報
【特許文献5】
特開平8−48008号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、インキとの密着性、湿し水適性、帯電防止性に優れ、かつ高速給紙時に重送せず安定した給紙が可能な易滑性を有する積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体からなるフイルムの片面に接着性改質樹脂を含む易印刷性被覆層が、もう一方の面に粒子および/またはワックスを含む易滑性被覆層が積層されてなることを特徴とする積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フイルムである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体(以下シンジオタクチックポリスチレン系重合体ともいう)としては、シンジオタクチック構造として側鎖のフェニル基又は置換フェニル基が核磁気共鳴法により定量されるタクティシティがダイアッド(構成単位が2個)で85%以上、ペンタッド(構成単位が5個)で50%以上のシンジオタクチック構造であるポリスチレン、ポリ(p−、m−またはo−メチルスチレン)、ポリ(2,4−、2,5−、3,4−または3,5−ジメチルスチレン)、ポリ(p−ターシャリーブチルスチレン)などのポリ(アルキルスチレン)、ポリ(p−、m−またはo−クロロスチレン)、ポリ(p−、m−またはo−ブロモスチレン)、ポリ(p−、m−またはo−フルオロスチレン)、ポリ(o−メチル −p−フルオロスチレン)などのポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(p−、m−またはo−クロロメチルスチレン)などのポリ(ハロゲン置換アルキルスチレン)、ポリ(p−、m−またはo−メトキシスチレン)、ポリ(p−、m−またはo−エトキシスチレン)などのポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(p−、m−またはo−カルボキシメチルスチレン)などのポリ(カルボキシアルキルスチレン)、ポリ(p−ビニルベンジルプロピル)などのポリ(アルキルエーテルスチレン)、ポリ(p−トリメチルシリルスチレン)などのポリ(アルキルシリルスチレン)、さらにはポリ(ビニルベンジルジメトキシホスファイド)などが挙げられる。特にシンジオタクチックポリスチレンが好適である。
【0012】
本発明に用いるシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体は、必ずしも単一化合物である必要はなく、アタクチック構造やアイソタクチック構造のポリスチレン系重合体との混合物や、共重合体およびそれらの混合物でもよいが、少なくとも40重量%以上はシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体から成るものである。
【0013】
また、本発明に用いるシンジオタクチックポリスチレン系重合体は、重量平均分子量が10,000以上、さらに好ましくは50,000以上である。重量平均分子量が10,000未満のものでは、強伸度特性や耐熱性に優れた二軸延伸フィルムを得ることができない。重量平均分子量の上限については特に限定されるものではないが、1500,000以上では押出機の負荷の増加、延伸張力の増加に伴う破断の発生などが生じるため好ましくない。
【0014】
本発明に用いるシンジオタクチックポリスチレン系重合体には、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の各種添加剤、例えば滑剤、顔料、熱安定化剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐衝撃性改良剤等が添加されていてもよい。
滑剤としては、シリカ、二酸化チタン、タルク、カオリナイトなどの金属酸化物、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属塩または有機ポリマーからなる粒子など、シンジオタクチックポリスチレン系ポリマーに対し不活性な粒子が挙げられる。上記滑剤のいずれか一種を単独に用いても二種以上を併用してもよい。
【0015】
本発明の積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの基材フィルムは、公知の方法で製造することが出来る。例えば、ダイスからシンジオタクチックポリスチレン系樹脂をフィルム状に溶融押出し冷却固化して得た未延伸フィルムを、縦延伸および横延伸を順に行う逐次二軸延伸方法が適用できる。この他に、横・縦逐次二軸延伸法、縦・横・縦逐次延伸法、縦・縦・横逐次延伸法等の逐次延伸方法、縦延伸および横延伸を同時に行う同時二軸延伸方法などを採用することができ、要求される強度や寸法安定性などの諸特性に応じて延伸方法を選択できる。縦一軸延伸法、横一軸延伸法による一軸延伸フィルムでも構わない。延伸装置としては、ロール延伸機、テンター延伸機、インフレーション延伸機などを用いることができる。また、延伸後のフィルムは、熱固定処理、縦弛緩処理、横弛緩処理などの熱処理を行なうことが、熱寸法安定性および接着性などが向上する点で好ましい。
【0016】
本発明の積層シンジオタクチックポリスチレン系フイルムは、前記した基材フィルムの片面に接着性改質樹脂を含む易印刷性被覆層が、もう一方の面に粒子および/またはワックスを含む易滑性被覆層が積層されてなる必要がある。このことにより、UVインキや溶剤インキに対する密着性が向上し印刷の仕上がり性、耐久性等を向上させることができ、かつ多色刷の高速UVオフセット印刷機における給紙安定性を確保することができる。
【0017】
本発明における易印刷性被覆層は、前記した基材フイルムと印刷インクとの密着性を向上させる機能を有する接着性改質樹脂が含まれていたらその組成やその積層方法等は限定されなく任意である。接着性改質樹脂の具体例としては、例えば請求項3に記載のごとく、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アミノ系樹脂、エポキシ系樹脂、オキサゾリン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂の群から選ばれた少なくとも一種の樹脂よりなることが好ましい実施態様である。
前記樹脂は非結晶性あるいは低結晶性のものが好ましく、例えばJIS K 7121に準拠したDSC測定において融解ピークを示さない前記樹脂が好ましい。
また、非架橋性樹脂品あるいは架橋性樹脂のいずれであっても構わない。
【0018】
本発明における易印刷性被覆層は、請求項4に記載のごとく前記易印刷性被覆層の耐水性値が90%以上であることが好ましい実施態様である。耐水性値とは、実施例に詳細が記載されているとおりオフセットインキ層を積層したフィルムをボイル処理した後にセロファン粘着テープで碁盤目剥離テストを行った時のインキ層がフィルムに残存する百分率%であり、ボイル処理後のインキ層の密着力を表す。特に耐水性値は95%以上がより好ましい。耐水性値が90%未満では、前記した印刷性改良層表面にインキ層を形成させた際に、湿潤下での密着性が不良となる。該特性を付与する方法は、限定されないが、例えば請求項5に記載のごとく、易印刷性被覆層として主鎖のポリエステル系重合体に不飽和基含有単量体がグラフト重合されたポリエステル系グラフト共重合体(以下ポリエステル系グラフト共重合体ともいう)を用いることにより達成される。
【0019】
前記したポリエステル系グラフト共重合体について詳しく説明する。
本発明に用いるポリエステル系グラフト共重合体を得るためのグラフト重合は、一般には、常法で重合された疎水性共重合ポリエステル樹脂を有機溶剤中に溶解し、該溶液にラジカル開始剤およびラジカル重合性不飽和基含有単量体を反応せしめることにより実施される。グラフト化反応終了後の反応生成物は、上記の疎水性共重合ポリエステルを主鎖としラジカル重合性単量体が枝ポリマーとしてグラフト重合されたグラフト重合体の他に、グラフト化を受けなかった疎水性共重合ポリエステル及び疎水性共重合ポリエステルにグラフト化しなかったラジカル重合体を含有している場合がある。本発明に用いるポリエステル系グラフト重合体には、これらの混合物が含まれる。
【0020】
本発明に用いる疎水性共重合ポリエステル樹脂にラジカル重合性不飽和基含有単量体をグラフト重合させた反応物の酸価は600eq/106 g以上であることが好ましい。より好ましくは、反応物の酸価は1200eq/106 g以上である。反応物の酸価が600eq/106 g未満である場合は、本発明の目的である接着性が十分に得られない場合がある。
【0021】
また、本発明におけるポリエステル系グラフト重合体の疎水性共重合ポリエステル樹脂と不飽和基含有単量体グラフト重合部分の重量比率は、ポリエステル/ラジカル重合性単量体=40/60〜95/5の範囲が望ましく、更に望ましくは55/45〜93/7、最も望ましくは60/40〜90/10の範囲である。
疎水性共重合ポリエステル樹脂の重量比率が40重量%未満の場合、接着性が十分でなくなる。一方、疎水性共重合ポリエステル樹脂の重量比率が95重量%より大きい場合は、フィルムどうしのブロッキングが起こりやすくなる。
【0022】
本発明に用いるポリエステル系グラフト重合体は、有機溶媒の溶液または分散液、あるいは、水系溶媒の溶液または分散体の形態になる。特に、水系溶媒の分散液、水分散体の形態が、作業環境、塗布性の点で好ましい。この様な水分散体を得る方法としては、例えば、前記疎水性共重合ポリエステル樹脂の有機溶媒の溶液に、親水性のラジカル重合性単量体を含むラジカル重合性不飽和基含有単量体をグラフト重合し、次いで、水を添加した後、有機溶媒を留去することにより達成される。
【0023】
本発明に用いるポリエステル系グラフト重合体の水分散体は、例えばレーザー光散乱法により測定される分散粒子の平均粒子径は500nm以下であり、分散体は半透明ないし乳白色の外観を呈する液体である。重合方法の調整により、多様な分散粒子径の水分散体が得られるが、この粒子径は10〜500nmが適当であり、分散安定性の点で、400nm以下が好ましく、より好ましくは300nm以下である。500nmを越えると被覆膜表面の光沢の低下がみられ、被覆物の透明性が低下する。一方、10nm未満では、本発明の目的である高い湿度雰囲気でのインキやラミネート層との接着性が低下するため好ましくない。
【0024】
本発明に用いるポリエステル系グラフト重合体の水分散体を得るために使用する親水性のラジカル重合性不飽和基含有単量体としては、親水基を有するか、後で親水基に変化できる基を有する飽和基含有単量体が挙げられる。例えば、カルボキシル基、水酸基、リン酸基、亜リン酸基、スルホン酸基、アミド基、第4級アンモニウム塩基、酸無水物基、グリシジル基、クロル基など等を含むラジカル重合性不飽和基含有単量体を挙げることができる。これらの中で、水分散性が良好である点および接着性向上の点から、カルボキシル基を有するか、あるいはカルボキシル基を発生する基を有するラジカル重合性不飽和基含有単量体が好ましい。
【0025】
本発明において、ポリエステル系グラフト重合体の主鎖の共重合ポリエステル樹脂としては、疎水性共重合ポリエステル樹脂を用いる。疎水性共重合ポリエステル樹脂とは、本来それ自身で水に分散または溶解しない本質的に水不溶性の共重合ポリエステル樹脂である。水に分散または溶解するポリエステル樹脂を、グラフト重合の主鎖のポリマーに使用すると、本発明の目的である接着性が高い湿度の雰囲気で悪くなるので好ましくない。
【0026】
この疎水性共重合ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分の組成は、芳香族ジカルボン酸60〜99.5モル%、脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸0〜40モル%、重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸0.5〜10モル%であることが好ましい。芳香族ジカルボン酸が60モル%未満である場合や脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸が40モル%を越えた場合は、接着強度が低下する。
【0027】
また、重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸が0.5モル%未満の場合、ポリエステル樹脂に対するラジカル重合性単量体の効率的なグラフト化が行われにくくなり、逆に10モル%を越える場合は、グラフト化反応の後期に余りにも粘度が上昇し、反応の均一な進行を妨げるので好ましくない。より好ましくは、芳香族ジカルボン酸は70〜98モル%、脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸0〜30モル%、重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸2〜7モル%である。
【0028】
芳香族ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等を挙げることができる。5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の親水基含有ジカルボン酸は、本発明の目的である耐水性が低下する点で、用いない方が好ましい。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等を挙げることができ、脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とその酸無水物等を挙げることができる。
【0029】
重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸の例としては、α、β−不飽和ジカルボン酸として、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、不飽和二重結合を含有する脂環族ジカルボン酸として、2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸等を挙げることができる。このうち好ましいのは、重合性の点から、フマル酸、マレイン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸である。
【0030】
一方、グリコール成分は、炭素数2〜10の脂肪族グリコールおよび/または炭素数6〜12の脂環族グリコールおよび/またはエーテル結合含有グリコールよりなるが、炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等を挙げることができ、炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
【0031】
エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらにビスフェノール類の二つのフェノール性水酸基に、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるグリコール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどを挙げることができる。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必要により使用しうる。
【0032】
前記疎水性共重合ポリエステル樹脂中には、0〜5モル%の3官能以上のポリカルボン酸および/またはポリオールを共重合することができるが、3官能以上のポリカルボン酸としては、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)等が使用される。一方、3官能以上のポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が使用される。3官能以上のポリカルボン酸および/またはポリオールは、全酸成分あるいは全グリコール成分に対し0〜5モル%、望ましくは0〜3モル%の範囲で共重合されるが、5モル%を越えると重合時のゲル化が起こりやすく、好ましくない。
【0033】
また、前記疎水性共重合ポリエステル樹脂の分子量は、重量平均で5000〜50000の範囲が好ましい。分子量が5000未満の場合は接着強度の低下があり、逆に50000を越えると重合時のゲル化等の問題が起きてしまう。
【0034】
本発明に用いるポリエステル系グラフト重合体の枝ポリマーとしてグラフト重合される不飽和基含有単量体としては、例えば、フマル酸、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのフマル酸のモノエステルまたはジエステル、マレイン酸とその無水物、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸のモノエステルまたはジエステル、イタコン酸とその無水物、イタコン酸のモノエステルまたはジエステル、フェニルマレイミド等のマレイミド等、また、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン誘導体、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等、アクリル重合性単量体、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ含有アクリル単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド等のアミド基含有アクリル単量体、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有アクリル単量体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有アクリル単量体、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)等のカルボキシル基またはその塩を含有するアクリル単量体が挙げられる。好ましくは、マレイン酸無水物とそのエステルである。上記モノマーは1種もしくは2種以上を用いて共重合させることが出来る。
【0035】
本発明に用いるグラフト重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物類や有機アゾ化合物類を用いることができる。
有機過酸化物として、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、有機アゾ化合物として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などを挙げることが出来る。グラフト重合を行うための重合開始剤の使用量は、重合性モノマーに対して、少なくとも0.2重量%以上、好ましくは0.5重量%以上である。
【0036】
重合開始剤の他に、枝ポリマーの鎖長を調節するための連鎖移動剤、例えばオクチルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソールなどを必要に応じて用い得る。この場合、重合性モノマーに対して0〜5重量%の範囲で添加されるのが望ましい。
【0037】
本発明に用いるポリエステル系グラフト重合体のグラフト重合反応の溶媒は、沸点が50〜250℃の水性有機溶媒から構成されることが好ましい。ここで水性有機溶媒とは、20℃における水に対する溶解性が少なくとも10g/L以上、望ましくは20g/L以上であるものをいう。沸点が250℃を越えるものは、余りに蒸発速度がおそく、塗膜の高温焼付によっても充分に取り除くことが出来ないので不適当である。また沸点が50℃以下では、それを溶媒としてグラフト化反応を実施する場合、50℃以下の温度でラジカルに解裂する開始剤を用いねばならないので取扱上の危険が増大し、好ましくない。
【0038】
共重合ポリエステル樹脂をよく溶解しかつカルボキシル基含有重合性単量体を含む重合性単量体混合物およびその重合体を比較的良く溶解する第一群の水性有機溶媒としては、エステル類例えば酢酸エチル、ケトン類例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、環状エ−テル類例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、グリコ−ルエ−テル類例えばエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコ−ルメチルエ−テル、プロピレングリコ−ルプロピルエ−テル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコ−ルブチルエ−テル、カルビトール類例えばメチルカルビト−ル、エチルカルビト−ル、ブチルカルビト−ル、グリコ−ル類若しくはグリコ−ルエ−テルの低級エステル類例えばエチレングリコ−ルジアセテ−ト、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ケトンアルコール類例えばダイアセトンアルコール、更にはN−置換アミド類例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を例示する事が出来る。
【0039】
これに対し、共重合ポリエステル樹脂をほとんど溶解しないがカルボキシル基含有重合性単量体を含む重合性単量体混合物およびその重合体を比較的よく溶解する第二群の水性有機溶媒として、水、低級アルコール類、低級カルボン酸類、低級アミン類などを挙げることが出来るが、本発明の実施に特に好ましいものとしては炭素数1〜4のアルコール類およびグリコール類である。
【0040】
グラフト化反応を単一溶媒で行なう場合は、第一群の水性有機溶媒からただ一種を選んで行なうことが出来る。混合溶媒で行なう場合は第一群の水性有機溶媒からのみ複数種選ぶ場合と、第一群の水性有機溶媒から少なくとも一種を選びそれに第二群の水性有機溶媒から少なくとも一種を加えることができる。
【0041】
グラフト重合反応溶媒を第一群の水性有機溶媒からの単一溶媒とした場合と、第一群および第二群の水性有機溶媒のそれぞれ一種からなる混合溶媒とした場合のいずれにおいてもグラフト重合反応を行なうことができる。しかし、グラフト化反応の進行挙動、グラフト化反応生成物およびそれから導かれる水分散体の外観、性状などに差異がみられ、第一群および第二群の水性有機溶媒のそれぞれ一種からなる混合溶媒を使用する方が好ましい。
【0042】
第一群の溶媒中では共重合ポリエステル分子鎖は広がりの大きい鎖ののびた状態にあり、一方第一群/第二群の混合溶媒中では広がりの小さい糸まり状に絡まった状態にあることがこれら溶液中の共重合ポリエステルの粘度測定により確認された。共重合ポリエステルの溶解状態を調節し分子間架橋を起こりにくくすることがゲル化防止に有効である。効率の高いグラフト化とゲル化抑制の両立は後者の混合溶媒系において達成される。第1群/第2群の混合溶媒の重量比率はより望ましくは95/5〜10/90さらに望ましくは90/10〜20/80、最も望ましくは85/15〜30/70の範囲である。最適の混合比率は使用するポリエステルの溶解性などに応じて決定される。
【0043】
以下に本発明に用いるポリエステル系グラフト重合体の水分散体化する方法について説明する。
本発明に用いるポリエステル系グラフト重合体の溶液は、塩基性化合物で中和することが好ましく、中和することによって容易に水分散体化することが出来る。塩基性化合物としては塗膜形成時、或は硬化剤配合による焼付硬化時に揮散する化合物が望ましく、例えば、アンモニア、有機アミン類などが好適である。望ましい化合物の例としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノ−ルアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3ージエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3ーメトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどを挙げることが出来る。塩基性化合物は、グラフト化反応生成物中に含まれるカルボキシル基含有量に応じて、少くとも部分中和、若しくは、完全中和によって水分散体のPH値が5.0〜9.0の範囲であるように使用するのが望ましい。沸点が100℃以下の塩基性化合物を使用した場合であれば、乾燥後の塗膜中の残留塩基性化合物も少なく、金属や無機蒸着膜の接着性や他材料と積層した時の耐水性や耐熱水接着性が優れる。また100℃以上の塩基性化合物使用した場合や乾燥条件を制御し、乾燥後の塗膜中に塩基化合物を500ppm以上残留させることにより、印刷インクの転移性が向上する。
【0044】
本発明に用いるポリエステル系グラフト重合体の水系分散体では、不飽和基含有単量体の重合物の重量平均分子量は500〜50000であるのが好ましい。不飽和基含有単量体の重合物の重量平均分子量を500以下にコントロールすることは一般に困難であり、グラフト効率が低下し、共重合ポリエステルへの親水性基の付与が十分に行なわれない傾向がある。また、不飽和基含有単量体のグラフト重合物は分散粒子の水和層を形成するが、十分な厚みの水和層をもたせ、安定な分散体を得るためにはラジカル重合性単量体のグラフト重合物の重量平均分子量は500以上であることが望ましい。また不飽和基含有単量体のグラフト重合物の重量平均分子量の上限は溶液重合における重合性の点で50000が好ましい。この範囲内での分子量のコントロールは開始剤量、モノマー滴下時間、重合時間、反応溶媒、モノマー組成あるいは必要に応じて連鎖移動剤や重合禁止剤を適宜組み合わせることにより行なうことが出来る。
【0045】
本発明において、主鎖の共重合ポリエステル樹脂に不飽和基含有単量体をグラフト重合させた反応物は、自己架橋性を有するため高度な耐溶剤性および耐水性を発揮する。常温では架橋しないが、乾燥時の熱で、熱ラジカルによる水素引き抜き反応等の分子間反応を行い、架橋剤なしで架橋する。これにより初めて、本発明の目的である接着性、耐水性を発現できる。塗膜の架橋性については、様々の方法で評価できるが、疎水性共重合ポリエステル樹脂およびラジカル重合体の両方を溶解するクロロホルム溶媒での不溶分率で調べることができる。80℃以下で乾燥し、120℃で5分間熱処理して得られる塗膜の不溶分率が、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。塗膜の不溶分率が50重量%未満の場合は、接着性、耐水性が十分でないばかりでなく、ブロッキングも起こしてしまう。
【0046】
本発明に用いるポリエステル系グラフト共重合体は、そのままで本発明に用い得る易印刷性被覆層を形成し得るが、他の目的から汎用のポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、それらの共重合体、各種水分散樹脂などや各種機能性樹脂、例えば抗菌性樹脂、紫外線吸収性樹脂、ガスバリアー性樹脂や無機滑剤、有機滑剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤等を混合して塗布層を形成しても構わない。
【0047】
本発明においては、前記した易印刷性被覆層の厚みは特に限定しないが、本発明においては二軸延伸後の乾燥塗布厚みで0.05〜1.0μmが好ましく、より好ましくは0.07〜0.5μm、更に好ましくは0.09〜0.3μmである。
【0048】
本発明においては、前記した易印刷性被覆層面のもう一方のフィルム面には、粒子および/またはワックスを含む易滑性被覆層が積層されてなる必要がある。該易滑性被覆層は、当該構成を満たし、かつ上記した基材のシンジオタクチックポリスチレン系フイルムの滑り性を向上させる機能を有すればその組成等は限定されなく任意であるが、請求項6に記載のごとく、(a)共重合ポリエステル樹脂、(b)スルホン酸塩基を有する化合物、(c)平均粒子径が1.0〜5.0μmの粒子、(d)高分子系ワックス、を含む組成物からなることが好ましい実施態様である。
【0049】
本発明の易滑性被覆層をに用いる(a)共重合ポリエステル樹脂は、少なくとも1種のジカルボン酸成分と少なくとも1種のジオール成分およびそれらのエステル形成成分を構成単位とする共重合ポリエステル重縮合物であり、前記易印刷被覆層と同種のポリエステル樹脂でもよいし、一般的に使用されている共重合ポリエステル樹脂でもかまわない。
【0050】
(a)共重合ポリエステル樹脂の構成成分であるジカルボン酸成分としては、例えば、(1)テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、(2)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、(3)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、(4)マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸などの不飽和ジカルボン酸を挙げることができる。なかでも、テレフタル酸およびイソフタル酸が好ましく、その他少量であれば他のジカルボン酸を加えてもよい。
【0051】
(a)共重合ポリエステル樹脂のもう一方の構成成分であるジオール成分としては、例えば、(1)エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコールなどの脂肪族ジオール、(2)1,4−シクロヘキサンジメタールなどの脂環族ジオール、(3)4,4’−ビス(ヒドロキシエチル)ビスフェノールAなどの芳香族ジオール、さらにビス(ポリオキシエチレングリコール)ビスフェノールエーテルを挙げることができる。なかでも、エチレングリコールおよびジエチレングリコールが最も好ましく、その他少量のジオール成分を用いてもよい。
【0052】
前記ジカルボン酸成分の他に、共重合ポリエステル樹脂に水分散性を付与させるために、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を1〜10モル%の範囲で使用することが好ましく、その他、スルホテレフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,6ジカルボン酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸などを用いることができる。
【0053】
易滑性被覆層における樹脂成分は、該被覆層中に30〜95重量%の範囲で含有していることが好ましい。30重量%未満の場合には膜強度が不足し、摩擦などの外力が加わった際に膜の脱落が生じ易くなる。さらに、粒子の脱落が生じ易くなる。また、95重量%を越える場合は膜としての強度は向上するが、帯電防止性能、滑り性などの目的とする性能が発現しにくくなる。好ましくは50〜90重量%である。
【0054】
前記した(b)スルホン酸塩基を有する化合物は、帯電防止性を付与する目的で使用する化合物であり、例えば、スルホン酸塩基を有する不飽和単量体(例えば、ビニルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸アンモニウム、メタクリルスルホン酸カリウム、スチレンスルホン酸リチウムなど)の1種以上の重合体からなる高分子型帯電防止剤や、R−SO3X{ここで、Rはアルキル基、アリール基、またはアルキル基を有する芳香族基を、Xは金属イオン(例えば、Li、Na、Kなどのカチオン)、アンモニウムイオン、アミンイオン、リン酸エステルイオンを示す}で示される低分子型帯電防止剤やその2量体などが挙げられるが、耐熱性に優れたスルホン酸塩基を有し、帯電防止性が発現する機能を有していれば、前記化合物に限定されるものではない。
【0055】
低分子型帯電防止剤としては、アルキルスルホン酸塩、例えば、ペンタンスルホン酸ナトリウム、オクタンスルホン酸ナトリウム、オクタンスルホン酸リチウム、オクタンスルホン酸カリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウムが挙げられる。また、アリールスルホン酸塩、例えば、ベンジルスルホン酸ナトリウム、トルイルスルホン酸ナトリウム、ナフチルスルホン酸ナトリウムが挙げられる。さらに、アルキル基を有する芳香族スルホン酸塩、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの炭素数8〜20のアルキルベンゼンスルホン酸金属塩(例えば、Li塩、K塩、Na塩)、炭素数8〜20のアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、炭素数8〜20のアルキルフェニールエーテルジスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
【0056】
前記のスルホン酸塩基を有する不飽和単量体の重合体からなる高分子型帯電防止剤としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸塩のような分子内にスルホン酸塩基成分を含有するスチレン系樹脂を使用することが好ましい。
この高分子型帯電防止剤の特徴は、そのスルホン酸成分の親水性の高さにある。分子内にスルホン酸塩基成分を含有するスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩などのホモポリマー、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルなどのアクリル系単量体とスチレンスルホン酸単量体との共重合物が挙げられる。
前記のポリスチレンスルホン酸塩の重量平均分子量は、1000〜150000、好ましくは10000〜70000が好ましい。分子量が1000未満になると塗膜の耐水性が得られにくくなり、150000を越えると、共重合ポリエステルとの均一混合が困難になりやすい。
【0057】
本発明で用いる(b)スルホン酸塩基を有する化合物の易滑性被覆層中の含有量は、(b)スルホン酸塩基を有する化合物が低分子の場合は、0.5〜15重量%が好ましく、特に好ましくは2〜10重量%である。また、(b)スルホン酸塩基を有する化合物が高分子の場合は、5〜50%重量が好ましく、特に好ましくは10〜30重量%である。前記低分子化合物および高分子化合物を混合して使用してもかまわない。
【0058】
(b)スルホン酸塩基を有する化合物の易滑性被覆層中の含有量が少なすぎると、易滑性被覆層の表面固有抵抗値は大きくなる。易滑性被覆層の表面固有抵抗値は23℃、50%RHの条件で1×1012Ω/□以下であることが好ましく、1×1012Ω/□を超えると高速印刷機での給紙性が悪化する。
スルホン酸塩基を有する化合物の含有量が多すぎると、裏移りや粒子脱落による印刷面への汚染が生じやすくなる。印刷面と易滑面におけるスルホン酸塩基を有する化合物の含有量は、必要とされる帯電防止性のレベルに応じて、独立して制御することができる。
【0059】
本発明に用いる(c)平均粒子径が1〜5μmの粒子としては、市販の無機粒子および/または有機粒子を使用することができる。平均粒子径は、より好ましくは1〜3μmの範囲である。無機粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナなどの微粒子が挙げられ、有機粒子としては、例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エステル系樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に粒子径のバラツキが少なく、耐熱性が高い粒子が好ましく、架橋ポリスチレン系球状粒子、ベンゾグアナミン系球状粒子、架橋アクリル系球状粒子、シリコーン系球状粒子が好ましい。
【0060】
また、易滑性被覆層における前記粒子の含有量は、0.3〜10重量%、好ましくは0.7〜5重量%である。平均粒子径が1μm未満または粒子含有量が0.3重量%未満であると、被覆層表面に適度な凹凸が形成されにくくなる。その結果、枚葉フィルムとした際に、フィルム間に空気層が溜まりにくく、加重解放直後の摩擦を低減することができず、印刷速度を上げることが困難となる。平均粒子径が10μmを超えたり、粒子含有量が10重量%以上であると、フィルムのヘイズが高くなり、透明性の悪化、または粒子脱落により、印刷面の汚れ、印刷品位の問題、機台の汚染などが発生する。
【0061】
本発明においては、上記した微粒子は前記した易印刷性被覆層にも配合しても構わない。これにより本発明の積層シンジオタクチックポリスチレン系フイルムの滑り特性がより向上するので好ましい実施態様として推奨される。
【0062】
本発明に用いる(d)高分子系ワックス成分は、透明性を阻害しないものであれば特に限定されるものではなく、従来公知のものが使用可能である。例えば、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、脂肪酸系ワックスが挙げられる。
これらワックス成分の重量平均分子量は1000〜10000が好ましく、より好ましくは1500〜6000の範囲である。分子量が1000未満の場合には、被覆層の内部から表面への滲み出しにより、印刷面への転移汚染が生じやすく、インキ密着力に悪影響を与える。分子量が10000を超える場合には、滑り性の改善効果が不十分になる。
【0063】
易滑性被覆層における(d)高分子系ワックス成分の含有量は、1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%である。易滑性被覆層における(d)高分子系ワックス成分の含有量が1重量%未満の場合は、十分に摩擦係数を下げることができず、印刷速度が速くなると給紙性などが悪化し、高速印刷ができなくなる。被覆層におけるワックス成分の樹脂成分に対する含有量が10重量%を越える場合は、ワックス成分の脱落により、印刷面への汚染、さらには透明性、ヘイズの悪化を招く。
【0064】
本発明においては、易印刷性被覆層とその反対面の易滑性被覆層との滑り性が、従来公知の方法と比べ極めて良好である。枚葉状にフィルムを積み重ねた場合のこの顕著な滑り性改良効果は、(1)両面の被覆層中に含有する平均粒子径1〜10μmの粒子に起因する表面凹凸によるフィルム間での空気保持効果、(2)易滑性被覆層に含有されるスルホン酸金属塩による静電気密着防止効果、(3)さらに易滑性被覆層に含有される高分子系ワックス成分による静摩擦係数の低下によりもたらされる。これら3つの効果がすべて揃わないと、断裁したフィルムが静止状態から動き始めた時の滑らかさの不足、枚葉状に棒積みした状態からの搬送性、給紙時の噛み込み安定性に劣り、印刷速度を高めることができない。
【0065】
本発明においては、易印刷性被覆層のフィルム面と易滑性被覆層のフィルム面の静摩擦係数および動摩擦係数がともに0.5以下であることが好ましい。動摩擦係数が0.5を超える状態では、滑り性が不十分であり、枚葉印刷機での給紙時に搬送不良を生じる。
【0066】
本発明においては、請求項7に記載のごとく、本発明の積層シンジオタクチックポリスチレン系フィルムを製造する際、基材フィルムの両面に被覆層用塗布液を塗工する段階としては、未延伸フィルムに塗布し、次いで少なくとも一方向に延伸する方法、縦延伸後に塗布する方法、配向処理の終了したフィルム表面に塗布する方法など、いずれの方法も可能である。なかでも、シンジオタクチックポリスチレン系基材フィルムを製造する際、フィルムの結晶配向が完了する前に塗布し、その後、少なくとも1方向に延伸した後、該フィルムの結晶配向を完了させる、いわゆるインラインコート法が本発明の効果をより顕著に発現させることができる好ましい方法である。本方法の使用により、本発明の基材フイルムの両面に設ける被覆層の基材フイルムとの密着性が向上し、かつ経済性が向上する。
【0067】
易滑性被覆層の成分である共重合ポリエステル樹脂とスルホン酸塩基を有する化合物は、両者に親水性の差があり分離し易いので、コート液は塗布直前に1000(1/秒)以上のせん断速度をかけた直後2秒以内に基材に塗布し、その後2秒以内に70℃以下、湿度50%RH、風速10〜20m/秒で1〜3秒予備乾燥後、90℃以上で乾燥する方法で行うことが好ましい。この方法で塗布を行うことにより、共重合ポリエステル樹脂とスルホン酸塩基を有する化合物が均一に分散し、良好な表面抵抗値が得られる。
【0068】
本発明における易印刷性被覆層および易滑性被覆層を設けるコート方式としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式など通常用いられている方法を適用することができる
【0069】
本発明における易印刷性被覆層および易滑性被覆層の厚みは特に限定しないが、乾燥後の厚みが0.05〜1.0μmであるが好ましく、より好ましくは0.07〜0.5μm、特に好ましくは0.09〜0.3μmである。
【0070】
本発明における易印刷性被覆層および易滑性被覆層形成に用いる塗液中には、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の添加剤、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機潤滑剤を含有させてもよい。
【0071】
通常のシンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの場合、ハンドリング性(易滑性、巻き取り性、耐ブロッキング性など)や耐スクラッチ性などの改良を目的に、フィルム表面に凹凸を形成させるために基材フィルムに不活性粒子が含有されている。本発明の積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムは、透明性向上のために、被覆層に粒子を含有させ、基材フィルム中の粒子含有量は少なくすることが好ましい。具体的には、基材フィルム中には実質的に粒子を含有させないことが好ましい。なお、「実質的に粒子を含有しない」とは、意図的に基材フィルムに粒子を含有させないことであり、埃などの異物粒子しか含有しないことで、基材フィルム中の粒子の含有量で表すと、0.001重量%未満である。
実質的に内部に粒子を含有していない基材フィルムを用いることで、両面に被覆層を有しながらも高い透明性を得ることができる。そのため、透過光による照明時の明るさに優れ、易滑面(被覆層B/非印刷面)側からフィルムを通して印刷面を見た場合の文字や画像の鮮鋭性に極めて優れる。
【0072】
また、本発明において、一般的に用いられるUV硬化型印刷インキおよび溶剤型印刷インキに対する被覆層Aとの密着力が、JIS−K5400に準拠した碁盤目によるクロスカット評価にて、1mm角のマス目の数が90%以上残存させることが好ましく、より好ましくは96%以上残存させる。
密着力が90%未満では、印刷後のインキ脱落が生じ、外観の低下、搬送性の低下につながる。一般的にオフセット印刷ではインキ厚みが1μm〜数μmであるためインキ脱落は生じにくいが、スクリーン印刷では数μm〜10μm以上の場合があり、スクリーン印刷インキにも対応できる密着力を有する性能が印刷用透明シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムには必要である。
【0073】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例中で示される特性は、以下の方法で測定・評価したものである。
(1)静摩擦係数μsおよび動摩擦係数μd
JIS C 2151に準拠し、下記条件により評価した。
平板用試験片:幅130mm、長さ250mmで易滑性被覆層面を使用
そり用試験片:幅120mm、長さ120mmで易印刷性被覆層面を使用
測定雰囲気:23℃、50%RH
そり重量:200g
試験速度:150mm/分
【0074】
(2)表面抵抗
表面抵抗計(三菱油化社製、HIRESUTA MCP HT−260)を用い、23℃、50%RHの雰囲気中における積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの易滑性被覆層面の表面抵抗(Ω/□)を下記条件にて測定した。
印加電圧:500V
測定時間:10秒
使用プローブ:タイプ HRS
【0075】
(3)インキ密着力
JIS−K5400に記載の碁盤目評価に準拠し、フィルムの易印刷性被覆層面に下記インキを印刷後、クロスカットガイドを用いて1mmマス目をカッター刃で100個作成した後、セロファン粘着テープ(ニチバン社製、405番、24mm幅)を用いてマス目部分の密着力を評価した。
UV硬化型インキとの密着力は、UV硬化型インキ(東華色素社製、ベストキュアー161)を用い、フィルムの易印刷性被覆層面にRIテスターで印刷後100mJのUVを照射し、上記方法にしたがって評価した。また、他のUV硬化型インキ(セイコーアドバンス社製、UVA)を用い、フィルムの易印刷性被覆層面(本発明における印刷性改良層)に#300のスクリーン印刷後500mJのUVを照射し、上記方法にしたがって同様に評価した。
【0076】
溶剤型インキとの密着力は、溶剤型インキ(東洋インキ社製、TSP−400G)を用い、積層フィルムの易印刷性被覆層にRIテスターで印刷後24時間放置乾燥し、上記方法にしたがって評価した。また、他の溶剤型インキ(十條インキ社製、テトロン(R))を用い、積層フィルムの易印刷性被覆層面に#250のスクリーン印刷後24時間放置乾燥し、上記方法にしたがって同様に評価した。
【0077】
(4)耐水性値
積層フィルムの易印刷性被覆層面に、オフセットインキ(ティーアンドケイ東華社製、ベストキュア161)をRIテスター(明製作所製、RI−3)により転写させた。次いで、積層フィルムを送り速度5m/分で走行させながら、高圧水銀灯を用いて照射エネルギー200mJ/cm2、照射距離15cmの条件下で、厚み1μmのインキ層を形成させた。
【0078】
得られたフィルムを水の入ったオートクレーブ(トミー精工社製、SR−240)にいれ、120℃で1時間加圧ボイル処理した。ボイル処理後、オートクレーブを常圧に戻し、オートクレーブ内から積層フィルムを取り出した。積層フィルム表面に付着した水を取り除き、常温で12時間放置した。
ボイル処理後の積層フィルムのインキ層の密着力をフィルムをJIS−K5400の8.5.1記載に準じた試験方法で求めた。具体的には、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、基材フィルムに達する100個のマス目状の切り傷をつける。次いで、セロファン粘着テープ(ニチバン社製、405番、24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、さらにその上を厚さ2mm、幅30mm、長さ100mmのポリテトラフルオロエチレン製板を折り曲げた曲面部分でこすって十分に密着させる。その後、垂直にセロファン粘着テープをフィルムから引き剥がして、フィルムから剥がれたマス目の数を目視で数え、下記の式から密着性を求める。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥離しているものと見なしカウントした。
密着性(%)=(1−剥がれたマス目の数/100)×100
下記の基準でランク分けをする。
◎:100%、○:99〜96%、△:95〜80%、×:79〜0%
【0079】
(5)湿し水適性
溶剤型オフセット印刷インキ(東洋インキ社製、TSP−400G)を用い、積層フィルムの易印刷性被覆層面にRIテスターで印刷する際、インキ展色前のフィルム印刷面を、スポイドを用いてイオン交換水を0.2ml、0.4ml、0.6ml滴下して湿らせたモルトンローラーで圧着した後、インキを展色、インキの転移不良の有無を確認した。
【0080】
(6)給紙安定性
枚葉オフセット印刷機(ハイデルベルグ社製、スピードマスター、8色刷り機)を用いて、寸法が菊全判(636×939mm)サイズの枚葉フィルムを積み重ね、印刷速度を低速時(4,000枚/時間)および高速時(8,000枚/時間)で給紙、印刷させた際の給紙安定性を評価した。
【0081】
(7)印刷品位
給紙安定性評価で用いた印刷サンプルの印刷外観を目視で判定した。この際、印刷面からではなく、裏側からフィルムを通して外観を目視判定した。判定基準は次の通りである。
・クリアー感:印刷した図柄が、基材フィルムや塗布層に遮られることなく鮮明に見えること。
・印刷適性 :印刷インキの転移不良による、色むらやヌケが生じないこと
【0082】
(実施例1)
(疎水性共重合ポリエステル樹脂の調製)
攪拌機、温度計および部分還流式冷却器を具備したステンレス製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート218重量部、ジメチルイソフタレート194重量部、エチレングリコール488重量部、ネオペンチルグリコール200重量部およびテトラ−N−ブチルチタネート0.5重量部を仕込み、160℃から220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行った。次いで、フマル酸13重量部およびセバシン酸51重量部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温しエステル化反応を行った。次いで、255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、0.22mmHgの減圧下で1時間30分反応させ、疎水性共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた疎水性共重合ポリエステルは淡黄色透明であった。
【0083】
(ポリエステル系グラフト共重合体の水分散体の調製)
撹拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に、疎水性共重合ポリエステル75重量部、メチルエチルケトン56重量部およびイソプロピルアルコール19重量部を入れ、65℃で加熱、撹拌し樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、無水マレイン酸15重量部をポリエステル溶液に添加した。次いで、スチレン10重量部およびアゾビスジメチルバレロニトリル1.5重量部を12重量部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を0.1ml/分でポリエステル溶液中に滴下し、さらに2時間撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリングを行った後、メタノールを5重量部添加した。次いで、イオン交換水300重量部とトリエチルアミン15重量部を反応溶液に加え、1時間半撹拌した。その後、反応器内温を100℃に上げメチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により留去し、水分散したポリエステル系グラフト共重合体を得た。得られたポリエステル系グラフト共重合体は、淡黄色透明で、ガラス転移温度は40℃であった。
【0084】
(易印刷性被覆層用塗布液Aの調製)
イオン交換水とイソプルピルアルコールの混合溶媒(重量比:60/40)に、全固形分濃度が5重量%となるように、水分散したポリエステル系グラフト共重合体と、粒子として平均粒径2.2μmのスチレン−ベンゾグアナミン系球状有機粒子(日本触媒工業社製)、平均粒径0.02μmのコロイダルシリカ(触媒化成社製)をそれぞれ固形分重量比で50/1/3になるよう混合し、塗布液Aを調製した。
【0085】
(易滑性被覆層用塗布液Bの調製)
イオン交換水とイソプルピルアルコールの混合溶媒(重量比:60/40)に、全固形分濃度が5重量%となるように、水分散性ポリエステル系共重合体(東洋紡績社製、バイロナ−ルMD−16)と、スルホン酸金属塩としてドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム(松本油脂社製、アニオン系帯電防止剤)、高分子系ワックス剤としてポリエチレン系エマルジョンワックス(東邦化学社製)、粒子として平均粒径2.2μmのスチレン−ベンゾグアナミン系球状有機粒子(日本触媒工業社製)、平均粒径0.04μmのコロイダルシリカ(日産化学社製)をそれぞれ固形分重量比で50/2.5/2.5/0.5/5になるよう混合し、塗布液Bを調製した。
【0086】
(積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フイルムの作製)
シンジオタクチックポリスチレン(重量平均分子量300,000)に対して滑剤として平均粒径2μmの架橋ポリスチレン微粒子を2.0重量%添加したポリマーチップと滑剤を添加していないポリマーチップを重量比で1対9の割合で混合した後、乾燥し、295℃で溶融し、500μmのリップギャップのTダイから押し出し、40℃の冷却ロールに静電印荷法により密着・冷却固化し、240μmの非晶質の未延伸シートを得た。
【0087】
該非晶質の未延伸シートをまずロールにより98℃に予熱し、表面温度750℃の赤外線加熱ヒーターを4本使用さらに加熱し、フィルム温度140℃で縦方向に3.3倍延伸し、さらに120℃のロールで縦方向に1.2倍延伸し、ついで150℃のセラミックロールと40℃の金属ロールの間で12%縦弛緩処理を行い、ついで、一軸配向フィルムの片面に上記の塗布液Aを他面に塗布液Bをリバースコート法で塗布した。なお、各塗布液はロールギャップ間で1000(1/秒)以上のせん断速度をかけ、2秒以内に基材フィルムに塗布し、65℃、60%RH、風速15m/秒の環境下で、2秒間乾燥した。さらに、130℃、風速20m/秒の環境下で3秒間乾燥し水分を除去し、さらにテンターでフィルムを110℃に予熱し、横方向に延伸温度120℃で3.5倍延伸し、265℃で10秒熱固定した。その後、230℃で5%横弛緩処理し、さらに220℃のセラミックロールと40℃の金属ロールの間で3%縦弛緩処理した。得られたフィルムの厚みは20μmの二軸延伸シンジオタクチックポリスチレンフィルムを得た。最終的なコート剤塗布量は0.1g/m2であった。得られた該シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
【0088】
(実施例2)
塗布液B(易滑性被覆層用)を、水分散性ポリエステル系共重合体(東洋紡績社製、バイロナールMD−16)/ドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム(松本油脂社製、アニオン系帯電防止剤)/ポリエチレン系エマルジョンワックス(東邦化学社製)/平均粒径2.2μmのスチレン−ベンゾグアナミン系球状有機粒子(日本触媒社製)/平均粒径0.04μmのコロイダルシリカ(日産化学社製)をそれぞれ固形分重量比で50/5/2.5/0.5/5に変更する以外は、実施例1と同様にして両面に被覆層を有する二軸延伸積層シンジオタクチックポリスチレン系フィルムを得た。得られた該シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
【0089】
(実施例3)
塗布液B(易滑性被覆層用)の水分散性ポリエステル系共重合体(東洋紡績社製、バイロナールMD−16)を塗布液A(易印刷性被覆層用)で使用したポリエステル系グラフト共重合体に変更する以外は、実施例1と同様にして両面に被覆層を有する二軸延伸積層シンジオタクチックポリスチレン系フィルムを得た。得られた該シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
【0090】
(実施例4)
塗布液A(易印刷性被覆層用)を、ポリエステル系グラフト共重合体/ドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム/平均粒径2.2μmのスチレン−ベンゾグアナミン系球状有機粒子/平均粒径0.02μmのコロイダルシリカをそれぞれ固形分重量比で50/3/1/3に変更する以外は、実施例1と同様にして両面に被覆層を有する二軸延伸積層シンジオタクチックポリスチレン系フィルムを得た。得られた該シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
【0091】
(比較例1)
実施例1において、塗布液B(易滑性被覆層用)に配合した高分子系ワックスを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸積層シンジオタクチックポリスチレン系フィルムを得た。得られた該シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
【0092】
(比較例2)
実施例1において、塗布液A(易印刷性被覆層用)の塗布を止め、易印刷性被覆層の形成を取り止める以外は、実施例1と同様にして二軸延伸積層シンジオタクチックポリスチレン系フィルムを得た。得られた積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
【0093】
(比較例3)
実施例1において、塗布液B(易滑性被覆層用)の塗布を止め、易滑性被覆層の形成を取り止める以外は、実施例1と同様にして二軸延伸積層シンジオタクチックポリスチレン系フィルムを得た。得られた積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
【0094】
(比較例4)
実施例1において、塗布液A(易印刷性被覆層用)および塗布液B(易滑性被覆層用)の塗布を止め、易印刷性被覆層および易滑性被覆層の形成を取り止める以外は、実施例1と同様にして二軸延伸シンジオタクチックポリスチレン系フィルムを得た。得られた積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明は特許請求の範囲に記載のとおりの構成を採用することにより、インキとの密着性、湿し水適性、帯電防止性に優れ、かつ高速給紙時に重送せず安定した給紙が可能な易滑性を有する積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムが提供される。また、フィルム製造工程においてインラインコート法で易印刷性被覆層および易滑性被覆層を積層でき経済的である。また、できたフィルムのリサイクルも可能である。本発明の積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムは印刷用フィルム、特にオフセット印刷用フィルムとして好適に使用される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、両面に異なる組成物を積層した、インキ密着性および滑り性に優れた積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムに関する。さらに詳しくは被印刷材料として好適な積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フイルム、特に多色刷の高速UVオフセット印刷機における給紙安定性、インキ密着性、湿し水適性などに優れ、高品位の印刷が可能な印刷用途に適した積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルム関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムは、耐熱性、電気特性、透明性、易引裂き性等に優れ、磁気テープ用、写真・製版用、コンデンサー用、包装用等、各種のフィルム用途に展開が期待されている。
【0003】
延伸フィルムを包装材料として用いる場合、一般的には延伸フィルムの少なくとも片面に必要に応じて印刷層、有機高分子を塗布積層したガスバリアー層、無機あるいは金属を蒸着したガスバリア層などを積層し、さらに接着剤を積層した上へ、ドライラミネート法や押出ラミネート法によりシーラント層などを設けた積層体とし、該積層体を用いて袋を作製し、それに内容物を充填後、開口部をヒートシールして、密閉包装された食品や薬品や雑貨品などを一般消費者に提供している。そのため、上記積層体を構成するために、延伸フィルムには印刷層やガスバリアー層またはシーラント層などとの十分な接着性を得るため、コロナ処理等の物理処理や接着性改質層を設けることが一般的になされている。
【0004】
シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの場合も、特開平5−338089号公報にはフィルム表面をコロナ処理して表面張力を高くしてからアンカーコート剤を塗布し、その上にシーラント層を設けることが開示されている。しかし、コロナ放電処理の場合、処理後のフィルムが半永久帯電しやすく作業性が低下する問題があり、また接着性も十分とは言えなかった。特開2000−6330号公報には、ガスバリアー層またはシーラント層との接着性を高めるために自己架橋性ポリエステル系グラフト共重合体からなる接着性改質層をシンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムに積層することが開示されている。
【0005】
一方、シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムにコート法で滑り性や耐削れ性の向上ための改質層を設けることは、特開平3−109453号公報、特開平3−109454号公報、特開平8−39741号公報、特開平8−48008号公報などで開示されているが、印刷性、接着性および帯電防止性は十分とは言えなかった。
【0006】
このように、従来検討されてきたシンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムでは、例えば印刷用途に使用した場合、スクラッチ傷の発生、被覆層からの粒子の脱落、インキの転移不良や剥離をもたらすなどの問題が十分に解消されていなかった。特に、枚葉オフセット印刷用途では、オフセット印刷方式における固有の特性である湿し水適性、枚葉で用いる際の給紙・搬送時に強い摩擦を受けること、UV硬化型インキに対する高度な密着性がの要求があることなどにより、湿し水適性、易滑性、帯電防止性、インキとの密着性は不可欠な特性である。
【0007】
近年、フィルムに印刷を施す方式の一つとして枚葉UVオフセット多色刷印刷機の比率が高まり、印刷速度の高速化(1枚当り0.5秒前後の給紙速度)が進んできている。これは主に印刷機の改良、進化によるものであるが、この印刷の際にはフィルムに対して、インキとの密着性、湿し水適性、帯電防止性が必要なことはもちろん、さらに高速給紙時に重送せず安定した給紙が可能な易滑性が必要となる。この高速印刷に耐えられるシンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムは従来存在しなかった。
【0008】
【特許文献1】
特開平5−338089号公報
【特許文献2】
特開平3−109453号公報
【特許文献3】
特開平3−109454号公報
【特許文献4】
特開平8−39741号公報
【特許文献5】
特開平8−48008号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、インキとの密着性、湿し水適性、帯電防止性に優れ、かつ高速給紙時に重送せず安定した給紙が可能な易滑性を有する積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体からなるフイルムの片面に接着性改質樹脂を含む易印刷性被覆層が、もう一方の面に粒子および/またはワックスを含む易滑性被覆層が積層されてなることを特徴とする積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フイルムである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体(以下シンジオタクチックポリスチレン系重合体ともいう)としては、シンジオタクチック構造として側鎖のフェニル基又は置換フェニル基が核磁気共鳴法により定量されるタクティシティがダイアッド(構成単位が2個)で85%以上、ペンタッド(構成単位が5個)で50%以上のシンジオタクチック構造であるポリスチレン、ポリ(p−、m−またはo−メチルスチレン)、ポリ(2,4−、2,5−、3,4−または3,5−ジメチルスチレン)、ポリ(p−ターシャリーブチルスチレン)などのポリ(アルキルスチレン)、ポリ(p−、m−またはo−クロロスチレン)、ポリ(p−、m−またはo−ブロモスチレン)、ポリ(p−、m−またはo−フルオロスチレン)、ポリ(o−メチル −p−フルオロスチレン)などのポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(p−、m−またはo−クロロメチルスチレン)などのポリ(ハロゲン置換アルキルスチレン)、ポリ(p−、m−またはo−メトキシスチレン)、ポリ(p−、m−またはo−エトキシスチレン)などのポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(p−、m−またはo−カルボキシメチルスチレン)などのポリ(カルボキシアルキルスチレン)、ポリ(p−ビニルベンジルプロピル)などのポリ(アルキルエーテルスチレン)、ポリ(p−トリメチルシリルスチレン)などのポリ(アルキルシリルスチレン)、さらにはポリ(ビニルベンジルジメトキシホスファイド)などが挙げられる。特にシンジオタクチックポリスチレンが好適である。
【0012】
本発明に用いるシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体は、必ずしも単一化合物である必要はなく、アタクチック構造やアイソタクチック構造のポリスチレン系重合体との混合物や、共重合体およびそれらの混合物でもよいが、少なくとも40重量%以上はシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体から成るものである。
【0013】
また、本発明に用いるシンジオタクチックポリスチレン系重合体は、重量平均分子量が10,000以上、さらに好ましくは50,000以上である。重量平均分子量が10,000未満のものでは、強伸度特性や耐熱性に優れた二軸延伸フィルムを得ることができない。重量平均分子量の上限については特に限定されるものではないが、1500,000以上では押出機の負荷の増加、延伸張力の増加に伴う破断の発生などが生じるため好ましくない。
【0014】
本発明に用いるシンジオタクチックポリスチレン系重合体には、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の各種添加剤、例えば滑剤、顔料、熱安定化剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐衝撃性改良剤等が添加されていてもよい。
滑剤としては、シリカ、二酸化チタン、タルク、カオリナイトなどの金属酸化物、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属塩または有機ポリマーからなる粒子など、シンジオタクチックポリスチレン系ポリマーに対し不活性な粒子が挙げられる。上記滑剤のいずれか一種を単独に用いても二種以上を併用してもよい。
【0015】
本発明の積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの基材フィルムは、公知の方法で製造することが出来る。例えば、ダイスからシンジオタクチックポリスチレン系樹脂をフィルム状に溶融押出し冷却固化して得た未延伸フィルムを、縦延伸および横延伸を順に行う逐次二軸延伸方法が適用できる。この他に、横・縦逐次二軸延伸法、縦・横・縦逐次延伸法、縦・縦・横逐次延伸法等の逐次延伸方法、縦延伸および横延伸を同時に行う同時二軸延伸方法などを採用することができ、要求される強度や寸法安定性などの諸特性に応じて延伸方法を選択できる。縦一軸延伸法、横一軸延伸法による一軸延伸フィルムでも構わない。延伸装置としては、ロール延伸機、テンター延伸機、インフレーション延伸機などを用いることができる。また、延伸後のフィルムは、熱固定処理、縦弛緩処理、横弛緩処理などの熱処理を行なうことが、熱寸法安定性および接着性などが向上する点で好ましい。
【0016】
本発明の積層シンジオタクチックポリスチレン系フイルムは、前記した基材フィルムの片面に接着性改質樹脂を含む易印刷性被覆層が、もう一方の面に粒子および/またはワックスを含む易滑性被覆層が積層されてなる必要がある。このことにより、UVインキや溶剤インキに対する密着性が向上し印刷の仕上がり性、耐久性等を向上させることができ、かつ多色刷の高速UVオフセット印刷機における給紙安定性を確保することができる。
【0017】
本発明における易印刷性被覆層は、前記した基材フイルムと印刷インクとの密着性を向上させる機能を有する接着性改質樹脂が含まれていたらその組成やその積層方法等は限定されなく任意である。接着性改質樹脂の具体例としては、例えば請求項3に記載のごとく、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アミノ系樹脂、エポキシ系樹脂、オキサゾリン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂の群から選ばれた少なくとも一種の樹脂よりなることが好ましい実施態様である。
前記樹脂は非結晶性あるいは低結晶性のものが好ましく、例えばJIS K 7121に準拠したDSC測定において融解ピークを示さない前記樹脂が好ましい。
また、非架橋性樹脂品あるいは架橋性樹脂のいずれであっても構わない。
【0018】
本発明における易印刷性被覆層は、請求項4に記載のごとく前記易印刷性被覆層の耐水性値が90%以上であることが好ましい実施態様である。耐水性値とは、実施例に詳細が記載されているとおりオフセットインキ層を積層したフィルムをボイル処理した後にセロファン粘着テープで碁盤目剥離テストを行った時のインキ層がフィルムに残存する百分率%であり、ボイル処理後のインキ層の密着力を表す。特に耐水性値は95%以上がより好ましい。耐水性値が90%未満では、前記した印刷性改良層表面にインキ層を形成させた際に、湿潤下での密着性が不良となる。該特性を付与する方法は、限定されないが、例えば請求項5に記載のごとく、易印刷性被覆層として主鎖のポリエステル系重合体に不飽和基含有単量体がグラフト重合されたポリエステル系グラフト共重合体(以下ポリエステル系グラフト共重合体ともいう)を用いることにより達成される。
【0019】
前記したポリエステル系グラフト共重合体について詳しく説明する。
本発明に用いるポリエステル系グラフト共重合体を得るためのグラフト重合は、一般には、常法で重合された疎水性共重合ポリエステル樹脂を有機溶剤中に溶解し、該溶液にラジカル開始剤およびラジカル重合性不飽和基含有単量体を反応せしめることにより実施される。グラフト化反応終了後の反応生成物は、上記の疎水性共重合ポリエステルを主鎖としラジカル重合性単量体が枝ポリマーとしてグラフト重合されたグラフト重合体の他に、グラフト化を受けなかった疎水性共重合ポリエステル及び疎水性共重合ポリエステルにグラフト化しなかったラジカル重合体を含有している場合がある。本発明に用いるポリエステル系グラフト重合体には、これらの混合物が含まれる。
【0020】
本発明に用いる疎水性共重合ポリエステル樹脂にラジカル重合性不飽和基含有単量体をグラフト重合させた反応物の酸価は600eq/106 g以上であることが好ましい。より好ましくは、反応物の酸価は1200eq/106 g以上である。反応物の酸価が600eq/106 g未満である場合は、本発明の目的である接着性が十分に得られない場合がある。
【0021】
また、本発明におけるポリエステル系グラフト重合体の疎水性共重合ポリエステル樹脂と不飽和基含有単量体グラフト重合部分の重量比率は、ポリエステル/ラジカル重合性単量体=40/60〜95/5の範囲が望ましく、更に望ましくは55/45〜93/7、最も望ましくは60/40〜90/10の範囲である。
疎水性共重合ポリエステル樹脂の重量比率が40重量%未満の場合、接着性が十分でなくなる。一方、疎水性共重合ポリエステル樹脂の重量比率が95重量%より大きい場合は、フィルムどうしのブロッキングが起こりやすくなる。
【0022】
本発明に用いるポリエステル系グラフト重合体は、有機溶媒の溶液または分散液、あるいは、水系溶媒の溶液または分散体の形態になる。特に、水系溶媒の分散液、水分散体の形態が、作業環境、塗布性の点で好ましい。この様な水分散体を得る方法としては、例えば、前記疎水性共重合ポリエステル樹脂の有機溶媒の溶液に、親水性のラジカル重合性単量体を含むラジカル重合性不飽和基含有単量体をグラフト重合し、次いで、水を添加した後、有機溶媒を留去することにより達成される。
【0023】
本発明に用いるポリエステル系グラフト重合体の水分散体は、例えばレーザー光散乱法により測定される分散粒子の平均粒子径は500nm以下であり、分散体は半透明ないし乳白色の外観を呈する液体である。重合方法の調整により、多様な分散粒子径の水分散体が得られるが、この粒子径は10〜500nmが適当であり、分散安定性の点で、400nm以下が好ましく、より好ましくは300nm以下である。500nmを越えると被覆膜表面の光沢の低下がみられ、被覆物の透明性が低下する。一方、10nm未満では、本発明の目的である高い湿度雰囲気でのインキやラミネート層との接着性が低下するため好ましくない。
【0024】
本発明に用いるポリエステル系グラフト重合体の水分散体を得るために使用する親水性のラジカル重合性不飽和基含有単量体としては、親水基を有するか、後で親水基に変化できる基を有する飽和基含有単量体が挙げられる。例えば、カルボキシル基、水酸基、リン酸基、亜リン酸基、スルホン酸基、アミド基、第4級アンモニウム塩基、酸無水物基、グリシジル基、クロル基など等を含むラジカル重合性不飽和基含有単量体を挙げることができる。これらの中で、水分散性が良好である点および接着性向上の点から、カルボキシル基を有するか、あるいはカルボキシル基を発生する基を有するラジカル重合性不飽和基含有単量体が好ましい。
【0025】
本発明において、ポリエステル系グラフト重合体の主鎖の共重合ポリエステル樹脂としては、疎水性共重合ポリエステル樹脂を用いる。疎水性共重合ポリエステル樹脂とは、本来それ自身で水に分散または溶解しない本質的に水不溶性の共重合ポリエステル樹脂である。水に分散または溶解するポリエステル樹脂を、グラフト重合の主鎖のポリマーに使用すると、本発明の目的である接着性が高い湿度の雰囲気で悪くなるので好ましくない。
【0026】
この疎水性共重合ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分の組成は、芳香族ジカルボン酸60〜99.5モル%、脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸0〜40モル%、重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸0.5〜10モル%であることが好ましい。芳香族ジカルボン酸が60モル%未満である場合や脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸が40モル%を越えた場合は、接着強度が低下する。
【0027】
また、重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸が0.5モル%未満の場合、ポリエステル樹脂に対するラジカル重合性単量体の効率的なグラフト化が行われにくくなり、逆に10モル%を越える場合は、グラフト化反応の後期に余りにも粘度が上昇し、反応の均一な進行を妨げるので好ましくない。より好ましくは、芳香族ジカルボン酸は70〜98モル%、脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸0〜30モル%、重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸2〜7モル%である。
【0028】
芳香族ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等を挙げることができる。5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の親水基含有ジカルボン酸は、本発明の目的である耐水性が低下する点で、用いない方が好ましい。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等を挙げることができ、脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とその酸無水物等を挙げることができる。
【0029】
重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸の例としては、α、β−不飽和ジカルボン酸として、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、不飽和二重結合を含有する脂環族ジカルボン酸として、2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸等を挙げることができる。このうち好ましいのは、重合性の点から、フマル酸、マレイン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸である。
【0030】
一方、グリコール成分は、炭素数2〜10の脂肪族グリコールおよび/または炭素数6〜12の脂環族グリコールおよび/またはエーテル結合含有グリコールよりなるが、炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等を挙げることができ、炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
【0031】
エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらにビスフェノール類の二つのフェノール性水酸基に、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるグリコール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどを挙げることができる。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必要により使用しうる。
【0032】
前記疎水性共重合ポリエステル樹脂中には、0〜5モル%の3官能以上のポリカルボン酸および/またはポリオールを共重合することができるが、3官能以上のポリカルボン酸としては、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)等が使用される。一方、3官能以上のポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が使用される。3官能以上のポリカルボン酸および/またはポリオールは、全酸成分あるいは全グリコール成分に対し0〜5モル%、望ましくは0〜3モル%の範囲で共重合されるが、5モル%を越えると重合時のゲル化が起こりやすく、好ましくない。
【0033】
また、前記疎水性共重合ポリエステル樹脂の分子量は、重量平均で5000〜50000の範囲が好ましい。分子量が5000未満の場合は接着強度の低下があり、逆に50000を越えると重合時のゲル化等の問題が起きてしまう。
【0034】
本発明に用いるポリエステル系グラフト重合体の枝ポリマーとしてグラフト重合される不飽和基含有単量体としては、例えば、フマル酸、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのフマル酸のモノエステルまたはジエステル、マレイン酸とその無水物、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸のモノエステルまたはジエステル、イタコン酸とその無水物、イタコン酸のモノエステルまたはジエステル、フェニルマレイミド等のマレイミド等、また、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン誘導体、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等、アクリル重合性単量体、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ含有アクリル単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド等のアミド基含有アクリル単量体、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有アクリル単量体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有アクリル単量体、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)等のカルボキシル基またはその塩を含有するアクリル単量体が挙げられる。好ましくは、マレイン酸無水物とそのエステルである。上記モノマーは1種もしくは2種以上を用いて共重合させることが出来る。
【0035】
本発明に用いるグラフト重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物類や有機アゾ化合物類を用いることができる。
有機過酸化物として、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、有機アゾ化合物として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などを挙げることが出来る。グラフト重合を行うための重合開始剤の使用量は、重合性モノマーに対して、少なくとも0.2重量%以上、好ましくは0.5重量%以上である。
【0036】
重合開始剤の他に、枝ポリマーの鎖長を調節するための連鎖移動剤、例えばオクチルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソールなどを必要に応じて用い得る。この場合、重合性モノマーに対して0〜5重量%の範囲で添加されるのが望ましい。
【0037】
本発明に用いるポリエステル系グラフト重合体のグラフト重合反応の溶媒は、沸点が50〜250℃の水性有機溶媒から構成されることが好ましい。ここで水性有機溶媒とは、20℃における水に対する溶解性が少なくとも10g/L以上、望ましくは20g/L以上であるものをいう。沸点が250℃を越えるものは、余りに蒸発速度がおそく、塗膜の高温焼付によっても充分に取り除くことが出来ないので不適当である。また沸点が50℃以下では、それを溶媒としてグラフト化反応を実施する場合、50℃以下の温度でラジカルに解裂する開始剤を用いねばならないので取扱上の危険が増大し、好ましくない。
【0038】
共重合ポリエステル樹脂をよく溶解しかつカルボキシル基含有重合性単量体を含む重合性単量体混合物およびその重合体を比較的良く溶解する第一群の水性有機溶媒としては、エステル類例えば酢酸エチル、ケトン類例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、環状エ−テル類例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、グリコ−ルエ−テル類例えばエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコ−ルメチルエ−テル、プロピレングリコ−ルプロピルエ−テル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコ−ルブチルエ−テル、カルビトール類例えばメチルカルビト−ル、エチルカルビト−ル、ブチルカルビト−ル、グリコ−ル類若しくはグリコ−ルエ−テルの低級エステル類例えばエチレングリコ−ルジアセテ−ト、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ケトンアルコール類例えばダイアセトンアルコール、更にはN−置換アミド類例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を例示する事が出来る。
【0039】
これに対し、共重合ポリエステル樹脂をほとんど溶解しないがカルボキシル基含有重合性単量体を含む重合性単量体混合物およびその重合体を比較的よく溶解する第二群の水性有機溶媒として、水、低級アルコール類、低級カルボン酸類、低級アミン類などを挙げることが出来るが、本発明の実施に特に好ましいものとしては炭素数1〜4のアルコール類およびグリコール類である。
【0040】
グラフト化反応を単一溶媒で行なう場合は、第一群の水性有機溶媒からただ一種を選んで行なうことが出来る。混合溶媒で行なう場合は第一群の水性有機溶媒からのみ複数種選ぶ場合と、第一群の水性有機溶媒から少なくとも一種を選びそれに第二群の水性有機溶媒から少なくとも一種を加えることができる。
【0041】
グラフト重合反応溶媒を第一群の水性有機溶媒からの単一溶媒とした場合と、第一群および第二群の水性有機溶媒のそれぞれ一種からなる混合溶媒とした場合のいずれにおいてもグラフト重合反応を行なうことができる。しかし、グラフト化反応の進行挙動、グラフト化反応生成物およびそれから導かれる水分散体の外観、性状などに差異がみられ、第一群および第二群の水性有機溶媒のそれぞれ一種からなる混合溶媒を使用する方が好ましい。
【0042】
第一群の溶媒中では共重合ポリエステル分子鎖は広がりの大きい鎖ののびた状態にあり、一方第一群/第二群の混合溶媒中では広がりの小さい糸まり状に絡まった状態にあることがこれら溶液中の共重合ポリエステルの粘度測定により確認された。共重合ポリエステルの溶解状態を調節し分子間架橋を起こりにくくすることがゲル化防止に有効である。効率の高いグラフト化とゲル化抑制の両立は後者の混合溶媒系において達成される。第1群/第2群の混合溶媒の重量比率はより望ましくは95/5〜10/90さらに望ましくは90/10〜20/80、最も望ましくは85/15〜30/70の範囲である。最適の混合比率は使用するポリエステルの溶解性などに応じて決定される。
【0043】
以下に本発明に用いるポリエステル系グラフト重合体の水分散体化する方法について説明する。
本発明に用いるポリエステル系グラフト重合体の溶液は、塩基性化合物で中和することが好ましく、中和することによって容易に水分散体化することが出来る。塩基性化合物としては塗膜形成時、或は硬化剤配合による焼付硬化時に揮散する化合物が望ましく、例えば、アンモニア、有機アミン類などが好適である。望ましい化合物の例としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノ−ルアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3ージエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3ーメトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどを挙げることが出来る。塩基性化合物は、グラフト化反応生成物中に含まれるカルボキシル基含有量に応じて、少くとも部分中和、若しくは、完全中和によって水分散体のPH値が5.0〜9.0の範囲であるように使用するのが望ましい。沸点が100℃以下の塩基性化合物を使用した場合であれば、乾燥後の塗膜中の残留塩基性化合物も少なく、金属や無機蒸着膜の接着性や他材料と積層した時の耐水性や耐熱水接着性が優れる。また100℃以上の塩基性化合物使用した場合や乾燥条件を制御し、乾燥後の塗膜中に塩基化合物を500ppm以上残留させることにより、印刷インクの転移性が向上する。
【0044】
本発明に用いるポリエステル系グラフト重合体の水系分散体では、不飽和基含有単量体の重合物の重量平均分子量は500〜50000であるのが好ましい。不飽和基含有単量体の重合物の重量平均分子量を500以下にコントロールすることは一般に困難であり、グラフト効率が低下し、共重合ポリエステルへの親水性基の付与が十分に行なわれない傾向がある。また、不飽和基含有単量体のグラフト重合物は分散粒子の水和層を形成するが、十分な厚みの水和層をもたせ、安定な分散体を得るためにはラジカル重合性単量体のグラフト重合物の重量平均分子量は500以上であることが望ましい。また不飽和基含有単量体のグラフト重合物の重量平均分子量の上限は溶液重合における重合性の点で50000が好ましい。この範囲内での分子量のコントロールは開始剤量、モノマー滴下時間、重合時間、反応溶媒、モノマー組成あるいは必要に応じて連鎖移動剤や重合禁止剤を適宜組み合わせることにより行なうことが出来る。
【0045】
本発明において、主鎖の共重合ポリエステル樹脂に不飽和基含有単量体をグラフト重合させた反応物は、自己架橋性を有するため高度な耐溶剤性および耐水性を発揮する。常温では架橋しないが、乾燥時の熱で、熱ラジカルによる水素引き抜き反応等の分子間反応を行い、架橋剤なしで架橋する。これにより初めて、本発明の目的である接着性、耐水性を発現できる。塗膜の架橋性については、様々の方法で評価できるが、疎水性共重合ポリエステル樹脂およびラジカル重合体の両方を溶解するクロロホルム溶媒での不溶分率で調べることができる。80℃以下で乾燥し、120℃で5分間熱処理して得られる塗膜の不溶分率が、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。塗膜の不溶分率が50重量%未満の場合は、接着性、耐水性が十分でないばかりでなく、ブロッキングも起こしてしまう。
【0046】
本発明に用いるポリエステル系グラフト共重合体は、そのままで本発明に用い得る易印刷性被覆層を形成し得るが、他の目的から汎用のポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、それらの共重合体、各種水分散樹脂などや各種機能性樹脂、例えば抗菌性樹脂、紫外線吸収性樹脂、ガスバリアー性樹脂や無機滑剤、有機滑剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤等を混合して塗布層を形成しても構わない。
【0047】
本発明においては、前記した易印刷性被覆層の厚みは特に限定しないが、本発明においては二軸延伸後の乾燥塗布厚みで0.05〜1.0μmが好ましく、より好ましくは0.07〜0.5μm、更に好ましくは0.09〜0.3μmである。
【0048】
本発明においては、前記した易印刷性被覆層面のもう一方のフィルム面には、粒子および/またはワックスを含む易滑性被覆層が積層されてなる必要がある。該易滑性被覆層は、当該構成を満たし、かつ上記した基材のシンジオタクチックポリスチレン系フイルムの滑り性を向上させる機能を有すればその組成等は限定されなく任意であるが、請求項6に記載のごとく、(a)共重合ポリエステル樹脂、(b)スルホン酸塩基を有する化合物、(c)平均粒子径が1.0〜5.0μmの粒子、(d)高分子系ワックス、を含む組成物からなることが好ましい実施態様である。
【0049】
本発明の易滑性被覆層をに用いる(a)共重合ポリエステル樹脂は、少なくとも1種のジカルボン酸成分と少なくとも1種のジオール成分およびそれらのエステル形成成分を構成単位とする共重合ポリエステル重縮合物であり、前記易印刷被覆層と同種のポリエステル樹脂でもよいし、一般的に使用されている共重合ポリエステル樹脂でもかまわない。
【0050】
(a)共重合ポリエステル樹脂の構成成分であるジカルボン酸成分としては、例えば、(1)テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、(2)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、(3)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、(4)マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸などの不飽和ジカルボン酸を挙げることができる。なかでも、テレフタル酸およびイソフタル酸が好ましく、その他少量であれば他のジカルボン酸を加えてもよい。
【0051】
(a)共重合ポリエステル樹脂のもう一方の構成成分であるジオール成分としては、例えば、(1)エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコールなどの脂肪族ジオール、(2)1,4−シクロヘキサンジメタールなどの脂環族ジオール、(3)4,4’−ビス(ヒドロキシエチル)ビスフェノールAなどの芳香族ジオール、さらにビス(ポリオキシエチレングリコール)ビスフェノールエーテルを挙げることができる。なかでも、エチレングリコールおよびジエチレングリコールが最も好ましく、その他少量のジオール成分を用いてもよい。
【0052】
前記ジカルボン酸成分の他に、共重合ポリエステル樹脂に水分散性を付与させるために、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を1〜10モル%の範囲で使用することが好ましく、その他、スルホテレフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,6ジカルボン酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸などを用いることができる。
【0053】
易滑性被覆層における樹脂成分は、該被覆層中に30〜95重量%の範囲で含有していることが好ましい。30重量%未満の場合には膜強度が不足し、摩擦などの外力が加わった際に膜の脱落が生じ易くなる。さらに、粒子の脱落が生じ易くなる。また、95重量%を越える場合は膜としての強度は向上するが、帯電防止性能、滑り性などの目的とする性能が発現しにくくなる。好ましくは50〜90重量%である。
【0054】
前記した(b)スルホン酸塩基を有する化合物は、帯電防止性を付与する目的で使用する化合物であり、例えば、スルホン酸塩基を有する不飽和単量体(例えば、ビニルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸アンモニウム、メタクリルスルホン酸カリウム、スチレンスルホン酸リチウムなど)の1種以上の重合体からなる高分子型帯電防止剤や、R−SO3X{ここで、Rはアルキル基、アリール基、またはアルキル基を有する芳香族基を、Xは金属イオン(例えば、Li、Na、Kなどのカチオン)、アンモニウムイオン、アミンイオン、リン酸エステルイオンを示す}で示される低分子型帯電防止剤やその2量体などが挙げられるが、耐熱性に優れたスルホン酸塩基を有し、帯電防止性が発現する機能を有していれば、前記化合物に限定されるものではない。
【0055】
低分子型帯電防止剤としては、アルキルスルホン酸塩、例えば、ペンタンスルホン酸ナトリウム、オクタンスルホン酸ナトリウム、オクタンスルホン酸リチウム、オクタンスルホン酸カリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウムが挙げられる。また、アリールスルホン酸塩、例えば、ベンジルスルホン酸ナトリウム、トルイルスルホン酸ナトリウム、ナフチルスルホン酸ナトリウムが挙げられる。さらに、アルキル基を有する芳香族スルホン酸塩、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの炭素数8〜20のアルキルベンゼンスルホン酸金属塩(例えば、Li塩、K塩、Na塩)、炭素数8〜20のアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、炭素数8〜20のアルキルフェニールエーテルジスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
【0056】
前記のスルホン酸塩基を有する不飽和単量体の重合体からなる高分子型帯電防止剤としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸塩のような分子内にスルホン酸塩基成分を含有するスチレン系樹脂を使用することが好ましい。
この高分子型帯電防止剤の特徴は、そのスルホン酸成分の親水性の高さにある。分子内にスルホン酸塩基成分を含有するスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩などのホモポリマー、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルなどのアクリル系単量体とスチレンスルホン酸単量体との共重合物が挙げられる。
前記のポリスチレンスルホン酸塩の重量平均分子量は、1000〜150000、好ましくは10000〜70000が好ましい。分子量が1000未満になると塗膜の耐水性が得られにくくなり、150000を越えると、共重合ポリエステルとの均一混合が困難になりやすい。
【0057】
本発明で用いる(b)スルホン酸塩基を有する化合物の易滑性被覆層中の含有量は、(b)スルホン酸塩基を有する化合物が低分子の場合は、0.5〜15重量%が好ましく、特に好ましくは2〜10重量%である。また、(b)スルホン酸塩基を有する化合物が高分子の場合は、5〜50%重量が好ましく、特に好ましくは10〜30重量%である。前記低分子化合物および高分子化合物を混合して使用してもかまわない。
【0058】
(b)スルホン酸塩基を有する化合物の易滑性被覆層中の含有量が少なすぎると、易滑性被覆層の表面固有抵抗値は大きくなる。易滑性被覆層の表面固有抵抗値は23℃、50%RHの条件で1×1012Ω/□以下であることが好ましく、1×1012Ω/□を超えると高速印刷機での給紙性が悪化する。
スルホン酸塩基を有する化合物の含有量が多すぎると、裏移りや粒子脱落による印刷面への汚染が生じやすくなる。印刷面と易滑面におけるスルホン酸塩基を有する化合物の含有量は、必要とされる帯電防止性のレベルに応じて、独立して制御することができる。
【0059】
本発明に用いる(c)平均粒子径が1〜5μmの粒子としては、市販の無機粒子および/または有機粒子を使用することができる。平均粒子径は、より好ましくは1〜3μmの範囲である。無機粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナなどの微粒子が挙げられ、有機粒子としては、例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エステル系樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に粒子径のバラツキが少なく、耐熱性が高い粒子が好ましく、架橋ポリスチレン系球状粒子、ベンゾグアナミン系球状粒子、架橋アクリル系球状粒子、シリコーン系球状粒子が好ましい。
【0060】
また、易滑性被覆層における前記粒子の含有量は、0.3〜10重量%、好ましくは0.7〜5重量%である。平均粒子径が1μm未満または粒子含有量が0.3重量%未満であると、被覆層表面に適度な凹凸が形成されにくくなる。その結果、枚葉フィルムとした際に、フィルム間に空気層が溜まりにくく、加重解放直後の摩擦を低減することができず、印刷速度を上げることが困難となる。平均粒子径が10μmを超えたり、粒子含有量が10重量%以上であると、フィルムのヘイズが高くなり、透明性の悪化、または粒子脱落により、印刷面の汚れ、印刷品位の問題、機台の汚染などが発生する。
【0061】
本発明においては、上記した微粒子は前記した易印刷性被覆層にも配合しても構わない。これにより本発明の積層シンジオタクチックポリスチレン系フイルムの滑り特性がより向上するので好ましい実施態様として推奨される。
【0062】
本発明に用いる(d)高分子系ワックス成分は、透明性を阻害しないものであれば特に限定されるものではなく、従来公知のものが使用可能である。例えば、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、脂肪酸系ワックスが挙げられる。
これらワックス成分の重量平均分子量は1000〜10000が好ましく、より好ましくは1500〜6000の範囲である。分子量が1000未満の場合には、被覆層の内部から表面への滲み出しにより、印刷面への転移汚染が生じやすく、インキ密着力に悪影響を与える。分子量が10000を超える場合には、滑り性の改善効果が不十分になる。
【0063】
易滑性被覆層における(d)高分子系ワックス成分の含有量は、1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%である。易滑性被覆層における(d)高分子系ワックス成分の含有量が1重量%未満の場合は、十分に摩擦係数を下げることができず、印刷速度が速くなると給紙性などが悪化し、高速印刷ができなくなる。被覆層におけるワックス成分の樹脂成分に対する含有量が10重量%を越える場合は、ワックス成分の脱落により、印刷面への汚染、さらには透明性、ヘイズの悪化を招く。
【0064】
本発明においては、易印刷性被覆層とその反対面の易滑性被覆層との滑り性が、従来公知の方法と比べ極めて良好である。枚葉状にフィルムを積み重ねた場合のこの顕著な滑り性改良効果は、(1)両面の被覆層中に含有する平均粒子径1〜10μmの粒子に起因する表面凹凸によるフィルム間での空気保持効果、(2)易滑性被覆層に含有されるスルホン酸金属塩による静電気密着防止効果、(3)さらに易滑性被覆層に含有される高分子系ワックス成分による静摩擦係数の低下によりもたらされる。これら3つの効果がすべて揃わないと、断裁したフィルムが静止状態から動き始めた時の滑らかさの不足、枚葉状に棒積みした状態からの搬送性、給紙時の噛み込み安定性に劣り、印刷速度を高めることができない。
【0065】
本発明においては、易印刷性被覆層のフィルム面と易滑性被覆層のフィルム面の静摩擦係数および動摩擦係数がともに0.5以下であることが好ましい。動摩擦係数が0.5を超える状態では、滑り性が不十分であり、枚葉印刷機での給紙時に搬送不良を生じる。
【0066】
本発明においては、請求項7に記載のごとく、本発明の積層シンジオタクチックポリスチレン系フィルムを製造する際、基材フィルムの両面に被覆層用塗布液を塗工する段階としては、未延伸フィルムに塗布し、次いで少なくとも一方向に延伸する方法、縦延伸後に塗布する方法、配向処理の終了したフィルム表面に塗布する方法など、いずれの方法も可能である。なかでも、シンジオタクチックポリスチレン系基材フィルムを製造する際、フィルムの結晶配向が完了する前に塗布し、その後、少なくとも1方向に延伸した後、該フィルムの結晶配向を完了させる、いわゆるインラインコート法が本発明の効果をより顕著に発現させることができる好ましい方法である。本方法の使用により、本発明の基材フイルムの両面に設ける被覆層の基材フイルムとの密着性が向上し、かつ経済性が向上する。
【0067】
易滑性被覆層の成分である共重合ポリエステル樹脂とスルホン酸塩基を有する化合物は、両者に親水性の差があり分離し易いので、コート液は塗布直前に1000(1/秒)以上のせん断速度をかけた直後2秒以内に基材に塗布し、その後2秒以内に70℃以下、湿度50%RH、風速10〜20m/秒で1〜3秒予備乾燥後、90℃以上で乾燥する方法で行うことが好ましい。この方法で塗布を行うことにより、共重合ポリエステル樹脂とスルホン酸塩基を有する化合物が均一に分散し、良好な表面抵抗値が得られる。
【0068】
本発明における易印刷性被覆層および易滑性被覆層を設けるコート方式としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式など通常用いられている方法を適用することができる
【0069】
本発明における易印刷性被覆層および易滑性被覆層の厚みは特に限定しないが、乾燥後の厚みが0.05〜1.0μmであるが好ましく、より好ましくは0.07〜0.5μm、特に好ましくは0.09〜0.3μmである。
【0070】
本発明における易印刷性被覆層および易滑性被覆層形成に用いる塗液中には、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の添加剤、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機潤滑剤を含有させてもよい。
【0071】
通常のシンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの場合、ハンドリング性(易滑性、巻き取り性、耐ブロッキング性など)や耐スクラッチ性などの改良を目的に、フィルム表面に凹凸を形成させるために基材フィルムに不活性粒子が含有されている。本発明の積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムは、透明性向上のために、被覆層に粒子を含有させ、基材フィルム中の粒子含有量は少なくすることが好ましい。具体的には、基材フィルム中には実質的に粒子を含有させないことが好ましい。なお、「実質的に粒子を含有しない」とは、意図的に基材フィルムに粒子を含有させないことであり、埃などの異物粒子しか含有しないことで、基材フィルム中の粒子の含有量で表すと、0.001重量%未満である。
実質的に内部に粒子を含有していない基材フィルムを用いることで、両面に被覆層を有しながらも高い透明性を得ることができる。そのため、透過光による照明時の明るさに優れ、易滑面(被覆層B/非印刷面)側からフィルムを通して印刷面を見た場合の文字や画像の鮮鋭性に極めて優れる。
【0072】
また、本発明において、一般的に用いられるUV硬化型印刷インキおよび溶剤型印刷インキに対する被覆層Aとの密着力が、JIS−K5400に準拠した碁盤目によるクロスカット評価にて、1mm角のマス目の数が90%以上残存させることが好ましく、より好ましくは96%以上残存させる。
密着力が90%未満では、印刷後のインキ脱落が生じ、外観の低下、搬送性の低下につながる。一般的にオフセット印刷ではインキ厚みが1μm〜数μmであるためインキ脱落は生じにくいが、スクリーン印刷では数μm〜10μm以上の場合があり、スクリーン印刷インキにも対応できる密着力を有する性能が印刷用透明シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムには必要である。
【0073】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例中で示される特性は、以下の方法で測定・評価したものである。
(1)静摩擦係数μsおよび動摩擦係数μd
JIS C 2151に準拠し、下記条件により評価した。
平板用試験片:幅130mm、長さ250mmで易滑性被覆層面を使用
そり用試験片:幅120mm、長さ120mmで易印刷性被覆層面を使用
測定雰囲気:23℃、50%RH
そり重量:200g
試験速度:150mm/分
【0074】
(2)表面抵抗
表面抵抗計(三菱油化社製、HIRESUTA MCP HT−260)を用い、23℃、50%RHの雰囲気中における積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの易滑性被覆層面の表面抵抗(Ω/□)を下記条件にて測定した。
印加電圧:500V
測定時間:10秒
使用プローブ:タイプ HRS
【0075】
(3)インキ密着力
JIS−K5400に記載の碁盤目評価に準拠し、フィルムの易印刷性被覆層面に下記インキを印刷後、クロスカットガイドを用いて1mmマス目をカッター刃で100個作成した後、セロファン粘着テープ(ニチバン社製、405番、24mm幅)を用いてマス目部分の密着力を評価した。
UV硬化型インキとの密着力は、UV硬化型インキ(東華色素社製、ベストキュアー161)を用い、フィルムの易印刷性被覆層面にRIテスターで印刷後100mJのUVを照射し、上記方法にしたがって評価した。また、他のUV硬化型インキ(セイコーアドバンス社製、UVA)を用い、フィルムの易印刷性被覆層面(本発明における印刷性改良層)に#300のスクリーン印刷後500mJのUVを照射し、上記方法にしたがって同様に評価した。
【0076】
溶剤型インキとの密着力は、溶剤型インキ(東洋インキ社製、TSP−400G)を用い、積層フィルムの易印刷性被覆層にRIテスターで印刷後24時間放置乾燥し、上記方法にしたがって評価した。また、他の溶剤型インキ(十條インキ社製、テトロン(R))を用い、積層フィルムの易印刷性被覆層面に#250のスクリーン印刷後24時間放置乾燥し、上記方法にしたがって同様に評価した。
【0077】
(4)耐水性値
積層フィルムの易印刷性被覆層面に、オフセットインキ(ティーアンドケイ東華社製、ベストキュア161)をRIテスター(明製作所製、RI−3)により転写させた。次いで、積層フィルムを送り速度5m/分で走行させながら、高圧水銀灯を用いて照射エネルギー200mJ/cm2、照射距離15cmの条件下で、厚み1μmのインキ層を形成させた。
【0078】
得られたフィルムを水の入ったオートクレーブ(トミー精工社製、SR−240)にいれ、120℃で1時間加圧ボイル処理した。ボイル処理後、オートクレーブを常圧に戻し、オートクレーブ内から積層フィルムを取り出した。積層フィルム表面に付着した水を取り除き、常温で12時間放置した。
ボイル処理後の積層フィルムのインキ層の密着力をフィルムをJIS−K5400の8.5.1記載に準じた試験方法で求めた。具体的には、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、基材フィルムに達する100個のマス目状の切り傷をつける。次いで、セロファン粘着テープ(ニチバン社製、405番、24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、さらにその上を厚さ2mm、幅30mm、長さ100mmのポリテトラフルオロエチレン製板を折り曲げた曲面部分でこすって十分に密着させる。その後、垂直にセロファン粘着テープをフィルムから引き剥がして、フィルムから剥がれたマス目の数を目視で数え、下記の式から密着性を求める。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥離しているものと見なしカウントした。
密着性(%)=(1−剥がれたマス目の数/100)×100
下記の基準でランク分けをする。
◎:100%、○:99〜96%、△:95〜80%、×:79〜0%
【0079】
(5)湿し水適性
溶剤型オフセット印刷インキ(東洋インキ社製、TSP−400G)を用い、積層フィルムの易印刷性被覆層面にRIテスターで印刷する際、インキ展色前のフィルム印刷面を、スポイドを用いてイオン交換水を0.2ml、0.4ml、0.6ml滴下して湿らせたモルトンローラーで圧着した後、インキを展色、インキの転移不良の有無を確認した。
【0080】
(6)給紙安定性
枚葉オフセット印刷機(ハイデルベルグ社製、スピードマスター、8色刷り機)を用いて、寸法が菊全判(636×939mm)サイズの枚葉フィルムを積み重ね、印刷速度を低速時(4,000枚/時間)および高速時(8,000枚/時間)で給紙、印刷させた際の給紙安定性を評価した。
【0081】
(7)印刷品位
給紙安定性評価で用いた印刷サンプルの印刷外観を目視で判定した。この際、印刷面からではなく、裏側からフィルムを通して外観を目視判定した。判定基準は次の通りである。
・クリアー感:印刷した図柄が、基材フィルムや塗布層に遮られることなく鮮明に見えること。
・印刷適性 :印刷インキの転移不良による、色むらやヌケが生じないこと
【0082】
(実施例1)
(疎水性共重合ポリエステル樹脂の調製)
攪拌機、温度計および部分還流式冷却器を具備したステンレス製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート218重量部、ジメチルイソフタレート194重量部、エチレングリコール488重量部、ネオペンチルグリコール200重量部およびテトラ−N−ブチルチタネート0.5重量部を仕込み、160℃から220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行った。次いで、フマル酸13重量部およびセバシン酸51重量部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温しエステル化反応を行った。次いで、255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、0.22mmHgの減圧下で1時間30分反応させ、疎水性共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた疎水性共重合ポリエステルは淡黄色透明であった。
【0083】
(ポリエステル系グラフト共重合体の水分散体の調製)
撹拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に、疎水性共重合ポリエステル75重量部、メチルエチルケトン56重量部およびイソプロピルアルコール19重量部を入れ、65℃で加熱、撹拌し樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、無水マレイン酸15重量部をポリエステル溶液に添加した。次いで、スチレン10重量部およびアゾビスジメチルバレロニトリル1.5重量部を12重量部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を0.1ml/分でポリエステル溶液中に滴下し、さらに2時間撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリングを行った後、メタノールを5重量部添加した。次いで、イオン交換水300重量部とトリエチルアミン15重量部を反応溶液に加え、1時間半撹拌した。その後、反応器内温を100℃に上げメチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により留去し、水分散したポリエステル系グラフト共重合体を得た。得られたポリエステル系グラフト共重合体は、淡黄色透明で、ガラス転移温度は40℃であった。
【0084】
(易印刷性被覆層用塗布液Aの調製)
イオン交換水とイソプルピルアルコールの混合溶媒(重量比:60/40)に、全固形分濃度が5重量%となるように、水分散したポリエステル系グラフト共重合体と、粒子として平均粒径2.2μmのスチレン−ベンゾグアナミン系球状有機粒子(日本触媒工業社製)、平均粒径0.02μmのコロイダルシリカ(触媒化成社製)をそれぞれ固形分重量比で50/1/3になるよう混合し、塗布液Aを調製した。
【0085】
(易滑性被覆層用塗布液Bの調製)
イオン交換水とイソプルピルアルコールの混合溶媒(重量比:60/40)に、全固形分濃度が5重量%となるように、水分散性ポリエステル系共重合体(東洋紡績社製、バイロナ−ルMD−16)と、スルホン酸金属塩としてドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム(松本油脂社製、アニオン系帯電防止剤)、高分子系ワックス剤としてポリエチレン系エマルジョンワックス(東邦化学社製)、粒子として平均粒径2.2μmのスチレン−ベンゾグアナミン系球状有機粒子(日本触媒工業社製)、平均粒径0.04μmのコロイダルシリカ(日産化学社製)をそれぞれ固形分重量比で50/2.5/2.5/0.5/5になるよう混合し、塗布液Bを調製した。
【0086】
(積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フイルムの作製)
シンジオタクチックポリスチレン(重量平均分子量300,000)に対して滑剤として平均粒径2μmの架橋ポリスチレン微粒子を2.0重量%添加したポリマーチップと滑剤を添加していないポリマーチップを重量比で1対9の割合で混合した後、乾燥し、295℃で溶融し、500μmのリップギャップのTダイから押し出し、40℃の冷却ロールに静電印荷法により密着・冷却固化し、240μmの非晶質の未延伸シートを得た。
【0087】
該非晶質の未延伸シートをまずロールにより98℃に予熱し、表面温度750℃の赤外線加熱ヒーターを4本使用さらに加熱し、フィルム温度140℃で縦方向に3.3倍延伸し、さらに120℃のロールで縦方向に1.2倍延伸し、ついで150℃のセラミックロールと40℃の金属ロールの間で12%縦弛緩処理を行い、ついで、一軸配向フィルムの片面に上記の塗布液Aを他面に塗布液Bをリバースコート法で塗布した。なお、各塗布液はロールギャップ間で1000(1/秒)以上のせん断速度をかけ、2秒以内に基材フィルムに塗布し、65℃、60%RH、風速15m/秒の環境下で、2秒間乾燥した。さらに、130℃、風速20m/秒の環境下で3秒間乾燥し水分を除去し、さらにテンターでフィルムを110℃に予熱し、横方向に延伸温度120℃で3.5倍延伸し、265℃で10秒熱固定した。その後、230℃で5%横弛緩処理し、さらに220℃のセラミックロールと40℃の金属ロールの間で3%縦弛緩処理した。得られたフィルムの厚みは20μmの二軸延伸シンジオタクチックポリスチレンフィルムを得た。最終的なコート剤塗布量は0.1g/m2であった。得られた該シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
【0088】
(実施例2)
塗布液B(易滑性被覆層用)を、水分散性ポリエステル系共重合体(東洋紡績社製、バイロナールMD−16)/ドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム(松本油脂社製、アニオン系帯電防止剤)/ポリエチレン系エマルジョンワックス(東邦化学社製)/平均粒径2.2μmのスチレン−ベンゾグアナミン系球状有機粒子(日本触媒社製)/平均粒径0.04μmのコロイダルシリカ(日産化学社製)をそれぞれ固形分重量比で50/5/2.5/0.5/5に変更する以外は、実施例1と同様にして両面に被覆層を有する二軸延伸積層シンジオタクチックポリスチレン系フィルムを得た。得られた該シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
【0089】
(実施例3)
塗布液B(易滑性被覆層用)の水分散性ポリエステル系共重合体(東洋紡績社製、バイロナールMD−16)を塗布液A(易印刷性被覆層用)で使用したポリエステル系グラフト共重合体に変更する以外は、実施例1と同様にして両面に被覆層を有する二軸延伸積層シンジオタクチックポリスチレン系フィルムを得た。得られた該シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
【0090】
(実施例4)
塗布液A(易印刷性被覆層用)を、ポリエステル系グラフト共重合体/ドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム/平均粒径2.2μmのスチレン−ベンゾグアナミン系球状有機粒子/平均粒径0.02μmのコロイダルシリカをそれぞれ固形分重量比で50/3/1/3に変更する以外は、実施例1と同様にして両面に被覆層を有する二軸延伸積層シンジオタクチックポリスチレン系フィルムを得た。得られた該シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
【0091】
(比較例1)
実施例1において、塗布液B(易滑性被覆層用)に配合した高分子系ワックスを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸積層シンジオタクチックポリスチレン系フィルムを得た。得られた該シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
【0092】
(比較例2)
実施例1において、塗布液A(易印刷性被覆層用)の塗布を止め、易印刷性被覆層の形成を取り止める以外は、実施例1と同様にして二軸延伸積層シンジオタクチックポリスチレン系フィルムを得た。得られた積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
【0093】
(比較例3)
実施例1において、塗布液B(易滑性被覆層用)の塗布を止め、易滑性被覆層の形成を取り止める以外は、実施例1と同様にして二軸延伸積層シンジオタクチックポリスチレン系フィルムを得た。得られた積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
【0094】
(比較例4)
実施例1において、塗布液A(易印刷性被覆層用)および塗布液B(易滑性被覆層用)の塗布を止め、易印刷性被覆層および易滑性被覆層の形成を取り止める以外は、実施例1と同様にして二軸延伸シンジオタクチックポリスチレン系フィルムを得た。得られた積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明は特許請求の範囲に記載のとおりの構成を採用することにより、インキとの密着性、湿し水適性、帯電防止性に優れ、かつ高速給紙時に重送せず安定した給紙が可能な易滑性を有する積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムが提供される。また、フィルム製造工程においてインラインコート法で易印刷性被覆層および易滑性被覆層を積層でき経済的である。また、できたフィルムのリサイクルも可能である。本発明の積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルムは印刷用フィルム、特にオフセット印刷用フィルムとして好適に使用される。
Claims (7)
- シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体からなるフイルムの片面に接着性改質樹脂を含む易印刷性被覆層が、もう一方の面に粒子および/またはワックスを含む易滑性被覆層が積層されてなることを特徴とする積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フイルム。
- 易印刷性被覆層の耐水性値が90%以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルム。
- 易印刷性被覆層が、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アミノ系樹脂、エポキシ系樹脂、オキサゾリン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂の群から選ばれた少なくとも一種の樹脂よりなり、かつインラインコーティング法により形成されてなることを特徴とする請求項1、2に記載の積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルム。
- 易印刷性被覆層が、主鎖のポリエステル系重合体に不飽和基含有単量体がグラフト重合されたポリエステル系グラフト共重合体よりなることを特徴とする請求項1〜3に記載の積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルム。
- 易滑性被覆層が、(a)共重合ポリエステル樹脂、(b)スルホン酸塩基を有する化合物、(c)平均粒子径が1.0〜5.0μmの粒子、および(d)高分子系ワックス、を含む組成物からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルム。
- 易印刷性被覆層のフィルム面と易滑性被覆層のフィルム面の静摩擦係数および動摩擦係数がともに0.5以下であることを特徴とする請求項1〜5に記載の積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルム。
- 易印刷性被覆層および易滑性被覆層が、シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体からなる未延伸フィルム又は一軸延伸フィルムに該被覆層を積層した後、次いで一軸方向又は二軸方向に一回以上延伸した後、熱処理することによって形成されることを特徴とする請求項1〜6に記載の積層シンジオタクチックポリスチレン系延伸フィルム。
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JP2006321165A (ja) * | 2005-05-20 | 2006-11-30 | Mitsubishi Plastics Ind Ltd | ポリスチレン系熱収縮性フィルム及びその製造方法 |
CN108700680A (zh) * | 2016-09-20 | 2018-10-23 | 株式会社Lg化学 | 具有高的滑动特性和优异的阻挡uv光的特性的光学膜及包括其的偏光板 |
-
2003
- 2003-04-09 JP JP2003105398A patent/JP2004306516A/ja active Pending
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