JP2004305901A - 金属製濾過膜の洗浄方法および有機性汚水の膜分離方法 - Google Patents

金属製濾過膜の洗浄方法および有機性汚水の膜分離方法 Download PDF

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雄司 山田
Yasuki Sekine
康記 関根
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Abstract

【課題】金属膜は腐食され難いオーステナイト系ステンレス鋼の粉末または金属繊維を焼結して作製される。それにも拘わらず活性汚泥との長期間にわたる接触により腐食が生じることがある。分離膜の腐食が内部まで及ぶと分離粒径が変化したり、場合によっては膜に亀裂が生じて所期の分離が行なえないという問題がある。本発明の目的は金属膜を使用して有機性汚水を汚泥と処理水とに分離する膜分離活性汚泥処理において、分離膜の目詰まりにより低下した濾過流束を回復させるのみならず、腐食の発生を防ぐことのできる金属膜の洗浄方法を提供することである。
【解決手段】活性汚泥法により処理した有機性汚水を金属製濾過膜を用いて汚泥と処理水とに分離し、前記金属製濾過膜を次亜塩素酸塩と苛性アルカリとを含有する強アルカリ性の洗浄薬液と接触させて洗浄する有機性汚水の膜分離方法。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バクテリアを用いて生活排水等の有機性汚水の処理を行なう汚水の活性汚泥処理に関するものであり、特に生物処理後の有機性汚水を金属製濾過膜を使用して汚泥と処理水とに分離する汚水の膜分離活性汚泥処理に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
汚水の処理方法としては、従来より標準活性汚泥法が用いられている。この処理方法は、最初沈殿池において汚水中の固形分を沈殿させた後に、汚水を曝気槽(好気槽)に導いて活性汚泥を投入し、この汚泥混合液を曝気することによって汚水中の有機物をバクテリアによって分解し、その後、汚水を最終沈殿池に導いて汚水中の汚泥を沈降させ、上澄液として処理水を得るものである。沈降した汚泥の一部は曝気槽に返送され、残りの汚泥は焼却ないしは廃棄される。
【0003】
しかるにこの標準活性汚泥法では、曝気槽と最終沈殿池とが各別に設けられるから、全体装置の設置面積が大きくなるという問題点がある。また、最終沈殿池では重力によって汚泥を沈降させているから、汚泥の濃度が高いと十分な上澄液を得ることができない。この結果、曝気槽内の汚泥混合液の固形分濃度(MLSS)も十分に高くすることができないから、全体装置の設置面積がますます大きくなると同時に、曝気槽でのバクテリア処理の時間も長くなるという問題点があった。
【0004】
そこで近年、汚水中の固形分を金属膜を用いてろ過する膜分離活性汚泥法が注目されている。この膜分離活性汚泥法によれば、MLSSを10〜20g/l程度にまで高めることができるから、標準活性汚泥法(MLSS2〜3g/l程度)に比べ処理能力を高めることができる。従って曝気槽でのバクテリア処理の時間を短縮することが可能である。このように膜分離活性汚泥法によれば、汚水の比較的短時間での処理が可能となるから、全体設備を小規模化することができ、更に最終沈殿池を省略することができるから、建設費が安くなるという利点がある。またバルキングの発生等を含め、汚泥の性状や沈降性に左右されず安定した処理水を得ることができるという利点もある。
【0005】
しかるに膜分離活性汚泥法では、汚水の処理槽内に分離膜を取り付けた膜モジュールを浸漬し、吸引ポンプ等を用いてろ過された処理水を取り出すために、必然的に分離膜の目詰まりが時間と共に累積する。この結果、分離膜を通過する透過流束が経時的に低下し、すなわち、処理効率が経時的に低下するという問題点がある。これを防止するために、好気性バクテリアの活動を促すために曝気槽に供給される散気空気を利用して、散気空気によって分離膜の膜面の洗浄を行う技術あるいは清浄水や薬液を膜の透過側から原水側へ透過させる逆洗浄技術が提案されている。しかし、空気流やこれに付随する水流によって分離膜を洗浄しようとしても、その洗浄効率には一定の限界がある。したがって、定期的に処理槽の運転を停止して膜モジュールを槽外に取り出し、ブラシなどを用いて分離膜の表面に付着した汚泥を掻き落とす保守作業及び薬品による洗浄作業を行う必要がある。また高速の水流を分離膜に噴射して無理に洗浄効率を高めようとすると、異物の絡み付きによる膜の破損を招くおそれがある。
【0006】
膜モジュールに使用される分離膜を材質で分類するとポリオレフィン、フッ素系樹脂、セルロース等の樹脂系素材からなる有機膜、セラミック膜および金属膜等の無機膜に分類される。有機膜は膜そのものの強度が低く逆洗浄のたびに大きく変形して膜の耐久性を低下させる。ブラシ洗浄や高圧洗浄によっても有機膜は損傷を受けやすい。セラミック膜は比較的高強度であるが脆いという取扱い上のデメリットを有する。これに対して金属膜は高強度を有し、かつ可撓性を有するという特徴を持つ。また、金属膜を構成する焼結粒子の粒径を適宜選択することにより分離粒径を調整できるので大腸菌等の除去も可能である。
【0007】
金属膜を使用して有機性汚水を汚泥と処理水とに分離する膜分離活性汚泥処理の先行技術には、例えば特許文献1と特許文献2がある。特許文献1ではオゾン又はオゾン含有ガスを膜の濾液側から原水側へ流通させることにより金属膜の逆洗浄を行うことが記載されている。特許文献2では膜分離により得られた処理水の一部を溜めておき、膜の濾液側から原水側へ流通させることにより金属膜の逆洗浄を行うことが記載されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−35750号公報
【特許文献2】
特開2003−10652号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
分離膜の目詰まりにより低下した濾過流束を回復させる目的においては、上記の先行技術に記載の金属膜の洗浄方法は一定の成果が期待できる。金属膜は腐食され難いオーステナイト系ステンレス鋼の粉末または金属繊維を焼結して作製される。それにも拘わらず活性汚泥の膜分離と膜洗浄とを長期にわたり行うと金属膜に腐食が生じることがある。
【0010】
本発明の目的は、金属膜を使用して有機性汚水を汚泥と処理水とに分離する膜分離活性汚泥処理において、分離膜の目詰まりにより低下した濾過流束を回復させるのみならず、腐食の発生を抑制できる金属膜の洗浄方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は、有機物等によって目詰まりした金属膜(以下、金属製濾過膜とも記す)を次亜塩素酸塩の水溶液に苛性アルカリを添加して水素イオン濃度(PH)を強アルカリ性に調整した洗浄薬液と接触させることにより目詰まり物質の除去とともに金属膜の腐食を抑制できることを見出した。
【0012】
すなわち本願第一の発明は、金属製濾過膜を次亜塩素酸塩と苛性アルカリとを含有する強アルカリ性の洗浄薬液と接触させることを特徴とする金属製濾過膜の洗浄方法である。接触させる手段は金属製濾過膜を前記洗浄薬液中に単に浸漬するだけでもよいが、前記洗浄薬液を用いて金属製濾過膜を透過させることが好ましく、膜の濾液側から原水側へ透過させることが更に好ましい。
【0013】
本願第二の発明は、活性汚泥法により処理した有機性汚水を金属製濾過膜を用いて汚泥と処理水とに分離し、前記金属製濾過膜を次亜塩素酸塩と苛性アルカリとを含有する強アルカリ性の洗浄薬液と接触させて洗浄することを特徴とする有機性汚水の膜分離方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
例えば特許文献1に記載の金属製濾過膜は膜モジュールとして分離槽に浸漬配置される。この膜モジュールは金属製濾過膜を少なくとも一部に使って構成した閉じた内部空間を有する構造体である。膜モジュールの内部空間を減圧または外部を加圧することで内部空間に濾過水が流入し膜モジュール外表面もしくは金属製濾過膜内に目詰まり物質が蓄積される。分離槽では既に生物反応処理の済んだ汚水を原水として受入れて濾過のみをおこなうため膜の洗浄の際は分離槽内の原水および膜モジュール内の濾過水を引抜いて洗浄薬液を注入できるため洗浄効果が得られやすい。注入した洗浄薬液はそのまま浸漬させるだけでもよいが、膜モジュールの内部空間から分離槽内に向かって洗浄薬液を透過させることが好ましい。本発明の洗浄方法を実施する前に、例えば貯留しておいた濾過水等の清浄水を使って予備的な洗浄をおこなうことで洗浄薬液への負荷を低減し洗浄薬液の交換頻度を下げることができる。
【0015】
特許文献2に記載の金属製濾過膜は膜モジュールとして反応槽に浸漬配置される。別途に分離槽を設ける必要が無いので設備の簡略化やコスト低減が図れるメリットがある。しかし、反応槽ではバクテリアによる汚水の生物反応処理がおこなわれるため、膜モジュールの内部空間から反応槽内に向かって流す洗浄薬液はできるだけ抑制された量とし、生物反応への影響が生じないようにする。本発明の洗浄方法を実施する前に、例えば貯留しておいた濾過水等の清浄水を使って予備的な洗浄をおこなうことで洗浄薬液への負荷を低減しその使用量を減らすことができる。また、洗浄の際は反応槽から膜モジュールを取り出して別途に設けた洗浄槽に収容して本発明の洗浄をおこない、再び反応槽に浸漬配置することもできる。この場合は洗浄の度に膜モジュールを取り出す手間がかかるが、生物反応への影響が生じることはない。
【0016】
上記の発明で使用できる次亜塩素酸塩としてはナトリウム塩やカリウム塩等の次亜塩素酸アルカリ金属塩があるが、入手が容易であり価格も安価である次亜塩素酸ナトリウムの使用が好ましい。
【0017】
苛性アルカリとしては水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを使用できる。次亜塩素酸塩の水溶液に苛性アルカリを適宜添加してPHを12以上、好ましくは13以上の強アルカリ性に調整することで洗浄効果を得ながら、なお且つ膜の腐食を抑制する効果が得られる。
【0018】
有機性汚水には有機物の他にコロイド物質、細菌類、SS物質等が含まれており、これらが膜表面および/または膜内部にて捕捉されて濾過膜の目詰まりが引き起こされる。
【0019】
(実施例)
次の条件で本発明を実施し洗浄効果と腐食の抑制効果を調べた。最初に洗浄効果について説明する。洗浄効果は清水を所定の圧力と温度で透過させたときの流束により評価した。
【0020】
【表1】
Figure 2004305901
【0021】
【表2】
Figure 2004305901
【0022】
【表3】
Figure 2004305901
【0023】
上記の結果から、濾過により目詰まりを生じた金属製濾過膜を次亜塩素酸ナトリウム水溶液に水酸化ナトリウムを添加して調整した強アルカリ性洗浄薬液で洗浄すると濾過前の透過流束まで回復することが判明した。このことからほぼ完全に目詰まり物質は除去されていることが分かる。
【0024】
次に腐食の抑制効果について説明する。腐食の抑制効果は上記の金属製濾過膜を所定量の上記洗浄薬液1又は2に168時間連続で浸漬させた後の洗浄薬液中の金属イオン濃度により評価した。濃度測定はJIS K1012 65の1の4ICP発光分析に準拠しておこなった。
【0025】
【表4】
Figure 2004305901
【0026】
金属製濾過膜の材料であるステンレス鋼が腐食するとCrが溶出する。上記の結果から、金属製濾過膜を次亜塩素酸ナトリウム水溶液に水酸化ナトリウムを添加して調整した強アルカリ性洗浄薬液(洗浄薬液2)と接触させたときは洗浄薬液1と接触させたときに比べてCrの溶出が少ないことが分かる。したがって本発明は金属製濾過膜の腐食の発生を抑える効果のあることが分かる。浸漬後の金属製濾過膜の目視観察では、洗浄薬液1に浸漬した濾過膜には両面で腐食が確認された。洗浄薬液2に浸漬した濾過膜には腐食は確認されなかった。
【0027】
【発明の効果】
本発明の洗浄方法によれば、金属製濾過膜を使用して有機性汚水を汚泥と処理水とに分離する膜分離活性汚泥処理において、金属製濾過膜の目詰まりにより低下した濾過流束を回復させるのみならず、腐食の発生を防ぐことができる。

Claims (2)

  1. 金属製濾過膜を次亜塩素酸塩と苛性アルカリとを含有する強アルカリ性の洗浄薬液と接触させることを特徴とする金属製濾過膜の洗浄方法。
  2. 活性汚泥法により処理した有機性汚水を金属製濾過膜を用いて汚泥と処理水とに分離し、前記金属製濾過膜を次亜塩素酸塩と苛性アルカリとを含有する強アルカリ性の洗浄薬液と接触させて洗浄することを特徴とする有機性汚水の膜分離方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006167582A (ja) * 2004-12-15 2006-06-29 Kurita Water Ind Ltd 有機物含有水の膜濾過方法
JP2008080245A (ja) * 2006-09-27 2008-04-10 Sumitomo Heavy Ind Ltd 洗浄水の製造装置及び洗浄水の製造方法

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