JP2004306104A - 無段変速機用プーリの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】可動フランジ素材から一体的にシリンダ部を形成するときに、浸炭焼入れ後に前記シリンダ部を容易に形成できる無段変速機用プーリの製造方法を提供する。
【解決手段】回転軸5に固定した不動フランジ6と、回転軸5の軸線方向に往復動自在の可動フランジ7と、該可動フランジ7に一体的に設けられ圧力室11を形成するシリンダ部9とを備える無段変速機用プーリを製造する。シリンダ部9を形成するための予備形状部23を備える可動フランジ素材21を、熱間鍛造により形成する。予備形状部23に熱伝導抑制治具24を装着して被覆し、可動フランジ素材21を浸炭焼入れする。熱伝導抑制治具24を離脱せしめ、予備形状部23の表層の熱硬化部分を除去する。熱硬化部分が除去された予備形状部23を絞り成形してシリンダ部9を形成する。熱伝導抑制治具24は、脱炭剤層26を介して予備形状部23に装着する。
【選択図】 図2
【解決手段】回転軸5に固定した不動フランジ6と、回転軸5の軸線方向に往復動自在の可動フランジ7と、該可動フランジ7に一体的に設けられ圧力室11を形成するシリンダ部9とを備える無段変速機用プーリを製造する。シリンダ部9を形成するための予備形状部23を備える可動フランジ素材21を、熱間鍛造により形成する。予備形状部23に熱伝導抑制治具24を装着して被覆し、可動フランジ素材21を浸炭焼入れする。熱伝導抑制治具24を離脱せしめ、予備形状部23の表層の熱硬化部分を除去する。熱硬化部分が除去された予備形状部23を絞り成形してシリンダ部9を形成する。熱伝導抑制治具24は、脱炭剤層26を介して予備形状部23に装着する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の無段変速機に用いられるプーリの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図1に示すように、自動車等の無段変速機1として、駆動側プーリ2と従動側プーリ3と、プーリ2,3間に巻回された無端状金属ベルト4とを備えるものが知られている。
【0003】
駆動側プーリ2は、回転軸7に固定された不動フランジ5と、回転軸7の軸線方向に沿って往復動自在の可動フランジ6とを備えている。可動フランジ6は、円筒状部8に穿設された挿通孔8aを介して回転軸7に装着され、可動フランジ6のシリンダ部9は、回転軸7の軸受け部7aに取着された隔壁10に摺動自在に収容されて圧力室11を形成している。そして、可動フランジ6は、圧力室11に付与される油圧等により、回転軸7の軸線方向に沿って往復動自在とされている。
【0004】
一方、従動側プーリ3は、回転軸14に固定された不動フランジ12と、回転軸14の軸線方向に沿って往復動自在の可動フランジ13とを備えている。従動側プーリ3の可動フランジ13は、コイルバネ16等により不動フランジ12方向に押圧付勢されている。
【0005】
前記駆動側プーリ2の可動フランジ6において、シリンダ部9は、別途製造した円筒状部材を可動フランジ6の外周縁に嵌着することにより形成することもできる。しかし、このようにすると前記円筒状部材と可動フランジ6との嵌着部を厚肉にしなければならず、重量増がさけられない。また、前記円筒状部材と可動フランジ6とを組み合わせるために両者を精度良く加工する必要があり、製造コストの増加が避けられない。
【0006】
そこで、従来、シリンダ部9を可動フランジ6と一体的に成形する技術が提案されている。前記技術は、まず、可動フランジ6の概形を備えると共に、シリンダ部9を形成するための環状の予備形状部を外周縁に備える可動フランジ素材を形成し、次いで該予備形状部を円筒状にスエージング加工することによりシリンダ部9を形成するものである(例えば特許文献1参照)。
【0007】
また、前記可動フランジ素材に浸炭焼入れを行って硬度を上昇させた後、前記予備形状部を円筒状にスピニング加工することによりシリンダ部9を形成する技術も知られている(例えば特許文献2参照)。
【0008】
ところで、前記可動フランジ素材に浸炭焼入れを行う場合、前記予備形状部の硬度まで上昇すると、該予備形状部からシリンダ部9を形成するスエージング加工、スピニング加工等の絞り成形を行う上で不利である。そこで、前記可動フランジ素材に浸炭焼入れを行う場合には、前記予備形状部の表面に脱炭剤を塗布して、該予備形状部の表面に浸炭が生じないようにされている。
【0009】
しかしながら、前記脱炭剤を塗布しても、前記予備形状部の硬度の上昇を十分に抑制することはできないという不都合がある。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−182641号公報
【特許文献2】
特開2000−310305号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる不都合を解消して、可動フランジ素材から一体的にシリンダ部を形成するときに、浸炭焼入れ後に前記シリンダ部の形成を容易に行うことができる無段変速機用プーリの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明は、回転軸に固定した不動フランジと、該回転軸の軸線方向に往復動自在の可動フランジと、該可動フランジに一体的に設けられ該可動フランジを該回転軸の軸線方向に往復動させるための圧力室を形成するシリンダ部とを備える無段変速機用プーリの製造方法において、該シリンダ部を形成するための予備形状部を備える可動フランジ素材を、熱間鍛造により形成する工程と、該予備形状部に熱伝導抑制治具を装着して被覆し、該可動フランジ素材を浸炭焼入れする工程と、該熱伝導抑制治具を離脱せしめ、該予備形状部の表層の熱硬化部分を除去する工程と、該熱硬化部分が除去された該予備形状部を絞り成形して該シリンダ部を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の無段変速機用プーリの製造方法では、まず、前記シリンダ部を形成するための予備形状部を備える可動フランジ素材を、熱間鍛造により形成する。次に、前記可動フランジ素材を浸炭焼入れするが、このとき前記予備形状部に熱伝導抑制治具を装着して、該予備形状部を該熱伝導抑制治具により被覆する。
【0014】
このようにして前記浸炭焼入れを行うと、前記可動フランジ素材では前記予備形状部を除く部分の硬度が浸炭焼入れにより高くなる一方、前記予備形状部に対する浸炭焼入れの効果を抑制して、該予備形状部の硬度の上昇を低減することができる。この結果、前記予備形状部は、前記浸炭焼入れにより熱硬化する部分を表層部のみに留めることができる。
【0015】
そこで、前記浸炭焼入れ後、前記熱伝導抑制治具を離脱せしめ、前記予備形状部の表層の熱硬化部分を容易に除去することができ、該熱硬化部分が除去された該予備形状部を容易に絞り成形して、前記シリンダ部を形成することができる。
【0016】
本発明の製造方法において、前記熱伝導抑制治具は、脱炭剤層を介して前記予備形状部に装着することにより、前記予備形状部に対する浸炭焼入れの効果をさらに抑制することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は自動車等の無段変速機の構成例を示す説明的断面図であり、図2乃至図4は本発明の製造方法の一実施形態を示す説明的断面図であり、図5は、本発明の製造方法の他の実施形態を示す説明的断面図である。
【0018】
図1に示すように、自動車等の無段変速機1は、駆動側プーリ2と従動側プーリ3と、プーリ2,3間に巻回された無端状金属ベルト4とを備えている。
【0019】
駆動側プーリ2は、回転軸5に固定された不動フランジ6と、可動フランジ7とを備え、回転軸5はエンジンに連結されている。不動フランジ6は回転軸5の外周側に延設された円盤状体であり、可動フランジ7は回転軸5が挿通される挿通孔8aを備える円筒状部8の外周側に延設された円盤状体であって、フランジ6,7は、相対向する面に傾斜面6a,7aを備えている。無端状金属ベルト4は、駆動側プーリ2では傾斜面6a,7a間に配設され、傾斜面6a,7a間を滑動する。
【0020】
可動フランジ7は、傾斜面7aと反対側に、外周縁に沿って円筒状に設けられたシリンダ部9を備えている。シリンダ部9は、回転軸5の軸受け部5aに取着された隔壁10に摺動自在に収容されており、シリンダ部9と隔壁10とにより圧力室11が形成されている。そして、可動フランジ7は、圧力室11に付与される油圧等により回転軸5の軸方向に往復動自在であって、しかも回転軸5と共回りするようにされている。
【0021】
一方、従動側プーリ3は、回転軸12に固定された不動フランジ13と、可動フランジ14とを備え、回転軸12は車輪側に連結されている。不動フランジ13は回転軸12の外周側に延設された円盤状体であり、可動フランジ14は回転軸12が挿通される挿通孔15aを備える円筒状部15の外周側に延設された円盤状体であって、フランジ13,14は、相対向する面に傾斜面13a,14aを備えている。無端状金属ベルト4は、従動側プーリ3では傾斜面13a,14a間に配設され、傾斜面13a,14a間を滑動する。可動フランジ14は、コイルバネ16等により不動フランジ13方向に押圧付勢されることにより回転軸12の軸方向に往復動自在であって、しかも回転軸12と共回りするようにされている。
【0022】
無段変速機1では、圧力室11に油圧等を付与して可動フランジ7を回転軸5の軸方向に沿って移動することにより、傾斜面6a,7aの間隔が変更され、これに伴って無端状金属ベルト4の巻回し位置が駆動側プーリ2の直径方向で移動する。駆動側プーリ2での無端状金属ベルト4の巻回し位置が変化すると、これに伴って、従動側プーリ3では傾斜面13a,14aの間隔が変更され、無端状金属ベルト4の巻回し位置が従動側プーリ3の直径方向で移動する。この結果、無段変速機1では、変速比を無段階に変更することができる。
【0023】
次に、図2乃至図4を参照して、本実施形態における駆動側プーリ2の可動フランジ7の製造方法について説明する。
【0024】
本実施形態の製造方法では、まず、SC420等の構造用鋼等の材料を熱間鍛造して概形を形成した後、内周加工、外形加工を施すことにより、図2に示す構成のフランジ素材21を形成する。フランジ素材21は、挿通孔8aが穿設された円筒状部8と、円筒状部8の一方の端部の外周側に延設された円盤状部22と、円盤状部22の外周縁に円筒状部8の他方の端部方向に突出して形成された予備形状部23とを備えている。また、円盤状部22には、円筒状部8の一方の端部に連接する傾斜面7aが形成されている。尚、予備形状部23は前記熱間鍛造により形成されたままの形状であり、該熱間鍛造後のフランジ素材21の状態では特に加工は施されていない。
【0025】
次にフランジ素材21に浸炭焼入れを施すが、本実施形態では、このとき図3に示すように、フランジ素材21にヒートマス治具24を装着する。ヒートマス治具24は、前記浸炭焼入れの際に予備形状部23に対する熱伝導を抑制する治具であって、円筒状体の一方の面に予備形状部23が嵌着される環状溝部25を備えている。ヒートマス治具24は、例えば、SUS304等のフランジ素材21よりも熱伝導性の低い材料により形成されている。
【0026】
ヒートマス治具24は、予備形状部23が環状溝部25に嵌着され、さらに予備形状部23の表面に形成された脱炭剤層26を介してフランジ素材21に装着されている。前記脱炭剤層26は、予備形状部23の表面に脱炭剤を塗布することにより形成することができる。また、前記脱炭剤は市販のものを用いることができ、とくに限定されるものではない。
【0027】
次に、ヒートマス治具24が装着されたフランジ素材21に浸炭焼入れを施す。前記浸炭焼入れは、それ自体公知の方法に従って行うことができ、フランジ素材21のヒートマス治具24に被覆されている部分以外の部分の硬度を向上させる。
【0028】
一方、予備形状部23は、脱炭剤層26を介してヒートマス治具24に被覆されているので浸炭を受けることが無く、焼入れによる熱の影響も抑制することができる。この結果、予備形状部23は、表層部に僅かに熱硬化する部分(図示せず)が形成される以外は、浸炭焼入れの影響を受けない。尚、ヒートマス治具24によれば、前記浸炭焼入れの際に脱炭剤層26の脱落を防止するとの効果を得ることもでき、予備形状部23に対する浸炭焼入れの影響を確実に阻止することができる。
【0029】
そこで、前記浸炭焼入れが終了したならば、ヒートマス治具24を予備形状部23から離脱せしめ、予備形状部23の表層部に形成された熱硬化した部分を機械加工により除去する。前記熱硬化した部分は、上述のように予備形状部23の表層部に僅かに形成されるに過ぎないので、容易に除去することができる。
【0030】
次に、前記熱硬化した部分が除去された予備形状部23に、スエージング加工、スピニング加工等の絞り成形を施すことにより、図4に示すようにシリンダ部9を形成する。前記予備形状部23は浸炭を受けず、僅かに熱硬化した部分も除去されているので、前記浸炭焼入れにより硬化した部分が実質的になく、前記絞り成形を容易に行うことができる。
【0031】
尚、前記実施形態では、予備形状部23の表面に脱炭剤層26を形成するようにしているが、図5に示すように、脱炭剤層26を介さず、単に予備形状部23が環状溝部25に嵌着されてフランジ素材21に装着されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車等の無段変速機の構成例を示す説明的断面図。
【図2】本発明に係る製造方法の一実施形態を示す説明的断面図。
【図3】本発明に係る製造方法の一実施形態を示す説明的断面図。
【図4】本発明に係る製造方法の一実施形態を示す説明的断面図。
【図5】本発明に係る製造方法の他の実施形態を示す説明的断面図。
【符号の説明】
1…無段変速機、 2,3…プーリ、 5…回転軸、 6…不動フランジ、 7…可動フランジ、 9…シリンダ部、 11…圧力室、 21…可動フランジ素材、 23…予備形状部、 24…熱伝導抑制治具、 26…脱炭剤層。
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の無段変速機に用いられるプーリの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図1に示すように、自動車等の無段変速機1として、駆動側プーリ2と従動側プーリ3と、プーリ2,3間に巻回された無端状金属ベルト4とを備えるものが知られている。
【0003】
駆動側プーリ2は、回転軸7に固定された不動フランジ5と、回転軸7の軸線方向に沿って往復動自在の可動フランジ6とを備えている。可動フランジ6は、円筒状部8に穿設された挿通孔8aを介して回転軸7に装着され、可動フランジ6のシリンダ部9は、回転軸7の軸受け部7aに取着された隔壁10に摺動自在に収容されて圧力室11を形成している。そして、可動フランジ6は、圧力室11に付与される油圧等により、回転軸7の軸線方向に沿って往復動自在とされている。
【0004】
一方、従動側プーリ3は、回転軸14に固定された不動フランジ12と、回転軸14の軸線方向に沿って往復動自在の可動フランジ13とを備えている。従動側プーリ3の可動フランジ13は、コイルバネ16等により不動フランジ12方向に押圧付勢されている。
【0005】
前記駆動側プーリ2の可動フランジ6において、シリンダ部9は、別途製造した円筒状部材を可動フランジ6の外周縁に嵌着することにより形成することもできる。しかし、このようにすると前記円筒状部材と可動フランジ6との嵌着部を厚肉にしなければならず、重量増がさけられない。また、前記円筒状部材と可動フランジ6とを組み合わせるために両者を精度良く加工する必要があり、製造コストの増加が避けられない。
【0006】
そこで、従来、シリンダ部9を可動フランジ6と一体的に成形する技術が提案されている。前記技術は、まず、可動フランジ6の概形を備えると共に、シリンダ部9を形成するための環状の予備形状部を外周縁に備える可動フランジ素材を形成し、次いで該予備形状部を円筒状にスエージング加工することによりシリンダ部9を形成するものである(例えば特許文献1参照)。
【0007】
また、前記可動フランジ素材に浸炭焼入れを行って硬度を上昇させた後、前記予備形状部を円筒状にスピニング加工することによりシリンダ部9を形成する技術も知られている(例えば特許文献2参照)。
【0008】
ところで、前記可動フランジ素材に浸炭焼入れを行う場合、前記予備形状部の硬度まで上昇すると、該予備形状部からシリンダ部9を形成するスエージング加工、スピニング加工等の絞り成形を行う上で不利である。そこで、前記可動フランジ素材に浸炭焼入れを行う場合には、前記予備形状部の表面に脱炭剤を塗布して、該予備形状部の表面に浸炭が生じないようにされている。
【0009】
しかしながら、前記脱炭剤を塗布しても、前記予備形状部の硬度の上昇を十分に抑制することはできないという不都合がある。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−182641号公報
【特許文献2】
特開2000−310305号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる不都合を解消して、可動フランジ素材から一体的にシリンダ部を形成するときに、浸炭焼入れ後に前記シリンダ部の形成を容易に行うことができる無段変速機用プーリの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明は、回転軸に固定した不動フランジと、該回転軸の軸線方向に往復動自在の可動フランジと、該可動フランジに一体的に設けられ該可動フランジを該回転軸の軸線方向に往復動させるための圧力室を形成するシリンダ部とを備える無段変速機用プーリの製造方法において、該シリンダ部を形成するための予備形状部を備える可動フランジ素材を、熱間鍛造により形成する工程と、該予備形状部に熱伝導抑制治具を装着して被覆し、該可動フランジ素材を浸炭焼入れする工程と、該熱伝導抑制治具を離脱せしめ、該予備形状部の表層の熱硬化部分を除去する工程と、該熱硬化部分が除去された該予備形状部を絞り成形して該シリンダ部を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の無段変速機用プーリの製造方法では、まず、前記シリンダ部を形成するための予備形状部を備える可動フランジ素材を、熱間鍛造により形成する。次に、前記可動フランジ素材を浸炭焼入れするが、このとき前記予備形状部に熱伝導抑制治具を装着して、該予備形状部を該熱伝導抑制治具により被覆する。
【0014】
このようにして前記浸炭焼入れを行うと、前記可動フランジ素材では前記予備形状部を除く部分の硬度が浸炭焼入れにより高くなる一方、前記予備形状部に対する浸炭焼入れの効果を抑制して、該予備形状部の硬度の上昇を低減することができる。この結果、前記予備形状部は、前記浸炭焼入れにより熱硬化する部分を表層部のみに留めることができる。
【0015】
そこで、前記浸炭焼入れ後、前記熱伝導抑制治具を離脱せしめ、前記予備形状部の表層の熱硬化部分を容易に除去することができ、該熱硬化部分が除去された該予備形状部を容易に絞り成形して、前記シリンダ部を形成することができる。
【0016】
本発明の製造方法において、前記熱伝導抑制治具は、脱炭剤層を介して前記予備形状部に装着することにより、前記予備形状部に対する浸炭焼入れの効果をさらに抑制することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は自動車等の無段変速機の構成例を示す説明的断面図であり、図2乃至図4は本発明の製造方法の一実施形態を示す説明的断面図であり、図5は、本発明の製造方法の他の実施形態を示す説明的断面図である。
【0018】
図1に示すように、自動車等の無段変速機1は、駆動側プーリ2と従動側プーリ3と、プーリ2,3間に巻回された無端状金属ベルト4とを備えている。
【0019】
駆動側プーリ2は、回転軸5に固定された不動フランジ6と、可動フランジ7とを備え、回転軸5はエンジンに連結されている。不動フランジ6は回転軸5の外周側に延設された円盤状体であり、可動フランジ7は回転軸5が挿通される挿通孔8aを備える円筒状部8の外周側に延設された円盤状体であって、フランジ6,7は、相対向する面に傾斜面6a,7aを備えている。無端状金属ベルト4は、駆動側プーリ2では傾斜面6a,7a間に配設され、傾斜面6a,7a間を滑動する。
【0020】
可動フランジ7は、傾斜面7aと反対側に、外周縁に沿って円筒状に設けられたシリンダ部9を備えている。シリンダ部9は、回転軸5の軸受け部5aに取着された隔壁10に摺動自在に収容されており、シリンダ部9と隔壁10とにより圧力室11が形成されている。そして、可動フランジ7は、圧力室11に付与される油圧等により回転軸5の軸方向に往復動自在であって、しかも回転軸5と共回りするようにされている。
【0021】
一方、従動側プーリ3は、回転軸12に固定された不動フランジ13と、可動フランジ14とを備え、回転軸12は車輪側に連結されている。不動フランジ13は回転軸12の外周側に延設された円盤状体であり、可動フランジ14は回転軸12が挿通される挿通孔15aを備える円筒状部15の外周側に延設された円盤状体であって、フランジ13,14は、相対向する面に傾斜面13a,14aを備えている。無端状金属ベルト4は、従動側プーリ3では傾斜面13a,14a間に配設され、傾斜面13a,14a間を滑動する。可動フランジ14は、コイルバネ16等により不動フランジ13方向に押圧付勢されることにより回転軸12の軸方向に往復動自在であって、しかも回転軸12と共回りするようにされている。
【0022】
無段変速機1では、圧力室11に油圧等を付与して可動フランジ7を回転軸5の軸方向に沿って移動することにより、傾斜面6a,7aの間隔が変更され、これに伴って無端状金属ベルト4の巻回し位置が駆動側プーリ2の直径方向で移動する。駆動側プーリ2での無端状金属ベルト4の巻回し位置が変化すると、これに伴って、従動側プーリ3では傾斜面13a,14aの間隔が変更され、無端状金属ベルト4の巻回し位置が従動側プーリ3の直径方向で移動する。この結果、無段変速機1では、変速比を無段階に変更することができる。
【0023】
次に、図2乃至図4を参照して、本実施形態における駆動側プーリ2の可動フランジ7の製造方法について説明する。
【0024】
本実施形態の製造方法では、まず、SC420等の構造用鋼等の材料を熱間鍛造して概形を形成した後、内周加工、外形加工を施すことにより、図2に示す構成のフランジ素材21を形成する。フランジ素材21は、挿通孔8aが穿設された円筒状部8と、円筒状部8の一方の端部の外周側に延設された円盤状部22と、円盤状部22の外周縁に円筒状部8の他方の端部方向に突出して形成された予備形状部23とを備えている。また、円盤状部22には、円筒状部8の一方の端部に連接する傾斜面7aが形成されている。尚、予備形状部23は前記熱間鍛造により形成されたままの形状であり、該熱間鍛造後のフランジ素材21の状態では特に加工は施されていない。
【0025】
次にフランジ素材21に浸炭焼入れを施すが、本実施形態では、このとき図3に示すように、フランジ素材21にヒートマス治具24を装着する。ヒートマス治具24は、前記浸炭焼入れの際に予備形状部23に対する熱伝導を抑制する治具であって、円筒状体の一方の面に予備形状部23が嵌着される環状溝部25を備えている。ヒートマス治具24は、例えば、SUS304等のフランジ素材21よりも熱伝導性の低い材料により形成されている。
【0026】
ヒートマス治具24は、予備形状部23が環状溝部25に嵌着され、さらに予備形状部23の表面に形成された脱炭剤層26を介してフランジ素材21に装着されている。前記脱炭剤層26は、予備形状部23の表面に脱炭剤を塗布することにより形成することができる。また、前記脱炭剤は市販のものを用いることができ、とくに限定されるものではない。
【0027】
次に、ヒートマス治具24が装着されたフランジ素材21に浸炭焼入れを施す。前記浸炭焼入れは、それ自体公知の方法に従って行うことができ、フランジ素材21のヒートマス治具24に被覆されている部分以外の部分の硬度を向上させる。
【0028】
一方、予備形状部23は、脱炭剤層26を介してヒートマス治具24に被覆されているので浸炭を受けることが無く、焼入れによる熱の影響も抑制することができる。この結果、予備形状部23は、表層部に僅かに熱硬化する部分(図示せず)が形成される以外は、浸炭焼入れの影響を受けない。尚、ヒートマス治具24によれば、前記浸炭焼入れの際に脱炭剤層26の脱落を防止するとの効果を得ることもでき、予備形状部23に対する浸炭焼入れの影響を確実に阻止することができる。
【0029】
そこで、前記浸炭焼入れが終了したならば、ヒートマス治具24を予備形状部23から離脱せしめ、予備形状部23の表層部に形成された熱硬化した部分を機械加工により除去する。前記熱硬化した部分は、上述のように予備形状部23の表層部に僅かに形成されるに過ぎないので、容易に除去することができる。
【0030】
次に、前記熱硬化した部分が除去された予備形状部23に、スエージング加工、スピニング加工等の絞り成形を施すことにより、図4に示すようにシリンダ部9を形成する。前記予備形状部23は浸炭を受けず、僅かに熱硬化した部分も除去されているので、前記浸炭焼入れにより硬化した部分が実質的になく、前記絞り成形を容易に行うことができる。
【0031】
尚、前記実施形態では、予備形状部23の表面に脱炭剤層26を形成するようにしているが、図5に示すように、脱炭剤層26を介さず、単に予備形状部23が環状溝部25に嵌着されてフランジ素材21に装着されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車等の無段変速機の構成例を示す説明的断面図。
【図2】本発明に係る製造方法の一実施形態を示す説明的断面図。
【図3】本発明に係る製造方法の一実施形態を示す説明的断面図。
【図4】本発明に係る製造方法の一実施形態を示す説明的断面図。
【図5】本発明に係る製造方法の他の実施形態を示す説明的断面図。
【符号の説明】
1…無段変速機、 2,3…プーリ、 5…回転軸、 6…不動フランジ、 7…可動フランジ、 9…シリンダ部、 11…圧力室、 21…可動フランジ素材、 23…予備形状部、 24…熱伝導抑制治具、 26…脱炭剤層。
Claims (2)
- 回転軸に固定した不動フランジと、該回転軸の軸線方向に往復動自在の可動フランジと、該可動フランジに一体的に設けられ該可動フランジを該回転軸の軸線方向に往復動させるための圧力室を形成するシリンダ部とを備える無段変速機用プーリの製造方法において、
該シリンダ部を形成するための予備形状部を備える可動フランジ素材を、熱間鍛造により形成する工程と、
該予備形状部に熱伝導抑制治具を装着して被覆し、該可動フランジ素材を浸炭焼入れする工程と、
該熱伝導抑制治具を離脱せしめ、該予備形状部の表層の熱硬化部分を除去する工程と、
該熱硬化部分が除去された該予備形状部を絞り成形して該シリンダ部を形成する工程とを備えることを特徴とする無段変速機用プーリの製造方法。 - 前記熱伝導抑制治具は、脱炭剤層を介して該予備形状部に装着することを特徴とする請求項1記載の無段変速機用プーリの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003104819A JP2004306104A (ja) | 2003-04-09 | 2003-04-09 | 無段変速機用プーリの製造方法 |
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JP2003104819A JP2004306104A (ja) | 2003-04-09 | 2003-04-09 | 無段変速機用プーリの製造方法 |
Publications (1)
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JP2004306104A true JP2004306104A (ja) | 2004-11-04 |
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Family Applications (1)
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JP (1) | JP2004306104A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN104493039A (zh) * | 2014-12-15 | 2015-04-08 | 姚烔涛 | 组合式输出齿轮轴摆辗模具 |
-
2003
- 2003-04-09 JP JP2003104819A patent/JP2004306104A/ja active Pending
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