JP2004306441A - インクカートリッジ及びこれを用いたインクジェット記録装置 - Google Patents

インクカートリッジ及びこれを用いたインクジェット記録装置 Download PDF

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Abstract

【課題】インクジェットプリンタに対して、高濃度でにじみない画像を形成できるインクを安定的に供給できるインクカートリッジを提供すること。
【解決手段】インクを収容するインク収容室、記録装置にインクを供給するインク供給口、前記インク収容室に大気を連通させる大気連通部を備えた容器と、容器内に収容されたインクと、インクを容器内に保持する負圧発生手段とを有するインクカートリッジであって、前記負圧発生手段が毛細管力によってインクを吸収保持する多孔質体であり、インクの着色剤が顔料をポリマーで包含して水に分散可能とした分散体で、前記ポリマー中の芳香環の量が20重量%以上70重量%以下であり、インクの液性成分中に含有される多価のカチオンの量が500ppm以下であることを特徴とするインクカートリッジ。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷信号に対応して印刷を実施するインクジェットプリンタ、ペンプロッター等の印字記録装置において使用するインクカートリッジに関するものであり、特にはインクジェットプリンタの記録ヘッドに対してインクを適正な負圧状態で供給することのできるインクカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタは、通常、記録用紙の紙幅方向に往復動するキャリッジに印刷信号に対応してインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッドを搭載して、外部のインクタンクから記録ヘッドにインクを供給するように構成されている。このようなインクタンクはインク貯蔵容器と容器内に収容されたインクにより構成され、小型の記録装置にあっては取り扱いの便を考慮してキャリッジに着脱可能に搭載できるようなカートリッジ形式で使用される。
【0003】
また近年インクジェットプリンタに対して、印字品質の向上や、印刷速度の高速化が求められている。そのためインクカートリッジについても、高濃度でにじみない画像を形成できるインクを収容保持し、高速に印字する記録ヘッドに対して、そのようなインクを安定的に供給できることが必要であり、従って、貯蔵容器としてのカートリッジと、カートリッジ内に収容されたインクの両面からの特性の向上が必須となってきている。
【0004】
高濃度でにじみない画像を形成できるインクの着色剤としては、顔料等の分散体の使用が従来から提案されており、例えば、顔料を水に分散させる手段としては、界面活性剤を用いる方法(特許文献1参照)、または疎水部と親水部を有する分散ポリマーを用いて分散させる方法(特許文献2参照)がある。また、着色剤の表面を高分子で被覆する方法等も試みられており、インクジェットプリンタ用インクとしては、染料インクを内包したマイクロカプセルを用いる方法(特許文献3参照)、水に不溶な溶媒に色素を溶解または分散させこれを界面活性剤で水中に乳化したマイクロカプセル化色素を用いる方法(特許文献4参照)、水、水溶性溶媒並びにポリエステルの少なくとも1種に昇華性分散染料を溶解または分散させた内包物を含むマイクロカプセルを記録液に使用する方法(特許文献5参照)、着色された乳化重合粒子と水性材料からなるインキ組成物(特許文献6参照)、転相乳化反応や酸析法による方法(特許文献7参照)等が検討されている。
【0005】
一方、インクを収容する貯蔵容器については、通常、記録ヘッドからのインクの漏れ出しを防止するため、多孔質体を収容し、この多孔質体にインクを含浸させて毛細管力によりインクを保持するように構成されている。
【0006】
しかしながら、インク含浸用として利用するこれら多孔質体には、その合成途中にて混入する反応性物質や不純物が付着していたり残留している場合があり、従って、これらの多孔質体にインクを含浸させ、インク中へこれらの反応性物質や不純物が多量に溶出した場合、前述のような発色性の高いインクでは、インク中の分散体を凝集させ、吐出インクの飛行曲がりを生じたり、ノズルを閉塞させる弊害が生じる場合があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平1−301760号公報
【特許文献2】
特公平5−64724号公報
【特許文献3】
特開昭62−95366号公報
【特許文献4】
特開平1−170672号公報
【特許文献5】
特開平5−39447号公報
【特許文献6】
特開平6−313141号公報
【特許文献7】
特開平10−140065号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明はこのような課題を解決するインクカートリッジを提供するものであり、すなわちインクカートリッジ内に収容されるインクが、普通紙上においてもにじみのない印字画像を得られるインクで、これらのインクの貯蔵容器であるカートリッジが、収容するインクの物性等に影響を与えることなく長期保存が可能な貯蔵容器(カートリッジ)である。
【0009】
本発明の目的とするところは、上記のようなインク貯蔵容器(カートリッジ)と容器内に収容されたインクとからなるインクカートリッジを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によるインクカートリッジは、インクを収容するインク収容室、記録装置にインクを供給するインク供給口、前記インク収容室に大気を連通させる大気連通部を備えた容器と、容器内に収容されたインクと、インクを容器内に保持する負圧発生手段とを有するインクカートリッジであって、前記負圧発生手段が容器内に収容され、毛細管力によってインクを吸収保持する多孔質体であり、前記容器内に収容されたインクの着色剤が、顔料をポリマーで包含して水に分散可能とした分散体で、前記ポリマー中の芳香環の量が20重量%(以下単に%と示すものは重量%を示す)以上70%以下であり、インクの液性成分中に含有される多価のカチオンの量が500ppm以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の好ましい態様においては、前記容器内のインクが前記多孔質体を経由してインク供給口に供給されることを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい態様においては、前記インク供給口が、前記多孔質体に対して突出し、しかも前記インク供給口に連通する凸部を備え、前記多孔質体から前記凸部を経由して前記インク供給口にインクが供給されることを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様においては、前記インク供給口が、記録装置の記録ヘッドに連通するインク導入部材の進退によって開閉する弁体を備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい態様においては、前記大気連通部が、前記インク収容室に穿設された大気連通孔と、大気連通孔に接続しキャピラリを介して大気に連通する大気連通流路とから構成されたものであることを特徴とする。
【0015】
本発明の好ましい態様においては、前記多孔質体の容器内に収容される前の体積が、容器内に収容されている多孔質体の体積より大きいことを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい態様においては、前記多孔質体より下流にフィルタが配置されていることを特徴とする。
【0017】
尚、本明細書において、インクの「液性成分」とは、インク中の分散体などの固形部分と、それらの固形部分を分散して保持する液状部分とに分けた場合の液状部分を意味する。従って、その「液性成分」には、顔料分散液、又はインクを調製する際にベヒクル(インク自体の液状部分)中に混入する不純物も含まれている。また、例えば、インクを遠心処理して上清成分と沈殿成分とに分離し、その上清成分を公知の任意の方法で測定することによって前記「液性成分」中に含まれる多価のカチオン量を測定することができる。多価のカチオンとは二価以上の正電荷を持つイオンを指す。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のインクカートリッジに収容されるインクは、安定性に優れ、普通紙上ではにじみが少なく高発色であり、光沢メディア上では十分な発色に加えて定着性・光沢性を有する。さらにインクジェット記録にあってはインクジェットヘッドからのインクの吐出安定性に優れることなどの特性が要求されていることに鑑み、鋭意検討した結果によるものである。
【0019】
以下、本発明のインクカートリッジに用いるインクについて詳細に説明する。
【0020】
インクの着色剤として含有される分散体が、顔料を分散ポリマーで包含して水に分散可能にし、且つその分散ポリマー中の芳香環の量がその分散ポリマーの20%以上70%以下であることを特徴とする。
【0021】
ここで、芳香環の量が分散ポリマーの20%以上であることで、その分散ポリマーは疎水性表面の顔料に好適に吸着することが可能となる。又、その吸着した分散ポリマーは本発明で好適に用いる添加剤を添加しても顔料からの脱離が生じ難くなるため安定なものとなる。又、芳香環の量が70%を超えると水中での分散が難しくなり、逆に安定性が得られなくなる。このような芳香環の量はより好ましくは25%以上50%以下である。又、顔料と分散ポリマーの重量比を30:70〜90:10とすることで、分散体の分散安定性及びこの分散体を水性インクとした場合の印字画像の定着性・光沢性・発色性・にじみ・分散安定性に対して、優れた効果が得られる。顔料が30:70より少ないと、この分散体を用いた水性インクにおいて十分な印字濃度が得られにくく、十分な印字濃度を発現させるために必要な量の分散体を加えるとインク粘度が高くなって、インクジェットヘッドより吐出し難くなる。逆に90:10より多いと、インクの安定性が得られにくく、さらに印字画像の定着性・光沢性に対して所望の効果が得られ難くなる。
【0022】
前記ポリマーで包含する顔料として用いることのできる無機顔料または有機顔料として、以下に例示する。
【0023】
ブラック用の無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、若しくはチャネルブラック等のカーボンブラック(C.l.ピグメントブラック7)類を挙げることができる。
【0024】
有機顔料としては、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、縮合アゾ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ペリレン顔料等を使用することができる。
【0025】
具体的には、例えばイエロー用の有機顔料としては、C.l.ピグメントイエロー1(ハンザイエローG),2,3(ハンザイエロー10G),4,5(ハンザイエロー5G),6,7,10,11,12(ジスアゾイエローAAA),13,14,16,17,24(フラバントロンイエロー),55(ジスアゾイエローAAPT),61,61:1,65,73,74(ファストイエロー5GX),75,81,83(ジスアゾイエローHR),93(縮合アゾイエロー3G),94(縮合アゾイエロー6G),95(縮合アゾイエローGR),97(ファストイエローFGL),98,99(アントラキノン),100,108(アントラピリミジンイエロー),109(イソインドリノンイエロー2GLT),110(イソインドリノンイエロー3RLT),113,117,120(ベンズイミダゾロンイエローH2G),123(アントラキノンイエロー),124,128(縮合アゾイエロー8G),129,133,138(キノフタロンイエロー),139(イソインドリノンイエロー),147,151(ベンズイミダゾロンイエローH4G),153(ニッケルニトロソイエロー),154(ベンズイミダゾロンイエローH3G),155,156(ベンズイミダゾロンイエローHLR),167,168,172,173(イソインドリノンイエロー6GL),180(ベンズイミダゾロンイエロー)などを挙げることができる。
【0026】
また、マゼンタインク用の有機顔料としては、C.l.ピグメントレッド1(パラレッド),2,3(トルイジンレッド),4,5(lTR Red),6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38(ピラゾロンレッドB),40,41,42,88(チオインジゴボルドー),112(ナフトールレッドFGR),114(ブリリアントカーミンBS),122(ジメチルキナクリドン),123(ペリレンバーミリオン),144,146,149(ペリレンスカーレッド),150,166,168(アントアントロンオレンジ),170(ナフトールレッドF3RK),171(ベンズイミダゾロンマルーンHFM),175(ベンズイミダゾロンレッドHFT),176(ベンズイミダゾロンカーミンHF3C),177,178(ペリレンレッド),179(ペリレンマルーン),185(ベンズイミダゾロンカーミンHF4C),187,188,189(ペリレンレッド),190(ペリレンレッド),194(ペリノンレッド),202(キナクリドンマゼンタ),209(ジクロロキナクリドンレッド),214(縮合アゾレッド),216,219,220(縮合アゾ),224(ペリレンレッド),242(縮合アゾスカーレット),245(ナフトールレッド),又は、C.I.ピグメントバイオレット19(キナクリドン),23(ジオキサジンバイオレット),31,32,33,36,38,43,50などを挙げることができる。
【0027】
更に又、シアン用の有機顔料としては、C.l.ピグメントブルー15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6(以上いずれもフタロシアニンブルー),16(無金属フタロシアニンブルー),17:1,18(アルカリブルートナー),19,21,22,25,56,60(スレンブルー),64(ジクロロインダントロンブルー),65(ビオラントロン),66(インジゴ)等を挙げることができる。
【0028】
又、ブラック用の有機顔料としては、アニリンブラック(C.l.ピグメントブラック1)等の黒色有機顔料を用いることができる。
【0029】
更に又、イエロー、シアン、又はマゼンタインク以外のカラーインクに用いる有機顔料としては、
C.I.ピグメントオレンジ1,2,5,7,13,14,15,16(バルカンオレンジ),24,31(縮合アゾオレンジ4R),34,36(ベンズイミダゾロンオレンジHL),38,40(ピラントロンオレンジ),42(イソインドリノンオレンジRLT),43,51,60(ベンズイミダゾロン系不溶性モノアゾ顔料),62(ベンズイミダゾロン系不溶性モノアゾ顔料),63;C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン),10(グリーンゴールド),36(塩臭素化フタロシアニングリーン),37,47(ビオラントロングリーン);あるいは
C.I.ピグメントブラウン1,2,3,5,23(縮合アゾブラウン5R),25(ベンズイミダゾロンブラウンHFR),26(ペリレンボルドー),32(ベンズイミダゾロンブラウンHFL)等を挙げることができる。
【0030】
本発明で用いるインクにおいては、前記の顔料を1種で又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0031】
使用する顔料は、ポリマーで内包してマイクロカプセル化する以前に予め粉砕処理をして微粒化してあることが望ましい。顔料の粉砕処理はジルコニアビーズ、ガラスビーズ、無機塩等の粉砕メディアを使用して、湿式粉砕あるいは乾式粉砕により実施することができ、粉砕装置としてはアトライター、ボールミル、振動ミル等を挙げることができる。
【0032】
顔料を粉砕処理により微粒化する場合、少なからず粉砕メディア(ビーズ)の成分が顔料中に混入することが考えられる。具体的には、粉砕メディアにガラスビーズを使用すれば顔料中にSiの混入が、ジルコニアビーズの場合はZrの混入が考えられる。更に、粉砕装置の部材からの混入も考えられ、ステンレス部材から構成される粉砕装置を使用した場合には、Fe、Cr、Ni等の混入が考えられる。従って、粉砕処理後は顔料の洗浄、限外ろ過等により粉砕メディアや粉砕装置から発生するコンタミ成分を除去することが望ましい。
【0033】
粉砕メディアに水溶性の無機塩(NaCl、BaCl 、KCl、NaSO等)を用いて粉砕処理をする方法(ソルトミリング法)もあり、この場合、理論上はイオン交換水等による洗浄で混入した粉砕メディア成分を除去できる。但し、表面積の大きい顔料と上記のような無機塩を混合する方法でもあるので、粉砕処理後の洗浄が不十分の場合、分散メディアである無機塩が多量に残留する可能性もあり注意が必要である。
【0034】
また、顔料の粒経は5μm以下が好ましく、より好ましくは0.3μm以下の粒子からなる顔料を、さらに好ましくは0.01〜0.15μmの粒子からなる顔料が好ましい。また水性インクとしてはインクジェットに用いる場合、これらの顔料としての添加量は、0.5〜30%が好ましいが、さらには1.0〜12%が好ましい。これ以下の添加量では、印字濃度が確保できなくなり、またこれ以上の添加量では、インクの粘度増加や粘度特性に構造粘性が生じ、インクジェットヘッドからのインクの吐出安定性が悪くなる傾向になる。
【0035】
前述の顔料を包含するポリマーを形成する物質の具体例として2重結合を有するアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基あるいはアリル基を有するモノマーやオリゴマー類を用いることができる。例えばスチレン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ブチルメタクリレート、(α,2,3または4)−アルキルスチレン、(α,2,3または4)−アルコキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、α−フェニルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他アルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のジエチレングリコールまたはポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、その他含フッ素、含塩素、含珪素(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、(メタ)アクリル酸等の1官能の他に架橋構造を導入する場合は(モノ,ジ,トリ,テトラ,ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールおよび1,10−デカンジオール等の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはFのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等アクリル基やメタクリル基を有する化合物を用いることができる。
【0036】
さらに、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマーからなる群から選ばれた1種以上を主成分とするようにこれらのポリマーを添加しながら作成することもできる。
【0037】
また、ポリマーを形成する物質の疎水基としては少なくともアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選ばれた1種以上であることが好ましいが、ベンゼン環の量を本発明の範囲にすることが好ましい。そして、前述の親水性官能基を有する物質の親水基が少なくともカルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基およびそれらの塩基であることが好ましい。
【0038】
ポリマーを合成する際の重合開始剤は過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウムの他に、過硫酸水素やアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、過酢酸、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロキシパーオキシド、パラメンタンヒドロキシパーオキシドなどラジカル重合に用いられる一般的な開始剤を用いることができる。
【0039】
本発明における、乳化重合では連鎖移動剤を用いることもできる。例えば、t−ドデシルメルカプタンの他にn−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、キサントゲン類であるジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド、あるいはジペンテン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテンなどが挙げられる。
【0040】
そして、前述の分散体を用いることによって安定性の優れたインクジェット記録用インクとすることができる。さらに前述の分散体を筆記具用インクにも好適に用いることができる。
【0041】
また、前述の顔料をポリマーで包含した着色剤が少なくとも重合性基を有する分散剤と共重合性モノマーとの共重合体で該顔料を包含したものであることが好ましい。ここで、重合性基を有する分散剤とは少なくとも疎水基、親水基および重合性基を有するもので、重合性基はアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基あるいはビニル基などであり、共重合性基も同じくクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基あるいはビニル基などになる。
【0042】
インクジェット記録用インクとしては粒径が比較的そろっていた方が目詰まりや吐出の安定性の観点から好ましいので、顔料をポリマーで包含した着色剤は、乳化重合または転相乳化法によって製造されることが好ましい。また、ポリマー中のベンゼン環が本発明の範囲にあり、好適な分散剤による好適な分散により、堅固なポリマーになり、分散安定性が得られ、長期に安定性が得られるので好ましい。
【0043】
前述の顔料をポリマーで包含した分散体は、重合性基を有する分散剤で顔料を分散させた後、分散剤と共重合可能なモノマーと重合開始剤を用いて水中で乳化重合されたものであることが好ましい。
【0044】
本発明に用いるインクは少なくとも前述の分散体を含有することを特徴とし、その含有量は、顔料の重量濃度として、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1.0〜12重量%、最も好ましくは2〜10重量%である。インクの顔料含有量が0.5重量%未満になると印字濃度が不充分となることがあり、30重量%を越えると、インク粘度の点からインク中に保湿成分を添加する量が制限され、インクジェットヘッドのノズル目詰まりが発生しやすくなったり、インクの粘度が高くなり安定吐出が得られないことがある。
【0045】
また、本発明に用いるインクは必要に応じて、その製造工程におけるインクまたは分散液に対して、逆浸透膜、限外濾過、電気透析、またヌッチェによる水洗等の精製処理を実施することができる。特にインクの液性成分中に多価のカチオンが多量に存在する場合は、その弊害(保存安定性の低下や吐出安定性の低下等)を防止する為に、上述のような精製処理を実施することが好ましい。
【0046】
このような多価のカチオンの具体例としては、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、シリコンイオン、亜鉛イオン、クロムイオン、ニッケルイオン、錫イオン等を挙げることができ、その混入経路としては、顔料や分散ポリマーの原料等にもともと含まれている場合や、分散工程等のインク製造工程中に製造装置から混入する場合等が考えられる。また、インク中では単体のイオンとして存在する場合の他、酸化物や有機金属化合物のイオンとして存在する場合もある。
【0047】
上記のような精製処理により液性成分中における遊離多価カチオン量を一定量以下に抑えることにより、インク保存時における物性値変動(保存安定性の低下)を防止し、インクジェットヘッドからの吐出特性を維持し、そして従来の水性インクカートリッジと比較して格段に高い、印刷物の印字品質を確保することができる。このようなインク液性成分中の多価カチオン量は500ppm以下であることが好ましく、より好ましくは300ppm以下であり、さらに好ましくは200ppm以下である。
【0048】
続いてインク中の分散体以外の添加成分について詳しく説明する。
本発明で用いるインクは、インクの記録媒体である紙等の記録メディアに対する浸透性を高める目的で浸透剤を添加する場合があり、更にその放置安定性の確保、インク吐出ヘッドからの安定吐出達成等の目的で保湿剤、溶解助剤、浸透制御剤(浸透剤)、粘度調整剤、pH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、防黴剤、腐食防止剤、分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート等種々の添加剤を添加する場合がある。
【0049】
浸透剤はその添加により印字物の乾燥性が向上し、連続して印刷しても前の印字部分が次の媒体の裏面に転写されることがなくなる為、特に印字記録の高速化を可能とする為には添加が必須となる。更にインクジェットプリンタ用インクとして使用する場合、泡立ちが少ないこと、インクジェットヘッドのノズル内で乾燥し難い特性を有するものが特に好適である。
【0050】
このような浸透剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、グリコールエーテル類、アルキレングリコール類から選ばれた1種又は2種以上であることが好ましい。これらの浸透剤を用いることで普通紙上のにじみを低減でき、光沢メディア上での線幅を適当な程度に調整することができる。
【0051】
浸透剤として好適に使用できるアセチレングリコール系界面活性剤、又はアセチレンアルコール系界面活性剤の具体的な製品名として、例えば、サーフィノールTG、サーフィノール104、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノール61、サーフィノール82(以上いずれもエアープロダクツ株式会社製)、もしくはオルフィンE1010、オルフィンE1004、オルフィンSTG(以上いずれも日信化学工業株式会社製)、あるいはアセチレノールE00、アセチレノールE40、アセチレノールE100(以上いずれも川研ファインケミカル株式会社製)等を挙げることができる。
【0052】
浸透剤として好適に使用できるグリコールエーテル類としてはとしては、ジエチレングリコールモノ(炭素数4〜8のアルキル)エーテル、トリエチレングリコールモノ(炭素数4〜8のアルキル)エーテル、プロピレングリコールモノ(炭素数3〜6のアルキル)エーテル、及びジプロピレングリコールモノ(炭素数3〜6のアルキル)エーテル等を挙げることができ、具体例としてジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノブチルエーテル等を挙げることができる。
【0053】
浸透剤として使用できるアルキレングリコールとしては、1,2−(炭素数4〜10のアルキル)ジオール、1,3−(炭素数4〜10のアルキル)ジオール1,5−(炭素数4〜10のアルキル)ジオール、1,6−(炭素数4〜10のアルキル)ジオール等を挙げることができ、具体例としては1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−プタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等を挙げることができる。
【0054】
前記のグリコールエーテル類、及び/又はアルキレングリコール類は浸透剤としての効果を有する他、他の難溶性のインク添加剤に対する溶解助剤としての特性も備える。例えば前述のアセチレングリコール類のうち単独では水への溶解性が低い化合物を使用する場合、グリコールエーテル類を併用して添加することでアセチレングリコール類の溶解性を高めその添加量を増やすことできる。
【0055】
更にまた、グリコールエーテル類、及び/又はアルキレングリコール類は少なからず殺菌・防菌作用を有する為、インク中に3〜5%程度含有することで、微生物、菌類等の発生を抑えることができるという効果も有する。
【0056】
本発明のインクにおいては、浸透剤として前述のアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、グリコールエーテル類、アルキレングリコール類を、単独又は併用して使うことができ、インクに対する添加量は、0.01〜30重量%が好ましいが、0.1〜10重量%がより好ましい。添加量が0.01%未満では印字品質向上の効果が低くなり、30重量%を越えるとインク吐出ヘッドのノズル周りを不均一に濡らし、安定吐出が困難になる。
【0057】
その他、本発明のインクの浸透剤としては、同様に、前述のアルコール類、ノニオン性界面活性剤、水溶性有機溶剤、シリコン系界面活性剤、及びその他の界面活性剤を使用することができる。
【0058】
好適に用いることのできるシリコン系界面活性剤としては、例えば、BYK−307、BYK−331、BYK−333、BYK−348(以上いずれもビックケミー株式会社製)等を挙げることができる。
【0059】
本発明で用いるインクにおいては、これら前記の浸透剤を、1種で又は2種以上を組み合わせて、使用することができる。
【0060】
特に、前述のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが繰り返し単位10以下のアルキレングリコールであって、炭素数3〜10のアルキルエーテルであることが好ましい。その中でも、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエ−テル、及び/又は(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルであることが好まく、前述の1,2−アルキレングリコールが1,2−ヘキサンジオール、及び/又は1,2−ペンタンジオールであることが好ましい。
【0061】
また、前述のジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上からなる物質の添加量が0.5%以上30%以下であることが好ましい。0.5%未満では浸透性の効果が低く印字品質が向上しない。30%を超えると粘度上昇により使いづらくなり、それ以上添加しても印字品質向上の効果がない。より好ましくは1%以上15%以下である。
【0062】
そして、少なくとも前述のアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤から選ばれた1種以上と、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上を同時に添加することが印字品質上好ましい。
【0063】
そして、前述のアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤から選ばれた1種以上が0.01〜1.0%で、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上が1%以上であることが好ましい。アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤から選ばれた1種以上は少量で浸透性を向上させる効果がある。従って、1.0%以下の添加量であっても、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上は1%以上添加されていることで印字品質がさらに向上する。
【0064】
前述の1,2−アルキレングリコールが炭素数4〜10の1,2−アルキレングリコールであり、添加量が10%以下であることが好ましい。10%を超えると粘度上昇によりインクジェット用としては使いづらくなり、それ以上添加しても印字品質向上の効果がない。しかし、筆記具用としてはこれに限定されない。より好ましくは1%以上8%以下である。
【0065】
又、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテルとはジエチレングリコールモノブチルエーテルおよび/またはトリエチレングリコールモノブチルエーテルを示すが、印字品質改良のための浸透性の必要レベルとして、20%以下の添加が好ましい。20%を超えると印字品質向上の効果が頭打ちであり、逆に粘度上昇の弊害が生じる。より好ましくは0.5〜10%である。
【0066】
本発明で用いるインクにおいては、前記浸透剤の助剤として、インクの浸透性を制御し、更にノズルの耐目詰まり性、インクの保湿性、あるいは浸透剤の溶解性を向上する目的で前述もしくは他の界面活性剤、並びに、高沸点低揮発性の多価アルコール類、あるいはそれらのモノエーテル化物、ジエーテル化物、若しくはエステル化物等の親水性高沸点低揮発性溶媒等を、1種で又は2種以上を組み合わせて、使用することができる。
【0067】
インクジェットのノズル面やペン先で乾燥を抑えるために水溶性のあるグリコール類としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、チオジグリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、及び、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンチオール等がある。
【0068】
又、本発明においてはノズル前面でインクが乾燥して詰まることを抑制するために、多くの種類の糖類を用いることもできる。単糖類および多糖類があり、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の他にアルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類を用いることができる。そしてその添加量は0.05%以上で30%以下がよい。0.05%未満ではインクがヘッドの先端で乾燥して詰まる目詰まり現象を回復させる効果は少なく、30%を超えるとインクの粘度が上昇して適切な印字ができなくなる。一般的な糖類である単糖類および多糖類のグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等のより好ましい添加量は3〜20%である。アルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類はインクにしたときの粘度が高くなり過ぎない程度の添加量にする必要がある。加えて、これらの糖類をインクに添加する場合は、微生物がインク中に発生する可能性が少なからず高まるので、その対策として防腐剤等をインクに添加することが必要となる。
【0069】
その他に水と相溶性を有し、インクに含まれる水との溶解性の低いグリコールエーテル類やインク成分の溶解性を向上させ、さらに被記録体たとえば紙に対する浸透性を向上させ、あるいはノズルやペン先の目詰まりを防止するために用いることのできるものとして、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1から4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホランなどがあり、これらを適宜選択して使用することができる。
【0070】
又、pH調整剤、溶解助剤あるいは酸化防止剤としてジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類およびそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、4級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸(水素)カリウム、炭酸(水素)ナトリウム、炭酸(水素)リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩など、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸およびその塩などを挙げることができる。
【0071】
pH調整剤は、ヘッド部材の耐久性とインクの安定性の観点から、インクのpH値が約7〜10になる量であることが好ましい。
【0072】
又、本発明の顔料分散液、これを含有するインクは、必要に応じて、その他の添加剤、例えば、防カビ剤、防腐剤、又は防錆剤として、安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベゾチアゾリン−3−オン、3,4−イソチアゾリン−3−オン、もしくは4,4−ジメチルオキサゾリジン等のオキサゾリジン系化合物、あるいはアルキルイソチアゾロン、クロルアルキルイソチアゾロン、ベンズイソチアゾロン、ブロモニトロアルコールおよび/またはクロルキシレノール等を含むことができる。更に、ノズル乾燥防止の目的で、尿素、チオ尿素、及び/又はエチレン尿素等を含むこともできる。
【0073】
又、本発明になるインクにはさらに紙や特殊紙等の媒体への浸透性を制御するため、他の界面活性剤を添加することも可能である。添加する界面活性剤は本実施例に示すインク系との相溶性のよい界面活性剤が好ましく、界面活性剤のなかでも浸透性が高く安定なものがよい。その例としては、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などがあげられる。両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体などがある。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などの含フッ素系界面活性剤などがある。
【0074】
又、その他の市販の酸化防止剤、紫外線吸収剤なども用いることができる。その例としてはチバガイギー社のTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024など、あるいはランタニドの酸化物などがある。
【0075】
更に粘度調整剤としては、ロジン類、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、アラビアゴムスターチなどを必要に応じて用いることでできる。
【0076】
本発明におけるインクの諸物性は適宜制御することができるが、好ましい態様によれば、インクの粘度は10mPa・秒以下であるのが好ましく、より好ましくは5mPa・秒以下(20℃)である。この粘度範囲のインクは、インク吐出ヘッドから安定に吐出される。また、インクの表面張力も適宜制御することができるが、25〜50mN/m(20℃)であるのが好ましく、より好ましくは30〜40mN/m(20℃)である。
【0077】
本発明におけるインクのゼータ電位は、分散体濃度が0.001〜0.01重量%になるようにイオン交換水で希釈した希釈液として測定した場合の、20℃、pH8〜pH9における分散体のゼータ電位の絶対値が40mV以上であることが好ましい。より好ましくは45mV以上であり、更により好ましいゼータ電位の絶対値は50mV以上である。ゼータ電位の絶対値が20mV以下の分散体の場合、インクの保存安定性が低下する。
(作用)
本発明によるインクカートリッジを開発する過程で本発明者らは以下の知見を得た。但し、本発明は以下の推論によって限定されるものではない。
【0078】
本発明のインクカートリッジに用いるインクは、着色剤である分散体の分散ポリマー中の芳香環量がポリマーの20%以上であることにより、疎水性の表面を有する顔料に好適に吸着することが可能となる為、顔料から脱離し難くなる。
【0079】
さらにこのような分散体を着色剤とした本発明の水性インクは、従来から使用されていた親水性の高い分散樹脂を使用したインクと比較して、記録紙表面に留まりやすく、したがって印字物は非常に高い印字濃度を有する特性を有するものとなった。
【0080】
高い印字濃度を得られるその理由は明確には分かっていないが、インクが記録ヘッドより吐出され、記録媒体である紙に着弾した瞬間に、着色剤である分散体が速やかに凝集して紙上に残る為だと推定される。
【0081】
従って、前述のようなインク貯蔵容器としてのカートリッジと収納されるインクによる本発明のインクカートリッジは、高濃度でにじみない画像を形成できるインクを、高速に印字する記録ヘッドに対して、安定的に供給できることが可能となる。
【0082】
さらに本発明者らは、上記のインクカートリッジを開発する過程で、インクカートリッジ内に収容されるインクの液性成分中の多価のカチオン量が一定量を越えると、保存時においてインクの物性値変動(保存安定性の低下)が生じたり、インクカートリッジをインクジェット記録装置に装着して印刷する場合に、インクジェット記録ヘッドからの吐出特性が低下することを確認した。
【0083】
これは恐らく、本発明のインクカートリッジに用いるインクは、前述のように高い印字濃度を得られる特性を有している反面、インク中に存在する多価のカチオンのような電荷イオンの影響を受けやすくなっている為とも考えられる。
【0084】
本発明者らはインクカートリッジに収容されるインク中の多価のカチオン量を一定値以下に抑えることで上述のような特性の低下を防ぐことに成功した。
【0085】
即ちインクカートリッジ内に収容されているインクの液性成分中に存在する多価のカチオンの総量が500ppm越えると吐出不良等が発生しやすくなり、300ppm以下であれば、吐出特性、保存安定性共に良好であることを本発明者らは発見し、本発明に至った。
【0086】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0087】
<カートリッジの実施例>
まず、本発明のインクカートリッジにおいてインクの収納容器であるカートリッジの構造について詳細な図示した実施例に基づいて説明する。
【0088】
図1は、本発明によるインクカートリッジの一実施例として、ブラックインクカートリッジの一実施例を示すものであって、カートリッジ1は、ほぼ直方体状をなし、インク収容室60(図3、4)を形成する容器本体2と、容器本体2の開口部を封止する蓋体3とから構成されていて、容器本体2の一側面、この実施例では下面2aに記録ヘッドに連通するインク供給部材と係合するインク供給口4が形成されている。インク供給口4は、インクカートリッジ1の長手方向の一方の面に偏するように形成されている。
【0089】
なお、本実施例では、インク供給口4が形成されている近傍の他の面、好ましくはインク供給部材52の挿通方向に平行な面には、インクカートリッジ1を特定するための情報を格納した回路基板6が固定されている。
【0090】
インク供給口4には、使用が開始されるまでの間、カートリッジ1に大気が侵入したり、またインクが外部に漏洩するのを防止するために封止用のシール材7が貼着されている。また、容器本体2の回路基板6が設けられた側壁の上部には記録装置のカートリッジホルダへの着脱を支援する突起10が形成されている。
【0091】
図2は、本発明によるインクカートリッジの一実施例として、カラーインクカートリッジ20の一実施例を示すものであって、ブラックインクカートリッジと同様に、ほぼ直方体状をなし、複数のインク室を形成する容器本体21と、容器本体21の開口部を封止する蓋体22とから構成されていて、容器本体21は、隔壁により前述の複数のインク室23〜27、この実施例では5つに分割され、下面21aに記録ヘッドに連通するインク供給部材と係合するインク供給口28〜32が各インク室に連通させて形成されている。インク供給口28〜32は、インクカートリッジ20の長手方向の一方の面に偏するように形成されている。
【0092】
また本実施例においても、インク供給口28〜32が形成されている近傍の他の面には、インクカートリッジ20を特定するための情報を格納した回路基板34が固定されている。
【0093】
インク供給口28〜32には、使用が開始されるまでの間、カートリッジ20に大気が侵入したり、またインクが外部に漏洩するのを防止するために封止用のシール材35が貼着されている。また、容器本体21の回路基板34が設けられた側壁の上部には記録装置のカートリッジホルダへの着脱を支援する突起36、36が形成されている。
【0094】
図3は、本発明のインクカートリッジの断面構造を示す一実施例であって、記録ヘッド50から作用する負圧よりは小さく、かつインクの水頭による漏れ出しを防止できる程度の毛細管力を発現する多孔質体70が、フィルタ71を介装してインク室収容室60(23〜27)に収容されている。
【0095】
フィルタ71は、多孔質体70の毛細管力よりも強い毛細管力を有し、かつ記録ヘッド50からの負圧よりは低い毛細管力を備えた板状の多孔質体や、メッシュ材により構成されていることが好ましい。
【0096】
また多孔質体70と、蓋体3、22の裏面に離散的に形成されたリブ72により蓋体3、22との間に空間が形成される。またリブ72とインク供給口4のインク収容室側に突出する凸状部分とで多孔質体70を圧縮することにより、多孔質体70の毛細管力は、インク供給口4の近傍で高くなるようにコントロールされる。
【0097】
このような毛細管力によりインクを吸収保持する多孔質体としては、インク保持力及び負圧発生力の調整が容易なスポンジ状のポリウレタンフォーム等が好ましい。ポリウレタンフォームは製造時に所望の多孔質密度となるように調整しやすい点からも好ましい。
【0098】
ポリウレタンフォームは、例えば、ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートを、少なくとも触媒と発泡剤の存在下で反応させて得ることができる。ポリエーテルポリオールとしては、一般に公知のポリエーテルポリオールを広く用いることができ、分子量が約1000〜10000で、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン、若しくはエチレンジアミン等のポリヒドロキシ化合物と、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等との反応によって得ることができる。具体例としてはグリセリンベース・ポリプロピレングリコール等を挙げることができる。一般的にウレタンフォームを製造するのに用いるポリオールとしては、その他にもポリエステルポリオール等を挙げることができるが、本発明においては多孔質体がインクと直接触れるので、インクがアルカリ性でも酸性でも劣化の少ないポリエーテルポリオールがより好ましい。
【0099】
ポリイソシアネートとしては、2個以上のイソシアネート基を同一分子中にもつ芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、又はこれらの変性物を用いることができ、具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。また、発泡剤としては、広く一般に用いられている発泡剤、例えば、水、空気、窒素、ペンタン、塩化メチレン、又はニトロアルカン等を用いることができる。その他、ウレタンフォームの製造において通常使用されている添加剤、例えば、シリコーン油等の整泡剤や、ポリエーテルシロキサン等のセルオープン剤等を必要に応じて用いることもできる。
【0100】
インクカートリッジの多孔質体として使用するフォームとしては、インク保持力を高めるために、酸素と水素の混合ガス等を用いてセル間に生成した膜状物質を溶膜処理してから用いることもでき、インク保持の観点から、そのセル数は20〜60個/インチの範囲が好ましい。セル数が多すぎると保持することのできるインク量が減り、しかもセルの毛細管現象が強く働くために有効インク量が少なくなり好ましくない。逆にセル数が少なすぎる場合には、そのままでは毛細管現象が働かず、またインク保持体を圧縮して使用してもインク保持体におけるセルの大きさが均等になり難く、多孔質体内に均一にインクを保持することが困難となり、いずれも好ましいものではない。
【0101】
なお、フォームを加熱処理をしてさらに多孔質密度を調整した場合には、加熱による分解物が発生し、特に本発明のインクカートリッジに用いるインクに使用するような場合には、インク物性を変化させ記録品位に悪影響を及ぼす場合があるが、このような場合にはカートリッジに収納する前に予め洗浄等の前処理が必要となる。
【0102】
図4は、ブラックインクカートリッジに例を採って、キャリッジに装着された状態の断面図であって、インクカートリッジ1は、記録ヘッド50を固定するキャリッジ51の所定位置に搭載されたとき、記録ヘッド50に連通するインク導入部材52はインク供給口4を介して液密に結合してインク室60に連通する。
【0103】
このインク導入部材52は、先端にテーパ部が形成された筒状体として構成されていて、インク供給口4に対して容易に着脱でき、またインク供給口4に装着された場合には後述する断面円形のパッキン61により確実に封止できるように構成されている。
【0104】
パッキン61は、図5に示したようにその通孔の外側先端部、及び中央部の内周面にインク導入部材52を案内するテーパ部62が形成され、またインク室側には円筒状の嵌合部63が形成されている。パッキン61の上面は、バネ64により常時付勢され、インク導入部材52が図4に示したように規定の位置まで挿通されたとき開弁する弁体65により封止されている。
【0105】
この実施例において、インクカートリッジ1をカートリッジホルダ53に装填して、レバー54を降下させて図4に示すように規定の位置に押し下げると、インク導入部材52の先端がインク供給口4を封止しているシール材7を貫通して弁体65を開弁してインク収容室60が記録ヘッド50に連通し、またホルダ53に形成され、かつカートリッジの挿入方向に対して垂直な方向に弾性を有する接点40を介して回路基板6が図示しない制御手段に接続される。
【0106】
回路基板6、34は、図6(イ)、(ロ)に示したようにインクカートリッジ1、20に取付けられたとき表面となる側に、記録装置のカートリッジホルダに形成された接点40とのコンタクトを形成する電極42、43が形成され、また裏面には半導体記憶手段44がアクセス可能に実装されている。
【0107】
半導体記憶手段44は、電気的に書換え可能な不揮発性メモリ等により構成され、カートリッジ1、20を特定するためのシリアル番号、カートリッジに収容されているインクの量、さらには必要に応じて製品の出所を明確にする商標に関するデータ等が工場出荷時に予め書き込まれ、またユーザによるインク消費量に関するデータの書込みが可能な領域を確保するように構成することができる。
【0108】
従って、図4の状態で、印刷が開始されて記録ヘッド50によりインクが消費されると、記録装置の図示しないマイクロコンピュータ等の制御手段によりインク滴の吐出数がカウントされてインク消費量が算出され、適宜のタイミングで接点40を介して回路基板6の半導体記憶手段44に書き込まれる。
【0109】
上述したインクカートリッジ1、20にあっては、交換のためにキャリッジ51から取り外されると、インク供給部材52との接続が断たれる時点で、弁体65がインク供給部材52による支持を失って図5に示したようにバネ64によりパッキン61に弾圧される。これにより、インク室60のインクの流失や、またインク供給口4からのインク室60への空気の流入が阻止される。
【0110】
このようにキャリッジ51から一時的にカートリッジが取り外されても、半導体記憶手段44にはインク消費量に関するデータが格納されているから、再装着した段階で半導体記憶手段44のデータを読出すことにより、当該カートリッジに残っているインク量を正確に把握してインクエンドを検出することができる。
【0111】
また、蓋体3、22には、それぞれのインク室60、23〜27に独立して連通するインク注入口73、74、74、74、‥‥と、蓋体3、22の裏面側に形成された空間に連通する大気連通孔75、76、76、76、‥‥が穿設され、また表面には後述するフィルムによる封止部分が流路抵抗体となる大気連通流路77、78が図7(イ)、(ロ)に示すようにそれぞれの大気連通孔75、76に独立するように形成されている。大気連通流路77、78の一端は大気連通孔75、76に、また他端はフィルムの剥離により大気に開放する大気開放口79、80に連通されている。
【0112】
このように構成されたカートリッジは、インク供給口4を必要に応じてフィルムにより封止してから、インク注入口73、74に中空のインク供給管を、また大気連通孔75、76に吸引管を挿入し、インク室60、23〜27を減圧した状態でインク供給管からインクが注入される。
【0113】
このようにインク収容室60、23〜27が負圧に維持されてインク供給口の空間やまた多孔質体70の空気が排除された状態でインクが充填されるため、インク室60、23〜27の残留空気が非常に少ない状態で、かつ多孔質体70の空気によるインク未充填領域を残すことなくインクを充填することができる。
【0114】
インクの充填が終了した時点で、必要に応じてカートリッジを負圧室に収容してさらに減圧した状態で、図8(イ)、(ロ)に示したように蓋体3、22の表面にフィルム81、82を貼着してインク室を大気から遮断して製品として出荷する。なお、必要に応じて遮気性の高いフィルムからなる袋に減圧封入してもよい。
【0115】
このように構成されたインクカートリッジは、記録装置に装填する直前にフィルムの剥離領域に形成された舌片81a,82aから一部が剥離されて、大気連通孔79、80が開放される。これによりインク室60、23〜27は大気連通流路77、78とフィルム81、82により形成された流路抵抗が高いキャピラリを介して大気に連通する。
【0116】
この状態で記録ヘッドに装填されて印刷が実行されると、記録ヘッド50の負圧により多孔質体70のインクが吸引され、フィルタ71により気泡等を除去されてから記録ヘッド50に流れて印刷に供される。
【0117】
また、インクの種類を変えるためにキャリッジ51からインクカートリッジ1、20が取り外されると、インク供給部材52との接続が断たれる時点で、弁体65がインク供給針52による支持を失って図5に示したようにバネ64によりパッキン61に弾圧される。これにより、インク室60のインクの流出や、またインク供給口4からのインク収容室60への空気の流入が阻止される。
【0118】
そしてこの実施例においては、インク収容室60、23〜27にインクを吸収保持する多孔質体70や、またインク供給口の近傍に多孔質体70よりも毛細管力が高いフィルタ71が配置されているため、たとえ弁体65の封止力が低下してもインクは、大気連通流路77、78とフィルム81、82との流路抵抗と、多孔質体70やフィルタ71による毛細管力に保持されて外部に漏出するのを防止される。そればかりでなく、パッキン61はインク収容室60、23〜27側にインク供給部材52の挿入により拡開可能で、かつ縮小時にはインクを保持できる毛細管力を発現するスリットだけを形成し、弁体65による封止を排除した構成を採用することができる。これによれば、カートリッジ1、20がインク供給部材52から引き抜かれた場合にでも、パッキン61の弾性によりスリットが毛細管力を発現できる程度に縮小し、しかもインクが多孔質体70や、フィルタ71による毛細管力に保持されるから、外部に漏出するのを防止できることになる。また、インク供給部材から抜かれた状態においても、インク室は蓋体に形成されているキャピラリを介して大気に連通しているため、インクの蒸発が最小限に抑制され、記録ヘッドに装着されている状態で記憶手段に格納されたインク量やインク消費量の精度を維持することができる。
【0119】
なお、上述の実施例においては、インク室全体に多孔質体70を充填しているが、図9に示したようにインク収容室60を下部に連通孔83aが形成された壁83により分割し、インク供給口側の領域に多孔質体84を装填し、他方の領域をインク溜めとして構成しても同様の作用を奏する。
【0120】
さらに、上述のごとくに構成されたインクカートリッジは、リフィール手段にインク供給部材52と同等の機能を備えた接続手段を設けておくことにより、インク供給口4に挿入すれば、弁体65を簡単に開弁させることができ、リサイクルすることができる。そして、回路基板6の半導体記憶手段44にリフィールの回数等を格納する領域を設けておくことにより、インクカートリッジとしての信頼性を損なうことなく、容易にリサイクル製品を提供することができる。
【0121】
なお、以上はポリプロピレンを素材として成形したインクカートリッジの例によって本発明を説明したものであるが、これ以外に、高密度ポリエチレンのような不透湿性の軟質合成樹脂材により成形するインクカートリッジにも本発明を適用することができる。カートリッジの外形については、プリンタのキャリッジ形状に合わせて成形することで、様々なインクジェット記録装置に使用することができる。
【0122】
図10は、本発明のインクカートリッジが適用可能なインクジェット記録装置の一実施例を示す概略図である。
【0123】
図10において、駆動モータ101とタイミングベルト102により接続されて往復動可能なキャリッジ51の上面にカートリッジホルダ53が配置されている。
【0124】
キャリッジ51の下面には、インクジェット式の記録ヘッド50が記録紙103に対向するように装着され、キャリッジ51の上面に設置されたカートリッジホルダ53に前述のインクカートリッジ1、20を着脱可能に装着することで、インク供給部材52を介して前記記録ヘッド50にインクが供給される。
【0125】
また、前記キャリッジ51の移動領域における非印字領域には、キャッピング手段104が配置されている。そして、前記記録ヘッド50が直上に移動したときに上昇し、記録ヘッド50のノズル形成面を封止し得るように構成されている。
【0126】
このキャッピング手段104の下方には、前記キャッピング手段104の内部空間に負圧を与えるためのポンプユニット105が配置されており、負圧を記録ヘッド50に作用させてインクを吸引するクリーニング手段としての機能を有する。
【0127】
このような構成により、新しくインクカートリッジ1、20がホルダ53に装着されると、制御手段106がキャリッジ51を移動させて記録ヘッド50をキャッピング手段104に封止させ、吸引ポンプユニット105を作動させる。これにより、記録ヘッド50を介してインクカートリッジのインクがキャッピング手段104に吸い出されて記録ヘッド50にインクが充填される。
【0128】
インクの充填が終了して外部から印刷データを入力すると、制御手段106はキャリッジ51を往復移動させながら印刷データに対応して記録ヘッド50から記録用紙103にインク滴を吐出させて印刷を実行する。
【0129】
また、前記キャッピング手段104における印字領域側部の近傍には、ゴムなどの弾性板を備えるワイピング手段107が水平方向に進退可能となるように配置されており、制御手段106がキャリッジ51をキャッピング手段104側において往復移動する際に、記録ヘッド50の移動経路上にワイピング手段107を進出させ、記録ヘッド50のノズル形成面のワイピングを実施する。
(芳香環量、顔料:ポリマー比、平均粒径、多価のカチオン量、及び表面張力の測定方法)
【0130】
以下の実施例、又は比較例で得られた各測定値(芳香環量、顔料:ポリマー比、平均粒径、多価のカチオン量、表面張力)は、次に示す方法で測定した。
【0131】
「芳香環量の測定」
各実施例、又は比較例で得た分散ポリマー溶液の一部を取り出し、溶媒成分を留去してポリマー成分のみを取り出し、DMSO−dに溶解させ、13C−NMR及びH−NMR(ブルカー社(ドイツ)製AMX400)を使用して、ポリマー中の芳香環量を測定した。
【0132】
「顔料:ポリマー比の測定」
各実施例、又は比較例で得た分散液の一部を取り出し、0.1mol/l濃度HClを添加して分散体のみを酸析後、乾燥重量を測定した。次に、アセトンを用いたソックスレー抽出法で分散ポリマーのみを取り出し、乾燥重量を測定することで、顔料:ポリマーの重量比を算出した。
【0133】
「平均粒径の測定」
各実施例、又は比較例で得た水性インクの分散体濃度が0.001〜0.01重量%に(インクにより測定時の最適濃度が若干異なる為)なるようにイオン交換水で希釈し、その分散粒子の20℃における平均粒径を粒度分布計(大塚電子社製DLS−800)で測定した。
【0134】
「多価のカチオン量の測定」
各実施例、又は比較例で得た水性インクを必要量取り出し、遠心限外濾過装置(C−15;ミリポア社)によって遠心分離処理した。フィルタとしては、タイプNMWL10000を使用し、遠心条件は、2500G×60分とした。得られた濾液をイオンクロマトグラフ法(カラム ionPac AS12A;日本ダイオネクス社DX−500)により多価のカチオン量を測定した。
【0135】
「表面張力の測定」
各実施例、又は比較例で得た水性インクの20℃の表面張力を表面張力計(協和界面科学社製CBVP−A3)で測定した。
【0136】
<実施例1>
(1)分散液の製造:分散液A1
本実施例1に用いる分散液A1の製造には無機顔料であるカーボンブラック顔料のカラーブラックFW18(デグサ株式会社製)を用いた。
まず、攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、メチルエチルケトン15部、スチレン21部、α−メチルスチレン5部、ブチルメタクリレート16部、ラウリルメタクリレート10部、アクリル酸2部、t―ドデシルメルカプタン0.3部を入れて70℃に加熱し、別に用意したスチレン100部、アクリル酸15部、ブチルメタクリレート50部、t−ドデシルメルカプタン1部、メチルエチルケトン20部およびアゾビスイソブチロニトリル3部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させた。次に、反応容器にメチルエチルケトンを添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成した。
【0137】
この分散ポリマー溶液の一部と取り出し、溶媒成分を留去後、全重量に対する芳香環の割合を前述の「芳香環量の測定」に記載の方法で測定したところ、分散ポリマー全重量に対する芳香環量は59%であった。
【0138】
上記分散ポリマー溶液40部とカーボンブラック顔料であるカラーブラックFW18(デグサ社製)30部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン35部を混合し、ホモジナイザーで30分以上分散処理し、イオン交換水を350部添加して、さらに1時間分散する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去後、水を適宜加えながら、限外濾過システムのミリタン(ミリポア社製)による分画分子量10万の限外濾過を実施した。最後に、イオン交換水、及び中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら適宜加えてpH7.5に調整してから、平均孔径5μmのメンブランフィルタで濾過することで、分散体A1(カーボンブラック顔料を芳香環量が59%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液1を得た。
【0139】
表1に分散液A1に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、顔料:ポリマー比については前記「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0140】
(2)インクの調整
本実施例1では、前記実施例1(1)で得た分散液A1、アセチレングリコール系界面活性剤であるオルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるジエチレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2−アルキレングリコールである1,2−ペンタンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0141】
なお、インクの調整では分散体A1の含有量が8.0%となるように分散液A1を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A1の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0142】
また、下記本実施例1のインク組成中の「残量」として添加されるイオン交換水には、インクの腐食防止のためプロキセルXL−2、インクジェットヘッド部材の腐食防止のためベンゾトリアゾール、及びインク系中の金属イオンの影響を低減するためにEDTA・2Na塩を、それぞれインク全重量に対して0.01%、0.01%、0.02%となるように添加したものを用いた。
【0143】
分散体A1<120> 8.0%
オルフィンE1010 0.5%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0%
1,2−ペンタンジオール 2.5%
ジエチレングリコール 3.0%
グリセリン 11.5%
トリメチロールプロパン 6.0%
トリプロパノールアミン 0.3%
イオン交換水 残量
【0144】
(3)インクジェットカートリッジの製造
前記実施例1(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図1で説明したカートリッジに注入することで、本実施例1に使用するインクカートリッジを得た。
【0145】
なお、カートリッジの各部材は、予め良く洗浄して、製造時に残留したイオン性物質や反応副生成物等の不純物を除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0146】
(4)多価のカチオン量の測定
前記実施例1(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「多価のカチオン量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク液性成分中の多価のカチオンの総量は257ppmであった。なお、測定結果の詳細を表3に示す。
【0147】
(5)印字評価
印字画像評価には圧電素子(ピエゾ素子)を使用したインクジェットヘッドによりインクを吐出するインクジェットプリンタPM−870C(セイコーエプソン株式会社製)に、前記実施例1(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、評価紙として、ヨーロッパ、アメリカおよび日本の市販されている普通の紙として(a)Conqueror紙、(b)Reymat紙、(c)Mode Copy紙、(d)Rapid Copy紙、(e)Xerox P紙、(f)Xerox 4024紙、(g)Xerox 10紙、(h)Neenha Bond紙、(i)Ricopy 6200紙、及び(j)Hammer millCopy Plus紙を使用した。
【0148】
なお、評価は目視により行い、以下の評価基準に基づいておこなった。
【0149】
A:全てのポイントの文字において、にじみがわからない。
【0150】
B:5ポイント以下の文字で、わずかににじみが認められる(実用レベル)。
【0151】
C:にじみのため、5ポイント以下の文字が太く見える。
【0152】
D:にじみが著しく、5ポイント以下の文字が判別できない。
【0153】
印字評価の結果を表2に示す。
【0154】
(6)吐出安定性評価
前記実施例1(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、A4版Xerox P紙に200ページ連続印字して、印刷の乱れ具合を観察することで吐出安定性を評価した
なお、評価は目視により行い、以下の評価基準に基づいておこなった。
【0155】
A:全く印刷乱れが発生しない。
【0156】
B:印刷乱れが見られたが10箇所未満である(実用レベル)。
【0157】
C:10箇所以上100箇所未満の範囲で印刷乱れがある。
【0158】
D:100箇所以上印刷乱れが発生した。
【0159】
吐出安定性評価の結果を表3に示す。
【0160】
(7)保存安定性評価
前記実施例1(3)で製造したインクカートリッジを、それぞれ60℃/1週間、−20℃/1週間放置して、放置前後におけるカートリッジ内のインクの発生異物と物性値変動(粘度、表面張力)について評価した。
【0161】
なお、評価は以下の評価基準に基づいておこなった。
【0162】
A:60℃あるいは−20℃放置後の異物量・物性値と放置前のそれとの比が、0.99〜1.01の範囲内である。
【0163】
B:比が0.95〜0.99、あるいは1.01〜1.05の範囲内である(実用レベル)。
【0164】
C:比が0.90〜0.95、あるいは1.05〜1.10の範囲内である。
【0165】
D:比が0.90未満、あるいは1.10より大きい。
【0166】
保存安定性評価結果を表3に示す。
【0167】
<実施例2>
(1)分散液の製造:分散液A2
本実施例2に用いる分散液A2の製造には、有機顔料である不溶性モノアゾイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)を用いた。
【0168】
まず、攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、スチレン12部、ラウリルメタクリレート9部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(NKエステルM90G;新中村化学株式会社製)15部、イソブチルメタクリレートマクロマー(AW−6S;東亜合成株式会社製)5部、メタクリル酸3部、メチルエチルケトン5部、メルカプトエタノール0.3部を入れて70℃に加熱し、別に用意したスチレン25部、ラウリルメタクリレート30部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(NKエステルM90G;新中村化学株式会社製)15部、イソブチルメタクリレートマクロマー(AW−6S;東亜合成株式会社製)15部、メタクリル酸10部、メチルエチルケトン20部、メルカプトエタノール1.0部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させた。次に、反応容器にメチルエチルケトンを適宜添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成した。
【0169】
この分散ポリマー溶液の一部と取り出し、溶媒成分を留去後、全重量に対する芳香環の割合を前述の「芳香環量の測定」に記載の方法で測定したところ、分散ポリマー全重量に対する芳香環量は25%であった。
【0170】
上記分散ポリマー溶液40部と有機顔料である不溶性モノアゾイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)30部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン40部を混合し、ホモジナイザーで30分以上分散処理し、イオン交換水を380部添加して、さらに1時間分散する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去後、水を適宜加えながら、限外濾過システムのミリタン(ミリポア社製)による分画分子量10万の限外濾過を実施した。最後に、イオン交換水、及び中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら適宜加えてpH7.5に調整してから、平均孔径5μmのメンブランフィルタで濾過することで、分散体A2(不溶性モノアゾイエロー顔料を芳香環量が25%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液A2を得た。
【0171】
表1に分散液A2に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
(2)インクの調整
本実施例2では、前記実施例2(1)で得た分散液A2、アセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノール440(エアープロダクツ株式会社製)とオルフィンSTG(日信化学工業株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるトリエチレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2−アルキレングリコールである1,2−ペンタンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0172】
なお、インクの調整では分散体A2の含有量が7.0%となるように分散液A2を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A2の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0173】
また、下記本実施例2のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
【0174】
分散体A2<120> 7.0%
サーフィノール440 0.2%
オルフィンSTG 0.2%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0%
1,2−ペンタンジオール 2.0%
2−ピロリドン 3.0%
グリセリン 13.5%
トリメチロールエタン 5.0%
トリエタノールアミン 0.1%
イオン交換水 残量
【0175】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例2(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図2で説明したカートリッジに注入することで、本実施例2に使用するインクカートリッジを得た。
【0176】
なお、カートリッジの各部材は、予め良く洗浄して、製造時に残留したイオン性物質や反応副生成物等の不純物を除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0177】
(4)多価のカチオン量の測定
前記実施例2(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「多価のカチオン量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク液性成分中の多価のカチオンの総量は196ppmであった。なお、測定結果の詳細を表3に示す。
【0178】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタPM−870C(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記実施例2(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0179】
(6)吐出安定性評価
前記実施例2(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0180】
(7)保存安定性評価
前記実施例2(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0181】
<実施例3>
(1)分散液の製造:分散液3
本実施例3に用いる分散液A3の製造には、有機顔料であるキナクリドンレッド顔料(C.I.ピグメントレッド122)を用いた。
【0182】
まず、攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、スチレン12部、スチレンマクロマー(AS−6;東亜合成株式会社製)6部、n−ドデシルメタクリレート3.5部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート12部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(NKエステルM40G;新中村化学株式会社製)25部、メチルエチルケトン5部、メルカプトエタノール0.3部を入れて70℃に加熱し、別に用意したスチレン15部、スチレンマクロマー(AS−6;東亜合成株式会社製)8部、n−ドデシルメタクリレート7部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート20部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(NKエステルM40G;新中村化学株式会社製)30部、メチルエチルケトン50部、アゾビスイソブチロニトリル1.5部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させた。次に、反応容器にメチルエチルケトンを適宜添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成した。
【0183】
この分散ポリマー溶液の一部と取り出し、溶媒成分を留去後、全重量に対する芳香環の割合を前述の「芳香環量の測定」に記載の方法で測定したところ、分散ポリマー全重量に対する芳香環量は38%であった。
【0184】
上記分散ポリマー溶液40部と有機顔料であるキナクリドンレッド顔料(C.I.ピグメントレッド122)25部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン40部を混合し、ホモジナイザーで30分以上分散処理し、イオン交換水を380部添加して、さらに1時間分散する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去後、水を適宜加えながら、限外濾過システムのミリタン(ミリポア社製)による分画分子量10万の限外濾過を実施した。最後に、イオン交換水、及び中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら適宜加えてpH7.5に調整してから、平均孔径5μmのメンブランフィルタで濾過することで、分散体A3(キナクリドンレッド顔料を芳香環量が38%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液A3を得た。
【0185】
表1に分散液A3に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0186】
(2)インクの調整
本実施例3では、前記実施例3(1)で得た分散液A3、アセチレングリコール系界面活性剤であるオルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)とサーフィノール104PG50(エアープロダクツ株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるトリエチレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2―アルキレングリコールである1,2−ヘキサンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0187】
なお、インクの調整では分散体A3の含有量が7.5%となるように分散液A3を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A3の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0188】
また、下記本実施例3のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
【0189】
分散体A3<140> 7.5%
オルフィンE1010 0.1%
サーフィノール104PG50 0.4%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 1.0%
1,2−ヘキサンジオール 2.5%
トリエチレングリコール 2.0%
2−ピロリドン 4.0%
グリセリン 13.8%
トリメチロールプロパン 6.0%
イオン交換水 残量
【0190】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例3(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図2で説明したカートリッジに注入することで、本実施例3に使用するインクカートリッジを得た。
【0191】
なお、カートリッジの各部材は、予め良く洗浄して、製造時に残留したイオン性物質や反応副生成物等の不純物を除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0192】
(4)多価のカチオン量の測定
前記実施例3(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「多価のカチオン量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク液性成分中の多価のカチオンの総量は194ppmであった。なお、測定結果の詳細を表3に示す。
【0193】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタPM−870C(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記実施例3(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0194】
(6)吐出安定性評価
前記実施例3(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0195】
(7)保存安定性評価
前記実施例3(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0196】
<実施例4>
(1)分散液の製造:分散液A4
本実施例4に用いる分散液A4の製造には、有機顔料であるフタロシアニンブルー顔料(C.I.ピグメントブルー15:4)を用いた。
【0197】
まず、攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、スチレン20部、ラウリルメタクリレート9部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(NKエステルM90G;新中村化学株式会社製)15部、イソブチルメタクリレートマクロマー(AW−6S;東亜合成株式会社製)5部、スチレンマクロマー(AS−6;東亜合成株式会社製)10部、メタクリル酸5部、メチルエチルケトン5部、n−ドデシルメルカプタン0.3部を入れて70℃に加熱し、別に用意したスチレン25部、ラウリルメタクリレート30部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(NKエステルM90G;新中村化学株式会社製)20部、イソブチルメタクリレートマクロマー(AW−6S;東亜合成株式会社製)15部、スチレンマクロマー(AS−6;東亜合成株式会社製)15部、メタクリル酸5部、メチルエチルケトン20部、n−ドデシルメルカプタン1.5部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させた。次に、反応容器にメチルエチルケトンを添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成した。
【0198】
この分散ポリマー溶液の一部と取り出し、溶媒成分を留去後、全重量に対する芳香環の割合を前述の「芳香環量の測定」に記載の方法で測定したところ、分散ポリマー全重量に対する芳香環量は46%であった。
【0199】
上記分散ポリマー溶液40部と有機顔料であるフタロシアニンブルー顔料(C.I.ピグメントブルー15:4)40部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン40部を混合し、ホモジナイザーで30分以上分散処理し、イオン交換水を350部添加して、さらに1時間分散する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去後、水を適宜加えながら、限外濾過システムのミリタン(ミリポア社製)による分画分子量10万の限外濾過を実施した。最後に、イオン交換水、及び中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら適宜加えてpH7.5に調整してから、平均孔径5μmのメンブランフィルタで濾過することで、分散体A4(フタロシアニンブルー顔料を芳香環量が46%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液A4を得た。
【0200】
表1に分散液A4に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0201】
(2)インクの調整
本実施例4では、前記実施例4(1)で得た分散液A4、アセチレングリコール系界面活性剤であるアセチレノールE100(川研ファインケミカル株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるプロピレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2―アルキレングリコールである1,2−ヘキサンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0202】
なお、インクの調整では分散体A4の含有量が8.0%となるように分散液A4を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A4の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0203】
また、下記本実施例4のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
【0204】
分散体A4<100> 8.0%
アセチレノールE100 0.5%
プロピレングリコールモノブチルエーテル 3.0%
1,2−ヘキサンジオール 1.0%
トリエチレングリコール 3.0%
グリセリン 13.8%
トリメチロールプロパン 5.2%
トリプロパノールアミン 0.2%
イオン交換水 残量
【0205】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例4(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図2で説明したカートリッジに注入することで、本実施例4に使用するインクカートリッジを得た。
【0206】
なお、カートリッジの各部材は、予め良く洗浄して、製造時に残留したイオン性物質や反応副生成物等の不純物を除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0207】
(4)多価のカチオン量の測定
前記実施例4(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「多価のカチオン量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク液性成分中の多価のカチオンの総量は235ppmであった。なお、測定結果の詳細を表3に示す。
【0208】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタPM−870C(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記実施例4(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0209】
(6)吐出安定性評価
前記実施例4(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0210】
(7)保存安定性評価
前記実施例4(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0211】
<実施例5>
(1)分散液の製造:分散液A5
本実施例5に用いる分散液A5の製造には、ペリノンオレンジ顔料(C.I.ピグメントオレンジ43)を用いた。それ以外は、前記実施例4(1)に記載と同様の方法により、分散体A5(ペリノンオレンジ顔料を芳香環量が56%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液5を得た。
【0212】
表1に分散液A5に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0213】
(2)インクの調整
本実施例5では、前記実施例5(1)で得た分散液A5、アセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノール485とサーフィノールTG(いずれもエアープロダクツ株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2―アルキレングリコールである1,2−ペンタンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0214】
なお、インクの調整では分散体A5の含有量が10.0%となるように分散液A5を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A5の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0215】
また、下記本実施例5のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
【0216】
分散体A5<150> 10.0%
サーフィノール485 0.5%
サーフィノールTG 0.2%
ジプロピレングリコールモノブチルエーテル 2.0%
1,2−ペンタンジオール 2.0%
N−メチル−2−ピロリドン 5.0%
グリセリン 11.2%
トレハロース 5.8%
イオン交換水 残量
【0217】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例5(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図2で説明したカートリッジに注入することで、本実施例5に使用するインクカートリッジを得た。
【0218】
なお、カートリッジの各部材は、予め良く洗浄して、製造時に残留したイオン性物質や反応副生成物等の不純物を除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0219】
(4)多価のカチオン量の測定
前記実施例5(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「多価のカチオン量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク液性成分中の多価のカチオンの総量は250ppmであった。なお、測定結果の詳細を表3に示す。
【0220】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタPM−870C(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記実施例5(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0221】
(6)吐出安定性評価
前記実施例5(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0222】
(7)保存安定性評価
前記実施例5(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
<実施例6>
【0223】
(1)分散液の製造:分散液A6
本実施例6に用いる分散液A6の製造には、ベンズイミダゾロンブラウン顔料(C.I.ピグメントブラウン32)を用いた。それ以外は、前記実施例4(1)に記載と同様の方法により、分散体A6(ベンズイミダゾロンブラウン顔料を芳香環量が69%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液A6を得た。
【0224】
表1に分散液A6に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0225】
(2)インクの調整
本実施例6では、前記実施例6(1)で得た分散液A6、アセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノール420、及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルであるジエチレングリコールモノブチルエーテルを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0226】
なお、インクの調整では分散体A6の含有量が5.0%となるように分散液A6を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A6の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0227】
また、下記本実施例6のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
【0228】
分散体A6<140> 5.0%
サーフィノール420 0.1%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0%
1,6−ヘキサンジオール 2.0%
テトラエチレングリコール 5.5%
グリセリン 13.5%
トリエタノールアミン 0.5%
イオン交換水 残量
【0229】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例6(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図2で説明したカートリッジに注入することで、本実施例6に使用するインクカートリッジを得た。
【0230】
なお、カートリッジの各部材は、予め良く洗浄して、製造時に残留したイオン性物質や反応副生成物等の不純物を除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0231】
(4)多価のカチオン量の測定
前記実施例6(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「多価のカチオン量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク液性成分中の多価のカチオンの総量は266ppmであった。なお、測定結果の詳細を表3に示す。
【0232】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタPM−870C(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記実施例6(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0233】
(6)吐出安定性評価
前記実施例6(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0234】
(7)保存安定性評価
前記実施例6(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0235】
<実施例7>
(1)分散液の製造:分散液A7
本実施例7に用いる分散液A7の製造には、有機顔料であるとキナクリドンバイオレット顔料(C.I.ピグメントバイオレッド19)を用いた。それ以外は、前記実施例4(1)に記載と同様の方法により、分散体A7(キナクリドンバイオレット顔料を芳香環量が21%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液A7を得た。
【0236】
表1に分散液A7に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0237】
(2)インクの調整
本実施例7では、前記実施例7(1)で得た分散液A7、アセチレンアルコール系界面活性剤であるサーフィノール61とサーフィノールTG(いずれもエアープロダクツ株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるトリエチレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2アルキレングリコールである1,2−ペンタンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0238】
なお、インクの調整では分散体A7の含有量が6.0%となるように分散液A7を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A7の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0239】
また、下記本実施例7のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
【0240】
分散体A7<120> 6.0%
サーフィノール61 0.3%
サーフィノールTG 0.1%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 1.5%
1,2−ペンタンジオール 2.0%
ジエチレングリコール 2.0%
チオジグリコール 4.0%
グリセリン 12.6%
トリメチロールエタン 7.0%
イオン交換水 残量
【0241】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例7(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図2で説明したカートリッジに注入することで、本実施例7に使用するインクカートリッジを得た。
【0242】
なお、カートリッジの各部材は、予め良く洗浄して、製造時に残留したイオン性物質や反応副生成物等の不純物を除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0243】
(4)多価のカチオン量の測定
前記実施例7(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「多価のカチオン量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク液性成分中の多価のカチオンの総量は234ppmであった。なお、測定結果の詳細を表3に示す。
【0244】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタPM−870C(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記実施例7(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0245】
(6)吐出安定性評価
前記実施例7(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0246】
(7)保存安定性評価
前記実施例7(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0247】
<実施例8>
(1)分散液の製造:分散液A8
本実施例8に用いる分散液A8の製造には、有機顔料であるフタロシアニングリーン顔料(C.I.ピグメングリーン7)を用いた。それ以外は、前記実施例4(1)に記載と同様の方法により、分散体A8(フタロシアニングリーン顔料を芳香環量が30%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液A8を得た。
【0248】
表1に分散液A8に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0249】
(2)インクの調整
本実施例8では、前記実施例8(1)で得た分散液A8、アセチレングリコール系界面活性剤であるオルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)とサーフィノール104(エアープロダクツ株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2−アルキレングリコールである1,2−ペンタンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0250】
なお、インクの調整では分散体A8の含有量が8.0%となるように分散液A8を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A8の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0251】
また、下記本実施例8のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
【0252】
分散体A8<110> 8.0%
オルフィンE1010 0.3%
サーフィノール104 0.1%
ジプロピレングリコールモノブチルエーテル 1.0%
1,2−ペンタンジオール 3.0%
トリエチレングリコール 2.0%
チオジグリコール 4.0%
グリセリン 13.8%
トリメチロールプロパン 6.0%
トリエタノールアミン 0.1%
イオン交換水 残量
【0253】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例8(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図2で説明したカートリッジに注入することで、本実施例8に使用するインクカートリッジを得た。
【0254】
なお、カートリッジの各部材は、予め良く洗浄して、製造時に残留したイオン性物質や反応副生成物等の不純物を除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0255】
(4)多価のカチオン量の測定
前記実施例8(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「多価のカチオン量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク液性成分中の多価のカチオンの総量は256ppmであった。なお、測定結果の詳細を表3に示す。
【0256】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタPM−870C(セイコーエプソン株式会社製)に、前記実施例8(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0257】
(6)吐出安定性評価
前記実施例8(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0258】
(7)保存安定性評価
前記実施例8(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0259】
<実施例9>
(1)分散液の製造
本実施例9では前記実施例1(1)で製造した分散液A1を使用した。
【0260】
(2)インクの調整
本実施例9では前記実施例1(2)で調整したインク使用した。
【0261】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例1(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図1で説明したカートリッジに注入することで、本実施例9に使用するインクカートリッジを得た。
【0262】
なお、本実施例ではカートリッジの各部材を洗浄することなく組み立ててインクを注入した。
【0263】
(4)多価のカチオン量の測定
前記実施例9(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「多価のカチオン量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク液性成分中の多価のカチオンの総量は296ppmであった。なお、測定結果の詳細を表3に示す。
【0264】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタPM−870C(セイコーエプソン株式会社製)に、前記実施例9(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0265】
(6)吐出安定性評価
前記実施例9(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0266】
(7)保存安定性評価
前記実施例9(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0267】
(比較例1)
(1)分散液の製造:分散液B1
本比較例1では、前記実施例1(1)と同様に無機顔料であるカーボンブラック顔料のカラーブラックFW18(デグサ株式会社製)を用いて、本比較例1で用いる分散液B1を製造した。
【0268】
但し、本比較例1では、前記実施例1(1)において実施した限外濾過処理を実施しなかった。
【0269】
まず、攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、スチレン25部、α−メチルスチレン5部、ブチルメタクリレート15部、ラウリルメタクリレート10部、アクリル酸2部、t―ドデシルメルカプタン0.5部を入れ、本比較例では55℃に加熱した。別に用意したスチレン150部、アクリル酸15部、ブチルメタクリレート50部、t−ドデシルメルカプタン1部、メチルエチルケトン20部およびアゾビスイソブチロニトリル3部を滴下ロートに入れ、反応容器に滴下しながら本比較例では2時間で分散ポリマーを重合させた。次に、反応容器にメチルエチルケトンを添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成した。
【0270】
この分散ポリマー溶液の一部と取り出し、溶媒成分を留去後、全重量に対する芳香環の割合を前述の「芳香環量の測定」に記載の方法で測定したところ、分散ポリマー全重量に対する芳香環量は40%であった。
【0271】
上記分散ポリマー溶液40部とカーボンブラック顔料であるカラーブラックFW18(デグサ社製)30部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン35部を混合し、ホモジナイザーで30分以上分散処理し、イオン交換水を350部添加して、さらに1時間分散する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去後、本比較例では限外濾過を実施せず、イオン交換水、及び中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら適宜加えてpH7.5に調整してから、平均孔径5μmのメンブランフィルタで濾過することで、分散体B1(カーボンブラック顔料を芳香環量が40%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液1を得た。
【0272】
表1に分散液B1に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、顔料:ポリマー比については前記「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0273】
(2)インクの調整
本比較例1では、前記比較例1(1)で得た分散液B1を使用してインクを調整した。具体的な組成を以下に示す。
【0274】
なお、インクの調整では分散体B1の含有量が8.0%となるように分散液B1を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体B1の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0275】
また、下記本比較例1のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
【0276】
分散体B1<140> 8.0%
非イオン系界面活性剤 1.0%
エチレングリコール 5.0%
グリセリン 15.0%
イオン交換水 残量
なお上記組成中、非イオン系界面活性剤としてエパン450(商品名;第一工業製薬株式会社製)を使用した。
【0277】
(3)インクカートリッジの製造
前記比較例1(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図1で説明したカートリッジに注入することで、本比較例1に使用するインクカートリッジを得た。
【0278】
なお、本比較例ではカートリッジの各部材を洗浄することなく組み立ててインクを注入した。
【0279】
(4)多価のカチオン量の測定
前記比較例1(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「多価のカチオン量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク液性成分中の多価のカチオンの総量は515ppmであった。なお、測定結果の詳細を表3に示す。
【0280】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタPM―870C(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記比較例1(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0281】
(6)吐出安定性評価
前記比較例1(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0282】
(7)保存安定性評価
前記比較例1(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0283】
(比較例2)
(1)分散液の製造:分散液B2
本比較例2に用いる分散液B2の製造には、有機顔料のフタロシアニングリーン顔料(C.I.ピグメントグリーン7)を分散樹脂であるソルスパース27000(アビシア株式会社製)を使用して分散した。
【0284】
C.I.ピグメントグリーン7を15部と、ソルスパース27000を5部、ジエタノールアミン5部、2−プロパノール0.5部、及びイオン交換水74.5部をビーズミルミニゼータ(アジサワ株式会社製)により2時間分散処理を行なって分散体B2を20%(顔料:15%、分散樹脂:5%)含有する比較例2で使用する分散液B2を得た。
【0285】
(2)インクの調整
本比較例2では、前記比較例2(1)で得た分散液B2を使用してインクを調整した。本比較例の具体的な組成を以下に示す。
【0286】
なお、インクの調整では分散体B2の含有量が8.0%となるように分散液B2を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体B2の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0287】
また、下記本比較例2のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
【0288】
分散体B2<150> 8.0%
非イオン系界面活性剤 1.0%
エチレングリコール 5.0%
グリセリン 15.0%
イオン交換水 残量
なお上記組成中、非イオン系界面活性剤としてノイゲンEA160(商品名;第一工業製薬株式会社製)を使用した。
【0289】
(3)インクカートリッジの製造
前記比較例2(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図2で説明したカートリッジに注入することで、本比較例2に使用するインクカートリッジを得た。
なお、カートリッジの各部材は、予め良く洗浄して、製造時に残留したイオン性物質や反応副生成物等の不純物を除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0290】
(4)多価のカチオン量の測定
前記比較例1(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「多価のカチオン量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク液性成分中の多価のカチオンの総量は609ppmであった。なお、測定結果の詳細を表3に示す。
【0291】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタPM−870C(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記比較例2(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0292】
(6)吐出安定性評価
前記比較例2(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0293】
(7)保存安定性評価
前記比較例2(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0294】
【表1】
Figure 2004306441
【表2】
Figure 2004306441
表1、2の結果から明らかなように比較例で用いるようなインクカートリッジは印字品質が悪く、本発明によるインクカートリッジを用いると印字品質が良好なことが分かる。
【0295】
以上のように、本発明のインクカートリッジを用いることにより、いずれの紙種に対してもにじみが低減される高品質な印字記録を得ることができる。
【0296】
【表3】
Figure 2004306441
表3の結果から明らかなように、インクの液性成分中の多価カチオンの量が300ppm以下抑えた本発明によるインクカートリッジは優れた吐出安定性、保存性安定性を確保し、表2より印字品質も優れていることがわかる。また、多価カチオンの量が250ppm以下の場合は格段に吐出安定性、保存性安定性が優れたものになることがわかる。一方、比較例にあるように多価カチオンの量が500ppmを越えた場合は、印字品質、吐出安定性、保存安定性ともに、実用レベルにならないことがわかる。
【0297】
以上の結果から分かるように、本発明によるインクカートリッジを用いることで良好な印字品質、吐出安定性を得ることができ、しかもインクカートリッジ自体の保存性安定性を優れていることがわかる。
【0298】
【発明の効果】
本発明によるインクカートリッジは、昨今の高画質化、高速化の為に、ノズルが微細化され、高い周波数で駆動するインクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタに好適に用いることができる。しかも本発明によるインクカートリッジは保存安定性にすぐれ、さらに良好な印字画像を得ることができ、印字画像の乾燥性にも優れる。
【0299】
【図面の簡単な説明】
【図1】図(イ)、(ロ)は、それぞれ本発明によるインクカートリッジの一実施例として、ブラックインクカートリッジの上下面の外観を示す斜視図である。
【図2】図(イ)、(ロ)は、それぞれ本発明によるインクカートリッジの一実施例として、カラーインクカートリッジの上下面の外観を示す斜視図である。
【図3】本発明によるインクカートリッジの一実施例を示す断面図である。
【図4】同上インクカートリッジがキャリッジに装着された一実施例を示す断面図である。
【図5】同上インクカートリッジを構成するインク供給口、及びインク導入部材の構造を示す断面図である。
【図6】図(イ)、(ロ)は、それぞれ半導体記憶手段の一実施例として、表裏の外観を示す斜視図である。
【図7】図(イ)、(ロ)は、それぞれブラックインクカートリッジ、及びカラーインクカートリッジの蓋体の構造を示す斜視図である。
【図8】図(イ)、(ロ)は、それぞれブラックインクカートリッジ、及びカラーインクカートリッジの蓋体の表面にフィルムが張られた状態を示す斜視図である。
【図9】本発明によるインクカートリッジの他の実施例を示す断面図である。
【図10】同上インクカートリッジを装着したインクジェット記録装置の一実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 ブラックインクカートリッジ
2、21 容器本体
2a、21a 容器本体の下面
3、22 蓋体
4、28〜32 インク供給口
6、34 回路基板
7、35 シール材
10、36 突起
20 カラーインクカートリッジ
23〜27、60 インク収容室
40 接点
42、43 電極
44 半導体記憶手段
50 記録ヘッド
51 キャリッジ
52 インク導入部材
53 カートリッジホルダ
54 レバー
61 パッキン
62 テーパ部
63 嵌合部
64 バネ
65 弁体
70、84 多孔質体
71 フィルタ
72 リブ
73、74 インク注入口
75、76 大気連通孔
77、78 大気連通流路
79、80 大気開放口
81、82 フィルム
81a、82a 舌片
83 壁
83a 連通孔
101 駆動モータ
102 タイミングベルト
103 記録紙
104 キャッピング手段
105 ポンプユニット
106 制御手段
107 ワイピング手段

Claims (19)

  1. インクを収容するインク収容室、記録装置にインクを供給するインク供給口、前記インク収容室に大気を連通させる大気連通部を備えた容器と、容器内に収容されたインクと、インクを容器内に保持する負圧発生手段とを有するインクカートリッジであって、
    前記負圧発生手段が容器内に収容され、毛細管力によってインクを吸収保持する多孔質体であり、
    前記容器内に収容されたインクの着色剤が、顔料をポリマーで包含して水に分散可能とした分散体で、前記ポリマー中の芳香環の量が20重量%(以下単に%と示すものは重量%を示す)以上70%以下であり、インクの液性成分中に含有される多価のカチオンの量が500ppm以下であることを特徴とするインクカートリッジ。
  2. 前記容器内のインクが前記多孔質体を経由してインク供給口に供給されることを特徴とする請求項1に記載のインクカートリッジ。
  3. 前記インク供給口が、前記多孔質体に対して突出し、しかも前記インク供給口に連通する凸部を備え、前記多孔質体から前記凸部を経由して前記インク供給口にインクが供給されることを特徴とする請求項2に記載のインクカートリッジ。
  4. 前記インク供給口が、記録装置の記録ヘッドに連通するインク導入部材の進退によって開閉する弁体を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
  5. 前記大気連通部が、前記インク収容室に穿設された大気連通孔と、大気連通孔に接続しキャピラリを介して大気に連通する大気連通流路とから構成されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
  6. 前記多孔質体の容器内に収容される前の体積が、容器内に収容されている多孔質体の体積より大きいことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
  7. 前記多孔質体より下流にフィルタが配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
  8. 前記分散体におけるポリマーで包含された顔料が無機顔料であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
  9. 前記分散体におけるポリマーで包含された顔料が有機顔料であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
  10. 前記分散体におけるポリマーで包含された有機顔料がC.I.ピグメントイエロー、C.I.ピグメントレッド、C.I.ピグメントブルー、C.I.ピグメントオレンジ、C.I.ピグメントブラウン、C.I.ピグメントバイオレット、C.I.ピグメントグリーンからなる群から選ばれた一種、又は二種以上であることを特徴とする請求項9に記載のインクカートリッジ。
  11. 前記分散体における顔料を包含するポリマーが、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマーからなる群から選ばれた一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
  12. 前記分散体における顔料とポリマーとの重量比が30:70〜90:10の範囲であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
  13. 前記インクが、更に浸透剤を含有していることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
  14. 前記浸透剤として少なくともアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤からなる群から選ばれた一種、又は二種以上を含有していることを特徴とする請求項13に記載のインクカートリッジ。
  15. 前記浸透剤として少なくともアルキレングリコールモノアルキルエーテル及び/又は1,2−アルキレングリコールを添加してなることを特徴とする請求項13に記載のインクカートリッジ。
  16. 前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルが、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエ−テルまたは(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルであることを特徴とする請求項15に記載のインクカートリッジ。
  17. 前記1,2−アルキレングリコールが1,2−ヘキサンジオールまたは1,2−ペンタンジオールであることを特徴とする請求項15に記載のインクカートリッジ。
  18. 請求項1〜17に記載のインクカートリッジを着脱可能に装着し、インクカートリッジより供給されるインクを記録ヘッドから記録媒体上に吐出させ印刷記録することを特徴とするインクジェット記録装置。
  19. 前記記録ヘッドが圧電素子の体積変化を利用してインクを吐出させることを特徴とする請求項18に記載のインクジェット記録装置。
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