JP2004074434A - インクカートリッジ及びこれを用いたインクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】印字品質の向上、印刷速度の高速化が求められているインクジェットプリンタに対して、高濃度でにじみない画像を形成できるインクを安定的に大量に供給できるインクカートリッジを提供すること。
【解決手段】含有する着色剤が顔料をポリマーで包含して水に分散可能とした分散体であり、ポリマー中の芳香環の量が20%以下70%以下であって、液性成分中に含有される遊離ポリマー量が3%以下であるインクと、
インク収容室を下部インク収容室と上部インク収容室に分け、下部インク収容室から上部インク収容室にインクを吸い上げてから、負圧発生手段(膜弁)を介して記録装置にインクを供給するよう構成されたカートリッジとからなるインクカートリッジ。
【選択図】 図1
【解決手段】含有する着色剤が顔料をポリマーで包含して水に分散可能とした分散体であり、ポリマー中の芳香環の量が20%以下70%以下であって、液性成分中に含有される遊離ポリマー量が3%以下であるインクと、
インク収容室を下部インク収容室と上部インク収容室に分け、下部インク収容室から上部インク収容室にインクを吸い上げてから、負圧発生手段(膜弁)を介して記録装置にインクを供給するよう構成されたカートリッジとからなるインクカートリッジ。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷信号に対応して印刷を実施するインクジェットプリンタ、ペンプロッター等の印字記録装置において使用するインクカートリッジに関するものであり、特にはインクジェットプリンタの記録ヘッドに対してインクを適正な負圧状態で供給することのできるインクカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタは、通常、記録用紙の紙幅方向に往復動するキャリッジに印刷信号に対応してインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッドを搭載して、外部のインクタンクから記録ヘッドにインクを供給するように構成されている。このようなインクタンクはインク貯蔵容器と容器内に収容されたインクにより構成され、小型の記録装置にあっては取り扱いの便を考慮してキャリッジに着脱可能に搭載できるようなカートリッジ形式で使用される。
【0003】
また近年インクジェットプリンタに対して、印字品質の向上や、印刷速度の高速化が求められている。そのためインクカートリッジについても、高濃度でにじみない画像を形成できるインクを収容保持し、高速に印字する記録ヘッドに対して、そのようなインクを安定的に大量に供給できることが必要であり、従って、貯蔵容器としてのカートリッジと、カートリッジ内に収容されたインクの両面からの特性の向上が必須となってきている。
【0004】
高濃度でにじみない画像を形成できるインクの着色剤としては、顔料等の分散体の使用が従来から提案されており、例えば、顔料を水に分散させる手段としては特開平1−301760号公報にあるように界面活性剤を用いる方法、または特公平5−64724号公報にあるような疎水部と親水部を有する分散ポリマーを用いて分散させる方法がある。また、着色剤の表面を高分子で被覆する方法等も試みられており、インクジェットプリンタ用インクとしては、特開昭62−95366号公報にあるように、染料インクを内包したマイクロカプセルを用いる方法、特開平1−170672号公報にあるように、水に不溶な溶媒に色素を溶解または分散させこれを界面活性剤で水中に乳化したマイクロカプセル化色素を用いる方法、特開平5−39447号公報にあるように、水、水溶性溶媒並びにポリエステルの少なくとも1種に昇華性分散染料を溶解または分散させた内包物を含むマイクロカプセルを記録液に使用する方法、特開平6−313141号公報では着色された乳化重合粒子と水性材料からなるインキ組成物、特開平10−140065号公報では転相乳化反応や酸析法による方法等が検討されている。一方、インクを収容するカートリッジについては、通常、記録ヘッドからのインクの漏れ出しを防止するため、多孔質材を収容し、この多孔質材にインクを含浸させて毛細管力によりインクを保持するように構成されている。
【0005】
しかしながら、前述のような印字品質や印刷速度の向上に対応する為、インクジェットプリンタの記録ヘッドのノズル開口数が多くなり、単位時間当りのインク消費量が増加する傾向にあることにより、望ましくはインクカートリッジに収容するインク量を増量する必要があり、多孔質材の毛細管力でインクを保持するには、高さ、つまり水頭に限界があるため、底面積を増加させて体積を大きくせざるを得ず、キャリッジのサイズが大きくなり、結果としてプリンタが大型化するという問題が発生する。
【0006】
これに対して平均孔径が小さい多孔質材を用いてインクの保持力を上げる方法も考えられるが、インクの流れに対する流体抵抗が大きくなり、記録ヘッドのインク消費量に対応して安定にインクを供給することが困難となるばかりでなく、インク供給口から離れた領域のインクを記録ヘッドに確実に供給することが困難となり、結果としてインク貯蔵容器のインクが消費し切れなくなり、無駄が生じるという新たな問題が生じる。
【0007】
また、インク含浸用として利用するこれら多孔質材には、種々の反応性物質や不純物が付着していたり、残留している場合があり、従って、これらの多孔質材にインクを含浸させ、インク中へこれらの反応性物質や不純物が多量に溶出した場合、インク中の分散体を凝集させ、吐出インクの飛行曲がりを生じたり、ノズルを閉塞させる可能性がある。
【0008】
さらに加えて、これら多孔質材にインクを含浸させた場合、インク中の成分毎の多孔質材への吸着量が異なる場合がある為、インクカートリッジに収納する前のインクと、インクカートリッジ内に収納され多孔質材に一度接触したインクとでは微妙に成分比が異なるという弊害も発生する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明はこのような課題を解決するインクカートリッジを提供するものであり、すなわちインクカートリッジ内に収容されるインクが、普通紙上でもにじみが少なく高い発色の印字画像を得られ、しかも速乾性に優れるインクであり、インクの貯蔵容器であるカートリッジが、インクを収容する容器の底面積を抑えつつ、インクの水頭圧を可及的に小さくでき、かつ印字品質の低下を招くことなく有効使用できるインク収容量を増大させることができ、無駄なくカートリッジ内のインクを使い切ることができるものであり、しかも収容しているインクの物性等に影響を与えることなく長期保存可能な貯蔵容器(カートリッジ)である。
【0010】
本発明の目的とするところは上記のようなインク貯蔵容器(カートリッジ)と容器内に収容されたインクとからなるインクカートリッジを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によるインクカートリッジは、インクを収容するインク収容室、インクを供給するインク供給口、前記インク収容室に大気を連通させる大気連通部を備えた容器と、容器内に収容されたインクと、インクを容器内に保持する負圧発生手段とを有するインクカートリッジであって、前記インク収容室が、前記大気連通部を備えた下部インク収容室と、前記負圧発生手段を途中に配置したインク流路によりインク供給口と結ばれた上部インク収容室とから構成され、前記下部インク収容室と前記上部インク収容室がインク吸い上げ流路により接続されたものであり、前記容器内に収容されたインクの着色剤が、顔料をポリマーで包含して水に分散可能とした分散体で、前記ポリマー中の芳香環の量が20重量%(以下単に%と示すものは重量%を示す)以上70%以下であり、インクの液性成分中に含有される遊離ポリマー量が3%以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい態様においては、前記負圧発生手段が、膜弁を主体とする差圧弁により構成されたものであることを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様においては、前記差圧弁が、前記インク供給口の負圧が一定以上に高まった時点で開弁してインク収容室のインクをインク供給口に流出させることを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい態様においては、前記大気連通部が、下部インク収容室に接続し、キャピラリを介して大気に連通する大気連通流路と、前記大気連通流路の途中に配置され、常時は閉弁状態を維持し記録装置に装着された状態で開弁する大気連通弁とから構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の好ましい態様においては、前記下部インク収容室と前記上部インク収容室とが、前記容器に略水平方向に伸びる壁を設けて区画されたものであることを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい態様においては、前記インク吸い上げ流路の流入口が、インクを毛細管力により保持できる程度の断面積であることを特徴とする。
【0017】
本発明の好ましい態様においては、前記上部インク収容室と前記負圧発生手段とを接続する流路の、前記負圧発生手段よりも上流にフィルタが配置されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の好ましい態様においては、前記容器内に収容されたインクの液性成分中に含有される遊離ポリマー量が2%以下であることを特徴とする。
【0019】
尚、本明細書において、水性インクの「液性成分」とは、インク中の分散体などの固形部分と、それらの固形部分を分散して保持する液状部分とに分けた場合の液状部分を意味する。従って、その「液性成分」には、顔料分散液、又はインクを調製する際にベヒクル(インク自体の液状部分)中に混入する不純物も含まれている。
【0020】
また、本明細書において、インク中の「遊離ポリマー」とは、インク中において顔料表面を包含していない(顔料表面に吸着していない)ポリマーを意味する。したがって、例えば、インクを遠心処理して上清成分と沈殿成分とに分離し、その上清成分をTOC(全有機炭素計)や、重量法(蒸発乾燥させ、樹脂量を測定する方法)等、公知の任意の方法で測定することによって、「遊離ポリマー」の構造やその量を測定することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明のインクカートリッジに収容されるインクは、安定性に優れ、普通紙上ではにじみが少なく高発色であり、光沢メディア上では十分な発色に加えて定着性・光沢性を有する。さらにインクジェット記録にあってはインクジェットヘッドからのインクの吐出安定性に優れることなどの特性が要求されていることに鑑み、鋭意検討した結果によるものである。
【0022】
以下、本発明のインクカートリッジに用いるインクについて詳細に説明する。インクの着色剤として含有される分散体は、顔料を分散ポリマーで包含して水に分散可能にし、且つその分散ポリマー中の芳香環の量がその分散ポリマーの20%以上70%以下であることを特徴とする。
【0023】
ここで、芳香環の量が分散ポリマーの20%以上であることで、その分散ポリマーは疎水性表面の顔料に好適に吸着することが可能となる。又、その吸着した分散ポリマーは本発明で好適に用いる添加剤を添加しても顔料からの脱離が生じ難くなるため安定なものとなる。又、芳香環の量が70%を超えると水中での分散が難しくなり、逆に安定性が得られなくなる。このような芳香環の量はより好ましくは20%以上50%以下である。又、顔料と分散ポリマーの重量比を30:70〜90:10とすることで、分散体の分散安定性及びこの分散体を水性インクとした場合の印字画像の定着性・光沢性・発色性・にじみ・分散安定性に対して、優れた効果が得られる。顔料が30:70より少ないと、この分散体を用いた水性インクにおいて十分な印字濃度が得られにくく、十分な印字濃度を発現させるために必要な量の分散体を加えるとインク粘度が高くなって、インクジェットヘッドより吐出し難くなる。逆に90:10より多いと、インクの安定性が得られにくく、さらに印字画像の定着性・光沢性に対して所望の効果が得られ難くなる。
【0024】
前記ポリマーで包含する顔料として用いることのできる無機顔料または有機顔料として、以下に例示する。
【0025】
ブラックインク用の無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、若しくはチャネルブラック等のカーボンブラック(C.l.ピグメントブラック7)類を挙げることができる。
【0026】
カラーインク用の有機顔料としては、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、縮合アゾ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ペリレン顔料等を使用することができる。
【0027】
具体的には、例えばイエローインク用の有機顔料としては、C.l.ピグメントイエロー1(ハンザイエローG),2,3(ハンザイエロー10G),4,5(ハンザイエロー5G),6,7,10,11,12(ジスアゾイエローAAA),13,14,16,17,24(フラバントロンイエロー),55(ジスアゾイエローAAPT),61,61:1,65,73,74(ファストイエロー5GX),75,81,83(ジスアゾイエローHR),93(縮合アゾイエロー3G),94(縮合アゾイエロー6G),95(縮合アゾイエローGR),97(ファストイエローFGL),98,99(アントラキノン),100,108(アントラピリミジンイエロー),109(イソインドリノンイエロー2GLT),110(イソインドリノンイエロー3RLT),113,117,120(ベンズイミダゾロンイエローH2G),123(アントラキノンイエロー),124,128(縮合アゾイエロー8G),129,133,138(キノフタロンイエロー),139(イソインドリノンイエロー),147,151(ベンズイミダゾロンイエローH4G),153(ニッケルニトロソイエロー),154(ベンズイミダゾロンイエローH3G),155,156(ベンズイミダゾロンイエローHLR),167,168,172,173(イソインドリノンイエロー6GL),180(ベンズイミダゾロンイエロー)などを挙げることができる。
【0028】
また、マゼンタインク用の有機顔料としては、C.l.ピグメントレッド1(パラレッド),2,3(トルイジンレッド),4,5(lTR Red),6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38(ピラゾロンレッドB),40,41,42,88(チオインジゴボルドー),112(ナフトールレッドFGR),114(ブリリアントカーミンBS),122(ジメチルキナクリドン),123(ペリレンバーミリオン),144,146,149(ペリレンスカーレッド),150,166,168(アントアントロンオレンジ),170(ナフトールレッドF3RK),171(ベンズイミダゾロンマルーンHFM),175(ベンズイミダゾロンレッドHFT),176(ベンズイミダゾロンカーミンHF3C),177,178(ペリレンレッド),179(ペリレンマルーン),185(ベンズイミダゾロンカーミンHF4C),187,188,189(ペリレンレッド),190(ペリレンレッド),194(ペリノンレッド),202(キナクリドンマゼンタ),209(ジクロロキナクリドンレッド),214(縮合アゾレッド),216,219,220(縮合アゾ),224(ペリレンレッド),242(縮合アゾスカーレット),245(ナフトールレッド),又は、C.I.ピグメントバイオレット19(キナクリドン),23(ジオキサジンバイオレット),31,32,33,36,38,43,50などを挙げることができる。
【0029】
更に又、シアンインク用の有機顔料としては、C.l.ピグメントブルー15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6(以上いずれもフタロシアニンブルー),16(無金属フタロシアニンブルー),17:1,18(アルカリブルートナー),19,21,22,25,56,60(スレンブルー),64(ジクロロインダントロンブルー),65(ビオラントロン),66(インジゴ)等を挙げることができる。
【0030】
又、ブラックインク用の有機顔料としては、アニリンブラック(C.l.ピグメントブラック1)等の黒色有機顔料を用いることができる。
【0031】
更に又、イエロー、シアン、又はマゼンタインク以外のカラーインクに用いる有機顔料としては、
C.I.ピグメントオレンジ1,2,5,7,13,14,15,16(バルカンオレンジ),24,31(縮合アゾオレンジ4R),34,36(ベンズイミダゾロンオレンジHL),38,40(ピラントロンオレンジ),42(イソインドリノンオレンジRLT),43,51,60(ベンズイミダゾロン系不溶性モノアゾ顔料),62(ベンズイミダゾロン系不溶性モノアゾ顔料),63;C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン),10(グリーンゴールド),36(塩臭素化フタロシアニングリーン),37,47(ビオラントロングリーン);あるいは
C.I.ピグメントブラウン1,2,3,5,23(縮合アゾブラウン5R),25(ベンズイミダゾロンブラウンHFR),26(ペリレンボルドー),32(ベンズイミダゾロンブラウンHFL)等を挙げることができる。
【0032】
本発明で用いるインクにおいては、前記の顔料を1種で又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0033】
使用する顔料は、ポリマーで内包してマイクロカプセル化する以前に予め粉砕処理をして微粒化してあることが望ましい。顔料の粉砕処理はジルコニアビーズ、ガラスビーズ、無機塩等の粉砕メディアを使用して、湿式粉砕あるいは乾式粉砕により実施することができ、粉砕装置としてはアトライター、ボールミル、振動ミル等を挙げることができる。
【0034】
顔料を粉砕処理により微粒化する場合、少なからず粉砕メディア(ビーズ)の成分が顔料中に混入することが考えられる。具体的には、粉砕メディアにガラスビーズを使用すれば顔料中にSiの混入が、ジルコニアビーズの場合はZrの混入が考えられる。更に、粉砕装置の部材からの混入も考えられ、ステンレス部材から構成される粉砕装置を使用した場合には、Fe、Cr、Ni等の混入が考えられる。従って、粉砕処理後は顔料の洗浄、限外ろ過等により粉砕メディアや粉砕装置から発生するコンタミ成分を除去することが望ましい。
【0035】
粉砕メディアに水溶性の無機塩(NaCl、BaCl2、KCl、Na2SO4等)を用いて粉砕処理をする方法(ソルトミリング法)もあり、この場合、理論上はイオン交換水等による洗浄で混入した粉砕メディア成分を除去できる。但し、表面積の大きい顔料と上記のような無機塩を混合する方法でもあるので、粉砕処理後の洗浄が不十分の場合、分散メディアである無機塩が多量に残留する可能性もあり注意が必要である。
【0036】
また、顔料の粒経は5μm以下が好ましく、より好ましくは0.3μm以下の粒子からなる顔料を、さらに好ましくは0.01〜0.15μmの粒子からなる顔料が好ましい。また水性インクとしてはインクジェットに用いる場合、これらの顔料としての添加量は、0.5〜30%が好ましいが、さらには1.0〜12%が好ましい。これ以下の添加量では、印字濃度が確保できなくなり、またこれ以上の添加量では、インクの粘度増加や粘度特性に構造粘性が生じ、インクジェットヘッドからのインクの吐出安定性が悪くなる傾向になる。
【0037】
前述の顔料を包含するポリマーを形成する物質の具体例として2重結合を有するアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基あるいはアリル基を有するモノマーやオリゴマー類を用いることができる。例えばスチレン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ブチルメタクリレート、(α,2,3または4)−アルキルスチレン、(α,2,3または4)−アルコキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、α−フェニルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他アルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のジエチレングリコールまたはポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、その他含フッ素、含塩素、含珪素(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、(メタ)アクリル酸等の1官能の他に架橋構造を導入する場合は(モノ,ジ,トリ,テトラ,ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールおよび1,10−デカンジオール等の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはFのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等アクリル基やメタクリル基を有する化合物を用いることができる。
【0038】
さらに、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマーからなる群から選ばれた1種以上を主成分とするようにこれらのポリマーを添加しながら作成することもできる。
【0039】
また、ポリマーを形成する物質の疎水基としては少なくともアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選ばれた1種以上であることが好ましいが、ベンゼン環の量を本発明の範囲にすることが好ましい。そして、前述の親水性官能基を有する物質の親水基が少なくともカルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基およびそれらの塩基であることが好ましい。
【0040】
ポリマーを合成する際の重合開始剤は過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウムの他に、過硫酸水素やアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、過酢酸、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロキシパーオキシド、パラメンタンヒドロキシパーオキシドなどラジカル重合に用いられる一般的な開始剤を用いることができる。
【0041】
本発明における、乳化重合では連鎖移動剤を用いることもできる。例えば、t−ドデシルメルカプタンの他にn−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、キサントゲン類であるジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド、あるいはジペンテン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテンなどが挙げられる。
そして、前述の分散体を用いることによって安定性の優れたインクジェット記録用インクとすることができる。さらに前述の分散体を筆記具用インクにも好適に用いることができる。
【0042】
また、前述の顔料をポリマーで包含した着色剤が少なくとも重合性基を有する分散剤と共重合性モノマーとの共重合体で該顔料を包含したものであることが好ましい。ここで、重合性基を有する分散剤とは少なくとも疎水基、親水基および重合性基を有するもので、重合性基はアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基あるいはビニル基などであり、共重合性基も同じくクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基あるいはビニル基などになる。
【0043】
インクジェット記録用インクとしては粒径が比較的そろっていた方が目詰まりや吐出の安定性の観点から好ましいので、顔料をポリマーで包含した着色剤は、乳化重合または転相乳化法によって製造されることが好ましい。また、ポリマー中のベンゼン環が本発明の範囲にあり、好適な分散剤による好適な分散により、堅固なポリマーになり、分散安定性が得られ、長期に安定性が得られるので好ましい。
【0044】
前述の顔料をポリマーで包含した分散体は、重合性基を有する分散剤で顔料を分散させた後、分散剤と共重合可能なモノマーと重合開始剤を用いて水中で乳化重合されたものであることが好ましい。
【0045】
本発明に用いるインクは少なくとも前述の分散体を含有することを特徴とし、その含有量は、顔料の重量濃度として、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1.0〜12重量%、最も好ましくは2〜10重量%である。インクの顔料含有量が0.5重量%未満になると印字濃度が不充分となることがあり、30重量%を越えると、インク粘度の点からインク中に保湿成分を添加する量が制限され、インクジェットヘッドのノズル目詰まりが発生しやすくなったり、インクの粘度が高くなり安定吐出が得られないことがある。
【0046】
また、本発明に用いるインクは必要に応じて、その製造工程におけるインクまたは分散液に対して、逆浸透膜、限外濾過、電気透析、またヌッチェによる水洗等の精製処理を実施することができる。特にインクの液性成分中に遊離ポリマーが多量に存在する場合は、その弊害(保存安定性の低下や吐出安定性の低下等)を防止する為に、上述のような精製処理を実施することが好ましい。
【0047】
上記のような精製処理により液性成分中における遊離ポリマー量を一定量以下に抑えることにより、インク保存時における物性値変動(保存安定性の低下)を防止し、インクジェットヘッドからの吐出特性を維持し、そして従来の水性インクカートリッジと比較して格段に高い、印字物の印字濃度を確保することができる。このようなインク液性成分中の遊離ポリマー量は3%以下であることが好ましく、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。
【0048】
続いてインク中の分散体以外の添加成分について詳しく説明する。
本発明で用いるインクは、インクの記録媒体である紙等の記録メディアに対する浸透性を高める目的で浸透剤を添加する場合があり、更にその放置安定性の確保、インク吐出ヘッドからの安定吐出達成等の目的で保湿剤、溶解助剤、浸透制御剤(浸透剤)、粘度調整剤、pH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、防黴剤、腐食防止剤、分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート等種々の添加剤を添加する場合がある。
【0049】
浸透剤はその添加により印字物の乾燥性が向上し、連続して印刷しても前の印字部分が次の媒体の裏面に転写されることがなくなる為、特に印字記録の高速化を可能とする為には添加が必須となる。更にインクジェットプリンタ用インクとして使用する場合、泡立ちが少ないこと、インクジェットヘッドのノズル内で乾燥し難い特性を有するものが特に好適である。
このような浸透剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、グリコールエーテル類、アルキレングリコール類から選ばれた1種又は2種以上であることが好ましい。これらの浸透剤を用いることで普通紙上のにじみを低減でき、光沢メディア上での線幅を適当な程度に調整することができる。
【0050】
浸透剤として好適に使用できるアセチレングリコール系界面活性剤、又はアセチレンアルコール系界面活性剤の具体的な製品名として、例えば、サーフィノールTG、サーフィノール104、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノール61、サーフィノール82(以上いずれもエアープロダクツ株式会社製)、もしくはオルフィンE1010、オルフィンE1004、オルフィンSTG(以上いずれも日信化学工業株式会社製)、あるいはアセチレノールE00、アセチレノールE40、アセチレノールE100(以上いずれも川研ファインケミカル株式会社製)等を挙げることができる。
【0051】
その他にも浸透剤として好適に使用できる界面活性剤としてシリコン系界面活性剤を挙げることができ、例えば、BYK−307、BYK−331、BYK−333、BYK−348(以上いずれもビックケミー株式会社製)等を挙げることができる。
【0052】
浸透剤として好適に使用できるグリコールエーテル類としてはとしては、ジエチレングリコールモノ(炭素数4〜8のアルキル)エーテル、トリエチレングリコールモノ(炭素数4〜8のアルキル)エーテル、プロピレングリコールモノ(炭素数3〜6のアルキル)エーテル、及びジプロピレングリコールモノ(炭素数3〜6のアルキル)エーテル等を挙げることができ、具体例としてジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノブチルエーテル等を挙げることができる。
【0053】
浸透剤として使用できるアルキレングリコールとしては、1,2−(炭素数4〜10のアルキル)ジオール、1,3−(炭素数4〜10のアルキル)ジオール1,5−(炭素数4〜10のアルキル)ジオール、1,6−(炭素数4〜10のアルキル)ジオール等を挙げることができ、具体例としては1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−プタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等を挙げることができる。
【0054】
前記のグリコールエーテル類、及び/又はアルキレングリコール類は浸透剤としての効果を有する他、他の難溶性のインク添加剤に対する溶解助剤としての特性も備える。例えば前述のアセチレングリコール類のうち単独では水への溶解性が低い化合物を使用する場合、グリコールエーテル類を併用して添加することでアセチレングリコール類の溶解性を高めその添加量を増やすことできる。
【0055】
更にまた、グリコールエーテル類、及び/又はアルキレングリコール類は少なからず殺菌・防菌作用を有する為、インク中に3〜5%程度含有することで、微生物、菌類等の発生を抑えることができるという効果も有する。
【0056】
本発明のインクにおいては、浸透剤として前述のアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、グリコールエーテル類、アルキレングリコール類を、単独又は併用して使うことができ、インクに対する添加量は、0.01〜30重量%が好ましいが、0.1〜10重量%がより好ましい。添加量が0.01%未満では印字品質向上の効果が低くなり、30重量%を越えるとインク吐出ヘッドのノズル周りを不均一に濡らし、安定吐出が困難になる。
【0057】
その他、本発明のインクの浸透剤としては、同様に、前述のアルコール類、ノニオン性界面活性剤、水溶性有機溶剤、その他の界面活性剤を使用することができる。
【0058】
本発明で用いるインクにおいては、これら前記の浸透剤を、1種で又は2種以上を組み合わせて、使用することができる。
【0059】
特に、前述のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが繰り返し単位10以下のアルキレングリコールであって、炭素数3〜10のアルキルエーテルであることが好ましい。その中でも、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエ−テル、及び/又は(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルであることが好まく、前述の1,2−アルキレングリコールが1,2−ヘキサンジオール、及び/又は1,2−ペンタンジオールであることが好ましい。
【0060】
また、前述のジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上からなる物質の添加量が0.5%以上30%以下であることが好ましい。0.5%未満では浸透性の効果が低く印字品質が向上しない。30%を超えると粘度上昇により使いづらくなり、それ以上添加しても印字品質向上の効果がない。より好ましくは1%以上15%以下である。
【0061】
そして、少なくとも前述のアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤から選ばれた1種以上と、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上を同時に添加することが印字品質上好ましい。
【0062】
そして、前述のアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤から選ばれた1種以上が0.01〜1.0%で、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上が1%以上であることが好ましい。アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤から選ばれた1種以上は少量で浸透性を向上させる効果がある。従って、1.0%以下の添加量であっても、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上は1%以上添加されていることで印字品質がさらに向上する。
【0063】
前述の1,2−アルキレングリコールが炭素数4〜10の1,2−アルキレングリコールであり、添加量が10%以下であることが好ましい。10%を超えると粘度上昇によりインクジェット用としては使いづらくなり、それ以上添加しても印字品質向上の効果がない。しかし、筆記具用としてはこれに限定されない。より好ましくは1%以上8%以下である。
【0064】
又、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテルとはジエチレングリコールモノブチルエーテルおよび/またはトリエチレングリコールモノブチルエーテルを示すが、印字品質改良のための浸透性の必要レベルとして、20%以下の添加が好ましい。20%を超えると印字品質向上の効果が頭打ちであり、逆に粘度上昇の弊害が生じる。より好ましくは0.5〜10%である。
【0065】
本発明で用いるインクにおいては、前記浸透剤の助剤として、インクの浸透性を制御し、更にノズルの耐目詰まり性、インクの保湿性、あるいは浸透剤の溶解性を向上する目的で前述もしくは他の界面活性剤、並びに、高沸点低揮発性の多価アルコール類、あるいはそれらのモノエーテル化物、ジエーテル化物、若しくはエステル化物等の親水性高沸点低揮発性溶媒等を、1種で又は2種以上を組合せて、使用することができる。
【0066】
インクジェットのノズル面やペン先で乾燥を抑えるために水溶性のあるグリコール類としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、チオジグリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、及び、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンチオール等がある。
【0067】
又、本発明においてはノズル前面でインクが乾燥して詰まることを抑制するために、多くの種類の糖類を用いることもできる。単糖類および多糖類があり、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の他にアルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類を用いることができる。そしてその添加量は0.05%以上で30%以下がよい。0.05%未満ではインクがヘッドの先端で乾燥して詰まる目詰まり現象を回復させる効果は少なく、30%を超えるとインクの粘度が上昇して適切な印字ができなくなる。一般的な糖類である単糖類および多糖類のグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等のより好ましい添加量は3〜20%である。アルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類はインクにしたときの粘度が高くなり過ぎない程度の添加量にする必要がある。加えて、これらの糖類をインクに添加する場合は、微生物がインク中に発生する可能性が少なからず高まるので、その対策として防腐剤等をインクに添加することが必要となる。
【0068】
その他に水と相溶性を有し、インクに含まれる水との溶解性の低いグリコールエーテル類やインク成分の溶解性を向上させ、さらに被記録体たとえば紙に対する浸透性を向上させ、あるいはノズルやペン先の目詰まりを防止するために用いることのできるものとして、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1から4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホランなどがあり、これらを適宜選択して使用することができる。
【0069】
又、pH調整剤、溶解助剤あるいは酸化防止剤としてジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類およびそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、4級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸(水素)カリウム、炭酸(水素)ナトリウム、炭酸(水素)リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩など、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸およびその塩などを挙げることができる。
【0070】
pH調整剤は、ヘッド部材の耐久性とインクの安定性の観点から、インクのpH値が約7〜10になる量であることが好ましい。
【0071】
又、本発明の顔料分散液、これを含有するインクは、必要に応じて、その他の添加剤、例えば、防カビ剤、防腐剤、又は防錆剤として、安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベゾチアゾリン−3−オン、3,4−イソチアゾリン−3−オン、もしくは4,4−ジメチルオキサゾリジン等のオキサゾリジン系化合物、あるいはアルキルイソチアゾロン、クロルアルキルイソチアゾロン、ベンズイソチアゾロン、ブロモニトロアルコールおよび/またはクロルキシレノール等を含むことができる。更に、ノズル乾燥防止の目的で、尿素、チオ尿素、及び/又はエチレン尿素等を含むこともできる。
【0072】
又、本発明になるインクにはさらに紙や特殊紙等の媒体への浸透性を制御するため、他の界面活性剤を添加することも可能である。添加する界面活性剤は本実施例に示すインク系との相溶性のよい界面活性剤が好ましく、界面活性剤のなかでも浸透性が高く安定なものがよい。その例としては、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などがあげられる。両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体などがある。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などの含フッ素系界面活性剤などがある。
【0073】
又、その他の市販の酸化防止剤、紫外線吸収剤なども用いることができる。その例としてはチバガイギー社のTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024など、あるいはランタニドの酸化物などがある。
【0074】
更に粘度調整剤としては、ロジン類、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、アラビアゴムスターチなどを必要に応じて用いることでできる。
【0075】
本発明におけるインクの諸物性は適宜制御することができるが、好ましい態様によれば、インクの粘度は10mPa・秒以下であるのが好ましく、より好ましくは5mPa・秒以下(20℃)である。この粘度範囲のインクは、インク吐出ヘッドから安定に吐出される。また、インクの表面張力も適宜制御することができるが、25〜50mN/m(20℃)であるのが好ましく、より好ましくは30〜40mN/m(20℃)である。
【0076】
本発明におけるインクのゼータ電位は、分散体濃度が0.001〜0.01重量%になるようにイオン交換水で希釈した希釈液として測定した場合の、20℃、pH8〜pH9における分散体のゼータ電位の絶対値が40mV以上であることが好ましい。より好ましくは45mV以上であり、更により好ましいゼータ電位の絶対値は50mV以上である。ゼータ電位の絶対値が20mV以下の分散体の場合、インクの保存安定性が低下する。
【0077】
【作用】
本発明によるインクカートリッジを開発する過程で本発明者らは以下の知見を得た。但し、本発明は以下の推論によって限定されるものではない。
【0078】
本発明のインクカートリッジは、負圧発生手段として膜弁によりインクの漏れ出しを防止するため、前述のような多孔質材を用いてインクの保持力を確保する方法と異なり、流体抵抗を大きくすることなくカートリッジ内に収容できるインク量を増量することができる。
【0079】
ただし、膜弁を使用する場合であっても特開平8−174860号のあるようにインク収容室が上部にひとつだけだと、インク量に見合う圧力が膜弁に作用することから、その結果、底面積を抑えつつ、インク収容量を増加させる場合、膜弁の開弁時の負圧を大きくする必要がある。この場合、インク残量が少なくなった時点、つまりインクの水頭圧が規定値よりも低下した時点で印字品質の低下が発生するか、もしくは、印字品質を重視してインクレベルを所定の範囲に維持しようとするとインク残量が多くなってしまうという問題がある。
【0080】
そこで本発明ではインク収容室を下部インク収容室と上部インク収容室に分け、下部インク収容室から上部インク収容室にインクを吸い上げてから、負圧発生手段(膜弁)を介して記録ヘッドに供給するため、インク消費にともなうインクカートリッジ内のインク量による負圧発生手段にかかる圧力の変化分が低減され、常に安定してインクジェットヘッドにインクを供給することが可能となる。
【0081】
また本発明のインクカートリッジに用いるインクは、その分散ポリマー中の芳香環の量がポリマーの20%以上であることにより、疎水性の表面を有する顔料に好適に吸着することが可能であり、インク中において顔料から脱離し難くなる。さらにこのような分散体を着色剤とした本発明の水性インクは、従来から使用されていた親水性の高い分散樹脂を使用したインクと比較して、記録紙表面に留まりやすく、したがって印字物は非常に高い印字濃度を有する特性を有するものとなった。
【0082】
高い印字濃度を得られるその理由は明確には分かっていないが、インクが記録ヘッドより吐出され、記録媒体である紙に着弾した瞬間に、着色剤である分散体が速やかに凝集して紙上に残る為だと推定される。
【0083】
従って、前述のようなインク貯蔵容器としてのカートリッジと収納されるインクによる本発明のインクカートリッジは、高濃度でにじみない画像を形成できるインクを、高速に印字する記録ヘッドに対して、安定的に大量に供給できることが可能となる。
【0084】
しかしながら、上記のように優れたインクカートリッジであっても、長期保存時の物性や、長期間放置後の吐出性、又は印字濃度確保において、本来の特性を確保できない場合があることを本発明者らは確認した。
【0085】
本発明者らが推定するに、インクの分散ポリマーの製造工程において重合が不完全なポリマー成分が不純物として混入した場合、このような不完全なポリマー成分は顔料表面への吸着力が弱いと考えられ、従ってインク中に浸透剤として添加される界面活性剤や親水性有機溶剤等の影響によってインクの液性成分中に遊離ポリマーとして溶解すると推定される。その結果、上記のようなインク特性の低下が発生したと考えられる。
【0086】
本発明者らは、分散ポリマーの製造において、製造工程の最適化や、予め限外濾過等の洗浄を実施することで、インクの液性成分中におけるこれらの遊離ポリマー量を一定量以下に抑え、上記のようなインク保存時における物性値変動(保存安定性の低下)やインクジェットヘッドからの吐出特性の低下、及び印字物の印字濃度低下等の問題を解消することに成功した。本発明によるインクカートリッジは以上のような知見によって得られた結果である。
【0087】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0088】
(カートリッジの実施例)
まず、本発明のインクカートリッジにおいてインクの収納容器であるカートリッジの構造について詳細な図示した実施例に基づいて説明する。
【0089】
図1(イ)、(ロ)、及び図2(イ)〜(ニ)は、それぞれ本発明のインクカートリッジの一実施例の外観を示すものであって、インクカートリッジ1は、一方の面が開口した扁平な矩形状の有底箱型の容器本体2と、この開口を封止する蓋体3とを主体として構成されている。挿入方向の先端側、この実施例では底面の、長手方向の一方に偏するようにインク供給口4が、上部の側方にはそれぞれ係止部材5、6が容器本体2と一体に形成されている。
【0090】
インク供給口側に偏して位置する係止部材5は、挿入方向の先端側、この実施例では下端より若干上部を回動支点5aとし、かつ上部が外側に拡開可能に形成され、また対向する他方の係止部材6は、係止部材5と協働してインクカートリッジの把持を補助するように形成されている。
【0091】
これら係止部材5、6は、その側面が幅方向の位置を規制するガイド部材となるように、キャリッジに設けられた挿入口の幅に対応する幅として構成されている。
【0092】
またインク供給口側の係止部材5の下部には基板の一方の面に複数の電極7aが形成され、他方の面に半導体記憶素子が形成された記憶手段7が設けられ、他方の係止部材6の下部にはバルブ収容室8が形成されている。
【0093】
インク供給口4の近傍で、かつ容器の中央領域側にはインクカートリッジの挿抜方向に延び、かつ少なくとも先端側が開口したスリット部9が形成されている。このスリット部9は、少なくともインク供給口4の先端がキャリッジのインク供給針に到達する以前にインク供給口の開口面がインク供給針に対して直交するように規制できる長さ、及び幅となるように構成されている。
【0094】
一方、インクカートリッジが装着されるキャリッジ100は、図3に示したように底面に記録ヘッド101を設けるとともに、記録ヘッド101に連通するインク供給針102を設けて構成されている。インク供給針102が設けられている領域から離れた領域には押圧部材、この実施例では板バネ103が設けられ、またインク供給針102との間に位置決め用の凸片104がカートリッジの挿抜方向に延出形成されている。また、インク供給針102の側の側壁105には電極106が配置され、その上部に係止部材5の突起5bと係合する凹部107が形成されている。
【0095】
このような構造を採ることにより、図4(イ)に示したようにインク供給口4を奥側として挿入し、板バネ103に抗して押え込むと、スリット部9が凸片104に規制されるため、一方に偏して設けられた板バネ103によりインク供給口4の側が下方となるように回転力(図中、矢印K)を受けるとしても、姿勢が規定の挿抜方向、この実施例では上下方向に平行となるように規制される。
【0096】
さらにインクカートリッジ1をバネ103に抗して押し込むと、図4(ロ)に示したように係止部材5の突起5bが、係止部材5の全体の弾性に抗して凹部107に落ち込んで係合する。これにより係止部材5を把持している指に明確なクリック感が伝わり、ユーザーは、インクカートリッジ1がキャリッジ100に確実に装着されたことを判定できる。
【0097】
装着された状態では、インクカートリッジ1の記憶手段7の電極7aが設けられている面が、係止部材5の突起5bにより挿抜方向の位置を規制されてバネ103による付勢力(図中、矢印Kの力)によりキャリッジ100の電極106に押し付けられているため、印刷時の振動に関わりなく、確実にコンタクトを維持する。
【0098】
一方、交換等によりインクカートリッジ1をキャリッジ100から取り外す場合には、係止部材5を容器本体2側に弾圧すると、係止部材5は、下端より若干上部の5aを回動支点として回動し、係止部材5の突起5bが凹部107から離れる。この状態でインクカートリッジ1は、バネ103の付勢力によりガイド片104にガイドされてインク供給針102に平行に移動し、インク供給針102に曲げ力などを作用させることなく取り外すことができる。
【0099】
図5(イ)、(ロ)は、同上インクカートリッジを構成する容器本体2の一実施例を、その表裏の構造で示すものであって、容器本体2の内側には、略水平方向、より詳細にはインク供給口4の側が若干下方となるように延びる壁10により上下に分割されている。
【0100】
下部領域には第1インク収容室11が、また上部は、壁10を底面とするように容器本体2の壁12と一定の間隙を持たせて大気連通路13を形成するように枠部14により区画されている。枠部14は、底部に連通口15aが形成された垂直な壁15により分割され、一方の領域を第2インク収容室16として、また他方の領域を第3インク収容室17として形成されている。
【0101】
第1インク収容室11に対向する領域には、第2インク収容室16と容器本体2の底面2a(第1インク収容室11の底部)とを接続する吸い上げ流路18が形成されている。吸い上げ流路18は、記録ヘッドでのインク消費量に対応できる程度の断面積に形成され、その下端に第1インク収容室11に開口し、かつ毛細管力によりインクを保持できる吸い込み口18aが、また上端が第2インク収容室16の底部に連通するように流出口18bが開口するように形成されている。
【0102】
吸い上げ流路18の吸い込み口18aの近傍には連通口19a、19bを備えた壁19が形成されている。またこの吸い上げ流路18に対向する箇所には図6に示したように容器本体2に外部からインクの注入のための開口20、及び第1インク収容室11と連通する開口21が形成されている。この吸い上げ流路18は、容器本体2の表面に凹部18c(図5(ロ))を形成し、この凹部18cを遮気性フィルム95(図8、図9)により封止することにより構成されている。
【0103】
第3インク収容室17は、枠部14の上面14aと一定の間隙を隔てて壁22、24、26により、また第4のインク収容室23は壁10、24、26、27により区画されている。壁22に連続して差圧弁収容室33(図9)の裏面に連通する流路が壁24により区画されている。
【0104】
壁24の下部には壁10との間に連通口26aを備えた区画壁26が、また枠部14との間には下部に連通口27aを備えた区画壁27を設けてインク流路28が形成されている。インク流路28の上部は、フィルタ室となる貫通穴29を介してカートリッジ1の表面側に連通している。この貫通穴29には多孔質材からなるフィルタ55(図8)が挿入されている。なお、図中符号2bは、記憶手段7を収容する凹部を示す。
【0105】
貫通穴29は、図6に示したように壁27に連続するように形成された壁30により分離され、凹部30aを介してインク流路28の上端に連通し、容器本体2の表面側の水滴形の凹部30bを介して差圧弁収容室33の裏面の壁34、及び壁24で区画された流路の上部の凹部24aに連通されている。
【0106】
図5(ロ)に示すように、差圧弁収容室33の下部とインク供給口4とは、容器本体2の表面に形成された凹部35と、この凹部35を覆う遮気性フィルム95とからなる流路により接続されている。
【0107】
また、容器本体2の表面には、可及的に流路抵抗が高くなるように蛇行する細溝36と、これの周囲に幅広の溝37と、第2インク収容室16に対向する領域に矩形状の凹部38が形成されている。矩形状の凹部38にはさらに一段下がった位置に枠部38aと離散的にリブ38bが形成され、この枠部38aで固定するように撥インク性と通気性とを備えた通気性フィルム98(図9)を張設して大気通気室が区画形成されている。
【0108】
凹部38の底面には貫通穴38cが形成されていて、第2インク収容室16の壁39で区画された細長い領域39a(図5(イ))に連通されている。また凹部38の、通気性フィルム98よりも表面側の領域には細溝36の一端36aが連通している。領域39aの他端は、ここに形成された貫通穴40、容器本体2の表面に形成された溝41、及び貫通穴41aを介してバルブ収容室8に連通されている。
【0109】
一方、バルブ収容室8の裏面には凹部43が形成され、またバルブ収容室8の先端に第2インク収容室16の近傍に開口する貫通穴43aが形成されている。これら凹部43から貫通穴43aの領域は、フィルム61により封止されて大気連通用の流路を形成している。この貫通穴43aは、枠部14と一定の間隙をもって形成された垂直に延びる壁44と蓋体3とに区画された流路45に連通している。流路45の上端45aは、壁44と枠部14とで形成された流路46、または大気連通路13を介して第1インク収容室11の上端に連通されている。
【0110】
このような流路構造を採ることにより、第1インク収容室11のインクのバルブ収容室8への流れ込みや、また第1インク収容室11のインクの揮散を防止しつつ、第1インク収容室11を大気に開放させることができる。
【0111】
バルブ収容室8の、カートリッジ挿入側の先端、この実施例では図5(ロ)に示したように下部の窓8aにより開放されていて、記録装置本体のキャリッジ100に設けられた複数の識別片110、111、112(図3)及びバルブ作動杆が進入可能な後述する識別ブロック70が下部に、また大気開放弁65が上部に装着されている。
【0112】
このような状態で、図8に示したように容器本体2の開口側の枠部14、壁10、15、22、24、26、27、30、及び39には、フィルム94を熱溶着等により接着して上部に位置するインク収容室(16、17、23)を形成するとともに、下部のインク収容室(11)とは分離された状態で、蓋体3が気密的に嵌着されている。また、バルブ収容室8には弁体65と板バネ62を収容した状態で、フィルム96が貼着されている。
【0113】
他方、図9に示したように容器本体2の表面側には差圧弁収容室33に膜弁52、バネ50、膜弁52の排出口側と凹部35を連通させる溝53aを備えた膜弁押え板53とを装着してから、差圧弁収容室33、細溝36、溝41、凹部30b、凹部35、凹部38、凹部18cを覆うことができるサイズの1枚の遮気性フィルム95が貼着される。
【0114】
またバルブ収容室8の凹部43に対向する領域には遮気性を有し、作動杆により容易に弾性変形する膜61を貼着して、その表面側に識別片70が爪70a、70bにより装着、固定されている。
【0115】
また、インク供給口4は、インク供給針102(図3)の挿通により開弁する弁体90を、バネ91により常時閉弁状態、この実施例では下方に押圧するように挿入して、弁体90、及びインク供給針と容器本体2との気密性を確保するパッキン92を挿入して構成されている。なお、図中符号93は、インク供給口に貼着されて流通工程でのインクの漏れ出しを防止し、かつインク供給針102の挿通が可能な保護用のフィルムを示す。
【0116】
図10は、前述の差圧弁収容室33の近傍の断面構造を示すものであって、差圧弁収容室33には、バネ50とエラストマー等の弾性変形可能な材料により構成され、中心に貫通穴51を備えた膜弁52が収容されている。膜弁52はその周囲を環状の厚肉部52aと、この厚肉部52aと一体的に形成された枠部54とを備え、この枠部54を介して容器本体2に固定され、またバネ50は、一端を膜弁52のバネ受け部52bに、他端を容器本体2に嵌着された膜弁押え板53により支持されている。
【0117】
このような構成により、フィルタ55を通過したインクは、インク流通口34aを通過して膜弁52に阻止される。この状態でインク供給口4の圧力が低下すると、膜弁52がバネ50の付勢力に抗して弁座部34bから離れるため、貫通穴51を通過し、凹部34により形成された流路を経由してインク供給口4に流れ込む。
【0118】
インク供給口4のインク圧力が所定の値に上昇すると、膜弁52がバネ50の付勢力に負けて弁座部34bに弾接され、インクの流通が遮断される。このような動作を繰返すことにより一定の負圧を維持しながらインクをインク供給口4に排出することができる。
【0119】
図11(イ)、(ロ)は、大気連通用のバルブ収容室8の断面構造を示すものであって、バルブ収容室8を区画する壁には貫通穴60が穿設され、ここに弁体65の凸部65aが移動可能に装填されている。また本体65bの側が、下端を突起63により固定され、中央部を突起64により規制された板バネなどの弾性部材62に常時閉弁するように押圧されている。弁体65は、貫通穴60の側にエラストマ等の比較的柔らかい材料で形成された封止部65cを設けて構成するのが望ましい。
【0120】
また膜98の他面に装着された識別ブロック70は、図12に示したように、爪70a、70bにより容器本体2の穴2c、2d(図7)に固定され、カートリッジの挿入方向に平行な複数、この実施例では3本の溝71、72、73が形成されている。これらの1つの溝232にはインクカートリッジの挿入方向側、この実施例では下端が弁体65の凸部65aを押圧するためのアーム74が形成されている。
【0121】
アーム74は、若干内側に位置するように回動支点74aにより回動可能で、かつ引き抜き側、この実施例では上部側が作動杆113(図11)の進入路に斜めに突出するように構成されている。また、それぞれの溝71〜73には、図3、4に示したようにキャリッジ100の識別片110、111、112の先端に対向するように突出部71a、72a,73aが形成されている。
【0122】
このような構成により、アーム74の位置を一定とする一方、これら突出部71a、72a、73aの位置、及び識別片110、111、112の先端の位置を、カートリッジのインクの種類に対応させて設定することにより、カートリッジの誤装着を防止することができる。これら突出部71a、72a、73aの位置は、カートリッジの挿抜方向だけではなく、カートリッジの厚み方向の位置を変えることにより、3次元的な配列構造を採ることが可能となり、識別領域形成面積の拡大を招くことなく多くのインク種を識別することができる。
【0123】
このような識別ブロック70は、記録装置では突出部の位置により識別されるが、組立時やまたユーザーが容易にインクの種類を識別できるように、例えば識別ブロックをインクと同系統の色としたり、またインクの種類を示すマークを施しておいてもよい。
【0124】
また、インクカートリッジがホルダに装着されて作動杆113によりアーム74が押圧されると、弁体65が移動して開弁状態となる。これにより、第2インク収容室16の近傍に開口する貫通穴43aとフィルム61により形成された大気連通用の流路、及び枠部14と一定の間隙をもって形成された垂直に延びる壁44と蓋体3とに区画された流路45、流路46、大気連通路13を介して第1インク収容室11の上端を大気に開放させる。
【0125】
すなわち、バルブ収容室8は、貫通穴41aにより容器本体2の溝41に連通し、他端の貫通穴40、フィルムで被われた領域39a、貫通穴38cを介して凹部38の底面に連通している。そして凹部38は、通気性フィルム98を介して容器本体のキャピラリを構成する細溝36の一端36aに連通していて、大気に開放されている。
【0126】
次に、インク注入によりカートリッジにインクが充填されてから、インク消費によってカートリッジ内のインク量が変化していく様子を図13(I)〜(V)を用いて説明する。
【0127】
インク注入用の開口20、21からカートリッジ内の空気を排気し、その後脱気したインクを注入し、注入が終了した後に開口20、21をフィルムや栓体で封止する。この状態では、第1〜第4のインク収容室11、16、17、23、インク吸い上げ流路18、フィルタ室34、差圧弁収容室33、及び差圧弁収容室33からインク供給口4に至る空間にインクが充填された状態となる。
【0128】
なお、下部のインク収容領域、つまり第1インク収容室11は、容器本体2と蓋体3とにより密封され、また上部のインク収容領域、この実施例では第2インク収容室16、第3インク収容室17、第4インク収容室23、フィルタ室34は、容器本体2と蓋体3との間に位置するフィルム94と容器本体2とにより区画されて第1インク収容室11に連通する空間90(図10)が存在するので、インク充填量によってはこの空間にも若干のインクが浸入した状態となる場合もある。
【0129】
このように構成されたインクカートリッジは、弁等により大気との連通が断たれて保存されるため、脱気されたインクを収容している場合にはインクの脱気度が十分に維持される。
【0130】
インクカートリッジ1をカートリッジホルダに装填すると、当該ホルダに適合したインクカートリッジである場合には、インク供給口4がインク供給針に挿通される位置まで進入し、また前述したように作動杆により貫通穴60が開放され、第1インク収容室11(インク収容領域)が大気に連通し、またインク供給口4の弁体もインク供給針により開弁される。
【0131】
一方、当該ホルダに適合しない場合には、インク供給口4がインク供給針102に到達する以前、つまり少なくともインク供給口内に形成された弁体90をインク供給針102により開弁する以前にインクカートリッジの進入が阻止されるから、弁体90が封止状態を維持し、インク収容領域の大気の無用な置換を阻止してインク溶媒の蒸発を防止する。
【0132】
ホルダに正常に装着されて記録ヘッドによりインクが消費されると、インク供給口4の圧力が規定値以下に低下するから、前述したように膜弁52が開放され、またインク供給口4の圧力が規定値以上に上昇すると膜弁52が閉弁して、所定の負圧に維持されたインクが記録ヘッドにインクが流れ込む(図13(I)、なお図13(I)〜(V)におけるハッチングの領域は、第1インク収容室11〜第4インク収容室23等に存在するインクを示す)。
【0133】
記録ヘッドでのインクの消費が進行すると、第1インク収容室11のインクは、吸い上げ流路18を経由して第2インク収容室16に流れ込む。ここにインクとともに第2インク収容室16に流れ込んだ気泡は浮力により上昇するから、インクだけが下部の連通口15aを経由して第3インク収容室17に流れ込む。
【0134】
第4インク収容室23のインクは、フィルタ室34を区画する壁26の連通口26aを通過してインク流路28を上昇し、領域31からフィルタ室34の上部に流れ込む。フィルタ55を通過したインクは、貫通穴34aから差圧弁収容室33に流れ込み、前述したように膜弁52の開閉動作により所定の負圧でインク供給口4に流れ込む。
【0135】
もとより、第1インク収容室11は、大気連通路13を介して大気に連通されて大気圧に維持され、また第2インク収容室16は、連通口15aを介してのみ第3インク収容室17に連通しているから、記録ヘッドでの消費により減少したインク量に見合うインクが第1インク収容室11から第2インク収容室16に流れ込む。
【0136】
また、第1インク収容室11のインクが逆流により凹部38まで流れ込んでも、ここには通気性を備えた撥インク性の膜が設けられているから、この膜により大気との連通を維持しつつインクの流出を阻止することができる。これにより、細溝36に流れ込んだインクが固化して大気連通流路が閉塞するというような不都合を未然に防止できる。以下、第1インク収容室11にインクが存在する状態では、第1インク収容室11のインクレベルHに対応してインク供給口4に作用する負圧が徐々に増大する。
【0137】
このように、下部に位置する第1インク収容室11の底面領域のインクを、上部のインク収容室、より詳細には第2インク収容室16の底面近傍に吸い上げるから、上部に位置するインク収容室16、17、23の水頭圧は略一定となり、インクカートリッジの高さに起因する水頭圧の変化を、下方に位置するインク収容室11の水頭圧Hの変化分だけが膜弁52に直接作用する。
【0138】
このため、膜弁52を閉弁状態に維持する押圧力を下方に位置するインク収容室11の水頭圧Hの変化分に合わせて設定でき、底面積を増加させることなく、インク収容量を増加させても、つまり容器本体2を背高構造にしても、記録ヘッド及び負圧発生機構に無用に強い負圧を作用させることなく、インクを供給でき、高い印字品質を維持してインクカートリッジに収容されているインクを有効に使用することができる。
【0139】
このようにして第1インク収容室11のインクが吸い上げ流路18から第2インク収容室16に吸い上げられて無くなると(図13(II))、吸い上げ流路18の吸い込み口18aが毛細管力(吸い込み口18aに形成されたメニスカスの力)によりインクを保持する。したがって、第2インク収容室16のインクが第1インク収容室11に流れ込むことにはならない。また、このように第1インク収容室11のインクが無くなった状態で、カートリッジが記録装置から引き抜かれても、上部のインク収容領域のインクが第1インク収容室11に流れ込むのを可及的に防止できる。
【0140】
記録ヘッドによりインクが消費されて第2インク収容室16に負圧が作用すると、大気に開放された第1インク収容室11から空気の吸引を伴いつつ第2インク収容室16のインクが連通口15aを経由して第3インク収容室17に間欠的に流れ込む。第2インク収容室16、第3インク収容室17及び第4インク収容室23のインクが消費されている期間においては、各収容室16、17、23のインクレベルにほとんど関係なく一定した圧力が負圧発生機構を構成する膜弁52に作用し、印字品質の低下を招くことなく、インクカートリッジのインクを有効に記録ヘッドに供給できる。
【0141】
第2インク収容室16のインクが無くなると(図13(III))、第3インク収容室17に残存しているインクが連通口26aを経由して記録ヘッドに供給される。さらに第3インク収容室17のインクが消費されると、第4インク収容室23のインクが消費される(図13(IV))。連通孔15a、26a、27aは、図示したようにインクが消費される過程でメニスカスを形成してインクを保持できる程度のサイズの開口として形成されている。
【0142】
このようにして壁26で区画された一方の領域のインクが連通口26aまで低下し(図13(IV))、さらに第4インク収容室23のインクが消費された時点でも(図13(V))、壁10が、インク流路28の側を下方となっているため、インク流路28の下端に位置する連通孔27aは、インクに常時浸漬された状態となるから、フィルタ室34が大気に開放されることがない。したがって、この状態で記録ヘッドでのインク消費を中止させると、記録ヘッドへの気泡の流入を防止できる。
【0143】
このように上部のインク収容領域を壁15、26により複数の領域に区画し、複数の上部インク収容室16、17、23を形成し、かつ少なくともそれぞれの底部領域で連通させることにより、上部インク収容室16、17、23のインク量の減少に関わりなく膜弁52に対する水頭圧を略一定の範囲内に維持することができ、図13(II)以後、図13(IV)の過程、つまり第1インク収容室11のインクが消費され、第2〜第4インク収容室16、17、23のインクが記録ヘッドの供給されている状態では、第1インク収容室11にインクが残存している状態に比較してインク供給口24の負圧の変動を大幅に抑えることができる。
【0144】
また、第2インク収容室16より下流側のインクが消費される過程において、例えば第2インク収容室16の上部に形成された空気層(トラップされた空気による空間)が環境温度の上昇で膨張してインクが第1インク収容室11に逆流しても、第1インク収容室11でトラップされ、その後逆流した第1インク収容室11のインクは前述した様に第2インク収容室16に吸い上げられて消費することが可能である。これにより環境温度の変化によって差圧弁に過大な圧力が作用するのを未然に防止でき、インク供給口24からのインクの漏れ出しを確実に防止できる。
【0145】
ところで、図14に示したように同一の記録装置に装着されても、他のインクよりも多く消費されるインク、例えばブラックインクを収容するカートリッジは、インク容量を多く構成しておくとカートリッジの交換周期を平均化できて使用者にとっては便利である。
【0146】
このカートリッジは、容器本体2’は、開口面の形状は同一で、その深さW2だけが大きくなるように構成されている。これにより、容器本体2’の深さW2を変更するだけで収容可能なインク量を増加することができる。
【0147】
そして、インク供給口4’、記憶手段7’は、その配列中心が、他のカートリッジと同様に容器本体2の表面から一定の位置W1となるように設定されている。なお、識別ブロック70’は、容器本体2’の表面側に装着されているから、当然に同一の位置に配置されることになる。ただ、係止部材5’は、装填時にインク供給口4’に確実に押圧力が作用するように、インク供給口4’と同様に容器本体2’の側に偏して配置されている。
【0148】
ところで、容器本体2’の厚みW2が深くはなっているものの、第4のインク収容室23’から差圧弁収容室にインクを誘導するインク流路の断面積や、差圧弁を構成する膜弁52’は、前述の薄く構成されたカートリッジと同等で十分である。このため、前述のインク流路28に対応するインク流路は、容器本体2’の表面側に凹部47を設け、この凹部47を容器本体2’の表面に貼着するフィルム95’により封止して形成されている。凹部47は、その下端で貫通穴47aにより第4のインク収容室23’、また上端で貫通穴47bによりフィルタ室となる貫通穴29’の、容器本体2’の内側に連通している。
【0149】
また差圧弁収容室33’の裏面の流路を区画する壁24’は、図19に示したように表面からの高さJを容器本体の幅W2より小さく形成され、フィルム48により封止されている。これにより、第4のインク収容室23’の底部の貫通穴47aから吸い上げられたインクは、凹部47とフィルム95’とで形成されたインク流路を上昇し、凹部47の上端の貫通穴47bからフィルタ55’を通過して容器本体2’の表面側に流出する。なお、貫通穴47bと貫通穴29’とは、凹部29a’により連通されている。
【0150】
その後、容器本体2’の表面側の水滴形の凹部30b’を経由してから壁24’とフィルム48とで区画された領域、つまり差圧弁収容室33’の裏側に凹部24a’から流れ込み、以後前述の実施例と同様に、インク供給口4’の負圧に応じて膜弁52’を開閉させてインク供給口4’に流れ込む。また、貫通孔47bは、インクの消費過程でメニスカスによりインクを保持できる程度の開口を持つように構成されている。
【0151】
第4のインク収容室23’から差圧弁収容室33’に至る流路を上述のように構成すること、つまり壁24’の高さを単純に容器本体2’と同等の高さに構成する場合に比較して、デッドスペースを少なくして、インクを有効に利用することができる。
【0152】
本実施例においては、第3のインク収容室17’と第4のインク収容室23’は、差圧弁収容室の裏面の流路を区画する壁24’の高さが、上部のインク収容室を区画する枠部14’や壁10よりも低く形成されているので、容器本体の厚み方向で実質的に一つのインク収容室を構成することになる。
【0153】
なお、このように構成されたインクカートリッジは、さらに図8、図9、及び図18に示したように、容器本体2、2’の表面に貼付された流路構成用のフィルム95、95’に重ねるようにして装飾用フィルム97、97’が重ね張りされて商品に仕上げられる。
【0154】
この装飾用フィルム97、97’は、インク注入口20、21、20’、21’に対向する領域に舌部97a、97a’を形成し、この舌部97a、97a’でインク注入口20、21、20’、21’を封止しておくのが望ましい。
【0155】
上述の実施例においては、第2インク収容室16、16’と第3インク収容室17、17’とは、壁15、15’の下部に形成された凹部15a、15a’とだけで連通させて、第2インク収容室16、16’に気泡トラップ室としての機能を付与しているが、図20、図21に示したように壁15、15’の上部にも凹部を形成すると、顔料インクのように沈降が生じやすいインクであっても、第2インク収容室16に沈降した顔料を凹部15a、15a’から、また溶媒成分を上部の凹部15b、15b’から第3インク収容室23、23’に流入させ、顔料とインク溶媒との撹拌を促してインク濃度の均一化を図ることができる。
【0156】
その他、上述の実施例においては、レイアウトの都合上、差圧弁収容室を上部のインク収容室側に配置しているが、下部のインク収容室、または上部と下部のインク収容室とに跨がるように配置し、流路により上部に位置するインク収容室のインクを膜弁の流入側に連通させ、また膜弁の流出側を流路によりインク供給口に連通させても同様の作用を奏する。
【0157】
また、実施例のインクカートリッジにおいては、上部に3つのインク収容室を形成しているが、1つだけであっても上述した膜弁に作用する水頭圧の変化を低減できる効果を奏する。また2つ以上形成して底部で連通させることにより、各インク収容室のインクが消費されていく段階でできる空間を気泡トラップ空間として機能させて負圧発生機構への気泡の流入を可及的に防止し、もって印字品質の低下を防止できる。
【0158】
さらに実施例においては、インク供給口をカートリッジの底面に形成されているが、側面に形成しても同様の作用を奏することは明らかである。なお、このような構造を採る場合には、カートリッジの挿入工程に合わせて作動する部材もその挿入方向の対応するように向きを変更することで対応可能である。
【0159】
図22は本発明のインクカートリッジを用いたインクジェット記録装置の全体構成を示す概略図である。
【0160】
図22において、キャリッジ100は、キャリッジモータ202によって駆動されるタイミングベルト203を介し、ガイド部材204に案内されてプラテン205の軸方向に往復運動し得るように構成されている。
【0161】
キャリッジ100の下面部には、インクジェット式の記録ヘッド101が記録紙206に対向するように装着され、キャリッジ100の上面部には、前記記録ヘッド101にインクを供給するインクカートリッジ1、1’が着脱可能に装着されている。
【0162】
また、前記キャリッジ100の移動領域における非印字領域には、キャップ部材207aを有するキャッピング手段207が配置されている。そして、前記記録ヘッド101が直上に移動したときに上昇し、記録ヘッド101のノズル形成面を封止し得るように構成されている。このキャッピング手段207の下方には、前記キャップ部材207aの内部空間に負圧を与えるためのポンプユニット208が配置されており、負圧を記録ヘッド101に作用させてインクを吸引するクリーニング手段としての機能を有する。
【0163】
前記キャッピング手段207における印字領域側部の近傍には、ゴムなどの弾性板を備えるワイピング手段209が水平方向に進退可能となるように配置されており、キャリッジ100がキャッピング手段207側において往復移動する際に、記録ヘッド101の移動経路上にワイピング手段209が進出されるように構成されており、記録ヘッド101のノズル形成面のワイピングを実施する。
(芳香環量、顔料:ポリマー比、平均粒径、遊離ポリマー量、及び表面張力の測定方法)
【0164】
以下の実施例、又は比較例で得られた各測定値(芳香環量、顔料:ポリマー比、平均粒径、遊離ポリマー量、表面張力)は、次に示す方法で測定した。
【0165】
<芳香環量の測定>
各実施例、又は比較例で得た分散ポリマー溶液の一部を取り出し、溶媒成分を留去してポリマー成分のみを取り出し、DMSO−d6に溶解させ、13C−NMR及び1H−NMR(ブルカー社(ドイツ)製AMX400)を使用して、ポリマー中の芳香環量を測定した。
【0166】
<顔料:ポリマー比の測定>
各実施例、又は比較例で得た分散液の一部を取り出し、0.1mol/l濃度HClを添加して分散体のみを酸析後、乾燥重量を測定した。次に、アセトンを用いたソックスレー抽出法で分散ポリマーのみを取り出し、乾燥重量を測定することで、顔料:ポリマーの重量比を算出した。
【0167】
<平均粒径の測定>
各実施例、又は比較例で得た水性インクの分散体濃度が0.001〜0.01重量%に(インクにより測定時の最適濃度が若干異なる為)なるようにイオン交換水で希釈し、その分散粒子の20℃における平均粒径を粒度分布計(大塚電子社製DLS−800)で測定した。
【0168】
<遊離ポリマー量の測定>
各実施例、又は比較例で得た水性インクを必要量取り出し、遠心加速(条件:2500G×60分)によりインク中における分散体等の固形分を沈殿成分として沈降させた。
【0169】
次に上清成分として得られたインクの液性成分を減圧加熱し、その溶媒成分を蒸発させ、液性成分中に存在する遊離ポリマーの重量を測定することで、インク全重量に対する遊離ポリマー量を測定した。
【0170】
<表面張力の測定>
各実施例、又は比較例で得た水性インクの20℃の表面張力を表面張力計(協和界面科学社製CBVP−A3)で測定した。
【0171】
(実施例1)
(1)分散液の製造:分散液A1
本実施例1に用いる分散液A1の製造には無機顔料であるカーボンブラック顔料のカラーブラックFW18(デグサ株式会社製)を用いた。
まず、攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、メチルエチルケトン15部、スチレン21部、α−メチルスチレン5部、ブチルメタクリレート16部、ラウリルメタクリレート10部、アクリル酸2部、t―ドデシルメルカプタン0.3部を入れて70℃に加熱し、別に用意したスチレン100部、アクリル酸15部、ブチルメタクリレート50部、t−ドデシルメルカプタン1部、メチルエチルケトン20部およびアゾビスイソブチロニトリル3部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させた。次に、反応容器にメチルエチルケトンを添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成した。
【0172】
この分散ポリマー溶液の一部と取り出し、溶媒成分を留去後、全重量に対する芳香環の割合を前述の「芳香環量の測定」に記載の方法で測定したところ、分散ポリマー全重量に対する芳香環量は58%であった。
【0173】
上記分散ポリマー溶液40部とカーボンブラック顔料であるカラーブラックFW18(デグサ社製)30部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン35部を混合し、ホモジナイザーで30分以上分散処理し、イオン交換水を350部添加して、さらに1時間分散する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去後、ブフナー漏斗で濾別と洗浄を繰り返す。次に濾別された顔料内包樹脂分散体に、イオン交換水、及び中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら適宜加えてpH7.5に調整してから、平均孔径5μmのメンブランフィルタで濾過することで、分散体A1(カーボンブラック顔料を芳香環量が58%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液1を得た。
【0174】
表1に分散液A1に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、顔料:ポリマー比については前記「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0175】
(2)インクの調整
本実施例1では、前記実施例1(1)で得た分散液A1、アセチレングリコール系界面活性剤であるオルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるジエチレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2−アルキレングリコールである1,2−ペンタンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0176】
なお、インクの調整では分散体A1の含有量が8.0%となるように分散液A1を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A1の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0177】
また、下記本実施例1のインク組成中の「残量」として添加されるイオン交換水には、インクの腐食防止のためプロキセルXL−2、インクジェットヘッド部材の腐食防止のためベンゾトリアゾール、及びインク系中の金属イオンの影響を低減するためにEDTA・2Na塩を、それぞれインク全重量に対して0.01%、0.01%、0.02%となるように添加したものを用いた。
【0178】
分散体A1<120> 8.0%
オルフィンE1010 0.5%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0%
1,2−ペンタンジオール 2.5%
ジエチレングリコール 3.0%
グリセリン 11.5%
トリメチロールプロパン 6.0%
トリプロパノールアミン 0.3%
イオン交換水 残量
【0179】
(3)インクジェットカートリッジの製造
前記実施例1(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図14〜19で説明したカートリッジに注入することで、本実施例1に使用するインクカートリッジを得た。
【0180】
なお、カートリッジの各部品は、予め良く洗浄して各部品に付着したイオン性物質やゴミを除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0181】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記実施例1(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は1.21%であった。
【0182】
(5)印字評価
印字画像評価には圧電素子(ピエゾ素子)を使用したインクジェットヘッドによりインクを吐出するインクジェットプリンタStylus C80(セイコーエプソン株式会社製)に、前記実施例1(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、評価紙として、ヨーロッパ、アメリカおよび日本の市販されている普通の紙として(a)Conqueror紙、(b)Reymat紙、(c)Mode Copy紙、(d)Rapid Copy紙、(e)Xerox P紙、(f)Xerox 4024紙、(g)Xerox 10紙、(h)NeenhaBond紙、(i)Ricopy 6200紙、及び(j)Hammer mill Copy Plus紙を使用した。
【0183】
なお、評価は目視により行い、以下の評価基準に基づいておこなった。
A:全てのポイントの文字において、にじみがわからない。
B:5ポイント以下の文字で、わずかににじみが認められる(実用レベル)。
C:にじみのため、5ポイント以下の文字が太く見える。
D:にじみが著しく、5ポイント以下の文字が判別できない。
印字評価の結果を表2に示す。
【0184】
(6)吐出安定性評価
前記実施例1(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、A4版Xerox P紙に200ページ連続印字して、印刷の乱れ具合を観察することで吐出安定性を評価した。
【0185】
なお、評価は目視により行い、以下の評価基準に基づいておこなった。
A:全く印刷乱れが発生しない。
B:印刷乱れが見られたが10箇所未満である(実用レベル)。
C:10箇所以上100箇所未満の範囲で印刷乱れがある。
D:100箇所以上印刷乱れが発生した。
吐出安定性評価の結果を表3に示す。
【0186】
(7)保存安定性評価
前記実施例1(3)で製造したインクカートリッジを、それぞれ60℃/1週間、−20℃/1週間放置して、放置前後におけるカートリッジ内のインクの発生異物と物性値変動(粘度、表面張力)について評価した。
なお、評価は以下の評価基準に基づいておこなった。
A:60℃あるいは−20℃放置後の異物量・物性値と放置前のそれとの比が、0.99〜1.01の範囲内である。
B:比が0.95〜0.99、あるいは1.01〜1.05の範囲内である(実用レベル)。
C:比が0.90〜0.95、あるいは1.05〜1.10の範囲内である。
D:比が0.90未満、あるいは1.10より大きい。
保存安定性評価結果を表3に示す。
【0187】
(実施例2)
(1)分散液の製造:分散液A2
本実施例2に用いる分散液A2の製造には、有機顔料である不溶性モノアゾイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)を用いた。
【0188】
まず、攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、スチレン12部、ラウリルメタクリレート9部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(NKエステルM90G;新中村化学株式会社製)15部、イソブチルメタクリレートマクロマー(AW−6S;東亜合成株式会社製)5部、メタクリル酸3部、メチルエチルケトン5部、メルカプトエタノール0.3部を入れて70℃に加熱し、別に用意したスチレン25部、ラウリルメタクリレート30部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(NKエステルM90G;新中村化学株式会社製)15部、イソブチルメタクリレートマクロマー(AW−6S;東亜合成株式会社製)15部、メタクリル酸10部、メチルエチルケトン20部、メルカプトエタノール1.0部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させた。次に、反応容器にメチルエチルケトンを適宜添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成した。
【0189】
この分散ポリマー溶液の一部と取り出し、溶媒成分を留去後、全重量に対する芳香環の割合を前述の「芳香環量の測定」に記載の方法で測定したところ、分散ポリマー全重量に対する芳香環量は26%であった。
【0190】
上記分散ポリマー溶液40部と有機顔料である不溶性モノアゾイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)30部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン40部を混合し、ホモジナイザーで30分以上分散処理し、イオン交換水を380部添加して、さらに1時間分散する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去後、水を適宜加えながら、限外濾過システムのミリタン(ミリポア社製)による分画分子量10万の限外濾過を実施した。最後に、イオン交換水、及び中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら適宜加えてpH7.5に調整してから、平均孔径5μmのメンブランフィルタで濾過することで、分散体A2(不溶性モノアゾイエロー顔料を芳香環量が26%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液A2を得た。
【0191】
表1に分散液A2に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0192】
(2)インクの調整
本実施例2では、前記実施例2(1)で得た分散液A2、アセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノール440(エアープロダクツ株式会社製)とオルフィンSTG(日信化学工業株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるトリエチレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2−アルキレングリコールである1,2−ペンタンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0193】
なお、インクの調整では分散体A2の含有量が7.0%となるように分散液A2を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A2の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0194】
また、下記本実施例2のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
分散体A2<120> 7.0%
サーフィノール440 0.2%
オルフィンSTG 0.2%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0%
1,2−ペンタンジオール 2.0%
2−ピロリドン 3.0%
グリセリン 13.5%
トリメチロールエタン 5.0%
トリエタノールアミン 0.1%
イオン交換水 残量
【0195】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例2(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図1〜9で説明したカートリッジに注入することで、本実施例2に使用するインクカートリッジを得た。
【0196】
なお、カートリッジの各部品は、予め良く洗浄して各部品に付着したイオン性物質やゴミを除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0197】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記実施例2(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は0.47%であった。
【0198】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタStylus C80(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記実施例2(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0199】
(6)吐出安定性評価
前記実施例2(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0200】
(7)保存安定性評価
前記実施例2(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0201】
(実施例3)
(1)分散液の製造:分散液3
本実施例3に用いる分散液A3の製造には、有機顔料であるキナクリドンレッド顔料(C.I.ピグメントレッド122)を用いた。
【0202】
まず、攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、スチレン12部、スチレンマクロマー(AS−6;東亜合成株式会社製)6部、n−ドデシルメタクリレート3.5部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート12部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(NKエステルM40G;新中村化学株式会社製)25部、メチルエチルケトン5部、メルカプトエタノール0.3部を入れて70℃に加熱し、別に用意したスチレン15部、スチレンマクロマー(AS−6;東亜合成株式会社製)8部、n−ドデシルメタクリレート7部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート20部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(NKエステルM40G;新中村化学株式会社製)30部、メチルエチルケトン50部、アゾビスイソブチロニトリル1.5部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させた。次に、反応容器にメチルエチルケトンを適宜添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成した。
【0203】
この分散ポリマー溶液の一部と取り出し、溶媒成分を留去後、全重量に対する芳香環の割合を前述の「芳香環量の測定」に記載の方法で測定したところ、分散ポリマー全重量に対する芳香環量は36%であった。
【0204】
上記分散ポリマー溶液40部と有機顔料であるキナクリドンレッド顔料(C.I.ピグメントレッド122)25部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン40部を混合し、ホモジナイザーで30分以上分散処理し、イオン交換水を380部添加して、さらに1時間分散する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去後、水を適宜加えながら、限外濾過システムのミリタン(ミリポア社製)による分画分子量10万の限外濾過を実施した。最後に、イオン交換水、及び中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら適宜加えてpH7.5に調整してから、平均孔径5μmのメンブランフィルタで濾過することで、分散体A3(キナクリドンレッド顔料を芳香環量が38%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液A3を得た。
【0205】
表1に分散液A3に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0206】
(2)インクの調整
本実施例3では、前記実施例3(1)で得た分散液A3、アセチレングリコール系界面活性剤であるオルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)とサーフィノール104PG50(エアープロダクツ株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるトリエチレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2―アルキレングリコールである1,2−ヘキサンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0207】
なお、インクの調整では分散体A3の含有量が7.5%となるように分散液A3を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A3の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0208】
また、下記本実施例3のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
【0209】
分散体A3<140> 7.5%
オルフィンE1010 0.1%
サーフィノール104PG50 0.4%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 1.0%
1,2−ヘキサンジオール 2.5%
トリエチレングリコール 2.0%
2−ピロリドン 4.0%
グリセリン 13.8%
トリメチロールプロパン 6.0%
イオン交換水 残量
【0210】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例3(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図1〜9で説明したカートリッジに注入することで、本実施例3に使用するインクカートリッジを得た。
【0211】
なお、カートリッジの各部品は、予め良く洗浄して各部品に付着したイオン性物質やゴミを除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0212】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記実施例3(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は0.64%であった。
【0213】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタStylus C80(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記実施例3(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0214】
(6)吐出安定性評価
前記実施例3(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0215】
(7)保存安定性評価
前記実施例3(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0216】
(実施例4)
(1)分散液の製造:分散液A4
本実施例4に用いる分散液A4の製造には、有機顔料であるフタロシアニンブルー顔料(C.I.ピグメントブルー15:4)を用いた。
【0217】
まず、攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、スチレン20部、ラウリルメタクリレート9部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(NKエステルM90G;新中村化学株式会社製)15部、イソブチルメタクリレートマクロマー(AW−6S;東亜合成株式会社製)5部、スチレンマクロマー(AS−6;東亜合成株式会社製)10部、メタクリル酸5部、メチルエチルケトン5部、n−ドデシルメルカプタン0.3部を入れて70℃に加熱し、別に用意したスチレン25部、ラウリルメタクリレート30部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(NKエステルM90G;新中村化学株式会社製)20部、イソブチルメタクリレートマクロマー(AW−6S;東亜合成株式会社製)15部、スチレンマクロマー(AS−6;東亜合成株式会社製)15部、メタクリル酸5部、メチルエチルケトン20部、n−ドデシルメルカプタン1.5部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させた。次に、反応容器にメチルエチルケトンを添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成した。
【0218】
この分散ポリマー溶液の一部と取り出し、溶媒成分を留去後、全重量に対する芳香環の割合を前述の「芳香環量の測定」に記載の方法で測定したところ、分散ポリマー全重量に対する芳香環量は48%であった。
【0219】
上記分散ポリマー溶液40部と有機顔料であるフタロシアニンブルー顔料(C.I.ピグメントブルー15:4)40部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン40部を混合し、ホモジナイザーで30分以上分散処理し、イオン交換水を350部添加して、さらに1時間分散する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去後、水を適宜加えながら、限外濾過システムのミリタン(ミリポア社製)による分画分子量10万の限外濾過を実施した。最後に、イオン交換水、及び中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら適宜加えてpH7.5に調整してから、平均孔径5μmのメンブランフィルタで濾過することで、分散体A4(フタロシアニンブルー顔料を芳香環量が48%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液A4を得た。
【0220】
表1に分散液A4に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0221】
(2)インクの調整
本実施例4では、前記実施例4(1)で得た分散液A4、アセチレングリコール系界面活性剤であるアセチレノールE100(川研ファインケミカル株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるプロピレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2―アルキレングリコールである1,2−ヘキサンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0222】
なお、インクの調整では分散体A4の含有量が8.0%となるように分散液A4を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A4の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0223】
また、下記本実施例4のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
分散体A4<100> 8.0%
アセチレノールE100 0.5%
プロピレングリコールモノブチルエーテル 3.0%
1,2−ヘキサンジオール 1.0%
トリエチレングリコール 3.0%
グリセリン 13.8%
トリメチロールプロパン 5.2%
トリプロパノールアミン 0.2%
イオン交換水 残量
【0224】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例4(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図1〜9で説明したカートリッジに注入することで、本実施例4に使用するインクカートリッジを得た。
【0225】
なお、カートリッジの各部品は、予め良く洗浄して各部品に付着したイオン性物質やゴミを除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0226】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記実施例4(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は0.52%であった。
【0227】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタStylus−C80(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記実施例4(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0228】
(6)吐出安定性評価
前記実施例4(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0229】
(7)保存安定性評価
前記実施例4(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0230】
(実施例5)
(1)分散液の製造:分散液A5
本実施例5に用いる分散液A5の製造には、ペリノンオレンジ顔料(C.I.ピグメントオレンジ43)を用いた。それ以外は、前記実施例1(1)に記載と同様の方法により、分散体A5(ペリノンオレンジ顔料を芳香環量が58%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液5を得た。
【0231】
表1に分散液A5に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0232】
(2)インクの調整
本実施例5では、前記実施例5(1)で得た分散液A5、アセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノール485とサーフィノールTG(いずれもエアープロダクツ株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2―アルキレングリコールである1,2−ペンタンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0233】
なお、インクの調整では分散体A5の含有量が10.0%となるように分散液A5を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A5の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0234】
また、下記本実施例5のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
【0235】
分散体A5<150> 10.0%
サーフィノール485 0.5%
サーフィノールTG 0.2%
ジプロピレングリコールモノブチルエーテル 2.0%
1,2−ペンタンジオール 2.0%
N−メチル−2−ピロリドン 5.0%
グリセリン 11.2%
トレハロース 5.8%
イオン交換水 残量
【0236】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例5(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図1〜9で説明したカートリッジに注入することで、本実施例5に使用するインクカートリッジを得た。
【0237】
なお、カートリッジの各部品は、予め良く洗浄して各部品に付着したイオン性物質やゴミを除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0238】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記実施例5(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は1.65%であった。
【0239】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタStylus C80(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記実施例5(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0240】
(6)吐出安定性評価
前記実施例5(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0241】
(7)保存安定性評価
前記実施例5(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0242】
(実施例6)
(1)分散液の製造:分散液A6
本実施例6に用いる分散液A6の製造には、ベンズイミダゾロンブラウン顔料(C.I.ピグメントブラウン32)を用いた。それ以外は、前記実施例1(1)に記載と同様の方法により、分散体A6(ベンズイミダゾロンブラウン顔料を芳香環量が70%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液A6を得た。
【0243】
表1に分散液A6に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0244】
(2)インクの調整
本実施例6では、前記実施例6(1)で得た分散液A6、アセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノール420、及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルであるジエチレングリコールモノブチルエーテルを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0245】
なお、インクの調整では分散体A6の含有量が5.0%となるように分散液A6を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A6の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0246】
また、下記本実施例6のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
【0247】
分散体A6<140> 5.0%
サーフィノール420 0.1%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0%
1,6−ヘキサンジオール 2.0%
テトラエチレングリコール 5.5%
グリセリン 13.5%
トリエタノールアミン 0.5%
イオン交換水 残量
【0248】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例6(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図1〜9で説明したカートリッジに注入することで、本実施例6に使用するインクカートリッジを得た。
【0249】
なお、カートリッジの各部品は、予め良く洗浄して各部品に付着したイオン性物質やゴミを除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0250】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記実施例6(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は1.97%であった。
【0251】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタStylus C80(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記実施例6(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0252】
(6)吐出安定性評価
前記実施例6(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0253】
(7)保存安定性評価
前記実施例6(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0254】
(実施例7)
(1)分散液の製造:分散液A7
本実施例7に用いる分散液A7の製造には、有機顔料であるとキナクリドンバイオレット顔料(C.I.ピグメントバイオレッド19)を用いた。それ以外は、前記実施例2(1)に記載と同様の方法により、分散体A7(キナクリドンバイオレット顔料を芳香環量が21%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液A7を得た。
【0255】
表1に分散液A7に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0256】
(2)インクの調整
本実施例7では、前記実施例7(1)で得た分散液A7、アセチレンアルコール系界面活性剤であるサーフィノール61とサーフィノールTG(いずれもエアープロダクツ株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるトリエチレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2アルキレングリコールである1,2−ペンタンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0257】
なお、インクの調整では分散体A7の含有量が6.0%となるように分散液A7を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A7の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0258】
また、下記本実施例7のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
【0259】
分散体A7<120> 6.0%
サーフィノール61 0.3%
サーフィノールTG 0.1%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 1.5%
1,2−ペンタンジオール 2.0%
ジエチレングリコール 2.0%
チオジグリコール 4.0%
グリセリン 12.6%
トリメチロールエタン 7.2%
イオン交換水 残量
【0260】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例7(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図1〜9で説明したカートリッジに注入することで、本実施例7に使用するインクカートリッジを得た。
【0261】
なお、カートリッジの各部品は、予め良く洗浄して各部品に付着したイオン性物質やゴミを除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0262】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記実施例7(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は0.38%であった。
【0263】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタStylus C80(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記実施例7(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0264】
(6)吐出安定性評価
前記実施例7(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0265】
(7)保存安定性評価
前記実施例7(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0266】
(実施例8)
(1)分散液の製造:分散液A8
本実施例8に用いる分散液A8の製造には、有機顔料であるフタロシアニングリーン顔料(C.I.ピグメングリーン7)を用いた。それ以外は、前記実施例3(1)に記載と同様の方法により、分散体A8(フタロシアニングリーン顔料を芳香環量が40%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液A8を得た。
【0267】
表1に分散液A8に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0268】
(2)インクの調整
本実施例8では、前記実施例8(1)で得た分散液A8、アセチレングリコール系界面活性剤であるオルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)とサーフィノール104(エアープロダクツ株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2−アルキレングリコールである1,2−ペンタンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0269】
なお、インクの調整では分散体A8の含有量が8.0%となるように分散液A8を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A8の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0270】
また、下記本実施例8のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
【0271】
分散体A8<110> 8.0%
オルフィンE1010 0.3%
サーフィノール104 0.1%
ジプロピレングリコールモノブチルエーテル 1.0%
1,2−ペンタンジオール 3.0%
トリエチレングリコール 2.0%
チオジグリコール 4.0%
グリセリン 13.8%
トリメチロールプロパン 6.4%
トリエタノールアミン 0.1%
イオン交換水 残量
【0272】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例8(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図1〜9で説明したカートリッジに注入することで、本実施例8に使用するインクカートリッジを得た。
【0273】
なお、カートリッジの各部品は、予め良く洗浄して各部品に付着したイオン性物質やゴミを除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0274】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記実施例8(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は0.72%であった。
【0275】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタStylus C80(セイコーエプソン株式会社製)に、前記実施例8(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0276】
(6)吐出安定性評価
前記実施例8(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0277】
(7)保存安定性評価
前記実施例8(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0278】
(比較例1)
(1)分散液の製造:分散液B1
本比較例1では、前記実施例1(1)と同様に無機顔料であるカーボンブラック顔料のカラーブラックFW18(デグサ株式会社製)を用いて、本比較例1で用いる分散液B1を製造した。
【0279】
但し、本比較例1では、インク中の遊離ポリマー量を実施例1と変更するため、意図的に前記実施例1(1)とは異なる条件で分散液を製造した。
【0280】
まず、攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、スチレン25部、α−メチルスチレン5部、ブチルメタクリレート15部、ラウリルメタクリレート10部、アクリル酸2部、t―ドデシルメルカプタン0.5部を入れ、本比較例では55℃に加熱した。別に用意したスチレン150部、アクリル酸15部、ブチルメタクリレート50部、t−ドデシルメルカプタン1部、メチルエチルケトン20部およびアゾビスイソブチロニトリル3部を滴下ロートに入れ、反応容器に滴下しながら本比較例では2時間で分散ポリマーを重合させた。次に、反応容器にメチルエチルケトンを添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成した。
【0281】
この分散ポリマー溶液の一部と取り出し、溶媒成分を留去後、全重量に対する芳香環の割合を前述の「芳香環量の測定」に記載の方法で測定したところ、分散ポリマー全重量に対する芳香環量は20%であった。
【0282】
上記分散ポリマー溶液40部とカーボンブラック顔料であるカラーブラックFW18(デグサ社製)30部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン35部を混合し、ホモジナイザーで30分以上分散処理し、イオン交換水を350部添加して、さらに1時間分散する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去後、本比較例ではブフナー漏斗での洗浄を実施せず、濾別された顔料内包樹脂分散体に、イオン交換水、及び中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら適宜加えてpH7.5に調整してから、平均孔径5μmのメンブランフィルタで濾過することで、分散体B1(カーボンブラック顔料を芳香環量が20%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液1を得た。
【0283】
表1に分散液B1に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、顔料:ポリマー比については前記「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0284】
(2)インクの調整
本比較例1では、前記比較例1(1)で得た分散液B1を使用してインクを調整した。具体的な組成を以下に示す。
【0285】
なお、インクの調整では分散体B1の含有量が8.0%となるように分散液B1を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体B1の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0286】
また、下記本比較例1のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.05%、ベンゾトリアゾールを0.02%、及びEDTA・2Na塩を0.04%となるように添加したものを用いた。
【0287】
分散体B1<140> 8.0%
非イオン系界面活性剤 1.0%
エチレングリコール 5.0%
グリセリン 15.0%
イオン交換水 残量
なお上記組成中、非イオン系界面活性剤としてエパン450(商品名;第一工業製薬株式会社製)を使用した。
【0288】
(3)インクカートリッジの製造
前記比較例1(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図14〜19で説明したカートリッジに注入することで、本比較例1に使用するインクカートリッジを得た。
【0289】
なお、比較例ではカートリッジの各部品を洗浄することなく組み立ててインクを注入した。
【0290】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記比較例1(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は3.21%であった。
【0291】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタStylus C80(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記比較例1(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0292】
(6)吐出安定性評価
前記比較例1(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0293】
(7)保存安定性評価
前記比較例1(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0294】
(比較例2)
(1)分散液の製造:分散液B2
本比較例2に用いる分散液B2の製造では、有機顔料のフタロシアニングリーン顔料(C.I.ピグメントグリーン7)を分散樹脂であるソルスパース27000(アビシア株式会社製)を使用して分散した。
【0295】
C.I.ピグメントグリーン7を15部と、ソルスパース27000を5部、ジエタノールアミン5部、2−プロパノール0.5部、及びイオン交換水74.5部をビーズミルミニゼータ(アジサワ株式会社製)により2時間分散処理を行なって分散体B2を20%(顔料:15%、分散樹脂:5%)含有する比較例2で使用する分散液B2を得た。
【0296】
(2)インクの調整
本比較例2では、前記比較例2(1)で得た分散液B2を使用してインクを調整した。本比較例の具体的な組成を以下に示す。
【0297】
なお、インクの調整では分散体B2の含有量が8.0%となるように分散液B2を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体B2の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0298】
また、下記本比較例2のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.05%、ベンゾトリアゾールを0.02%、及びEDTA・2Na塩を0.04%となるように添加したものを用いた。
【0299】
分散体B2<150> 8.0%
非イオン系界面活性剤 1.0%
エチレングリコール 5.0%
グリセリン 15.0%
イオン交換水 残量
なお上記組成中、非イオン系界面活性剤としてノイゲンEA160(商品名;第一工業製薬株式会社製)を使用した。
【0300】
(3)インクカートリッジの製造
前記比較例2(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図1〜9で説明したカートリッジに注入することで、本比較例2に使用するインクカートリッジを得た。
【0301】
なお、カートリッジの各部品は、予め良く洗浄して各部品に付着したイオン性物質やゴミを除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0302】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記実施例8(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は4.16%であった。
【0303】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタStylus C80(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記比較例2(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0304】
(6)吐出安定性評価
前記比較例2(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0305】
(7)保存安定性評価
前記比較例2(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0306】
【表1】
【0307】
【表2】
【0308】
表1、2の結果から明らかなように比較例で用いるようなインクカートリッジは印字品質が悪く、本発明によるインクカートリッジを用いると印字品質が良好なことが分かる。
【0309】
以上のように、本発明のインクカートリッジを用いることにより、いずれの紙種に対してもにじみが低減される高品質な印字記録を得ることができる。
【0310】
【表3】
【0311】
表3の結果から明らかなように、インク中の遊離ポリマー量を2%以下抑えた本発明によるインクカートリッジは優れた吐出安定性、保存性安定性を確保し、表2より印字品質も優れていることがわかる。また、遊離ポリマー量が1%以下の場合は格段に吐出安定性、保存性安定性が優れたものになることがわかる。一方、比較例にあるように遊離ポリマー量が3%を越えた場合は、印字品質、吐出安定性、保存安定性ともに、実用レベルに至らないことがわかる。
【0312】
以上の結果から分かるように、本発明によるインクカートリッジを用いることで良好な印字品質、吐出安定性を得ることができ、しかもインクカートリッジ自体の保存性安定性を優れていることがわかる。
【0313】
【発明の効果】
本発明によるインクカートリッジは、昨今の高画質化、高速化の為に、ノズルが微細化され、高い周波数で駆動するインクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタに好適に用いることができる。しかも本発明によるインクカートリッジは保存安定性にすぐれ、さらに良好な印字画像を得ることができ、印字画像の乾燥性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図(イ)、(ロ)は、それぞれ本発明のインクカートリッジの一実施例の表裏の外観を示す斜視図である。
【図2】図(イ)乃至(ニ)は、それぞれ同上インクカートリッジの上面図、正面図、底面図、及び側面図である。
【図3】同上インクカートリッジが装着されるキャリッジの一実施例を示す断面図である。
【図4】図(イ)、(ロ)は、それぞれインクカートリッジをキャリッジに装着する過程を示す図である。
【図5】図(イ)、(ロ)は、それぞれインクカートリッジを構成する容器本体の一実施例を、開口面及び表面の構造で示す斜視図である。
【図6】同上インクカートリッジを構成する容器本体の底面の構造を、開口面側から見た状態で示す斜視図である。
【図7】同上インクカートリッジを構成する容器本体の開口面の構造を示す正面図である。
【図8】同上インクカートリッジの一実施例を示す分解斜視図である。
【図9】同上インクカートリッジの一実施例を示す分解斜視図である。
【図10】差圧弁収容室の近傍の構造を拡大して示す断面図である。
【図11】図(イ)、(ロ)は、それぞれ大気連通用のバルブ収容室の構造を閉状態、及び開状態で拡大して示す断面図である。
【図12】図(イ)、(ロ)は、それぞれ識別用ブロックの一実施例を示す斜視図と正面図である。
【図13】図(I)〜(V)は、それぞれ同上インクカートリッジのインク量の変化を模式的に示す斜視図である。
【図14】図(イ)〜(ハ)は、それぞれ同上インクカートリッジを大容量タイプに構成した場合の実施例を示す斜視図と底面図である。
【図15】同上大容量タイプのインクカートリッジを構成する容器本体の底面の構造を、開口面側から見た状態で示す斜視図である。
【図16】同上大容量タイプのインクカートリッジを構成する容器本体の表面側の構造を示す斜視図である。
【図17】同上大容量タイプのインクカートリッジの一実施例を示す容器本体の開口面の構造を示す正面図である。
【図18】同上大容量タイプのインクカートリッジの一実施例を示す組立斜視図である。
【図19】図(イ)、(ロ)は、それぞれ同上大容量タイプのインクカートリッジのインク供給口の構造を示す断面図、及びインク供給口を中心とする構造を示す断面図である。
【図20】小容量タイプのインクカートリッジの他の実施例を、容器本体の構造で示す正面図である。
【図21】大容量タイプのインクカートリッジの他の実施例を、容器本体の構造で示す正面図である。
【図22】本発明のインクカートリッジを装着したインクジェット記録装置の概要を示す斜視図である。
【符号の説明】
1、1’ カートリッジ
2、2’ 容器本体
3、3’ 蓋体
4、4’ インク供給口
5、6、5’、6’ 係止部材
5a 突起
7、7’ 記憶手段
8 バルブ収容室
9 スリット部
70、70’ 識別ブロック
71〜73 溝
71a、72a、73a 突出部
100 キャリッジ
101 記録ヘッド
102、102’ インク供給針
103、103’ 板バネ
106 電極
110、111、112 識別片
113 作動杆
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷信号に対応して印刷を実施するインクジェットプリンタ、ペンプロッター等の印字記録装置において使用するインクカートリッジに関するものであり、特にはインクジェットプリンタの記録ヘッドに対してインクを適正な負圧状態で供給することのできるインクカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタは、通常、記録用紙の紙幅方向に往復動するキャリッジに印刷信号に対応してインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッドを搭載して、外部のインクタンクから記録ヘッドにインクを供給するように構成されている。このようなインクタンクはインク貯蔵容器と容器内に収容されたインクにより構成され、小型の記録装置にあっては取り扱いの便を考慮してキャリッジに着脱可能に搭載できるようなカートリッジ形式で使用される。
【0003】
また近年インクジェットプリンタに対して、印字品質の向上や、印刷速度の高速化が求められている。そのためインクカートリッジについても、高濃度でにじみない画像を形成できるインクを収容保持し、高速に印字する記録ヘッドに対して、そのようなインクを安定的に大量に供給できることが必要であり、従って、貯蔵容器としてのカートリッジと、カートリッジ内に収容されたインクの両面からの特性の向上が必須となってきている。
【0004】
高濃度でにじみない画像を形成できるインクの着色剤としては、顔料等の分散体の使用が従来から提案されており、例えば、顔料を水に分散させる手段としては特開平1−301760号公報にあるように界面活性剤を用いる方法、または特公平5−64724号公報にあるような疎水部と親水部を有する分散ポリマーを用いて分散させる方法がある。また、着色剤の表面を高分子で被覆する方法等も試みられており、インクジェットプリンタ用インクとしては、特開昭62−95366号公報にあるように、染料インクを内包したマイクロカプセルを用いる方法、特開平1−170672号公報にあるように、水に不溶な溶媒に色素を溶解または分散させこれを界面活性剤で水中に乳化したマイクロカプセル化色素を用いる方法、特開平5−39447号公報にあるように、水、水溶性溶媒並びにポリエステルの少なくとも1種に昇華性分散染料を溶解または分散させた内包物を含むマイクロカプセルを記録液に使用する方法、特開平6−313141号公報では着色された乳化重合粒子と水性材料からなるインキ組成物、特開平10−140065号公報では転相乳化反応や酸析法による方法等が検討されている。一方、インクを収容するカートリッジについては、通常、記録ヘッドからのインクの漏れ出しを防止するため、多孔質材を収容し、この多孔質材にインクを含浸させて毛細管力によりインクを保持するように構成されている。
【0005】
しかしながら、前述のような印字品質や印刷速度の向上に対応する為、インクジェットプリンタの記録ヘッドのノズル開口数が多くなり、単位時間当りのインク消費量が増加する傾向にあることにより、望ましくはインクカートリッジに収容するインク量を増量する必要があり、多孔質材の毛細管力でインクを保持するには、高さ、つまり水頭に限界があるため、底面積を増加させて体積を大きくせざるを得ず、キャリッジのサイズが大きくなり、結果としてプリンタが大型化するという問題が発生する。
【0006】
これに対して平均孔径が小さい多孔質材を用いてインクの保持力を上げる方法も考えられるが、インクの流れに対する流体抵抗が大きくなり、記録ヘッドのインク消費量に対応して安定にインクを供給することが困難となるばかりでなく、インク供給口から離れた領域のインクを記録ヘッドに確実に供給することが困難となり、結果としてインク貯蔵容器のインクが消費し切れなくなり、無駄が生じるという新たな問題が生じる。
【0007】
また、インク含浸用として利用するこれら多孔質材には、種々の反応性物質や不純物が付着していたり、残留している場合があり、従って、これらの多孔質材にインクを含浸させ、インク中へこれらの反応性物質や不純物が多量に溶出した場合、インク中の分散体を凝集させ、吐出インクの飛行曲がりを生じたり、ノズルを閉塞させる可能性がある。
【0008】
さらに加えて、これら多孔質材にインクを含浸させた場合、インク中の成分毎の多孔質材への吸着量が異なる場合がある為、インクカートリッジに収納する前のインクと、インクカートリッジ内に収納され多孔質材に一度接触したインクとでは微妙に成分比が異なるという弊害も発生する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明はこのような課題を解決するインクカートリッジを提供するものであり、すなわちインクカートリッジ内に収容されるインクが、普通紙上でもにじみが少なく高い発色の印字画像を得られ、しかも速乾性に優れるインクであり、インクの貯蔵容器であるカートリッジが、インクを収容する容器の底面積を抑えつつ、インクの水頭圧を可及的に小さくでき、かつ印字品質の低下を招くことなく有効使用できるインク収容量を増大させることができ、無駄なくカートリッジ内のインクを使い切ることができるものであり、しかも収容しているインクの物性等に影響を与えることなく長期保存可能な貯蔵容器(カートリッジ)である。
【0010】
本発明の目的とするところは上記のようなインク貯蔵容器(カートリッジ)と容器内に収容されたインクとからなるインクカートリッジを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によるインクカートリッジは、インクを収容するインク収容室、インクを供給するインク供給口、前記インク収容室に大気を連通させる大気連通部を備えた容器と、容器内に収容されたインクと、インクを容器内に保持する負圧発生手段とを有するインクカートリッジであって、前記インク収容室が、前記大気連通部を備えた下部インク収容室と、前記負圧発生手段を途中に配置したインク流路によりインク供給口と結ばれた上部インク収容室とから構成され、前記下部インク収容室と前記上部インク収容室がインク吸い上げ流路により接続されたものであり、前記容器内に収容されたインクの着色剤が、顔料をポリマーで包含して水に分散可能とした分散体で、前記ポリマー中の芳香環の量が20重量%(以下単に%と示すものは重量%を示す)以上70%以下であり、インクの液性成分中に含有される遊離ポリマー量が3%以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい態様においては、前記負圧発生手段が、膜弁を主体とする差圧弁により構成されたものであることを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様においては、前記差圧弁が、前記インク供給口の負圧が一定以上に高まった時点で開弁してインク収容室のインクをインク供給口に流出させることを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい態様においては、前記大気連通部が、下部インク収容室に接続し、キャピラリを介して大気に連通する大気連通流路と、前記大気連通流路の途中に配置され、常時は閉弁状態を維持し記録装置に装着された状態で開弁する大気連通弁とから構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の好ましい態様においては、前記下部インク収容室と前記上部インク収容室とが、前記容器に略水平方向に伸びる壁を設けて区画されたものであることを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい態様においては、前記インク吸い上げ流路の流入口が、インクを毛細管力により保持できる程度の断面積であることを特徴とする。
【0017】
本発明の好ましい態様においては、前記上部インク収容室と前記負圧発生手段とを接続する流路の、前記負圧発生手段よりも上流にフィルタが配置されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の好ましい態様においては、前記容器内に収容されたインクの液性成分中に含有される遊離ポリマー量が2%以下であることを特徴とする。
【0019】
尚、本明細書において、水性インクの「液性成分」とは、インク中の分散体などの固形部分と、それらの固形部分を分散して保持する液状部分とに分けた場合の液状部分を意味する。従って、その「液性成分」には、顔料分散液、又はインクを調製する際にベヒクル(インク自体の液状部分)中に混入する不純物も含まれている。
【0020】
また、本明細書において、インク中の「遊離ポリマー」とは、インク中において顔料表面を包含していない(顔料表面に吸着していない)ポリマーを意味する。したがって、例えば、インクを遠心処理して上清成分と沈殿成分とに分離し、その上清成分をTOC(全有機炭素計)や、重量法(蒸発乾燥させ、樹脂量を測定する方法)等、公知の任意の方法で測定することによって、「遊離ポリマー」の構造やその量を測定することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明のインクカートリッジに収容されるインクは、安定性に優れ、普通紙上ではにじみが少なく高発色であり、光沢メディア上では十分な発色に加えて定着性・光沢性を有する。さらにインクジェット記録にあってはインクジェットヘッドからのインクの吐出安定性に優れることなどの特性が要求されていることに鑑み、鋭意検討した結果によるものである。
【0022】
以下、本発明のインクカートリッジに用いるインクについて詳細に説明する。インクの着色剤として含有される分散体は、顔料を分散ポリマーで包含して水に分散可能にし、且つその分散ポリマー中の芳香環の量がその分散ポリマーの20%以上70%以下であることを特徴とする。
【0023】
ここで、芳香環の量が分散ポリマーの20%以上であることで、その分散ポリマーは疎水性表面の顔料に好適に吸着することが可能となる。又、その吸着した分散ポリマーは本発明で好適に用いる添加剤を添加しても顔料からの脱離が生じ難くなるため安定なものとなる。又、芳香環の量が70%を超えると水中での分散が難しくなり、逆に安定性が得られなくなる。このような芳香環の量はより好ましくは20%以上50%以下である。又、顔料と分散ポリマーの重量比を30:70〜90:10とすることで、分散体の分散安定性及びこの分散体を水性インクとした場合の印字画像の定着性・光沢性・発色性・にじみ・分散安定性に対して、優れた効果が得られる。顔料が30:70より少ないと、この分散体を用いた水性インクにおいて十分な印字濃度が得られにくく、十分な印字濃度を発現させるために必要な量の分散体を加えるとインク粘度が高くなって、インクジェットヘッドより吐出し難くなる。逆に90:10より多いと、インクの安定性が得られにくく、さらに印字画像の定着性・光沢性に対して所望の効果が得られ難くなる。
【0024】
前記ポリマーで包含する顔料として用いることのできる無機顔料または有機顔料として、以下に例示する。
【0025】
ブラックインク用の無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、若しくはチャネルブラック等のカーボンブラック(C.l.ピグメントブラック7)類を挙げることができる。
【0026】
カラーインク用の有機顔料としては、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、縮合アゾ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ペリレン顔料等を使用することができる。
【0027】
具体的には、例えばイエローインク用の有機顔料としては、C.l.ピグメントイエロー1(ハンザイエローG),2,3(ハンザイエロー10G),4,5(ハンザイエロー5G),6,7,10,11,12(ジスアゾイエローAAA),13,14,16,17,24(フラバントロンイエロー),55(ジスアゾイエローAAPT),61,61:1,65,73,74(ファストイエロー5GX),75,81,83(ジスアゾイエローHR),93(縮合アゾイエロー3G),94(縮合アゾイエロー6G),95(縮合アゾイエローGR),97(ファストイエローFGL),98,99(アントラキノン),100,108(アントラピリミジンイエロー),109(イソインドリノンイエロー2GLT),110(イソインドリノンイエロー3RLT),113,117,120(ベンズイミダゾロンイエローH2G),123(アントラキノンイエロー),124,128(縮合アゾイエロー8G),129,133,138(キノフタロンイエロー),139(イソインドリノンイエロー),147,151(ベンズイミダゾロンイエローH4G),153(ニッケルニトロソイエロー),154(ベンズイミダゾロンイエローH3G),155,156(ベンズイミダゾロンイエローHLR),167,168,172,173(イソインドリノンイエロー6GL),180(ベンズイミダゾロンイエロー)などを挙げることができる。
【0028】
また、マゼンタインク用の有機顔料としては、C.l.ピグメントレッド1(パラレッド),2,3(トルイジンレッド),4,5(lTR Red),6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38(ピラゾロンレッドB),40,41,42,88(チオインジゴボルドー),112(ナフトールレッドFGR),114(ブリリアントカーミンBS),122(ジメチルキナクリドン),123(ペリレンバーミリオン),144,146,149(ペリレンスカーレッド),150,166,168(アントアントロンオレンジ),170(ナフトールレッドF3RK),171(ベンズイミダゾロンマルーンHFM),175(ベンズイミダゾロンレッドHFT),176(ベンズイミダゾロンカーミンHF3C),177,178(ペリレンレッド),179(ペリレンマルーン),185(ベンズイミダゾロンカーミンHF4C),187,188,189(ペリレンレッド),190(ペリレンレッド),194(ペリノンレッド),202(キナクリドンマゼンタ),209(ジクロロキナクリドンレッド),214(縮合アゾレッド),216,219,220(縮合アゾ),224(ペリレンレッド),242(縮合アゾスカーレット),245(ナフトールレッド),又は、C.I.ピグメントバイオレット19(キナクリドン),23(ジオキサジンバイオレット),31,32,33,36,38,43,50などを挙げることができる。
【0029】
更に又、シアンインク用の有機顔料としては、C.l.ピグメントブルー15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6(以上いずれもフタロシアニンブルー),16(無金属フタロシアニンブルー),17:1,18(アルカリブルートナー),19,21,22,25,56,60(スレンブルー),64(ジクロロインダントロンブルー),65(ビオラントロン),66(インジゴ)等を挙げることができる。
【0030】
又、ブラックインク用の有機顔料としては、アニリンブラック(C.l.ピグメントブラック1)等の黒色有機顔料を用いることができる。
【0031】
更に又、イエロー、シアン、又はマゼンタインク以外のカラーインクに用いる有機顔料としては、
C.I.ピグメントオレンジ1,2,5,7,13,14,15,16(バルカンオレンジ),24,31(縮合アゾオレンジ4R),34,36(ベンズイミダゾロンオレンジHL),38,40(ピラントロンオレンジ),42(イソインドリノンオレンジRLT),43,51,60(ベンズイミダゾロン系不溶性モノアゾ顔料),62(ベンズイミダゾロン系不溶性モノアゾ顔料),63;C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン),10(グリーンゴールド),36(塩臭素化フタロシアニングリーン),37,47(ビオラントロングリーン);あるいは
C.I.ピグメントブラウン1,2,3,5,23(縮合アゾブラウン5R),25(ベンズイミダゾロンブラウンHFR),26(ペリレンボルドー),32(ベンズイミダゾロンブラウンHFL)等を挙げることができる。
【0032】
本発明で用いるインクにおいては、前記の顔料を1種で又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0033】
使用する顔料は、ポリマーで内包してマイクロカプセル化する以前に予め粉砕処理をして微粒化してあることが望ましい。顔料の粉砕処理はジルコニアビーズ、ガラスビーズ、無機塩等の粉砕メディアを使用して、湿式粉砕あるいは乾式粉砕により実施することができ、粉砕装置としてはアトライター、ボールミル、振動ミル等を挙げることができる。
【0034】
顔料を粉砕処理により微粒化する場合、少なからず粉砕メディア(ビーズ)の成分が顔料中に混入することが考えられる。具体的には、粉砕メディアにガラスビーズを使用すれば顔料中にSiの混入が、ジルコニアビーズの場合はZrの混入が考えられる。更に、粉砕装置の部材からの混入も考えられ、ステンレス部材から構成される粉砕装置を使用した場合には、Fe、Cr、Ni等の混入が考えられる。従って、粉砕処理後は顔料の洗浄、限外ろ過等により粉砕メディアや粉砕装置から発生するコンタミ成分を除去することが望ましい。
【0035】
粉砕メディアに水溶性の無機塩(NaCl、BaCl2、KCl、Na2SO4等)を用いて粉砕処理をする方法(ソルトミリング法)もあり、この場合、理論上はイオン交換水等による洗浄で混入した粉砕メディア成分を除去できる。但し、表面積の大きい顔料と上記のような無機塩を混合する方法でもあるので、粉砕処理後の洗浄が不十分の場合、分散メディアである無機塩が多量に残留する可能性もあり注意が必要である。
【0036】
また、顔料の粒経は5μm以下が好ましく、より好ましくは0.3μm以下の粒子からなる顔料を、さらに好ましくは0.01〜0.15μmの粒子からなる顔料が好ましい。また水性インクとしてはインクジェットに用いる場合、これらの顔料としての添加量は、0.5〜30%が好ましいが、さらには1.0〜12%が好ましい。これ以下の添加量では、印字濃度が確保できなくなり、またこれ以上の添加量では、インクの粘度増加や粘度特性に構造粘性が生じ、インクジェットヘッドからのインクの吐出安定性が悪くなる傾向になる。
【0037】
前述の顔料を包含するポリマーを形成する物質の具体例として2重結合を有するアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基あるいはアリル基を有するモノマーやオリゴマー類を用いることができる。例えばスチレン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ブチルメタクリレート、(α,2,3または4)−アルキルスチレン、(α,2,3または4)−アルコキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、α−フェニルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他アルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のジエチレングリコールまたはポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、その他含フッ素、含塩素、含珪素(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、(メタ)アクリル酸等の1官能の他に架橋構造を導入する場合は(モノ,ジ,トリ,テトラ,ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールおよび1,10−デカンジオール等の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはFのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等アクリル基やメタクリル基を有する化合物を用いることができる。
【0038】
さらに、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマーからなる群から選ばれた1種以上を主成分とするようにこれらのポリマーを添加しながら作成することもできる。
【0039】
また、ポリマーを形成する物質の疎水基としては少なくともアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選ばれた1種以上であることが好ましいが、ベンゼン環の量を本発明の範囲にすることが好ましい。そして、前述の親水性官能基を有する物質の親水基が少なくともカルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基およびそれらの塩基であることが好ましい。
【0040】
ポリマーを合成する際の重合開始剤は過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウムの他に、過硫酸水素やアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、過酢酸、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロキシパーオキシド、パラメンタンヒドロキシパーオキシドなどラジカル重合に用いられる一般的な開始剤を用いることができる。
【0041】
本発明における、乳化重合では連鎖移動剤を用いることもできる。例えば、t−ドデシルメルカプタンの他にn−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、キサントゲン類であるジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド、あるいはジペンテン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテンなどが挙げられる。
そして、前述の分散体を用いることによって安定性の優れたインクジェット記録用インクとすることができる。さらに前述の分散体を筆記具用インクにも好適に用いることができる。
【0042】
また、前述の顔料をポリマーで包含した着色剤が少なくとも重合性基を有する分散剤と共重合性モノマーとの共重合体で該顔料を包含したものであることが好ましい。ここで、重合性基を有する分散剤とは少なくとも疎水基、親水基および重合性基を有するもので、重合性基はアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基あるいはビニル基などであり、共重合性基も同じくクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基あるいはビニル基などになる。
【0043】
インクジェット記録用インクとしては粒径が比較的そろっていた方が目詰まりや吐出の安定性の観点から好ましいので、顔料をポリマーで包含した着色剤は、乳化重合または転相乳化法によって製造されることが好ましい。また、ポリマー中のベンゼン環が本発明の範囲にあり、好適な分散剤による好適な分散により、堅固なポリマーになり、分散安定性が得られ、長期に安定性が得られるので好ましい。
【0044】
前述の顔料をポリマーで包含した分散体は、重合性基を有する分散剤で顔料を分散させた後、分散剤と共重合可能なモノマーと重合開始剤を用いて水中で乳化重合されたものであることが好ましい。
【0045】
本発明に用いるインクは少なくとも前述の分散体を含有することを特徴とし、その含有量は、顔料の重量濃度として、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1.0〜12重量%、最も好ましくは2〜10重量%である。インクの顔料含有量が0.5重量%未満になると印字濃度が不充分となることがあり、30重量%を越えると、インク粘度の点からインク中に保湿成分を添加する量が制限され、インクジェットヘッドのノズル目詰まりが発生しやすくなったり、インクの粘度が高くなり安定吐出が得られないことがある。
【0046】
また、本発明に用いるインクは必要に応じて、その製造工程におけるインクまたは分散液に対して、逆浸透膜、限外濾過、電気透析、またヌッチェによる水洗等の精製処理を実施することができる。特にインクの液性成分中に遊離ポリマーが多量に存在する場合は、その弊害(保存安定性の低下や吐出安定性の低下等)を防止する為に、上述のような精製処理を実施することが好ましい。
【0047】
上記のような精製処理により液性成分中における遊離ポリマー量を一定量以下に抑えることにより、インク保存時における物性値変動(保存安定性の低下)を防止し、インクジェットヘッドからの吐出特性を維持し、そして従来の水性インクカートリッジと比較して格段に高い、印字物の印字濃度を確保することができる。このようなインク液性成分中の遊離ポリマー量は3%以下であることが好ましく、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。
【0048】
続いてインク中の分散体以外の添加成分について詳しく説明する。
本発明で用いるインクは、インクの記録媒体である紙等の記録メディアに対する浸透性を高める目的で浸透剤を添加する場合があり、更にその放置安定性の確保、インク吐出ヘッドからの安定吐出達成等の目的で保湿剤、溶解助剤、浸透制御剤(浸透剤)、粘度調整剤、pH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、防黴剤、腐食防止剤、分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート等種々の添加剤を添加する場合がある。
【0049】
浸透剤はその添加により印字物の乾燥性が向上し、連続して印刷しても前の印字部分が次の媒体の裏面に転写されることがなくなる為、特に印字記録の高速化を可能とする為には添加が必須となる。更にインクジェットプリンタ用インクとして使用する場合、泡立ちが少ないこと、インクジェットヘッドのノズル内で乾燥し難い特性を有するものが特に好適である。
このような浸透剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、グリコールエーテル類、アルキレングリコール類から選ばれた1種又は2種以上であることが好ましい。これらの浸透剤を用いることで普通紙上のにじみを低減でき、光沢メディア上での線幅を適当な程度に調整することができる。
【0050】
浸透剤として好適に使用できるアセチレングリコール系界面活性剤、又はアセチレンアルコール系界面活性剤の具体的な製品名として、例えば、サーフィノールTG、サーフィノール104、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノール61、サーフィノール82(以上いずれもエアープロダクツ株式会社製)、もしくはオルフィンE1010、オルフィンE1004、オルフィンSTG(以上いずれも日信化学工業株式会社製)、あるいはアセチレノールE00、アセチレノールE40、アセチレノールE100(以上いずれも川研ファインケミカル株式会社製)等を挙げることができる。
【0051】
その他にも浸透剤として好適に使用できる界面活性剤としてシリコン系界面活性剤を挙げることができ、例えば、BYK−307、BYK−331、BYK−333、BYK−348(以上いずれもビックケミー株式会社製)等を挙げることができる。
【0052】
浸透剤として好適に使用できるグリコールエーテル類としてはとしては、ジエチレングリコールモノ(炭素数4〜8のアルキル)エーテル、トリエチレングリコールモノ(炭素数4〜8のアルキル)エーテル、プロピレングリコールモノ(炭素数3〜6のアルキル)エーテル、及びジプロピレングリコールモノ(炭素数3〜6のアルキル)エーテル等を挙げることができ、具体例としてジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノブチルエーテル等を挙げることができる。
【0053】
浸透剤として使用できるアルキレングリコールとしては、1,2−(炭素数4〜10のアルキル)ジオール、1,3−(炭素数4〜10のアルキル)ジオール1,5−(炭素数4〜10のアルキル)ジオール、1,6−(炭素数4〜10のアルキル)ジオール等を挙げることができ、具体例としては1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−プタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等を挙げることができる。
【0054】
前記のグリコールエーテル類、及び/又はアルキレングリコール類は浸透剤としての効果を有する他、他の難溶性のインク添加剤に対する溶解助剤としての特性も備える。例えば前述のアセチレングリコール類のうち単独では水への溶解性が低い化合物を使用する場合、グリコールエーテル類を併用して添加することでアセチレングリコール類の溶解性を高めその添加量を増やすことできる。
【0055】
更にまた、グリコールエーテル類、及び/又はアルキレングリコール類は少なからず殺菌・防菌作用を有する為、インク中に3〜5%程度含有することで、微生物、菌類等の発生を抑えることができるという効果も有する。
【0056】
本発明のインクにおいては、浸透剤として前述のアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、グリコールエーテル類、アルキレングリコール類を、単独又は併用して使うことができ、インクに対する添加量は、0.01〜30重量%が好ましいが、0.1〜10重量%がより好ましい。添加量が0.01%未満では印字品質向上の効果が低くなり、30重量%を越えるとインク吐出ヘッドのノズル周りを不均一に濡らし、安定吐出が困難になる。
【0057】
その他、本発明のインクの浸透剤としては、同様に、前述のアルコール類、ノニオン性界面活性剤、水溶性有機溶剤、その他の界面活性剤を使用することができる。
【0058】
本発明で用いるインクにおいては、これら前記の浸透剤を、1種で又は2種以上を組み合わせて、使用することができる。
【0059】
特に、前述のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが繰り返し単位10以下のアルキレングリコールであって、炭素数3〜10のアルキルエーテルであることが好ましい。その中でも、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエ−テル、及び/又は(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルであることが好まく、前述の1,2−アルキレングリコールが1,2−ヘキサンジオール、及び/又は1,2−ペンタンジオールであることが好ましい。
【0060】
また、前述のジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上からなる物質の添加量が0.5%以上30%以下であることが好ましい。0.5%未満では浸透性の効果が低く印字品質が向上しない。30%を超えると粘度上昇により使いづらくなり、それ以上添加しても印字品質向上の効果がない。より好ましくは1%以上15%以下である。
【0061】
そして、少なくとも前述のアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤から選ばれた1種以上と、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上を同時に添加することが印字品質上好ましい。
【0062】
そして、前述のアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤から選ばれた1種以上が0.01〜1.0%で、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上が1%以上であることが好ましい。アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤から選ばれた1種以上は少量で浸透性を向上させる効果がある。従って、1.0%以下の添加量であっても、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上は1%以上添加されていることで印字品質がさらに向上する。
【0063】
前述の1,2−アルキレングリコールが炭素数4〜10の1,2−アルキレングリコールであり、添加量が10%以下であることが好ましい。10%を超えると粘度上昇によりインクジェット用としては使いづらくなり、それ以上添加しても印字品質向上の効果がない。しかし、筆記具用としてはこれに限定されない。より好ましくは1%以上8%以下である。
【0064】
又、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテルとはジエチレングリコールモノブチルエーテルおよび/またはトリエチレングリコールモノブチルエーテルを示すが、印字品質改良のための浸透性の必要レベルとして、20%以下の添加が好ましい。20%を超えると印字品質向上の効果が頭打ちであり、逆に粘度上昇の弊害が生じる。より好ましくは0.5〜10%である。
【0065】
本発明で用いるインクにおいては、前記浸透剤の助剤として、インクの浸透性を制御し、更にノズルの耐目詰まり性、インクの保湿性、あるいは浸透剤の溶解性を向上する目的で前述もしくは他の界面活性剤、並びに、高沸点低揮発性の多価アルコール類、あるいはそれらのモノエーテル化物、ジエーテル化物、若しくはエステル化物等の親水性高沸点低揮発性溶媒等を、1種で又は2種以上を組合せて、使用することができる。
【0066】
インクジェットのノズル面やペン先で乾燥を抑えるために水溶性のあるグリコール類としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、チオジグリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、及び、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンチオール等がある。
【0067】
又、本発明においてはノズル前面でインクが乾燥して詰まることを抑制するために、多くの種類の糖類を用いることもできる。単糖類および多糖類があり、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の他にアルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類を用いることができる。そしてその添加量は0.05%以上で30%以下がよい。0.05%未満ではインクがヘッドの先端で乾燥して詰まる目詰まり現象を回復させる効果は少なく、30%を超えるとインクの粘度が上昇して適切な印字ができなくなる。一般的な糖類である単糖類および多糖類のグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等のより好ましい添加量は3〜20%である。アルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類はインクにしたときの粘度が高くなり過ぎない程度の添加量にする必要がある。加えて、これらの糖類をインクに添加する場合は、微生物がインク中に発生する可能性が少なからず高まるので、その対策として防腐剤等をインクに添加することが必要となる。
【0068】
その他に水と相溶性を有し、インクに含まれる水との溶解性の低いグリコールエーテル類やインク成分の溶解性を向上させ、さらに被記録体たとえば紙に対する浸透性を向上させ、あるいはノズルやペン先の目詰まりを防止するために用いることのできるものとして、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1から4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホランなどがあり、これらを適宜選択して使用することができる。
【0069】
又、pH調整剤、溶解助剤あるいは酸化防止剤としてジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類およびそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、4級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸(水素)カリウム、炭酸(水素)ナトリウム、炭酸(水素)リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩など、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸およびその塩などを挙げることができる。
【0070】
pH調整剤は、ヘッド部材の耐久性とインクの安定性の観点から、インクのpH値が約7〜10になる量であることが好ましい。
【0071】
又、本発明の顔料分散液、これを含有するインクは、必要に応じて、その他の添加剤、例えば、防カビ剤、防腐剤、又は防錆剤として、安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベゾチアゾリン−3−オン、3,4−イソチアゾリン−3−オン、もしくは4,4−ジメチルオキサゾリジン等のオキサゾリジン系化合物、あるいはアルキルイソチアゾロン、クロルアルキルイソチアゾロン、ベンズイソチアゾロン、ブロモニトロアルコールおよび/またはクロルキシレノール等を含むことができる。更に、ノズル乾燥防止の目的で、尿素、チオ尿素、及び/又はエチレン尿素等を含むこともできる。
【0072】
又、本発明になるインクにはさらに紙や特殊紙等の媒体への浸透性を制御するため、他の界面活性剤を添加することも可能である。添加する界面活性剤は本実施例に示すインク系との相溶性のよい界面活性剤が好ましく、界面活性剤のなかでも浸透性が高く安定なものがよい。その例としては、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などがあげられる。両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体などがある。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などの含フッ素系界面活性剤などがある。
【0073】
又、その他の市販の酸化防止剤、紫外線吸収剤なども用いることができる。その例としてはチバガイギー社のTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024など、あるいはランタニドの酸化物などがある。
【0074】
更に粘度調整剤としては、ロジン類、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、アラビアゴムスターチなどを必要に応じて用いることでできる。
【0075】
本発明におけるインクの諸物性は適宜制御することができるが、好ましい態様によれば、インクの粘度は10mPa・秒以下であるのが好ましく、より好ましくは5mPa・秒以下(20℃)である。この粘度範囲のインクは、インク吐出ヘッドから安定に吐出される。また、インクの表面張力も適宜制御することができるが、25〜50mN/m(20℃)であるのが好ましく、より好ましくは30〜40mN/m(20℃)である。
【0076】
本発明におけるインクのゼータ電位は、分散体濃度が0.001〜0.01重量%になるようにイオン交換水で希釈した希釈液として測定した場合の、20℃、pH8〜pH9における分散体のゼータ電位の絶対値が40mV以上であることが好ましい。より好ましくは45mV以上であり、更により好ましいゼータ電位の絶対値は50mV以上である。ゼータ電位の絶対値が20mV以下の分散体の場合、インクの保存安定性が低下する。
【0077】
【作用】
本発明によるインクカートリッジを開発する過程で本発明者らは以下の知見を得た。但し、本発明は以下の推論によって限定されるものではない。
【0078】
本発明のインクカートリッジは、負圧発生手段として膜弁によりインクの漏れ出しを防止するため、前述のような多孔質材を用いてインクの保持力を確保する方法と異なり、流体抵抗を大きくすることなくカートリッジ内に収容できるインク量を増量することができる。
【0079】
ただし、膜弁を使用する場合であっても特開平8−174860号のあるようにインク収容室が上部にひとつだけだと、インク量に見合う圧力が膜弁に作用することから、その結果、底面積を抑えつつ、インク収容量を増加させる場合、膜弁の開弁時の負圧を大きくする必要がある。この場合、インク残量が少なくなった時点、つまりインクの水頭圧が規定値よりも低下した時点で印字品質の低下が発生するか、もしくは、印字品質を重視してインクレベルを所定の範囲に維持しようとするとインク残量が多くなってしまうという問題がある。
【0080】
そこで本発明ではインク収容室を下部インク収容室と上部インク収容室に分け、下部インク収容室から上部インク収容室にインクを吸い上げてから、負圧発生手段(膜弁)を介して記録ヘッドに供給するため、インク消費にともなうインクカートリッジ内のインク量による負圧発生手段にかかる圧力の変化分が低減され、常に安定してインクジェットヘッドにインクを供給することが可能となる。
【0081】
また本発明のインクカートリッジに用いるインクは、その分散ポリマー中の芳香環の量がポリマーの20%以上であることにより、疎水性の表面を有する顔料に好適に吸着することが可能であり、インク中において顔料から脱離し難くなる。さらにこのような分散体を着色剤とした本発明の水性インクは、従来から使用されていた親水性の高い分散樹脂を使用したインクと比較して、記録紙表面に留まりやすく、したがって印字物は非常に高い印字濃度を有する特性を有するものとなった。
【0082】
高い印字濃度を得られるその理由は明確には分かっていないが、インクが記録ヘッドより吐出され、記録媒体である紙に着弾した瞬間に、着色剤である分散体が速やかに凝集して紙上に残る為だと推定される。
【0083】
従って、前述のようなインク貯蔵容器としてのカートリッジと収納されるインクによる本発明のインクカートリッジは、高濃度でにじみない画像を形成できるインクを、高速に印字する記録ヘッドに対して、安定的に大量に供給できることが可能となる。
【0084】
しかしながら、上記のように優れたインクカートリッジであっても、長期保存時の物性や、長期間放置後の吐出性、又は印字濃度確保において、本来の特性を確保できない場合があることを本発明者らは確認した。
【0085】
本発明者らが推定するに、インクの分散ポリマーの製造工程において重合が不完全なポリマー成分が不純物として混入した場合、このような不完全なポリマー成分は顔料表面への吸着力が弱いと考えられ、従ってインク中に浸透剤として添加される界面活性剤や親水性有機溶剤等の影響によってインクの液性成分中に遊離ポリマーとして溶解すると推定される。その結果、上記のようなインク特性の低下が発生したと考えられる。
【0086】
本発明者らは、分散ポリマーの製造において、製造工程の最適化や、予め限外濾過等の洗浄を実施することで、インクの液性成分中におけるこれらの遊離ポリマー量を一定量以下に抑え、上記のようなインク保存時における物性値変動(保存安定性の低下)やインクジェットヘッドからの吐出特性の低下、及び印字物の印字濃度低下等の問題を解消することに成功した。本発明によるインクカートリッジは以上のような知見によって得られた結果である。
【0087】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0088】
(カートリッジの実施例)
まず、本発明のインクカートリッジにおいてインクの収納容器であるカートリッジの構造について詳細な図示した実施例に基づいて説明する。
【0089】
図1(イ)、(ロ)、及び図2(イ)〜(ニ)は、それぞれ本発明のインクカートリッジの一実施例の外観を示すものであって、インクカートリッジ1は、一方の面が開口した扁平な矩形状の有底箱型の容器本体2と、この開口を封止する蓋体3とを主体として構成されている。挿入方向の先端側、この実施例では底面の、長手方向の一方に偏するようにインク供給口4が、上部の側方にはそれぞれ係止部材5、6が容器本体2と一体に形成されている。
【0090】
インク供給口側に偏して位置する係止部材5は、挿入方向の先端側、この実施例では下端より若干上部を回動支点5aとし、かつ上部が外側に拡開可能に形成され、また対向する他方の係止部材6は、係止部材5と協働してインクカートリッジの把持を補助するように形成されている。
【0091】
これら係止部材5、6は、その側面が幅方向の位置を規制するガイド部材となるように、キャリッジに設けられた挿入口の幅に対応する幅として構成されている。
【0092】
またインク供給口側の係止部材5の下部には基板の一方の面に複数の電極7aが形成され、他方の面に半導体記憶素子が形成された記憶手段7が設けられ、他方の係止部材6の下部にはバルブ収容室8が形成されている。
【0093】
インク供給口4の近傍で、かつ容器の中央領域側にはインクカートリッジの挿抜方向に延び、かつ少なくとも先端側が開口したスリット部9が形成されている。このスリット部9は、少なくともインク供給口4の先端がキャリッジのインク供給針に到達する以前にインク供給口の開口面がインク供給針に対して直交するように規制できる長さ、及び幅となるように構成されている。
【0094】
一方、インクカートリッジが装着されるキャリッジ100は、図3に示したように底面に記録ヘッド101を設けるとともに、記録ヘッド101に連通するインク供給針102を設けて構成されている。インク供給針102が設けられている領域から離れた領域には押圧部材、この実施例では板バネ103が設けられ、またインク供給針102との間に位置決め用の凸片104がカートリッジの挿抜方向に延出形成されている。また、インク供給針102の側の側壁105には電極106が配置され、その上部に係止部材5の突起5bと係合する凹部107が形成されている。
【0095】
このような構造を採ることにより、図4(イ)に示したようにインク供給口4を奥側として挿入し、板バネ103に抗して押え込むと、スリット部9が凸片104に規制されるため、一方に偏して設けられた板バネ103によりインク供給口4の側が下方となるように回転力(図中、矢印K)を受けるとしても、姿勢が規定の挿抜方向、この実施例では上下方向に平行となるように規制される。
【0096】
さらにインクカートリッジ1をバネ103に抗して押し込むと、図4(ロ)に示したように係止部材5の突起5bが、係止部材5の全体の弾性に抗して凹部107に落ち込んで係合する。これにより係止部材5を把持している指に明確なクリック感が伝わり、ユーザーは、インクカートリッジ1がキャリッジ100に確実に装着されたことを判定できる。
【0097】
装着された状態では、インクカートリッジ1の記憶手段7の電極7aが設けられている面が、係止部材5の突起5bにより挿抜方向の位置を規制されてバネ103による付勢力(図中、矢印Kの力)によりキャリッジ100の電極106に押し付けられているため、印刷時の振動に関わりなく、確実にコンタクトを維持する。
【0098】
一方、交換等によりインクカートリッジ1をキャリッジ100から取り外す場合には、係止部材5を容器本体2側に弾圧すると、係止部材5は、下端より若干上部の5aを回動支点として回動し、係止部材5の突起5bが凹部107から離れる。この状態でインクカートリッジ1は、バネ103の付勢力によりガイド片104にガイドされてインク供給針102に平行に移動し、インク供給針102に曲げ力などを作用させることなく取り外すことができる。
【0099】
図5(イ)、(ロ)は、同上インクカートリッジを構成する容器本体2の一実施例を、その表裏の構造で示すものであって、容器本体2の内側には、略水平方向、より詳細にはインク供給口4の側が若干下方となるように延びる壁10により上下に分割されている。
【0100】
下部領域には第1インク収容室11が、また上部は、壁10を底面とするように容器本体2の壁12と一定の間隙を持たせて大気連通路13を形成するように枠部14により区画されている。枠部14は、底部に連通口15aが形成された垂直な壁15により分割され、一方の領域を第2インク収容室16として、また他方の領域を第3インク収容室17として形成されている。
【0101】
第1インク収容室11に対向する領域には、第2インク収容室16と容器本体2の底面2a(第1インク収容室11の底部)とを接続する吸い上げ流路18が形成されている。吸い上げ流路18は、記録ヘッドでのインク消費量に対応できる程度の断面積に形成され、その下端に第1インク収容室11に開口し、かつ毛細管力によりインクを保持できる吸い込み口18aが、また上端が第2インク収容室16の底部に連通するように流出口18bが開口するように形成されている。
【0102】
吸い上げ流路18の吸い込み口18aの近傍には連通口19a、19bを備えた壁19が形成されている。またこの吸い上げ流路18に対向する箇所には図6に示したように容器本体2に外部からインクの注入のための開口20、及び第1インク収容室11と連通する開口21が形成されている。この吸い上げ流路18は、容器本体2の表面に凹部18c(図5(ロ))を形成し、この凹部18cを遮気性フィルム95(図8、図9)により封止することにより構成されている。
【0103】
第3インク収容室17は、枠部14の上面14aと一定の間隙を隔てて壁22、24、26により、また第4のインク収容室23は壁10、24、26、27により区画されている。壁22に連続して差圧弁収容室33(図9)の裏面に連通する流路が壁24により区画されている。
【0104】
壁24の下部には壁10との間に連通口26aを備えた区画壁26が、また枠部14との間には下部に連通口27aを備えた区画壁27を設けてインク流路28が形成されている。インク流路28の上部は、フィルタ室となる貫通穴29を介してカートリッジ1の表面側に連通している。この貫通穴29には多孔質材からなるフィルタ55(図8)が挿入されている。なお、図中符号2bは、記憶手段7を収容する凹部を示す。
【0105】
貫通穴29は、図6に示したように壁27に連続するように形成された壁30により分離され、凹部30aを介してインク流路28の上端に連通し、容器本体2の表面側の水滴形の凹部30bを介して差圧弁収容室33の裏面の壁34、及び壁24で区画された流路の上部の凹部24aに連通されている。
【0106】
図5(ロ)に示すように、差圧弁収容室33の下部とインク供給口4とは、容器本体2の表面に形成された凹部35と、この凹部35を覆う遮気性フィルム95とからなる流路により接続されている。
【0107】
また、容器本体2の表面には、可及的に流路抵抗が高くなるように蛇行する細溝36と、これの周囲に幅広の溝37と、第2インク収容室16に対向する領域に矩形状の凹部38が形成されている。矩形状の凹部38にはさらに一段下がった位置に枠部38aと離散的にリブ38bが形成され、この枠部38aで固定するように撥インク性と通気性とを備えた通気性フィルム98(図9)を張設して大気通気室が区画形成されている。
【0108】
凹部38の底面には貫通穴38cが形成されていて、第2インク収容室16の壁39で区画された細長い領域39a(図5(イ))に連通されている。また凹部38の、通気性フィルム98よりも表面側の領域には細溝36の一端36aが連通している。領域39aの他端は、ここに形成された貫通穴40、容器本体2の表面に形成された溝41、及び貫通穴41aを介してバルブ収容室8に連通されている。
【0109】
一方、バルブ収容室8の裏面には凹部43が形成され、またバルブ収容室8の先端に第2インク収容室16の近傍に開口する貫通穴43aが形成されている。これら凹部43から貫通穴43aの領域は、フィルム61により封止されて大気連通用の流路を形成している。この貫通穴43aは、枠部14と一定の間隙をもって形成された垂直に延びる壁44と蓋体3とに区画された流路45に連通している。流路45の上端45aは、壁44と枠部14とで形成された流路46、または大気連通路13を介して第1インク収容室11の上端に連通されている。
【0110】
このような流路構造を採ることにより、第1インク収容室11のインクのバルブ収容室8への流れ込みや、また第1インク収容室11のインクの揮散を防止しつつ、第1インク収容室11を大気に開放させることができる。
【0111】
バルブ収容室8の、カートリッジ挿入側の先端、この実施例では図5(ロ)に示したように下部の窓8aにより開放されていて、記録装置本体のキャリッジ100に設けられた複数の識別片110、111、112(図3)及びバルブ作動杆が進入可能な後述する識別ブロック70が下部に、また大気開放弁65が上部に装着されている。
【0112】
このような状態で、図8に示したように容器本体2の開口側の枠部14、壁10、15、22、24、26、27、30、及び39には、フィルム94を熱溶着等により接着して上部に位置するインク収容室(16、17、23)を形成するとともに、下部のインク収容室(11)とは分離された状態で、蓋体3が気密的に嵌着されている。また、バルブ収容室8には弁体65と板バネ62を収容した状態で、フィルム96が貼着されている。
【0113】
他方、図9に示したように容器本体2の表面側には差圧弁収容室33に膜弁52、バネ50、膜弁52の排出口側と凹部35を連通させる溝53aを備えた膜弁押え板53とを装着してから、差圧弁収容室33、細溝36、溝41、凹部30b、凹部35、凹部38、凹部18cを覆うことができるサイズの1枚の遮気性フィルム95が貼着される。
【0114】
またバルブ収容室8の凹部43に対向する領域には遮気性を有し、作動杆により容易に弾性変形する膜61を貼着して、その表面側に識別片70が爪70a、70bにより装着、固定されている。
【0115】
また、インク供給口4は、インク供給針102(図3)の挿通により開弁する弁体90を、バネ91により常時閉弁状態、この実施例では下方に押圧するように挿入して、弁体90、及びインク供給針と容器本体2との気密性を確保するパッキン92を挿入して構成されている。なお、図中符号93は、インク供給口に貼着されて流通工程でのインクの漏れ出しを防止し、かつインク供給針102の挿通が可能な保護用のフィルムを示す。
【0116】
図10は、前述の差圧弁収容室33の近傍の断面構造を示すものであって、差圧弁収容室33には、バネ50とエラストマー等の弾性変形可能な材料により構成され、中心に貫通穴51を備えた膜弁52が収容されている。膜弁52はその周囲を環状の厚肉部52aと、この厚肉部52aと一体的に形成された枠部54とを備え、この枠部54を介して容器本体2に固定され、またバネ50は、一端を膜弁52のバネ受け部52bに、他端を容器本体2に嵌着された膜弁押え板53により支持されている。
【0117】
このような構成により、フィルタ55を通過したインクは、インク流通口34aを通過して膜弁52に阻止される。この状態でインク供給口4の圧力が低下すると、膜弁52がバネ50の付勢力に抗して弁座部34bから離れるため、貫通穴51を通過し、凹部34により形成された流路を経由してインク供給口4に流れ込む。
【0118】
インク供給口4のインク圧力が所定の値に上昇すると、膜弁52がバネ50の付勢力に負けて弁座部34bに弾接され、インクの流通が遮断される。このような動作を繰返すことにより一定の負圧を維持しながらインクをインク供給口4に排出することができる。
【0119】
図11(イ)、(ロ)は、大気連通用のバルブ収容室8の断面構造を示すものであって、バルブ収容室8を区画する壁には貫通穴60が穿設され、ここに弁体65の凸部65aが移動可能に装填されている。また本体65bの側が、下端を突起63により固定され、中央部を突起64により規制された板バネなどの弾性部材62に常時閉弁するように押圧されている。弁体65は、貫通穴60の側にエラストマ等の比較的柔らかい材料で形成された封止部65cを設けて構成するのが望ましい。
【0120】
また膜98の他面に装着された識別ブロック70は、図12に示したように、爪70a、70bにより容器本体2の穴2c、2d(図7)に固定され、カートリッジの挿入方向に平行な複数、この実施例では3本の溝71、72、73が形成されている。これらの1つの溝232にはインクカートリッジの挿入方向側、この実施例では下端が弁体65の凸部65aを押圧するためのアーム74が形成されている。
【0121】
アーム74は、若干内側に位置するように回動支点74aにより回動可能で、かつ引き抜き側、この実施例では上部側が作動杆113(図11)の進入路に斜めに突出するように構成されている。また、それぞれの溝71〜73には、図3、4に示したようにキャリッジ100の識別片110、111、112の先端に対向するように突出部71a、72a,73aが形成されている。
【0122】
このような構成により、アーム74の位置を一定とする一方、これら突出部71a、72a、73aの位置、及び識別片110、111、112の先端の位置を、カートリッジのインクの種類に対応させて設定することにより、カートリッジの誤装着を防止することができる。これら突出部71a、72a、73aの位置は、カートリッジの挿抜方向だけではなく、カートリッジの厚み方向の位置を変えることにより、3次元的な配列構造を採ることが可能となり、識別領域形成面積の拡大を招くことなく多くのインク種を識別することができる。
【0123】
このような識別ブロック70は、記録装置では突出部の位置により識別されるが、組立時やまたユーザーが容易にインクの種類を識別できるように、例えば識別ブロックをインクと同系統の色としたり、またインクの種類を示すマークを施しておいてもよい。
【0124】
また、インクカートリッジがホルダに装着されて作動杆113によりアーム74が押圧されると、弁体65が移動して開弁状態となる。これにより、第2インク収容室16の近傍に開口する貫通穴43aとフィルム61により形成された大気連通用の流路、及び枠部14と一定の間隙をもって形成された垂直に延びる壁44と蓋体3とに区画された流路45、流路46、大気連通路13を介して第1インク収容室11の上端を大気に開放させる。
【0125】
すなわち、バルブ収容室8は、貫通穴41aにより容器本体2の溝41に連通し、他端の貫通穴40、フィルムで被われた領域39a、貫通穴38cを介して凹部38の底面に連通している。そして凹部38は、通気性フィルム98を介して容器本体のキャピラリを構成する細溝36の一端36aに連通していて、大気に開放されている。
【0126】
次に、インク注入によりカートリッジにインクが充填されてから、インク消費によってカートリッジ内のインク量が変化していく様子を図13(I)〜(V)を用いて説明する。
【0127】
インク注入用の開口20、21からカートリッジ内の空気を排気し、その後脱気したインクを注入し、注入が終了した後に開口20、21をフィルムや栓体で封止する。この状態では、第1〜第4のインク収容室11、16、17、23、インク吸い上げ流路18、フィルタ室34、差圧弁収容室33、及び差圧弁収容室33からインク供給口4に至る空間にインクが充填された状態となる。
【0128】
なお、下部のインク収容領域、つまり第1インク収容室11は、容器本体2と蓋体3とにより密封され、また上部のインク収容領域、この実施例では第2インク収容室16、第3インク収容室17、第4インク収容室23、フィルタ室34は、容器本体2と蓋体3との間に位置するフィルム94と容器本体2とにより区画されて第1インク収容室11に連通する空間90(図10)が存在するので、インク充填量によってはこの空間にも若干のインクが浸入した状態となる場合もある。
【0129】
このように構成されたインクカートリッジは、弁等により大気との連通が断たれて保存されるため、脱気されたインクを収容している場合にはインクの脱気度が十分に維持される。
【0130】
インクカートリッジ1をカートリッジホルダに装填すると、当該ホルダに適合したインクカートリッジである場合には、インク供給口4がインク供給針に挿通される位置まで進入し、また前述したように作動杆により貫通穴60が開放され、第1インク収容室11(インク収容領域)が大気に連通し、またインク供給口4の弁体もインク供給針により開弁される。
【0131】
一方、当該ホルダに適合しない場合には、インク供給口4がインク供給針102に到達する以前、つまり少なくともインク供給口内に形成された弁体90をインク供給針102により開弁する以前にインクカートリッジの進入が阻止されるから、弁体90が封止状態を維持し、インク収容領域の大気の無用な置換を阻止してインク溶媒の蒸発を防止する。
【0132】
ホルダに正常に装着されて記録ヘッドによりインクが消費されると、インク供給口4の圧力が規定値以下に低下するから、前述したように膜弁52が開放され、またインク供給口4の圧力が規定値以上に上昇すると膜弁52が閉弁して、所定の負圧に維持されたインクが記録ヘッドにインクが流れ込む(図13(I)、なお図13(I)〜(V)におけるハッチングの領域は、第1インク収容室11〜第4インク収容室23等に存在するインクを示す)。
【0133】
記録ヘッドでのインクの消費が進行すると、第1インク収容室11のインクは、吸い上げ流路18を経由して第2インク収容室16に流れ込む。ここにインクとともに第2インク収容室16に流れ込んだ気泡は浮力により上昇するから、インクだけが下部の連通口15aを経由して第3インク収容室17に流れ込む。
【0134】
第4インク収容室23のインクは、フィルタ室34を区画する壁26の連通口26aを通過してインク流路28を上昇し、領域31からフィルタ室34の上部に流れ込む。フィルタ55を通過したインクは、貫通穴34aから差圧弁収容室33に流れ込み、前述したように膜弁52の開閉動作により所定の負圧でインク供給口4に流れ込む。
【0135】
もとより、第1インク収容室11は、大気連通路13を介して大気に連通されて大気圧に維持され、また第2インク収容室16は、連通口15aを介してのみ第3インク収容室17に連通しているから、記録ヘッドでの消費により減少したインク量に見合うインクが第1インク収容室11から第2インク収容室16に流れ込む。
【0136】
また、第1インク収容室11のインクが逆流により凹部38まで流れ込んでも、ここには通気性を備えた撥インク性の膜が設けられているから、この膜により大気との連通を維持しつつインクの流出を阻止することができる。これにより、細溝36に流れ込んだインクが固化して大気連通流路が閉塞するというような不都合を未然に防止できる。以下、第1インク収容室11にインクが存在する状態では、第1インク収容室11のインクレベルHに対応してインク供給口4に作用する負圧が徐々に増大する。
【0137】
このように、下部に位置する第1インク収容室11の底面領域のインクを、上部のインク収容室、より詳細には第2インク収容室16の底面近傍に吸い上げるから、上部に位置するインク収容室16、17、23の水頭圧は略一定となり、インクカートリッジの高さに起因する水頭圧の変化を、下方に位置するインク収容室11の水頭圧Hの変化分だけが膜弁52に直接作用する。
【0138】
このため、膜弁52を閉弁状態に維持する押圧力を下方に位置するインク収容室11の水頭圧Hの変化分に合わせて設定でき、底面積を増加させることなく、インク収容量を増加させても、つまり容器本体2を背高構造にしても、記録ヘッド及び負圧発生機構に無用に強い負圧を作用させることなく、インクを供給でき、高い印字品質を維持してインクカートリッジに収容されているインクを有効に使用することができる。
【0139】
このようにして第1インク収容室11のインクが吸い上げ流路18から第2インク収容室16に吸い上げられて無くなると(図13(II))、吸い上げ流路18の吸い込み口18aが毛細管力(吸い込み口18aに形成されたメニスカスの力)によりインクを保持する。したがって、第2インク収容室16のインクが第1インク収容室11に流れ込むことにはならない。また、このように第1インク収容室11のインクが無くなった状態で、カートリッジが記録装置から引き抜かれても、上部のインク収容領域のインクが第1インク収容室11に流れ込むのを可及的に防止できる。
【0140】
記録ヘッドによりインクが消費されて第2インク収容室16に負圧が作用すると、大気に開放された第1インク収容室11から空気の吸引を伴いつつ第2インク収容室16のインクが連通口15aを経由して第3インク収容室17に間欠的に流れ込む。第2インク収容室16、第3インク収容室17及び第4インク収容室23のインクが消費されている期間においては、各収容室16、17、23のインクレベルにほとんど関係なく一定した圧力が負圧発生機構を構成する膜弁52に作用し、印字品質の低下を招くことなく、インクカートリッジのインクを有効に記録ヘッドに供給できる。
【0141】
第2インク収容室16のインクが無くなると(図13(III))、第3インク収容室17に残存しているインクが連通口26aを経由して記録ヘッドに供給される。さらに第3インク収容室17のインクが消費されると、第4インク収容室23のインクが消費される(図13(IV))。連通孔15a、26a、27aは、図示したようにインクが消費される過程でメニスカスを形成してインクを保持できる程度のサイズの開口として形成されている。
【0142】
このようにして壁26で区画された一方の領域のインクが連通口26aまで低下し(図13(IV))、さらに第4インク収容室23のインクが消費された時点でも(図13(V))、壁10が、インク流路28の側を下方となっているため、インク流路28の下端に位置する連通孔27aは、インクに常時浸漬された状態となるから、フィルタ室34が大気に開放されることがない。したがって、この状態で記録ヘッドでのインク消費を中止させると、記録ヘッドへの気泡の流入を防止できる。
【0143】
このように上部のインク収容領域を壁15、26により複数の領域に区画し、複数の上部インク収容室16、17、23を形成し、かつ少なくともそれぞれの底部領域で連通させることにより、上部インク収容室16、17、23のインク量の減少に関わりなく膜弁52に対する水頭圧を略一定の範囲内に維持することができ、図13(II)以後、図13(IV)の過程、つまり第1インク収容室11のインクが消費され、第2〜第4インク収容室16、17、23のインクが記録ヘッドの供給されている状態では、第1インク収容室11にインクが残存している状態に比較してインク供給口24の負圧の変動を大幅に抑えることができる。
【0144】
また、第2インク収容室16より下流側のインクが消費される過程において、例えば第2インク収容室16の上部に形成された空気層(トラップされた空気による空間)が環境温度の上昇で膨張してインクが第1インク収容室11に逆流しても、第1インク収容室11でトラップされ、その後逆流した第1インク収容室11のインクは前述した様に第2インク収容室16に吸い上げられて消費することが可能である。これにより環境温度の変化によって差圧弁に過大な圧力が作用するのを未然に防止でき、インク供給口24からのインクの漏れ出しを確実に防止できる。
【0145】
ところで、図14に示したように同一の記録装置に装着されても、他のインクよりも多く消費されるインク、例えばブラックインクを収容するカートリッジは、インク容量を多く構成しておくとカートリッジの交換周期を平均化できて使用者にとっては便利である。
【0146】
このカートリッジは、容器本体2’は、開口面の形状は同一で、その深さW2だけが大きくなるように構成されている。これにより、容器本体2’の深さW2を変更するだけで収容可能なインク量を増加することができる。
【0147】
そして、インク供給口4’、記憶手段7’は、その配列中心が、他のカートリッジと同様に容器本体2の表面から一定の位置W1となるように設定されている。なお、識別ブロック70’は、容器本体2’の表面側に装着されているから、当然に同一の位置に配置されることになる。ただ、係止部材5’は、装填時にインク供給口4’に確実に押圧力が作用するように、インク供給口4’と同様に容器本体2’の側に偏して配置されている。
【0148】
ところで、容器本体2’の厚みW2が深くはなっているものの、第4のインク収容室23’から差圧弁収容室にインクを誘導するインク流路の断面積や、差圧弁を構成する膜弁52’は、前述の薄く構成されたカートリッジと同等で十分である。このため、前述のインク流路28に対応するインク流路は、容器本体2’の表面側に凹部47を設け、この凹部47を容器本体2’の表面に貼着するフィルム95’により封止して形成されている。凹部47は、その下端で貫通穴47aにより第4のインク収容室23’、また上端で貫通穴47bによりフィルタ室となる貫通穴29’の、容器本体2’の内側に連通している。
【0149】
また差圧弁収容室33’の裏面の流路を区画する壁24’は、図19に示したように表面からの高さJを容器本体の幅W2より小さく形成され、フィルム48により封止されている。これにより、第4のインク収容室23’の底部の貫通穴47aから吸い上げられたインクは、凹部47とフィルム95’とで形成されたインク流路を上昇し、凹部47の上端の貫通穴47bからフィルタ55’を通過して容器本体2’の表面側に流出する。なお、貫通穴47bと貫通穴29’とは、凹部29a’により連通されている。
【0150】
その後、容器本体2’の表面側の水滴形の凹部30b’を経由してから壁24’とフィルム48とで区画された領域、つまり差圧弁収容室33’の裏側に凹部24a’から流れ込み、以後前述の実施例と同様に、インク供給口4’の負圧に応じて膜弁52’を開閉させてインク供給口4’に流れ込む。また、貫通孔47bは、インクの消費過程でメニスカスによりインクを保持できる程度の開口を持つように構成されている。
【0151】
第4のインク収容室23’から差圧弁収容室33’に至る流路を上述のように構成すること、つまり壁24’の高さを単純に容器本体2’と同等の高さに構成する場合に比較して、デッドスペースを少なくして、インクを有効に利用することができる。
【0152】
本実施例においては、第3のインク収容室17’と第4のインク収容室23’は、差圧弁収容室の裏面の流路を区画する壁24’の高さが、上部のインク収容室を区画する枠部14’や壁10よりも低く形成されているので、容器本体の厚み方向で実質的に一つのインク収容室を構成することになる。
【0153】
なお、このように構成されたインクカートリッジは、さらに図8、図9、及び図18に示したように、容器本体2、2’の表面に貼付された流路構成用のフィルム95、95’に重ねるようにして装飾用フィルム97、97’が重ね張りされて商品に仕上げられる。
【0154】
この装飾用フィルム97、97’は、インク注入口20、21、20’、21’に対向する領域に舌部97a、97a’を形成し、この舌部97a、97a’でインク注入口20、21、20’、21’を封止しておくのが望ましい。
【0155】
上述の実施例においては、第2インク収容室16、16’と第3インク収容室17、17’とは、壁15、15’の下部に形成された凹部15a、15a’とだけで連通させて、第2インク収容室16、16’に気泡トラップ室としての機能を付与しているが、図20、図21に示したように壁15、15’の上部にも凹部を形成すると、顔料インクのように沈降が生じやすいインクであっても、第2インク収容室16に沈降した顔料を凹部15a、15a’から、また溶媒成分を上部の凹部15b、15b’から第3インク収容室23、23’に流入させ、顔料とインク溶媒との撹拌を促してインク濃度の均一化を図ることができる。
【0156】
その他、上述の実施例においては、レイアウトの都合上、差圧弁収容室を上部のインク収容室側に配置しているが、下部のインク収容室、または上部と下部のインク収容室とに跨がるように配置し、流路により上部に位置するインク収容室のインクを膜弁の流入側に連通させ、また膜弁の流出側を流路によりインク供給口に連通させても同様の作用を奏する。
【0157】
また、実施例のインクカートリッジにおいては、上部に3つのインク収容室を形成しているが、1つだけであっても上述した膜弁に作用する水頭圧の変化を低減できる効果を奏する。また2つ以上形成して底部で連通させることにより、各インク収容室のインクが消費されていく段階でできる空間を気泡トラップ空間として機能させて負圧発生機構への気泡の流入を可及的に防止し、もって印字品質の低下を防止できる。
【0158】
さらに実施例においては、インク供給口をカートリッジの底面に形成されているが、側面に形成しても同様の作用を奏することは明らかである。なお、このような構造を採る場合には、カートリッジの挿入工程に合わせて作動する部材もその挿入方向の対応するように向きを変更することで対応可能である。
【0159】
図22は本発明のインクカートリッジを用いたインクジェット記録装置の全体構成を示す概略図である。
【0160】
図22において、キャリッジ100は、キャリッジモータ202によって駆動されるタイミングベルト203を介し、ガイド部材204に案内されてプラテン205の軸方向に往復運動し得るように構成されている。
【0161】
キャリッジ100の下面部には、インクジェット式の記録ヘッド101が記録紙206に対向するように装着され、キャリッジ100の上面部には、前記記録ヘッド101にインクを供給するインクカートリッジ1、1’が着脱可能に装着されている。
【0162】
また、前記キャリッジ100の移動領域における非印字領域には、キャップ部材207aを有するキャッピング手段207が配置されている。そして、前記記録ヘッド101が直上に移動したときに上昇し、記録ヘッド101のノズル形成面を封止し得るように構成されている。このキャッピング手段207の下方には、前記キャップ部材207aの内部空間に負圧を与えるためのポンプユニット208が配置されており、負圧を記録ヘッド101に作用させてインクを吸引するクリーニング手段としての機能を有する。
【0163】
前記キャッピング手段207における印字領域側部の近傍には、ゴムなどの弾性板を備えるワイピング手段209が水平方向に進退可能となるように配置されており、キャリッジ100がキャッピング手段207側において往復移動する際に、記録ヘッド101の移動経路上にワイピング手段209が進出されるように構成されており、記録ヘッド101のノズル形成面のワイピングを実施する。
(芳香環量、顔料:ポリマー比、平均粒径、遊離ポリマー量、及び表面張力の測定方法)
【0164】
以下の実施例、又は比較例で得られた各測定値(芳香環量、顔料:ポリマー比、平均粒径、遊離ポリマー量、表面張力)は、次に示す方法で測定した。
【0165】
<芳香環量の測定>
各実施例、又は比較例で得た分散ポリマー溶液の一部を取り出し、溶媒成分を留去してポリマー成分のみを取り出し、DMSO−d6に溶解させ、13C−NMR及び1H−NMR(ブルカー社(ドイツ)製AMX400)を使用して、ポリマー中の芳香環量を測定した。
【0166】
<顔料:ポリマー比の測定>
各実施例、又は比較例で得た分散液の一部を取り出し、0.1mol/l濃度HClを添加して分散体のみを酸析後、乾燥重量を測定した。次に、アセトンを用いたソックスレー抽出法で分散ポリマーのみを取り出し、乾燥重量を測定することで、顔料:ポリマーの重量比を算出した。
【0167】
<平均粒径の測定>
各実施例、又は比較例で得た水性インクの分散体濃度が0.001〜0.01重量%に(インクにより測定時の最適濃度が若干異なる為)なるようにイオン交換水で希釈し、その分散粒子の20℃における平均粒径を粒度分布計(大塚電子社製DLS−800)で測定した。
【0168】
<遊離ポリマー量の測定>
各実施例、又は比較例で得た水性インクを必要量取り出し、遠心加速(条件:2500G×60分)によりインク中における分散体等の固形分を沈殿成分として沈降させた。
【0169】
次に上清成分として得られたインクの液性成分を減圧加熱し、その溶媒成分を蒸発させ、液性成分中に存在する遊離ポリマーの重量を測定することで、インク全重量に対する遊離ポリマー量を測定した。
【0170】
<表面張力の測定>
各実施例、又は比較例で得た水性インクの20℃の表面張力を表面張力計(協和界面科学社製CBVP−A3)で測定した。
【0171】
(実施例1)
(1)分散液の製造:分散液A1
本実施例1に用いる分散液A1の製造には無機顔料であるカーボンブラック顔料のカラーブラックFW18(デグサ株式会社製)を用いた。
まず、攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、メチルエチルケトン15部、スチレン21部、α−メチルスチレン5部、ブチルメタクリレート16部、ラウリルメタクリレート10部、アクリル酸2部、t―ドデシルメルカプタン0.3部を入れて70℃に加熱し、別に用意したスチレン100部、アクリル酸15部、ブチルメタクリレート50部、t−ドデシルメルカプタン1部、メチルエチルケトン20部およびアゾビスイソブチロニトリル3部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させた。次に、反応容器にメチルエチルケトンを添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成した。
【0172】
この分散ポリマー溶液の一部と取り出し、溶媒成分を留去後、全重量に対する芳香環の割合を前述の「芳香環量の測定」に記載の方法で測定したところ、分散ポリマー全重量に対する芳香環量は58%であった。
【0173】
上記分散ポリマー溶液40部とカーボンブラック顔料であるカラーブラックFW18(デグサ社製)30部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン35部を混合し、ホモジナイザーで30分以上分散処理し、イオン交換水を350部添加して、さらに1時間分散する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去後、ブフナー漏斗で濾別と洗浄を繰り返す。次に濾別された顔料内包樹脂分散体に、イオン交換水、及び中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら適宜加えてpH7.5に調整してから、平均孔径5μmのメンブランフィルタで濾過することで、分散体A1(カーボンブラック顔料を芳香環量が58%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液1を得た。
【0174】
表1に分散液A1に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、顔料:ポリマー比については前記「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0175】
(2)インクの調整
本実施例1では、前記実施例1(1)で得た分散液A1、アセチレングリコール系界面活性剤であるオルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるジエチレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2−アルキレングリコールである1,2−ペンタンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0176】
なお、インクの調整では分散体A1の含有量が8.0%となるように分散液A1を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A1の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0177】
また、下記本実施例1のインク組成中の「残量」として添加されるイオン交換水には、インクの腐食防止のためプロキセルXL−2、インクジェットヘッド部材の腐食防止のためベンゾトリアゾール、及びインク系中の金属イオンの影響を低減するためにEDTA・2Na塩を、それぞれインク全重量に対して0.01%、0.01%、0.02%となるように添加したものを用いた。
【0178】
分散体A1<120> 8.0%
オルフィンE1010 0.5%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0%
1,2−ペンタンジオール 2.5%
ジエチレングリコール 3.0%
グリセリン 11.5%
トリメチロールプロパン 6.0%
トリプロパノールアミン 0.3%
イオン交換水 残量
【0179】
(3)インクジェットカートリッジの製造
前記実施例1(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図14〜19で説明したカートリッジに注入することで、本実施例1に使用するインクカートリッジを得た。
【0180】
なお、カートリッジの各部品は、予め良く洗浄して各部品に付着したイオン性物質やゴミを除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0181】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記実施例1(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は1.21%であった。
【0182】
(5)印字評価
印字画像評価には圧電素子(ピエゾ素子)を使用したインクジェットヘッドによりインクを吐出するインクジェットプリンタStylus C80(セイコーエプソン株式会社製)に、前記実施例1(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、評価紙として、ヨーロッパ、アメリカおよび日本の市販されている普通の紙として(a)Conqueror紙、(b)Reymat紙、(c)Mode Copy紙、(d)Rapid Copy紙、(e)Xerox P紙、(f)Xerox 4024紙、(g)Xerox 10紙、(h)NeenhaBond紙、(i)Ricopy 6200紙、及び(j)Hammer mill Copy Plus紙を使用した。
【0183】
なお、評価は目視により行い、以下の評価基準に基づいておこなった。
A:全てのポイントの文字において、にじみがわからない。
B:5ポイント以下の文字で、わずかににじみが認められる(実用レベル)。
C:にじみのため、5ポイント以下の文字が太く見える。
D:にじみが著しく、5ポイント以下の文字が判別できない。
印字評価の結果を表2に示す。
【0184】
(6)吐出安定性評価
前記実施例1(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、A4版Xerox P紙に200ページ連続印字して、印刷の乱れ具合を観察することで吐出安定性を評価した。
【0185】
なお、評価は目視により行い、以下の評価基準に基づいておこなった。
A:全く印刷乱れが発生しない。
B:印刷乱れが見られたが10箇所未満である(実用レベル)。
C:10箇所以上100箇所未満の範囲で印刷乱れがある。
D:100箇所以上印刷乱れが発生した。
吐出安定性評価の結果を表3に示す。
【0186】
(7)保存安定性評価
前記実施例1(3)で製造したインクカートリッジを、それぞれ60℃/1週間、−20℃/1週間放置して、放置前後におけるカートリッジ内のインクの発生異物と物性値変動(粘度、表面張力)について評価した。
なお、評価は以下の評価基準に基づいておこなった。
A:60℃あるいは−20℃放置後の異物量・物性値と放置前のそれとの比が、0.99〜1.01の範囲内である。
B:比が0.95〜0.99、あるいは1.01〜1.05の範囲内である(実用レベル)。
C:比が0.90〜0.95、あるいは1.05〜1.10の範囲内である。
D:比が0.90未満、あるいは1.10より大きい。
保存安定性評価結果を表3に示す。
【0187】
(実施例2)
(1)分散液の製造:分散液A2
本実施例2に用いる分散液A2の製造には、有機顔料である不溶性モノアゾイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)を用いた。
【0188】
まず、攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、スチレン12部、ラウリルメタクリレート9部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(NKエステルM90G;新中村化学株式会社製)15部、イソブチルメタクリレートマクロマー(AW−6S;東亜合成株式会社製)5部、メタクリル酸3部、メチルエチルケトン5部、メルカプトエタノール0.3部を入れて70℃に加熱し、別に用意したスチレン25部、ラウリルメタクリレート30部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(NKエステルM90G;新中村化学株式会社製)15部、イソブチルメタクリレートマクロマー(AW−6S;東亜合成株式会社製)15部、メタクリル酸10部、メチルエチルケトン20部、メルカプトエタノール1.0部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させた。次に、反応容器にメチルエチルケトンを適宜添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成した。
【0189】
この分散ポリマー溶液の一部と取り出し、溶媒成分を留去後、全重量に対する芳香環の割合を前述の「芳香環量の測定」に記載の方法で測定したところ、分散ポリマー全重量に対する芳香環量は26%であった。
【0190】
上記分散ポリマー溶液40部と有機顔料である不溶性モノアゾイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)30部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン40部を混合し、ホモジナイザーで30分以上分散処理し、イオン交換水を380部添加して、さらに1時間分散する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去後、水を適宜加えながら、限外濾過システムのミリタン(ミリポア社製)による分画分子量10万の限外濾過を実施した。最後に、イオン交換水、及び中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら適宜加えてpH7.5に調整してから、平均孔径5μmのメンブランフィルタで濾過することで、分散体A2(不溶性モノアゾイエロー顔料を芳香環量が26%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液A2を得た。
【0191】
表1に分散液A2に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0192】
(2)インクの調整
本実施例2では、前記実施例2(1)で得た分散液A2、アセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノール440(エアープロダクツ株式会社製)とオルフィンSTG(日信化学工業株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるトリエチレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2−アルキレングリコールである1,2−ペンタンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0193】
なお、インクの調整では分散体A2の含有量が7.0%となるように分散液A2を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A2の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0194】
また、下記本実施例2のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
分散体A2<120> 7.0%
サーフィノール440 0.2%
オルフィンSTG 0.2%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0%
1,2−ペンタンジオール 2.0%
2−ピロリドン 3.0%
グリセリン 13.5%
トリメチロールエタン 5.0%
トリエタノールアミン 0.1%
イオン交換水 残量
【0195】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例2(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図1〜9で説明したカートリッジに注入することで、本実施例2に使用するインクカートリッジを得た。
【0196】
なお、カートリッジの各部品は、予め良く洗浄して各部品に付着したイオン性物質やゴミを除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0197】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記実施例2(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は0.47%であった。
【0198】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタStylus C80(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記実施例2(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0199】
(6)吐出安定性評価
前記実施例2(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0200】
(7)保存安定性評価
前記実施例2(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0201】
(実施例3)
(1)分散液の製造:分散液3
本実施例3に用いる分散液A3の製造には、有機顔料であるキナクリドンレッド顔料(C.I.ピグメントレッド122)を用いた。
【0202】
まず、攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、スチレン12部、スチレンマクロマー(AS−6;東亜合成株式会社製)6部、n−ドデシルメタクリレート3.5部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート12部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(NKエステルM40G;新中村化学株式会社製)25部、メチルエチルケトン5部、メルカプトエタノール0.3部を入れて70℃に加熱し、別に用意したスチレン15部、スチレンマクロマー(AS−6;東亜合成株式会社製)8部、n−ドデシルメタクリレート7部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート20部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(NKエステルM40G;新中村化学株式会社製)30部、メチルエチルケトン50部、アゾビスイソブチロニトリル1.5部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させた。次に、反応容器にメチルエチルケトンを適宜添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成した。
【0203】
この分散ポリマー溶液の一部と取り出し、溶媒成分を留去後、全重量に対する芳香環の割合を前述の「芳香環量の測定」に記載の方法で測定したところ、分散ポリマー全重量に対する芳香環量は36%であった。
【0204】
上記分散ポリマー溶液40部と有機顔料であるキナクリドンレッド顔料(C.I.ピグメントレッド122)25部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン40部を混合し、ホモジナイザーで30分以上分散処理し、イオン交換水を380部添加して、さらに1時間分散する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去後、水を適宜加えながら、限外濾過システムのミリタン(ミリポア社製)による分画分子量10万の限外濾過を実施した。最後に、イオン交換水、及び中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら適宜加えてpH7.5に調整してから、平均孔径5μmのメンブランフィルタで濾過することで、分散体A3(キナクリドンレッド顔料を芳香環量が38%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液A3を得た。
【0205】
表1に分散液A3に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0206】
(2)インクの調整
本実施例3では、前記実施例3(1)で得た分散液A3、アセチレングリコール系界面活性剤であるオルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)とサーフィノール104PG50(エアープロダクツ株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるトリエチレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2―アルキレングリコールである1,2−ヘキサンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0207】
なお、インクの調整では分散体A3の含有量が7.5%となるように分散液A3を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A3の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0208】
また、下記本実施例3のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
【0209】
分散体A3<140> 7.5%
オルフィンE1010 0.1%
サーフィノール104PG50 0.4%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 1.0%
1,2−ヘキサンジオール 2.5%
トリエチレングリコール 2.0%
2−ピロリドン 4.0%
グリセリン 13.8%
トリメチロールプロパン 6.0%
イオン交換水 残量
【0210】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例3(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図1〜9で説明したカートリッジに注入することで、本実施例3に使用するインクカートリッジを得た。
【0211】
なお、カートリッジの各部品は、予め良く洗浄して各部品に付着したイオン性物質やゴミを除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0212】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記実施例3(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は0.64%であった。
【0213】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタStylus C80(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記実施例3(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0214】
(6)吐出安定性評価
前記実施例3(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0215】
(7)保存安定性評価
前記実施例3(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0216】
(実施例4)
(1)分散液の製造:分散液A4
本実施例4に用いる分散液A4の製造には、有機顔料であるフタロシアニンブルー顔料(C.I.ピグメントブルー15:4)を用いた。
【0217】
まず、攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、スチレン20部、ラウリルメタクリレート9部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(NKエステルM90G;新中村化学株式会社製)15部、イソブチルメタクリレートマクロマー(AW−6S;東亜合成株式会社製)5部、スチレンマクロマー(AS−6;東亜合成株式会社製)10部、メタクリル酸5部、メチルエチルケトン5部、n−ドデシルメルカプタン0.3部を入れて70℃に加熱し、別に用意したスチレン25部、ラウリルメタクリレート30部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(NKエステルM90G;新中村化学株式会社製)20部、イソブチルメタクリレートマクロマー(AW−6S;東亜合成株式会社製)15部、スチレンマクロマー(AS−6;東亜合成株式会社製)15部、メタクリル酸5部、メチルエチルケトン20部、n−ドデシルメルカプタン1.5部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させた。次に、反応容器にメチルエチルケトンを添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成した。
【0218】
この分散ポリマー溶液の一部と取り出し、溶媒成分を留去後、全重量に対する芳香環の割合を前述の「芳香環量の測定」に記載の方法で測定したところ、分散ポリマー全重量に対する芳香環量は48%であった。
【0219】
上記分散ポリマー溶液40部と有機顔料であるフタロシアニンブルー顔料(C.I.ピグメントブルー15:4)40部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン40部を混合し、ホモジナイザーで30分以上分散処理し、イオン交換水を350部添加して、さらに1時間分散する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去後、水を適宜加えながら、限外濾過システムのミリタン(ミリポア社製)による分画分子量10万の限外濾過を実施した。最後に、イオン交換水、及び中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら適宜加えてpH7.5に調整してから、平均孔径5μmのメンブランフィルタで濾過することで、分散体A4(フタロシアニンブルー顔料を芳香環量が48%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液A4を得た。
【0220】
表1に分散液A4に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0221】
(2)インクの調整
本実施例4では、前記実施例4(1)で得た分散液A4、アセチレングリコール系界面活性剤であるアセチレノールE100(川研ファインケミカル株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるプロピレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2―アルキレングリコールである1,2−ヘキサンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0222】
なお、インクの調整では分散体A4の含有量が8.0%となるように分散液A4を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A4の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0223】
また、下記本実施例4のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
分散体A4<100> 8.0%
アセチレノールE100 0.5%
プロピレングリコールモノブチルエーテル 3.0%
1,2−ヘキサンジオール 1.0%
トリエチレングリコール 3.0%
グリセリン 13.8%
トリメチロールプロパン 5.2%
トリプロパノールアミン 0.2%
イオン交換水 残量
【0224】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例4(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図1〜9で説明したカートリッジに注入することで、本実施例4に使用するインクカートリッジを得た。
【0225】
なお、カートリッジの各部品は、予め良く洗浄して各部品に付着したイオン性物質やゴミを除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0226】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記実施例4(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は0.52%であった。
【0227】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタStylus−C80(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記実施例4(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0228】
(6)吐出安定性評価
前記実施例4(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0229】
(7)保存安定性評価
前記実施例4(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0230】
(実施例5)
(1)分散液の製造:分散液A5
本実施例5に用いる分散液A5の製造には、ペリノンオレンジ顔料(C.I.ピグメントオレンジ43)を用いた。それ以外は、前記実施例1(1)に記載と同様の方法により、分散体A5(ペリノンオレンジ顔料を芳香環量が58%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液5を得た。
【0231】
表1に分散液A5に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0232】
(2)インクの調整
本実施例5では、前記実施例5(1)で得た分散液A5、アセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノール485とサーフィノールTG(いずれもエアープロダクツ株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2―アルキレングリコールである1,2−ペンタンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0233】
なお、インクの調整では分散体A5の含有量が10.0%となるように分散液A5を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A5の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0234】
また、下記本実施例5のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
【0235】
分散体A5<150> 10.0%
サーフィノール485 0.5%
サーフィノールTG 0.2%
ジプロピレングリコールモノブチルエーテル 2.0%
1,2−ペンタンジオール 2.0%
N−メチル−2−ピロリドン 5.0%
グリセリン 11.2%
トレハロース 5.8%
イオン交換水 残量
【0236】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例5(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図1〜9で説明したカートリッジに注入することで、本実施例5に使用するインクカートリッジを得た。
【0237】
なお、カートリッジの各部品は、予め良く洗浄して各部品に付着したイオン性物質やゴミを除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0238】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記実施例5(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は1.65%であった。
【0239】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタStylus C80(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記実施例5(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0240】
(6)吐出安定性評価
前記実施例5(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0241】
(7)保存安定性評価
前記実施例5(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0242】
(実施例6)
(1)分散液の製造:分散液A6
本実施例6に用いる分散液A6の製造には、ベンズイミダゾロンブラウン顔料(C.I.ピグメントブラウン32)を用いた。それ以外は、前記実施例1(1)に記載と同様の方法により、分散体A6(ベンズイミダゾロンブラウン顔料を芳香環量が70%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液A6を得た。
【0243】
表1に分散液A6に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0244】
(2)インクの調整
本実施例6では、前記実施例6(1)で得た分散液A6、アセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノール420、及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルであるジエチレングリコールモノブチルエーテルを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0245】
なお、インクの調整では分散体A6の含有量が5.0%となるように分散液A6を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A6の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0246】
また、下記本実施例6のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
【0247】
分散体A6<140> 5.0%
サーフィノール420 0.1%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0%
1,6−ヘキサンジオール 2.0%
テトラエチレングリコール 5.5%
グリセリン 13.5%
トリエタノールアミン 0.5%
イオン交換水 残量
【0248】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例6(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図1〜9で説明したカートリッジに注入することで、本実施例6に使用するインクカートリッジを得た。
【0249】
なお、カートリッジの各部品は、予め良く洗浄して各部品に付着したイオン性物質やゴミを除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0250】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記実施例6(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は1.97%であった。
【0251】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタStylus C80(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記実施例6(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0252】
(6)吐出安定性評価
前記実施例6(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0253】
(7)保存安定性評価
前記実施例6(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0254】
(実施例7)
(1)分散液の製造:分散液A7
本実施例7に用いる分散液A7の製造には、有機顔料であるとキナクリドンバイオレット顔料(C.I.ピグメントバイオレッド19)を用いた。それ以外は、前記実施例2(1)に記載と同様の方法により、分散体A7(キナクリドンバイオレット顔料を芳香環量が21%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液A7を得た。
【0255】
表1に分散液A7に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0256】
(2)インクの調整
本実施例7では、前記実施例7(1)で得た分散液A7、アセチレンアルコール系界面活性剤であるサーフィノール61とサーフィノールTG(いずれもエアープロダクツ株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるトリエチレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2アルキレングリコールである1,2−ペンタンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0257】
なお、インクの調整では分散体A7の含有量が6.0%となるように分散液A7を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A7の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0258】
また、下記本実施例7のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
【0259】
分散体A7<120> 6.0%
サーフィノール61 0.3%
サーフィノールTG 0.1%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 1.5%
1,2−ペンタンジオール 2.0%
ジエチレングリコール 2.0%
チオジグリコール 4.0%
グリセリン 12.6%
トリメチロールエタン 7.2%
イオン交換水 残量
【0260】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例7(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図1〜9で説明したカートリッジに注入することで、本実施例7に使用するインクカートリッジを得た。
【0261】
なお、カートリッジの各部品は、予め良く洗浄して各部品に付着したイオン性物質やゴミを除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0262】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記実施例7(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は0.38%であった。
【0263】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタStylus C80(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記実施例7(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0264】
(6)吐出安定性評価
前記実施例7(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0265】
(7)保存安定性評価
前記実施例7(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0266】
(実施例8)
(1)分散液の製造:分散液A8
本実施例8に用いる分散液A8の製造には、有機顔料であるフタロシアニングリーン顔料(C.I.ピグメングリーン7)を用いた。それ以外は、前記実施例3(1)に記載と同様の方法により、分散体A8(フタロシアニングリーン顔料を芳香環量が40%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液A8を得た。
【0267】
表1に分散液A8に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、ポリマー中の芳香環量、及び顔料:ポリマー比については実施例1(1)と同様に、前述の「芳香環量の測定」、及び「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0268】
(2)インクの調整
本実施例8では、前記実施例8(1)で得た分散液A8、アセチレングリコール系界面活性剤であるオルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)とサーフィノール104(エアープロダクツ株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2−アルキレングリコールである1,2−ペンタンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0269】
なお、インクの調整では分散体A8の含有量が8.0%となるように分散液A8を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体A8の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0270】
また、下記本実施例8のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、前記実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.01%、ベンゾトリアゾールを0.01%、及びEDTA・2Na塩を0.02%となるように添加したものを用いた。
【0271】
分散体A8<110> 8.0%
オルフィンE1010 0.3%
サーフィノール104 0.1%
ジプロピレングリコールモノブチルエーテル 1.0%
1,2−ペンタンジオール 3.0%
トリエチレングリコール 2.0%
チオジグリコール 4.0%
グリセリン 13.8%
トリメチロールプロパン 6.4%
トリエタノールアミン 0.1%
イオン交換水 残量
【0272】
(3)インクカートリッジの製造
前記実施例8(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図1〜9で説明したカートリッジに注入することで、本実施例8に使用するインクカートリッジを得た。
【0273】
なお、カートリッジの各部品は、予め良く洗浄して各部品に付着したイオン性物質やゴミを除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0274】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記実施例8(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は0.72%であった。
【0275】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタStylus C80(セイコーエプソン株式会社製)に、前記実施例8(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0276】
(6)吐出安定性評価
前記実施例8(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0277】
(7)保存安定性評価
前記実施例8(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0278】
(比較例1)
(1)分散液の製造:分散液B1
本比較例1では、前記実施例1(1)と同様に無機顔料であるカーボンブラック顔料のカラーブラックFW18(デグサ株式会社製)を用いて、本比較例1で用いる分散液B1を製造した。
【0279】
但し、本比較例1では、インク中の遊離ポリマー量を実施例1と変更するため、意図的に前記実施例1(1)とは異なる条件で分散液を製造した。
【0280】
まず、攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、スチレン25部、α−メチルスチレン5部、ブチルメタクリレート15部、ラウリルメタクリレート10部、アクリル酸2部、t―ドデシルメルカプタン0.5部を入れ、本比較例では55℃に加熱した。別に用意したスチレン150部、アクリル酸15部、ブチルメタクリレート50部、t−ドデシルメルカプタン1部、メチルエチルケトン20部およびアゾビスイソブチロニトリル3部を滴下ロートに入れ、反応容器に滴下しながら本比較例では2時間で分散ポリマーを重合させた。次に、反応容器にメチルエチルケトンを添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成した。
【0281】
この分散ポリマー溶液の一部と取り出し、溶媒成分を留去後、全重量に対する芳香環の割合を前述の「芳香環量の測定」に記載の方法で測定したところ、分散ポリマー全重量に対する芳香環量は20%であった。
【0282】
上記分散ポリマー溶液40部とカーボンブラック顔料であるカラーブラックFW18(デグサ社製)30部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン35部を混合し、ホモジナイザーで30分以上分散処理し、イオン交換水を350部添加して、さらに1時間分散する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去後、本比較例ではブフナー漏斗での洗浄を実施せず、濾別された顔料内包樹脂分散体に、イオン交換水、及び中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら適宜加えてpH7.5に調整してから、平均孔径5μmのメンブランフィルタで濾過することで、分散体B1(カーボンブラック顔料を芳香環量が20%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液1を得た。
【0283】
表1に分散液B1に使用した顔料、分散ポリマー中の芳香環量、顔料:ポリマー比について示す。なお、顔料:ポリマー比については前記「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した。
【0284】
(2)インクの調整
本比較例1では、前記比較例1(1)で得た分散液B1を使用してインクを調整した。具体的な組成を以下に示す。
【0285】
なお、インクの調整では分散体B1の含有量が8.0%となるように分散液B1を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体B1の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0286】
また、下記本比較例1のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.05%、ベンゾトリアゾールを0.02%、及びEDTA・2Na塩を0.04%となるように添加したものを用いた。
【0287】
分散体B1<140> 8.0%
非イオン系界面活性剤 1.0%
エチレングリコール 5.0%
グリセリン 15.0%
イオン交換水 残量
なお上記組成中、非イオン系界面活性剤としてエパン450(商品名;第一工業製薬株式会社製)を使用した。
【0288】
(3)インクカートリッジの製造
前記比較例1(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図14〜19で説明したカートリッジに注入することで、本比較例1に使用するインクカートリッジを得た。
【0289】
なお、比較例ではカートリッジの各部品を洗浄することなく組み立ててインクを注入した。
【0290】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記比較例1(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は3.21%であった。
【0291】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタStylus C80(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記比較例1(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0292】
(6)吐出安定性評価
前記比較例1(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0293】
(7)保存安定性評価
前記比較例1(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0294】
(比較例2)
(1)分散液の製造:分散液B2
本比較例2に用いる分散液B2の製造では、有機顔料のフタロシアニングリーン顔料(C.I.ピグメントグリーン7)を分散樹脂であるソルスパース27000(アビシア株式会社製)を使用して分散した。
【0295】
C.I.ピグメントグリーン7を15部と、ソルスパース27000を5部、ジエタノールアミン5部、2−プロパノール0.5部、及びイオン交換水74.5部をビーズミルミニゼータ(アジサワ株式会社製)により2時間分散処理を行なって分散体B2を20%(顔料:15%、分散樹脂:5%)含有する比較例2で使用する分散液B2を得た。
【0296】
(2)インクの調整
本比較例2では、前記比較例2(1)で得た分散液B2を使用してインクを調整した。本比較例の具体的な組成を以下に示す。
【0297】
なお、インクの調整では分散体B2の含有量が8.0%となるように分散液B2を添加した。<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体B2の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0298】
また、下記本比較例2のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2を0.05%、ベンゾトリアゾールを0.02%、及びEDTA・2Na塩を0.04%となるように添加したものを用いた。
【0299】
分散体B2<150> 8.0%
非イオン系界面活性剤 1.0%
エチレングリコール 5.0%
グリセリン 15.0%
イオン交換水 残量
なお上記組成中、非イオン系界面活性剤としてノイゲンEA160(商品名;第一工業製薬株式会社製)を使用した。
【0300】
(3)インクカートリッジの製造
前記比較例2(2)で調製したインクを、前記「カートリッジの実施例」に記載の図1〜9で説明したカートリッジに注入することで、本比較例2に使用するインクカートリッジを得た。
【0301】
なお、カートリッジの各部品は、予め良く洗浄して各部品に付着したイオン性物質やゴミを除去してから、乾燥後、組み立ててインクを注入した。
【0302】
(4)遊離ポリマー量の測定
前記実施例8(3)で製造したカートリッジ内のインクを、前記「遊離ポリマー量の測定」に記載の方法により測定したところ、インク全重量に対する遊離ポリマー量は4.16%であった。
【0303】
(5)印字評価
前記実施例1(5)と同様にインクジェットプリンタStylus C80(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、前記比較例2(3)で製造したインクカートリッジを挿入し、前記実施例1(5)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(5)と同様の評価基準により印字評価を行った。なお、印字評価の結果は表2に示す。
【0304】
(6)吐出安定性評価
前記比較例2(5)と同様のプリンタ、及びインクカートリッジを使用して、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、吐出安定性評価の結果は表3に示す。
【0305】
(7)保存安定性評価
前記比較例2(3)で製造したインクカートリッジについて、前記実施例1(7)と同様の評価方法で、前記実施例1(7)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、保存安定性評価の結果は表3に示す。
【0306】
【表1】
【0307】
【表2】
【0308】
表1、2の結果から明らかなように比較例で用いるようなインクカートリッジは印字品質が悪く、本発明によるインクカートリッジを用いると印字品質が良好なことが分かる。
【0309】
以上のように、本発明のインクカートリッジを用いることにより、いずれの紙種に対してもにじみが低減される高品質な印字記録を得ることができる。
【0310】
【表3】
【0311】
表3の結果から明らかなように、インク中の遊離ポリマー量を2%以下抑えた本発明によるインクカートリッジは優れた吐出安定性、保存性安定性を確保し、表2より印字品質も優れていることがわかる。また、遊離ポリマー量が1%以下の場合は格段に吐出安定性、保存性安定性が優れたものになることがわかる。一方、比較例にあるように遊離ポリマー量が3%を越えた場合は、印字品質、吐出安定性、保存安定性ともに、実用レベルに至らないことがわかる。
【0312】
以上の結果から分かるように、本発明によるインクカートリッジを用いることで良好な印字品質、吐出安定性を得ることができ、しかもインクカートリッジ自体の保存性安定性を優れていることがわかる。
【0313】
【発明の効果】
本発明によるインクカートリッジは、昨今の高画質化、高速化の為に、ノズルが微細化され、高い周波数で駆動するインクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタに好適に用いることができる。しかも本発明によるインクカートリッジは保存安定性にすぐれ、さらに良好な印字画像を得ることができ、印字画像の乾燥性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図(イ)、(ロ)は、それぞれ本発明のインクカートリッジの一実施例の表裏の外観を示す斜視図である。
【図2】図(イ)乃至(ニ)は、それぞれ同上インクカートリッジの上面図、正面図、底面図、及び側面図である。
【図3】同上インクカートリッジが装着されるキャリッジの一実施例を示す断面図である。
【図4】図(イ)、(ロ)は、それぞれインクカートリッジをキャリッジに装着する過程を示す図である。
【図5】図(イ)、(ロ)は、それぞれインクカートリッジを構成する容器本体の一実施例を、開口面及び表面の構造で示す斜視図である。
【図6】同上インクカートリッジを構成する容器本体の底面の構造を、開口面側から見た状態で示す斜視図である。
【図7】同上インクカートリッジを構成する容器本体の開口面の構造を示す正面図である。
【図8】同上インクカートリッジの一実施例を示す分解斜視図である。
【図9】同上インクカートリッジの一実施例を示す分解斜視図である。
【図10】差圧弁収容室の近傍の構造を拡大して示す断面図である。
【図11】図(イ)、(ロ)は、それぞれ大気連通用のバルブ収容室の構造を閉状態、及び開状態で拡大して示す断面図である。
【図12】図(イ)、(ロ)は、それぞれ識別用ブロックの一実施例を示す斜視図と正面図である。
【図13】図(I)〜(V)は、それぞれ同上インクカートリッジのインク量の変化を模式的に示す斜視図である。
【図14】図(イ)〜(ハ)は、それぞれ同上インクカートリッジを大容量タイプに構成した場合の実施例を示す斜視図と底面図である。
【図15】同上大容量タイプのインクカートリッジを構成する容器本体の底面の構造を、開口面側から見た状態で示す斜視図である。
【図16】同上大容量タイプのインクカートリッジを構成する容器本体の表面側の構造を示す斜視図である。
【図17】同上大容量タイプのインクカートリッジの一実施例を示す容器本体の開口面の構造を示す正面図である。
【図18】同上大容量タイプのインクカートリッジの一実施例を示す組立斜視図である。
【図19】図(イ)、(ロ)は、それぞれ同上大容量タイプのインクカートリッジのインク供給口の構造を示す断面図、及びインク供給口を中心とする構造を示す断面図である。
【図20】小容量タイプのインクカートリッジの他の実施例を、容器本体の構造で示す正面図である。
【図21】大容量タイプのインクカートリッジの他の実施例を、容器本体の構造で示す正面図である。
【図22】本発明のインクカートリッジを装着したインクジェット記録装置の概要を示す斜視図である。
【符号の説明】
1、1’ カートリッジ
2、2’ 容器本体
3、3’ 蓋体
4、4’ インク供給口
5、6、5’、6’ 係止部材
5a 突起
7、7’ 記憶手段
8 バルブ収容室
9 スリット部
70、70’ 識別ブロック
71〜73 溝
71a、72a、73a 突出部
100 キャリッジ
101 記録ヘッド
102、102’ インク供給針
103、103’ 板バネ
106 電極
110、111、112 識別片
113 作動杆
Claims (20)
- インクを収容するインク収容室、インクを供給するインク供給口、前記インク収容室に大気を連通させる大気連通部を備えた容器と、容器内に収容されたインクと、インクを容器内に保持する負圧発生手段とを有するインクカートリッジであって、
前記インク収容室が、前記大気連通部を備えた下部インク収容室と、前記負圧発生手段を途中に配置したインク流路によりインク供給口と結ばれた上部インク収容室とから構成され、前記下部インク収容室と前記上部インク収容室がインク吸い上げ流路により接続されたものであり、
前記容器内に収容されたインクの着色剤が、顔料をポリマーで包含して水に分散可能とした分散体で、前記ポリマー中の芳香環の量が20重量%以上70重量%以下であり、インクの液性成分中に含有される遊離ポリマー量が3%以下であることを特徴とするインクカートリッジ。 - 前記負圧発生手段が、膜弁を主体とする差圧弁により構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のインクカートリッジ。
- 前記差圧弁が、前記インク供給口の負圧が一定以上に高まった時点で開弁してインク収容室のインクをインク供給口に流出させることを特徴とする請求項2に記載のインクカートリッジ。
- 前記大気連通部が、下部インク収容室に接続し、キャピラリを介して大気に連通する大気連通流路と、前記大気連通流路の途中に配置され、常時は閉弁状態を維持し記録装置に装着された状態で開弁する大気連通弁とから構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
- 前記下部インク収容室と前記上部インク収容室とが、前記容器に略水平方向に伸びる壁を設けて区画されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
- 前記インク吸い上げ流路の流入口が、インクを毛細管力により保持できる程度の断面積であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
- 前記上部インク収容室と前記負圧発生手段とを接続する流路の、前記負圧発生手段よりも上流にフィルタが配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
- 前記容器内に収容されたインクの液性成分中に含有される遊離ポリマー量が2%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
- 前記分散体におけるポリマーで包含された顔料が無機顔料であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
- 前記分散体におけるポリマーで包含された顔料が有機顔料であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
- 前記分散体におけるポリマーで包含された有機顔料がC.I.ピグメントイエロー、C.I.ピグメントレッド、C.I.ピグメントブルー、C.I.ピグメントオレンジ、C.I.ピグメントブラウン、C.I.ピグメントバイオレット、C.I.ピグメントグリーンからなる群から選ばれた一種、又は二種以上であることを特徴とする請求項10に記載のインクカートリッジ。
- 前記分散体における顔料を包含するポリマーが、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマーからなる群から選ばれた一種、又は二種以上であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
- 前記分散体における顔料とポリマーとの重量比が30:70〜90:10の範囲であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
- 更に浸透剤を含有していることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載のインクカートリッジ。
- 前記浸透剤として少なくともアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤からなる群から選ばれた一種又は二種以上を含有していることを特徴とする請求項14に記載のインクカートリッジ。
- 前記浸透剤として少なくともアルキレングリコールモノアルキルエーテル、及び/又は1,2−アルキレングリコールを添加していることを特徴とする請求項14又は15に記載のインクカートリッジ。
- 前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルが、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエ−テルまたは(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルであることを特徴とする請求項16に記載のインクカートリッジ。
- 前記1,2−アルキレングリコールが1,2−ヘキサンジオール及び/又は1,2−ペンタンジオールであることを特徴とする請求項16に記載のインクカートリッジ。
- 請求項1〜18に記載のインクカートリッジを着脱可能に装着し、インクカートリッジより供給されるインクを記録ヘッドから記録媒体上に吐出させ、印刷記録することを特徴とするインクジェット記録装置。
- 前記記録ヘッドが圧電素子の体積変化を利用してインクを吐出させることを特徴とする請求項19に記載のインクジェット記録装置。
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JP2002233887A Withdrawn JP2004074434A (ja) | 2002-08-09 | 2002-08-09 | インクカートリッジ及びこれを用いたインクジェット記録装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007146126A (ja) * | 2005-10-28 | 2007-06-14 | Canon Inc | 水性インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置 |
JP2009155568A (ja) * | 2007-12-27 | 2009-07-16 | Kao Corp | インクジェット記録用水分散体の製造方法 |
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-
2002
- 2002-08-09 JP JP2002233887A patent/JP2004074434A/ja not_active Withdrawn
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