JP2004303407A - 低減されたテープドロップアウト性能を呈する磁気記録媒体 - Google Patents

Abstract

【課題】 低減されたテープドロップアウト性能を呈する磁気記録媒体を提供すること。
【解決手段】 フロント面とバック面とを有する非磁性基材と、該フロント面を覆うように形成された下側支持層と、該下側層を覆うように形成された磁性上側記録層と、を含み、該磁性上側記録層が、少なくとも約２５００エルステッド（Ｏｅ）の飽和保磁力を有する磁性メタリック顔料粒子と、該顔料用のバインダー系と、を含有する、二層磁気記録媒体。この磁気記録媒体は、閾値６０％において１平方インチ（６．４５ｃｍ^２）あたりのテープドロップアウト数が１２０未満であり、閾値４０％において１平方インチ（６．４５ｃｍ^２）あたりのドロップアウト数が２０未満である。
【選択図】なし

Description

本発明は、磁気テープのような磁気記録媒体に関し、より具体的には、テープドロップアウト性能を改良するための、より大きい磁気飽和保磁力を有する微粒子状メタリック顔料の使用に関する。

磁気記録媒体は、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピューターテープ、ディスクなどで広く使用されている。磁気媒体では、記録層として薄肉金属層が使用されることもあれば、記録層として微粒子状磁性化合物が含まれることもある。後者のタイプの記録媒体では、バインダー中に分散されて基材上に塗布される微粒子状材料、たとえば、強磁性酸化鉄、酸化クロム、強磁性合金粉末などが利用される。概括的にいえば、磁気記録媒体は、一般に、非磁性基材（たとえば、磁気記録テープ用途ではフィルム）の少なくとも一方の面上に塗布された磁性層を含む。

特定のデザインでは、磁性コーティング（すなわち、「フロントコーティング」）は、非磁性基材上に単一層として直接形成される。この磁気記録層の厚さを減少させようとする取組みの中で、基材上の支持層（すなわち「下側層」）と、支持体上すなわち下側層上に直接形成された厚さの低減された磁性層（すなわち「上側層」）と、を含む二層構成体としてフロントコーティングを形成する代替法が開発されてきた。この構成体の場合、下側層は、典型的には、非磁性または実質的に非磁性であり、一般的には、非磁性粉末とバインダーとで構成される。逆に、上側層は、高分子バインダー中に分散された磁性粉末または顔料を含む。

最後に、磁気記録テープの場合、典型的には、媒体の耐久性、導電性、およびトラッキング特性を改良するために、非磁性基材の反対側にバック面コーティングが施される。

磁気記録媒体上の単一層コーティングおよび二層磁気記録媒体の両方の層は、一般に、顆粒状顔料を含む。広く使用される顔料は、金属酸化物、フェリ磁性またはフェロ磁性金属酸化物、および強磁性金属合金である。二層媒体の下側層中の材料は、略非磁性であり、上側層中の材料は、磁性である。顔料が異なれば、表面特性も異なり、金属粒子は、多くの場合、強塩基性表面を有する。記録媒体では、多くの場合、アルファヘマタイト（α−Ｆｅ_２Ｏ_３）粒子が配合物に利用される。二層記録媒体では、そのような粒子は、カーボンブラック粒子と共に非磁性下側層配合物に利用することが可能である。そのような記録媒体の磁性層では、多くの場合、カーボンブラック粒子と共に、ガンマ酸化鉄（γ−Ｆｅ_２Ｏ_３）、マグネタイト（Ｆｅ_３Ｏ_４）、コバルトドープド酸化鉄、または強磁性金属もしくは金属合金粉末が利用される。

表面平滑性を改良するために、媒体をその製造時にカレンダー加工すること、たとえば、媒体をロールの形態に巻き取る前に一連の対向するローラーに通すこともまた、当技術分野で公知である。テープのコーティングを「硬化」させ、バインダーマトリックスのガラス転移温度を上昇させるために、塗布プロセスおよびカレンダー加工プロセスの後で磁気テープを巻き取られた形態でヒートソーキングすることもまた公知である。硬化が完了した後、テープは、カートリッジで使用するために変換される。カレンダー加工は、たとえば、約９０℃と約９５℃の間のカレンダー加工温度で行われる。カレンダー加工には、対向する略ノンコンプライアントなロール間に基材を通すことが包含され、場合により、少なくとも１つのロールが略コンプライアントである追加の対向するロール間で基材をカレンダー加工することがさらに包含される。カレンダー加工には、オフラインカレンダー加工が包含されるとともに、本発明の実施形態に係る熱硬化前における少なくとも１つの略コンプライアントなロールを使用したインラインカレンダー加工がさらに包含される。

磁気記録媒体のフロントコーティングまたは層はいずれも、一般にバインダー組成物を含む。バインダー組成物は、微粒子状材料の分散、層間の密着性および基材への密着性の増大、光沢の改良などの機能を果たす。予期しうるように、必要とされる上側層、下側層、およびバックコート、さらには適切な基材へのそれらの塗布に関連する配合物仕様は、きわめて複雑であり、製造業者ごとに異なるが、ほとんどのバインダーは、熱可塑性樹脂のような材料を含む。

バインダー系、滑剤、成分から分散体を形成する方法、塗布ヘッドの周囲の清浄度レベル、テープの平滑性、表面上の突起の数、頻度、および高さは、磁気媒体の性能に影響を及ぼす。磁気媒体の性能の重要な観点の１つは、媒体の１平方インチ（６．４５ｃｍ^２）あたりのドロップアウト数である。ドロップアウトとは、テープの不完全さに起因する記録信号の損失である。閾値と呼ばれる設定レベル未満のさまざまな信号損失度およびこの損失の種々の継続時間をも検出するように、試験機をプログラムすることができる。これらの欠陥のほとんどは、その結果として、ヘッドと媒体との間隔の増大およびいわゆるスペーシング損失を生じる。試験機は、一定の密度（指定可能）で単一連続モノトーンを書き込み、記録された信号の振幅をモニターする。信号損失領域の数、サイズ、および頻度を記録し、１平方インチあたりのドロップアウト数（ＤＰＳＩ）（６．４５ｃｍ^２）として報告する。典型的には、４０％および６０％の閾値レベルでドロップアウト数を報告する。閾値４０％とは、もとの信号の４０％だけが残存することを意味する。コーティングの磁気的均一性は、被覆テープのドロップアウトに実質的な影響を及ぼす。スリットエッジ品質およびスリッティング時に生じるデブリもまた、ドロップアウトに影響を及ぼす。ドロップアウト数を減少させるために、スリッティング後のテープのバニシングおよびバニシングの方法を最適化することもできる。信号損失は、次の要因：磁気ボイド、デブリ、表面欠陥、または塗布欠陥のうちの任意の１つ以上が原因となりうるる。

磁性分散体の全体的デザインの変更を要することなく、１平方インチ（６．４５ｃｍ^２）あたりのドロップアウト数を減少させることができれば、きわめて有益であろう。

本発明の一態様は、磁気記録媒体で使用するのに好適な磁気記録層を提供する。この磁気記録層は、少なくとも約２５００エルステッド（Ｏｅ）の飽和保磁力を有する主要顔料材料と、該材料用のバインダー系と、含み、この磁気記録層を用いて製造された磁気媒体は、より低い飽和保磁力を有する主要顔料を有する類似の磁気記録層よりも、閾値６０％および閾値４０％の両方において１平方インチ（６．４５ｃｍ^２）あたりのテープドロップアウト数が少ない。

本発明の他の態様において、本発明は、少なくとも約２５００ Ｏｅの飽和保磁力を有する主要強磁性顔料材料を含む磁気記録層を提供する。

本発明の他の態様は、非磁性基材と、下側支持層と、磁性上側層と、好ましくはバックコートと、を含む二層磁気記録媒体を提供する。基材は、フロント面とバック面とを規定し、所望により、バック面上にバックコートが形成される。上側層は、基材のフロント面の下側層を覆うように配設され、少なくとも約２５００エルステッド（Ｏｅ）の飽和保磁力を有する主要メタリック顔料材料と該材料用のバインダー系とを含む。この磁気媒体は、閾値６０％において１平方インチ（６．４５ｃｍ^２）あたりのテープドロップアウト数が１２０未満であり、閾値４０％において１平方インチ（６．４５ｃｍ^２）あたりのドロップアウト数が２０未満である。

本発明の他の態様は、フロント面とバック面とを有する非磁性基材と、該バック面上に形成されたバックコートと、該フロント面上に形成された下側支持層および磁性記録層と、を含む二層磁気記録媒体を提供する。この磁性層は、少なくとも約２５００ Ｏｅの飽和保磁力を有する強磁性顔料をバインダー中に分散して含有する。

本明細書中で使用する場合、重量、比、および量はすべて、別段の記載がないかぎり、重量基準である。

本明細書中で使用する場合、次の用語は、以下の意味を有する。
１．「低分子量」という用語は、約５００未満の分子量を有することを意味する。
２．「飽和保磁力」および「磁気飽和保磁力」という用語は、同義語で、（Ｈｃ）と略記され、強磁性材料の磁化が飽和に達した後でそれをゼロまで減少させるのに必要とされる磁界の強度を意味する。
３．「エルステッド」という用語は、「Ｏｅ」と略記される磁界の単位を意味し、（１／４π）ｋＡ／ｍと等価である。
４．軟磁性で用いられる「軟」という用語は、約３００エルステッド（Ｏｅ）未満の飽和保磁力を有することを意味する。
５．「ＭＰ３」および「ＭＰ４」という用語は、磁性粒子顔料中の粒子の長さを意味する。ＭＰ３粒子は、約７５〜約１００ナノメートル（ｎｍ）の長さを有し、ＭＰ４粒子は、約５０ｎｍ〜約７０ｎｍの長さを有する。
６．「ｋＦＣＩ」および「ｋｆｃｉ」という用語は、互換性があり、１インチあたりのキロフラックス変化を意味する。

以下の詳細な説明では、特定の実施形態について述べるが、それらに限定しようとするものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により規定される。磁気記録媒体は、非磁性基材と、磁性上側層と、下側支持層またはサブ層と、典型的にはバックコート層と、含む。種々の成分について、以下でより詳細に説明する。しかしながら、概括的にいえば、磁性上側層は、約２５００ Ｏｅよりも大きい飽和保磁力を有する主要メタリック顔料粉末と、顔料用のバインダー系と、を含む。下側支持層は、本質的に非磁性である粒子からなる主要粉末材料（ただし、３００ Ｏｅ以下の飽和保磁力を有するいくつかの磁性粒子が含まれていてもよい）と、カーボンブラック材料と、を含む。場合により、主要粉末材料を導電性材料で被覆してもよい。

磁気記録媒体
本発明によれば、媒体の上側層は、磁気記録層である。磁気記録層は、約０．０５μｍ〜約０．５０μｍの厚さ、好ましくは約０．１３μｍ〜約０．３８μｍの厚さを有する。

磁性金属粒子顔料は、少なくとも約２５００ Ｏｅの飽和保磁力を有する主要磁性金属粒子顔料を含む。磁性金属粒子は、金属鉄ならびに／または鉄とコバルトおよび／もしくはニッケルとの合金、さらには鉄や他の元素の磁性または非磁性酸化物、あるいはそれらの混合物を含む組成を有するが、これらに限定されるものではない。あるいは、磁性粒子をバリウムフェライトのような六方晶フェライトで構成することができる。所要の特性を改良するために、好ましい磁性粉末は、Ａｌ、Ｃｏ、Ｙ、Ｃａ、Ｍｇ、Ｍｎ、Ｎａなどの半金属元素または非金属元素およびそれらの塩または酸化物のような種々の添加剤を含有していてもよい。バインダー系に分散する前に、所定の磁性粉末を種々の助剤で処理し、主要磁性金属粒子顔料を得ることも可能である。好ましい顔料は、約１００ナノメートル（ｎｍ）以下、好ましくは約８０ｎｍ以下の平均粒度を有する。そのような顔料は、戸田工業株式会社、ＴＤＫ株式会社、および同和鉱業株式会社のような会社から市販品として容易に入手可能である。

本発明の磁気記録媒体は、閾値６０％において１平方インチあたりのテープドロップアウト数が１２０未満であり、閾値４０％において１平方インチあたりのドロップアウト数が２０未満である。

先に記載した好ましい主要磁性金属粒子顔料のほかに、上側層の金属粒子顔料は、炭素粒子をさらに含む。少量、好ましくは２％未満の少なくとも１種の大粒子炭素材料、好ましくは、球状炭素粒子を含有する材料も含まれる。大粒子炭素材料は、約５０〜約５００ｎｍ、より好ましくは約１００〜約３００ｎｍ程度の粒度を有する。球状大炭素粒子材料は、公知で、市販品として入手可能であり、商用形態では、性能を改良するために硫黄のような種々の添加剤が含まれていることもある。上側層中に存在する残りの炭素粒子は、小炭素粒子である。すなわち、粒子は、１００ｎｍ未満、好ましくは約７５ｎｍ未満程度の粒度を有する。

磁性上側層にはまた、研磨剤成分またはヘッドクリーニング剤（ＨＣＡ）成分が含まれる。好ましいＨＣＡ成分の１つは、酸化アルミニウムである。シリカ、ＺｒＯ_２、Ｃｒ_２Ｏ_３などのような他の研磨粒子もまた、単独でまたは酸化アルミニウムとの混合物もしくは互いの混合物として利用することができる。

上側層に関連するバインダー系には、好ましくは、熱可塑性樹脂のような少なくとも１種のバインダー樹脂が、他の樹脂成分（たとえば、ＨＣＡを分散させるために使用されるバインダーおよび界面活性剤）、界面活性剤（もしくは湿潤剤）、および１種以上の硬化剤と組み合わせて、組み入れられる。好ましい一実施形態では、上側層のバインダー系は、主要ポリウレタン樹脂とビニル樹脂との組合せを含む。ポリウレタンの例としては、ポリエステル−ポリウレタン、ポリエーテル−ポリウレタン、ポリカーボネート−ポリウレタン、ポリエステル−ポリカーボネート−ポリウレタンおよびポリカプロラクトン−ポリウレタンが挙げられる。ビニル樹脂は、多くの場合、ビニルクロリド樹脂、ビニルクロリド−ビニルアセテートコポリマー、ビニルクロリド−ビニルアセテート−ビニルアルコールコポリマー、ビニルクロリド−ビニルアセテート−無水マレイン酸などである。ビスフェノールＡ−エポキシ、スチレン−アクリロニトリル、およびニトロセルロースのような樹脂もまた、特定の磁気記録媒体配合物で許容しうる。

他の実施形態では、ビニル樹脂は、非ハロゲン化ビニルコポリマーである。有用なビニルコポリマーとしては、（メタ）アクリロニトリル、非ハロゲン化ヒドロキシル官能性ビニルモノマー、分散性基を有する非ハロゲン化ビニルモノマー、および１種以上の非ハロゲン化非分散性ビニルモノマーを含むモノマーのコポリマーが挙げられる。好ましい非ハロゲン化ビニルコポリマーは、５〜４０部の（メタ）アクリロニトリル、３０〜８０部の１種以上の非ハロゲン化非分散性ビニルモノマー、５〜３０重量部の非ハロゲン化ヒドロキシル官能性ビニルモノマー、および０．２５〜１０部の分散性基含有非ハロゲン化ビニルモノマーを含むモノマーのコポリマーである。

好ましい一実施形態では、主要ポリウレタンバインダーは、主要上側層顔料１００重量部を基準にして、４〜１０重量部、好ましくは６〜８重量部の量で上側層に組み入れられ、ビニルバインダーまたはビニルクロリドバインダーは、主要上側層顔料１００重量部を基準にして、７〜１５重量部、好ましくは１０〜１２重量部の量で組み入れられる。

バインダー系はさらに、好ましくは、所定のＨＣＡ材料を分散するために使用されるポリウレタンバインダーのようなＨＣＡバインダーを含む（前分散されたまたはペーストのＨＣＡと組み合わせて）。あるいは、所定のＨＣＡ形態（たとえば、粉末ＨＣＡ）と適合性のある他のＨＣＡバインダーが許容できる。

磁性上側層はさらに、脂肪酸および／または脂肪酸エステルのような１種以上の滑剤を含有しうる。組み入れられる滑剤は、フロント面コーティング全体にわたり存在し、重要なことは上側層の表面に存在することである。滑剤は、摩擦を低下させて低い抗力で滑らかな接触を保持し、媒体表面を摩耗から保護する。したがって、上側層および下側層の両層に提供される滑剤は、組み合わせて選択され配合される。好ましい脂肪酸滑剤としては、純度が少なくとも９０パーセントであるステアリン酸が挙げられる。滑剤成分として工業等級の酸および／または酸エステルを利用することもできるが、高純度滑剤材料を組み込めば、得られる媒体のロバスト性能が確実に得られる。他の許容しうる脂肪酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸など、およびそれらの混合物が挙げられる。上側層配合物は、ブチルステアレート、イソプロピルステアレート、ブチルオレエート、ブチルパルミテート、ブチルミリステート、ヘキサデシルステアレート、およびオレイルオレエートのような脂肪酸エステルをさらに含有しうる。脂肪酸および脂肪酸エステルは、単独でまたは組み合わせて、利用することが可能である。

好ましい実施形態では、滑剤は、主要上側層顔料１００重量部を基準にして、約１〜約１０重量部、好ましくは約１〜約５重量部の量で上側層に組み入れられる。

バインダー系は、従来の界面活性剤または湿潤剤を含有していてもよい。フェニルホスホン酸（ＰＰＡ）、４−ニトロ安息香酸、ならびに硫酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、およびカルボン酸の種々の他の付加化合物のような公知の界面活性剤が許容できる。

バインダー系はまた、イソシアネートまたはポリイソシアネートのような硬化剤を含有しうる。好ましい実施形態では、硬化剤成分は、主要上側層顔料１００重量部を基準にして、２〜５重量部、好ましくは３〜４重量部の量で上側層に組み入れられる。

上側層の材料は、主要顔料と混合され、下側層の上に塗布される。上側層コーティング材料に関連する有用な溶媒は、好ましくは、約５％〜約５０％の好ましい濃度のシクロヘキサノン（ＣＨＯ）、好ましくは約３０％〜約９０％の濃度を有するメチルエチルケトン（ＭＥＫ）、および約０％〜約４０％の濃度のトルエン（Ｔｏｌ）を含む。あるいは、他の比を利用することができるか、またはキシレン、テトラヒドロフラン、メチルアミルケトンなどの他の溶媒または溶媒の組合せが許容できる。

下側層
二層磁気テープの下側層は、本質的に非磁性であり、典型的には、約３００ Ｏｅ未満の飽和保磁力を有する非磁性または軟磁性粉末と樹脂バインダー系とを含む。本質的に非磁性であるように下側層を形成することにより、上側磁性層の電磁気特性は悪影響を受けなくなる。しかしながら、なんら悪影響を及ぼさない程度まで、下側層は、少量の磁性粉末を含有しうる。

下側層に組み込まれる顔料または粉末は、少なくとも、主要顔料材料と導電性カーボンブラックとを含む。主要顔料材料は、酸化鉄、二酸化チタン、一酸化チタン、アルミナ、酸化スズ、炭化チタン、炭化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素などのような非磁性粒子および約３００ Ｏｅ未満の飽和保磁力を有する軟磁性粒子から選択される微粒子状材料または「粒子」からなる。場合により、これらの主要顔料材料は、炭素、スズ、または他の導電性材料で被覆された形態で提供し、下側層顔料として利用することができる。好ましい実施形態では、主要下側層顔料材料は、性質上酸性であっても塩基性であってもよい炭素被覆ヘマタイト材料（α−酸化鉄）である。好ましいアルファ酸化鉄は、粒度が実質的に均一である。すなわち、加熱により脱水され、アニーリングされて細孔数が低減される。アニーリング後、顔料を表面処理に付すことが可能である。表面処理は、典型的には、カーボンブラックなどのような他の層材料と混合する前に行われる。アルファ酸化鉄は、周知であり、同和鉱業株式会社、戸田工業株式会社、ＴＤＫ株式会社、堺化学工業株式会社などから市販品として入手可能である。主要顔料は、好ましくは約０．２５μｍ未満、より好ましくは約０．１５μｍ未満の平均粒子長さを有する。

導電性カーボンブラック材料は、静電気による帯電からフロントコーティングを防御するように特定レベルの導電性を付与し、さらに、その上に形成される上側磁性層の表面平滑性を改良する。導電性カーボンブラック材料は、好ましくは従来型のものであり、広く市販されている。好ましい一実施形態では、導電性カーボンブラック材料は、約２０ｎｍ未満、より好ましくは約１５ｎｍ未満の平均粒度を有する。炭素、スズ、または他の導電性材料で被覆された形態で主要顔料材料が提供される場合、導電性カーボンブラックは、主要下側層顔料材料１００重量部を基準にして、約１〜約５重量部、より好ましくは約１．５〜約３．５重量部の量で添加される。主要顔料材料が導電性材料のコーティングなしで提供される場合、導電性カーボンブラックは、主要下側層顔料材料１００重量部を基準にして、約５〜約１８重量部、より好ましくは約８〜約１２重量部の量で添加される。下側層中の導電性カーボンブラックおよび導電性コーティング材料の合計量は、好ましくは、約１×１０^１０オーム／ｃｍ^２以下の抵抗率を提供するのに十分な量である。

下側層はまた、研磨剤またはヘッドクリーニング剤（ＨＣＡ）のような追加の顔料成分を含有しうる。好ましいＨＣＡ成分の１つは、酸化アルミニウムである。シリカ、ＺｒＯ_２、Ｃｒ_２Ｏ_３などのような他の研磨粒子を利用することができる。

下側層に関連するバインダー系または樹脂には、好ましくは、熱可塑性樹脂のような少なくとも１種のバインダー樹脂が、他の樹脂成分（たとえば、ＨＣＡを分散させるために使用されるバインダーおよび界面活性剤）、界面活性剤（もしくは湿潤剤）、および１種以上の硬化剤と組み合わせて、組み入れられる。好ましい一実施形態では、下側層のバインダー系は、主要ポリウレタン樹脂と、ビニルクロリド樹脂、ビニルクロリド−ビニルアセテートコポリマー、ビニルクロリド−ビニルアセテート−ビニルアルコールコポリマー、ビニルクロリド−ビニルアセテート−無水マレイン酸などと、の組合せ物を含む。非ハロゲン化ビニル樹脂が好ましい場合、上側層に対して記載したのと同じような非ハロゲン化ビニルコポリマーが、下側層でも同様に有用である。

有用なポリウレタンの例としては、ポリエステル−ポリウレタン、ポリエーテル−ポリウレタン、ポリカーボネート−ポリウレタン、ポリエステル−ポリカーボネート−ポリウレタン、およびポリカプロラクトン−ポリウレタンが挙げられる。ビスフェノールＡエポキシド、スチレン−アクリロニトリル、およびニトロセルロースのような樹脂もまた許容できる。

好ましい実施形態では、主要ポリウレタンバインダーは、主要下側層顔料１００重量部を基準にして、約４〜約１０重量部、好ましくは約６〜約８重量部の量で下側層に組み入れられる。好ましい実施形態では、ビニルバインダーまたはビニルクロリドバインダーは、主要下側層顔料１００重量部を基準にして、約７〜約１５重量部、好ましくは約１０〜約１２重量部の量で下側層に組み入れられる。

バインダー系はさらに、好ましくは、所定のＨＣＡ材料を分散するために使用されるポリウレタンバインダーのようなＨＣＡバインダーを含む（前分散されたまたはペーストのＨＣＡと組み合わせて）。あるいは、所定のＨＣＡ形態（たとえば、粉末ＨＣＡ）と適合性のある他のＨＣＡバインダーが許容できる。

バインダー系はまた、従来の表面処理剤薬剤を含有しうる。フェニルホスホン酸（ＰＰＡ）、４−ニトロ安息香酸、ならびに硫酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、およびカルボン酸の種々の他の付加化合物のような公知の表面処理剤が許容できる。

バインダー系はまた、イソシアネートまたはポリイソシアネートのような硬化剤を含有しうる。好ましい実施形態では、硬化剤成分は、主要下側層顔料１００重量部を基準にして、約２〜約５重量部、好ましくは約３〜約４重量部の量で下側層に組み入れられる。

下側層はさらに、脂肪酸および／または脂肪酸エステルのような１種以上の滑剤を含有しうる。組み入れられる滑剤は、フロント面コーティング全体にわたり存在し、重要なことは上側層の表面に存在することである。滑剤は、摩擦を低下させて低い抗力で滑らかな接触を保持し、媒体表面を摩耗から保護する。したがって、上側層および下側層の両層に提供される滑剤は、好ましくは組み合わせて選択され配合される。バックグラウンドで、従来の磁気記録テープ配合物は、滑剤として工業等級の脂肪酸および脂肪酸エステルを利用する。驚くべきことに、これらの工業等級の滑剤材料は、フロントコーティング表面への不純物の移動が原因で、フロントコーティング中における粘着性デブリの形成に寄与していることを見いだした。このデブリは、さらには、記録ヘッドおよび他の媒体搬送表面の汚染、搬送時の媒体の滑性の損失による過度の摩擦抵抗および媒体摩耗に起因して、不十分なテープ性能をもたらす可能性がある。

好ましい実施形態では、下側層は、脂肪酸として純度が少なくとも９０パーセントであるステアリン酸を含む。滑剤成分として工業等級の酸および／または酸エステルを利用することもできるが、高純度滑剤材料を組み込めば、得られる媒体のロバスト性能が確実に得られる。あるいは、このほかの許容しうる脂肪酸には、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸など、およびそれらの混合物が包含される。下側層配合物は、ブチルステアレート、イソプロピルステアレート、ブチルオレエート、ブチルパルミテート、ブチルミリステート、ヘキサデシルステアレート、およびオレイルオレエートのような脂肪酸エステルをさらに含有しうる。脂肪酸および脂肪酸エステルは、単独でまたは組み合わせて、利用することが可能である。好ましい実施形態では、滑剤は、導電性被覆主要下側層顔料１００重量部を基準にして、約１〜約１０重量部、好ましくは約１〜約５重量部の量で下側層に組み入れられる。

下側層の材料は、表面処理された主要顔料と混合され、下側層は、基材に塗布される。下側層コーティング材料に関連する有用な溶媒は、好ましくは、約５％〜約５０％の好ましい濃度のシクロヘキサノン（ＣＨＯ）、好ましくは約３０％〜約９０％の濃度を有するメチルエチルケトン（ＭＥＫ）、および約０％〜約４０％の濃度のトルエン（Ｔｏｌ）を含む。あるいは、他の比を利用することができるか、またはキシレン、テトラヒドロフラン、メチルアミルケトンなどの他の溶媒または溶媒の組合せが許容できる。

バックコート
バックコートは、一般的には、慣例に従って利用されてきたタイプのものであり、したがって、主に、カーボンブラックまたは二酸化ケイ素の粒子のような軟質（すなわち、モース硬度＜５）の非磁性粒子材料からなる。一実施形態では、バックコート層には、主要な小さいカーボンブラック成分と副次的な大きいテクスチャーカーボンブラック成分とを含む２種類のカーボンブラックの組合せ物が、適切なバインダー樹脂と組み合わせて含まれる。主要な小さいカーボンブラック成分は、好ましくは約１０〜約２５ｎｍ程度の平均粒度を有し、一方、副次的な大きい炭素成分は、好ましくは約５０〜約３００ｎｍ程度の平均粒度を有する。

当技術分野で公知のごとく、適切なバインダー、界面活性剤、補助粒子、および溶媒と共にインクとして分散されるバックコート顔料は、典型的には、指定の供給業者から購入される。好ましい実施形態では、バックコートバインダーは、所望に応じてコーティング剛性を改変するのに適した量で添加されるポリウレタン、フェノキシ樹脂、またはニトロセルロースのうちの少なくとも１つを含む。

基材
基材としては、磁気記録媒体支持体として有用な任意の従来型非磁性基材を用いることができる。磁気記録テープに有用な例示的な基材材料としては、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、ポリエチレンナフタレート（ＰＥＮ）のようなポリエステル類、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとの混合物；ポリオレフィン類（たとえば、ポリプロピレン）；セルロース誘導体；ポリアミド類；およびポリイミド類が挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを利用する。

好ましい実施形態の説明を目的として本明細書中で特定の実施形態を示し説明してきたが、当業者には理解されるであろうが、同じ目的を達成することを意図した多種多様な代替的および／または等価な実施形態を、本発明の範囲から逸脱することなく、提示し説明した特定の実施形態の代わりに用いることが可能である。化学、機械、電気、電気機械、電気、およびコンピュータの分野の当業者であれば、きわめて多種多様な実施形態で本発明を実施しうることは容易に理解されよう。本願は、本明細書に説明された好ましい実施形態の任意の変更形態または変形形態を包含するものとする。したがって、本発明は、特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されるものであることは自明である。試験は、１．７８ｍ／秒、トラック幅１２μｍのＭＲ読取りヘッド、１００ｋｆｃｉの記録密度の条件で行った。値は、３０５ｍのテープの１トラックに関するものである。

実施例１
表１中のサンプル番号１および２は、ＰＥＴ基材上に塗布された磁性上側層および非磁性下側層を含む二層テープである。さらに、テープはまた、磁性層の反対側にバックコートを有する。磁性層および非磁性サブ層では、いずれも、所有権つき官能化非ハロゲン化ビニルコポリマーと、市販のポリウレタン（ＵＲ７３００）軟質ポリマーと、を含むＰＶＣ非含有バインダー系が使用されている。バインダーのほかに、配合物にはまた、滑剤として脂肪酸（ステアリン酸）と脂肪酸エステル（ブチルステアレートおよびブチルパルミテート）との混合物、ヘッドクリーニング剤として酸化アルミニウム、および炭素粒子が含まれる。この実施例で使用した磁性粒子は、大きい飽和保磁力（Ｈｃ＞２５００ Ｏｅ）のＭＰ３顔料であり、サブ層顔料はα−酸化鉄である。

実施例２
表１中のサンプル４は、ＰＥＴ基材上に塗布された磁性上側層および非磁性下側層を含む二層テープである。さらに、テープはまた、磁性層の反対側にバックコートを有する。磁性層および非磁性サブ層では、いずれも、ＰＶＣ−ビニルコポリマー（ＭＲ１１０）と市販のポリウレタン（ＵＲ−４１２２）軟質ポリマーとを含むバインダー系が使用されている。バインダーのほかに、配合物にはまた、滑剤として脂肪酸（ステアリン酸）と脂肪酸エステル（ブチルステアレートおよびブチルパルミテート）との混合物、ヘッドクリーニング剤としてアルミナ、および炭素粒子が含まれる。この実施例で使用した磁性粒子は、大きい飽和保磁力（Ｈｃ＞２５００ Ｏｅ）のＭＰ４顔料である。

実施例３
表１中のサンプル３は、ＰＥＴ基材上に塗布された磁性上側層および非磁性下側層を含む二層テープである。さらに、テープはまた、磁性層の反対側にバックコートを有する。磁性層および非磁性サブ層では、いずれも、ＰＶＣ−ビニルコポリマー（ＭＲ１１０）と市販のポリウレタン（ＵＲ−４１２２）軟質ポリマーとを含むバインダー系が使用されている。バインダーのほかに、配合物にはまた、滑剤として脂肪酸（ステアリン酸）と脂肪酸エステル（ブチルステアレートおよびブチルパルミテート）との混合物、ヘッドクリーニング剤としてアルミナ、および炭素粒子が含まれる。この実施例で使用した磁性粒子は、大きい飽和保磁力（Ｈｃ＞２５００ Ｏｅ）のＭＰ３顔料である。

実施例４
表１中のサンプル５は、ＰＥＮ基材上に塗布された磁性上側層および非磁性下側層を含む二層テープである。さらに、テープはまた、磁性層の反対側にバックコートを有する。磁性層および非磁性サブ層では、いずれも、ＰＶＣ−ビニルコポリマー（ＭＲ１１０）と市販のポリウレタン（ＵＲ−４１２２）軟質ポリマーとを含むバインダー系が使用されている。バインダーのほかに、配合物にはまた、滑剤として脂肪酸（ステアリン酸）と脂肪酸エステル（ブチルステアレートおよびブチルパルミテート）との混合物、ヘッドクリーニング剤としてアルミナ、および炭素粒子が含まれる。この実施例で使用した磁性粒子は、大きい飽和保磁力（Ｈｃ＞２５００ Ｏｅ）のＭＰ４顔料である。

実施例５
表１中のサンプル６は、平滑で薄肉の（１８ｇ）ＰＥＮ（ＱＺ３４Ｓ）基材上に塗布された磁性上側層および非磁性下側層を含む二層テープである。さらに、テープはまた、磁性層の反対側にバックコートを有する。磁性層および非磁性サブ層では、いずれも、ＰＶＣ−ビニルコポリマー（ＭＲ１１０）と市販のポリウレタン（ＵＲ−４１２２）軟質ポリマーとを含むバインダー系が使用されている。バインダーのほかに、配合物にはまた、滑剤として脂肪酸（ステアリン酸）と脂肪酸エステル（ブチルステアレートおよびブチルパルミテート）との混合物、ヘッドクリーニング剤としてアルミナ、および炭素粒子が含まれる。この実施例で使用した磁性粒子は、大きい飽和保磁力（Ｈｃ＞２５００ Ｏｅ）のＭＰ４顔料である。

実施例６
表１中のサンプル７は、平滑な２４ｇＰＥＮ（ＱＺ３４Ｓ）基材上に塗布された磁性上側層および非磁性下側層を含む二層テープである。さらに、テープはまた、磁性層の反対側にバックコートを有する。磁性層および非磁性サブ層では、いずれも、ＰＶＣ−ビニルコポリマー（ＭＲ１１０）と市販のポリウレタン（ＵＲ−４１２２）軟質ポリマーとを含むバインダー系が使用されている。バインダーのほかに、配合物にはまた、滑剤として脂肪酸（ステアリン酸）と脂肪酸エステル（ブチルステアレートおよびブチルパルミテート）との混合物、ヘッドクリーニング剤としてアルミナ、および炭素粒子が含まれる。この実施例で使用した磁性粒子は、大きい飽和保磁力（Ｈｃ＞２５００ Ｏｅ）のＭＰ３顔料である。

Claims (4)

1. フロント面とバック面とを有する非磁性基材と、該フロント面を覆うように形成された下側支持層と、該下側層を覆うように形成された磁性上側記録層と、を含み、該磁性上側記録層が、少なくとも約２５００エルステッド（Ｏｅ）の飽和保磁力を有する磁性メタリック顔料粒子と、該顔料用のバインダーと、を含有する、二層磁気記録媒体であって、
   閾値６０％において１平方インチ（６．４５ｃｍ^２）あたりのテープドロップアウト数が１２０未満であり、閾値４０％において１平方インチ（６．４５ｃｍ^２）あたりのドロップアウト数が２０未満である二層磁気記録媒体。
2. 前記磁性顔料粒子が約７５ｎｍ以下の平均サイズを有する、請求項１に記載の媒体。
3. 原子間力顕微鏡法により測定したときに約４ｎｍ未満の平均磁性面側表面平滑性を有する、請求項１に記載の媒体。
4. 前記下側層が、本質的に非磁性である顔料粉末または３００ Ｏｅ未満の飽和保磁力を有する軟磁性粉末と、樹脂バインダー系と、を含む、請求項１に記載の媒体。