JP2004300796A - 床材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】無機板の優れた熱寸法安定性、耐水性および耐傷性を活かしつつ、木質材の優れた耐衝撃性、施工性および切削加工性を備え、床暖房にも使用できる床材を安定供給することにある。
【解決手段】鉱物質繊維35〜70重量%、無機粉状体25〜55重量%、および、結合剤5〜25重量%を必須成分とするスラリーを湿式抄造して得られる湿潤マットに熱圧プレスを施して得られた比重0.3〜0.9のセミキュアマットに、希釈された樹脂率10〜60%の樹脂液を含浸させ、熱圧プレスで平均比重1.2〜1.7に調整して得た硬質繊維板の表面に化粧加工を施すとともに、その裏面に比重1.1以上の高比重可撓性樹脂マットを貼着一体化した床材である。
【選択図】 図1
【解決手段】鉱物質繊維35〜70重量%、無機粉状体25〜55重量%、および、結合剤5〜25重量%を必須成分とするスラリーを湿式抄造して得られる湿潤マットに熱圧プレスを施して得られた比重0.3〜0.9のセミキュアマットに、希釈された樹脂率10〜60%の樹脂液を含浸させ、熱圧プレスで平均比重1.2〜1.7に調整して得た硬質繊維板の表面に化粧加工を施すとともに、その裏面に比重1.1以上の高比重可撓性樹脂マットを貼着一体化した床材である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は床材、特に、寸法安定性および耐水性に優れているとともに、熱伝導率が高い床暖房用床材に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
従来、住宅リフォームの際に使用される床暖房用床材としては、例えば、55℃〜65℃の温度に調整された発熱マットの上面に直接施工されるので、耐熱性に優れたものが求められている。また、前記床材には施工上の理由から薄いものが求められ、通常は6mm以下の厚さであることが望まれている。このため、使用条件の厳しさ(薄さ・発熱・乾燥)から、前記床材の基材には高い物理的性能が要求され、合板、MDF、および、オートクレーブ処理された無機板が基材として用いられている。
【0003】
しかし、前述の合板では、熱伝導率が低いため、床暖房の立ち上がりが悪く、床暖房効率が良くない。さらに、前記合板は熱や水に対する水平方向の寸法安定性が悪い。このため、床暖房に使用すると、嵌合した実部に目隙(床材の収縮によって目地巾が大きくなった状態)が生じたり、床材の膨張により実部を突き合わせた部分が持ち上がるピックアップと呼ばれる現象が生じるという問題があった。さらに、前記合板の表面は比較的柔らかいため、表面の化粧層が傷つきやすいという不具合があった。
【0004】
そこで、耐傷性を向上させるためにMDF(中質繊維板)が単独または複合されて使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
実開平7−23141号公報 (図1)
【0006】
しかし、住宅の美装仕上げに使用される家庭用ワックスあるいは水が前述のMDFの実部から侵入すると、嵌合した実部が膨潤し、床面が不陸になるという不具合があった。
【0007】
また、化粧を目的として床材に疑似目地や面取り等の切削加工を施す場合に、表面を淡色に仕上げたいときに下地の色が濃色であると、切削部が目立ってしまう。そこで、表面が淡色の合板を選別したり、一般的に濃色の南洋材MDFを淡色の針葉樹MDFに交換することが検討されている。しかし、合板やMDFの色調を選別して使用しようとすると、資材を選択できる範囲が狭くなるので、資材の安定供給が困難になり、生産性が非常に悪かった。
【0008】
このような木質材特有の寸法変化、柔らかさによる傷付き易さ、および、水やワックスによる膨潤を原因とする不具合を解決する手段として、オートクレーブ処理された無機板の表裏面に木質単板を貼り、これを床材としたものがある。しかし、前記無機板は本来的に重いだけでなく、運搬や施工時に受ける軽微な衝撃力で実部が欠けやすいとう問題点があった。
【0009】
本発明は、無機板の優れた熱寸法安定性、耐水性および耐傷性を活かしつつ、木質材の優れた耐衝撃性、施工性および切削加工性を備え、床暖房にも使用できる床材を安定供給することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる化粧材は、前記目的を達成すべく、鉱物質繊維35〜70重量%、無機粉状体25〜55重量%、および、結合剤5〜25重量%を必須成分とするスラリーを湿式抄造して得られる湿潤マットに熱圧プレスを施して得られた比重0.3〜0.9のセミキュアマットに、希釈された樹脂率10〜60%の樹脂液を含浸させ、熱圧プレスで平均比重1.2〜1.7に調整して得た硬質繊維板の表面に化粧加工を施すとともに、その裏面に比重1.1以上の高比重可撓性樹脂マットを貼着一体化した構成としてある。
【0011】
本発明によれば、無機板のように優れた熱寸法安定性、耐水性および耐傷性を有するとともに、木質材に近似する耐衝撃性、施工性および切削加工性を備えた床材、特に、床暖房にも使用できる床材を安定供給できる。さらに、熱伝導性に優れている硬質繊維板および高比重可撓性樹脂マットを使用しているので、床暖房用床材に必要な優れた昇温特性(暖房の立ち上がりが早い)を発揮する。また、前記高比重可撓性樹脂マット自体が床下地となじみやすいので、施工性がより一層高い床材が得られる。
【0012】
本発明にかかる実施形態としては、高比重可撓性樹脂マットの裏面にスリットを形成しておいてもよい。
本実施形態によれば、床暖房運転中の温度変化に伴って床材が伸縮しても、前記スリットが寸法変化を吸収,緩和するので、反りやピックアップを防止できる。
【0013】
他の実施形態としては、高比重可撓性樹脂マットの裏面に防音マットを設けておいてもよい。
【0014】
本実施形態によれば、床下騒音を軽減できる床材が得られるという効果がある。
【0015】
本発明にかかる化粧材の製造方法は、鉱物質繊維35〜70重量%、無機粉状体20〜55重量%、および、結合剤5〜25重量%を必須成分とするスラリーを湿式抄造して得た湿潤マットに第1次熱圧プレスを施し、乾燥して比重0.3〜0.9のセミキュアマットを得、このセミキュアマットに希釈された樹脂率10〜60%の樹脂液を含浸させ、第2次熱圧プレスで平均比重1.2〜1.7に調整して得た硬質繊維板の裏面に比重1.1以上の高比重可撓性樹脂マットを貼着一体化するとともに、前記硬質繊維板の表面に化粧加工を施す工程からなるものである。
【0016】
本発明によれば、無機板のように優れた熱寸法安定性、耐水性および耐傷性を有するとともに、木質材に近似する耐衝撃性、施工性および切削加工性を備えた床材、特に、床暖房にも使用できる床材を安定供給できる。さらに、熱伝導性に優れている硬質繊維板および高比重可撓性樹脂マットを使用しているので、床暖房用床材に必要な優れた昇温特性(暖房の立ち上がりが早い)を発揮する。また、前記高比重可撓性樹脂マット自体が床下地となじみやすいので、施工性がより一層高い床材が得られるという効果がある。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる床材は、特に、床暖房用床材に適用するものであり、以下の手順で製造される。
すなわち、鉱物質繊維、無機粉状体および結合剤を水中に投入し、さらに、撥水剤、消泡剤および顔料等の添加剤を加えて攪拌し、次いで凝集剤等の補助添加剤を加えることにより、固形分率が数%のスラリーを得る。ついで、前記スラリーから長網式又は丸網式抄造機で抄造,脱水して得た湿潤マットに、第1次熱圧プレス(温度60〜120℃、圧力5〜7kg/cm2、加圧時間30〜150秒)を施してプレセミキュアマットを得た後、熱風通風ドライヤーで乾燥させてセミキュアマットを得る。そして、前記セミキュアマットに希釈された樹脂液を含浸し、第2次熱圧プレスを施して平均比重1.2〜1.7の硬質繊維板を得、前記硬質繊維板の表面に化粧シートを貼着一体化するとともに、その裏面に高比重可撓性樹脂マットを貼着一体化する工程からなる。
【0018】
鉱物質繊維としては、例えば、ロックウール、スラグウール、ガラスウール、ガラス繊維等が挙げられ、これらを単体もしくは複数混合して用いられる。前記鉱物質繊維の添加量は35〜70重量%、特に、45〜60重量%の割合で添加することが好適である。鉱物質繊維が35重量%未満であると、得られたセミキュアマットの曲げ強度が弱くなり、セミキュアマットのハンドリングが困難になるからである。一方、鉱物質繊維が70重量%を越えると、相対的に添加される無機粉状体の添加量が少なくなり、得られたセミキュアマットに水で希釈した樹脂液を塗布,含浸し、再度、熱圧プレスしても、密度が上がりにくいからである。
【0019】
前記鉱物質繊維の部分的代替物として耐熱性有機繊維を使用してもよい。耐熱性有機繊維を使用すると、シャルピー衝撃強度が飛躍的に向上し、床材の切削加工時の割れや欠け、飛び欠けの改善に非常に有効だからである。ここで、耐熱性有機繊維とは、150〜200℃の熱で熱圧プレスしても溶融しない繊維をいい、例えば、ナイロン、テトロン、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタンの他、各種ゴム繊維及びこれらの複合物または木質繊維等が挙げられる。
【0020】
また、前記耐熱性有機繊維の添加量は全体重量の0.5〜15重量%が好ましい。添加量が0.5重量%未満であると、シャルピー衝撃強度の向上効果が殆どないからである。また、添加量が15重量%を超えると、抄造時に凝集不良が発生し、密度の不均一なセミキュアマットとなってしまうだけでなく、セミキュアマットに再度熱圧プレスをかけても、比重が上がらず、シャルピー衝撃強度が低下するからである。
【0021】
前記耐熱性有機繊維の長さは1.0〜15mmが好適である。長さが1.0mm未満であると、シャルピー衝撃強度向上の効果がほとんど無く、長さが15mmを超えると、抄造時に凝集不良が発生し、密度の均一なセミキュアマットが得られないからである。
【0022】
前記耐熱性有機繊維は、細ければ細いほど抄造時の均一な分散が可能になるので、少量で効果を発揮するためには細いものが好ましく、一般的には直径500μm以下、より好ましくは30〜100μmのものが好適である。
【0023】
無機粉状体としては、例えば、シラス発泡体、シリカフラワー、ガラス発泡体、炭酸カルシウム、酸化アルミ、バーミキュライト等が挙げられ、これらを単体もしくは複数混合して用いられる。また、前記無機粉状体の添加量は、20〜55重量%の割合で添加することが好ましい。無機粉状体が20重量%未満であると、得られたセミキュアマットの曲げ強度が弱くなり、セミキュアマットのハンドリングが困難になるからである。一方、無機粉状体が55重量%を越えると、相対的に添加される鉱物質繊維の添加量が少なくなり、得られたセミキュアマットに水で希釈した樹脂液を塗布,含浸し、再度、熱圧プレスしても、密度が上がりにくいからである。
【0024】
結合剤としては、例えば、メラミン樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート樹脂、ポリビニールアルコール、アクリルエマルジョンまたは酢ビエマルジョンおよびこれらの変性物の他、澱粉、コーンスターチ、大豆粉、小麦粉等が挙げられ、これらを単体もしくは複数混合して用いられる。前記結合剤の添加量としては、5〜25重量%が好ましい。添加量が5重量%未満であると、セミキュアマットの強度不足を生じるからである。また、添加量が25重量%を超えると、相対的に鉱物質繊維の添加量が少なくなり、特に、曲げ強度が弱くなるからである。
【0025】
特に、結合剤がイソシアネート樹脂、ポリビニールアルコール、アクリルエマルジョンまたは酢ビエマルジョンおよびこれらの変性物、澱粉、コーンスターチ、大豆粉、小麦粉であれば、第1次熱圧プレスによるセミキュア時の60℃〜120℃の熱による硬化、および、含水率10%以下までに乾燥する際の硬化により、比重0.3〜0.9のセミキュアマットの曲げ性能を高め、ハンドリング性を向上させことができる。
ただし、ポリビニールアルコール、酢ビエマルジョン及びこれらの変性物、澱粉、コーンスターチ、大豆粉又は小麦粉の添加量が多くなると、最終的に得られる床材の耐水性が悪くなる。このため、これらを結合剤として使用する場合には、添加量を5重量%以下とし、他の結合剤と併用することが望ましい。
【0026】
一方、例えば、前記メラミン樹脂、フェノール樹脂等の耐水性に優れた結合剤は、第1次熱圧プレスによるセミキュア時の60℃〜120℃の熱で完全に硬化しないが、150〜250℃の高温高圧下の第2次熱圧プレスで完全に硬化することにより、最終的に得られる床材が優れた耐水性を発現する。しかし、前述の耐水性に優れた結合剤は高価であるので、添加量が20重量%を超えることは望ましくない。
【0027】
したがって、セミキュアマットのハンドリング性を向上させるための結合剤と、最終的に得られる化粧材の耐水性を向上させるための結合剤とを併用し、少なくとも2種類使用することが望ましい。ただし、コスト及び耐水性の見地より、結合剤の添加量が最大25重量%を超えることは好ましくない。
【0028】
スラリーを湿式抄造して得られる湿潤マットに第1次熱圧プレスを施してプレセミキュアマットが得られる。後述するセミキュアマットの剛性を高め、ハンドリング性を改善するためのセミキュアは、圧力3〜7kg/cm2、温度60〜120℃、加圧時間40秒〜5分程度の第1次熱圧プレスで行われる。第1次熱圧プレスに使用されるプレス機は単段または多段式のバッチ式プレス機でもよく、連続式の熱圧ベルト式プレス機でもよい。
【0029】
そして、前記プレセミキュアマットを、約80〜250℃に予め設定された熱風ドライヤー等で含水率10%以下に乾燥することにより、比重0.3〜0.9のセミキュアマットが得られる。
【0030】
前記セミキュアマットの表裏面それぞれに水で希釈された樹脂液を塗布し、第1次熱圧プレスよりも高温高圧条件下で第2次熱圧プレスを施すことにより、平均比重1.2〜1.7、厚み2〜6mmの硬質繊維板が得られる。
【0031】
前記樹脂液には、ビニルウレタン系、アクリルエマルジョン、酢ビエマルジョン、ラテックスエマルジョン及びこれらの変性物または混合物が用いられ、水溶性樹脂であれば使用可能である。このうち、前記ラテックスエマルジョンは硬質繊維板の曲げ強度を向上させるので、他の樹脂と少量(5〜25重量%)混合して使用することが好ましい。ただし、ラテックスエマルジョンの添加量が多くなると、サンダー適性が悪くなるため、25重量%を超える添加量は好ましくない。また、サンダー適性を向上させるために、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の硬質樹脂(5〜25重量%)を添加してもよい。ただし、これらの樹脂の添加量が多すぎると、硬くて脆い性質となり、好ましくない。
【0032】
また、前記樹脂液の樹脂率は10〜60重量%、特に、15〜40重量%に調整することが好ましい。樹脂率が10重量%未満であると、含浸させた樹脂液による寸法安定性および耐傷性の向上効果を期待できず、樹脂率が60重量%を超えると、樹脂液の浸透性が低下するからである。
【0033】
さらに、樹脂率10〜60重量%になるように水で希釈された樹脂液は、セミキュアマットの表裏面のそれぞれに300g/m2以上、塗布又は浸漬して含浸させることが好ましい。例えば、塗布量が200g/m2であると、0.2mm程度の研削で、樹脂が含浸した層のほとんどが除去されてしまい、所望の耐傷性が得られないからである。特に、床材として使用する場合には、化粧シート等を貼り付ける前に面均一になるようにサンダー加工が行われ、0.1〜0.2mm程度研削されるのが一般的である。このため、0.2mm程度の研削を行っても樹脂が十分に残存するためには300g/m2以上、好ましくは400g/m2の塗布量が必要である。
【0034】
セミキュアマットは、接着剤のセミキュアによってある程度の撥水性を発現するので、樹脂液の浸透性を上げるために浸透剤(界面活性剤の1種であり、水で希釈された樹脂の表面張力を下げ、浸透性を高める薬剤)が加えられる。また、浸透剤に加え、消泡剤や離型剤を任意に添加してもよい。
【0035】
特に、水で希釈された樹脂液を含浸させる場合には、高温高圧下での第2次熱圧プレス時に、バリ(プレス時に、セミキュアマットに含浸した余剰の樹脂を含む水や樹脂液がセミキュアマット外に流れ出し、硬質繊維板の周辺で硬化してしまう状態)が発生するため、厚みおよび比重に応じた量を塗布する必要がある。例えば、厚さ6mm、平均比重0.4のセミキュアマットの場合、表裏面から含浸する樹脂液の量がトータルで800g/m2を超えると、バリが発生し始め、1200g/m2を超えると、多量のバリが発生する。従って、厚さ6mm、平均比重0.4のセミキュアマットの場合、表裏面それぞれに樹脂400〜500g/m2(総量で800〜1000g/m2)を塗布,含浸させることが好ましい。
【0036】
また、樹脂液を塗布,含浸させる前に、少なくとも片面に凹部または表裏面を連通する貫通穴を設けることにより、バリの発生を抑制してもよい。これらの凹部または貫通穴は、水で希釈された樹脂液を内部に浸透させる効果もある。
【0037】
前記凹部または貫通穴は相互間のピッチが2cmよりも大きくなると、浸透補助の効果が薄いため、ピッチ2cm以下、好ましくはピッチ1cm以下で設けることが望ましい。例えば、ピッチ2cmで凹部または貫通穴を設けると、10cm各内に25個/10cm角の凹部または貫通穴が設けられることになる。また、ピッチ1cmの場合は、約100個/10cm角の凹部または貫通穴が開けられることになる。
【0038】
前記凹部または貫通穴は平板に突設した多数の針状突起でバッチ式プレスにより設けてもよく、好ましくは回転ロールの表面に設けられた多数の針状突起により連続的に加工することが望ましい。
【0039】
前記凹部は直径3.0mm以下であることが必要で、好ましくは0.5〜1.5mm程度が良い。直径が3.0mmを越えると、高温高圧条件下で第2次熱圧プレスを施した場合に、表裏面に連通する凹凸部が発生し、床材として使用できないからである。ただし、直径1.5mm以上の凹部になると、高温高圧条件下でプレスをしても、凹部が完全に埋まりにくくなる。このため、直径1.5mm以上の凹部を設ける場合には片面だけとし、凹部を設けた面を床材の裏面に使用するのが望ましい。
【0040】
前記凹部の深さは、セミキュアマット全体厚さの半分以上の深さであるが好ましい。ただし、凹部を化粧面にする場合は、直径1.0以下mm、深さはセミキュアマット全体厚さの半分以下であることが好ましい。第2次熱圧プレスで高温高圧プレスをかけることにより、熱圧プレスで凹部自体がつぶれるとともに、樹脂で埋められるので、表面上、凹部をほとんど判別できなくなるからである。
【0041】
一方、貫通穴の場合は、既述の通り、直径1.5mm以上の穴になると、高温高圧条件下でプレスをしても穴が完全に埋まらないので、表裏面のどちらにも連通する貫通穴の場合は、直径1.0mm以下が望ましい。
【0042】
高温高圧下で行う第2次熱圧プレスは、温度150〜250℃、圧力10〜30kg/cm2、加圧時間3〜30分程度のプレス条件で行われる。この時、高温高圧プレスをかける前に0〜5kg/cm2程度の圧力で数十秒〜数分程度の仮圧締を行った後、10〜30kg/cm2の本圧締を行うことにより、バリの発生を抑制できる。所望の厚みに調整できるように2枚のプレス板間にディスタンスバーを配置してもよい。この場合は、面均一な長時間のプレスが必要であるため、バッチ式の単段又は多段式の熱圧プレス機が好適である。
【0043】
そして、図1Aに示すように、前述のようにして得られた硬質繊維板10の表面に化粧シート11を貼着一体化するとともに、その裏面に高比重可撓性樹脂マット12が接着されて床材となる。前記化粧シート11としては、突き板、紙、樹脂含浸紙、オレフィンシート等が挙げられる。また、前記化粧シート11に塗装を施してもよく、塗装としては、例えば、ウレタン塗装やUV塗装が挙げられる。
なお、前記化粧シート11を硬質繊維板10の表裏面にそれぞれ貼着一体化しておけば、反りの発生防止に有効である。そして、硬質繊維板10の表裏面に化粧シート11を貼着一体化するとともに、その片面に高比重可撓性樹脂マット12を貼着一体化しておいてもよい。
【0044】
一般的な床材は化粧シート11の上から溝加工や面取り加工が施される。例えば、0.25mmの厚みの突き板を貼り、表面をサンダーがけし、着色・UV塗装を施した後に、ルーターを使用して0.5mm巾で四周面取り加工を施すことにより、面取りした部分から硬質繊維板が見えてしまう。このため、スラリーに顔料を予め添加したり、含浸させる樹脂液に顔料あるいは染料を予め添加しておけば、硬質繊維板が予め化粧シートと同等又は近似の色に着色されているので、違和感の無い仕上りの床材を得ることができる。
【0045】
例えば、スラリーに顔料を添加する場合には、顔料の添加量は1〜10重量%であることが好ましい。1重量%未満であると、所望の着色が得られないからであり、10重量%を越えると、強度に悪影響を及ぼすからである。
また、樹脂液に顔料を添加する場合には、顔料の添加量は0.5〜5重量%であることが好ましい。0.5重量%未満であると、所望の着色が得られず、5重量%を越えると、樹脂液への分散が困難となるからである。
さらに、樹脂液に染料を添加する場合には、染料の添加量は0.1〜2重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、所望の着色が得られず、2重量%を越えても、それ以上の効果が得られないからである。
【0046】
なお、基本的には、表面に設けられる化粧シート11よりも淡色に設定しておけば、突き板に施される着色に応じて溝部分を任意に着色することも可能である。一方、溝部分の着色においては任意の色を選択できる。このため、例えば、全く異なる色に着色することにより、アクセント的に溝を配置することも可能である。
【0047】
前記高比重可撓性樹脂マット12としては、前記硬質繊維板の裏面に厚み1〜4mm、比重1.1以上のものが接着剤で貼着一体化される。前記高比重可撓性樹脂マットとしては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、PET樹脂、ABS樹脂、アクリルフォームや硬質ゴムシートおよびこれらが混合された廃プラスチック等の適度に可撓性のある材料が用いられる。ただし、これらの樹脂の一部は単体では比重が軽いため、比重を上げる目的で、炭酸カルシウム等の増量材を添加してもよく、増量剤を加えた状態で比重1.1以上であればよい。例えば、ポリプロピレンの比重は0.9程度であるが、ポリプロピレン50重量部に炭酸カルシウム50重量部を添加することにより、樹脂混合物の比重を1.6に上げることができる。また、例えば、ABS樹脂は単体で比重1.2程度であるため、そのままでも使用できるだけでなく、床暖房用床材に用いても、高温状態での寸法安定性が優れている。したがって、ポリプロピレン樹脂、PET樹脂およびアクリルフォーム等の低比重のものであれば、これらと炭酸カルシウム等の増量材との混合物が好適である。
【0048】
前記接着剤としては、水性高分子−イソシアネート系接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、ポリウレタン接着剤、シリコン系接着剤等の適度に可撓性を持つ接着剤が好適である。ただし、フェノール樹脂系接着剤やエポキシ系の接着剤での接着も可能である。
【0049】
前記高比重可撓性樹脂マット12には、一定間隔でスリット13を設けることにより、暖房運転時のマットの膨張による反りやピックアップを効果的に抑制できる。前記スリット13は、少なくとも15cm以内の間隔で、好ましくは2〜3cmの間隔で設けられる。また、前記スリット13の巾は、一般的には1〜4mm程度でよい。
【0050】
さらに、図1Bおよび図1Cに示すように、前記高比重可撓性樹脂マット12の下面に厚さ1.5mm以下、比重0.3以下の防音マット14を設けておいてもよい。このような低比重の防音マット14は軽量床衝撃音の対策に有効であり、比重は0.3以下が好ましい。ただし、これらの防音マットは、熱伝導率が著しく低いので、あまり厚くなると好ましくない。また、厚さが1.5mmを超えると、床材全体の厚さが限定されているので、床基材が相対的に薄くなり、落球衝撃試験のような局部的な衝撃荷重で床材が破壊されるおそれがある。従って、防音マットは厚さ1.5mm以下であることが必要である。防音マット14としては、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、アクリル発泡体等の厚さ1.5mm以下の樹脂発泡体、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET等の樹脂不織布、および、これらの樹脂発泡体と不織布とを貼り合わせたシートが使用される。
【0051】
前記床材は、床暖房用床材だけではなく、根太組や二重床のパーティクルボード下地等の上に捨て貼りされる合板下地等、面均一な下地に施工されることが好ましい。また、これらの場合、通常状態で施工されているフロア仕上げ材の上に直接置敷することが可能である。ただし、この場合でも、出来得る限り面均一な仕上げであることが必要であり、フロア仕上げ材の段差は1mm以内であることが望ましい。このフロア仕上げ材は床暖房構成であってもよい。
【0052】
例えば、床暖房構成であれば、床暖房マットの上面に置敷施工してもよい。この場合、少量の接着剤で下地と床材とを接着一体化しておいても良いが、上貼り材の交換等を想定し、下地との接着は行わない方が好ましい。さらに、床暖房構成の場合、接着一体化よりも、粘着の方が好ましい。
また、下地との接着を行わない替わりに、図2A,図2Bおよび図2Cに示すように、雄実部15,雌実部16を形成して相互に嵌合してもよい。さらに、硬質繊維板とその裏面に設けられた高比重マットとを接着することにより、隣り合う床材同士の一部が接着または粘着してもよい。これにより、床暖房運転中の温度変化によって生じる施工状態での目隙を軽減することが可能である。
【0053】
【実施例】
(実施例1)
鉱物質繊維としてロックウール50重量%、 無機粉状体として炭酸カルシウム40重量%、結合剤としてスターチ3重量%および粉体フェノール樹脂7重量%を水中に投入して固形成分2%のスラリーを得、これに消泡剤を微量添加して攪拌した。前記スラリーを長網式抄造機で抄造した後、サクションポンプで脱水し、含水率50%の湿潤マットを得た。この湿潤マットに温度90℃、圧力7kg/cm2、加圧時間1分のプレス条件で第1次熱圧プレスを行いプレセミキュアマットを得た。このプレセミキュアマットをウォーターカッターで尺角の大きさに切断し、220℃に調整した熱風ドライヤーで乾燥することにより、含水率5%、厚さ6mm、比重0.45のセミキュアマットを得た。
【0054】
前記セミキュアマットの表裏面それぞれに樹脂液をフローコーターで60g/尺角ずつ塗布して含浸させた。前記樹脂液は、アクリルエマルジョンを水で希釈して樹脂率35%に調整したものに、1重量%の浸透剤、0.05重量%の消泡剤、0.05重量%の離型剤をそれぞれ添加したものである。そして、前記セミキュアマットの両側に3.0mmのディスタンスバーを配置し、温度190℃、圧力5kg/cm2、加圧時間1分で予備圧締した後、温度190℃、圧力25kg/cm2、加圧時間20分のプレス条件で本圧締を行い、厚さ3.3mmの硬質繊維板を得た。
【0055】
前記硬質繊維板の表裏面をサンダーがけし、面均一な3.0mmの硬質繊維板10を得た。この時の外観を目視したところ、樹脂強化された面均一な表面を確認できた。さらに、前記硬質繊維板10の表面に、酢ビエマルジョンおよびイソシアネートを混合した接着剤(130g/m2)を塗布して厚さ0.45mmのカバ乾燥単板11を貼り付けた。そして、前記カバ乾燥単板11の表面にUV塗装を施した。
さらに、前記硬質繊維板10の裏面に、ビニルウレタン系接着剤を使用して高比重可撓性樹脂マット12を貼着一体化して床材を得(図3A)、これをサンプルとした。前記高比重可撓性樹脂マットは、ポリプロピレン樹脂と炭酸カルシウムを50対50の割合で混合し、成型した比重1.6、厚さ1mmを有している。
【0056】
前記サンプルの特性を検証するため、5枚の前記サンプルに落球衝撃試験を行うとともに、2枚の前記サンプルの熱伝導率を測定した。落球衝撃試験とは、重さ500gの鉄球を75cmの高さから落下させ、この時に生じた凹み量を測定する試験である。熱伝導率は、熱伝導率測定器(英弘精機(株)社製、型式 HC−071H)を使用し、JIS規格(A1412−2)に基づいて測定した。測定結果を図1に示す。
【0057】
(実施例2)
実施例1にかかる高比重可撓性樹脂マット12の裏面にビニルウレタン系接着剤(100g/m2)を塗布し、防音マット14として比重0.15、厚さ1mmの発泡ポリエチレンマットを貼着一体化して床材を得(図3B)、これをサンプルとした。5枚の前記サンプルに実施例1と同一条件で落球衝撃試験を行うとともに、2枚の前記サンプルの熱伝導率を測定した。測定結果を図1に示す。
【0058】
(比較例1)
市販の合板(厚さ6.3mm)の表裏面にサンダーがけを行い、尺角の厚さ6.0mmの合板20を得た。この合板20の表面に、酢ビエマルジョンおよびイソシアネートを混合した接着剤を塗布(130g/m2)して0.25mmmのカバ乾燥単板11を貼り付けた。さらに、前記カバ乾燥単板11の表面にUV塗装を施し、合板20を基材とする床材を得(図3C)、これをサンプルとした。
【0059】
5枚の前記サンプルに落球衝撃試験を行うとともに、2枚の前記サンプルの熱伝導率を測定した。測定結果を図1に示す。
【0060】
(比較例2)
実施例1で使用した硬質繊維板10の裏面に、ポリプロピレン樹脂を成型して得た比重0.9、厚さ1mmの可撓性樹脂マット21を貼着一体化した点を除き、他は前述実施例1と同様に処理して床材を得(図3D)、これをサンプルとした。5枚の前記サンプルに落球衝撃試験を行うとともに、2枚の前記サンプルの熱伝導率を測定した。測定結果を図1に示す。
【0061】
(比較例3)
実施例2で使用した防音マットの代りに、防音マット22として比重0.15、厚さ3mmの発泡ポリエチレンマットを貼着一体化した点を除き、他は前述の実施例2と同様に処理して床材を得(図3E)、これをサンプルとした。実施例1と同一条件で、5枚の前記サンプルに落球衝撃試験を行うとともに、2枚のサンプルの熱伝導率を測定した。測定結果を図1に示す。ただし、落球衝撃試験において、基材が破壊したので、測定不能であった。基材が破壊されるのは、防音マットが厚いので、衝撃荷重が基材に局部的に作用するためであると考えられる。
【0062】
図1から明らかなように、落球衝撃試験において、実施例1,実施例2が比較例1,2,3よりも優れていることが判明した。また、熱伝導率において、実施例1,実施例2が比較例1,2,3よりも優れていることが判明した。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、木質材に近似する耐衝撃性、施工性および切削加工性を備えた床材、特に、床暖房にも使用できる床材を安定供給できる。さらに、熱伝導性に優れている高比重可撓性樹脂マットを裏打ちしてあるので、床暖房用床材に必要な優れた昇温特性(暖房の立ち上がりが早い)を発揮する。また、前記高比重可撓性樹脂マット自体が床下地となじみやすいので、施工性がより一層高い床材が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明にかかる実施形態に応用例を示す断面図である。
【図3】本発明にかかる実施例および比較例を示す断面図である。
【図4】本発明にかかる実施例および比較例の試験結果を示す図表である。
【符号の説明】
10…硬質繊維板、11…化粧シート、12…高比重可撓性樹脂マット、13…スリット、14…防音マット、15…雄実部、16…雌実部。
【発明の属する技術分野】
本発明は床材、特に、寸法安定性および耐水性に優れているとともに、熱伝導率が高い床暖房用床材に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
従来、住宅リフォームの際に使用される床暖房用床材としては、例えば、55℃〜65℃の温度に調整された発熱マットの上面に直接施工されるので、耐熱性に優れたものが求められている。また、前記床材には施工上の理由から薄いものが求められ、通常は6mm以下の厚さであることが望まれている。このため、使用条件の厳しさ(薄さ・発熱・乾燥)から、前記床材の基材には高い物理的性能が要求され、合板、MDF、および、オートクレーブ処理された無機板が基材として用いられている。
【0003】
しかし、前述の合板では、熱伝導率が低いため、床暖房の立ち上がりが悪く、床暖房効率が良くない。さらに、前記合板は熱や水に対する水平方向の寸法安定性が悪い。このため、床暖房に使用すると、嵌合した実部に目隙(床材の収縮によって目地巾が大きくなった状態)が生じたり、床材の膨張により実部を突き合わせた部分が持ち上がるピックアップと呼ばれる現象が生じるという問題があった。さらに、前記合板の表面は比較的柔らかいため、表面の化粧層が傷つきやすいという不具合があった。
【0004】
そこで、耐傷性を向上させるためにMDF(中質繊維板)が単独または複合されて使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
実開平7−23141号公報 (図1)
【0006】
しかし、住宅の美装仕上げに使用される家庭用ワックスあるいは水が前述のMDFの実部から侵入すると、嵌合した実部が膨潤し、床面が不陸になるという不具合があった。
【0007】
また、化粧を目的として床材に疑似目地や面取り等の切削加工を施す場合に、表面を淡色に仕上げたいときに下地の色が濃色であると、切削部が目立ってしまう。そこで、表面が淡色の合板を選別したり、一般的に濃色の南洋材MDFを淡色の針葉樹MDFに交換することが検討されている。しかし、合板やMDFの色調を選別して使用しようとすると、資材を選択できる範囲が狭くなるので、資材の安定供給が困難になり、生産性が非常に悪かった。
【0008】
このような木質材特有の寸法変化、柔らかさによる傷付き易さ、および、水やワックスによる膨潤を原因とする不具合を解決する手段として、オートクレーブ処理された無機板の表裏面に木質単板を貼り、これを床材としたものがある。しかし、前記無機板は本来的に重いだけでなく、運搬や施工時に受ける軽微な衝撃力で実部が欠けやすいとう問題点があった。
【0009】
本発明は、無機板の優れた熱寸法安定性、耐水性および耐傷性を活かしつつ、木質材の優れた耐衝撃性、施工性および切削加工性を備え、床暖房にも使用できる床材を安定供給することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる化粧材は、前記目的を達成すべく、鉱物質繊維35〜70重量%、無機粉状体25〜55重量%、および、結合剤5〜25重量%を必須成分とするスラリーを湿式抄造して得られる湿潤マットに熱圧プレスを施して得られた比重0.3〜0.9のセミキュアマットに、希釈された樹脂率10〜60%の樹脂液を含浸させ、熱圧プレスで平均比重1.2〜1.7に調整して得た硬質繊維板の表面に化粧加工を施すとともに、その裏面に比重1.1以上の高比重可撓性樹脂マットを貼着一体化した構成としてある。
【0011】
本発明によれば、無機板のように優れた熱寸法安定性、耐水性および耐傷性を有するとともに、木質材に近似する耐衝撃性、施工性および切削加工性を備えた床材、特に、床暖房にも使用できる床材を安定供給できる。さらに、熱伝導性に優れている硬質繊維板および高比重可撓性樹脂マットを使用しているので、床暖房用床材に必要な優れた昇温特性(暖房の立ち上がりが早い)を発揮する。また、前記高比重可撓性樹脂マット自体が床下地となじみやすいので、施工性がより一層高い床材が得られる。
【0012】
本発明にかかる実施形態としては、高比重可撓性樹脂マットの裏面にスリットを形成しておいてもよい。
本実施形態によれば、床暖房運転中の温度変化に伴って床材が伸縮しても、前記スリットが寸法変化を吸収,緩和するので、反りやピックアップを防止できる。
【0013】
他の実施形態としては、高比重可撓性樹脂マットの裏面に防音マットを設けておいてもよい。
【0014】
本実施形態によれば、床下騒音を軽減できる床材が得られるという効果がある。
【0015】
本発明にかかる化粧材の製造方法は、鉱物質繊維35〜70重量%、無機粉状体20〜55重量%、および、結合剤5〜25重量%を必須成分とするスラリーを湿式抄造して得た湿潤マットに第1次熱圧プレスを施し、乾燥して比重0.3〜0.9のセミキュアマットを得、このセミキュアマットに希釈された樹脂率10〜60%の樹脂液を含浸させ、第2次熱圧プレスで平均比重1.2〜1.7に調整して得た硬質繊維板の裏面に比重1.1以上の高比重可撓性樹脂マットを貼着一体化するとともに、前記硬質繊維板の表面に化粧加工を施す工程からなるものである。
【0016】
本発明によれば、無機板のように優れた熱寸法安定性、耐水性および耐傷性を有するとともに、木質材に近似する耐衝撃性、施工性および切削加工性を備えた床材、特に、床暖房にも使用できる床材を安定供給できる。さらに、熱伝導性に優れている硬質繊維板および高比重可撓性樹脂マットを使用しているので、床暖房用床材に必要な優れた昇温特性(暖房の立ち上がりが早い)を発揮する。また、前記高比重可撓性樹脂マット自体が床下地となじみやすいので、施工性がより一層高い床材が得られるという効果がある。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる床材は、特に、床暖房用床材に適用するものであり、以下の手順で製造される。
すなわち、鉱物質繊維、無機粉状体および結合剤を水中に投入し、さらに、撥水剤、消泡剤および顔料等の添加剤を加えて攪拌し、次いで凝集剤等の補助添加剤を加えることにより、固形分率が数%のスラリーを得る。ついで、前記スラリーから長網式又は丸網式抄造機で抄造,脱水して得た湿潤マットに、第1次熱圧プレス(温度60〜120℃、圧力5〜7kg/cm2、加圧時間30〜150秒)を施してプレセミキュアマットを得た後、熱風通風ドライヤーで乾燥させてセミキュアマットを得る。そして、前記セミキュアマットに希釈された樹脂液を含浸し、第2次熱圧プレスを施して平均比重1.2〜1.7の硬質繊維板を得、前記硬質繊維板の表面に化粧シートを貼着一体化するとともに、その裏面に高比重可撓性樹脂マットを貼着一体化する工程からなる。
【0018】
鉱物質繊維としては、例えば、ロックウール、スラグウール、ガラスウール、ガラス繊維等が挙げられ、これらを単体もしくは複数混合して用いられる。前記鉱物質繊維の添加量は35〜70重量%、特に、45〜60重量%の割合で添加することが好適である。鉱物質繊維が35重量%未満であると、得られたセミキュアマットの曲げ強度が弱くなり、セミキュアマットのハンドリングが困難になるからである。一方、鉱物質繊維が70重量%を越えると、相対的に添加される無機粉状体の添加量が少なくなり、得られたセミキュアマットに水で希釈した樹脂液を塗布,含浸し、再度、熱圧プレスしても、密度が上がりにくいからである。
【0019】
前記鉱物質繊維の部分的代替物として耐熱性有機繊維を使用してもよい。耐熱性有機繊維を使用すると、シャルピー衝撃強度が飛躍的に向上し、床材の切削加工時の割れや欠け、飛び欠けの改善に非常に有効だからである。ここで、耐熱性有機繊維とは、150〜200℃の熱で熱圧プレスしても溶融しない繊維をいい、例えば、ナイロン、テトロン、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタンの他、各種ゴム繊維及びこれらの複合物または木質繊維等が挙げられる。
【0020】
また、前記耐熱性有機繊維の添加量は全体重量の0.5〜15重量%が好ましい。添加量が0.5重量%未満であると、シャルピー衝撃強度の向上効果が殆どないからである。また、添加量が15重量%を超えると、抄造時に凝集不良が発生し、密度の不均一なセミキュアマットとなってしまうだけでなく、セミキュアマットに再度熱圧プレスをかけても、比重が上がらず、シャルピー衝撃強度が低下するからである。
【0021】
前記耐熱性有機繊維の長さは1.0〜15mmが好適である。長さが1.0mm未満であると、シャルピー衝撃強度向上の効果がほとんど無く、長さが15mmを超えると、抄造時に凝集不良が発生し、密度の均一なセミキュアマットが得られないからである。
【0022】
前記耐熱性有機繊維は、細ければ細いほど抄造時の均一な分散が可能になるので、少量で効果を発揮するためには細いものが好ましく、一般的には直径500μm以下、より好ましくは30〜100μmのものが好適である。
【0023】
無機粉状体としては、例えば、シラス発泡体、シリカフラワー、ガラス発泡体、炭酸カルシウム、酸化アルミ、バーミキュライト等が挙げられ、これらを単体もしくは複数混合して用いられる。また、前記無機粉状体の添加量は、20〜55重量%の割合で添加することが好ましい。無機粉状体が20重量%未満であると、得られたセミキュアマットの曲げ強度が弱くなり、セミキュアマットのハンドリングが困難になるからである。一方、無機粉状体が55重量%を越えると、相対的に添加される鉱物質繊維の添加量が少なくなり、得られたセミキュアマットに水で希釈した樹脂液を塗布,含浸し、再度、熱圧プレスしても、密度が上がりにくいからである。
【0024】
結合剤としては、例えば、メラミン樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート樹脂、ポリビニールアルコール、アクリルエマルジョンまたは酢ビエマルジョンおよびこれらの変性物の他、澱粉、コーンスターチ、大豆粉、小麦粉等が挙げられ、これらを単体もしくは複数混合して用いられる。前記結合剤の添加量としては、5〜25重量%が好ましい。添加量が5重量%未満であると、セミキュアマットの強度不足を生じるからである。また、添加量が25重量%を超えると、相対的に鉱物質繊維の添加量が少なくなり、特に、曲げ強度が弱くなるからである。
【0025】
特に、結合剤がイソシアネート樹脂、ポリビニールアルコール、アクリルエマルジョンまたは酢ビエマルジョンおよびこれらの変性物、澱粉、コーンスターチ、大豆粉、小麦粉であれば、第1次熱圧プレスによるセミキュア時の60℃〜120℃の熱による硬化、および、含水率10%以下までに乾燥する際の硬化により、比重0.3〜0.9のセミキュアマットの曲げ性能を高め、ハンドリング性を向上させことができる。
ただし、ポリビニールアルコール、酢ビエマルジョン及びこれらの変性物、澱粉、コーンスターチ、大豆粉又は小麦粉の添加量が多くなると、最終的に得られる床材の耐水性が悪くなる。このため、これらを結合剤として使用する場合には、添加量を5重量%以下とし、他の結合剤と併用することが望ましい。
【0026】
一方、例えば、前記メラミン樹脂、フェノール樹脂等の耐水性に優れた結合剤は、第1次熱圧プレスによるセミキュア時の60℃〜120℃の熱で完全に硬化しないが、150〜250℃の高温高圧下の第2次熱圧プレスで完全に硬化することにより、最終的に得られる床材が優れた耐水性を発現する。しかし、前述の耐水性に優れた結合剤は高価であるので、添加量が20重量%を超えることは望ましくない。
【0027】
したがって、セミキュアマットのハンドリング性を向上させるための結合剤と、最終的に得られる化粧材の耐水性を向上させるための結合剤とを併用し、少なくとも2種類使用することが望ましい。ただし、コスト及び耐水性の見地より、結合剤の添加量が最大25重量%を超えることは好ましくない。
【0028】
スラリーを湿式抄造して得られる湿潤マットに第1次熱圧プレスを施してプレセミキュアマットが得られる。後述するセミキュアマットの剛性を高め、ハンドリング性を改善するためのセミキュアは、圧力3〜7kg/cm2、温度60〜120℃、加圧時間40秒〜5分程度の第1次熱圧プレスで行われる。第1次熱圧プレスに使用されるプレス機は単段または多段式のバッチ式プレス機でもよく、連続式の熱圧ベルト式プレス機でもよい。
【0029】
そして、前記プレセミキュアマットを、約80〜250℃に予め設定された熱風ドライヤー等で含水率10%以下に乾燥することにより、比重0.3〜0.9のセミキュアマットが得られる。
【0030】
前記セミキュアマットの表裏面それぞれに水で希釈された樹脂液を塗布し、第1次熱圧プレスよりも高温高圧条件下で第2次熱圧プレスを施すことにより、平均比重1.2〜1.7、厚み2〜6mmの硬質繊維板が得られる。
【0031】
前記樹脂液には、ビニルウレタン系、アクリルエマルジョン、酢ビエマルジョン、ラテックスエマルジョン及びこれらの変性物または混合物が用いられ、水溶性樹脂であれば使用可能である。このうち、前記ラテックスエマルジョンは硬質繊維板の曲げ強度を向上させるので、他の樹脂と少量(5〜25重量%)混合して使用することが好ましい。ただし、ラテックスエマルジョンの添加量が多くなると、サンダー適性が悪くなるため、25重量%を超える添加量は好ましくない。また、サンダー適性を向上させるために、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の硬質樹脂(5〜25重量%)を添加してもよい。ただし、これらの樹脂の添加量が多すぎると、硬くて脆い性質となり、好ましくない。
【0032】
また、前記樹脂液の樹脂率は10〜60重量%、特に、15〜40重量%に調整することが好ましい。樹脂率が10重量%未満であると、含浸させた樹脂液による寸法安定性および耐傷性の向上効果を期待できず、樹脂率が60重量%を超えると、樹脂液の浸透性が低下するからである。
【0033】
さらに、樹脂率10〜60重量%になるように水で希釈された樹脂液は、セミキュアマットの表裏面のそれぞれに300g/m2以上、塗布又は浸漬して含浸させることが好ましい。例えば、塗布量が200g/m2であると、0.2mm程度の研削で、樹脂が含浸した層のほとんどが除去されてしまい、所望の耐傷性が得られないからである。特に、床材として使用する場合には、化粧シート等を貼り付ける前に面均一になるようにサンダー加工が行われ、0.1〜0.2mm程度研削されるのが一般的である。このため、0.2mm程度の研削を行っても樹脂が十分に残存するためには300g/m2以上、好ましくは400g/m2の塗布量が必要である。
【0034】
セミキュアマットは、接着剤のセミキュアによってある程度の撥水性を発現するので、樹脂液の浸透性を上げるために浸透剤(界面活性剤の1種であり、水で希釈された樹脂の表面張力を下げ、浸透性を高める薬剤)が加えられる。また、浸透剤に加え、消泡剤や離型剤を任意に添加してもよい。
【0035】
特に、水で希釈された樹脂液を含浸させる場合には、高温高圧下での第2次熱圧プレス時に、バリ(プレス時に、セミキュアマットに含浸した余剰の樹脂を含む水や樹脂液がセミキュアマット外に流れ出し、硬質繊維板の周辺で硬化してしまう状態)が発生するため、厚みおよび比重に応じた量を塗布する必要がある。例えば、厚さ6mm、平均比重0.4のセミキュアマットの場合、表裏面から含浸する樹脂液の量がトータルで800g/m2を超えると、バリが発生し始め、1200g/m2を超えると、多量のバリが発生する。従って、厚さ6mm、平均比重0.4のセミキュアマットの場合、表裏面それぞれに樹脂400〜500g/m2(総量で800〜1000g/m2)を塗布,含浸させることが好ましい。
【0036】
また、樹脂液を塗布,含浸させる前に、少なくとも片面に凹部または表裏面を連通する貫通穴を設けることにより、バリの発生を抑制してもよい。これらの凹部または貫通穴は、水で希釈された樹脂液を内部に浸透させる効果もある。
【0037】
前記凹部または貫通穴は相互間のピッチが2cmよりも大きくなると、浸透補助の効果が薄いため、ピッチ2cm以下、好ましくはピッチ1cm以下で設けることが望ましい。例えば、ピッチ2cmで凹部または貫通穴を設けると、10cm各内に25個/10cm角の凹部または貫通穴が設けられることになる。また、ピッチ1cmの場合は、約100個/10cm角の凹部または貫通穴が開けられることになる。
【0038】
前記凹部または貫通穴は平板に突設した多数の針状突起でバッチ式プレスにより設けてもよく、好ましくは回転ロールの表面に設けられた多数の針状突起により連続的に加工することが望ましい。
【0039】
前記凹部は直径3.0mm以下であることが必要で、好ましくは0.5〜1.5mm程度が良い。直径が3.0mmを越えると、高温高圧条件下で第2次熱圧プレスを施した場合に、表裏面に連通する凹凸部が発生し、床材として使用できないからである。ただし、直径1.5mm以上の凹部になると、高温高圧条件下でプレスをしても、凹部が完全に埋まりにくくなる。このため、直径1.5mm以上の凹部を設ける場合には片面だけとし、凹部を設けた面を床材の裏面に使用するのが望ましい。
【0040】
前記凹部の深さは、セミキュアマット全体厚さの半分以上の深さであるが好ましい。ただし、凹部を化粧面にする場合は、直径1.0以下mm、深さはセミキュアマット全体厚さの半分以下であることが好ましい。第2次熱圧プレスで高温高圧プレスをかけることにより、熱圧プレスで凹部自体がつぶれるとともに、樹脂で埋められるので、表面上、凹部をほとんど判別できなくなるからである。
【0041】
一方、貫通穴の場合は、既述の通り、直径1.5mm以上の穴になると、高温高圧条件下でプレスをしても穴が完全に埋まらないので、表裏面のどちらにも連通する貫通穴の場合は、直径1.0mm以下が望ましい。
【0042】
高温高圧下で行う第2次熱圧プレスは、温度150〜250℃、圧力10〜30kg/cm2、加圧時間3〜30分程度のプレス条件で行われる。この時、高温高圧プレスをかける前に0〜5kg/cm2程度の圧力で数十秒〜数分程度の仮圧締を行った後、10〜30kg/cm2の本圧締を行うことにより、バリの発生を抑制できる。所望の厚みに調整できるように2枚のプレス板間にディスタンスバーを配置してもよい。この場合は、面均一な長時間のプレスが必要であるため、バッチ式の単段又は多段式の熱圧プレス機が好適である。
【0043】
そして、図1Aに示すように、前述のようにして得られた硬質繊維板10の表面に化粧シート11を貼着一体化するとともに、その裏面に高比重可撓性樹脂マット12が接着されて床材となる。前記化粧シート11としては、突き板、紙、樹脂含浸紙、オレフィンシート等が挙げられる。また、前記化粧シート11に塗装を施してもよく、塗装としては、例えば、ウレタン塗装やUV塗装が挙げられる。
なお、前記化粧シート11を硬質繊維板10の表裏面にそれぞれ貼着一体化しておけば、反りの発生防止に有効である。そして、硬質繊維板10の表裏面に化粧シート11を貼着一体化するとともに、その片面に高比重可撓性樹脂マット12を貼着一体化しておいてもよい。
【0044】
一般的な床材は化粧シート11の上から溝加工や面取り加工が施される。例えば、0.25mmの厚みの突き板を貼り、表面をサンダーがけし、着色・UV塗装を施した後に、ルーターを使用して0.5mm巾で四周面取り加工を施すことにより、面取りした部分から硬質繊維板が見えてしまう。このため、スラリーに顔料を予め添加したり、含浸させる樹脂液に顔料あるいは染料を予め添加しておけば、硬質繊維板が予め化粧シートと同等又は近似の色に着色されているので、違和感の無い仕上りの床材を得ることができる。
【0045】
例えば、スラリーに顔料を添加する場合には、顔料の添加量は1〜10重量%であることが好ましい。1重量%未満であると、所望の着色が得られないからであり、10重量%を越えると、強度に悪影響を及ぼすからである。
また、樹脂液に顔料を添加する場合には、顔料の添加量は0.5〜5重量%であることが好ましい。0.5重量%未満であると、所望の着色が得られず、5重量%を越えると、樹脂液への分散が困難となるからである。
さらに、樹脂液に染料を添加する場合には、染料の添加量は0.1〜2重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、所望の着色が得られず、2重量%を越えても、それ以上の効果が得られないからである。
【0046】
なお、基本的には、表面に設けられる化粧シート11よりも淡色に設定しておけば、突き板に施される着色に応じて溝部分を任意に着色することも可能である。一方、溝部分の着色においては任意の色を選択できる。このため、例えば、全く異なる色に着色することにより、アクセント的に溝を配置することも可能である。
【0047】
前記高比重可撓性樹脂マット12としては、前記硬質繊維板の裏面に厚み1〜4mm、比重1.1以上のものが接着剤で貼着一体化される。前記高比重可撓性樹脂マットとしては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、PET樹脂、ABS樹脂、アクリルフォームや硬質ゴムシートおよびこれらが混合された廃プラスチック等の適度に可撓性のある材料が用いられる。ただし、これらの樹脂の一部は単体では比重が軽いため、比重を上げる目的で、炭酸カルシウム等の増量材を添加してもよく、増量剤を加えた状態で比重1.1以上であればよい。例えば、ポリプロピレンの比重は0.9程度であるが、ポリプロピレン50重量部に炭酸カルシウム50重量部を添加することにより、樹脂混合物の比重を1.6に上げることができる。また、例えば、ABS樹脂は単体で比重1.2程度であるため、そのままでも使用できるだけでなく、床暖房用床材に用いても、高温状態での寸法安定性が優れている。したがって、ポリプロピレン樹脂、PET樹脂およびアクリルフォーム等の低比重のものであれば、これらと炭酸カルシウム等の増量材との混合物が好適である。
【0048】
前記接着剤としては、水性高分子−イソシアネート系接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、ポリウレタン接着剤、シリコン系接着剤等の適度に可撓性を持つ接着剤が好適である。ただし、フェノール樹脂系接着剤やエポキシ系の接着剤での接着も可能である。
【0049】
前記高比重可撓性樹脂マット12には、一定間隔でスリット13を設けることにより、暖房運転時のマットの膨張による反りやピックアップを効果的に抑制できる。前記スリット13は、少なくとも15cm以内の間隔で、好ましくは2〜3cmの間隔で設けられる。また、前記スリット13の巾は、一般的には1〜4mm程度でよい。
【0050】
さらに、図1Bおよび図1Cに示すように、前記高比重可撓性樹脂マット12の下面に厚さ1.5mm以下、比重0.3以下の防音マット14を設けておいてもよい。このような低比重の防音マット14は軽量床衝撃音の対策に有効であり、比重は0.3以下が好ましい。ただし、これらの防音マットは、熱伝導率が著しく低いので、あまり厚くなると好ましくない。また、厚さが1.5mmを超えると、床材全体の厚さが限定されているので、床基材が相対的に薄くなり、落球衝撃試験のような局部的な衝撃荷重で床材が破壊されるおそれがある。従って、防音マットは厚さ1.5mm以下であることが必要である。防音マット14としては、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、アクリル発泡体等の厚さ1.5mm以下の樹脂発泡体、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET等の樹脂不織布、および、これらの樹脂発泡体と不織布とを貼り合わせたシートが使用される。
【0051】
前記床材は、床暖房用床材だけではなく、根太組や二重床のパーティクルボード下地等の上に捨て貼りされる合板下地等、面均一な下地に施工されることが好ましい。また、これらの場合、通常状態で施工されているフロア仕上げ材の上に直接置敷することが可能である。ただし、この場合でも、出来得る限り面均一な仕上げであることが必要であり、フロア仕上げ材の段差は1mm以内であることが望ましい。このフロア仕上げ材は床暖房構成であってもよい。
【0052】
例えば、床暖房構成であれば、床暖房マットの上面に置敷施工してもよい。この場合、少量の接着剤で下地と床材とを接着一体化しておいても良いが、上貼り材の交換等を想定し、下地との接着は行わない方が好ましい。さらに、床暖房構成の場合、接着一体化よりも、粘着の方が好ましい。
また、下地との接着を行わない替わりに、図2A,図2Bおよび図2Cに示すように、雄実部15,雌実部16を形成して相互に嵌合してもよい。さらに、硬質繊維板とその裏面に設けられた高比重マットとを接着することにより、隣り合う床材同士の一部が接着または粘着してもよい。これにより、床暖房運転中の温度変化によって生じる施工状態での目隙を軽減することが可能である。
【0053】
【実施例】
(実施例1)
鉱物質繊維としてロックウール50重量%、 無機粉状体として炭酸カルシウム40重量%、結合剤としてスターチ3重量%および粉体フェノール樹脂7重量%を水中に投入して固形成分2%のスラリーを得、これに消泡剤を微量添加して攪拌した。前記スラリーを長網式抄造機で抄造した後、サクションポンプで脱水し、含水率50%の湿潤マットを得た。この湿潤マットに温度90℃、圧力7kg/cm2、加圧時間1分のプレス条件で第1次熱圧プレスを行いプレセミキュアマットを得た。このプレセミキュアマットをウォーターカッターで尺角の大きさに切断し、220℃に調整した熱風ドライヤーで乾燥することにより、含水率5%、厚さ6mm、比重0.45のセミキュアマットを得た。
【0054】
前記セミキュアマットの表裏面それぞれに樹脂液をフローコーターで60g/尺角ずつ塗布して含浸させた。前記樹脂液は、アクリルエマルジョンを水で希釈して樹脂率35%に調整したものに、1重量%の浸透剤、0.05重量%の消泡剤、0.05重量%の離型剤をそれぞれ添加したものである。そして、前記セミキュアマットの両側に3.0mmのディスタンスバーを配置し、温度190℃、圧力5kg/cm2、加圧時間1分で予備圧締した後、温度190℃、圧力25kg/cm2、加圧時間20分のプレス条件で本圧締を行い、厚さ3.3mmの硬質繊維板を得た。
【0055】
前記硬質繊維板の表裏面をサンダーがけし、面均一な3.0mmの硬質繊維板10を得た。この時の外観を目視したところ、樹脂強化された面均一な表面を確認できた。さらに、前記硬質繊維板10の表面に、酢ビエマルジョンおよびイソシアネートを混合した接着剤(130g/m2)を塗布して厚さ0.45mmのカバ乾燥単板11を貼り付けた。そして、前記カバ乾燥単板11の表面にUV塗装を施した。
さらに、前記硬質繊維板10の裏面に、ビニルウレタン系接着剤を使用して高比重可撓性樹脂マット12を貼着一体化して床材を得(図3A)、これをサンプルとした。前記高比重可撓性樹脂マットは、ポリプロピレン樹脂と炭酸カルシウムを50対50の割合で混合し、成型した比重1.6、厚さ1mmを有している。
【0056】
前記サンプルの特性を検証するため、5枚の前記サンプルに落球衝撃試験を行うとともに、2枚の前記サンプルの熱伝導率を測定した。落球衝撃試験とは、重さ500gの鉄球を75cmの高さから落下させ、この時に生じた凹み量を測定する試験である。熱伝導率は、熱伝導率測定器(英弘精機(株)社製、型式 HC−071H)を使用し、JIS規格(A1412−2)に基づいて測定した。測定結果を図1に示す。
【0057】
(実施例2)
実施例1にかかる高比重可撓性樹脂マット12の裏面にビニルウレタン系接着剤(100g/m2)を塗布し、防音マット14として比重0.15、厚さ1mmの発泡ポリエチレンマットを貼着一体化して床材を得(図3B)、これをサンプルとした。5枚の前記サンプルに実施例1と同一条件で落球衝撃試験を行うとともに、2枚の前記サンプルの熱伝導率を測定した。測定結果を図1に示す。
【0058】
(比較例1)
市販の合板(厚さ6.3mm)の表裏面にサンダーがけを行い、尺角の厚さ6.0mmの合板20を得た。この合板20の表面に、酢ビエマルジョンおよびイソシアネートを混合した接着剤を塗布(130g/m2)して0.25mmmのカバ乾燥単板11を貼り付けた。さらに、前記カバ乾燥単板11の表面にUV塗装を施し、合板20を基材とする床材を得(図3C)、これをサンプルとした。
【0059】
5枚の前記サンプルに落球衝撃試験を行うとともに、2枚の前記サンプルの熱伝導率を測定した。測定結果を図1に示す。
【0060】
(比較例2)
実施例1で使用した硬質繊維板10の裏面に、ポリプロピレン樹脂を成型して得た比重0.9、厚さ1mmの可撓性樹脂マット21を貼着一体化した点を除き、他は前述実施例1と同様に処理して床材を得(図3D)、これをサンプルとした。5枚の前記サンプルに落球衝撃試験を行うとともに、2枚の前記サンプルの熱伝導率を測定した。測定結果を図1に示す。
【0061】
(比較例3)
実施例2で使用した防音マットの代りに、防音マット22として比重0.15、厚さ3mmの発泡ポリエチレンマットを貼着一体化した点を除き、他は前述の実施例2と同様に処理して床材を得(図3E)、これをサンプルとした。実施例1と同一条件で、5枚の前記サンプルに落球衝撃試験を行うとともに、2枚のサンプルの熱伝導率を測定した。測定結果を図1に示す。ただし、落球衝撃試験において、基材が破壊したので、測定不能であった。基材が破壊されるのは、防音マットが厚いので、衝撃荷重が基材に局部的に作用するためであると考えられる。
【0062】
図1から明らかなように、落球衝撃試験において、実施例1,実施例2が比較例1,2,3よりも優れていることが判明した。また、熱伝導率において、実施例1,実施例2が比較例1,2,3よりも優れていることが判明した。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、木質材に近似する耐衝撃性、施工性および切削加工性を備えた床材、特に、床暖房にも使用できる床材を安定供給できる。さらに、熱伝導性に優れている高比重可撓性樹脂マットを裏打ちしてあるので、床暖房用床材に必要な優れた昇温特性(暖房の立ち上がりが早い)を発揮する。また、前記高比重可撓性樹脂マット自体が床下地となじみやすいので、施工性がより一層高い床材が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明にかかる実施形態に応用例を示す断面図である。
【図3】本発明にかかる実施例および比較例を示す断面図である。
【図4】本発明にかかる実施例および比較例の試験結果を示す図表である。
【符号の説明】
10…硬質繊維板、11…化粧シート、12…高比重可撓性樹脂マット、13…スリット、14…防音マット、15…雄実部、16…雌実部。
Claims (4)
- 鉱物質繊維35〜70重量%、無機粉状体25〜55重量%、および、結合剤5〜25重量%を必須成分とするスラリーを湿式抄造して得られる湿潤マットに熱圧プレスを施して得られた比重0.3〜0.9のセミキュアマットに、希釈された樹脂率10〜60%の樹脂液を含浸させ、熱圧プレスで平均比重1.2〜1.7に調整して得た硬質繊維板の表面に化粧加工を施すとともに、その裏面に比重1.1以上の高比重可撓性樹脂マットを貼着一体化したことを特徴とする床材。
- 高比重可撓性樹脂マットの裏面にスリットを形成したことを特徴とする請求項1に記載の床材。
- 高比重可撓性樹脂マットの裏面に防音マットを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の床材。
- 鉱物質繊維35〜70重量%、無機粉状体20〜55重量%、および、結合剤5〜25重量%を必須成分とするスラリーを湿式抄造して得た湿潤マットに第1次熱圧プレスを施し、乾燥して比重0.3〜0.9のセミキュアマットを得、このセミキュアマットに希釈された樹脂率10〜60%の樹脂液を含浸させ、第2次熱圧プレスで平均比重1.2〜1.7に調整して得た硬質繊維板の裏面に比重1.1以上の高比重可撓性樹脂マットを貼着一体化するとともに、前記硬質繊維板の表面に化粧加工を施すことを特徴とする床材の製造方法。
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JP2003095471A JP2004300796A (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | 床材およびその製造方法 |
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JP2010236107A (ja) * | 2009-03-30 | 2010-10-21 | Daiken Corp | 無機質板の製造方法 |
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- 2003-03-31 JP JP2003095471A patent/JP2004300796A/ja active Pending
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